説明

用紙

【課題】磁性材料の外周面に凹凸を有さない場合に比べ、磁性材料の表裏面への露出が抑制された用紙を提供する。
【解決手段】パルプ繊維と、大バルクハウゼン効果を有し、外周面に凹凸を持つ線状の磁性材料(凸部12A及び凹部12Bからなる凹凸を外周面に持つ磁性体12)と、を含む用紙10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、金属で表面を被覆された繊維を対パルプ比で0.051重量%混合したセキュリティー性に優れた磁性記録用紙が提案されている。
また、特許文献2には、固有の磁気特性を有する磁性粉体の表面を、任意の材料によって被覆することで得られる黒色及び黒灰色以外の着色磁性粉体を、用紙製造工程において、パルプスラリーの少なくとも一部分に均一に分散させて混抄する用紙の製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−243190号公報
【特許文献2】特開2001−055691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、磁性材料の表裏面への露出が抑制された用紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
パルプ繊維と
大バルクハウゼン効果を有し、外周面に凹凸を持つ線状の磁性材料と、
を含む用紙。
【0006】
請求項2に係る発明は、
前記線状の磁性材料が、線状の磁性材料本体と、前記線状の磁性材料本体の外周面に部分的に設けられ、ガラスを含んで構成された被覆層と、を有して構成される請求項1に記載の用紙。
【0007】
請求項3に係る発明は、
前記パルプ繊維が、針葉樹パルプ繊維及び非木材パルプ繊維から選択される少なくとも1種が配合されている請求項1又は2に記載の用紙。
【発明の効果】
【0008】
請求項1、2に係る発明によれば、磁性材料の外周面に凹凸を有さない場合に比べ、磁性材料の表裏面への露出が抑制された用紙を提供できる。
請求項3に係る発明によれば、針葉樹パルプ繊維及び非木材パルプ繊維以外のパルプ繊維のみを適用した場合に比べ、磁性材料の表裏面への露出が抑制された用紙を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係る用紙を示す平面図である。
【図2】本実施形態に係る用紙を示す断面図である。
【図3】本実施形態に係る線状の磁性材料(磁性体)を示す概略構成図である。
【図4】他の本実施形態に係る線状の磁性材料(磁性体)を示す概略構成図である。
【図5】実施例で作製した用紙の表面をマイクロスコープで撮影した様子を示す写真である。
【図6】実施例においてパルプ繊維被覆率の算出する方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一例である本実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、実質的に同一の機能を有する部材には、全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
【0011】
図1は、本実施形態に係る用紙を示す平面図である。図2は、本実施形態に係る用紙を示す断面図である。図3は、本実施形態に係る線状の磁性材料(磁性体)を示す概略構成図である。
なお、図2は、図1のA−A断面図に相当する。
【0012】
本実施形態に係る用紙10は、例えば、図1及び図2に示すように、パルプ繊維(図示省略)と、線状の磁性材料12(以下、磁性体12と称する)と、必要に応じて、填料等その他添加剤と、を含んで構成されている。
具体的には、本実施形態に係る用紙10は、例えば、パルプ繊維を含んで構成される用紙10に、磁性体12が漉き込まれている。つまり、本実施形態に係る用紙10は、例えば、パルプ繊維と磁性体12とを混合分散し、これを抄紙して得られたものである。
そして、磁性体12は、大バルクハウゼン効果を有し、外周面に凹凸(凸部12A及び凹部12Bからなる凹凸)を持つ磁性体12である(図3及び図4参照)。
【0013】
本実施形態に係る用紙10では、外周面に凹凸を持つ磁性体12を含ませることで、磁性材料の表裏面への露出を抑制する。
これは、磁性体12がその外周面に凹凸を持つことで、当該凹凸によりパルプ繊維が絡み易くなることから、磁性体12が用紙10の表裏面近くに存在した場合でも、パルプ繊維が外周面に絡まった状態で存在することとなり、その結果、磁性体12が用紙10の表裏面への露出が抑制されると考えられるためである。
【0014】
以下、本実施形態に係る用紙10の各構成について詳細に説明する。
【0015】
まず、磁性体12について説明する。
磁性体12は、例えば、図3に示すように、外周面に凹凸(凸部12A及び凹部12Bからなる凹凸)を持つ。
【0016】
磁性体12は、具体的には、例えば、径が長手方向に一定(厳密に一定であるわけではない)の磁性体本体14と、磁性体本体14の外周面に部分的に設けられた被覆層16と、で構成されている。
磁性体12において、例えば、被覆層16は、磁性体本体14の外周面の周方向に沿って筒状に形成されており、これが磁性体本体14の長手方向(長さ方向)に沿って離間した状態で複数設けられている。
【0017】
磁性体12は、部分的に設けられた被覆層16より、被覆層16と磁性体本体14とで段差が形成され、凹凸(凸部12A及び凹部12Bからなる凹凸)が付与されている。つまり、磁性体12では、例えば、部分的に設けられた被覆層16により凸部12Aが構成され、隣合う離間した被覆層16同士の間隙により凹部12Bが構成されている。
【0018】
磁性体12において、凸部12Aの高さ(本実施形態では被覆層16の厚み)は、例えば、1μm以上(望ましくは5μm以上100μm以下)であることがよい。
また、凹部12Bの幅(本実施形態では隣合う離間した被覆層16同士の間隙:磁性体本体14長手方向に沿った長さ)は、例えば、30μm以上(望ましくは50μm以上1000μm以下)であることがよい。
本凸部12Aの高さ及び凹部12Bの幅を満たすと、磁性体12がパルプ繊維と絡み易くなり、特に、磁性材料の表裏面への露出を抑制し易くなる。
【0019】
磁性体12において、凸部12Aと凹部12Bとの境界部(つまり、本実施形態では被覆層16の端面)は、磁性体本体14の長手方向に対して直交していてもよいし(図3(A)、図3(B)参照)、傾斜していてもよい(図3(C)、図3(D)参照)。
また、部分的に設けられる複数の被覆層16の幅(凸部12Aの幅:磁性体本体14長手方向に沿った長さ)は、一定であってもよいし(図3(A)、図3(C)、図3(D))、異なっていてもよい(図3(B)参照)
また、隣合う離間した被覆層16同士の間隙(凹部12Bの幅::磁性体本体14長手方向に沿った長さ)も、一定であってもよいし(図3(A)、図3(B))、異なっていてもよい(図3(C)、図3(D)参照)
また、凸部12Aと凹部12Bとは、磁性体12の断面形状(磁性体12の長手方向に沿って切断した形状)において、屈曲して構成されてもよいし(図3(A)、図3(B)、図3(C)、図3(D)参照)、湾曲して構成されていてもよい(図3(E))。
なお、図3では、本境界部(つまり被覆層16の端面)は、平坦面で示しているが、これに限られず、非平坦面であってもよい(例えば、後述するガラスで構成した被覆層16を破壊して凹凸を形成した場合、複数の突起を有する非平坦面となる)。
【0020】
磁性体本体14について説明する。
磁性体本体14は、大バルクハウゼン効果を起こす特性を有する磁性材料からなるものであれば、その磁気的物性、組成、形状等は特に限定されるものではない。
但し、磁性体本体14の磁気的物性としては、ヒステリシスループがほぼ長方形で、保持力(Hc)が比較的小さいことがよい。
【0021】
磁性体本体14の組成としては、例えば、磁性元素(例えば、Co、Fe、Ni)、遷移金属類及びガラス形成元素(例えばSi,B,C,P)を含む合金(例えば、Co系、Fe系、Ni系、これらの混合系などがあり、具体的にはCo−B―Si、Co−Fe―B−Siなど)が挙げられ、その構成元素の組成比率や製造方法を選択することにより様々な磁気特性をもつものが利用される。なお、上記元素からなるアモルファス合金の色相はその元素の比率にさほど影響されない。
【0022】
磁性体本体14の形状としては、大バルクハウゼン効果を起こすのに適した形状であれば特に限定されないが、大バルクハウゼン効果を起こすのには断面積に対して長さが必要となってくることから、線状(ワイヤ状)である必要がある。
なお、線状(ワイヤ状)とは、断面形状(磁性体本体14の長手方向に対して交差方向に沿って切断した形状)として円形、矩形状又はその他形状のものが、直線状又は湾曲状に延びた形状を含む概念である。
【0023】
磁性体本体14は、磁性体が大バルクハウゼン効果を有するためには、外径が10μm以上であることがよい。
このため、例えば、厚みが80μm以上120μm以下の用紙に含ませる場合、磁性体本体14は、例えば、その断面形状が円形で、の外径が10μm以上60μm以下(望ましくは15μm以上55μm以下、より望ましくは15μm以上35μm以下)であることがよい。一方、磁性体本体14の長さは、外径に依存し、例えば、外径が10μm以上60μm以下の場合、10μm以上40mm以下(望ましくは10mm以上30mm、より望ましくは15mm以上25mm以下)であることがよい。
【0024】
磁性体は、例えば、磁性材料を溶融し、それを所望の断面形状に対応した形状の吐出口を通過させた後、冷却することにより得られる。具体的には、例えば、USP3,256,584に記載される製造方法(Taylor−Ulitovsky法)や1つの高速回転している冷却ロール上に溶融合金を供給して薄帯を得る、いわゆる単ロール法や、1対の高速回転している冷却ロール間に溶融金属を供給して薄帯を得る双ロール法などがある。
【0025】
次に、被覆層16について説明する。
被覆層16を構成する材料としては、公知の絶縁性材料であれば特に限定されず、例えば、樹脂材料(例えばポリエステル樹脂)、無機材料(例えば酸化ケイ素等)、ガラス等が挙げられる。
【0026】
被覆層16の形成方法としては、特に限定されず、被覆層16を構成する材料に応じてスパッタリングやCVD(Chemical Vapor Deposition)、真空蒸着等の気相成膜法や、浸漬塗布、ローラー塗布、スプレー塗布、ゾルゲル法を利用したコーティング等の液相成膜法のような公知の薄膜形成方法が挙げられ、均一且つより膜厚の薄い被覆層16を形成する上では気相成膜法がよい。
【0027】
また、ガラスで構成された被覆層16を形成する場合、例えば、USP3,256,584に記載される製造方法(Taylor−Ulitovsky法)を利用してもよい。具体的には、例えば、ガラス管内に金属合金をチャージして、ガラス管の先端を誘導コイルで過熱して融解し、金属融解物質の周囲(磁性体本体14の周囲)を融解したガラスで被覆した状態を作り出し、それを冷却媒体で急冷することにより、磁性体本体14の外周面に、ガラスで構成された被覆層16を形成する。
【0028】
なお、被覆層16の形成は、磁性体本体14(つまり、そのワイヤ化)と同時に実施してもよい。例えば、溶融状態の磁性体材料をワイヤー状として加工し、磁性体本体14を得た直後に、磁性体本体14の冷却も兼ねてCVD等の気相成膜法により絶縁層を形成してもよい。
【0029】
そして、被覆層16を磁性体本体14の外周面に部分的に形成する方法としては、例えば、下記方法が挙げられる。
1)上記方法に従って磁性体本体14の外周面全面に被覆層16を形成した後、当該被覆層16に対して、部分的に機械的付加(例えば圧力、摩擦、衝撃等の付加)を与えて、当該被覆層16を部分的に除去することにより、被覆層16を磁性体本体14の外周面に部分的に形成する方法
2)上記方法において、冷却媒体による急冷条件を変化させるあるいは製造速度を一定条件で変化させることで、被覆層16を磁性体本体14の外周面に部分的に形成する方法、
3)ガラス被覆でなく例えば一般的な熱可塑性樹脂をブレード等で磁性体にコーティングし、コーティング後、一定間隔で熱可塑性樹脂コーティング層を削ることで、被覆層16を磁性体本体14の外周面に部分的に形成する方法、
等が挙げられる。
【0030】
次に、磁性体12の含有量について説明する。
磁性体12の含有量は、例えば、用紙10の1枚当たり、1本以上50本以下(望ましくは3本以上40本以下、より望ましくは5本以上30本以下)であることがよい。
【0031】
なお、磁性体12は、上記構成に限られず、例えば、
1)図4(A)に示すように、磁性体本体14の外周面に連続して設けられた被覆層16に、切欠きを複数設け、切欠きによって凹凸が付与された形態、
2)図4(B)に示すように、磁性体本体14の外周面に、部分的に厚みの異なる領域を持つ被覆層16を設け、その厚みの異なる領域間により凹凸が付与された形態、
であってもよい。
【0032】
以上説明した磁性体12の中でも、磁性体本体14と、磁性体本体14の外周面に部分的に設けられ、ガラスを含んで構成された被覆層16と、を有して構成された磁性体12であることがよい。
これは、ガラス被覆時の温度制御により磁性体本体14の外周面に部分的に形勢したり、部分的に厚を異ならせて磁性体本体14の外周面に被覆層16を形成し易く、簡易に磁性体12の外周面に凹凸を付与できるためである。また、ガラスが衝撃で割れ易く、ガラスで構成された被覆層16を磁性体本体14の外周面全面に形成した後、衝撃により被覆層16部分的に除去し易く、簡易に磁性体12の外周面に凹凸を付与できるためである。
【0033】
次に、パルプ繊維について説明する。
パルプ繊維としては公知のものが挙げられる。
パルプ繊維として具体的には、例えば、木材パルプ繊維(例えば、広葉樹晒クラフトパルプ繊維、広葉樹未晒クラフトパルプ繊維、針葉樹晒クラフトパルプ繊維、針葉樹未晒クラフトパルプ繊維、広葉樹晒亜硫酸パルプ繊維、広葉樹未晒亜硫酸パルプ繊維、針葉樹晒亜硫酸パルプ繊維、針葉樹未晒亜硫酸パルプ繊維等)、非木材パルプ繊維(例えば、綿パルプ繊維、麻パルプ繊維、ワラ(例えば稲ワラ、麦ワラ)パルプ繊維、竹パルプ繊維、葦パルプ繊維、ケナフパルプ繊維、バガスパルプ繊維等)が挙げられる。
パルプ繊維として具体的には、例えば、木材やチップを機械的にパルプ化したグランドウッドパルプ繊維、木材やチップに薬液を染み込ませた後に機械的にパルプ化したケミメカニカルパルプ繊維、及び、チップをやや軟らかくなるまで蒸解した後にリファイナーでパルプ化したサーモメカニカルパルプ繊維等も挙げられる。
パルプ繊維は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0034】
これらの中も、針葉樹パルプ繊維(例えば、針葉樹晒クラフトパルプ繊維、針葉樹未晒クラフトパルプ繊維、針葉樹晒亜硫酸パルプ繊維、針葉樹未晒亜硫酸パルプ繊維等)、非木材パルプ繊維がよい。これら、針葉樹パルプ繊維及び非木材パルプ繊維は、他のパルプ繊維に比べ、繊維長が長い傾向があり、磁性体12と絡み易く、特に、磁性材料の表裏面への露出を抑制し易くなる。
ここで、針葉樹パルプ繊維及び非木材パルプ繊維から選択される少なくとも1種の含有量は、全パルプ繊維に対して1質量%以上100質量%以下(望ましくは5質量%以上80質量%以下)であることがよい。
【0035】
パルプ繊維は、バージンパルプ繊維のみで使用してもよいし、必要に応じて古紙パルプ繊維を併用してもよい。
【0036】
特に、バージンパルプ繊維は、塩素ガスを使用せず二酸化塩素を使用する漂白方法(Elementally Chlorine Free;ECF)や塩素化合物を一切使用せずにオゾン/過酸化水素等を主に使用して漂白する方法(Total Chlorine Free;TCF)で漂白処理されたものであることがよい。
【0037】
また、古紙パルプ繊維の原料として、製本、印刷工場、断裁所等において発生する裁落、損紙、幅落しした上白、特白、中白、白損等の未印刷古紙;印刷やコピーが施された上質紙、上質コート紙などの上質印刷古紙;水性インク、油性インク、鉛筆などで筆記された古紙;印刷された上質紙、上質コート紙、中質紙、中質コート紙等のチラシを含む新聞古紙;中質紙、中質コート紙、更紙等の古紙;が挙げられる。
【0038】
古紙パルプ繊維としては、古紙原料を、オゾン漂白処理又は過酸化水素漂白処理の少なくとも一方で処理して得られたものが望ましい。また、より白色度の高い原紙を得るためには、上記漂白処理によって得られた古紙パルプの配合率を50重量%以上100重量%以下とすることが望ましい。さらに資源の再利用という観点からは、古紙パルプの配合率を70重量%以上100重量%以下とすることがより望ましい。
【0039】
次に、填料その他添加剤について説明する。
用紙10に添加する填料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、チョーク、カオリン、焼成クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、セリサイト、ホワイトカーボン、サポナイト、カルシウムモンモリロナイト、ソジウムモンモリロナイト、ベントナイト等の白色無機顔料、及びアクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、尿素樹脂、等の有機顔料が挙げれる。また、古紙を配合する場合には、
填料は、古紙原料に含まれる灰分を予め推定して添加量を調整することがよい。
【0040】
用紙10には、内添サイズ剤を添加することがよい。内添サイズ剤としては、中性抄紙に用いられる、中性ロジン系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸(ASA)、アルキルケテンダイマー(AKD)、石油樹脂系サイズ剤が挙げられる。
【0041】
用紙10の表面をカチオン性に調整する場合には、例えば、親水性のカチオン樹脂等を表面に処理してもよい。
カチオン性樹脂の用紙10内部への浸透を抑制するためには、カチオン性樹脂を塗布する前の用紙サイズ度は10秒以上60秒未満であることがよい。
【0042】
用紙10には、必要に応じて紙力増強剤を内添あるいは外添してよい。
紙力増強剤としては、でんぷん、変性でんぷん、植物ガム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ジアルデヒドでんぷん、ポリエチレンイミン、エポキシ化ポリアミド、ポリアミド・エピクロルヒドリン系樹脂、メチロール化ポリアミド、キトサン誘導体等が挙げられる。
【0043】
用紙10には、染料、pH調整剤等、通常の紙媒体に配合される各種助剤を添加してもよい。
【0044】
なお、用紙10には、必要に応じて表面サイズ液で表面処理したり、コート層を設ける表面処理を行ってもよい。表面処理は、表面サイズ液や、コート層形成用の塗工液をサイズプレス、シムサイズ、ゲートロール、ロールコーター、バーコーター、エアナイフコーター、ロッドブレードコーター、ブレードコーター等の通常使用されている塗布手段によって、原紙に塗布することにより行うことができる。s
また、用紙の厚みとしては、例えば80μm以上120μm以下であることがよい。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0046】
[実施例1]
(磁性体Aの作製)
・ガラス被覆層を部分的に設けて凹凸が形成された磁性体(図3等)
Taylor−Ulitovsky法によりガラス被覆された磁性体を製造(主成分Co,Ni 外径50μm 内径30μm)し、40mmの長さにカッティングした磁性体ワイヤ1gを500mlビーカーに(水400ml)に投入しスターラー(LABO−STIRRER MODEL LR−51A ヤマト科学株式会社製)で30分攪拌した。攪拌に使用したフィンは中心からの長さが30mm、フィン幅が12mm、羽根の数を4枚(長方形)のものとした。攪拌速度は前記スターラーのメモリ(10段階)の10(最速)とした。攪拌後、磁性体を乾燥した。
このようにして磁性体Aを作製した。
【0047】
(パルプスラリーの調整)
・針葉樹パルプを用いたパルプスラリー
LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)90質量部と、NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)10質量部とを含むパルプスラリー中に、パルプ固形分100質量部に対して、カチオン化デンプン(商品名:MS4600、日本食品化学工業(株)製)0.15質量部およびアルケニル無水コハク酸(ファイブラン81、日本NSC社製)0.1質量部を添加した。
【0048】
(用紙の作製)
得られたパルプスラリー(固形分濃度1.0質量%)に磁性体Aを10本配合し丸型シートマシン(熊谷理機工業株式会社製)により手抄きシートを作製した。
【0049】
作製した手抄きシートは、角型シートマシンプレス(熊谷理機工業株式会社製)で10kgf/cmの圧力で1分間プレスし、その後KRK回転型乾燥機(熊谷理機工業株式会社製)で加熱温度100℃、回転速度100cm/minで乾燥し、坪量86g/mの用紙を得た。
【0050】
[実施例2]
(磁性体Bの作製)
・樹脂被覆層を部分的に設けて凹凸が形成された磁性体(図3等)
単ロール法で製造した磁性リボン(主成分Co,Ni 幅80mm 長さ:200mm
厚さ40μm)に熱可塑性ポリエステル樹脂(バイロナールMD1500 東洋紡績株
式会社製)を片面の塗布厚が25〜30μmになるように両面に塗布、乾燥した。乾燥
後、1mm間隔で幅方向に幅400〜600μm、深さが15〜20μm程度になるよ
うに塗布面を削り溝を作成した。その後、幅100μm、長さ200mmの短冊を作成
し、長さを25mmにカッティングした。
このようにして磁性体Bを作製した。
【0051】
(用紙の作製)
磁性体Aに代えて、磁性体Bを用いた以外は、実施例1と同様にしてパルプスラリーを調整し、そして、用紙を作製した。
磁性体磁性体磁性体磁性体磁性体
【0052】
[実施例3]
(パルプスラリーの調整)
・非木材パルプを用いたパルプスラリー
LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)90質量部と、ケナフ(非木材パルプ)10質量部とを含むパルプスラリー中に、パルプ固形分100質量部に対して、カチオン化デンプン(商品名:MS4600、日本食品化学工業(株)製)0.15質量部およびアルケニル無水コハク酸(ファイブラン81、日本NSC社製)0.1質量部を添加した。
このようにしてパルプスラリーを調整した。
【0053】
(用紙の作製)
得られたパルプスラリーを用いた以外は、実施例1と同様にして用紙を作製した。
【0054】
[実施例4]
(パルプスラリーの調整)
・針葉樹パルプ及び非木材パルプ以外のパルプを用いたパルプスラリー
LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)100質量部を含むパルプスラリー中に、パルプ固形分100質量部に対して、カチオン化デンプン(商品名:MS4600、日本食品化学工業(株)製)0.15質量部およびアルケニル無水コハク酸(ファイブラン81、日本NSC社製)0.1質量部を添加した。
このようにしてパルプスラリーを調整した。
【0055】
(用紙の作製)
得られたパルプスラリーを用いた以外は、実施例1と同様にして用紙を作製した。
【0056】
[比較例1]
(比較磁性体の作製)
・凹凸がない磁性体
Taylor−Ulitovsky法によりガラス被覆された磁性体ワイヤを製造(主成分Co,Ni 外径50μm 内径30μm)し、40mmの長さにカッティングした。
このようにして比較磁性体を作製した。
【0057】
(用紙の作製)
磁性体Aに代えて、比較磁性体を用いた以外は、実施例1と同様にしてパルプスラリーを調整し、そして、用紙を作製した。
【0058】
[評価]
得られた用紙について、磁性体の用紙表裏面の露出度合いを以下のようにして評価した。
得られた用紙の磁性体配合部をマイクロスコープ(VH−8000 株式会社キーエンス製)を用い、150倍の倍率で撮影した(図5参照)。倍率は150倍以上とした。磁性体配合部の撮影は、得られた用紙の表裏両面から行い、両面とも評価した。撮影した画像からパルプ繊維被覆部と非被覆部を目視で確認し、磁性体中心部での非被覆部の長さ(磁性体の長手方向に沿った長さ)を測定した(図6参照)。その結果を下記式の当てはめパルプ繊維被覆率を算出した。
式:パルプ繊維被覆率(%)=〔(磁性体全長−露出部長さ合計)/磁性体全長〕×100
評価基準は、以下の通りである。
A:磁性体のパルプ繊維被覆率が、10本平均で80%以上
B:磁性体のパルプ繊維被覆率が、10本平均で60%以上80%未満
C:磁性体のパルプ繊維被覆率が、10本平均で40%以上60%未満
D:磁性体のパルプ繊維被覆率が、10本平均で25%以上40%未満
E:磁性体のパルプ繊維被覆率が、10本平均で25%未満
【0059】
【表1】

【0060】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、磁性体の用紙表裏面の露出が抑制されていることがわかる。
特に、針葉樹パルプ、非木材パルプを使用した実施例1〜3は、これを用いない実施例4に比べ、磁性体の用紙表裏面の露出が抑制されていることがわかる。
【符号の説明】
【0061】
10 用紙
12 線状の磁性材料(磁性体)
12A 凸部
12B 凹部
14 磁性体本体
16 被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ繊維と
大バルクハウゼン効果を有し、外周面に凹凸を持つ線状の磁性材料と、
を含む用紙。
【請求項2】
前記線状の磁性材料が、線状の磁性材料本体と、前記線状の磁性材料本体の外周面に部分的に設けられ、ガラスを含んで構成された被覆層と、を有して構成される請求項1に記載の用紙。
【請求項3】
前記パルプ繊維が、針葉樹パルプ繊維及び非木材パルプ繊維から選択される少なくとも1種が配合されている請求項1又は2に記載の用紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−229507(P2012−229507A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98293(P2011−98293)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】