説明

産業車両のフロア支持構造

【課題】本発明の目的は、運転者検出スイッチ機構における変位体に対する荷重を軽減するほか、好ましくは運転者検出スイッチ機構の取り付け位置を調整せずにフロア部材の高さを調整することができる産業車両のフロア支持構造の提供にある。
【解決手段】立席運転用のフロア部材22が、車体に備えた運転者検出スイッチ機構30の変位体と、別に設けたフロア支持機構40の支持体を介して支持されるフロア支持構造である。変位体は変位体付勢手段による付勢力を受け、支持体は支持体付勢手段による付勢力を受ける。フロア部材22のフロア面の高さを調整するフロア高さ調整機構45を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、産業車両のフロア支持構造に関し、特に、運転者の乗降に基づくフロア部材の変位により運転者の有無を検出する運転者検出スイッチ機構を備える産業車両のフロア支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、立席運転用のフロア部材を備える産業車両として、例えば、リーチ型フォークリフトが知られている。
この種のリーチ型フォークリフトでは、運転者の乗降に基づくフロア部材の変位を利用し、運転者の存在を検知する運転者検出スイッチ機構を設けたリーチ型フォークリフトが存在する。
運転者検出スイッチ機構を備えたリーチ型フォークリフトでは、運転者が車両に搭乗することにより、運転者の体重が掛かるフロア部材を下方へ僅かに変位させ(沈みこませ)、車体に設けた運転者検出スイッチ機構を作動させるようにしている。
【0003】
このため、立席運転用のフロア部材は車体に対して上下に変位自在に備えられている。
車体に設けた運転者検出スイッチ機構は、運転者不在のときフロア部材を浮かせた状態で支持する。
運転者検出スイッチ機構は、例えば、フロア部材を下方から支持する上下に変位自在の変位体と、この変位体を上方へ変位させる付勢力を付与する変位体付勢手段と、変位体の変位に応じてオン・オフするスイッチ部とを有している。
変位体はフロア部材を浮かせた状態で支持し、運転者が搭乗したときには、フロア部材の変位(沈み込み)とともに下方へ変位する。
変位部材が下方へ変位することによりスイッチ部をオンさせる。
そして、運転者がフロア部材から離れたとき、フロア部材は変位体付勢手段の付勢力を受ける変位体の上昇により上方へ変位する(浮き上がる)。
変位体が上昇することによりスイッチ部はオフとなり、運転席における運転者不在を認識することができる。
【0004】
関連する産業車両のフロア支持構造としては、例えば、特許文献1に開示されたリーチ型フォークリフトのフロア構造を挙げることができる。
このリーチ型フォークリフトは運転者が立って運転を行う立席タイプの産業車両である。
この種のリーチ型フォークリフトのフロア支持構造では、フロア本体の一方を蝶番を介して車体に開閉動可能に取り付けるとともに、フロア本体の他端は、車体下部に固定された水平部材に固定され、かつ、復元ばね付きのショックアブソーバにより支持されている。
この技術によれば、フロア本体の一方を蝶番で片持ち支持し、フロア本体の他端を復元ばね付きのショックアブソーバにより支持して、フォークリフト走行時における路面からの振動を緩衝し、運転者の運転疲労度を軽減するとしている。
【特許文献1】実開昭57−144777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、運転者が搭乗しない状態では付勢力を受ける変位体がフロア部材を支持する。
つまり、フロア部材を支持する変位体には、フロア部材の荷重の大部分が作用するから、十分な付勢力を有する変位体付勢手段を設定する必要がある。
通常、変位体付勢手段はコイルばね(ねじりばね、圧縮ばね等)が用いられるが、フロア部材の荷重に対抗するためには、既製品のコイルばねが使用できない場合があり、専用品としてのばねを製作する必要があるという問題が生じる。
また、フロア部材の高さを調整する場合、車体に固定される運転者検出スイッチ機構の取り付け位置を調整しなくてはならないという問題がある。
【0006】
因みに、特許文献1に開示された技術は、フロア本体の他端を復元ばね付きのショックアブソーバにより支持して、フォークリフト走行時における路面からの振動を緩衝し、運転者の運転疲労度を軽減する技術に過ぎない。
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、運転者検出スイッチ機構における変位体に対する荷重を軽減するほか、好ましくは運転者検出スイッチ機構の取り付け位置を調整せずにフロア部材の高さを調整することができる産業車両のフロア支持構造の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するため、本発明は、立席運転用のフロア部材が、車体に設けた運転者検出スイッチ機構を介して支持され、該運転者検出スイッチ機構は、前記フロア部材を下方から支持する上下に変位自在の変位体と、該変位体を上方へ付勢する変位体付勢手段と、前記変位体の変位に応じてオン・オフするスイッチ部とを有する産業車両のフロア支持構造であって、前記フロア部材を支持するフロア支持機構が、前記運転者検出スイッチ機構と別に設けられ、前記フロア支持機構は、前記フロア部材を下方から支持する上下に変位自在の支持体を有し、前記フロア部材及び前記フロア支持機構の少なくとも一方には、前記フロア部材の車体に対する高さを調整するフロア高さ調整機構が備えられることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、フロア部材を支持するフロア支持機構が、運転者検出スイッチ機構と別に設けられていることで、フロア部材の荷重の大部分はスイッチ機構とフロア支持機構に分散される。
フロア高さ調整機構が備えられていることによりフロア部材のフロア面の高さを調整することができ、運転者検出スイッチ機構の取り付け位置を調整する必要がない。
【0010】
また、本発明では、上記の産業車両のフロア支持構造において、前記フロア支持機構は、該支持体を上方へ付勢する支持体付勢手段を有してもよい。
この場合、スイッチ機構の変位体付勢手段は変位体を上方へ変位させようとする付勢力を付与し、支持体付勢手段は支持体を上方へ変位させようとする付勢力を付与する。
従って、運転者がフロア部材から降りると、フロア部材は上方へ付勢される変位体及び支持体により原位置へ変位される。
つまり、原位置へ復帰するための付勢力もスイッチ機構とフロア支持機構により分散されている。
【0011】
また、本発明では、上記の産業車両のフロア支持構造において、前記支持体は、前記支持体付勢手段を一体的に形成した板ばね部材としてもよい。
この場合、板ばね部材は、実質的に支持体と支持体付勢手段を一体的に形成した部材であるから、フロア部材を支持する支持体としての機能と支持体を上方へ変位させる付勢力を有する支持体付勢手段としての機能を有する。
板ばね部材を用いることにより、支持体及び支持体付勢手段の設置スペースを抑制することが可能である。
【0012】
また、本発明では、上記の産業車両のフロア支持構造において、前記フロア高さ調整機構は、前記フロア部材の下方にて支持体と当接する調整体と、該調整体を保持する調整体ブラケットを有し、該調整体ブラケットは前記フロア部材の裏面に設けられるようにしてもよい。
この場合、フロア部材の下方にて支持体と当接する調整体は、フロア部材の下方に設けられた調整体ブラケットに保持されるから、フロア部材の高さ調整は、調整体を操作することにより実施できる。
【0013】
また、本発明では、上記の産業車両のフロア支持構造において、前記フロア部材は、前記調整体の位置に対応した切り抜き部を有し、前記調整体ブラケットは、前記切り抜き部を臨む水平部と、該水平部に穿孔されたねじ孔を有し、前記調整体は、前記ねじ孔に螺入される調整用ボルトとしてもよい。
この場合、ブラケットのねじ孔に対応する調整用ボルトが螺入され、調整用ボルトがフロア部材の高さを規定する。
また、フロア部材には調整用ボルトの位置に対応した切り抜き部が設けられており、フロア部材を開くことなく調整用ボルトの螺入量を調整することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、運転者検出スイッチ機構における変位体に対する荷重を軽減するほか、好ましくは運転者検出スイッチ機構の取り付け位置を調整せずにフロア部材の高さを調整することができる産業車両のフロア支持構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る産業車両のフロア支持構造について図面を参照して説明する。
第1の実施形態は、産業車両としてのリーチ型フォークリフトのフロア支持構造に適用した一例である。
図1は、リーチ型フォークリフト10の右後方からの斜視図である。
図1に示すリーチ型フォークリフト(以後、単に「フォークリフト」と表記する)10は、車体11の前部に設けた一対のレッグアーム12の間に進退自在のマスト装置13を有している。
レッグアーム12には前輪14が設けられ、車体11の後部には、駆動輪としての後輪15と、車体11の姿勢をより安定させるためのキャスタ輪16が備えられている。
【0016】
車体後部の右側には立席型の運転席が設けられ、運転席左側には電動モータ(図示せず)等の駆動系要素を主に収容する収容フレーム17が設けられている。
運転席の前部には、マスト装置13の操作レバー19a〜19c等が備えられる前部フレーム18が配置され、運転席の右側にはサイドカバー20が設けられている。
収容フレーム17と、前部フレーム18と、サイドカバー20は、車体11の一部である下部フレーム21上に取り付けられている。
このように、運転席の後部を除く前部と左右は、収容フレーム17と、前部フレーム18と、サイドカバー20により囲まれた状態にある。
【0017】
〔フロア部材〕
運転席の床面は立席運転用のフロア部材22により形成されている。
フロア部材22は金属板であり、フロア部材22の前縁と前部フレーム18の間には蝶番23が設けられている。
フロア部材22は、蝶番23を介して前部フレーム18と接続され、車体11の下部フレーム21に対しては蝶番23を支点として開閉自在に備えられている。
フロア部材22の右側付近には、略方形状の切り抜き部22aと、長孔22bが打ち抜きにより形成されている。
切り抜き部22aは、後述するフロア高さ調整機構45と対応する位置に形成されている。
切り抜き部22aを設けることにより、フロア部材22を開くことなくフロア部材22の高さの調整を行うことを意図している。
長孔22bは後述する板ばね部材41を固定する固定用ボルト42の頭部に対応する位置に形成されている。
長孔22bは固定用ボルト42とフロア部材22との干渉を回避する意図がある。
【0018】
ところで、フロア部材22の上面には、ほぼフロア部材22に倣う形状のマット部材24が接着剤等を用いることにより貼着されている。
マット部材24はゴム系材料により形成されており、図2に示すように、マット部材24の表面には滑り止めとしての多数の隆起部24aが形成されている。
マット部材24は、フロア部材22の切り抜き部22aにほぼ対応する部位のみを折り返すことができるように、右縁部から切り込まれた2条の切込溝24aを有している。
フロア部材22の切り抜き部22aにほぼ対応する部位は、フロア部材22に対して貼着されない非貼着部24bとなっている。
【0019】
フロア部材22の前部左側にはブレーキペダル25が位置しており、ブレーキペダル25は、踏み込むとブレーキを解除し、踏まない状態ではブレーキを作動させる所謂デッドマンタイプのブレーキペダルである。
【0020】
フロア部材22の下方の下部フレーム21内には空間部が形成されており、空間部にはキャスタ輪16を車体11に支持する支持アーム(図示せず)が収容されている。
下部フレーム21における後部の内側面には、スイッチ機構30が固定されている。
【0021】
〔運転者検出スイッチ機構〕
運転者検出スイッチ機構(以後、単に「スイッチ機構」と表記する)30は、図2〜図5に示すように、フロア部材22を下方から支持する上下に変位自在の変位体としての回動レバー31と、回動レバー31を上方へ付勢する変位体付勢手段としてのねじりバネ33と、回動レバー31の揺動に応じてオン・オフするスイッチ部34を有する。
回動レバー31はスイッチ部34が備える回動自在な水平軸32に固定されており、運転者が搭乗しないときにフロア部材22の後縁付近の裏面を支持する。
また、回動レバー31は、運転者が搭乗したときにフロア部材22の下方への変位に伴い下方へ回動されるレバーである。
【0022】
スイッチ部34は、回動レバー31の回動に伴う水平軸32の回動により、スイッチをオン・オフする機能を備えている。
この実施形態では、回動レバー31が下方へ一定量回動されたときにスイッチがオンとなり、回動レバー31が上方へ回動されたときにオフとなる設定となっている。
スイッチ機構30はマスト装置13の作動回路(図示せず)と電気的に接続されている。
スイッチ機構30は、スイッチ部34がスイッチをオフとする状態では作動回路を作動不可とし、スイッチをオンとする状態では作動回路を作動可とする。
ねじりバネ33は、回動レバー31を上方へ向けて変位させようとする付勢力を回動レバー31に付与する部材であり、水平軸32に嵌挿されている。
【0023】
このようにスイッチ機構30が構成されていることにより、図3に示すように、運転者が搭乗していない状態では、スイッチ機構30の回動レバー31がフロア部材22の後縁付近の裏面を支持する。
【0024】
〔受承部材〕
下部フレーム21の内側には複数の受承部材35、36が固定されている。
受承部材35、36は弾性を有する材料から形成されており、運転者の搭乗時におけるフロア部材22の裏面を支持する部材である。
受承部材35、36が弾性を有する材料から形成されていることにより、運転者が搭乗する状態において車体11からの振動をフロア部材22へ伝播しにくくしている。
図2に示すように、受承部材35はスイッチ機構30の左側に設置され、受承部材36はスイッチ機構30の右側に設置されている。
運転者不在時におけるフロア部材22の裏面と、受承部材35、36の上面とは一定の距離が設定されている。
この一定の距離は、運転者の乗降に伴ってフロア部材22が変位する範囲となっており、回動レバー31が変位する範囲と対応する。
【0025】
〔フロア支持機構〕
ところで、スイッチ機構30と別に下部フレーム21にはフロア支持機構40が設けられており、図3〜図5に示すとおり、フロア支持機構40は後述するフロア高さ調整機構を介してフロア部材22の裏面を支持する。
フロア支持機構40は、フロア部材22を下方から支持する上下に変位自在の板ばね部材41である。
板ばね部材41は途中でやや上方へ向けて屈曲された弾性を有する金属製の板材である。
板ばね部材41の固定端は、固定用ボルト42により下部フレーム21側に固定され、自由端はフロア部材22の下面を臨む。
板ばね部材41は、図3及び図5に示すように、固定端を含む水平部41aと、自由端を含み水平部41aから上方へ向けて傾斜する傾斜部41bを有する。
この実施形態における板ばね部材41は、フロア部材22を下方から支持する支持体であるとともに、弾性を有することから、支持体を上方へ付勢する支持体付勢手段としても機能する。
つまり、板ばね部材41は、支持体に支持体付勢手段が一体的に形成された部材と言える。
【0026】
〔フロア高さ調整機構〕
板ばね部材41の自由端に対応するように、フロア部材22の裏面にはフロア高さ調整機構45が設けられている。
フロア高さ調整機構45は、図3及び図5に示すように、フロア部材22の裏面に固定された調整体ブラケット46と、調整体ブラケット46により保持される調整体としての調整用ボルト47から構成されている。
調整体ブラケット46は、図5に示すとおり、フロア部材22の裏面に沿う固定部46aと、固定部46aからやや斜め下方へ向う傾斜部46bと、傾斜部46bから水平に延設される水平部46cを有する。
調整体ブラケット46における水平部46cには、図5に示すとおり、ねじ孔46dが穿孔されている。
【0027】
調整体は、ねじ孔46dに対応するねじ部を有する調整用ボルト47であり、調整用ボルト47の頂部には六角孔48が形成されている。
六角孔48は、図6に示す六角レンチRの挿入を可能とし、六角レンチRよる調整用ボルト47の回動を実現するために設けられている。
調整用ボルト47にはナット49が装着され、調整用ボルト47の回動により、水平部46cに対する調整用ボルト47の位置を固定するようにしている。
調整用ボルト47の下端部は、板ばね部材41の傾斜部41bの上面に当接する。
【0028】
次に、このフロア支持構造の作用について説明する。
運転者が運転席に搭乗しない場合、フロア部材22は、蝶番23と、スイッチ機構30の回動レバー31と、フロア支持機構40における板ばね部材41とにより支持される。
フロア部材22は、回動レバー31を介したねじりバネ32の付勢力と、板ばね部材41の弾性力による付勢力を受けて支持されている。
つまり、フロア部材22は蝶番23を除くと、2点で支持されており、フロア部材22の荷重は回動レバー31及び板ばね部材41に分散されている。
【0029】
回動レバー31の自由端はフロア部材22の裏面に直接当接している。
板ばね部材41は、フロア高さ調整機構45におけるボルト47の下端に当接している。
この状態では、受承部材35、36とフロア部材22との間には間隔があり、回動レバー31の位置はスイッチ部34においてスイッチをオフにする位置となっている。
従って、マスト装置13の作動回路が作動不可の状態であり、この状態で、例えば、マスト装置13の操作レバー19a〜19cを操作してもマスト装置13は作動しない。
【0030】
次に、運転席に運転者が搭乗した場合について説明する。
運転者が運転席に搭乗すると、運転者の体重がフロア部材22に加わり、フロア部材22は下方へ向けて変位する(沈み込む)。
フロア部材22の裏面は受承部材35、36に当接し、受承部材35、36はフロア部材22を支持する。
回動レバー31はフロア部材22の変位に伴いねじりバネ33の付勢力に抗して回動される。
また、板ばね部材41は、フロア部材22の変位に伴う調整用ボルト47の押し付けにより撓み、下方へ変位する。
回動レバー31が回動されることにより、スイッチ部34においてスイッチがオンとなる。
従って、この状態では、マスト装置13の作動回路が作動可の状態であり、この状態で、例えば、操作レバー19a〜19cを操作するとマスト装置13は作動する。
【0031】
運転者が運転席から降りると、板ばね部材41の撓みによる付勢力と、ねじりバネ33による付勢力により、フロア部材22は上方へ向けて変位し、原位置へ復帰する。
フロア部材22の原位置への復帰により、スイッチ機構30のスイッチ部34においてスイッチがオフとなる。
【0032】
次に、フロア部材22の高さ調整について説明する。
フロア部材22の車体に対する高さ調整は、フロア高さ調整機構45の操作により行う。
まず、図6に示すように、マット部材24における非貼着部24bを折り返して、フロア部材22の切り込み部22aを露出させる。
次に、切り込み部22aを通じて視認可能な調整用ボルト47を操作する。
具体的には、調整用ボルト47における六角孔48へ対応する六角レンチRを挿入して、調整用ボルト47を回動させる。
【0033】
調整用ボルト47を回動させる向きに応じて、調整体ブラケット46の水平部46cに対する調整用ボルト47の高さが変動する。
時計回りに調整用ボルト47を回すと調整用ボルト47の下端は下降し、反時計周りでは調整用ボルト47の下端は上昇する。
調整用ボルト47の下端は板ばね部材41と当接するため、ボルト47の下端の高低を調整することにより、車体11に対するフロア部材22の高さが調整できる。
【0034】
調整用ボルト47の位置は、例えば、車体後部における美観上の問題が生じない等、フロア部材22の高さが適切な高さとなるように調整すればよい。
なお、フロア部材22に搭乗しない状態で調整用ボルト47を操作すれば、調整用ボルト47の回動量に応じてフロア部材22の上下方向の変位が視認でき、適切なフロア部材22の高さ設定し易くなる。
ただし、フロア部材22に対して運転者が搭乗した状態におけるフロア高さの調整を排除する趣旨ではない。
調整用ボルト47の高さ(調整体ブラケット46に対する位置)が定まれば、ナット49により締め付けを行い、緩み等により調整用ボルト47の高さが変更することを防ぐ。
【0035】
このように、この実施形態のフロア支持機構では、フロア部材22を支持するフロア支持機構40が、運転者検出スイッチ機構30と別に設けられていることで、フロア部材22の自重をスイッチ機構30とフロア支持機構40に分散する。
運転者がフロア部材22から降りると、フロア部材22は上方へ付勢される回動レバー31及び板ばね部材41により原位置へ変位されるが、フロア部材22を原位置へ復帰するための付勢力もスイッチ機構30とフロア支持機構40により分散されている。
フロア部材22の高さ調整は、スイッチ機構30の取り付け位置の調整によらず、フロア高さ調整機構45の操作により実施される。
【0036】
この実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)フロア部材22を支持するフロア支持機構40が、スイッチ機構30と別に設けられていることで、フロア部材22の荷重の大部分はスイッチ機構30とフロア支持機構40に分散されるから、フロア高さ調整機構45によりフロア部材22のフロア面の高さを調整することができ、スイッチ機構30の取り付け位置を調整する必要がない。
(2)スイッチ機構30のねじりバネ33は回動レバー31を上方へ変位させようとする付勢力を付与し、板ばね部材31は撓みが生じることにより原位置へ復帰させようとする付勢力を付与するから、運転者がフロア部材22から降りると、フロア部材22は上方へ付勢される回動レバー31及び板ばね部材41により原位置へ変位される。つまり、原位置へ復帰するための付勢力もスイッチ機構30とフロア支持機構45により分散されている。
(3)板ばね部材41は、実質的に支持体と支持体付勢手段を一体的に形成した部材であるから、フロア部材22を支持する支持体としての機能と支持体を上方へ変位させる付勢力を有する支持体付勢手段としての機能を有する。比較的薄い板ばね部材41を用いることにより、支持体及び支持体付勢手段の設置スペースを抑制することが可能である。
(4)フロア部材22の裏面において板ばね部材41と当接する調整用ボルト47は、フロア部材22の裏面に設けられた調整体ブラケット46に保持されるから、フロア部材22の高さ調整は、調整用ボルト47を回動することにより簡単に実施できる。
(5)調整体ブラケット46のねじ孔46dに対応する調整用ボルト47が螺入され、調整用ボルト47の下端の位置が、フロア部材22の高さを規定するから、フロア部材22には調整用ボルト47の位置に対応した切り抜き部22aが設けられており、フロア部材22全体を開くことなく調整用ボルト47の位置を調整することができる。マット部材24の非貼着部24cを折り返すことができることにより、フロア部材22の高さ調整の際にマット部材24全体をフロア部材22から取り外す必要もない。
【0037】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るフロア支持構造について説明する。
この実施形態は、リーチ型フォークリフトのフロア支持構造である。
また、この実施形態に係るフロア支持構造は、フロア高さ調整機構の構成が第1の実施形態と異なる。
その他の構成は第1の実施形態と同じであることから、フロア高さ調整機構を除き、第1の実施形態の符号を共通して用い、第1の実施形態の説明を援用する。
【0038】
図7は、第2の実施形態のフロア支持構造の要部を示す拡大側面図である。
この実施形態では、ねじ孔52を有する雌ねじ部材51がフロア部材22の裏面に取り付けられている。
雌ねじ部材51は、板ばね部材41の傾斜部41bの上方に位置しており、雌ねじ部材51のねじ孔52には、ねじ孔52に対応する調整用ボルト53が螺入されている。
調整用ボルト53はフロア高さ調整機構50における調整体に相当する。
【0039】
調整用ボルト53を雌ねじ部材51に対して回動させることにより、フロア部材22の下面から調整用ボルト53の下端までの距離が変更できる構成となっている。
つまり、この実施形態のフロア高さ調整機構50は、ねじ孔52を有する雌ねじ部材51と調整用ボルト53だけで構成されている。
フロア部材22には、切り込み部22aが形成されていないので、フロア部材22の高さを調整する場合には、フロア部材22を開き、調整用ボルト53を操作する。
調整用ボルト53の操作毎にフロア部材22を閉じてフロア部材22の高さを確認すればよい。
【0040】
この実施形態によれば、第1の実施形態における作用効果(1)〜(3)と同等の作用効果を奏する。
さらに言うと、フロア部材22に切り込み部22aを形成したり、マット部材24に切込溝24bや非貼着部24cを形成する必要がなく、フロア部材22やマット部材24の加工数が低減することができる。
また、フロア高さ調整機構50が雌ねじ部材51と調整用ボルト53だけで構成されているから、フロア支持構造50における部品点数を抑制することができる。
【0041】
なお、本発明は、上記した第1、第2の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
○ 第1、第2の実施形態では、フロア部材におけるフロア支持機構は、フロア部材の右寄りに設けられているが、フロア支持機構の設置位置はフロア部材に対応する位置であれば特に限定されない。
○ 第1、第2の実施形態では、フロア部材に設けた蝶番により、フロア部材の開閉を図ったが、必ずしもフロア部材に蝶番を設けて車体フレームと連結する必要はない。例えば、フロア部材の前部の裏面を受承する受承部材を車体フレームに設け、フロア部材が車体フレームから取り外せるようにしてもよい。
○ 第1、第2の実施形態では、フロア支持機構の支持体及び支持体付勢手段として板ばね部材を用いたが、例えば、スイッチ機構のように支持体を回動レバーとし支持体付勢手段をねじりばねを用いてよく、この場合、支持体及び支持体付勢手段が互いに別部材となる。
○ 第1、第2の実施形態では、フロア高さ調整機構はフロア部材の裏面に設けたが、車体側に設けるようにしてもよい。例えば、板ばね部材の自由端側がフロア部材の裏面を直接当接する構成とし、板ばね部材の取り付け角度を変更できるようにすれば、板ばね部材の自由端側の上端の高さが変更できる。
○ 第1、第2の実施形態では、産業車両としてのリーチ型フォークリフトに適用したフロア支持構造を説明したが、例えば、産業車両としてのリーチ型フォークリフトを除く荷役車両、牽引車両、建設車両に適用することができる。
○ 第1、第2の実施形態では、
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】第1の実施形態に係るリーチ型フォークリフト10の右後方からの斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係るフロア支持構造を示す平面図である。
【図3】第1の実施形態に係るフロア支持構造を示す側面図である。
【図4】第1の実施形態に係るフロア支持構造を示す後面図である。
【図5】第1の実施形態に係るフロア支持構造の要部を示す拡大側面図である。
【図6】第1の実施形態に係るフロア高さの調整を説明する要部斜視図である。
【図7】第2の実施形態に係るフロア支持構造の要部を示す拡大側面図である。
【符号の説明】
【0043】
10 リーチ型フォークリフト
11 車体
17 収容フレーム
18 前部フレーム
20 サイドカバー
21 下部フレーム
22 フロア部材
22a 切り抜き部
23 蝶番
24 マット部材
24c 非貼着部
30 スイッチ機構
31 回動レバー(変位体としての)
33 ねじりバネ
34 スイッチ部
35、36 受承部材
40 フロア支持機構
41 板ばね部材(支持体及び支持体付勢手段としての)
42 固定用ボルト
45、50 フロア高さ調整機構
46 調整体ブラケット
47、53 調整用ボルト(調整体としての)
48 六角孔
49 ナット
51 雌ねじ部材
52 ねじ孔
R 六角レンチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立席運転用のフロア部材が、車体に設けた運転者検出スイッチ機構を介して支持され、該運転者検出スイッチ機構は、前記フロア部材を下方から支持する上下に変位自在の変位体と、該変位体を上方へ付勢する変位体付勢手段と、前記変位体の変位に応じてオン・オフするスイッチ部とを有する産業車両のフロア支持構造であって、
前記フロア部材を支持するフロア支持機構が、前記運転者検出スイッチ機構と別に設けられ、
前記フロア支持機構は、前記フロア部材を下方から支持する上下に変位自在の支持体を有し、
前記フロア部材及び前記フロア支持機構の少なくとも一方には、前記フロア部材の車体に対する高さを調整するフロア高さ調整機構が備えられることを特徴とする産業車両のフロア支持構造。
【請求項2】
前記フロア支持機構は、該支持体を上方へ付勢する支持体付勢手段を有することを特徴とする請求項1記載の産業車両のフロア支持構造。
【請求項3】
前記支持体は、前記支持体付勢手段を一体的に形成した板ばね部材とすることを特徴とする請求項2記載の産業車両のフロア支持構造。
【請求項4】
前記フロア高さ調整機構は、前記フロア部材の下方にて支持体と当接する調整体と、該調整体を保持する調整体ブラケットを有し、
該調整体ブラケットは前記フロア部材の裏面に設けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の産業車両のフロア支持構造。
【請求項5】
前記フロア部材は、前記調整体の位置に対応した切り抜き部を有し、前記調整体ブラケットは、前記切り抜き部を臨む水平部と、該水平部に穿孔されたねじ孔を有し、前記調整体は、前記ねじ孔に螺入される調整用ボルトであることを特徴とする請求項4記載の産業車両のフロア支持構造。。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−269438(P2007−269438A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−96472(P2006−96472)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】