説明

産業用ベルト

【課題】バイオマス由来ポリマーを石油系ポリマーと併用することで、環境に優しく、物性的に遜色がなく、かつバイオマス由来ポリマーの生産量に大きく依存せず経済的に生産できる産業用ベルトを提供する。
【解決手段】繊維構造物を樹脂あるいはゴムで被覆してなる産業用ベルトにおいて、前記繊維構造物をバイオマス由来ポリマーを含んだ繊維にて構成し、かつ、前記バイオマス由来ポリマーの含有率をベルト全体の25質量%以上とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンベアベルト等の産業用ベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の合成繊維はその大部分が石油などの化石燃料資源を原料としているのであるが、該化石燃料資源は近年、埋蔵残量が懸念されるだけでなく、廃棄時の焼却処分で発生する二酸化炭素が地球温暖化を誘引するとして大きな社会問題となっており、新たな資源の探索・開発が急務となっている。
【0003】
このような状況下、バイオマス由来物質は、廃棄後も余分な二酸化炭素を産出しない資源として注目を集めている。バイオマス由来物質から製造された資材等は、燃焼させても、その際に発生する二酸化炭素はもともと大気中に存在したものであり、人類の産業活動のタイムスケールにおいて大気中の二酸化炭素のマクロバランスとしては増加しないという考え方に基づく。このように二酸化炭素の増減に影響を与えない性質はカーボンニュートラルと称され、重要視される傾向にある。
【0004】
例えば、バイオマス由来のプラスチック製品は、石油系資源由来のプラスチック製品に比べて環境負荷が少なく、かつ炭酸ガスのバランスを崩すことがないなどの特徴を有するため、地球温暖化防止、化石燃料資源の節約、自然環境の保全に資するとの認識が社会的に定着しつつある。一方、バイオマス由来のプラスチック製品の普及促進を図るために、既存の石油系資源由来のプラスチック製品と識別するための制度として、民間の任意団体である日本バイオプラスチック協会が「バイオマスプラ識別表示制度」を提唱し、その中で、バイオマス由来ポリマー成分を25.0質量%以上含むことを認定基準としている。
【0005】
ここで、産業用ベルトに焦点をあてると、合成繊維を製織しそれを基布として樹脂加工した産業用ベルトが開示されている(例えば、特許文献1)が、その全ては石油系資源由来のポリマーを使用したものである。石油系でないものとしては、ポリ乳酸繊維から構成された産業用ベルトが開示されている(例えば、特許文献2)が、制電性ベルトに特化したものである。産業用ベルトに、環境に配慮したバイオマス由来ポリマーを使用すること及びその必要性に言及した例は見られない。
【特許文献1】特開平11−059844号公報
【特許文献2】特開2004−044002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題に鑑み、バイオマス由来ポリマーを石油系資源由来のポリマー(以下、石油系ポリマーという)と併用することで、環境に配慮しつつ、バイオマス由来ポリマーの生産量に大きく依存せず経済的に生産できる産業用ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究した結果、バイオマス由来ポリマーを25質量%以上の範囲で含有させることにより、環境に優しく、かつ物性的に遜色のない産業用ベルトが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち本発明の産業用ベルトは、繊維構造物を樹脂あるいはゴムで被覆してなり、前記繊維構造物がバイオマス由来ポリマーを含んだ繊維にて構成され、かつ、バイオマス由来ポリマーの含有率がベルト全体の25質量%以上であることを特徴とする。
【0009】
前記繊維構造物は、バイオマス由来ポリマーを芯部に配するとともに石油系ポリマーを鞘部に配した芯鞘型複合繊維により構成されたものとすることができる。また前記芯鞘型複合繊維は、鞘部がポリエチレンテレフタレートからなり、芯部がポリ乳酸からなるものとすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の産業用ベルトは、バイオマス由来ポリマーを25質量%以上含有しているため、石油系ポリマーをほぼ全成分とする従来の産業用ベルトに比べて、焼却廃棄にあたっても大気中の二酸化炭素を増加させる度合いが少なく、地球温暖化を軽減する効果を奏する。また脂肪族成分がリッチであるバイオマス系ポリマーを構成成分として25質量%以上含んでいながら、産業用ベルトに求められる力学特性などにおいて優れた性能を保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の産業用ベルトは、バイオマス由来ポリマーを含んだ繊維で構成された繊維構造体を補強体として、この繊維構造体の例えば上部および下部を被覆する樹脂層を形成してなる。繊維構造体は単層でも2層以上でもよく、2層以上とする場合には通常、その層間に樹脂層などを存在させる。
【0012】
バイオマス由来ポリマーはベルト全体の25質量%以上含有させる。25質量%未満とすれば、残部に用いる汎用ポリマーの含有割合が多くなり、産業用ベルトとしての力学物性などに関しては好ましい傾向にあるが、本発明が目的とする環境負荷の軽減、カーボンニュートラルにはそぐわず、上述のバイオプラスチックの認定にも当てはまらない。
【0013】
使用するバイオマス由来のポリマーは、溶融紡糸が可能であればよく、特に限定されるものではない。たとえば、PLA(ポリ乳酸)、PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)やPBS(ポリブチレンサクシネート)など、バイオマス由来のモノマーを化学的に重合してなるポリマー類や、ポリヒドロキシ酪酸等のPHA(ポリヒドロキシアルカノエート)などの微生物生産系ポリマー類が使用可能である。
【0014】
これらの内、ポリ乳酸は耐熱性の点で安定であり、量産化されてきてもいるため好ましい。具体例としては、ポリD−乳酸、ポリL−乳酸、ポリD−乳酸とポリL−乳酸との共重合体であるポリDL−乳酸、ポリD−乳酸とポリL−乳酸との混合物(ステレオコンプレックス)、ポリD−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリL−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリD−乳酸またはポリL−乳酸と脂肪族ジカルボン酸および脂肪族ジオールとの共重合体、あるいはこれらのブレンド体などが挙げられる。
【0015】
ポリ乳酸の内では、融点が120℃以上、融解熱が10J/g以上のものが好ましい。ここで、ホモポリマーであるポリL−乳酸やポリD−乳酸の融点は約180℃であるが、D−乳酸とL−乳酸との共重合体の場合は、いずれかの成分の割合を10モル%程度とすると融点はおよそ130℃程度となり、さらに18モル%以上とすると、融点は120℃未満、融解熱は10J/g未満となって、ほぼ完全に非晶性の性質となる。非晶性のポリマーとなると、製造工程において特に熱延伸し難くなり、高強度の繊維が得られ難くなり、繊維が得られたとしても、耐熱性、耐摩耗性に劣るものとなる。
【0016】
このため、使用するポリ乳酸がD−乳酸とL−乳酸との共重合体である場合は、ラクチドを原料に重合する時のL−乳酸、D−乳酸の含有割合(モル比)として示されるL/D又はD/Lが82/18以上のものが好ましく、中でも90/10以上、さらには95/5以上のものが好ましい。
【0017】
使用するポリ乳酸が、ポリD−乳酸とポリL−乳酸との混合物(ステレオコンプレックス)であると、融点が200〜230℃と高く、摩擦熱などの影響を受けにくいため、特に好ましい。
【0018】
使用するポリ乳酸が、ポリ乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体である場合、ヒドロキシカルボン酸の具体例としては、グルコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシペンタン酸ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシオクタン酸等が挙げられる。ヒドロキシカプロン酸またはグルコール酸の使用がコスト面からも好ましい。
【0019】
また使用するポリ乳酸が、ポリ乳酸と脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールとの共重合体である場合、脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールの具体例としては、セバシン酸、アジピン酸、ドデカン二酸、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。このようにポリ乳酸に他の成分を共重合させた共重合体においては、ポリ乳酸を80モル%以上とすることが好ましい。ポリ乳酸が80モル%未満であると、共重合ポリ乳酸の結晶性が低くなり、融点120℃未満、融解熱10J/g未満となりやすい。
【0020】
ポリ乳酸の分子量に関しては、分子量の指標として用いられるASTM D−1238法に準じて、温度210℃、荷重2160gで測定されるメルトフローレートが、1〜100(g/10分)であることが好ましく、5〜50(g/10分)であることがより好ましい。メルトフローレートをこの範囲内にすることにより、強度、湿熱分解性、耐摩耗性がさらに向上する。
【0021】
ポリ乳酸の耐久性を高める目的で、ポリ乳酸に脂肪族アルコール、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、エポキシ化合物などの末端封鎖剤を添加してもよい。本発明の目的を損なわない範囲であれば、必要に応じて、ポリ乳酸中に熱安定剤、結晶核剤、艶消剤、顔料、耐光剤、耐候剤、滑剤、酸化防止剤、抗菌剤、香料、可塑剤、染料、界面活性剤、難燃剤、表面改質剤、各種無機及び有機電解質、その他類似の添加剤を添加してもよい。
【0022】
バイオマス由来ポリマーと併用するポリマーは、特に限定されるものではないが、基布に使用する場合には溶融紡糸が可能な石油系由来ポリマー(以下、石油系ポリマーともいう)であることが好ましい。具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタテート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレートに代表されるポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン11およびナイロン12に代表されるポリアミド;ポリプロピレンやポリエチレンに代表されるポリオレフィン;ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデンに代表されるポリ塩化ポリマー;ポリ4フッ化エチレンならびにその共重合体、ポリフッ化ビニリデンなどに代表されるフッ素系繊維などが挙げられる。これらの内、ポリエステルやポリアミド系ポリマーが低コストであり好ましい。バイオマス系ポリマーには脂肪族ポリエステル系ポリマーが多いので、相溶性の面からポリエステル系がより好ましい。コスト面や取扱い性からポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0023】
ポリエステル系ポリマーには、粘度、熱的特性、相溶性に鑑みて、他のモノマー成分を共重合させてもいてもよい。例えば、酸成分としては、イソフタル酸、5−スルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、コハク酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸など;アルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族ジオールなどが使用可能である。グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシオクタン酸等のヒドロキシカルボン酸;ε―カプロラクトン等の脂肪族ラクトンなどを共重合させてもよい。
【0024】
本発明の産業用ベルトにおいては、バイオマス由来ポリマーは繊維構造体に使用されるが、その使用態様については特に制限されない。たとえば、石油系ポリマーからなる繊維とバイオマス由来ポリマーからなる繊維とを合撚して使用する、生地の経緯方向に別々に製織して使用する、所定の間隔おきに石油系ポリマーからなる繊維とバイオマス由来ポリマーからなる繊維とを設定して使用する、バイオマス由来ポリマーからなる繊維に石油系ポリマーからなる繊維をカバーリングして使用する、また石油系ポリマーとバイオマス由来ポリマーとを使用した複合繊維およびこれらの組み合わせる、などが可能である。
【0025】
好ましくは、石油系ポリマーとバイオマス由来ポリマーとでは機械的物性や熱的物性が異なっているため、複合繊維として用いる。複合繊維とする場合、異形断面型複合繊維やサイドバイサイド型複合繊維、芯鞘型複合繊維など、公知の技術によって得られる複合繊維を適宜選択して用いることができるが、本発明の産業用ベルトの用途には芯鞘型複合繊維とすることが好ましい。
【0026】
かかる芯鞘型複合繊維としては、芯部と鞘部とがほぼ同心円状に配置された同心芯鞘複合繊維であることが、機械的物性や熱的物性に斑が生じにくいため好ましい。同心円状とすることで、汎用ポリマーを鞘部に用いる場合に該汎用ポリマーを均一に配する効果を奏することができる。偏心していると、鞘部の汎用ポリマー層に薄い箇所が生じ、該箇所に樹脂加工時などに収縮が発生すると目ずれやしわの原因となる。芯鞘構造の複合繊維は公知の技術によって製造することができる。
【0027】
芯鞘型複合繊維としては、バイオマス由来ポリマーを芯部に配し、その他のポリマーを鞘部に配した構造を有することが好ましい。芯部をバイオマス由来ポリマーであるポリ乳酸とし、鞘部を石油系ポリマーであるエチレンテレフタレートとすることがより好ましい。
【0028】
芯鞘型複合繊維における芯鞘比率(質量比率)は、芯部/鞘部=50/50〜90/10であることが好ましい。芯部の比率が90/100を超えると、鞘部の厚みが、力学特性や耐候性などを保持するのに不十分となり、産業用ベルトに要求される物性を維持できなくなる傾向となる。芯部の比率が50/100未満というのでは、バイオマス由来ポリマーの使用量が少なく、本発明の趣旨にそぐわない。
【0029】
芯鞘型複合繊維の形態には特に限定はなく、紡績糸、長繊維からなるマルチフィラメントまたはモノフィラメント繊維を使用することができ、用途や目的に応じて適宜使い分ければよい。
【0030】
繊維構造体の構造例としては、繊維帆布、ロープまたはケーブル構造、平織構造、斜文織構造、簾織構造などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。必要な厚みや強力を確保する等の目的に応じて、多層構造とすることもできる。繊維構造体の断面形状も、用途に応じて種々選択すればよく、例えば平形ベルトやV形ベルトや丸形ベルト等とすることができる。
【0031】
繊維構造体を被覆する被覆層は、産業用ベルトに汎用されているゴムまたは樹脂を使用することができ、産業用ベルトの使用目的、態様に応じて、天然ゴム、合成ゴムなどのゴム系化合物、塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などの合成樹脂を用いることができる。
【0032】
好ましくは、被覆層にも、ポリブチレンサクシネートやポリ乳酸などの脂肪族ポリエステル系樹脂その他の生分解性を有する樹脂や、同様に生分解性を有する天然ゴムを用いることができる。このように繊維構造体だけでなく被覆層も生分解性材料で構成すると、廃棄処分を極めて容易にかつ環境への負荷を抑えて行うことができる。例えば土中に埋没しても、全てが生分解され無害に消失する。繊維構造体との複合物としてでなく、被覆層のみでの廃棄処理やリサイクル処理なども適用できる。
【0033】
産業用ベルトの性能を向上させることを目的として、被覆層材料に、硬化剤、促進剤、顔料等の添加剤や、タルク、石膏、クレー、炭酸カルシウム等のフィラーを必要に応じて混合してもよい。
【0034】
本発明の産業用ベルトの製造方法としては、例えば、繊維構造体としての繊維帆布と押出機で溶融吐出する被覆層材料とをラミネートする方法が挙げられるが、この方法に限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
ポリ乳酸として、融点170℃、融解熱38J/g、L−乳酸とD−乳酸の含有比98.5/1.5(ネイチャーワークス社製)のものを用い、芳香族ポリエステルとして、融点217℃のイソフタル酸15モル%共重合したPETを用い、それぞれのチップを減圧乾燥した後、同心芯鞘型複合溶融紡糸装置に、ポリ乳酸が芯部になるように且つ共重合PETが鞘部になるように供給して溶融紡糸を行った。ポリ乳酸と共重合PETとの複合比(芯鞘質量比)は50/50とし、紡糸温度は240℃とした。
【0036】
得られた複合繊維は1100デシテックス192フィラメントであり、これを用いて2m幅のレピア織機にて経糸密度68本/2.54cm、緯糸密度45本/2.54cmの織密度であるベルト用基布を作製した。
【0037】
このベルト用基布を用い、その両面をポリブチレンサクシネート(PBS)樹脂(昭和高分子株式会社製、ビオノーレ#3000)でカレンダー法にて被覆して、コンベア用ベルトを得た。ここでは幅25mm×長さ150mmのベルト試験片とした(以下同様)。
【0038】
(実施例2)
実施例1で作製したベルト用基布を用い、その片面に塩ビプラスチゾル(日本ゼオン株式会社製、ゼオン121)をナイフコーティング法で塗布し、荷重(15g/cm)下、125℃で60分間の加熱処理を行って、コンベア用ベルトを得た。
【0039】
(比較例1)
繊度1100dtex192フィラメントの丸断面形状のポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント(ユニチカファイバー(株)製)を経糸および緯糸に用い、実施例1と同様にして、ベルト用基布を作製し、コンベア用ベルトを得た。
【0040】
(比較例2)
比較例1で作製したベルト用基布を用い、その片面に塩ビプラスチゾル(日本ゼオン株式会社製、ゼオン121)をナイフコーティング法で塗布し、荷重(15g/cm)下、125℃で60分間の加熱処理を行って、コンベア用ベルトを得た。
【0041】
実施例1、2、比較例1、2のベルト用基布(以下、繊維基布という)およびコンベア用ベルトの評価を以下の方法にて行った。結果は表1に示した。
(1)基布引張強力:JIS L−1096に準じて測定した。
(2)剥離接着強力:ベルト試験片について、剥離速度100mm/分にて室温で被覆樹脂/繊維基布間の剥離接着強力を測定した。
(3)バイオマス含有量:コンベア用ベルト全体に対する繊維基布の割合(質量%)
【0042】
【表1】

表1によれば、実施例1および2は、比較例1および2に比べて、繊維基布の引張強力は若干劣るが、被覆樹脂/繊維基布間の接着強力は遜色ない物性が得られている。また実施例1および2で得たコンベア用ベルトは、バイオマス由来ポリマー含有率が25%を上回るものであり、環境に優しい。なお実施例1および2においては、複合繊維、繊維基布、およびコンベア用ベルトの各製造工程で何らの問題が起こることなく経済的に生産することができた。
【0043】
これに対し、比較例1および2で得たコンベア用ベルトは、繊維基布の引張強力および補強に必要な被覆樹脂との接着強力に問題はないものの、繊維基布にもPETを使用していてバイオマス由来ポリマーを含有しておらず、環境負荷の面で改善されていないものである。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の産業用ベルトは、食品搬送用コンベアベルト等のコンベアベルトや伝動ベルトなどに好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維構造物を樹脂あるいはゴムで被覆してなる産業用ベルトにおいて、前記繊維構造物がバイオマス由来ポリマーを含んだ繊維にて構成され、かつ、前記バイオマス由来ポリマーの含有率がベルト全体の25質量%以上であることを特徴とする産業用ベルト。
【請求項2】
前記繊維構造物が、バイオマス由来ポリマーを芯部に配するとともに石油系ポリマーを鞘部に配した芯鞘型複合繊維により構成されていることを特徴とする請求項1記載の産業用ベルト。
【請求項3】
前記芯鞘型複合繊維は、鞘部がポリエチレンテレフタレートからなり、芯部がポリ乳酸からなることを特徴とする請求項2記載の産業用ベルト。

【公開番号】特開2010−37679(P2010−37679A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201354(P2008−201354)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】