説明

甲状腺ホルモンの検出方法

【課題】 簡便に、より高感度な測定を実現する甲状腺ホルモンの検出方法を提供する。
【解決手段】 反応液中で、抗甲状腺ホルモン抗体に、検体中の甲状腺ホルモンおよび甲状腺ホルモン固定化担体を競合的に結合させる結合工程を、pH7〜7.4の条件下で行い、前記甲状腺ホルモン固定化担体と前記抗甲状腺ホルモン抗体との複合体を検出する。このように、前記結合工程を前記pH条件下で行うことによって、検体中の甲状腺ホルモンをより高感度に検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、甲状腺ホルモンの検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
甲状腺ホルモンは、甲状腺から分泌され、全身の細胞に作用して細胞の代謝率を向上させる等の作用を有するホルモンであり、トリヨードチロニン(T3)およびチロキシン(T4)が知られている。近年、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される甲状腺機能亢進症(例えば、バセドウ病等)、および、甲状腺ホルモンの分泌が不足する甲状腺機能低下症(例えば、橋本病等)等の甲状腺機能異常症の患者が増加している。このため、臨床検査等において、甲状腺ホルモンの正確な測定が重要である。
【0003】
甲状腺ホルモンの測定には、例えば、抗甲状腺ホルモン抗体を用いる競合的免疫測定法が広く採用されている(特許文献1および2、非特許文献1参照)。前記測定法は、検体中の甲状腺ホルモンと試薬中の甲状腺ホルモンとを競合的に、抗甲状腺ホルモン抗体に反応させる測定系である。前記測定法には、一般的に、標識化抗体、ビオチン化甲状腺ホルモンおよびアビジン固定化担体が使用され、以下のようにして行われる。まず、検体と前記標識化抗体とを混合し、前記検体中の甲状腺ホルモンと前記標識化抗体とを結合させる。つぎに、前記混合物に、さらに、前記ビオチン化甲状腺ホルモンおよび前記アビジン固定化担体を混合する。これによって、前記検体中の甲状腺ホルモンと結合していない未反応の標識化抗体と、前記ビオチン化甲状腺ホルモンと、前記アビジン固定化担体とが、抗原抗体反応およびアビジン−ビオチン結合により、複合体を形成する。そして、前記複合体を分離して、前記複合体における前記標識化抗体を検出する。前記標識化抗体は、前記検体中の甲状腺ホルモンと、前記ビオチン化甲状腺ホルモンとが競合的に結合するため、前記複合体における標識化抗体を検出することで、前記検体中の甲状腺ホルモンと結合した標識化抗体を測定でき、これによって間接的に前記検体中の甲状腺ホルモンが測定できる。
【0004】
しかしながら、近年、前記甲状腺ホルモンをさらに高感度に測定することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−89889号公報
【特許文献2】特開2010−53118号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Kathmandu University Medical Journal (2005) Vol.3, No.1, Issue 9, 91−93
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、簡便に、より高感度な測定を実現する甲状腺ホルモンの検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の甲状腺ホルモンの検出方法は、反応液中で、抗甲状腺ホルモン抗体に、検体中の甲状腺ホルモンおよび甲状腺ホルモン固定化担体を競合的に結合させる結合工程、および、前記甲状腺ホルモン固定化担体と前記抗甲状腺ホルモン抗体との複合体を検出する検出工程を含み、
前記結合工程を、pH7〜7.4の条件下で行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、前記結合工程を前記pH条件下で行うことによって、簡便かつ高感度に甲状腺ホルモンを測定できる。したがって、本発明は、臨床検査等において、極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の検出方法は、前述のように、反応液中で、抗甲状腺ホルモン抗体に、検体中の甲状腺ホルモンおよび甲状腺ホルモン固定化担体を競合的に結合させる結合工程、および、前記甲状腺ホルモン固定化担体と前記抗甲状腺ホルモン抗体との複合体を検出する検出工程を含み、
前記結合工程を、pH7〜7.4の条件下で行うことを特徴とする。
【0011】
本発明の検出方法は、前記結合工程を前記pH条件下で行うことが特徴であって、その他の条件および工程は、制限されない。前記結合工程のpH条件は、7〜7.4であり、好ましくは7〜7.3であり、より好ましくは7.1〜7.3であり、さらに好ましくは7.1〜7.2である。
【0012】
本発明において、「競合的に結合させる」とは、例えば、前記抗甲状腺ホルモン抗体に、同時に、検体中の甲状腺ホルモンおよび前記甲状腺ホルモン固定化担体を結合させる意味だけでなく、前記標識化抗甲状腺ホルモン抗体に、前記検体中の甲状腺ホルモンおよび前記甲状腺ホルモン固定化担体のいずれか一方を結合させた後、フリーの前記標識化抗甲状腺ホルモン抗体に他方を結合させる意味も含む。
【0013】
前記検出工程において、前記甲状腺ホルモン固定化担体と前記抗甲状腺ホルモン抗体との複合体の検出方法は、特に制限されない。前記複合体の検出は、例えば、前記抗甲状腺ホルモン抗体として、標識化抗甲状腺ホルモン抗体を使用し、前記複合体における前記標識化抗甲状腺ホルモン抗体の前記標識を検出してもよい。また、前記複合体の検出は、例えば、前記甲状腺ホルモン固定化担体における担体として、後述のような標識の役割を果たす担体を使用し、前記複合体における前記甲状腺ホルモン固定化担体の担体を前記標識として検出してもよい。この際、前記抗甲状腺ホルモン抗体は、例えば、標識化抗体でもよいし、未標識抗体でもよい。標識の役割を果たす前記担体は、例えば、前述のような蛍光粒子等があげられる。
【0014】
本発明の検出目的である甲状腺ホルモンは、例えば、T4、T3、これらの誘導体があげられる。前記誘導体は、例えば、前述のようなものがあげられる。本発明において、検出目的の甲状腺ホルモンは、例えば、一種類でもよいし、二種類以上でもよい。本発明は、例えば、検出目的の甲状腺ホルモンの種類に応じて、前記抗甲状腺ホルモン抗体、前記甲状腺ホルモン固定化担体の固定化された甲状腺ホルモンを選択できる。
【0015】
前記検体は、特に制限されず、例えば、生体試料等の試料があげられ、前記生体試料は、例えば、血液等があげられる。前記血液は、例えば、全血、血清、血漿等があげられる。前記検体は、例えば、前記試料をそのまま使用してもよいし、前記試料を溶媒に、懸濁、分散または溶解した希釈液等として使用してもよい。前記溶媒は、例えば、前述のものを使用できる。前記検体は、例えば、取り扱いが容易であることから液状の検体であることが好ましい。
【0016】
本発明の検出方法は、前記結合工程において、前記抗甲状腺ホルモン抗体に、検体中の甲状腺ホルモンおよび前記甲状腺ホルモン固定化担体を競合的に結合できればよく、使用する試薬の種類は、特に制限されない。本発明の検出方法は、例えば、前記抗甲状腺ホルモン抗体、および、予め甲状腺ホルモンが固定化された前記甲状腺ホルモン固定化担体を使用する2試薬系でもよいし、前記抗甲状腺ホルモン抗体、ならびに、前記甲状腺ホルモン固定化担体を形成するための担体および甲状腺ホルモンを使用する3試薬系でもよい。
【0017】
以下、本発明の検出方法について、前記2試薬系を使用する第1の実施形態および前記3試薬系を使用する第2の実施形態について説明する。本発明は、これらの例には制限されない。
【0018】
第1の実施形態
本実施形態は、前述のように、例えば、前記結合工程を、前記抗甲状腺ホルモン抗体および前記甲状腺ホルモン固定化担体の2試薬系を使用することにより行う。
【0019】
(1)抗甲状腺ホルモン抗体
前記抗甲状腺ホルモン抗体において、前記抗体は、特に制限されず、前記甲状腺ホルモンに結合性を有する抗体であればよい。前記抗体の種類は、特に制限されず、例えば、IgG、IgA、IgM、IgD、IgEおよびIgY等の免疫グロブリン分子、ならびにこれらのFab、Fab’、F(ab’)等の抗体フラグメント(以下、抗原結合断片ともいう)等があげられる。前記抗体の由来は、特に制限されず、例えば、ヒト、または、マウス、ウサギ、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジおよびヤギ等の非ヒトの哺乳類動物、ニワトリ等の鳥類等の動物種由来があげられる。前記抗体は、例えば、免疫動物の血清から、従来公知の方法により作製してもよいし、市販の抗体を使用してもよい。前記抗体は、例えば、ポリクローナル抗体でもよいし、モノクローナル抗体でもよい。
【0020】
前記抗甲状腺ホルモン抗体は、例えば、前述のように、標識化抗甲状腺ホルモン抗体を使用できる。前記抗甲状腺ホルモン抗体を標識化する標識は、特に制限されず、検出可能であればよい。前記標識は、例えば、前記標識に由来する、発色、発光、蛍光等のシグナルを検出することにより検出できる。前記標識は、例えば、直接的に検出可能なものでもよいし、間接的に検出可能なものでもよい。前者としては、例えば、放射性同位元素、蛍光色素等があげられ、後者としては、例えば、酵素、遷移金属錯体、核酸等があげられる。
【0021】
前記酵素は、例えば、基質と反応させ、前記基質の発色、発光、蛍光等を検出することで、間接的に検出できる。前記酵素は、特に制限されず、例えば、パーオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ等があげられる。前記基質は、特に制限されず、例えば、前記酵素の種類に応じて適宜決定できる。前記基質は、例えば、2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)(ABTS)、3,3’,5,5’−テトラメチルベンチジン(TMB)、ジアミノベンチジン(DAB)、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸(BCIP)、4−メチルウムベリフェニル−β−D−ガラクトシド(4MUG)、3−(2’−スピロアダマンタン)−4−メトキシ−4−(3’’−β−D−ガラクトピラノシル)フェニル−1,2−ジオキセタン(AMGPD)、4−メチルウンベリフェリルリン酸、o−フェニレンジアミン、N,N−ジメチルアニリン、4−クロロフェノール、N−エチル−N−スルホプロピルアニリン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−m−トルイジン、p−ヒドロキシフェニルプロピオン酸、4−ニトロブルーテトラゾリウムクロライド(NBT)等があげられる。
【0022】
前記遷移金属錯体は、例えば、荷電による酸化還元反応により、発光するものが好ましい。前記遷移金属錯体は、例えば、ルテニウム錯体、オスミウム錯体等があげられる。前記ルテニウム錯体は、例えば、トリス(2,2’−ビピリジル)ルテニウム(II)等のルテニウムピリジン錯体が好ましい。
【0023】
前記抗甲状腺ホルモン抗体の前記標識による標識化は、特に制限されず、公知の方法により行うことができる。前記標識がアルカリホスファターゼの場合、例えば、同仁化学研究所社製の商品名Alkaline Phosphatase Labeling Kit−SHを使用して、標識化抗甲状腺ホルモン抗体を調製できる。
【0024】
前記抗甲状腺ホルモン抗体は、例えば、ドライの形態でもよいし、ウェットの形態でもよいが、取り扱いが容易であることから、液体試薬として使用することが好ましい。前記液体試薬は、例えば、溶媒と前記抗甲状腺ホルモン抗体とを含む。
【0025】
前記液体試薬の条件は、特に制限されない。前記液体試薬のpHは、その下限が、例えば、4であり、好ましくは5であり、より好ましくは6である。前記液体試薬のpHの上限は、例えば、12であり、好ましくは11であり、より好ましくは10である。前記液体試薬のpHの範囲は、例えば、4〜12であり、好ましくは5〜11の範囲であり、より好ましくは6〜10の範囲であり、さらに好ましくは6〜9の範囲である。
【0026】
前記液体試薬の前記溶媒は、特に制限されず、例えば、水、緩衝液、血清、血漿等があげられる。前記緩衝液は、特に制限されず、例えば、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ベロナール緩衝液、各種のグッド緩衝液等があげられる。前記溶媒が前記緩衝液の場合、前記液体試薬における前記緩衝液の濃度は、例えば、0.1〜2000mmol/Lであり、好ましくは1〜1000mmol/Lであり、より好ましくは10〜500mmol/Lである。
【0027】
前記液体試薬は、前記溶媒中に、前記抗甲状腺ホルモン抗体の他に、例えば、その他の成分を含んでもよい。前記その他の成分は、特に制限されず、例えば、界面活性剤、分散剤、防腐剤、塩、金属塩、タンパク質、糖、アミノ酸、キレート剤等があげられる。
【0028】
前記液体試薬において、前記抗甲状腺ホルモン抗体の濃度は、特に制限されない。前記濃度は、例えば、0.001〜1000μg/mLの範囲であり、好ましくは0.01〜100μg/mLの範囲であり、より好ましくは0.1〜10μg/mLの範囲である。前記液体試薬は、例えば、一種類の前記抗甲状腺ホルモン抗体を含んでもよいし、二種類以上の前記抗甲状腺ホルモン抗体を含んでもよい。後者の場合、各抗甲状腺ホルモン抗体の濃度は、特に制限されず、例えば、各抗甲状腺ホルモン抗体の濃度が前述の範囲でもよいし、各抗甲状腺ホルモン抗体の合計濃度が前述の範囲でもよい。
【0029】
(2)甲状腺ホルモン固定化担体
前記甲状腺ホルモン固定化担体において、前記固定化された甲状腺ホルモンは、例えば、チロキシン(以下、T4)、3,3’,5−L−トリヨードチロニン(以下、T3)、これらの誘導体があげられる。本発明において、前記固定化された甲状腺ホルモンは、抗甲状腺ホルモン抗体に対して、検体中の甲状腺ホルモンと競合して結合できればよい。このため、前記誘導体は、例えば、前記抗甲状腺ホルモン抗体に対する、T4およびT3のエピトープまたはエピトープを有する物質でもよい。前記誘導体は、例えば、3−ヨード−L−チロシン、3−ヨード−L−チロニン、3,5−ジヨード−L−チロシン、3,5−ジヨード−D−チロシン、3,5−ジヨード−L−チロニン、3,5−ジヨード−D−チロニン、3,3’,5−D−トリヨードチロニン、3,3’,5’−L−トリヨードチロニン(リバースT3)、D−チロキシン等があげられる。前記固定化される甲状腺ホルモンの種類は、特に制限されず、例えば、検出目的の甲状腺ホルモンの種類に応じて決定でき、例えば、T3およびT4のいずれか一方でもよいし、その誘導体でもよいし、T3およびT4の両方でもよいし、T3、T4およびこれらの誘導体から選ばれる二つ以上の組合せでもよい。
【0030】
前記甲状腺ホルモン固定化担体において、担体1個あたりに固定化される前記甲状腺ホルモンの数は、特に制限されず、1分子でもよいが、2分子以上の複数の分子が固定化されていることが好ましい。前記担体あたりの固定化された甲状腺ホルモンの分子数は、その下限が、例えば、1分子であり、好ましくは10分子であり、より好ましくは100分子であり、上限は、特に制限されず、例えば、1×1020分子であり、好ましくは1×1015分子であり、より好ましくは1×1010分子である。
【0031】
前記担体は、特に制限されず、その材質、形状、大きさ等は適宜設定できる。前記担体の材質は、例えば、前記甲状腺ホルモンの検出時に使用する溶媒に不溶であることが好ましい。前記材質は、例えば、磁性材料、ケイ酸質無機材料、有機材料、金属材料等があげられる。前記磁性材料は、例えば、ニッケル、コバルト、鉄、サマリウム、ネオジウム、およびこれらの合金等があげられる。前記ケイ酸質無機材料は、例えば、ガラス、シリカゲル、ベントナイト、セラミック、シリコン等があげられる。前記有機材料は、例えば、プラスチック、デキストラン、ろ紙、スポンジ、ラテックス、リポソーム、活性炭、カーボンファイバー等があげられる。前記金属材料は、例えば、金、銀、白金、パラジウム、ニッケル等があげられる。中でも、例えば、磁石等を使用して簡便に操作できるため、前記磁性材料が好ましい。また、前記担体は、標識の役割を果たしても良く、例えば、蛍光粒子があげられる。前記担体の前記形状は、例えば、粒子状、棒状、シート状、多孔状等があげられ、中でも、粒子状が好ましい。前記担体の大きさは、特に制限されず、例えば、粒子状の場合、平均粒径が、0.001〜10000μmが好ましく、より好ましくは0.01〜1000μmであり、特に好ましくは0.1〜100μmである。前記担体は、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0032】
前記甲状腺ホルモン固定化担体は、例えば、前記甲状腺ホルモンが前記担体に、直接固定化されたものでもよいし、間接的に固定化されたものでもよい。前記間接的な固定化は、特に制限されず、前記甲状腺ホルモンと前記担体とがリンカーを介して結合した形態があげられる。前記リンカーは、例えば、互いに特異的な結合性を示すリンカーの組み合わせが好ましい。前記甲状腺ホルモン固定化担体は、例えば、第1リンカーと前記第1リンカーに結合する第2リンカーとの結合を介して、前記甲状腺ホルモンと前記担体とが結合していることが好ましい。前記第1リンカーと前記第2リンカーの組み合わせは、例えば、ビオチンとアビジンとの組み合わせ、ビオチンとストレプトアビジンとの組合せ等が例示できる。前記第1リンカーと前記第2リンカーは、例えば、いずれがビオチンでもよい。本発明において、前記ビオチンは、例えば、ビオチンの他に、その誘導体でもよく、前記アビジンは、例えば、アビジンの他に、その誘導体でもよく、前記ストレプトアビジンは、例えば、前記ストレプトアビジンの他に、その誘導体でもよい。また、前記リンカーは、例えば、分子でもよいし、タンパク質でもよい。前記タンパク質は、例えば、アルブミン、グロブリン等があげられる。
【0033】
前記甲状腺ホルモン固定化担体は、例えば、ビオチン−アビジン結合またはビオチン−ストレプトアビジン結合により、前記甲状腺ホルモンが前記担体に固定化されていることが好ましい。前記甲状腺ホルモン固定化担体は、例えば、前記第1リンカーを付加した甲状腺ホルモンと、前記第2リンカーを付加した担体との複合体があげられ、具体例として、ビオチン化甲状腺ホルモンとアビジン固定化担体との複合体、ビオチン化甲状腺ホルモンとストレプトアビジン固定化担体との複合体、アビジン化甲状腺ホルモンとビオチン化固体化担体との複合体、ストレプトアビジン化甲状腺ホルモンとビオチン化固定化担体との複合体等があげられる。
【0034】
前記甲状腺ホルモン固定化担体の調製方法は、特に制限されない。前記甲状腺ホルモン固定化担体は、例えば、前記甲状腺ホルモンと前記担体とを反応させることで調製でき、具体的には、前述のように、前記第1リンカーを付加した甲状腺ホルモンと、前記第2リンカーを付加した担体とを反応させ、前記第1リンカーと前記第2リンカーとを結合させることで調製できる。前記第1リンカーを付加した甲状腺ホルモンと前記第2リンカーを付加した担体との組合せは、例えば、ビオチン化甲状腺ホルモンとアビジン固定化担体との組合せ、ビオチン化甲状腺ホルモンとストレプトアビジン固定化担体との組合せ、アビジン化甲状腺ホルモンとビオチン化固体化担体との組合せ、ストレプトアビジン化甲状腺ホルモンとビオチン化固定化担体との組合せ等があげられる。前記第1リンカーを付加した甲状腺ホルモンおよび前記第2リンカーを付加した担体は、例えば、市販品を使用してもよいし、公知の方法によって調製することもできる。具体例として、前記ストレプトアビジン固定化担体は、例えば、Dynal Biotech社製の商品名「Dynabeads(登録商標) MyOneTMStreptavidin T1」等が使用できる。また、前記甲状腺ホルモンまたは前記担体のビオチン化は、例えば、市販のキットを使用して行うことができ、具体例として、同仁化学研究所社製の商品名「Biotin Labeling Kit−NH2」等があげられる。
【0035】
前記第1リンカーを付加した甲状腺ホルモンと前記第2リンカーを付加した担体との反応は、例えば、溶媒中で行うことができる。前記溶媒は、特に制限されず、水、緩衝液等が使用できる。前記緩衝液は、特に制限されず、例えば、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ベロナール緩衝液、各種のグッド緩衝液等があげられる。前記反応液における前記緩衝液の濃度は、例えば、0.1〜2000mmol/Lであり、好ましくは1〜1000mmol/Lであり、より好ましくは10〜500mmol/Lである。前記反応液のpHは、例えば、4〜11であり、好ましくは5〜10であり、より好ましくは6〜9である。前記溶媒は、前記第1リンカーを付加した甲状腺ホルモンと前記第2リンカーを付加した担体の他に、例えば、その他の成分を含んでもよい。前記その他の成分は、特に制限されず、例えば、界面活性剤、分散剤、防腐剤、塩、金属塩、タンパク質、糖、アミノ酸、キレート剤等があげられる。
【0036】
前記第1リンカーを付加した甲状腺ホルモンと前記第2リンカーを付加した担体との反応条件は、特に制限されず、例えば、前記リンカーの組合せ、前記担体の種類等に応じて適宜決定できる。前記反応温度は、例えば、0〜50℃が好ましく、より好ましくは4〜40℃であり、反応時間は、例えば、5〜360分であり、好ましくは30〜120分である。前記反応液において、前記第1リンカーを付加した甲状腺ホルモンと前記第2リンカーを付加した担体との添加割合は、特に制限されず、前記第1リンカーのモル数(A)と前記第2リンカーのモル数(B)の比(A:B)が、1:0.01〜1:100が好ましく、より好ましくは1:0.1〜1:10である。
【0037】
前述のように、前記担体1個あたりに固定化する甲状腺ホルモンの数を複数分子とする場合、例えば、前記担体1個あたりに複数の前記第2リンカーを付加し、前記第2リンカーのそれぞれに、前記第1リンカーを介して甲状腺ホルモンを結合させることが好ましい。
【0038】
前記甲状腺ホルモン固定化担体は、例えば、液体試薬として使用できる。前記液体試薬は、例えば、溶媒と前記甲状腺ホルモン固定化担体とを含む。
【0039】
前記液体試薬の条件は、特に制限されないが、例えば、甲状腺ホルモン固定化担体の安定性を維持できることから、前記液体試薬のpHは、その下限が、例えば、8.8であり、好ましくは9.0であり、より好ましくは9.2である。前記液体試薬のpHの上限は、例えば、11.5であり、好ましくは11.0であり、より好ましくは10.5である。前記液体試薬のpHの範囲は、例えば、8.8〜11.5であり、好ましくは9.0〜11.0の範囲であり、より好ましくは9.2〜10.5の範囲である。
【0040】
前記液体試薬の前記溶媒は、特に制限されず、例えば、水、緩衝液、血清、血漿等があげられる。前記溶媒は、例えば、前記液体試薬のpHを前記範囲に容易に調整できることから、前記緩衝液が好ましい。前記緩衝液は、特に制限されず、例えば、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ベロナール緩衝液、各種のグッド緩衝液等があげられる。前記溶媒が前記緩衝液の場合、前記液体試薬における前記緩衝液の濃度は、例えば、0.1〜2000mmol/Lであり、好ましくは1〜1000mmol/Lであり、より好ましくは10〜500mmol/Lである。
【0041】
前記液体試薬は、前記溶媒中に、前記甲状腺ホルモン固定化担体の他に、例えば、その他の成分を含んでもよい。前記その他の成分は、特に制限されず、例えば、界面活性剤、分散剤、防腐剤、塩、金属塩、タンパク質、糖、アミノ酸、キレート剤等があげられる。
【0042】
前記液体試薬において、前記甲状腺ホルモン固定化担体の濃度は、特に制限されない。前記濃度は、例えば、1〜10000μg/mLの範囲であり、好ましくは5〜5000μg/mLの範囲であり、より好ましくは10〜1000μg/mLの範囲である。前記液体試薬は、例えば、一種類の前記甲状腺ホルモン固定化担体を含んでもよいし、二種類以上の前記甲状腺ホルモン固定化担体を含んでもよい。後者の場合、各甲状腺ホルモン固定化担体の濃度は、特に制限されず、例えば、各甲状腺ホルモン固定化担体の濃度が前述の範囲でもよいし、各甲状腺ホルモン固定化担体の合計濃度が前述の範囲でもよい。
【0043】
前記液体試薬の調製方法は、特に制限されず、例えば、前記甲状腺ホルモン固定化担体を含む前記溶媒のpHの範囲を、前述の範囲に設定することで行える。前記pHの調整方法は、特に制限されない。例えば、予め、前述のpHの範囲に設定した緩衝能を有する溶媒(緩衝液)に、前記甲状腺ホルモン固定化担体および必要に応じて他の成分を添加し、前記溶媒の緩衝能によって、前記液体試薬のpHを前述の範囲に設定することができる。また、例えば、前記溶媒に、前記甲状腺ホルモン固体化担体および必要に応じて他の成分を添加し、前記溶媒のpHをpH調整試薬で調整することによって、前記液体試薬のpHを前述の範囲に設定することもできる。前記pH調整試薬は、例えば、酸、アルカリ、緩衝剤等があげられる。
【0044】
前記液体試薬のpHを前述のような範囲に設定した場合、例えば、前記甲状腺ホルモン固定化担体を、より効果的に溶媒中で安定化できる。前記pHに設定した前記液体試薬は、例えば、前記液体試薬を37℃で保存した場合、約7日間、前記甲状腺ホルモン固定化担体の活性を維持できる。具体的には、製造時の前記液体試薬における前記甲状腺ホルモン固定化担体の活性を100%とした場合、例えば、37℃で7日間保存した後の前記活性を、例えば、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上に維持できる。
【0045】
(3)結合工程
本実施形態において、前記結合工程は、前述のように、前記抗甲状腺ホルモン抗体に、検体中の甲状腺ホルモンおよび前記甲状腺ホルモン固定化担体を競合的に結合させる結合工程である。前記結合工程は、例えば、複合体形成工程であり、具体的には、前記抗甲状腺ホルモン抗体と前記検体中の甲状腺ホルモンとの第1の複合体、および、前記抗甲状腺ホルモン抗体と前記甲状腺ホルモン固定化担体との第2の複合体を形成させる複合体形成工程であることが好ましい。前記第1の複合体は、前記抗甲状腺ホルモン抗体と、前記検体中の甲状腺ホルモンとの抗原抗体反応により形成される。前記第2の複合体は、前記抗甲状腺ホルモン抗体と、前記甲状腺ホルモン固定化担体における前記甲状腺ホルモンとの抗原抗体反応により形成される。
【0046】
前記結合工程、すなわち、前記複合体形成工程は、前述のように、反応液中で行われ、そのpHの下限は、7であり、好ましくは7.01であり、より好ましくは7.02であり、さらに好ましくは7.03であり、特に好ましくは7.04〜7.1であり、そのpHの上限は、7.4であり、好ましくは7.39であり、より好ましくは7.38であり、さらに好ましくは7.37であり、特に好ましくは7.36〜7.3である。前記反応液のpHは、前述のように、7〜7.4であり、好ましくは7.01〜7.39であり、より好ましくは7.02〜7.38であり、さらに好ましくは7.03〜7.37であり、特に好ましくは7.04〜7.36である。前記反応液のpHの調整方法は、特に制限されない。
【0047】
前記複合体形成工程は、例えば、前記検体と前記抗甲状腺ホルモン抗体、前記甲状腺ホルモン固定化担体と前記抗甲状腺ホルモン抗体を、それぞれ接触させることにより行われる。これらの接触順序は、特に制限されない。具体的に、前記複合体形成工程は、例えば、下記(A1)、(A2)または(A3)の工程があげられる。
(A1)反応液において、前記検体、前記抗甲状腺ホルモン抗体および前記甲状腺ホルモン固定化担体を同時に接触させて、前記第1の複合体および前記第2の複合体を形成する複合体形成工程
(A2)反応液において、前記検体および抗甲状腺ホルモン抗体を接触させて、前記第1の複合体を形成し、さらに、前記反応液に、前記甲状腺ホルモン固定化担体を添加して、前記第2の複合体を形成する複合体形成工程
(A3)反応液において、前記甲状腺ホルモン固定化担体および前記抗甲状腺ホルモン抗体を接触させて、前記第2の複合体を形成し、さらに、前記反応液に、前記検体を添加して、前記第1の複合体を形成する複合体形成工程
【0048】
前記抗甲状腺ホルモン抗体および前記甲状腺ホルモン固定化担体は、それぞれ、前述のように液体試薬を使用することが好ましい。
【0049】
前記(A1)工程は、前記反応液において、例えば、前記抗甲状腺ホルモン抗体に対して、前記検体中の甲状腺ホルモンと前記甲状腺ホルモン固定化担体とが、同時に、競合的に結合する。これによって、前記抗甲状腺ホルモン抗体と前記検体中の甲状腺ホルモンとの第1の複合体、および、前記抗甲状腺ホルモン抗体と前記甲状腺ホルモン固定化担体との第2の複合体が形成される。
【0050】
前記(A1)工程は、例えば、前記検体、前記抗甲状腺ホルモン抗体および前記甲状腺ホルモン固定化担体を混合することによって、前記反応液を調製できる。前記反応液は、例えば、溶媒に、前記検体、前記抗甲状腺ホルモン抗体および前記甲状腺ホルモン固定化担体を添加して調製してもよい。前記溶媒は、特に制限されず、水、前述のような各種緩衝液が使用できる。
【0051】
前記(A2)工程は、前記反応液において、例えば、まず、前記検体中の甲状腺ホルモンと前記抗甲状腺ホルモン抗体とが結合して、前記第1の複合体が形成される。ついで、前記反応液において、前記検体中の甲状腺ホルモンと結合しなかったフリーの前記抗甲状腺ホルモン抗体と前記甲状腺ホルモン固定化担体とが結合して、前記第2の複合体が形成される。
【0052】
前記(A2)工程は、例えば、まず、前記検体および前記抗甲状腺ホルモン抗体を混合することによって、前記第1の複合体を形成するための反応液が調製され、さらに、前記反応液に前記甲状腺ホルモン固定化担体を混合することによって、前記第2の複合体を形成するための反応液が調製される。前記反応液は、例えば、溶媒に、前記検体および前記抗甲状腺ホルモン抗体を添加し、さらに、前記甲状腺ホルモン固定化担体を添加して調製してもよい。前記溶媒は、特に制限されず、水、前述のような各種緩衝液が使用できる。
【0053】
前記(A3)工程は、前記反応液において、例えば、まず、前記甲状腺ホルモン固定化担体と前記抗甲状腺ホルモン抗体とが結合して、前記第2の複合体が形成される。ついで、前記反応液において、前記甲状腺ホルモン固定化担体と結合しなかったフリーの前記抗甲状腺ホルモン抗体と前記検体中の甲状腺ホルモンとが結合して、前記第1の複合体が形成される。
【0054】
前記(A3)工程は、例えば、まず、前記甲状腺ホルモン固定化担体および前記抗甲状腺ホルモン抗体を混合することによって、前記第2の複合体を形成するための反応液が調製され、さらに、前記反応液に前記検体を混合することによって、前記第1の複合体を形成するための反応液が調製される。前記反応液は、例えば、溶媒に、前記甲状腺ホルモン固定化担体および前記抗甲状腺ホルモン抗体を添加し、さらに、前記検体を添加して調製してもよい。前記溶媒は、特に制限されず、水、前述のような各種緩衝液が使用できる。
【0055】
前記反応液のpHの調整方法は、特に制限されない。前記調整方法は、例えば、前記溶媒による調整、pH調整剤の添加による調整、前記各種液体試薬による調整、およびこれらの併用による調整等があげられる。
【0056】
前記溶媒は、特に制限されず、例えば、緩衝液、塩酸水溶液等の酸溶液、アルカリ溶液等があげられる。前記緩衝液は、例えば、そのpHおよび緩衝能により、前記反応液のpHを調整できる。前記緩衝液は、例えば、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ベロナール緩衝液、各種のグッド緩衝液等があげられる。前記反応液における前記緩衝液の濃度は、例えば、0.1〜2000mmol/Lであり、好ましくは1〜1000mmol/Lであり、より好ましくは10〜500mmol/Lであり、pHは、前記反応液のpHの範囲であることが好ましい。前記pH調整剤は、例えば、塩酸水溶液等の酸溶液、アルカリ溶液等があげられる。
【0057】
(4)検出工程
本実施形態において、前記検出工程は、前述のように、前記甲状腺ホルモン固定化担体と前記抗甲状腺ホルモン抗体との複合体を検出する工程である。前記抗甲状腺ホルモン抗体として前記標識化抗甲状腺ホルモン抗体を使用し、前記標識を検出する場合、前記検出工程は、例えば、前記第2の複合体における前記標識化抗甲状腺ホルモン抗体の前記標識を検出する工程ともいえる。また、前記甲状腺ホルモン固定化担体として、標識の役割を果たす担体を使用し、前記担体を標識として検出する場合、前記検出工程は、例えば、前記第2の複合体における前記甲状腺ホルモン固定化担体の前記担体を検出する工程ともいえる。
【0058】
前記標識の検出方法は、特に制限されず、例えば、前記標識の種類に応じて適宜決定できる。前記標識は、前述のように、例えば、前記標識に由来する発色、発光、蛍光等のシグナルの検出により行うことができる。前記シグナルの検出は、例えば、目視で行ってもよいし、光学的手法により行ってもよい。後者の場合、例えば、光学分析機器等を用いて、反射率、透過率、吸光度、蛍光強度等を測定してもよい。前記標識の検出は、例えば、定性でもよいし、定量でもよい。前記標識の検出により、例えば、前記甲状腺ホルモン固定化担体と前記抗甲状腺ホルモン抗体との複合体を検出でき、その結果から、間接的に、前記検体中の甲状腺ホルモンを検出することができる。
【0059】
前記複合体形成工程において、例えば、前記第2の複合体の形成量は、前記検体中の甲状腺ホルモン量に依存する。すなわち、例えば、前記検体中の甲状腺ホルモン量の増加にともなって、前記第2の複合体の形成量が相対的に減少し、前記検体中の甲状腺ホルモン量の減少にともなって、前記第2の複合体の形成量が相対的に増加する。そこで、例えば、前記第2の複合体の形成量に対応する前記標識に由来するシグナル強度と、甲状腺ホルモン量との相関関係を示す検量線を使用することによって、前記検体中の甲状腺ホルモン量を定量できる。前記検量線は、例えば、既知量の甲状腺ホルモンを用いて、同様の条件で、前記第1の複合体および前記第2の複合体を形成し、前記第2の複合体における前記標識由来のシグナル強度を検出することによって、前記甲状腺ホルモン量と前記標識のシグナル強度とから作成できる。
【0060】
本実施形態において、前記結合工程の後、すなわち、前記複合体形成工程の後、前記検出工程に先立って、さらに、前記甲状腺ホルモン固定化担体と結合した前記標識化抗甲状腺ホルモン抗体を回収する工程を含むことが好ましい。前記回収工程は、例えば、前記第2の複合体の回収工程ともいえる。前記第2の複合体を回収することによって、例えば、前記第2の複合体を、前記第1の複合体および未反応の前記標識化抗甲状腺ホルモン抗体等から分離できる。これによって、例えば、前記第1の複合体の前記標識化甲状腺ホルモン抗体の標識および未反応の前記標識化抗甲状腺ホルモン抗体の標識の検出を排除し、前記第2の複合体の前記標識化甲状腺ホルモン抗体の前記標識をより正確に検出できる。
【0061】
前記第2の複合体の回収方法は、特に制限されず、例えば、前記担体の種類に応じて適宜設定できる。前記第2の複合体は、例えば、前記反応液から回収できる。前記回収方法は、例えば、前記第2の複合体における前記甲状腺ホルモン固定化担体の前記担体を捕捉する方法、遠心処理、ろ過処理、沈殿処理、膜分離処理、吸着処理等があげられる。前記担体が前記磁性材料から形成されている場合、例えば、磁石等の磁力によって、前記第2の複合体を回収できる。
【0062】
本実施形態は、例えば、前記第2の複合体を回収した後、さらに前記第2の複合体を洗浄する工程を含んでもよい。これによって、例えば、前記第2の複合体を含む画分に、前記第1の複合体および前記未反応の前記標識化抗甲状腺ホルモン抗体を含まれている場合、これを十分に除去することができる。
【0063】
本発明の検出方法は、前述のような標識の役割を果たす担体を使用し、前記第2の複合体における前記甲状腺ホルモン固定化担体の担体を前記標識として検出する場合、前記抗甲状腺ホルモン抗体として、例えば、容器およびプレート等の基板に固定化された前記抗甲状腺ホルモン抗体を使用してもよい。この場合、本発明の検出方法は、例えば、前記結合工程の後、すなわち、前記複合体形成工程の後、前記検出工程に先立って、さらに、前記固定化抗甲状腺ホルモン抗体を洗浄する工程を含むことが好ましい。前記洗浄によって、例えば、前記固定化抗甲状腺ホルモン抗体に結合しなかった成分が除去される。このため、例えば、前記固定化甲状腺ホルモン抗体に結合しなかった前記甲状腺ホルモン固定化担体の前記担体の検出を排除し、前記固定化抗甲状腺ホルモン抗体に結合した前記甲状腺ホルモン固定化抗体の前記担体を、標識としてより正確に検出できる。
【0064】
以下に、本実施形態について、前記甲状腺ホルモン固定化担体の担体として磁性粒子を使用し、前記標識化抗甲状腺ホルモン抗体の標識として酵素を使用し、前記甲状腺ホルモン固定化担体の液体試薬および前記標識化抗甲状腺ホルモン抗体の液体試薬を使用する例をあげて説明する。これらは一例であり、本発明を制限するものではない。
【0065】
まず、液体の検体、前記標識化抗甲状腺ホルモン抗体の液体試薬および溶媒を混合して、第1の複合体を形成するための反応液を調製する。この反応液中で、前記検体中の甲状腺ホルモンと前記標識化抗甲状腺ホルモン抗体とを結合させ、前記第1の複合体を形成する。前記標識化抗甲状腺ホルモン抗体の液体試薬のpHは、例えば、4〜12の範囲である。前記反応液のpHは、前述のように、7〜7.4の範囲に調整する。
【0066】
反応温度は、例えば、4〜60℃であり、好ましくは20〜50℃であり、より好ましくは30〜40℃ある。反応時間は、例えば、1〜30分であり、好ましくは2〜20分であり、より好ましくは5〜10分である。前記反応液1mLあたりの前記標識化抗甲状腺ホルモン抗体の添加量は、例えば、0.05〜5μgであり、好ましくは0.1〜1μgである。
【0067】
つぎに、前記反応液に、前記甲状腺ホルモン固定化担体の液体試薬を添加して、第2の複合体を形成するための反応液を調製する。この反応液中で、前記検体中の甲状腺ホルモンと結合しなかった未反応の前記標識化抗甲状腺ホルモン抗体と前記甲状腺ホルモン固定化担体とを結合させ、前記第2の複合体を形成する。前記甲状腺ホルモン固定化担体の液体試薬のpHは、例えば、8.8〜11.5の範囲である。前記反応液のpHは、前述のように、7〜7.4の範囲に調整する。
【0068】
反応温度は、例えば、4〜60℃であり、好ましくは20〜50℃であり、より好ましくは30〜40℃ある。反応時間は、例えば、1〜30分であり、好ましくは2〜20分であり、より好ましくは5〜10分である。前記反応液1mLあたりの前記甲状腺ホルモン固定化担体の添加量は、例えば、0.001〜5mgであり、好ましくは0.01〜1mgである。
【0069】
そして、前記磁石を使用し、磁力によって、前記甲状腺ホルモン固定化担体を含む前記第2の複合体を回収し、保持する。この際、前記反応液が入った容器の外部に磁石を配置し、前記容器の壁を介して前記第2の複合体を回収することが好ましい。このように、前記第2の複合体を保持した状態で、前記容器内の反応液を除去する。これによって、未反応の前記標識化抗甲状腺ホルモン抗体を除去できる。この分離方法は、一般に、結合(B)/遊離(F)分離と呼ばれる。
【0070】
つぎに、磁力を解放して、新たな反応液中に前記第2の複合体を添加する。前記反応液には、例えば、前記第2の複合体の添加前または添加後に、前記標識化抗甲状腺ホルモン抗体の前記標識酵素に対する基質を添加することが好ましい。前記基質の種類は、例えば、前記標識酵素の種類に応じて適宜決定できる。前記反応液の条件は、例えば、前記標識酵素および前記基質の種類に応じて適宜決定できる。
【0071】
前記反応液において、前記第2の複合体における前記標識化抗甲状腺ホルモン抗体の前記標識酵素の酵素反応を行い、酵素反応により生じるシグナルの強度を測定する。前記反応条件は、特に制限されず、反応pHは、例えば、4〜12であり、好ましくは6〜11であり、より好ましくは8〜10である。反応温度は、例えば、4〜60℃であり、好ましくは20〜50℃であり、より好ましくは30〜40℃ある。反応時間は、例えば、1〜30分であり、好ましくは2〜20分であり、より好ましくは5〜10分である。
【0072】
そして、予め作成した、甲状腺ホルモンの量とシグナル強度との相関関係を示す検量線から、前記検体中の甲状腺ホルモンの量を決定する。
【0073】
また、前記標識化抗甲状腺ホルモン抗体の標識として前記遷移金属錯体を使用した場合は、例えば、以下のように検出することができる。特に示さない限り、前述と同様である。
【0074】
前記遷移金属錯体は、例えば、電気エネルギーの供与によって、電気化学的に発光する。このため、例えば、前述のように分離した前記第2の複合体に対して、電気エネルギーを供与することによって、前記遷移金属錯体を発光させ、この発光シグナルの検出により、前記標識である遷移金属錯体を検出すれば、この測定結果に基づいて、前記検体中の甲状腺ホルモンを検出できる。
【0075】
前記遷移金属錯体を使用する場合、前述のように電気エネルギーを供与するため、電極上で、前記第2の複合体に、電気エネルギーを供与することが好ましい。前記電極は、例えば、作用極があげられる。
【0076】
前記遷移金属錯体は、例えば、ルテニウム錯体が好ましく、中でも、前述のようなルテニウム錯体が好ましい。前記標識として前記遷移金属錯体を使用する場合、トリプロピルアミン(TPA)を併用することが好ましい。このようにTPAを併用することによって、以下のように、前記第2の複合体から発光を生じさせることができる。まず、前記電極にプラス電位を与えることによって、前記第2の複合体におけるルテニウム錯体は、2価から3価に酸化され、同時に、前記TPAも酸化される。酸化された前記TPAは、脱水素によりTPAラジカルに変換され、前記3価のルテニウム錯体を還元し、励起状態である2価のルテニウム錯体に変化させる。そして、ルテニウム錯体が、不安定な励起状態から安定な2価の状態に遷移する際、発光する。安定な状態に戻った2価のルテニウム錯体は、再度、プラス電位を与えることで、以上の励起発光が繰り返し行われる。
【0077】
第2の実施形態
本実施形態は、前述のように、例えば、前記結合工程を、前記抗甲状腺ホルモン抗体と、前記甲状腺ホルモン固定化担体を形成するための甲状腺ホルモンおよび担体との3試薬系を使用することにより行う。
【0078】
第2の実施形態は、特に示さない限り、前記第1の実施形態と同様にして行うことができる。前記抗甲状腺ホルモン抗体は、例えば、前記第1の実施形態と同様であり、前記検出工程は、例えば、前記第1の実施形態と同様に行うことができる。
【0079】
(1)甲状腺ホルモン固定化担体を形成するための甲状腺ホルモンおよび担体
前記甲状腺ホルモンおよび担体は、それぞれ、互いに特異的な結合性を示すリンカーを有することが好ましい。すなわち、前記担体および前記甲状腺ホルモンは、それぞれ、第1リンカーを付加し担体および第2リンカーを付加した甲状腺ホルモンであることが好ましく、前記第1リンカーと前記第2リンカーとは、互いに特異的な結合性を示す。前記第1リンカーおよび前記第1リンカーを付加した甲状腺ホルモン、ならびに、前記第2リンカーおよび前記第2リンカーを付加した担体は、前記第1の実施形態と同様である。
【0080】
前記第1リンカーを付加した甲状腺ホルモンは、例えば、液体試薬として使用できる。前記液体試薬は、例えば、溶媒と前記第1リンカーを付加した甲状腺ホルモンとを含む。
【0081】
前記液体試薬の条件は、特に制限されない。前記液体試薬のpHは、その下限が、例えば、4であり、好ましくは5であり、より好ましくは6である。前記液体試薬のpHの上限は、例えば、12であり、好ましくは11であり、より好ましくは10である。前記液体試薬のpHの範囲は、例えば、4〜12であり、好ましくは5〜11の範囲であり、より好ましくは6〜10の範囲である。
【0082】
前記液体試薬の前記溶媒は、特に制限されず、例えば、水、緩衝液、血清、血漿等があげられる。前記緩衝液は、特に制限されず、例えば、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ベロナール緩衝液、各種のグッド緩衝液等があげられる。前記溶媒が前記緩衝液の場合、前記液体試薬における前記緩衝液の濃度は、例えば、0.1〜2000mmol/Lであり、好ましくは1〜1000mmol/Lであり、より好ましくは10〜500mmol/Lである。
【0083】
前記液体試薬は、前記溶媒中に、前記第1リンカーを付加した甲状腺ホルモンの他に、例えば、その他の成分を含んでもよい。前記その他の成分は、特に制限されず、例えば、界面活性剤、分散剤、防腐剤、塩、金属塩、タンパク質、糖、アミノ酸、キレート剤等があげられる。
【0084】
前記液体試薬において、前記第1リンカーを付加した甲状腺ホルモンの濃度は、特に制限されない。前記濃度は、例えば、0.001〜10000μg/mLの範囲であり、好ましくは0.01〜1000μg/mLの範囲であり、より好ましくは0.1〜100μg/mLの範囲である。前記液体試薬は、例えば、一種類の前記甲状腺ホルモンを含んでもよいし、二種類以上の前記甲状腺ホルモンを含んでもよい。後者の場合、各甲状腺ホルモンの濃度は、特に制限されず、例えば、各甲状腺ホルモンの濃度が前述の範囲でもよいし、各甲状腺ホルモンの合計濃度が前述の範囲でもよい。
【0085】
前記第2リンカーを付加した担体は、例えば、液体試薬として使用できる。前記液体試薬は、例えば、溶媒と前記第2リンカーを付加した担体とを含む。
【0086】
前記液体試薬の条件は、特に制限されない。前記液体試薬のpHは、その下限が、例えば、4であり、好ましくは5であり、より好ましくは6である。前記液体試薬のpHの上限は、例えば、12であり、好ましくは11であり、より好ましくは10である。前記液体試薬のpHの範囲は、例えば、4〜12であり、好ましくは5〜11の範囲であり、より好ましくは6〜10の範囲である。
【0087】
前記液体試薬の前記溶媒は、特に制限されず、例えば、水、緩衝液、血清、血漿等があげられる。前記緩衝液は、特に制限されず、例えば、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ベロナール緩衝液、各種のグッド緩衝液等があげられる。前記溶媒が前記緩衝液の場合、前記液体試薬における前記緩衝液の濃度は、例えば、0.1〜2000mmol/Lであり、好ましくは1〜1000mmol/Lであり、より好ましくは10〜500mmol/Lである。
【0088】
前記液体試薬は、前記溶媒中に、前記第2リンカーを付加した担体の他に、例えば、その他の成分を含んでもよい。前記その他の成分は、特に制限されず、例えば、界面活性剤、分散剤、防腐剤、塩、金属塩、タンパク質、糖、アミノ酸、キレート剤等があげられる。
【0089】
前記液体試薬において、前記第2リンカーを付加した担体の濃度は、特に制限されない。前記濃度は、例えば、1〜10000μg/mLの範囲であり、好ましくは5〜5000μg/mLの範囲であり、より好ましくは10〜1000μg/mLの範囲である。
【0090】
(2)結合工程
本実施形態において、前記結合工程は、前述のように、前記抗甲状腺ホルモン抗体に、検体中の甲状腺ホルモンおよび前記甲状腺ホルモン固定化担体を競合的に結合させる結合工程である。前記結合工程は、例えば、複合体形成工程であり、具体的には、前記抗甲状腺ホルモン抗体と前記検体中の甲状腺ホルモンとの第1の複合体、および、前記抗甲状腺ホルモン抗体と前記甲状腺ホルモン固定化担体との第2の複合体を形成させる複合体形成工程であることが好ましい。前記第1の複合体は、前記抗甲状腺ホルモン抗体と、前記検体中の甲状腺ホルモンとの抗原抗体反応により形成される。前記第2の複合体は、前記抗甲状腺ホルモン抗体と、前記甲状腺ホルモン固定化担体における前記甲状腺ホルモンとの抗原抗体反応により形成される。
【0091】
前記抗甲状腺ホルモン抗体と前記甲状腺ホルモン固定化担体との結合は、例えば、以下のような形態を含む。すなわち、例えば、前記第1リンカーを付加した甲状腺ホルモンと前記第2リンカーを付加した担体との結合により、甲状腺ホルモン固定化担体を形成した後、前記甲状腺ホルモン固定化担体と前記抗甲状腺ホルモン抗体とを結合して、前記第2の複合体を形成してもよい。また、前記第1リンカーを付加した甲状腺ホルモンと前記抗甲状腺ホルモン抗体との結合により、これらが結合した前記第2の複合体の前駆体を形成した後、前記抗甲状腺ホルモン抗体に結合した前記第1リンカーを付加した甲状腺ホルモンと前記第2リンカーを付加した担体とを結合して、前記第2の複合体を形成してもよい。
【0092】
前記結合工程、すなわち、前記複合体形成工程は、前述のように、反応液中で行われ、そのpHの範囲は、前記第1の実施形態と同様である。前記反応液のpHの調整方法は、特に制限されず、前記第1の実施形態と同様である。
【0093】
前記複合体形成工程は、例えば、前記検体、前記抗甲状腺ホルモン抗体、前記第1リンカーを付加した甲状腺ホルモンおよび前記第2リンカーを付加した担体を、それぞれ接触させることにより行われる。これらの接触順序は、特に制限されない。具体的に、前記複合体形成工程は、例えば、下記(B1)、(B2)または(B3)工程があげられる。
(B1)反応液において、前記検体、前記抗甲状腺ホルモン抗体、前記第2リンカーを付加した担体および前記第1リンカーを付加した甲状腺ホルモンを同時に接触させて、前記第2リンカーを付加した担体と前記第1リンカーを付加した甲状腺ホルモンとが結合した前記甲状腺ホルモン固定化担体を形成し、且つ、前記第1の複合体および前記第2の複合体を形成する複合体形成工程
(B2)反応液において、前記検体および前記抗甲状腺ホルモン抗体を接触させて、前記第1の複合体を形成し、さらに、前記反応液に、前記第2リンカーを付加した担体および前記第1リンカーを付加した甲状腺ホルモンを添加して、前記第2リンカーを付加した担体と前記第1リンカーを付加した甲状腺ホルモンとが結合した前記甲状腺ホルモン固定化担体を形成し、且つ、前記第2の複合体を形成する複合体形成工程
(B3)反応液において、前記検体、前記抗甲状腺ホルモン抗体および前記第1リンカーを付加した甲状腺ホルモンを接触させて、前記第1の複合体、および、前記抗甲状腺ホルモン抗体と前記第1リンカーを付加した甲状腺ホルモンとが結合した前記第2の複合体の前駆体を形成し、さらに、前記反応液に、前記第2リンカーを付加した担体を添加して、前記第2の複合体を形成する複合体形成工程
【0094】
前記第1リンカーおよび前記第2リンカーは、特に制限されず、前記第1リンカーを付加した甲状腺ホルモンは、例えば、ビオチン化甲状腺ホルモンが好ましく、前記第2リンカーを付加した担体は、例えば、アビジン固定化担体またはストレプトアビジン固定化担体が好ましい。
【0095】
前記抗甲状腺ホルモン抗体、前記第1リンカーを付加した甲状腺ホルモンおよび前記第2リンカーを付加した担体は、それぞれ、前述のように液体試薬を使用することが好ましい。
【0096】
前記(B1)工程は、前記反応液において、例えば、前記抗甲状腺ホルモン抗体に対して、前記検体中の甲状腺ホルモンと前記第1リンカーを付加した甲状腺ホルモンとが、同時に、競合的に結合し、また、前記第1リンカーを付加した甲状腺ホルモンと前記第2リンカーを付加した担体とが結合する。これによって、前記抗甲状腺ホルモン抗体と前記検体中の甲状腺ホルモンとの第1の複合体、および、前記抗甲状腺ホルモン抗体と前記第1リンカーを付加した甲状腺ホルモンと前記第2リンカーを付加した担体とが結合した前記第2の複合体が形成される。
【0097】
前記(B1)工程は、例えば、前記検体、前記抗甲状腺ホルモン抗体、前記第1リンカーを付加した甲状腺ホルモンおよび前記第2リンカーを付加した担体を混合することによって、前記反応液を調製できる。前記反応液は、例えば、溶媒に、前記検体、前記抗甲状腺ホルモン抗体、前記第1リンカーを付加した甲状腺ホルモンおよび前記第2リンカーを付加した担体を添加して調製してもよい。前記溶媒は、特に制限されず、水、前述のような各種緩衝液が使用できる。
【0098】
前記(B2)工程は、前記反応液において、例えば、まず、前記検体中の甲状腺ホルモンと前記抗甲状腺ホルモン抗体とが結合して、前記第1の複合体が形成される。ついで、前記反応液において、前記検体中の甲状腺ホルモンと結合しなかったフリーの前記抗甲状腺ホルモン抗体と前記第1リンカーを付加した甲状腺ホルモンとが結合し、且つ、前記第1リンカーを付加した甲状腺ホルモンと前記第2リンカーを付加した担体とが結合して、第2の複合体が形成される。
【0099】
前記(B2)工程は、例えば、まず、前記検体および前記抗甲状腺ホルモン抗体を混合することによって、前記第1の複合体を形成するための反応液が調製され、さらに、前記反応液に前記第1リンカーを付加した甲状腺ホルモンおよび前記第2リンカーを付加した担体を混合することによって、前記第2の複合体を形成するための反応液が調製される。前記反応液は、例えば、溶媒に、前記検体および前記抗甲状腺ホルモン抗体を添加し、さらに、前記第1リンカーを付加した甲状腺および前記第2リンカーを付加した担体を添加して調製してもよい。前記溶媒は、特に制限されず、水、前述のような各種緩衝液が使用できる。
【0100】
前記(B3)工程は、前記反応液において、例えば、まず、前記検体中の甲状腺ホルモンと前記抗甲状腺ホルモン抗体とが結合し、前記第1の複合体が形成され、且つ、前記第1リンカーを付加した甲状腺ホルモンと抗甲状腺ホルモン抗体とが結合し、前記第2の複合体の前駆体が形成される。ついで、前記反応液において、前記第2の複合体の前駆体における前記1リンカーを付加した甲状腺ホルモンに、前記第2リンカーを付加した担体が結合して、前記第2の複合体が形成される。
【0101】
前記(B3)工程は、例えば、まず、前記検体、前記抗甲状腺ホルモン抗体および前記第1リンカーを付加した甲状腺ホルモンを混合することによって、前記第1の複合体および前記第2の複合体の前駆体を形成するための反応液が調製され、さらに、前記反応液に前記第2リンカーを付加した担体を混合することによって、前記第2の複合体を形成するための反応液が調製される。前記反応液は、例えば、溶媒に、前記検体、前記抗甲状腺ホルモン抗体および前記第1リンカーを付加した甲状腺ホルモンを添加し、さらに、前記第2リンカーを付加した担体を添加して調製してもよい。前記溶媒は、特に制限されず、水、前述のような各種緩衝液が使用できる。
【0102】
前記反応液のpHの調整方法は、特に制限されない。前記調整方法は、例えば、前記溶媒による調整、pH調整剤の添加による調整、前記各種液体試薬による調整、およびこれらの併用による調整等があげられる。これらの調整方法は、例えば、前記第1の実施形態と同様に行うことができる。
【実施例】
【0103】
つぎに、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例により制限されない。
【0104】
[実施例1]
本例では、甲状腺ホルモン固定化担体の液体試薬を調製し、測定感度を評価した。
【0105】
(1)甲状腺ホルモン固定化担体の液体試薬の調製
L−チロキシン(ナカライテスク社製)をビオチン化して、ビオチン化T4を得た。前記ビオチン化は、Biotin Labeling Kit−NH2(商品名、同仁化学研究所社製)を使用し、その取り扱い説明書に準じて行った。そして、前記ビオチン化T4とストレプトアビジン被覆磁性微粒子(Dynal Biotech社製の商品名Dynabeads(登録商標) MyOneTMStreptavidin T1)とを混合し、前記ストレプトアビジン被覆磁性微粒子のストレプトアビジンに、前記ビオチン化T4のビオチンを結合させ、T4が固定化されたT4固定化磁性粒子を得た。前記ビオチンとアビジンの結合は、トリス緩衝液溶媒中、37℃、60分、pH7.4の条件で行った。前記溶媒中における前記ビオチン化T4と前記ストレプトアビジン被覆磁性微粒子との添加割合は、総ストレプトアビジン量に対して過剰量のビオチン化T4とした。
【0106】
下記緩衝液1に、50μg/mLとなるように前記T4固定化磁性粒子を混合し、液体試薬を調製した。前記液体試薬のpHは、9.4とした。
【0107】
(緩衝液1:pH9.4)
50mmol/L Tris
150mmol/L NaCl
0.1% BSA
0.05% NaN
【0108】
(2)標識化抗甲状腺ホルモン抗体の調製
抗T4マウスモノクローナル抗体を酵素で標識して、酵素標識抗体を得た。前記酵素標識化は、Alkaline Phosphatase Labeling Kit−SH(商品名、同仁化学研究所社製)を使用し、その取り扱い説明書に準じて行った。
【0109】
下記緩衝液2に、0.2μg/mLとなるように前記酵素標識抗体を混合し、液体試薬を調製した。前記液体試薬のpHは、7.0とした。
【0110】
(緩衝液2:pH7.0)
500mmol/L Tris
150mmol/L NaCl
0.1% BSA
0.05% NaN
0.025mmol/L ZnCl
5mmol/L MgCl
【0111】
(3)競合的酵素免疫測定による甲状腺ホルモンの測定
検体は、遊離T4を除去したヒト血清(T4濃度0ng/100mL)、および、遊離T4濃度が既知であるヒト血清(T4濃度5.4ng/100mL)を使用した。
【0112】
前記酵素標識抗体の液体試薬100μLと前記検体10μLとを、1.5mLチューブ(商品コードMCT−150−L−C、Axygen社製)内で混合し、37℃で5分間インキュベートした。インキュベート後、前記反応液に、前記T4固定化磁性粒子の液体試薬100μLを混合し、37℃で5分間インキュベートした。前記T4固定化磁性粒子の液体試薬を添加した前記反応液のpHは、7.0であった。そして、前記チューブの外壁に磁石を配置し、磁力によって、前記混合液中の前記T4固定化磁性粒子を前記チューブの内壁側に捕獲し、この状態で、前記チューブ内の液体を除去した。ついで、前記磁力を解放し、前記チューブ内に洗浄液を添加し、前記T4固定化磁性粒子と混合した。この洗浄工程を3回行った。前記洗浄液は、Tween20(登録商標)を0.05%含むトリス緩衝液を使用した。再度、前記T4固定化磁性粒子を捕獲して、前記チューブ内の液体を除去し、0.6mmol/L 4−メチルウンベリフェリルリン酸液500μLを添加して、前記T4固定化磁性粒子と混合した後、37℃で10分間インキュベートした。インキュベート後、前述と同様にして、前記T4固定化磁性粒子を捕獲し、前記チューブ内の液体を回収した。前記液体に、2mol/L NaOH50μLを添加した後、生成された4−メチルウンベリフェリルの蛍光強度を測定した。
【0113】
そして、T4濃度0ng/100mLのヒト血清検体の測定値(X)、および、前T4濃度5.4ng/100mLのヒト血清検体の測定値(X)を、下記式(1)に代入して、S/N比を求めた。
S/N比=X/X ・・・(1)
【0114】
[実施例2]
前記緩衝液2におけるTris濃度を50mmol/Lとした以外は、前記実施例1と同様にして、前記酵素標識抗体の液体試薬を調製した。前記液体試薬のpHは、7.0とした。そして、前記酵素標識抗体の液体試薬100μLと実施例1と同じ前記検体10μLと0.1mol/L HClとを混合し、37℃で5分間インキュベートした後、前記反応液に、実施例1と同じ前記T4固定化磁性粒子の液体試薬100μLを混合し、37℃で5分間インキュベートした以外は、前記実施例1と同様にして、甲状腺ホルモンの測定を行った。実施例2において、前記T4固定化磁性粒子の液体試薬を添加した前記反応液のpHは、7.4であった。
【0115】
[実施例3]
0.1mol/L HClに代えて、0.3mol/L HClを使用した以外は、前記実施例2と同様にして、甲状腺ホルモンの測定を行った。実施例3において、前記T4固定化磁性粒子の液体試薬を添加した前記反応液のpHは、7.1であった。
【0116】
[比較例1]
前記緩衝液2におけるTris濃度を50mmol/Lとした以外は、前記実施例1と同様にして、前記酵素標識抗体の液体試薬を調製した。前記液体試薬のpHは、7.0とした。前記酵素標識抗体の液体試薬を使用した以外は、前記実施例1と同様にして、甲状腺ホルモンの測定を行った。比較例1において、前記T4固定化磁性粒子の液体試薬を添加した前記反応液のpHは、7.8であった。
【0117】
[比較例2]
0.1mol/L HClに代えて、0.5mol/L HClを使用した以外は、前記実施例2と同様にして、甲状腺ホルモンの測定を行った。比較例2において、前記T4固定化磁性粒子の液体試薬を添加した前記反応液のpHは、6.6であった。
【0118】
[比較例3]
0.1mol/L HClに代えて、1.0mol/L HClを使用した以外は、前記実施例2と同様にして、甲状腺ホルモンの測定を行った。比較例3において、前記T4固定化磁性粒子の液体試薬を添加した前記反応液のpHは、3.3であった。
【0119】
下記表1に、実施例1〜3、比較例1〜3のS/N比の結果を示す。下記表に、前記酵素標識抗体の液体試薬の調製に使用した緩衝液におけるTris濃度、使用した塩酸の濃度、前記T4固定化磁性粒子の液体試薬を添加した前記反応液のpHをあわせて示す。
【0120】
【表1】

【0121】
前記表1に示すように、実施例は、比較例よりも優れたS/N比を示した。このことから、前記複合体の形成反応において、前記反応液のpHを7.0〜7.4に設定することによって、より高感度な測定が可能になることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0122】
以上のように、本発明によれば、前記結合工程を前記pH条件下で行うことによって、簡便かつ高感度に甲状腺ホルモンを測定できる。したがって、本発明は、臨床検査等において、極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応液中で、抗甲状腺ホルモン抗体に、検体中の甲状腺ホルモンおよび甲状腺ホルモン固定化担体を競合的に結合させる結合工程、および、
前記甲状腺ホルモン固定化担体と前記抗甲状腺ホルモン抗体との複合体を検出する検出工程を含み、
前記結合工程を、pH7〜7.4の条件下で行うことを特徴とする、甲状腺ホルモンの検出方法。
【請求項2】
前記結合工程が、前記抗甲状腺ホルモン抗体と前記検体中の甲状腺ホルモンとの第1の複合体、および、前記抗甲状腺ホルモン抗体と前記甲状腺ホルモン固定化担体との第2の複合体を形成させる複合体形成工程である、請求項1記載の検出方法。
【請求項3】
前記甲状腺ホルモン固定化担体が、ビオチン−アビジン結合またはビオチン−ストレプトアビジン結合により、甲状腺ホルモンが固定化された担体である、請求項1または2記載の検出方法。
【請求項4】
前記甲状腺ホルモン固定化担体が、アビジン固定化担体またはストレプトアビジン固定化担体に、ビオチン化甲状腺ホルモンが結合した担体である、請求項1から3のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項5】
前記複合体形成工程が、下記(A1)工程、(A2)工程または(A3)工程である、請求項2から4のいずれか一項に記載の検出方法。
(A1)反応液において、前記検体、前記抗甲状腺ホルモン抗体および前記甲状腺ホルモン固定化担体を同時に接触させて、前記第1の複合体および前記第2の複合体を形成する複合体形成工程
(A2)反応液において、前記検体および抗甲状腺ホルモン抗体を接触させて、前記第1の複合体を形成し、さらに、前記反応液に、前記甲状腺ホルモン固定化担体を添加して、前記第2の複合体を形成する複合体形成工程
(A3)反応液において、前記甲状腺ホルモン固定化担体および前記抗甲状腺ホルモン抗体を接触させて、前記第2の複合体を形成し、さらに、前記反応液に、前記検体を添加して、前記第1の複合体を形成する複合体形成工程
【請求項6】
前記(A1)工程、前記(A2)工程および前記(A3)工程において、前記甲状腺ホルモン固定化担体として、予め甲状腺ホルモンが固定化された担体を添加する、請求項5記載の検出方法。
【請求項7】
前記甲状腺ホルモン固定化担体が、液体試薬であり、
前記液体試薬が、前記甲状腺ホルモン固定化担体および溶媒を含む、pH8.8〜11.5の液体試薬である、請求項6記載の検出方法。
【請求項8】
前記複合体形成工程が、下記(B1)工程、(B2)工程または(B3)工程である、請求項2から4のいずれか一項に記載の検出方法。
(B1)反応液において、前記検体、前記抗甲状腺ホルモン抗体、アビジン固定化担体またはストレプトアビジン固定化担体とビオチン化甲状腺ホルモンとを同時に接触させて、前記アビジン固定化担体またはストレプトアビジン固定化担体と前記ビオチン化甲状腺ホルモンとが結合した前記甲状腺ホルモン固定化担体を形成し、且つ、前記第1の複合体および前記第2の複合体を形成する複合体形成工程
(B2)反応液において、前記検体と抗甲状腺ホルモン抗体とを接触させて、前記第1の複合体を形成し、さらに、前記反応液に、アビジン固定化担体またはストレプトアビジン固定化担体とビオチン化甲状腺ホルモンとを添加して、前記アビジン固定化担体またはストレプトアビジン固定化担体と前記ビオチン化甲状腺ホルモンとが結合した前記甲状腺ホルモン固定化担体を形成し、且つ、前記第2の複合体を形成する複合体形成工程
(B3)反応液において、前記検体、抗甲状腺ホルモン抗体とビオチン化甲状腺ホルモンとを接触させて、前記第1の複合体、および、前記抗甲状腺ホルモン抗体と前記ビオチン化甲状腺ホルモンとが結合した前記第2の複合体の前駆体を形成し、さらに、前記反応液に、アビジン固定化担体またはストレプトアビジン固定化担体を添加して、前記第2の複合体を形成する複合体形成工程
【請求項9】
前記甲状腺ホルモン固定化担体の担体が、磁性粒子である、請求項1から8のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項10】
前記甲状腺ホルモンが、チロキシン(T4)または3,3’,5−L−トリヨードチロニン(T3)である、請求項1から9のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項11】
前記検出工程に先立って、さらに、前記甲状腺ホルモン固定化担体と結合した前記抗甲状腺ホルモン抗体を回収する工程を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の検出方法。