説明

用紙

【課題】用紙本体に含まれる磁性材料の位置が視認によって特定されにくい用紙を提供する。
【解決手段】パルプ繊維12と大バルクハウゼン効果を有する磁性材料14とを含む用紙本体10と、用紙本体10における少なくとも一方の面に形成され、用紙本体10に含まれる磁性材料14に擬似した擬似画像16と、を有する用紙100である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、磁界が与えられることにより信号を発生する磁性素子を付与した媒体であって、前記磁性素子と同一の大きさと形状を有し前記磁界が与えられても信号を発生しない複数の擬似素子が前記磁性素子に混在させて付与されていることを特徴とする媒体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−268538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、用紙本体に含まれる磁性材料の位置が視認によって特定されにくい用紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
パルプ繊維と大バルクハウゼン効果を有する磁性材料とを含む用紙本体と、
前記用紙本体における少なくとも一方の面に形成され、前記用紙本体に含まれる前記磁性材料に擬似した画像と、
を有する用紙である。
【0006】
請求項2に係る発明は、
前記画像は、前記用紙本体における前記一方の面に形成された第1の画像と、前記用紙本体における前記一方の面とは反対側の他方の面に形成された第2の画像と、を含む、請求項1に記載の用紙である。
【0007】
請求項3に係る発明は、
前記第1の画像と前記第2の画像とは、前記用紙本体の厚み方向に投影したときに重なる、請求項2に記載の用紙である。
【0008】
請求項4に係る発明は、
前記画像は、用紙の表面で反射した反射光による視認において前記用紙本体に含まれる前記磁性材料に擬似した画像と、用紙を透過した透過光による視認において前記用紙本体に含まれる前記磁性材料に擬似した画像と、を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の用紙である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、磁性材料に擬似した画像を有さない場合に比べて、用紙本体に含まれる磁性材料の位置が視認によって特定されにくくなる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、磁性材料に擬似した画像が一方の面のみ又は他方の面のみに形成されている場合に比べて、一方の面及び他方の面のどちらの面から観察しても、用紙本体に含まれる磁性材料の位置が特定されにくくなる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、第1の画像と第2の画像とが重ならない場合に比べて、用紙における一方の面及び他方の面の両方から観察して比較しても、用紙本体に含まれる磁性材料の位置が特定されにくくなる。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、反射光による視認において磁性材料に擬似した画像と、透過光による視認において磁性材料に擬似した画像と、のいずれか一方のみが形成されている場合に比べて、反射光による視認及び透過光による視認の両方において用紙本体に含まれる磁性材料の位置が特定されにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態における用紙の一例を示す平面図である。
【図2】図1の用紙における用紙本体を示す平面図である。
【図3】図1に示す用紙の一部を拡大した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[用紙]
以下、本実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、実質的に同一の機能を有する部材には、全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
【0015】
図1は、本実施形態に係る用紙の一例を示す平面図である。図2は、図1の用紙に用いられた用紙本体を示す平面図である。図3は、図1に示す用紙の一部を拡大した斜視図(一部、断面で表わしている)である。
【0016】
図1から図3に示すように、本実施形態に係る用紙100は、パルプ繊維12と大バルクハウゼン効果を有する磁性材料14とを含む用紙本体10と、用紙本体10における少なくとも一方の面に形成され、用紙本体10に含まれる磁性材料14に擬似した画像16と、を有する。すなわち本実施形態に係る用紙100は、大バルクハウゼン効果を有する磁性材料14が漉き込まれた用紙本体10の表面に、漉き込まれた状態の磁性材料14に擬似した擬似画像16が形成されている。
【0017】
まず用紙本体10について説明する。
上記の通り用紙本体10は、大バルクハウゼン効果を有する磁性材料14が漉き込まれおり、図3に示すように、例えば用紙本体10の内部に磁性材料14が存在している。
磁性材料14は、例えば繊維状の磁性繊維である。そして、一枚の用紙本体10あたり、例えば6本の磁性材料14が直線状に漉き込まれている。そして用紙本体10に漉き込まれた磁性材料14は、抄紙方向(図2の矢印方向)に沿って並び、用紙本体10の面内における抄紙方向と垂直の方向において中央部に偏在している。
【0018】
なお本実施形態では磁性材料14が直線状に漉き込まれているが、これに限られず、磁性材料14が湾曲した状態で用紙本体10に漉き込まれていてもよい。また一枚の用紙本体10あたりに漉き込まれる磁性材料14の本数、並びに用紙本体10に漉き込まれた磁性材料14の方向及び位置についても、特に限定されず、用紙本体10の製造方法、大きさ、及び用途等に応じて選択される。具体的には、例えば、用紙本体10の中央部に磁性材料14が偏在せず、全体にわたって磁性材料14が存在していてもよい。
【0019】
次に、擬似画像16について説明する。
擬似画像16は、上記の通り、用紙本体10に漉き込まれた状態の磁性材料14に擬似した画像である。
用紙本体10の内部に存在する磁性材料14は、用紙本体10の外から用紙本体10の表面を観察したときに、パルプ繊維12を通して磁性材料14が透けて観察される。具体的には、例えばパルプ繊維12が白色、磁性材料14が黒色の磁性繊維である場合、用紙本体10の表面を観察すると、白色のパルプ繊維12を通して磁性材料14が視認される。そのため磁性材料14は、実際の色(黒色)よりも薄い色(例えば灰色)の線状(繊維状)に見える。そしてその灰色の線状の画像が、擬似画像16として用いられる。
【0020】
図1に示すように、本実施形態では、用紙本体10の表面のうち、磁性材料14が存在しない領域全体にわたって疑似画像16が形成されている。ただし疑似画像16が形成される位置は、用紙100の用途等に応じて適宜選択され、上記形態に限定されない。具体的には、例えば、用紙100の表面全体にわたって疑似画像16が形成されてもよいし、磁性材料14と擬似画像16とが重なって形成されてもよいし、疑似画像16が形成されない方が望ましい領域を避けて疑似画像16を形成してもよい。このように用紙100に形成された疑似画像16の位置及び数は、用紙100の用途等に応じて選択される。
【0021】
本実施形態では、図3に示すように、擬似画像16が用紙本体10の両面に形成されており、その両面に形成された擬似画像16は、用紙本体10の厚み方向に投影したときに重なる画像となっている。ここで「用紙本体10の厚み方向」とは、用紙本体10の紙面に垂直な方向を意味する。
以下、用紙本体10の厚み方向に投影したときに互いに重なる2つの画像を「投影重複画像」と称する場合があり、用紙本体10の一方の面に形成された擬似画像16(例えば図1に示された擬似画像16、以下「第1の画像」と称する場合がある)の少なくとも一部が、用紙本体10の他方の面に形成された擬似画像16(以下「第2の画像」と称する場合がある)と重なっていれば、「投影重複画像」とする。
【0022】
さらに本実施形態では、第1の画像と第2の画像とが重なっていることに加え、用紙本体10の厚み方向に投影したときに互いに一致する画像(以下「投影一致画像」と称する場合がある)となっている。具体的には、第1の画像と第2の画像とが同じ方向を向き、第1の画像の両端と第2の画像の両端とが、用紙本体10の厚み方向に投影したときに一致する位置にある。
【0023】
また本実施形態では、図示しないが、擬似画像16として、用紙100の表面で反射した反射光によって視認(例えば、用紙100を台に置いて観察)したときに磁性材料14が透けて見える状態を擬似した画像(以下「反射光擬似画像」と称する場合がある)と、用紙100を透過した透過光によって視認(例えば、用紙100を蛍光灯や太陽光などに透かして観察)した場合に磁性材料14が透けて見える状態を擬似した画像(以下「透過光擬似画像」と、の両方が形成されている。
なお本実施形態では、用紙本体10に漉き込まれた磁性材料14を反射光で視認した場合に比べて、透過光によって視認した場合の方が、色が濃く見えるものであり、図示しないが、反射光擬似画像に比べて透過光擬似画像の方が濃い灰色の画像となる。
【0024】
以下、用紙100の製造方法について説明する。
まず、用紙本体10を製造する。用紙本体10の製造方法としては、例えば、磁性材料14が水系媒体に分散した磁性材料分散液を、パルプ繊維12が分散媒体に分散したパルプスラリーに添加した後、磁性材料14を含むパルプ繊維12を抄紙することで、磁性材料14が漉き込まれた用紙本体10を得る方法が挙げられる。なお、後述するその他の材料については、必要に応じて磁性材料分散液に添加してもよく、パルプスラリーに添加してもよく、磁性材料14を含むパルプ繊維12が抄紙された後に添加してもよい。
【0025】
次に、得られた用紙本体10に擬似画像16を形成する。擬似画像16の形成方法は特に限定されず、電子写真方式によってトナー像である擬似画像16を形成してもよく、インクジェット方式等によってインク画像である擬似画像16を形成してもよく、その他の方法で疑似画像16を形成してもよい。
【0026】
用紙本体10の表面に擬似画像16を形成する方法としては、例えば、その都度用紙本体10の表面を観察して用紙本体10中における磁性材料14の像を取得し、取得した像と同じ像を用紙本体10の表面に印刷することで、擬似画像16を形成する方法が挙げられるが、これに限られない。例えば用紙本体10に漉き込まれた状態の磁性材料14の像を予め取得している場合には、必ずしもその都度用紙本体10の表面を観察する必要は無く、予め取得している像を用いて用紙本体10の表面に擬似画像16を形成すればよい。
また、観察により用紙本体10中における磁性材料14の像を取得する場合、形成する疑似画像16の種類に対応した観察を行う。すなわち、例えば疑似画像16として反射光疑似画像を用いる場合、用紙本体10を光が透過しない状態で反射光を用いて用紙本体10の表面の観察を行う。また、例えば疑似画像16として透過光疑似画像を用いる場合、用紙本体10に光を透過させ、透過した光によって用紙本体10の観察を行う。
【0027】
以上説明した本実施形態の用紙100は、上記のように、用紙本体10の表面に、擬似画像16が形成されているため、用紙本体10に含まれる磁性材料14の位置が視認によって特定されにくい。
具体的には、図2に示すように、磁性材料14が漉き込まれた用紙本体10においては、磁性材料14が用紙本体10の内部に存在していても、パルプ繊維12を通して磁性材料14が用紙本体10の表面に透けて観察される。そのため、疑似画像16が形成されていない場合、用紙本体10の表面を目視で観察するだけで、すべての磁性材料14の位置が容易に特定される。
【0028】
一方、本実施形態の用紙100においては、表面を目視で観察しても、用紙本体10に形成された疑似画像と用紙本体10に漉き込まれた磁性材料14との区別がつきにくい。そのため、擬似画像16が形成されていない場合に比べて、実際に磁性材料14が存在する位置が視認によって特定されにくいと考えられる。
【0029】
このように、本実施形態の用紙100では磁性材料14の位置が特定しにくいため、例えば、ある空間の外に持ち出してはならない機密情報等を記録する記録媒体として上記用紙100を用いることで、その他の記録媒体を用いた場合に比べて前記機密情報等の流出が抑制される。
具体的には、例えば、前記空間とその周囲との境界を磁性材料14が通過すると検知する検知手段が備えられていれば、用紙本体10に機密情報等が記録された重要書類を前記空間から外部に持ち出すと、用紙本体10に磁性材料14が含まれるため検知される。そして例えば、前記重要書類の持ち出しを検知したことが通知される場合や、前記重要書類の持ち出しを検知すると警報が鳴る場合等においては、重要書類を外部に持ち出すことがためらわれ、上記機密情報等の流出が抑制されると考えられる。
しかしながら、磁性材料14の位置が視認によって特定されやすい場合は、前記重要書類のうち磁性材料14が存在しない領域のみを切り取って持ち出すことが容易であるため、検知されずに前記重要書類の一部が外部に持ち出され、前記機密情報等が流出しやすくなることが考えられる。
【0030】
一方、本実施形態の用紙100を記録媒体として用いれば、磁性材料14の位置が視認によって特定されにくいことによって、例えば用紙100のうち磁性材料14が存在しない領域のみを切り取って持ち出すことが、容易ではなくなる。具体的には、例えば、確実に磁性材料14が存在しない領域のみを切り取るためには、擬似画像16が形成されていない領域のみを切り取るか、又は擬似画像16と磁性材料14とを区別してから、擬似画像16が形成された領域を切り取る必要がある。そのため、擬似画像16を避けて切り取る手間や、擬似画像16であることを確認する手間がかかることにより、磁性材料14が存在しない領域のみを切り取って持ち出しにくくなると考えられる。よって、本実施形態の用紙100を用いれば、その他の記録媒体を用いた場合に比べて前記機密情報等の流出が抑制されると考えられる。
【0031】
また本実施形態では、上記の通り、用紙本体10の表面に擬似画像16を形成しており、それによって磁性材料14の位置が特定されにくくなっている。そのため、例えば色、形状、及び大きさが磁性材料14と類似した擬似材料を磁性材料14とともに漉き込む形態に比べて、コストがかかりにくく、擬似画像16の位置や形状を制御しやすい。また、用紙本体10に漉き込める磁性材料14及び擬似材料の合計量には上限があるため、擬似材料を多く用いるほど磁性材料14を漉き込める量が減少する。しかし本実施形態では、擬似画像16を多く形成しても漉き込める磁性材料14の量は減少しないため、擬似材料を用いる形態に比べて、漉き込める磁性材料14が減少することで磁性材料14の検知性能が低下することを抑制しつつ、磁性材料14の位置が視認によって特定されにくくなると考えられる。
【0032】
また本実施形態の用紙100では、擬似画像16が用紙本体10の両面に形成されているため、用紙100のどちらの面を観察しても、用紙本体10に漉き込まれた磁性材料14と、擬似画像16と、の両方が視認され、磁性材料14の位置が特定しにくくなる。そのため、用紙本体10の一方の面にのみ擬似画像16が形成された場合に比べて、磁性材料14が存在しない領域のみを切り取るための手間がかかり、持ち出すことが容易ではなくなると考えられる。
なお、図1及び図3に示す用紙100では、上記のように、擬似画像16が用紙本体10の両面に形成されているが、これに限られず、用紙本体10の一方の面にのみ擬似画像16が形成された形態でもよい。
【0033】
また本実施形態の用紙100では、上記のように、両面に形成された擬似画像16が投影重複画像であるため、実際に漉き込まれた一本の磁性材料14が用紙本体10における両方の面から透けて見えている状態と区別しにくい。そのため、用紙100の両方の面を観察して比較しても磁性材料14の位置が視認によって特定されにくくなる。そして、両面に形成された擬似画像16が投影重複画像ではない場合に比べて、磁性材料14が存在しない領域のみを切り取るための手間がさらにかかり、持ち出すことが容易ではなくなると考えられる。
そして本実施形態の用紙100では、両面に形成された擬似画像16が投影一致画像であるため、さらに実際に漉き込まれた一本の磁性材料14が用紙本体10における両方の面から透けて見えている状態と区別しにくい。
【0034】
なお本実施形態の用紙100では、両面に形成された擬似画像16が投影一致画像であるが、これに限られない。例えば、両面に形成された擬似画像16の一部が重複する投影重複画像であってもよく、さらに具体的には、例えば、第1の画像と第2の画像とが交差した形態でもよく、第1の画像と第2の画像とが同じ方向を向き、その一部が重なった形態でもよい。また、例えば、用紙本体10の厚み方向に投影したときに、両面に形成された擬似画像16が重ならない形態であってもよく、例えば両面に形成された疑似画像16が互いに沿った形状で近くに存在することにより、一本の磁性材料14と区別しにくい形態であってもよい。
【0035】
本実施形態の用紙100においては、上記のように、反射光疑似画像と透過光疑似画像との両方が形成されているため、透過光による視認においても、反射光による視認においても、より磁性材料の位置が特定しにくくなると考えられる。
上記の通り、例えば擬似画像16が反射光擬似画像のみである場合、用紙100を透過光によって視認すると、反射光によって視認した場合に比べて用紙本体10中の磁性材料14が反射光疑似画像よりも濃く見えるため、磁性材料14と疑似画像16との区別がつきやすいと考えられる。一方、用紙100に反射光擬似画像及び透過光擬似画像の両方が形成されていれば、透過光による視認においても、反射光による視認においても、磁性材料14と区別がつきにくい疑似画像16が存在するため、より磁性材料の位置が特定しにくくなると考えられる。
なお、上記の通り、本実施形態では反射光疑似画像と透過光疑似画像との両方が形成されているが、これに限られず、用紙100の表面を観察する方法のうちいずれか1つ以上の方法に対応した疑似画像16が用紙本体10に形成されていればよい。
【0036】
本実施形態では、すべての磁性材料14が、用紙本体10の内部(すなわち、用紙本体10における厚み方向の中央部)に存在しているが、これに限られず、例えば用紙本体10の表面に露出した磁性材料14が存在する形態であってもよい。
【0037】
また本実施形態においては、上記の通り、用紙本体10の表面に擬似画像16が形成されていればよく、擬似画像16に加えて擬似画像16以外の画像が形成されていてもよい。また、用紙本体に擬似画像以外の画像が形成された用紙である場合、用紙本体に擬似画像のみを形成した後に、擬似画像以外の画像を形成してもよく、擬似画像と擬似画像以外の画像とを一体化させた画像を用紙本体に形成してもよい。
すなわち本実施形態は、用紙本体10の表面に疑似画像16のみが形成された用紙100を流通させ、利用者が用紙100に疑似画像16以外の画像を形成する形態、及び利用者が用紙本体10に疑似画像16及び疑似画像16以外の画像を形成する形態が挙げられる。
以下、各構成部材(材料)について詳細に説明する。なお、符号は省略して説明する。
【0038】
−パルプ繊維−
パルプ繊維、例えば化学パルプが挙げられ、具体的には、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ、広葉樹未晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹未晒クラフトパルプ、広葉樹晒亜硫酸パルプ、広葉樹未晒亜硫酸パルプ、針葉樹晒亜硫酸パルプ、針葉樹未晒亜硫酸パルプ等の木材パルプ、並びに綿、麻、及びじん皮等の繊維原料を化学的に処理して作製されたパルプ等が挙げられる。
【0039】
また、木材やチップを機械的にパルプ化したグランドウッドパルプ、木材やチップに薬液を染み込ませた後に機械的にパルプ化したケミメカニカルパルプ、及び、チップを軟らかくなるまで蒸解した後にリファイナーでパルプ化したサーモメカニカルパルプ等を、パルプ繊維として使用してもよい。
【0040】
また、綿パルプ繊維、麻パルプ繊維、ケナフパルプ繊維、バガスパルプ繊維、ビスコースレーヨン繊維、再生セルロース繊維、銅アンモニアレーヨン繊維、セルロースアセテート繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール共重合体、フルオロカーボン系繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、金属繊維、シリコンカーバイド繊維等の各繊維を、パルプ繊維として使用してもよい。
【0041】
また、必要に応じて、パルプ繊維にポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル等の合成樹脂を含浸あるいは熱融着させて得られた繊維を使用してもよい。
【0042】
これらはバージンパルプのみで使用してもよいし、必要に応じて、上質系及び中質系の古紙パルプを配合してもよい。古紙パルプの配合量としては、用途や目的等に応じて決定されるが、例えば、古紙パルプを配合する場合には、全繊維中10質量%以上配合してもよく、30質量%以上配合してもよい。
【0043】
特にバージンで使用するパルプは、塩素ガスを使用せず二酸化塩素を使用する漂白方法(Elementally Chlorine Free;ECF)や塩素化合物を一切使用せずにオゾン/過酸化水素等を主に使用して漂白する方法(Total Chlorine Free;TCF)で漂白処理されたものであってもよい。
【0044】
また、古紙パルプの原料として、製本、印刷工場、断裁所等において発生する裁落、損紙、幅落しした上白、特白、中白、白損等の未印刷古紙;印刷やコピーが施された上質紙、上質コート紙などの上質印刷古紙;水性インク、油性インク、鉛筆などで筆記された古紙;印刷された上質紙、上質コート紙、中質紙、中質コート紙等のチラシを含む新聞古紙;中質紙、中質コート紙、更紙等の古紙;を配合してもよい。
【0045】
古紙パルプとしては、古紙原料を、オゾン漂白処理又は過酸化水素漂白処理の少なくとも一方で処理して得られたものが挙げられる。また、上記漂白処理によって得られた古紙パルプの配合率を50重量%以上100重量%以下としてもよい。
−磁性材料−
磁性材料としては、大バルクハウゼン効果を起こす特性を有する磁性材料であれば、その磁気的物性、組成、形状等は特に限定されるものではないが、例えば繊維状(言い換えれば線状又は帯状)の磁性材料である磁性繊維が挙げられる。
磁性繊維の組成としては、例えば、磁性元素(例えば、Co、Fe、Ni等)、遷移金属類及びガラス形成元素(例えばSi,B,C,P等)を含む合金(例えば、Co系、Fe系、Ni系、これらの混合系等、具体的には、例えば、Co−B―Si、Co−Fe―B−Si等)が挙げられ、その構成元素の組成比率や製造方法を選択することにより様々な磁気特性をもつものが利用される。なお、上記元素からなるアモルファス合金の色相はその元素の比率にさほど影響されない。
【0046】
磁性繊維の形状及び大きさとしては、例えば、用紙本体の厚みが80μm以上120μm以下である場合、その断面が円形で、その外径(繊維径)が10μm以上60μm以下のものが挙げられる。また磁性繊維の外形は、15μm以上55μm以下であってもよく、25μm以上45μmであってもよい。一方、磁性繊維の長さ(繊維長さ)としては、例えば外径が10μm以上60μm以下の場合、5mm以上40mm以下が挙げられる。
【0047】
磁性繊維は、そのまま用いてもよいが、例えば、樹脂やガラス等の材料により被覆された(すなわち樹脂やガラス等の材料で構成された被覆層を有する)ファイバー形状の複合材料であってもよい。樹脂としては、例えばポリイミド等が挙げられる。また上記被覆層の厚みとしては、例えば、2.5μm以上10μm以下が挙げられ、2.0μm以上5.0μm以下であってもよい。
【0048】
上記被覆層の形成方法としては、被覆層の材料に応じて選択すればよいが、例えば、スパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、真空蒸着法等の気相成膜法、浸漬塗布法、ローラー塗布法、スプレー塗布法、ゾルゲル法等を利用したコーティング等の液相成膜法等が挙げられる。
【0049】
磁性材料のキュリー温度は、例えば用紙本体に加熱定着によって画像を定着させる場合、200℃以上が挙げられ、300℃以上であってもよい。
ここで、上記「キュリー温度」は、キュリー点とも言われ、アモルファス物質がその温度になると冷却後もそのアモルファス状態の物理的構造変化が起こり、その特性(例えば大バルクハウゼン効果)を失う点のことである。
【0050】
磁性繊維は、例えば、磁性材料を溶融し、磁性繊維の断面形状に対応した形状の吐出口を通過させた後、冷却することにより得られる。具体的には、例えば、水中回転紡糸法などが用いられる。また、例えば、溶融状態の磁性体材料を繊維状に加工した後に、磁性繊維の冷却も兼ねてCVD等の気相成膜法により被覆層を形成してもよい。
【0051】
また、例えば、USP3,256,584に記載される製造方法(Taylor−Ulitovsky法)によって、ガラス等の被覆層で被覆された磁性繊維を製造してもよい。具体的には、例えば、ガラス管内に金属合金をチャージして、ガラス管の先端を誘導コイルで過熱して融解し、金属融解物質の周囲を融解したガラスで被覆した状態を作り出し、それを冷却媒体で急冷する。これによりアモルファス磁性線をガラスで被覆した磁性繊維が得られる。
【0052】
−その他の材料−
用紙本体は、パルプ繊維及び磁性材料のほかに、必要に応じてその他の材料を含んでいてもよい。
その他の材料として、具体的には、例えば、用紙本体の不透明度、白さ、及び表面性を調整するための填料が挙げられる。
【0053】
填料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、チョーク、カオリン、焼成クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、セリサイト、ホワイトカーボン、サポナイト、カルシウムモンモリロナイト、ソジウムモンモリロナイト、ベントナイト等の白色無機顔料、及びアクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、尿素樹脂等の有機顔料等が挙げられる。また、熱可塑性樹脂粒子(例えば、ポリエステル系や、スチレンアクリル系等)等を填料して使用してもよい。なお、古紙を配合する場合には、古紙原料に含まれる灰分を予め推定して填料の添加量を調整してもよい。
【0054】
填料として無機顔料を用いる場合、無機顔料の配合量としては、例えば0質量%以上10質量%以下が挙げられ、0質量%以上8質量%以下であってもよい。また、填料として有機顔料、特に熱可塑性樹脂粒子を用いる場合、有機顔料の配合量としては、例えば0質量%以上10質量%以下が挙げられ、0質量%以上5質量%以下であってもよい。
【0055】
上記その他の材料としては、填料のほかに、例えばサイズ剤等の各種薬品が挙げられる。サイズ剤等の各種薬品は、例えば、内添又は外添により用紙本体に添加される。
サイズ剤の種類としては、例えば、ロジン系サイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、中性サイズ剤等のサイズ剤が挙げられ、硫酸バンド、カチオン化澱粉等、サイズ剤と繊維との定着剤を組み合わせて使用してもよい。中性サイズ剤としては、例えば、アルケニル無水コハク酸系サイズ剤、アルキルケテンダイマー、アルケニルケテンダイマー、中性ロジン、石油サイズ、オレフィン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂等が挙げられる。また、表面サイズ剤としては、酸化変性澱粉、酵素変性澱粉、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース変性体が挙げられ、単独もしくは組み合わせて使用される。
【0056】
またその他の材料として、用紙本体の表面をカチオン性に調整するカチオン性物質を用いてもよい。カチオン性物質を用いる場合、例えば、親水性のカチオン樹脂等を表面に処理してもよい。
またその他の材料として、用紙の電気抵抗率を調整する塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等の無機物や、アルキルリン酸エステル酸、アルキル硫酸エステル酸、スルホン酸ナトリウム塩、第4級アンモニウム塩等の有機系の材料を単独あるいは混合して使用してもよい。
【0057】
またその他の材料として、紙力増強剤を用いてもよく、具体的には、内添又は外添によって紙力増強剤してもよい。紙力増強剤としては、でんぷん、変性でんぷん、植物ガム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、スチレン−無水マレイン酸共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアクリル酸エステル尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ジアルデヒドでんぷん、ポリエチレンイミン、エポキシ化ポリアミド、ポリアミド−エピクロルヒドリン系樹脂、メチロール化ポリアミド、キトサン誘導体等が挙げられ、これらの材料を単独あるいは混合して使用してもよい。
【0058】
その他の材料としては、上記のものの他に、例えば、染料、pH調整剤等、通常の塗工紙用基紙に配合される各種助剤を必要に応じて使用してもよい。
【0059】
−用紙本体−
用紙本体の坪量(JIS P−8124)は特に規定されないが、例えば50g/m以上105g/m以下の範囲が挙げられる。また用紙本体の厚みとしては、例えば80μm以上120μm以下の範囲が挙げられる。
【符号の説明】
【0060】
10 用紙本体
12 パルプ繊維
14 磁性材料
16 擬似画像
100 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ繊維と大バルクハウゼン効果を有する磁性材料とを含む用紙本体と、
前記用紙本体における少なくとも一方の面に形成され、前記用紙本体に含まれる前記磁性材料に擬似した画像と、
を有する用紙。
【請求項2】
前記画像は、前記用紙本体における前記一方の面に形成された第1の画像と、前記用紙本体における前記一方の面とは反対側の他方の面に形成された第2の画像と、を含む、請求項1に記載の用紙。
【請求項3】
前記第1の画像と前記第2の画像とは、前記用紙本体の厚み方向に投影したときに重なる、請求項2に記載の用紙。
【請求項4】
前記画像は、用紙の表面で反射した反射光による視認において前記用紙本体に含まれる前記磁性材料に擬似した画像と、用紙を透過した透過光による視認において前記用紙本体に含まれる前記磁性材料に擬似した画像と、を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の用紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−118865(P2012−118865A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269373(P2010−269373)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】