説明

生理活性能を有する組成物

【課題】薬効のあることが知られているネギ類から、容易にしかも安価に有価物を抽出することを前提としたガン細胞の増殖抑制をする組成物を得る。
【解決手段】ネギ類から、20℃での比誘電率が2から60になるように調製した有機液体で抽出されたガン細胞の増殖抑制及び正常細胞の延命効果をもたらす組成物を得る。優れた特性を有し、かつ粉末ないし水溶液としても供給可能なため、調味料関連産業、健康食品産業や医薬業界で広く利用される可能性の高いものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネギ類からの抽出によって得られる生理活性能を有する組成物に関するもので、本組成物は健康食品、調味料若しくは化粧品の原料として、さらには各種疾病の予防又は治療用の医薬として使用される可能性の高いもので、それらの健康食品調製、調味料調製、化粧品調製さらには医薬調製に関するものである。
【0002】
ネギ類としては、栽培種としてのネギ、リーキ、タマネギ、ニンニク、ニラ、ラッキョウ、ワケギ、シャロット、野生種としてのノビル、アサツキ、ギョウジャニンニクなど(以下、ネギ類)が用いられる。
【背景技術】
【0003】
日本において、悪性腫瘍(ガン)に関する研究も数多く行われ、様々な治療薬や治療方法が開発・実用化されて、治癒率は格段に向上している。しかしながら、死亡者数は年々増加の一途をたどっており、現在もなお、ガン治療に関する重要性は高く、数多くの研究が行われている
【0004】
現在のガンの治療法としては、外科的治療、放射線治療、化学療法、ホルモン療法、生物反応修飾物質によるBRM(biological response modifiers)療法に分類され、これらの作用機序はすべて異なり、これらを併用して治療効果を上げることが有効とされている。
【0005】
一方、上記のような医学的治療の他に、アガリクスや、メシマコブ、キトサン、フコイダン、サメ軟骨抽出物等の食品素材にも、抗酸化作用や免疫賦活作用、より直接的には抗ガン作用といった生理活性を有するものが数多く知られており、その摂取によりガンの発生を予防し抑制することが試みられている。
【0006】
さらに、特開2007−119377号公報(特許文献1)において、ネギ類から、調味料や健康食品の原料として、さらには各種疾病の予防又は治療用の医薬として使用される可能性の高い、薬効性および/または加味性を有する組成物が得られることが示されている。しかしながら、組成物を得るために酢酸を用いているため、抽出工程及び組成物が得られた後の工程が煩雑となる可能性がある。
【0007】
特開特開2002−186449号公報(特許文献2)において、エタノール等によるネギ等のアリウム属植物からのエキスの抽出法を述べているが、その抽出温度は、−20℃〜5℃で、本発明での有機液体の浸漬する際の温度範囲とは異なる。また、特許文献2の抽出温度では、実際に抽出工程を工業化するためのコストがかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−119377号公報
【特許文献2】特開2002−186449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これまでに行われていた医学的療法は、標準治療においてもほとんどの場合に副作用が見られ、例えば、化学療法は、最も用いられる方法の1つであるが、有効投与量のコントロールが難しいため、吐き気、嘔吐、食欲不振等の副作用を伴うケースが多い。
【0010】
また、抗ガン作用を有するとされている食品素材由来の活性成分は、抗酸化作用や免疫賦活作用によるものが多く、その摂取により実際のガンの発生を予防し抑制する作用が確認されているものは決して多くないのが現状である。
【0011】
このことから、薬効のあることが知られているネギ類から、容易にしかも安価に有価物を抽出することを前提としたガン細胞の増殖抑制をする組成物を得ることを課題として発明に取り組んだ。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者等は、漢方薬としても用いられるネギ類に着目し、特に、規格外として廃棄され、あるいは使用されずに廃棄されるネギ類から有用成分を抽出ことを検討した。
【0013】
ネギ類から、20℃における比誘電率が2から60までの少なくとも1種類の有機液体で抽出処理することにより、ガン細胞の増殖を抑制する作用及び正常細胞の生存を高める作用を持ち、かつ容易に量産が可能な組成物を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、食品市場において普通に販売されているものはもとより、特に産業廃棄物として大量に排出、廃棄されているネギ類の新たな用途を提供するものであり、本組成物の投与により、ガンの増殖の抑制効果を得ることができ、さらに、正常細胞を延命させる効果が期待できる。また、本発明の組成物は、食品由来成分であることから安全性が高い。
【0015】
本発明は、規格外ネギ類という市場価値の著しく低下したもの、さらには廃棄処分対象のネギ類から薬効性を有する組成物を食品や医薬の原料として有効活用することを可能とするものである。規格内のネギ類を排除する趣旨ではないが、規格外のものや廃棄処分対象のものを有効活用することにより環境改善にも寄与する。
【0016】
本発明者等は、ネギ類を20℃での比誘電率が2から60までの少なくとも1種類の有機液体で抽出処理することにより、得られた組成物に、ガンの進行抑制作用及び正常細胞の延命効果のあることを見出し、本発明を完成するに至った。その結果、ネギ類として食品市場において、流通過程で大量に排出、廃棄されているものを有効利用することを可能にした。
【0017】
すなわち、本組成物は、ネギ類からの抽出物を有効成分とすることを特徴とし、本組成物を投与することにより有効にガンの進行を抑制することができた。さらに、正常細胞の生存を高めることができた。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】20℃での比誘電率が2の有機液体で抽出処理することにより得られた組成物をブタ白血病細胞に投与したときの増殖の相対値。
【図2】20℃での比誘電率が25の有機液体で抽出処理することにより得られた組成物をブタ白血病細胞に投与したときの増殖の相対値。
【図3】20℃での比誘電率が51の有機液体で抽出処理することにより得られた組成物をブタ白血病細胞に投与したときの増殖の相対値。
【図4】20℃での比誘電率が60の有機液体で抽出処理することにより得られた組成物をブタ白血病細胞に投与したときの増殖の相対値。
【図5】20℃での比誘電率が25の有機液体で抽出処理することにより得られた組成物をブタ正常リンパ球に投与したときの生存細胞数の変化。
【図6】20℃での比誘電率が51の有機液体で抽出処理することにより得られた組成物をブタ正常リンパ球に投与したときの生存細胞数の変化。
【図7】20℃での比誘電率が2から60のそれぞれの有機液体で抽出処理することにより得られた組成物をブタ白血病細胞に投与したときの相対的比増殖速度。
【図8】裁断法の異なるネギを、20℃での比誘電率が25の有機液体で抽出処理し、得られた組成物を、ブタ白血病細胞に投与したときの増殖の相対値。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ネギ類としては、市場で流通しているネギ類を使用することも可能であるが、本発明では市場で規格外として放棄対象になっているものも、差別なく使用することができる。また、ネギ類は、葉、葉鞘、花球等からなるもので、その部位ごとにも多少の差異が医学的機能の面で認められるが、使用する上で問題となる差異ではない。
【0020】
抽出に際しては、これらネギ類が用いられ、葉、葉鞘、花球などの部位ごとでも、それらに分割せず、一体として使用してもよい。
【0021】
本発明において、薬効性を有する組成物は、以下のネギ類から抽出されるもので、ネギ類としては、栽培種としてのネギ、リーキ、タマネギ、ニンニク、ニラ、ラッキョウ、ワケギ、シャロット、野生種としてのノビル、アサツキ、ギョウジャニンニクなどが用いられる。ネギ類として、特にネギが、品種ごとにその性能に多少の差異があるが、より好ましい。
【0022】
ネギ類は、必要に応じて適宜、洗浄、脱脂、脱色、乾燥、粉砕等の処理を行ってから用いてもよい。洗浄においては、水や有機液体を用いることができる。また、そのまま利用してもよく、さらに、粉砕してもよい。乾燥方法としては熱風乾燥、真空乾燥等、通常用いられる方法を用いることができる。粉砕方法についてはジェットミルやミル、その他粉砕機等、通常用いられる方法を用いることができる。
【0023】
有機液体は、20℃の比誘電率が2から60までのものが好ましい。特に比誘電率が25前後の有機液体が好ましいが、20℃の比誘電率が2から60の有機液体であれば、対照に比べ、有意に生理活性を有することからこれに拘るものではない。
【0024】
本発明に用いられる有機液体は、20℃での比誘電率が2から60の範囲にあるものであれば、特に制限はなく、ヘキサン、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、クロロホルム、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。また、比誘電率が2から60の範囲で臨界温度が-20℃〜20℃にあるものであれば、超臨界流体でも差し支えない。
【0025】
浸漬処理は加温してもよいが、室温でも差し支えない。さらには、ネギ類の変質・腐敗等を避けるために、冷温下、例えば冷蔵庫内において行うことでも良く、通常6〜50℃の温度下に行われる。攪拌は一定時間ごと、または連続して緩やかに行うことが望ましいが、静置しておくだけでもよい。浸漬時間は、1時間〜1ヵ月程度が望ましい。
【0026】
有機液体浸漬処理に用いる有機液体の量は、浸漬処理の効果と抽出後の有機液体の除去を考慮すると、ネギ類の表面を満遍なく浸すことのできる量が望ましい。
【0027】
本組成物は、上記の浸漬処理後に不溶解物を分離した溶液として得られる。本組成物を含む溶液を濃縮、さらには乾燥などの手段により、有機液体を除去してもよい。
【0028】
このようにして抽出されたものは、種々の成分からなる組成物であるが、後述する特性を有するものであって、健康食品素材、調味料素材、化粧品素材として、また医薬の原料として、有効に利用されるものである。
【0029】
本組成物は、ガン細胞の増殖阻害、正常細胞の延命効果等の生理活性を有し、しかも天然の食品関連植物由来であって、安全性にも問題がない。従って、通常の飲食品はもとより、特定保健用飲食品、健康食品、健康飲料、栄養食品などの飲食品に添加して用いることができる。さらには医薬品としての利用も可能である。
【0030】
本組成物は、固体状(粉末、顆粒状その他)、濃縮物、ペースト状、液状ないし懸濁状のいずれでも使用可能である。また、調味料、健康食品あるいは医薬の製剤において用いられている賦形剤、結合剤などを利用することによって、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤などとして用いることができる。
【0031】
本組成物は天然起源で、しかも、永年にわたって漢方薬や食品として使用されていたものを起源とするため、その使用に格別の限定はない。
【0032】
また、本発明の薬効性を有する組成物は、粉末状態でも、有機液体溶液としても使用することができるため、食品、化粧品、医薬品等として利用することが可能である。
【0033】
例えば、(1)清涼飲料、炭酸飲料、果実飲料、野菜ジュース、乳酸菌飲料、乳飲料、豆乳、ミネラルウォーター、茶系飲料、コーヒー飲料、スポーツ飲料、アルコール飲料、ゼリー飲料等の飲料類、(2)トマトピューレ、キノコ缶詰、漬物等の野菜加工品、(3)ジャム、フルーツピューレ、果実缶詰等の果実加工品、(4)カレー粉、ショウガ、スパイスブレンド、シーズニング粉等の香辛料、(5)パスタ、うどん、そば、ラーメン、マカロニ等の麺類(生麺、乾燥麺含む)への添加、(6)食パン、菓子パン、調理パン、ドーナツ等のパン類への添加、(7)アルファー米、オートミール、麩、バター粉等への添加、(8)焼菓子、ビスケット、米菓子、キャンデー、チョコレート、チューインガム、スナック菓子、冷菓、砂糖漬け菓子、和生菓子、洋生菓子、半生菓子、アイスクリーム等の菓子類への添加、(9)小豆、豆腐、納豆、湯葉、煮豆、ピーナッツ等の豆類製品への添加、(10)蜂蜜、ローヤルゼリー等の加工食品、栄養補助食品への添加、(11)ハム、ソーセージ、ベーコン等の肉製品への添加、(12)ヨーグルト、プリン、練乳、チーズ、発酵乳、バター、アイスクリーム等の酪農製品への添加、(13)加工卵製品への添加、(14)蒲鉾、ちくわ、魚肉ソーセージ等の加工魚や、乾燥わかめ、昆布、佃煮等の加工海藻や、タラコ、数の子、イクラ、からすみ等の加工魚卵等への添加、(15)だしの素、醤油、酢、みりん、コンソメベース、中華ベース、濃縮出汁、ドレッシング、マヨネーズ、ケチャップ、味噌等の調味料や、サラダ油、ゴマ油、リノール油、ジアシルグリセロール等の食用油脂への添加、(16)スープ(粉末、液体含む)等の調理・半調理食品や、惣菜、レトルト食品、チルド食品、半調理食品等への添加が挙げられる。
【0034】
本組成物は単独で用いてもよく、また、アガリクスや、メシマコブ、キトサン、フコイダン、サメ軟骨抽出物、ペプチド等、ガンの予防・抑制効果が知られている成分と併用しても良い。
【0035】
本組成物の摂取形態は、液剤、散剤、錠剤、丸剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、ゼリー、ペースト等が挙げられ、生理活性を損わない範囲で、食品、及び医薬的に許容される担体、賦形剤、糖類、甘味料、香料、酸味料、着色料、その他補助的添加剤を使用してもよい。
【実施例】
【0036】
<所定の比誘電率を有する有機液体の調製>
ネギを水洗した後、白色(白部)と緑色部分(緑部)に分け抽出原料とした。抽出に用いた有機液体は、所定の比誘電率を有する有機液体を単独で用いるか、若しくは、水等を加えることにより所定の比誘電率にした。有機液体の比誘電率は、20℃での比誘電率が2から60までになるように調整した。有機液体としては、ヘキサン、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、クロロホルム、ジメチルスルホキシド等を単独で用いるかそれらを組み合わせて、所定の比誘電率に調整してもよい。また、比誘電率の調整のために水が用いられることもある。また、比誘電率が2から60の範囲で臨界温度が-20℃〜20℃にあるものであれば、超臨界流体でも差し支えない。
【0037】
<組成物の調製1>
ネギは、それぞれ2cm程度に切断し、浸漬処理は、白部及び緑部に分けて行った。白部及び緑部それぞれの重量に対し、10倍の有機液体を加え、室温で浸漬した。浸漬中は攪拌を行ってもよい。例えば、5gの白部及び緑部に対して、有機液体50mL中にそれぞれ浸漬した。所定の浸漬時間後、その有機液体を回収し、本発明でいう組成物とした。
【0038】
<白血病細胞を用いた培養試験>
ブタ白血病細胞は、3%fetal bovine serum(以下FBSという)添加のRPMl 1640(GIBCO, Grand Island, New York)を用い、単一細胞浮遊液とした。その後、Ficol1-Paqueに重層し、4℃で1600rpm、30分間遠心した。遠心後、試験管の中間に形成された細胞の層を分離し、RPMl 1640で3回洗浄し培養試験に供した。細胞増殖用培養液として、培地の量に対してFBS 10%、L-Glutamine 0.1%、2-Mercaptoethnol 5×10-5M、Sodium pyruvate 0.11%、7% NaHCO3 0.5%をそれぞれ添加したRPMl 1640を用いた。生細胞数を1×10/mLに調製した後、本組成物を培養シャーレ中に所定の量(例えば、100μL)を加え、37℃、5%CO下で静置培養した。24時間ごとに1μL当たりの細胞数を計測した。
【0039】
その結果、所定の比誘電率を有する有機液体に対して、ブタ白血病細胞の増殖を抑制することが分かった(図1、図2、図3、図4)。データをまとめるに当たって、初発の細胞数を1に規格化して図1から図4を構成した。
【0040】
本発明においては、白血病細胞を用いているが、本組成物の効果は、リンパ球のガン、肝ガン等にも適用可能であり、ガン細胞の種類に拘るものではない
【0041】
<正常リンパ球細胞を用いた培養試験>
ブタ正常リンパ球細胞は、ヘパリン処理し、トリス塩酸緩衝液(pH 7.65)で赤血球を溶血させ、FBSを添加したRPMl 1640を用いて単一細胞浮遊液を作成し、3回洗浄後、培養試験に供した。細胞増殖用培養液として、培地の量に対してFBS 10%、L-Glutamine 0.1%、2-Mercaptoethnol 5×10-5M、Sodium pyruvate 0.11%、7% NaHCO3 0.5%をそれぞれ添加したRPMl 1640を用いた。生細胞数1.2×106/mLに調製した後、本組成物を培養シャーレ中に所定の量(例えば、100μL)を加え、37℃、5%CO下で静置培養した。24時間ごとに1μL当たりの細胞数を計測した。
【0042】
所定の比誘電率を有する有機液体を正常細胞へ投与した場合、対照(抽出に用いられた有機液体のみを投与)と比べほぼ同程度の生存細胞数であることが分かった。さらに、有機液体の比誘電率によっては、対照に比べ生存する細胞数が多いことが示された。このことから、本組成物には、正常細胞を延命する効果があることが明らかになった。(図5、図6)
【0043】
本発明においては、正常リンパ球を用いているが、本組成物の効果は、他の正常細胞も適用可能であり、正常細胞の種類に拘るものではない。
【0044】
白血病細胞の増殖過程を示すのに一般的に用いられる式、N(t)=Nexp(μt)を仮定し解析した。ここで、N(t)はある時間tにおける細胞数、Nはt=0のときの細胞数、μは比増殖速度を表わす。この式を用いて、本発明の一例として示した図1から図4の試験結果についての比増殖速度を表計算ソフトEXCELを用いて求め、さらにその得られた比増殖速度を対照の比増殖速度で割ることにより、相対的な比増殖速度(相対的比増殖速度)を算出した。その結果を図7、図8に示す。その結果、20℃での比誘電率が2から60になるように調製した有機液体で抽出された組成物の相対的比増殖速度が1以下であることから、本組成物には白血病細胞の増殖を明らかに抑制する効果があることが定量的に明確になった。
【0045】
<組成物の調製2>
実際の農協等の選果場ではネギの白部と緑部が混合されている。そこで既に混合された試料5gをグラインダーにかけ、その粉砕された試料に対して、20℃での比誘電率が25の有機液体を50mL加え、室温で浸漬した。所定の浸漬時間後、その有機液体を回収し、組成物とした(混合5g)。
【0046】
<組成物の調製3>
組成物の調製2と同様に混合された試料5gに水を10mL加えた後、グラインダーをかけ、その粉砕された試料に対して、20℃での比誘電率が25の有機液体を50mL加え、室温で浸漬した。所定の浸漬時間後、その有機液体を回収し、組成物とした。(混合15g)
【0047】
組成物の調製2及び組成物の調製3で得られた組成物を、白血病細胞を用いた培養試験に供した。その結果、白部と緑部を混合し、グラインダーにかけ粉砕したものから得られた組成物の方が、2cmに切断したネギから得られた組成物よりも、白血病細胞の増殖を抑制する効果があった。この増殖のパターンを定量的に比較する目的で、図8等から、比増殖速度を求めたのが、表1である。表1中の決定係数は、1に近いほど近似曲線の当てはまりが良いことを表わしている。
【0048】
【表1】

【0049】
この結果、グラインダーをかけない試料の比増殖率0.091〜0.0110に対し、グラインダーより粉砕した試料の比増殖率0.0069〜0.0087と白血病細胞の増殖を抑制していることが分かった。従って、本組成物を得るには、ネギの原形を留めた状態でも、さらに細かくし、より粉砕してもよいことが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本組成物は、上記のような優れた特性を有し、かつ粉末ないし水溶液としても供給可能なため、調味料関連産業、健康食品産業や医薬業界で広く利用される可能性の高いものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネギ類からの抽出物であって、20℃での比誘電率が、2から60以下の有機液体に可溶性であることを特徴とする、ガン細胞の増殖を抑制する組成物。
【請求項2】
ネギ類からの抽出物であって、20℃での比誘電率が、2から60以下の有機液体に可溶性であることを特徴とする、正常細胞の致死を抑制する組成物。
【請求項3】
ネギ類が、ネギであることを特徴とする、請求項1及び請求項2に記載の生理活性を有する組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−12300(P2012−12300A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147120(P2010−147120)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(510180533)
【出願人】(510180588)
【出願人】(510180599)
【出願人】(510180603)
【出願人】(510180614)
【出願人】(510180625)
【Fターム(参考)】