説明

産業用加熱システム

【課題】高いエネルギー効率が得られる産業用加熱システムを提供する。
【解決手段】本発明の産業用加熱システムS1は、外気を取り入れて加熱空気を生成し、当該加熱空気を加熱室12内に配置された加熱対象物120と接触させて加熱する産業用加熱システムであり、外気又は加熱空気を圧縮する圧縮機14と、外気又は加熱空気から動力を回収する動力回収機16と、外気を加熱して加熱室12に供給する加熱空気を生成する熱交換器18と、を有し、熱交換器18の作動媒体入口部181に、加熱室12から排出されるとともに圧縮機14により圧縮された加熱空気が供給されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用加熱システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
産業用加熱システムとしては、ボイラで生成した蒸気の熱を対象物に伝える構成が一般的に知られている(例えば、特許文献1参照)。また、ヒートポンプあるいは冷凍機の媒体の熱を対象物に伝える構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−249450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ボイラを用いたシステムでは、一次エネルギー効率が比較的低かった。また、ヒートポンプを用いたシステムでは、単純サイクルではCOPが低く、省エネルギーに結びつかなかった
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて成されたものであって、高いエネルギー効率が得られる産業用加熱システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の産業用加熱システムは、外気を取り入れて加熱空気を生成し、当該加熱空気を加熱室内に配置された対象物と接触させて前記対象物を加熱する産業用加熱システムであって、前記外気又は前記加熱空気を圧縮する圧縮機と、前記外気又は前記加熱空気から動力を回収する動力回収機と、前記外気を加熱して前記加熱室に供給する加熱空気を生成する熱交換器と、を有し、前記熱交換器の作動媒体入口部に、前記加熱室から排出されるとともに前記圧縮機により圧縮された前記加熱空気が供給されることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、加熱室で使用された後の排気であって圧縮により昇温された加熱空気を用いて外気を加熱し、これを加熱室に供給するので、高いエネルギー効率を得ることができる。また動力回収機で回収した動力をシステム内の他の装置で使用することにより、さらなるエネルギー効率の向上を図ることもできる。また加熱対象物に対して外気から生成した加熱空気を直接接触させて加熱処理を行うものであることにより、冷媒フリーを実現でき、環境負荷を低減することができる。
【0008】
また、外気よりも低温の排気を排出する構成としてもよい。
この構成によれば、外気から得られた熱をシステムの一部に用いて熱処理を行うことができるので、さらなるエネルギー効率の向上を図ることができる。
【0009】
前記加熱室の排気部と前記熱交換器の作動媒体入口部との間に前記圧縮機が接続され、前記熱交換器の作動媒体出口部と当該産業用加熱システムの排気部との間に前記動力回収機が接続されている構成としてもよい。
この構成によれば、圧縮機と動力回収機を比較的近い位置に配置できるため、動力回収機で回収した動力を圧縮機に伝達する場合に、動力の損失を少なくすることができ、エネルギー効率を高めることができる。
【0010】
外気を取り入れる吸気部と前記熱交換器の被加熱媒体入口部との間に前記動力回収機が接続され、前記熱交換器の被加熱媒体出口部と前記加熱室の吸気部との間に前記圧縮機が接続されており、前記加熱室の排気部と前記熱交換器の作動媒体入口部とが接続されている構成としてもよい。
このように加熱室の前段に圧縮機を配置してもよい。この場合にも熱交換器の作動媒体入口部に供給される加熱空気は、加熱室から排出されるとともに圧縮機で圧縮されたものとなるので、先の構成と同様に高いエネルギー効率を得ることができる。
【0011】
外気を取り入れる吸気部と前記熱交換器の被加熱媒体入口部との間に前記動力回収機が接続され、前記熱交換器の被加熱媒体出口部と前記加熱室の吸気部とが接続され、前記加熱室の排気部と前記熱交換器の作動媒体入口部との間に前記圧縮機が接続されている構成としてもよい。
この構成によれば、加熱室の前段に動力回収機が配置されるため、加熱室内を大気圧に対して負圧にすることができる。これにより加熱対象物からの水分除去が容易になるため、乾燥用途に好適な加熱システムとすることができる。
【0012】
前記加熱室の排気側に前記圧縮機が接続され、前記加熱室の排気部と前記圧縮機との間に第2の熱交換器が設けられており、前記第2の熱交換器は、外気を取り入れて前記加熱室から排出された前記加熱空気との熱交換により加熱し、加熱された外気を前記圧縮機に供給するとともに前記熱交換に用いた前記加熱空気を外部に排出する構成としてもよい。
この構成によれば、加熱室から排出される排気が圧縮機に直接流入するのを防止できるので、排気に含まれる水分や汚染物質による圧縮機の故障等を回避することができ、信頼性に優れた加熱システムとすることができる。
【0013】
前記加熱室から排出された前記加熱空気の一部を前記第2の熱交換器に流入させる一方、残りの前記加熱空気を前記圧縮機に流入させる媒体分岐部を有する構成としてもよい。
この構成によれば、加熱室から排出される排気の一部を外気と置換することができるので、排気に含まれる水分や汚染物質の圧縮機への流入量を低減することができる。
【0014】
前記動力回収機で回収した動力が前記圧縮機に電気的又は機械的に伝達される構成としてもよい。
この構成によれば、回収した動力を効率的に利用できるため、さらなるエネルギー効率の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高いエネルギー効率が得られる産業用加熱システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る加熱システムを示す概略図。
【図2】本発明の第2実施形態に係る加熱システムを示す概略図。
【図3】本発明の第3実施形態に係る加熱システムを示す概略図。
【図4】本発明の第4実施形態に係る加熱システムを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る加熱システムを示す概略図である。
加熱システム(産業用加熱システム)S1は、図1に示すように、加熱室12と、圧縮機14と、動力回収機16と、駆動源17と、熱交換器18と、制御装置70とを備えている。制御装置70は、システム全体を統括的に制御する。加熱システムS1の構成は、設計要求に応じて適宜変更可能である。
【0019】
加熱システムS1において、外気(系外の空気)を取り入れる吸気部Aに、熱交換器18の被加熱媒体入口部183が接続され、熱交換器18の被加熱媒体出口部184に加熱室12の入口部121が接続されている。加熱室12の出口部122に圧縮機14の入口部が接続され、圧縮機14の出口部には熱交換器18の作動媒体入口部181が接続されている。熱交換器18の作動媒体出口部182には動力回収機16の入口部が接続され、動力回収機16の出口部は、排気を系外に排出する排気部Bに接続されている。
【0020】
加熱室12内に、加熱対象物120が収容される。加熱システムS1は、熱交換器18から加熱室12に供給される加熱空気を加熱室12内で加熱対象物120に接触させ、加熱対象物120を加熱する。
加熱対象物120は、産業部品や産業材料である。例えば、加熱室12において、産業部品又は産業材料の少なくとも一部が乾燥処理される。あるいは、加熱室12において、産業部品又は産業材料の少なくとも一部が熱処理(例えば、熱硬化処理など)される。なお、汚泥、紙、木材、樹脂、薬剤、薬品、砂、家庭ごみ、産業ごみ、工芸品、工芸材料、電気部品、電気機器、塗装物、産業用衣類、機械部品、機械製品、食料、食材、食料品など、様々な物体を加熱対象物120とすることができる。
【0021】
加熱室12には、必要に応じて不図示の移送装置を設けることができる。一例において、移送装置は、コンベア、搬送車、搬送ロボットなどの様々な形態を有することができる。移送装置によって、加熱対象物120が加熱室12内に搬入/搬出される。代替的又は追加的に、加熱室12は、加熱後の加熱対象物120の取り出しのために、ゲート式、旋回式などの形態を有する搬出部を備えることができる。上記搬出部は、必要に応じて加熱した加熱対象物120に化学処理などの所定の処理を行う機構を有することができる。
【0022】
本実施形態において、移送装置は、加熱室12内で加熱対象物120を移動させる機能を有していてもよい。また加熱室12に、不図示の脱水装置をさらに設け、それによって加熱対象物120を脱水することもできる。脱水の際、加熱対象物120の必要に応じて凝集剤を添加することができる。脱水は、遠心式、加圧式、圧搾式、振動式など、対象物に応じて様々な形態が適用可能である。脱水により、加熱対象物120の容量が減少する。また、加熱室12は、必要に応じて、加熱室12に入る前の加熱対象物120に熱を与える予熱室をさらに有することができる。
【0023】
圧縮機14は、加熱室12から排出される加熱空気を圧縮し、熱交換器18に対して供給する。圧縮に伴い、加熱空気の温度が上昇する。圧縮機14は、遠心圧縮機、軸流圧縮機、レシプロ式圧縮機、ロータリー式圧縮機などの様々な圧縮機のうち、空気圧縮に適するものが好ましく適用される。圧縮機14には駆動源17から動力が供給される。圧縮機14の圧縮比(圧力比)は、加熱システムS1の仕様に応じて適宜に設定される。
【0024】
動力回収機16は、例えばタービン発電機である。タービン発電機としては、ブレード式、スクリュー式など、空気流れに適するものが好ましく適用される。動力回収機16は、熱交換器18から排出された空気を羽根車に当て、空気のエネルギーを回転運動に変換して動力を回収する。本実施形態の場合、動力回収機16で回収した動力は、圧縮機14で使用される。
動力回収機16からの排気は、本実施形態の場合、排気部Bの排気管を介して外部に放出される。排気部Bの排気管には、必要に応じて、ポンプなどの流体駆動部、バルブなどの流量制御部(不図示)、フィルタなどの排出ガス処理装置を設けることもできる。
【0025】
熱交換器18は、被加熱媒体流路18a(吸熱部)と作動媒体流路18b(放熱部)とを有する。被加熱媒体流路18aには、吸気部Aで取り込まれた外気が供給される。作動媒体流路18bには、加熱室12から排出され、圧縮機14で圧縮されるとともに昇温された加熱空気が供給される。これにより、被加熱媒体流路18aを流通する外気が作動媒体流路18bを流通する加熱空気との熱交換によって加熱される。
【0026】
以上の構成を備えた加熱システムS1において、吸気部Aから取り入れられた外気(例えば20℃)は、熱交換器18の被加熱媒体入口部183に供給される。熱交換器18に導入された外気は、作動媒体との熱交換により加熱されて加熱空気(例えば120℃)となり、加熱室12に供給される。加熱室12では、供給された加熱空気と加熱対象物120との接触により、加熱対象物120が加熱され、所望の熱処理、乾燥処理等が実施される。
【0027】
加熱処理に用いられた後、加熱室12の出口部122から排出された加熱空気(例えば100℃)は、圧縮機14に供給される。圧縮機14で圧縮され昇温された加熱空気(例えば130℃)は、熱交換器18の作動媒体入口部181に供給され、熱交換器18において外気を加熱する作動媒体として用いられる。熱交換器18の作動媒体出口部182から排出された加熱空気(例えば30℃)は、動力回収機16に供給される。
【0028】
動力回収機16では、導入された加熱空気を羽根車に当て、空気のエネルギーを回転運動に変換して動力を回収する。動力回収機16で回収された動力は駆動源17に供給され、圧縮機14の動力として利用される。動力回収機16から排出された空気(例えば15℃)は、排気部Bから外部へ排出される。
【0029】
加熱システムS1の成績係数(COP:coefficient of performance)は、下記の式(1)により算出することができる。式(1)において、COP:ヒートポンプの成績係数、G:流量[kg/s]、h:エンタルピー[J/kg]、T:温度[℃]、W:エネルギー(電力・熱)[W]、<Heating・in>:加熱室入口の加熱空気(作動媒体)、<Air>:外気(作動媒体)である。
【0030】
【数1】

【0031】
本実施形態の場合、作動媒体が空気であり、流量、比熱も一定であるから、加熱室12、圧縮機14、及び動力回収機16における前後の温度差からCOPを試算することができる。具体的に、図1に示した各部の温度を用いると、本実施形態の加熱システムS1のCOPは、以下の式(2)に示すように約7であり、極めて高いCOPを達成することができる。
【0032】
【数2】

【0033】
以上詳細に説明したように、本実施形態の加熱システムS1では、加熱室12に供給する加熱空気を生成する際に、加熱室12において使用された後の加熱空気(排気)であり、かつ圧縮機14において昇温された加熱空気を熱交換器18に供給し、外気を加熱している。
これにより、高いエネルギー効率で加熱対象物120を加熱することができる加熱システムとされている。なお、上記式(2)において動力回収機16での動力回収による寄与分を差し引いても、3以上の高COPが得られる。
【0034】
また、本実施形態の加熱システムS1では、圧縮機14の動力の一部を、排気から回収した動力により賄う構成とされている。また加熱システムS1は、外気を取り入れて加熱処理に使用した後、再び外部へ排出するオープンサイクルであるが、図1に示したように、20℃の外気を取り入れて15℃の空気を排出する。すなわち、加熱に用いる熱の一部を大気から回収して利用している。これらの作用により、本実施形態の加熱システムS1において、式(2)に示した高COPを得ることができる。
【0035】
また、本実施形態の加熱システムS1では、取り入れた外気を加熱して加熱空気とし、この加熱空気を加熱室12内の加熱対象物120と直接接触させて加熱処理を実施する。したがって、加熱システムS1では冷媒の使用を回避でき(冷媒フリー)、地球環境への負荷の軽減に有利である。
【0036】
また本実施形態では、圧縮機14と動力回収機16とが比較的に互いに近づけて配置される。すなわち、圧縮機14の出口部(排気口)と動力回収機16の入口部(吸気口)とが近づけて配置されている。このような近接配置により、圧縮機14と動力回収機16との間の配管長さの短縮化(配管スペースの縮小化)が図られる。これは、熱損失の抑制に有利である。また、近接配置により、動力回収機16で回収した動力を圧縮機14に機械的に伝達することが比較的容易に可能になる。回収動力の機械的伝達は、損失低減に有利である。動力を機械的に伝達する構成は、本実施形態のように圧縮機14と動力回収機16とを同軸配置としてもよく、非同軸配置でもよい。同軸配置により、機械的損失の抑制が図られる。
【0037】
なお、本実施形態では、加熱室12に供給される加熱空気の温度を120℃として説明したが、これに限られるものではない。加熱室12に供給される加熱空気の温度は、例えば、約90、100、110、120、130、140、150、160、170、又は180℃以上とすることができる。
【0038】
(第2実施形態)
図2は、本発明の第2実施形態に係る加熱システムS2を示す概略図である。以下の説明では、上記実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0039】
加熱システムS2は、図2に示すように、加熱室12と、圧縮機14と、動力回収機16と、駆動源17aと、ジェネレータ17bと、熱交換器18と、制御装置70と、を備えている。制御装置70はシステム全体を統括的に制御する。
【0040】
加熱システムS2において、吸気部Aに動力回収機16の入口部が接続されている。動力回収機16の出口部は熱交換器18の被加熱媒体入口部183と接続されている。熱交換器18の被加熱媒体出口部184は圧縮機14の入口部と接続されている。圧縮機14の出口部は加熱室12の入口部121と接続されている。加熱室12の出口部122は熱交換器の作動媒体入口部181と接続されている。熱交換器18の作動媒体出口部182は排気部Bと接続されている。
【0041】
上記構成を備えた加熱システムS2において、吸気部Aから取り入れられた外気(例えば20℃)は、動力回収機16に供給される。動力回収機16では、導入された加熱空気を羽根車に当て、空気のエネルギーを回転運動に変換して動力を回収する。動力回収機16で回収された動力はジェネレータ17bから駆動源17aに供給され、圧縮機14の動力として利用される。動力回収機16から排出された空気(例えば5℃)は、熱交換器18に供給される。
【0042】
熱交換器18に導入された外気は、作動媒体との熱交換により加熱されて加熱空気(例えば90℃)となり、圧縮機14に供給される。その後、圧縮機14で昇温された加熱空気(例えば120℃)となって加熱室12の入口部121に供給される。加熱室12では、供給された加熱空気と加熱対象物120との接触により、加熱対象物120が加熱され、所望の熱処理、乾燥処理等が実施される。
【0043】
加熱処理に用いられた後、加熱室12の出口部122から排出された加熱空気(例えば100℃)は、熱交換器18の作動媒体入口部181に供給され、熱交換器18において外気を加熱する作動媒体として用いられる。熱交換器18の作動媒体出口部182から排出された排気(例えば15℃)は、排気部Bから外部へ排出される。
【0044】
上記構成を備えた本実施形態の加熱システムS2においても、加熱室12に供給する加熱空気を生成する際に、加熱室12から排出された加熱空気(排気)であって圧縮機14により昇温された空気を用いて外気を加熱している。これにより、高いエネルギー効率の加熱システムを実現することができる。
【0045】
また圧縮機14の動力の一部を、排気から回収した動力により賄っており、さらに加熱対象物120の加熱に用いる熱の一部を大気から回収して利用している。これらの作用により、さらに高いエネルギー効率を得ることができる。
また加熱システムS2においても、取り入れた外気を加熱して加熱空気とし、この加熱空気を加熱室12内の加熱対象物120と直接接触させて加熱処理を実施するので、冷媒フリーを実現でき、地球環境への負荷の軽減に有利である。
【0046】
(第3実施形態)
図3は、本発明の第3実施形態に係る加熱システムS3を示す概略図である。以下の説明では、上記実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0047】
加熱システムS3は、図3に示すように、加熱室12と、圧縮機14と、動力回収機16と、駆動源17aと、ジェネレータ17bと、熱交換器18と、制御装置70と、を備えている。制御装置70はシステム全体を統括的に制御する。
【0048】
加熱システムS3において、吸気部Aに動力回収機16の入口部が接続されている。動力回収機16の出口部は熱交換器18の被加熱媒体入口部183と接続されている。熱交換器18の被加熱媒体出口部184は加熱室12の入口部121と接続されている。加熱室12の出口部122は圧縮機14の入口部と接続されている。圧縮機14の出口部は熱交換器の作動媒体入口部181と接続されている。熱交換器18の作動媒体出口部182は排気部Bと接続されている。
【0049】
上記構成を備えた加熱システムS3において、吸気部Aから取り入れられた外気(例えば20℃)は、動力回収機16に供給される。動力回収機16では、導入された加熱空気を羽根車に当て、空気のエネルギーを回転運動に変換して動力を回収する。動力回収機16で回収された動力はジェネレータ17bから駆動源17aに供給され、圧縮機14の動力として利用される。動力回収機16から排出された空気(例えば5℃)は、熱交換器18に供給される。
【0050】
熱交換器18に導入された外気は、作動媒体との熱交換により加熱されて加熱空気(例えば120℃)となり、加熱室12の入口部121に供給される。加熱室12では、供給された加熱空気と加熱対象物120との接触により、加熱対象物120が加熱され、所望の熱処理、乾燥処理等が実施される。
【0051】
加熱処理に用いられた後、加熱室12の出口部122から排出された加熱空気(例えば100℃)は、圧縮機14に供給される。その後、圧縮機14で昇温された加熱空気(例えば130℃)となって熱交換器18の作動媒体入口部181に供給され、熱交換器18において外気を加熱する作動媒体として用いられる。熱交換器18の作動媒体出口部182から排出された排気(例えば15℃)は、排気部Bから外部へ排出される。
【0052】
上記構成を備えた本実施形態の加熱システムS3においても、加熱室12に供給する加熱空気を生成する際に、加熱室12から排出された加熱空気(排気)であって圧縮機14により昇温された空気を用いて外気を加熱している。これにより、高いエネルギー効率の加熱システムを実現することができる。
【0053】
また本実施形態の場合、加熱室12の前段に動力回収機16が配置されているため、加熱室12に供給される加熱空気が大気圧に対して負圧となる。これにより、加熱室12内での水分除去が容易になるため、乾燥用途に好適な加熱システムとなる。
【0054】
また圧縮機14の動力の一部を、排気から回収した動力により賄っており、さらに加熱対象物120の加熱に用いる熱の一部を大気から回収して利用している。これらの作用により、さらに高いエネルギー効率を得ることができる。
また加熱システムS3においても、取り入れた外気を加熱して加熱空気とし、この加熱空気を加熱室12内の加熱対象物120と直接接触させて加熱処理を実施するので、冷媒フリーを実現でき、地球環境への負荷の軽減に有利である。
【0055】
(第4実施形態)
図4は、本発明の第4実施形態に係る加熱システムS4を示す概略図である。以下の説明では、上記実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0056】
加熱システムS4は、図4に示すように、加熱室12と、圧縮機14と、動力回収機16と、駆動源17と、第1の熱交換器18と、第2の熱交換器19と、媒体分岐部20と、制御装置70と、を備えている。第2の熱交換器19は、被加熱媒体流路19a(吸熱部)と作動媒体流路19b(放熱部)とを有する。制御装置70はシステム全体を統括的に制御する。
【0057】
加熱システムS4において、吸気部Aに熱交換器18の被加熱媒体入口部183が接続され、熱交換器18の被加熱媒体出口部184は、加熱室12の入口部121と接続されている。加熱室12の出口部122は媒体分岐部20の入口部に接続されている。
【0058】
媒体分岐部20は、入口部から導入された作動媒体を2つの出口部に振り分けて出力する機能と、上記2つの出口部のうちのいずれか一方の出口部にのみ作動媒体を出力する機能とを具備している。媒体分岐部20の2つの出口部のうち一方の出口部は第2の熱交換器19の作動媒体入口部191に接続されている。媒体分岐部20の他方の出口部は、第2の熱交換器19の被加熱媒体出口部194とともに圧縮機14の入口部とに接続されている。
【0059】
第2の熱交換器19の作動媒体出口部192は排気部Cに接続され、被加熱媒体入口部193は吸気部Dに接続されている。つまり、第2の熱交換器19は、媒体分岐部20を介して供給される加熱空気(加熱室12の排気)を作動媒体として用いて、吸気部Dから取り入れた外気を加熱し、生成した加熱空気を圧縮機14に供給するものである。
【0060】
圧縮機14の出口部は第1の熱交換器18の作動媒体入口部181に接続されている。第1の熱交換器18の作動媒体出口部182は動力回収機16の入口部と接続されている。動力回収機16の出口部は排気部Bと接続されている。
【0061】
次に、以上の構成を備えた加熱システムS4の動作について説明する。
まず、媒体分岐部20が加熱室12から排出された加熱空気を全て第2の熱交換器19へ供給するように設定されている場合について説明する。
【0062】
加熱システムS4において、吸気部Aから取り入れられた外気(例えば20℃)は、熱交換器18の被加熱媒体入口部183に供給される。熱交換器18に導入された外気は、作動媒体との熱交換により加熱されて加熱空気(例えば120℃)となり、加熱室12に供給される。加熱室12では、供給された加熱空気と加熱対象物120との接触により、加熱対象物120が加熱され、所望の熱処理、乾燥処理等が実施される。
【0063】
加熱処理に用いられた後、加熱室12の出口部122から排出された加熱空気(例えば100℃)は、媒体分岐部20に供給される。このとき、媒体分岐部20は、内部を流通する加熱空気を全て第2の熱交換器19に供給する設定であるから、加熱室12から排出された加熱空気は、全て第2の熱交換器19に供給される。
【0064】
第2の熱交換器19では、吸気部Dから取り入れた外気を被加熱媒体流路19aに流通させるとともに、上記の加熱空気を作動媒体流路19bに流通させることで、上記の外気(例えば20℃)を加熱して加熱空気(例えば90℃)とし、被加熱媒体出口部194から圧縮機14に供給する。作動媒体として用いられた加熱空気は、例えば30℃に冷却されて排気部Cから外部へ排出される。
【0065】
第2の熱交換器19から圧縮機14に供給された加熱空気(例えば90℃)は、圧縮機14で圧縮され昇温された加熱空気(例えば130℃)となる。この加熱空気は、第1の熱交換器18の作動媒体入口部181に供給され、熱交換器18において外気を加熱する作動媒体として用いられる。熱交換器18の作動媒体出口部182から排出された加熱空気(例えば30℃)は、動力回収機16に供給される。
【0066】
動力回収機16では、導入された加熱空気を羽根車に当て、空気のエネルギーを回転運動に変換して動力を回収する。動力回収機16で回収された動力は駆動源17に供給され、圧縮機14の動力として利用される。動力回収機16から排出された空気(例えば10℃)は、排気部Bから外部へ排出される。
【0067】
一方、媒体分岐部20が、内部を流通する媒体を2つの出口部に振り分けて出力するように設定されている場合、加熱室12から排出された加熱空気は、その一部のみが第2の熱交換器19に供給され、残部は圧縮機14へ供給される。
【0068】
第2の熱交換器19の動作は先の説明と同様であり、媒体分岐部20から供給される加熱空気(例えば100℃)と、吸気部Dから供給された外気(例えば20℃)との熱交換により外気を加熱して加熱空気(例えば90℃)を生成し、被加熱媒体出口部194から圧縮機14に供給する。
【0069】
ここで本実施形態では、媒体分岐部20から圧縮機14に対して、加熱室12の排気の一部である加熱空気(100℃)が直接供給されているため、第2の熱交換器19から排出される加熱空気は、加熱室12の排気の一部と合流して圧縮機14に導入される。
その後、第1の熱交換器18において外気の加熱に用いられ、動力回収機16で動力回収に供された後、排気部Bから外部へ排出される。
【0070】
次に、本実施形態の加熱システムS4についてCOPを試算する。本実施形態の場合にも、先に記載の式(1)を適用することができ、作動媒体が空気であり、流量、比熱も一定であるから、加熱室12、圧縮機14、及び動力回収機16における前後の温度差からCOPを試算することができる。具体的に、図4に示した各部の温度を用いると、本実施形態の加熱システムS4では、以下の式(3)に示すように、COPは5であり、高いCOPを達成することができる。
【0071】
【数3】

【0072】
以上詳細に説明したように、本実施形態の加熱システムS4においても、加熱室12に供給する加熱空気を生成する際に、加熱室12から排出された加熱空気(排気)又は当該加熱空気との熱交換により加熱された外気であって、圧縮機14により昇温された空気を用いて、吸気部Aから取り入れた外気を加熱している。これにより、高いエネルギー効率の加熱システムを実現することができる。
【0073】
また本実施形態の場合、第2の熱交換器19において、加熱室12の排気の一部又は全部を、新たに外気を加熱して生成した加熱空気と入れ替えている。加熱室12からの排気は、加熱対象物120の種類によっては多くの水分や水分以外の汚染物質を含んだ状態で排出される場合がある。このような場合に、本実施形態の構成を採用すれば、上記の水分や汚染物質が圧縮機14に流入するのを回避あるいは低減することができる。これにより、圧縮機14の故障を未然に防ぐことができ、加熱システムの信頼性を向上させることができる。
【0074】
また本実施形態においても、圧縮機14の動力の一部を、排気から回収した動力により賄っており、さらに加熱対象物120の加熱に用いる熱の一部を大気から回収して利用している。これらの作用により、さらに高いエネルギー効率を得ることができる。また、取り入れた外気を加熱して加熱空気とし、この加熱空気を加熱室12内の加熱対象物120と直接接触させて加熱処理を実施するので、冷媒フリーを実現でき、地球環境への負荷の軽減に有利である。
【0075】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されることはない。上記説明において使用した数値は一例であって、本発明はこれに限定されない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
【符号の説明】
【0076】
A,D…吸気部、B,C…排気部、12…加熱室、14…圧縮機、16…動力回収機、18…熱交換器、19…第2の熱交換器、20…媒体分岐部、S1,S2,S3,S4…加熱システム(産業用加熱システム)、121…入口部、122…出口部、181,191…作動媒体入口部、182,192…作動媒体出口部、183,193…被加熱媒体入口部、184,194…被加熱媒体出口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気を取り入れて加熱空気を生成し、当該加熱空気を加熱室内に配置された対象物と接触させて前記対象物を加熱する産業用加熱システムであって、
前記外気又は前記加熱空気を圧縮する圧縮機と、
前記外気又は前記加熱空気から動力を回収する動力回収機と、
前記外気を加熱して前記加熱室に供給する加熱空気を生成する熱交換器と、を有し、
前記熱交換器の作動媒体入口部に、前記加熱室から排出されるとともに前記圧縮機により圧縮された前記加熱空気が供給されることを特徴とする産業用加熱システム。
【請求項2】
外気よりも低温の排気を排出することを特徴とする請求項1に記載の産業用加熱システム。
【請求項3】
前記加熱室の排気部と前記熱交換器の作動媒体入口部との間に前記圧縮機が接続され、
前記熱交換器の作動媒体出口部と当該産業用加熱システムの排気部との間に前記動力回収機が接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の産業用加熱システム。
【請求項4】
外気を取り入れる吸気部と前記熱交換器の被加熱媒体入口部との間に前記動力回収機が接続され、
前記熱交換器の被加熱媒体出口部と前記加熱室の吸気部との間に前記圧縮機が接続されており、
前記加熱室の排気部と前記熱交換器の作動媒体入口部とが接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の産業用加熱システム。
【請求項5】
外気を取り入れる吸気部と前記熱交換器の被加熱媒体入口部との間に前記動力回収機が接続され、
前記熱交換器の被加熱媒体出口部と前記加熱室の吸気部とが接続され、
前記加熱室の排気部と前記熱交換器の作動媒体入口部との間に前記圧縮機が接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の産業用加熱システム。
【請求項6】
前記加熱室の排気側に前記圧縮機が接続され、
前記加熱室の排気部と前記圧縮機との間に第2の熱交換器が設けられており、
前記第2の熱交換器は、外気を取り入れて前記加熱室から排出された前記加熱空気との熱交換により加熱し、加熱された外気を前記圧縮機に供給するとともに前記熱交換に用いた前記加熱空気を外部に排出することを特徴とする請求項1又は2に記載の産業用加熱システム。
【請求項7】
前記加熱室から排出された前記加熱空気の一部を前記第2の熱交換器に流入させる一方、残りの前記加熱空気を前記圧縮機に流入させる媒体分岐部を有することを特徴とする請求項6に記載の産業用加熱システム。
【請求項8】
前記動力回収機で回収した動力が前記圧縮機に電気的又は機械的に伝達されることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の産業用加熱システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−132658(P2012−132658A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287589(P2010−287589)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)