田植機
【課題】田植機において、エンジンの冷却を効率よく行えるようにする。
【解決手段】本願発明の田植機は、エンジン36及びミッションケース37を搭載する左右一対のメインフレーム16を走行車1に備える。メインフレーム16を構成する前フレーム17にエンジン36を配置し、エンジン36の後方にミッションケース37を配置する。左右の前フレーム17の左右設置幅をエンジン36の左右幅よりも大きく形成し、エンジン36の下面側に位置するフレーム部材35の両側を左右の前フレーム17に固定する。フレーム部材35に防振部材53を介してエンジン36を防振支持させる。
【解決手段】本願発明の田植機は、エンジン36及びミッションケース37を搭載する左右一対のメインフレーム16を走行車1に備える。メインフレーム16を構成する前フレーム17にエンジン36を配置し、エンジン36の後方にミッションケース37を配置する。左右の前フレーム17の左右設置幅をエンジン36の左右幅よりも大きく形成し、エンジン36の下面側に位置するフレーム部材35の両側を左右の前フレーム17に固定する。フレーム部材35に防振部材53を介してエンジン36を防振支持させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗載台及び植付爪を備える植付部を走行車に装設させて連続的に田植作業を行う田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、田植機においては、特許文献1に示す如く、エンジン及びミッションケースを搭載する左右一対のメインフレームを走行車に備え、前記エンジンが前記メインフレームの前部に配置され、前記ミッションケースが前記エンジンの後方に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−139175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記従来の構成では、前記メインフレームの上面側に前記エンジンを搭載するため、エンジン周辺の熱風をメインフレームの閉塞によって下方に排出できず、エンジンの冷却を効率よく行い難いという不具合がある。その上、前記エンジンと前記メインフレームとの上下方向の取り付け寸法を縮小し難く、走行車前部の全高を簡単には低くできないといった問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記の問題を解消することを技術的課題としている。
【0006】
請求項1の発明は、エンジン(36)及びミッションケース(37)を搭載する左右一対のメインフレーム(16)を走行車(1)に備え、前記メインフレーム(16)を構成する前フレーム(17)に前記エンジン(36)を配置し、前記エンジン(36)の後方に前記ミッションケース(37)を配置している田植機において、前記左右の前フレーム(17)の左右設置幅を前記エンジン(36)の左右幅よりも大きく形成し、前記エンジン(36)の下面側に位置するフレーム部材(35)の両側を前記左右の前フレーム(17)に固定し、前記左右の前フレーム(17)の前側をつなぐ前バンパ(22)と、前記左右の前フレーム(17)と、前記フレーム部材(35)とからなる枠部材を、前記ミッションケース(37)に支持させ、前記フレーム部材(35)に防振部材(53)を介して前記エンジン(36)を防振支持させているというものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の田植機において、前記走行車(1)の後部にリンク機構(2)を介して植付部(3)を昇降自在に設ける構造であって、前記ミッションケース(37)の左右側部に前アクスルケース(38)を左右外向きに突設し、前記ミッションケース(37)とリヤアクスルケース(42)とを別体に構成し、前記フレーム部材(35)の左右幅中間に前記ミッションケース(37)の前部を固定させているというものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によると、エンジン(36)及びミッションケース(37)を搭載する左右一対のメインフレーム(16)を走行車(1)に備え、前記メインフレーム(16)を構成する前フレーム(17)に前記エンジン(36)を配置し、前記エンジン(36)の後方に前記ミッションケース(37)を配置している田植機において、前記左右の前フレーム(17)の左右設置幅を前記エンジン(36)の左右幅よりも大きく形成し、前記エンジン(36)の下面側に位置するフレーム部材(35)の両側を前記左右の前フレーム(17)に固定し、前記左右の前フレーム(17)の前側をつなぐ前バンパ(22)と、前記左右の前フレーム(17)と、前記フレーム部材(35)とからなる枠部材を、前記ミッションケース(37)に支持させ、前記フレーム部材(35)に防振部材(53)を介して前記エンジン(36)を防振支持させているから、前記前バンパ(22)と前記左右両前フレーム(17)と前記フレーム部材(35)と前記ミッションケース(37)とからなる高剛性フレーム構造によって、それぞれ単独では軽量化を図りつつフレーム構造全体では高強度化でき、機体構造の簡略化並びに前記エンジン(36)の防振機能向上を図れる。
【0009】
請求項2の発明によると、前記走行車(1)の後部にリンク機構(2)を介して植付部(3)を昇降自在に設ける構造であって、前記ミッションケース(37)の左右側部に前アクスルケース(38)を左右外向きに突設し、前記ミッションケース(37)とリヤアクスルケース(42)とを別体に構成し、前記フレーム部材(35)の左右幅中間に前記ミッションケース(37)の前部を固定させているから、前記エンジン(36)の上下方向の振動に対して前記フレーム部材(35)の強度を確保させ、前記フレーム部材(35)を用いて行う前記左右メインフレーム(16)連結並びに前記エンジン(36)支持のための強度を向上させ、前記フレーム部材(35)の本機ねじり方向の剛性を向上させて前記エンジン(36)支持構造の簡略化及び軽量化を行える。また、前記ミッションケース(37)と前記リヤアクスルケース(42)とを別体に構成して、前記走行車(1)の後部側の軽量化を図った上で、重量物である前記エンジン(36)及び前記ミッションケース(37)を前記走行車(1)の前部側に配置して、フロントヘビーな構造に設定でき、前記植付部(3)に苗を収容した植付作業時に、田植機の前後重量バランスを良好に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】全体の側面図。
【図2】図1の平面図。
【図3】走行車の側面説明図。
【図4】メインフレーム部の平面図。
【図5】図4の側面図。
【図6】ミッションケース部の側面図。
【図7】エンジン伝動部の側面図。
【図8】図7の平面図。
【図9】エンジンを搭載した車体の斜視図。
【図10】図9の拡大図。
【図11】ミッションケースを搭載した車体の斜視図。
【図12】図11の拡大図。
【図13】走行伝動部の斜視図。
【図14】メインフレーム前部の斜視図。
【図15】図14の拡大図。
【図16】エンジン部の上面側斜視図。
【図17】エンジン部の下面側斜視図。
【図18】エンジン部の正面図。
【図19】エンジン部の平面図。
【図20】フロントアクスルケースの正面説明図。
【図21】左フロントアクスルケースの断面図。
【図22】左フロントアクスルケースの断面図。
【図23】図21の拡大図。
【図24】図23の平面説明図。
【図25】図24の変形例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳述する。図1は全体の側面図、図2は同平面図であり、走行車1の後側にリンク機構2を介して植付部3を昇降自在に装設させると共に、植付部3で植付ける苗の側方に肥料を埋める側条施肥機4を走行車1の後側上面に搭載させるもので、前後輪5・6、運転席7、操向ハンドル8を走行車1に備え、車体カバーを形成するステップ9の下方に前後輪5・6を配設させ、ステップ9前側のボンネット10後側に操向ハンドル8を配設させ、ステップ9後側上面に運転席7を配設させる。また、5条植え用の苗載台11及び植付爪12を植付部3に設け、5条分の苗を連続的に植付ける田植作業を行うと共に、その5条分の苗の側方の土中に、送風機13の送風搬送により、5条分の搬送ホース14を介して施肥機4から肥料を送出して埋込む施肥作業を行う一方、前記ボンネット10側方の予備苗台15の予備苗を苗載台11に補給し、田植作業を継続して行わせる。
【0012】
さらに、図3乃至図15に示す如く、左右一対のメインフレーム16を前記走行車1に備え、前フレーム17及び中フレーム18及び後フレーム19を平面視略直線形に連結させてメインフレーム16を形成し、左右の後フレーム19後側に門形フレーム20を固定させ、左右の前フレーム17前側に、センターマーカ21を取付ける前バンパ22並びに牽引フック23を固定させると共に、前フレーム17前後部の外側方並びに後フレーム19前部の外側方に左右一対のステップ台24・25・26を固定させ、後フレーム19中間部の上側で左右方向全幅に長尺ステップ台27を固定させ、前記門形フレーム20上側に左右一対のステップ台28を固定させ、また左右ステップ台29を有する水平フレーム30を備え、前サイドフレーム31によって各ステップ台24〜26外側を連結させ、後サイドフレーム32によって各ステップ台26・27及び水平フレーム30外側を連結させ、各ステップ台24〜29上面にステップ9を上載させて固定させると共に、後サイドフレーム32の外側に乗降用ステップ33を着脱自在にボルト止め固定させる。
【0013】
さらに、図4のように、左右の前フレーム17に左右一対の受台34とフレーム部材35を固定させてエンジン36を搭載させると共に、図8のように、ミッションケース37の両側に左右フロントアクスルケース38を固定させ、各ケース38に前輪5を装設させ、前後フレーム17・19を連結させる中フレーム18を前記ケース38上側に固定させる。また、エンジン36出力をミッションケース37に伝える油圧無段変速ケース39と、操向ハンドル8の前輪5操舵力を増幅させるトルクジェネレータとギヤ機構から構成するステアリングケース40を、ミッションケース37前側に固定させると共に、ミッションケース37後側に機体ケース41を介してリヤアクスルケース42を固定させ、門形フレーム20両側を前記ケース42に固定させ、前記ケース42に後輪6を装設させる。また、前記機体ケース41の上側に油圧昇降シリンダ43を取付け、植付部3を昇降自在に支持させる前記リンク機構2に前記シリンダ43のピストンを連結させる。
【0014】
さらに、図4、図9のように、左右の後フレーム19の前側にタンク台フレーム44の両端を固定させ、エンジン36に燃料を供給する燃料タンク45前部を台フレーム44に固定させ、左右の後フレーム19間にタンク45を設置させると共に、図3のように、後フレーム19にシートフレーム46を立設させ、シートフレーム46上側にシート台47を介して運転席7を取付け、前記タンク45の前部上方に運転席7を配設させる。また、左側のステップ台24・25に支持させる左の前サイドフレーム31の下面側にステー48を介してエンジン36のマフラー49を取付けると共に、右側のステップ台24・25に支持させる右の前サイドフレーム31にバッテリ台50を固定させ、図14のように、エンジン36を始動させるバッテリ51を前記バッテリ台50に取付け、エンジン36の両側方でステップ9下面側にマフラー49とバッテリ51を振分けて配設させる。
【0015】
さらに、図16乃至図19に示す如く、前記エンジン36の底面に底板52を固定させ、前記受台34及びフレーム部材35に、前後及び左右の4個のゴム製防振部材53を介して前記底板52の左右側を固定させると共に、底板52の下面右側に軸受筒54を着脱自在にボルト止め固定させ、軸受筒54に伝動軸59を回転自在に軸支させ、プーリ55・56及びベルト57を介してエンジン36前側の出力軸58に伝動軸59の前側を連結させ、図7のように、前記変速ケース39前側の入力軸60に前記伝動軸59後側を分離自在に連結させ、エンジン36の駆動力を伝動軸59を介して前記変速ケース39に伝えると共に、ミッションケース37後側からPTO軸61aを後方に延出させて植付部3に動力を伝え、またミッションケース37から後駆動軸61bを後方に延出させて後アクスルケース42に入力させ、ミッションケース37から後アクスルケース42を介して後輪6に動力を伝える。また、ミッションケース37から前アクスルケース38を介して前輪5に動力を伝える。
【0016】
さらに、図18のように、前フレーム17底面よりもさらに低くなるように前記フレーム部材35中間を下方に折曲げて形成し、前フレーム17と略同一高さに防振部材53を配設させるもので、前後輪5・6及びエンジン36及び運転席7を左右メインフレーム16に装設させる田植機において、左右メインフレーム16の前フレーム17左右設置幅をエンジン36の左右幅よりも大きく形成し、図7のように、メインフレーム16である前フレーム17にエンジン36下部を側面視ラップさせ、左右の前フレーム17とエンジン36両側の間に換気スペースを確保してエンジン36周辺の熱風をスムーズに排出させ、エンジン36の冷却効率を向上させ、かつエンジンを低く設置して機体重心を低下させる。
【0017】
また、エンジン36を支持させる防振部材53を取付け可能なフレーム部材35の両側を左右メインフレーム16の前フレーム17に固定させ、前記フレーム部材35の補強により左右の前フレーム17の強度を低下させて軽量に形成でき、かつ高剛性フレーム構造によりエンジン36を防振支持させ、しかも左右防振部材53の取付け間隔を拡大させて本機ねじり方向に伝わるエンジン36振動を低減させ、機体構造の簡略化並びにエンジン36の防振機能の向上などを行う。
【0018】
しかも、走行車1の後部にリンク機構2を介して植付部3を昇降自在に設ける構造であって、ミッションケース37の左右側部に前アクスルケース38を左右外向きに突設し、ミッションケース37とリヤアクスルケース42とを別体に構成し、フレーム部材35の左右幅中間にミッションケース37の前部を固定させているから、エンジン36の上下方向の振動に対してフレーム部材35の強度を確保させ、フレーム部材35を用いて行う左右メインフレーム16連結並びにエンジン36支持のための強度を向上させ、フレーム部材35の本機ねじり方向の剛性を向上させてエンジン36支持構造の簡略化及び軽量化を行える。また、ミッションケース37とリヤアクスルケース42とを別体に構成して、走行車1の後部側の軽量化を図った上で、重量物であるエンジン36及びミッションケース37を走行車1の前部側に配置して、フロントヘビーな構造に設定でき、植付部3に苗を収容した植付作業時に、田植機の前後重量バランスを良好に維持できる。
【0019】
さらに、図12、図18のように、平面視門形の座板62両側をフレーム部材35の左右幅略中間に固定させ、フレーム部材35から後方に座板62の門形中間を突設させ、前記ミッションケース37前側のステアリングケース40前面に形成する台座63に前記座板62を着脱自在にボルト止め固定させ、左右の前フレーム17に両側を固定させるフレーム部材35の左右幅略中間をミッションケース37にステアリングケース40を介して固定させる。そして、図8、図12のように、フレーム部材35にミッションケース37を固定させ、エンジン36の上下方向の振動に対してフレーム部材35の強度を確保させ、フレーム部材35を用いて行う左右メインフレーム16連結並びにエンジン36支持のための強度を向上させ、フレーム部材35の本機ねじり方向の剛性を向上させてエンジン36支持構造の簡略化及び軽量化を行うと共に、左右防振部材53の取付け幅の略中央でフレーム部材35とミッションケース37を固定させ、エンジン36の振動などによって発生する左右方向いずれのねじり変形力に対してもミッションケース37との固定によりフレーム部材35の強度を確保させ、フレーム部材35の変形損傷を防いで耐久性向上などを図る。
【0020】
また、図7、図17のように、エンジン台を形成する底板52の下面側に軸受筒54を別体構造で着脱自在にボルト止め固定させ、軸受筒54の脱着並びに取付け姿勢及び位置の調整により、ベルト57交換等のメンテナンスを良好に行える構造で、エンジン36取付け後にベルト57のアライメントの精度が出せ、組立作業を改善するばかりでなく、ベルト57の張設精度を向上させ、ベルト57の耐命及び信頼性の向上などを図る。
【0021】
また、図17、図18のように、前記エンジン36の前側にジェネレータ64を設け、エンジン36の出力軸58によってジェネレータ64を駆動させると共に、エンジン台である前記底板52の前側で左右幅略中央に架台65を固定させ、エンジン36と架台65とにジェネレータ64をボルト止め固定させるもので、エンジン36と底板52とにジェネレータ64の支持部を設けて取付けるから、エンジン36だけでジェネレータ64を支持させる従来構造に比べ、エンジン36の強い振動に対してジェネレータ64の支持部材の強振を防ぎ、架台65及びエンジン36との連結部などのジェネレータ64の支持部材のコンパクト化、コスト削減、軽量化が図れ、エンジン36及び底板52などを振動をも低減させ、本機性能も向上させる。
【0022】
さらに、図13、図20乃至図24に示す如く、前記ミッションケース37に機内側を固定させる左右出力ケース66・67と、該出力ケース66・67の機外側に固定させる左右フロントケース68と、該フロントケース68の下側に摺動自在に連結させる左右ギヤケース69と、前記フロントケース68の上側に固定させるケースカバー70とを、左右のフロントアクスルケース38に備え、左右出力ケース66・67に左右出力軸71・72を内挿させ、ミッションケース37の差動ギヤ機構73に左右出力軸71・72を連結させ、ミッションケース37の変速及び差動出力をギヤ機構73から左右出力軸71・72に伝えると共に、前記ギヤケース69に外向きに左右車軸74を軸支させ、左右車軸74に左右前輪5を軸支させる。
【0023】
さらに、図13、図20のように、前記ギヤケース69の上方外側にナックルアーム75をボルト止め固定させ、また操向ハンドル8の回転操作によってトルクジェネレータなどを介して左右に揺動させるステアリングアーム76をステアリングケース40下側に設け、左右ナックルアーム75に左右タイロッド77を介してステアリングアーム76を連結させ、前記フロントケース68に内挿させるキングピン形駆動軸78回りに、操向ハンドル8の操舵角に比例させて前輪5を方向転換させる。
【0024】
さらに、図21、図22のように、ベベルギヤ79・80を介して前記出力軸71・72に駆動軸78上側を連結させ、駆動軸78の下側を車軸74にベベルギヤ81・82を介して連結させ、出力軸71・72から前輪5に動力を伝えると共に、前記ナックルアーム75を駆動軸78と平行に上方に延設させ、ナックルアーム75の上側に円筒形の摺動及び回転用支持部83を一体形成し、ナックルアーム75の支持部83を前記ケースカバー70のシリンダ部の外側に摺動及び回転自在に嵌挿させ、前記ギヤケース69とケースカバー70とにナックルアーム75を両持ち支持させる。
【0025】
また、ベベルギヤ81を設ける駆動軸78の下側をギヤケース69にベアリング84軸支させると共に、ベベルギヤ80をスプライン嵌合させる駆動軸78の上端側にピストン形ホルダ85の下面側をベアリング86軸支させ、前記ホルダ85の上面側に大小径の圧縮コイルスプリング形のサスペンションバネ87を当接させ、前記ホルダ85を上下方向に摺動させるケースカバー70のシリンダ部にサスペンションバネ87を内装させ、前記駆動軸78及びギヤケース69を介してサスペンションバネ87によって前輪5を下方に弾圧させ、前輪5の接地圧を前記バネ87によって維持するもので、前記バネ87の最大圧縮時の寸法と略同長芯軸88をバネ87の中心部に内挿させ、走行車1の車体重量によって前記バネ87を最大圧縮させ、四輪5・6が接地する通常状態で前記バネ87を密着させ、車高を一定に保つ一方、左右後輪6と前輪5の左右いずれか一方の三輪が接地する段差走行時、サスペンションバネ87の伸張によって前輪5を下降させ、前輪5の接地圧を維持してスリップを防ぐ。
【0026】
さらに、図23、図24のように、前記ナックルアーム75の内側にストッパ89を一体形成し、前記フロントケース68の前後外側に左右の旋回規制用突起90・91を一体形成し、操向ハンドル8の最大切角操作によりストッパ89を各突起90・91のいずれかに当接させ、前輪5の方向転換を規制するもので、サスペンションバネ87の伸縮によるギヤボックス69及びナックルアーム75の摺動範囲(サスペンションストローク)と略等しいか長尺にストッパ89を形成し、前バネ87によってナックルアーム75が摺動する全範囲でストッパ89が突起90・91に当接可能に構成している。なお、図25のように、同一のフロントケース68に設ける左右の突起90・91の両方にストッパ89を択一的に当接させ、前輪5の方向転換を規制してもよい。
【0027】
上記から明らかなように、本機側に連設させるフロントケース68下側に、前輪5を取付けるギヤボックス69を設け、フロントアクスルケース38を構成すると共に、キングピンである駆動軸78回りに回転自在にかつ上下方向に摺動自在に前記ギヤボックス69を設ける田植機において、前記ギヤボックス69を下方に弾圧させる弾性部材であるサスペンションバネ87をフロントケース68上側のケースカバー70に内装させ、ギヤボックス69に一側を固定させるナックルアーム75の他側を前記ケースカバー70に摺動自在に支持させる。そして、前記ナックルアーム75上下側を両持ち構造により堅固に支持させ、倒れ方向またはねじれ方向の変形力に対してフロントケース68及びギヤボックス69の摺動連結部を強固に支持可能に構成させ、例えばキングピンである駆動軸78の軸径を太くすることなく前輪5の支持に必要な強度を確保させ、前輪5を設けるフロントアクスルケース38構造の軽量化並びに製造コストの低減などを図り、しかもサスペンションバネ87を内側に設けるケースカバー70の外側でナックルアーム75を摺動させ、省スペースでサスペンション構造を配置させる。
【0028】
また、ギヤボックス69の少なくとも上下方向の摺動範囲に対応する回動規制部材であるストッパ89をナックルアーム75の内側に設け、省スペースで前記のストッパ89を配置させ、ナックルアーム75またはフロントケース68などを兼用してストッパ89を形成させ、構成部品の共用により構成部品点数を削減し、かつ駆動軸78回りのギヤボックス69の回転を規制するのに必要なストッパ89の強度を容易に得ると共に、ケースカバー70またはフロントケース68側とナックルアーム75の支持部83下面側との当接によりギヤボックス69の下向き摺動を規制させ、従来に比べ、フロントケース68及びギヤボックス69の最伸張時の止め輪等のストッパが不要になり、ギヤボックス69の伸張動作を制限するストッパ部品を特別に設ける必要がなく、ギヤボックス69支持構造の簡略化などを行い、しかも高剛性のナックルアーム75の兼用により強度的に有利なストッパ構造を得られ、製造コストの低減並びに耐久性の向上などを図る。
【0029】
さらに、本機に対して走行輪である前輪5をサスペンションバネ87を介して昇降自在に設ける田植機において、本機に対して前輪5が最上昇して位置するときが通常状態になるようにサスペンションバネ87力を設定し、前輪5が昇降途中に支持されるサスペンションバネ87構造のように予備苗などの搭載重量によって車高が変化する不具合をなくし、圃場内で機体が略水平に支持された状態で田植作業を行い、苗の植付け精度を維持させ、しかも耕盤の凹部など段差があっても前輪5の接地圧をサスペンションバネ87の接地作用により確保させ、前輪5のスリップを低減して走行性能を堅持させるもので、前輪5に駆動力を伝える駆動軸78の上方側にサスペンションバネ87を設け、前記駆動軸78とサスペンションバネ87の間にベアリング86及びホルダ85を介在させ、例えば駆動軸78の外側に巻装支持させる構造に比べてサスペンションバネ87の取付け構造を簡略にし、駆動軸78の回転力によるサスペンションバネ87の変形または摩擦などを防止し、しかも前記ホルダ85によるサスペンションバネ87の支持面を広くしてバネ87の倒れ防止などを行う。
【0030】
また、車体重量によって本機と前輪5が最接近する最低車高状態とし、走行路面の段差によって前輪5を本機から離間させて前輪5を接地させるように、サスペンションバネ87を設け、田植作業時に搭載する予備苗またはウエイトなどによってサスペンションバネ87が変形するのを防止し、車体重量変化によって車高が変更されて機体が傾くのを阻止し、しかも路面の段差による前輪5のスリップを低減させて蛇行走行を防止する。
【0031】
さらに、図22に示す如く、フロントケース68を固定させる出力ケース67の機外側部に出力軸72をベアリング92軸支させ、フロントケース68に内設させるベベルギヤ79のボス部93を出力軸72方向に延設させ、前記ボス部93端面をベアリング92に当接させてベベルギヤ79のスラスト荷重を受けるように構成し、ベベルギヤ79のスラスト荷重を受けるカラーなどを不要にして部品点数を削減し、デフ軸を兼用する出力軸72方向の加工寸法誤差を低減させ、ベベルギヤ79のバックラッシュを適正に確保できる。また、前記サスペンションバネ87を受けるケースカバー70の最上部をステップ9の下面側に近接させ、前記バネ87の受部分であるケースカバー70頭部にステップ9用ゴム製支持部材70aを設け、ケースカバー70をステップ9取付け部材として使用可能に構成し、ステップ9を支持させるステーを省いて部品点数を削減させ、またフロントアクスルケース38にステップ9とメインフレーム16の両方を支持させ、ステップ9を高剛性支持させる。
【符号の説明】
【0032】
5 前輪
78 駆動軸
85 ホルダ
86 ベアリング
87 サスペンションバネ
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗載台及び植付爪を備える植付部を走行車に装設させて連続的に田植作業を行う田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、田植機においては、特許文献1に示す如く、エンジン及びミッションケースを搭載する左右一対のメインフレームを走行車に備え、前記エンジンが前記メインフレームの前部に配置され、前記ミッションケースが前記エンジンの後方に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−139175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記従来の構成では、前記メインフレームの上面側に前記エンジンを搭載するため、エンジン周辺の熱風をメインフレームの閉塞によって下方に排出できず、エンジンの冷却を効率よく行い難いという不具合がある。その上、前記エンジンと前記メインフレームとの上下方向の取り付け寸法を縮小し難く、走行車前部の全高を簡単には低くできないといった問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記の問題を解消することを技術的課題としている。
【0006】
請求項1の発明は、エンジン(36)及びミッションケース(37)を搭載する左右一対のメインフレーム(16)を走行車(1)に備え、前記メインフレーム(16)を構成する前フレーム(17)に前記エンジン(36)を配置し、前記エンジン(36)の後方に前記ミッションケース(37)を配置している田植機において、前記左右の前フレーム(17)の左右設置幅を前記エンジン(36)の左右幅よりも大きく形成し、前記エンジン(36)の下面側に位置するフレーム部材(35)の両側を前記左右の前フレーム(17)に固定し、前記左右の前フレーム(17)の前側をつなぐ前バンパ(22)と、前記左右の前フレーム(17)と、前記フレーム部材(35)とからなる枠部材を、前記ミッションケース(37)に支持させ、前記フレーム部材(35)に防振部材(53)を介して前記エンジン(36)を防振支持させているというものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の田植機において、前記走行車(1)の後部にリンク機構(2)を介して植付部(3)を昇降自在に設ける構造であって、前記ミッションケース(37)の左右側部に前アクスルケース(38)を左右外向きに突設し、前記ミッションケース(37)とリヤアクスルケース(42)とを別体に構成し、前記フレーム部材(35)の左右幅中間に前記ミッションケース(37)の前部を固定させているというものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によると、エンジン(36)及びミッションケース(37)を搭載する左右一対のメインフレーム(16)を走行車(1)に備え、前記メインフレーム(16)を構成する前フレーム(17)に前記エンジン(36)を配置し、前記エンジン(36)の後方に前記ミッションケース(37)を配置している田植機において、前記左右の前フレーム(17)の左右設置幅を前記エンジン(36)の左右幅よりも大きく形成し、前記エンジン(36)の下面側に位置するフレーム部材(35)の両側を前記左右の前フレーム(17)に固定し、前記左右の前フレーム(17)の前側をつなぐ前バンパ(22)と、前記左右の前フレーム(17)と、前記フレーム部材(35)とからなる枠部材を、前記ミッションケース(37)に支持させ、前記フレーム部材(35)に防振部材(53)を介して前記エンジン(36)を防振支持させているから、前記前バンパ(22)と前記左右両前フレーム(17)と前記フレーム部材(35)と前記ミッションケース(37)とからなる高剛性フレーム構造によって、それぞれ単独では軽量化を図りつつフレーム構造全体では高強度化でき、機体構造の簡略化並びに前記エンジン(36)の防振機能向上を図れる。
【0009】
請求項2の発明によると、前記走行車(1)の後部にリンク機構(2)を介して植付部(3)を昇降自在に設ける構造であって、前記ミッションケース(37)の左右側部に前アクスルケース(38)を左右外向きに突設し、前記ミッションケース(37)とリヤアクスルケース(42)とを別体に構成し、前記フレーム部材(35)の左右幅中間に前記ミッションケース(37)の前部を固定させているから、前記エンジン(36)の上下方向の振動に対して前記フレーム部材(35)の強度を確保させ、前記フレーム部材(35)を用いて行う前記左右メインフレーム(16)連結並びに前記エンジン(36)支持のための強度を向上させ、前記フレーム部材(35)の本機ねじり方向の剛性を向上させて前記エンジン(36)支持構造の簡略化及び軽量化を行える。また、前記ミッションケース(37)と前記リヤアクスルケース(42)とを別体に構成して、前記走行車(1)の後部側の軽量化を図った上で、重量物である前記エンジン(36)及び前記ミッションケース(37)を前記走行車(1)の前部側に配置して、フロントヘビーな構造に設定でき、前記植付部(3)に苗を収容した植付作業時に、田植機の前後重量バランスを良好に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】全体の側面図。
【図2】図1の平面図。
【図3】走行車の側面説明図。
【図4】メインフレーム部の平面図。
【図5】図4の側面図。
【図6】ミッションケース部の側面図。
【図7】エンジン伝動部の側面図。
【図8】図7の平面図。
【図9】エンジンを搭載した車体の斜視図。
【図10】図9の拡大図。
【図11】ミッションケースを搭載した車体の斜視図。
【図12】図11の拡大図。
【図13】走行伝動部の斜視図。
【図14】メインフレーム前部の斜視図。
【図15】図14の拡大図。
【図16】エンジン部の上面側斜視図。
【図17】エンジン部の下面側斜視図。
【図18】エンジン部の正面図。
【図19】エンジン部の平面図。
【図20】フロントアクスルケースの正面説明図。
【図21】左フロントアクスルケースの断面図。
【図22】左フロントアクスルケースの断面図。
【図23】図21の拡大図。
【図24】図23の平面説明図。
【図25】図24の変形例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳述する。図1は全体の側面図、図2は同平面図であり、走行車1の後側にリンク機構2を介して植付部3を昇降自在に装設させると共に、植付部3で植付ける苗の側方に肥料を埋める側条施肥機4を走行車1の後側上面に搭載させるもので、前後輪5・6、運転席7、操向ハンドル8を走行車1に備え、車体カバーを形成するステップ9の下方に前後輪5・6を配設させ、ステップ9前側のボンネット10後側に操向ハンドル8を配設させ、ステップ9後側上面に運転席7を配設させる。また、5条植え用の苗載台11及び植付爪12を植付部3に設け、5条分の苗を連続的に植付ける田植作業を行うと共に、その5条分の苗の側方の土中に、送風機13の送風搬送により、5条分の搬送ホース14を介して施肥機4から肥料を送出して埋込む施肥作業を行う一方、前記ボンネット10側方の予備苗台15の予備苗を苗載台11に補給し、田植作業を継続して行わせる。
【0012】
さらに、図3乃至図15に示す如く、左右一対のメインフレーム16を前記走行車1に備え、前フレーム17及び中フレーム18及び後フレーム19を平面視略直線形に連結させてメインフレーム16を形成し、左右の後フレーム19後側に門形フレーム20を固定させ、左右の前フレーム17前側に、センターマーカ21を取付ける前バンパ22並びに牽引フック23を固定させると共に、前フレーム17前後部の外側方並びに後フレーム19前部の外側方に左右一対のステップ台24・25・26を固定させ、後フレーム19中間部の上側で左右方向全幅に長尺ステップ台27を固定させ、前記門形フレーム20上側に左右一対のステップ台28を固定させ、また左右ステップ台29を有する水平フレーム30を備え、前サイドフレーム31によって各ステップ台24〜26外側を連結させ、後サイドフレーム32によって各ステップ台26・27及び水平フレーム30外側を連結させ、各ステップ台24〜29上面にステップ9を上載させて固定させると共に、後サイドフレーム32の外側に乗降用ステップ33を着脱自在にボルト止め固定させる。
【0013】
さらに、図4のように、左右の前フレーム17に左右一対の受台34とフレーム部材35を固定させてエンジン36を搭載させると共に、図8のように、ミッションケース37の両側に左右フロントアクスルケース38を固定させ、各ケース38に前輪5を装設させ、前後フレーム17・19を連結させる中フレーム18を前記ケース38上側に固定させる。また、エンジン36出力をミッションケース37に伝える油圧無段変速ケース39と、操向ハンドル8の前輪5操舵力を増幅させるトルクジェネレータとギヤ機構から構成するステアリングケース40を、ミッションケース37前側に固定させると共に、ミッションケース37後側に機体ケース41を介してリヤアクスルケース42を固定させ、門形フレーム20両側を前記ケース42に固定させ、前記ケース42に後輪6を装設させる。また、前記機体ケース41の上側に油圧昇降シリンダ43を取付け、植付部3を昇降自在に支持させる前記リンク機構2に前記シリンダ43のピストンを連結させる。
【0014】
さらに、図4、図9のように、左右の後フレーム19の前側にタンク台フレーム44の両端を固定させ、エンジン36に燃料を供給する燃料タンク45前部を台フレーム44に固定させ、左右の後フレーム19間にタンク45を設置させると共に、図3のように、後フレーム19にシートフレーム46を立設させ、シートフレーム46上側にシート台47を介して運転席7を取付け、前記タンク45の前部上方に運転席7を配設させる。また、左側のステップ台24・25に支持させる左の前サイドフレーム31の下面側にステー48を介してエンジン36のマフラー49を取付けると共に、右側のステップ台24・25に支持させる右の前サイドフレーム31にバッテリ台50を固定させ、図14のように、エンジン36を始動させるバッテリ51を前記バッテリ台50に取付け、エンジン36の両側方でステップ9下面側にマフラー49とバッテリ51を振分けて配設させる。
【0015】
さらに、図16乃至図19に示す如く、前記エンジン36の底面に底板52を固定させ、前記受台34及びフレーム部材35に、前後及び左右の4個のゴム製防振部材53を介して前記底板52の左右側を固定させると共に、底板52の下面右側に軸受筒54を着脱自在にボルト止め固定させ、軸受筒54に伝動軸59を回転自在に軸支させ、プーリ55・56及びベルト57を介してエンジン36前側の出力軸58に伝動軸59の前側を連結させ、図7のように、前記変速ケース39前側の入力軸60に前記伝動軸59後側を分離自在に連結させ、エンジン36の駆動力を伝動軸59を介して前記変速ケース39に伝えると共に、ミッションケース37後側からPTO軸61aを後方に延出させて植付部3に動力を伝え、またミッションケース37から後駆動軸61bを後方に延出させて後アクスルケース42に入力させ、ミッションケース37から後アクスルケース42を介して後輪6に動力を伝える。また、ミッションケース37から前アクスルケース38を介して前輪5に動力を伝える。
【0016】
さらに、図18のように、前フレーム17底面よりもさらに低くなるように前記フレーム部材35中間を下方に折曲げて形成し、前フレーム17と略同一高さに防振部材53を配設させるもので、前後輪5・6及びエンジン36及び運転席7を左右メインフレーム16に装設させる田植機において、左右メインフレーム16の前フレーム17左右設置幅をエンジン36の左右幅よりも大きく形成し、図7のように、メインフレーム16である前フレーム17にエンジン36下部を側面視ラップさせ、左右の前フレーム17とエンジン36両側の間に換気スペースを確保してエンジン36周辺の熱風をスムーズに排出させ、エンジン36の冷却効率を向上させ、かつエンジンを低く設置して機体重心を低下させる。
【0017】
また、エンジン36を支持させる防振部材53を取付け可能なフレーム部材35の両側を左右メインフレーム16の前フレーム17に固定させ、前記フレーム部材35の補強により左右の前フレーム17の強度を低下させて軽量に形成でき、かつ高剛性フレーム構造によりエンジン36を防振支持させ、しかも左右防振部材53の取付け間隔を拡大させて本機ねじり方向に伝わるエンジン36振動を低減させ、機体構造の簡略化並びにエンジン36の防振機能の向上などを行う。
【0018】
しかも、走行車1の後部にリンク機構2を介して植付部3を昇降自在に設ける構造であって、ミッションケース37の左右側部に前アクスルケース38を左右外向きに突設し、ミッションケース37とリヤアクスルケース42とを別体に構成し、フレーム部材35の左右幅中間にミッションケース37の前部を固定させているから、エンジン36の上下方向の振動に対してフレーム部材35の強度を確保させ、フレーム部材35を用いて行う左右メインフレーム16連結並びにエンジン36支持のための強度を向上させ、フレーム部材35の本機ねじり方向の剛性を向上させてエンジン36支持構造の簡略化及び軽量化を行える。また、ミッションケース37とリヤアクスルケース42とを別体に構成して、走行車1の後部側の軽量化を図った上で、重量物であるエンジン36及びミッションケース37を走行車1の前部側に配置して、フロントヘビーな構造に設定でき、植付部3に苗を収容した植付作業時に、田植機の前後重量バランスを良好に維持できる。
【0019】
さらに、図12、図18のように、平面視門形の座板62両側をフレーム部材35の左右幅略中間に固定させ、フレーム部材35から後方に座板62の門形中間を突設させ、前記ミッションケース37前側のステアリングケース40前面に形成する台座63に前記座板62を着脱自在にボルト止め固定させ、左右の前フレーム17に両側を固定させるフレーム部材35の左右幅略中間をミッションケース37にステアリングケース40を介して固定させる。そして、図8、図12のように、フレーム部材35にミッションケース37を固定させ、エンジン36の上下方向の振動に対してフレーム部材35の強度を確保させ、フレーム部材35を用いて行う左右メインフレーム16連結並びにエンジン36支持のための強度を向上させ、フレーム部材35の本機ねじり方向の剛性を向上させてエンジン36支持構造の簡略化及び軽量化を行うと共に、左右防振部材53の取付け幅の略中央でフレーム部材35とミッションケース37を固定させ、エンジン36の振動などによって発生する左右方向いずれのねじり変形力に対してもミッションケース37との固定によりフレーム部材35の強度を確保させ、フレーム部材35の変形損傷を防いで耐久性向上などを図る。
【0020】
また、図7、図17のように、エンジン台を形成する底板52の下面側に軸受筒54を別体構造で着脱自在にボルト止め固定させ、軸受筒54の脱着並びに取付け姿勢及び位置の調整により、ベルト57交換等のメンテナンスを良好に行える構造で、エンジン36取付け後にベルト57のアライメントの精度が出せ、組立作業を改善するばかりでなく、ベルト57の張設精度を向上させ、ベルト57の耐命及び信頼性の向上などを図る。
【0021】
また、図17、図18のように、前記エンジン36の前側にジェネレータ64を設け、エンジン36の出力軸58によってジェネレータ64を駆動させると共に、エンジン台である前記底板52の前側で左右幅略中央に架台65を固定させ、エンジン36と架台65とにジェネレータ64をボルト止め固定させるもので、エンジン36と底板52とにジェネレータ64の支持部を設けて取付けるから、エンジン36だけでジェネレータ64を支持させる従来構造に比べ、エンジン36の強い振動に対してジェネレータ64の支持部材の強振を防ぎ、架台65及びエンジン36との連結部などのジェネレータ64の支持部材のコンパクト化、コスト削減、軽量化が図れ、エンジン36及び底板52などを振動をも低減させ、本機性能も向上させる。
【0022】
さらに、図13、図20乃至図24に示す如く、前記ミッションケース37に機内側を固定させる左右出力ケース66・67と、該出力ケース66・67の機外側に固定させる左右フロントケース68と、該フロントケース68の下側に摺動自在に連結させる左右ギヤケース69と、前記フロントケース68の上側に固定させるケースカバー70とを、左右のフロントアクスルケース38に備え、左右出力ケース66・67に左右出力軸71・72を内挿させ、ミッションケース37の差動ギヤ機構73に左右出力軸71・72を連結させ、ミッションケース37の変速及び差動出力をギヤ機構73から左右出力軸71・72に伝えると共に、前記ギヤケース69に外向きに左右車軸74を軸支させ、左右車軸74に左右前輪5を軸支させる。
【0023】
さらに、図13、図20のように、前記ギヤケース69の上方外側にナックルアーム75をボルト止め固定させ、また操向ハンドル8の回転操作によってトルクジェネレータなどを介して左右に揺動させるステアリングアーム76をステアリングケース40下側に設け、左右ナックルアーム75に左右タイロッド77を介してステアリングアーム76を連結させ、前記フロントケース68に内挿させるキングピン形駆動軸78回りに、操向ハンドル8の操舵角に比例させて前輪5を方向転換させる。
【0024】
さらに、図21、図22のように、ベベルギヤ79・80を介して前記出力軸71・72に駆動軸78上側を連結させ、駆動軸78の下側を車軸74にベベルギヤ81・82を介して連結させ、出力軸71・72から前輪5に動力を伝えると共に、前記ナックルアーム75を駆動軸78と平行に上方に延設させ、ナックルアーム75の上側に円筒形の摺動及び回転用支持部83を一体形成し、ナックルアーム75の支持部83を前記ケースカバー70のシリンダ部の外側に摺動及び回転自在に嵌挿させ、前記ギヤケース69とケースカバー70とにナックルアーム75を両持ち支持させる。
【0025】
また、ベベルギヤ81を設ける駆動軸78の下側をギヤケース69にベアリング84軸支させると共に、ベベルギヤ80をスプライン嵌合させる駆動軸78の上端側にピストン形ホルダ85の下面側をベアリング86軸支させ、前記ホルダ85の上面側に大小径の圧縮コイルスプリング形のサスペンションバネ87を当接させ、前記ホルダ85を上下方向に摺動させるケースカバー70のシリンダ部にサスペンションバネ87を内装させ、前記駆動軸78及びギヤケース69を介してサスペンションバネ87によって前輪5を下方に弾圧させ、前輪5の接地圧を前記バネ87によって維持するもので、前記バネ87の最大圧縮時の寸法と略同長芯軸88をバネ87の中心部に内挿させ、走行車1の車体重量によって前記バネ87を最大圧縮させ、四輪5・6が接地する通常状態で前記バネ87を密着させ、車高を一定に保つ一方、左右後輪6と前輪5の左右いずれか一方の三輪が接地する段差走行時、サスペンションバネ87の伸張によって前輪5を下降させ、前輪5の接地圧を維持してスリップを防ぐ。
【0026】
さらに、図23、図24のように、前記ナックルアーム75の内側にストッパ89を一体形成し、前記フロントケース68の前後外側に左右の旋回規制用突起90・91を一体形成し、操向ハンドル8の最大切角操作によりストッパ89を各突起90・91のいずれかに当接させ、前輪5の方向転換を規制するもので、サスペンションバネ87の伸縮によるギヤボックス69及びナックルアーム75の摺動範囲(サスペンションストローク)と略等しいか長尺にストッパ89を形成し、前バネ87によってナックルアーム75が摺動する全範囲でストッパ89が突起90・91に当接可能に構成している。なお、図25のように、同一のフロントケース68に設ける左右の突起90・91の両方にストッパ89を択一的に当接させ、前輪5の方向転換を規制してもよい。
【0027】
上記から明らかなように、本機側に連設させるフロントケース68下側に、前輪5を取付けるギヤボックス69を設け、フロントアクスルケース38を構成すると共に、キングピンである駆動軸78回りに回転自在にかつ上下方向に摺動自在に前記ギヤボックス69を設ける田植機において、前記ギヤボックス69を下方に弾圧させる弾性部材であるサスペンションバネ87をフロントケース68上側のケースカバー70に内装させ、ギヤボックス69に一側を固定させるナックルアーム75の他側を前記ケースカバー70に摺動自在に支持させる。そして、前記ナックルアーム75上下側を両持ち構造により堅固に支持させ、倒れ方向またはねじれ方向の変形力に対してフロントケース68及びギヤボックス69の摺動連結部を強固に支持可能に構成させ、例えばキングピンである駆動軸78の軸径を太くすることなく前輪5の支持に必要な強度を確保させ、前輪5を設けるフロントアクスルケース38構造の軽量化並びに製造コストの低減などを図り、しかもサスペンションバネ87を内側に設けるケースカバー70の外側でナックルアーム75を摺動させ、省スペースでサスペンション構造を配置させる。
【0028】
また、ギヤボックス69の少なくとも上下方向の摺動範囲に対応する回動規制部材であるストッパ89をナックルアーム75の内側に設け、省スペースで前記のストッパ89を配置させ、ナックルアーム75またはフロントケース68などを兼用してストッパ89を形成させ、構成部品の共用により構成部品点数を削減し、かつ駆動軸78回りのギヤボックス69の回転を規制するのに必要なストッパ89の強度を容易に得ると共に、ケースカバー70またはフロントケース68側とナックルアーム75の支持部83下面側との当接によりギヤボックス69の下向き摺動を規制させ、従来に比べ、フロントケース68及びギヤボックス69の最伸張時の止め輪等のストッパが不要になり、ギヤボックス69の伸張動作を制限するストッパ部品を特別に設ける必要がなく、ギヤボックス69支持構造の簡略化などを行い、しかも高剛性のナックルアーム75の兼用により強度的に有利なストッパ構造を得られ、製造コストの低減並びに耐久性の向上などを図る。
【0029】
さらに、本機に対して走行輪である前輪5をサスペンションバネ87を介して昇降自在に設ける田植機において、本機に対して前輪5が最上昇して位置するときが通常状態になるようにサスペンションバネ87力を設定し、前輪5が昇降途中に支持されるサスペンションバネ87構造のように予備苗などの搭載重量によって車高が変化する不具合をなくし、圃場内で機体が略水平に支持された状態で田植作業を行い、苗の植付け精度を維持させ、しかも耕盤の凹部など段差があっても前輪5の接地圧をサスペンションバネ87の接地作用により確保させ、前輪5のスリップを低減して走行性能を堅持させるもので、前輪5に駆動力を伝える駆動軸78の上方側にサスペンションバネ87を設け、前記駆動軸78とサスペンションバネ87の間にベアリング86及びホルダ85を介在させ、例えば駆動軸78の外側に巻装支持させる構造に比べてサスペンションバネ87の取付け構造を簡略にし、駆動軸78の回転力によるサスペンションバネ87の変形または摩擦などを防止し、しかも前記ホルダ85によるサスペンションバネ87の支持面を広くしてバネ87の倒れ防止などを行う。
【0030】
また、車体重量によって本機と前輪5が最接近する最低車高状態とし、走行路面の段差によって前輪5を本機から離間させて前輪5を接地させるように、サスペンションバネ87を設け、田植作業時に搭載する予備苗またはウエイトなどによってサスペンションバネ87が変形するのを防止し、車体重量変化によって車高が変更されて機体が傾くのを阻止し、しかも路面の段差による前輪5のスリップを低減させて蛇行走行を防止する。
【0031】
さらに、図22に示す如く、フロントケース68を固定させる出力ケース67の機外側部に出力軸72をベアリング92軸支させ、フロントケース68に内設させるベベルギヤ79のボス部93を出力軸72方向に延設させ、前記ボス部93端面をベアリング92に当接させてベベルギヤ79のスラスト荷重を受けるように構成し、ベベルギヤ79のスラスト荷重を受けるカラーなどを不要にして部品点数を削減し、デフ軸を兼用する出力軸72方向の加工寸法誤差を低減させ、ベベルギヤ79のバックラッシュを適正に確保できる。また、前記サスペンションバネ87を受けるケースカバー70の最上部をステップ9の下面側に近接させ、前記バネ87の受部分であるケースカバー70頭部にステップ9用ゴム製支持部材70aを設け、ケースカバー70をステップ9取付け部材として使用可能に構成し、ステップ9を支持させるステーを省いて部品点数を削減させ、またフロントアクスルケース38にステップ9とメインフレーム16の両方を支持させ、ステップ9を高剛性支持させる。
【符号の説明】
【0032】
5 前輪
78 駆動軸
85 ホルダ
86 ベアリング
87 サスペンションバネ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(36)及びミッションケース(37)を搭載する左右一対のメインフレーム(16)を走行車(1)に備え、前記メインフレーム(16)を構成する前フレーム(17)に前記エンジン(36)を配置し、前記エンジン(36)の後方に前記ミッションケース(37)を配置している田植機において、
前記左右の前フレーム(17)の左右設置幅を前記エンジン(36)の左右幅よりも大きく形成し、前記エンジン(36)の下面側に位置するフレーム部材(35)の両側を前記左右の前フレーム(17)に固定し、前記左右の前フレーム(17)の前側をつなぐ前バンパ(22)と、前記左右の前フレーム(17)と、前記フレーム部材(35)とからなる枠部材を、前記ミッションケース(37)に支持させ、前記フレーム部材(35)に防振部材(53)を介して前記エンジン(36)を防振支持させている、
田植機。
【請求項2】
前記走行車(1)の後部にリンク機構(2)を介して植付部(3)を昇降自在に設ける構造であって、
前記ミッションケース(37)の左右側部に前アクスルケース(38)を左右外向きに突設し、前記ミッションケース(37)とリヤアクスルケース(42)とを別体に構成し、前記フレーム部材(35)の左右幅中間に前記ミッションケース(37)の前部を固定させている、
請求項1に記載の田植機。
【請求項1】
エンジン(36)及びミッションケース(37)を搭載する左右一対のメインフレーム(16)を走行車(1)に備え、前記メインフレーム(16)を構成する前フレーム(17)に前記エンジン(36)を配置し、前記エンジン(36)の後方に前記ミッションケース(37)を配置している田植機において、
前記左右の前フレーム(17)の左右設置幅を前記エンジン(36)の左右幅よりも大きく形成し、前記エンジン(36)の下面側に位置するフレーム部材(35)の両側を前記左右の前フレーム(17)に固定し、前記左右の前フレーム(17)の前側をつなぐ前バンパ(22)と、前記左右の前フレーム(17)と、前記フレーム部材(35)とからなる枠部材を、前記ミッションケース(37)に支持させ、前記フレーム部材(35)に防振部材(53)を介して前記エンジン(36)を防振支持させている、
田植機。
【請求項2】
前記走行車(1)の後部にリンク機構(2)を介して植付部(3)を昇降自在に設ける構造であって、
前記ミッションケース(37)の左右側部に前アクスルケース(38)を左右外向きに突設し、前記ミッションケース(37)とリヤアクスルケース(42)とを別体に構成し、前記フレーム部材(35)の左右幅中間に前記ミッションケース(37)の前部を固定させている、
請求項1に記載の田植機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
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【図11】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2013−100106(P2013−100106A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−29221(P2013−29221)
【出願日】平成25年2月18日(2013.2.18)
【分割の表示】特願2011−192650(P2011−192650)の分割
【原出願日】平成13年5月21日(2001.5.21)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成25年2月18日(2013.2.18)
【分割の表示】特願2011−192650(P2011−192650)の分割
【原出願日】平成13年5月21日(2001.5.21)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
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