説明

用時二酸化塩素発生剤の製品形状ならびに成分組成

【課題】 用時二酸化塩素発生剤の未使用時長期保存安定性の確保、ならびに、使用時に反応を制御し異物の混入、使用者の誤使用を排除した安全性の高い製品形態、使用開始以後の使用環境下における二酸化塩素濃度を任意の濃度、任意の期間維持することを目的とした製品形態の設計。
【解決手段】 亜塩素酸塩と乾燥剤を混合してなる主剤により長期保存安定性を確保し、防水透湿性の袋および容器によってガス透過量を制御することで、使用時の濃度および期間を制御する。防水透湿性袋および容器の内部には、主剤と活性化剤を収容密封し、未使用時には易剥離性加工によって主剤と活性化剤を隔て、使用時に製品を圧迫することで主剤と活性化剤が易剥離性加工部分の剥離に伴って混合し、密封された袋および容器内で異物などが混入する恐れなく安全に反応させることができる用時二酸化塩素発生剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中に入れて水中の殺菌・ウイルス不活化・藻の発生抑制・カビ類の発生抑制・異臭味の除去・鉄マンガンの除去・トリハロメタン類の発生抑制といった水質の浄化を目的とし、冷却塔循環水の衛生管理・カット野菜・肉・魚など従来次亜塩素酸によって消毒を行っていた箇所における食品の消毒・循環式温浴施設の衛生管理・浄化槽の消毒槽の衛生管理・産業廃水の浄化に使用することも、空間内の任意の箇所に設置し、空間内の殺菌・ウイルスの不活化・花粉症原因タンパク質の変性・悪臭物質の消臭といった空間内の衛生管理を目的に使用でき、使用時に直接薬品に触れることなく、二酸化塩素を簡便に発生させ、さらに発生する二酸化塩素ガスの量に徐放性を持たせ、人体ならびに動植物に安全な任意の濃度に制御し、かつ未使用時に製品として極めて長期間安定して保存できることを可能とする用時二酸化塩素発生剤の製品形状ならびに成分組成に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化塩素は細菌・ウイルス・悪臭物質・花粉症アレルゲンタンパク質・鉄マンガン除去などの用途に優れた効果を発揮することは周知であり、水道水の消毒、産業廃水の浄化、空調冷却塔内の菌対策、循環式温浴施設の菌対策、空間の消毒など多くの産業的用途で二酸化塩素を利用した製品が実用化されている。
【0003】
しかし、その優れた特性を一般家庭などで使用する場合、未使用保管時の保存安定性と使用時の作業性、そして使用中の安全性の3つの問題を整合させることが難しく、家庭用ではこの種の二酸化塩素発生剤はほとんど販売されていない。例外的に販売された製品であっても、使用時に活性化剤を添加する製品形状であったため、使用初期には濃度が高くなりすぎ安全性を損なうため、使用場所によっては、気分が悪くなるといった問題が発生した。
【0004】
米国産業衛生専門家会議による二酸化塩素暴露時の基準値は、TLV−TWA0.1ppm、TWA0.3ppm。米国立労働安全衛生研究所によれば同基準値は、TWA0.3ppmとされており、従来の製品では二酸化塩素ガスの徐放が適切に管理することができず、二酸化塩素暴露濃度の基準値を大きく上回ることがあり、その結果上記のような問題が発生した。
【0005】
先行技術文献によれば、二酸化塩素ガスの徐放製剤には2種類の使用形態がある。第一の方法は、亜塩素酸塩と酸を別々に分けて、使用時に両者を混合し二酸化塩素を発生させる形態であり、第二の方法はあらかじめ亜塩素酸塩と酸を混合し二酸化塩素を発生させたものをゲル状などにするものである。
【0006】
第一の方法は、未使用時の保存安定性の点で優れているが、使用時にはいわばコップに入った亜塩素酸塩の水溶液に酸化剤とゲル化剤を入れるという製品形態であるがゆえに、使用時の作業性を良くするためには、こぼれたりすることがないように主剤を収納し、酸化剤を入れる主剤容器の開口部はある程度の大きさが必要であり、さらにそのような形状であるため、二酸化塩素ガスの放出が使用初期には反応が促進し大きく高濃度になり、その後は低濃度になってしまうため、振れ幅が極めて大きく、使用後の安全性の点では欠陥製品であった。
【0007】
第二の方法は、特許出願公開平11−27808、特許第4109165号で提案されている方法であり、具体的には亜塩素酸塩溶液を吸水性の樹脂に吸着させ、ゲル化する際に粘土質や二酸化塩素ガスを吹き込む方法である。このようにすることで事前に二酸化塩素を含有したゲル剤を作っておく事が可能になり、使用する際に酸化剤や活性化剤を添加する手間が必要ないとされている。
【0008】
しかし、この方法では未使用時の保存性がまったく保証できない。二酸化塩素は塩化ビニル樹脂、テフロン、ABSを除いて、その他の汎用的な樹脂を侵すため、容器であっても二酸化塩素を長期間収容していると劣化して容器が割れてしまう。また、一般的なポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロンなどを素材としたフィルムなどを積層し袋状に加工したものに、二酸化塩素の溶液やゲルを入れた場合もより短期間で袋が破袋してしまい、このような製品形態では販売できなかった。
【0009】
また、二酸化塩素に対する耐薬品性を担保しえる素材を選択し容器を成型し、内部に二酸化塩素ゲルを収容し、かつ二酸化塩素ガスに対するバリア性に優れた蓋材で密封しても、二酸化塩素ゲルを収めた容器内に空隙があれば、保存時に二酸化塩素ガスがゲルから離脱し、空隙部分に拡散してしまうため、蓋をあけた直後に二酸化塩素ゲルに含まれる二酸化塩素濃度が−気に低下する。さらに蓋材がバリア性の素材と基材とを積層したフィルムによって構成されている場合は、高濃度の二酸化塩素に暴露し続ける結果、デラミが発生したり、最悪の場合はフィルムそのものの劣化によって内容物が漏れることもある。従って、長期間性能低下なく保存維持することが極めて難しく、例えば、3年間の保存による性能低下を10%未満に維持するといった製品設計を行うことができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許出願公開昭60−161307
【特許文献2】特許出願公開昭64−71804
【特許文献3】特許出願公開平9−202706
【特許文献4】特許出願公開2002−370910
【特許文献5】特許出願公開平11−27808
【特許文献6】特許第4109165号
【特許文献7】特許出願公開平6−233985
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明によって解決しようとする課題は、以下に述べる3つの課題をすべて満たす用時二酸化塩素発生剤の製品形態ならびに組成を開発することにある。
【0012】
第一の課題は、未使用時の長期保存安定性を維持することである。第一の課題が有する技術的問題は2つある。従来の技術では、すでに二酸化塩素となった液体やゲルを容器あるいは袋に入れた状態では、樹脂の劣化、二酸化塩素濃度の低下が不可避的に発生し、可能とする技術であっても1年程度しか実際には性能を維持することが出来ず、より長期間性能を維持することは、二酸化塩素の沸点が11℃であり、蒸気圧が101kpaであることからわかるように、原理的に何らかの担体に二酸化塩素を封じ込めた状態で濃度を維持することは非常に困難である。
【0013】
つまり1つ目の問題は、二酸化塩素そのものの物性故に長期間液体やゲルなどの担体に封じ込めておくことが難しいという点である。
【0014】
2つ目は二酸化塩素を収容する容器や袋の材質の問題である。二酸化塩素は、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、ABS樹脂以外のあらゆる樹脂を侵し、金属も腐食させるため、容器や袋の選定が極めて困難になる。原理的にあらかじめ二酸化塩素を液体ないしゲルなどにした製品において、より広範囲での使用を前提とした製品設計を行うと、必然的に内部の二酸化塩素濃度を高濃度にしなければならず、その結果、収容する容器や袋は長期間高濃度の二酸化塩素に暴露するため、極めて高い水準の耐二酸化塩素性が求められ、コスト的にも製品設計的にも困難を極める。
【0013】
第二の課題は、使用時の簡便な作業性を提供することと未使用時の安全性の問題である。最も簡便な作業性は最初から二酸化塩素ゲルや液体の状態になっており、蓋をあければ使用可能な状態にしておくことであるが、それが従来の技術では製品として要求される長期保存安定性を維持することが不可能であることは第一の課題で明らかとなった。
【0014】
そこで、市販されている製品では、使用時に亜塩素酸塩の水溶液にゲル化剤と酸化剤を混合したものをふりかけて二酸化塩素の発生とゲル化を行う製品やあらかじめ酸化剤の水溶液に吸水性樹脂などを加えて膨潤させた状態にした上で、使用時に亜塩素酸塩の水溶液を添加するタイプの製品が流通している。これらの製品では、添加剤を加えるという作業を行うため、必然的に作業をしやすい製品形態に加工せざるを得ず容器形状や材質が限定されてしまう。その結果、従来市販されている製品形態の中でも、活性化剤を容器に添加するという形態であるが故に、予期していない薬品が添加されるリスクを排除することができない。特に亜塩素酸塩の水溶液の入った容器に、酸化剤とゲル化材の粉末を入れるタイプの製品では、誤ってハイターなどの次亜塩素酸溶液が混合した場合、急激な反応によって、極めて危険な濃度の二酸化塩素や塩素ガスが発生する可能性が否定できない。ハイターに限らず、急激な反応を起こす可能性のある重曹などは日常的に家庭にあるものであり、さらには、誤飲の可能性もあり使用者の安全面で問題があった。
【0014】
さらに、亜塩素酸塩の水溶液を収容する場合、それが樹脂製の容器であっても袋であっても、二酸化塩素の時と同様に素材を劣化させてしまうため、長期保存安定性の点でも難しく、特に袋状に加工した場合、PP・PE・PET・NYなど汎用的に袋材の作成に用いられる素材では1年以内に破袋してしまう問題もあった。そのため、従来技術ではダブルバック形式によって主剤と活性化剤を反応させる技術も応用することができなかった。
【0015】
第三の課題は、使用後の二酸化塩素ガスの空間内における徐放性の問題である。上述の国際機関が定める通り、二酸化塩素は有用な物質であるが、高濃度では毒性も存在する。従って、製品としては所与の空間において任意の濃度に保たれることが必要であり、そのためには徐放性を与える製品設計が必要であった。しかし、従来の技術では、第一、第二の課題があったため、徐放性の問題が事実上無視されてしまい、濃度が高濃度になりすぎる場合や、低濃度になりすぎて効果が期待できない欠陥製品が販売されるに至った。
【発明を解決するための手段】
【0016】
本発明は、第一の課題を解決するための方法として、鋭意検討を重ねた結果、主剤として亜塩素酸塩の固体と乾燥剤を混和することによって、従来は亜塩素酸塩および二酸化塩素による劣化によって、長期保存安定性を確保できなかった汎用樹脂素材を使用した容器や袋内においても、50℃相対湿度80%以上で3ヶ月以上のような過酷な試験条件下においても問題なく保存が可能であることを見いだした。すなわち亜塩素酸塩の顆粒または粉末などの固体と乾燥剤を混和したものを主剤とし、活性化剤として酸性水または水を用いて、使用時に両者を反応させる製品形態にすることによって長期間の保存安定性を確保することが可能となった。
【0017】
次に第二の課題を解決するための方法として、従来から易剥離性加工を袋や容器に施し、主剤と活性化剤を同一袋や容器内で易剥離性加工によって隔て、使用時には片方を圧迫することで易剥離性加工部分が剥離し、主剤と活性化剤が混和する、いわゆるダブルバックと呼ばれる手法が医療現場では輸液などを中心に実用化されていた。
【0018】
この易剥離性加工を利用したダブルバックは利便性に優れ、しかも第二の課題の一つである他の薬品の混入や誤飲などの問題もなく、再現性の高い安定した反応を促す優れた手法であることから、これを二酸化塩素の発生に応用すべく鋭意検討した結果、長期保存安定性の課題は、主剤となる亜塩素酸塩の顆粒または粉末などの固体と乾燥剤の混合という手法の開発によって解決されたことにより、このダブルバックが利用できるようになり、第二の課題はすべて解決できた。
【0019】
第三の課題は、徐放性の問題である。任意の空間において任意の二酸化塩素濃度を任意の期間維持する方法の確立こそが殺菌・消臭・ウイルス対策・花粉症対策・浄化槽の殺菌・冷却塔の殺菌・食品の殺菌などの様々な目的と使用者の安全を両立させる唯一の方法であるにもかかわらず、亜塩素酸溶液に酸化剤とゲル化材を単に混合し、反応するに任せる製品では、反応初期には一気に高い濃度の二酸化塩素が発生し、その後は二酸化塩素濃度が低下していくという反応の成り行きに任せるため、徐放性はまったく考慮されておらず、そのため上述のような安全性の問題が発生する。
【0020】
また、固体酸と亜塩素酸を単純に混合し、使用環境の湿度によって二酸化塩素を発生させる製品では、使用環境の湿度によって発生する二酸化塩素濃度が変わるため、使用環境における二酸化塩素濃度を事前に制御した商品設計ができず、正確な濃度管理を行うことができない。これらの製品群では一定の空間内における濃度が、最大と最小で実に100倍以上も異なるといった結果が得られており、製品として欠陥があると言わざるを得ない。
【0021】
本発明者はこの課題に対して、防水透湿性素材を主剤と活性化剤を入れる袋とすることにより、解決できることを見いだした。また、同様に汎用樹脂によって成型された容器の蓋部分をこの防水透湿性素材によって、容器と接着し主剤および活性化剤を密封することによっても解決できることを確認した。
【0022】
選択される防水透湿性素材に関しては、各社から販売されており、多くはポリエステル・ポリエチレン・ポリウレタンなどの汎用素材を多孔質に加工することで作られている。二酸化塩素ガスの透過量が所与の製品目的に合致するものであり、ダブルバック加工などに支障のない素材や形態であれば、任意の防水透湿性素材を用いることができる。
【0023】
上述のように、防水透湿性素材の袋に主剤として亜塩素酸塩および乾燥剤を入れ、易剥離性加工を防水透湿性素材による袋に部分的に施し、酸性水または水と隔てた形態または易剥離性加工をシール部分に施した袋内に酸性水または水を入れた袋を防水透湿性素材の袋に収容する製品形態であり、使用時には一方を圧迫することで易剥離性加工部分が剥離し、主剤と活性化剤が混合し反応することで二酸化塩素を発生させ、使用後は防水透湿性素材のガス透過量によって、二酸化塩素ガスが徐放する。このようにして製造された二酸化塩素剤は、水中に入れて使用することも、室内で使用することも可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の用時二酸化塩素発生剤は、従来のものと異なり、未使用時に年単位での長期保存が可能であり、使用時にはこぼれたり、異物が混入したりする危険がなく簡便な操作で二酸化塩素を発生させることができ、使用中には放出する二酸化塩素が防水透湿性の袋によって規定される二酸化塩素濃度で徐放されるため空間および水中における二酸化塩素濃度を適切に管理することが可能になり、細菌・ウイルス・悪臭・花粉症アレルゲンタンパク質の対策が可能でありながら、使用者の安全性も守ることができる。
【0025】
さらに本発明による二酸化塩素剤は、防水透湿性フィルムによって外部と内部が物理的に隔てられゲル化剤などによって二酸化塩素は固形化されているため、外部に放出されるものは二酸化塩素ガスだけに限られる。そのため、従来次亜塩索酸塩や塩素化イソシアヌル酸を用いていた生鮮野菜や肉類、魚類などの消毒、浄化槽の消毒槽、冷却塔内循環水の消毒などにおいて、次亜塩素酸やその副生成物による鮮度低下や、トリハロメタン類の生成といった問題に対して、本発明による二酸化塩素剤は純粋な二酸化塩素のみが殺菌、消毒に作用するため鮮度低下を最小限に抑え、さらにトリハロメタン類の生成もほとんどないため、このような用途において最適な消毒剤を提供できる。
【0026】
しかも、従来は一定の水量に対して、適切な濃度になるように次亜塩素酸塩や塩素化イソシアヌル酸を溶解させていたため、水が入れ替わるたびに新しく添加しなければならず、コスト的にも作業性の点でも非効率であった。しかし、本発明による二酸化塩素剤を常時消毒槽に入れておくだけで、二酸化塩素剤から一定量の二酸化塩素が徐放されるため、水を入れ替えた後でも、一定時間後には所定の二酸化塩素濃度に消毒槽をすることができるため、薬剤の添加の手間やそれに伴って間違った量を入れるといったヒューマンエラーをなくすことができる。また、本発明による防水透湿性素材の二酸化塩素ガス透過量と内部の主剤と活性化剤の量を制御することで、1ヶ月以上の長期間にわたって二酸化塩素を徐放させることも可能であるため、コストの点でも従来の方法に比べ有利である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明の詳細な内容について説明する。まず、本発明の基本的な製品形態と原料となる薬剤の選択について述べる
【0028】
本発明において使用される亜塩素酸塩としては、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸リチウムのような亜塩素酸アルカリ金属塩、亜塩素酸カルシウムなどの亜塩素酸アルカリ土類金属塩があげられるが、亜塩素酸ナトリウムがもっとも入手しやすく使用上もコストの面でも問題なく利用できる。
【0029】
亜塩素酸塩と混和する乾燥剤としては、一般的な生石灰、塩化カルシウム、五酸化二リン、シリカゲル、酸化アルミニウム、硫酸塩、ゼオライトなどが挙げられるが、安全性と酸性物質との混和、コストの点から、無水塩化カルシウム、酸化アルミニウム、無水硫酸ナトリウム、無水硫酸マグネシウム、シリカゲル、ゼオライトが好ましい。亜塩素酸塩と乾燥剤は亜塩素酸塩の重量に対して少なくとも1%以上1000%以下、望ましくは20%以上300%未満の上記乾燥剤から選択される少なくとも一種の乾燥剤を選択し、亜塩素酸塩と混和することによって、得られた混合物を主剤とする。
【0030】
単純に混合するのみで亜塩素酸塩が持つ潮解性を抑制し、樹脂に対する長期保存安定性を亜塩素酸塩単体の場合および亜塩素酸溶液の場合と比較して10倍以上の向上させることができるが、さらに必要に応じて、混合、粉砕、し過、造粒によって、粒径を揃えることを行っても良い。
【0031】
主剤として使用する亜塩素酸塩の量は、使用開始後除放される二酸化塩素の総和に比例する。従って、製品設計において必要な二酸化塩素量から亜塩素酸塩の量は算出される。本発明による用時二酸化塩素発生剤の考えられる用途は、家庭用の靴箱やブーツの消臭などの狭い空間の消臭から1000平方メートル以上床面積のある畜舎の殺菌・消臭と多岐に使用可能であり、家庭やトイレなど比較的微弱な悪臭の消臭を主たる目的とする空間では、極低濃度の二酸化塩素濃度があれば消臭が可能であるが、畜舎のように汚物などが多く、二酸化塩素を消費する物質が多い場合には、徐放する二酸化塩素量も多くする必要がある。従って、一義的に亜塩素酸塩量を定めることはできず、最大で亜塩素酸塩以外の総量に対して、25%未満になる量の亜塩素酸塩を使用し、亜塩素酸塩単独で10kg未満の使用量とすることが毒劇および劇物取締法上および消防法上の取り扱いの容易さから望ましい。
【0032】
亜塩素酸塩と反応し二酸化塩素を生成させる活性化剤に関しては、phを酸性にする薬剤であればあらゆるものを選択することが可能であり、塩酸、硝酸、ホウ酸、リン酸、硫酸などの無機酸や安息香酸、クエン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、メリト酸、マロン酸、ピルピン酸、乳酸、リンゴ酸、フマル酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸などのカルボン酸などルイス酸を任意に選択することができるが、本発明においては安全性およびコスト、入手の容易さの点からクエン酸を用いる。活性化剤のルイス酸濃度に関しては少なくとも0.01%以上含まれていれば良い。
【0033】
本発明における主剤および活性化剤を入れる防水透湿性素材のフィルムは二酸化塩素の分子サイズよりも大きく、水滴の大きさよりも小さい極微小サイズの孔を有する素材であり、すなわち0.3nm以上かつ100000nm以下の微細孔が目的の空間または目的の水量に対して目的の二酸化塩素濃度となるに必要なガス透過量を実現するに相応の数空いていることを特徴とする防水透湿性素材で形成された袋である。このような素材は、レインウェアや食品の鮮度保持用、おむつなど目的に応じた透過量のものが幅広く市販されており、本発明においてもそれらの防水透湿性素材を任意に利用することができる。
【0034】
一週間以内で高濃度の二酸化塩素ガスの徐放を行う場合には、例えば通気流量が5000ml/min以上のおむつなどに使用されている素材を利用することが可能であるし、1ヶ月以上低濃度の二酸化塩素ガスお徐放を行う場合には、主剤と活性化剤については同じで通気流量を20ml/min以下のより少ない素材を選択することで容易に実現することができる。
【0035】
本発明では主剤と活性化剤を易剥離性加工を施したシールによって隔離するわけであるが、この隔離方法は防水透湿性索材の袋の内部に易剥離性加工を施した箇所を設けることも可能であるし、易剥離性加工を施したフィルムで作成された袋に活性化剤を入れ密封した上で、防水透湿性素材の袋に収容する方法も可能である。
【0036】
易剥離性加工は、いくつかの技術的な分類が存在し、剥離形態も界面剥離、凝集剥離、層間剥離に分けられる。食品包装や医療品分野で発達した技術であることから、外観の透明度や冷蔵庫での使用、ボイルの可否などの点から耐熱性、耐寒性、ブロッキングなどがその性能評価項目となるわけであるが、本発明においては外観上の問題や低温あるいは高温での使用を想定する必要はないため、防水透湿性素材自体に加工する場合には、その防水透湿性素材と易剥離性加工フィルムのシール相性とシール強度、防水透湿性素材の袋の内部に易剥離性加工を施した袋を入れる場合は、面々シール強度が問題となり、使用上これらの点に問題がなければ任意のフィルムを選択することができる。
【0037】
亜塩素酸塩と混合する増粘ゲル化剤および高吸水性樹脂素材としては、アラビアガム・トラガントガム・カラヤガム・アラビノガラクタン・カラギーナン・寒天・アルギン酸・キサンタンガム・ジェランガム・カードラン・プルラン・セルロース・カルボキシメチルセルロースナトリウム・ポリアクリル酸ナトリウム・シリカゲル・酸化アルミニウム・ゼオライトから任意のものを少なくとも1種選択することができる。
【0038】
増粘ゲル化剤を使用する目的は、万が一防水透湿性素材の外装袋が外部からの何らかの衝撃などを受けて破袋した場合に、内容物である二酸化塩素が飛び散ることを抑制することのみであることから、活性化剤を吸着固形化し亜塩素酸塩との反応を抑制しないものであれば、上記例に限らず上記目的に適う薬剤であればいかなるものも用いることができる。
【0039】
請求項2では亜塩素酸塩とシリカゲルを混合することにより、シリカゲルの吸湿性を利用し、乾燥剤としてだけでなく反応後の二酸化塩素剤がシリカゲルによって吸着することで増粘ゲル化剤に期待する目的も果たすことが可能となる。 さらに請求項7にある通りこの時使用するシリカゲルのpHを6以下にすることによって、活性化剤にルイス酸を添加する必要もなく、水のみにおいて二酸化塩素を発生させることが可能になる。
【0040】
請求項8は易剥離性加工によって隔てた活性化剤が易剥離性加工部分を使用時に圧迫することで、易剥離性加工部分が剥離し、亜塩素酸ナトリウムと混合し溶解する結果、H型強酸性陽イオン交換樹脂によるイオン交換が起こり、その結果亜塩素酸ナトリウムのナトリウムイオンと水素イオンの交換によって二酸化塩素が発生する。
【0041】
請求項10は浄化槽内の消毒槽に入れる用時二酸化塩素発生剤であり、従来浄化槽の消毒槽には塩素消毒剤としてジクロロイソシアヌル酸またはトリクロロイソシアヌル酸などの錠剤を円筒形のパイプに入れ、パイプ下部が浄化檜を通じて流れる水にさらされ徐々に溶解し特に大腸菌などの細菌の消毒を行う形態がとられていた。しかし、次亜塩素酸による消毒を行うと浄化槽のように有機物が多い処理水では、トリハロメタン類が多く生成され、そのまま放流することができない。
【0042】
二酸化塩素は、大腸菌をはじめとする多くの細菌の消毒に次亜塩素酸以上の効果を発揮する一方、トリハロメタン類をほとんど生成しないという特徴がある。従来は、コスト面の問題により次亜塩素酸を用いざるをえなかったが、本発明による用時二酸化塩素発生剤は、防水透湿性素材のガス透過性と内部の主剤および活性化剤の量を多くすることによって、長期間二酸化塩素を徐放させる製品形態が可能となり、コスト面でも十分次亜塩素酸系消毒剤に代替して使用することが可能となる。
【0043】
請求項11は冷却塔内の特にレジオネラ菌対策を目的とした用時二酸化塩素発生剤に関する。レジオネラ菌は冷却塔や循環水など温水が循環し、生物膜・アメーバが多く存在する場所で急激に増殖する。冷却塔内はレジオネラ菌が増殖しやすい環境が整っているため、冷却塔を汚染源とした感染事例も多数存在する。
【0044】
国内においては、定期的に冷却塔内を監視し、年一回生物膜および細菌の殺菌および除去を目的とした化学的洗浄を実施することが定められているが、保健所などの調査機関の結果によれば、半数以上の冷却塔内の循環水から基準値を超えるレジオネラ菌が検出されている。
【0045】
海外では冷却塔を汚染源とするレジオネラ菌感染事故の後、冷却塔内の循環水を次亜塩素酸や二酸化塩素によって消毒することが義務づけられたが、国内ではそこまで法整備がなされていないため、ほとんど放置されている。この問題に対して本発明によってなる用時二酸化塩素発生剤を冷却塔内に入れることで、循環水に二酸化塩素が徐々に放出溶解し、浴槽水などと同様に低濃度の二酸化塩素を常時循環させることが可能となり、レジオネラ菌などの細菌の殺菌および生物膜の付着を抑制することが可能になる。
【0046】
請求項14は、畜舎空間内の空間浮遊細菌およびウイルスの不活化について用時二酸化塩素発生剤の使用を定めている。特に鶏舎においては1000平米あたり1万羽程度の鶏が飼育されており、現在懸念されている強毒性鶏インフルエンザの問題に関して、畜舎空間内の衛生管理が強く求められている。
【0047】
鶏舎内では鶏糞由来の様々な悪臭や浮遊細菌、ウイルスが多く存在しているため、従来は定期的な次亜塩素酸の噴霧や紫外線の設置、オゾン発生装置などが検討されていたが、いずれも効果が低く採用されていない。
【0048】
これに対して本発明による用時二酸化塩素発生剤は、畜産研究所の試験によれば、浮遊細菌を50%以上殺菌し、唯一実用性が示唆された。用時二酸化塩素発生剤は二酸化塩素の徐放による空間内濃度が一定に保たれ、常時殺菌効果が持続するため、定期的な消毒剤の噴霧とは異なり、低濃度でも効果の継続性を維持することができる。しかもオゾンのように毒性が高い物質ではなく、取り扱いの容易さおよびイニシャルコストの安さの点で極めて導入しやすく実用性が高い。
【0049】
請求項15はエレベーター内の消毒および消臭を目的としている。SARSウイルスの事例では、エレベーター内に乗り合わせた利用者の一人がウイルスに罹患していたため、エレベーター内の閉鎖空間内で他の利用者に感染が拡大し、それが全世界に広まったため、世界的なパニックを引き起こしたことは記憶に新しい。
【0050】
従来、エレベーターのカゴ上部には空調設備が備え付けられており、換気および冷房が行えるようになっている。この空調設備には消臭剤を据え付けるようになっているが、消毒効果はなかった。
【0051】
本発明による用時二酸化塩素発生剤は、この消臭剤に代替してエレベーターのカゴ上部に設置することにより、空調設備に換気に応じて二酸化塩素をエレベーターカゴ内に送り込むことが可能であり、用時二酸化塩素発生剤は二酸化塩素ガスの徐放性が安定しているため、エレベーターのカゴ内部が高濃度になることもなく一定の二酸化塩素濃度を維持することが可能になる。その結果、エレベーター内の浮遊細菌・ウイルスの不活化消毒および消臭が定期的な設備点検時に用時二酸化塩素発生剤を取り替えるだけで可能になる。
【0052】
次に実施例、ならびに比較例によって本発明の効果を説明する。
【0053】
表1は、実施例1、比較例1、比較例2、比較例3、比較例4の各方法によって製造した用時二酸化塩素発生剤を未使用時50℃相対湿度80%以上の条件下で防水透湿性素材の袋に1ヶ月保存した結果である。
【0054】
【表1】

【0055】
実施例1亜塩素酸ナトリウム3g(日本カーリット製)とRD型シリカゲル20gをあらかじめ撹拌混合した主剤を防水透湿性素材による外装袋(大塚テクノ製)に収容し、面々シールが可能な易剥離性フィルムによって作成された袋(東レフィルム加工製)にクエン酸0.5%溶液10gをヒートシールし密封し、外装袋に主剤とともに入れ、外装袋を密封したもの。
【0056】
比較例1亜塩素酸ナトリウム3g(日本カーリット製)と高吸水性樹脂5gを撹拌混合した主剤を防水透湿性素材による外装袋(大塚テクノ製)に収容し、実施例1と同様の袋にクエン酸0.5%溶液10gをヒートシールし密封し、外装袋に主剤とともに入れ、外装袋を密封したもの。
【0057】
比較例2高吸水性樹脂5gとクエン酸1gを混合し、防水透湿性素材による外装袋(大塚テクノ製)に収容し、実施例1と同様の袋に亜塩素酸ナトリウム(日本カーリット製)3gを27gの精製水に溶解させヒートシールし密封し、外装袋に主剤とともにいれ、外装袋を密封したもの。
【0058】
比較例3亜塩素酸ナトリウム10%溶液30gを高吸水性樹脂5gに吸着膨潤させ、酸化剤としてクエン酸3g溶液5gを添加後、3000ppmの二酸化塩素溶液5gを添加し、PET樹脂によって成型された容器にPE製樹脂によって成型した蓋を締めたもの。
【0059】
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明によって得られた用時二酸化塩素発生剤の場合、従来の製品とは異なり、長期間の保存安定性があり、一般消費者向け空間衛生管理用製品として流通させることができる。殺菌・ウイルスの不活化・消臭・花粉症アレルゲンタンパク質の変性・防カビ・防藻の用途において任意の容量を任意の濃度で処理することが可能であり、しかも外部からの異物の混入の恐れがなく、分解副生成物が外部に溶出する恐れもないため、一般消費者向けの殺菌消臭剤としてだけでなく、食品の殺菌・浄化槽の殺菌およびトリハロメタン類の管理・産業廃水の浄化・冷却塔、家庭用、業務用の温浴設備の循環水の殺菌・畜産施設の空間殺菌に幅広く用いることが可能であり、利用可能な産業分野は飲食店・畜産・空調管理・温浴施設・図書館・鉄道・ホテル・一般家庭・工場・消防・警察・浄化槽など微生物汚染および臭気の問題を処理水または空間内に潜在的に抱えるすべての施設において利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜塩素酸塩固体と乾燥剤を主剤とし、酸性水を活性化剤とする二酸化塩素発生剤において、二酸化塩素ガスのガス透過性を任意に制御した防水透湿性フィルムに主剤と活性化剤を密封することにより、主剤と活性化剤を防水透湿性フィルム内において、易剥離性加工によって隔て密封し、長期間の保存を可能にし、使用時には圧迫等により易剥離加工部分を通じて主剤と活性化剤が混合反応し、防水透湿性フィルムのガス透過量に応じた二酸化塩素ガスが徐放され、水中または空間中に設置し使用することで水相または気相に二酸化塩素が徐放拡散することを特徴とする用時二酸化塩素発生剤
【請求項2】
請求項1に記載の主剤が亜塩素酸塩とシリカゲルであることを特徴とする用時二酸化塩素発生剤
【請求項3】
請求項1に記載の主剤が亜塩素酸塩と高吸水性樹脂と無水塩化カルシウムであることを特徴とする用時二酸化塩素発生剤
【請求項4】
請求項1に記載の主剤が亜塩素酸塩と高吸水性樹脂と無水硫酸マグネシウムであることを特徴とする用時二酸化塩素発生剤
【請求項5】
請求項1に記載の主剤が亜塩素酸塩と増粘ゲル化増粘ゲル化剤と無水塩化カルシウムであることを特徴とする用時二酸化塩素発生剤
【請求項6】
請求項1に記載の主剤が亜塩素酸塩と増粘ゲル化剤と無水硫酸マグネシウムであることを特徴とする用時二酸化塩素発生剤
【請求項7】
請求項1に記載の主剤が亜塩素酸塩とpHが6以下のシリカゲルであり、活性化剤が水であることを特徴とする用時二酸化塩素発生剤
【請求項8】
請求項1に記載の主剤が亜塩素酸塩とH型強酸性陽イオン交換樹脂であり、活性化剤が水または酸性水であることを特徴とする用時二酸化塩素発生剤
【請求項9】
請求項1から8の各主剤と活性化剤がそれぞれ熱可塑性樹脂によって成型された容器に収納され、相互の容器が易剥離性フィルムによって接続され、主剤と活性化剤を収納し易剥離性フィルムで接続した容器の上部を防水透湿性フィルムによって密封する製品形態を特徴とし、使用時に容器を圧迫することによって、易剥離加工部分が剥離し、主剤と活性化剤が混合することによって反応が起こり、さらに防水透湿性フィルムによってあらかじめ制御された二酸化塩素ガス透過量に従って、二酸化塩素ガスが徐放されることを特徴とする用時二酸化塩素発生剤
【請求項10】
請求項1に記載の主剤および活性化剤によってなる用時二酸化塩素発生剤において、浄化槽内の消毒槽に入れて殺菌およびトリハロメタン類の抑制を目的として使用することを特徴とする浄化槽用用時二酸化塩素発生剤
【請求項11】
請求項1に記載の主剤および活性化剤によってなる用時二酸化塩素発生剤において、冷却塔内に入れて殺菌・防カビ・防藻・バイオフィルムの付着抑制を目的として使用することを特徴とする冷却塔用用時二酸化塩素発生剤
【請求項12】
請求項1に記載の主剤および活性化剤によってなる用時二酸化塩素発生剤において、浴槽水に入れて殺菌・バイオフィルムの付着抑制・消臭を目的として使用することを特徴とする浴槽用用時二酸化塩素発生剤
【請求項13】
請求項1に記載の主剤および活性化剤によってなる用時二酸化塩素発生剤において、食品を浸漬して殺菌を行う消毒層に入れて使用し、殺菌・ウイルスの不活化を目的として使用することを特徴とする食品消毒用用時二酸化塩素発生剤
【請求項14】
請求項1に記載の主剤および活性化剤によってなる用時二酸化塩素発生剤において、畜舎内空間の浮遊細菌およびウイルスの消毒ならびに消臭を目的とすることを特徴とする畜舎空間消毒消臭用用時二酸化塩素発生剤
【請求項15】
請求項1に記載の主剤および活性化剤によってなる用時二酸化塩素発生剤において、エレベーターカゴ上部に設置し、エレベーター内空間の浮遊細菌およびウイルスの消毒ならびに消臭を目的とすることを特徴とするエレベーター用用時二酸化塩素発生剤

【公開番号】特開2012−36072(P2012−36072A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190071(P2010−190071)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(508133053)有限会社クリーンケア (4)
【出願人】(591016334)大塚テクノ株式会社 (19)
【Fターム(参考)】