説明

生産計画作成装置

【目的】 生産計画の作成に際して、作業者の負担を軽くすると共に、短時間での作成を可能にする生産計画作成装置を提供する。
【構成】 製品の在庫量と1日毎の受注量を入力する入力部1と、発注を決めるための所定量と、発注のときの補充量とを設定する設定部2と、受注量から1日毎の製品の出荷量を決める第1処理と、製品の在庫量と出荷量とから次の日の在庫量を決める第2処理と、在庫量が所定量より少ないと、この日を発注点にすると共に補充量を在庫量に加えて在庫量にする第3処理と、第2,3処理を繰り返して所定期間内の日毎の在庫のシミュレーションをするシミュレーション部3と、発注点に基づいて、製品を生産するための日を決めて、製品の生産計画を作成する生産計画部5とを有する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、製品の生産計画を作成する生産計画作成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】製品の在庫管理にもコンピュータ化が進み、例えば特開平3−154750号公報に示されるように、在庫量の確認や評価を短時間で行うことが可能になっている。製品が多様化して、製品の種類などが多くなると、このコンピュータによる在庫の管理が有効である。つまり、オペレータは、コンピュータを操作することにより、多種類の製品の在庫の状態を短時間で知ることができる。
【0003】このコンピュータによる在庫の管理は、次のようにして行われる。オペレータは、製品の生産計画をあらかじめ作成して、コンピュータに入力する。コンピュータは、この生産計画を基にして入庫状態や出庫状態を把握し、製品の在庫の管理をする。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、先に述べたコンピュータによる在庫の管理では、オペレータが製品の生産計画を作成する。したがって、在庫管理に必要な生産計画の作成に際しては、人手に頼るところが多い。
【0005】特に、製品の種類が多くなると、オペレータの負担が大きくなり、また、生産計画の作成に要する作業時間が長くなる。この結果、製品の迅速な在庫管理ができなくなる。
【0006】この発明の目的は、このような欠点を除き、生産計画の作成に際して、作業者の負担を軽くすると共に、短時間での作成を可能にする生産計画作成装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】その目的を達成するため、請求項1の発明は、製品の単位期間毎の受注量と、製品の在庫量とを入力する入力部と、製品の発注を決めるための所定量と、発注するときの補充量とを設定する設定部と、受注量から単位期間毎の出荷量を決める第1処理と、在庫量と出荷量とから次の単位期間の在庫量を決める第2処理と、単位期間の在庫量が所定量より少ないと、この単位期間を発注点にすると共に、補充量に基づいて算出した入庫量を在庫量に加えて新たな在庫量にする第3処理と、第2処理と第3処理とを繰り返して所定期間内の単位期間毎の在庫の状態のシミュレーションをするシミュレーション部と、シミュレーション部が決めた発注点に基づいて、製品を生産するための単位期間を決めて、製品の生産計画を作成する生産計画部とを有する。
【0008】請求項2の発明は、請求項1の発明に対して、シミュレーション部のシミュレーション結果を修正するための修正入力部と、生産計画部が作成した生産計画を表示する出力部とを有する。
【0009】
【作用】請求項1の発明の発明により、オペレータは、入力部を操作して、製品の単位期間毎の受注量と、製品の在庫量とを入力する。
【0010】オペレータが入力部を操作すると、設定部は、製品の発注を決めるための所定量と、発注するときの補充量とを設定する。
【0011】シミュレーション部は、入力部に入力された受注量から単位期間毎の製品の出荷量を決める第1処理と、入力部に入力された在庫量と、出荷量とから次の単位期間の在庫量を決める第2処理とをする。
【0012】さらに、シミュレーション部は、単位期間の在庫量が所定量より少ないと、この単位期間を発注点にすると共に、補充量を基にして算出した入庫量を在庫量に加えて、新たな在庫量にする第3処理をする。そして、シミュレーション部は、第2処理と第3処理とを繰り返して所定期間内の単位期間毎の在庫の状態のシミュレーションをする。
【0013】生産計画部は、シミュレーション部が決めた発注点に基づいて、所定期間の中で、製品を生産するための単位期間を決めて、製品の生産計画を作成する。
【0014】請求項2の発明では、表示部は、生産計画部が作成した生産計画を表示する。オペレータは、この表示を見て、必要が有れば修正入力部を操作して、シミュレーション結果を修正する。
【0015】
【実施例】次に、この発明の実施例を、図面を用いて説明する。
【0016】図1は、この発明の一実施例を示すブロック図である。この生産計画作成装置は、入力部1と、設定部2と、シミュレーション部3と、修正入力部4と、生産計画部5と、出力部として表示装置6および出力装置7とを備える。
【0017】入力部1は、シミュレーション対象となる品番の製品に係るデータを入力するためのものである。入力部1に入力されるデータとしては、製品の過去の出荷量(出荷実績)、確定受注量、現在庫量がある。
【0018】過去の出荷量は、単位期間として日単位で過去に実際に出荷された量を表す。確定受注量は、実際に受注した製品の量を日単位で表す。また、現在庫量は、製品の現在の在庫の量を表す。
【0019】設定部2は、入力部1に加えられた過去の出荷量を平均して、過去平均出荷量を算出する。
【0020】また、設定部2は、過去の出荷量に基づいて発注点と補充点を設定する。発注点は、製品を発注するかどうかを判断する基準を与え、設定部2は、過去の出荷量を参照して求めた値を発注点の所定量とする。補充点は、発注により生産されて補充される製品の量を与え、設定部2は、過去の出荷量を参照して求めた値を補充点の補充量とする。
【0021】さらに、設定部2は、ロットサイズとリードタイムとを設定する。ロットサイズは、製品の生産の最小単位を示し、設定部2は、実際の生産量を、ロットサイズ×整数の式で算出した量にまるめる。リードタイムは、製品の生産指示が出てから、製品が入庫されるまでの日数を示す。
【0022】シミュレーション部3は、入力部1に加えられた確定受注量および現在庫量と、設定部2が設定する過去平均出荷量、発注点および補充点に基づいて、所定期間内の日毎の在庫量や製品の発注点を調べる。
【0023】つまり、シミュレーション部3は、図2,3に示すように、入力部1に入力された確定受注量から、過去平均出荷量を考慮して、1日毎の製品の出荷予測量を算出する(ステップS1)。また、現在庫量を在庫量とする(ステップS2)。
【0024】シミュレーション部3は、在庫量が所定値より少ないかどうかを調べ(ステップS3)、少ないとこの日を発注点とする(ステップS4)。さらに、補充点の補充量と在庫量との差から、入庫量を決める(ステップS5)。ステップS5の後、ステップS2の在庫量にステップS5の入庫量を加えて、その日の実在庫量とする(ステップS6)。
【0025】また、シミュレーション部3は、ステップS3で在庫量が所定量より多いと、ステップS2の在庫量をその日の実在庫量とする(ステップS7)。
【0026】この後、シミュレーション部3は、実在庫量から出荷予測量を引いた値を、次の日の在庫量とする(ステップS8)。
【0027】ステップS8が終了すると、シミュレーション部3は、次の日が所定期間内かどうかを調べ(ステップS9)、所定期間内であれば、処理をステップS3に戻す。
【0028】シミュレーション部3は、これらの処理で所定期間内の日毎の在庫の状態から発注点を調べる。
【0029】修正入力部4は、生産日や生産する製品の品番などを変えるときに操作される。そして、修正入力部4は、操作に係るデータをシミュレーション部3に送る。
【0030】生産計画部5は、シミュレーション部3のシミュレーションの結果で得られた発注点と、設定部2が設定したリードタイムとから生産日を決めて、生産計画を作成する。
【0031】表示装置6は、生産計画部5が作成した生産計画を表示し、出力装置7は、確定した生産計画を指示書としてプリントアウトする。
【0032】次に、この実施例の動作について説明する。
【0033】生産計画を作成する場合、オペレータは、品番「A」の製品のデータとして、製品の過去の出荷量、確定受注量および現在庫量を、入力部1に入力する。ここでは、所定期間を「12日」とする。このとき入力されるデータでは、例えば現在庫量を「150」とし、確定受注量を、
【表1】


とする。
【0034】設定部2は、入力部1に入力された過去の出荷量の平均から、1日毎の出荷予測量を算出する。ここでは、出荷予測量を「30」とする。
【0035】また、設定部2は、過去の出荷量に基づいて、発注点と補充点とを設定する。ここでは、発注点の所定量を「80」とし、補充点の補充量を「200」とする。
【0036】さらに、設定部2は、ロットサイズとリードタイムとを設定する。ここでは、ロットサイズを「50」とし、リードタイムを「2日」とする。
【0037】入力部1に入力されたデータと、設定部2で設定されたデータとがシミュレーション部3に加えられる。シミュレーション部3は、これらのデータを次のように基礎データとする。
【0038】
【表2】


さらに、シミュレーション部3は、確定受注量を出荷予測量とする。そして、出荷予測量と過去平均出荷量「30」とを比較し、過去平均出荷量「30」の方が大きければ、過去平均出荷量「30」をその日の出荷予測量とする。つまり、シミュレーション部3は、3日目、5日目、6日目、7日目、8日目、11日目、12日目の出荷予測量を「30」に修正する。この結果、シミュレーション部3は、次のような出荷予測量を得る。
【0039】
【表3】


この後、シミュレーション部3は、入力部1に入力された現在庫量を在庫量として、在庫のシミュレーションを開始する。
【0040】1日目では、次の表に示すように、シミュレーション部3は、この日の入庫量が「0」のために、在庫量「150」を実在庫量とする。
【0041】
【表4】


この後、シミュレーション部3は、実在庫量「150」から1日目の出荷予測量「50」を引いて算出した値「100」を、2日目の在庫量とする。
【0042】2日目では、シミュレーション部3は、1日目と同様に、実在庫量「100」と出荷予測量「35」とから、3日目の在庫量を「65」とする。
【0043】3日目では、在庫量「65」が発注点の所定量「80」より少ないので、シミュレーション部3は、3日目を発注点とする。これにより、シミュレーション部3は、この日に製品を入庫する。製品の入庫に際して、所定量「200」から在庫量「65」を引いた値が「135」であるが、ロットサイズを「50」にしているため、入庫量を「150」にまるめる。この入庫量「150」に在庫量「65」を加えた値を実在庫量「215」とし、実在庫量「215」から出荷予測量「30」を引いた値を4日目の在庫量「185」とする。
【0044】シミュレーション部3は、同様にして、4日目から12日目までの在庫量を調べて、発注点を決める。この結果、3日目、8日目、11日目(○印の日)が発注点となる。
【0045】生産計画部5は、シミュレーション部3のシミュレーション結果から、リードタイムの2日を考慮して、次の表に示す生産計画を作成する。つまり、1日目、6日目、9日目(◎印の日)に、「150」、「150」、「250」の数の製品をそれぞれ生産する指示を出す。
【0046】
【表5】


表示装置6は、生産計画部5で作成された生産計画を、図4に示すグラフにしてディスプレイ(図示を省略)に表示する。オペレータは、この表示を見て生産計画の修正をするとき、例えば生産日を変更して生産計画を修正するとき、修正入力部4を操作して値を変更する。
【0047】シミュレーション部3は、修正された値に基づいて、新たなシミュレーションをし、生産計画部5は、このシミュレーション結果から、生産計画を再び作成する。
【0048】この計画が確定すると、出力装置7は、確定した生産計画を指示書としてプリントアウトする。
【0049】このようにして、過去の出荷量、確定受注量および現在庫量から、シミュレーション部3が在庫シミュレーションを行い、生産計画部5がこのシミュレーション結果を用いて、生産計画を作成するので、生産計画を自動的に作成することが可能になる。これにより、オペレータの負担を従来に比べて軽くすることができる。
【0050】また、作成した生産計画を表示装置6に表示し、かつ、手動で生産計画を修正できる。これにより、オペレータは、製品の品切れが発生する日や、発注点を下回る日を予測でき、例えば9日目、10日目の大量受注に際しても、迅速な対応が可能になる。つまり、表示装置6の表示により、オペレータの計画修正を支援することができる。
【0051】また、シミュレーション部3は、過去の製品の出荷量で設定された過去平均出荷量と製品の確定受注量とを用いて、シミュレーションを行い、生産計画部5は、このシミュレーション結果から生産計画を作成するので、作成した生産計画の精度を高めることができる。
【0052】なお、この実施例では、1つの品番の製品について生産計画を作成したが、特にこれに限定されない。例えば、複数の品番の製品について生産計画を作成し、品番毎の生産計画を同時に表示装置6に表示してもよい。
【0053】
【発明の効果】以上、説明したように、請求項1の発明により、シミュレーション部の在庫シミュレーション結果を用いて、生産計画部が生産計画を作成するので、製品の生産計画を自動的に作成することができる。
【0054】また、入力部に入力する受注量および在庫量として、過去のデータを用いれば、作成した生産計画の精度を向上することができる。
【0055】請求項2の発明により、出力部は、生産計画部が作成した生産計画を表示し、オペレータは、修正入力部を操作して、必要に応じて生産計画を修正するので、オペレータによる生産計画の修正を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例を示すブロック図である。
【図2】シミュレーション部の処理の様子を示すフローチャートである。
【図3】シミュレーション部の処理の様子を示すフローチャートである。
【図4】生産計画の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
1 入力部
2 設定部
3 シミュレーション部
5 生産計画部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 製品の単位期間毎の受注量と、製品の在庫量とを入力する入力部と、製品の発注を決めるための所定量と、発注するときの補充量とを設定する設定部と、受注量から単位期間毎の出荷量を決める第1処理と、在庫量と出荷量とから次の単位期間の在庫量を決める第2処理と、単位期間の在庫量が所定量より少ないと、この単位期間を発注点にすると共に、補充量に基づいて算出した入庫量を在庫量に加えて新たな在庫量にする第3処理と、第2処理と第3処理とを繰り返して所定期間内の単位期間毎の在庫の状態のシミュレーションをするシミュレーション部と、シミュレーション部が決めた発注点に基づいて、製品を生産するための単位期間を決めて、製品の生産計画を作成する生産計画部とを有する生産計画作成装置。
【請求項2】 シミュレーション部のシミュレーション結果を修正するための修正入力部と、生産計画部が作成した生産計画を表示する出力部とを有することを特徴とする請求項1記載の生産計画作成装置。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【公開番号】特開平8−55152
【公開日】平成8年(1996)2月27日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−188331
【出願日】平成6年(1994)8月10日
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)