用紙の両面に印刷する方法、用紙搬送装置、およびプリンタ用紙
【課題】サイズの大きい用紙であっても高い位置精度で画像の両面印刷を行うこと。
【解決手段】両端部に送り用のパンチ孔が設けられた用紙、および、用紙に接した状態で回転駆動する駆動ローラ13、およびパンチ孔に係合する複数のピンを有し駆動ローラの両端部に配置されて駆動ローラと同軸の回転駆動力によって回転駆動する2つのピントラクタ14を有する搬送装置YHを用い、用紙を搬送装置にセットし、その状態で用紙をピンの移動に同期した速度で搬送して用紙の一方の表面に画像を印刷し、一方の表面への印刷が終わった用紙を裏返して搬送装置にセットし、その状態で用紙をピンの移動に同期した速度で搬送して用紙の他方の表面に画像を印刷する。
【解決手段】両端部に送り用のパンチ孔が設けられた用紙、および、用紙に接した状態で回転駆動する駆動ローラ13、およびパンチ孔に係合する複数のピンを有し駆動ローラの両端部に配置されて駆動ローラと同軸の回転駆動力によって回転駆動する2つのピントラクタ14を有する搬送装置YHを用い、用紙を搬送装置にセットし、その状態で用紙をピンの移動に同期した速度で搬送して用紙の一方の表面に画像を印刷し、一方の表面への印刷が終わった用紙を裏返して搬送装置にセットし、その状態で用紙をピンの移動に同期した速度で搬送して用紙の他方の表面に画像を印刷する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙の両面に印刷する方法、プリンタの用紙搬送装置、およびそれに用いるプリンタ用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電照広告または電照看板などの画像表示媒体として、銀塩方式のカラーフィルムが広く使用されてきた。しかし、近年において、プリンタ用紙にインクジェット方式のプリンタで画像を印刷したものがしばしば用いられている。
【0003】
このような画像表示媒体では、反射光用の画像と比べて、透過光用の画像の濃度を高くする必要がある。
【0004】
銀塩方式には長い歴史があり、透過性のよい染料(カプラー)が用いられるため高濃度であっても高い発色性を得ることができる。しかし、歴史の浅いインクジェット方式では、画像の濃度を高くするために、透過性の悪い顔料からなるインクの濃度を単純に増やしたり、2度3度の重ね打ちなどを行っており、品質を無視した方法がとられている。
【0005】
また、インクジェット方式で両面に印刷を行う場合に、表裏の画像に互いにズレが生じるという問題がある。
【0006】
つまり、用紙搬送ローラと加圧ローラとで記録媒体を挟持搬送するとともに、プラテン上で記録ヘッドを媒体搬送方向と直角方向に往復動して印字作画を行うインクジェットプリンタが開示されている(特許文献1)。このようなインクジェットプリンタを用いて両面に印刷した場合には、用紙搬送ローラに対する用紙の位置がズレるため画像にズレが生じる。
【0007】
そのため、従来においては、大型のインクジェットプリンタによってサイズの大きい用紙に印刷する場合のみに、そのような方法が用いられている。つまり、用紙のサイズが大型である場合には、観賞距離が遠くつまりユーザが遠く離れて見ることが多く、表裏の画像のズレがあまり目立たないので、それでよしとされている。
【0008】
しかし、かなりの画像のズレがあるので、近くで見るとそのズレが目立ち、画像品質の点で問題となる。
【0009】
また、画像のズレを自動で検出して誤差を手動で修正する方法、CCDカメラで誤差を読み取って自動で印刷位置を修正する方法などが行われている。しかし、これらの方法によってズレを修正した場合でも、ズレを十分に修正することは困難である。大型で遠く離れて見る場合には余り目立たないが、中型または小型ではズレがそのまま目立ってしまい、やはり画像品質の点で問題が残る。
【0010】
また、インクジェットプリンタのための透過光用の記録用紙として、多孔質構造のインク受容層中に酸化チタンを含有するもの(特許文献2)、含水シリカ粒子および保水性材料などを含むインク受理層を有するもの(特許文献3)などが知られている。
【0011】
また、インクジェットプリンタのための反射光用および透過光用の記録用紙として、インク受理層がシリカ粒子を含み全体の不透明度が70〜90%のシートが提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−335183
【特許文献2】特開2004−167706
【特許文献3】特開2000−135859
【特許文献4】特開2003−312131
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上に述べたように、特許文献1に開示されたプリンタによって画像の両面印刷を行った場合に、用紙の位置合わせが困難であり、画像を正確に高精度で位置合わせをすることができない。
【0014】
また、特許文献2〜4に開示された用紙を用いて画像の両面印刷を行う場合にも、用紙の位置合わせが困難であり、正確に高精度で位置合わせをすることができない。すなわち、これら従来の用紙に画像の両面印刷を行う場合には、一方の表面に画像を印刷した後、用紙を表裏反転させてできるだけ位置を合わせてセットし、他方の表面(裏面)に画像を印刷する。印刷を開始してからズレが発生すれば、その都度位置の修正を行うことになる。
【0015】
しかし、このような方法では、用紙搬送ローラに用紙の位置を合わせてセットするのに大変な労力を必要とし、しかもセットされた位置が正しいかどうかは印刷が開始されるまで分からない。位置がズレていることが分かった場合でもそれを修正して正確に合わせることは容易ではない。位置の修正ができない場合には再度初めからセットをやり直さなければならない。
【0016】
また、両端部に送り用のパンチ孔が設けられた帳票用紙が従来から存在する。しかし、そのような従来の帳票用紙は、サイズがB5またはA3程度の小型であり、また軽量であるため、従来のピントラクタ方式の搬送機構によって十分に搬送することができる。しかも、要求させる用紙の位置精度は、文字の印字が主な用途であることから1mm以下程度である。
【0017】
しかし、用紙に画像の両面印刷を行う場合には、帳票の精度とは比較にならない高い精度、例えばミクロン台の精度が要求される。しかも、電照広告などに用いられる用紙はそのサイズが1メートルまたはそれ以上と大きく、また重量もある。従来において、サイズの大きい用紙に高い位置精度で画像の両面印刷を行うことはできなかった。
【0018】
電照看板は、画像の裏面にバックライトが配置され、それによる表面の照度が外光による表面の照度よりも明るいことが理想とされている。屋内ではその条件を満たすのは困難ではないが、屋外ではその条件を満たすのは容易ではない。
【0019】
その理由は、屋内での環境光は人工照明であり、これによる表面の照度はそれほど大きくないため、裏面からの照明光源が所定の条件を満たすことにより表面の明るさを越えることが可能であるからである。しかし、屋外での環境光は太陽光であり、これによる表面の照度は極めて大きくなり、表面の明るさを越えることは極めて難しいものとなる。
【0020】
よく経験するように、大都会の夜景の美しさは人工照明の織りなす幾何学模様ではあるが、昼間においても、一部を除いてビルの照明は点灯されている。しかし、昼のビルの窓と夜のビルの窓とは大違いである。これは人工照明と太陽の明るさとの差による。電照広告または電照看板の面光源の明るさは、平均5〜6000ルックス程度であるが、太陽光では100000ルックッスにもなる。この明るさの差がコントラストの差となり、昼間にビルの窓からもれる屋内の光が見えなくなる。このようなことから、理想的な電照広告の画像は、反射可能な材料の両面に画像を作成し、表面の環境光が太陽であっても人工光であっても画像が適度の明るさとなって観賞に耐え、夜にはバックライトの明るさで画像が浮かび上がることが理想である。このような理想的な電照広告の画像として、銀塩方式のカラーフイルムも万全とはいえないが、従来においてはカラーフイルムに代わる電照広告用の素材が無かった。
【0021】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、サイズの大きい用紙であっても高い位置精度で画像の両面印刷を行うことのできる方法、および、サイズの大きい用紙であっても高い位置精度で搬送できる用紙搬送装置およびプリンタ用紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明に係る方法は、用紙の両面に画像を印刷する方法であって、両端部に送り用のパンチ孔が設けられた用紙、および、前記用紙に接した状態で回転駆動する駆動ローラ、および前記パンチ孔に係合する複数のピンを有し前記駆動ローラの両端部に配置されて前記駆動ローラと同軸の回転駆動力によって回転駆動する2つのピントラクタを有する搬送装置を用い、前記用紙を前記搬送装置にセットし、その状態で前記用紙を前記ピンの移動に同期した速度で搬送して前記用紙の一方の表面に画像を印刷し、一方の表面への印刷が終わった前記用紙を裏返して前記搬送装置にセットし、その状態で前記用紙を前記ピンの移動に同期した速度で搬送して前記用紙の他方の表面に画像を印刷する。
【0023】
好ましくは、前記ピンの形状は、前記用紙のパンチ孔が前記ピンから抜け出始めるときの当該ピンの前方側の根元位置から当該ピンの移動後における前記用紙の移動方向に沿った線上における当該ピンの前方側の位置までの距離が、当該ピンの前方側の根元位置の移動距離に等しくなるような形状である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の方法によると、サイズの大きい用紙であっても高い位置精度で画像の両面印刷を行うことができる。本発明の用紙搬送装置またはプリンタ用紙によると、サイズの大きい用紙であっても高い位置精度で用紙を搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態のプリンタの概略の構成を示す図である。
【図2】プリンタの用紙搬送装置の正面図である。
【図3】図2の用紙搬送装置の要部を拡大して示す正面図である。
【図4】図3の用紙搬送装置の断面図である。
【図5】図2の用紙搬送装置のA−A線矢視断面図である。
【図6】図5の一部を拡大して示す図である。
【図7】用紙の正面図である。
【図8】用紙のパンチ孔の部分を拡大して示す図である。
【図9】ピントラクタによる用紙の搬送の様子を示す図である。
【図10】ピンの前方側の周面の形状についての座標軸を説明する図である。
【図11】ピンの前方側の周面と用紙との接触位置の関係を説明する図である。
【図12】ピンの前方側の周面の形状の決定方法を説明する図である。
【図13】ピンの形状についての座標軸の他の例を説明する図である。
【図14】ピンと用紙との接触位置の関係の他の例を説明する図である。
【図15】ピントラクタの他の例を示す図である。
【図16】用紙の両面に印刷した画像をそれぞれ示す図である。
【図17】用紙の裏面に印刷する画像濃度を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1において、プリンタ1は、機体11、送り出しローラ12、駆動ローラ13、ピントラクタ14、加圧ローラ15、記録ヘッド16、プラテンボックス17、ファン18、用紙ガイド19、および制御回路などを備える。
【0027】
また、プリンタ1は、図示しないインタフェ−スを介してコンピュータと接続されており、キーボードなどのポインテングデバイスを用いて操作し制御することが可能である。また、図示しない表示装置によって制御内容および画像などが表示可能である。
【0028】
機体11には、ロール状に巻き取られた用紙PYが回転可能にセットされており、後で述べる用紙搬送装置YHによって用紙PYが引き出され、その表面に記録ヘッド16によって画像GZが印刷される。用紙PYは、両面印刷可能であり、かつ、透明または半透明であって、印刷された画像を反射光によって観察することも透過光によって観察することも可能である。
【0029】
用紙PYは、図7および図8に示すように、両端部に送り用のパンチ孔PAが長さ方向に沿って、一定のピッチで、それぞれ一列に設けられている。パンチ孔PAは、円形であり、その周縁部は円周に沿って切り取られている。つまり、パンチ孔PAの周縁部にはピンとの干渉を避けるためのギザギザなどは設けられておらず、パンチ孔PAの周縁部にピンの外周面が当接することによってこれらの位置関係が正確に決まる。
【0030】
また、用紙PYには、一方の列に設けられたパンチ孔PAと他方の列に設けられたパンチ孔PAとの位置の対応関係を示すマークMKPが付されている。
【0031】
マークMKPは、所定数のパンチ孔PAに対して1つ設けられている。図7および図8に示す実施形態では、5つのパンチ孔PAに対して1つのマークMKPが設けられている。マークMKPとして、黒ドット、色ドット、矢印などを用いることができる。また、マークMKPとして孔を設けてもよい。
【0032】
なお、マークMKPは、マークMKPの付された左右のパンチ孔PAが長手方向について同じ位置にあることを示すものである。したがって、左右のいずれのパンチ孔PAが同じ位置にあるかを示すことができる限りにおいて、マークMKPの個数、位置、形状、付加方法などを任意に選定することが可能である。
【0033】
送り出しローラ12は、用紙PYを、駆動ローラ13およびピントラクタ14に対して送り出す。送り出しローラ12には、パンチ孔PAに係合するピンを設けてもよく、設けなくてもよい。また、送り出しローラ12に代えてガイド板を設けてもよい。また、送り出しローラ12とともにガイド板を設けてもよい。
【0034】
駆動ローラ13およびピントラクタ14は、加圧ローラ15と協働して用紙PYを正確に高精度で位置決めし、搬送する。
【0035】
すなわち、図2をも参照して、駆動ローラ13は、用紙PYの下面に用紙に接した状態で回転駆動する。ピントラクタ14は、駆動ローラ13の両端部に配置されており、用紙PYの両端部に設けられた送り用のパンチ孔PAに係合する複数のピンPNをそれぞれ有し、駆動ローラ13と同軸の回転駆動力によって回転駆動する。
【0036】
つまり、ピントラクタ14は、駆動ローラ13の軸心と同じ軸心を持つ駆動軸によって回転駆動される。そのため、ピントラクタ14による用紙PYの搬送と駆動ローラ13による用紙PYの搬送とを同期させることが容易である。
【0037】
なお、本実施形態においては、ピントラクタ14の軸と駆動ローラ13の軸とは軸方向に一体に連結されているが、軸方向の適当な箇所においてカプリングや歯車などの動力伝達機構を介して連結されていてもよい。
【0038】
なお、図2における左側のピントラクタ14を「ピントラクタ14a」と記載し、右側のピントラクタ14を「ピントラクタ14b」と記載することがある。
【0039】
加圧ローラ15(加圧ローラ15a,15b)は、駆動ローラ13およびピントラクタ14に対向して配置され、用紙PYを駆動ローラ13およびピントラクタ14に向かって押し付ける。
【0040】
つまり、加圧ローラ15aは、駆動ローラ13に対して、弱く押し付けられている。これによって、駆動ローラ13と用紙PYとの接触面に大きな摩擦力が働かないようになっており、駆動ローラ13と用紙PYとの間の微小なズレが許容されるようになっている。
【0041】
なお、加圧ローラ15aを駆動ローラ13に押し付ける力を弱くするためには、加圧ローラ15aを押し付けるバネの力を弱くすればよい。加圧ローラ15aの自重によって押し付ける構造の場合には、加圧ローラ15aの重量を軽くすればよい。また、加圧ローラ15aの押し付け力を調整するためのバネなどを設ければよい。または、加圧ローラ15aの個数または長さを低減すればよい。
【0042】
また、加圧ローラ15aの押し付ける力を弱くすることに代え、またはこれとともに、加圧ローラ15aの表面の材質を摩擦係数の小さなものとしてもよい。また、駆動ローラ13の表面の材質を摩擦係数の小さなものとしてもよい。
【0043】
また、加圧ローラ15bは、用紙PYをピントラクタ14に対して押し付ける。これによって、用紙PYがパンチ孔PAの位置において本体ローラ141の表面に押しつけられ、パンチ孔PAがピンPNの根元位置TNまで挿入される。これによって、ピントラクタ14の回転にともなって、パンチ孔PAの位置がピンPNの周面の後述する曲線CVに沿って正確に移動し、用紙PYは正確に高精度で搬送される。
【0044】
因みに、加圧ローラ15bが無い場合、または加圧ローラ15bが用紙PYを本体ローラ141の表面にまで押しつけない場合には、パンチ孔PAがピンPNの根元位置TNでない中途半端な位置に挿入された状態となることがあり、その場合にはピンPNによる用紙PYの搬送が正確に行われない。
【0045】
駆動ローラ13、ピントラクタ14、および加圧ローラ15a,15bによって、用紙搬送装置YHが構成される。用紙搬送装置YHは、図示しないモータおよびギヤやベルトなどの動力伝達機構などによって、制御された速度で回転するよう回転駆動される。
【0046】
用紙搬送装置YHによって、用紙PYをピンPNの移動に同期した速度で搬送するとともに、駆動ローラ13の回転によって用紙PYを前方へ送り出すこととなる。つまり、ピントラクタ14によって用紙PYの両端部が、駆動ローラ13によって用紙PYの中央部が、それぞれ同じ速度で搬送される。ピントラクタ14による搬送速度と駆動ローラ13による搬送速度とは同じであり、用紙PYは捩れたり脱落したりすることなく、制御された速度で正確に直線状に搬送される。
【0047】
なお、実際には、駆動ローラ13よりもピントラクタ14による搬送が支配的であり、用紙PYはピントラクタ14のピンPNの移動に同期した速度で搬送される。つまり、ピントラクタ14と駆動ローラ13との間に、温度や湿度の変化などによる搬送速度の微小な相違が生じた場合には、ピントラクタ14による搬送速度となり、駆動ローラ13はそれとほぼ同じ速度で用紙PYを前方へ送り出すことになる。
【0048】
なお、ピントラクタ14による搬送を支配的とするために、駆動ローラ13の直径を本体ローラ141の直径よりも僅かに小さくしておいてもよい。
【0049】
ところで、2つのピントラクタ14についても、一方のピントラクタ14aに設けられたピンPNと他方のピントラクタ14bに設けられたピンPNとの搬送方向位置の対応関係を示すマークMKTが付されている。
【0050】
マークMKTは、各ピンPNに対して、色または形などを互いに異ならせて識別できるようにする。例えば、黒、赤、緑、青、黄、紫などの各色のドットまたは矢印などを印字し、または刻印して用いることができる。また、各ピンPNに対して番号または符号を付してもよい。
【0051】
また、マークMKTとして、所定数のピンPNに対して1つ設けらてもよい。例えば、3つのピンPNに対して1つのマークMKTを設ける。
【0052】
なお、マークMKTは、マークMKTの付された左右のピンPNが長手方向について同じ位置にあることを示すものである。したがって、左右のいずれのピンPNが同じ位置にあるかを示すことができる限りにおいて、マークMKTの個数、位置、形状、付加方法などを任意に選定することが可能である。
【0053】
記録ヘッド16は、用紙搬送装置YHによって送り出された直後において、用紙PYの表面にインクジェット方式でカラーの印刷を行う。記録ヘッド16は、図示しないレールに沿って往復移動するキャリッジに取り付けられており、プラテンボックス17の上方において、用紙PYとの間に僅かな間隙を有して、用紙PYを幅方向に横切るように往復移動する。記録ヘッド16のインクノズルはプラテンボックス17の上面と対向しており、プラテンボックス17の上面に吸着された用紙PYにインクを噴射して画像GZを印刷する。
【0054】
用紙PYの搬送方向をX方向とすると、記録ヘッド16の移動方向はそれと直交するY方向であり、用紙PYのX方向の移動と記録ヘッド16のY方向の移動によって、用紙PYの表面であるXY平面に画像GZが印刷される。
【0055】
印刷位置が正確であるためには、記録ヘッド16から噴射されるインクによって描かれる画像GZと、用紙PYのXY方向の位置とが一定の正しい関係にあることが必要である。また、同じ用紙PYの両面に印刷する画像GZの位置を互いに正確に高精度で位置合わせをするためには、用紙PYが、用紙搬送装置YHに対して正確な位置に精度よくセットされ、ズレのないように正確に搬送される必要がある。
【0056】
本実施形態の用紙搬送装置YHでは、ピントラクタ14によって用紙PYを搬送するので、用紙PYのパンチ孔PAに係合したピンPNによって用紙PYの位置が正確に定まり、しかも搬送時のズレがない。
【0057】
しかも、後述するように、ピンPNの形状は、用紙PYのパンチ孔PAがピンPNから抜け出始めるときのピンPNの前方側の根元位置からピンPNの移動後における用紙PYの移動方向に沿った線上におけるピンPNの前方側の位置までの距離が、ピンPNの前方側の根元位置の移動距離に等しくなるような形状となっている。
【0058】
つまり、ピンPNの形状は、ピンPNがパンチ孔PAに挿入された状態から抜け出る際に、ピンPNの移動とともにその前方側がパンチ孔PAの前側の周縁部に接した状態で抜ける方向に移動するような形状となっている。
【0059】
このため、ピントラクタ14による用紙PYの搬送速度は、駆動ローラ13の周速度と同じになり、用紙PYは一定の速度で滑らかに送り出される。ピンPNの形状については後で詳しく説明する。
【0060】
なお、プラテンボックス17の下部にファン18が設けられており、ファン18によってプラテンボックス17の内部の空気が排気されて圧力が低下する。プラテンボックス17の上面には細かい多数の孔が設けられており、用紙PYが負圧によって吸着され、プラテンボックス17の上面に密着する。つまり、用紙PYは、プラテンボックス17の上面に密着した状態で搬送される。
【0061】
記録ヘッド16によって表面に画像GZが印刷された用紙PYは、用紙ガイド19に沿って排出される。
【0062】
図2〜図5に示されるように、駆動ローラ13は、その両端部から直線状に延びる駆動軸13a,13bを一体的に有している。駆動軸13a,13bは、その端部において、機体11に取り付けられたベアリング21a,21bによって回転可能に支持され、図示しない動力伝達機構などによって回転駆動される。
【0063】
なお、駆動ローラ13の表面はローレット加工が施されており、用紙PYとの間に適当な摩擦力が生じるようになっている。このような駆動ローラ13は、例えば、中空のパイプの両端の内周面にネジを設け、このネジに螺合するボスまたはネジ軸をネジ込むことによって一体化したものでもよい。
【0064】
一方の駆動軸13aには、その表面に軸方向に設けられたキー溝にキー22が嵌入して取り付けられている。ピントラクタ14aには、キー22に係合するキー溝23が設けられており、キー溝23がキー22に係合しかつキー22に沿って軸方向に移動可能となっている。また、ピントラクタ14aには、止めネジ24が設けられており、ピントラクタ14aの軸方向の位置を調整した後、止めネジ24を締め付けることによって、軸方向の位置が固定される。
【0065】
なお、ピントラクタ14bにおいても、ピントラクタ14aの場合と同様な止めネジが設けられており、軸方向の位置を調整した後、止めネジを締め付けることによって位置が固定される。
【0066】
また、駆動ローラ13とピントラクタ14aとの間には、その間の空間を埋めるためのローラ131,132が挿入されている。ローラ131,132は、その外径が駆動ローラ13の外径と同一である。ローラ131,132においても、キー22に係合するキー溝が設けられており、キー22に沿って軸方向に移動可能である。また、ローラ131,132には止めネジが設けられており、止めネジを締め付けることによって軸方向の位置が固定される。
【0067】
なお、ローラ131,132の軸方向の長さ、個数などは、適当なものを選定して用いることが可能である。このようなローラ131,132は、駆動ローラ13を駆動軸13a,13bとともに機体11から取り外した状態で、駆動軸13aに挿入すればよい。または、ローラ131,132を2つ割りとし、ネジなどで結合することによって駆動軸13aに取り付けるようにしてもよい。
【0068】
図5および図6において、ピントラクタ14の本体ローラ141には、複数個のピンPNが互いに等角度ピッチで設けられている。つまり、ピントラクタ14は、ピン付きローラである。本体ローラ141の外径は、駆動ローラ13の外径と同一である。
【0069】
図6によく示されるように、ピンPNは、外周面が円周面であって、根元位置TNから先端位置TSまで滑らかな曲線を描いて収束する砲弾型である。
【0070】
次に、ピンPNの形状について詳しく説明する。
【0071】
すなわち、図6に示すように、図の中央のピンPNに注目すると、ピンPNは、用紙PYのパンチ孔PAに挿入され、ピンPNの前方側の根元位置TNが用紙PYのパンチ孔PAの前側の周縁部に接した状態である。ピンPNの根元位置TNの外径をDNとし、パンチ孔PAの内径をDAとすると、DA>DNである。したがって、ピンPNの後方側の根元位置TNとパンチ孔PAの後側の周縁部との間には、間隙が形成される。
【0072】
寸法の具体例をあげると、本体ローラ141の外径が28mm程度の場合に、ピンPNの外径の最大値が3mm程度、パンチ孔PAの内径が3.2mm程度、したがってピンPNとパンチ孔PAの周縁部との間の間隙は0.2mm程度となる。ピンPNの高さは2.5mm程度である。
【0073】
この状態で、ピントラクタ14は、図の右側(矢印M1方向)に回転する。これによって、用紙PYは、図の右方向(矢印M2方向)に搬送される。
【0074】
図6の中央のピンPNに対して、1ピッチ分前方にあるピンPN(これを「ピンPNZ」と記載することがある)は、丁度、ピンPNZの外周面を延長した仮想面MKと先端位置TSを通る平面MHとが交差する稜線が、パンチ孔PAの前側の周縁部に接した状態となる。つまり、この状態が、ピンPNZがパンチ孔PAから抜け出る瞬間である。
【0075】
なお、根元位置TNは、ピンPNの周方向の位置によって異なる高さ位置となるが、微小な差異であるのでここでは無視する。
【0076】
ピンPNに対して、1ピッチ分後方にあるピンPNを「ピンPNG」と記載することがある。
【0077】
図9には、ピントラクタ14の回転にともなって用紙PYが搬送される様子が示されている。
【0078】
図9(A)は、上に述べた図6と同じ状態である。この状態で、破線の円で囲った部分において、ピンPNの根元位置TNとパンチ孔PAとが接している。図9(B)〜(F)は、ピントラクタ14が所定角度ずつ矢印M1方向に回転した状態をそれぞれ示す。図9(F)の次は図9(A)の状態に戻る。それらの図において、破線の円で囲った部分でおいて、ピンPNの根元位置TNとパンチ孔PAとが接している。
【0079】
図9(A)〜図9(D)の各状態では、ピンPNの根元位置TNとパンチ孔PAとが接するのは1つのピンPNのみであるが、図9(E)〜図9(F)の各状態では、ピンPNの根元位置TNとパンチ孔PAとが2つのピンPN,PNGについて接する。この間に、用紙PYの搬送および位置決めが、ピンPNからピンPNGに移る。
【0080】
この間において、ピンPNの前方側の周面が、パンチ孔PAの前側の周縁部に接した状態で抜ける方向に移動している。
【0081】
図10に示すように、ピンPNの周面の形状を求めるために、根元位置TNを原点とし、本体ローラ141の表面の接線方向をU軸とし、これを垂直な方向をV軸とする。ピンPNの周面の形状は、このようなUV平面における曲線CVの各点の座標を求めることによって決定される。
【0082】
図11に示すように、本体ローラ141の回転角度に応じてU軸およびV軸が移動する。ピンPNの根元位置TNがピントラクタ14の真上、つまりピンPNが本体ローラ141と用紙PYとの接点位置にあるときを原点位置とし、このときの回転角度を0度とし、そこからの回転角度をθ〔度〕とする。種々の回転角度θでのU軸およびV軸について、用紙PYとの接触位置Pの座標を求めればよい。
【0083】
図11において、Uは次のようにして求められる。
【0084】
U=cosθ×D
=cosθ×(B−C)
=cosθ×(r×tanθ−2πrθ/360) ……(1)
また、Vは次のようにして求められる。
【0085】
V=E−G
=(A−r)−(D×sinθ)
=(r/cosθ−r)−(r×tanθ−2πrθ/360)×sinθ
……(2)
なお、上の式において、rは本体ローラ141の半径である。また、本体ローラ141の回転による周速度と用紙PYの搬送速度とが同期(同調)するという前提であるので、用紙PYの搬送距離である「C」は、回転角度θに対応する円周長さに等しくなる。
【0086】
このようにして種々の回転角度θでの接触位置Pの座標を求め、UV平面上にプロットして示したのが図12である。
【0087】
図12に示す曲線CVを、ピンPNの中心線TCを軸として回転させることによって、ピンPNの外周面が形成される。
【0088】
なお、図12に示す曲線CVにおいて、原点から遠い部分は、上に述べた仮想面MKで示される線となる。
【0089】
また、ピンPNの周面の形状を次の方法によって求めることができる。
【0090】
すなわち、図13に示すように、ピンPNの中心線TCをV軸とし、本体ローラ141の表面においてV軸と直交する接線をU軸とする。ピンPNの周面の形状は、このようなUV平面における曲線CVの各点の座標を求めることによって決定される。
【0091】
図14に示すように、本体ローラ141の回転角度に応じてU軸およびV軸が移動する。ピンPNがピントラクタ14の真上、つまりピンPNが本体ローラ141と用紙PYとの接点位置にあるときを原点位置とし、このときの回転角度を0度とし、そこからの回転角度をθ〔度〕とする。種々の回転角度θでのU軸およびV軸について、用紙PYとの接触位置Pの座標を求めればよい。
【0092】
図14において、Uは次のようにして求められる。
【0093】
U=cosθ×D
=cosθ×(C−B)
=cosθ×(2πrθ''/360−r×tanθ) ……(3)
また、Vは次のようにして求められる。
【0094】
V=E+G
=(A−r)+(D×sinθ)
=(r/cosθ−r)+(2πrθ''/360−r×tanθ)×sinθ
……(4)
なお、上の式において、θ''は、
θ''=θ+θ' ……(5)
である。ここにおいて、θ' は、ピンPNの中心線TCに対する根元位置TNの偏倚角である。つまり、偏倚角θ' は、次のようにして求められる。
【0095】
θ' =arc tan(rp/r) ……(6)
なお、rpはピンPNの半径の最大値である。ピンPNの外径の最大値が3mmの場合に、rpは1.5mmとなる。
【0096】
また、上と同様に、本体ローラ141の回転による周速度と用紙PYの搬送速度とが同期(同調)するという前提であるので、用紙PYの搬送距離である「C」は、回転角度θに対応する円周長さに等しくなる。但し、(3)(4)式において、「C」は、回転角度θに偏倚角θ' を加えた角度に対応する円周長さとしている。
【0097】
接触位置Pの座標を求める方法として、上に述べた以外の種々の方法を用いることが可能である。また、作図によって接触位置Pを求めてもよい。また、数学的手法を用いて曲線CVの近似式を求めてもよい。これらの作図または演算のために、適当なプログラムをコンピュータによって実行してもよい。
【0098】
上に述べた形状のピンPNは回転体である。このようなピンPNは、金属材料または合成樹脂材料などを用い、切削によって形成することが可能である。または、金型によって成形し、または成形後に研磨を行ってもよい。ピンPNによる用紙PYの位置決めのためには、ピンPNの前方側の半分が重要であるので、その部分のみを精密に仕上げてもよい。
【0099】
なお、ピンPNは、砲弾型としたが、円錐形状でもよい。また、先端位置TSの側から見た形状は円形であるが、円形ではなく、四角形または多角形などとしてもよい。
【0100】
上に述べたピントラクタ14は、本体ローラ141に複数個のピンPNが設けられたピン付きローラであるが、タイミングベルトを用いたものでもよい。
【0101】
次に、タイミングベルトを用いたピントラクタ14Bについて説明する。
【0102】
図15において、ピントラクタ14Bは、ケーシング31、ケーシング31に対して回転可能にボルトBTで取り付けられた2つのローラ32,33、2つのローラ32,33の間に掛け渡されたタイミングベルト34、および、ケーシング31に対して回転可能に設けられ、駆動軸13aによって回転駆動されてタイミングベルト34を回転駆動するタイミングギヤ35を有する。
【0103】
タイミングベルト34の外周面には、用紙PYに設けられたパンチ孔PAに係合するピンPNが設けられている。
【0104】
タイミングベルト34は、タイミングギヤ35とローラ33との間において、用紙PYと平行であり、タイミングギヤ35とローラ32との間において、用紙PYから徐々に離れるように緩やかに傾斜している。
【0105】
ピントラクタ14Bの上方には、プリンタに付属する抑えローラ15B、軸44を中心として回動可能に設けられた抑えレバー43、およびバネ44などからなる用紙抑え装置SAが設けられている。
【0106】
駆動軸13aが回転すると、タイミングギヤ35が一体的に回転し、これに噛み合うタイミングベルト34が走行する。タイミングベルト34の走行によって、パンチ孔PAに係合したピンPNが用紙PYを走行させる。
【0107】
用紙PYは、タイミングギヤ35とローラ33との間の平行部分において、複数のパンチ孔PAがピンPNと十分に係合して正確に矢印M2方向に送られる。タイミングギヤ35とローラ32との間の傾斜部分において、タイミングベルト34は用紙PYから徐々に離れ、これにともなってピン36がパンチ孔PAから円滑に抜け出る。
【0108】
なお、ピンPNの形状は、上に述べたように砲弾型であり、図9〜図14で説明したように求めることができる。
【0109】
なお、ピントラクタ14Bの構造または形状などは、上に述べた以外の種々のものとすることができる。例えば、タイミングギヤ35が設けられた位置に、ローラ32,33と同様なローラを設け、そのローラとローラ32との間にタイミングギヤ35を設けてタイミングベルト34を駆動する。
【0110】
次に、プリンタ1によって用紙PYの両面に画像GZを印刷する方法について説明する。
【0111】
上に述べたように、両端部に送り用のパンチ孔PAが設けられた用紙PY、および、用紙PYに接した状態で回転駆動する駆動ローラ13、およびパンチ孔PAに係合する複数のピンPNを有し駆動ローラ13の両端部に配置されて駆動ローラ13と同軸の回転駆動力によって回転駆動する2つのピントラクタ14a,14bを有する用紙搬送装置YHを用いる。
【0112】
2つのピントラクタ14a,14bの位置は、使用する用紙PYのパンチ孔PAの位置に合わせて調整しておく。
【0113】
用紙PYを用紙搬送装置YHにセットし、その状態で用紙PYをピンPNの移動に同期した速度で搬送して用紙PYの一方の表面HM1に画像GZ1を印刷する〔図16(A)参照〕。
【0114】
用紙PYの一方の表面UM1への印刷が終わると、その位置において巻き取り紙みから切断する。切断した用紙PYを裏返し、用紙搬送装置YHにセットし、その状態で用紙PYをピンPNの移動に同期した速度で搬送して用紙PYの他方の表面(裏面)UM2に画像GZ2を印刷する〔図16(B)参照〕。
【0115】
このとき、用紙PYの裏面UM2に印刷される画像GZ2は、表面UM1に印刷された画像GZ1を裏返した画像つまり鏡像である。つまり、画像GZ2は、画像GZ1と同じ内容の画像であり、画像GZ1を左右反転させた画像である。なお、用紙PYの天地の向きを反転した場合には、画像GZ2も天地を反転させればよい。
【0116】
そして、画像GZ1と画像GZ2とは、同じ位置に重なるように印刷される。つまり、用紙PYを透かして見た状態で、裏面UM2に印刷される画像GZ2の原点GG2の位置は、表面UM1に印刷された画像GZ1の原点GG1の位置と同じ位置である。
【0117】
つまり、例えば、用紙PYにおける1つのパンチ孔PA11を基準とすると、このパンチ孔PA11と原点GG1またはGG2との位置関係が、用紙PYの表裏において同じになればよい。
【0118】
また、表面UM1の印刷時にパンチ孔PA11に挿入されるピンPN11には、裏面UM2の印刷時にはその左右に反対側のパンチ孔PA21が挿入される。したがって、画像GZ2について、左上端位置を原点GG21とした場合には、この原点GG21とピンPN11との位置関係を規定すればよいことになる。画像GZ2について、原点GG2と原点GG21との位置関係は既知であるので、これらに基づいて原点GG21とピンPN11との位置関係を設定すればよい。
【0119】
用紙搬送装置YHにおいては、ピントラクタ14によって用紙PYの位置が正確に高精度で定まりかつ搬送されるので、上のように表裏における画像GZ1,2の印刷位置を決定して印刷を行うことにより、それらがズレることなく正確に一致する。
【0120】
つまり、サイズの大きい用紙PYであっても小さい用紙PYであっても、高い位置精度で画像GZの両面印刷を行うことができる。
【0121】
なお、両面印刷が終わった用紙PYについては、パンチ孔PAの設けられた両端部分を裁断して切り離しておけばよい。
【0122】
また、裏面UM2に印刷する画像GZ2は、その濃度を調整しておくことが好ましい。
【0123】
図17には、表面用の画像(入力画像)GZ1に対する裏面用の画像(出力画像)GZ2の濃度の関係が示されている。
【0124】
図17において、入力画像の濃度に対して、出力画像の濃度は、そのダイナミックレンジが狭くなっている。つまり、入力画像に対して、出力画像の濃度はND1〜ND2%に圧縮されている。つまりグレースケールまたは各原色の明度のスケールにおける中間部分の濃度ND1〜ND2になるよう、濃度分布が限定されている。
【0125】
ただし、入力画像の濃度0〜2%程度に対しては、つまり最も明るい濃度に対しては、同様に最も明るい濃度が得られるようになっている。これは、最も明るい部分については、そのまま明るい部分としておく必要があるからである。
【0126】
濃度ND1の具体的な範囲は、例えば10〜20%程度、濃度ND2については、例えば50〜80%程度である。したがって、入力画像に対し、出力画像の濃度を20〜70%程度の範囲に限定することができる。このように出力画像の濃度を限定し、これを裏面用の画像GZ2の濃度とすることにより、用紙PYの両面に印刷された画像を透過光で観察した場合に、自然な濃度で鮮明に観察できる。
【0127】
なお、画像GZの幅方向の端部に、画像のズレを検出するためのマーカを設けてもよい。その場合に、マーカを作画サイズの外周に自動的に印字するようにしてもよい。また、印刷を開始した後で印刷位置にズレが生じた場合に、その印字位置をコンピュータのキーボードの操作により補正可能としておけばよい。
【0128】
また、CCDなどを備えたカメラを用いて印刷された画像GZのズレを検出し、これに基づいて印刷位置を修正するようにしてもよい。その場合に、例えば、用紙PYの表面に画像GZ1を印刷し、画像GZ1をカメラで撮影してその印刷位置を計測する。用紙PYの裏面に画像GZ2を印刷するに際して、画像GZ2をカメラで撮影してその印刷位置を計測し、画像GZ1の印刷位置と一致するようにズレ量を修正する。
【0129】
印刷位置の修正を行う場合に、主走査方向(X方向)については、例えば原点GGを移動し、副走査方向(Y方向)については、例えば駆動ローラ13を駆動するモータに対して位置補正信号を出力すればよい。
【0130】
このようにすることによって、画像GZ1,2の印刷位置を自動的に一致させることができ、用紙PYの表裏に画像GZ1,2を自動的に印刷することができる。
【0131】
なお、本実施形態では用紙PYの両面に同じ画像GZ1,2を印刷したが、同じ画像ではなく、互いに異なる画像を印刷してもよい。また、用紙PYの両面に印刷することなく、用紙PYの同じ表面に2回または3回以上印刷を行ってもよい。例えば、用紙PYの表面に印刷した画像GZ1に対して、同じ表面に追加の画像を印刷してもよい。追加の画像を印刷する際に、色を例えば金色に変更するようにしてもよい。用紙PYの同じ表面に複数回の印刷を行う場合でも、用紙PYの位置を高精度に維持することができるので、印刷される画像の位置を正確に合わせることができる。
【0132】
上に述べた実施形態において、用紙PYに設けたパンチ孔PAのピッチは、ピンPNのピッチと同じにしたが、ピンPNのピッチよりも小さいピッチとしてもよい。
【0133】
上に述べた実施形態において、駆動ローラ13、ピントラクタ14、加圧ローラ15、ピンPN、用紙PY、パンチ孔PA、またはプリンタ1の全体または各部の構造、形状、寸法、個数、材質、組成などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0134】
1 プリンタ
13 駆動ローラ
14 ピントラクタ
15,15a,15b 加圧ローラ(押付け部材)
YH 用紙搬送装置(搬送装置)
PY 用紙(プリンタ用紙)
PA パンチ孔
PN ピン
TN 根元位置
MKP,MKT マーク
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙の両面に印刷する方法、プリンタの用紙搬送装置、およびそれに用いるプリンタ用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電照広告または電照看板などの画像表示媒体として、銀塩方式のカラーフィルムが広く使用されてきた。しかし、近年において、プリンタ用紙にインクジェット方式のプリンタで画像を印刷したものがしばしば用いられている。
【0003】
このような画像表示媒体では、反射光用の画像と比べて、透過光用の画像の濃度を高くする必要がある。
【0004】
銀塩方式には長い歴史があり、透過性のよい染料(カプラー)が用いられるため高濃度であっても高い発色性を得ることができる。しかし、歴史の浅いインクジェット方式では、画像の濃度を高くするために、透過性の悪い顔料からなるインクの濃度を単純に増やしたり、2度3度の重ね打ちなどを行っており、品質を無視した方法がとられている。
【0005】
また、インクジェット方式で両面に印刷を行う場合に、表裏の画像に互いにズレが生じるという問題がある。
【0006】
つまり、用紙搬送ローラと加圧ローラとで記録媒体を挟持搬送するとともに、プラテン上で記録ヘッドを媒体搬送方向と直角方向に往復動して印字作画を行うインクジェットプリンタが開示されている(特許文献1)。このようなインクジェットプリンタを用いて両面に印刷した場合には、用紙搬送ローラに対する用紙の位置がズレるため画像にズレが生じる。
【0007】
そのため、従来においては、大型のインクジェットプリンタによってサイズの大きい用紙に印刷する場合のみに、そのような方法が用いられている。つまり、用紙のサイズが大型である場合には、観賞距離が遠くつまりユーザが遠く離れて見ることが多く、表裏の画像のズレがあまり目立たないので、それでよしとされている。
【0008】
しかし、かなりの画像のズレがあるので、近くで見るとそのズレが目立ち、画像品質の点で問題となる。
【0009】
また、画像のズレを自動で検出して誤差を手動で修正する方法、CCDカメラで誤差を読み取って自動で印刷位置を修正する方法などが行われている。しかし、これらの方法によってズレを修正した場合でも、ズレを十分に修正することは困難である。大型で遠く離れて見る場合には余り目立たないが、中型または小型ではズレがそのまま目立ってしまい、やはり画像品質の点で問題が残る。
【0010】
また、インクジェットプリンタのための透過光用の記録用紙として、多孔質構造のインク受容層中に酸化チタンを含有するもの(特許文献2)、含水シリカ粒子および保水性材料などを含むインク受理層を有するもの(特許文献3)などが知られている。
【0011】
また、インクジェットプリンタのための反射光用および透過光用の記録用紙として、インク受理層がシリカ粒子を含み全体の不透明度が70〜90%のシートが提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−335183
【特許文献2】特開2004−167706
【特許文献3】特開2000−135859
【特許文献4】特開2003−312131
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上に述べたように、特許文献1に開示されたプリンタによって画像の両面印刷を行った場合に、用紙の位置合わせが困難であり、画像を正確に高精度で位置合わせをすることができない。
【0014】
また、特許文献2〜4に開示された用紙を用いて画像の両面印刷を行う場合にも、用紙の位置合わせが困難であり、正確に高精度で位置合わせをすることができない。すなわち、これら従来の用紙に画像の両面印刷を行う場合には、一方の表面に画像を印刷した後、用紙を表裏反転させてできるだけ位置を合わせてセットし、他方の表面(裏面)に画像を印刷する。印刷を開始してからズレが発生すれば、その都度位置の修正を行うことになる。
【0015】
しかし、このような方法では、用紙搬送ローラに用紙の位置を合わせてセットするのに大変な労力を必要とし、しかもセットされた位置が正しいかどうかは印刷が開始されるまで分からない。位置がズレていることが分かった場合でもそれを修正して正確に合わせることは容易ではない。位置の修正ができない場合には再度初めからセットをやり直さなければならない。
【0016】
また、両端部に送り用のパンチ孔が設けられた帳票用紙が従来から存在する。しかし、そのような従来の帳票用紙は、サイズがB5またはA3程度の小型であり、また軽量であるため、従来のピントラクタ方式の搬送機構によって十分に搬送することができる。しかも、要求させる用紙の位置精度は、文字の印字が主な用途であることから1mm以下程度である。
【0017】
しかし、用紙に画像の両面印刷を行う場合には、帳票の精度とは比較にならない高い精度、例えばミクロン台の精度が要求される。しかも、電照広告などに用いられる用紙はそのサイズが1メートルまたはそれ以上と大きく、また重量もある。従来において、サイズの大きい用紙に高い位置精度で画像の両面印刷を行うことはできなかった。
【0018】
電照看板は、画像の裏面にバックライトが配置され、それによる表面の照度が外光による表面の照度よりも明るいことが理想とされている。屋内ではその条件を満たすのは困難ではないが、屋外ではその条件を満たすのは容易ではない。
【0019】
その理由は、屋内での環境光は人工照明であり、これによる表面の照度はそれほど大きくないため、裏面からの照明光源が所定の条件を満たすことにより表面の明るさを越えることが可能であるからである。しかし、屋外での環境光は太陽光であり、これによる表面の照度は極めて大きくなり、表面の明るさを越えることは極めて難しいものとなる。
【0020】
よく経験するように、大都会の夜景の美しさは人工照明の織りなす幾何学模様ではあるが、昼間においても、一部を除いてビルの照明は点灯されている。しかし、昼のビルの窓と夜のビルの窓とは大違いである。これは人工照明と太陽の明るさとの差による。電照広告または電照看板の面光源の明るさは、平均5〜6000ルックス程度であるが、太陽光では100000ルックッスにもなる。この明るさの差がコントラストの差となり、昼間にビルの窓からもれる屋内の光が見えなくなる。このようなことから、理想的な電照広告の画像は、反射可能な材料の両面に画像を作成し、表面の環境光が太陽であっても人工光であっても画像が適度の明るさとなって観賞に耐え、夜にはバックライトの明るさで画像が浮かび上がることが理想である。このような理想的な電照広告の画像として、銀塩方式のカラーフイルムも万全とはいえないが、従来においてはカラーフイルムに代わる電照広告用の素材が無かった。
【0021】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、サイズの大きい用紙であっても高い位置精度で画像の両面印刷を行うことのできる方法、および、サイズの大きい用紙であっても高い位置精度で搬送できる用紙搬送装置およびプリンタ用紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明に係る方法は、用紙の両面に画像を印刷する方法であって、両端部に送り用のパンチ孔が設けられた用紙、および、前記用紙に接した状態で回転駆動する駆動ローラ、および前記パンチ孔に係合する複数のピンを有し前記駆動ローラの両端部に配置されて前記駆動ローラと同軸の回転駆動力によって回転駆動する2つのピントラクタを有する搬送装置を用い、前記用紙を前記搬送装置にセットし、その状態で前記用紙を前記ピンの移動に同期した速度で搬送して前記用紙の一方の表面に画像を印刷し、一方の表面への印刷が終わった前記用紙を裏返して前記搬送装置にセットし、その状態で前記用紙を前記ピンの移動に同期した速度で搬送して前記用紙の他方の表面に画像を印刷する。
【0023】
好ましくは、前記ピンの形状は、前記用紙のパンチ孔が前記ピンから抜け出始めるときの当該ピンの前方側の根元位置から当該ピンの移動後における前記用紙の移動方向に沿った線上における当該ピンの前方側の位置までの距離が、当該ピンの前方側の根元位置の移動距離に等しくなるような形状である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の方法によると、サイズの大きい用紙であっても高い位置精度で画像の両面印刷を行うことができる。本発明の用紙搬送装置またはプリンタ用紙によると、サイズの大きい用紙であっても高い位置精度で用紙を搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態のプリンタの概略の構成を示す図である。
【図2】プリンタの用紙搬送装置の正面図である。
【図3】図2の用紙搬送装置の要部を拡大して示す正面図である。
【図4】図3の用紙搬送装置の断面図である。
【図5】図2の用紙搬送装置のA−A線矢視断面図である。
【図6】図5の一部を拡大して示す図である。
【図7】用紙の正面図である。
【図8】用紙のパンチ孔の部分を拡大して示す図である。
【図9】ピントラクタによる用紙の搬送の様子を示す図である。
【図10】ピンの前方側の周面の形状についての座標軸を説明する図である。
【図11】ピンの前方側の周面と用紙との接触位置の関係を説明する図である。
【図12】ピンの前方側の周面の形状の決定方法を説明する図である。
【図13】ピンの形状についての座標軸の他の例を説明する図である。
【図14】ピンと用紙との接触位置の関係の他の例を説明する図である。
【図15】ピントラクタの他の例を示す図である。
【図16】用紙の両面に印刷した画像をそれぞれ示す図である。
【図17】用紙の裏面に印刷する画像濃度を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1において、プリンタ1は、機体11、送り出しローラ12、駆動ローラ13、ピントラクタ14、加圧ローラ15、記録ヘッド16、プラテンボックス17、ファン18、用紙ガイド19、および制御回路などを備える。
【0027】
また、プリンタ1は、図示しないインタフェ−スを介してコンピュータと接続されており、キーボードなどのポインテングデバイスを用いて操作し制御することが可能である。また、図示しない表示装置によって制御内容および画像などが表示可能である。
【0028】
機体11には、ロール状に巻き取られた用紙PYが回転可能にセットされており、後で述べる用紙搬送装置YHによって用紙PYが引き出され、その表面に記録ヘッド16によって画像GZが印刷される。用紙PYは、両面印刷可能であり、かつ、透明または半透明であって、印刷された画像を反射光によって観察することも透過光によって観察することも可能である。
【0029】
用紙PYは、図7および図8に示すように、両端部に送り用のパンチ孔PAが長さ方向に沿って、一定のピッチで、それぞれ一列に設けられている。パンチ孔PAは、円形であり、その周縁部は円周に沿って切り取られている。つまり、パンチ孔PAの周縁部にはピンとの干渉を避けるためのギザギザなどは設けられておらず、パンチ孔PAの周縁部にピンの外周面が当接することによってこれらの位置関係が正確に決まる。
【0030】
また、用紙PYには、一方の列に設けられたパンチ孔PAと他方の列に設けられたパンチ孔PAとの位置の対応関係を示すマークMKPが付されている。
【0031】
マークMKPは、所定数のパンチ孔PAに対して1つ設けられている。図7および図8に示す実施形態では、5つのパンチ孔PAに対して1つのマークMKPが設けられている。マークMKPとして、黒ドット、色ドット、矢印などを用いることができる。また、マークMKPとして孔を設けてもよい。
【0032】
なお、マークMKPは、マークMKPの付された左右のパンチ孔PAが長手方向について同じ位置にあることを示すものである。したがって、左右のいずれのパンチ孔PAが同じ位置にあるかを示すことができる限りにおいて、マークMKPの個数、位置、形状、付加方法などを任意に選定することが可能である。
【0033】
送り出しローラ12は、用紙PYを、駆動ローラ13およびピントラクタ14に対して送り出す。送り出しローラ12には、パンチ孔PAに係合するピンを設けてもよく、設けなくてもよい。また、送り出しローラ12に代えてガイド板を設けてもよい。また、送り出しローラ12とともにガイド板を設けてもよい。
【0034】
駆動ローラ13およびピントラクタ14は、加圧ローラ15と協働して用紙PYを正確に高精度で位置決めし、搬送する。
【0035】
すなわち、図2をも参照して、駆動ローラ13は、用紙PYの下面に用紙に接した状態で回転駆動する。ピントラクタ14は、駆動ローラ13の両端部に配置されており、用紙PYの両端部に設けられた送り用のパンチ孔PAに係合する複数のピンPNをそれぞれ有し、駆動ローラ13と同軸の回転駆動力によって回転駆動する。
【0036】
つまり、ピントラクタ14は、駆動ローラ13の軸心と同じ軸心を持つ駆動軸によって回転駆動される。そのため、ピントラクタ14による用紙PYの搬送と駆動ローラ13による用紙PYの搬送とを同期させることが容易である。
【0037】
なお、本実施形態においては、ピントラクタ14の軸と駆動ローラ13の軸とは軸方向に一体に連結されているが、軸方向の適当な箇所においてカプリングや歯車などの動力伝達機構を介して連結されていてもよい。
【0038】
なお、図2における左側のピントラクタ14を「ピントラクタ14a」と記載し、右側のピントラクタ14を「ピントラクタ14b」と記載することがある。
【0039】
加圧ローラ15(加圧ローラ15a,15b)は、駆動ローラ13およびピントラクタ14に対向して配置され、用紙PYを駆動ローラ13およびピントラクタ14に向かって押し付ける。
【0040】
つまり、加圧ローラ15aは、駆動ローラ13に対して、弱く押し付けられている。これによって、駆動ローラ13と用紙PYとの接触面に大きな摩擦力が働かないようになっており、駆動ローラ13と用紙PYとの間の微小なズレが許容されるようになっている。
【0041】
なお、加圧ローラ15aを駆動ローラ13に押し付ける力を弱くするためには、加圧ローラ15aを押し付けるバネの力を弱くすればよい。加圧ローラ15aの自重によって押し付ける構造の場合には、加圧ローラ15aの重量を軽くすればよい。また、加圧ローラ15aの押し付け力を調整するためのバネなどを設ければよい。または、加圧ローラ15aの個数または長さを低減すればよい。
【0042】
また、加圧ローラ15aの押し付ける力を弱くすることに代え、またはこれとともに、加圧ローラ15aの表面の材質を摩擦係数の小さなものとしてもよい。また、駆動ローラ13の表面の材質を摩擦係数の小さなものとしてもよい。
【0043】
また、加圧ローラ15bは、用紙PYをピントラクタ14に対して押し付ける。これによって、用紙PYがパンチ孔PAの位置において本体ローラ141の表面に押しつけられ、パンチ孔PAがピンPNの根元位置TNまで挿入される。これによって、ピントラクタ14の回転にともなって、パンチ孔PAの位置がピンPNの周面の後述する曲線CVに沿って正確に移動し、用紙PYは正確に高精度で搬送される。
【0044】
因みに、加圧ローラ15bが無い場合、または加圧ローラ15bが用紙PYを本体ローラ141の表面にまで押しつけない場合には、パンチ孔PAがピンPNの根元位置TNでない中途半端な位置に挿入された状態となることがあり、その場合にはピンPNによる用紙PYの搬送が正確に行われない。
【0045】
駆動ローラ13、ピントラクタ14、および加圧ローラ15a,15bによって、用紙搬送装置YHが構成される。用紙搬送装置YHは、図示しないモータおよびギヤやベルトなどの動力伝達機構などによって、制御された速度で回転するよう回転駆動される。
【0046】
用紙搬送装置YHによって、用紙PYをピンPNの移動に同期した速度で搬送するとともに、駆動ローラ13の回転によって用紙PYを前方へ送り出すこととなる。つまり、ピントラクタ14によって用紙PYの両端部が、駆動ローラ13によって用紙PYの中央部が、それぞれ同じ速度で搬送される。ピントラクタ14による搬送速度と駆動ローラ13による搬送速度とは同じであり、用紙PYは捩れたり脱落したりすることなく、制御された速度で正確に直線状に搬送される。
【0047】
なお、実際には、駆動ローラ13よりもピントラクタ14による搬送が支配的であり、用紙PYはピントラクタ14のピンPNの移動に同期した速度で搬送される。つまり、ピントラクタ14と駆動ローラ13との間に、温度や湿度の変化などによる搬送速度の微小な相違が生じた場合には、ピントラクタ14による搬送速度となり、駆動ローラ13はそれとほぼ同じ速度で用紙PYを前方へ送り出すことになる。
【0048】
なお、ピントラクタ14による搬送を支配的とするために、駆動ローラ13の直径を本体ローラ141の直径よりも僅かに小さくしておいてもよい。
【0049】
ところで、2つのピントラクタ14についても、一方のピントラクタ14aに設けられたピンPNと他方のピントラクタ14bに設けられたピンPNとの搬送方向位置の対応関係を示すマークMKTが付されている。
【0050】
マークMKTは、各ピンPNに対して、色または形などを互いに異ならせて識別できるようにする。例えば、黒、赤、緑、青、黄、紫などの各色のドットまたは矢印などを印字し、または刻印して用いることができる。また、各ピンPNに対して番号または符号を付してもよい。
【0051】
また、マークMKTとして、所定数のピンPNに対して1つ設けらてもよい。例えば、3つのピンPNに対して1つのマークMKTを設ける。
【0052】
なお、マークMKTは、マークMKTの付された左右のピンPNが長手方向について同じ位置にあることを示すものである。したがって、左右のいずれのピンPNが同じ位置にあるかを示すことができる限りにおいて、マークMKTの個数、位置、形状、付加方法などを任意に選定することが可能である。
【0053】
記録ヘッド16は、用紙搬送装置YHによって送り出された直後において、用紙PYの表面にインクジェット方式でカラーの印刷を行う。記録ヘッド16は、図示しないレールに沿って往復移動するキャリッジに取り付けられており、プラテンボックス17の上方において、用紙PYとの間に僅かな間隙を有して、用紙PYを幅方向に横切るように往復移動する。記録ヘッド16のインクノズルはプラテンボックス17の上面と対向しており、プラテンボックス17の上面に吸着された用紙PYにインクを噴射して画像GZを印刷する。
【0054】
用紙PYの搬送方向をX方向とすると、記録ヘッド16の移動方向はそれと直交するY方向であり、用紙PYのX方向の移動と記録ヘッド16のY方向の移動によって、用紙PYの表面であるXY平面に画像GZが印刷される。
【0055】
印刷位置が正確であるためには、記録ヘッド16から噴射されるインクによって描かれる画像GZと、用紙PYのXY方向の位置とが一定の正しい関係にあることが必要である。また、同じ用紙PYの両面に印刷する画像GZの位置を互いに正確に高精度で位置合わせをするためには、用紙PYが、用紙搬送装置YHに対して正確な位置に精度よくセットされ、ズレのないように正確に搬送される必要がある。
【0056】
本実施形態の用紙搬送装置YHでは、ピントラクタ14によって用紙PYを搬送するので、用紙PYのパンチ孔PAに係合したピンPNによって用紙PYの位置が正確に定まり、しかも搬送時のズレがない。
【0057】
しかも、後述するように、ピンPNの形状は、用紙PYのパンチ孔PAがピンPNから抜け出始めるときのピンPNの前方側の根元位置からピンPNの移動後における用紙PYの移動方向に沿った線上におけるピンPNの前方側の位置までの距離が、ピンPNの前方側の根元位置の移動距離に等しくなるような形状となっている。
【0058】
つまり、ピンPNの形状は、ピンPNがパンチ孔PAに挿入された状態から抜け出る際に、ピンPNの移動とともにその前方側がパンチ孔PAの前側の周縁部に接した状態で抜ける方向に移動するような形状となっている。
【0059】
このため、ピントラクタ14による用紙PYの搬送速度は、駆動ローラ13の周速度と同じになり、用紙PYは一定の速度で滑らかに送り出される。ピンPNの形状については後で詳しく説明する。
【0060】
なお、プラテンボックス17の下部にファン18が設けられており、ファン18によってプラテンボックス17の内部の空気が排気されて圧力が低下する。プラテンボックス17の上面には細かい多数の孔が設けられており、用紙PYが負圧によって吸着され、プラテンボックス17の上面に密着する。つまり、用紙PYは、プラテンボックス17の上面に密着した状態で搬送される。
【0061】
記録ヘッド16によって表面に画像GZが印刷された用紙PYは、用紙ガイド19に沿って排出される。
【0062】
図2〜図5に示されるように、駆動ローラ13は、その両端部から直線状に延びる駆動軸13a,13bを一体的に有している。駆動軸13a,13bは、その端部において、機体11に取り付けられたベアリング21a,21bによって回転可能に支持され、図示しない動力伝達機構などによって回転駆動される。
【0063】
なお、駆動ローラ13の表面はローレット加工が施されており、用紙PYとの間に適当な摩擦力が生じるようになっている。このような駆動ローラ13は、例えば、中空のパイプの両端の内周面にネジを設け、このネジに螺合するボスまたはネジ軸をネジ込むことによって一体化したものでもよい。
【0064】
一方の駆動軸13aには、その表面に軸方向に設けられたキー溝にキー22が嵌入して取り付けられている。ピントラクタ14aには、キー22に係合するキー溝23が設けられており、キー溝23がキー22に係合しかつキー22に沿って軸方向に移動可能となっている。また、ピントラクタ14aには、止めネジ24が設けられており、ピントラクタ14aの軸方向の位置を調整した後、止めネジ24を締め付けることによって、軸方向の位置が固定される。
【0065】
なお、ピントラクタ14bにおいても、ピントラクタ14aの場合と同様な止めネジが設けられており、軸方向の位置を調整した後、止めネジを締め付けることによって位置が固定される。
【0066】
また、駆動ローラ13とピントラクタ14aとの間には、その間の空間を埋めるためのローラ131,132が挿入されている。ローラ131,132は、その外径が駆動ローラ13の外径と同一である。ローラ131,132においても、キー22に係合するキー溝が設けられており、キー22に沿って軸方向に移動可能である。また、ローラ131,132には止めネジが設けられており、止めネジを締め付けることによって軸方向の位置が固定される。
【0067】
なお、ローラ131,132の軸方向の長さ、個数などは、適当なものを選定して用いることが可能である。このようなローラ131,132は、駆動ローラ13を駆動軸13a,13bとともに機体11から取り外した状態で、駆動軸13aに挿入すればよい。または、ローラ131,132を2つ割りとし、ネジなどで結合することによって駆動軸13aに取り付けるようにしてもよい。
【0068】
図5および図6において、ピントラクタ14の本体ローラ141には、複数個のピンPNが互いに等角度ピッチで設けられている。つまり、ピントラクタ14は、ピン付きローラである。本体ローラ141の外径は、駆動ローラ13の外径と同一である。
【0069】
図6によく示されるように、ピンPNは、外周面が円周面であって、根元位置TNから先端位置TSまで滑らかな曲線を描いて収束する砲弾型である。
【0070】
次に、ピンPNの形状について詳しく説明する。
【0071】
すなわち、図6に示すように、図の中央のピンPNに注目すると、ピンPNは、用紙PYのパンチ孔PAに挿入され、ピンPNの前方側の根元位置TNが用紙PYのパンチ孔PAの前側の周縁部に接した状態である。ピンPNの根元位置TNの外径をDNとし、パンチ孔PAの内径をDAとすると、DA>DNである。したがって、ピンPNの後方側の根元位置TNとパンチ孔PAの後側の周縁部との間には、間隙が形成される。
【0072】
寸法の具体例をあげると、本体ローラ141の外径が28mm程度の場合に、ピンPNの外径の最大値が3mm程度、パンチ孔PAの内径が3.2mm程度、したがってピンPNとパンチ孔PAの周縁部との間の間隙は0.2mm程度となる。ピンPNの高さは2.5mm程度である。
【0073】
この状態で、ピントラクタ14は、図の右側(矢印M1方向)に回転する。これによって、用紙PYは、図の右方向(矢印M2方向)に搬送される。
【0074】
図6の中央のピンPNに対して、1ピッチ分前方にあるピンPN(これを「ピンPNZ」と記載することがある)は、丁度、ピンPNZの外周面を延長した仮想面MKと先端位置TSを通る平面MHとが交差する稜線が、パンチ孔PAの前側の周縁部に接した状態となる。つまり、この状態が、ピンPNZがパンチ孔PAから抜け出る瞬間である。
【0075】
なお、根元位置TNは、ピンPNの周方向の位置によって異なる高さ位置となるが、微小な差異であるのでここでは無視する。
【0076】
ピンPNに対して、1ピッチ分後方にあるピンPNを「ピンPNG」と記載することがある。
【0077】
図9には、ピントラクタ14の回転にともなって用紙PYが搬送される様子が示されている。
【0078】
図9(A)は、上に述べた図6と同じ状態である。この状態で、破線の円で囲った部分において、ピンPNの根元位置TNとパンチ孔PAとが接している。図9(B)〜(F)は、ピントラクタ14が所定角度ずつ矢印M1方向に回転した状態をそれぞれ示す。図9(F)の次は図9(A)の状態に戻る。それらの図において、破線の円で囲った部分でおいて、ピンPNの根元位置TNとパンチ孔PAとが接している。
【0079】
図9(A)〜図9(D)の各状態では、ピンPNの根元位置TNとパンチ孔PAとが接するのは1つのピンPNのみであるが、図9(E)〜図9(F)の各状態では、ピンPNの根元位置TNとパンチ孔PAとが2つのピンPN,PNGについて接する。この間に、用紙PYの搬送および位置決めが、ピンPNからピンPNGに移る。
【0080】
この間において、ピンPNの前方側の周面が、パンチ孔PAの前側の周縁部に接した状態で抜ける方向に移動している。
【0081】
図10に示すように、ピンPNの周面の形状を求めるために、根元位置TNを原点とし、本体ローラ141の表面の接線方向をU軸とし、これを垂直な方向をV軸とする。ピンPNの周面の形状は、このようなUV平面における曲線CVの各点の座標を求めることによって決定される。
【0082】
図11に示すように、本体ローラ141の回転角度に応じてU軸およびV軸が移動する。ピンPNの根元位置TNがピントラクタ14の真上、つまりピンPNが本体ローラ141と用紙PYとの接点位置にあるときを原点位置とし、このときの回転角度を0度とし、そこからの回転角度をθ〔度〕とする。種々の回転角度θでのU軸およびV軸について、用紙PYとの接触位置Pの座標を求めればよい。
【0083】
図11において、Uは次のようにして求められる。
【0084】
U=cosθ×D
=cosθ×(B−C)
=cosθ×(r×tanθ−2πrθ/360) ……(1)
また、Vは次のようにして求められる。
【0085】
V=E−G
=(A−r)−(D×sinθ)
=(r/cosθ−r)−(r×tanθ−2πrθ/360)×sinθ
……(2)
なお、上の式において、rは本体ローラ141の半径である。また、本体ローラ141の回転による周速度と用紙PYの搬送速度とが同期(同調)するという前提であるので、用紙PYの搬送距離である「C」は、回転角度θに対応する円周長さに等しくなる。
【0086】
このようにして種々の回転角度θでの接触位置Pの座標を求め、UV平面上にプロットして示したのが図12である。
【0087】
図12に示す曲線CVを、ピンPNの中心線TCを軸として回転させることによって、ピンPNの外周面が形成される。
【0088】
なお、図12に示す曲線CVにおいて、原点から遠い部分は、上に述べた仮想面MKで示される線となる。
【0089】
また、ピンPNの周面の形状を次の方法によって求めることができる。
【0090】
すなわち、図13に示すように、ピンPNの中心線TCをV軸とし、本体ローラ141の表面においてV軸と直交する接線をU軸とする。ピンPNの周面の形状は、このようなUV平面における曲線CVの各点の座標を求めることによって決定される。
【0091】
図14に示すように、本体ローラ141の回転角度に応じてU軸およびV軸が移動する。ピンPNがピントラクタ14の真上、つまりピンPNが本体ローラ141と用紙PYとの接点位置にあるときを原点位置とし、このときの回転角度を0度とし、そこからの回転角度をθ〔度〕とする。種々の回転角度θでのU軸およびV軸について、用紙PYとの接触位置Pの座標を求めればよい。
【0092】
図14において、Uは次のようにして求められる。
【0093】
U=cosθ×D
=cosθ×(C−B)
=cosθ×(2πrθ''/360−r×tanθ) ……(3)
また、Vは次のようにして求められる。
【0094】
V=E+G
=(A−r)+(D×sinθ)
=(r/cosθ−r)+(2πrθ''/360−r×tanθ)×sinθ
……(4)
なお、上の式において、θ''は、
θ''=θ+θ' ……(5)
である。ここにおいて、θ' は、ピンPNの中心線TCに対する根元位置TNの偏倚角である。つまり、偏倚角θ' は、次のようにして求められる。
【0095】
θ' =arc tan(rp/r) ……(6)
なお、rpはピンPNの半径の最大値である。ピンPNの外径の最大値が3mmの場合に、rpは1.5mmとなる。
【0096】
また、上と同様に、本体ローラ141の回転による周速度と用紙PYの搬送速度とが同期(同調)するという前提であるので、用紙PYの搬送距離である「C」は、回転角度θに対応する円周長さに等しくなる。但し、(3)(4)式において、「C」は、回転角度θに偏倚角θ' を加えた角度に対応する円周長さとしている。
【0097】
接触位置Pの座標を求める方法として、上に述べた以外の種々の方法を用いることが可能である。また、作図によって接触位置Pを求めてもよい。また、数学的手法を用いて曲線CVの近似式を求めてもよい。これらの作図または演算のために、適当なプログラムをコンピュータによって実行してもよい。
【0098】
上に述べた形状のピンPNは回転体である。このようなピンPNは、金属材料または合成樹脂材料などを用い、切削によって形成することが可能である。または、金型によって成形し、または成形後に研磨を行ってもよい。ピンPNによる用紙PYの位置決めのためには、ピンPNの前方側の半分が重要であるので、その部分のみを精密に仕上げてもよい。
【0099】
なお、ピンPNは、砲弾型としたが、円錐形状でもよい。また、先端位置TSの側から見た形状は円形であるが、円形ではなく、四角形または多角形などとしてもよい。
【0100】
上に述べたピントラクタ14は、本体ローラ141に複数個のピンPNが設けられたピン付きローラであるが、タイミングベルトを用いたものでもよい。
【0101】
次に、タイミングベルトを用いたピントラクタ14Bについて説明する。
【0102】
図15において、ピントラクタ14Bは、ケーシング31、ケーシング31に対して回転可能にボルトBTで取り付けられた2つのローラ32,33、2つのローラ32,33の間に掛け渡されたタイミングベルト34、および、ケーシング31に対して回転可能に設けられ、駆動軸13aによって回転駆動されてタイミングベルト34を回転駆動するタイミングギヤ35を有する。
【0103】
タイミングベルト34の外周面には、用紙PYに設けられたパンチ孔PAに係合するピンPNが設けられている。
【0104】
タイミングベルト34は、タイミングギヤ35とローラ33との間において、用紙PYと平行であり、タイミングギヤ35とローラ32との間において、用紙PYから徐々に離れるように緩やかに傾斜している。
【0105】
ピントラクタ14Bの上方には、プリンタに付属する抑えローラ15B、軸44を中心として回動可能に設けられた抑えレバー43、およびバネ44などからなる用紙抑え装置SAが設けられている。
【0106】
駆動軸13aが回転すると、タイミングギヤ35が一体的に回転し、これに噛み合うタイミングベルト34が走行する。タイミングベルト34の走行によって、パンチ孔PAに係合したピンPNが用紙PYを走行させる。
【0107】
用紙PYは、タイミングギヤ35とローラ33との間の平行部分において、複数のパンチ孔PAがピンPNと十分に係合して正確に矢印M2方向に送られる。タイミングギヤ35とローラ32との間の傾斜部分において、タイミングベルト34は用紙PYから徐々に離れ、これにともなってピン36がパンチ孔PAから円滑に抜け出る。
【0108】
なお、ピンPNの形状は、上に述べたように砲弾型であり、図9〜図14で説明したように求めることができる。
【0109】
なお、ピントラクタ14Bの構造または形状などは、上に述べた以外の種々のものとすることができる。例えば、タイミングギヤ35が設けられた位置に、ローラ32,33と同様なローラを設け、そのローラとローラ32との間にタイミングギヤ35を設けてタイミングベルト34を駆動する。
【0110】
次に、プリンタ1によって用紙PYの両面に画像GZを印刷する方法について説明する。
【0111】
上に述べたように、両端部に送り用のパンチ孔PAが設けられた用紙PY、および、用紙PYに接した状態で回転駆動する駆動ローラ13、およびパンチ孔PAに係合する複数のピンPNを有し駆動ローラ13の両端部に配置されて駆動ローラ13と同軸の回転駆動力によって回転駆動する2つのピントラクタ14a,14bを有する用紙搬送装置YHを用いる。
【0112】
2つのピントラクタ14a,14bの位置は、使用する用紙PYのパンチ孔PAの位置に合わせて調整しておく。
【0113】
用紙PYを用紙搬送装置YHにセットし、その状態で用紙PYをピンPNの移動に同期した速度で搬送して用紙PYの一方の表面HM1に画像GZ1を印刷する〔図16(A)参照〕。
【0114】
用紙PYの一方の表面UM1への印刷が終わると、その位置において巻き取り紙みから切断する。切断した用紙PYを裏返し、用紙搬送装置YHにセットし、その状態で用紙PYをピンPNの移動に同期した速度で搬送して用紙PYの他方の表面(裏面)UM2に画像GZ2を印刷する〔図16(B)参照〕。
【0115】
このとき、用紙PYの裏面UM2に印刷される画像GZ2は、表面UM1に印刷された画像GZ1を裏返した画像つまり鏡像である。つまり、画像GZ2は、画像GZ1と同じ内容の画像であり、画像GZ1を左右反転させた画像である。なお、用紙PYの天地の向きを反転した場合には、画像GZ2も天地を反転させればよい。
【0116】
そして、画像GZ1と画像GZ2とは、同じ位置に重なるように印刷される。つまり、用紙PYを透かして見た状態で、裏面UM2に印刷される画像GZ2の原点GG2の位置は、表面UM1に印刷された画像GZ1の原点GG1の位置と同じ位置である。
【0117】
つまり、例えば、用紙PYにおける1つのパンチ孔PA11を基準とすると、このパンチ孔PA11と原点GG1またはGG2との位置関係が、用紙PYの表裏において同じになればよい。
【0118】
また、表面UM1の印刷時にパンチ孔PA11に挿入されるピンPN11には、裏面UM2の印刷時にはその左右に反対側のパンチ孔PA21が挿入される。したがって、画像GZ2について、左上端位置を原点GG21とした場合には、この原点GG21とピンPN11との位置関係を規定すればよいことになる。画像GZ2について、原点GG2と原点GG21との位置関係は既知であるので、これらに基づいて原点GG21とピンPN11との位置関係を設定すればよい。
【0119】
用紙搬送装置YHにおいては、ピントラクタ14によって用紙PYの位置が正確に高精度で定まりかつ搬送されるので、上のように表裏における画像GZ1,2の印刷位置を決定して印刷を行うことにより、それらがズレることなく正確に一致する。
【0120】
つまり、サイズの大きい用紙PYであっても小さい用紙PYであっても、高い位置精度で画像GZの両面印刷を行うことができる。
【0121】
なお、両面印刷が終わった用紙PYについては、パンチ孔PAの設けられた両端部分を裁断して切り離しておけばよい。
【0122】
また、裏面UM2に印刷する画像GZ2は、その濃度を調整しておくことが好ましい。
【0123】
図17には、表面用の画像(入力画像)GZ1に対する裏面用の画像(出力画像)GZ2の濃度の関係が示されている。
【0124】
図17において、入力画像の濃度に対して、出力画像の濃度は、そのダイナミックレンジが狭くなっている。つまり、入力画像に対して、出力画像の濃度はND1〜ND2%に圧縮されている。つまりグレースケールまたは各原色の明度のスケールにおける中間部分の濃度ND1〜ND2になるよう、濃度分布が限定されている。
【0125】
ただし、入力画像の濃度0〜2%程度に対しては、つまり最も明るい濃度に対しては、同様に最も明るい濃度が得られるようになっている。これは、最も明るい部分については、そのまま明るい部分としておく必要があるからである。
【0126】
濃度ND1の具体的な範囲は、例えば10〜20%程度、濃度ND2については、例えば50〜80%程度である。したがって、入力画像に対し、出力画像の濃度を20〜70%程度の範囲に限定することができる。このように出力画像の濃度を限定し、これを裏面用の画像GZ2の濃度とすることにより、用紙PYの両面に印刷された画像を透過光で観察した場合に、自然な濃度で鮮明に観察できる。
【0127】
なお、画像GZの幅方向の端部に、画像のズレを検出するためのマーカを設けてもよい。その場合に、マーカを作画サイズの外周に自動的に印字するようにしてもよい。また、印刷を開始した後で印刷位置にズレが生じた場合に、その印字位置をコンピュータのキーボードの操作により補正可能としておけばよい。
【0128】
また、CCDなどを備えたカメラを用いて印刷された画像GZのズレを検出し、これに基づいて印刷位置を修正するようにしてもよい。その場合に、例えば、用紙PYの表面に画像GZ1を印刷し、画像GZ1をカメラで撮影してその印刷位置を計測する。用紙PYの裏面に画像GZ2を印刷するに際して、画像GZ2をカメラで撮影してその印刷位置を計測し、画像GZ1の印刷位置と一致するようにズレ量を修正する。
【0129】
印刷位置の修正を行う場合に、主走査方向(X方向)については、例えば原点GGを移動し、副走査方向(Y方向)については、例えば駆動ローラ13を駆動するモータに対して位置補正信号を出力すればよい。
【0130】
このようにすることによって、画像GZ1,2の印刷位置を自動的に一致させることができ、用紙PYの表裏に画像GZ1,2を自動的に印刷することができる。
【0131】
なお、本実施形態では用紙PYの両面に同じ画像GZ1,2を印刷したが、同じ画像ではなく、互いに異なる画像を印刷してもよい。また、用紙PYの両面に印刷することなく、用紙PYの同じ表面に2回または3回以上印刷を行ってもよい。例えば、用紙PYの表面に印刷した画像GZ1に対して、同じ表面に追加の画像を印刷してもよい。追加の画像を印刷する際に、色を例えば金色に変更するようにしてもよい。用紙PYの同じ表面に複数回の印刷を行う場合でも、用紙PYの位置を高精度に維持することができるので、印刷される画像の位置を正確に合わせることができる。
【0132】
上に述べた実施形態において、用紙PYに設けたパンチ孔PAのピッチは、ピンPNのピッチと同じにしたが、ピンPNのピッチよりも小さいピッチとしてもよい。
【0133】
上に述べた実施形態において、駆動ローラ13、ピントラクタ14、加圧ローラ15、ピンPN、用紙PY、パンチ孔PA、またはプリンタ1の全体または各部の構造、形状、寸法、個数、材質、組成などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0134】
1 プリンタ
13 駆動ローラ
14 ピントラクタ
15,15a,15b 加圧ローラ(押付け部材)
YH 用紙搬送装置(搬送装置)
PY 用紙(プリンタ用紙)
PA パンチ孔
PN ピン
TN 根元位置
MKP,MKT マーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙の両面に画像を印刷する方法であって、
両端部に送り用のパンチ孔が設けられた用紙、および、
前記用紙に接した状態で回転駆動する駆動ローラ、および前記パンチ孔に係合する複数のピンを有し前記駆動ローラの両端部に配置されて前記駆動ローラと同軸の回転駆動力によって回転駆動する2つのピントラクタを有する搬送装置を用い、
前記用紙を前記搬送装置にセットし、その状態で前記用紙を前記ピンの移動に同期した速度で搬送して前記用紙の一方の表面に画像を印刷し、
一方の表面への印刷が終わった前記用紙を裏返して前記搬送装置にセットし、その状態で前記用紙を前記ピンの移動に同期した速度で搬送して前記用紙の他方の表面に画像を印刷する、
ことを特徴とする用紙の両面に印刷する方法。
【請求項2】
前記ピンの形状は、
前記用紙のパンチ孔が前記ピンから抜け出始めるときの当該ピンの前方側の根元位置から当該ピンの移動後における前記用紙の移動方向に沿った線上における当該ピンの前方側の位置までの距離が、当該ピンの前方側の根元位置の移動距離に等しくなるような形状である、
請求項1記載の用紙の両面に印刷する方法。
【請求項3】
前記2つのピントラクタには、一方のピントラクタに設けられたピンと他方のピントラクタに設けられたピンとの搬送方向位置の対応関係を示すマークが付されており、
前記用紙には、一方の端部に設けられたパンチ孔と他方の端部に設けられたパンチ孔との位置の対応関係を示すマークが付されている、
請求項1または2記載の用紙の両面に印刷する方法。
【請求項4】
用紙に接した状態で回転駆動する駆動ローラと、
前記用紙の両端部に設けられた送り用のパンチ孔に係合する複数のピンを有し前記駆動ローラの両端部に配置されて前記駆動ローラと同軸の回転駆動力によって回転駆動する2つのピントラクタと、
前記駆動ローラおよび前記ピントラクタに対向して配置され前記用紙を前記駆動ローラおよび前記ピントラクタに向かって押し付ける押付け部材と、を有し、
前記用紙を前記ピンの移動に同期した速度で搬送するとともに、前記駆動ローラの回転によって前記用紙を前方へ送り出すようにした、
ことを特徴とするプリンタの用紙搬送装置。
【請求項5】
前記ピンの形状は、
前記用紙のパンチ孔が前記ピンから抜け出始めるときの当該ピンの前方側の根元位置から当該ピンの移動後における前記用紙の移動方向に沿った線上における当該ピンの前方側の位置までの距離が、当該ピンの前方側の根元位置の移動距離に等しくなるような形状である、
請求項4記載のプリンタの用紙搬送装置。
【請求項6】
前記ピンの形状は、
前記パンチ孔に挿入された状態から抜け出る際に、その移動とともにその前方側が前記パンチ孔の前側の周縁部に接した状態で抜ける方向に移動するような形状である、
請求項4記載のプリンタの用紙搬送装置。
【請求項7】
前記両端部に配置された2つのピントラクタには、一方のピントラクタに設けられたピンと他方のピントラクタに設けられたピンとの搬送方向位置の対応関係を示すマークが付されている、
請求項4ないし6のいずれかに記載のプリンタの用紙搬送装置。
【請求項8】
前記2つのピントラクタのうちの少なくとも1つのピントラクタは、軸方向の位置が調整可能に設けられている、
請求項4ないし7のいずれかに記載のプリンタの用紙搬送装置。
【請求項9】
前記ピントラクタは、前記駆動ローラと同軸上に設けられた駆動軸に対し、前記駆動軸に設けられたキーに回転方向に係合しかつ前記キーに沿って軸方向に移動可能である、
請求項8記載のプリンタの用紙搬送装置。
【請求項10】
前記ピントラクタは、
外周面に前記複数のピンが設けられ、前記駆動ローラと同軸上に設けられたピン付きローラである、
請求項4ないし9のいずれかに記載のプリンタの用紙搬送装置。
【請求項11】
前記ピントラクタは、
ケーシングと、
前記ケーシングに対して回転可能に取り付けられた2つのローラと、
外周面に前記複数のピンが設けられ前記2つのローラの間に掛け渡されたタイミングベルトと、
前記駆動ローラと同軸の回転駆動力によって回転駆動されて前記タイミングベルトを走行させるタイミングギヤと、を備え、
前記タイミングベルトは、前記用紙と平行に走行する平行部分、および前記用紙から徐々に離れるように緩やかに傾斜した傾斜部分を有する、
請求項4ないし9のいずれかに記載のプリンタの用紙搬送装置。
【請求項12】
駆動ローラおよびピントラクタによって搬送されるプリンタ用紙であって、
幅方向の両端部に、前記ピントラクタのピンが係合する送り用のパンチ孔が長さ方向に沿ってそれぞれ一列に設けられており、
一方の列に設けられたパンチ孔と他方の列に設けられたパンチ孔との位置の対応関係を示すマークが付されている、
ことを特徴とするプリンタ用紙。
【請求項1】
用紙の両面に画像を印刷する方法であって、
両端部に送り用のパンチ孔が設けられた用紙、および、
前記用紙に接した状態で回転駆動する駆動ローラ、および前記パンチ孔に係合する複数のピンを有し前記駆動ローラの両端部に配置されて前記駆動ローラと同軸の回転駆動力によって回転駆動する2つのピントラクタを有する搬送装置を用い、
前記用紙を前記搬送装置にセットし、その状態で前記用紙を前記ピンの移動に同期した速度で搬送して前記用紙の一方の表面に画像を印刷し、
一方の表面への印刷が終わった前記用紙を裏返して前記搬送装置にセットし、その状態で前記用紙を前記ピンの移動に同期した速度で搬送して前記用紙の他方の表面に画像を印刷する、
ことを特徴とする用紙の両面に印刷する方法。
【請求項2】
前記ピンの形状は、
前記用紙のパンチ孔が前記ピンから抜け出始めるときの当該ピンの前方側の根元位置から当該ピンの移動後における前記用紙の移動方向に沿った線上における当該ピンの前方側の位置までの距離が、当該ピンの前方側の根元位置の移動距離に等しくなるような形状である、
請求項1記載の用紙の両面に印刷する方法。
【請求項3】
前記2つのピントラクタには、一方のピントラクタに設けられたピンと他方のピントラクタに設けられたピンとの搬送方向位置の対応関係を示すマークが付されており、
前記用紙には、一方の端部に設けられたパンチ孔と他方の端部に設けられたパンチ孔との位置の対応関係を示すマークが付されている、
請求項1または2記載の用紙の両面に印刷する方法。
【請求項4】
用紙に接した状態で回転駆動する駆動ローラと、
前記用紙の両端部に設けられた送り用のパンチ孔に係合する複数のピンを有し前記駆動ローラの両端部に配置されて前記駆動ローラと同軸の回転駆動力によって回転駆動する2つのピントラクタと、
前記駆動ローラおよび前記ピントラクタに対向して配置され前記用紙を前記駆動ローラおよび前記ピントラクタに向かって押し付ける押付け部材と、を有し、
前記用紙を前記ピンの移動に同期した速度で搬送するとともに、前記駆動ローラの回転によって前記用紙を前方へ送り出すようにした、
ことを特徴とするプリンタの用紙搬送装置。
【請求項5】
前記ピンの形状は、
前記用紙のパンチ孔が前記ピンから抜け出始めるときの当該ピンの前方側の根元位置から当該ピンの移動後における前記用紙の移動方向に沿った線上における当該ピンの前方側の位置までの距離が、当該ピンの前方側の根元位置の移動距離に等しくなるような形状である、
請求項4記載のプリンタの用紙搬送装置。
【請求項6】
前記ピンの形状は、
前記パンチ孔に挿入された状態から抜け出る際に、その移動とともにその前方側が前記パンチ孔の前側の周縁部に接した状態で抜ける方向に移動するような形状である、
請求項4記載のプリンタの用紙搬送装置。
【請求項7】
前記両端部に配置された2つのピントラクタには、一方のピントラクタに設けられたピンと他方のピントラクタに設けられたピンとの搬送方向位置の対応関係を示すマークが付されている、
請求項4ないし6のいずれかに記載のプリンタの用紙搬送装置。
【請求項8】
前記2つのピントラクタのうちの少なくとも1つのピントラクタは、軸方向の位置が調整可能に設けられている、
請求項4ないし7のいずれかに記載のプリンタの用紙搬送装置。
【請求項9】
前記ピントラクタは、前記駆動ローラと同軸上に設けられた駆動軸に対し、前記駆動軸に設けられたキーに回転方向に係合しかつ前記キーに沿って軸方向に移動可能である、
請求項8記載のプリンタの用紙搬送装置。
【請求項10】
前記ピントラクタは、
外周面に前記複数のピンが設けられ、前記駆動ローラと同軸上に設けられたピン付きローラである、
請求項4ないし9のいずれかに記載のプリンタの用紙搬送装置。
【請求項11】
前記ピントラクタは、
ケーシングと、
前記ケーシングに対して回転可能に取り付けられた2つのローラと、
外周面に前記複数のピンが設けられ前記2つのローラの間に掛け渡されたタイミングベルトと、
前記駆動ローラと同軸の回転駆動力によって回転駆動されて前記タイミングベルトを走行させるタイミングギヤと、を備え、
前記タイミングベルトは、前記用紙と平行に走行する平行部分、および前記用紙から徐々に離れるように緩やかに傾斜した傾斜部分を有する、
請求項4ないし9のいずれかに記載のプリンタの用紙搬送装置。
【請求項12】
駆動ローラおよびピントラクタによって搬送されるプリンタ用紙であって、
幅方向の両端部に、前記ピントラクタのピンが係合する送り用のパンチ孔が長さ方向に沿ってそれぞれ一列に設けられており、
一方の列に設けられたパンチ孔と他方の列に設けられたパンチ孔との位置の対応関係を示すマークが付されている、
ことを特徴とするプリンタ用紙。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−20292(P2011−20292A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165284(P2009−165284)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(591243893)株式会社フオトクラフト社 (26)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(591243893)株式会社フオトクラフト社 (26)
【Fターム(参考)】
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