説明

生細胞又は生物学的活性因子を封入し送達するための、細胞適合性、注射可能、かつ自己ゲル化性のキトサン溶液の組成物

【課題】細胞適合性の自己ゲル化性の架橋されたヒドロゲルを使用した組織修復のための組成物及び方法の提供。
【解決手段】自己ゲル化性の架橋されたヒドロゲルは、生存可能細胞又は生理活性物質を固定化又は封入するために使用され得る、キトサンと、二官能性ジアルデヒドと、ヒドロキシル化ポリマーとの生体適合性の混合物を含む。生理活性物質、生細胞、及び/又は細胞外マトリックス成分を、ヒドロキシエチル・セルロースのような二官能性アルデヒドで処理されたヒドロキシル化ポリマーを含む架橋溶液と混合し、次いで、架橋溶液が、中性等張キトサン溶液と均質に混合される。キトサンは二官能性アルデヒドにより架橋され、一方、細胞は、ヒドロキシル化ポリマーによりアルデヒド・クロスリンカーの可能性のある傷害効果から防御される。注射可能溶液は、細胞の生存可能性及び生理活性を保持しており、注射又は送達の部位において細胞を固定化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、組織再生又は創傷治癒を補助するための細胞適合性クロスリンカーの補助によってインサイチューで凝固することができる中性等張キトサン・ゲル溶液により生細胞を封入するための組成物及び適用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術の説明
1)キトサン液体溶液
50%DDA〜100%DDAの脱アセチル度(DDA)を有するキトサンは、見かけのキトサンpKa(pH2.5〜pH6.0)未満のpHを有する酸性水性溶液で完全に可溶化され得る。そのようなキトサン溶液は、細胞の生存可能性とは不適合性である。ほとんどの緩衝液によるpHを細胞適合性レベルにまで上昇させる試みは、本出願人により以前に示されたように、使用される緩衝液がポリオール−リン酸(グリセロールリン酸、GP)二塩基塩(Cheniteの特許国際公開公報99/07416号(特許文献1))でない限り、溶液の沈殿を引き起こすであろう。pH6.8〜7.2のキトサン/GP液体溶液は、細胞適合性であり、熱ゲル化性である。しかしながら、体温に近い温度でゲル化し得るキトサン/GP溶液は、細胞適合性の限度をはるかに越えた塩濃度を含有している(8%GP二ナトリウムは、およそ360mM又は1080mOsmである)。熱ゲル化温度はGP濃度に反比例し、従って、等張塩レベル(3%GP二ナトリウム、およそ126mM、378mOsm)へGP濃度を低下させると、65℃を超える非生理学的な温度で熱ゲル化する溶液が得られる。従って、GPにより細胞適合性のpH及び張度(tonicity)にされた、酸で可溶化されたキトサンを使用して、細胞適合性の液体キトサン溶液を作製することはできるが、これらの溶液は、開放された体腔又はペトリにおいてゲル化し得ない。
【0003】
2)液体キトサン溶液からの架橋されたゲル
グリオキサール(Freeman 米国特許第5,489,401号、1996年(特許文献2))、グルタルアルデヒド(Hsien T-Y及びRorrer GL Ind Eng Chem Res.36:3631-3638,1997(非特許文献1);Oyrton AC Montiero Jr及びAiroldi C:Internat.J.Biological Macromolecules.26:119-128,1999(非特許文献2);Kumbar,SGら、J.Microencapsulation 19:173-180,2002(非特許文献3);並びにMi,F-Lら、Biomaterials.23:181-191,2002(非特許文献4))、スクアラート(DeAngelis AAら、Macromolecules 31:1595-1601,1998(非特許文献5))、オリゴ(エチレンオキシド)(Rogovina SZら、Polymer Science,43:265-268,2001(非特許文献6))、テトラメトキシ・プロパン(Capitani Dら、Carbohydrate Polymers 45:245-252,2001(非特許文献7))、及びゲネピン(genepin)(Mi,F-Lら、Biomaterials.23:181-191,2002(非特許文献8))を含む、液体キトサンから固体ゲルを形成させるための多くの化学的クロスリンカーが、提唱されている。先行発明は、中性キトサン溶液が、0.01重量%〜10重量%グリオキサールのグリオキサール溶液又はその他の二官能性クロスリンカーを使用してゲル化するよう誘導され得ることも教示している(Cheniteら 国際公開公報第02/40070号(特許文献3))。しかしながら、これらの濃度のグリオキサールは、細胞にとって毒性である。
【0004】
化学的クロスリンカーとは対照的に、pH依存性の沈殿及び非共有結合性架橋を使用してキトサン・ゲルに生細胞を捕捉する方法が、以前に発明されている(Aebischerら、米国特許第5,871,985号(特許文献4))。しかしながら、このpH依存性のゲル化メカニズムによると、本明細書に記載されたキトサン・ゲルの粘着特性及び機械的性質を欠き、そして滑膜性の連結のような開放された体腔内の組織表面にゲルが適用される軟骨修復適用のドメインにおける限定された用途を有するであろうキトサン・ペーストが形成される。
【0005】
以前の発明(国際公開公報第02/00272号(特許文献5))において、液体キトサン-GP溶液の熱ゲル化特性に基づく、組織の修復又は再生のための細胞封入において使用するための細胞適合性キトサン-GP液体溶液が提唱された。キトサン-GP、グルコサミン、及びヒドロキシエチル・セルロースという組成を有する固体キトサン・ゲルへの生存可能細胞の保持が記載された。別の公開(Li及びXu,J.pharm.Sci.91(7):1669-1677,2002(非特許文献9))においては、ヒドロキシエチル・セルロースが、提唱された水素結合のメカニズムを通した、細胞封入のための中性キトサン-GPゲルの細胞適合性クロスリンカーとして提案された。本発明は、凝固したゲルへの生存可能細胞の保持をもたらす、キトサン-GP溶液のグリオキサールに基づく架橋メカニズムを使用した、生細胞を封入するための方法及び組成物を教示することにより、これらの以前の記載から完全に区別される。
【0006】
先行技術を要約すると、多くの二官能性クロスリンカーにより酸−キトサン溶液が架橋されているが、これらのゲル化溶液が細胞の生存可能性を維持し得るという証拠は存在しない。従って、現在、化学的に架橋されたキトサン・ゲルへの生存可能細胞の封入に関する証拠は欠如している。
【0007】
組織の修復及び再生という医学的情況において使用するための新たな組成物が提供されることが、非常に望ましいであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許国際公開公報99/07416号
【特許文献2】米国特許第5,489,401号
【特許文献3】国際公開公報第02/40070号
【特許文献4】米国特許第5,871,985号
【特許文献5】国際公開公報第02/00272号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Hsien T-Y及びRorrer GL Ind Eng Chem Res.36:3631-3638,1997
【非特許文献2】Oyrton AC Montiero Jr及びAiroldi C:Internat.J.Biological Macromolecules.26:119-128,1999
【非特許文献3】Kumbar,SGら、J.Microencapsulation 19:173-180,2002
【非特許文献4】Mi,F-Lら、Biomaterials.23:181-191,2002
【非特許文献5】DeAngelis AAら、Macromolecules 31:1595-1601,1998
【非特許文献6】Rogovina SZら、Polymer Science,43:265-268,2001
【非特許文献7】Capitani Dら、Carbohydrate Polymers 45:245-252,2001
【非特許文献8】Mi,F-Lら、Biomaterials.23:181-191,2002
【非特許文献9】Li及びXu,J.pharm.Sci.91(7):1669-1677,2002
【発明の概要】
【0010】
発明の概要
本発明の一つの目的は、凝固し、細胞又は因子が捕捉又は固定化されたインプラント又はフィルムを形成することができる、細胞又は生物学的活性因子が負荷された生体適合性のポリマー液体溶液を提供することである。従って、その溶液は、細胞の生存可能性を持続させるか、又は注射部位における生理活性分子の放出制御を提示する、生体適合性の固体の足場を形成することができる。注射後、インプラントは、送達された細胞、ホルモン、薬、DNA、又は充填剤(bulking agent)からの治療効果を与え得る。
【0011】
本発明により、
a)等張の中性キトサンの液体多糖溶液;及び
b)生理学的媒体に溶解した二官能性又は多官能性のアルデヒド又はアルデヒドで処理されたヒドロキシル含有ポリマーからなる架橋溶液を含む、生存可能かつ機能的な細胞又は生理活性物質を固定化し封入するための組成物が提供される。
【0012】
架橋溶液は、好ましくは、ヒドロキシル化ポリマーが溶液中で液体のままであることを許容するような適当な比率及び分子量の二官能性又は多官能性のクロスリンカー及びヒドロキシル化ポリマーからなる。
【0013】
架橋溶液は、より好ましくは、生理学的媒体に溶解したグリオキサール又はグリオキサールで処理されたヒドロキシエチル・セルロースからなる。
【0014】
化学的クロスリンカーは、好ましくは、典型的な細胞培養培地に見出されるようなグルコース、ビタミン、アミノ酸、及び緩衝剤を含む(これらに制限はされない)一つ以上の細胞栄養素を保有している生理学的媒体に溶解される。
【0015】
本発明の組成物は、例えば、
a)0.5〜5.0重量%のキトサン又はキトサン誘導体又はポリアミン含有ポリマー;及び
b)0.0001〜3%のグリオキサールを含むことができ、そして随意的に、
c)0.01〜5.0重量%のヒドロキシエチル・セルロースを含んでいてもよい。
該溶液は、4℃〜42℃、より好ましくは20℃〜42℃の温度で、細胞の生存可能性を維持するための生理学的環境を提供するゲルを形成する。
【0016】
組成物は、好ましくは、(a)と(b)と、存在する場合には(c)とを混合した後、数秒〜数時間以内にゲルを形成する。
【0017】
キトサンは好ましくは、希酸に溶解され、1.0〜2.5重量%のグリセロール-2-リン酸二塩基塩、sn-グリセロール3-リン酸二塩基塩、及びL-グリセロール-3-リン酸二塩基塩のようなグリセロールの一リン酸二塩基塩のような一リン酸二塩基塩、又は一硫酸塩からなるポリオールの塩と混合される。
【0018】
キトサンは、リン酸緩衝液及び塩とさらに混合されてもよい。
【0019】
本発明の一つの態様において、組成物は、生物学的活性因子をさらに含む。そのような因子は、例えば、細胞、ホルモン、薬、DNA、充填剤、増殖因子、DNA、DNA-ポリマー複合体、リポソーム、薬理学的薬剤、代謝因子、抗体、栄養因子、血管形成因子、及び放射性同位体からなる群より選択される。
【0020】
本発明の一つの態様において、組成物は、細胞、好ましくは生細胞を負荷される。細胞は、髄核(nucleus pulpopus)、線維輪(annulus fibrosis)、又はそれらの混合物であり得る。又は、細胞は、胚性幹細胞、又は骨髄、脂肪、筋肉、脳、皮膚、肝臓、血管平滑筋、内皮、血液、もしくは胎盤からなる群より選択される組織に由来する幹細胞である。実際、細胞は、一次細胞、分化細胞、遺伝学的に修飾された細胞、ハイブリドーマ、不死化細胞、形質転換細胞、組織断片細胞、細胞小器官、又はそれらの混合物、有核細胞、除核細胞、胚細胞、血小板細胞、基質小胞、細胞小胞、鉱質除去された骨ペースト、骨チップ、軟骨断片又は細胞断片又は組織断片であってもよく、そして自己細胞、同種異系細胞、又は異種細胞であってもよい。
【0021】
本発明の一つの態様において、生物学的活性因子は、フィブリノーゲン、フィブリン、フィブロネクチン、ヒアルロン酸、ヘパリン、コラーゲン、ポリリジン、ポリオルニチン、受容体結合性環状ペプチド、受容体結合性タンパク質からなる群より選択される細胞接着因子である。
【0022】
生物学的活性因子は、酵素、増殖因子、又は増殖因子が固定化された物質であってもよいし、そしてリポソーム、脂質複合体、キトサン複合体、ポリリジン複合体、DEAEデキストラン複合体の形態のプラスミドDNAであってもよい。
【0023】
好ましい態様において、生物学的活性因子は、能動又は受動の免疫感作のためのワクチンである。従って、ワクチンは感染性ウイルス粒子を含み得る。
【0024】
生物学的活性因子は、脂質、アミノ酸、並びにコレステロール、グルタミン、グルコサミン、アスコルビン酸、ピルビン酸塩、及び乳酸塩からなる群より選択される補因子のような栄養因子又は代謝因子であってもよい。
【0025】
生物学的活性因子は、さらに、末梢血、骨血液、臍帯血、血液製剤、血液由来細胞、血清、血小板、多血小板血漿、フィブリノーゲン、凝固因子、及び血液由来酵素からなる群より選択される少なくとも一つのエレメントであり得る。
【0026】
本発明の一つの態様において、生物学的活性因子は、TGF-β1、BMP-2、BMP-6、BMP-7、又はそれらの混合物からなる群より選択される骨形成タンパク質ファミリーのメンバーのような骨形成物質である。
【0027】
本発明の一つの態様において、ヒドロキシル含有ポリマーは、二官能性反応性アルデヒドと連結されたポリビニルアルコール、デキストランである。
【0028】
さらに、本発明により、軟組織修復のための、生物学的活性因子の部位特異的送達のための、骨修復のための、損傷を受けた軟骨の修復もしくは表面再建のための、又は半月板の修復のための本発明の組成物の使用が、提供される。本発明により、本明細書において言及された様々な用途のための薬物の製造のための本発明の組成物の使用も、提供される。
【0029】
当然、本発明の組成物を提供され、そして、組成物が、本明細書において言及された様々な用途のため使用され得ることを教示された当業者にとって、治療の方法において組成物を使用することは困難でないであろう。従って、これらの方法も、本発明に含まれる。
【0030】
本願において、「生物学的活性因子」という表現は、制限なしに、任意の生物学的に活性な要素、治療効果を有している細胞、ホルモン、薬、DNA、充填剤、増殖因子、DNA、DNA-ポリマー複合体、リポソーム、薬理学的薬剤、代謝因子、抗体、栄養因子、血管形成因子、又は放射性同位体等を含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1A】図1Aは、グリオキサールによりヒドロキシエチル・セルロースを架橋することによる、細胞適合性のクロスリンカーを作製するために使用される方法を例示している。
【図1B】図1Bは、グリオキサールで架橋されたヒドロキシエチル・セルロースのキトサンとの混合物によるゲル化のメカニズムの例を例示している。
【図1C】図1Cは、細胞適合性のクロスリンカーを調製するための様々な方法を例示している。
【図2A】図2A〜2Cは、図1Cに例示された方法により調製された活性クロスリンカー及び不活性クロスリンカーのスペクトル特徴決定を例示している。
【図2B】図2A〜2Cは、図1Cに例示された方法により調製された活性クロスリンカー及び不活性クロスリンカーのスペクトル特徴決定を例示している。
【図2C】図2A〜2Cは、図1Cに例示された方法により調製された活性クロスリンカー及び不活性クロスリンカーのスペクトル特徴決定を例示している。
【図2D】図2D〜2Gは、図1Cに例示された方法により調製された活性クロスリンカー及び不活性クロスリンカーの混合後6分間でのゲル化を証明している。
【図2E】図2D〜2Gは、図1Cに例示された方法により調製された活性クロスリンカー及び不活性クロスリンカーの混合後6分間でのゲル化を証明している。
【図2F】図2D〜2Gは、図1Cに例示された方法により調製された活性クロスリンカー及び不活性クロスリンカーの混合後6分間でのゲル化を証明している。
【図2G】図2D〜2Gは、図1Cに例示された方法により調製された活性クロスリンカー及び不活性クロスリンカーの混合後6分間でのゲル化を証明している。
【図3】図3は、9mlの67mM HCl溶液に溶解した0.12gのキトサン(76%DDA)、1mlのddH20に溶解した0.41gのb-グリセロール・リン酸塩、及び、2mlの緩衝リンゲル乳酸塩溶液に溶解した3〜30mgの水溶性スペクトラム(Spectrum)試薬等級ヒドロキシエチル・セルロースの連続的な混合物を含む典型的な架橋された製剤に関する室温(25℃)における経時的なG'及びG"の進展を例示している。
【図4A】図4Aは、1時間超にわたるヒドロキシエチル・セルロース又はグリオキサール・クロスリンカーで維持された細胞の生存可能性を例示している。
【図4B】図4Bは、グリオキサール又はヒドロキシエチル・セルロース−グリオキサールで架橋されたキトサン・ゲルにおける細胞の生存可能性(生細胞代謝に関するMTTアッセイ)及び細胞増殖(細胞密度を反映するヘキスト(Hoechst)DNAアッセイ)を示している。
【図5】図5A及び5Bは、ヒドロキシエチル・セルロース/アルデヒド(図5A)又はグリオキサール(図5B)で架橋されたキトサン・ゲルにおける様々な細胞型の生存可能性を例示し;図5Cは、2%低融点アガロース・ゲルにおける比較可能な生存可能性を例示している。
【図6】図6は、本発明に従い生存可能細胞を封入するために使用された、ヒドロキシエチル・セルロース−グリオキサール又はグリオキサールを使用して架橋された細胞適合性キトサン・ゲルの典型的な組成の例を示している。
【図7A】図7A〜7Cは、適用に依ってヒドロキシエチル・セルロース−グリオキサール又はグリオキサールを使用して架橋された中性キトサン・ゲルを使用した、軟骨修復における細胞送達適用の例を示している。
【図7B】図7A〜7Cは、適用に依ってヒドロキシエチル・セルロース−グリオキサール又はグリオキサールを使用して架橋された中性キトサン・ゲルを使用した、軟骨修復における細胞送達適用の例を示している。
【図7C】図7A〜7Cは、適用に依ってヒドロキシエチル・セルロース−グリオキサール又はグリオキサールを使用して架橋された中性キトサン・ゲルを使用した、軟骨修復における細胞送達適用の例を示している。
【図8A】図8A及び8Bは、注射後の1日目から30日目の、ウサギの関節又は骨軟骨の欠陥部における、インビボで架橋されたキトサン・ゲルの持続性を示している。
【図8B】図8A及び8Bは、注射後の1日目から30日目の、ウサギの関節又は骨軟骨の欠陥部における、インビボで架橋されたキトサン・ゲルの持続性を示している。
【図9A】図9A及び9Bは、細胞担体としてのヒドロキシエチル・セルロース−グリオキサールを使用して架橋されたキトサン・ゲルに初代軟骨細胞が封入された場合の、インビトロ(図9A)及びインビボ(図9B)の新軟骨組織の形成を示す。
【図9B】図9A及び9Bは、細胞担体としてのヒドロキシエチル・セルロース−グリオキサールを使用して架橋されたキトサン・ゲルに初代軟骨細胞が封入された場合の、インビトロ(図9A)及びインビボ(図9B)の新軟骨組織の形成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
好ましい態様の詳細な記載
本発明により、グリセロール・リン酸塩により生理学的pHにされ、次いで、二官能性ジアルデヒド(グリオキサール)により架橋された酸可溶性キトサンのポリマー・マトリックスへの細胞固定化の新たな手法が提供される。二官能性ジアルデヒドは、単独で提示されてもよいし、又はヒドロキシエチル・セルロースとコンジュゲートしたヘミ−アセタール中間体として提示されてもよい。キトサン溶液が無菌であり、等張で、かつほぼ中性のpHの液体溶液中にある限り、この組成物は、高レベルの細胞生存可能性を維持する。この目的のためには、酸可溶性キトサンをオートクレーブにより滅菌してもよいし、又は結晶性粉末塩形態のキトサンを、UV光曝露により滅菌した後、水に溶解させてもよい。グリセロール・リン酸塩により中性pHへと調整する前に、キトサンの分子量を、粘性の再現可能な損失をもたらすオートクレーブ依存性の加水分解により変動させることができる。もう一つの態様において、キトサンを沈殿させることなく、キトサン溶液のpHを6.5〜6.8に増加させる他のリン酸緩衝液が使用されてもよい。添加されたグリセロール・リン酸塩又はリン酸緩衝液は、生理学的に容認される限度内、又は200〜460mOsmの最終浸透圧をもたらす。
【0033】
キトサン架橋のpH依存性は、架橋メカニズムに関与することができる遊離の中性アミン基の割合と厳密に関係している。そのような中性アミン基とプロトン化アミン基との割合は、使用されるキトサンの脱アセチル・レベルにより影響を受ける。95%脱アセチルされたキトサンは、pH5.0で架橋され得るが、80%脱アセチルされたキトサンは、6.0超のより高いpHでのみ架橋され得る。キトサンを架橋し、同時に細胞生存可能性を保持するために使用される最も都合のよいpHは、一般に室温でpH6.5超である。
【0034】
本発明により、生細胞を封入し、細胞培養ペトリ、エクスビボの組織、又はインビボのインプラント、創傷、器官間隙、もしくは欠陥部へと送達する方法が、提供される。さらに、IGF-1のような混和されたタンパク質の共ゲル化及び徐放のための方法が、提供される。
【0035】
細胞は、架橋試薬の補助によって中性キトサン液体溶液に固定化される。本態様において、架橋剤は、ヒドロキシエチル・エーテルのような反応性ヒドロキシル基を保有しているポリマーと混合されたグリオキサールからなる。グリオキサール−ヒドロキシエチル・セルロースの組み合わせは、ヒドロキシエチル・セルロースの存在によって、グリオキサール・アルデヒド基が細胞表面と反応することが妨害されるため、はるかに縮小された細胞に対する毒性を有している。キトサン・アミン基は、グリオキサールの反応性ヒドロキシル基を優先的に攻撃し、ヒドロキシエチル・セルロースが全体に散在する、グリオキサールと連結されたキトサン・アミン基の格子をもたらすであろう。架橋剤は、生存可能性を維持する効果がグリオキサール−ヒドロキシ・ポリマー・クロスリンカーよりは低いが、やはり最終的な架橋されたキトサン・ゲルに合理的なレベルの生存可能細胞を持続させることができる、生理学的媒体と混合されたグリオキサールからなっていてもよい。
【0036】
架橋剤を懸濁させるために使用される好ましい生理学的媒体は、単純な緩衝又は非緩衝の生理食塩水溶液とは対照的に、細胞培養に適した栄養培地である。
【0037】
本発明は、ヒドロキシル含有ポリマーを二官能性反応剤と組み合わせ、ポリアミン含有ポリマーと反応させる、任意の架橋反応を包含するよう拡張され得る。
【0038】
細胞を均質に固定化するため、細胞ペレットが、グリオキサールを保有しているヒドロキシエチル・セルロースの水性溶液、又はグリオキサールを含む媒体に完全に再懸濁され、次いで、中性キトサン溶液と混合される。得られた混合物は、適当な欠陥部又は鋳型に注入又は注射され得、その後、凝固が起こる。得られたゲルは、混合物中に存在するキトサン、グリオキサール、及びヒドロキシエチル・セルロースの相対量に依って、可変の粘弾性、粘着性、及び剛性を有している。
【0039】
注射可能溶液は、充填剤又は組織密閉剤としても使用され得る。
【0040】
本発明は、初代及び/又は継代軟骨細胞を該混合物と共に関節軟骨欠陥部に送達することにより、細胞生存可能性が持続し、インサイチューでの適切な細胞分化、並びに密な機械的に機能的な関節軟骨細胞外マトリックスの合成及び組み立てが許容されるであろう、関節軟骨修復の例も含む(これに制限はされない)。本発明には、架橋されたゲル、又はマトリックス産生細胞が負荷された架橋されたゲルが、損傷を受けた円板に送達される、椎間円板修復が含まれる。
【0041】
注射可能溶液は、増殖因子、DNA、DNA-ポリマー複合体、リポソーム、薬理学的薬剤、代謝因子、抗体、栄養因子、血管形成因子、又は放射性同位体と予め混合されてもよい。そのためには、これらの因子は、キトサンとクロスリンカーとを組み合わせる前に、中性キトサン溶液、又は架橋ヒドロキシエチル・セルロース・アルデヒド溶液のいずれかと混合され得る。
【0042】
もう一つの態様において、細胞は、中性キトサン溶液に懸濁され、次いで、キトサン/ヒドロキシエチル・セルロース/クロスリンカーの釣り合う(proportional)容量の範囲で、ヒドロキシエチル・セルロース中性溶液と混合され得る。
【0043】
キトサンを架橋するのに必要とされるヒドロキシエチル・セルロースは、好ましくは、商業的に入手可能な中粘性の非薬学的等級のヒドロキシエチル・セルロースから、いくつかの方法のうちの一つにより得られる。ルーチンの産業的加工において、ヒドロキシエチル・セルロースは、架橋を誘導するためグリオキサールにより表面処理される。架橋されたヒドロキシエチル・セルロースは水に溶解するのが遅く、従って、縮小された凝集性(lumping)を有する。活性キトサン・クロスリンカーが入手され得るのは、これらの調製物においてである。グリオキサールを除去するために処理された薬学的等級のヒドロキシエチル・セルロースは、活性キトサン・クロスリンカーを調製するために使用され得ない。
【0044】
いくつかの方法が、細胞適合性クロスリンカーを調製するために使用され得る。一つの方法によると、ある種の型の中粘性のヒドロキシエチル・セルロース(Fluka)が、生理学的pHの水性溶液中に25mg/mlに完全に溶解され得る。一つの方法(方法4)においては、40%グリオキサール(8.76M)の溶液が、生理学的媒体で750μMに希釈される。得られた溶液は、1部を4部の中性キトサンと混合することにより活性クロスリンカーとして使用され得、次いで、0.22mmフィルターでのろ過により滅菌される(方法1、図1C)。図1Cは、水和の速度を遅らせ、かつ凝集性を最小限に抑えるため、水への溶解時間が遅いフルカ(Fluka)からの中粘性(3,400cPa)の非薬学的等級のヒドロキシエチル・セルロースが、グリオキサールで架橋された方法1を例示している。生理学的媒体中に12.5mg/ml〜25mg/mlで完全に溶解させた場合、得られた溶液は、0.22μmフィルターで滅菌ろ過され、1部のろ過されたヒドロキシエチル・セルロースを4部の1.5%中性キトサンと混合することにより、活性クロスリンカーとして使用され得る。
【0045】
もう一つの方法によると、薬学的等級のヒドロキシエチル・セルロースがグリオキサールで表面処理され、乾燥された後、生理学的媒体中に溶解され、濾過滅菌される(方法2、図1C)。図1Cに例示された方法2においては、中又は低粘性のヒドロキシエチル・セルロース(薬学的等級:500ppm未満のグリオキサールを含むか又はグリオキサールを含まない)が、極性溶媒中で2500ppm〜3500ppmのグリオキサールと組み合わせられ、グリオキサールで表面処理されたヒドロキシエチル・セルロースを作製するために乾燥される。得られた粉末は、前記の方法1と同様に、生理学的媒体中に25mg/mlに溶解され、滅菌ろ過され、活性クロスリンカーとして使用され得る。もう一つの方法によると、粒子が水可溶化に対して抵抗性である場合、ヒドロキシエチル・セルロースは、室温で15分間25mg/mlでddH20と混合される。
【0046】
図1Cの方法3において、スペクトラム(Spectrum)又はフルカ(Fluka)からの中粘性の非薬学的等級のヒドロキシエチル・セルロースは、両方、水への溶解時間が遅い。水溶性ヒドロキシエチル・セルロース画分が回収され、凍結乾燥され、得られた固体が、pH及びモル浸透圧濃度が生理学的である水性溶液に再懸濁される(方法3、図1C)。ヒドロキシエチル・セルロースが水中で15分間混合された場合、不溶物を遠心分離し、0.22μmフィルターでろ過することにより、低分子量ヒドロキシエチル・セルロースを含有しており、さらに反応性グリオキサールを含有している水相が回収され得る。得られた溶液は、濃縮され、1部(1mg/ml〜30mg/ml)の水溶性ヒドロキシエチル・セルロースを4部の中性キトサンと混合することにより、中性キトサンを架橋するために使用され得る。
【0047】
又は、グリオキサールが、表面処理されたヒドロキシエチル・セルロース中に存在する濃度(約0.001%)にまで生理学的媒体で希釈され、濾過滅菌されてもよい(方法4、図1D)。図1Cの方法4においては、40%グリオキサール(8.76M)の溶液が、生理学的媒体で750μMに希釈される。得られた溶液は、1部を4部の中性キトサンと混合することにより活性クロスリンカーとして使用され得る。いくつかの商業的なヒドロキシエチル・セルロース粉末は、25mg/mlで完全に溶解された場合、ゲルを形成するであろう(Spectrum,Hercules)。この場合には、ヒドロキシエチル・セルロースがグリオキサール又はもう一つの類似した試薬で架橋され、(低分子量の架橋されたヒドロキシエチル・セルロースを含有している)水溶性材料が、溶解が遅い粒子から抽出され得る場合にのみ、反応性クロスリンカーが入手され得る。ヒドロキシエチル・セルロース溶液を調製するために使用される方法にかかわらず、水和後、溶液は、凍結保存により加水分解又はコンフォメーション変化から防御されるべきである。
【0048】
活性クロスリンカーは、スペクトラム(Spectrum)からの水溶性ヒドロキシエチル・セルロースの低分子量画分(1000Da未満)より精製され得る。しかしながら、クロスリンカーが精製されるほど、それが細胞に対して有する効果は、より毒性となる。従って、細胞生存可能性にとって最適な架橋条件は、クロスリンカーが反応し得るが、キトサン中性アミン基より低いクロスリンカーに対する親和性を有している別のポリマーの存在下で架橋剤を使用するものである。明白な毒性効果が、最初のヒドロキシエチル調製物からの汚染物質の共精製による場合、この毒性は、媒体中に高度に希薄な濃度の純粋なグリオキサールを使用することにより、部分的に回避され得る。
【0049】
キトサン−グリセロール・リン酸溶液を架橋するために使用されるヒドロキシエチル・セルロース溶液は、好ましくは、液体溶液中に存在するキトサンの容量の0.5%〜98%である。その溶液は、優先的には、0.22mmフィルターでのろ過により滅菌される。適当なポリマー担体と共に可逆的な架橋を形成し得る任意の多機能性反応性化合物が、多官能性化合物単独とのインキュベーションに対して感受性の細胞又は生理活性分子を捕捉するため、任意のアミン含有ポリマーのための低毒性の細胞適合性のクロスリンカーとして使用され得ることは、当業者には明白である。
【0050】
調製された後、濃縮された水溶性ヒドロキシエチル・セルロースは、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル緩衝乳酸塩のような生理学的緩衝溶液、ダルベッコ改変イーグル培地のような細胞培養培地、無菌0.9%生理食塩水、又は細胞培養において使用される細胞適合性の栄養培地のその他の調製物に懸濁される。いくつかの生理活性物質、化学物質、リポソーム、放射性同位体、又は薬学的薬剤の送達のため、ヒドロキシエチル・セルロースは、キトサンとの混合の前に、これらの材料と完全に組み合わせるために水又はその他の条件で懸濁され得る。このような場合、キトサンは必ずしも生理学的pHにされる必要はなく、95%脱アセチルされたキトサンが、最小限の量の酸に溶解され、4.0〜5.5のpHで使用され得る。
【0051】
本発明は、ヒドロキシエチル・セルロース・クロスリンカーを使用した中性キトサン溶液のゲル化メカニズムが、ヒドロキシエチル・セルロース溶液が、ルーチンの大規模な産業的調製における表面処理においてグリオキサールと予め組み合わせられた場合にのみ、起こり得ることを証明する。本発明は、さらに、透析により、又は薬学的等級の生成物を作製するためグリオキサールを除去するために使用される他の特別な処理により、グリオキサールが排除された場合、ヒドロキシエチル・セルロースの架橋活性が失われることを証明する。低濃度(0.01%未満)のグリオキサールが、細胞の生存可能性を維持しつつ、中性キトサン溶液を架橋するために使用され得るが、そのようなグリオキサールで架橋されたゲルに封入された細胞の(細胞の生存可能性の指標としての)初期細胞代謝は、ヒドロキシエチル・セルロース−グリオキサールで封入された細胞のそれより低いことが、本発明において示される。本発明の実施例において示されたゲル化の動力学は、数秒から一時間と、臨床的な使用と適合性であり、細胞及び/又は医学的に活性な薬剤を含む又は含まないゲルのゲル化、及び体腔、ペトリ皿、開放性創傷への保持を許容する。
【0052】
図2A〜2Gにおいて、架橋活性は、アルデヒド様の1H-NMRピーク(8.3ppmのピーク)及びヘミアセタール・ピーク(3.8ppm)を含有しているヒドロキシエチル・セルロース画分と相関している。クロスリンカーは、図1Cの方法3に従って調製され、続いて、1000Daより上又は下の画分を収集するため限外ろ過により分画された。各画分がNMR分析に供された(上パネル)。各画分は、ddH20に7.5mg/mlで懸濁され、ヒドロキシエチル・セルロース画分1部、1.5%中性キトサン溶液5部で、中性キトサンと混合された。試料は、プラスチック・ペトリ上に沈着され、ゲル化を証明するため、ある間隔を置いて傾けられた(下パネル)。未分画及び低分子量画分(1000Da未満)は、5分以内にキトサンの迅速なゲル化を誘導した。透析されたヒドロキシエチル・セルロースは、キトサンをゲル化させることができず、このことから、ヒドロキシエチル・セルロースが試験条件下でキトサンを架橋するのに十分ではないことが示された。活性架橋試料は、いずれも、アルデヒド(8.3ppm)及びヘミアセタール(3.8ppm)の存在と一致するピークを保有している。
【0053】
図3において、t=0は、混合の1.6分後に起こる。結果は、ゲル化時間とヒドロキシエチル・セルロース−グリオキサール濃度との間の用量依存性を示している。
【0054】
図4Aにおいて、グリオキサール又はヒドロキシエチル・セルロース−グリオキサールで架橋されたキトサンでの封入の後に、高い生存可能性が維持される。図4Aは、活性ヒドロキシエチル・セルロース・クロスリンカーが、細胞適合性であることを例示している。活性クロスリンカーの中で最大72時間インキュベートされた細胞は、95%超、生存可能なままである。同じ期間0.3%過酸化物の中でインキュベートされた細胞は、100%、生存不可である。キトサンと混合し、26ゲージの針を有する注射器で注射した後、固体ゲルに封入された細胞は、95%超、生存可能なままである。キトサンと混合し、ペトリへ注入した後、固体ゲルに封入された細胞は、1日の培養後に95%超、生存可能なままである。
【0055】
図4Bにおいて、1日目の封入された細胞におけるMTTアッセイにより示されるように、ヒドロキシエチル・セルロースは、封入直後に付加的な保護を細胞に提示する。グリオキサール又はヒドロキシエチル・セルロース−グリオキサールのいずれかを使用してキトサン・ゲルに封入された細胞は、封入後に生存可能であり、ゲル中で増殖する。活性クロスリンカーがヒドロキシエチル・セルロース−グリオキサールである場合、細胞は、封入後1日目、代謝MTTアッセイにより測定されるように、グリオキサール・クロスリンカーと比較して、より大きな生存可能性を示す。
【0056】
図5A〜5Cにおいて、緑色は生細胞を示し、赤色は死細胞を示す。認められるように、図5Aは、繊維芽細胞細胞系Rat-1、COS、ウシ初代軟骨細胞、及びウシ継代軟骨細胞を含む、ヒドロキシエチル・セルロース−グリオキサールで架橋されたキトサン・ゲルにおいて鋳造された一連の生存可能な細胞型の、鋳造時及び培養後の持続性を示している。図5Bは、グリオキサール架橋キトサン・ゲルにおけるCOS細胞及び継代ウシ軟骨細胞の生存可能性の持続性を示している。図5Cは、2%低融点アガロースにおいて鋳造された初代及び継代ウシ軟骨細胞の比較可能な生存可能性を示している。
【0057】
本発明がその特定の態様に関連して記載されたが、それがさらに修飾され得ること、及び、本願が、一般に本発明の原理に従った本発明の任意の変動、使用、又は適応を内含するものであり、本発明が関係する技術分野において既知又は習慣的な実務の範囲内であるような、そして先に記載されたような必須の特質に適用され得るような、そして添付の特許請求の範囲の範囲内であるような、本開示からの逸脱を含むことが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生存可能かつ機能的な細胞又は生理活性物質を固定化し封入するための組成物であって、
a)等張の中性キトサンの液体多糖溶液;及び
b)生理学的媒体に溶解した二官能性又は多官能性のアルデヒド又はアルデヒドで処理されたヒドロキシル含有ポリマーからなる架橋溶液を含む、組成物。
【請求項2】
架橋溶液が、ヒドロキシル化ポリマーが溶液中で液体のままであることを許容するような適当な比率及び分子量の二官能性又は多官能性のクロスリンカー及びヒドロキシル化ポリマーからなる、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
架橋溶液が、生理学的媒体に溶解したグリオキサール又はグリオキサールで処理されたヒドロキシエチル・セルロースからなる、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
a)0.5〜5.0重量%のキトサン又はキトサン誘導体又はポリアミン含有ポリマー;及び
b)0.01〜5.0重量%のヒドロキシエチル・セルロースを含む、請求項1記載の組成物において、
溶液が、4℃〜42℃の温度で、細胞の生存可能性を維持するための生理学的環境を提供するゲルを形成する、組成物。
【請求項5】
c)0.0001〜3%グリオキサールをさらに含む、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
(a)及び(b)を混合した後、数秒〜数時間以内にゲルを形成する、請求項4記載の組成物。
【請求項7】
(a)、(b)、及び(c)を混合した後、数秒〜数時間以内にゲルを形成する、請求項5記載の組成物。
【請求項8】
溶液が20℃〜42℃の温度でゲルを形成する、請求項4記載の組成物。
【請求項9】
キトサンが希酸に溶解され、1.0〜2.5重量%の一リン酸二塩基塩又は一硫酸塩からなるポリオールの塩と混合されている、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
一リン酸二塩基塩が、グリセロールの一リン酸二塩基塩である、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
グリセロールの一リン酸二塩基塩が、グリセロール-2-リン酸二塩基塩、sn-グリセロール3-リン酸二塩基塩、及びL-グリセロール-3-リン酸二塩基塩からなる群より選択される、請求項9記載の組成物。
【請求項12】
キトサンが、リン酸緩衝液及び塩とさらに混合されている、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
生物学的活性因子をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
生物学的活性因子が、細胞、ホルモン、薬、DNA、充填剤、増殖因子、DNA、DNA-ポリマー複合体、リポソーム、薬理学的薬剤、代謝因子、抗体、栄養因子、血管形成因子、及び放射性同位体からなる群より選択される、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
細胞が生細胞である、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
細胞が、髄核、線維輪、又はそれらの混合物である、請求項14記載の組成物。
【請求項17】
細胞が、胚性幹細胞、又は骨髄、脂肪、筋肉、脳、皮膚、肝臓、血管平滑筋、内皮、血液、もしくは胎盤からなる群より選択される組織に由来する幹細胞である、請求項14記載の組成物。
【請求項18】
細胞が、一次細胞、分化細胞、遺伝学的に修飾された細胞、ハイブリドーマ、不死化細胞、形質転換細胞、組織断片細胞、細胞小器官、又はそれらの混合物、有核細胞、除核細胞、胚細胞、血小板細胞、基質小胞、細胞小胞、鉱質除去された骨ペースト、骨チップ、軟骨断片又は細胞断片又は組織断片である、請求項14記載の組成物。
【請求項19】
細胞が、自己細胞、同種異系細胞、又は異種細胞である、請求項14記載の組成物。
【請求項20】
生物学的活性因子が、フィブリノーゲン、フィブリン、フィブロネクチン、ヒアルロン酸、ヘパリン、コラーゲン、ポリリジン、ポリオルニチン、受容体結合性環状ペプチド、受容体結合性タンパク質からなる群より選択される細胞接着因子である、請求項14記載の組成物。
【請求項21】
生物学的活性因子が、酵素、増殖因子、又は増殖因子が固定化された物質である、請求項14記載の組成物。
【請求項22】
生物学的活性因子が、リポソーム、脂質複合体、キトサン複合体、ポリリジン複合体、DEAEデキストラン複合体の形態のプラスミドDNAである、請求項14記載の組成物。
【請求項23】
生物学的活性因子がワクチンである、請求項14記載の組成物。
【請求項24】
ワクチンが感染性ウイルス粒子を含む、請求項23記載の組成物。
【請求項25】
生物学的活性因子が、栄養因子又は代謝因子である、請求項14記載の組成物。
【請求項26】
栄養因子又は代謝因子が、脂質、アミノ酸、並びにコレステロール、グルタミン、グルコサミン、アスコルビン酸、ピルビン酸塩、及び乳酸塩からなる群より選択される補因子である、請求項25記載の組成物。
【請求項27】
生物学的活性因子が、末梢血、骨血液、臍帯血、血液製剤、血液由来細胞、血清、血小板、多血小板血漿、フィブリノーゲン、凝固因子、及び血液由来酵素からなる群より選択される少なくとも一つのエレメントである、請求項14記載の組成物。
【請求項28】
生物学的活性因子が、骨形成物質である、請求項14記載の組成物。
【請求項29】
骨形成物質が、TGF-β1、BMP-2、BMP-6、BMP-7、又はそれらの混合物からなる群より選択される骨形成タンパク質ファミリーのメンバーである、請求項28記載の組成物。
【請求項30】
ヒドロキシル含有ポリマーが、二官能性反応性アルデヒドと連結されたポリビニルアルコール、デキストランである、請求項1記載の組成物。
【請求項31】
軟組織修復のための、請求項1〜30のいずれか一項記載の組成物の使用。
【請求項32】
生物学的活性因子の部位特異的送達のための、請求項14又は15記載の組成物の使用。
【請求項33】
骨修復のための、請求項1〜30のいずれか一項記載の組成物の使用。
【請求項34】
損傷を受けた軟骨の修復又は表面再建のための、請求項1〜30のいずれか一項記載の組成物の使用。
【請求項35】
半月板の修復のための、請求項1〜30のいずれか一項記載の組成物の使用。
【請求項36】
軟組織修復のための薬物の製造のための、請求項1〜30のいずれか一項記載の組成物の使用。
【請求項37】
生物学的活性因子の部位特異的送達のための薬物の製造のための、請求項14又は15記載の組成物の使用。
【請求項38】
骨修復のための薬物の製造のための、請求項1〜30のいずれか一項記載の組成物の使用。
【請求項39】
損傷を受けた軟骨の修復又は表面再建のための薬物の製造のための、請求項1〜30のいずれか一項記載の組成物の使用。
【請求項40】
半月板の修復のための薬物の製造のための、請求項1〜30のいずれか一項記載の組成物の使用。
【請求項41】
軟組織を修復する方法であって、患者の修復を必要とする軟組織の部位に請求項1記載の組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項42】
損傷を受けた軟骨を修復又は表面再建する方法であって、患者の修復又は表面再建を必要とする軟骨又はその周辺に請求項1記載の組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項43】
半月板を修復する方法であって、患者の半月板の部位に請求項1記載の組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項44】
生理学的媒体が、等張かつ中性pHで、グルコース、アミノ酸、及びビタミン、又はそれらの組み合わせからなる群より選択される細胞栄養素を含む、請求項3記載の組成物。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図2D】
image rotate

【図2E】
image rotate

【図2F】
image rotate

【図2G】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図7C】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate


【公開番号】特開2012−92137(P2012−92137A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−285187(P2011−285187)
【出願日】平成23年12月27日(2011.12.27)
【分割の表示】特願2004−520241(P2004−520241)の分割
【原出願日】平成15年7月16日(2003.7.16)
【出願人】(511287835)ピラマル ヘルスケア (カナダ) リミテッド (1)
【Fターム(参考)】