説明

産卵鶏用飼料添加剤及び該剤を含有する飼料

【課題】卵殻強化の効果に優れ、特に産卵後半の卵殻質改善に効果を示し、また、強制換羽、ゲージ移動などによるストレスを緩和し、産卵率の低下を抑制することができる産卵鶏用飼料添加剤が提供される。
【解決手段】ラクトビオン酸又はラクトビオン酸の塩からなる産卵鶏用の飼料添加剤及びラクトビオン酸又はラクトビオン酸の塩からなる産卵鶏用の飼料添加剤と飼料を含有することを特徴とする飼料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産卵鶏用飼料添加剤及び該剤を含有する飼料に関するものであり、さらに詳しくは、卵殻強化効果を有する飼料添加剤及び該剤を含有する飼料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鶏卵等の鳥類の卵は、多種類の栄養成分を含有する非常に栄養価の高い食品であると共に、調理性もよく、重要な食料資源である。しかし、鶏が産卵した後、消費者の手元に届くまでの過程において、卵の殻が割れること(破卵)や卵殻に微少なヒビが入ること(ヒビ卵)があり、破卵やヒビ卵は商品価値をなくす若しくは減ずる為に、コストの上昇原因となっている。特に自動検出機の導入により卵包装センターでのヒビ卵排除率は以前の7〜8%から現在は12〜15%に達しており、鶏卵業者の収益圧迫の大きな要因である。
【0003】
破卵やヒビ卵は、ストレスやカルシウムの利用不良等が原因で卵殻が弱くなってしまうため発生すると考えられている。卵殻の形成に関わるカルシウムは、主として飼料より吸収される為、飼料中のカルシウムが不足すると卵殻が薄く弱くなることはよく知られている。
【0004】
破卵やヒビ卵対策としては、1)採卵期間を短くすること、2)強制換羽(絶食による休産)、3)卵殻強化剤の投与が行われている。
【0005】
上記3)の卵殻強化剤としては、例えば、カルシウム源となる牛骨粉や炭酸カルシウム、カルシウムの吸収率を促進させる働きを持つCPP(カゼインホスホペプチド)(特許文献1参照)、更には、卵殻自体を強化するためのカニ殻と卵殻を支持している卵殻膜を強化するキトサン等を配合した卵殻強化剤(特許文献2参照)がある。その他にもポリ−γ−グルタミン酸を含有する飼料(特許文献3参照)やトレハロースからなる卵殻強化剤(特許文献4参照)も知られている。
【0006】
一方、O−β−D−ガラクトピラノシル−(1−4)−D−グルコン酸で表されるラクトビオン酸は、米国では既にFDAの認可を受け、凝固剤としてプリンのプレミックスに添加されたり、保湿剤として化粧品に利用されている。機能面では、ラクトビオン酸はビフィズス菌選択増殖活性を持ち(特許文献5参照)、ミネラル吸収促進効果があること(特許文献6参照)が報告されている。また、ラクトビオン酸と鉄及び銅とから形成されるキレートを投与し、その結果、ヘモグロビン値が増加し、貧血が改善されたことが報告されている(非特許文献1参照)。ラクトビオン酸に卵殻強化作用があることは全く知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1−285158号公報
【特許文献2】特開平9−47232号公報
【特許文献3】特開平9−28309号公報
【特許文献4】特開2001−95499号公報
【特許文献5】特開平7−277990号公報
【特許文献6】特開平7−277991号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】The American Journal of Clinical Nutrition, 1982, Vol. 36, N o. 6, p1162−1169
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、2)強制換羽は、動物愛護の点から問題視されていることに加えて、サルモネラ感染を誘発するとの報告があり、鶏卵の安全性が問題となっている。また、強制換羽やゲージ移動などのストレスにより産卵率が低下することが問題となっている。
【0010】
3)卵殻強化剤の従来のものは、産卵後半においてその効果が低下することが問題となっていた。
【0011】
本発明は、卵殻強化の効果に優れ、特に産卵後半の卵殻質改善に効果が期待でき、また、強制換羽、ゲージ移動などによるストレスを緩和し、産卵率の低下を抑制することができる産卵鶏用飼料添加剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究したところ、一般式がO−β−D−ガラクトピラノシル−(1−4)−D−グルコン酸で表されるラクトビオン酸或いはその塩が顕著に卵殻強度を向上させることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、ラクトビオン酸又はその塩からなる産卵鶏用飼料添加剤を要旨とするものである。また、本発明の別の態様は、ラクトビオン酸又はその塩からなる産卵鶏用飼料添加剤を含有することを特徴とする飼料を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、鶏卵等の卵殻の強化が達成できるので、鶏卵等の破卵率やヒビ卵率を低減させることができる。また、鶏等の糞便臭を軽減することも可能である。さらに、ゲージ移動、強制換羽などによるストレスを緩和し、産卵率、卵質、卵殻質の改善をすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、産卵率の経時変化を表す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明で用いられるラクトビオン酸は、一般式がO−β−D−ガラクトピラノシル−(1−4)−D−グルコン酸で表されるものであり、乳糖を酸化することにより得られる。
具体的な方法としては、乳糖を基質としてラクトースデヒドロゲナーゼ活性を有するシュードモナス・グラヴェオレンスなどの微生物を作用させる、また、乳糖を臭素などで酸化することにより得ることもできるが、乳糖を基質とするオキシダーゼや該酵素を有するアシネトバクター属やブルクホルデリア属などの微生物を用いて乳糖を酸化することによって得る方法(詳細は、特開2001−245657号公報参照)が最も経済的である。
【0018】
本発明で用いられるラクトビオン酸の塩には、カルシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩などが挙げられ、これらは、中和等通常の塩変換反応により調製することができる。そのうちカルシウム塩は、酵素や微生物を利用した生体変換反応により乳糖からラクトビオン酸を生産する際において反応系に炭酸カルシウムをあらかじめ添加しておく方法によっても調製することができ、この方法がより簡便である。
【0019】
一般的に、カルシウムが吸収されるには、腸管内で可溶性状態にあることが必須であるが、ラクトビオン酸カルシウムは水への溶解度が非常に高い為(>40g/100mL)、カルシウム補給効果に優れ、他のカルシウム源がない場合であってもそれ単独で卵殻のカルシウム供給源となりえる。
【0020】
本発明の産卵鶏用飼料添加剤は、上記したラクトビオン酸又はその塩からなるものであり、使用上の便宜を考慮し、これらを粉末、水溶液、圧縮ペレットに加工して産卵鶏用飼料添加剤とすることができる。
【0021】
本発明の産卵鶏用飼料添加剤は、鶏に直接投与するか、あるいは鶏用飼料や飲料水に添加して与えることにより、与えない場合と比較して卵殻を強化し、破卵率やヒビ卵率を低下することができる。尚、本発明の産卵鶏用飼料添加剤を与える鳥類の種類に制限はなく、鶏の他、ウズラ、アヒルなどにも使用できる。すなわち、本発明での「産卵鶏」には、ウズラ、アヒルなども含むものである。
【0022】
本発明の飼料は、上記の産卵鶏用飼料添加剤をベースとなる飼料に添加することにより得ることができる。
【0023】
ベースとなる鶏用飼料は、通常鶏の飼料として用いられているものであればよく、例えばとうもろこし、マイロ、大豆粕、魚粉、小麦粉等の有機質栄養源、食塩、リン酸カルシウム、炭酸カルシウムなどの無機質栄養源、ビタミン類、金属類、抗生物質などの微量飼料添加物を配合したものが用いられる。
【0024】
ベースとなる飼料への産卵鶏用飼料添加剤の添加量は、0.01から10重量%が好ましく、0.05から1重量%がより好ましく、0.1から0.5重量%が最も好ましい。
少なすぎる場合、効果が現れるのに時間を要することが多く、多すぎる場合は、栄養バランスやコストの面で問題が生じることがある。ラクトビオン酸を産卵鶏用飼料添加剤として添加する場合は、リン酸カルシウムや炭酸カルシウムなどのカルシウム源の同時添加が好ましいが、ラクトビオン酸カルシウムを産卵鶏用飼料添加剤として添加する場合は、必ずしも他のカルシウム源の同時添加は必須ではない。
【0025】
飼料への産卵鶏用飼料添加剤の添加方法は特に限定されず、例えば、粉末のまま添加する方法、水溶液として添加する方法、圧縮ペレットとして添加する方法などが採用される。尚、飼料の形態(粉末、固形)やその給餌方法、給餌時期(産卵鶏の日齢)は、特に問わない。
【0026】
本発明の飼料の産卵鶏への投与量としては、それに含まれる産卵鶏用飼料添加剤の一日あたりの投与量として10mgから10gが好ましく、50mgから1.0gがより好ましく、0.1gから0.5gが最も好ましい。
【0027】
また、副次的な効果として、ラクトビオン酸或いはその塩からなる産卵鶏用飼料添加剤を鶏に直接投与するか、あるいは鶏用飼料に添加して与えることにより、与えない場合と比較して糞便臭が著しく低減されることが判明した。現在においても、養鶏場における糞便臭は大きな問題となっているが、日本国において2004年3月末からは、畜産排泄物管理法の成立により糞便は土間セメント張り屋根付きの倉庫に収容が義務づけられ、乾燥して出荷しなければならなくなることから、糞便臭の低減剤の開発は緊急課題になると予想される。
【0028】
本発明の産卵鶏用飼料添加剤の糞便臭の低減効果は、ラクトビオン酸或いはその塩の有する整腸作用に起因すると考えられる。
【実施例1】
【0029】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0030】
[実施例1]〔ラクトビオン酸カルシウムの調製〕
ラクトース1000gとCaCO825gを含む10mMリン酸緩衝液(pH7.0)5Lに、GRINDAMYL SURE BAKE 800(ダニスコ社製、海藻由来ヘキソースオキシダーゼの組み替え酵素)200gを懸濁して反応液とした。この反応液を、攪拌・通気(1分当たり反応液の0.5倍体積量の空気を吹き込む)しながら、30℃で2日間反応させた。そして、前記反応液を遠心分離(10,000rpm、30分間、4℃)してCaCOを除去した後、得られた上清を、脱イオン水で平衡化した活性炭カラム(φ5×40cm)に供し、脱イオン水1500mlにより通過(溶出)させた。
回収した通過液を減圧濃縮して300mLまで濃縮し、2.3倍量のエタノールを加えることにより沈殿させた。この沈殿物を減圧乾燥することにより、ラクトビオン酸カルシウム1020gが得られた。
【0031】
このラクトビオン酸のHPLC分析(カラム:Asahipak NHP−50(Shodex社製)、溶離液:アセトニトリル/40mMクエン酸−NaHPO緩衝液(pH5.0)=60/40(体積比)、温度 : 40℃、流速 : 0.8ml/min、検出器 : 示差屈折計 (Waters 410:ウォーターズ社製)を行なった結果、不純物の溶出ピークは検出されず、高純度のラクトビオン酸であることが確認された。得られたラクトビオン酸カルシウムと他のカルシウム塩(和光純薬社製)の水への溶解度を比較した結果を表1に示した。ラクトビオン酸カルシウムは他のカルシウム塩に比し、非常に水溶性が高いことが分かる。
【0032】
【表1】

【0033】
[実施例2〜5]〔飼料の調製〕
表2に示した組成の産卵鶏用基礎飼料に、実施例1で調製したラクトビオン酸カルシウムを0.05、0.1、1.0、2.0重量%濃度で添加して飼料を調製した。これらをそれぞれ実施例2〜5とした。
【0034】
【表2】

注1)1kg中;Mn 80g、Zn 50g、Fe 6g、Cu 0.6g、I 1g
注2)1g中;ビタミンA 10,000IU、ビタミンD 2,000IU、ビタミンE 20mg
注3)1kg中;硝酸チアミン2.0g、リボフラビン10.0g、塩酸ピリドキシン2.0g、ニコチン酸アミド2.0g、D−パントテン酸カルシウム4.35g、塩化コリン138.0g、葉酸1.0g
【0035】
[試験例1]
実施例2〜5で調製した飼料を、それぞれの飼料につき10羽ずつの470日齢の産卵鶏(白レグ種採卵鶏(ジュリア))に、60日間給餌して、産卵率、破卵率及びヒビ卵率、卵殻強度を測定した。産卵率は下記数1により求め、破卵率及びヒビ卵率は下記数2により求め、卵殻強度は卵を横置きにしてレオメ−タ−にて破裂強度を測定した。なお、産卵鶏用飼料添加剤を添加しない飼料を対照として調製した。また、試験期間中の鶏の死亡例はなかった。これらの結果を表3に示す。
【0036】
[数1]
産卵率(%)=(各実験区の総産卵数/対照区の総産卵数)×100
【0037】
[数2]
破卵率及びヒビ卵率(%)=(ひびや割れが生じた卵の数/総産卵数)×100
【0038】
【表3】

【0039】
表3の結果から、実施例2〜5の各試験区とも、対照区と比較して産卵数には違いは見られなかったが、破卵率及びヒビ卵率の低下、卵殻強度の向上が明らかに認められた。また、実施例2〜5の各試験区とも、対照区と比較して卵重量にも違いは認められなかった。尚、実施例2〜5の各試験区においては、糞便臭が低減することが認められ、特に実施例4〜5の試験区において、その傾向が顕著であった。
【0040】
[実施例6〜9]〔飼料の調製〕
表2に示した組成の産卵鶏用基礎飼料に、ラクトビオン酸(和光純薬社製)を0.05、0.1、1.0、2.0重量%濃度で添加して飼料を調製した。これらをそれぞれ実施例6〜9とした。
【0041】
[試験例2]
実施例6〜9で調製した飼料を、それぞれの飼料につき10羽ずつの280日齢の産卵鶏(白レグ種採卵鶏(ジュリア))に、70日間給餌して、実施例2〜5と同様に産卵率、破卵率及びヒビ卵率、卵殻強度を測定した。なお、試験期間中の鶏の死亡例はなかった。これらの結果を表4に示す。
【0042】
【表4】

【0043】
表4の結果から、実施例6〜9の各試験区とも、対照区と比較して産卵数には違いは見られなかったが、破卵率及びヒビ卵率の低下、卵殻強度の向上が明らかに認められた。また、実施例6〜9の各試験区とも、対照区と比較して卵重量にも違いは認められなかった。尚、実施例6〜9の各試験区においては、糞便臭が低減することが認められ、特に実施例8〜9の試験区において、その傾向が顕著であった。
【0044】
[実施例10〜11]
表2に示した組成の産卵鶏用基礎飼料の配合組成から炭酸カルシウムとリン酸二石灰を除いた飼料に、実施例1で調製したラクトビオン酸カルシウムを1.0、2.0重量%濃度で添加して飼料を調製した。これらをそれぞれ実施例10〜11とした。
【0045】
[試験例3]
実施例10〜11で調製した飼料を、それぞれの飼料につき10羽ずつの470日齢の産卵鶏(白レグ種採卵鶏(ジュリア))に、60日間給餌して、実施例2〜5と同様に産卵率、破卵率及びヒビ卵率、卵殻強度を測定した。なお、試験期間中の鶏の死亡例はなかった。これらの結果を表5に示す。
【0046】
【表5】

【0047】
表5の結果から、実施例10〜11の各試験区とも、対照区と比較して産卵数には違いは見られなかったが、破卵率及びヒビ卵率の低下、卵殻強度の向上が明らかに認められ、飼料にラクトビオン酸カルシウム以外のカルシウム源を加えなくても、ラクトビオン酸カルシウム単独で卵殻強化作用を示すことが判明した。また、実施例10〜11の各試験区とも、対照区と比較して卵重量にも違いは認められなかった。尚、実施例10〜11の試験区においては、糞便臭が顕著に低減していた。
【0048】
実施例12〜14〔飼料の調製〕
表2に示した組成の産卵鶏用基礎飼料に、ラクトビオン酸カルシウムを0.1、0.5、1.0重量%濃度で添加して飼料を調製した。これらをそれぞれ実施例12〜14とした。
【0049】
(試験例4)
実施例12〜14で調製した飼料を、ぞれぞれの飼料につき4羽ずつの500日齢の産卵鶏(ボリスブラウン種)に、60日間給餌して、実施例2〜5と同様に産卵率、卵殻強度を測定した。なお、試験期間中の鶏の死亡例は無かった。これらの結果を表6に示す。
【0050】
【表6】

【0051】
表6の結果から、実施例12〜14の各試験区とも、卵殻強化の向上が明らかに認められ、飼料にラクトビオン酸カルシウムを加えることで卵殻強化作用を示すことが判明した。また、実施例12〜14の各試験区とも、対照区と比較して卵重量にも違いは認められなかった。
【0052】
(試験例5)
実施例12〜14で調整した飼料を、それぞれの飼料につき4羽ずつの500日齢の産卵鶏(ボリスブラウン種)に、9週間給餌して、毎週ごとに産卵鶏の糞便を回収した。これを10倍量の蒸留水で懸濁し、上清に含まれる酢酸量をHPLCにより定量した。HPLCの条件はカラムにAminex HPX 87H(300×φ7.8mm、BIORAD社製)を用い、カラム温度を60℃とした。展開溶媒に0.005N硫酸を用い、試料測定量30μl、流速0.6ml/min、検出器RIの条件でサンプルを分析した。
その結果を表7に示した。
【0053】
【表7】

【0054】
表7の結果から、実施例12〜14の各試験区とも、対照区と比較して酢酸含量が増大していた。これは、腸内細菌がラクトビオン酸カルシウムを資化し、増殖が促進され、腸内細菌による酢酸の生産が増大していると考えられた。ラクトビオン酸カルシウムによりに産卵鶏の腸内細菌が増大していると考えられ、腸内環境の改善がなされ糞便臭の低減につながっていると考えられた。
【0055】
(試験例6)
実施例12〜14で調整した飼料を、それぞれの飼料につき4羽ずつの500日齢の産卵鶏(ボリスブラウン種)に、ケージ移動直後、3週間給餌して、その産卵率を計算した。その結果を図1にまとめた。
図1の結果から、対象区はケージ移動のストレスにより、産卵率の低下が見られるが、実施例12〜14の各試験区とも、対象区と比較して産卵率が高かった。これはラクトビオン酸カルシウムにより産卵鶏のストレスが緩和された結果によるものと考えられた。
【0056】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2004年2月6日出願の日本特許出願(特願2004−030898)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明により、卵殻強化の効果に優れ、特に産卵後半の卵殻質改善に効果を示し、また、強制換羽、ゲージ移動などによるストレスを緩和し、産卵率の低下を抑制することができる産卵鶏用飼料添加剤が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトビオン酸又はラクトビオン酸の塩を含む産卵鶏用の飼料添加剤。
【請求項2】
卵殻強化剤である請求項1記載の飼料添加剤。
【請求項3】
ストレス緩和剤である請求項1記載の飼料添加剤。
【請求項4】
産卵率低下の抑制剤である請求項1記載の飼料添加剤。
【請求項5】
ラクトビオン酸の塩が、ラクトビオン酸のカルシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩から選ばれる1以上である請求項1記載の飼料添加剤。
【請求項6】
ラクトビオン酸の塩が、ラクトビオン酸のカルシウム塩である請求項1記載の飼料添加剤。
【請求項7】
請求項1記載の飼料添加剤と飼料を含有する飼料。
【請求項8】
有効量のラクトビオン酸又はラクトビオン酸の塩を投与する工程を含む産卵鶏の卵殻強化方法。
【請求項9】
有効量のラクトビオン酸又はラクトビオン酸の塩を投与する工程を含む産卵鶏のストレス緩和方法。
【請求項10】
有効量のラクトビオン酸又はラクトビオン酸の塩を投与する工程を含む産卵鶏の産卵率低下抑制方法。
【請求項11】
ラクトビオン酸又はラクトビオン酸の塩の産卵鶏の卵殻強化のための使用。
【請求項12】
ラクトビオン酸又はラクトビオン酸の塩の産卵鶏のストレス緩和のための使用。
【請求項13】
ラクトビオン酸又はラクトビオン酸の塩の産卵鶏の産卵率低下抑制のための使用。

【図1】
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【公開番号】特開2012−55319(P2012−55319A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−267077(P2011−267077)
【出願日】平成23年12月6日(2011.12.6)
【分割の表示】特願2005−517722(P2005−517722)の分割
【原出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】