説明

田植機

【課題】省エネ効果を高めることができ、エンジンによる無駄な燃料消費を抑えることが可能な田植機を提供する。
【解決手段】田植機1は、エンジン14と、HST21aおよび遊星歯車機構21bを有するHMT21と、主変速レバー65と、苗継ぎ位置検出スイッチ65aと、モータ71と、モータ用ポテンショメータ71aと、変速ペダル67と、ペダル用ポテンショメータ67aと、制御装置100と、を備え、制御装置100は、苗継ぎ位置検出スイッチ65aから苗継ぎ位置検出信号を取得しない場合でペダル用ポテンショメータ67aから変速ペダル67が踏み込まれていないことを示すペダル信号を取得するときにエンジン14が第一アイドリング回転数で回転するようにモータ71を駆動し、苗継ぎ位置検出スイッチ65aから苗継ぎ位置検出信号を取得する場合にエンジン14が第二アイドリング回転数で回転するようにモータ71を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機のエンジン回転数を変更する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、田植機に関して、エンジンの回転の回転数を変更する技術は公知となっている(例えば、特許文献1)。
【0003】
従来、田植機に関して、レバーやペダル等を用いてエンジンの回転数を変更する技術は公知となっている(例えば、特許文献1)。
【0004】
変速ペダルの操作により無段変速を行う田植機においては、変速ペダルの踏み込み操作が行われていないときには走行停止状態(アイドリング状態)にあり、エンジンの回転数はアイドリング回転数で回転している。
作業時におけるアイドリング回転数は、前記変速ペダルの踏み込み操作が行われて田植機が発進される際に、田植機がスムーズに発進できる回転数に設定されている。
しかし、作業者が苗継ぎ作業を行う場合等では、田植機をしばらくの間、走行停止状態にしておくので、エンジンの回転数は、田植機を即座に発進させるような回転数まで高める必要がなく、エンジンが停止しない程度の低い回転数でよいため、無駄な燃料消費が増大する点で不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−199447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の如き課題を鑑みてなされたものであり、エンジンによる無駄な燃料消費を抑えることが可能な田植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1に記載の田植機は、
エンジンと、
前記エンジンの動力を変速して車輪に伝達する変速機と、
前記変速機に接続され、苗継ぎ位置を含む複数の変速位置に操作可能であり、前記変速位置に操作されるときに、操作された変速位置に対応するように前記変速機の変則段を変更する主変速レバーと、
前記主変速レバーが前記苗継ぎ位置にあるか否かを検出して、前記苗継ぎ位置にある場合には苗継ぎ位置検出信号を出力する苗継ぎ位置検出装置と、
前記エンジンの回転数の変更を行うためのアクチュエータと、
前記アクチュエータの駆動量を検出するアクチュエータ駆動量検出装置と、
前記アクチュエータを操作するための変速ペダルと、
前記変速ペダルの踏み込み量を検出して、前記踏み込み量を示すペダル信号を出力するペダル操作量検出装置と、
前記苗継ぎ位置検出装置、アクチュエータ、ペダル操作量検出装置、および前記アクチュエータ駆動量検出装置に接続され、前記苗継ぎ位置検出装置が出力する苗継ぎ位置検出信号およびペダル操作量検出装置が出力するペダル信号に基づいて前記アクチュエータの目標駆動量を算出して、前記アクチュエータ駆動量検出装置の検出値が前記目標駆動量になるように前記アクチュエータを駆動することにより、前記アクチュエータに前記エンジンの回転数を変更させる制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記苗継ぎ位置検出装置から苗継ぎ位置検出信号を取得しない場合で、前記ペダル操作量検出装置から前記変速ペダルが踏み込まれていないことを示すペダル信号を取得するときに、前記エンジンが第一アイドリング回転数で回転するように前記アクチュエータを駆動し、
前記苗継ぎ位置検出装置から苗継ぎ位置検出信号を取得する場合に、前記エンジンが前記第一アイドリング回転数よりも低い回転数である第二アイドリング回転数で回転するように前記アクチュエータを駆動する。
【0009】
請求項2に記載の田植機においては、
前記第一アイドリング回転数は、前記田植機を発進させる際に即応可能な回転数であり、
前記第二アイドリング回転数は、前記エンジンが停止しない回転数である。
【0010】
請求項3に記載の田植機においては、
前記エンジンを始動させるための操作具であり、前記エンジンを始動させるための始動操作が行われるときに始動信号を出力する始動装置を備え、
前記制御装置は、
前記始動装置に接続され、
前記始動装置から始動信号を取得するとともに、前記苗継ぎ位置検出装置から苗継ぎ位置検出信号を取得する場合で、前記ペダル操作量検出装置から前記変速ペダルが踏み込み操作されていないことを示すペダル信号を取得するときに、前記エンジンが前記第一アイドリング回転数で回転するように前記アクチュエータを駆動し、
前記始動装置から始動信号を取得するとともに、前記苗継ぎ位置検出装置から苗継ぎ位置検出信号を取得した後に、再び苗継ぎ位置検出信号を取得する場合に、前記エンジンが前記第二アイドリング回転数で回転するように前記アクチュエータを駆動する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1においては、苗継ぎ作業を行う場合等にエンジンを第二アイドリング回転数で回転させておくことで、省エネ効果を高めることができ、エンジンによる無駄な燃料消費を抑えることが可能である。
【0013】
請求項2においては、第一アイドリング回転数では、田植機がスムーズに発進することが可能となる。また、第二アイドリング回転数では、エンジンの燃料消費を抑えることが可能となる。
【0014】
請求項3においては、主変速レバーが苗継ぎ位置に操作されている状態で始動装置によりエンジンが始動された場合でも、エンジンの始動をスムーズに行うことが可能であり、エンジンの始動性の点で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る田植機の全体側面図。
【図2】図1に示す田植機を上方から見たときの概略図。
【図3】図1に示す田植機において、前車輪および後車輪への動力伝達構造を示す図。
【図4】図1に示す田植機において、植付部への動力伝達構造を示す図。
【図5】図1に示す田植機のダッシュボード周辺を示す図。
【図6】図1に示す田植機の制御装置を示すブロック図。
【図7】主変速レバーが植付位置に操作されているときの、変速ペダルの回動角と、ペダル用ポテンショメータの検出軸の回動角と、モータ用ポテンショメータの回動角と、エンジンの回転数と、田植機の車速と、の関係を示す図。
【図8】主変速レバーが中立位置または苗継ぎ位置に操作されているときの、変速ペダルの回動角と、ペダル用ポテンショメータの検出軸の回動角と、モータ用ポテンショメータの回動角と、エンジンの回転数と、田植機の車速と、の関係を示す図。
【図9】キースイッチと、苗継ぎ位置検出スイッチと、モータ用ポテンショメータの回動角(モータの位置)と、の関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、本発明の一実施形態に係る田植機1の全体構成について説明する。なお、本実施形態においては、田植機は八条植えの田植機とするが、これは特に限定するものではなく、例えば六条植えや十条植えの田植機であってもよい。
【0017】
図1および図2に示すように、田植機1は、走行部10と植付部40とを有し、走行部10により走行しながら、植付部40により苗を圃場に植え付けることができるように構成される。植付部40は、走行部10の後方に配置されて、この走行部10の後部に昇降機構30を介して昇降可能に連結される。
【0018】
走行部10においては、エンジン14が車体フレーム11の前部に設けられて、ボンネット15により被覆される。ミッションケース20が車体フレーム11の前部に支持されて、エンジン14の後方に配置される。図3に示すように、ミッションケース20の内部には、油圧−機械式無段変速機(HMT:HydroMechanicalTransmission)21、主変速機構22、クラッチ23、および制動装置24が搭載される。
【0019】
HMT21は、エンジン14からの動力を無段階に変速可能な油圧式無段変速機(HST:HydroStaticTransmission)21aと、エンジン14からの動力とHST21aからの動力とを合成することが可能な遊星歯車機構21bと、を組み合わせたものである。
【0020】
主変速機構22は、歯合するギアの組み合わせを変更することにより、HMT21からの動力を複数段に変速可能なものである。
【0021】
クラッチ23は、切断または接続されることにより、HMT21から主変速機構22への動力の伝達の可否を切り換えるものである。
また、制動装置24は、主変速機構22の出力軸の回動を制動することができるものである。
【0022】
図1および図3に示すように、フロントアクスルケース6が車体フレーム11の前部に支持され、前車輪12が当該フロントアクスルケース6の左右両側に取り付けられる。リアアクスルケース7が車体フレーム11の後部に支持され、後車輪13が当該リアアクスルケース7の左右両側に取り付けられる。
【0023】
そして、エンジン14の動力がミッションケース20に伝達され、ミッションケース20の内部にあるHMT21および主変速機構22を介して左右の前車輪12と左右の後車輪13とにそれぞれ伝達されて、前車輪12および後車輪13が回転作動するように構成される。これにより、走行部10が前進または後進走行可能とされる。
【0024】
図1および図2に示すように、走行部10において、車体フレーム11の前後中途部に運転操作部60が設けられる。運転操作部60の前部には、ダッシュボード61が配置される。ダッシュボード61の左右中央部には操向ハンドル64が配置され、さらにダッシュボード61には主変速レバー65、キースイッチ66(図5参照)などが配置される。運転操作部60の後部には、運転席62が操向ハンドル64の後方に位置するように配置される。
【0025】
また、運転操作部60の操向ハンドル64や運転席62の周りには、変速ペダル67、ブレーキペダル68(図5参照)、一部を乗降用ステップとする車体カバー63、その他のレバーやスイッチ等の操作具が配置される。これらの操作具によって、走行部10および植付部40に対して適宜の操作を行うことが可能とされる。なお、操作具の詳細な構成については後述する。
【0026】
走行部10において、予備苗載台17が車体フレーム11の前部の左右両側から立設された各取付フレーム16に取り付けられて、ボンネット15の左右両側方に配置される。そして、予備苗が予備苗載台17に載置されて、植付部40への苗補給が可能とされる。
【0027】
図1、図2、および図4に示すように、植付部40においては、植付ミッションケース50が植付フレーム49の下部中央付近に支持され、伝動軸51が当該植付ミッションケース50から左右両側方に延設される。四つの植付伝動ケース46がそれぞれ伝動軸51から後方に延設されて、左右方向に適宜の間隔をとって配置される。
【0028】
ロータリケース44が各植付伝動ケース46の後端部左右両側に回動自在に支持される。ロータリケース44は植付条数と同数、即ち本実施形態では八つ備えられる。そして、二つの植付爪45が、ロータリケース44の回転支点を挟むように、このロータリケース44の長手方向両側にそれぞれ取り付けられる。
【0029】
苗載台41が植付伝動ケース46の上方に前高後低の傾斜状態で配置されて、植付フレーム49の後部に上下の図示せぬガイドレールを介して左右方向に往復動可能に取り付けられる。苗載台41は、横送り機構52により左右往復横送り可能とされる。
【0030】
複数条(8条)の苗マット載置部を備える苗載台41は、それぞれの下端側が一つのロータリケース44と対向するように、左右方向に並べられる。そして、苗マットが各苗載台41に載置されて、ロータリケース44の回転時に植付爪45により1株の苗が当該苗載台41上の苗マットから切り取り可能とされる。
【0031】
条数に合わせた苗縦送りベルト47が苗載台41に設けられる。苗縦送りベルト47は、苗載台41が左右往復横送りのストローク端に到達するごとに、縦送り機構53により苗載台41上の苗マットを下方へ向かって縦送りするように作動可能とされる。
【0032】
そして、エンジン14の動力がミッションケース20、株間変速ケース54、植付ミッションケース50などを介して各ロータリケース44に伝達されて、このロータリケース44が回転作動するように構成される。これにより、ロータリケース44の回転作動にともなって、二つの植付爪45が交互に苗を苗載台41上の苗マットから取り出して圃場に植付可能とされる。
【0033】
同時に、エンジン14の動力がミッションケース20、株間変速ケース54、植付ミッションケース50などを介して横送り機構52および縦送り機構53に伝達されて、苗載台41が横送り機構52により左右往復横送りされ、苗載台41上の苗マットが苗載台41の左右往復横送りに応じて縦送り機構53により苗縦送りベルト47を介して下方へ向けて縦送りされるように構成される。これにより、苗載台41上の苗マットが植付爪45に対して適切な位置に移動される。
【0034】
図1および図2に示すように、植付部40においては、また、線引きマーカ48が植付フレーム49の左右両側に回動可能に支持される。左右の各線引きマーカ48は、その基端側を回動支点として、上方へ向かって回動されることにより収納され、この収納状態から下方へ向かって回動されることにより先端側を左または右側方へ突出させて、圃場に線引きを行うことができるように構成される。
【0035】
また、前述の昇降機構30が走行部10と植付部40との間に設けられる。具体的には、トップリンク31とロワリンク32とが走行部10と植付部40との間に架設され、昇降用シリンダがロワリンク32と走行部10との間に連結される。そして、この昇降用シリンダの伸縮動作によって、植付部40が走行部10に対して上下方向に回動可能、即ち昇降可能とされる。
【0036】
ここで、エンジン14からロータリケース44、横送り機構52および縦送り機構53に動力を伝達するための動力伝達機構は、図4に示す植付クラッチ55を含み、植付クラッチ55の断接に応じて、エンジン14の動力が苗縦送りベルト47とロータリケース44とに伝達され、または、伝達されないように構成される。
【0037】
次に、本実施形態に係る田植機1の制御に関する構成について説明する。
【0038】
図2、図5、および図6に示す変速ペダル67は田植機1の車速(走行速度)を変更するための操作具であり、より詳細には、エンジン14の回転数、およびHMT21の変速比を変更するための操作具である。変速ペダル67はダッシュボード61の右下方に配置される。
【0039】
図6に示すペダル用ポテンショメータ(ペダル操作量検出装置)67aは変速ペダル67の踏み込み量(回動角)を検出するためのものである。ペダル用ポテンショメータ67aはリンク機構を介して変速ペダル67に連結され、当該変速ペダル67の踏み込み量を検出することができる。より詳細には、変速ペダル67の踏み込み量(回動角)に応じてペダル用ポテンショメータ67aの検出軸が回動され、当該回動角を変速ペダル67の踏み込み量として検出することができる。
変速ペダル67が踏み込み操作されたとき、ペダル用ポテンショメータ67aが変速ペダル67の踏み込み量を示すペダル信号を出力する。
【0040】
図5および図6に示す最高速設定ダイヤル69は田植機1の最高速度を変更するための操作具である。最高速設定ダイヤル69はダッシュボード61の略中央部(操向ハンドル64の前方)に配置される。
【0041】
図2、図5、および図6に示す主変速レバー65は主変速機構22の変速段(変速比)を変更するための操作具である。主変速レバー65はダッシュボード61の左端部(操向ハンドル64の左方)に配置される。主変速レバー65はリンク機構を介してミッションケース20内の主変速機構22に連結される。
主変速レバー65は、路上走行位置、植付位置、苗継ぎ位置、後進位置または中立位置に変更可能である。
主変速レバー65が路上走行位置に切り換えられた場合、主変速機構22の変速段が高速に変更される。この場合、田植機1は高速で走行することができる。
主変速レバー65が植付位置に切り換えられた場合、主変速機構22の変速段が低速に変更される。この場合、田植機1は、主変速機構22の変速段が高速である場合に比べて低速で走行することができる。
主変速レバー65が苗継ぎ位置に切り換えられた場合、主変速機構22の変速段が中立に変更される。この場合、田植機1は走行することができない。またこの場合、後述する苗継ぎ位置検出スイッチ65aにより主変速レバー65が苗継ぎ位置に切り換えられたことを検出し、後述する制御装置100によりエンジン14の回転数を変更する等の所定の制御を行うことができる。
主変速レバー65が後進位置に切り換えられた場合、主変速機構22の変速段が逆転に変更される。この場合、田植機1は後進することができる。
主変速レバー65が中立位置に切り換えられた場合、主変速機構22の変速段が中立に変更される。この場合、田植機1は走行することができない。
【0042】
図6に示す苗継ぎ位置検出スイッチ65aは主変速レバー65が苗継ぎ位置にあることを検出するためのものである。苗継ぎ位置検出スイッチ65aとしてはマイクロスイッチが用いられる。苗継ぎ位置検出スイッチ65aは主変速レバー65の苗継ぎ位置近傍に配置される。苗継ぎ位置検出スイッチ65aは苗継ぎ位置に変更された主変速レバー65と接触することで、当該主変速レバー65が苗継ぎ位置にあることを検出することができる。
主変速レバー65が苗継ぎ位置に操作されたとき、苗継ぎ位置検出スイッチ65aは、当該主変速レバー65が苗継ぎ位置にあることを示す苗継ぎ位置信号を出力する。
【0043】
図2、図5、および図6に示すキースイッチ66はエンジン14を始動または停止させるための操作具である。キースイッチ66はダッシュボード61の右後端部(操向ハンドル64の右後方)に配置される。
キースイッチ66が始動操作されるとき(OFFからONに切り換えられるとき)、エンジン14が始動する。また、このときキースイッチ66は、始動操作が行われたことを示す始動信号を出力する。
キースイッチ66がONの状態のとき、エンジン14が駆動し続ける。
キースイッチ66が停止操作されるとき(ONからOFFに切り換えられるとき)、エンジン14が停止する。また、このときキースイッチ66は、停止操作が行われたことを示す停止信号を出力する。
キースイッチ66がOFFの状態のとき、エンジン14は停止し続ける。
【0044】
図5および図6に示す速度固定レバー70は田植機1の車速を固定(設定した車速を維持)し、または当該速度の固定を解除するための操作具である。速度固定レバー70は操向ハンドル64の軸に取り付けられ、右方に向けて延設される。
速度固定レバー70は、速度固定位置、速度固定解除位置または中立位置に回動可能である。速度固定位置は、速度固定レバー70を後方に回動させた際の位置である。速度固定解除位置は、速度固定レバー70を前方に回動させた際の位置である。中立位置は、速度固定位置と速度固定解除位置の略中間の位置である。速度固定レバー70は、速度固定位置または速度固定解除位置のいずれかに操作された場合であっても、再び中立位置に復帰するように常時付勢されている。
【0045】
図6に示す速度固定スイッチ70aは速度固定レバー70が速度固定位置に操作されたことを検出するためのものである。速度固定スイッチ70aとしてはマイクロスイッチが用いられる。速度固定スイッチ70aは速度固定位置に操作された速度固定レバー70と接触することで、当該速度固定レバー70が速度固定位置に操作されたことを検出することができる。
【0046】
速度固定解除スイッチ70bは速度固定レバー70が速度固定解除位置に操作されたことを検出するためのものである。速度固定解除スイッチ70bとしてはマイクロスイッチが用いられる。速度固定解除スイッチ70bは速度固定解除位置に操作された速度固定レバー70と接触することで、当該速度固定レバー70が速度固定解除位置に操作されたことを検出することができる。
【0047】
図3および図6に示すブレーキペダル68は田植機1を制動するための操作具である。ブレーキペダル68はダッシュボード61の右下方であって、変速ペダル67の左方に配置される。ブレーキペダル68はリンク機構を介して制動装置24に連結される。ブレーキペダル68が踏み込み操作された場合、制動装置24が作動し、田植機1の前車輪12および後車輪13の回動が制動される。
【0048】
図6に示すブレーキ操作検出スイッチ68aはブレーキペダル68が操作されたことを検出するためのものである。ブレーキ操作検出スイッチ68aとしてはマイクロスイッチが用いられる。ブレーキ操作検出スイッチ68aは踏み込み操作されたブレーキペダル68と接触することで、当該ブレーキペダル68が踏み込み操作されたことを検出することができる。
【0049】
図6に示す苗台端検出スイッチ49aは苗載台41が所定の位置(左右方向の終端位置)に到達したことを検出するものである。苗台端検出スイッチ49aとしてはマイクロスイッチが用いられる。苗台端検出スイッチ49aは、植付フレーム49に配置されて、苗載台41に設けられた押圧部と接触することで、当該苗載台41が所定の位置に到達したことを検出することができる。
【0050】
図6に示すモータ(アクチュエータ)71はエンジン14の回転数の変更、HMT21の変速比の変更、クラッチ21cの断接の切り換え、および制動装置21dの動作の切り換えを行うためのアクチュエータである。モータ71はリンク機構を介してエンジン14、HMT21(詳細にはHST21a)、クラッチ21c、および制動装置21dに連結される。
【0051】
より詳細には、モータ71の出力軸はリンク機構を介してエンジン14の調速装置14aに連結される。モータ71により調速装置14aが駆動され、エンジン14の回転数を変更することができる。
モータ71の出力軸はリンク機構を介してHST21aの可動斜板に連結される。モータ71により当該可動斜板の傾斜角度が変更され、HST21aの変速比を変更することができる。
モータ71の出力軸はリンク機構を介してクラッチ21cに連結される。モータ71によりクラッチ21cが切断または接続される。
モータ71の出力軸はリンク機構を介して制動装置21dに連結される。モータ71により制動装置21dが作動されると、前車輪12および後車輪13へと出力される動力を制動することができる。
【0052】
モータ用ポテンショメータ71aはモータ71の出力軸の駆動量(回動角)を検出するためのものである。モータ用ポテンショメータ71aはリンク機構を介してモータ71に連結され、当該モータ71の出力軸の回動角を検出することができる。より詳細には、モータ71の出力軸の駆動量(回動角)に応じてモータ用ポテンショメータ71aの検出軸が回動され、当該回動角をモータ71の出力軸の駆動量として検出することができる。
【0053】
セルモータ72はエンジン14を始動させるためのアクチュエータである。
【0054】
図2、図5、および図6に示すメータパネル73は田植機1の作動やエンジンや異常警報等に関する種々の情報を表示するためのものである。メータパネル73はダッシュボード61の左右略中央であって、操向ハンドル64の前方に配置される。
【0055】
制御装置100は検知信号を入力し、入力した検出信号およびプログラムに基づいて、モータ71、セルモータ72、およびメータパネル73等に制御信号を送信するものである。制御装置100は具体的にはCPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。
【0056】
制御装置100はペダル用ポテンショメータ67aに接続され、ペダル用ポテンショメータ67aによる変速ペダル67の踏み込み量を示す検出信号(ペダル信号)を取得することができる。
制御装置100は最高速設定ダイヤル69に接続され、最高速設定ダイヤル69の操作位置に関する検出信号を取得することができる。
制御装置100は苗継ぎ位置検出スイッチ65aに接続され、苗継ぎ位置検出スイッチ65aから主変速レバー65が苗継ぎ位置にある旨の検出信号(上記苗継ぎ位置検出信号)を取得することができる。
制御装置100はキースイッチ66に接続され、キースイッチ66により始動操作が行われた旨の検出信号(始動信号)、および停止操作が行われた旨の検出信号(停止信号)を取得することができる。
制御装置100は速度固定スイッチ70aに接続され、速度固定スイッチ70aによる速度固定レバー70が速度固定位置に操作された旨の検出信号を取得することができる。
制御装置100は速度固定解除スイッチ70bに接続され、速度固定解除スイッチ70bによる速度固定レバー70が速度固定解除位置に操作された旨の検出信号を取得することができる。
制御装置100はブレーキ操作検出スイッチ68aに接続され、ブレーキ操作検出スイッチ68aによるブレーキペダル68が踏み込み操作された旨の検出信号を取得することができる。
制御装置100は苗台端検出スイッチ49aに接続され、苗台端検出スイッチ49aによる苗載台41が所定の位置に到達した旨の検出信号を取得することができる。
【0057】
制御装置100はモータ71に接続され、モータ71に制御信号を送信し、当該モータ71を駆動することができる。
制御装置100はモータ用ポテンショメータ71aに接続され、モータ用ポテンショメータ71aによるモータ71の回動角の検出信号を取得することができる。
制御装置100はモータ用ポテンショメータ71aによる検出信号が所望の回動角(目標駆動量)になるまでモータ71に制御信号を送信することにより、当該モータ71を所望の回動角まで駆動することができる。
【0058】
制御装置100はセルモータ72に接続され、セルモータ72に制御信号を送信し、当該セルモータ72を駆動することができる。
制御装置100はメータパネル73に接続され、エンジンや作業機の動作状況や異常等を検知したときにその情報を表示することができる。
【0059】
上述の如く構成された田植機1において、制御装置100はキースイッチ66が始動操作された旨の検出信号(始動信号)を取得した場合、セルモータ72を駆動して、エンジン14を始動させる。また、制御装置100はキースイッチ66が停止操作された旨の検出信号(停止信号)を取得した場合、モータ71を駆動して、調速装置14aによる燃料の供給を遮断し(本実施形態ではディーゼルエンジン、ガソリンエンジンの場合は点火装置を停止させる)、エンジン14を停止させる。
【0060】
また、制御装置100は変速ペダル67の踏み込み量を示す上記ペダル信号を取得した場合、取得した上記ペダル信号に基づいてモータ71の目標駆動量を算出する。そして、制御装置100は算出した目標駆動量だけモータ71を駆動して、エンジン14の回転数の変更、HMT21の変速比の変更、クラッチ21cの断接の切り換え、および制動装置21dの動作の切り換えを行う。
【0061】
以下では、変速ペダル67を踏み込み操作した場合における田植機1の基本的な動作について説明する。
なお、説明の便宜上、主変速レバー65は植付位置に操作されていることとする。
また、田植機1の変速ペダル67が、以下の(1−1)〜(1−5)の順序で踏み込み操作されることとする。
【0062】
制御装置100には、変速ペダル67の踏み込み量とモータ71の駆動量との関係(より詳細には、ペダル用ポテンショメータ67aの検出軸の回動角とモータ用ポテンショメータ71aの検出軸の回動角との関係)を示すマップが記憶される。制御装置100は、変速ペダル67の踏み込み量を示す上記ペダル信号を取得した場合、前記マップにおいて、取得した上記ペダル信号(ペダル用ポテンショメータ67aの検出軸の回動角)と対応するモータ71の駆動量(モータ用ポテンショメータ71aの検出軸の回動角)を、目標駆動量として算出する。そして、制御装置100は、モータ用ポテンショメータ71aの検出軸の回動角が前記目標駆動量になるようにモータ71を駆動する。以下、図7を用いて具体的に説明する。
【0063】
(1−1)図7に示すように、変速ペダル67が踏み込み操作されていない場合の当該変速ペダル67の回動角αをα1(度)とする。この場合のペダル用ポテンショメータ67aの検出軸の回動角βをβ1(度)とする。この場合、制御装置100は、図7において、ペダル用ポテンショメータ67aの回動角β1と対応するモータ用ポテンショメータ71aの検出軸の回動角γ1(度)を目標駆動量として算出する。そして、制御装置100は、モータ用ポテンショメータ71aの回動角γがγ1になるようにモータ71を駆動する。
【0064】
モータ用ポテンショメータ71aの回動角γがγ1になるようにモータ71が駆動された場合、リンク機構を介してクラッチ21cが切断される。これによって、エンジン14の動力が前車輪12および後車輪13に伝達されることがなく、田植機1の車速Vは0(m/秒)となる。
また、この場合、リンク機構を介して制動装置21dが作動する。これによって、前車輪12および後車輪13が制動され、田植機1が不意に前進または後進するのを防止することができる。
【0065】
モータ用ポテンショメータ71aの回動角γがγ1になるようにモータ71が駆動された場合、リンク機構を介してエンジン14の回転数NはN1(rpm)に設定される。
また、この場合、リンク機構を介してHST21aの可動斜板の傾斜角度が最大となるように設定される。これによって、エンジン14からの動力とHST21aからの動力が遊星歯車機構21bによって互いに打ち消すように合成され、主変速機構22へ動力が伝達されることがない。
【0066】
(1−2)変速ペダル67が踏み込み操作されて、回動角αが徐々に増加すると、当該回動角αの増加に伴ってペダル用ポテンショメータ67aの検出軸の回動角βも増加する。
【0067】
変速ペダル67の回動角αがα1からα2(α2未満)まで増加すると、ペダル用ポテンショメータ67aの回動角βはβ1からβ2(β2未満)まで増加する。この間、制御装置100は、ペダル用ポテンショメータ67aの回動角βの値にかかわらずモータ用ポテンショメータ71aの回動角γをγ1のまま保持するために、モータ71を駆動しない。
【0068】
モータ用ポテンショメータ71aの回動角γがγ1に保持されている場合、クラッチ23は切断された状態に維持される。
同様に、モータ用ポテンショメータ71aの回動角γがγ1に保持されている場合、制動装置24が作動した状態に維持される。
【0069】
モータ用ポテンショメータ71aの回動角γがγ1に保持されている場合、エンジン14の回転数NはN1のまま維持される。
同様に、モータ用ポテンショメータ71aの回動角γがγ1に保持されている場合、HST21aの可動斜板の傾斜角度が最大のまま維持される。
【0070】
したがって、変速ペダル67が踏み込み操作されてペダル用ポテンショメータ67aの回動角βがβ1からβ2(β2未満)に増加した場合であっても、エンジン14の回転数NはN1のまま一定であり、かつ田植機1の車速Vは0のまま維持される。このようにして、変速ペダル67の踏み込み操作操作に対して田植機1が走行しない領域(いわゆる「遊び」)が設けられる。
【0071】
(1−3)変速ペダル67が踏み込み操作されて、変速ペダル67の回動角αがα2になるとき、すなわちペダル用ポテンショメータ67aの回動角βがβ2になるとき、制御装置100は、モータ用ポテンショメータ71aの回動角γが、回動角γ1から、ペダル用ポテンショメータ67aの回動角β2に対応する回動角γ2まで増加するように、モータ71を駆動する。
【0072】
モータ用ポテンショメータ71aの回動角γがγ1からγ2まで増加するようにモータ71が駆動すると、リンク機構を介してエンジン14の調速装置14aが駆動され、当該エンジン14の回転数NがN1からN2まで増加する。
【0073】
モータ用ポテンショメータ71aの回動角γがγ2になると(γ2を超えると)、クラッチ23は接続される。これによって、エンジン14の動力が前車輪12および後車輪13に伝達可能となる。
同様に、モータ用ポテンショメータ71aの回動角γがγ2になると、制動装置24が解除される。これによって、前車輪12および後車輪13の制動が解除され、田植機1が前進または後進可能となる。
【0074】
(1−4)変速ペダル67が踏み込み操作されて、変速ペダル67の回動角αがα2からα3まで増加すると、ペダル用ポテンショメータ67aの回動角βはβ2からβ3まで増加する。制御装置100は、モータ用ポテンショメータ71aの回動角γが、ペダル用ポテンショメータ67aの回動角β2に対応する回動角γ2からペダル用ポテンショメータ67aの回動角β3に対応する回動角γmaxまで増加するように、モータ71を駆動する。
【0075】
モータ用ポテンショメータ71aの回動角γがγ2からγmaxまで増加するようにモータ71が駆動すると、リンク機構を介してエンジン14の調速装置14aが駆動され、当該エンジン14の回転数NがN1からNmaxまで増加する。
同様に、モータ用ポテンショメータ71aの回動角γがγ2からγmaxまで増加するようにモータ71が駆動すると、リンク機構を介してHST21aの可動斜板の傾斜角度が減少するように駆動される。これによってエンジン14の動力はHMT21を介して前車輪12および後車輪13に伝達されて、田植機1の車速Vは0からVmaxまで増加する。
【0076】
(1−5)変速ペダル67が踏み込み操作されて、変速ペダル67の回動角αがα3からαmaxまで増加すると、ペダル用ポテンショメータ67aの回動角βはβ3からβmaxまで増加する。この間、制御装置100は、ペダル用ポテンショメータ67aの回動角βの値にかかわらずモータ用ポテンショメータ71aの回動角γをγmaxのまま保持するために、モータ71を駆動しない。
したがって、エンジン14の回転数NはNmaxのまま、田植機1の車速VはVmaxのまま、それぞれ維持される。このようにして、変速ペダル67の踏み込み操作に対して田植機1の車速Vが増加しない領域(いわゆる「余裕代」)が設けられる。
【0077】
上述の如く、本実施形態に係る田植機1は、変速ペダル67を踏み込み操作することで、田植機1の車速Vを増加(加速)させることができる。また、上述の説明とは逆に、踏み込み操作された変速ペダル67を元の位置に向かって戻すことで、田植機1の車速Vを減少(減速)させることができる。
【0078】
以下では、主変速レバー65が中立位置に操作されているときの田植機1の状態について図8を用いて説明する。
【0079】
図8に示すように、主変速レバー65が中立位置に操作されているとき、上記したように主変速機構22の変速段が中立位置に変更される。これによりエンジン14の動力が前車輪12および後車輪13に伝達されない状態となり、田植機1は走行することができない状態になる。
従って、主変速レバー65が中立位置に操作さているとき、変速ペダル67の踏み込み量に関わらず、すなわちペダル用ポテンショメータ67aの回動角βの値に関わらず、田植機1の走行停止した状態(V=0)が維持される。
【0080】
なお、主変速レバー65が中立位置に操作さている状態で、変速ペダル67が踏み込み操作されるとき、主変速レバー65が植付位置に操作されているときと同様に、変速ペダル67の踏み込み量に対応して、エンジン14の回転数が変化する。
詳細には、以下に示す(2−1)〜(2−5)のようにエンジン14の回転数が変化する。
【0081】
(2−1)図8に示すように、主変速レバー65が中立位置に操作された状態で、変速ペダル67が踏み込み操作されておらず、変速ペダル67の回動角αがα1のとき、すなわちペダル信号がβ1のとき、モータ用ポテンショメータ71aの回動角γがγ1になる。これにより、エンジン14が回転数N1(第一アイドリング回転数)で回転する。
【0082】
(2−2)上記(2−1)に示す状態から、変速ペダル67が踏み込み操作されて、変速ペダル67の回動角αがα1からα2(α2未満)まで増加するとき、すなわちペダル信号がβ1からβ2(β2未満)まで増加するとき、モータ用ポテンショメータ71aの回動角γをγ1のまま保持される。これにより、エンジン14の回転数Nが、第一アイドリング回転数N1のまま維持される。
【0083】
(2−3)上記(2−2)に示す状態から、変速ペダル67が踏み込み操作されて、変速ペダル67の回動角αがα2になるとき、すなわちペダル信号がβ2になるとき、モータ用ポテンショメータ71aの回動角γがγ1からγ2まで増加する。これにより、エンジン14の回転数Nが、第一アイドリング回転数N1から第二アイドリング回転数N2まで増加する。
【0084】
(2−4)上記(2−3)に示す状態から、変速ペダル67が踏み込み操作されて、変速ペダル67の回動角αがα2からα3まで増加するとき、すなわちペダル信号がβ2からβ3まで増加するとき、モータ用ポテンショメータ71aの回動角γがγ2からγmaxまで増加する。これにより、エンジン14の回転数Nが、第二アイドリング回転数N2からNmaxまで増加する。
【0085】
(2−5)上記(2−4)に示す状態から、変速ペダル67が踏み込み操作されて、変速ペダル67の回動角αがα3からαmaxまで増加するとき、すなわちペダル信号がβ3からβmaxまで増加するとき、モータ用ポテンショメータ71aの回動角γがγmaxのまま保持される。これにより、エンジン14の回転数NはNmaxのまま維持される。
【0086】
以下では、主変速レバー65が中立位置から苗継ぎ位置に操作されるときの田植機1の状態について図8を用いて説明する。
なお、説明の便宜上、主変速レバー65が中立位置に操作されているとき、変速ペダル67が踏み込み操作されておらず、エンジン14が第一アイドリング回転数N1で回転していることとする。
【0087】
主変速レバー65が中立位置から苗継ぎ位置に操作されるとき、HMT21の遊星歯車機構21bの変速段が中立に維持される。これにより、主変速レバー65が中立位置に操作されているときと同様に、エンジン14の動力が前車輪12および後車輪13に伝達されない状態となり、田植機1は走行することができない(V=0)。
【0088】
主変速レバー65が中立位置から苗継ぎ位置に操作されるとき、制御装置100は、苗継ぎ位置検出スイッチ65aから主変速レバー65が苗継ぎ位置にある旨の検出信号(苗継ぎ位置検出信号)を取得する。
【0089】
図8に示すように、制御装置100は、苗継ぎ位置検出信号を取得するとき、モータ用ポテンショメータ71aの回動角γがγ1からγminまで減少ようにモータ71を駆動する。
モータ用ポテンショメータ71aの回動角γがγ1からγminまで減少ようにモータ71が駆動すると、リンク機構を介してエンジン14の調速装置14aが駆動され、エンジン14の回転数Nが第一アイドリング回転数N1から第二アイドリング回転数Nminまで減少する。
【0090】
前記第一アイドリング回転数N1は、変速ペダル67の踏み込み操作により田植機1(走行部10)を発進させる際に即応可能な回転数である(例えば、約1800回転)。
従って、第一アイドリング回転数N1では、田植機1がスムーズに発進することが可能となる。
【0091】
前記第二アイドリング回転数Nminは、上記第一アイドリング回転数N1よりも低い回転数に設定されている(例えば、約1000回転)。
また、第二アイドリング回転数Nminは、エンストしない(エンジン14が停止しない)回転数であり、エンジン14の起動状態を維持可能な最低回転数である。
従って、第二アイドリング回転数Nminでは、エンジン14の燃料消費を抑えることが可能となる。
【0092】
また、主変速レバー65が苗継ぎ位置に操作されている場合、田植機1は変速ペダル67の踏み込み操作による変速操作を受け付けない。
すなわち、制御装置100は、苗継ぎ位置検出信号を取得するとき、取得するペダル信号の値に関係なく(変速ペダル67の踏み込み量に関わらず)、モータ用ポテンショメータ71aの回動角γが一定の大きさγminになるようにモータ71を駆動する。
これにより、主変速レバー65が苗継ぎ位置に操作される場合、変速ペダル67の操作が無効となり、変速ペダル67が踏み込み操作されても、踏み込み量に関係なく、エンジン14の回転数Nが第二アイドリング回転数Nminに維持される。
従って、変速ペダル67の誤操作を防止することが可能である。
【0093】
なお、エンジン14が第二アイドリング回転数Nminで回転しているときの田植機1の状態を苗継ぎエコ状態と称する。
【0094】
また、主変速レバー65が苗継ぎ位置に操作される場合、上記したようにモータ用ポテンショメータ71aの回動角γがγminとなるが、このとき、クラッチ21cは切断された状態に維持されるとともに、制動装置21dが作動した状態に維持される。
【0095】
以上のように構成することで、主変速レバー65が苗継ぎ位置に操作される場合にエンジン14の回転数Nが第二アイドリング回転数Nminまで減少する。従って、作業者が苗継ぎ作業を行う場合等の理由で田植機をしばらくの間停止させておくときに、主変速レバー65を苗継ぎ位置に操作しておくことで省エネ効果を高めることができ、エンジン14による無駄な燃料消費を抑えることが可能である。また、騒音を抑制することが可能である。
【0096】
また、田植機1においては、主変速レバー65が苗継ぎ位置に操作された状態で、キースイッチ66が始動操作された場合、エンジン14が第二アイドリング回転数Nminで回転せず、上記苗継ぎエコ状態に移行しない構成としてもよい。
この場合、エンジン14は、上記(2−1)〜(2−5)に示すように、変速ペダル67の踏み込み量に対応した回転数Nで回転する。
【0097】
従って、主変速レバー65が苗継ぎ位置に操作された状態で、キースイッチ66が始動操作された場合において、変速ペダル67が踏み込み操作されていないとき(変速ペダル67の回動角αがα1のとき)、エンジン14が第一アイドリング回転数N1で回転する(上記(2−1)参照)。
また、同様の場合において、変速ペダル67の回動角αが、α1より大きくα2未満のとき、エンジン14が第一アイドリング回転数N1で回転する(上記(2−2)参照)。
また、同様の場合において、変速ペダル67の回動角αが、α2のとき、エンジン14が回転数N2で回転する(上記(2−3)参照)。
また、同様の場合において、変速ペダル67の回動角αが、α2以上α3未満のとき、エンジン14が回転数Nmaxで回転する(上記(2−4)参照)。
また、同様の場合において、変速ペダル67の回動角αが、α3以上αmax未満のとき、エンジン14が回転数Nmaxで回転する(上記(2−5)参照)。
【0098】
これによると、図9の領域(i)に示すように、主変速レバー65が苗継ぎ位置に操作された状態(苗継ぎ位置検出スイッチがONの状態)で、キースイッチ66がOFFからONに始動操作された場合、モータ用ポテンショメータ71aの回動角γ(モータ位置)がγ1になるようにモータ71が駆動される。これにより、エンジン14が第一アイドリング回転数N1で回転して、上記苗継ぎエコ状態に移行しない。なお、変速ペダル67が踏み込み操作されていないこととする。
すなわち、制御装置100は、始動信号を取得するとともに、苗継ぎ位置検出信号を取得する場合で、ペダル用ポテンショメータ67aからペダル信号β1を取得するとき、モータ用ポテンショメータ71aの回動角γがγ1になるようにモータ71を駆動する。これにより、制御装置100は、エンジン14を第一アイドリング回転数N1で回転させる。
従って、エンジン14が始動時に第一アイドリング回転数N1で回転するので、エンジン14をスムーズに始動させることが可能となる。
【0099】
なお、図9の領域(ii)に示すように、主変速レバー65が中立位置に操作された状態(苗継ぎ位置検出スイッチがOFFの状態)で、キースイッチ66がOFFからONに始動操作された場合、モータ用ポテンショメータ71aの回動角γがγ1になるようにモータ71が駆動される。これにより、エンジン14が第一アイドリング回転数N1で回転する。なお、変速ペダル67が踏み込み操作されていないこととする。
【0100】
また、図9の領域(iii)に示すように、主変速レバー65が苗継ぎ位置に操作されている状態(苗継ぎ位置検出スイッチがONの状態)で、エンジン14が始動された場合(キースイッチ66がOFFからONに始動操作された場合)において、すなわち上記した苗継ぎエコ状態に移行しない場合において、この状態から、主変速レバー65が中立位置(苗継ぎ位置検出スイッチがOFFの状態)→苗継ぎ位置(苗継ぎ位置検出スイッチがONの状態)、の順に操作されたとき、モータ用ポテンショメータ71aの回動角γがγminになるようにモータ71が駆動される構成としてもよい。これにより、エンジン14が第二アイドリング回転数Nminで回転して、上記苗継ぎエコ状態に移行する。
すなわち制御装置100は、キースイッチ66から始動信号を取得するとともに、苗継ぎ位置検出スイッチ65aから苗継ぎ位置検出信号を取得した後に、再び苗継ぎ位置検出信号を取得する場合に、再び取得した苗継ぎ位置検出信号に基づいて、モータ用ポテンショメータ71aの回動角γがγminになるようにモータ71を駆動する。これにより、制御装置100は、エンジン14を第二アイドリング回転数Nminで回転させる。
【0101】
なお、田植機1が施肥仕様の場合、すなわち田植機1が圃場に施肥を行う施肥装置を備えた仕様の場合、主変速レバー65が苗継ぎ位置に操作されるときには、上記施肥装置のブロワが停止されるが、これに対し、主変速レバー65が苗継ぎ位置に操作されないときには、上記ブロワが駆動される構成としてもよい。
これにより、主変速レバー65が苗継ぎ位置に操作されて田植機1が苗継ぎエコ状態となるとき、同時に上記ブロワが停止されるので、消費電力を軽減することが可能であり、バッテリ上がり防止の点で有利である。また、上記ブロワからの騒音を抑制することが可能である。
【0102】
また、主変速レバー65が苗継ぎ位置に操作されている場合、植付クラッチ(PTO)55操作が受け付けられず、植付クラッチ55が常に切られた状態になるように構成してもよい。これにより、植付クラッチ55の誤操作を防止することが可能である。
【0103】
また、主変速レバー65が苗継ぎ位置に操作されている場合、自動植付け(すこやかターン)の自動制御中のブザー音が消去される構成としてもよい。苗継ぎ中は、すこやかターン制御中の場合も多々あり、すこやかターン制御によるブザーが鳴り続けていると耳障りであるが、前述のようにブザー音が消去されるように構成することで解消可能である。
【0104】
以上のように、田植機1は、
エンジン14と、
エンジン14の動力を変速して車輪12・13に伝達する主変速機構22と、
主変速機構22に接続され、苗継ぎ位置を含む複数の変速位置に操作可能であり、前記変速位置に操作されるときに、操作された変速位置に対応するように主変速機構22の変則段を変更する主変速レバー65と、
主変速レバー65が前記苗継ぎ位置にあるか否かを検出して、前記苗継ぎ位置にある場合には苗継ぎ位置検出信号を出力する苗継ぎ位置検出スイッチ65aと、
エンジン14の回転数の変更を行うためのモータ71と、
モータ71の駆動量を検出するモータ用ポテンショメータ71aと、
モータ71を操作するための変速ペダル67と、
変速ペダル67の踏み込み量を検出して、前記踏み込み量を示すペダル信号を出力するペダル用ポテンショメータ67aと、
苗継ぎ位置検出スイッチ65a、モータ71、ペダル用ポテンショメータ67a、およびモータ用ポテンショメータ71aに接続され、苗継ぎ位置検出スイッチ65aが出力する苗継ぎ位置検出信号およびペダル用ポテンショメータ67aが出力するペダル信号に基づいてモータ71の目標駆動量を算出して、モータ用ポテンショメータ71aの検出値が前記目標駆動量になるようにモータ71を駆動することにより、モータ71にエンジン14の回転数を変更させる制御装置100と、
を備え、
制御装置100は、
苗継ぎ位置検出スイッチ65aから苗継ぎ位置検出信号を取得しない場合で、ペダル用ポテンショメータ67aから変速ペダル67が踏み込まれていないことを示すペダル信号を取得するときに、エンジン14が第一アイドリング回転数で回転するようにモータ71を駆動し、
苗継ぎ位置検出スイッチ65aから苗継ぎ位置検出信号を取得する場合に、エンジン14が前記第一アイドリング回転数よりも低い回転数である第二アイドリング回転数で回転するようにモータ71を駆動する。
【0105】
これにより、主変速レバー65が苗継ぎ位置に操作される場合にエンジン14の回転数Nが第二アイドリング回転数Nminまで減少する。従って、作業者が苗継ぎ作業を行う場合等の理由で田植機1をしばらくの間停止させておくときに、主変速レバー65を苗継ぎ位置に操作しておくことで省エネ効果を高めることができ、エンジン14による無駄な燃料消費を抑えることが可能である。
また、エンジン14からの騒音を抑制することが可能である。これによりオペレータとの会話が容易になる。
【0106】
また、田植機1においては、
前記第一アイドリング回転数は、田植機1を発進させる際に即応可能な回転数であり、
前記第二アイドリング回転数は、エンジン14が停止しない回転数である。
【0107】
これにより、第一アイドリング回転数N1では、田植機1がスムーズに発進することが可能となる。
また、第二アイドリング回転数Nminでは、エンジン14の燃料消費を抑えることが可能となる。
【0108】
また、田植機1においては、
エンジン14を始動させるための操作具であり、エンジン14を始動させるための始動操作が行われるときに始動信号を出力するキースイッチ66を備え、
制御装置100は、
キースイッチ66に接続され、
キースイッチ66から始動信号を取得するとともに、苗継ぎ位置検出スイッチ65aから苗継ぎ位置検出信号を取得する場合で、ペダル用ポテンショメータ67aから変速ペダル67が踏み込み操作されていないことを示すペダル信号を取得するときに、エンジン14が前記第一アイドリング回転数で回転するようにモータ71を駆動し、
キースイッチ66から始動信号を取得するとともに、苗継ぎ位置検出スイッチ65aから苗継ぎ位置検出信号を取得した後に、再び苗継ぎ位置検出信号を取得する場合に、エンジン14が前記第二アイドリング回転数で回転するようにモータ71を駆動する。
【0109】
これにより、主変速レバー65が苗継ぎ位置に操作されている状態でキースイッチ66によりエンジン14が始動された場合でも、エンジン14の始動をスムーズに行うことが可能であり、エンジン14の始動性の点で有利である。
【符号の説明】
【0110】
1 田植機
14 エンジン
21 HMT
21a HST
21b 遊星歯車機構
65 主変速レバー
65a 苗継ぎ位置検出スイッチ
66 キースイッチ
67 変速ペダル
67a ペダル用ポテンショメータ
71 モータ
100 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンの動力を変速して車輪に伝達する変速機と、
前記変速機に接続され、苗継ぎ位置を含む複数の変速位置に操作可能であり、前記変速位置に操作されるときに、操作された変速位置に対応するように前記変速機の変則段を変更する主変速レバーと、
前記主変速レバーが前記苗継ぎ位置にあるか否かを検出して、前記苗継ぎ位置にある場合には苗継ぎ位置検出信号を出力する苗継ぎ位置検出装置と、
前記エンジンの回転数の変更を行うためのアクチュエータと、
前記アクチュエータの駆動量を検出するアクチュエータ駆動量検出装置と、
前記アクチュエータを操作するための変速ペダルと、
前記変速ペダルの踏み込み量を検出して、前記踏み込み量を示すペダル信号を出力するペダル操作量検出装置と、
前記苗継ぎ位置検出装置、アクチュエータ、ペダル操作量検出装置、および前記アクチュエータ駆動量検出装置に接続され、前記苗継ぎ位置検出装置が出力する苗継ぎ位置検出信号およびペダル操作量検出装置が出力するペダル信号に基づいて前記アクチュエータの目標駆動量を算出して、前記アクチュエータ駆動量検出装置の検出値が前記目標駆動量になるように前記アクチュエータを駆動することにより、前記アクチュエータに前記エンジンの回転数を変更させる制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記苗継ぎ位置検出装置から苗継ぎ位置検出信号を取得しない場合で、前記ペダル操作量検出装置から前記変速ペダルが踏み込まれていないことを示すペダル信号を取得するときに、前記エンジンが第一アイドリング回転数で回転するように前記アクチュエータを駆動し、
前記苗継ぎ位置検出装置から苗継ぎ位置検出信号を取得する場合に、前記エンジンが前記第一アイドリング回転数よりも低い回転数である第二アイドリング回転数で回転するように前記アクチュエータを駆動する、
田植機。
【請求項2】
前記第一アイドリング回転数は、前記田植機を発進させる際に即応可能な回転数であり、
前記第二アイドリング回転数は、前記エンジンが停止しない回転数である、
請求項1に記載の田植機。
【請求項3】
前記田植機は、前記エンジンを始動させるための操作具であり、前記エンジンを始動させるための始動操作が行われるときに始動信号を出力する始動装置を備え、
前記制御装置は、
前記始動装置に接続され、
前記始動装置から始動信号を取得するとともに、前記苗継ぎ位置検出装置から苗継ぎ位置検出信号を取得する場合で、前記ペダル操作量検出装置から前記変速ペダルが踏み込み操作されていないことを示すペダル信号を取得するときに、前記エンジンが前記第一アイドリング回転数で回転するように前記アクチュエータを駆動し、
前記始動装置から始動信号を取得するとともに、前記苗継ぎ位置検出装置から苗継ぎ位置検出信号を取得した後に、再び苗継ぎ位置検出信号を取得する場合に、前記エンジンが前記第二アイドリング回転数で回転するように前記アクチュエータを駆動する、
請求項1または請求項2に記載の田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−62873(P2012−62873A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210205(P2010−210205)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】