説明

生理活性組成物及びその製造方法

本発明は、有効な生理活性を有する生薬類の混合組成物を提供することを目的とする。担子菌類ヒダナシタケ目マンネンタケ科マンネンタケ属に属する菌、ヒダナシタケ目タコウキン科カワラタケ属に属する菌、担子菌類ハラタケ目ハラタケ科ハラタケ属に属する菌及び担子菌類ハラタケ目タバコウロコタケ科キコブタケ属に属する菌からなる群から選択される2種以上の担子菌の子実体、菌糸体及び培養物のいずれかの抽出成分と、ウコギ科に属する植物の根の抽出成分と、を含有する組成物によれば、抗腫瘍作用や血糖降下作用を発現する酸化還元電位を呈する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
この発明は、抗腫瘍作用や血糖値降下作用等の生理活性を有する組成物に関する。特に、担子菌類に属する菌類から選択される1種あるいは2種以上の菌の抽出成分と、ウコギ科に属する植物の根の抽出成分と、を含有する生理活性組成物に関する。
【背景技術】
従来、担子菌類に属するマンネンタケの子実体や、菌糸体培養物(菌糸体のみの他、菌糸体とその培養液との混合物を含まれる。以下、単にこれらを培養物という。)は、古くから生薬として知られ、多様な薬効とともに、それに含まれる多糖類をはじめとする成分にある種の抗腫瘍作用があることが知られている。また、同様に担子菌類に属するカワラタケの子実体等からも、抗腫瘍活性をはじめとして、各種生理活性物質が抽出されている。さらに、ニンジンを始めとするウコギ科に属する植物の根自体およびその抽出成分も生薬として古くから用いられ、これらについても、多くの薬効が知られている。一方、同じく担子菌類のキコブ科に属するメシマコブ及びハラタケ科に属するアガリクスの子実体等も有用なβ−グルカンなどの糖類が含まれていることが知られている(特開2003−183176号公報)。
【発明の開示】
これらの生薬類における抗腫瘍活性成分などの有効成分は詳細には解明されていない。また、これらの生薬を混合したときの有効性や相乗効果についても科学的に解明されているわけでもなく、予測が困難であった。
本発明者は、担子菌類に属するいくつかの菌類由来抽出成分と、ウコギ科に属する植物の根由来抽出成分とを配合した組成物が、抗腫瘍作用や高血糖症者において血糖値を下げる効果(以下、この効果を血糖降下作用という。)等の生理活性を発現する有効な酸化還元電位を呈することを見出し、本発明を完成した。
本発明によれば、担子菌類ヒダナシタケ目マンネンタケ科マンネンタケ属に属する菌、ヒダナシタケ目タコウキン科カワラタケ属に属する菌、担子菌類ハラタケ目ハラタケ科ハラタケ属に属する菌及び担子菌類ハラタケ目タバコウロコタケ科キコブタケ属に属する菌からなる群から選択される2種以上の担子菌の子実体、菌糸体及び培養物のいずれかの抽出成分と、ウコギ科に属する植物の根の抽出成分と、を含有する生理活性組成物が提供される。本発明の好ましい形態によれば、前記キコブタケ属菌はPhellinus linteusである、上記組成物が提供される。また、さらに、前記ハラタケ属菌はAgaricus blazei Murillである、上記いずれかの組成物が提供される。さらに、前記マンネンタケ属菌は、Reishi Fungusであり、前記カワラタケ属菌はCoriolus Versicolorである、上記いずれかの組成物が提供される。さらに、前記担子菌として少なくとも前記マンネンタケ属菌が選択される、上記いずれかの組成物が提供される。さらにまた、前記ウコギ科の植物は薬用ニンジンである、上記いずれかの組成物が提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、前記組成物の水溶液の酸化還元電位は、1230mV以下である、上記いずれかの組成物が提供される。さらに、この形態において、前記組成物の水溶液の酸化還元電位が330mV以下である、組成物も提供される。
さらに、本発明の好ましい形態は、前記組成物の水溶液のpHは、4.5以上6.5以下であるものである。
本発明の好ましい形態によれば、前記担子菌の子実体、菌糸及び培養液のいずれかの抽出成分及びウコギ科植物の根の抽出成分は、それぞれ熱水抽出成分である、上記いずれかにの組成物も提供される。
さらに、本発明によれば、担子菌類ヒダナシタケ目マンネンタケ科マンネンタケ属に属する菌、ヒダナシタケ目タコウキン科カワラタケ属に属する菌、担子菌類ハラタケ目ハラタケ科ハラタケ属に属する菌及び担子菌類ハラタケ目タバコウロコタケ科キコブタケ属に属する菌からなる群から選択される2種以上の担子菌の子実体、菌糸体及び培養物のいずれかの抽出成分を有する1種あるいは2種以上の第1剤と、
ウコギ科に属する植物の根の抽出成分を有する第2剤と、
を備える、用時混合製剤も提供される。
また、本発明によれば、生理活性組成物の製造方法であって、担子菌類ヒダナシタケ目マンネンタケ科マンネンタケ属に属する菌及び/又はヒダナシタケ目タコウキン科カワラタケ属に属する菌の子実体、菌糸体及び培養物のいずれかを熱水で抽出する工程と、担子菌類ハラタケ目ハラタケ科ハラタケ属に属する菌及び/又は担子菌類ハラタケ目タバコウロコタケ科キコブタケ属に属する菌の子実体、菌糸体及び培養物のいずれかを熱水で抽出する工程と、ウコギ科に属する植物の根を熱水で抽出する工程と、上記工程で得た熱水抽出物を混合する工程と、を備える、製造方法も提供される。
また、本発明によれば、生理活性組成物の製造方法であって、担子菌類ヒダナシタケ目マンネンタケ科マンネンタケ属に属する菌及び/又はヒダナシタケ目タコウキン科カワラタケ属に属する菌の子実体、菌糸体及び培養物のいずれかの熱水抽出物と、担子菌類ハラタケ目ハラタケ科ハラタケ属に属する菌及び/又は担子菌類ハラタケ目タバコウロコタケ科キコブタケ属に属する菌の子実体、菌糸体及び培養物のいずれかの熱水抽出物と、ウコギ科に属する植物の根の熱水抽出物とを、それぞれ個別にあるいは少なくとも2種以上の前記熱水抽出物を同じ抽出系から取得して、担子菌類ヒダナシタケ目マンネンタケ科マンネンタケ属に属する菌及び/又はヒダナシタケ目タコウキン科カワラタケ属に属する菌の子実体、菌糸体及び培養物のいずれかの熱水抽出成分と、担子菌類ハラタケ目ハラタケ科ハラタケ属に属する菌及び/又は担子菌類ハラタケ目タバコウロコタケ科キコブタケ属に属する菌の子実体、菌糸体及び培養物のいずれかの熱水抽出成分と、ウコギ科植物の根の熱水抽出成分とを含有する組成物を得る、製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
(担子菌類ヒダナシタケ目マンネンタケ科マンネンタケ属に属する菌及び同目タコウキン科カワラタケ属に属する菌)
本発明においては、これらの属に属する2種類以上の菌の子実体、菌糸体及び培養物(培養液など)のいずれかから得られる抽出成分を有効成分として含有することができる。マンネンタケ属とカワラタケ属に属する菌の双方を用いてもよいし、いずれか一方のみを用いても良い。
マンネンタケ属にあっては、Reishi Fungus(Ganoderma Lucidum)を例示することができる。この菌は、生来、樹木に好んで繁殖するものの、自生菌は稀少である。なお、人工栽培も可能である。この菌は、つやのある、ワックス状のかさ部分と軸部とを有しており、その軸の長さは、15cm程度にも到達される。子実体の色は、赤色、青色、黄色、白色、紫色、黒色を呈する。この菌は、切り株上や、病気で弱った木の基部付近で生長し、白い糸状体となる。
また、カワラタケ属としては、Coriolus Versicolorを例示することができる。この菌は、日本の西部、特に、信州地方(特に、長野県)、四国地方、九州地方に自生している。この菌は、生来、好材菌であり、特に広葉樹を好む。
(担子菌類ハラタケ目タバコウロコタケ科キコブタケ属に属する菌)
キコブタケ属に属する担子菌としては、メシマコブを挙げることができる。特に、本発明においては、メシマコブ(Phellinus linteus)を用いることが好ましい。天然のメシマコブは、桑に寄生し鮮黄色又は黄褐色の半円形をした子実体を発生させる木質のキノコである。漢方では、桑黄とされている。
(担子菌類ハラタケ目ハラタケ科ハラタケ属に属する菌)
ハラタケ属に属する菌としては、Agaricus blazei Murill(アガリクス ブラゼイムリル、和名:カワリハラタケ)、マッシュルーム等を挙げることができるが、アガリクスブラゼイムリルを用いることが好ましい。アガリクスブラゼイ ムリルは、ブラジル原産のハラタケ属きのこである。
これらの担子菌類に属する菌としては、マンネンタケ属菌及びカワラタケ属菌から1種以上を選択することが好ましい。より好ましくは、マンネンタケ属菌及びカワラタケ属菌の双方とするか、あるいはマンネンタケ属菌のみを用いる。また、マンネンタケ属菌及びカワラタケ属菌から1種以上を選択するときには、キコブタケ属菌及びハラタケ属菌から1種以上を用いることが好ましい。キコブタケ属菌及びハラタケ属菌の双方を用いてもよいし、いずれかを用いてもよい。担子菌類における各種菌の組み合わせとしては、以下の組み合わせを挙げることができる。
(1)マンネンタケ属菌、カワラタケ属菌及びメシマコブ属菌
(2)マンネンタケ属菌、カワラタケ属菌及びハラタケ属菌
(3)マンネンタケ属菌及びメシマコブ属菌
(4)マンネンタケ属菌及びハラタケ属菌
(5)マンネンタケ属菌、メシマコブ属菌及びハラタケ属菌
(6)マンネンタケ属菌、カワラタケ属菌、メシマコブ属菌及びハラタケ属菌
担子菌類は、天然に自生するものでもよく、また、人工的に栽培したもの、あるいは細胞培養によるものでもあってもよく、特に限定しない。好ましくは、天然自生のものである。これらの菌類の、本発明において使用する形態は、子実体、菌糸体及び菌体培養物のいずれであってもよいが、好ましくは子実体である。また、子実体にあっては、室温で光を避けて風乾されたものが好ましい。
特にマンネンタケ属菌にあっては、自生で成熟した黒色の子実体を用いるのが好ましい。また、カワラタケ属菌にあっては、夏に採取された自生の子実体であることが好ましく、室温で光を避けて風乾されたものがさらに好ましい。
(ウコギ科植物の根)
また、本発明の組成物には、ウコギ科植物の根の抽出成分も有効成分として含有する。ウコギ科植物としては、典型的には、薬用人参である。薬用人参には、オタネ人参(Panax ginseng C.A.Meyer)の他、アメリカ人参(P.quinquefolium L.)、三七人参(田七人参、P.notogingseng)、竹節人参(チクセツニンジン)(珠子参、P.japonicus C.A.Meyer)等が含まれる。本発明においては、オタネニンジン及び/又はチクセツニンジンを用いることが好ましい。特に好ましくはチクセツニンジンである。これらのニンジンは、いずれもその根を用いる。ウコギ科植物としては、1種類のみを使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。なお、ウコギ科植物の代用として、セリ科に属する植物を用いることもできる。
(組成物の製造方法)
本発明の組成物は、まず、上述のようなマンネンタケ属菌、カワラタケ属菌、キコブタケ属菌及びハラタケ属菌からの2種類以上の担子菌と、ウコギ科植物の根とを、水を用いて抽出することにより得られる。組成物に含める原料成分は、既に述べた組み合わせに基づいて選択する。抽出は常温の水で抽出してもよいが、熱水にて行うのが好ましい。担子菌抽出成分と、ウコギ科抽出成分とは、それぞれ原料毎にあるいは2種以上の原料を組み合わせて熱水抽出して、各抽出物を混合してもよいし、担子菌類とウコギ科植物の根との原料を一括して熱水抽出してもよい。好ましくは、組成物に含めようとする抽出成分の全原料を混合した上、これを熱水等で抽出する。各原料は、熱水抽出に際しては、粉砕して、細片状あるいは粉末状されることが好ましく、より好ましくは、細片状に破砕される。特に5mm角程度あるいはそれ以下の細片状に破砕されるのが好ましい。
抽出原料における、担子菌類とウコギ科植物の根との配合比は、特に限定しないが、担子菌類20重量部に対して、ウコギ科植物の根0.2重量部〜20重量部である。より好ましくは、担子菌10重量部に対して、ウコギ科植物の根1〜5重量部である。さらに、好ましくは、担子菌5重量部に対して、ウコギ科植物の根1重量部である。また、担子菌類において2種類以上の担子菌は、それぞれ等量で用いることが好ましい。なお、上記した抽出原料の比は、いずれも乾燥物換算における比である。
また、抽出原料においては、用いた属単位での担子菌類の量、ウコギ科植物の根の量はそれぞれ等量であってもよい。例えば、担子菌として、マンネンタケ属菌、カワラタケ属菌、キコブタケ属菌を用い、ウコギ科植物としてチクセツニンジンを用いた場合、それぞれを等量ずつ、例えば、4〜7gずつ用いて1000mlの熱水で抽出することもできる。
本発明の好ましい組成であるところの、マンネンタケ子実体:カワラタケ子実体:メシマコブ子実体:チクセツニンジン(根)の配合比(重量比)が、1:1:1:1の抽出原料から本組成物を製造するには、例えば、マンネンタケ子実体6g、カワラタケ子実体6g、メシマコブ子実体6g、チクセツニンジン6gをそれぞれ採取し、混合し、5mm角程度の細片にまで粉砕し、この粉砕物に対して500〜1000mlの蒸留水を添加し、環流凝縮器を用いて3時間煮沸し、濾過後、本発明に用いる組成物(原液)とする。
熱水抽出の際の熱水の温度は、80℃〜100℃、好ましくは、90℃〜95℃とする。また、抽出時間は、好ましくは、少なくとも1時間、より好ましくは2時間以上、さらに好ましくは2.5時間以上とする。また、上限は3〜4時間とする。抽出操作は、環流凝縮器を用いて行うのが好ましい。なお、抽出原料に対する水の量は特に限定するものではないが、10重量部から30重量部の原料に対して、500重量部〜1000重量部程度の水で抽出するのが好ましい。また、このような重量比の抽出で得た抽出液(特に、環流凝縮器を用いた場合)は、そのまま投与に適した濃度の液体となる。
得られた抽出液は、濾過等によって残存する抽出原料を取り除かれる。また、抽出液のろ液や上澄み液を必要に応じて濃縮して濃縮液とされる。また、水分を蒸発させることにより、固形状(粉末状)の抽出成分も得られ、さらに必要に応じて乾燥等することにより、所望の乾燥抽出成分が得られる。
さらに、本組成物の投与形態や剤形を考慮して、濃縮時あるいは乾燥時に、製剤化あるいは抽出成分を安定化する添加剤を加えることもできる。
さらに、この組成物の原液を、適宜希釈して本発明の組成物として用いることもできる。希釈倍率は、必要に応じて設定されるが、おおよそ、2倍から300倍の範囲で希釈される。好ましくは、2倍〜20倍、さらに好ましくは、4倍〜16倍の希釈倍率で用いられる。希釈に際しては、特に限定しないが、抽出と同様に、水を用いるのが好ましい。
また、この原液から適当な方法により溶媒を除去し乾燥し固形分として前記抽出成分を得て、これを組成物とすることもできる。
なお、組成物は、用時混合する製剤としても構成することができる。すなわち、担子菌類からの抽出成分を有する第1剤とウコギ科植物の根からの抽出成分を有する第2剤とを用時混合するように組み合わせることもできる。第1剤及び第2剤は、ぞれぞれ、水溶液であっても、また、粉末等の固体であってもよい。
このように調製した組成物は、溶液時における酸化還元電位が1230mV以下であるものを用いる。好ましくは、酸化還元電位が900mV以下のものを本発明の組成物として用いる。特に、抗腫瘍活性組成物や血糖効果剤組成物としてこのような酸化還元電位のものを用いるのが好ましい。酸化還元電位は、水性溶媒、好ましくは、水中で測定される値である。上記抽出によって得られた原液あるいは、その水性の希釈液については、そのまま酸化還元電位を計測することもできる。組成物が固体化されている場合には、適当な溶媒、あるいは水等に溶解、懸濁した状態で測定する。
本組成物の溶液の酸化還元電位は、好ましくは、330mV以下であり、より好ましくは、300mv以下であり、さらに好ましくは250mV以下である。最も好ましくは0mV以下である。また、酸化還元電位は、−1200mV以上であることが好ましく、より好ましくは−300mV以上である。
また、本組成物の溶液のpHは、4.5以上6.5以下であることが好ましい。弱酸性は、生体細胞にとって都合のよいpHであるからであり、本組成物の有効成分が最も有効に機能するからである。各抽出原料を熱水で抽出して得られた本組成物は、原液の状態で通常、pHが4.5以上6.5以下となっている。
なお、本発明の組成物においては、その他の有効成分を含有することを妨げるものではない。本発明の組成物における上記2種の抽出成分の相乗的作用を妨げない範囲において、他の有効成分を含ませることができる。なお、これらの有効成分は、抽出成分やその組成に基づいて人工的に製造されたものであってもよい。本発明の開示は、特に、天然物からの抽出された有効成分を意図するが、ここに記載される作用を発現する化学合成的に得られた有効成分を意図することはもちろんである。
本発明の組成物は、抗腫瘍活性、特に、白血病、子宮頸ガン、肺ガン、卵巣ガン、乳腺ガン(転移ガンを含む)、皮膚ガン(転移ガンを含む)に対する抗腫瘍活性を有している。白血病としては、赤芽球性白血病(erythroblastic leukosis)を例示できる。本発明の組成物は、ヒトをはじめ、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ等の広く哺乳類における抗腫瘍剤として使用できる。担子菌類の抽出成分には、従来から抗腫瘍活性が認められ、また、ウコギ科植物の根の抽出成分にも抗腫瘍活性が確認されていたが、本発明の組成物は、各単独の抗腫瘍活性に比して、予想外に高い抗腫瘍活性が得られることを既に確認している。また、本発明の組成物は、血糖降下作用も有している。この血糖降下剤は、インシュリン依存性糖尿病、インシュリン非依存性糖尿病の双方において作用を発揮する。さらにまた、本発明の組成物は、ヒトなどに対する血圧降下作用を有しており、高血圧症の治療及び予防剤として使用できる。また、本発明の組成物は、ヒトなどに対する血中の総コレステロール低下作用や血中中性脂肪低下作用を有しており、高脂血症の治療及び予防剤としても使用できる。
加えて、本発明の組成物は、副作用がなく、また、他の薬剤の副作用を低減、消滅させるという特徴がある。特に、抗腫瘍剤として用いた場合には、腫瘍の治癒あるいは縮退の他、また、痛みの減少、食欲改善、良好な睡眠が得られる等の各種の効果がある。また、血糖降下剤として用いた場合には、血糖値の低下以外に、身体の痛みの緩和、とくに、頭痛、四肢のしびれが大幅な改善、食欲の亢進、視力の回復、ストレスの減少、快適な睡眠等の効果がある。
本発明における有効成分である、担子菌抽出成分及びウコギ科植物抽出成分は、製薬上許容される担体又は添加物と混合されて、投与に適した形態の組成物として使用される。組成物の形態は特に限定しないが、液剤、シロップ剤、懸濁剤、散剤、顆粒剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、乳剤、トローチ、チュアブル剤、坐剤、点眼剤、注射剤、エアゾール剤、エリキシル剤等に製剤化することができる。また、使用時に、水分を添加して、液状体を回復できるような固形(粉末)剤とすることも好ましい。
また、本発明の組成物は、経口または非経口的に投与することができる。好ましくは、経口投与される。経口投与の場合の一般的な投与量を以下に示す。なお、投与量は、症状や個人の体力等に応じて適宜設定されるものである。すなわち、一般的な投与量(常用量)としては、例えば、体重1kgあたり、担子菌200mg〜2g及びウコギ科植物の根100mg〜1gからの抽出成分を1日分とし、1日1回〜3回程度に分けて投与される。特に、抗腫瘍剤として使用する場合には、担子菌及びウコギ科植物の根0.25〜0.35gからの抽出成分/kg体重/日とすることが好ましい。また、血糖降下剤として使用する場合には、担子菌0.12〜0.18g及びウコギ科植物の根0.12gからの抽出成分/kg体重/日とすることが好ましい。なお、血糖降下剤として使用する場合には、ウコギ科植物の根の、水および/またはアルコール抽出物の投与を伴うことが好ましい。このアルコール抽出物は、ウコギ科植物の根、好ましくは、薬用ニンジン、より好ましくは、チクセツニンジンを用い、細片あるいは粉末とし(好ましくは、5mm角程度の細片)、例えば、細片10〜20重量部に対して、300〜600重量部の40%のエチルアルコール溶液を加え、この液を80〜100℃でアルコール分の蒸発がほぼ完了した状態となるまで加熱抽出することにより得られる。
本発明の組成物はその毒性が極めて低く、重大な副作用を発現しないため、症状に応じて高投与量でも安全に投与することができる。なお、経口投与のための好ましい剤型は、液剤あるいはシロップ剤である。また、媒体としては、水であることが好ましい。
【実施例】
以下、本発明について具体例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定的に解釈されるものではない。
(組成物の酸化還元電位の測定)
原料としてマンネンタケ(Ganoderma Lucidum)の子実体、カワラタケ(Coriolous Versicolor)の子実体、チクセツニンジン(P.japonicus C.A.Meyer)の根、メシマコブ(Phellinus linteus)の子実体、AgaricusblazeiMurill(アガリクス ブラゼイ ムリル、和名:カワリハラタケ)の子実体を用いた。子実体はいずれも乾燥体を用いた。
以下の表1に示す組成に基づいて、原料を配合し、それぞれ5mm角以下に細断し、イオン交換水(純度1μS/cm以下)を1000ml添加して、還流凝縮器を用いて、還流しながら2時間煮沸して抽出した。抽出後、ろ過を行い、各種処方液とした。得られた各種処方液につき、処方液調製時、25℃、相対湿度14%R.H.のインキュベーター中にて保存1日後、2日後、3日後及び4日後の各時点における酸化還元電位とpHとを測定した。酸化還元電位及びpHは、東亜電波工業株式会社製HM−14Pにて測定した。なお、酸化還元電位については、測定装置における指示値に対して比較電極の指示値を加えて酸化還元電位とした。結果を表2及び3に示す。



表2に示すように、処方液1(RKGME)、処方液2(RKGA)、処方液3(RMEG)、処方液4(RAG)の酸化還元電位は、それぞれ特徴的であった。メシマコブ抽出成分を有する処方液1及び処方液3の酸化還元電位は時間の経過に関わらずおおよそ一定の値を示した。これに対してアガリクス抽出成分を有する処方液2及び処方液4では、酸化還元電位が顕著に低下した。また、処方液5(RKG)の酸化還元電位は時間の経過とともに減少したが、メシマコブ抽出成分含有系とアガリクス抽出成分含有系とのおおよそ中間程度の減少程度であった。一方、処方液6(メシマコブ単独抽出液)の酸化還元電位は安定しており、処方液7(アガリクス単独抽出液)の酸化還元電位は顕著に減少していた。以上のことから、メシマコブ含有の処方液1、3とアガリクス含有の処方液2、4との酸化還元電位の経時変化は、それぞれ、処方液6(メシマコブ単独抽出液)及び処方液7(アガリクス単独抽出液)の酸化還元電位の経時変化に対応しているといえる。
一方、表3に示すように、pHは全ての処方液においておおよそ安定していた。また、処方液調製時のpHは、処方液1〜4については、4.5以上6.0以下の範囲であり弱酸性であり、保存期間を通して維持された。なお、処方液5(RKG)は、本発明者により、抗腫瘍作用及び血糖値低下作用、コレステロール低下作用が確認されているとともに、これらの生理活性は、330mV以下の酸化還元電位に関連付けることができることがわかっている(米国特許第6,746,675号)。なお、米国特許第6746675号は、引用によりその明細書の全文が本明細書の一部となる。
処方液1〜4が、少なくとも時間の経過に抗して(換言すれば酸化に抗して)、その酸化還元電位を維持あるいは減少酸化還元電位を大きく上昇させることなく維持できることは、これらの処方液の還元力を示していると考えられる。
以上のことから、処方液1〜4は、弱酸性であって生体細胞に障害性がなく、かつ溶液調製時の酸化還元電位が330mV以下であることから、抗腫瘍作用及び血糖値低下作用等の生理活性を有するものとなっていることがわかった。
(本発明の組成物を調製するためのさらなる典型的な方法)
以上の実施例では、担子菌の熱水抽出物と、ウコギ科に属する植物の根の熱水抽出物を使用したが、他の組成物も意図される。たとえば、成分は、他の抽出方法による天然物から抽出することもできる。一例として、出発原料が、ある抽出プロセスに供され、抽出成分はろ過されて、減圧下で蒸発される。産物は、滅菌され、乾燥され、その後、篩過されて、粉末となる。
乾燥された抽出成分は、粉剤、粒剤、カプセル剤、タブレット剤等に製剤化される。たとえば、抽出成分は、バインダーと混合され、造粒され、乾燥され、粒剤となる。粒剤は、そのまま使用されてもよいし、錠剤化してもよいし、カプセルに充填してもよい。追加のバインダーを、乾燥後の抽出成分の造粒工程の前段か後段のいずれかに加えることができる。なお、抽出成分を乾燥して、カプセルに充填してカプセル化することもできる。また、他の薬学上許容される添加剤を添加することができる。添加剤としては、成分の半減期を延長するための1種あるいは2種以上の保存剤を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
さらに、有効成分は、薬学上許容される溶剤に溶解し、ろ過し、アンプルに充填することができる。これらのアンプルは、滅菌することもできる。さらに、他の薬学上許容される添加剤を溶液に添加することができる。添加剤としては、成分の半減期を延長するための1種あるいは2種以上の保存剤を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
また、有効成分を分離し、分離した有効成分のみを治療剤として使用することができる。有効成分を同定し、化学合成的に製造することができる。この場合、化学合成された有効成分を、粉剤、粒剤、カプセル剤、錠剤、アンプル剤等に使用して、本組成物を患者に投与するための他の媒体を提供することができる。なお、他の有効な薬学上許容される添加剤を必要に応じて添加することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担子菌類ヒダナシタケ目マンネンタケ科マンネンタケ属に属する菌、ヒダナシタケ目タコウキン科カワラタケ属に属する菌、担子菌類ハラタケ目ハラタケ科ハラタケ属に属する菌及び担子菌類ハラタケ目タバコウロコタケ科キコブタケ属に属する菌からなる群から選択される2種以上の担子菌の子実体、菌糸体及び培養物のいずれかの抽出成分と、
ウコギ科に属する植物の根の抽出成分と、
を含有する生理活性組成物。
【請求項2】
前記キコブタケ属菌はPhellinus linteusである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ハラタケ属菌はAgaricus blazei Murillである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記マンネンタケ属菌はReishi Fungusであり、前記カワラタケ属菌はCoriolus Versicolorである、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記担子菌として少なくとも前記マンネンタケ属菌が選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記ウコギ科の植物は薬用ニンジンである、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物の水溶液の酸化還元電位は、1230mV以下である、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物の水溶液の酸化還元電位が330mV以下である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物の水溶液のpHは、4.5以上6.5以下である、請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記担子菌の子実体、菌糸及び培養液のいずれかの抽出成分及びウコギ科植物の根の抽出成分は、それぞれ熱水抽出成分である、請求項1〜9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
担子菌類ヒダナシタケ目マンネンタケ科マンネンタケ属に属する菌、ヒダナシタケ目タコウキン科カワラタケ属に属する菌、担子菌類ハラタケ目ハラタケ科ハラタケ属に属する菌及び担子菌類ハラタケ目タバコウロコタケ科キコブタケ属に属する菌からなる群から選択される2種以上の担子菌の子実体、菌糸体及び培養物のいずれかの抽出成分を有する1種あるいは2種以上の第1剤と、
ウコギ科に属する植物の根の抽出成分を有する第2剤と、
を備える、用時混合製剤。
【請求項12】
生理活性組成物の製造方法であって、
担子菌類ヒダナシタケ目マンネンタケ科マンネンタケ属に属する菌及び/又はヒダナシタケ目タコウキン科カワラタケ属に属する菌の子実体、菌糸体及び培養物のいずれかを熱水で抽出する工程と、
担子菌類ハラタケ目ハラタケ科ハラタケ属に属する菌及び/又は担子菌類ハラタケ目タバコウロコタケ科キコブタケ属に属する菌の子実体、菌糸体及び培養物のいずれかを熱水で抽出する工程と、
ウコギ科に属する植物の根を熱水で抽出する工程と、
上記工程で得た熱水抽出物を混合する工程と、
を備える、製造方法。
【請求項13】
生理活性組成物の製造方法であって、
担子菌類ヒダナシタケ目マンネンタケ科マンネンタケ属に属する菌及び/又はヒダナシタケ目タコウキン科カワラタケ属に属する菌の子実体、菌糸体及び培養物のいずれかの熱水抽出物と、担子菌類ハラタケ目ハラタケ科ハラタケ属に属する菌及び/又は担子菌類ハラタケ目タバコウロコタケ科キコブタケ属に属する菌の子実体、菌糸体及び培養物のいずれかの熱水抽出物と、ウコギ科に属する植物の根の熱水抽出物とを、それぞれ個別にあるいは少なくとも2種以上の前記熱水抽出物を同じ抽出系から取得して、担子菌類ヒダナシタケ目マンネンタケ科マンネンタケ属に属する菌及び/又はヒダナシタケ目タコウキン科カワラタケ属に属する菌の子実体、菌糸体及び培養物のいずれかの熱水抽出成分と、担子菌類ハラタケ目ハラタケ科ハラタケ属に属する菌及び/又は担子菌類ハラタケ目タバコウロコタケ科キコブタケ属に属する菌の子実体、菌糸体及び培養物のいずれかの熱水抽出成分と、ウコギ科植物の根の熱水抽出成分とを含有する組成物を得る、製造方法。

【国際公開番号】WO2005/077395
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【発行日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−518074(P2005−518074)
【国際出願番号】PCT/JP2005/002824
【国際出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(500046564)
【Fターム(参考)】