説明

生理溶液に由来する有核細胞及び/または血小板濃縮物の調製方法

本発明は、骨髄吸引物、血液、またはそれらの混合物のような生理溶液からの、例えば骨形成原細胞濃縮物のような細胞濃縮物の調製に関する方法及び組成物に関する。特定の実施態様では、本発明は、遠心分離を使用しない、特に医療環境おける2つの生理溶液を処理する技術を利用する方法及び組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2003年12月10日に出願のU.S. Provisional Patent Application Serial No. 60/458,354及び60/528,583の優先権の利益を享受し、それらの全体における参照によって本明細書に両者を援用する。
【0002】
本発明は、骨治療、骨髄処理、及び薬剤、例えば整形外科の薬剤の分野に一般的に関する。特定の実施態様では、本発明は、遠心分離を含まない二段階の工程のフィルターシステムを使用する生理的な製造物、例えば骨髄吸引物の処理に関する。
【背景技術】
【0003】
骨移植用置換物(BGS)は骨の欠陥を修復するための自家移植片の低侵襲性な代替物として一般的に使用される。しかしながら、自家移植片は、その構造の骨組み、骨誘導増殖因子、及び骨形成原細胞の提供のために移植の適用において非常に標準的なものであり続けている。自家移植片に加わる有望な外科的な選択肢は、BGSと生物活性(つまり、骨誘導性及び骨原性)因子との組み合わせからなる複合移植片の使用である。生物活性因子の例としては、血小板(骨誘導増殖因子を分泌する)及び幹細胞(骨形成原細胞に分化する)が含まれる。これらの生物活性因子の供給源としては、自家移植よりも患者から入手するのに低侵襲性である骨髄吸引物及び血液が含まれる。この点を考慮して、組織の治癒への適用における使用のための骨髄吸引物及び血液から生物活性因子を入手及び濃縮する技術が開発されている。遠心分離は、密度の違いに基づいて他の血液構成物から骨原性/骨誘導性細胞を分離するために典型的に使用される。しかしながら、細胞を豊富に含む懸濁物の調製は困難であり、更に手術室に遠心分離機を購入してメンテナンスする必要がある。したがって、遠心分離を必要とせずに血液または骨髄吸引物から幹細胞及び血小板を濃縮できる治療の時点における外科的な技術が望まれている。この技術は、自家移植に代わる実用的かつ低侵襲性であり得る生物活性BGSを即時に調製する簡易的な方法を外科医に提供するであろう。
【0004】
Connolly et al. (1989)は、ウサギから抽出した骨髄を単純な遠心分離、糖密度遠心分離、及び重力沈降によって濃縮し、その全てにおいて骨髄全体に比べて平均的に有核細胞の数を増大させた。腹膜腔(異所)及び遷延治癒モデル(同所)に移植されたチャンバーを使用して、ウサギにおける骨髄の骨原性効果が試験された。骨形成は、遠心分離後の骨髄因子の濃縮物で異所と同所の双方において加速されたが、重力沈降後の濃縮物では加速されなかった。骨髄内の有核細胞密度を増大させる方法は記載されているが、骨髄中の幹細胞を濃縮するために遠心分離が利用されている。さらに、前記濃縮物は骨誘導性の骨組みとなる物質と併用して使用されなかった。
【0005】
PCT Patent Application WO96/27397は、血漿、血小板、及びフィブリノーゲンを含む血漿-軟膜濃縮物を提供している。前記濃縮物が血塊を形成を開始するのに十分な濃度でフィブリノーゲンアクチベーターと組み合わされる際に、創傷のシーラントが形成される。また、血漿-軟膜濃縮物を製造するための血液の処理方法も提供している。前記方法は抗凝固化した血液を遠心分離して赤血球を除去し、血漿-軟膜混合物を製造する工程を含む。血液濾過によって前記混合物より水を除去して、血漿-軟膜濃縮物を製造する。フィブリノーゲンアクチベーターを前記血漿-軟膜濃縮物と混合して、骨を移植するための適用を含む多数の臨床的応用に使用され得る創傷のシーラントを製造する。
【0006】
U.S. Patent Nos. 6,010,627及び6,342,157は、血液の画分、典型的に血漿を濃縮する装置及び方法を提供し、血液凝固性のタンパク質、例えばフィブリノーゲン及び細胞成分、例えば血小板、白血球、または軟膜細胞の濃縮物を提供する。血液濾過によって血漿から水を除去して、血漿-軟膜濃縮物を製造する。最終的な濃縮物は凝固に基づく創傷のシーラントの調製における使用に適する。前記方法は、血液画分内の細胞及びタンパク質を濃縮するために、血液を処理するために使用される中空糸フィルターのタイプである血液濾過フィルターを利用する。前記従来技術では、フィブリノーゲンアクチベーターの細胞/タンパク質濃縮物に対する添加における凝固に有用であるフィブリノーゲンタンパク質の濃縮を可能にする約30,000ダルトンの分子量を排除する半透膜を有する限外濾過ユニットを明示している。しかしながら、U.S. Patent Nos. 6,010,627及び6,342,157は、全血または骨髄吸引物のいずれかより間葉幹細胞及び血小板を濃縮するための繊維フィルターを記載していない。したがって、タンパク質の回収が重要ではないことから、より大きい排除フィルター(つまり、30,000を超える)が、細胞を濃縮するために本発明において使用されて良い。より大きな排除フィルターは、より小さい排除フィルターより高い流速を有し、より低い作動圧力が必要であることから、本発明のフィルターは、そこに開示されているフィルターと比較してより少ない時間及び力を必要とする。
【0007】
Muschler et al. (2002; U.S. Patent Nos. 5,824,084及び6,049,026)は、骨髄吸引物を多孔性物質を通過させて複合BGSを調製するための方法を提供する。前骨芽細胞は前記基体に選択的に保持され、等量の骨髄吸引物と比較して前骨芽細胞を豊富(つまり、多く)含有する複合移植片を生じさせる。間葉幹細胞のためのアフィニティーカラムとして働く移植可能な多孔性の骨組みに骨髄を通過させるための方法が提供される。前記幹細胞は前記基体に選択的に保持され、等量の骨髄吸引物と比較して幹細胞を豊富(つまり、多く)含有する複合移植片を生じさせる。しかしながら、Muschlerの開示は血小板が豊富である方法及び組成物を記載していない。
【0008】
PCT Patent Application WO 00/61256及びU.S. Patent No. 6,398,972は、生理溶液若しくは血液に由来する血小板を豊富に含む血漿または血小板濃縮物を製造するための自動化された方法及び装置を記載している。2つのチャンバーを有する使い捨ての容器に遠心分離を受けさせて処理が実施される。全血を2つチャンバーの内の1つに入れ、次いで遠心分離によって赤血球を1つのチャンバーの底に沈殿させて、血小板を豊富に含む血漿である上清を得る。遠心分離を停止し、血小板を豊富に含む血漿を2つ目のチャンバーに流出させる。前記2つ目のチャンバー内の血小板を豊富に含む血漿を遠心分離を再び開始することによって、二度目の遠心分離にかける。遠心分離を停止し、(1)一つ目のチャンバー内の赤血球;(2)二つ目のチャンバーの底の血小板濃縮物;及び(3)二つ目のチャンバー内の上清として血小板が乏しい血漿を得る。血小板が乏しい血漿の部分を二つ目のチャンバーから除去し、血小板が乏しい血漿の残存する部分と血小板濃縮物を二つ目のチャンバーに残す。残存する血小板濃縮物を二つ目のチャンバーに残存する血小板が乏しい血漿に懸濁し、血小板を豊富に含む血漿を得る。
【特許文献1】U.S. Patent No. 5,824,084
【特許文献2】U.S. Patent No. 6,010,627
【特許文献3】U.S. Patent No. 6,049,026
【特許文献4】U.S. Patent No. 6,342,157
【特許文献5】U.S. Patent No. 6,398,972
【特許文献6】WO 96/27397
【非特許文献1】Babbush CA, Kevy SV, Jacobson MS. An in vitro and in vivo evaluation of autologous platelet concentrate in oral reconstruction. Implant Dent. 2003;12(l):24-34
【非特許文献2】Bigelow CL and Tavassoli M, "Fatty involution of bone marrow in rabbits", Acta Anat (Basel), 118(l):60-4 (1984)
【非特許文献3】Connolly, J., Guse, R., Lippiello, L., Dehne, R. Development of an Osteogenic Bone-Marrow Preparation, J. Bone and Joint Surgery, vol. 71 -A, no. 5, pp. 684-691, 1989
【非特許文献4】Holdrinet RSG, Egmond JV, Wessels JMC, and Haanen C, "A method for quantification of peripheral blood admixture in bone marrow aspirates", Exp. Hemat. 8(l):103-7 (1980)
【非特許文献5】Kita K, Kawai K, and Hirohata K, "Changes in bone marrow blood flow with aging", J Orthop Res, 5(4):569-75 (1987)
【非特許文献6】Takigami, H., Muschler, G.F., et al. Spine Fusion using Allograft bone matrix enriched in bone marrow cells and connective tissue progenitors, Trans, of 48th Orthopaedic Res. Soc, p. 807, 2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
かくして、本明細書に記載する本発明は、現存する方法に欠けている、臨床治療、特に骨治療の従来技術において必要とされるものを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、例えば、骨の欠陥の修復における使用に有利なシステム、方法、及び組成物に関する。より具体的には、本発明は、任意に遠心分離を必要とせずに治療の時点で生理溶液(好ましくは、骨髄吸引物、血液、またはそれらの混合物)から細胞濃縮物を調製する方法を提供する。好ましくは、前記細胞濃縮物は骨形成治療に利用されるが、代替的な実施態様では、前記細胞濃縮物は、例えば診断、薬剤試験、または予後の目的のために分析される。
【0011】
本発明の特定の実施態様では、細胞濃縮物を調製する方法であって、過去のように遠心分離にかけずに生理溶液を準備する工程;前記生理溶液をフィルターにかけて、血小板、有核細胞、またはそれらの双方を単位容量当たりに前記生理溶液よりも多く含むフィルター保持物と、血漿と赤血球を含む透過溶液を製造する工程;及び前記フィルターからフィルター保持物を回収する工程を含む方法が存在する。特定の態様では、前記フィルターは白血球除去フィルターである。
【0012】
特定の実施態様では、前記準備工程は、水または低張液、例えば塩化ナトリウムを含む更なる溶液を前記生理溶液に組み合わせる工程として更に規定されて良い。
【0013】
本発明の他の態様では、細胞濃縮物を調製する方法であって、生理溶液を準備する工程;前記生理溶液を第1の濾過装置にかけて有核細胞、血小板、またはそれらの双方を生理溶液から単離し、第1の製造物を製造する工程;前記第1の製造物を第2の濾過装置にかけて、有核細胞、血小板、またはそれらの双方を単位容量に生理溶液よりも多く含む第2の製造物を製造する工程を含む方法が存在する。特定の実施態様では、前記第1の濾過装置は有核細胞濾過装置であり、白血球除去濾過装置として更に規定されて良く、他の特定の実施態様では、前記第2の濾過装置は中空糸濾過装置として更に規定されて良い。
【0014】
濾過装置、例えば第2の濾過装置、は約0.05μmと約5μmの間、より好ましくは約0.2μmと約0.5μmの間の細孔のサイズを含んで良い。
【0015】
好ましい実施態様において、本発明の方法は遠心分離の工程を含まない。
【0016】
特定の実施態様では、前記生理溶液は、骨髄吸引物、血液、またはそれらの混合物を含み、ある実施態様では、前記有核細胞は、幹細胞、結合組織前駆細胞、前骨芽細胞、軟骨前駆細胞またはそれらの混合物を含む。ある実施態様では、前記幹細胞は間葉幹細胞、造血幹細胞、またはそれらの双方である。他の実施態様では、前記方法は、個体の骨の欠陥に前記第2の製造物を投与する工程を更に含み、及び/または骨組みとなる物質を前記第2の製造物に混合して骨組みとなる物質/第2の製造物の混合物を製造する工程を含む。ある実施態様では、前記方法は個体の骨の欠陥に前記骨組みとなる物質/第2の製造物の混合物を投与する工程も含んで良い。
【0017】
前記骨組みと成る物質は、ブロック、ペースト、粉塵、セメント、粉末、顆粒、パテ、液体、ゲル、個体、またはそれらの混合物を含んで良く、及び/またはセラミック、ポリマー、金属、同種移植骨、自家移植骨、脱ミネラル骨マトリックス、またはそれらの混合物を含んで良い。前記骨組みとなる物質は生分解性であって良く、好ましくは骨導性、骨誘導性、または骨原性である。特定の実施態様では、前記骨組みとなる物質は合成物質、天然物質、またはそれらの組み合わせを含む。
【0018】
特定の実施態様では、前記方法は、前記第2の製造物、前記骨組みとなる物質、またはそれらの組み合わせと生物学的薬剤を混合する工程を更に含む。前記骨組みと混合される生物学的薬剤は骨組みとなる物質の上に、骨組みとなる物質の中に、またはそれらの双方に含まれる生物学的薬剤として更に規定されて良い。特定の実施態様では、前記骨組みとなる物質自体が生物学的薬剤である。
【0019】
本発明の他の実施態様では、本明細書に記載の方法で製造される細胞濃縮物が存在する。
【0020】
本発明の更なる実施態様では、生理溶液由来の有核細胞の濃度及び/または血小板の濃度を増大させる方法であって、生理溶液を準備する工程;前記生理溶液を有核細胞濾過装置にかけて有核細胞、血小板、またはそれらの双方を生理溶液から単離して第1の製造物を製造する工程;及び前記第1の製造物を繊維濾過装置にかけて、有核細胞、血小板、またはそれらの双方を単位容量当たりに前記生理溶液よりも多く含む第2の製造物を製造する工程を含む方法が存在する。
【0021】
前記骨髄吸引物を準備する工程は、第1のシリンジに個体に由来する骨髄を吸引して骨髄吸引物を製造する工程として更に規定されて良い。好ましくは、前記第1のシリンジは抗凝固剤、等張液、またはそれらの双方を含む。
【0022】
更なる特定の態様では、前記骨髄吸引物を有核細胞濾過装置にかける工程は、前記骨髄吸引物を第1の収容装置に導入する工程(前記第1の収容装置は白血球除去フィルターに直列に繋がれ、前記白血球除去フィルターは第2の収容装置に直列に繋がれる。ここで前記白血球除去フィルターは血漿及び赤血球を通過させるが、有核細胞、血小板、またはそれらの双方の通過を阻害する);前記フィルターにパージ溶液を導入してパージ溶液/有核細胞/血小板の混合物を製造する工程;及び前記フィルターからパージ溶液/有核細胞/血小板混合物を回収する工程として更に規定される。
【0023】
前記第1の製造物を濾過装置にかける工程は前記第1の製造物を中空糸濾過装置にかける工程を含んでよく、及び/または前記第1の製造物を濾過装置にかける工程は、前記第1の製造物を濾過装置に送る方向が第1の製造物が膜を越えて流れる方向と非平行である、第1の製造物を濾過装置にかける工程を含んで良い。
【0024】
特定の実施態様では、前記血液を準備する工程は、例えば第1のシリンジに個体由来の血液を吸引して血液吸引物を製造する工程として更に規定されて良い。前記第1のシリンジは抗凝固剤、等張液、またはそれらの双方を含んで良い。特定の実施態様では、前記血液吸引物を有核細胞濾過装置にかける工程は、血液吸引物を第1の収容装置に導入する工程(前記第1の収容装置は白血球除去フィルターに直列に繋がれ、前記白血球除去フィルターは第2の収容装置に直列に繋がれる。ここで、前記白血球除去フィルターは血漿及び赤血球は通過させるが、有核細胞、血小板、またはそれらの双方の通過を阻害する。);パージ溶液を前記フィルターに導入してパージ溶液/有核細胞/血小板の混合物を製造する工程;及び前記フィルターからパージ溶液/有核細胞/血小板の混合物を回収する工程として更に規定されて良い。
【0025】
前記骨髄吸引物/血液混合物を準備する工程は、第1のシリンジに個体由来の骨髄及び血液を吸引して骨髄吸引物/血液吸引物を製造する工程として更に規定されて良い。前記第1のシリンジは抗凝固剤、等張液、またはそれらの双方を含んで良い。前記骨髄吸引物/血液吸引物を有核細胞濾過装置にかける工程は、前記骨髄吸引物/血液吸引物を第1の収容装置に導入する工程(前記第1の収容装置は白血球除去フィルターに直列に繋がれ、前記白血球除去フィルターは第2の収容装置に直列に繋がれる。ここで、前記白血球除去フィルターは血漿及び赤血球は通過させるが、有核細胞、血小板、またはそれらの双方の通過を阻害する。);パージ溶液を前記フィルターに導入してパージ溶液/有核細胞/血小板の混合物を製造する工程;及び前記フィルターからパージ溶液/有核細胞/血小板の混合物を回収する工程として更に規定されて良い。
【0026】
本発明の更なる実施態様では、個体の骨の欠陥を治療する方法であって、有核細胞、血小板、またはそれらの双方を含む生理溶液を獲得する工程;有核細胞濾過装置に前記生理溶液をかけて、有核細胞、血小板、またはそれらの双方を単離して第1の製造物を製造する工程;中空糸濾過装置に第1の製造物をかけて、有核細胞、血小板、またはそれらの双方を単位容量当たりに前記生理溶液よりも多く含む第2の製造物を製造する工程;及び個体における骨の欠陥に前記第2の製造物を投与する工程を含む方法が存在する。特定の実施態様では前記方法は遠心分離の工程を含まないが、代替的な実施態様では、遠心分離の工程が、例えば血小板及び有核細胞から脂肪細胞及び非細胞性脂肪物質を除去するために利用される。
【0027】
前記骨の欠陥は、破壊、骨折、間隙、病気の骨、骨の欠損、脆性骨、弱骨、骨の損傷、または骨の変性を含んで良い。前記方法は、前記第2の製造物に骨組みとなる物質を混合する工程を更に含んで良い。ある実施態様では、前記生理溶液は、血液、骨髄吸引物、またはそれらの混合物である。
【0028】
前記生理溶液は、好ましくは個体より得られる。特定の実施態様では、前記方法は、病院施設または医療提供施設において治療の時点で実施される。他の特定の実施態様では、前記方法は、前記個体に対する更なる骨の欠陥の治療の提供を含む。前記更なる骨の欠陥の治療は骨折の修復、手術、骨の除去、インプラントの提供、外部からの刺激、またはそれらの組み合わせを含む。特定の実施態様では、前記有核細胞は、白血球、幹細胞、結合組織前駆細胞、前骨芽細胞、軟骨前駆細胞、またはそれらの組み合わせを含む。前記幹細胞は、間葉幹細胞、造血幹細胞、またはそれらの組み合わせであって良い。前記第2の製造物の個体への投与は、骨の欠陥に直接的に第2の濃縮された製造物を適用する工程を含んで良い。特定の実施態様では、前記適用はスコップ、スパチュラ、シリンジ、杆、またはスパーテルを使用する。
【0029】
他の特定の態様では、前記方法は、前記第2の製造物、前記骨組みとなる物質、またはそれらの組み合わせに生物学的薬剤を混合する工程を更に含む。前記骨組みとなる物質に混合される生物学的薬剤は、骨組みとなる物質の上、骨組みとなる物質の中、またはそれらの双方に含まれる生物学的薬剤として更に規定されて良い。
【0030】
本発明の更なる実施態様では、好ましくは遠心分離を含まない、生理溶液を少なくとも1回は濾過する工程を含む、前記生理溶液から骨形成原細胞濃縮物を調製する方法が存在する。
【0031】
他の実施態様では、その双方が適切な容器に収容されている第1の濾過装置及び第2の濾過装置を含む、細胞濃縮物を調製するためのキットが存在する。特定の実施態様では、前記第1の濾過装置及び第2の濾過装置は適切な容器に収容されている。他の特定の実施態様では、前記第1の濾過装置は有核細胞濾過装置であり、及び/または前記第2の濾過装置は微量濾過装置である。前記微量濾過装置は中空糸濾過装置として更に規定されて良い。
【0032】
前記キットは適切な容器に収容された骨組みとなる物質を更に含んで良く、及び/または前記キットは適切な容器に収容された生物学的薬剤を更に含んで良い。
【0033】
本発明の他の実施態様では、適切な容器に収容された多くの細胞(有核細胞、血小板、またはそれらの双方)を含む、骨の欠陥を治療するキットが存在する。特定の実施態様では、前記キットは、適切な容器に収容された骨組みとなる物質を更に含む。前記キットは、適切な容器に収容された生物学的薬剤を更に含んで良い。
【0034】
本発明の他の実施態様では、本明細書に記載の方法によって得られる細胞濃縮物の調製のための装置を含むキットが存在する。
【0035】
特定の実施態様では、細胞濃縮物を調製する方法であって、事前に遠心分離をせずに生理溶液を準備する工程;前記生理溶液を白血球除去フィルターにかけて、血小板、有核細胞、またはそれらの双方を単位容量当たりに前記生理溶液よりも多く含むフィルター保持物と、血漿及び赤血球を含む透過溶液を製造する工程;及び前記フィルターよりフィルター保持物を回収する工程を含む方法が存在する。
【0036】
上述は、以下の本発明の詳細な記述がより良く理解されるために、本発明の特徴及び技術的な利点をかなり広く概説している。本発明の特許請求の範囲の対象を形成する本発明の更なる特徴及び利点は、以下に記載されるであろう。開示される概念及び特定の実施態様が本発明と同じ目的を達成するために変形または他の形態を設計するための基礎として容易に利用されて良いことは当業者に受け入れられるであろう。その様な同等な概念が添付の特許請求の範囲に記載の本発明の精神及び範囲を逸脱しないことも当業者に理解されるべきであろう。その構成及び実施の方法の双方に関する本発明の特徴であると解される新規な特徴は、更なる態様及び利点と共に、添付の図面と併せて解される際に以下の記載からより良く理解されるであろう。しかしながら、各図面は例示及び説明のみを目的に提示されており、本発明の制限を規定するものとしては意図されないことが明らかに解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
I.規定
本明細書で使用される用語「a」または「an」は1つ以上を意味して良い。特許請求の範囲で、用語「含む」と併せて使用される際に、用語「a」または「an」は1つ以上を意味して良い。本明細書で使用される「他」は少なくとも2つ目以上を意味して良い。更に、本明細書で使用される用語「含む(including)」、「含有する(containing)」、及び「有する(having)」は制限されずに、用語「含む(comprising)」と解釈可能であり、互換可能である。
【0038】
本明細書で使用される用語「同種移植骨物質」は、同種の他の個体から得られる骨組織として規定される。同種移植組織は天然の状態で使用されて良く、広範な種類の整形外科の手法の必要に応じて変形されて良い。大半の同種移植骨組織は死亡したドナーに由来する。骨は約70重量%が無機物質である。残部の30%はコラーゲンと非コラーゲン性タンパク質(骨形成タンパク質(BMP)を含む)である。移植のために洗浄及び調製される同種移植骨は、骨の増殖を実施する補助マトリックスを提供するが、骨細胞形成し、新しい骨組織を作製する患者の生態を誘導する因子を放出できない。好ましい実施態様では、前記同種移植片は洗浄され、殺菌され、ウイルスの伝播のための不活化が実施される。
【0039】
本明細書で使用される用語「生物学的薬剤」は、骨成長の誘導、病気の防止、鎮痛用化学物質の投与、及び薬剤の投与などの治療目的に作用する骨移植用置換物に加える物質として規定される。生物学的薬剤の例としては、抗生剤、増殖因子、フィブリン、骨形成因子、血管新生因子、骨増殖因子、骨タンパク質、化学療法剤、鎮痛剤、ビスホスホネート、ストロンチウム塩、フッ素塩、マグネシウム塩、及びナトリウム塩が含まれる。
【0040】
本明細書で使用される用語「血液」は、懸濁されて形成される成分(赤血球、白血球、血小板)と流動体部分(血漿)からなる循環組織を意味する。本発明の特定の実施態様では、前記生理溶液は例えば、ドナーによって提供される、患者の循環システムから得られる、またはそれらの混合物である全血を意味する。前記血液は任意の適切な手段によって、例えば血液吸引物の形態で得られて良い。
【0041】
本明細書で使用される用語「骨移植用置換物」は、骨組織と置き換わる、及び/または骨組織の空間を埋める物質として規定される。本明細書で使用される用語「骨の欠陥」は、破壊、骨折、間隙、病気の骨、骨の欠損、脆性骨若しくは弱骨、損傷、病気、または変性のような骨の欠陥として規定される。その様な欠陥は、病気、外科的介入、奇形、または外傷の結果である可能性がある。前記変性は加齢の結果である可能性がある。病気の骨は骨粗鬆症、パジェット病、繊維性骨形成異常、骨ジストロフィ、歯周疾患、オステオペニア、大理石骨病、原発性副甲状腺亢進症、低ホスファターゼ症、繊維性骨形成異常、骨形成不全、骨髄腫、及び骨の悪性疾患の結果である可能性がある。前記骨の欠損は病気または疾患、例えば間接的に不利に骨に作用する病気による可能性がある。更に、治療される骨の悪性疾患は原発性の骨の悪性疾患である可能性があり、または他の組織または身体の一部に由来する転移性のものであって良い。
【0042】
本明細書で使用される用語「骨髄」は、骨の空隙を満たす柔らかいゼラチン性の組織を意味する。骨髄は、幹細胞、始原細胞、前駆細胞、及び機能性血液細胞を含む赤色骨髄、並びに主に脂肪を貯蔵する黄色骨髄からなる。この様に、赤色骨髄は実際に血液細胞を生産する骨髄組織である。赤色骨髄は、赤血球、白血球、及び血小板を生産する。子供は身体中に赤色骨髄を多く含むが、大人では扁平骨、例えば寛骨に最も濃縮されていることが当業者には既知である。ロイコサイト(白血球)も骨髄で生産され、ある実施態様では、免疫防御に関与する。実際に骨髄移植は免疫不全の幾つかのタイプを治療できる。骨髄はmedulla ossiumも意味する。特定の実施態様では、前記骨髄は骨髄吸引物(個体の骨からシリンジで吸引した骨髄)も含み、当業者は不可避にある程度の末梢血液を含有することを認める。
【0043】
本明細書で使用される用語「骨髄吸引物」は、例えば針によって、骨から骨髄を吸引して得られる物質を意味する。
【0044】
本明細書で使用される用語「有核細胞/血小板画分」は、少なくとも有核細胞及び/または血小板を含む、骨髄、血液、またはそれらの混合物由来の溶液を意味する。前記有核細胞画分は、間葉幹細胞、有核結合組織前駆細胞、有核造血細胞、若しくは内皮細胞、またはそれらの混合物を含む。特定の実施態様では、前記画分は白血球を含む。特定の実施態様では、前記有核細胞/血小板画分は実質的に血漿または赤血球を含まない。ある実施態様では、最終的な細胞濃縮物は容量で最初の約30%未満の血漿及びRBCの容量を含有するであろう。前記細胞画分(ある程度の血漿及び赤血球を含む可能性がある)は、例えば濾過工程の後、及び骨の欠陥に対する適用前に適当な凝固開始剤と混合することによって凝固させて作製されて良い。イオン性カルシウム溶液(例えば、塩化カルシウム溶液)及び/またはトロンビンは凝固を開始して凝塊を形成するであろう。
【0045】
本明細書で使用される用語「遠心分離」は装置の区画における回転を意味し、前記区画は物質を分離するために軸の周りを回転する。
【0046】
本明細書で使用される用語「濃縮物」は、親である供給源より高い濃度の特定の成分(例えば粒子)を含む組成物を意味する。
【0047】
本明細書で使用される用語「直交流濾過」または「直交流モード」は、膜フィルターの表面を越える保持物の再循環を意味する接線流濾過を意味する。特定の実施態様では、膜を越える流れの向きと垂直である装置を通過する製造物の流れの向きを意味する。ある実施態様では、前記用語は膜を複数回通過することを含む濾過として規定される。
【0048】
本明細書で使用される「デッドエンド濾過」または「デッドエンドモード」は、製造物の流れの向きと膜を越える流れの向きが平行である濾過を意味する。ある実施態様では、前記用語は膜を1回通過することを含む濾過として規定される。他の実施態様では、デッドエンド濾過は実質的に接線流濾過を含まない。
【0049】
本明細書で使用される用語「フィルター保持物」はフィルターを越えて生理溶液が通過した際にフィルターに保持される組成物を意味する。特定の実施態様では、前記保持物は有核細胞、血小板、またはそれらの双方を含む。ある実施態様では、前記フィルター保持物は非常に微量の血漿及び/または赤血球を含む。特定の実施態様では、前記フィルター保持物の容量は約1mL以上である。
【0050】
本明細書で使用される用語「濾過」は、少なくとも複数の特定の物質から液体を分離するため、他の粒子状物質からある粒子状物質を分離するため、またはそれらの双方のために多孔性の物質に特定の物質を含む液体を通過させる方法を意味する。
【0051】
本明細書で使用される用語「中空糸濾過装置」は、中空の管状の外側のカバーを含む濾過装置であり、中空の管状の外側のカバーの内部にはフィルターとなる中空の管が存在する(個々の管は管の長さに対して平行の向きに置かれる)。特定の実施態様では、装置を通過する製造物の流れの向きは前記膜を通過する流れの向きと垂直である。ある実施態様では、一般的には膜フィルターの表面を越える保持物の再循環を意味する接線流濾過を含む。代替的な実施態様では、接線流濾過は存在しない。
【0052】
本明細書で使用される用語「間葉幹細胞」は、骨、軟骨、腱、脂肪、筋肉、及び神経細胞の初期幹細胞を含む各種の非造血組織に分化することができる、骨髄に存在する多能性前駆細胞を意味する。
【0053】
本明細書で使用される用語「微量濾過」は流動体からの粒子の分離を意味し、少なくとも1つの微量濾過装置は、約0.05μmから約5μmの細孔サイズを有する少なくとも1つのフィルターを含む。本発明の特定の実施態様では、細胞及び/または細胞フラグメントは少なくとも1つのある流動体から分離され、これはフィルターとしての微量濾過の機能として細孔に流動体を通過させ、それにより前記細胞/または細胞フラグメントを保持する。
【0054】
本明細書で使用される用語「骨導性」は新しい骨成長を可能にする物質(例えば骨組みとなる物質)の機能を意味する。
【0055】
本明細書で使用される用語「骨原性」は新しい骨組織の増殖を刺激する物質を意味する。
【0056】
本明細書で使用される用語「骨誘導性」は異所的な(つまり非骨性の)身体の部位において骨を形成する機能を意味する。
【0057】
本明細書で使用される用語「透過溶液」はフィルターの細孔サイズよりも小さいためにフィルター膜を通過する粒子及び液体を意味する。
【0058】
本明細書で使用される用語「血漿」は、水、タンパク質、電解質、糖、脂質、代謝廃棄物、アミノ酸、ホルモン、及び/またはビタミンを含む全血の内の淡黄色の流動性成分である血漿を意味する。
【0059】
本明細書で使用される用語「パージ溶液」は、フィルターからの骨髄または血液由来の細胞の流出を容易にする溶液を意味する。特定の実施態様では、前記パージ溶液は等張性の生理食塩溶液またはコロイド性の溶液、例えばアルブミン若しくはデキストラン、またはそれらの混合物を少なくとも部分的に含む。当業者には、前記パージ溶液が、水、電解質、タンパク質、炭化水素、及び/またはゼラチンなどを含んで良いことが受け入れられる。
【0060】
本明細書で使用される用語「骨組みとなる物質」は、骨髄に由来するような骨原性濃縮物と共に骨の欠陥に投与する際に骨の増殖を容易にする物質を意味する。特定の実施態様では、前記骨組みとなる物質は、合成物質、天然物質、またはそれらの双方を少なくとも部分的に含む。更に特定の実施態様では、前記骨組みとなる物質は、新しい骨のマトリックスの定着、骨の増殖、及び/または骨成長を容易にする、可能にする、または促進する生体適合性物質を含む。更なる特定の実施態様では、硫酸カルシウム若しくはリン酸カルシウムのようなセラミック、ポリマー、金属、同種移植骨、自家移植骨、脱ミネラル骨マトリックス、及びそれらの混合物などである。更に特定の実施態様では、前記骨組みとなる物質は、ブロック、ペースト、セメント、粉末、顆粒、パテ、またはゲルなどであって良い。特定の実施態様では、前記骨組みとなる物質は、骨導性、骨誘導性、骨原性、またはそれらの組み合わせである。他の実施態様では、前記骨組みとなる物質は身体内に置かれて経時的に崩壊する。更なる特定の実施態様では、前記骨組みとなる物質は、マトリックス、担体、溶液、固体、ゲル、及びそれらの類似物であると解される。特定の実施態様では、前記骨組みとなる物質は粘性のヒドロゲル、例えばカルボキシメチルセルロース系ヒドロゲルを含む。特定の実施態様では、前記骨組みとなるマトリックスはJAX(登録商標)Advanced Bone Void Filler及び/またはJAX(登録商標)-tcp(リン酸三カルシウム)を含む。更なる特定の実施態様では、前記骨組みとなる物質は多くのJAX(登録商標)toy jack形状の骨移植用置換物を含む。前記骨組みとなる物質は粉塵、粉末、顆粒、チップ、パテ、錠剤、及びそれらの混合物などであって良い。
【0061】
本明細書で使用される用語「第2のフィルター」は細胞を濃縮する過程において第1のフィルターに続くフィルターを意味する。特定の実施態様では、少なくとも1つの更なる工程が第1と第2のフィルターの間に含まれてよく、代替的な実施態様では、少なくとも1つの更なる工程がフィルターの使用を含んで良い。細胞を濃縮する更なる工程は後に続く第2のフィルターを利用して良い。
【0062】
本明細書で使用される用語「血清」は凝固後に残存する(つまり、凝塊の形成がフィブリノーゲン、プロトロンビン、及び血漿に由来する他の凝固因子を除去した後に残存する)動物の流動体の水性の成分を意味する。
【0063】
本明細書で使用される用語「幹細胞」は特定の分化した細胞になる未分化の細胞を意味する。
【0064】
II.本発明
本発明は、生理溶液、例えば骨髄吸引物、血液、若しくはそれらの混合物より細胞濃縮物、例えば骨形成原細胞濃縮物の産生及び/または濃縮に関する新規な方法及び組成物を提供する。前記方法は、好ましくは遠心分離を含まず、少なくとも一回以上の濾過工程を介して生理溶液を処理するシステムを使用する。しかしながら、代替的な実施態様では遠心分離が使用されて良い。
【0065】
ある実施態様では、本発明の方法は一回のみの濾過工程を含む。他の実施態様では、本発明の方法は2回以上の濾過工程を含む。本発明の1つの実施態様では、生理溶液を準備し、それを濾過して血小板、有核細胞、若しくはそれらの両者を単位容量当たりに生理溶液よりも多く含むフィルター保持物と、血漿及び赤血球を含む透過溶液を製造することによる細胞濃縮物を調製する方法が存在する。この濾過工程に続いて、前記フィルター保持物は本来の生理溶液に由来する血小板及び有核細胞の大半を実質的に含む可能性があり、前記透過溶液は本来の生理溶液に由来する血漿及び赤血球の大半を実質的に含む可能性がある。前記フィルター保持物に関しては、血小板及び/または有核細胞が濾過される生理溶液より少なくとも約4倍、5倍、6倍、7倍、若しくはそれより高い濃度で血小板及び/または有核細胞が存在する。つまり、約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、若しくは99%の血小板及び/または有核細胞が、本発明の方法を使用して生理溶液から濾過される。前記透過溶液に関しては約70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、若しくは99%の血漿及び赤血球が生理溶液から濾過され、これは本発明の方法を使用して濾過後の透過溶液に存在するものとして規定されて良い。
【0066】
本発明の1つの実施態様では、生理溶液の一回の濾過工程は、生理溶液から白血球及び血小板を含む有核細胞を濃縮し、前記生理溶液から同時に血漿及び赤血球を除去する。この一回の濾過工程の結果の濃縮物が骨の欠陥に直接的に適用されて、非濾過工程(例えば、生物学的薬剤の添加)を更に使用して処理されて、骨の欠陥に対する適用の前に骨組みとなる物質と組み合わせて、または前記細胞の更なる濃縮及び/若しくは細胞を含む溶液を交換する少なくとも一回の更なる濾過工程にかけて良い。
【0067】
本明細書で提供される開示に基づき、当業者は、本発明の使用により生理溶液から白血球を含む血小板及び有核細胞の濃縮された組成物を得られることを認識する。この使用は、例えば望まれないものとして血液から白血球を除去する多くの既知の従来技術の方法と対照的である。白血球を含むフィルター保持物は、廃棄される組成物とは反対に望ましい組成物である。つまり、本発明は、廃棄する製造物とは反対に、白血球を使用する目的で血液のような生理溶液から回収する。このことは、白血球及び血小板のような増殖因子を放出し、骨の欠陥の投与の際に損傷への細胞移動、細胞増殖、及び骨細胞への分化を誘導する細胞を提供する本発明の特定の実施態様に関する。輸血を必要とするような個体に対する全身的な投与のための組成物であるという最終的な目的を考慮して、白血球を廃棄する既知の血液を処理する方法は、免疫反応を減少または阻害しようとする。対照的に、全身的な投与とは反対に本発明は損傷への局所的な投与、例えば骨の欠陥に対する細胞濃縮物の自己輸血に関する。
【0068】
他の実施態様では、本発明は、任意に遠心分離を必要とせず、有核細胞(間葉幹細胞、結合組織前駆細胞、軟骨前駆細胞、及び/または前骨芽細胞)の数及び血小板の濃度を増大するために、初めて2つの存在する血液を処理する技術(白血球除去濾過及び中空糸濾過)を1つの方法に組み合わせた点で独自性を有する。更に、前記濃縮された生理溶液を骨組みとなる物質、例えば骨導性物質と組み合わせて、本発明は骨組みとなる物質または細胞濃縮物単独と比較して新しい骨の形成を促進する複合BGSを生じさせる。更なる特定の実施態様では、前記細胞濃縮物を粉末または液体のような化合物と混合して、任意に少なくとも1つの凝固開始剤を含む注射可能なパテを形成する。凝固開始剤の例としては、カルシウムイオンを含む溶液(例えば、塩化カルシウム溶液)若しくはトロンビン、またはそれらの双方である。更なる特定の実施態様では、生物学的薬剤が前記細胞濃縮物、前記骨組みとなる物質(物質内、物質上、若しくはそれらの双方)、またはそれらの混合物と骨の欠陥に対する投与の前に組み合わされる。
【0069】
遠心分離を使用して骨原性骨髄調製物としての使用のために幹細胞を濃縮する従来技術における方法が存在するが、本発明は濾過して有核細胞(幹細胞を含む)と血小板の双方を濃縮して骨髄濃縮物を生じさせる。この濾過は手術室に遠心分離機を購入し維持することに関するコストを任意に除去し、他に使用される遠心分離方法よりも骨髄を処理するためのより困難の少ない技術でもある。更に、本発明は、骨髄より骨原性(間葉幹細胞)及び骨誘導性(血小板)因子の双方を濃縮するための方法を提供するが、既知の方法は、両者ではなく、その内の1つまたは他方の濃縮に関する。
【0070】
相対的に、本明細書に開示される本発明はフィルターを使用し、移植不可能な骨組みとなる物質を使用せず、幹細胞と血小板の双方を単離及び濃縮する。本発明は、骨髄の骨原性(間葉幹細胞)及び骨誘導性(血小板)因子の双方を濃縮する方法を提供し、一方には、例えばMuschler(Muschler et al., 2002; U.S. Patent Nos. 5,824,084及び6,049,026)は骨髄より間葉幹細胞のみを濃縮する方法を記載している。骨導性の骨組みとなる物質と組み合わせて、肝細胞と血小板の双方の濃縮された骨髄懸濁物は、幹細胞のみを含む骨髄濃縮物より良好な骨の治癒をもたらす。更に、本発明は、針を介するシリンジ注射によって骨の欠陥に投与可能である濃縮された細胞の懸濁物を生じさせる。このことは、侵襲性が極小である細胞濃縮物の骨の欠陥への投与を可能にするはずである。Muschlerによって記載された発明は注射不可能な骨導性の骨組みとなる物質の使用を必要とし、注射による細胞濃縮物/骨組みとなる物質の骨の欠陥への投与を除外する。他の実施態様では、シリンジ注射のような侵襲性が極小である投与が利用される。
【0071】
かくして、細胞濃縮物、本明細書で提供される細胞濃縮物の新規調製物は、各種の骨の移植に対する適用において骨の治癒を促進するために使用される。キットも提供される。
【0072】
本発明の1つの工程では、前記生理溶液が濃縮に続いて投与されるであろう個体から得られ、二回以上の濾過工程を含む方法の一回目の濾過工程であって良い少なくとも一回の濾過工程が実施され、例えばPDGF、TGF-β、インスリン様増殖因子I(IGF-I)、インスリン様増殖因子II(IGF-II)、及び血管内皮増殖因子(VEGF)、またはそれらの混合物のような骨誘導性の増殖因子を分泌する間葉幹細胞及び白血球のような骨形成原細胞を含む有核細胞及び血小板を選択的に回収または単離する。ある非骨原性成分、例えば赤血球及び血漿はサンプルの容量の大部分を占めるが、単独(または第1の)濾過工程の間に実質的に回収されない。
【0073】
本発明の1つの実施態様では、濃縮される血液または骨髄画分は、好ましくは回収されたと同時に提供される抗凝固剤(典型的にはクエン酸に基づく抗凝固剤)を含む。例えば任意のクエン酸に基づく抗凝固剤が適切である。例えば、標準的なドナーの採血バッグがクエン酸に基づく抗凝固剤を含む。特定の実施態様では、例えば骨髄吸引物が使用される際に抗凝固剤であるヘパリンが添加される。
【0074】
特定の実施態様では、前記生理溶液、例えば血液または骨髄は例えば希釈剤及び/または低張圧の供給源として働く他の溶液のような更なる成分を含む。前記更なる成分が低張液である実施態様では、前記成分を生理溶液に導入すると、それにより生理溶液に含まれる細胞の外側の塩濃度が細胞内の塩濃度より低くなる。かくして、浸透圧の勾配が生じて水が細胞内に流入し、特定の実施態様では、前記フィルターにより良好に保持されるような細胞の膨張を誘導する。実施例における溶液Aと称されて良いこの溶液は、例えば水または等張液(通常)よりも濃度が低い低張圧の塩化ナトリウム溶液(例えば、約0.9%)であって良い。
【0075】
1つ以上のフィルターの構成に依存して、単独または第1のフィルター(ある実施態様では白血球除去フィルター)は外来性の物質を保持するために細胞(間葉幹細胞)のあるタイプの傾向を利用する。前記フィルターを通過する際に、幹細胞のような有核細胞及び血小板がフィルター内の繊維表面に吸着され、赤血球及び血漿は吸着されずに結果としてフィルターを通過する。回収溶液と称されても良いパージ溶液は、前記フィルターを即時に通過して保持されている細胞を除去し、それにより選択的に骨形成原細胞/骨誘導性細胞を回収できる。次いで、これらの細胞は、分析及び/または損傷部位への適用の前に骨組みとなる物質と任意に組み合わせて損傷部位(例えば骨の欠陥)に適用、または更に処理される。ある実施態様では、前記回収溶液は、塩化ナトリウムの濃度に関して標準の生理食塩水と同等の等張性またはより大きい高張性であって良い。
【0076】
他の実施態様では、前記回収された骨形成原細胞/骨誘導性細胞は、血小板の濃度を増大させる第2の濾過工程にかけられる。この工程の濾過装置は、有核細胞、血小板、またはそれらの双方を濃縮する限りは任意の種類のものであって良い。好ましい実施態様では、この工程は第1の工程から得られる溶液を従来技術において既知の中空糸濾過装置にかける。前記装置は懸濁されている内の液体部分から細胞を好ましく分離し、それにより細胞濃度を増大する。より多い治療物質の量は有意により少ない容量で投与して良いことを考慮して、前記方法は個体にとって有利であることを当業者は認める。多くの実施態様では、その様な製造物の濃縮が無く、大きな容量が前記欠陥への適用を禁止している。この第2の工程が複数回実施されて良い。
【0077】
好ましい実施態様では、前記第2の濾過装置はディスクフィルターではなく管状フィルターを含む。更なる特定の実施態様では、前記管状フィルターは内部に中空糸を含む外側の管に収容され、好ましい実施態様では、管状濾過装置を通る流れは管状濾過装置内の管を通過する流れと平行である。特定の実施態様では、管の壁の細孔サイズは約0.05μmから約5μm、より好ましくは約0.1μmから約1μm、最も好ましくは約0.2μmから0.5μmである。
【0078】
本発明のある実施態様では、前記骨形成原細胞濃縮物は骨組みとなる物質と組み合わせて、骨の欠陥に投与される。組成物の完全性を維持して骨の欠陥の治療を提供する限り任意の投与方法が適当である。前記投与方法は、シリンジ、スコップ、スパチュラ、スパーテル、杆、及び管などを使用して良い。他の実施態様では、粘性硬化物質が骨原性濃縮物に、または骨原性濃縮物/骨組みとなる物質の組成物に添加されて、骨の欠陥部位に前記濃縮物または濃縮物/骨組みとなる物質の混合物の保持を容易にする。前記粘稠硬化物質は凝塊因子(カルシウム、トロンビン、またはそれらの混合物)、骨髄吸引物、血液、血小板を豊富に含む血漿、フィブリノーゲン/トロンビン、セメント、スラリー、ペースト、及びそれらの組み合わせなどを含んで良い。特定の実施態様では、セメント、スラリー、またはペースト、例えば硫酸カルシウム及び/またはリン酸カルシウムを含むカルシウム塩を1つ以上含むものが粘性硬化物質として本発明で利用される。
【0079】
生理溶液及び/または最終的な濃縮物と接触する本発明で使用される濾過装置の表面のいずれも、好ましくは前記成分に対して不活性であり、好ましくは実質的に細胞障害性でない。好ましい実施態様では、例えば、有核細胞のような細胞及び/または血小板濃縮物を含むことが望ましい場合に、前記接触表面は実質的に非細胞障害性である。適切な物質にはポリカーボネート、ポリウレタン、アクリル、ABSポリマー、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、混合セルロースエステル、及びポリエステルなどが含まれる。
【0080】
骨の欠陥の治療のための濃縮物の調製のような骨原性濃縮物または他の組成物の滅菌性が維持される必要がある実施態様では、関連の組成物及び/または濃縮物と接触する任意の濾過表面は好ましくは滅菌されており、または容易に滅菌可能である。市販されている濾過ユニットは、ガンマ線照射、エチレンオキシド、ホルマリン、過酸化水素、次亜塩素酸ナトリウム、熱、及びスチームなどのような薬剤で処理することで滅菌されて良い。滅菌濾過ユニットが血液学的な使用のために市販されている。シリンジ及び他の流動体投与システムは滅菌形態で一般的に市販されており、例えばシリンジ及び他の血液処理製品に取り付けるように設計された各種のバルブ及びコックのようなものである。
【0081】
本発明の代替的な実施態様では、本明細書に記載の方法によって骨髄濃縮物が製造されて良い。前記骨髄濃縮物は、骨の欠陥以外の適用、例えば骨髄移植の増強にも利用される。
【0082】
代替的に、血漿または赤血球で無く、必須に血小板及び有核細胞を含むまたは血小板及び有核細胞からなる細胞濃縮物は治療の時点で調製されず、例えば市販されている調製された組成物として得られ、または治療の時点の前に個体から調製して、その後に同一の個体若しくは他の個体に投与される。
【0083】
本発明の特定の実施態様では、本明細書に記載の方法によって調製される細胞濃縮物が存在する。
【0084】
III.特定の実施態様
過去の議論は本明細書に記載の方法の一般的な実施態様に関するものであった。以下のセクションでは前記方法の特定の実施態様を提供するが、当業者は製造物を濃縮する方法の最適化のために以下の工程を調節することが可能であろう。例えば、これらの特定の実施態様は全血からの処理に関して良く、当業者はこの方法を最適化するために有用であろう変形例を認める。
【0085】
本発明の一般的な実施態様では、所望の細胞は有核細胞及び血小板として例示されており、骨髄、全血、またはそれらの混合物のような出発溶液からのそれらの単離を介する単一の工程での濾過方法で所望の細胞を濃縮する。それにより、この濾過工程は所望の細胞から血漿及び赤血球を除去する。所望の細胞を含む最終的な濾過物は、任意に骨組みとなる物質も含む組成物中で骨の欠陥に適用される。この実施態様の典型的な図を図1に示す。
【0086】
1つの特定の実施態様では、前記方法において以下の工程を利用する:
【0087】
工程1、骨髄の獲得:適当な量の骨髄(例えば骨の移植に対する適用には約5cc以上)を等量以下の等張液及び適切な抗凝固剤(例えば、クエン酸に基づく、またはヘパリンに基づく)で満たされたシリンジに吸引して得る。ある実施態様では、前記骨髄は市販されているような他の方法によって得る。他の実施態様では、全血は濃縮の主な供給源であり、次の工程の有核細胞除去フィルターの適用前に適切な容量の抗凝固剤(例えば、クエン酸に基づく、またはヘパリンに基づく)と混合して処理される。
【0088】
工程2、間葉幹細胞のような有核細胞及び血小板を選択的に回収する有核細胞(例えば白血球)除去フィルターを使用する骨髄の濾過(図1):骨髄吸引物は収容装置、例えば小採集バッグ10に注入される。直列の白血球除去フィルター12は採取バッグ10と第2の収容装置、例えば廃棄バッグ14の間に設置される。前記骨髄吸引物は重力によって前記有核細胞除去フィルター12から廃棄バッグ14に送られる。前記有核細胞/血小板画分(間葉幹細胞及び血小板を含む)はフィルター12に保持され、残部の血液成分は通過する。次いで、適切な容量(>約5ml)のパージ溶液(例えばデキストラン40及びアルブミン溶液)を使用する前記フィルターのバックフラッシュにシリンジ18を使用して、第2の滅菌シリンジ16における軟膜細胞の回収を可能にする。
【0089】
工程3、有核細胞及び血小板の濃度を増大するためのパージ溶液に懸濁されている細胞の中空糸フィルターを使用する濾過:前記中空糸濾過装置の操作の図を図2に示す。前記細胞を多く含むパージ溶液を含有するシリンジ(ラベル付きシリンジA20)を例えば第1のポート21のLuer lock 23によって濾過装置22の一端に取り付ける。第2のシリンジ(ラベル付きシリンジB24)は第2のポート25を介して他端に取り付けられ前記保持物を回収する(前記細胞はフィルター30を通過しない)。第三のシリンジ(ラベル付きシリンジC26)は第3のポート27に接続し、取り付けて濾過を受ける(液体成分、つまりフィルターを通過したパージ溶液)。サンプルは2つの対する保持物シリンジ(シリンジA20及びB24)の間を前後に通過し、保持物を循環させて細胞成分と液体成分を分離する。前記液体成分は半透フィルター膜30からシリンジC26に通過する;細胞は前記半透フィルター膜30を通過できずにフィルター32の繊維に回収される。特定の実施態様では、他の手段が適用可能であるが、フィルター30から滅菌シリンジに細胞濃縮物を放出するために以下の工程が実施される:(i)シリンジC26をポート27から除いてポート27に栓をする;(ii)空の保持物シリンジ(A20またはB24のいずれか)を保持物ポート(それぞれ21または25のいずれか)より除く;(iii)パージ溶液(好ましくは等張性生理食塩水)で満たしたシリンジを使用可能な保持物ポート(それぞれ21または25のいずれか)に接続する;及び(iv)フィルター30の開始容量とほぼ等量のパージ溶液をフィルター30に注入して細胞濃縮物を第2の保持物シリンジ(それぞれA20またはB24のいずれか)に放出する。
【0090】
図3は前記有核細胞/血小板画分とパージ溶液とを分画して、それにより細胞が懸濁されている溶液の容量を減少させる濾過工程を示す一般的な実施態様を提示する。更に、第1の濾過工程に由来するパージ溶液と軟膜を含む容器16(ある実施態様では図2に記載のシリンジA20またはB24であって良い)は、前記溶液が濾過される中空糸フィルター22に溶液を送達する。最終的に、前記パージ溶液は、図示しているシリンジのような容器27に存在し、所望の細胞濃縮物は欠陥に対する最終的な投与のための図示しているシリンジのような容器29に送達される。かくして、正味の効果は流動体の単位容量あたりの細胞数の増大である。
【0091】
工程4、細胞濃縮物と骨組みとなる物質の混合:顆粒状の物質のような骨組みとなる物質を有する容器に濃縮された細胞懸濁液を注入する。ある実施態様では、各種の骨組みとなる物質が使用されて良い。前記濃縮物は個々の骨組みとなる物質の顆粒の内部及び/または間の空間を流れる。細胞濃縮物の容量を超える空隙率が使用されて良く、担体物質(担体物質は取り扱いのための剤としての作用、間葉細胞の骨芽細胞系統への分化を増大するための作用、またはそれらの双方の作用を有する)は濃縮物質と混合されて、骨組みとなる物質の顆粒内及び/または顆粒外の空隙を満たす容量と等量になって良い。担体物質の例としては、生体液、例えば凝固した血液、骨髄、血小板を豊富に含む血漿、または合成物質、例えばヒドロゲル、粉末、または顆粒が含まれる。前記細胞濃縮物は、杆、スパチュラ、または他の適切な器具を使用するシリンジ混合または容器内での混合によって前記担体物質と組み合わされて良い。次いで前記混合物を顆粒状の骨組みとなる物質を有する容器に注入して顆粒内及び/または顆粒外の空隙への流入を可能にする。前記細胞濃縮物/骨組みとなる物質の混合物は曝露される欠陥に投与されて良く、シリンジを使用して経皮的に投与されて良い。
【0092】
全血(骨髄吸引物よりも)は過去の実施態様の記載と類似の方法によって処理されるであろう。最終的な濃縮物は血小板を豊富に含み(間葉幹細胞で無く)、過去の実施態様に記載の骨組みとなる物質と混合されるであろう。
【0093】
骨髄と血液の組み合わせも第1の実施態様に記載のように処理されるであろう。最終的な濃縮物は血小板と間葉幹細胞の双方を豊富に含み、第1の実施態様に記載のように骨組みとなる物質と混合されるであろう。
【0094】
特定の実施態様では、骨の欠陥に対する細胞濃縮物/骨組みとなる物質の混合物の投与後に、欠陥及び/または骨若しくは骨組織が試験される。例えば、骨の欠陥での骨の量及び/または質に関して試験されて良い。前記試験は骨密度、強度、骨の形成速度、及び骨の質などのアッセイを含んで良い。任意の適切な試験が利用されて良く、ある実施態様では、組織像、X線像、及び/または機械的試験が使用されて良い。細胞濃縮物/骨組みとなる物質の混合物の投与後に骨で満たされる骨の欠陥の割合がアッセイされて良く、ある実施態様では、周囲の骨と比較される。ある実施態様では、細胞濃縮物または細胞濃縮物/骨組みとなる物質の混合物の投与後にカルシウムの沈着の増大の試験が存在する。
【0095】
特定の実施態様では本明細書に記載の方法を使用して骨髄吸引物が獲得されて良い。骨髄吸引物が他の手段で得られて良いが、特定の骨髄吸引技術を記載する:麻酔の誘導及び皮膚組織の滅菌後に、小さな切開口(約1cm未満)が腸骨稜に沿って作製される。骨髄を吸引する針をこの切開口から腸骨稜の髄内腔に侵入させる。ヘパリン化生理食塩水(約1000ユニット/mL)を含有する10-mLのシリンジに少量の骨髄サンプル(約4mL未満)が吸引されるべきである。骨髄の回収後、前記シリンジを数回反転させて抗凝固剤との混合を確実にする。更なる吸引は、少なくとも約1cm離れた別の皮膚の穴から同一の技術を使用して実施されて良い。
【0096】
特定の実施態様では、血液は本明細書に記載の方法で処理されて得られる。血液が他の方法によって得られても良いが、特定の血液吸引工程を記載する:皮膚組織の滅菌後、小さい針(18-21ゲージ)の輸液セットが使用されて、適切な大きい末梢静脈、典型的には肘前の、またはエファプスの静脈から血液を吸引する。約10:1の比(血液:抗凝固剤)でクエン酸抗凝固剤で満たされた60ccのシリンジに血液を吸引する。血液の回収後に、前記シリンジを数回反転させて、抗凝固剤との混合を確実にする。
【0097】
IV.装置
本発明の装置、または本発明の方法で利用される装置は少なくとも1つの濾過用部品を含んで良い。1つ以上のフィルターが前記装置またはその部品に利用されて良い。膜の表面を越えて保持物が再循環するように「直交流濾過」または「直交流モード」を利用するためにフィルターが設計されて良い。代替的な実施態様では、実質的に接線流濾過を有さない「デッドエンド濾過」または「デッドエンドモード」を利用するためにフィルターが設計される。
【0098】
流動体からの粒子の分離に関する微量濾過が本発明で使用されて良い。少なくとも1つの微量濾過装置は、約0.05μmから約5μmの細孔サイズを有する少なくとも1つのフィルターを含む。本発明の特定の実施態様では、細胞及び/または細胞フラグメントが少なくともある流動体から分離され、ここでフィルターとしての微量濾過の機能によって細孔に流動体を通過させ、それにより細胞及び/または細胞フラグメントを保持する。
【0099】
有核細胞、血小板、またはそれらの双方を濃縮する限り、濾過装置は任意の種類のものであって良い。好ましい実施態様では、装置は懸濁されている内の液体部分から細胞を好ましく分離し、それにより細胞濃度を増大する。
【0100】
好ましい実施態様では、濾過装置はディスクフィルターではなく管状フィルターを含んで良い。更なる特定の実施態様では、前記管状のフィルターは内部に中空糸を含有する外側の管に収容されて、好ましい実施態様では、管状の濾過装置を通過する流れは管状の濾過装置内の管を通過する流れと平行である。特定の実施態様では、前記管の壁の細孔サイズは約0.05μmから約5μm、より好ましくは約0.1μmから約1μm、最も好ましくは約0.2μmから0.5μmである。
【0101】
本発明のある実施態様では、中空糸濾過装置が利用され、市販されているものより得られて良い。特定の実施態様では、前記装置は内部に各々の中空糸の壁がフィルターとして存在する中空の管状の外側のカバーを含む;各々の中空糸は管の長さと平行な方向に置かれる。特定の実施態様では、製造物が装置を流れる方向は、膜を越える流れの向きと垂直の方向である。ある実施態様では、膜フィルターの表面を越える保持物の再循環に関する接線流濾過を一般的に含む。代替的な実施態様では、接線流濾過を含まない。
【0102】
当業者は、関連の組成物及び/または濃縮物のいずれかと接触する任意の濾過表面が好ましく滅菌され、または容易に滅菌可能であることを認識している。市販されている濾過ユニットは、ガンマ線照射、エチレンオキシド、ホルマリン、過酸化水素、または次亜塩素酸ナトリウムのような薬剤を使用する処理によって滅菌されて良い。滅菌濾過ユニットは血液学的な使用のために市販されている。シリンジ及び他の流動体投与システムは、シリンジ及び他の血液処理製品に取り付けるために設計されている各種のバルブ及びコックとして滅菌形態で一般的に市販されている。
【0103】
本明細書に記載の方法で利用される装置は使い捨てであると解されて良いが、例えばガンマ線照射によって滅菌して再使用して良い。フィルター及びシリンジが市販されているものより得られて良い。特定の実施態様では、前記装置はプラスチックである。更なる特定の実施態様では、白血球除去フィルターのフットプリントは直径約12cmと厚さ25mm及び/または中空糸フィルターのフットプリントは約120mmの長さ×20mmである。
【0104】
V.生物学的薬剤のシステムへの添加
本発明の好ましい実施態様では、骨の欠陥に投与される物質(細胞濃縮物、骨組みとなる物質、またはそれらの双方のいずれか)中に生物学的薬剤が含まれる。生物学的薬剤の例としては、抗生剤、増殖因子、フィブリン、骨形成因子、骨増殖剤、化学療法剤、鎮痛剤、ビスホスホネート、ストロンチウム塩、フッ素塩、マグネシウム塩、及びナトリウム塩が含まれる。
【0105】
生物に経口的に高用量の抗生剤を投与するのに対して、本発明は局所的な投与のための組成物の物質に抗生剤が含まれることを可能にする。このことは感染の治療または予防に必要である抗生剤の量を減少する。組成物中の物質による抗生剤の投与は、特に抗生剤がフィブリンマトリックス内に含まれる場合に、抗生剤のより少ない分散も可能にするであろう。代替的に、本発明の骨組みとなる物質が抗生剤でコーティングされて良く、及び/若しくは骨組みとなる物質または濃縮物の中に含まれて良く、またはそれらの双方であって良い。抗生剤の例としては、塩酸テトラサイクリン、バンコマイシン、セファロスポリン、及びトブラマイシンとゲンタマイシンのようなアミノグリコシド、及びキノリン抗生剤、例えばシプロフロキサシンである。
【0106】
骨の増殖を促進する局所的な適用のための物質中に増殖因子が含まれて良い。含まれて良い増殖因子の例としては、血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスホーミング増殖因子β(TGF-β)、インスリン様増殖因子I(IGF-I)、インスリン様増殖因子II(IGF-II)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、β-2-ミクログロブリン(BDGF II)、骨形成タンパク質(BMP)、増殖及び分化因子5(GDF-5)、血管内皮増殖因子(VEGF)、またはそれらの混合物である。本発明の骨組みとなる物質が増殖因子でコーティングされて良く、及び/または骨組みとなる物質若しくは濃縮物の内部に含まれて良く、またはそれらの組み合わせであって良い。
【0107】
増殖因子に付属するまたは結合するタンパク質または薬剤が、本発明において使用されて良い。増殖因子に結合/付属するタンパク質の例としては、フォリスタチン、オステオネクチン、sog、コルジン、dan、cyr61、トロンボスポンジン、タイプIIaコラーゲン、エンドグリン、cp12、nell、crim、acid-1、糖タンパク質、及びα-2HS糖タンパク質が含まれる。
【0108】
ある実施態様では、本発明の組成物は細胞、例えば骨芽細胞、内皮細胞、線維芽細胞、脂肪細胞、筋芽細胞、間葉幹細胞、軟骨細胞、多分化能幹細胞、多能性幹細胞及び全能性幹細胞、または筋骨格前駆細胞が含まれる。
【0109】
骨形成因子は、オステオネクチン、オステオカルシン、及びオステオゲニン(osteogenin)のような多量の成分を実際に含有する、脱ミネラル骨のタンパク質、またはDBM(脱ミネラル骨マトリックス)、及び特にBP(骨タンパク質)若しくはBMP(骨形成タンパク質)と称されるタンパク質を含む骨組織に特異的な活性を有する増殖因子を含んで良い。前記因子が本発明の骨組みとなる物質をコーティングして良く、及び/または骨組みとなる物質、細胞濃縮物、またはそれらの組み合わせの内部に含まれて良い。
【0110】
血管形成因子が骨組みとなる物質の上、または骨組みとなる物質若しくは細胞濃縮物、またはそれらの組み合わせに含まれて良い。血管形成因子の例としては、モノブチリン、ジブチリン、トリブチリン、酪酸、血管内皮増殖因子(VEGF)、エルシミド(erucimide)、チモシンβ4(TB4)、ヘパリン結合タンパク質の合成ペプチドアナログ、ニコチン、ニコチンアミド、スペルミン、血管形成脂質、アスコルビン酸及びその誘導体、並びにそのアナログ及びペプチドフラグメントを含むトロンビンが含まれる。
【0111】
特定の実施態様では、骨増殖剤が本発明の組成物の骨組みとなる物質、細胞濃縮物、またはそれらの双方に含まれて良い。例えば、アミノ酸配列をコードする核酸配列、またはアミノ酸配列自体が本発明の細胞濃縮物及び/または骨組みとなる物質に含まれてよく、そこで前記アミノ酸配列が骨の増殖または骨の治癒を容易にする。例えば、レプチンは骨の形成を阻害することが知られている(Ducy et al., 2000)。レプチン若しくはレプチンオルソログに負に作用する任意の核酸配列若しくはアミノ酸配列、またはレプチン受容体が前記組成物に含まれて良い。特定の例として、本発明の組成物の内部でレプチン核酸配列のアンチセンスが骨の欠陥部位に移されてレプチンのアミノ酸配列の形成を阻害して良く、それによりレプチンの阻害効果を避けて骨の再生または成長を有する可能性がある。他の例はレプチンアンタゴニストまたはレプチンレセプターアンタゴニストである。
【0112】
投与媒体中に含有される核酸ベクターに前記核酸配列が組み込まれて良い。その様な投与媒体の例は、リポソーム、脂質、または細胞である。特定の実施態様では、前記核酸は、投与を容易にするために、担体補助リポフェクション(Subramanian et al., 1999)によって投与される。この方法では、カチオン性ペプチドをM9アミノ酸配列に結合させ、カチオンが負に荷電している核酸に結合する。次いで、M9は核輸送タンパク質、例えばトランスポーチンに結合し、DNA/タンパク質複合体の全体が細胞膜を通過する。
【0113】
アミノ酸配列は投与媒体に導入されて良い。その様な投与媒体の例はリポソームである。アミノ酸配列の投与はタンパク質導入ドメインを利用してよく、例えばHIVウイルスのTATタンパク質である(Schwarze et al., 1999)。
【0114】
好ましい実施態様では、本発明の生物学的薬剤はフィブリンマトリックスに高親和性を有する。
【0115】
特定の実施態様では、本発明の粒子は、その内部はまたはその上に生物学的薬剤を含有し、分解または拡散のいずれかによって粒子より生物学的薬剤が溶出されるであろう。
【0116】
前記生物学的薬剤は鎮痛剤であって良い。その様な鎮痛剤の例は、塩酸リドケイン、塩酸ブピバカイン、及び非ステロイド性抗炎症剤、例えばケトロラクトロメタミンである。
【0117】
本発明の懸濁物質の中に含まれて、または濃縮物及び/若しくは骨組みとなる物質の中または上に含まれて良い他の生物学的薬剤は、化学療法剤、例えばシスプラチン、イフォスファミド、メトトリキセート、及び塩酸ドキソルビシンである。当業者は化学療法剤は骨の悪性疾患に適切であることを認識する。
【0118】
前記濃縮物及び/または骨組みとなる物質に含まれて良い他の生物学的薬剤はビスホスホネートである。ビスホスホネートの例は、アレンドロネート、クロドロネート、エチドロネート、イバンドロネート、(3-アミノ-1-ヒドロキシプロピリデン)-1,1-ビスホスホネート(APD)、ゾレドロネート、ジクロロメチレンビスホスホネート、アミノビスホスホネートゾレンドロネート、及びパミドロネートである。
【0119】
前記生物学的薬剤は、精製された形態、部分的に精製された形態、市販されているもののいずれかであって良く、または好ましい実施態様では組換え体の形態である。前記剤は不純物または汚染物を含まないことが好ましい。
【0120】
VI.併用療法
当業者には、ある実施態様において本明細書で提供される発明が個体の他の治療法と組み合わせて使用されることが明らかである。例えば、骨の欠陥が本発明の方法及び/または組成物を使用して治療される実施態様では、患者は標準的な骨の治療法による処理も受けて良い。骨の欠陥を治療するための標準的な骨の治療法による処理は、手術、更なる骨移植、抗生剤投与、インプラントの使用、及び低強度の超音波または電磁パルスのような外部からの刺激などである。
【0121】
VII.製薬組成物及び投与の経路
本発明の組成物は治療的な投与のための有効量の骨原性物質を有するであろう。ある実施態様では、前記組成物は上述の骨の治療剤である有効量の第2の化合物(第2の剤)と組み合わせて使用される。その様な組成物は、一般的に、製薬学的に許容される担体または水性の媒体中に溶解または分散されるであろう。本明細書で使用される用語「有効」は、骨の増殖特性、分解の防止、骨の強化、骨折の防止、及び骨折の治癒などの提供を意味する。
【0122】
「製薬学的または薬理学的に許容される」という句は、適当に、動物またはヒトに投与される際に、不利な反応、アレルギー性の反応、または他の有害反応を引き起こさない化学物質または組成物を意味する。本明細書で使用される「製薬学的に許容される担体」は、任意及び全ての溶剤、分散媒体、コーティング、抗生剤及び抗菌剤、並びに等張性及び吸収遅延剤などが含まれる。製薬学的な活性物質のためのその様な媒体及び剤の使用は従来技術においてよく知られている。任意の従来の媒体または剤が前記活性成分と不適合性である場合を除いて、治療用組成物中におけるそれの使用が意図される。追加の活性成分、例えば他の骨治療剤が前記組成物に含まれても良い。
【0123】
本発明の組成物は骨の欠陥に対する投与に適切な形態で有利に投与される。前記組成物の形態は液性の溶液または懸濁液のような注射可能な組成物であって良いが、注射前の液性の溶液または懸濁液に適切な個体形態も好ましい可能性がある。他の実施態様では、注射可能でない様式で前記組成物が適用されて良い。例えば、器具、例えばスコップ、スパーテル、スパチュラ、杆、スプーン、シリンジ、ピペット、鉗子、計量スプーン、または任意のその様な医学的に承認されている投与媒体を使用して、細胞濃縮物単独の適用または骨組みとなる物質との混合物を適用する。
【0124】
本発明の特定の実施態様では、所望の細胞の濃縮物を含む溶液はリン酸バッファー、デキストロース、塩、デキストラン40、デキストラン70、またはそれらの混合物若しくは組み合わせを含む。他の製薬学的に許容される担体は水溶液、非毒性の賦形剤、例えば塩、保存剤、及びバッファーなどを含む。非水性の溶剤の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、及び注射可能な有機酸エステル、例えばセイロリエート(theyloleate)である。水性の担体は、水、アルコール性/水性溶液、生理食塩水溶液、非経口の媒体、例えば塩化ナトリウム、リンガー液などを含む。保存剤は、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、及び不活性ガスを含むが、特定の実施態様では、前記濃縮物は治療の時点で濃縮された直後に使用される。医薬品の中の各種の成分のpH及び正確な濃度はよく知られているパラメータに従って調節される。
【0125】
骨の治療に必須な物質及び試薬の全てが共にキットに集められて良い。前記キットの構成が1つ以上の液性の溶液である際には、前記液性溶液は好ましく水溶液であり、特に好ましくは滅菌水溶液である。前記キットに、生理溶液を回収する装置、少なくとも1つのフィルター及び/若しくはフィルター装置、骨組みとなる物質、細胞濃縮物と骨組みとなる物質を組み合わせる器具及び/若しくは台、並びに/またはそれらの組み合わせが存在して良い。
【0126】
本発明のキットは、典型的に、小容器を市販のために密閉する手段も含むであろう。例えば注入または吹き込み成型されたプラスチックの容器に所望の小容器が保持される。容器の数またはタイプに関わらず、本発明のキットは、最終的な複合体組成物の動物の体内に対する注入/投与または置換を補助する器具を含んでも、またはそれらにパッケージされても良い。その様な器具は、スコップ、スパーテル、スパチュラ、杵、スプーン、シリンジ、ピペット、鉗子、計量スプーン、または任意のその様な医学的に承認されている投与媒体であって良い。
【0127】
前記濃縮物または濃縮物/骨組みとなる物質は溶剤または分散媒体、例えば血液、血漿、水、糖、塩、または適切なそれらの混合物を含んでも良い。微生物の作用の防止は、各種の抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール、及びそれらの類似物によってもたらされて良い。
【0128】
VIII.キット
本発明のある実施態様では、例えば本明細書で記載の方法を実施するため、及び/または本明細書に記載の組成物を製造するためのキットが提供される。特定の実施態様では、これらのキットは骨の欠陥の治療に利用される。ある特定の実施態様では、それらの双方が適切な容器に収容される第1の濾過装置及び第2の濾過装置を含む細胞濃縮物を調製するためのキットが存在する。前記第1の濾過装置は有核細胞濾過装置であって良く、及び/または前記第2の濾過装置は微量濾過装置であり、例えば、中空糸濾過装置である。
【0129】
前記キットは適切な容器に収容される骨組みとなる物質を更に含んで良い。前記キットは適切な容器に収容される生物学的薬剤を更に含んで良い。生物学的薬剤の例としては、増殖因子、抗生剤、ストロンチウム塩、フッ素塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、骨形成因子、血管形成因子、化学療法剤、鎮痛剤、ビスホスホネート、増殖因子結合/付属タンパク質、細胞、骨増殖剤、またはそれらの混合物が含まれる。特定の実施態様では、前記増殖因子は、血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスホーミング増殖因子β(TGF-β)、インスリン関連増殖因子I(IGF-I)、インスリン関連増殖因子II(IGF-II)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、β-2-ミクログロブリン(BDGF II)、神経増殖因子(NGF)、上皮増殖因子(EGF)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、骨形成タンパク質(BMP)、及びそれらの混合物からなる群より選択される。更なる特定の実施態様では、前記抗生剤、塩酸テトラサイクリン、バンコマイシン、セファロスポリン、キノリン、アミノグリコシド、及びそれらの混合物からなる群より選択される。特定の実施態様では、前記キノリンはシプロフロキサシンである。特定の実施態様では、前記アミノグリコシドはトブラマイシンまたはゲンタマイシンである。
【0130】
他の実施態様では、適切な容器に収容される多くの細胞(有核細胞、血小板、またはそれらの双方)を含む骨の欠陥を治療するためのキットが存在する。その様なキットは、適切な容器に収容される骨組みとなる物質、及び/または適切な容器に収容される生物学的薬剤を含んで良い。
【0131】
キットは本明細書に記載の方法によって得られる細胞濃縮物の調製のための装置を含んで良い。本発明のキットは、本明細書に記載の任意の方法を実施するのに適切な任意の装置を少なくとも含んで良い。
【0132】
本明細書で提供されるキットは単回使用のための使い捨てキットであると解されて良い。
【実施例】
【0133】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施態様を示すために含まれる。以下の実施例に開示される技術が、本発明を実施して良好に機能する、本発明者によって明らかにされた技術を表すことは当業者に認められるべきであり、その実施のための好ましい態様を構成すると解されて良い。しかしながら、当業者は、本明細書の開示に鑑みて、開示されている特定の実施態様に多くの変形が作製されて良く、本発明の精神及び範囲を逸脱すること無く同様または類似の結果が得られることを認めるべきである。
【0134】
(実施例1)
生理溶液の二回濾過
骨髄吸引物における間葉幹細胞のような有核細胞及び血小板の濃縮におけるフィルター装置の有効性を決定するために、in vitroでの試験が実施されるが、ある実施態様では、血液または血液混合物及び骨髄が利用される。例えば骨髄の用量は25mLであり、動物のドナー(例えばヒツジ)から入手する。各サンプルは分けられ、サンプルの半分は処理せず、半分を本明細書に記載の濾過装置で処理する。未処理のサンプルの容量(V0)及び処理後のサンプルの容量(V1)を測定する。未処理及び処理後のサンプルの各々に関して、有核細胞数、間葉幹細胞数、及び血小板数を血球計数板及びフローサイトメトリーによって決定する。更に、骨芽細胞系統に分化する間葉幹細胞の濃度を定量するために、未処理の骨髄由来の細胞と細胞濃縮物を骨原性の媒体において培養し、骨芽細胞のマーカー(例えばアルカリホスファターゼ)でアッセイした。有核細胞数、血小板数、及びアルカリホスファターゼ活性をサンプル容量(V0またはV1)で基準化して、有核細胞、間葉幹細胞、及び血小板の濃度の測定を実施する。骨髄吸引物の濾過は未処理の骨髄に比べて、間葉幹細胞及び血小板の有意な保持(好ましくは60%より多い)と容量の優位な減少(好ましくは80%より多く)を生じるべきである。このことは、未処理の骨髄と比較して細胞濃度の約3倍以上の増大を生じるべきである。
【0135】
in vitroでの骨髄の濃縮におけるフィルター装置の有効性の提示に鑑みて、動物モデル(例えばヒツジ)における濃縮された骨髄懸濁物による骨の治癒の促進を決定するために移植試験を実施する。間葉幹細胞及び血小板の濃度を増大するフィルター装置で自己由来の骨髄濃縮物を処理する。骨導性の骨組みとなる物質、及び必要な場合は担体物質と濃縮された骨髄懸濁物を組み合わせて、重大なサイズの欠陥(例えば何もせずにいると自然に治癒しない欠陥)に移植される。濃縮された骨髄吸引物+骨組みとなる物質の群を未処理の骨髄吸引物+骨組みとなる物質の群と骨の治癒に関して比較する。従来技術における標準的な手法によってX線像で、機械的に、及び/または組織学的に骨の治癒を測定する。前記濃縮された骨髄吸引物の群は、未処理の骨髄吸引物群と比較して優れた骨の治癒を好ましく示す。
【0136】
(実施例2)
典型的なフィルターの構成の記載
本発明における典型的なフィルターの構成は以下のようであって良い:
【0137】
1.白血球除去フィルターのみ(図4参照);
【0138】
2.白血球除去フィルター+中空糸フィルター(直交流モード)(図4,5,6参照);
【0139】
3.白血球除去フィルター+中空糸フィルター(デッドエンドモード)(図4,7,8参照);及び/または
【0140】
4.上記の3つの構成のいずれかと脂肪除去フィルターの使用(図9)。
【0141】
図4では、生理溶液から骨形成原細胞(つまり、血小板及び有核細胞)を選択的に回収するための単独の(または以下に記載の幾つかの実施態様のような第1の)フィルター(例えば白血球除去タイプのフィルター)の操作方法を図示する。充填工程では、骨形成原細胞と非骨形成原細胞の双方、及び任意に抗凝固剤を含む生理溶液を採取バッグ10に注入する。濾過工程では、前記生理溶液を前記採取バッグ10から白血球除去フィルター12に、例えば自然送りによって通過させる。フィルターを通過した後に、細胞、例えば有核細胞、血小板、またはそれらの混合物が保持され、生理溶液の残部とその構成成分(例えば赤血球)は廃棄バッグ14に流出する。バックフラッシュ工程では、各々採取バッグ10と廃棄バッグ14に対するバルブ11と13を閉める。各々シリンジ9と19に対するバルブ15と17を開ける。回収工程では、シリンジ19からの回収溶液がバルブ17を通過して流れて骨形成原細胞をシリンジ9に押し進める際に、骨形成原細胞がフィルター12よりバックフラッシュされる。シリンジ9における回収物は回収された細胞を含み、ある実施態様では、任意に前記細胞は骨組みとなる物質と組み合わされ、更には処理されずに骨の欠陥に適用される。代替的な実施態様では、送出シリンジ9として参照されて良いシリンジ9における細胞は前記方法において後に続く工程のための送出物として参照される。
【0142】
図5は、例えば、図4で第1のフィルター12より回収される骨形成原細胞(つまり、血小板及び有核細胞)を濃縮するための第2のフィルター、例えば中空糸フィルターの操作方法を図示する。骨形成原細胞を含むシリンジ、例えば図4の典型的なシリンジ9を直交流モードで操作される中空糸フィルター30につなげる。直交流濾過では、送流は送出シリンジ9と例えば保持シリンジ36の間を中空糸フィルター30の膜の接線方向に再循環し、膜を越えて異なる圧力を確立する。このことが幾つかの粒子の膜の通過を誘導する。残存する粒子は膜を越えて流れ続ける。適当な膜の細孔サイズ(例えば約0.2から0.5μm)を使用すると、細胞ではなく、回収溶液が中空糸フィルター30のフィルター膜を通過できる。図6は、第2のフィルターの操作に由来する濃縮骨形成原細胞懸濁物を示す図である。直交流濾過は懸濁されている細胞から回収溶液の部分を分画し、それにより保持シリンジ36における細胞の濃度を増大させる。
【0143】
図7は、第1のフィルターから回収される骨形成原細胞(すなわち、血小板及び有核細胞)を濃縮するための、例えば中空糸フィルター30のような第2のフィルターの操作を図示する。骨形成原細胞を含む典型的なシリンジ、例えば図4におけるシリンジ9は、デッドエンドモード(保持シリンジのポート34を塞ぐことで達成される)で操作される中空糸フィルター30につながれる。直交流濾過とは異なり、デッドエンド濾過は典型的な送出シリンジ9と保持シリンジの間の膜の接線方向への送流の再循環に関わらない。前送出シリンジからの圧力が膜を越えて異なる圧力を確立する。このことが幾つかの粒子の膜の通過を引き起こす。適当な膜の細孔サイズ(例えば約0.2から0.5μm)を使用すると、細胞ではなく回収溶液がフィルター膜から中空糸フィルター30に通過することが可能である。図8は、デッドエンドモードにおける第2のフィルターの操作に由来する骨形成原細胞懸濁物の濃縮を典型的に図示する。デッドエンド濾過は懸濁された細胞から回収溶液の部分を分画して、それにより送出シリンジ9に残存する細胞の濃度を増大させる。
【0144】
(実施例3)
細胞濃縮物の特徴の記載
本発明の特定の実施態様では、最終的な細胞濃縮物は以下の特性の少なくとも1つを有する必要がある:1)単位容量あたりの有核細胞が出発物質である生理溶液における細胞よりも多い;2)単位容量あたりの血小板が出発物質である生理溶液における血小板よりも多い;及び/または3)血小板が活性化した状態で、増殖因子の濃度が等量の出発物質である生理溶液よりも大きい。増殖因子の例は、血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスホーミング増殖因子β(TGF-β)、血管内皮増殖因子(VEGF)、上皮増殖因子、及びインスリン様増殖因子(IGF)である。
【0145】
特定の実施態様では、前記細胞濃縮物を得る方法及び/または前記細胞濃縮物自体は以下の特質を有して良い:1)基準血中濃度の少なくとも約6倍の白血球濃度、2)バックフラッシュ溶液における実質的に非外来性動物由来またはヒト由来成分(代替的な実施態様では、例えばヒト血清アルブミンのような外来性の動物由来またはヒト由来の成分が添加される);3)凝固開始剤における実質的に非外来性の動物由来またはヒト由来の成分;及び/または4)フィルターは血小板の約25%未満を活性化すべきである(Babbush et al., 2003)。
【0146】
他の実施態様では、前記細胞濃縮物を得る方法及び/または前記細胞濃縮物自体は、より好ましく以下の特質を有する:1)単独の(または第1の)フィルターが最小で約60mLであり、最大で約120mLの血液を処理する;2)血液を少なくとも1つの抗凝固剤と混合する;3)回収溶液が生物適合性及び/または非発熱性の成分である;4)濾過工程が約10分以下である;5)フィルターが血液から少なくとも約70%の血小板を回収する;6)フィルターが基準の生理溶液(例えば血液または骨髄濃縮物)の値と比較して少なくとも約6倍に血小板を濃縮する;7)血小板濃縮物が凝固開始のために十分な凝固因子を含む(典型的な凝固因子には、フィブリノーゲン、ファクターV、ファクターVII、ファクターVIII、ファクターIX、ファクターX、ファクターXI、ファクターXII、ファクターXIII、プレカリクレン、プロトロンビン、組織因子、ヴォン・ヴィレブランド因子(vWF)(タンパク質は前記方法の間に観察されて良く、例えばフィブリノーゲン濃度はELISAによって測定される));8)血小板濃縮物は凝固開始剤の添加後約5分以内に凝固する;9)最終的な塊の容量としては約5から10mLが含まれる;及び/または10)凝固すると、増殖因子(例えばPDGF、TGF-β、VEGF、EGF、及びIGF)の濃度が等量または実質的に等量の凝固させた血液の濃度の少なくとも約6倍を含む。
【0147】
本発明の特定の実施態様では、本発明で利用される物質は従来技術における政府の規制する基準を満たし、例えばFDA認可である。
【0148】
(実施例4)
細胞濃縮物の特性の測定方法
有核細胞(白血球)及び血小板の数(Wintrobe's Clinical Hematology, 10th ed.参照)
典型的な手段を使用して、それらの双方が従来技術においてよく知られている手動の手段及び/または自動の血液学的な分析器によって白血球及び血小板が計数されて良い。特に特定の容量を含有する計数チャンバーから構成される血球計算板でサンプルを適当に希釈して手動の計数が実施される。次いで、例えば顕微鏡によって細胞を計数して良い。
【0149】
自動の血液学的な分析器は分析の精度と速度を増大させ、手動の計数よりも好ましい。自動計数器の2つの典型的な主なタイプが、白血球及び血小板を数えるために使用されて良い:開口度インピーダンス計数器及び光学的方法の計数器。開口度インピーダンス計数器には、例えばCoulter (Hialeah, FL)、Sysmex (Baxter Diagnostics, Waukengan, IL)、及び幾つかのCell-Dyne計測器(Abbott Diagnostics, Santa Clara, CA)が含まれる。光学的方法の計数器には、例えばTechnicon (Bayer Diagnostics, Kent, WA)及び幾つかのCell-Dyn計測器が含まれる。
【0150】
細胞の計数は、出発物質である生理溶液と最終的な処理後の細胞濃縮物に関して決定される。
【0151】
増殖因子の定量
典型的な実施態様では、増殖因子の濃度を定量するために酵素免疫測定法(ELISA)が使用される。増殖因子の濃度を、出発物質である生理溶液及び血小板を活性化した最終的な処理後の細胞濃縮物に関して決定する。適当な血小板活性化剤、例えばトロンビン、塩化カルシウム溶液、アデノシン二リン酸(ADP)、またはそれらの組み合わせが血小板を活性化させるのに使用されて良い。血小板を活性化させ、増殖因子を放出するのに十分な時間(例えば約1時間未満)後に、例えば市販のELISAキットを使用して増殖因子の濃度を定量する。
【0152】
(実施例5)
生理溶液からの脂肪の除去方法
本発明のある実施態様では、更なる工程または手段、例えばフィルターが生理溶液からの脂肪、例えば粒子(脂肪細胞を含んで良い)の除去のための設計に含まれる。前記脂肪は細胞または非細胞の形態であって良い。かくして、当業者は、これが脂肪細胞、現実に非細胞である凝固された脂肪、またはそれらの双方を意味すると認識する。生理溶液は、大量の脂肪を実質的に除去(ある実施態様では排除)するために、この工程または手段、例えば本明細書で脂肪除去フィルターとして参照される典型的なフィルターを通過する。脂肪の除去は、前記方法において後に続くフィルターを生理的な流動体が通過するのに、より速い流速とより良好な骨形成原細胞の保持を生じさせるであろう。好ましい実施態様では、十分に脂肪が除去されてフィルターの閉塞、遮断、目詰まり、及び類似の事態が存在しない。当業者は、脂肪または脂肪細胞の完全な除去が望ましいが、濾過が達成可能である限り必要ではないことを認める。
【0153】
血液より微細凝集塊を除去するために臨床的に使用されている市販のフィルターが本願には適切であって良い。例えば、SQ40SJKL(Pall Corp., Port Washington, NY)及びLipiGuard(Pall Corp., Port Washington, NY)のような標準の輸血フィルターが含まれるが、それらに限らない。
【0154】
図9は、骨形成原細胞濃縮物を調製するために使用される装置への脂肪除去フィルター8の組込みを図示する。前記生理溶液はシリンジ6を介して典型的な脂肪除去フィルター8部分から採取バッグ10に通過する。次いで脂肪粒子の量が減少された流動体を図4及び9に示すように白血球除去フィルター12を通して処理する。必要な場合は、次いで白血球除去フィルター12から回収される細胞濃縮物を直交流モード(図5及び6)またはデッドエンドモード(図7及び8)のいずれかにおいて中空糸フィルター30を通して処理する。
【0155】
(実施例6)
未成熟ニュージーランドシロウサギにおける骨髄吸引物(BMA)濾過
2羽の骨格的に未成熟なニュージーランドシロウサギよりBMAを得て、本発明の典型的なフィルターを通して処理し、有核細胞(ある実施態様では、前骨芽細胞のような未分化の細胞を含む細胞集団)の濃度を増大させる。この試験は前記フィルターが特定の時間フレーム(約15分未満)で標的とする範囲内(約6から10倍)で未成熟ニュージーランドシロウサギ由来のBMAを濃縮することが可能であったことを示した。
【0156】
方法と原料
血液及び骨髄吸引物(BMA)を3羽の骨格的に未成熟なニュージーランドシロウサギより得た。各ウサギは処理時に2月齢であり、約1.4kgの重量であった。前記ウサギはBMAを得る前にいずれの医薬またはステロイドでも処理されていなかった。50mg/kgのケタミン及び10mg/kgのキシラジンの筋肉内投与によって麻酔を誘導した。約2mLの血液を各ウサギの大動脈から得て、0.3mLのヘパリン化生理食塩水と混合した。各ウサギより得た血液の容量を表1に記載する。骨髄を各ウサギの近位脛骨より両側的に吸引した。脛骨の前近位骨幹端の医療面(medical aspect)に0.5から1cmの切り口を作製した。18gの針を穏やかに回転させて皮質骨に穴を開けて、骨髄腔に侵入する。穴を開ける間に最初の針が詰まった場合には、前記針を新しいものに交換して良い。シリンジに骨髄が流れ始めるまでピストンを引いて陰圧にする;次いで圧力が減少し、骨髄を約10秒間採取する。各脛骨に関して、2から3.5mLのBMAを18gの針を使用して0.5mLのヘパリン化生理食塩水(1000単位/mL)で満たされた10ccの使い捨てのシリンジに吸引する。前記シリンジを取り外して、数回反転させて完全な混合を確実にして、次いでBMAを滅菌の目盛付きプラスチックチューブに移した。各ウサギに由来するBMAの容量を表2に記載する。
【0157】
各サンプルにおける有核細胞の最初の数を2%酢酸溶液における赤血球の溶解によって決定した。100μLの吸引物を900μLの酢酸に混合した。最終的な細胞懸濁物の一部を血球計算板の格子内に注入して200×の倍率で複合顕微鏡(BX60、Olympus Optical Co., Ltd., Japan)計数した。有核細胞の濃度を以下のように計算した。
【0158】
N=C×SF×D酢酸
【0159】
式中、N=有核細胞濃度;SF=血球計算板の格子の倍率=104;及びD酢酸=酢酸の希釈度=10。各サンプルに関して少なくとも二回繰り返して計数を実施した。
【0160】
最初の有核細胞の数の決定の後に、各ウサギに由来する4mLのBMAをためて、併せて12mLの容量にした。次いで、ためたBMAサンプルを図5、6、及び10に図示されるような典型的な濾過装置を通した。図10では、凝集物フィルター7が、脂肪粒子を含むある実施態様では脂肪粒子である大きい粒子の物質を除去して良い。
【0161】
この特定の実施態様では、骨形成原細胞を保持するための白血球除去フィルター、及び任意に保持した細胞を濃縮するための中空糸フィルターを利用して処理する少なくとも1つの工程を有するシステムを含む。前記白血球除去フィルター(P/N B-1462G;L/N 312700)及び回収溶液(L/N SLS051303)はPall Medical, Inc.(Port Washington, NY)によって製造された。前記中空糸フィルター(P/N X12E-100-20N;L/N DH157/N)はSpectrum Laboratories, Inc.(Rancho Dominguez, CA)によって作製された。ACS処理細胞懸濁物の有核細胞濃度を以下の段落の記載のように決定した。
【0162】
結果
血液、処理前のBMA、及び処理後のBMAの有核細胞の数の平均値は6.0×106、20.1×106、及び131×106細胞/ml(各々、表1、2、3)である。血球計算板における細胞の典型的な視野を図11に示す。処理前のBMAの有核細胞数は血液の約3.5倍であった(Holdrinet et al., 1980)。このことは骨髄細胞が前記吸引物から回収されることを示し;完全に末梢血液からなるBMAは血液と似た有核細胞数であろう。3羽のドナーであるウサギからためた12mLのBMAは約5分間ACSプロトタイプを使用して処理した。最終的な容量は0.6mLであり、容量における20倍の減少を表した。濾過後のサンプルの細胞濃度は処理前のBMAの約6.5倍であった。容量における20倍の減少が細胞濃度における6.5倍の増加を生じさせることから、濾過プロトタイプの細胞回収効率は33%であった。
【0163】
この試験はプロトタイプのフィルターが、標的とする範囲(約6から10倍)及び時間フレーム(約15分未満)内で骨格的に未成熟なニュージーランドシロウサギ由来のBMAを濃縮できることを示した。ウサギにおける骨髄の細胞充実度及び脂肪組成の年齢に関連する変化が既知であることから(Kita, et al., 1987; Bigelow 及び Tavassoli, 1984)、代替的な実施態様では本発明は骨格的に成熟したウサギ由来のBMAにおける有核細胞を濃縮する濾過を提供する。
【0164】
表1.個々のウサギに由来する血液サンプルの容量及び有核細胞数。
【0165】
【表1】

【0166】
表2.個々のウサギの未処理の骨髄吸引物(BMA)の容量及び有核細胞数。
【0167】
【表2】

【0168】
表3.濾過処理後の骨髄吸引物の容量及び有核細胞数。4mlの骨髄を3羽のウサギの各々から得て、濾過システムを使用して処理した。
【0169】
【表3】

【0170】
(実施例7)
血小板の活性化及び細胞濃縮物の凝固の方法
血小板を活性化し、凝固を誘導するために、血小板活性化剤(例えば塩化カルシウム溶液若しくはトロンビン、またはそれらの組み合わせ)を細胞濃縮物に添加して良い。前記血小板活性化剤の細胞濃縮物への添加は、好ましい実施態様では、より高い増殖因子の濃度(増大される血小板の活性化のため)及びより良好な取り扱いの特性(凝固のため)を誘導するであろう。
【0171】
前記血小板活性化剤は、急速な血小板の活性化(30分未満)及び凝固を誘導するために適当な比で細胞濃縮物に添加されるべきである。例えば、前記活性化剤がCaCl2/トロンビン(100単位/ml)溶液である際には、1:10の活性化剤:細胞濃縮物の比が使用される。
【0172】
各血液のドナーのために調製される細胞濃縮物の一部をガラスビーカーに加えて、適当な血小板活性化剤の添加によって凝塊を形成する。前記混合は適当な時間で血餅退縮を生じさせる(少なくとも約30分)。次いで前記ビーカーの内容物を遠心管に移し、約30分間、約1000gで遠心分離する。典型的な実施態様では、上清の増殖因子濃度を市販の酵素免疫測定法(ELISA)キットによって定量する。参考として、この実験は以下:(i)各ドナーに由来する未処理の血液サンプル;及び/または(ii)血小板活性化剤が添加されない細胞濃縮物の一部のために繰り返される。
【0173】
(実施例8)
単一のフィルターを使用するヒト血液由来の血小板を豊富に含む濃縮物(PRC)の調製
健康なヒトのドナーより全血を得て、本発明の典型的なフィルターを通して処理し、血小板及び血小板由来増殖因子の濃度において少なくとも増大を表した。この試験は、単一のフィルター(例えば、白血球除去フィルター)を使用するヒト血液の処理が未処理の血液で認められる基準値を超えて血小板及び増殖因子を濃縮することが可能であることを示した。
【0174】
図12に評価されるフィルターを図示する。各プロトタイプは2つの標準的な150cc採血バッグ、白血球除去フィルター、及びシリンジの結合のための2つのポートを含む。フィルターを評価するために、全血の単位(各単位は450ml)を健康なヒトのボランティアから50mlの抗凝固剤である、クエン酸デキストロース、化学式A(ACD-A)を含有する血液バッグに回収した。60ml分取して60mlシリンジに移した。次いでシリンジの内容物を10mlの血小板保持溶液A(注入するための水)を含む血液バッグに注入した。ある場合には、120mlの抗凝固化された血液を20mlの溶液Aを含むバッグに注入して、前記フィルターが血液の二回分の容量を効率的に処理することが可能であるか決定した。希釈された血液サンプルを含む血液バッグを血小板回収フィルターにつなげた(Purecell PL, Pall Medical, Inc., Port Washington, NY)。濾過の高さ(採取バッグ内の血液のラインのトップと廃棄バッグへの入り口点との間の垂直距離)を12.5インチに調節した。次いで希釈された血液サンプルを室温で濾過した。各サンプルの濾過時間を記録した。濾過の完了後に、前記フィルターを7mlの血小板回収溶液B(5%生理食塩水溶液)及び13ccの空気で満たされたシリンジを使用してバックフラッシュした。フィルターの内容物を20ccのシリンジ内にバックフラッシュした。回収された細胞懸濁物をシリンジから15mlの遠心管に移した。回収された血小板の総容量を遠心管の目盛が付された印を使用して測定した。
【0175】
各ドナーに関して、Cell Dyn Hematology Analyzer (Abbott Labs, IL)を使用して回収された細胞濃縮物及び全血サンプルのために血小板濃度を測定した。PDGF-AB、PDGF-β1、及びVEGF-AのためのELISA(Quantikine, R&D Systems, Minneapolis, MN)を回収された懸濁物、回収された懸濁物+10% CaCl2/トロンビン(5000単位/ml)、及び全血において実施した。平均値における有意な差が95%の信頼水準でANOVAによって決定された。
【0176】
濾過時間は、60mlのサンプル(n=20)に関しては10から15分、120mlのサンプルに関しては45から90分の範囲であった(n=9)。120mlのサンプルの流速は、ほぼ最大容量満たされた廃棄バッグからの背圧によって遅くされる。回収された細胞懸濁物の終容量(双方の開始容量ともに)は9から10mlの範囲であり、平均9.5mlであった。
【0177】
平均血小板回収率は、60mlと120mlの血液サンプルの双方で約65%であり、2つの群の間に有意な差は無かった(図13)。平均血小板濃度因子は、全血と比較して60ml及び120mlのサンプル各々に関して4.1±0.4倍及び8.3±1.2倍であった(p<0.05)。
【0178】
全血及び血小板濃縮物におけるPDGF-AB、TGF-β1、及びVEGF-Aの平均濃度を図14から16に各々示す(n=15)。前記フィルターによって製造される細胞濃縮物は、全血と比較して、PDGF、TGF-β、及びVEGFの濃度の各々において16倍、25倍、及び14倍の増加を示した。塩化カルシウム/トロンビンを使用して細胞濃縮物を活性化した際に、濃度因子がPDGF及びTGF-βの各々に関して26倍及び34倍まで増加した(双方の場合ともにp<0.05)。塩化カルシウム/トロンビンを使用して活性化すると、VEGF濃度因子は14倍から3倍まで下がる。特定の実施態様では、これはVEGFに結合して、おそらくELISAのエピトープをマスクするフィブリンの明らかな能力と関連する。
【0179】
この試験は、本発明の典型的なフィルターが全血より血小板が豊富である濃縮物を簡易的に調製するために有用であることを示した。濾過の過程は10から15分かかり、血小板を4倍豊富に有する最終的な9.5mlの製造物を製造した。更に、PDGF-AB、TGF-β1、及びVEGF-Aの濃度は全血と比較して血小板濃縮物において有意により高い値であった。
【0180】
本明細書で挙げられるいずれの特許及び刊行物も、本発明に関連する当業者の示唆の程度である。各個別の刊行物を具体的及び個別に示唆して、参照により包含するのと同程度にいずれの特許及び刊行物も本明細書においてその全体における参照によって包含する。
【0181】
本発明及びその利点は詳細に記載しているが、各種の変形例、置換例、及び代替例が添付の特許明細の範囲によって規定される本発明の精神及び範囲を逸脱すること無く、ここで作製されて良いことが理解されるべきである。更に、本願の範囲は、本明細書に記載される過程、機会製造、物質の組成、手段、方法、及び工程の特定の実施態様に対して制限されることを意図しない。当業者が本発明の開示より容易に理解するように、本明細書に記載される相当する実施態様と実質的に同一の機能を実施するまたは実質的に同一な結果を達成する、現在存在するまたは後に開発される過程、機械、製造、物質の組成、手段、方法、または工程が本発明に従って利用されて良い。従って、添付の特許請求の範囲には、その様な方法、機械、製造、物質の組成、手段、方法、または工程がそれらの範囲に含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0182】
【図1】図1は、生理溶液から有核細胞(間葉幹細胞を含む)及び/または血小板を選択的に単離するための白血球除去フィルターを使用する骨髄吸引物の濾過を典型的に図示する。
【図2】図2は、中空糸濾過装置の典型的な手による操作を図示する。
【図3】図3は、細胞の濃度を増大するための中空糸フィルターを使用する単離された有核細胞及び/または血小板の濾過を図示する。
【図4A】図4は、生理溶液から骨形成原細胞(すなわち、血小板及び有核細胞)を選択的に回収するための第1のフィルター(白血球除去タイプのフィルター)の操作(充填)を典型的に図示する。
【図4B】図4は、生理溶液から骨形成原細胞(すなわち、血小板及び有核細胞)を選択的に回収するための第1のフィルター(白血球除去タイプのフィルター)の操作(フィルター)を典型的に図示する。
【図4C】図4は、生理溶液から骨形成原細胞(すなわち、血小板及び有核細胞)を選択的に回収するための第1のフィルター(白血球除去タイプのフィルター)の操作(バックフラッシュ)を典型的に図示する。
【図4D】図4は、生理溶液から骨形成原細胞(すなわち、血小板及び有核細胞)を選択的に回収するための第1のフィルター(白血球除去タイプのフィルター)の操作(回収)を典型的に図示する。
【図5】図5は、第1のフィルターから回収された骨形成原細胞(すなわち、血小板及び有核細胞)を濃縮するための第2のフィルター(中空糸フィルター)の操作を典型的に図示する。回収された骨形成原細胞を含有するシリンジを直交流モードで操作される中空糸フィルターに接続する。直交流濾過では、送流が送出シリンジと保持シリンジとの間で膜の接線方向に再循環して、膜の越えて異なる圧力を確立している。このことは、粒子の幾つかの膜の通過を誘導する。残部の粒子は膜を越えて流れ続ける。適当な膜の細孔サイズを使用すると(0.2から0.5μm)、細胞ではなく、回収溶液が中空糸フィルターのフィルター膜を通過することが可能である。
【図6】図6は、第2のフィルターの操作に由来する骨形成原細胞懸濁物の濃縮を典型的に図示する。直交流濾過は懸諾された細胞から回収溶液の部分を分画し、それにより保持シリンジにおける細胞の濃度を増大する。
【図7】図7は、第1のフィルターより回収された骨形成原細胞(すなわち、血小板及び有核細胞)を濃縮するための第2のフィルター(中空糸フィルター)の操作を典型的に図示する。回収された骨形成原細胞を含有するシリンジを中空糸フィルターに接続して、デッドエンドモードで操作する(保持シリンジのポートをキャップすることによって達成される)。直交流濾過とは異なり、デッドエンド濾過は、送出シリンジと保持シリンジの間で膜の接線方向に再循環する送流の再循環を含まない。前送出シリンジからの圧力が膜を越えて異なる圧力を確立する。これが幾つかの粒子の膜の通過を誘導する。適当な膜の細孔サイズを使用すると(0.2から0.5μm)、細胞ではなく、回収溶液が中空糸フィルターのフィルター膜を通過することが可能である。
【図8】図8は、デッドエンドモードにおける第2のフィルターの操作に由来する骨形成原細胞懸濁物の濃縮を典型的に図示する。デッドエンド濾過は懸諾された細胞から回収溶液の部分を分画し、それにより送出シリンジに残存する細胞の濃度を増大する。
【図9A】図9は、生理溶液中の脂肪粒子成分を減少するための脂肪除去フィルター、及び前記生理溶液から骨形成原細胞(すなわち、血小板及び有核細胞)を選択的に回収する白血球除去フィルターの操作(接続)を典型的に図示する。
【図9B】図9は、生理溶液中の脂肪粒子成分を減少するための脂肪除去フィルター、及び前記生理溶液から骨形成原細胞(すなわち、血小板及び有核細胞)を選択的に回収する白血球除去フィルターの操作(充填)を典型的に図示する。
【図9C】図9は、生理溶液中の脂肪粒子成分を減少するための脂肪除去フィルター、及び前記生理溶液から骨形成原細胞(すなわち、血小板及び有核細胞)を選択的に回収する白血球除去フィルターの操作(フィルター)を典型的に図示する。
【図9D】図9は、生理溶液中の脂肪粒子成分を減少するための脂肪除去フィルター、及び前記生理溶液から骨形成原細胞(すなわち、血小板及び有核細胞)を選択的に回収する白血球除去フィルターの操作(バックフラッシュ)を典型的に図示する。
【図9E】図9は、生理溶液中の脂肪粒子成分を減少するための脂肪除去フィルター、及び前記生理溶液から骨形成原細胞(すなわち、血小板及び有核細胞)を選択的に回収する白血球除去フィルターの操作(回収)を典型的に図示する。
【図10A】図10は、前記濾過方法が細胞及び/または非細胞性の脂肪除去フィルターのような凝集体フィルターを利用する特定の実施態様(接続)を図示する。
【図10B】図10は、前記濾過方法が細胞及び/または非細胞性の脂肪除去フィルターのような凝集体フィルターを利用する特定の実施態様(充填)を図示する。
【図10C】図10は、前記濾過方法が細胞及び/または非細胞性の脂肪除去フィルターのような凝集体フィルターを利用する特定の実施態様(フィルター)を図示する。
【図10D】図10は、前記濾過方法が細胞及び/または非細胞性の脂肪除去フィルターのような凝集体フィルターを利用する特定の実施態様(バックフラッシュ)を図示する。
【図10E】図10は、前記濾過方法が細胞及び/または非細胞性の脂肪除去フィルターのような凝集体フィルターを利用する特定の実施態様(回収)を図示する。
【図11】図11は、血液、処理前のBMA、及び処理後のBMAの有核細胞計数の視野を表す。
【図12】図12は、血液から血小板を豊富に含む濃縮物を調製するために使用される典型的なフィルターの構成を図示する。
【図13】図13は、2つの典型的な出発物質である血液の容量に関する血小板の回収率を図示する。
【図14】図14は、全血及び回収された血小板におけるPDGF-ABの濃度を示す。
【図15】図15は、全血及び回収された血小板におけるTGF-β1の濃度を示す。
【図16】図16は、全血及び回収された血小板におけるVEGFの濃度を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
事前に遠心分離していない生理溶液を準備する工程;
前記生理溶液をフィルターにかけて、血小板、有核細胞、またはそれらの双方を単位容量あたりに生理溶液よりも多く含むフィルター保持物と、血漿及び赤血球を含む透過溶液を製造する工程;及び
前記フィルターよりフィルター保持物を回収する工程
を含む細胞濃縮物を調製する方法。
【請求項2】
前記生理溶液が骨髄吸引物、血液、またはそれらの混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有核細胞が白血球、幹細胞、結合組織前駆細胞、前骨芽細胞、軟骨前駆細胞、またはそれらの混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記幹細胞が間葉幹細胞、造血幹細胞、またはそれらの双方である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記準備工程が更なる溶液と前記生理溶液を組み合わせる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記更なる溶液が水である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記更なる溶液が低張液である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記更なる溶液が塩化ナトリウムを含む低張液である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記フィルターより回収されるフィルター保持物を個体における骨の欠陥に投与する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
骨組みとなる物質を前記フィルターより回収されるフィルター保持物に混合して骨組みとなる物質/フィルター保持物の混合物を製造する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記骨組みとなる物質/フィルター保持物の混合物を個体の骨の欠陥に投与する工程を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記骨組みとなる物質がブロック、ペースト、粉塵、セメント、粉末、顆粒、パテ、液体、ゲル、固体、またはそれらの混合物を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記骨組みとなる物質がセラミック、ポリマー、金属、同種移植骨、自家移植骨、脱ミネラル骨マトリックス、またはそれらの混合物を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記骨組みとなる物質が生分解性である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記骨組みとなる物質が骨導性、骨原性、骨誘導性、またはそれらの組み合わせである、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記骨組みとなる物質が合成物質、天然物質、またはそれらの組み合わせを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
生物学的薬剤を前記フィルターより回収されるフィルター保持物、前記骨組みとなる物質、またはそれらの組み合わせと混合する工程を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記骨組みとなる物質に混合される生物学的薬剤が、前記骨組みとなる物質上、物質中、またはそれらの双方に含まれる生物学的薬剤として更に規定される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
凝固開始剤を第2の製造物、前記骨組みとなる物質、またはそれらの双方と混合する工程を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記フィルターより回収されるフィルター保持物を少なくとも1つの更なる処理工程にかける、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
生理溶液を準備する工程;
前記生理溶液を第一の濾過装置にかけて、前記生理溶液より有核細胞、血小板、またはそれらの双方を単離し、第1の製造物を製造する工程;及び
前記第1の製造物を第2の濾過装置にかけて第2の製造物を製造する工程
を含む、単位容量当たりに生理溶液よりも多くの有核細胞、血小板、またはそれらの双方を含む細胞濃縮物を調製する方法。
【請求項22】
前記第1の濾過装置が有核細胞濾過装置である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記有核細胞濾過装置が白血球除去濾過装置として更に規定される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の濾過装置が中空糸濾過装置として更に規定される、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記装置が約0.05μmと約5μmの間の細孔サイズを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記装置が約0.2μmと約0.5μmの間の細孔サイズを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
遠心分離の工程を含まない、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記生理溶液が骨髄吸引物、血液、またはそれらの混合物を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記有核細胞が白血球、幹細胞、結合組織前駆細胞、前骨芽細胞、軟骨前駆細胞、またはそれらの混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記幹細胞が間葉幹細胞、造血幹細胞、またはそれらの双方である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記準備工程が更なる溶液を前記生理溶液と組み合わせる工程を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項32】
前記更なる溶液が水である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記更なる溶液が低張液である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記更なる溶液が塩化ナトリウムを含む低張液である、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記第2の製造物を個体の骨の欠陥に投与する工程を更に含む請求項21に記載の方法。
【請求項36】
骨組みとなる物質を前記第2の製造物に混合して骨組みとなる物質/第2の製造物の混合物を製造する工程を更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項37】
前記骨組みとなる物質/第2の製造物の混合物を個体の骨の欠陥に投与する工程を更に含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記骨組みとなる物質がブロック、ペースト、粉塵、セメント、粉末、顆粒、パテ、液体、ゲル、固体、またはそれらの混合物を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記骨組みとなる物質がセラミック、ポリマー、金属、同種移植骨、自家移植骨、脱ミネラル骨マトリックス、またはそれらの混合物を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記骨組みとなる物質が生分解性である、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
前記骨組みとなる物質が骨導性、骨原性、骨誘導性、またはそれらの組み合わせである、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記骨組みとなる物質が合成物質、天然物質、またはそれらの組み合わせを含む請求項36に記載の方法。
【請求項43】
生物学的薬剤を前記第2の製造物、前記骨組みとなる物質、またはそれらの組み合わせと混合する工程を更に含む、請求項36に記載の方法。
【請求項44】
前記骨組みとなる物質に混合される生物学的薬剤が前記骨組みとなる物質上、物質中、またはそれらの双方に含まれる生物学的薬剤として更に規定される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
凝固開始剤を前記第2の製造物、前記骨組みとなる物質、またはそれらの双方と混合する工程を更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項46】
前記生理溶液を脂肪除去工程にかける工程を更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項47】
前記脂肪の形態が細胞または非細胞である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記脂肪除去工程が前記生理溶液を脂肪細胞除去フィルターにかける工程を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
請求項21の方法によって製造される第2の製造物。
【請求項50】
生理溶液を準備する工程;
前記生理溶液を有核細胞濾過装置にかけ、前記生理溶液より有核細胞、血小板、またはそれらの双方を単離して第1の製造物を製造する工程;及び
前記第1の製造物を他の濾過装置にかけ、有核細胞、血小板、またはそれらの双方を単位容量あたりに生理溶液よりも多く含む第2の製造物を製造する工程
を含む、生理溶液由来の有核細胞濃度及び/または血小板濃度を増大する方法。
【請求項51】
遠心分離工程を含まない、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記生理溶液が骨髄吸引物、血液、またはそれらの混合物を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記準備工程が更なる溶液と前記生理溶液を組み合わせる工程を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記更なる溶液が水である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記更なる溶液が低張液である、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記更なる溶液が塩化ナトリウムを含む低張液である、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
前記骨髄吸引物を準備する工程が、個体から骨髄を第1のシリンジに吸引して骨髄吸引物を製造する工程として更に規定される、請求項50に記載の方法。
【請求項58】
前記第1のシリンジが抗凝固剤、等張液、またはそれらの双方を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記骨髄吸引物を有核細胞濾過装置にかける工程が:
前記骨髄吸引物を第1の収容装置に導入する工程であって、前記第1の収容装置は、血漿と赤血球を通過させ、有核細胞、血小板、またはそれらの双方の通過を阻害する白血球除去フィルターに直列に接続されており、前記白血球除去フィルターは第2の収容装置に直列に接続されている工程;
パージ溶液を前記フィルターに導入してパージ溶液/有核細胞/血小板の混合物を製造する工程;及び
前記フィルターより前記パージ溶液/有核細胞/血小板の混合物を回収する工程
として更に規定される、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記第1の製造物を濾過装置にかける工程が、前記第1の製造物を中空糸濾過装置にかける工程を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項61】
前記第1の製造物を濾過装置にかける工程が、前記第1の製造物を、フィルターを含む濾過装置にかける工程であって、前記第1の製造物が前記濾過装置を通って流れる方向が前記第1の製造物の膜を越える流れと平行でない工程を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項62】
前記第1の製造物を濾過装置にかける工程が、前記第1の製造物を、フィルターを含む濾過装置にかける工程であって、前記第1の製造物が前記濾過装置を通って流れる方向が前記第1の製造物のフィルターを越える流れと平行である工程を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項63】
前記第1の製造物の再循環が実質的に存在しない、請求項50に記載の方法。
【請求項64】
前記有核細胞濾過装置がフィルターを含み、実質的に大多数の第1の製造物が前記フィルターを一度通過する、請求項50に記載の方法。
【請求項65】
前記装置がフィルターを含み、実質的に大多数の第1の製造物が前記フィルターを2度以上通過する、請求項61に記載の方法。
【請求項66】
前記血液を準備する工程が、血液を個体より第1のシリンジに吸引して血液吸引物を製造する工程として更に規定される、請求項52に記載の方法。
【請求項67】
前記第1のシリンジが抗凝固剤、等張液、またはそれらの双方を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記血液吸引物を有核細胞濾過装置にかける工程が:
前記血液吸引物を第1の収容装置に導入する工程であって、前記第1の収容装置は、血漿と赤血球を通過させ、有核細胞、血小板、またはそれらの双方の通過を阻害する白血球除去フィルターに直列に接続されており、前記白血球除去フィルターは第2の収容装置に直列に接続されている工程;
パージ溶液を前記フィルターに導入してパージ溶液/有核細胞/血小板の混合物を製造する工程;及び
前記フィルターから前記パージ溶液/有核細胞/血小板の混合物を回収する工程
として更に規定される、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記骨髄吸引物/血液の混合物を準備する工程が、骨髄及び血液を個体から第1のシリンジに吸引して骨髄吸引物/血液吸引物を製造する工程として更に規定される、請求項52に記載の方法。
【請求項70】
前記第1のシリンジが抗凝固剤、等張液、またはそれらの双方を含む、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記骨髄吸引物/血液吸引物を有核細胞濾過装置にかける工程が:
前記骨髄吸引物/血液吸引物を第1の収容装置に導入する工程であって、前記第1の収容装置は、血漿と赤血球を通過させ、有核細胞、血小板、またはそれらの双方の通過を阻害する白血球除去フィルターに直列に接続されており、前記白血球除去フィルターは第2の収容装置に直列に接続されている工程;
パージ溶液を前記フィルターに導入してパージ溶液/有核細胞/血小板の混合物を製造する工程;及び
前記フィルターから前記パージ溶液/有核細胞/血小板の混合物を回収する工程
として更に規定される、請求項52に記載の方法。
【請求項72】
前記生理溶液を脂肪除去工程にかける工程を更に含む、請求項50に記載の方法。
【請求項73】
前記脂肪除去工程が前記生理溶液を脂肪除去フィルターにかける工程を含む、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
有核細胞、血小板、またはそれらの双方を含む生理溶液を得る工程;
前記生理溶液を有核細胞濾過装置にかけて有核細胞、血小板、またはそれらの双方を単離して第1の製造物を製造する工程;
前記第1の製造物を中空糸濾過装置にかけて第2の製造物を製造する工程であって、前記第2の製造物は単位容量あたりに前記生理溶液よりも多くの有核細胞、血小板、またはそれらの双方を含む工程;及び
前記第2の製造物を個体における骨の欠陥に投与する工程
を含む個体における骨の欠陥を治療する方法。
【請求項75】
遠心分離の工程を含まない、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記骨の欠陥が破壊、骨折、間隙、病気の骨、骨の欠損、脆性骨、弱骨、骨の損傷、または骨の変性を含む、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
骨組みとなる物質を前記第2の製造物と混合する工程を更に含む、請求項74に記載の方法。
【請求項78】
前記生理溶液が、血液、骨髄吸引物、またはそれらの混合物である、請求項74に記載の方法。
【請求項79】
前記生理溶液が前記個体から得られる、請求項74に記載の方法。
【請求項80】
病院施設または医療提供施設において実施される、請求項74に記載の方法。
【請求項81】
更なる骨の欠陥の治療を前記個体に提供することを更に含む、請求項74に記載の方法。
【請求項82】
前記更なる骨の欠陥の治療が骨折の修復、手術、骨の除去、インプラントの提供、外部からの刺激、またはそれらの組み合わせを含む、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記有核細胞が、幹細胞、結合組織前駆細胞、前骨芽細胞、軟骨前駆細胞、またはそれらの混合物を含む、請求項74に記載の方法。
【請求項84】
前記幹細胞が、間葉幹細胞、造血幹細胞、またはそれらの混合物である、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記第2の製造物を個体に対して投与する工程が、前記第2の濃縮されている製造物を直接的に骨の欠陥に適用する工程を含む、請求項74に記載の方法。
【請求項86】
前記適用がスコップ、スパーテル、シリンジ、杵、管、またはスパチュラを使用して実施される、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
生物学的薬剤を前記第2の製造物、前記骨組みとなる物質、またはそれらの組み合わせと混合する工程を更に含む、請求項74に記載の方法。
【請求項88】
前記骨組みとなる物質と混合される生物学的薬剤が、前記骨組みとなる物質上、物質中、またはそれらの双方に含まれる生物学的薬剤として更に規定される、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記生理溶液を脂肪除去工程にかける工程を更に含む、請求項74に記載の方法。
【請求項90】
前記脂肪除去工程が前記生理溶液を脂肪除去フィルターにかける工程を含む、請求項74に記載の方法。
【請求項91】
生理溶液を2つの濾過工程にかける工程を含む、前記生理溶液から骨形成原細胞を調製する方法。
【請求項92】
遠心分離の工程を含まない、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
第1の濾過装置と第2の濾過装置を含み、その双方が適切な容器に収容される、細胞濃縮物を調製するためのキット。
【請求項94】
前記第1の濾過装置が有核細胞濾過装置である、請求項93に記載のキット。
【請求項95】
前記第2の濾過装置が微量濾過装置である、請求項93に記載のキット。
【請求項96】
前記微量濾過装置が中空糸濾過装置として更に規定される、請求項95に記載のキット。
【請求項97】
適切な容器に収容される骨組みとなる物質を更に含む、請求項93に記載のキット。
【請求項98】
適切な容器に収容される生物学的薬剤を更に含む、請求項93に記載のキット。
【請求項99】
有核細胞、血小板、またはそれらの双方である、適切な容器に収容される多数の細胞を含む、骨の欠陥を治療するためのキット。
【請求項100】
適切な容器に収容される骨組みとなる物質を更に含む、請求項99に記載のキット。
【請求項101】
適切な容器に収容される生物学的薬剤を更に含む、請求項99に記載のキット。
【請求項102】
事前に遠心分離されていない生理溶液を準備する工程;
前記生理溶液を白血球除去フィルターにかけて、単位容量あたりに前記生理溶液よりも多くの血小板、有核細胞、またはそれらの双方を含むフィルター保持物と、血漿及び赤血球を含む透過溶液を製造する工程;並びに
前記フィルターよりフィルター保持物を回収する工程
を含む、細胞濃縮物を調製する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2007−530691(P2007−530691A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506285(P2007−506285)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/010004
【国際公開番号】WO2005/094914
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(397071355)スミス アンド ネフュー インコーポレーテッド (186)
【出願人】(596064112)ポール・コーポレーション (70)
【氏名又は名称原語表記】Pall Corporation
【住所又は居所原語表記】2200 Northern Boulevard East Hills, New York
【Fターム(参考)】