説明

用紙加湿装置、用紙後処理装置及び画像形成システム

【課題】長期間使用時に、加湿ローラが劣化して、加湿むらによる用紙のうねりが発生するのを防止する。
【解決手段】加湿ローラを構成するゴムの硬度を加湿ローラに水を供給する給水ローラを構成するゴムの硬度よりも高くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙加湿装置、該用紙加湿装置を有する用紙後処理装置及び前記用紙加湿装置を有する画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、トナー像を加熱により用紙に定着するが、定着において加熱処理された用紙からは水分が蒸発するために、用紙の水分含有率の分布に不均一が生じて、波打ちと称される用紙の屈曲が発生する。
【0003】
このような波打ちを防止するために、画像が形成された用紙に水分を付与する用紙加湿技術が開発されている。このような用紙加湿では、用紙を加湿する場合に用紙全面に均一な加湿を行うことが必要であり、特許文献1〜3では均一な加湿を行う発明が提案されている。
【0004】
特許文献1では、一対の加湿ローラで用紙の挟持搬送する際に加湿ローラ表面に水を供給して用紙を加湿し、加湿ローラに水を供給する給水手段中に水の供給量を規制する規制手段を設けることが提案されている。
【0005】
特許文献2では、一対の加湿ローラで用紙の挟持搬送する際に加湿ローラ表面に水を供給して用紙を加湿し、加湿ローラに水を供給するローラの表面の水層を光学的に検知し、検知結果に基づいて、水の供給を制御することにより、均一な加湿を行うことが提案されている。
【0006】
特許文献3では、一対の加湿ローラで用紙の挟持搬送する際に加湿ローラ表面に水を供給して用紙を加湿する用紙加湿装置において、加湿ローラの表面を繊維面とすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−8282号公報
【特許文献2】米国特許第5832359号公報
【特許文献3】米国特許第5895154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
用紙加湿装置が長期間使用されたときに、加湿ローラ表面の劣化等により、均一な加湿が行われなくなるという問題がある。特許文献1〜3はそれぞれ用紙全面を均一に加湿する発明を開示している。しかしながら、特許文献1〜3では、長期間の稼働により均一な加湿ができなくなるという問題に関しては考慮されていない。
【0009】
本発明は、用紙加湿装置の耐久性の問題を解決し、長期間に亘り用紙全面を均一に加湿することができる用紙加湿装置、用紙後処理装置及び画像形成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的は下記の発明により達成される。
【0011】
1.ゴムからなる第1表面層を有し、用紙を挟持し搬送する一対の加湿ローラと、
ゴムからなる第2表面層を有し、該一対の加湿ローラのそれぞれに接触し、前記一対の加湿ローラのそれぞれに水を供給する給水ローラと、を有する用紙加湿装置において、
前記第1表面層は、前記第2表面層よりも高い硬度を有することを特徴とする用紙加湿装置。
【0012】
2.前記一対の加湿ローラ間の圧接と圧接解除、及び前記一対の加湿ローラのそれぞれと前記給水ローラとの間の圧接と圧接解除を制御する制御部を有し、該制御部は、用紙間の間隔が所定値以上長いとき、停止時又はアイドリング時に、前記一対の加湿ローラ間の圧接解除、及び前記一対の加湿ローラのそれぞれと前記給水ローラとの間の圧接解除を行うことを特徴とする前記1に記載の用紙加湿装置。
【0013】
3.前記第1表面層と前記第2表面層とは、同一種類の可塑剤を含有することを特徴とする前記1又は前記2に記載の用紙加湿装置。
【0014】
4.前記1〜3のいずれか1項に記載の用紙加湿装置を有することを特徴とする用紙後処理装置。
【0015】
5.前記1〜3のいずれか1項に記載の用紙加湿装置を有することを特徴とする画像形成システム。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、用紙を加湿する加湿ローラを構成するゴムの硬度を該加湿ローラに水を供給する給水ローラを構成するゴムの硬度よりも高くしている。
【0017】
これにより、長期間の使用による加湿ローラの直径の減少が抑制されて、長期間稼働時に発生する加湿ムラによる用紙のうねりが防止されて耐久性の高い用紙加湿装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成システムの全体図である。
【図2】本発明の実施の形態における用紙後処理装置の全体図である。
【図3】用紙加湿装置の構成を示す図である。
【図4】水船の斜視図である。
【図5】加湿時の加湿ローラ122、123を図3の下方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、実施の形態により本発明を説明するが、本発明は該実施の形態に限られない。
【0020】
[画像形成システム]
図1は本発明の実施の形態に係る画像形成システムの全体図であり、該画像形成システムは画像形成装置A、及び用紙後処理装置B、FSから構成される。
【0021】
画像形成装置Aは、自動原稿搬送装置1及び画像読取部2を上部に有し、下部がプリンタ部で構成される。
【0022】
プリンタ部において、3は用紙Sを収納する用紙収納部である。感光体4に対して、帯電、露光及び現像を行う電子写真プロセスにより、感光体4上にトナー像を形成するプリンタエンジン5において、用紙Sに画像が形成され、形成された画像は定着装置6において定着される。定着装置6は熱源6aが内蔵された加熱ローラ6bと加圧ローラ6cで用紙Sを搬送するニップ部を形成し、用紙Sを搬送しつつ加熱・加圧してトナーを溶融し、画像を用紙Sに定着する。
【0023】
用紙Sは用紙収納部3から第1給紙手段3aにより給送され、第2給紙手段3bにおいて一時停止した後に給紙されて画像形成が行われ、画像形成された用紙Sは、排紙ローラ8により排紙口から排出される。
【0024】
用紙Sの搬送経路としては、用紙収納部3からプリンタエンジン5までの給紙路7、プリンタエンジン5から定着装置6、排紙ローラ8を経て排紙口に至る搬送路9a及び反転搬送を行う裏面用搬送路9bが設けられる。
【0025】
画像形成モードとしては、片面フェースダウン排紙モード、片面フェースアップ排紙モード及び両面モードがある。片面フェースダウン排紙モードでは、片面に画像が形成され、定着装置6を通過した用紙Sは、反転処理により表裏反転した後に、排紙ローラ8で搬送されて排出される。
【0026】
片面フェースアップ排紙モードでは、片面に画像形成され、搬送路9aを搬送された用紙Sは、そのまま排紙ローラ8により搬送され排出される。
【0027】
両面モードにおいては、片面に画像形成され、定着装置6を通過した用紙Sは、下方に走行して裏面用搬送路9bに進行し、表裏反転した後に、給紙路7に再給紙される。
【0028】
再給紙された用紙Sの裏面にプリンタエンジン5において裏面画像が形成され、裏面画像形成された用紙Sは定着装置6を通過し、排紙ローラ8により搬送されて排出される。
【0029】
10は制御部であり、画像形成装置Aにおける画像形成の制御及び画像形成システム全体の制御を行う。画像形成装置Aにおける各種のモード及び用紙後処理装置FSを用いた出力モードの設定を操作部10における操作で設定することができる。
【0030】
画像形成装置Aに配置された制御手段C1は、通信手段C4を介して用紙後処理装置Bの制御手段C2、及び用紙後処理装置FSの制御手段C3に接続されている。
【0031】
制御手段C1は画像形成装置Aにおける画像形成工程の制御及び画像形成システム全体の制御を行う。制御手段C2は用紙後処理装置Bの制御を行い、制御手段C3は用紙後処理装置FSの制御を行う。制御手段C2、C3は制御手段C1からの命令や情報に基づいて作動して各種の制御を行い、用紙後処理装置B、FSの状態を制御手段C1に報告する。制御手段C1と、制御手段C2と、制御手段C3とにより構成される制御部が画像形成システム全体を制御する。
【0032】
画像形成装置Aから排出された用紙Sは、用紙後処理装置Bを経て用紙後処理装置FSに搬送される。
【0033】
用紙後処理装置Bは、画像形成装置Aから排出された用紙Sを受け入れ搬送する第1搬入搬送部100、用紙Sに水を付与する用紙加湿装置120、画像形成装置Aから排出された用紙Sを受け入れ搬送する第2搬入搬送部150、第1デカール部160、第2デカール部170,第3デカール部180及び用紙Sを排出し、用紙後処理装置FSへと受け渡す排紙搬送部200を有する。
【0034】
用紙後処理装置FSは、画像形成装置Aから排出される用紙Sに対して各種の後処理装置を行うものある。図示の例は糊付け製本機であるが、穿孔折り機、平綴じ機、中綴じ機、断裁機等を備えることも可能である。
【0035】
糊付け製本機は、用紙導入手段21、排紙手段22、用紙束収納手段23、用紙束搬送手段24、糊塗布手段25、表紙供給手段26、表紙断裁手段27、表紙外装手段(くるみ製本手段)28、整合手段29を備えている。
【0036】
用紙導入手段21に導入された用紙Sは、用紙束収納手段23上に載置された後、斜め下方に逐次搬送され、用紙束搬送手段24の把持手段241によって把持される。把持手段241は、用紙束Saを把持したまま用紙束Saに糊塗布処理をする面(背部)を下側になるように旋回して所定位置に停止する。糊塗布手段25は、用紙束Saの背部に糊を塗布する。
【0037】
表紙供給手段26に収納された表紙Kは、表紙断裁手段27を経由して表紙外装手段28に搬送された後、表紙Kの後端部が表紙断裁手段27によって所定長に断裁される。表紙Kの断裁長は、用紙Sの進行方向の2枚分の長さに用紙束Saの背部の厚さを加えた長さである。
【0038】
表紙外装手段28は、表紙供給手段26から供給された表紙Kを受容して搬送し、所定位置に停止させた後、整合手段29により幅方向の位置決めを行う。表紙Kは表紙外装手段28により用紙束Saの糊塗布面Nに圧接して接着される。
【0039】
用紙束Saの背部に対向する加圧部材の下降と、表紙外装手段28の上部に配置された左右対称な一対の折曲部材の移動とにより、表紙Kは用紙束Saの糊塗布面Nの側縁に沿って折り曲げられ、用紙束Saの表裏面に表紙Kを装着した用紙束Saが形成される。
【0040】
表紙Kの折り曲げ工程の終了後、表紙外装手段28が下降して待避した後、整合手段29の退避とともに表紙Kの幅方向外側に退避していた排出ベルト30が用紙束Saの下方の幅方向内側まで移動して停止する。その後、把持手段241による挟持が解除されると、用紙束Saは下降し、用紙束Saの下方の背部が排出ベルト30の上面に当接する位置に停止する。回動する排出ベルト30は、用紙束Saに表紙Kを貼着してくるみ製本処理された冊子を装置外に排出する。
【0041】
[用紙後処理装置B]
図2は、本発明の実施の形態に係る用紙後処理装置Bの全体図である。
【0042】
第1搬入搬送部100は搬送路R1を、用紙加湿装置120は搬送路R2を、第2搬入搬送部150は搬送路R3を、第1〜第3デカール部160、170、180は搬送路R4を、排紙搬送部200は搬送路R5をそれぞれ有する。
【0043】
搬送路R1〜R5は図示のように、複数のガイド部材により形成される。
【0044】
搬送路R1の一部は第1搬入搬送部100、第2搬入搬送部150に共有される。
【0045】
用紙後処理装置Bに搬入された用紙Sは切替ゲートGの切替作用により、第1搬入搬送部100から第2搬入搬送部150を経て、第1デカール部160に搬送され、第2デカール部170、第3デカール部180及び排紙搬送部200を経て排出されるか又は第1搬入搬送部100から用紙加湿装置120に搬送され、用紙加湿装置120から、第2搬入搬送部150、第1〜第3デカール部160、170、180及び排紙搬送部200を経て排出される。
【0046】
第1搬入搬送部100においては、搬送ローラ101〜105により用紙Sが搬送されて用紙加湿装置120に搬送される。
【0047】
用紙加湿装置120においては、加湿ローラ122、123及び搬送ローラ142により用紙Sが搬送される。
【0048】
第2搬入搬送部150においては、搬送ローラ101,102、151及び152により用紙Sが搬送される。
【0049】
排紙搬送部200においては、搬送ローラ201〜204により用紙Sが搬送され、排出される。
【0050】
次に、用紙後処理装置Bの各処理部について説明する。
<用紙加湿装置>
図3、4により用紙加湿装置120の構造及び作用を説明する。図3は用紙加湿装置の正面断面図、図4は用紙加湿装置の斜視図である。
【0051】
用紙を加湿する水Wを収容する水船121は、搬送される用紙Sの最大幅(搬送方向に直角な方向の用紙長さ)よりも若干長い、水槽121Aを形成する。
【0052】
水船121には、左右に並んだ給水皿121B1、121B2が形成される。
【0053】
給水皿121B1、121B2は水船121により形成される水槽121Aより高い位置で水を収容する部屋を形成する。
【0054】
給水皿121B1、121B2に収容されている水はオーバーフローして水槽121Aに落下する。
【0055】
水船121の中央部には用紙Sが通過する間隙121Eが形成される。
【0056】
図4に示すように、給水皿121B1、121B2及び間隙121Eを形成する用紙通過部は、水槽121A中に島状に形成される。
【0057】
2個の給水皿121B1、121B2はそれぞれ、給水ローラ124、125の円筒形外周面に対応した円弧状の内周面を有する。
【0058】
給水皿121B1、121B2は後に説明するように、給水管131から水Wが供給され、排水溝121D1、121D2からのオーバーフローにより常に一定の水位WSが保持される。
【0059】
給水皿121B1、121B2の上方には、給紙皿121Bの内周面と所定の間隔を隔てて配置された給水ローラ124、125が配置され、給水ローラ124、125の下部は給水皿121B1、121B2に収容されている水に浸漬する。
【0060】
給水ローラ124、125は金属の軸芯1241、1251にゴムからなる第2表面層1242、1252を形成したゴムローラからなり、給水ローラ124は矢印D1のように回転し、給水ローラ125は矢印D2のように回転する。
【0061】
給水ローラ124に接触するように加湿ローラ122が、給水ローラ125に接触する加湿ローラ123がそれぞれ配置され、加湿ローラ122と加湿ローラ123とは接触する。
【0062】
加湿ローラ122、123はそれぞれ金属の軸芯1221、1231にゴムからなる第1表面層1222、1232を形成したゴムローラからなる。加湿ローラ122は矢印D3のように回転し、加湿ローラ123は矢印D4のように回転して、図示のように用紙Sを上方に挟持搬送する。
【0063】
加湿ローラ122又は123のいずれかが駆動源(図示せず)により回転駆動されて駆動ローラとして回転し、他の加湿ローラ及び給水ローラ124、125は駆動ローラに従動して回転する。
【0064】
126は給水ローラ124に接触する規制部材、127は給水ローラ125に接触する規制部材である。
【0065】
規制部材126、127は金属の円筒体からなり、給水ローラ124、125に従動して回転する。規制部材126が給水ローラ124を、規制部材127が給水ローラ125をそれぞれ押圧するように、規制部材126、127はバネ134、135で付勢されている。このような構成により、加湿ローラ122と加湿ローラ123とは、これらローラを構成するゴムの弾性と規制部材126、127を付勢するバネ134、135の弾性とにより互いに圧接し、ニップを形成して通過する用紙Sを挟持搬送しつつ用紙Sに水Wを付与して加湿を行う。
【0066】
130は貯水槽、131は給水管、132は排水管、133はフィルタである。
【0067】
水Wは貯水槽130からポンプ(図示せず)により給水管131を経て水船121の給水皿121B1、121B2に供給され、排水管132を経て水船121から貯水槽130に還流する。
【0068】
121C1〜121C4は給水口であり、給水管131を経て給水口121C1〜121C4から供給された水Wは矢印D51〜D54のように流れて排水溝121D1、121D2から流出する。
【0069】
用紙に水Wを付与する過程で水Wに混入した紙粉等の異物はフィルタ133により濾過され、水Wは貯水槽130と水船121との間で循環する。
【0070】
用紙Sへの水の付与は次のようにして行われる。
【0071】
用紙Sは搬送ローラ105により用紙加湿装置120に搬入され、間隙121Eを通過し加湿ローラ122、123により搬送される。
【0072】
加湿ローラ122、123の外周面には、水Wの層が形成されており、用紙Sには搬送の過程で連続的に水Wが付与される。
【0073】
給水ローラ124、125の外周面には均一な水Wの層が形成されるが、規制部材126、127により更に均一化される。
【0074】
用紙の水Wを付与する過程で、用紙Sから紙粉等の異物が加湿ローラ122、123に付着し、更に水Wに混入するが、水Wに混入した異物はフィルタ133により濾過される。
【0075】
次に、用紙加湿装置120が長期間稼働した場合の問題及び該問題に対する対策について説明する。
【0076】
加湿ローラ122、123としては、前記のように金属の軸芯1221、1231上にゴムからなる第1表面層1222、1232を形成したゴムローラが用いられる。
【0077】
ゴムローラは、用紙に対して全面に均一加湿を行う点で望ましい。
【0078】
加湿ローラとして金属ローラなど親水性の表面を有するハードローラを用いた場合、用紙を線でニップするために、加湿ローラが用紙に接触しない可能性があり、均一な加湿が行われない場合がある。
【0079】
また、加湿ローラ122、123に水を供給する給水ローラ124、125としては、金属の軸芯1241、1251上にゴムからなる第2表面層1242、1252を形成したゴムローラが用いられる。
【0080】
加湿ローラ122、123としてのゴムローラは長期間の使用により、その直径が小さくなるが、このような直径の減少のメカニズムを探求した結果、直径の減少は主としてゴムに含有されている可塑剤が抜け出ることによることが判明した。
【0081】
ところで、可塑剤は柔らかいゴム、即ち、硬度が低いゴムほど多量に含有される。したがって、硬度が低いゴムで形成されたゴムローラほど直径の減少速度が速い。
【0082】
用紙加湿装置120で、例えば、A4サイズのように定形サイズの用紙を通紙する。長期間の通紙により、加湿ローラ122、123の第1表面層1222、1232を構成するゴムは、用紙との摩擦による摩耗とともに、可塑剤の抜けだしにより変質・変形し、結果としてゴムローラの直径が減少する。用紙が通過する通紙領域においては、直径の減少速度が特に速い。その結果、通紙領域と、その外側にある非通紙領域との間に段差が形成される。前記のように、硬度が低いゴムは多量の可塑剤を含有するので、硬度の低いゴムで形成された加湿ローラでは通紙領域と非通紙領域との間に大きな段差が形成される。
【0083】
通紙領域と非通紙領域との間に形成される段差の用紙の加湿性能に対する影響を図5により説明する。図5は、加湿時の加湿ローラ122、123を図3の下方から見た図である。
【0084】
加湿ローラ122と加湿ローラ123とが接触するニップを中心として、斜線で示す水の滞留部が形成される。長期間作動により加湿ローラ122、123の直径が減少したときに、W1、W2で示すように、通紙領域と非通紙領域との境界線L1、L2を中心とする領域において滞留量が他領域よりも大きくなる。
【0085】
その結果、用紙の端部において、他の部分よりも多量の水が用紙に供給されることになり、用紙端部における加湿度が相対的に高くなる。これにより、用紙にうねりができる等の不具合が発生する場合がある。
【0086】
このように、加湿ローラ122、123の端部に段差が形成されることは避けなければならない。
【0087】
一方、加湿ローラ122と給水ローラ124との関係及び加湿ローラ123と給水ローラ125との関係に注目したとき、加湿ローラ122、123の表面に均一な水の層を形成するには、加湿ローラ122と給水ローラ124とで形成するニップ幅及び加湿ローラ123と給水ローラ125とで形成するニップ幅は所定の値以上であることが必要である。
【0088】
これらのニップ幅は、接触するゴムの硬度とゴムローラを圧接させる力とにより確保されるが、通常のバネを用いた場合、ゴムの硬度がニップ幅を決定する要因となる。即ち、加湿ローラ122、123を構成するゴムの硬度と給水ローラ124、125を構成するゴムの硬度とが前記ニップの幅を決定する。したがって、加湿ローラ122、123の表面に均一な水の層を形成するには、加湿ローラ122、123の第1表面層1222、1232を構成するゴム及び給水ローラ124、125の第2表面層1242、1252を構成するゴムの少なくともいずれか一方に硬度の低いものを使用する必要がある。
【0089】
前記に説明した条件、即ち、加湿ローラ122、123の端部に段差が形成されることを避けるという条件と、加湿ローラ122、123を構成するゴム及び給水ローラ124、125を構成するゴムの少なくともいずれか一方に硬度の低いものを使用する必要があるという条件を満足させるために本発明においては、加湿ローラ122、123の第1表面層1222、1232を構成するゴムの硬度を、給水ローラ124、125の第2表面層1242、1252を構成するゴムの硬度よりも高くした。
【0090】
これにより、前記の2条件が満足され、加湿ローラ122、123の表面に均一な水の層を形成し、且つ、長期間作動しても、加湿ローラ122、123の端部に加湿性能に影響を及ぼすような段差が形成されるのを防止することに成功した。
【0091】
また、可塑剤の含有量が低く硬度が高いゴムを有するゴムローラと、可塑剤の含有量が高く硬度が低いゴムを有するゴムローラとを接触させて長期間回転させた場合、ゴム中の可塑剤が、低硬度のゴムから高硬度のゴムに移動することが解明された。このように、可塑剤がローラ間を移動する場合、一方のローラに含有される可塑剤と他方のローラに含有される可塑剤とが異なると、移動先のゴムが変質してしまう。これを防止するために、両ゴムローラに同一種類の可塑剤を含有させることが望ましい。
【0092】
即ち、加湿ローラ122、123の第1表面層1222、1232に含有される可塑剤と、給水ローラ124、125の第2表面層1242、1252に含有される可塑剤として同一種類のものを用いることが望ましい。
【0093】
加湿ローラ122と加湿ローラ123との圧接、加湿ローラ122と給水ローラ124との圧接及び加湿ローラ123と給水ローラ125との圧接は、規制部材126、127に対するバネ134、135の押圧を解除することにより解除される。圧接解除により、ゴムローラの変形、ゴムの変質等が防止される。
【0094】
制御手段C2は制御手段C1からの情報に基づいて、加湿処理の実行時に、バネ134、135を支持する支持部材136、137を移動させて、用紙加湿装置120を図3に示す状態に設定する。即ち、一対の加湿ローラ122、123間の圧接、加湿ローラ122と給水ローラ124との間の圧接及び加湿ローラ123と給水ローラ125間の圧接を行う。御手段C2は、また、制御手段C1からの情報に基づいて、用紙間の間隔が所定値以上長いとき、用紙後処理装置Bの停止時又は用紙後処理装置Bのアイドリング時に、支持部材136、137を移動させて、一対の加湿ローラ122、123間の圧接解除、加湿ローラ122と給水ローラ124との間の圧接解除及び加湿ローラ123と給水ローラ125間の圧接解除を行う。
【実施例】
【0095】
図3に示す用紙加湿装置を用いて、表1に示す加湿ローラ及び給水ローラを用いて、A4サイズ縦(短辺を搬送方向とする)の用紙を1000k(1000×1000)枚通紙し加湿を行う通紙試験を行った。
・加湿ローラ:
第1表面層:ニトリルゴム(NBR)
・給水ローラ:
第2表面層:ニトリルゴム(NBR)
【0096】
【表1】

【0097】
表1に示すように、実施例では用紙のうねりがなく良好な加湿が行われたが、比較例では600k枚通紙した段階で用紙のうねりが発生した。なお、表1における加湿ローラのゴム硬度及び給水ローラのゴム硬度はJIS Aによる測定値である。
【符号の説明】
【0098】
120 用紙加湿装置
121 水船
121B1、121B2 給水皿
122、123 加湿ローラ
124 125 給水ローラ
C1、C2、C3 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムからなる第1表面層を有し、用紙を挟持し搬送する一対の加湿ローラと、
ゴムからなる第2表面層を有し、該一対の加湿ローラのそれぞれに接触し、前記一対の加湿ローラのそれぞれに水を供給する給水ローラと、を有する用紙加湿装置において、
前記第1表面層は、前記第2表面層よりも高い硬度を有することを特徴とする用紙加湿装置。
【請求項2】
前記一対の加湿ローラ間の圧接と圧接解除、及び前記一対の加湿ローラのそれぞれと前記給水ローラとの間の圧接と圧接解除を制御する制御部を有し、該制御部は、用紙間の間隔が所定値以上長いとき、停止時又はアイドリング時に、前記一対の加湿ローラ間の圧接解除、及び前記一対の加湿ローラのそれぞれと前記給水ローラとの間の圧接解除を行うことを特徴とする請求項1に記載の用紙加湿装置。
【請求項3】
前記第1表面層と前記第2表面層とは、同一種類の可塑剤を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の用紙加湿装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の用紙加湿装置を有することを特徴とする用紙後処理装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の用紙加湿装置を有することを特徴とする画像形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−27955(P2011−27955A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172884(P2009−172884)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】