説明

産業車両

【課題】運転者が車両を操作する際に、後部車体構成部の外郭形状を容易に把握できるとともに、走行する通路に対する車両位置を容易に把握できる産業車両を提供する。
【解決手段】荷役具側の前進方向又は前記後部車体構成部側の後進方向に走行する産業車両であって、前記後部車体構成部の外縁における前記運転席の運転者Pから視認可能な位置、カバー21の外縁24に、前記後部車体構成部の外郭形状を把握可能とするとともに車両が走行する通路に対する車両位置から把握可能とする複数の目印31〜39が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
フォークリフトに代表される産業車両の一種に、昇降可能な作業台を備えたピッキングリフトが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のピッキングリフトは、車体の中央に一対のマストが立設されており、その一対のマストにより前方に設けられる作業台が昇降可能に支持されている。作業台の前部には荷役作業用のフォークが固定されている。マストの後方にはドライブモータと駆動輪とからなる走行駆動装置や、作業台を昇降させるための荷役装置や、荷役や走行を制御する制御装置や、車両の駆動源であるバッテリ等の各種の機能装置がコンパクトに集合配置されている。そして、それら各種の機能装置は、マストの左右両側から車体の後方にかけて設けられたカバー(後部車体構成部)により覆われている。カバーは、上部の開閉式カバーと下部の固定カバーとにより構成されている。上部の開閉式カバーは運転席からの死角を少なくするように、マストに隣接する側から車両の外縁部にかけて傾斜する形状となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−40584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ピッキングリフトが、フォークが設けられた側とは反対側である後方に向かって走行する場合には、進行方向に各種の機能装置が配置されているため、運転者は、車両の外縁部、つまり、後進方向における車体(後部車体構成部)の端部を視認することが難しいという課題がある。これは、例えば、上部の開閉式カバーの一部によって運転者の視線が遮られて後進方向における車体の外縁部が運転者の死角に入ってしまうためである。
【0005】
また、倉庫内で使用されるピッキングリフトは狭い通路を走行する場合が多いが、そのような狭い通路に対して中央部を走行させるためには、従来は経験や勘といった運転者の感覚に頼らざるを得なかった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、運転者が車両を操作する際に、後部車体構成部の外郭形状を容易に把握できるとともに、走行する通路に対する車両位置を容易に把握できる産業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、荷役作業用の荷役具が車両前方に設けられるとともに、運転席より車両後方に後部車体構成部が設けられ、前記荷役具側の前進方向又は前記後部車体構成部側の後進方向に走行する産業車両であって、前記後部車体構成部の外縁における前記運転席の運転者から視認可能な位置に、前記後部車体構成部の外郭形状を把握可能とするとともに車両が走行する通路に対する車両位置を把握可能とする複数の目印が設けられていることを要旨とする。
【0008】
この発明によれば、車両を操作して走行させる際に、運転者は、後部車体構成部の外縁に設けられた複数の目印を結ぶ仮想線を把握することによって、運転席にいながら、後部車体構成部の外郭形状を容易に把握することができる。また、複数の目印を車両が走行する通路とともに視認することによって、運転席にいながら、通路に対する車両位置を把握することができるため、運転者の車両走行操作を容易なものとすることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記複数の目印は、前記後部車体構成部の車幅方向中央に対して左右両側の等距離に設けられ、車両の走行操作時において前記通路とともに視認されることで前記後部車体構成部の全幅が把握可能となる少なくとも一対の第1目印を備えていることを要旨とする。
【0010】
この発明によれば、運転者は、運転席から一対の第1目印及び通路を視認するとともに、各第1目印を通過する視線の先にある通路との交点同士を結ぶ仮想線を把握することで、運転席にいながら後部車体構成部の全幅を把握することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記複数の目印は、車両の走行操作時において前記通路の端部とともに視認されることで前記後部車体構成部が前記通路の端部よりも予め決められた距離だけ離れていることが把握可能となる少なくとも一つの第2目印を備えていることを要旨とする。
【0012】
ここで、「通路の端部」とは、通路の幅方向(車幅方向)に位置する通路の端部のことをいう。この発明によれば、運転者は、運転席から第2目印及び通路を視認するとともに、第2目印を通過する視線の先にある通路との交点を通路の端部に合わせることによって、運転席にいながら、後部車体構成部が通路の端部から予め決められた距離にあることを把握することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記複数の目印は、前記後部車体構成部の先端側に設けられる二つ以上の第3目印を備えていることを要旨とする。
【0014】
ここで、「後部車体構成部の先端」とは、車両の後進方向において運転席から最も離れた後部車体構成部の部位のことをいう。この発明によれば、運転者は、二つ以上の第3目印を視認するとともに、各第3目印同士を結ぶ仮想線を把握することで、後部車体構成部の先端位置を把握することができる。このため、例えば、後部車体構成部の先端側に障害物(例えば棚等)が存在しており、その障害物に後部車体構成部の先端を近づけるように走行操作する場合、障害物への接触を避けて車両を走行させることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記複数の目印は、前記後部車体構成部の車幅方向中央に設けられる第4目印を備えていることを要旨とする。
【0016】
この発明によれば、運転者は、第4目印を視認することによって、後部車体構成部の中央を把握することができる。このため、例えば、車両が後進方向に走行する場合、第4目印が通路の幅方向中央にくるように車両を走行操作することで、車両を通路の中央寄りに走行させることができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の発明において、前記複数の目印は、前記後部車体構成部の角部に設けられる少なくとも一つの第5目印を備えていることを要旨とする。
【0018】
ここで、「後部車体構成部の外縁の角部」とは、車両の後進方向に沿った後部車体構成部の外縁の側縁と、車両の後進方向において運転席から離れた後部車体構成部の外縁の先端縁とが交差する部位のことをいう。この発明によれば、例えば、棚の間に設けられた通路を走行する車両において、車両を左右どちらかの棚に寄せるような場合、運転者は、第5目印及び棚を視認しながら車両を走行操作することで、棚に後部車体構成部を接触させることなく車両を寄せることができる。また、通路の曲がり角を曲がる際に、第5目印及び通路の曲がり角を視認しながら車両を走行操作することで、通路の曲がり角に後部車体構成部を接触させることなく通路を曲がることができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の発明において、前記複数の目印は、前記後部車体構成部に一体形成されていることを要旨とする。
この発明によれば、目印が後部車体構成部と一体形成されているため、目印を別部材で形成する場合に比較して部品点数を削減でき、また、取り付ける手間も省くことができる。
【0020】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の発明において、前記複数の目印は、前記後部車体構成部の外表面から突出する凸部として形成されていることを要旨とする。
【0021】
この発明によれば、例えば、目印が後部車体構成部の外表面に対して凹む凹部として形成されている場合に比べると、目印を運転者から目立たせることができるため、運転者からの視認性を向上させることができる。また、後部車体構成部の外表面が外側に膨らむように弧状に湾曲している場合であっても、目印が外表面から突出しているため、運転者から目印を視認することができる。
【0022】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の発明において、前記産業車両は、前記運転席を兼ねる作業台を昇降可能に支持する一対のマストが設けられるとともに、前記一対のマストよりも後方に配置された機能装置を収容する前記後部車体構成部の一部を形成するカバーを備えたピッキングリフトであり、前記カバーには、後方に向かうにつれて下る傾斜面が形成されており、前記傾斜面の外縁に前記複数の目印が設けられていることを要旨とする。
【0023】
この発明によれば、ピッキングリフトのカバーに後方に向かうにつれて下る傾斜面が形成されており、運転席からカバーの外縁を直接視認し難い場合でも、運転者は傾斜面の外縁に設けられた複数の目印を視認することによって、カバーの外郭形状を容易に把握することができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、運転者が車両を操作する際に、後部車体構成部の外郭形状を容易に把握できるとともに、走行する通路に対する車両位置を容易に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)は実施形態におけるピッキングリフトの一部を破断した斜視図、(b)は第1〜第5目印周辺を拡大した斜視図。
【図2】ピッキングリフトの一部を側方から見た模式図。
【図3】ピッキングリフトが通路内を走行している状態を平面視した模式図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明をピッキングリフトに具体化した一実施形態を図1〜図3にしたがって説明する。以下の説明において「前」「後」「左」「右」「上」「下」は、ピッキングリフトの運転者(作業者)がピッキングリフトの前方(前進方向)を向いた状態を基準とした場合の「前」「後」「左」「右」「上」「下」を示すものとする。また、ピッキングリフトの左右方向を車幅方向とする。
【0027】
図1(a)に示すように、ピッキングリフト10の車体11には一対のマスト12が立設されている。一対のマスト12の前方には作業台13が設けられている。作業台13は、一対のマスト12によって昇降可能に支持されている。作業台13の前部には荷役作業用の荷役具としてのフォーク14が固定されている。作業台13の後部には、背面板17が立設されるとともに、背面板17の中央には運転者Pがピッキングリフト10を走行操作するための操作部Sが設けられている。そして、運転者Pが作業台13上に立った状態で操作部Sを操作することで、ピッキングリフト10が前進方向又は後進方向のいずれかの進行方向に走行するようになっている。よって、作業台13は、運転者Pがピッキングリフト10を運転するための運転席を兼ねている。なお、操作部Sには、荷役作業を行うための荷役作業用操作部も設けられている。
【0028】
背面板17の上部にはメッシュ状の視認窓17aが形成されるとともに、運転者Pは、作業台13上に立った状態で操作部Sを操作しながら、ピッキングリフト10の後方を視認窓17aを介して視認可能になっている。
【0029】
一対のマスト12の後方下部にはドライブモータと駆動輪15とからなる走行駆動装置、作業台13を昇降させるための荷役装置、荷役や走行を制御する制御装置、車両の駆動源であるバッテリ等の各種の機能装置Kが配設されている。各種の機能装置Kは、固定カバー16に取り囲まれている。さらに、固定カバー16の上部には、開閉式のカバー21が取り付けられている。カバー21は、各種の機能装置Kを上方から被覆している。そして、カバー21を開けると、各種の機能装置Kの上部が開放され、各種の機能装置Kのメンテナンス等の作業を行うことができるようになっている。本実施形態において、カバー21及び固定カバー16は、作業台13よりも車両後方に位置する後部車体構成部を形成している。
【0030】
カバー21の上面22は、例えば平板状をなしている。また、カバー21には、上面22の後端縁22aから後側に向かうにつれて下る外表面としての傾斜面23が形成されるとともに、傾斜面23の側縁に沿って延びるカバー21の外縁24には、下方に向かって延びる側面25が形成されている。側面25は、カバー21が閉じられた状態において、固定カバー16の側面16aに連なるように形成されている。
【0031】
カバー21の外縁24は、傾斜面23の左右両側縁に位置するとともにピッキングリフト10の前方から後方に向けて下るように延びる側縁24a,24bと、傾斜面23の左右両後端に位置するとともに側縁24a,24bの後端に連なるように弧状に膨らむ角部24c,24dと、両角部24c,24d同士を繋ぐ先端縁24eとから形成されている。ここで、先端縁24eにおいて、ピッキングリフト10の車幅方向に沿って延び、且つ先端縁24eの中央に位置する端縁を第1先端縁241eとし、第1先端縁241eの左右両端と各角部24c,24dとを繋ぐ端縁を第2先端縁242e,243eとする。なお、第1先端縁241eは、外縁24の中で最も後方に位置している。
【0032】
第2先端縁242e,243eには目印としての第1目印31,32が傾斜面23から突出する凸部として形成されている。この一対の第1目印31,32は、カバー21の車幅方向中央に対して左右両側に等距離に配置されている。また、第2先端縁242e,243eには目印としての第2目印33,34が傾斜面23から突出する凸部として形成されている。この一対の第2目印33,34は、第1目印31,32よりも車幅方向の外側に配置されている。さらに、第1先端縁241eと第2先端縁242e,243eとの境目には目印としての第3目印35,36が傾斜面23から突出する凸部として形成されている。また、第1先端縁241eの車幅方向中央には、目印としての第4目印37が傾斜面23から突出する凸部として形成されている。さらに、両角部24c,24dには、第5目印38,39が傾斜面23から突出する凸部として形成されている。
【0033】
各第1目印31,32、各第2目印33,34及び各第3目印35,36は、第1先端縁241eを挟んだ両側に、第1先端縁241eと第2先端縁242e,243eとの境目から第2先端縁242e,243eに沿って間隔をおいて配置されている。第1〜第5目印31〜39は、カバー21と一体形成されている。
【0034】
図1(b)に示すように、第1〜第5目印31〜39は矩形板状をなすとともに、その長手方向が傾斜面23に沿って延びるように形成されている。なお、図1(b)では、説明の便宜上、第1目印31、第2目印33、第3目印35、第4目印37及び第5目印38のみを図示し、第1目印32、第2目印34、第3目印36及び第5目印39の図示を省略する。
【0035】
図2に示すように、傾斜面23は外方に膨らむように弧状に湾曲している。また、運転者Pが後方を向いた状態では、第1〜第5目印31〜39は運転者Pから視認可能になっている。すなわち、傾斜面23の膨らみは、運転者Pと第1〜第5目印31〜39とを結ぶ視線Lが傾斜面23に遮られないように設定されている。なお、図2では、説明の便宜上、第4目印37のみを図示し、その他の第1〜第3目印31〜36及び第5目印38,39の図示を省略している。
【0036】
図3に示すように、各第1目印31,32の配置位置は、運転者Pの各第1目印31,32を通過する視線L1,L2の先が通路Tの床面Fと交差する交点P1,P2上を、後進方向へ走行するピッキングリフト10の車体11の左右両縁部11a,11bが通過する位置となるように設定されている。すなわち、両交点P1,P2同士を直線状に結ぶ仮想線L7の長さH1は、車体11の全幅(両縁部11a,11b間の長さ)とほぼ同一になっている。
【0037】
各第2目印33,34の配置位置は、運転者Pの各第2目印33,34を通過する視線L3,L4の先が通路Tの床面Fと交差する交点P3,P4が、後進方向へ走行するピッキングリフト10の両縁部11a,11bが通過する位置から車幅方向に沿って距離H2だけ離れた位置になるように設定されている。各第3目印35,36は、各第1目印31,32及び第2目印33,34よりもカバー21の外縁24の先端側に位置している。
【0038】
次に、本実施形態の作用について説明する。
例えば、運転者Pは作業台13上に立った状態で操作部Sを操作して、ピッキングリフト10を通路T内において後進方向へ走行させる。この車両の走行操作時において、運転者Pは、第1〜第5目印31〜39を視認するとともに、外縁24に沿うように第1〜第5目印31〜39を結ぶ仮想線を把握することで、第1先端縁241e、第2先端縁242e,243e及び両角部24c,24dの位置を把握することができる。その結果、運転者Pは、カバー21の外郭形状を把握することができる。
【0039】
また、運転者Pは、車両の走行操作時において、各第1目印31,32を視認するとともに、各第1目印31,32を通過する視線L1,L2の先が床面Fと交差する交点P1,P2を把握する。両交点P1,P2同士を直線状に結ぶ仮想線L7の長さH1は、車体11の全幅とほぼ同一になっているため、運転者Pは、ピッキングリフト10が後進方向へ走行している際に、各第1目印31,32及び両交点P1,P2を視認することで、車体11の全幅が把握可能になっている。そして、運転者Pは、交点P1,P2と通路Tの幅方向に位置する両端部T1,T2との間に間隔があるか否かを把握しながらピッキングリフト10を運転する。
【0040】
また、運転者Pは、車両の走行操作時において、各第2目印33,34を視認するとともに、各第2目印33,34を通過する視線L3,L4の先が床面Fと交差する交点P3,P4を把握する。そして、運転者Pは、交点P3,P4が通路Tの幅方向に位置する両端部T1,T2上に位置しているか否かを把握する。
【0041】
例えば、交点P3,P4が両方とも両端部T1,T2上に位置している場合、運転者Pは、ピッキングリフト10の両縁部11a,11bが、通路Tの幅方向に位置する両端部T1,T2から車幅方向に沿って距離H2だけ離れた位置を通過するように、ピッキングリフト10が通路T内を走行していることが把握可能になっている。また、例えば、交点P3が通路Tの幅方向に位置する端部T1よりも通路Tの外側に位置する場合、車体11の縁部11aが通路Tの幅方向に位置する端部T1から車幅方向において距離H2よりも接近していることが把握可能になっている。さらに、例えば、交点P3が通路Tの幅方向に位置する端部T1よりも通路Tの内側に位置する場合、車体11の縁部11aが通路Tの幅方向に位置する端部T1から車幅方向において距離H2よりも離間していることが把握可能になっている。ここで、「車体11の両縁部11a,11bが通路Tの幅方向に位置する両端部T1,T2から車幅方向に沿って距離H2だけ離れた位置」とは、ピッキングリフト10が通路Tを走行している際に、車体11が通路Tの両側に存在する棚等の障害物(図示せず)に接触することが無い予め決められた位置のことをいう。
【0042】
また、例えば、車体11の後方側に障害物があった場合、運転者Pは、各第3目印35,36を視認するとともに、両第3目印35,36同士を結ぶ仮想線L5を把握する。各第3目印35,36は、各第1目印31,32及び第2目印33,34よりもカバー21の外縁24の先端側に位置しているため、仮想線L5により第1先端縁241eの位置が把握し易くなっている。よって、運転者Pは、各第3目印35,36同士を結ぶ仮想線L5を把握することで、通路Tに対するカバー21の後方側の先端位置が把握し易くなっている。ここで、「カバー21の先端」とは、車両の後進方向において作業台13から最も離れたカバー21の部位のことをいう。
【0043】
また、運転者Pは、第4目印37を視認することで、カバー21の中央を把握可能になっている。さらに、例えば、通路T内に中央線C1が存在する場合、運転者Pは、第4目印37を視認するとともに、第4目印37を通過する視線L6の先が床面Fと交差する交点P5を把握する。第4目印37は、第1先端縁241eの車幅方向中央に配置されているため、運転者Pは、交点P5が中央線C1上に位置していることを把握することで、ピッキングリフト10が通路T内の中央寄りを走行していることが把握可能になっている。
【0044】
また、運転者Pは、例えば、通路Tの幅方向に位置する端部T1に車体11を寄せる際に、第5目印38を視認するとともに、通路Tの幅方向に位置する端部T1に対して第5目印38を寄せるようにピッキングリフト10を運転する。第5目印38,39は、車両の後進方向に沿ったカバー21の外縁24の側縁24a,24bと、車両の後進方向において作業台13から離れたカバー21の外縁24の先端縁24eとが交差する部位である角部24c,24dに配置されている。よって、運転者Pは、通路Tの幅方向に位置する端部T1に対して第5目印38が寄ったことを把握することで、ピッキングリフト10が通路Tの幅方向に位置する端部T1に寄ったことを把握可能になっている。
【0045】
また、運転者Pは、例えば、通路Tの曲がり角を曲がる際に、通路Tの曲がり角側に位置する第5目印38,39を視認するとともに、当該第5目印38,39を通路Tの曲がり角に寄せながら通路Tの曲がり角を曲がるようにピッキングリフト10を運転する。第5目印38,39は、車両の後進方向に沿ったカバー21の外縁24の側縁24a,24bと、車両の後進方向において作業台13から離れたカバー21の外縁24の先端縁24eとが交差する部位である角部24c,24dに配置されている。よって、運転者Pは、通路Tの曲がり角側に位置する第5目印38,39を通路Tの曲がり角に寄せながら通路Tの曲り角を曲がることで、通路Tの曲がり角に存在する障害物(棚等)と車体11との間の間隔を把握可能になっている。
【0046】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)カバー21の外縁24における運転者Pから視認可能な位置に、第1〜第5目印31〜39を設けた。よって、運転者Pは、第1〜第5目印31〜39を視認するとともに第1〜第5目印31〜39を結ぶ仮想線を把握することで、作業台13上からカバー21の外縁24の位置を把握することができ、カバー21の外郭形状を容易に把握することができる。また、運転者Pは、第1〜第5目印31〜39を視認することで、作業台13上から通路Tに対する車両位置が把握できるため、運転者Pの車両走行操作を容易なものとすることができる。
【0047】
(2)カバー21の外縁24に、各第1目印31,32を、運転者Pの各第1目印31,32を通過する視線L1,L2の先が床面Fと交差する交点P1,P2上を、後進方向へ走行するピッキングリフト10の車体11の左右両縁部11a,11bが通過する位置となるように設けた。両交点P1,P2同士を直線状に結ぶ仮想線L7の長さH1は、車体11の全幅とほぼ同一になっている。よって、運転者Pは、ピッキングリフト10が後進方向へ走行している際に、両交点P1,P2同士を直線状に結ぶ仮想線L7を把握することで、作業台13上から車体11の全幅を把握することができ、通路Tの幅内における車体11の位置を把握することができる。
【0048】
(3)カバー21の外縁24に、各第2目印33,34を、運転者Pの各第2目印33,34を通過する視線L3,L4の先が床面Fと交差する交点P3,P4が、後進方向へ走行するピッキングリフト10の両縁部11a,11bが通過する位置から車幅方向に沿って距離H2だけ離れた位置になるように設けた。よって、交点P3,P4が両方とも両端部T1,T2上に位置している場合、運転者Pは、ピッキングリフト10の両縁部11a,11bが、通路Tの幅方向に位置する両端部T1,T2から車幅方向に沿って距離H2だけ離れた位置を通過するように、ピッキングリフト10が通路T内を走行していることを作業台13上から把握することができる。その結果、ピッキングリフト10が通路Tを走行している際に、車体11が通路Tの両側に存在する棚等の障害物に接触することが無い予め決められた位置にあることを把握することができる。
【0049】
(4)カバー21の外縁24に各第3目印35,36を、各第1目印31,32及び第2目印33,34よりもカバー21の外縁24の先端側に位置するように設けた。よって、両第3目印35,36同士を結ぶ仮想線L5により第1先端縁241eの位置が把握し易くなり、運転者Pは、両第3目印35,36同士を結ぶ仮想線L5を把握することで、車体11の後方側の先端位置を把握することができる。このため、例えば、車体11の後方側の先端側に障害物(例えば棚等)が存在しており、その障害物に車体11を近づけるように走行操作する場合、障害物への接触を避けて車両を走行させることができる。
【0050】
(5)カバー21の外縁24において、車幅方向の中央に第4目印37を設けた。よって、第4目印37を視認することによって、カバー21の中央を把握することができる。このため、例えば、通路T内に中央線C1が存在する場合、運転者Pは、第1目印31を通過する視線L6の先が床面Fと交差する交点P5を中央線C1上に位置させた状態で車両を走行操作することで、車両を通路Tの中央寄りに走行させることができる。
【0051】
(6)カバー21の外縁24の角部24c,24dに第5目印38,39を設けた。よって、例えば、棚の間に設けられた通路Tを走行する際に、車両を左右どちらかの棚に寄せる場合、運転者Pは、第5目印38,39及び棚を視認しながら車両を走行操作することで、棚にカバー21を接触させることなく車両を寄せることができる。また、例えば、通路Tの曲がり角を曲がる際に、第5目印38,39及び通路の曲がり角を視認しながら車両を走行操作することで、通路Tの曲がり角にカバー21を接触させることなく通路Tを曲がることができる。
【0052】
(7)第1〜第5目印31〜39はカバー21と一体形成されている。よって、第1〜第5目印31〜39を別部材で形成する場合に比較して部品点数を削減でき、また、取り付ける手間も省くことができる。
【0053】
(8)第1〜第5目印31〜39を、カバー21の傾斜面23から突出する凸部として形成した。よって、第1〜第5目印31〜39が、カバー21の傾斜面23に対して凹む凹部として形成されている場合に比べると、第1〜第5目印31〜39を運転者Pから目立たせることができるため、運転者Pからの視認性を向上させることができる。また、カバー21の傾斜面23が外側に膨らむように弧状に湾曲していても、第1〜第5目印31〜39が傾斜面23から突出しているため、運転者Pから第1〜第5目印31〜39を視認することができる。
【0054】
(9)カバー21の傾斜面23の外縁24に第1〜第5目印31〜39を形成した。よって、ピッキングリフト10のカバー21に後方に向かうにつれて下る傾斜面23が形成されており、作業台13上から傾斜面23の外縁24を直接視認し難い場合でも、運転者Pは、傾斜面23の外縁24に設けられた第1〜第5目印31〜39を視認することによって、カバー21の外郭形状を容易に把握することができる。
【0055】
(10)各第1目印31,32、各第2目印33,34及び各第3目印35,36を、カバー21の外縁24において、車幅方向の中央を挟んだ両側に、外縁24に沿って間隔をおいて配置した。よって、各第1目印31,32、各第2目印33,34及び各第3目印35,36を目盛りとして機能させることができる。したがって、運転者Pの身長や姿勢などの個人差によって、第1〜第3目印31〜36の見え方が異なる場合であっても、第1〜第3目印31〜36を目盛りとして利用することで、車体11の全幅の把握等を感覚的に行うことができる。
【0056】
(11)カバー21の外縁24に第1〜第5目印31〜39を一体形成することで、カバー21の剛性を高めることができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
【0057】
○ 実施形態において、第1〜第5目印31〜39が、カバー21の傾斜面23に対して凹む凹部として形成されていてもよい。
○ 実施形態において、第1〜第5目印31〜39は、カバー21と一体形成されていなくてもよい。例えば、カバー21と別体で形成された目印をカバー21の外縁24に取り付けるようにしてもよい。
【0058】
○ 実施形態において、第1〜第5目印31〜39の配置位置が、運転者Pの身長や姿勢などの個人差に合わせて調整可能な構成であってもよい。
○ 実施形態において、第1〜第5目印31〜39の表面に塗料を塗ったり、シールを貼ったりしてもよい。これによれば、第1〜第5目印31〜39の視認性を向上させることができる。
【0059】
○ 実施形態において、第1目印31,32、第2目印33,34、第3目印35,36及び第5目印38,39全てを、車体11の全幅を把握するために利用してもよい。また、第1目印31,32、第2目印33,34、第3目印35,36及び第5目印38,39全てを、通路Tの幅方向に位置する両端部T1,T2から車体11が予め決められた距離だけ離れていることを把握するために利用してもよい。
【0060】
○ 実施形態において、カバー21の外縁24に目印をさらに設けてもよい。すなわち、カバー21の外縁24に設けられる目印の数は、二つ以上であれば特に限定されるものではない。
【0061】
○ 実施形態において、第1〜第5目印31〜39は、例えば、円板状や三角板状であってもよく、第1〜第5目印31〜39の形状は特に限定されるものではない。
○ 本発明を、フォーク14とは反対側に操作部Sが設けられたピッキングリフト10に適用したが、これに限らず、フォーク14側に操作部Sが設けられたピッキングリフトに適用してもよい。
【0062】
○ 本発明を、例えば、カウンタバランスフォークリフトに適用してもよい。この場合、車両後方に取り付けられるカウンタウェイトが後部車体構成部に相当する。
【符号の説明】
【0063】
K…機能装置、P…運転者、T…通路、T1,T2…端部、10…産業車両としてのピッキングリフト、11…車体、12…マスト、13…運転席を兼ねる作業台、14…荷役具としてのフォーク、16…後部車体構成部を形成する固定カバー、21…後部車体構成部を形成するカバー、23…外表面としての傾斜面、24…外縁、24c,24d…角部、31,32…目印としての第1目印、33,34…目印としての第2目印、35,36…目印としての第3目印、37…目印としての第4目印、38,39…目印としての第5目印。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷役作業用の荷役具が車両前方に設けられるとともに、運転席より車両後方に後部車体構成部が設けられ、前記荷役具側の前進方向又は前記後部車体構成部側の後進方向に走行する産業車両であって、
前記後部車体構成部の外縁における前記運転席の運転者から視認可能な位置に、前記後部車体構成部の外郭形状を把握可能とするとともに車両が走行する通路に対する車両位置を把握可能とする複数の目印が設けられていることを特徴とする産業車両。
【請求項2】
前記複数の目印は、前記後部車体構成部の車幅方向中央に対して左右両側の等距離に設けられ、車両の走行操作時において前記通路とともに視認されることで前記後部車体構成部の全幅が把握可能となる少なくとも一対の第1目印を備えていることを特徴とする請求項1に記載の産業車両。
【請求項3】
前記複数の目印は、車両の走行操作時において前記通路の端部とともに視認されることで前記後部車体構成部が前記通路の端部よりも予め決められた距離だけ離れていることが把握可能となる少なくとも一つの第2目印を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の産業車両。
【請求項4】
前記複数の目印は、前記後部車体構成部の先端側に設けられる二つ以上の第3目印を備えていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の産業車両。
【請求項5】
前記複数の目印は、前記後部車体構成部の車幅方向中央に設けられる第4目印を備えていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の産業車両。
【請求項6】
前記複数の目印は、前記後部車体構成部の角部に設けられる少なくとも一つの第5目印を備えていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の産業車両。
【請求項7】
前記複数の目印は、前記後部車体構成部に一体形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に載の産業車両。
【請求項8】
前記複数の目印は、前記後部車体構成部の外表面から突出する凸部として形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の産業車両。
【請求項9】
前記産業車両は、前記運転席を兼ねる作業台を昇降可能に支持する一対のマストが設けられるとともに、前記一対のマストよりも後方に配置された機能装置を収容する前記後部車体構成部の一部を形成するカバーを備えたピッキングリフトであり、
前記カバーには、後方に向かうにつれて下る傾斜面が形成されており、前記傾斜面の外縁に前記複数の目印が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の産業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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