説明

生鮮品消毒殺菌保存装置及び方法

【課題】オゾンガス及び炭酸ガスをガスミストの状態で生鮮品に接触させることにより、生鮮品の消毒殺菌等と鮮度維持を行う生鮮品消毒殺菌保存装置及び方法を提供する。
【解決手段】オゾンガス、炭酸ガス、又はこれらの混合ガスを供給するガス供給手段10と、液体を供給する液体供給手段20と、前記ガス供給手段10及び液体供給手段20から供給されたガスと液体とを粉砕溶解したガスミストを生成するガスミスト生成手段30と、内部に生鮮品100を収容すると共に、前記ガスミスト生成手段30からのガスミストを内部に封入する空間を形成する生鮮品包装袋60と、その生鮮品包装袋60内の前記ガスミストを抜き取る手段と、を備え、オゾンガス及び炭酸ガスをガスミストの状態で生鮮品100に接触させることにより、生鮮品100の消毒殺菌や鮮度維持を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾンガス、炭酸ガス、又はこれらの混合ガスによって、生鮮品を消毒殺菌し保存性を高める生鮮品消毒殺菌保存装置及び方法に関する。
【0002】
なお、本願の「生鮮品」とは、新鮮な状態で顧客に供される必要のある、魚介類、肉類、野菜類、果実類、海藻類、生花類等を指すものとする。
【背景技術】
【0003】
オゾンは、三つの酸素原子からなる酸素の同位体であり、強い酸化力を持つことで知られている。この酸化力により、オゾンは優れた殺菌、ウイルスの不活化、脱臭、漂白、有機物の除去等の効果を奏することができる。そのため、オゾンガスを水に溶解させたオゾン水を、生鮮品の洗浄や殺菌に用いる洗浄機などがこれまでに開発されている。
【0004】
一方、炭酸ガスは、抗菌、防腐、防虫作用を有し、バクテリア、カビ、害虫などの発生を抑制することができる。特に、殺虫剤のような毒性なしに、害虫を卵、幼虫、蛹の状態でも駆除することが可能で、農薬としても用いられている。また、青果物の呼吸を抑えることによる鮮度保持効果や酸化防止効果を有しているため、生鮮品の保存のために炭酸ガスを生鮮品のパッケージに充填する等が従来から行われてきた。
【0005】
また、これらのオゾンガス及び炭酸ガスを組み合わせて、生鮮品の消毒殺菌や保存を行う装置は、既に開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−327829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ガスはその性質上、単体で生鮮品に接触させる場合よりも、ミストと共に接触させる方が、より吸収率が高くなることが知られている。そのため、生鮮品に対してミストと共に上記のようなオゾンガス、炭酸ガスを浸透させることで、生鮮品中の微生物も容易に除去することができ、また鮮度維持効果も高くなり、さらに生鮮品内の水分量の低下をも防ぐことができる。しかしながら、これまでにそのような装置及び方法は提案されていなかった。
【0008】
そこで本発明は、上記状況に鑑み、オゾンガス及び炭酸ガスをガスミストの状態で生鮮品に接触させることにより、生鮮品の殺菌等と鮮度維持を行う生鮮品消毒殺菌保存装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、オゾンガス、炭酸ガス、又はこれらの混合ガス(以下、「ガス」という)を供給するガス供給手段と、液体を供給する液体供給手段と、前記ガス供給手段及び液体供給手段から供給されたガスと液体とを粉砕溶解したミスト(以下、「ガスミスト」という)を生成するガスミスト生成手段と、内部に生鮮品を収容すると共に、前記ガスミスト生成手段からのガスミストを内部に封入する空間を形成する生鮮品包装袋と、前記生鮮品包装袋内の前記ガスミストを抜き取るためのガス抜き手段と、を備え、オゾンガス及び炭酸ガスをガスミストの状態で生鮮品に接触させることにより、生鮮品の消毒殺菌や鮮度維持を図ることを特徴とする生鮮品消毒殺菌保存装置を提供する。
【0010】
ここで、前記生鮮品消毒殺菌保存装置における各種制御を行う制御手段をさらに備えても良い。
【0011】
また前記ガス供給手段が、さらに窒素ガス、又はオゾンガス、炭酸ガス、及び窒素ガスの混合ガスを供給しても良い。
【0012】
さらに、前記液体供給手段を、ガスを微細化して液中に含有させるガス混合液の生成供給手段としても良い。このガス混合液生成供給手段は、前記ガスを4乃至50ミクロンメートルに微細化したマイクロバブルにして液中に含有させるのが好適である。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明は、(a)生鮮品を収容した生鮮品包装袋内の空気を抜き、オゾンガスと液体とを粉砕溶解したミスト(以下、「ガスミスト」という)であるオゾンガスミストを生鮮品包装袋内に注入するステップと、(b)生鮮品包装袋内を所定時間t1の間密封して生鮮品をオゾンガスミストに接触させるステップと、(c)生鮮品包装袋内のオゾンガスミストを抜き、炭酸ガスと液体とを粉砕溶解した炭酸ガスミストを生鮮品包装袋内に注入するステップと、(d)生鮮品包装袋内を所定時間t2の間密封して生鮮品を炭酸ガスミストに接触させるステップと、(e)生鮮品包装袋内の前記炭酸ガスミストを抜き取るステップと、(f)生鮮品包装袋を封じて真空パックとするステップと、を備え、オゾンガス及び炭酸ガスをガスミストの状態で生鮮品に接触させることにより、生鮮品の消毒殺菌や鮮度維持を図ることを特徴とする生鮮品消毒殺菌保存方法を提供する。
【0014】
ここで、前記ステップ(d)とステップ(e)の間に、(g)生鮮品包装袋内のガスミストを抜き、窒素ガスと液体とを粉砕溶解した窒素ガスミストを生鮮品包装袋内に注入するステップと、(h)生鮮品包装袋内を所定時間t3の間密封して生鮮品を窒素ガスミストに接触させるステップと、をさらに備えても良い。
【0015】
さらに、上記課題を解決するために、本発明は、(a)生鮮品を収容した生鮮品包装袋内の空気を抜き、オゾンガス及び炭酸ガスの混合ガスと液体とを粉砕溶解したミスト(以下、「ガスミスト」という)である混合ガスミストを生鮮品包装袋内に注入するステップと、(b)生鮮品包装袋内を所定時間t3の間密封して生鮮品を混合ガスミストに接触させるステップと、(c)生鮮品包装袋内の前記混合ガスミストを抜き取るステップと、(d)生鮮品包装袋を封じて真空パックとするステップと、を備え、オゾンガス及び炭酸ガスをガスミストの状態で生鮮品に接触させることにより、生鮮品の消毒殺菌や鮮度維持を図ることを特徴とする生鮮品消毒殺菌保存方法を提供する。
【0016】
ここで、前記混合ガスに、さらに窒素ガスを加えても良い。
【0017】
なお、本願においては、液体を粉砕し微細な液滴にして気体(オゾンガス、炭酸ガス、又はこれらの混合ガス)と接触混合させることを、粉砕溶解という。
【発明の効果】
【0018】
本発明の生鮮品消毒殺菌保存装置及び方法によれば、生鮮品をオゾンガスミスト及び炭酸ガスミストに接触させることにより、殺菌、ウイルスの不活化、バクテリア、カビ、害虫などの発生の防止と共に、生鮮品の鮮度を維持し変質や品質劣化を抑制して保存性を高めることができる。そのため農薬や保存料の低減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例に係る生鮮品消毒殺菌保存装置の概略を示す模式図である。
【図2】本発明に係る生鮮品消毒殺菌保存装置のさらに具体的な例を示す模式図である。
【図3】本発明に係る本生鮮品消毒殺菌保存装置を使用する際の手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】本発明の他の実施例に係る生鮮品消毒殺菌保存装置の概略を示す模式図である。
【図5】本発明に係る本生鮮品消毒殺菌保存装置を使用する際の手順の他の例を示すフローチャートである。
【図6】本発明のさらに他の実施例に係る生鮮品消毒殺菌保存装置の概略を示す模式図である。
【図7】本発明に係る本生鮮品消毒殺菌保存装置を使用する際の手順のさらに他の例を示すフローチャートである。
【図8】本発明のさらに他の実施例に係る生鮮品消毒殺菌保存装置の概略を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施例に係る生鮮品消毒殺菌保存装置の概略を示す模式図である。図1に示すように、本発明の生鮮品消毒殺菌保存装置1は、オゾンガス、炭酸ガス、又はこれらの混合ガス(以下、単にガスという)を供給するガス供給手段10と、液体を供給する液体供給手段20と、ガス供給手段10からのガスと液体供給手段20からの液体を粉砕溶解させたミスト(以下、ガスミストという)を生成、供給するガスミスト生成手段30と、内部に生鮮品100を収容すると共に、ガスミスト生成手段30から供給されたガスミストを内部に封入する空間を形成する生鮮品包装袋60と、生鮮品包装袋60内のガスミストを抜き取るガス抜き手段(例えば、真空ポンプ70、排気孔)と、から構成される。排気孔の場合は、例えば、排気孔を開いた状態で手で袋を押さえ付けることにより、生鮮品包装袋60内のガス及びガスミストを抜き取ることにより、生鮮品の殺菌及び消毒が済んだ後のそれ以上の酸化を停止する。また、真空ポンプ70は、手動式又は電動式の何れでもよい。
【0022】
このほか、必要に応じて制御装置等を設けて、ガス、液体及びガスミストの供給制御等を行うようにしても良い(後述の図2参照)。
【0023】
ガス供給手段10は、ガスボンベ等からなり、ガスミスト生成手段30にオゾンガスを供給するオゾンガス供給手段10a、炭酸ガスを供給する炭酸ガス供給手段10bから構成される。あるいは、図示しないが予めオゾンガスと炭酸ガスを混合したガスを供給する混合ガス供給手段から構成しても良い。このガス供給手段10には、図示は省略するがガスの圧力調整のためのレギュレータが設けられている。また、ガスの温度制御手段を配置しても良い。
【0024】
液体供給手段20は、ポンプ等から構成され、ガスミスト生成手段30に液体を供給する。あるいは、例えばオゾン水生成装置等の、ガス混合液の生成供給手段であっても良い(後述の図6参照)。液体供給手段20には、図示は省略するが液体の温度制御手段を配置するのが望ましい。
【0025】
供給する液体としては、水、イオン水、オゾン水、生理食塩水、精製水、滅菌精製水を用いるのが好適である。また、この液体に、対象とする生鮮品100に応じた添加剤を含有させても良い。添加剤を含有することで、ガスミストと共に生鮮品100に浸透させることが可能である。また、液体に抗菌剤、殺菌剤を添加することにより、抗菌、殺菌効果を増大させることができる。
【0026】
ガスミスト生成手段30は、ガス供給手段10から供給されたガスと、液体供給手段20から供給された液体とを粉砕溶解したガスミストを生成し、これを生鮮品包装袋60に供給する装置である。この際、生成するミストの粒径は10μm以下であるのが最適である。ガスミスト生成手段30としては、例えば、超音波式や霧吹き式、流体ノズルを用いた方式等、様々なミスト生成装置を適用することができる。
【0027】
生鮮品包装袋60は、開口部61を有し、生鮮品100(ここでは例として、魚を図示)と共にガスミストを内部に封入する空間を形成する袋体である。この生鮮品包装袋60は、耐圧性、非通気性、非透湿性素材からなり、収容する生鮮品100に合わせて生鮮品全体を覆う大きさのものを用いる。具体的な素材としては例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリアミド系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン等が好適である。
【0028】
生鮮品包装袋60の開口部61には、開閉手段64を設けて、生鮮品100を収容する際には開き、消毒殺菌保存処理の際には閉じるよう構成する。例えば、ジッパーテープと呼ばれる凹状と凸状のテープを互いに嵌合させることで着脱可能な開閉具を用いるのが好適である。一方、このような開閉手段64を設ける代わりに、開口部61をヒートシールなどの手段で閉じても良い。
【0029】
また、生鮮品包装袋60には、内部にガスミストを導入するためのガスミスト供給口62と、生鮮品包装袋60内のガスミストの量を調整したり排出したりするための排出口63とが設けられている。
【0030】
ガスミスト供給口62には、ガスミスト供給管39(図2参照)が接続され、ガスミスト生成手段30で生成されたガスミストがここから生鮮品包装袋60内に供給される。ガスミスト供給口62の内部には、ガスミストの逆流を防ぐための逆止弁が設けられている。
【0031】
排出口63は、生鮮品包装袋60内のガスやガスミストを排出するための通気口である。この排出口63には真空ポンプ70が接続されている。真空ポンプ70は、生鮮品包装袋60内の前記ガス及びガスミストを抜き取る手段(手動式ポンプ、電動式ポンプ、又はガス抜き開口)である。
【0032】
図2に、上述した生鮮品消毒殺菌保存装置1のさらに具体的な例を示す。ここでは、霧吹きタイプのガスミスト生成手段30′を用いた生鮮品消毒殺菌保存装置1′を示す。なお、図1を同一の部分については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0033】
図2に示すように、ガスミスト生成手段30′には、液体供給手段20からの液体を貯留するための液体貯留部31と、ガス供給手段10から供給されるガスを先端開口から吐出するノズル32と、液体貯留部31に貯留された液体をノズル32の先端まで吸い上げる吸液管33と、ノズル32及び吸液管33の先端開口と対向する位置に設けられるバッフル34とが形成されている。また、ガス供給手段10からガスミスト生成手段30′内にガスを供給し、ガスをノズル32周辺に導入すると共にガスミストを排出する気流を作るガス供給部35とガス導入部36、ガスミストを収集して排出するためのガスミスト収集部37とガスミスト導出部38とを備えている。ガスミスト導出部38から排出されたガスミストは、ガスミスト供給管39を通って生鮮品包装袋60に供給される。
【0034】
このガスミスト生成手段30′でガスミストを生成する際には、まず、液体貯留部31に、液体供給手段20から所定量の液体を注入し、次いで、ガス供給手段10からガスミスト生成手段30′のノズル32及びガス供給部35にガスを供給する。ガスがノズル32に供給されると、ノズル32は図2に示すように先端に向かって狭窄されているため、ガスは流速を増して吐出される。液体はこのときの気流により発生する負圧で吸液管33に吸い上げられ、吸液管33の先端部でノズル32から吐出されるガスに吹き上げられてバッフル34に衝突し、ガスミストが生成される。ガスはさらにガス供給部35及びガス導入部36からもガスミスト生成手段30′内に供給され、生成されたガスミストの排出圧を高める。生成されたガスミストは、ガスミスト収集部37、ガスミスト導出部38を通りガスミスト供給管39から生鮮品包装袋60に供給される。生鮮品包装袋60には、適度な加圧状態(約1.02〜2.5気圧程度)になるようガスミストが封入されるのが望ましい。
【0035】
なお、この生鮮品消毒殺菌保存装置1′は、図2に示すように制御装置50を備えている。制御装置50は、CPU、メモリ、ディスプレイを備えたコンピュータから構成され、ガス供給手段10や液体供給手段20からのガス、液体の温度、供給圧、供給量、供給のオン・オフや、バルブの切替、真空ポンプ70の駆動等の各種制御を行う。
【0036】
また、生鮮品消毒殺菌保存装置1′ではガス供給手段10からガスミスト生成手段30′のガス供給部35の間に、流量バルブ41を設けてガスミスト生成手段30′へのガス流量の調整を可能にすると共に、ガスミスト供給管39に、ガスミスト生成手段30′のガスミスト導出部38からのガスミストとガス供給手段10からのガスを切り換える切換弁42を設け、生鮮品包装袋60内のガス濃度の調節、ガスミスト量の調整等を可能にしている。
【0037】
次に、上述の本生鮮品消毒殺菌保存装置1′を使用する際の手順について、図3を用いて説明する。
【0038】
まず、生鮮品包装袋60内に生鮮品100を収容した状態で、生鮮品包装袋60内の空気を排気口63から抜き、ガスミスト生成手段30でオゾンガスミストを生成し、生鮮品包装袋60内に注入する(ステップS1)。
【0039】
次に、生鮮品包装袋60内にオゾンガスミストが適度に注入されたら、オゾンガスミストの供給を停止し、そのまま所定時間(t1)密封状態を保つ(ステップS2)。
【0040】
次いで、生鮮品包装袋60内のオゾンガスミストを排気口63から抜き、ガスミスト生成手段30で炭酸ガスミストを生成し、生鮮品包装袋60内に注入する(ステップS3)。
【0041】
そして、生鮮品包装袋60内に炭酸ガスミストが適度に注入されたら、炭酸ガスミストの供給を停止し、そのまま所定時間(t2)密封状態を保つ(ステップS4)。
【0042】
次いで、真空ポンプ70によって生鮮品包装袋60内の前記炭酸ガスミストを抜き取る(ステップS5)。
【0043】
次いで、真空になった生鮮品包装袋60に封をして、生鮮品100を真空パックにする(ステップS6)。この状態で生鮮品100の出荷、運搬、保存等を行う。これで生鮮品100の消毒殺菌保存処理が完了する。
【0044】
なお、上記ではガス供給手段10が供給するガスとして、オゾンガスと炭酸ガスを用いているが、これに、酸化を防止する目的で窒素ガスをさらに用いても良い。図4に窒素ガス供給手段10cを加えた生鮮品消毒殺菌保存装置1Aの概略を示す。なお図1に示す実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。また、図5はこの生鮮品消毒殺菌保存装置1Aを使用する際の手順を示すフローチャートである。
【0045】
これらの図に示すように、生鮮品消毒殺菌保存装置1Aは、ガス供給手段10Aとしてオゾンガス供給手段10a、炭酸ガス供給手段10bに加えて窒素ガス供給手段10cを備えている。窒素ガス供給手段10cは、ガスミスト生成手段30に窒素ガスを供給する。
【0046】
そして、生鮮品の消毒殺菌保存を行う際には、まず生鮮品包装袋60内に生鮮品100を収容した状態で、生鮮品包装袋60内の空気を排気口63から抜き、ガスミスト生成手段30でオゾンガスミストを生成し、生鮮品包装袋60内に注入する(ステップS11)。
【0047】
次に、生鮮品包装袋60内にオゾンガスミストが適度に注入されたら、オゾンガスミストの供給を停止し、そのまま所定時間(t1)密封状態を保つ(ステップS12)。
【0048】
次いで、生鮮品包装袋60内のオゾンガスミストを排気口63から抜き、ガスミスト生成手段30で炭酸ガスミストを生成し、生鮮品包装袋60内に注入する(ステップS13)。
【0049】
そして、生鮮品包装袋60内に炭酸ガスミストが適度に注入されたら、炭酸ガスミストの供給を停止し、そのまま所定時間(t2)密封状態を保つ(ステップS14)。
【0050】
次いで、生鮮品包装袋60内の炭酸ガスミストを排気口63から抜き、ガスミスト生成手段30で窒素ガスミストを生成し、生鮮品包装袋60内に注入する(ステップS15)。
【0051】
そして、生鮮品包装袋60内に窒素ガスミストが適度に注入されたら、窒素ガスミストの供給を停止し、そのまま所定時間(t3)密封状態を保つ(ステップS16)。
【0052】
次いで、真空ポンプ70によって生鮮品包装袋60内のガスミストを抜き取る(ステップS17)。
【0053】
次いで、真空になった生鮮品包装袋60に封をして、生鮮品100を真空パックにする(ステップS18)。この状態で生鮮品100の出荷、運搬、保存等を行う。これで生鮮品100の消毒殺菌保存処理が完了する。
【0054】
液体供給手段20は、上述のようにガス混合液の生成手段に代えても良い。図6にその概要を示す。図6に示すように、生鮮品消毒殺菌保存装置1Bは、ガスミスト生成手段30への液体供給手段として、ガス混合液生成手段20Bを備えている。ここで、本生鮮品消毒殺菌保存装置1Bのガス供給手段10Bは、ガスミスト生成手段30のほかガス混合液生成手段20Bにもガスを供給可能に設けられ、ガス混合液生成手段20Bは、ガス供給手段10Bから供給されたガスを液体中に溶け込ませてガス混合液とする。
【0055】
具体的には、ガスを液中で消滅し難い粒径まで微細化したマイクロバブル(好適には、気泡の大きさが4乃至50ミクロンメートル)にして均一に含有させ、このマイクロバブルを含む液体を供給するマイクロバブル混合液生成手段とするのが好ましい。このマイクロバブル混合液生成手段は、例えば、ガスと液体とを取り込んで混合する混合ポンプと、複数の突起が配置され閉じられた流水経路において、流水圧力がかけられた状態でその複数の突起に衝突させ撹拌することで混合ポンプからの液体に含まれるガスを微細化してマイクロバブル化する撹拌手段を備えたラインミキサなどから構成される。
【0056】
なお、上記各実施例では、生鮮品100にオゾンガスミスト、炭酸ガスミスト、窒素ガスミストを接触させる工程をそれぞれ別工程としているが、ガスミストをオゾンガスと炭酸ガスの混合ガス(もしくはオゾンガス、炭酸ガス、窒素ガスの混合ガス)から生成することで、これを一工程に短縮することもできる。図7にその手順を示す。
【0057】
まず、生鮮品包装袋60内に生鮮品100を収容した状態で、生鮮品包装袋60内の空気を排気口63から抜き、ガスミスト生成手段30で混合ガスミストを生成し、生鮮品包装袋60内に注入する(ステップS21)。
【0058】
次に、生鮮品包装袋60内に混合ガスミストが適度に注入されたら、オゾンガスミストの供給を停止し、そのまま所定時間(t4)密封状態を保つ(ステップS22)。
【0059】
次いで、真空ポンプ70によって生鮮品包装袋60内のガスミストを抜き取る(ステップS23)。
【0060】
次いで、真空になった生鮮品包装袋60に封をして、生鮮品100を真空パックにする(ステップS24)。この状態で生鮮品100の出荷、運搬、保存等を行う。これで生鮮品100の消毒殺菌保存処理が完了する。
【0061】
上記では、生鮮品包装袋60にガスミスト供給口62と排出口63とを別々に設ける例を示したが、これらを兼用することもできる。図8に示す生鮮品消毒殺菌保存装置1Cでは、生鮮品包装袋60Cはガスミスト供給口と排出口に代えて、両方を兼ねるガスミスト供給及び排出口65を備えている。この生鮮品消毒殺菌保存装置1Cでは、生鮮品包装袋60Cへのガスミストの供給と排出の切り替えを、切替バルブ81の操作により行う。そして、生鮮品包装袋60C内にガスミストを注入する際は、まずガスミスト供給及び排出口65から生鮮品包装袋60C内のガスを排出してから、切替バルブ81を切り替えて行う。このように、ガスミスト供給口と排出口とを兼ねた一つのガスミスト供給及び排出口65とすることで、生鮮品包装袋60Cの構造を簡略化、単純化することができる。
【0062】
上記のように、本発明の生鮮品消毒殺菌保存装置及び方法によれば、生鮮品をオゾンガスミスト及び炭酸ガスミストに接触させることにより、殺菌、ウイルスの不活化、バクテリア、カビ、害虫などの発生の防止と共に、生鮮品の鮮度を維持し変質や品質劣化を抑制して保存性を高めることができる。そのため農薬や保存料の低減を図ることが可能となる。
【0063】
本発明で用いるオゾンガス、炭酸ガスは、双方とも残留毒性がないため、本生鮮品消毒殺菌保存装置を食品に用いても非常に安全である。
【0064】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、オゾンガス、炭酸ガス、又はこれらの混合ガスによって、生鮮品を消毒殺菌し保存性を高める生鮮品消毒殺菌保存装置及び方法に関し、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0066】
1 生鮮品消毒殺菌保存装置
1′ 生鮮品消毒殺菌保存装置
1A 生鮮品消毒殺菌保存装置
1B 生鮮品消毒殺菌保存装置
1C 生鮮品消毒殺菌保存装置
10 ガス供給手段
10A ガス供給手段
10a オゾンガス供給手段
10b 炭酸ガス供給手段
10c 窒素ガス供給手段
20 液体供給手段
20B ガス混合液生成手段
30 ガスミスト生成手段
30′ ガスミスト生成手段
31 液体貯留部
32 ノズル
33 吸液管
34 バッフル
35 ガス供給部
36 ガス導入部
37 ガスミスト収集部
38 ガスミスト導出部
39 ガスミスト供給管
41 流量バルブ
42 切換弁
50 制御装置
60 生鮮品包装袋
60C 生鮮品包装袋
61 開口部
62 ガスミスト供給口
63 排出口
64 開閉手段
70 真空ポンプ
81 切替バルブ
100 生鮮品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾンガス、炭酸ガス、又はこれらの混合ガス(以下、「ガス」という)を供給するガス供給手段と、
液体を供給する液体供給手段と、
前記ガス供給手段及び液体供給手段から供給されたガスと液体とを粉砕溶解したミスト(以下、「ガスミスト」という)を生成するガスミスト生成手段と、
内部に生鮮品を収容すると共に、前記ガスミスト生成手段からのガスミストを内部に封入する空間を形成する生鮮品包装袋と、
生鮮品包装袋内の前記ガスミストを抜き取るためのガス抜き手段と、を備え、
オゾンガス及び炭酸ガスをガスミストの状態で生鮮品に接触させることにより、生鮮品の消毒殺菌や鮮度維持を図ることを特徴とする生鮮品消毒殺菌保存装置。
【請求項2】
前記生鮮品消毒殺菌保存装置における各種制御を行う制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の生鮮品消毒殺菌保存装置。
【請求項3】
前記ガス供給手段が、さらに窒素ガス、又はオゾンガス、炭酸ガス、及び窒素ガスの混合ガスを供給することを特徴とする請求項1に記載の生鮮品消毒殺菌保存装置。
【請求項4】
前記液体供給手段が、ガスを微細化して液中に含有させるガス混合液の生成供給手段であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の生鮮品消毒殺菌保存装置。
【請求項5】
前記ガス混合液生成供給手段が、前記ガスを4乃至50ミクロンメートルに微細化したマイクロバブルにして液中に含有させることを特徴とする請求項4に記載の生鮮品消毒殺菌保存装置。
【請求項6】
(a)生鮮品を収容した生鮮品包装袋内の空気を抜き、オゾンガスと液体とを粉砕溶解したミスト(以下、「ガスミスト」という)であるオゾンガスミストを生鮮品包装袋内に注入するステップと、
(b)生鮮品包装袋内を所定時間t1の間密封して生鮮品をオゾンガスミストに接触させるステップと、
(c)生鮮品包装袋内のオゾンガスミストを抜き、炭酸ガスと液体とを粉砕溶解した炭酸ガスミストを生鮮品包装袋内に注入するステップと、
(d)生鮮品包装袋内を所定時間t2の間密封して生鮮品を炭酸ガスミストに接触させるステップと、
(e)生鮮品包装袋内の前記炭酸ガスミストを抜き取るステップと、
(f)生鮮品包装袋を封じて真空パックとするステップと、
を備え、オゾンガス及び炭酸ガスをガスミストの状態で生鮮品に接触させることにより、生鮮品の消毒殺菌や鮮度維持を図ることを特徴とする生鮮品消毒殺菌保存方法。
【請求項7】
前記ステップ(d)とステップ(e)の間に、
(g)生鮮品包装袋内のオゾンガスミストを抜き、窒素ガスと液体とを粉砕溶解した窒素ガスミストを生鮮品包装袋内に注入するステップと、
(h)生鮮品包装袋内を所定時間t3の間密封して生鮮品を窒素ガスミストに接触させるステップと、
をさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の生鮮品消毒殺菌保存方法。
【請求項8】
(a)生鮮品を収容した生鮮品包装袋内の空気を抜き、オゾンガス及び炭酸ガスの混合ガスと液体とを粉砕溶解したミスト(以下、「ガスミスト」という)である混合ガスミストを生鮮品包装袋内に注入するステップと、
(b)生鮮品包装袋内を所定時間t4の間密封して生鮮品を混合ガスミストに接触させるステップと、
(c)生鮮品包装袋内の前記混合ガスミストを抜き取るステップと、
(d)生鮮品包装袋を封じて真空パックとするステップと、
を備え、オゾンガス及び炭酸ガスをガスミストの状態で生鮮品に接触させることにより、生鮮品の消毒殺菌や鮮度維持を図ることを特徴とする生鮮品消毒殺菌保存方法。
【請求項9】
前記混合ガスに、さらに窒素ガスを加えることを特徴とする請求項8に記載の生鮮品消毒殺菌保存方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−85573(P2012−85573A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234441(P2010−234441)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(505425878)
【出願人】(592248835)日本エー・シー・ピー株式会社 (56)
【Fターム(参考)】