説明

甲状腺ホルモンおよびその塩の製造方法

本発明は、一般的にはL-チロキシン誘導体の製造方法に関する。より詳細には、本発明は、L-チロキシン1ナトリウム塩およびその遊離形を合成するための有用な中間体である関連ヨウ素化化合物を2ナトリウム塩として提供する芳香族誘導体の適切なヨウ素化剤によるヨウ素化反応に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族基質を適切なヨウ素化剤でヨウ素化反応させ、関連ヨウ素化化合物およびその塩を提供することを含む甲状腺ホルモン誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホルモン誘導体は、種々の必須の代謝的変換において重要な生物学的役割を果たす化合物のクラスである。該クラスのうち、甲状腺ホルモン、特にヨウ素化ビフェニル化合物、例えば、チロキシン((2S)-2-アミン-3-[4-(4-ヒドロキシ-3,5-ジヨードキシフェノシル)-3,5-ジヨードフェニル]プロパン酸)(T4と略されることが多い)、およびトリヨードチロニン(T3)は、身体の種々の代謝過程の速度の調節に関与する重要な鍵となる分子である。特に、L-チロキシンとL-トリヨードチロニンの1ナトリウム塩は、どちらも甲状腺の機能異常に関連する種々の病状の治療に広く用いられる。
【0003】
最初は動物天然供給源を出発物質に用いる(US 2,889,363参照)、後に酵素的合成法やバイオミメティック合成法による(US 2,889,364参照)、T4およびT3の種々の製造方法が、以前に開示されている。(さらなる態様はWO 96/11904 (Baxter)に記載されており、ここでは、有機金属の酸化的カップリングを実施してチロキシン塩酸誘導体を得、次いで適宜対応するナトリウム塩に変換している。)
【0004】
IT 1302201 (Bracco)は、当該分野で知られた同様の方法(例えば、Chalmers et al.、J. Chem. Soc. 1949、3424参照)に比べて全収率が改善されたL-チロキシンの1ナトリウム塩の合成方法を開示した。従来技術によれば、L-チロキシンの1ナトリウム塩は、ほとんどの場合、実質的に下記反応式Iに従って、対応する2ナトリウム塩の適切で制御された酸化により製造される。
反応式I

【0005】
典型的には、該反応は、該2ナトリウム塩を強無機酸、例えば塩化水素酸と反応させ、次いでアルカリ塩基、例えばNa2CO3を用いて適切にpH調節することにより行うことができる。次いで、先に化合物IIとして示した2ナトリウム塩を、例えば、IT 1302201 (Bracco)に開示のごとく、下記反応式IIに従って製造することができる。
反応式II
【化1】

【0006】
上記に模式的に示すように、3,5-ジヨードチロニン(化合物I)を、適切なアミンの存在下、水性媒質中の選択したヨウ素化剤として広く用いられるKI/I2系と反応させる(例えば、Taylor et al. The Ohio Journal of Science、Vol. 53、37-41、1953参照)。そうして得られた1および2カリウム塩(本明細書では、一般的に「カリウム塩混合物」という)を以下を含む次の分離精製工程にかける:
(a) 有機酸の添加;
(b) 得られた「遊離型」の分離(沈殿物として);および
(c) 最後に過剰の水酸化ナトリウムを加えて式IIのL-チロキシン2ナトリウム塩を得る。
【0007】
出願人は、実質的に上記追加工程(a-c)を行わずに、化合物IIを化合物Iの変換により直接得ることができることをみいだした。詳細には、本発明者らは、ヨウ素化系としてKI/I2の代わりにNaI/I2を用いることにより、式Iの3,5-ジヨードチロニンをヨウ素化し、1工程で高収量および高純度でL-チロキシン2ナトリウム塩IIが得られることをみいだした。驚くべきことに、実際に、従来技術の対応するカリウム塩誘導体と異なり、該化合物IIは、反応媒質に実質的に不溶性であり、速やかに回収することができ、また、下記のように対応する1ナトリウム塩の製造やその遊離型の製造において中間体として用いることもできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
(発明の要約)
本発明は、NaIおよびI2の存在下で式Iの3,5-ジヨード-チロニンを直接ヨウ素化することによる甲状腺ホルモン誘導体チロキシン(T4)のナトリウム塩およびその遊離型の新規製造方法に関する。
【0009】
詳細には、本発明は、脂肪族アミンの存在下で、式I:

で示される化合物を、NaIおよびI2を含むヨウ素化剤と反応させて、式II:

で示される2ナトリウム誘導体を得ることを含む甲状腺ホルモン誘導体の製造方法に関する。
【0010】
好ましくは、最適なヨウ素化剤中のNaIとI2のモル比は、1〜4、より好ましくは2〜3であり、脂肪族アミンは、好ましくは直鎖状モノ(C1-C4)アミンから選ばれ、最も好ましくはエチルアミンである。
【0011】
ヨウ素化剤の添加は、水性溶媒の存在下、好ましくは水の存在下、好ましくは25℃以下の温度、より好ましくは22℃以下の温度で約3〜4時間行う。
【0012】
ヨウ素化反応が完結したら、粗2ナトリウム塩IIを含む沈殿物が得られる。最終pHを、好ましくは無機塩基を用いて少なくとも11の塩基性値に調製し、得られるL-チロキシン2ナトリウム塩IIを、好ましくは含水アルコール溶液から沈殿させて純粋な化合物として回収する。好ましくは、該溶液は、ある温度の水/低級(C1-C4)アルコール混合物であり、沈殿を、該溶液を約50〜70℃の温度に加熱し、次いで約5〜15℃の温度に冷却して行う。そうして得られた純粋なL-チロキシン2ナトリウム塩を、そのまま保存するか、または式IIIの対応する1ナトリウム塩またはその式IVの対応する遊離型を製造するための中間体として用いることができる。
【0013】
したがって、本発明のさらなる局面によれば、L-チロキシン2ナトリウム塩IIは、式III:

で示される対応するL-チロキシン1ナトリウム塩の製造に用いる。
【0014】
本発明の好ましい態様によれば、本発明の方法により、2ナトリウム誘導体IIの水性溶液の塩基性化/酸性化工程により化合物IIIを製造することができ、2ナトリウム誘導体IIは本発明に従って製造され、pH9〜11が得られる。好ましくは、該工程は、弱有機酸を2ナトリウム誘導体IIのアルカリ水性溶液に少なくとも70℃の温度で加えて実施する。好ましくは、式IIIの1ナトリウム誘導体を形成するための処理温度は、約70℃〜約95℃、より好ましくは約75℃〜約85℃である。
【0015】
好ましい有機酸は酢酸であり、好ましいアルカリ溶液は、Na2CO3またはNaOHの存在下の、蒸留水中の化合物IIの溶液である。さらなる好ましい態様によれば、化合物IIのアルカリ溶液の水分含有量は、約11〜約25 w/w、より好ましくは約11〜約15 w/wである。同様に、さらなる局面によれば、本発明は、2ナトリウム塩IIの水性溶液の塩基性化/酸性化工程による、式IV:

で示されるL-チロキシンの遊離型の製造方法に関する(ここで、2ナトリウム誘導体IIは本発明に従って製造され、8以下、好ましくは5以下のpHが得られる。)
【課題を解決するための手段】
【0016】
(発明の詳細な説明)
本発明は、脂肪族アミンの存在下で、式I:

で示される化合物を、NaIおよびI2を含むか、好ましくはそれらからなるヨウ素化剤と反応させて、式II:

で示される2ナトリウム誘導体を得ることを含む甲状腺ホルモン誘導体の製造方法に関する。
【0017】
本発明のヨウ素化剤は、好ましくは、NaIおよびI2を、水性媒質、好ましくは水、より好ましくは蒸留水に溶解することにより製造する。該水性溶液(以後、「NaI/I2系」という)は、使用時(すなわち、ヨウ素化反応の直前)または事前(例えば数時間前)に好都合に調製し、使用前に室温に保つ。本発明の態様によれば、ヨウ素化剤中のNaIとI2のモル比は、2〜3、好ましくは2.40〜2.70である。
【0018】
実用的な好ましい態様において、式Iの3,5-ジヨードチロニンは、適切な有機アミンの存在下、水性溶媒、好ましくは水、より好ましくは蒸留水に懸濁する。
【0019】
好ましいアミンは、例えば、脂肪族(C1-C4)アミン、特に直鎖状モノ(C1-C4)アミン(とりわけ、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、およびその混合物を含む)であり、エチルアミンがより好ましい。次に、それに、NaI/I2系を25℃またはそれ以下、好ましくは22℃以下の温度で2〜5時間かけて加える。好ましくは、式Iの化合物に対するNaI/I2系の分子比は、少なくとも1:2であり、さらにより好ましくは該分子比は1:2〜1:4である。
【0020】
添加が完結したら、反応混合物を、室温(すなわち、約20℃〜約35℃)で、少なくとも1時間反応させ、反応が完結したら、過剰のアミンを、例えば減圧下で留去し、次いで弱有機酸(対数酸解離定数pKaが-2より高い酸を意味する)、好ましくは酢酸を約10℃〜約20℃の温度で加え、式IIのL-チロキシン2ナトリウム塩を粗物質として含む沈殿物を得る。好ましい態様によれば、得られた粗生成物を、さらに沈殿させ、それを含水アルコール溶液、好ましくは蒸留水/低級(C1-C4)アルコール混合物、さらにより好ましくは蒸留水/エタノール混合物に溶解し、次いで該溶液を40℃〜80℃の温度に加熱し、次いで加熱した溶液を例えば氷/水浴で温度約5℃〜約20℃に冷却することにより精製する。好ましくは、含水アルコール混合物中の水とアルコールの重量比は、1:9、より好ましくは1:7である。該溶液を加熱する前に、塩基を加えて、pHを塩基性値、好ましくは11以上に調整する。これに用いることができる塩基のうち、通常無機塩基、例えばアルカリ金属水酸化物、カーボネートなどの水性溶液を好都合に用いることができるが、水性NaOHが好ましく、水性Na2CO3がより好ましい。
【0021】
このようにして、L-チロキシン2ナトリウム塩IIを、例えば濾過により高収率(88%以下)および高純度(99 % HPLC)で沈殿物から回収するが、時間を節約でき信頼性のある方法では、式Iの3,5-ジヨード誘導体から出発し、実質的にいかなる中間体化合物も単離しない。
【0022】
特に、化合物IIは光学活性があるので、本発明の方法は、対応する光学活性異性体から出発し、反応経過中、立体中心での立体配置を完全に維持することによりその製造を可能とする。化合物IIのあらゆる光学異性体(すなわち、(S)および(R)型、およびそのあらゆるラセミ混合物)が本発明の範囲に含まれることを意図する。
【0023】
先に記載したように、式IIの2ナトリウム誘導体は、そのままで適切に保存することができるか、または下記反応式IIIに記載のように、IIの水性溶液の適切なpH調整、次いで最適な生成物の沈殿により、式IIIのL-チロキシン1ナトリウム塩の前駆体または式IVのL-チロキシン遊離型の製造において前駆体として用いることができる。
反応式III

【0024】
このように、例えば、基本的に、高温度で、IIの酸性溶液のpHをNa2CO3を加えて(すなわち、pHを増加させることにより)約10の値に調整することからなるIT1302201 (Bracco)に記載の方法に従って、式IIIのL-チロキシン1ナトリウム塩を対応する2ナトリウム誘導体IIから得ることができる。
【0025】
注目すべきことに、本発明に従って式IIのL-チロキシン2ナトリウム塩を得ると、該1ナトリウム誘導体IIIが高純度で高収率(IIから出発して約90%、Iからの全集率80%、HPLC面積%:99%、実験の部の実施例3参照)で得られることがわかった。本発明のさらなる好ましい態様において、該1ナトリウム誘導体IIIは、高温度で、化合物IIのアルカリ水性溶液に酸、例えば弱有機酸を加えることによる(すなわち、pHを下げることによる)pH調節工程を実施することによりさらに高収率で得ることができることがわかった。
【0026】
したがって、本発明のさらなる局面は、少なくとも70℃の温度、pH9〜11で式IIの対応する2ナトリウム塩のアルカリ水性溶液に酸を加え、次いで、約0℃〜約25℃の温度に冷却することを含む式IIIのL-チロキシン1ナトリウム誘導体の製造方法である。好ましくは、該酸を、約70℃〜95℃、より好ましくは約75℃〜88℃、さらにより好ましくは約82℃〜約85℃の温度で溶液に加える。好ましくは、式IIの2ナトリウム塩を先に報告したように得、別の好ましい態様によれば、pHを約10に調整する。
【0027】
pHを、例えばpH電極装置またはあらゆる他の好都合な方法によりモニターする。
【0028】
用語「化合物IIのアルカリ水性溶液」は、アルカリ塩基水性溶液中に該2ナトリウム誘導体を含む溶液を意味する。好ましいアルカリ塩基には、Na2CO3およびNaOHから選ばれるアルカリ水酸化物またはカーボネート塩基が含まれるが、水性媒質は好ましくは水、さらにより好ましくは蒸留水である。
【0029】
上記のように、IIのアルカリ水性溶液を加熱し、最適な酸を添加、好ましくは滴下する。適切な酸の典型例は、無機酸または有機酸、好ましくは弱有機酸、さらにより好ましくは酢酸であろう。
【0030】
酸を添加後、得られた溶液を、例えば水/氷浴を用いて約2〜5時間かけて好ましくは約10℃〜約20℃の温度に冷却し、L-チロキシン1ナトリウム塩IIIを沈殿物として得る。これは、以下の実験の部に記載するように、好ましくは濾過により、適切な特徴的固体で、非常に高収率(IIから95%以下、Iから85%以上)で、高純度(99% HPLC)で適切に回収される。
【0031】
その回収前に、フィルターケーキを所望により水または含水アルカリ溶液、好ましくは水性エタノールで洗浄し、該固体の回収を促進する。
【0032】
沈殿工程を通して該アルカリ溶液の水分含有量は、例えば、試薬の溶解に必要最低限の量〜それより高い量が選ばれる。好ましくは、そのような水分含有量は、約11〜約25w/w(w/wは化合物Bに対する水の総量を意味する)で選ばれ、実験の部の表1に記載の全体収率を変化させることなく、時間中の沈殿(すなわち、量、含有量、または他の特性)を調節するためには11〜15w/wの水分含有量が特に好ましい。
【0033】
したがって、本発明の特に好ましい態様によれば、式IIIの該1ナトリウム誘導体は、酢酸を本発明に従って得られた化合物IIのアルカリ溶液に加え、約82℃〜約85℃の温度で約pH10とし、反応混合物の水分含有量を約11〜約15w/wとし、次いで反応媒質を約10℃〜約15℃の温度に冷却することにより沈殿物として得られる。
【0034】
先に記載のように、本発明の方法は、化合物IIの水溶液のpHを8以下、好ましくは6以下に調整することにより式IVのL-チロキシン遊離型の製造に好都合に用いることもできる。
【0035】
好ましくは、先に記載のものと同様に、pH調節剤は有機酸または無機酸、好ましくは酢酸である。
【0036】
本発明の方法の出発物質およびあらゆるさらなる反応物質は当該分野で知られており、市販品を利用することができるか、または常套的方法に従って製造することもできる。
【0037】
上記から、本発明の方法は、いかなる中間体も単離せずに好都合にNaIおよびI2を含むヨウ素化剤を式Iの3,5-ジヨードチロニンと反応させることにより式IIのL-チロキシン2ナトリウム塩を製造することができると結論づけることができる。本発明に記載の方法は、KI/I2系をヨウ素化剤として用いることを含む、当該分野で知られている同様の方法に比べて、得られる誘導体の収率と最終精製度の増加と、時間プロセスの減少をもたらす。
【0038】
広く報告されているように、そのようにして得られる式IIのL-チロキシン2ナトリウム塩は、従来技術によるか、またはより好都合には高温度の有機酸または無機酸を選択したpHのIIのアルカリ溶液に加え、次いで冷却することを含む、先に報告された方法に従って対応するL-チロキシン1ナトリウム塩IIIの合成に効率的に用いられる。
【0039】
この点、本発明は、化合物IIの溶液の適切なpH調節により非常に好都合で信頼性のある方法を用いるL-チロキシン遊離IVの製造も可能にする。
【0040】
下記実施例は、本発明の方法をよりよく示すためのものであり、本発明を限定するものではない。
(実験の部)
【実施例1】
【0041】
式Iの3,5ジヨードチロニンとNaI/I2系の反応によるL-チロキシン2ナトリウム塩(化合物II)の製造
式Iの3,5-ジヨードチロニン(1.0 kg、Sigma、cat Nr D0629)とNaI (0.3 kg)を、窒素雰囲気下で水(8.5 kg)に懸濁させ、70%水性エチルアミン (5.6 kg)を約1時間で加え、約22℃の温度に維持し、溶液を得る。
【0042】
水(5.0 kg)中のI2(1.1 kg)およびNaI (1.3 kg)の溶液を約3時間かけて加え、22℃未満の温度に維持した(生成物沈殿物)。サスペンジョンを約1時間撹拌し、次いで水(2.8 kg)中のNa2SO3(0.1kg)とNa2CO3(0.5kg)の溶液を加えた。約15分間撹拌した後、混合物を50〜65℃に加熱して反応媒質中の試薬の可溶化を促進し、次いでエチルアミンを減圧下で留去した。残った反応混合物を約20℃に冷却し、次いで酢酸(0.3kg)をpHが約11になるまで加えた。次に、該サスペンジョンを10℃に冷却し、濾過し、次いで固体を水(4.8kg)で洗浄し、粗な式IIの化合物を得た。
【0043】
湿潤固体を水(0.8 kg)/無水エタノール(5.3kg)混合物に懸濁し、次いで30%NaOH(0.3 kg)を加えた(pH>11)。該溶液を50〜70℃に加熱し、次いで水/氷浴で約10℃に冷却し、純粋な式IIのL-チロキシン2ナトリウム誘導体を沈殿させ、次いでこれを濾過し、冷無水エタノールで洗浄した(収率86〜88%、HPLC99%)。
【実施例2】
【0044】
実施例1に従って製造した2ナトリウム誘導体IIから出発する塩基性化/酸性化工程によるL-チロキシン1ナトリウム塩(化合物III)の製造
実施例1に従って得られた式IIのL-チロキシン2ナトリウム誘導体を、約25〜30℃の温度で表1に従ってNaOHの水性溶液に溶解した。Na2SO3 (0.03kg)および活性炭(3g)を加えた後、混合物を約0.25〜0.30時間撹拌し、次いでMillipore(0.45μm)で濾過した。
【0045】
該溶液を約40〜50℃に温め、次いで水性Na2CO3(下記表1参照)を加え、式IIIの該1ナトリウム誘導体のアルカリ溶液を得た。
【0046】
該アルカリ溶液を表1に記載の温度T1に加熱し、次いでpHが約9〜10になるまで酢酸を加えた。該溶液を3時間かけて約15℃に冷却し、次いで約0.5時間静かに撹拌した。沈殿した固体を濾過して除去し、フィルターケーキを水(3.0 Kg)およびEtOH aqで洗浄した。得られた式III のL-チロキシン1ナトリウム塩(HPLC 99%)を真空下、約35℃で乾燥し、目的の乾燥粉末を得た。
表1:実施例2の操作条件
【表1】

【実施例3】
【0047】
実施例1に従って製造した2ナトリウム誘導体IIから出発する酸性化/塩基性化工程によるL-チロキシン1ナトリウム塩(化合物III)の製造
実施例1に従って得られる乾燥、式IIのL-チロキシン2ナトリウム塩(1.0 kg)を水(14 kg)に懸濁し、pH約12〜13になるまで30% NaOH (100 g)を加えた(必要ならば混合物を25〜30℃に加熱した)。
【0048】
Na2SO3(20g)および活性炭(3g)を添加後、該混合物を約0.5時間撹拌し、次いでMillipore (0.45μm)で濾過した。フィルターを水(1kg)で洗浄し、次いでHClをpH2〜3になるまで加え、沈殿物を得た。
【0049】
サスペンジョンを加熱し、水(6kg)中のNa2CO3(2.0kg)の溶液を約90〜95℃の温度に維持して加え、それにより透明溶液を得た。
【0050】
該溶液を約20℃に冷却し、沈殿物を形成させた。サスペンジョンを濾過し、該ケーキを水(1.5kg)で洗浄した。
【0051】
湿った式IIIのL-チロキシン1ナトリウムを乾燥して、IIから収率92.0%を得た(Iからの全収率80%(HPLC面積%:99)に対応する)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
甲状腺ホルモン誘導体の製造方法であって、
脂肪族アミンの存在下で、式I:

で示される化合物とNaIおよびI2を含むヨウ素化剤を反応させて、
式II:

で示される2ナトリウム誘導体を得る方法。
【請求項2】
該脂肪族アミンが直鎖状モノC1-C4アミンである請求項1記載の方法。
【請求項3】
該脂肪族アミンがエチルアミンである請求項2記載の方法。
【請求項4】
ヨウ素化剤中のNaIとI2のモル比が1〜4である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ヨウ素化剤中のNaIとI2のモル比が2〜3である請求項4記載の方法。
【請求項6】
ヨウ素化剤を25℃以下の温度で化合物Iと脂肪族アミンを含む溶液に加える請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
溶媒が蒸留水である請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
さらに少なくともpH11の、式IIの化合物の含水アルコールアルカリ溶液を製造し、40℃〜80℃の温度に加熱し、5℃〜20℃の温度に冷却し、化合物IIを純粋な固体として単離することを含む請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
さらに式IIの化合物の水性溶液に有機酸または無機酸を加え、次いで式III:

で示される1ナトリウム誘導体を単離することを含む請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
該酸が酢酸である請求項9記載の方法。
【請求項11】
該酸をIIの水性溶液に加え、70℃〜95℃の温度に加熱し、得られる溶液を10℃〜15℃の温度に冷却することを含む請求項9〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
該酸を82℃〜85℃の温度でIIの水性溶液に加える請求項11記載の方法。
【請求項13】
IIの水性溶液の水含有量が11w/w〜25w/wである請求項9〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
IIの水性溶液の水含有量が11w/w〜15w/wである請求項13に記載の方法。
【請求項15】
該酸を75℃〜85℃の温度でIIの水性溶液に加え、該溶液の水含有量が11〜15w/wである請求項11〜14のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2013−514337(P2013−514337A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543799(P2012−543799)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070118
【国際公開番号】WO2011/073409
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(504448162)ブラッコ・イメージング・ソシエタ・ペル・アチオニ (34)
【氏名又は名称原語表記】BRACCO IMAGING S.P.A.
【Fターム(参考)】