説明

用紙を綴じる紙製などの非金属製ステッチとそのステッチで綴じた本、並びに、用紙の綴じ方法とそのための綴じ装置

【課題】 ごみとして廃棄処分したり、再生紙用の原料として利用する際に、紙と金属(ステッチ)とを分別する必要がなく、書籍などの本を丸ごとそのまま廃棄したり再生紙用の原料として利用することができる、つまり、ステッチを付けたままで一般紙ごみと一緒に焼却や埋め立て、或は、再生紙用の原料として使用できる紙製などの非金属製の綴じ針(以下、ステッチともいう)と、そのステッチによる用紙の綴じ方法、並びに、用紙の綴じ装置を提供すること。
【解決手段】 接着剤などの硬化接着成分の塗布又は含浸などにより硬質化された紙製などの非金属製線材20を略コ字状に曲げて一対の挿込脚21,21を形成し、該挿込脚21,21を針状のガイド体32a,32bに支持させて複数枚の綴じたい用紙10に貫通させ、貫通したその挿込脚21,21を折り曲げて接着剤により用紙10に接合させるようにしたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製本用などの用紙を綴じる主として紙製の非金属製ステッチと、この非金属製ステッチで綴じた本、並びに、前記ステッチで用紙を綴じ込む方法とその綴じ装置に関する。具体的には、ステッチと呼ばれる綴じ具を、例えば紙を素材として形成し、その紙製ステッチを、本を構成する用紙に挿通させて綴じ込む方法とそのための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般の書籍や週刊誌やカタログなどは、例えば、中綴じ本の場合、丁合された用紙の背側から略コ字状をなす針金製(又は金属製)のステッチを貫通させ、貫通部を内側に折り曲げることで綴じ込み、表紙などを付けて製本されている。これらの本は、用済み後などにごみとして廃棄処分したり、再生紙原料として利用したりするが、その際には、金属製ステッチを取り外し、金属と紙とに分別した取り扱いをしている。
【0003】
しかし乍ら、金属製ステッチと用紙を分離する分別作業は、手作業によらざるを得ないため、用済み後の処理は相当な手間とコストがかかるものとなって、非省力的なことと相俟って再生紙のコストを押上げる要因となっている。なお、紙製のファイルの綴じ具は特許文献1〜3などにより公知であるが、紙製ステッチはない。
【特許文献1】特開2005−14406号公報
【特許文献2】登録実用新案第3099092号公報
【特許文献3】特開2003−246180号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明が課題とするところは、ごみとして廃棄処分したり、再生紙用の原料として利用する際に、紙と金属(ステッチ)とを分別する必要がなく、書籍などの本を丸ごとそのまま廃棄したり再生紙用の原料として利用することができる、つまり、ステッチを付けたままで一般紙ごみと一緒に焼却や埋め立て、或は、再生紙用の原料として使用できる紙製などの非金属製の綴じ針(以下、ステッチともいう)と、そのステッチによる用紙の綴じ方法、並びに、用紙の綴じ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決することを目的としてなされた本発明非金属製ステッチの構成は、接着剤などの硬化接着成分の塗布又は含浸などにより硬質化された紙製などの非金属製線材を略コ字状に曲げて一対の挿込脚を形成し、該挿込脚を針状のガイド体に支持させて複数枚の用紙に貫通させ、貫通したその挿込脚を折り曲げて接着剤により用紙に接合させるようにしたことを特徴とするものである。
【0006】
次に、上記の本発明ステッチを使用して綴じた本の構成は、硬質化された紙製などの非金属製線材を略コ字状に曲げて形成した一対の挿込脚を文字や図などを印刷した所要枚数の用紙に通して折り曲げ、その折り曲げ部を前記用紙に固定したことを特徴とするものである。
【0007】
更に、上記の本発明ステッチで複数枚の用紙を綴じる本発明綴じ方法の構成は、接着剤の塗布又は含浸などにより硬質化された紙製などの非金属製線材の両端部を折り曲げ下向き略コ字状に挿込脚を形成したステッチを、その挿込脚を針状のガイド体に支持させそのガイド体によって用紙に形成されるステッチ挿通孔に前記ガイド体と一緒に通してから当該ガイド体を抜き、前記挿込脚の用紙から突出した部分を互いに内側に折り曲げ、接着剤によって用紙に固着することを特徴とするものである。
【0008】
そして、上記の本発明ステッチを用紙に綴じ込むための本発明綴じ装置の構成は、本発明ステッチを水平姿勢で保持するステッチ受台と、前記ステッチで綴じられる用紙を支持する用紙受台と、前記ステッチ受台と用紙受台に対し上下動する昇降ヘッドとを備え、前記昇降ヘッドは、ステッチ受台に向かって移動したとき前記ステッチ受台上のステッチの両側部を曲げて挿込脚を形成すると共に用紙受台上の用紙にステッチ挿通孔を穿孔するため当該昇降ヘッドに固定された先端に穿孔刃を有する平行な2本のステッチガイド体と、この昇降ヘッドがステッチ受台に移動したときステッチをステッチ受台上に押付けると共に当該ステッチの挿込脚をステッチ挿通孔に押込むため前記ステッチガイド体の間に位置して当該昇降ヘッドにスライド可能に設けられたプッシャーとを備え、前記用紙受台の下面側に挿込まれた前記ステッチの挿込脚を用紙側に折り曲げる挿込脚の曲げ機構を備えており、前記挿込脚がステッチ挿通孔に押込まれるとき前記ステッチ受台を待避させるようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明ステッチは、それが紙製の場合、それにより綴じられる用紙と同材質であるから、再利用や焼却,廃棄等の処分などをする際に、用紙と分別する必要がなく、綴じた本の姿のまま各処理に回すことができる。即ち、本発明ステッチで綴じた本は、ステッチが非金属製であるからそのステッチを取付けたままで一般紙ごみと一緒に焼却や埋め立て、又は、再生紙原料などとして取り扱うことができる。
【0010】
また、本発明ステッチにおいては、折り曲げた挿込脚を用紙に接着剤などによって接着し用紙を綴じているため、非金属製ステッチでも用紙から外れ難く、強固な綴じ状態を実現できる。
【0011】
更に、本発明ステッチは、その両端部分を折り曲げて下向きのコ字状の挿込脚を形成し、その脚を用紙に通すとき、ステッチガイド体によって用紙にステッチ挿通孔を形成すると同時にその挿込脚をステッチ挿通孔に通すので、ステッチの機械的強さが針金製ステッチのような機械的強度を持たなくても、確実に用紙を貫通させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態例を説明する。添付図面において、図1は本発明ステッチにより中綴じした本の一例を示す斜視図、図2は図1の2-2線に沿う本発明ステッチ回りの拡大断面図、図3は図2の3−3線に沿う平面図、図4〜図9は本発明ステッチを用いた綴じ工程を示す説明図、図10は図4〜図9に示す綴じ方法に基づいて作動する綴じ装置の概要を示す断面図である。
【0013】
本発明ステッチにより綴じた本は、図1に例示するように、普通紙などの多数の用紙10を重ね合わせて2つ折りした折り目11となる部分を本発明ステッチ20によって綴じ、一例として中綴じ本を形成する。
【0014】
本発明ステッチ20は、和紙を撚ることによって形成された紙縒り材を使用したが、撚り和紙のほかにファイバー紙や生分解性プラスチック等を線状部材に形成し、環境に対する負荷が用紙10と同レベルの線材により形成することもできる。
【0015】
紙縒り材やバルカナイズファーバー紙から形成したステッチ20は、普通紙と同様に焼却できる上に、有害物質が後に残らない。また、生分解性プラスチックによるステッチ20は、埋め立て処理すると、綴じている用紙10と一緒に地中バクテリアによって分解されるため、環境負荷が極めて低い。
【0016】
また、ステッチ20には、ファイバー紙、例えばバルカナイズファーバー紙から形成したものもある。一例として、北越製紙(株)製の厚さ0.35〜0.5mm程度のバルカナイズドファイバー紙などの植物系のパーチメント紙の表面に接着剤などの接着性材料を塗布又は含浸して乾燥させて硬化し、この用紙を0.2mm〜1.0mm程度の幅に裁断して形成したものがあり、これによって望ましい特性を備えた本発明ステッチを得ることができる。
【0017】
バルカナイズドファイバー紙は、紙をパーチメント紙化にするため塩化亜鉛溶液で処理したもので、加工性が良く、耐衝撃性、耐摩耗性および絶縁性に優れているなどの様々な性質を備えている。紙がこのような変化をする理由は全て解明されているわけではない。普通紙の場合には、紙を構成する繊維の間には水素結合が働き紙に強さを与えているが、塩化亜鉛溶液処理を行うことで、水素結合の数が増加しているものと推察される。
【0018】
このようなバルカナイズファイバー紙は研磨材の基材、電気絶縁材、アルミホイルの切り刃などに広く使用されており、また、特許文献1〜3などに記載されているように、ファイルの綴じ具としても使用されている。
【0019】
本発明ステッチ20は、その両側に正面視略冂状に形成される左右の挿込脚による用紙貫通部21,21(図4,図5参照)が、図2に示すように、複数枚の積層した用紙10の外面側(図の下側、本の背側)から内面側に向かって当該用紙10に穿孔されたステッチ挿通孔12を貫通し、用紙10の反対面(内面)において折り曲げてある。そして、貫通部21を互いに重ね合わせ、重ね合せ部を接合することにより、ステッチ20をリングに形成し複数枚の用紙10を綴じている。つまり、ステッチ20を綴じる用紙10の内面から突出させた貫通部21をそれに塗布又は含浸させた接着剤などの硬化接着成分を利用して接合し、綴じ強度乃至は製本強度を高めている。本発明で用いる硬化接着成分としては、天然材由来のニカワ,糊などが好ましいが、それ以外の例えば合成樹脂を用いることもできる。
【0020】
本発明ステッチ20では、バルカナイズファイバー紙などのファイバー紙に接着剤を塗布するか含浸させて乾燥させているから、用紙から突出しかつ折り曲げられた部分が重ね合わせた状態で接着できる。図2の実施例では、用紙10の反対面(本の背側)にある貫通部21をつなぐ接続部22も用紙10の背面に接着され、綴じ強度乃至は製本強度を更に高めている。
【0021】
図4〜図9は、以上に説明した本発明ステッチ20を使用して積層した用紙10に対する中綴じ製本工程の一例を模式的に示したものである。
【0022】
本発明ステッチを用いた製本は、一例として、図4に示すように、フラットな状態の紙製ステッチ20をステッチ受台40に載せ、垂直姿勢で平行な2本のステッチガイド体32a,32bを配置する。
【0023】
ステッチガイド体32a,32bは、ここではパイプ状の筒体で形成し、このステッチガイド体32a,32bの下端には、斜めにカットされた内向きエッジ状の穿孔刃33a,33bが形成されている。また、両ステッチガイド体32a,32bの対向壁面は、切り開いて下端の刃33a,33bにまで達する縦溝状の切り欠き34a,34bが形成されている。溝状切り欠き34a,34bの幅、つまり溝の幅は、使用する紙製ステッチ20の幅(太さ)よりも大きい。
【0024】
次に、ステッチガイド体32a,32bを下降させる。下降すると、紙製ステッチ20の両端部分は、ステッチガイド体32a,32bの穿孔刃33a,33bのエッジ部分によって下方へ向けて折り曲げられ左右の挿込脚が貫通部21,21として形成される。貫通部21,21は、ステッチガイド体32a,32bの溝状切り欠き34a,34bからそのガイド体32a,32bの内部に入り込み、当該ガイド体32a,32bにおける切り欠き34a,34bの奥に位置した壁面に押し付けられる。これによって紙製ステッチ20は下向きの左右の挿込脚を貫通部21,21として備えた下向きコ字状のステッチに形成される。このときに、ステッチ20は、図5に示すようにステッチ受台40に担持されているので、ステッチ20を容易に曲げることができる。
【0025】
このようにして紙製ステッチ20はその左右部分が折り曲げられて挿込脚に形成され、その挿込脚による貫通部21,21が形成されたあと、ステッチガイド体32a,32bが更に下降すると、ステッチガイド体32a,32bの下端部が用紙10に当接する。
【0026】
一方、用紙10は、ステッチガイド体32a,32bが下降する前に、予め丁合されて2つ折りしそれを見開いた状態で、2つ折りの折り目を紙製ステッチ20の接続部22の真下に位置付け、ステッチガイド体32a,32bの下方に配置される。
【0027】
上記の要領でステッチガイド体32a,32bが下降してくると、まず、ステッチガイド体32a,32bの穿孔刃33a,33bの先端が用紙10に到達する。この到達に同期して、ステッチ受台40が図の紙面の背面側に待避スライドし、穿孔刃33a,33bはそのまま下降して用紙10を穿孔する。図6に示すように、ステッチガイド体32a,32bは、下向きコ字状に折り曲げられた挿込脚による貫通部21,21を有する紙製ステッチ20の先端側、つまり貫通部21,21が用紙10に穿孔されたステッチ挿通孔12に嵌入する。ステッチ20が用紙10に嵌入すると、図7に示すように、ステッチガイド体32a,32bが上昇する。
【0028】
それから、ステッチ圧着体52a,52bが紙製ステッチ20の貫通部21,21を、図8に示すように互に内側に折り曲げる。このステッチ圧着体52a,52bは、用紙10の折り目11に沿い、且つ用紙10の下面に配置され、軸53a,53bを中心に回転可能に形成されている。ステッチガイド体32a,32bが上昇すると、これらのステッチ圧着体52a,52bが互に反対方向に回転し、圧着面54a,42bが用紙10に穿孔されたステッチ挿通孔12から突出する貫通部21,21を、図2に示すように、互いに重ね合わせて内側に折り曲げる。これによって、用紙10は、図9に示すようにして、横長リング状に成形されたステッチ20により綴じられる。
【0029】
本発明では、ステッチ20の貫通部21,21を折り曲げるときに、ステッチガイド体32a,32bや用紙10を担持する用紙受台等に組み込んだヒータによってステッチ20を加熱することがある。ステッチ20の含浸あるいは塗布された熱硬化性の接着剤は、これによって、ステッチ20全体あるいは貫通部21,21を用紙10に固着させて、強固にステッチ20による用紙10の綴じ込みを行なわせる。接着剤には、焼却等しても有害物質などが生じたり後に残ったりせず、用紙10と一緒に廃棄等の処理ができるものを使用する。
【0030】
図10は、以上に説明した本発明ステッチ20を使用して積層した用紙10を、一例として中綴じ本に製本するための綴じ装置の構成を既略図として例示している。
【0031】
図10において、一例としてブロック状に形成した30は昇降ヘッド、40は前記ヘッド30の下方に配置した紙製ステッチ受台、50はステッチ受台40の下方に配設した用紙10の受台をそれぞれ示している。
【0032】
昇降ヘッド30は昇降可能に綴じ装置の本体(図示せず)に保持され配置されている。この昇降ヘッド30におけるヘッド本体31には、穿孔刃33a,33bを先端に備えた紙製ステッチの2本のガイド体32a,32bが垂直姿勢の埋設態様で固定して設けられている。
【0033】
前記ガイド体32a,32bは、細いパイプ状の筒体で形成し、このガイド体32a,32bの下端には、斜めにカットされた内向きエッジ状の穿孔刃33a,33bが形成されている。また、両ガイド体32a,32bの対向壁面は、切り開いて下端の刃33a,33bにまで達する溝状の切り欠き34a,34bが形成されている。ここで、溝状切り欠き34a,34bの幅、つまり溝の幅は、使用する紙製ステッチ20の幅(太さ)よりも大きくなるようなパイプ状筒体を使用している。
【0034】
35は、上記の2本のガイド体32aと32bの間に配置されているブロック状のプッシャーで、このプッシャー35の上端はロッド36に結合され、ロッド36がヘッド本体31を貫通する態様で昇降ヘッド30の昇降とは独立して単独で昇降できるようにヘッド本体31に保持されている。また、ロッド36には、プッシャー35の上面とヘッド本体31の下面との間に、当該ロッド36に嵌挿したコイルばね37が配置されていることにより、プッシャー35を常時下方へ向けて付勢するようにしている。
【0035】
上記ガイド体32a,32bとプッシャー35の下方に位置付けたステッチ受台40は、空気圧シリンダー等によって、プッシャー35の真下において図10の紙面に対する前後方向、例えば後方に向けて待避可能に装置本体に装着されている。
【0036】
上記ステッチ受台40の下方に配設された用紙受台50は、紙製ステッチ20の受台40のほぼ真下において、装置本体の一部として配設されている。用紙受台50には挿込脚の曲げ機構が組み込まれている。このため、用紙受台50には、これに載置される用紙10の折り目に沿って延びるスリット51が設けられ、このスリット51の内部に紙製ステッチ20の圧着体52a,52bが用紙10の折り目11に沿って一列に配置されている。これらのステッチ圧着体52a,52bは、板状のもので、軸53a,53bを中心に回転するように用紙受台50に支持され、図10に実線で示すその圧着面54a,54bが略垂直になる待機位置と二点鎖線で示す略水平状態となる作動位置の2位置の間を回転する。回転は例えば電磁ソレノイドによって行われる。また、各ステッチ圧着体52a,52bの内部には、図示していないがヒータを組み込まれ、圧着面54a,54bをヒータによって加熱できるようになっている。
【0037】
図4〜図9を参照して、本発明綴じ装置の作動状態を説明する。まず、フラットな状態の紙製ステッチ20がステッチ受台40に載置される(図4も参照)。以下に述べる紙製ステッチ20には、生分解性プラスチックで形成したものを代替できる。
【0038】
次に、ロッド36と一体のプッシャー35をヘッド本体31ごと一緒に下降させ、このプッシャー35をステッチ受台40の上の紙製ステッチ20に当接させる。
【0039】
ヘッド本体31を更に降下させると、プッシャー35とそのロッド36は、その下降がステッチ受台40に阻止されるので、ヘッド本体31のみが更に下降させられる。プッシャー35とそのロッド36の位置がそのままで、ヘッド本体31のみが下降すると、紙製ステッチ20におけるプッシャー35とステッチ受台40とに挟まれていない両端部分が、ステッチガイド体32a,32bの穿孔刃33a,33bのエッジ部分によって下方へ向けて折り曲げられ左右の挿込脚が貫通部21,21として形成される(図5も参照)。
【0040】
昇降ヘッド30の上記のような下降に伴い形成される折り曲げられた挿込脚による貫通部21,21は、ステッチガイド体32a,32bの溝状切り欠き34a,34bからそのガイド体32a,32bの内部に入り込み、当該ガイド体32a,32bにおける切り欠き34a,34bの奥に位置した壁面に押し付けられる。これによって紙製ステッチ20は下向きの左右の挿込脚を貫通部21,21として備えた下向きコ字状のステッチに形成される(図5も参照)。
【0041】
このようにして紙製ステッチ20はその左右部分が折り曲げられて挿込脚に形成され、その挿込脚による貫通部21,21が形成されると、ヘッド本体31はステッチ受台40とともにさらに下降する。この下降によってステッチガイド体32a,32bの下端部が用紙10に当接すると、同時にステッチ受台40が図の紙面の背後側に逃げるが、プッシャー35とそのロッド35はそのままヘッド本体31と一緒に下降する。
【0042】
一方、受台50の上の用紙10は、ヘッド本体31が下降する前に、予め丁合されて2つ折りしそれを見開いた状態で、2つ折りの折り目11を紙製中綴じステッチ20の接続部22の真下に位置付け、ステッチ受台40の下方に配置された用紙受台50に折り目11が図の左右方向に沿うような向きで載置される。
【0043】
上記の要領で昇降ヘッド30が下降し、ステッチガイド体32a,32bの穿孔刃33a,33bの先端が用紙10に到達すると、この到達に同期してステッチ受台40が図の紙面の背面側に待避スライドしているので、前記穿孔刃33a,33bはそのまま下降して用紙10を穿孔しつつ用紙受台50にあるスリット51に入り込む(図6も参照)。これによって下向きコ字状に折り曲げられた挿込脚による貫通部21,21を有する紙製ステッチ20の先端側、つまり貫通部21,21が用紙10に穿孔されたステッチ挿通孔12に嵌入する。昇降ヘッド30がストロークエンドまで下降すると、紙製ステッチ20の接続部22が用紙10に圧着される(図7も参照)。
【0044】
上記圧着のあと、ステッチガイド体32a,32bは上方に元の位置に戻り、ステッチ圧着体52a,52bが回転し、圧着面54a,54bが紙製ステッチ20の貫通部21,21を互に内側に折り曲げる(図8を参照)。同時に、加熱された圧着面54a,54bがステッチ20に塗布又は含浸された接着剤を硬化させ、ステッチ20全体を用紙10に接着し、用紙10をステッチ20によって綴じる(図9を参照)。用紙受台50における用紙10の折り目11に対応する部位やステッチ20に対応する部位が発熱するように、用紙受台50にヒータを組み込んでも、ステッチ20を用紙10に接着することができる。なお、接着剤には、前述のように、焼却等しても有害物質などが生じたり後に残ったりせず、用紙10と一緒に廃棄等の処理をすることができるものを使用する。
【0045】
本発明綴じ装置は、このように、紙製ステッチ20を用紙10に差し込むとき、ガイド体32a,32bのエッジ状の穿孔刃33a,33bが先行して用紙10にステッチ挿通孔12を穿孔し、それから紙製ステッチ20の貫通部21,21が穿孔した孔に挿込まれるので、紙製ステッチ20をスムーズに、かつ確実に用紙10に通すことができ、しかも、ステッチ20を用紙10に接着することで用紙を綴じているので、用紙10を強固に綴じることができる。
【0046】
以上説明した実施例において、紙製ステッチ20には紙縒体やバルカナイト・ファイバー紙により形成したものであるが、他の植物系パーチメント紙などのファイバー紙により形成してもよい。
【0047】
なお、製本に際して、紙製ステッチ20を中綴じ本の背から差し込んでいるが、用紙10の折り目11となる用紙内面からこのステッチ20を本の背に向かって通した後、貫通部21,21を折り曲げるようにしてもよい。
【0048】
また、紙製ステッチ20は、用紙10を綴じたときに、貫通部21,21が重なり合い、且つ互いに接合されたリング状となっているが、通常の針金製ステッチと同様に貫通部21,21における用紙10から抜け出た端部を離間させた状態で用紙10に接着した構成としてもよい。
【0049】
更に、綴じ装置において、紙製ステッチ20の貫通部21の折り曲げは、ステッチ圧着体52a,52bの回転により行なっているが、紙製ステッチ20が用紙10に嵌入された後、紙製ステッチ20を嵌入させたまま用紙10をその受台50から下ろし、工具等を使って紙製ステッチ20の貫通部21,21を曲げ、折り曲げた貫通部21,21を互いに接着させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は以上の通りであって、従来は金属製の針金状であった綴じ針を、一例として熱により接着性を発揮する硬化材料を塗布又は含浸させて乾燥させた紙を主体とする線材をステッチとして所要長さに形成した非金属製針(ステッチ)にしたので、この綴じ針により綴じた本は、綴じ針を付けた姿のまま分別することなく再生用に回したり、廃棄したりすることができ、従って、用済み後の平綴じ本や中綴じ本の取扱い上至って便利である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明ステッチにより中綴じした本の一例を示す斜視図。
【図2】図1の2−2線に沿う本発明ステッチ回りの拡大断面図。
【図3】図2の3−3線に沿う平面図。
【図4】本発明ステッチを用いた綴じ工程の第一工程を示す説明図。
【図5】本発明ステッチを用いた綴じ工程の第二工程を示す説明図。
【図6】本発明ステッチを用いた綴じ工程の第三工程を示す説明図。
【図7】本発明ステッチを用いた綴じ工程の第四工程を示す説明図。
【図8】本発明ステッチを用いた綴じ工程の第五工程を示す説明図。
【図9】本発明ステッチを用いた綴じ工程の第六工程を示す説明図。
【図10】図4〜図9に示す綴じ方法に基づいて作動する綴じ装置の概要を示す断面図。
【符号の説明】
【0052】
10 用紙
11 用紙の折り目
12 用紙のステッチ挿通孔
20 ステッチ
21 ステッチの貫通部
22 ステッチの接続部
30 昇降ヘッド
31 ヘッド本体
32a,32b ステッチガイド体
33a,33b 穿孔刃
34a,34b 溝状切り欠き
35 プッシャー
36 ロッド
37 コイルばね
40 ステッチ受台
50 用紙受台
51 スリット
52a,52b ステッチ圧着体
53a,53b ステッチ圧着体の回転軸
54a,54b 圧着面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤などの硬化接着成分の塗布又は含浸などにより硬質化された紙製などの非金属製線材を略コ字状に曲げて一対の挿込脚を形成し、該挿込脚を針状のガイド体に支持させて複数枚の綴じたい用紙に貫通させ、貫通したその挿込脚を折り曲げて接着剤により前記用紙に接合させるようにしたことを特徴とする非金属製ステッチ。
【請求項2】
紙製線材はバルカナイズドファイバー紙で形成した請求項1に記載のステッチ。
【請求項3】
紙製線材は厚さ0.2mm〜1.0mmのバルカナイズドファイバー紙を幅0.2mm〜1.0mmに裁断して形成した請求項2に記載のステッチ。
【請求項4】
紙製線材は和紙を撚って形成した請求項1に記載のステッチ。
【請求項5】
線材は生分解性プラスチックで形成した請求項1に記載のステッチ。
【請求項6】
硬質化された紙製などの非金属製線材を略コ字状に曲げて形成した一対の挿込脚を文字や図などを印刷した所要枚数の綴じたい用紙に通して折り曲げ、その折り曲げ部を前記用紙に固定したことを特徴とする非金属製ステッチにより綴じられた本。
【請求項7】
用紙が開いた状態で丁合され、前記ステッチがこれらの用紙の中折りの折り目を綴じた請求項6に記載の本。
【請求項8】
ステッチは、その挿込脚を互いに重ね合わせて折り曲げ、互いに接着してリング状に形成した請求項6又は請求項7に記載の本。
【請求項9】
ステッチは、バルカナイズファイバー紙又は生分解プラスチックからなる線材若しくは和紙を撚った紙縒り材によって形成した請求項6乃至請求項8のいずれかの請求項に記載の本。
【請求項10】
接着剤の塗布又は含浸などにより硬質化された紙製などの非金属製線材の両端部を折り曲げ下向き略コ字状に挿込脚を形成した非金属製ステッチを、その挿込脚を針状のガイド体に支持させそのガイド体によって用紙に形成されるステッチ挿通孔に前記ガイド体と一緒に通してから当該ガイド体を抜き、前記用紙から突出した挿込脚部分を互いに内側に折り曲げ、接着剤によって用紙に固着することを特徴とする用紙の綴じ方法。
【請求項11】
ステッチは、バルカナイズファイバー紙又は生分解プラスチックからなる線材、若しくは和紙を撚った紙縒り材によって形成された請求項10に記載の綴じ方法。
【請求項12】
紙製などの非金属製ステッチを水平姿勢で保持するステッチ受台と、前記ステッチで綴じられる用紙を支持する用紙受台と、前記ステッチ受台と用紙受台に対し上下動する昇降ヘッドとを備え、前記昇降ヘッドは、ステッチ受台に向かって移動したとき前記ステッチ受台上のステッチの両側部を曲げて挿込脚を形成すると共に用紙受台上の用紙にステッチ挿通孔を穿孔するため当該昇降ヘッドに固定された先端に穿孔刃を有する平行な2本のステッチガイド体と、この昇降ヘッドがステッチ受台に移動したときステッチをステッチ受台上に押付けると共に当該ステッチの挿込脚をステッチ挿通孔に押込むため前記ステッチガイド体の間に位置して当該昇降ヘッドにスライド可能に設けられたプッシャーとを備え、前記用紙受台の下面側に挿込まれた前記ステッチの挿込脚を用紙側に折り曲げる挿込脚の曲げ機構を備えており、前記挿込脚がステッチ挿通孔に押込まれるとき前記ステッチ受台を待避させるようにしたことを特徴とする用紙の綴じ装置。
【請求項13】
ステッチ受台と用紙受台と昇降ヘッドを垂直線上に沿って一列に配置し、昇降ヘッドが用紙受台に向かって移動するとき、ステッチ受台を待避させるようにした請求項12に記載の綴じ装置。
【請求項14】
挿込脚の曲げ機構が、用紙に向かって回転し、2本の挿込脚を折り曲げるため用紙受台の下面側に組み込まれた一対のステッチ圧着体を有する請求項12又は請求項13に記載の綴じ装置。
【請求項15】
用紙受台はステッチに塗布又は含浸された熱硬化性接着剤を硬化させるヒータを組み込んだ請求項12乃至請求項14の何れかの請求項に記載の綴じ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate