説明

用紙搬送装置及び用紙後処理装置

【課題】 DCブラシモータ等のオーバーランの大きいモータを駆動源とする冊子押し出し動作について、用紙の押し出し量のばらつきを低減する。
【解決手段】 複数枚の用紙から成る冊子を積載するスタッカ61と、スタッカ61に積載された冊子の端縁を押圧する移動可能な冊子押し出し部材76と、冊子押し出し部材76を往復動させる駆動手段と、駆動手段の駆動を制御する制御手段と、冊子押し出し部材の可動域の一方の端部に配置され冊子押し出し部材の初期位置を検出するホームポジション検知センサと、を有し、制御手段は、冊子押し出し部材を初期位置に復帰させる際、冊子押し出し部材を一旦、初期位置とは逆方向の可動域の他方の端部の方向に所定時間だけ移動させた後、駆動を反転させて初期位置への駆動を開始し、ホームポジション検知センサが冊子押し出し部材を検知した時点で駆動を停止させるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙搬送装置及び該用紙搬送装置を備えた用紙後処理装置に関し、特に、中折り処理された折丁を鞍掛集積手段に搬送して中綴じ処理して排出する用紙後処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機等の画像形成装置本体に、画像記録後の用紙を折り処理、或いは、綴じ処理する機能を有する後処理装置を装着可能とする用紙後処理装置が開発されている。
【0003】
特許文献1に記載の製本機能を備えた用紙後処理装置(折丁仕上げ装置)は、複写終了後の用紙を1枚ずつ中央部で中折りする折り手段と、この中折りされた用紙を折り目が上向きになるよう山形状にして頁順にスタックする支持部材(サドル形集積機)と、この支持部材に支持された用紙束の折り目部を綴着する綴じ手段とを具有するものである。綴じ手段により綴じ処理されて作製された冊子は、用紙搬送装置によって搬送されて次工程に送り出される。
【特許文献1】特開平7−179262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のような構成の用紙搬送装置を備えた用紙後処理装置においては、綴じ処理されて作製された冊子を、冊子押し出し部材によって押し出して次工程に送り出す際の冊子移動中に、駆動手段の電源が切られた場合、次回の電源投入時に、初期化動作として、冊子押し出し部材のホームポジション(以下、HPと称す)サーチ処理を行う。
【0005】
この時、冊子押し出し部材はHPからどれだけの距離の所に停止しているのか判らないので、とりあえずHP方向に移動を開始させて、HP検知センサが冊子押し出し部材を検出するのを待ち、検出したところでモータに停止指示を出す用にしている。
【0006】
このとき、HPサーチ開始する位置によっては、モータが加速している最中に、HP検知センサに到達してしまう場合がある。このため、HP検知センサに到達した時の線速が一定とはならない。そこで、モータに停止指示を出して、実際に減速して停止するまでの距離も一定とはならない。
【0007】
即ち、冊子押し出し部材がHPサーチ処理を開始する位置が、モータの停止状態から最大線速までの加速、または、最大線速から停止状態への減速に要する移動距離以上にHP検知センサから離れていないと、HPでの停止位置がばらつく事になる。その場合、HPを基点に所定量だけ移動して冊子を押し出す動作の押し出し量にばらつきが生じる事になる。
【0008】
本発明は、DCブラシモータ等のオーバーランの大きいモータを駆動源とする冊子押し出し動作について、用紙の押し出し量のばらつきを低減する事を目的とするものである。
【0009】
また、本発明は、本来なら、高価、高消費電力、かつ制御の複雑なステッピングモータを用いなければならない駆動に、安価、低消費電力、かつ制御の簡単なDCブラシモータを用いる事により、製造原価低減を図る事を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的は、本発明の以下の構成により達成することが出来る。
【0011】
請求項1に記載の用紙搬送装置は、複数枚の用紙から成る冊子を積載するスタッカと、前記スタッカに積載された前記冊子の端縁を押圧する移動可能な冊子押し出し部材と、前記冊子押し出し部材を往復動させる駆動手段と、前記駆動手段の駆動を制御する制御手段と、前記冊子押し出し部材の可動域の一方の端部に配置され前記冊子押し出し部材の初期位置を検出するホームポジション検知センサと、を有し、前記制御手段は、前記冊子押し出し部材を前記初期位置に復帰させる際、前記冊子押し出し部材を一旦、前記初期位置とは逆方向の前記可動域の他方の端部の方向に所定時間だけ移動させた後、駆動を反転させて前記初期位置への駆動を開始し、前記ホームポジション検知センサが前記冊子押し出し部材を検知した時点で駆動を停止させるように制御することを特徴とするものである。
【0012】
請求項2に記載の用紙搬送装置は、請求項1に記載の用紙搬送装置において、前記所定時間が、前記駆動手段の回転数が最大値まで立ち上がるための所用時間以上であることを特徴とするものである。
【0013】
請求項3に記載の用紙搬送装置は、請求項1に記載の用紙搬送装置において、
前記制御手段は、前記冊子押し出し部材が前記初期位置とは逆方向の前記可動域の他方の端部の方向に所定時間だけ移動した後、前記駆動手段を反転駆動させて前記ホームポジション検知センサ方向への移動を開始し、前記ホームポジション検知センサが前記冊子押し出し部材の通過を検知した時点で前記冊子押し出し部材の駆動を停止させるように制御することを特徴とするものである。
【0014】
請求項4に記載の用紙後処理装置は、請求項1乃至3の何れか1項に記載の用紙搬送装置を備え、後処理された冊子を前記用紙搬送装置により排出することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の発明によれば、DCブラシモータ等の駆動源を有する駆動手段は、冊子押し出し部材を初期位置に復帰させる際、冊子押し出し部材を一旦、初期位置とは逆方向の可動域の他方の端部の方向に所定時間だけ移動させた後、駆動を反転させて初期位置への駆動を開始し、ホームポジション検知センサが冊子押し出し部材を検知した時点で駆動を停止させることによって、オーバーランの大きいDCブラシモータを用いても、冊子押し出し部材の押し出し量のばらつきを押さえる事が可能である。
【0016】
また、高価、高消費電力、かつ制御の複雑なステッピングモータを用いなければならない駆動に、安価、低消費電力、かつ制御の簡単なDCブラシモータを用いる事により、製造原価低減を図る事ができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、折り処理、綴じ処理等の後処理が施されて作製された冊子を移動可能な冊子押し出し部材により排出する事により、後処理された冊子を容易且つ確実に搬出する事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の用紙搬送装置、及び用紙搬送装置を備えた用紙後処理装置を図面に基づいて詳細に説明する。本発明に係る用紙搬送装置を内蔵した用紙後処理装置は画像形成装置と切り離して単独で使用する構成とすることも可能である。なお、本発明の用紙搬送装置、用紙後処理装置は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0019】
[画像形成装置]
図1は本発明に係る用紙搬送装置を備えた用紙後処理装置ならびに画像形成装置の全体構成図である。
【0020】
画像形成装置は、画像形成装置本体A、自動原稿送り装置DF、用紙後処理装置B、大容量給紙装置LTから構成されている。
【0021】
図示の画像形成装置本体Aは、画像読取部1、画像処理部2、画像書込部3、画像形成部4、給紙カセット5A,5B,5C、手差し給紙トレイ5D、第1給紙部6A,6B,6C,6D、第2給紙部6F、定着装置7、排紙部8、自動両面コピー給紙部(ADU)8Bを備えている。
【0022】
画像形成装置本体Aの図示の左側面の排紙部8側には、用紙後処理装置Bが連結されている。
【0023】
自動原稿送り装置DFの原稿台上に載置された原稿は画像読取部1の光学系により原稿の片面又は両面の画像が読みとられ、CCDイメージセンサ1Aにより読み込まれ、光電変換されたアナログ信号は、画像処理部2において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮等の処理を経た後、画像書込部3に送られる。
【0024】
画像書込部3においては、半導体レーザからの出力光が画像形成部4の感光体ドラム4Aに照射され、潜像を形成する。画像形成部4においては、帯電、露光、現像、転写、分離、クリーニング等の処理が行われる。給紙カセット5A〜5Cの第1給紙部6A〜6C、手差し給紙トレイ5Dの第1給紙部6D、大容量給紙装置LTの第1給紙部6Eの各々により給送された用紙Sは第2給紙部6Fを経て、転写手段4Bにより画像が転写される。画像を担持した用紙Sは、定着装置7により定着され、排紙部8から用紙後処理装置Bに送り込まれる。或いは搬送路切換板8Aにより自動両面コピー給紙部8Bに送り込まれた片面画像処理済みの用紙Sは再び画像形成部4において、両面画像処理後、排紙部8から排出される。
【0025】
操作部9は画像形成装置本体A及び用紙後処理装置B等から成る画像形成装置の処理機能を選択、設定する。
【0026】
画像形成装置本体Aの主制御手段10は、通信部10A、通信回線10Bを介して、用紙後処理装置Bの後処理制御手段10Cに接続している。
【0027】
[用紙後処理装置]
図2は用紙後処理装置Bの中折り、中綴じ処理工程の用紙搬送を示す模式図である。図3は用紙後処理装置Bの正面図、図4は右側面図である。
【0028】
最初に、用紙導入から折り処理前迄の用紙搬送工程を説明する。
【0029】
図2、図3に示すように、画像形成装置本体Aから排出された用紙Sは、用紙後処理装置Bの入口部11に導入されると、入口ローラ12により挟持され、搬送路切換手段G1の上方の用紙搬送路r1又は下方の用紙搬送路r2の何れかに搬送される。
【0030】
〈ストレート排紙〉
用紙搬送路r1に分岐された用紙Sは、搬送ローラ13A〜13Eにより挟持されて搬送され、搬送路切換手段G2の上方の用紙搬送路r3又は下方の用紙搬送路r4の何れかに搬送される。
【0031】
上方の用紙搬送路r3に進行した用紙Sは、排紙ローラ14によって排出され、用紙後処理装置Bの上部に配置されたサブ排紙トレイ15上に積載される。
【0032】
下方の用紙搬送路r4に進行した用紙Sは、搬送ローラ16A〜16Dにより挟持されて搬送され、排紙ローラ17によって排出される。
【0033】
〈第1直角偏向搬送〉
搬送路切換手段G1の下方の用紙搬送路r2に搬送された用紙Sは、ほぼ垂直に下降し、所定位置に一時停止して収納される。この停止位置において、後続の複数枚の用紙Sが重ね合わせられて収容される。
【0034】
〈第2直角偏向搬送〉
収容された用紙Sは、搬送ローラ対18A,18B、第1搬送ローラ対18C,18D、及び図示しない案内板によって図4の紙面に対して直角手前方向に偏向移動されて、用紙後処理装置B内部の前面側Bfに回り込む用紙搬送路r5を用紙面を直立させた状態で通過し、所定位置に一時停止する。
【0035】
〈第3直角偏向搬送〉
次に、用紙Sは第2搬送ローラ対18E,18Fによって垂直上方に搬送された後、水平方向に偏向され、搬送ローラ対19、搬送整合ベルト20によって移動される(用紙搬送路r6、図4参照)。
【0036】
〈折り処理前の整合〉
整合手段は、図4に示すように、用紙搬送路r6の用紙搬送方向下流側に配置され、用紙先端部を当接させて位置決めする整合部材21と、用紙Sの後端部を押圧して移動させる移動可能な整合部材20Aとから成る。整合部材20Aは、用紙搬送路r6の用紙搬送方向上流側に配置された搬送ローラ対19により搬送された用紙Sの後端部を押圧して整合部材21まで移動させ、用紙先端部を整合部材21に当接させて用紙揃えを行う。
【0037】
次に、用紙後処理装置Bにおける用紙Sの三つ折り処理、中折り処理、中綴じ処理、冊子の小口断裁処理を具体的に説明する。
【0038】
〈三つ折り処理〉
搬送整合ベルト20の用紙搬送方向下流側には、折り手段30が配置されている。折り手段30は折りローラ31,32,33、第1折り板34、第2折り板35から構成されている。
【0039】
三つ折り処理を行う場合には、折り手段30において、折りローラ31,32と第1折り板34とにより用紙Sに第1の折り目部が形成され、折りローラ32,33と第2折り板35とにより用紙Sに第2の折り目部が形成され、三つ折り処理された折丁SAは、複数の搬送ローラ36と案内板とから成る用紙搬送路r8を通過して、排紙ローラ37によって排紙トレイ38に排出される(図4参照)。
【0040】
〈中折り処理〉
折り手段30に到達した1枚又は複数枚の用紙Sは、互いに逆方向に回転する折りローラ31,32、及び直進する第1折り板34によって挟持されて中折り処理が行われ、用紙搬送方向中央で用紙幅方向にわたって折り目部a(図2参照)を形成した折丁SAが形成される。
【0041】
折りローラ31,32、第1折り板34によって二つ折り処理が行われて折り目部aを形成した折丁SAは、折りローラ31,32の逆回転によって、折りローラ31,32のニップ位置から離間されて元の水平搬送路に戻される。折丁SAは引き続き、後述の搬送手段40の搬送ベルト41、搬送爪42及び折丁ガイド手段50の導入ガイド部材51によって、折り目部aの延長線方向の用紙搬送路r7に搬送され、中綴じ手段60に送り込まれる(図2、図3参照)。
【0042】
このように、折り手段30は、1乃至3枚の少数枚の用紙Sを中折り処理して、折り目部aをしっかり付け、逐次、中綴じ手段60に送り込む事により、折り目部aの膨らみが少ない高品位の冊子(製本物)SBを作製する事ができる。
【0043】
〈中綴じ処理〉
図5は中綴じ処理前の用紙後処理装置Bの左側面図、図6は中綴じ処理後の用紙後処理装置Bの左側面図、図7は中綴じ処理後の用紙搬出工程を示す左側面図である。
【0044】
折り手段30において中折り処理された折丁SAは、用紙搬送路r7方向に進行し、中綴じ手段60の鞍掛集積手段(スタッカ)61上に載置される。後続の中折り処理された折丁SAも引き続き用紙搬送路r7を通過して鞍掛集積手段61上に積載される(図2、図3参照)。
【0045】
鞍掛集積手段61は、ほぼ直交する2枚のガイド板から成り、装置本体に固定されている。鞍掛集積手段61の頂部近傍には、バネ付勢されて昇降可能な押圧部材65が受針機構64に支持された状態で配置されている(図5参照)。
【0046】
押圧部材65の頂部は、上方にほぼ直角な屋根型形状(逆V字形状)をなし、その頂部稜線上に中折り処理された折丁SAの折り目部a(図2参照)が載置される。
【0047】
鞍掛集積手段61及び押圧部材65上に載置された複数枚の折丁SAは、幅整合手段62によって位置揃えされる。
【0048】
押圧部材65の上方には、打針機構63が固定配置されている。鞍掛集積手段61の内部には、押圧部材65と受針機構64が上下方向に移動可能に支持されている。
【0049】
打針機構63と受針機構64とから成る二分割構造の綴じ手段は、用紙折り目部方向に2組配置されている。操作部において、中綴じ処理が設定されると、受針機構64が上昇して中綴じ処理を行う。即ち、2組の綴じ手段は押圧部材65上の折丁SAの折り目部aに沿って、中央振り分け2箇所に綴じ針SPを打針する。中折り処理、中綴じ処理された冊子SBを図2の模式図に示す。
【0050】
〈冊子の取り出し〉
中綴じ手段60において中綴じ処理された冊子SBは、冊子取り出し手段70(用紙搬送手段)のアーム部材71の先端部に固定された支持部材72に保持される。一対のアーム部材71は、冊子SBの折り目部aの方向に沿って配置され、図示しない駆動手段によって図7の紙面直角方向に移動される。
【0051】
モータM1は、アーム部材71の基部に設けた揺動軸73を回転させる。揺動軸73の支持部材72に保持された冊子SBは一点鎖線矢印方向に揺動して、冊子搬送手段80に搬送される(図6参照)。
【0052】
〈冊子の搬送〉
冊子搬送手段80に搬送された冊子SBは、搬送ベルト82上に載置される。搬送ベルト82の回動により冊子SBは斜め下方に搬送され、更に、傾斜状態に保持されて、回動する搬送ベルト83により移送されて所定位置に停止される。その後、搬送ベルト83は揺動して水平状態に支持される。
【0053】
〈冊子断裁処理〉
この水平状態になった搬送ベルト83上に載置された冊子SBの小口(折り目部の反対側の自由端部)は、冊子SBの用紙枚数によって不揃いになっているから、小口断裁装置90により断裁して、小口を揃える。
【0054】
断裁処理されて作製された冊子SBは、逆回転する搬送ベルト83に載置され、搬送ベルト83に固定された可動整合部材84により冊子SBの後端部が押圧された状態で搬送され、搬送ベルト83の先端部から矢示方向に落下する。落下した冊子SBは、回動する排出ベルト85により用紙後処理装置Bの前面側Bfの外方に配置された排紙トレイ86に排出される。
【0055】
[用紙後処理装置の冊子取り出し手段]
図8は、鞍掛集積手段61と冊子取り出し手段70の要部断面図である。
【0056】
屋根型をなす鞍掛集積手段61の斜面内側近傍には、DCブラシモータM2により駆動回転される駆動ローラ74Aと、従動ローラ74Bと、を巻回する移送ベルト75が回動可能に指示されている。移送ベルト75に固定された冊子押し出し部材76は、鞍掛集積手段61の斜面に穿設された長溝部61Aの外方に突出して直線移動する。
【0057】
Lは冊子押し出し部材76の可動域である。冊子押し出し部材76の可動域Lは、ホームポジション(初期位置、以下、HPと称す)を検知するホームポジション検知センサ(以下、HP検知センサと称す)PS1と、可動限界位置検知センサPS2との間隔に設定される。
【0058】
冊子押し出し部材76は、鞍掛集積手段61に積載される冊子SBの最大サイズの外方のHPに待機し、冊子SBを取り出す際には、図示の斜め左上方に移動して、冊子SBの端縁を押圧して、冊子SBを図示の破線で示す位置に移動させる。
【0059】
以下、従来の冊子取り出し手段と、本発明の冊子取り出し手段とを対比して説明する。なお、以下の図面に使用されている符号について、図8と同じ機能を有する部分には、同符号を付している。
【0060】
図9(a)は従来の冊子取り出し手段70の移動工程の説明図である。図9(b),(c)は従来の冊子取り出し手段70の加速度線図である。図12(a)は従来の冊子取り出し手段70の移動工程を示すフローチャートである。
【0061】
駆動源にDCブラシモータM2を用いた駆動手段によって、冊子押し出し部材76が移動中に電源が切られると、再起動時の冊子押し出し部材76のHPサーチ後の停止位置が一定とならず、そこを基点とした冊子押し出し動作の押し出し量にバラツキが生じる。
【0062】
P1,P2,P3は、冊子押し出し部材76が電源オフ等により停止した後の移動開始位置をそれぞれ示す。L1,L2,L3は、冊子押し出し部材76が移動開始位置P1,P2,P3から移動を開始してHP検知センサPS1の検知位置に至るまでのそれぞれの移動距離を示す。P0は、冊子押し出し部材76への停止指示位置、即ちHP検知センサPS1の検知位置を示す。
【0063】
図9(a)において、Q1,Q2は、冊子押し出し部材76が停止指示位置P0を通過した検知信号により、制御手段がDCブラシモータM2の駆動停止後にオーバーランして停止する初期位置(HP)である。
【0064】
冊子押し出し部材76の停止位置(移動開始位置P1,P2)が、HP検知センサPS1の検知位置(停止指示位置P0)より充分離間した移動開始位置P1,P2から移動を開始して加速すれば、停止指示位置P0に到達する以前に加速が完了して所定の等速度V1に達しているから、停止指示位置P0通過後のDCブラシモータM2の駆動停止によってオーバーランして所定の停止位置(初期位置)Q1,Q2に停止する。
【0065】
しかし、冊子押し出し部材76の停止位置(移動開始位置P3)が、HP検知センサPS1の検知位置(停止指示位置P0)に近接した移動開始位置P3から移動を開始して加速すると、冊子押し出し部材76が停止指示位置P0に到達した時、所定の等速度V1に達せず、等速度V1以下の低速度V2(図9(b)参照)でDCブラシモータM2の駆動停止によってオーバーランして所定の停止位置(初期位置)Q1,Q2より手前の停止位置Q3で停止する。
【0066】
図9(b)において、T1,T2は冊子押し出し部材76の移動開始時間、T4は冊子押し出し部材76の停止指示から停止までのオーバーラン時間である。移動開始時間T1から停止指示に至るまでの冊子押し出し部材76の移動特性線に囲まれた部分の積分値は、冊子押し出し部材76の移動距離L1である。移動開始時間T2から停止指示に至るまでの冊子押し出し部材76の移動特性線に囲まれた部分の積分値は、冊子押し出し部材76の移動距離L2である。停止指示から冊子押し出し部材76が停止するまでのオーバーラン時間T4における移動特性線に囲まれた部分の積分値は、冊子押し出し部材76のオーバーラン距離L4である。
【0067】
移動開始位置P1,P2では、最大線速の等速度V1への加速が完了した後に、停止指示がかかるため、オーバーラン距離L4が移動開始位置P1,P2に依存せず一定となる。
【0068】
図9(c)において、T3は冊子押し出し部材76の移動開始時間、T5は冊子押し出し部材76の停止指示から停止までのオーバーラン時間である。
【0069】
移動開始時間T3から停止指示に至るまでの冊子押し出し部材76の移動特性線に囲まれた部分の積分値は、冊子押し出し部材76の移動距離L3である。停止指示から冊子押し出し部材76が停止するまでのオーバーラン時間T5における移動特性線に囲まれた部分の積分値は、冊子押し出し部材76のオーバーラン距離L5である。
【0070】
冊子押し出し部材76の移動開始位置P3が、移動開始位置P3から移動を開始して加速すると、冊子押し出し部材76が停止指示位置P0に到達した時、所定の等速度V1以下の低速度V2でDCブラシモータM2の駆動停止によってオーバーランして所定の停止位置より手前の停止位置Q3で停止してしまう。
【0071】
移動開始位置P3では、最大線速の等速度V1への加速途中で停止指示がかかるため、オーバーラン距離L5が移動開始位置P3に依存し、一定とはならない。
【0072】
図10は冊子取り出し手段70のブロック図である。
【0073】
画像形成装置本体Aの操作部9による操作、または自動用紙サイズ判断手段によって用紙サイズが設定され、後処理制御手段10Cに入力される。
【0074】
HP検知センサPS1は冊子押し出し部材76の停止指示位置を検出して、後処理制御手段10Cに入力信号を送る。可動限界位置検知センサPS2は、冊子押し出し部材76の可動限界位置を検出して、後処理制御手段10Cに入力信号を送る。
【0075】
後処理制御手段10Cは、モータM2を駆動して駆動手段により移送ベルトを正逆回動させ、冊子押し出し部材76を異なる移動開始位置からスタートさせ、所定の停止位置に停止させる。
【0076】
また、後処理制御手段10Cは、中綴じ処理等の後処理を終了し、冊子押し出し部材76により押し出された冊子SBを、モータM1の駆動によりアーム部材71を保持して揺動させ、後処理位置から排出する。
【0077】
図11(a)は本発明の冊子取り出し手段70の移動工程の説明図である。図11(b)は本発明の冊子取り出し手段70の加速度線図である。
【0078】
図12(a)は本発明の冊子取り出し手段70の移動工程を示すフローチャートである。なお、図11に使用されている符号について、図9と同じ機能を有する部分には、同符号を付している。また、図9と異なる点を説明する。
【0079】
図11(a)において、P1,P2,P3は、冊子押し出し部材76が電源オフ等により停止した後の移動開始位置をそれぞれ示す。L10は冊子押し出し部材76のオーバーラン距離、L11,L12,L13は、冊子押し出し部材76が移動開始位置P1,P2,P3から移動を開始して、HPとは逆方向に所定距離移動した後に、反転駆動されて停止指示位置P0に到達するまでのそれぞれの移動距離を示す。
【0080】
Q0は、冊子押し出し部材76が停止指示位置P0を通過した検知信号により、制御手段がDCブラシモータM2の駆動停止後にオーバーランする初期位置を示す。
【0081】
DCブラシモータM2は移動開始信号により、まず冊子押し出し部材76をHPとは逆方向にオーバーラン距離L10と等しい距離だけ移動させる。そこからDCブラシモータM2の反転駆動によって冊子押し出し部材76をHPの方向に移動距離L11,L12,L13だけそれぞれ移動させ、冊子押し出し部材76がHP検知センサPS1に到達する時には、移動開始位置P1,P2,P3に関係なくDCブラシモータM2は最大線速の等速度V1への加速が完了しているはずである。このHP検知センサPS1の検知信号により停止指示をかければ、移動開始位置P1,P2、P3に関係なく一定のオーバーラン距離L10が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】画像形成装置本体、自動原稿送り装置、用紙後処理装置、大容量給紙装置から成る画像形成装置の全体構成図。
【図2】用紙後処理装置の中折り、中綴じ処理工程の用紙搬送を示す模式図。
【図3】用紙後処理装置の正面図。
【図4】用紙後処理装置の右側面図。
【図5】中綴じ処理前の用紙後処理装置の左側面図。
【図6】中綴じ処理後の用紙後処理装置の左側面図。
【図7】中綴じ処理後の用紙搬出工程を示す左側面図。
【図8】鞍掛集積手段と冊子取り出し手段の要部断面図。
【図9】従来の冊子取り出し手段の移動工程の説明図、及び冊子押し出し部材の速度線図。
【図10】冊子取り出し手段のブロック図。
【図11】本発明の冊子取り出し手段の移動工程の説明図、及び本発明の冊子取り出し手段の加速度線図。
【図12】従来の冊子取り出し手段及び本発明の冊子取り出し手段の移動工程を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0083】
60 中綴じ手段
61 鞍掛集積手段(スタッカ)
70 冊子取り出し手段(用紙搬送手段)
71 アーム部材
72 支持部材
73 揺動軸
75 移送ベルト
76 冊子押し出し部材
A 画像形成装置本体
B 用紙後処理装置
L1,L2,L3 移動距離
L4,L5,L10 オーバーラン距離
M1 モータ
M2 DCブラシモータ
P0 停止指示位置
P1,P2,P3 移動開始位置
Q0,Q1,Q2 初期位置
Q3 停止位置
PS1 ホームポジション検知センサ(HP検知センサ)
PS2 可動限界位置検知センサ
SB 冊子(製本物)
T1,T2,T3 移動開始時間
T4,T5,L14 オーバーラン時間
V1 等速度
V2 低速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の用紙から成る冊子を積載するスタッカと、
前記スタッカに積載された前記冊子の端縁を押圧する移動可能な冊子押し出し部材と、
前記冊子押し出し部材を往復動させる駆動手段と、
前記駆動手段の駆動を制御する制御手段と、
前記冊子押し出し部材の可動域の一方の端部に配置され前記冊子押し出し部材の初期位置を検出するホームポジション検知センサと、を有し、
前記制御手段は、前記冊子押し出し部材を前記初期位置に復帰させる際、前記冊子押し出し部材を一旦、前記初期位置とは逆方向の前記可動域の他方の端部の方向に所定時間だけ移動させた後、駆動を反転させて前記初期位置への駆動を開始し、前記ホームポジション検知センサが前記冊子押し出し部材を検知した時点で駆動を停止させるように制御することを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項2】
前記所定時間が、前記駆動手段の回転数が最大値まで立ち上がるための所用時間以上であることを特徴とする請求項1に記載の用紙搬送装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記冊子押し出し部材が前記初期位置とは逆方向の前記可動域の他方の端部の方向に所定時間だけ移動した後、前記駆動手段を反転駆動させて前記ホームポジション検知センサ方向への移動を開始し、前記ホームポジション検知センサが前記冊子押し出し部材の通過を検知した時点で前記冊子押し出し部材の駆動を停止させるように制御することを特徴とする請求項1に記載の用紙搬送装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の用紙搬送装置を備え、後処理された冊子を前記用紙搬送装置により排出することを特徴とする用紙後処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−62836(P2006−62836A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−248425(P2004−248425)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】