説明

生理用タンポン

【課題】使用後に取り出す際の不快感を効果的に低減できる生理用タンポンを提供する。
【解決手段】タンポン本体10の最も外側に配置される外膜40と、前記外膜40の内面40bに形成された、潤滑剤を含む機能層50とを備えることにより、使用後に取り出す際の不快感を効果的に低減した生理用タンポンを提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用タンポンに関し、特に、使用感を向上させることができる生理用タンポンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生理用タンポンの使用感を向上させる試みとして、例えば、挿入時の摩擦を低減するために、アプリケータに所定のコーティングを施したものがあった(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特表2005−531345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術においては、アプリケータを介した挿入時の摩擦を低減できるとしても、使用後に、経血を吸収したタンポン本体を取り出す際の不快感を低減するものではなかった。すなわち、従来、例えば、経血の量が少ない場合には、タンポン本体を取り出す際に痛みを伴うことが多かった。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、使用後に取り出す際の不快感を効果的に低減できる生理用タンポンを提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る生理用タンポンは、タンポン本体の最も外側に配置される外膜と、前記外膜の内面に形成された、潤滑剤を含む機能層と、を備えたことを特徴とする。本発明によれば、使用後に取り出す際の不快感を効果的に低減した生理用タンポンを提供することができる。すなわち、例えば、経血の量が少ない場合であっても、タンポン本体を取り出す際の痛みを効果的に低減することができる。
【0006】
また、前記機能層は、前記潤滑剤を含む乾燥組成物を前記内面に塗布することにより形成されていることとしてもよい。こうすれば、潤滑剤を外膜の内面に確実に偏在させることができるとともに、滅菌処理における操作性も好ましいものとすることができる。
【0007】
また、前記潤滑剤は、親水性高分子であることとしてもよい。この場合、前記親水性高分子は、多糖類であることとしてもよい。さらに、この場合、前記多糖類は、ヒアルロン酸であることとしてもよい。こうすれば、外膜の外面の潤滑性を効果的に高めることができる。
【0008】
また、前記機能層は、抗炎症剤をさらに含んでいることとしてもよい。この場合、前記抗炎症剤は、フランス海岸松樹皮抽出物であることとしてもよい。こうすれば、潤滑剤による炎症予防作用と、抗炎症剤による炎症治療作用と、の相乗効果により、膣粘膜の炎症を効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の一実施形態に係る生理用タンポンについて、図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係る生理用タンポンの一例(以下、「タンポン1」という)について、その外観を示す説明図である。また、図2は、タンポン1のタンポン本体10を図1に示すA−A線に沿って切断した断面図の一例である。
【0010】
図1に示すように、タンポン1は、膣腔に挿入され、当該膣腔において経血等の体液(以下、単に「経血」という)を吸収するとともに吸収した経血を保持するタンポン本体10と、使用後のタンポン本体10を膣腔から取り出すための取り出し紐20と、を備えている。
【0011】
取り出し紐20は、使用後のタンポン本体10を膣腔から取り出す際に発生する張力に耐え得る力学的強度をもって成形され、タンポン本体10に接続されている。この取り出し紐20を構成する素材としては、例えば、綿糸や合成樹脂製糸(例えば、ポリエステル等)を好ましく用いることができる。
【0012】
一方、図2に示すように、タンポン本体10は、その内部の大部分を占める吸収体30と、当該吸収体30の外周を覆うように、当該タンポン本体10の最も外側に配置される外膜40と、を有している。
【0013】
吸収体30は、タンポン本体10の主な役割である、経血の吸収及び保持に適した吸収性及び含水性の高い材料から成形されている。すなわち、吸収体30を構成する材料としては、例えば、親水性及び含水性の高い繊維を用いることができ、好ましくは綿、パルプ、レーヨン等のセルロース系繊維を用いることができる。
【0014】
また、吸収体30は、柱状の構造体として成形されている。すなわち、吸収体30は、例えば、複数の綿シートを重ねたシート束を圧縮しながら柱状に折りたたむことにより成形することができる。また、吸収体30は、例えば、綿製の複数の繊維塊を圧縮しながら柱状に集合させることにより成形することもできる。
【0015】
このような吸収体30は、タンポン本体10が膣腔に挿入されると、外膜40を介してタンポン本体10外の経血を吸収して膨張するとともに、吸収した経血をその内部に保持することができる。
【0016】
外膜40は、タンポン本体10が膣腔に挿入される際の摩擦を低減するとともに、タンポン本体10の外表面を潤滑化することにより、タンポン本体10を膣腔から取り出す際の不快感を効果的に低減することをその目的の一つとして設けられている。
【0017】
また、外膜40は、少なくともその外面40a側から内面40b側に向けて、その内部を経血が通過できる透水性の構造体として成形されている。
【0018】
すなわち、外膜40は、少なくともその表面が親水性の繊維から成形される。具体的に、この外膜40を構成する材料としては、例えば、セルロース系繊維等の親水性繊維や、疎水性繊維(ポリエステル繊維やポリプロピレン繊維等)の表面を親水化した修飾繊維、又は親水性繊維と疎水性繊維とを混合した繊維を用いることができる。
【0019】
また、外膜40は、例えば、親水性の繊維からなる不織布、織物、又はメッシュとして吸収体30とは独立して成形される。そして、この外膜40は、吸収体30の先端部分から長手方向に延びる側面を含む外表面に沿って当該吸収体30を包む袋状に配置される。
【0020】
本発明において特徴的な点の一つは、このような外膜40の内面40bに、潤滑剤を含む機能層50が形成されていることである。
【0021】
ここで、外膜40の外面40aは、タンポン本体10が膣腔に挿入される際に、膣粘膜と接触する部分であるが、本発明の発明者らが予備的に検討したところ、例えば、当該外膜40の外面40aに潤滑剤を塗布した場合には、タンポン本体10を膣腔に挿入した際に当該外面40aに過度なべたつきが生じることがあった。
【0022】
このため、例えば、経血が少ない場合には、外膜40の外面40aが膣粘膜に張り付いてしまい、使用後にタンポン本体10を膣腔から取り出す際に、当該外膜40の外面40aと膣粘膜との剥離に伴い、痛みや不快感が生じてしまう。
【0023】
これに対し、本発明に係るタンポン1においては、膣粘膜に直接接触する外膜40の外面40aではなく、当該外膜40の内面40bに、潤滑剤を配置している。すなわち、外膜40を介して潤滑剤を配置している。このため、潤滑剤は、外膜40の外面40aに、過度なべたつきを生じさせることなく、適度な潤滑性を与えることができる。
【0024】
したがって、例えば、経血が少ない場合であっても、タンポン本体10の外周面である外膜40の外面40aが膣粘膜に強固に張り付くことを効果的に防止することができる。この結果、使用後にタンポン本体10を膣腔から取り出す際に生じる痛みや不快感を効果的に低減することができる。
【0025】
潤滑剤としては、タンポン本体10の膣腔への挿入に伴い、外膜40の内面40b側から当該外膜40を介して外面40aの潤滑性を向上させることができるものであれば特に限られず任意のものを用いることができる。
【0026】
すなわち、この潤滑剤としては、生理的又は薬学的に許容され、食品、化粧品、医薬品等に添加して使用することができる親水性及び含水性の高い生体高分子や合成高分子を用いることができ、例えば、水を吸収及び保持して、潤滑性の高い表面を有するゲル状構造を構築するものを好ましく用いることができる。
【0027】
具体的には、ヒアルロン酸等のムコ多糖類や、フコイダン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム等の海藻抽出物、ポリエチレングリコール、シリコーン油等を用いることができ、特に、ヒアルロン酸、ポリエチレングリコール、シリコーン油を好ましく用いることができる。
【0028】
このような潤滑剤を含む機能層50は、例えば、当該潤滑剤を含む粉末や顆粒等の乾燥組成物を外膜40の内面40bに塗布することにより形成することができる。すなわち、この場合、例えば、外膜40の内面40b及びその近傍を構成する繊維の間に、潤滑剤を含む粉末や顆粒を絡ませ、保持させる。
【0029】
乾燥組成物を用いて機能層50を形成する場合には、外膜40の内面40b及び内面40b近傍の外膜40の内部に当該乾燥組成物を留めておくことにより、当該内面40bへの潤滑剤の局所的な保持を確実に行うことができる。また、タンポン1を十分に衛生的なものとするために、当該タンポン1を適切な滅菌方法(例えば、高圧滅菌、エチレンオキサイド滅菌、ガンマ線滅菌等のうちから適宜選択される滅菌方法)によって滅菌処理することができるが、乾燥組成物を用いて機能層50を形成した場合には、当該機能層50を備えたタンポン1を滅菌処理する際の操作性を好ましいものとすることができる。
【0030】
また、機能層50の形成は、乾燥組成物に限られず、例えば、潤滑剤を含むペーストや溶液等の液状組成物を外膜40の内面40bに塗布することによっても形成することができる。この場合、例えば、外膜40の内面40b及びその近傍を構成する繊維の間に、潤滑剤を含むペーストや溶液を局所的に浸み込ませる。
【0031】
なお、吸収体30による経血の吸収を不必要に妨げることを避けるために、潤滑剤を含む機能層50は、タンポン本体10のうち、吸収体30と外膜40との間、特に、外膜40の内面40b及び内面40b近傍にのみ形成することが好ましい。
【0032】
また、機能層50は、潤滑剤に加えて、抗炎症剤をさらに含むこともできる。抗炎症剤としては、膣粘膜における炎症の症状を改善できるものであれば特に限られず任意のものを用いることができる。
【0033】
すなわち、この抗炎症剤としては、医薬品に使用可能なものに限られず、食品や化粧品等の医薬部外品(非医薬品)に使用可能なものを用いることができ、例えば、抗炎症作用を示す天然由来物質又は当該天然由来物質を含む混合組成物(例えば、天然材料の抽出物)を好ましく用いることができる。
【0034】
具体的には、オリゴピン(登録商標)、フラバンジェノール(登録商標)、ピクノジェノール(登録商標)等のフランス海岸松樹皮抽出物、藍(インディゴ)、板藍根(バンランコン)、茵陳蒿(インチンコウ)、グリチルリチン、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、甘草(カンゾウ)、ケルセチン、バラエキス等を用いることができ、特に、経口摂取によっても月経困難症や子宮内膜症等の婦人科系疾患に効果を有することが知られているフランス海岸松樹皮抽出物を好ましく用いることができる。
【0035】
抗炎症剤を含む機能層50は、例えば、抗炎症剤を含む粉末や顆粒等の乾燥組成物、ペーストや溶液等の液状組成物を外膜40の内面40bに塗布することにより形成することができる。
【0036】
また、潤滑剤を含む組成物の塗布と、抗炎症剤を含む組成物の塗布と、を順次行うことにより、当該潤滑剤を含む層と、当該抗炎症剤を含む層と、が積層された機能層50を形成することもできる。この場合、潤滑剤層を抗炎症剤層より外側に配置することができ、逆に、抗炎症剤層を潤滑剤層より外側に配置することもできる。また、潤滑剤と抗炎症剤とを含む混合組成物を外膜40の内面及び内面近傍に保持させることにより機能層50を形成することもできる。
【0037】
また、抗炎症剤は、機能層50に限らず、タンポン本体10の全体又は一部に保持させることができる。すなわち、例えば、抗炎症剤を含む乾燥組成物を吸収体30又は外膜40の表面や内部に埋め込むことにより、また、抗炎症剤を含む液状組成物を吸収体30又は外膜40の表面や内部に浸み込ませることにより、抗炎症剤を含有する吸収体30又は外膜40を作製することができる。
【0038】
タンポン本体10に保持された抗炎症剤は、当該タンポン本体10が膣腔に挿入されている状態において、外膜40の外面40aから膣粘膜に徐放させることができる。したがって、潤滑剤と抗炎症剤とを含むタンポン本体10は、膣粘膜における炎症を効果的に抑制することができる。
【0039】
すなわち、機能層50に含まれる潤滑剤は、外膜40の外面40aの潤滑性を向上させることにより、当該外面40aと膣粘膜との癒着を効果的に防止することができるため、結果的に、従来、使用後に当該癒着が剥離することに伴って発生していた炎症を未然に防ぐことができる。
【0040】
一方、機能層50又はタンポン本体10の他の部分に含まれる抗炎症剤は、外膜40の外面40aから徐放されて、当該外面40aに接する膣粘膜に供給されるため、膣粘膜で起きている局所的な炎症を効果的に沈静化することができる。
【0041】
したがって、タンポン本体10が潤滑剤と抗炎症剤とを含んでいるタンポン1を使用した場合には、潤滑剤による炎症予防作用と、抗炎症剤による炎症治療作用と、の相乗効果により、膣粘膜の炎症を効果的に抑制することができる。
【0042】
図3は、タンポン1のタンポン本体10を図1に示すA−A線に沿って切断した断面図の他の例である。図3に示す例において、タンポン本体10は、柱状の吸収体60から構成されている。
【0043】
この吸収体60は、図2に示した吸収体30と同様の材料で成形され、その径方向に積層された複数の繊維シートを有している。すなわち、吸収体60は、その最も外側に配置される繊維シート部分(以下、「第一の層61」という)と、当該第一の層61の内方に隣接して配置された繊維シート部分(以下、「第二の層62」という)と、を少なくとも有している。
【0044】
そして、このタンポン本体10においては、第一の層61が、図2に示す例における外膜40に相当する。すなわち、吸収体60の一部である第一の層61は、上述の外膜40と同様に透水性を有するとともに、図3に示すように、その内面61bには、上述したような潤滑剤を含む機能層50が形成されている。
【0045】
このように第一の層61と第二の層62との間において、当該第一の層61の内面61bに沿って形成された機能層50は、上述したとおり、タンポン本体10の外周面である当該第一の層61の外面61aに過度なべたつきを生じさせることなく、当該第一の層61を介して、当該外面61aに適度な潤滑性を与えることができる。
【0046】
また、図2に示す例と同様に、タンポン本体10は、機能層50又はその他の部分に抗炎症剤をさらに含むことができ、この場合、機能層50に含まれる潤滑剤による炎症予防作用と、抗炎症剤による炎症治療作用と、の相乗効果により、膣粘膜の炎症を効果的に抑制することができる。
【0047】
図4は、本実施形態に係る生理用タンポンの他の例(以下、「タンポン2」という)について、その外観を示す説明図である。図4に示すように、タンポン2は、上述したようなタンポン本体10及び取り出し紐20と、アプリケータ70と、を備えている。
【0048】
アプリケータ70は、タンポン本体10を収納する外筒部71と、当該タンポン本体10を当該外筒部71から挿入方向(図4に示す矢印Xの指す方向)に押し出すためのピストン部72と、を有している。
【0049】
外筒部71は、合成樹脂等により成形された略円筒状の構造体であり、その外表面には、膣腔への挿入時の抵抗を低減するために適切な円滑化処理が施されている。また、外筒部71の先端部分には、タンポン本体10が挿入方向に通過できる開閉可能な押し出し口73が形成されている。この押し出し口73は、例えば、外筒部71の先端部分において、放射状に延びる複数の切り欠きからなる花弁状に形成することができる。
【0050】
ピストン部72は、外筒部71の内腔に摺動可能に挿入されている。このピストン部72を挿入方向に向けて外筒部71内に押し込むことによって、当該外筒部71の押し出し口73からタンポン本体10を押し出し、当該タンポン本体10を膣腔に挿入することができる。
【0051】
図4に示す例においても、タンポン本体10及び取り出し紐20の構成は上述した例と同様であるため、詳細な説明を省略するが、例えば、当該タンポン本体10が図2に示すような外膜40を有する場合には、当該外膜40の内面40bに形成された機能層50によって、当該外膜40の外面40aに過度なべたつきを生じさせることなく、当該外膜40を介して、当該外面40aに適度な潤滑性を与えることができる。
【0052】
次に、本実施形態に係る生理用タンポンの具体的な実施例について説明する。
【0053】
[実施例]
この実施例では、図4に示したような市販のタンポン(チャームコンパクトaレギュラー、ユニ・チャーム製)(以下、「タンポン基体」という)の一部を使用した。この市販のタンポンは、合成樹脂製のアプリケータと、当該アプリケータ内に収納されたタンポン本体と、を備えていた。
【0054】
タンポン本体は、図2に示したような構造を有していた。すなわち、このタンポン本体は、綿繊維と合成繊維とを含む混合繊維製の繊維構造体である略柱状の吸収体と、当該吸収体の外表面の全域を包む合成繊維製の不織布である外膜と、を有し、当該タンポン本体には、綿製の取り出し紐20が接続されていた。
【0055】
まず、アプリケータからタンポン本体を取り出し、当該タンポン本体の最も外側に配置されていた外膜をハサミで長手方向に切り開いた。次いで、外膜の内面を少しほぐして、当該内面及び当該内面近傍の当該外膜内部の繊維の間に、潤滑剤の乾燥組成物として、食品用のヒアルロン酸の粉末(MacronanTM−PF、Kolon Life Science Inc.製)50mgを塗布した。
【0056】
そして、内面及び内面近傍にヒアルロン酸の粉末を保持した外膜を再び吸収体の外表面に沿って配置しなおし、タンポン本体を再構築した。このようにして、タンポン本体の外膜の内面の全域にヒアルロン酸粉末からなる機能層が形成された、図1に示したようなアプリケータを有しないタンポン(以下、「本タンポン」という)を複数作製した。
【0057】
そして、作製した本タンポンをボランティアの健常人3名(以下それぞれ、「被験者A」、「被験者B」、「被験者C」という)に使用してもらい、その使用感についての評価を得た。
【0058】
被験者Aは、生理開始後、2日目、3日目、及び4日目にそれぞれ2回ずつ、合計6つの本タンポンを使用した。被験者Aによれば、本タンポンは、使用後に膣腔から滑らかに取り出すことができ、取り出すときの痛みや抵抗感はなかった。
【0059】
被験者Bは、生理開始後、2日目、3日目、及び4日目にそれぞれ2回ずつ、合計6つの本タンポンを使用した。被験者Bによれば、3日目は経血量が少なかったにもかかわらず、本タンポンを膣腔から抜く時に痛みは感じられなかった。また、4日目には出血がほとんどなかったにもかかわらず、本タンポンは膣腔からスムーズに抜くことができた。
【0060】
すなわち、被験者Bは、経血量が少ない体質であるため、従来のタンポンを使用した場合には、使用後に取り出すときに激しい痛みを伴うことが多かったのに対して、本タンポンを使用した場合にはそのような痛みが感じられず、生理の最終日まで安心して使うことができると感じられた。この結果、被験者Bは、使用期間中は快適に過ごすことができ、本タンポンの使用感は極めて良好であると評価した。また、この被験者Bによれば、本タンポンは、機能層を有しない従来のタンポンに比べて、その吸収力が向上したように感じられた。
【0061】
被験者Cは、生理開始後、2日目、3日目、及び4日目にそれぞれ2回ずつ、合計6つの本タンポンを使用した。被験者Cによれば、3日目は経血量が少なく、4日目には出血がほとんどなかったにもかかわらず、使用期間を通じて、本タンポンを引き抜く際に、本タンポンのタンポン本体が膣粘膜に張り付くような感じはなかった。
【0062】
そして、被験者Cもまた、経血量が少ない体質であるため、従来のタンポンは膣粘膜への張り付きによって痛みを伴うことが多かったのに対して、本タンポンを使用した場合にはそのような痛みが感じられず、快適であった。
【0063】
このように、本タンポンは、外膜の内面に形成された機能層を有することにより、当該外膜を介してタンポン本体の外周面を適切に潤滑化することができ、その結果、膣粘膜を効果的に保護できることが確認された。
【0064】
なお、予備的な検討において、上記市販のタンポンを使用して、タンポン本体の外周面(すなわち、外膜の外面)に上記ヒアルロン酸の粉末を塗布したタンポン(以下、「対照タンポン」という)を作製して、上述の本タンポンの場合と同様に、被験者Aと被験者Cに使用してもらい、その使用感についての評価を得た。その結果、いずれの被験者からも、対照タンポンを使用した場合には、当該タンポン本体を膣腔に挿入することによって、当該外周面にべたつきが生じ、使用後に、当該タンポン本体を取り出す際には痛みを伴い、使用感が悪いという評価が得られた。
【0065】
なお、本発明は、上述の例に示したものに限られない。すなわち、例えば、外膜は、タンポン本体の最も外側に配置される層であれば、図2や図3に示したものに限られず、当該タンポン本体を構成する吸収体の材質や構造に応じた最外層とすることができる。
【0066】
また、図2及び図3に示す例において、機能層50は、外膜40の内面40b及び第一の層61の内面61bの円周方向全域に形成されているが、これに限られず、当該内面40b,61bの円周方向の一部に形成することもできる。すなわち、例えば、機能層50は、図2に示すような外膜40の内面40bの円周方向において、所定の間隔で離隔して複数形成することもできる。
【0067】
また、機能層50は、タンポン本体10の長手方向においても、外膜40の内面40bの全域に形成することができ、又は当該内面40bの一部に形成することもできる。
【0068】
また、図3の例では、吸収体60がその円周方向全域にわたって複数の層を有する場合について説明したが、例えば、繊維シートの束を折り畳んで略円柱状に成形した吸収体においては、その円周方向における一部にのみ複数の層を有することとなる。この場合においても、吸収体の円周方向の一部に配置された複数の層のうち、最も外側に配置された層の内面に潤滑剤を含む機能層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の一実施形態に係る生理用タンポンの一例について、その外観を示す説明図である。
【図2】図1に示すA−A線に沿って切断した生理用タンポンの断面図の一例である。
【図3】図1に示すA−A線に沿って切断した生理用タンポンの断面図の他の例である。
【図4】本発明の一実施形態に係る生理用タンポンの他の例について、その外観を示す説明図である。
【符号の説明】
【0070】
1,2 タンポン、10 タンポン本体、20 取り出し紐、30,60 吸収体、40 外膜、40a 外膜外面、40b 外膜内面、50 機能層、61 第一の層、61a 第一の層の外面、61b 第一の層の内面、62 第二の層、70 アプリケータ、71 外筒部、72 ピストン部、73 押し出し口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンポン本体の最も外側に配置される外膜と、
前記外膜の内面に形成された、潤滑剤を含む機能層と、
を備えた
ことを特徴とする生理用タンポン。
【請求項2】
前記機能層は、前記潤滑剤を含む乾燥組成物を前記内面に塗布することにより形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の生理用タンポン。
【請求項3】
前記潤滑剤は、親水性高分子である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の生理用タンポン。
【請求項4】
前記親水性高分子は、多糖類である
ことを特徴とする請求項3に記載の生理用タンポン。
【請求項5】
前記多糖類は、ヒアルロン酸である
ことを特徴とする請求項4に記載の生理用タンポン。
【請求項6】
前記機能層は、抗炎症剤をさらに含んでいる
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の生理用タンポン。
【請求項7】
前記抗炎症剤は、フランス海岸松樹皮抽出物である
ことを特徴とする請求項6に記載の生理用タンポン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−302088(P2008−302088A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153194(P2007−153194)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(504401709)株式会社ピリオドック (3)
【Fターム(参考)】