説明

甲状腺ホルモンアナログおよび新脈管形成における使用の方法

開示されるのは、新脈管形成に関係する状態を有する被験体を治療する方法であり、これには、被験体体内で新脈管形成を促進するあるいは抑制するために、有効量の甲状腺ホルモンあるいはこれのアナログの重合形態物を投与することが含まれる。また、甲状腺ホルモンあるいは甲状腺ホルモンアナログの重合形態物から成る組成物が開示される。一側面において本発明は、新脈管形成を促進するのに効果的な甲状腺ホルモンの重形態物あるいはこれのアナログを、必要とする被験体にある量投与することによって新脈管形成を促進することによる治療が効く状態を治療するための方法を特色とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は甲状腺ホルモン、甲状腺ホルモンアナログ並びに誘導体、及びこれらの重合形態物に関係する。また、当該化合物を使用する方法並びにこれを含有する薬学的組成物を開示する。また、本発明は当該化合物を調製する方法に関係する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
甲状腺ホルモン、L−サイロキシン(T4)並びにL−トリヨードサイロニン(T3)は、脊椎動物の様々な組織にて、多数の、様々な生理学的過程を調節している。甲状腺ホルモンの作用の大部分は、リガンド活性化転写調節因子から成る核受容体スーパーファミリーの一員である甲状腺ホルモン受容体(「TR」)によって媒介される。ステロイドホルモン並びにレチノイド、1,25−ジヒドロキシビタミンD3に対する受容体も、このスーパーファミリーに含まれる。これらの受容体は様々な組織において特定の遺伝子の発現を調節することができる転写因子であり、エストロゲン受容体部分拮抗薬であるタモキシフェン等、広く使用されている薬剤の標的となっている。TRα並びにTRβという2種類のTRをコードする2つの遺伝子がある。これら2つのTRはしばしば、別々の組織にて異なる濃度で共発現する。大半の甲状腺ホルモンはこの2つのTRを判別せず、同じ親和性で双方に結合する。
【0003】
マウスの遺伝子ノックアウト実験によって、TRβが聴覚系の発生、及び脳下垂体内のT3による甲状腺刺激ホルモンの負のフィードバックにおいて役割を担っており、一方TRαは熱発生及び心臓血管系にて甲状腺ホルモンの効果を調整していることが示されている。TR拮抗薬の同定は、将来、甲状腺機能低下症の治療において重要な役割を果たすことができると考えられる。当該分子は、受容体レベルで甲状腺ホルモンの効果に直接拮抗することによって迅速に作用し、手術を必要とする者、あるいは心臓疾患を有する者、命に係わる甲状腺中毒急性発作症状のリスク状態にある者、甲状腺機能低下症を有する者に著しい改善がみられると考えられる。
【0004】
このように、医学的治療のために有用であることが立証されることとなる、甲状腺ホルモン受容体(TR)のイソ型選択的作動薬あるいは拮抗薬として機能することによって甲状腺ホルモンの作用を選択的に調節する化合物の開発は、依然必要とされている。最近の研究開発は、効果が期待される治療薬並びに化学的なプローブとして、甲状腺ホルモン(T3・T4)拮抗薬を設計及び合成することに焦点が当てられている。また、天然のホルモンよりも入手しやすく、潜在的に受容体結合特性及び活性化特性を有する甲状腺ホルモン擬似化合物の開発も必要とされている。
【0005】
アメリカ合衆国では500万人が慢性安定狭心症であると試算されている。毎年200,000人が65歳未満で「早発性虚血性心臓疾患」と称されるもので死亡している。医学的処置にも係わらず多数の人が心筋梗塞となり、経皮経管冠動脈形成術もしくは冠動脈バイパス手術を用いる血管再生術の必要性が高まる衰弱症状を被っている。心筋梗塞を回復する一つの方法は冠動脈の側副循環を高めることであろうと仮説が立てられている。
【0006】
心筋梗塞急性期における冠動脈内血栓溶解治療時に見られる冠動脈側副血管の解剖学的外観と、クレアチンキナーゼ時間活性曲線並びに梗塞部分の大きさ、動脈瘤形成との間の関連性が確立されている。これらの研究は冠動脈閉塞疾患を有する心臓における側副血管の防御的役割を示し、側副血管が見られなかった患者と比較して、梗塞部の縮小且つ動脈瘤形成の減少、及び心室機能の改善がみられた。心筋細胞が梗塞されると、内皮細胞及び平滑筋細胞のDNA複製と分裂を伴う増殖によって側副血管が活発に発生する。一旦虚血状態が発生すると、これらの因子が活性化されて受容体を占有できるようになり、外性ヘパリンに暴露すると血管形成が始まる場合がある。残念ながら、ほぼ全ての冠動脈疾患の患者において、血管形成が発生する「自然の」作用は、虚血状態を回復させるのには不十分である。
【0007】
虚血状態の間、ATPの分解を介してアデノシンが放出される。アデノシンは多数の心臓を保護する生物学的現象に関係している。アデノシンは、徐脈並びに血管拡張等の血流動態において役割を担っており、またアデノシンは、プレコンディショニング並びにおそらくは再潅流障害の縮小等、関連性のない現象で役割を担っていることが示唆されている(非特許文献1)。
【0008】
新脈管形成とは先に存在する血管から新たな血管が発生することである(非特許文献2)。生理学的には、新脈管形成は成熟した生物体の正確な発育の確保、並びに卵子着床に対する子宮の準備、傷が治癒する際の基本的な役割の遂行を行う。胚発生中の血管網の発達、あるいは正常及び病理的な新脈管形成は、成長因子及び細胞外マトリックスとの細胞性相互作用に依存する(非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5)。血管は胚発生の過程で、脈管形成と新脈管形成という二つの経路によって生じる(非特許文献6)。新脈管形成は、新脈管形成促進因子と抗新脈管形成因子とのバランスによって制御される多段階過程である。この過程の後半段階では、内皮細胞(EC)の増殖と管様構造への組織化とが含まれる。FDF2並びにVEGF等の成長因子は、内皮細胞の増殖及び分化において主要な役割を持つと考えられている。
【0009】
新脈管形成の制御は血管成長因子(非特許文献7)及び細胞外マトリックス、接着分子、代謝因子(非特許文献8)の局所的な放出が関係する複雑な過程である。また、血管内部の機械的力にも役割がある(非特許文献9)。新たな血管成長に関係する内生成長因子群の主要な部類は、繊維芽細胞成長因子族(FGF)及び血管内皮成長因子(VEGF)である(非特許文献10)。マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK;ERK1/2)シグナル変換カスケードは、VEGF遺伝子の発現と血管内皮細胞の増殖制御の両方に係わっている。
【0010】
内在性アデノシンは、心筋の酸素要求度の増加に対する冠動脈血流反応を促進する場合があり、冠動脈血流予備量を調節することもできる(非特許文献11)。生理学的濃度のアデノシンをヒト臍帯静脈内皮細胞培養物に加えると、おそらくは表面受容体を介して、増殖を刺激することが示されている。アデノシンはヒト内皮細胞の増殖及びおそらくは新脈管形成に対する因子である可能性がある。新脈管形成は、冠動脈疾患(CAD)等閉塞性血流を有する患者を防御する模様だが、自然状態での血管成長速度では疾患を転換するのに不十分である。即ち、身体の自然状態の新脈管形成潜在力を増強及び促進する戦略は、CADを有する患者に有益であるはずである。
【0011】
同様に、創傷治癒は多くの発展途上国及び、創傷治癒障害及び慢性炎症疾患を持ち様々なシクロオキシゲナーゼ2(CoX2)阻害剤の使用量が増加している糖尿病患者にとって大きな問題である。新たな血管は活力のある細胞を支えるための栄養を提供する、並びに肉芽組織形成を促進する、壊死組織片の除去を助長することから、創傷治癒には新脈管形成が必要である。肉芽組織塊の約60%が、必要とされる酸素を供給して治癒及び血管成長の促進をも行う血管から構成されている。新脈管形成因子が創傷液内に存在して治癒を促進し、一方抗新脈管形成因子は治癒を阻害することは文書にてよく立証されている。創傷新脈管形成は複雑な多段階過程である。多数の新脈管形成因子について詳しく知られているにも係わらず、これらの因子の源の確定、並びに創傷新脈管形成に関係する制御現象、修復を促進する新脈管形成促進薬剤の臨床使用における進展はほとんどない。さらに複雑なことに、創傷新脈管形成及び修復について理解されているのは、修復に関係する機構及び仲介物質は、恐らく傷の深さ並びに傷の種類(熱傷、外傷等)、部位(筋肉、皮膚、骨等)に応じて変わるという事実である。患者の状態及び年齢(糖尿病性、病原性、ステロイド治療中、老人対乳幼児等)もまた、修復及び新脈管形成因子に対する反応の早さを決定しうる。また、患者の性別及びホルモン状態(閉経前、閉経後等)が修復機構及び修復反応に影響を与える場合もある。創傷治癒障害は特に老人及びアメリカ合衆国内の1400万人もの糖尿病患者を冒している。これらの患者では、新脈管形成の低下が創傷治癒問題に対する原因因子であることが多いため、創傷修復に重要な新脈管形成因子を確定し、創傷治癒障害を予防するあるいは(且つ)矯正するための臨床的使用法を開発することが重要である。
【非特許文献1】ElyおよびBeme,「Circulation」1992年,85:893
【非特許文献2】Mousa,S.A.,Angiogenesis Inhibitors and Stimulators内「Potential Therapeutic Implications」,Landes Bioscience,Georgetown,Texas;2000年,Chapter 1
【非特許文献3】Breierら,「Trends in Cell Biology」1996年,6:454−456
【非特許文献4】Folkman,「Nature Medicine」1995年,1:27−31
【非特許文献5】Risau,「Nature」1997年,386:671−674
【非特許文献6】Bloodら,「Bioch.Biophys.Acta」1990年,1032:89−118
【非特許文献7】P Carmeliet,「Ann NY Acad Sci」2000年,902:249−260
【非特許文献8】RJ Tomanek,GC Schatteman,「Anat Rec」2000年,261:126−135
【非特許文献9】O Hudlicka,「Molec Cell Biochem」1995年,147:57−68
【非特許文献10】G Pages,「Ann NY Acad Sci」2000年,902:187−200
【非特許文献11】Ethierら,「Am.J.Physiol.」1993年,H131
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように、副作用が最小で、創傷治癒の促進、冠動脈新脈管形成、あるいは他の新脈管形成関連疾患に対する基本治療あるいは補助治療として新脈管形成因子を使用する有効な治療は、依然必要とされている。当該治療は、心筋梗塞あるいは卒中、末梢動脈疾患等の血管疾患を持つ患者に特に有用であり、虚血並びに心筋梗塞の危険性が高まる冠動脈循環不良を持つ患者に予防的に使用することができるとも考えられる。
【0013】
また、新脈管形成が有害となる他の状況でも発生することに興味深く注目する。この状況には、固形腫瘍の増殖及び転移、リウマチ様動脈炎、乾癬、強皮症、3つの一般的な失明の原因である糖尿病性網膜炎、水晶体後線維増殖症、新脈管形成緑内障(実際、眼疾患はほとんどの場合に新脈管形成が伴う。)が含まれる。創傷新脈管形成の過程には実際、腫瘍の新脈管形成と共通する特徴が多数ある。即ち、糖尿病性網膜症あるいは、原発あるいは転移腫瘍の発生等、新脈管形成が有害となる状態も存在する。このように、新脈管形成因子の影響を阻害するための方法が依然必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の要旨)
本発明は一部、甲状腺ホルモン、甲状腺ホルモンアナログ、並びにこれらの重合形態物が細胞膜レベルで作用し、核の甲状腺ホルモンの影響から独立した新脈管形成促進特性を持つという発見に基づいている。従って、これらの甲状腺ホルモンアナログ及び重合形態物(例えば新脈管形成薬剤)を使用して様々な疾患を治療することができる。同様に本発明は、甲状腺ホルモンアナログ拮抗物質が当該アナログの新脈管形成促進効果を阻害することができるという発見に基づいており、これも様々な疾患の治療に使用することができる。
【0015】
従って、一側面において本発明は、新脈管形成を促進するのに効果的な甲状腺ホルモンの重形態物あるいはこれのアナログを、必要とする被験体にある量投与することによって新脈管形成を促進することによる治療が効く状態を治療するための方法を特色とする。新脈管形成を促進することによる治療が効く当該状態の例はこの明細にて提示され、これには閉塞性血管疾患、冠動脈疾患、勃起不全、心筋梗塞、虚血、卒中、末梢動脈血管疾患、並びに創傷を含めることができる。
【0016】
また、甲状腺ホルモンアナログの例はこの明細で提示され、これにはトリヨードサイロニン(T3)、レボサイロキシン(T4)、3,5−ジメチル−4−(−4’−ヒドロイ(hydroy)−3’−イソプロピルベンジル)−フェノキシ酢酸(GC−1)あるいは3,5−ジヨードサイロプロピオン酸(DITPA)、テトラヨードサイロ酢酸、並びにトリヨードサイロ酢酸(TRIAC)を含めることができる。さらに別のアナログは図20の表A〜Dである。これらのアナログはポリビニルアルコールあるいはアクリル酸エチレン共重合体、ポリ乳酸、アガロースに結合させることができる。この結合は、使用するポリマーに応じて共有結合あるいは非共有結合が介する。
【0017】
一実施例では、甲状腺ホルモン、甲状腺ホルモンアナログ、あるいはこれらの重合形態物は、非経口、経口、直腸経由、局所的に、もしくはこれらを組み合わせて投与される。非経口様式の投与には、例えば、皮下、腹膜内、筋肉内、カテーテル等による静脈経由の様式が含まれる。局所的な投与様式には、例えば、バンドエイド法を含めることができる。
【0018】
別の実施例では、甲状腺ホルモン、甲状腺ホルモンアナログ、あるいはこれらの重合形態物は、微粒子あるいはリポソーム、ポリマー内にカプセル化する、あるいは取り込ませることができる。このポリマーには、例えば、ポリグリコリド、ポリラクチド、あるいはこれらの共重合体を含めることができる。リポソームあるいは微粒子は、約200ナノメーター未満の大きさであり、一つ以上の非経口経路あるいは他の投与方法を介して投与することができる。別の実施例では、このリポソームあるいは微粒子は、虚血組織を囲む毛細血管床内に留まることができる、あるいはカテーテルを介して血管内部に挿入ことができる。
【0019】
また、甲状腺ホルモン、甲状腺ホルモンアナログ、あるいは本発明のこれらの重合形態物は、一つ以上の生物学的活性物質と共投与することができ、この物質には、例えば、成長因子、血管拡張薬、抗凝血薬、抗ウイルス薬、抗細菌薬、抗炎症剤、免疫抑制剤、鎮痛剤、新脈管形成薬剤、あるいは細胞接着分子、あるいはこれらの組み合わせ物を含めることができる。一実施例では、甲状腺ホルモンアナログあるいは重合形態物は一つ以上の生物学的活性物質を投与する前後に、大量注入として投与される。
【0020】
成長因子には、例えば、形質転換成長因子α(TGFα)、並びに形質転換成長因子β(TGFβ)、塩基性繊維芽細胞成長因子、血管内皮細胞増殖因子、上皮細胞増殖因子、神経成長因子、血小板由来成長因子、血管透過性因子を含めることができる。血管拡張薬には、例えば、アデノシン、アデノシン誘導体、あるいはこれらの組み合わせ物を含めることができる。抗凝血薬にはヘパリン、ヘパリン誘導体、抗因子Xa、抗トロンビン物質、アスピリン、クロピドグレル(clopidgrel)、あるいはこれらの組み合わせ物が含まれるがこれらに限定されない。
【0021】
本発明の別の一側面では、医療器具を患者に挿入する前に、甲状腺ホルモン、甲状腺ホルモンアナログ、あるいは本発明のこれらの重合形態物でこの医療器具を被覆することによって、医療器具に沿ってあるいは医療器具の周辺で新脈管形成を促進するための方法を提供する。この被覆過程には、さらに医療機器を、これらに限定されないが、成長因子、血管拡張剤、抗凝血薬、あるいはこれらの組み合わせ物等一つ以上の生物学的活性物質で被覆することが含まれる。甲状腺ホルモン、甲状腺ホルモンアナログ、あるいは本発明これらの重合形態物で被覆することができる医療器具の例には、ステント、あるいはカテーテル、カニューレ、電極が含まれる。
【0022】
さらに別の側面では、本発明は、治療を必要とする被験体に、新脈管形成を阻害するのに有効な抗新脈管形成薬をある量投与して新脈管形成を阻害することによる治療が効く状態を治療するための方法を提供する。
【0023】
新脈管形成を阻害することによる治療が効く状態の例には、原発あるいは転移腫瘍、糖尿病性網膜症、並びに関連する状態が含まれるがこれらに限定されない。また、新脈管形成を阻害するために使用される抗新脈管形成薬の例は本発明によって提供され、これにはテトラヨードサイロ酢酸(TETRAC)、トリヨードサイロ酢酸(TRIAC)、モノクローナル抗体LM609、XT199、あるいはこれらの組み合わせ物が含まれるがこれらに限定されない。当該抗新脈管形成薬は細胞表面で作用し、新脈管形成促進因子を抑制する。
【0024】
一実施例において、抗新脈管形成薬は非経口、経口、直腸経由、あるいは局所的に、あるいはこれらを組み合わせて投与される。別の実施例で抗新脈管形成薬は、一つ以上の抗新脈管形成治療あるいは化学治療薬剤と共投与することができる。
【0025】
さらに別の側面で本発明は、ポリマーに結合した甲状腺ホルモン並びに甲状腺ホルモンアナログを包含する組成物(例えば新脈管形成薬剤)を提供する。この結合はそのポリマーに応じて、共有結合あるいは非共有結合が介する。共有結合は、例えばエステル結合あるいは無水結合を介して生じる。また、甲状腺ホルモンアナログの例は本発明によって提供され、これにはレボサイロキシン(T4)、あるいはトリヨードサイロキシン(T3)、3,5−ジメチル−4−(4’−ヒドロイ−3’−イソプロピルベンジル)−フェノキシ酢酸(GC−1)、3,5−ジヨードチロプロピオン酢酸(DITPA)が含まれる。一実施例においてこのポリマーには、ポリビニルアルコール、アクリル酸エチレン共重合体、ポリ乳酸、アガロースを含めることができるがこれらに限定されない。
【0026】
別の側面において本発明は、薬学的に受容可能な担体内にある本発明の新脈管形成薬剤を含有する薬学的処方物を提供する。一実施例において、この薬学的処方物には一つ以上の薬学的に受容可能な医薬品添加物を含有することができる。
【0027】
本発明の薬学的処方物は、リポソームあるいは微粒子、ポリマー内にカプセル化するあるいは取り込むことができる。このリポソームあるいは微粒子は約200ナノメーター未満の大きさを有する。本発明の任意の薬学的処方物を、非経口、経口、直腸経由、局所的に、あるいはこれらを組み合わせて投与することができる。別の実施例において、この薬学的処方物は1つ以上の生物学的活性物質と共に、必要とする被験体に投与することができ、この生物学的活性物質には成長因子、血管拡張剤、抗凝血薬、あるいはこれらの組み合わせ物を含めることができるがこれらに限定されない。
【0028】
本発明の一つ以上の実施様態の詳細は、以下の記述によって示してある。この明細にて記載されているものと同様あるいは等価の、任意の手法及び物質は、本発明の実践あるいは試験にて使用することができ、好ましい手法及び物質をここに記載する。本発明他の特性並びに目的、利点は、この記述及び請求事項から明らかになる。この明細及び付属する請求事項では、文脈にて明確に指示されない限り、単数形には相当する複数物が含まれる。他に定義されない限り、この明細で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の通常の技術者によって普通に理解されるものと同じ意味を有する。この明細で引用される全ての特許出願書及び文献は、参考のためその全文を添付する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(発明の詳細な説明)
本発明の特徴及びその他詳細を、添付する図に対する説明と共に、また請求事項によって記されるように、ここでより詳しく記述する。便宜のため、この明細で使用される一部の用語、例、並びに請求事項をここにまとめる。他に定義されない限り、この明細で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の通常の技術者が普通に理解するものと同じ意味を有する。
【0030】
この明細で使用される用語「新脈管形成性薬剤」には、単独でもしくは他の物質と併用して新脈管形成を促進あるいは助長する任意の化合物並びに物質が含まれる。例には、T3、T4、T3−あるいはT4−アガロース、T3、T4のアナログ重合体、3,5−ジメチル−4−(−4’−ヒドロイ−3’−イソプロピルベンジル)−フェノキシ酢酸(GC−1)、あるいはDITPAが含まれるがこれらに限定されない。反対に、「抗新脈管形成薬剤」あるいは「抗新脈管形成性薬剤」は、単独でもしくは他の物質と併用して新脈管形成を抑制あるいは阻害する任意の化合物あるいは物質を意味する。例には、TETRAC、TRIAC、XT 199、並びにmAB LM609が含まれるがこれらに限定されない。
【0031】
この明細で使用される、「心筋梗塞」という語は、心臓の血管の能力が減少したことによって、心筋への血液供給が不十分になった状態と定義される。この明細で使用される、「冠動脈疾患」とは、冠血管が通常の機能のために十分な血流を供給する力と心筋の機能との不均衡が原因の、心臓機能の疾病・異常と定義される。この明細で記載される組成物並びに手法で治療することのできる冠動脈疾患に関係する特定の冠動脈疾病・異常には、心筋梗塞並びに狭心症、冠動脈瘤、冠動脈血栓、冠動脈血管痙攣、冠動脈疾患、冠動脈心臓疾患、冠動脈閉塞、冠動脈狭窄が含まれる。
【0032】
この明細で使用される語「閉鎖性末梢血管疾患」(末梢動脈閉塞性疾患としても知られている。)とは、頚動脈もしくは、腸骨動脈を含む大腿動脈での閉塞が関係する血管疾患である。頚動脈での閉塞によって痛み及び運動障害が引き起こされる。閉塞性末梢血管疾患を伴う具体的な疾患には糖尿病患者が患う糖尿病性足病変があり、これはしばしば足の切断となる。
【0033】
この明細で使用される語「血管の再生」並びに「新脈管形成」、「血管再生」、「側副枝循環の増加」(あるいはその影響を指す語)は、同義語とみなされる。「薬学的に受容可能な」という語は、天然物質あるいは合成物質を指す場合、毒性効果と比較してその物質の有益な効果がはるかに大きいことを鑑みて、その物質が受容可能な毒性効果を有することを意味する。一方、関連語である「生理学的に受容可能な」とは、その物質が比較的低い毒性を有することを意味する。「共投与」という語は、2つ以上の薬剤を一人の患者にほぼ同時、あるいは近い間隔で与え、これらの薬剤の効果がほぼ同時に、あるいは実質的に重なって現れるようにすることを意味する。この語には薬剤順次投与及び同時投与が含まれる。
【0034】
「薬学的に許容される塩」とは、薬学的に受容可能な甲状腺ホルモンアナログ、重合形態物、並びに誘導体の塩を指す。これらの塩は、当分野で周知されている様々な有機並びに無機の対イオンから派生し、これには例として、ナトリウム並びにカリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム等が含まれる。こうした分子が塩基としての機能を有する場合、塩酸塩並びに臭化水素酸塩、酒石酸塩、メシレート、酢酸塩、シュウ酸塩等の有機酸あるいは無機酸の塩を、薬学的に受容可能な塩として使用することができる。
【0035】
「被験体」にはヒト、サル、ウシ(cow及びcattle)、ヒツジ、ウマ、ブタ、ヤギ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、これらの培養細胞、並びにこれらの遺伝子改変種等の生きた有機体が含まれる。好ましい一実施例において、被験体はヒトである。治療のための本発明の組成物の被験体への投与は、被験体の状態を治療するのに有効な投与回数並びに期間、周知されている方法を用いて達成することができる。治療効果を達成するために必要な治療化合物の有効量は、年齢、性別、被験体の体重、並びに、被験体体内の異常因子を治療する治療化合物の能力等の要因によって異なる場合がある。用法−用量は、最適な治療反応を提供するために調整することができる。例えば、数回に分けた投与量を毎日投与することもでき、あるいは治療状況の緊急性から示されるように、比例的に減らすこともできる。
【0036】
「投与する」には、本発明の組成物が、例えば新脈管形成の促進等意図する機能を達成することができる投与経路が含まれる。疾患あるいは治療する状態に応じて様々な投与経路が可能であり、これには非経口(例えば静脈内、動脈内、筋肉内、皮下注入)、経口(例えば食事)、局所、鼻腔、直腸、あるいは徐放性マクロキャリア経由が含まれるがこれらに限定されない。経口並びに非経口、静脈内投与は、好ましい投与様式である。投与する化合物の処方は選択する投与経路に従って変わることとなる(例えば液体、乳剤、ゲル、エアロゾル、カプセル等)。投与する化合物から成る適切な組成物は、必要に応じた補助薬及び保存剤と共に生理学的に受容可能な送達担体(vehicle)あるいは担体(carrier)内に調製することができる。溶液あるいは乳剤に関して、適切な送達担体には、例えば水溶液あるいはアルコール・水溶液、乳液あるいは懸濁液が含まれ、これには緩衝塩溶液、滅菌水、クリーム、軟膏、ローション、オイル、ペースト、並びに固体担体が含まれる。非経口送達担体には、塩化ナトリウム溶液、リンゲルのデキストロース、デキストロースと塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液、あるいは不揮発油を含めることができる。静脈内送達担体は、様々な添加剤、保存剤、あるいは液体、栄養剤もしくは電解質補充薬を含有することができる(全般的なことはRemington’s Pharmaceutical Science,16th Edition Mack,Ed.(1980)を参照する。)。
【0037】
「有効量」には、新脈管形成促進性化合物あるいは抗新脈管形成性化合物の量が、例えばこの明細に記載される新脈管形成が関係する疾患において新脈管形成を促進するあるいは抑制する等、目的とする機能の達成を可能にする量が含まれる。有効量は多数の要因に依存することなり、この要因には生物学的活性、年齢、体重、性別、全身の健康状態、治療を受ける状態の重症度、及び適切な薬物力学的特性が含まれる。例えば、活性物質の投与量は1日あたり約0.01mg/kgから約100mg/kgであることができ、1日あたり約0.1mg/kgから約100mg/kgであると都合良い。治療的有効量の活性物質は、適切な経路によって一回あるいは複数回投与することができる。さらに、活性物質の投与量は、治療状況あるいは予防状況の緊急性から示されるように、比例的に増やすあるいは減らすことができる。
【0038】
「薬学的に受容可能な担体」には、任意且つ全ての溶媒、分散媒、被覆剤、抗菌剤あるいは抗真菌剤、等張・吸収遅延剤、その他化合物の活性に適合し、且つ被験体にとって生理学的に受容可能なものが含まれる。薬学的に受容可能な担体の一例は、生理食塩緩衝液(0.15M NaCl)である。当該溶媒並びに薬剤を薬学的に受容可能な物質のために使用する方法は、当分野にて周知されている。但し、任意の通常の溶媒あるいは薬剤がこの治療化合物に不適合である場合に限り、薬学的投与に適する組成でこれらを使用する方法は熟慮される。
【0039】
「追加成分」には、一つあるいは複数の以下のものが含まれるがこれらに限定されない。:医薬品添加剤、界面活性剤、分散剤、不活性稀釈剤、増粒剤並びに崩壊剤、結着剤、潤滑剤、甘味剤、着香剤、着色剤、保存剤、ゼラチン等の生理学的に分解可能な組成物、水性送達担体及び水性溶媒、油性送達担体及び油性溶媒、懸濁剤、分散あるいは湿潤剤、乳化剤、粘滑剤、緩衝液、塩、増粘剤、充填剤、乳化剤、酸化防止剤、抗生剤、抗真菌剤、安定剤、並びに薬学的に受容可能な重合体物質あるいは疎水性物質。本発明の薬学的組成物が含有することができる他の「追加成分」は当分野にて周知されており、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。
【0040】
(組成物)
この明細で開示するのは、甲状腺ホルモン、これのアナログ、並びにこのホルモン並びにアナログの重合体結合物から成る新脈管形成性薬剤である。この開示される組成物は、新脈管形成を促進するために使用して、新脈管形成が有益である疾患を治療することができる。加えて、有害な新脈管形成を伴う疾患を治療するためにこれらの甲状腺ホルモン並びにアナログ、重合体結合物の阻害物を利用することができる。この明細で使用されている「新脈管形成性薬剤」には、単独であるいは他の物質と併用して新脈管形成を促進する、あるいは助長する任意の化合物もしくは物質が含まれる。例には、T3、T4、T3アガロースもしくはT4アガロース、T3、T4アナログ重合形態物、3,5−ジメチル−4−(−4’−ヒドロイ−3’−イソプロピルベンジル)−フェノキシ酢酸(GC−1)、あるいはDITPAが含まれるがこれらに限定されない。
【0041】
重合体結合物は薬剤の生存能を改善するために使用される。新旧多数の治療法が良く許容されているが、多数の化合物は毒性を減らす、あるいは循環時間を増加する、生体内分布を改変するために、高度に進んだ薬剤送達技術を必要とする。薬剤の生存能を改善する方策の一つは、水溶性ポリマーを利用することである。多様な水溶性ポリマーが、生体内分布を改変する、並びに細胞への取り込み様式を改善する、生理学的障壁への透過性を変える、体内から除去される速度を改変する、ことが示されている。標的の捕捉あるいは持続放出効果を達成するために、末端基として、あるいは主鎖の一部分として、ポリマー鎖上のペンダント基として、薬剤部分を含有する水溶性ポリマーが合成されている。
【0042】
本発明の代表的な組成物には、ポリマーに結合した甲状腺ホルモンあるいはこれのアナログが含まれる。ポリマーへの結合は、共有結合あるいは非共有結合のいずれかを介す。好ましい実施例において、このポリマー結合はエステル結合あるいは無水結合を介して生じる。ポリビニルアルコールを使用するエステル結合が介するポリマー結合の例を、図17に示している。この調製法では、酸塩化物形態を含む甲状腺ホルモンアナログの酸塩化物で処理して市販のポリビニルアルコール(あるいは関連する共重合体)をエステル化することができる。この塩酸塩にトリエチルアミンを加えて、それぞれのアナログについて甲状腺ホルモンエステル重合体を沈殿させたうえで、水で洗い流すことができるトリエチルアミン塩酸塩とし、中和する。このポリマーへのエステル結合は生体内で加水分解され、活性型新脈管形成促進性甲状腺ホルモンアナログを放出することができる。
【0043】
アクリル酸エチレン共重合体を使用する無水結合を介したポリマー結合の一例を図18に示す。これは先のポリマーへの共有結合と似ているが、こちらはアクリル酸共重合体との反応から派生する無水結合を介している。この無水結合も、生体内で加水分解され、甲状腺ホルモンアナログを放出する。塩酸の中和はトリエチルアミンを処理して達成し、続いて沈殿させたポリ無水物重合体を洗浄して、副産物であるトリエチルアミン塩酸塩を除去する。この反応によって甲状腺ホルモンアナログアクリル酸共重合体+トリエチルアミンが形成されることとなる。生体内で加水分解されると、甲状腺ホルモンアナログ及びアクリル酸エチレン共重合体は時間経過に伴って放出されることとなり、これは調節することができる。
【0044】
他の典型的な重合体結合物には、ポリエチレングリコール(PEG)に結合した甲状腺ホルモンあるいはそのアナログが含まれる。様々な薬剤、タンパク質、並びにリポソームをPEGに結合すると、滞留時間を改善し且つ毒性を減少させることが示されている。PEGは、ポリマー鎖の末端にある水酸基を介して、並びに他の化学手段を介して活性薬剤と結合させることができる。しかし、PEG自体は1分子当たり2つの活性薬剤に限られる。別の方策では、PEGとアミノ酸の共重合体が、PEGの生体適合特性を保持しながら1分子当たりに多数の結合部位を持つという利点が加わった新しい生物性活性物質として、且つ広範囲の用途に適するよう合成的に設計することが可能なものとして探求された。
【0045】
他の典型的なポリマー結合物には、ポリマーとの非共有結合状態にある甲状腺ホルモンあるいはその重合体が含まれる。これは詳細を図19に示す。好ましい非共有結合は、甲状腺ホルモンあるいはこれのアナログの、ポリ乳酸重合体内での捕捉である。ポリ乳酸ポリエステル重合体(PLA)は生体内で加水分解されて乳酸単量体となり、この重合体はヒトにおける薬剤送達系のための担体として開発されている。甲状腺ホルモンアナログが化学結合によってポリマーと結合する先の二つの共有結合法とは異なり、これは甲状腺ホルモンアナログをPLAポリマービーズ内にカプセル化する非共有結合法となる。この反応によって、含甲状腺ホルモンアナログPLAビーズが水中にて形成されることとなる。ろ過及び洗浄によって含甲状腺ホルモンアナログPLAビーズの形成に帰着し、これは生体内で加水分解されると加水分解によって、調節された量の甲状腺ホルモンと乳酸とが発生することとなる。
【0046】
さらに、ナノメーター尺度の大きさの有用な物質並びに構造物を作り出すために、ナノテクノロジーを使用することができる。生物性活性物質の大きな欠点は、脆弱なことである。ナノ寸法の物質をこのような生物性活性物質に組み合わせて、生物性活性物質の持続性を劇的に改善し、その物質の局所的な高濃度状態を作り出して損失量を最小にすることで費用を抑えることができる。このように、重合体結合物にはさらに甲状腺ホルモン並びにこれのアナログから成るナノ粒子処方物が含まれる。当該実施例では、甲状腺ホルモン並びにそのアナログを局所的に送達するためのマトリックスとして、ナノポリマー並びにナノ粒子を使用することができる。これは今後まもなく、細胞性標的並びに組織性標的内への送達の調節を助けることとなるであろう。
【0047】
本発明の構成物には、甲状腺ホルモン、アナログ並びに誘導体の双方が含まれ、これらは単独もしくはポリマーとの共有結合体あるいは非共有結合体である。典型的なアナログ並びに誘導体の例を図20の表A〜Dに示す。表AはT2、T3、T4、並びに臭素誘導体を示す。表Bは側鎖がアラニル基に改変されているものを示す。表Cは水酸基、ジフェニルエステル結合、及びD体を示す。表Dはチロシンアナログを示す。
【0048】
「抗新脈管形成薬剤」並びに「抗新脈管形成性薬剤」という語は、単独もしくは他の物質と併用して新脈管形成を阻害あるいは抑制する任意の化合物もしくは物質を意味する。例にはTETRAC、TRIAC、XT 199、及びmAb LM609が含まれるがこれらに限定されない。
【0049】
(新脈管形成における甲状腺ホルモン、アナログ、並びにポリマー結合体の役割)
甲状腺ホルモンアナログあるいはポリマー結合体の新脈管形成促進効果は、MAPKシグナル伝達経路の薬理的阻害剤による減衰に対するこのホルモン効果の感応性によって試験されたように、非ゲノム性発動に依存する。こうした結果は甲状腺ホルモンによるMAPK活性化の別の結果が新たな血管の成長であることを示唆している。後者は非ゲノム的に開始されるが、もちろん引き続いて複雑な遺伝子転写プログラムを必要とする。甲状腺ホルモンの周囲濃度は比較的安定している。CAMモデルは、我々が実験した時点で甲状腺欠損状態であり、完全な生物体を再生しない系としてみなすことができる。
【0050】
新脈管形成のためのニワトリ漿尿膜モデル(CAM)アッセイが利用できることによって、新脈管形成の定量、及び甲状腺ホルモンによる新たな血管成長の発動に関係する可能性のある機構を研究するためのモデルが提供される。本出願は、CAMモデル内のFGF2の新脈管形成促進効果と近似し、且つ最適下量のFGF2の作用を強化することができるT4の新脈管形成促進効果を開示する。さらにこのホルモンの新脈管形成促進効果が細胞膜レベルで発動し、T4によるMAPKシグナル伝達経路の活性化に依存することを明らかにする。上記のとおり、閉塞性末梢血管疾患及び冠動脈疾患、特に冠血管の閉塞、並びに末梢脈管且つ(あるいは)冠血管の閉塞に伴う疾患の治療法を開示する。また、必要とする患者に新脈管形成を促進し、且つ(あるいは)側副血管を動員するための組成物及び手法を開示する。この組成物には、有効量の甲状腺ホルモンアナログ、重合形態物、並びに誘導体が含まれる。この手法は、有効量の甲状腺ホルモンアナログ、重合形態物、並びに誘導体と他の標準的な新脈管形成促進性成長因子、血管拡張剤、抗凝血薬、血栓溶解薬、あるいは他の血管関連治療薬とを、1週間以上、毎日低量を共投与することから成る。
【0051】
このCAMアッセイは、新脈管形成を促進すると考えられる様々な成長因子並びに化合物の新脈管形成作用を確認するために利用されている。例えば、生理学的濃度のT4はこのインビボモデルにて新脈管形成促進性であり、分子ベースでFGF2の活性を有することが示された。PTUの存在によってT4の効果は減少せず、これはこのモデルにおいてT3を生じるT4の脱ヨウ素が先行条件ではないことを示唆する。様々な甲状腺ホルモンアナログの新脈管形成促進効果を表1にて揚げる。
【0052】
(表1.CAMモデルにおける様々な甲状腺ホルモンアナログの新脈管形成促進効果)
【0053】
【化1】

1グループにつきn=8。
【0054】
このモデルで新たな血管の成長が現れるのには数日掛かり、これによって、甲状腺ホルモンの効果は甲状腺ホルモン対する核受容体(TR)とホルモンとの相互作用に全面的に依存するものであることが示唆される。TRとこれの天然のリガンドであるT3との核内複合体形成を必要とするヨードサイロニン類の作用は本来ゲノム性であり、最終的には遺伝子発現に帰着する。一方、このモデル系のT4(TRの天然のリガンドであるT3ではなく。)への選択的反応から、新脈管形成がT4によって細胞膜にて非ゲノム的に発動され、最終的には遺伝子転写を必要とする効果となるという可能性が高まった。T4の非ゲノム性作用は幅広く記載されており、通常細胞膜で発動し、シグナル伝達経路によって仲介される可能性がある。これはヨードサイロニンの核内リガンド並びにTRを必要としないが、遺伝子転写に作用する、あるいはこれを調節する可能性がある。また、ステロイドの非ゲノム的作用もよく記載されており、ステロイドあるいは他の化合物のゲノム性作用と相互作用することが周知されている。T4とテトラック、あるいはアガロースT4を用いて行われた実験では、T4の新脈管形成促進効果は、細胞膜で発動された可能性が非常に高いことが示唆された。テトラックは細胞膜で発動されるT4の効果を阻害したが、テトラック自体はシグナル伝達を活性化しない。つまり、これは甲状腺ホルモンの非ゲノム性作用に対するプローブである。アガロースT4は細胞内部には入らないと考えられており、細胞表面で発動する可能性のあるホルモン作用のためのモデルを試験するために使用されている。
【0055】
一部において、本発明は、必要とする被験体にて新脈管形成を促進するための組成物及び手法を提供する。新脈管形成を促進することによる治療が効く状態には、例えば、閉塞性末梢血管疾患並びに冠動脈疾患、特に冠血管閉塞、及び末梢脈管及び(あるいは)冠血管の閉塞に伴う疾患、勃起不全、卒中、並びに創傷が含まれる。また、必要とする患者の新脈管形成を促進する、及び(あるいは)側副血管を動員するための組成物及び手法を開示する。この組成物には、有効量の甲状腺ホルモンアナログ並びに誘導体の重合形態物、並びに有効量のアデノシン及び(あるいは)一酸化窒素供与体が含まれる。これらの組成物は滅菌された注入可能な薬学的組成の形態であることができ、これには随意で一つ以上の医薬品添加物質を伴い、生理学的且つ薬学的に受容可能な担体内にある、新脈管形成に有効な量の甲状腺ホルモン様物質、並びにアデノシン誘導体が含まれる。
【0056】
(心筋梗塞)
急性心筋梗塞に続く心不全の主な原因は、例えば新脈管形成等の新たな血管の形成反応が適切でないことにある。甲状腺ホルモン並びにそのアナログは心不全に有用であり、冠新脈管形成を誘導する。本発明の方法には、その一部において、心筋に直接注入するか、あるいは間欠的に大動脈を結紮して一時的な等容性収縮を生じさせることにより冠動脈注入を模擬することによって、梗塞時に甲状腺ホルモンアナログの一回処理量を送達して、新脈管形成及び(あるいは)心室の再成形を達成することが含まれる。
【0057】
従って、本発明の一側面では、必要とする被験体に、新脈管形成の促進に有効なある量の甲状腺ホルモンあるいはそのアナログの重合形態物を投与することによって新脈管形成を促進し、閉塞性血管系疾患、冠動脈疾患、心筋梗塞、虚血、卒中、及び(あるいは)末梢動脈血管系の疾患を治療するための方法を特色とする。
【0058】
またこの明細書中にて甲状腺ホルモンアナログの重合形態物の例を提供し、これには、ポリビニルアルコール、アクリル酸エチレン共重合体、ポリ乳酸、あるいはアガロースに結合した、トリヨードサイロニン(T3)、レボサイロキシン(T4)、(CG−1)、あるいは3,5−ジヨードサイロプロピオン酸(DITPA)が含まれる。
【0059】
またこの方法は、有効量の甲状腺ホルモン様物質と有効量のアデノシン及び(あるいは)NO供与体とを低量で毎日1週間以上共投与することから成る。一方あるいは双方の成分はカテーテルによって局所的に送達される。生体内の甲状腺ホルモンアナログ並びに誘導体を適切な大きさにしたリポソームもしくは微粒子内にこれらの化合物を取り込むことによって、これらの化合物を、虚血組織を囲む毛細血管床に送達させることができる。甲状腺ホルモンアナログ、重合形態物、並びに誘導体は、適切な抗体に共有結合させることによって虚血組織を標的とすることができる。
【0060】
この方法は、心筋梗塞後に心臓機能を回復させる治療として利用することもできる。またこの方法は、心筋虚血を患う冠動脈疾患を有する患者、あるいは、例えば閉塞性末梢血管疾患(末梢動脈閉塞性疾患とも呼ばれる。)あるいは勃起不全等、心臓外の部位への血流不全を有する患者の血流を改善するために利用することもできる。
【0061】
(創傷治癒)
創傷新脈管形成は、治癒増殖期の重要部分である。最表面以外のあらゆる皮膚の損傷治癒は、新脈管形成なしに生じるはできない。あらゆる損傷を受けた脈管構造は修復される必要があるだけでなく、治癒に必要な局所的な細胞活性の上昇には、血流からの栄養素の供給が増加することが必要である。さらに、血管の内側を形成する内皮細胞は、それ自体が治癒を組織化し、且つ制御するものとして重要である。
【0062】
つまり、新脈管形成によって創傷治癒を支える新たな微小循環ができる。損傷後4日までに、新たな血管を損傷部内部にて臨床的に目視することができるようになる。血管内皮細胞、繊維芽細胞、並びに平滑筋細胞は、損傷肉芽形成を支えるために全てが協調して増殖する。同時に上皮再形成が起こり、上皮の被覆が回復する。創縁あるいは毛嚢深部の表皮細胞は創傷全体に移動し、肉芽組織及び仮のマトリックスを覆う。ケラチノサイト成長因子(KGF)等の成長因子がこの過程を仲介する。いくつかの上皮形成モデル(細胞の滑走対回転)が存在する。
【0063】
甲状腺ホルモンは代謝速度を調節するため、甲状腺機能低下症のため代謝が低下している時は創傷治癒も低下している。よって、創傷治癒における局所的に投与された甲状腺ホルモンアナログあるいは重合形態物の役割は、糖尿病患者あるいは創傷治癒不全を有する非糖尿病患者にて創傷治癒を加速させる新しい方策となる。局所的な投与はバンドエイドに接着した形態であることができる。さらにナノポリマーあるいはナノ粒子を、甲状腺ホルモン並びにこれのアナログを局所的に送達するためのマトリックスとして使用することができる。これは今後、細胞性標的並びに組織性標的内への送達の調節を助けるであろう。
【0064】
従って、本発明の別の様態は、必要とする被験体に、新脈管形成の促進に有効な、ある量の甲状腺ホルモンあるいはこれのアナログの重合形態物を投与して新脈管形成を促進することによって、創傷を治療するための方法を特色とする。詳細は例9を参照する。
【0065】
(新脈管形成阻害における甲状腺ホルモン並びにアナログ、重合体結合物の役割)
本発明はまた、別の一部分にて、必要とする被験体にて新脈管形成を抑制するための組成物並びに手法を提供する。新脈管形成を抑制することによる治療が効く状態には、例えば、原発もしくは転移腫瘍、並びに糖尿病性網膜症が含まれる。この組成物には、有効量のTETRAC、TRIAC、あるいはmAb Lm609を含めることができる。この組成物は滅菌された注入可能な薬学的処方物から成る形態であることができ、この薬学的処方物は、随意で一つ以上の添加物と共に、生理学的且つ薬学的に受容可能な担体中にある、抗新脈管形成に有効な量の抗新脈管形成物質を含有する。さらに別の側面では、本発明は必要とする被験体に、新脈管形成を抑制する効果のある抗新脈管形成薬剤をある量投与することによって、新脈管形成を抑制することによる治療が効く状態を治療するための手法を提供する。
【0066】
また、新脈管形成を抑制するために使用される抗新脈管形成薬剤の例が本発明によって提示され、これにはテトラヨードサイロ酢酸(TETRAC)、トリヨードサイロ酢酸(TRIAC)、モノクローナル抗体LM609、あるいはこれらの組み合わせが含まれるがこれらに限定されない。当該抗新脈管形成薬剤は細胞表面で作用して新脈管形成促進因子を阻害する。
【0067】
(癌に関係する新たな血管の成長)
新脈管形成を抑制することによる治療が効く状態の例には、原発あるいは転移腫瘍が含まれるがこれらに限定されない。当該手法では、甲状腺ホルモンが誘発する新脈管形成効果を阻害する化合物を使用して新脈管形成を抑制する。当該手法の詳細は、例12にて説明される。
【0068】
(糖尿病性網膜症)
新脈管形成を抑制することによる治療が効く状態の例には、糖尿病性網膜症及び関連する状態が含まれるがこれらに限定されない。当該手法では、甲状腺ホルモンが誘発する新脈管形成効果を阻害する化合物を使用して新脈管形成を抑制する。当該手法の詳細は、例8A及びBにて説明される。
【0069】
低酸素症によって誘発される増殖性網膜症(糖尿病ではなく)がαV(αV)インテグリンの発現に依存するものであることが周知されている(E Chavakis et al.,Diabetologia 45:262−267,2002)。この明細にて、特異的なインテグリン、αVβ−3(αVβ3)への甲状腺ホルモンの作用が、糖尿病性網膜症の発症において許容的であることが提唱される。インテグリンαVβ3は、この明細にて甲状腺ホルモンに対する細胞表面受容体として同定される。甲状腺ホルモン、並びにこのアナログ、重合体結合物はこの受容体を介して新脈管形成を誘発する。
【0070】
(治療方法)
甲状腺ホルモンアナログ、重合形態物、並びに誘導体は、必要とする患者の新脈管形成を促進するための方法において使用することができる。この方法は、有効量の甲状腺ホルモンアナログ、重合形態物、並びに誘導体を低量で毎日1週間以上投与する共投与から成る。この方法は心筋梗塞後に心臓機能を回復させるための治療として利用することもできる。またこの方法は、心筋虚血を患う冠動脈疾患を有する患者、あるいは、血流量の低下が問題となる、例えば末梢動脈閉塞性疾患等の末梢血管疾患等、心臓外の部位への血流不全を有する患者の血流を改善するために利用することもできる。
【0071】
この化合物は、投与する化合物に適した、任意の医学的に受容可能な手段を介して投与することができ、これには経口、直腸経由、局所的、非経口(皮下、筋肉内、並びに静脈内投与を含む。)投与が含まれる。例えば、アデノシンの半減期は非常に短い。この理由から、アデノシンは静脈内投与されることが好ましい。しかし、はるかに長い半減期を持つアデノシンA.sub.2アナログが開発されており、これは他の手段を通じて投与することができる。甲状腺ホルモンアナログ、重合形態物、並びに誘導体は、例えば、静脈内、経口、局所的、鼻腔内投与することができる。
【0072】
一部の実施形態において、この甲状腺ホルモンアナログ、重合形態物、並びに誘導体は別の手段を介して投与される。
【0073】
新脈管形成を促進するのに効果的であるために必要とされる甲状腺ホルモンアナログ、重合形態物、並びに誘導体の量は、当然ながら治療を受ける個人によって異なることとなり、最終的には医師の裁量となる。考慮すべき要因には、治療を受ける患者の状態、使用する特定のアデノシンA.sub.2受容体類似物の効力、処方物の性質、並びに患者の体重が含まれる。甲状腺ホルモンアナログ、重合形態物、並びに誘導体の閉塞治療用量は、所望する効果が得られる任意の投与量である。
【0074】
(処方物)
上記の化合物は、投与様式にとって受容可能な担体と共に、甲状腺ホルモンアナログあるいはその重合形態物、並びに誘導体を含有する処方物にて投与することが好ましい。意図する使用法に適した、当分野の技術者に一般に周知されている、活性成分を含有する任意の処方物あるいは薬剤送達系を用いることができる。経口、直腸経由、局所的、あるいは非経口(皮下、腹膜内、並びに静脈内を含む。)投与に適した薬学的に受容可能な担体は、当分野の技術者に周知されている。この担体は、処方物の他の成分に適合し且つこれの受容者に有害でないという意味において、薬学的に受容可能なものでなければならない。
【0075】
非経口投与に適する処方物は、活性化合物の滅菌水性調製物を含有することが都合よく、これは受容者の血液と等張であることが好ましい。即ち当該処方物は、蒸留水、5%デキストロースの蒸留水あるいは生理食塩水溶液を含有することが都合よい。また有用な処方物には、組成(I)の化合物を含有する濃縮液あるいは固体が含まれ、これは適切な溶媒で稀釈されて上記の非経口投与に適した溶液を供与する。
【0076】
腸内投与については、一化合物を不活性担体内に取り込ませて、カプセル、カシェ剤、錠剤、あるいはロゼンジ等孤立した単位物とすることができ、各々は粉末あるいは顆粒、もしくは例えばシロップ、エリキシル、乳剤あるいは頓服水剤等、水性液あるいは非水性液中の懸濁液あるいは溶液として、規定量の活性化合物を含有する。適切な担体は、澱粉あるいは糖類であることができ、潤滑剤、着香剤、結合剤、並びに同じ性質の他の物質を含有する。
【0077】
錠剤は、随意で一つ以上の補助成分と共に、圧縮あるいは成形によって作ることもできる。圧縮錠剤は、例えば、粉末あるいは顆粒等自由流動形態の活性化合物を、例えば結合剤、潤滑剤、不活性稀釈液、界面活性剤あるいは分散剤等の補助成分と随意で混合して、適切な機械で圧縮することによって調製することもできる。成形錠剤は、粉末活性化合物と任意の適切な担体との混合物を、適切な機械で成形することによって作製することもできる。
【0078】
シロップあるいは懸濁液は、活性化合物を、例えばブドウ糖等糖の濃縮水性溶液に加えることによって作製することもでき、これにさらに任意の補助成分を加えることもできる。当該補助成分には、着香剤、糖の結晶化を遅らせるための薬剤、あるいは、例えばグリセロールあるいはソルビトール等の多価アルコール等、任意の他の成分の溶解性を増大させるための薬剤を含めることができる。
【0079】
直腸経由投与のための処方物は、例えばココアバターあるいはWitepsol S55(ドイツDynamite Nobel Chemicalの商標。)等の一般的な担体と併せて座薬として与えることもできる。
【0080】
あるいは、この化合物をリポソームあるいはミクロスフェア(あるいは微粒子)として投与することもできる。患者へ投与するためのリポソーム及びミクロスフェアを調製するための方法は、当分野の技術者に周知されている。参考のためその内容をこの明細に添付してある米国特許第4,789,734号は、生物性活性物質をリポソームにカプセル化するための方法を記載している。基本的には、物質を水性溶液に溶解し、適切なリン脂質及び油脂を加え、さらに必要に応じて界面活性剤を加えて、必要であればその物質を透析あるいは超音波処理する。周知されている方法の総説は、G.Gregoriadis,Chapter 14,「Liposomes」,Drug Carriers in Biology and Medicine,pp.287〜341(Academic Press,1979)によって提供されている。
【0081】
ポリマーあるいはタンパク質から形成されるミクロスフェアは当分野の技術者に周知されており、消化管を通過して直接血流に輸送されるよう適合させることができる。あるいは、この化合物はミクロスフェアあるいはミクロスフェアから成る複合体内に取り込ませることができ、月日という単位の期間に渡って緩やかに放出させるために体内に挿入することができる。例えば米国特許第4,906,474号並びに同第4,925,673号、同第3,625,214号、及びJein,TIPS 19:155−157(1998)を参照する。これらの内容を参考のためこの明細に添付する。
【0082】
一実施形態において、この甲状腺ホルモンアナログあるいはその重合形態物及びアデノシン誘導体は、リポソームあるいは微粒子内に組成することができ、これらは静脈内投与後に毛細血管床に入り込むのに適した大きさとされる。このリポソームあるいは微粒子を虚血組織周囲の毛細血管床内に入り込ませると、薬剤を最も効果が得られる部位に局所的に投与することができる。標的とする虚血組織に適切なリポソームは一般に約200ナノメーター未満であり、また典型的には、例えばBaldeschweilerの「Liposomal targeting of ischemic tissue」と表題された米国特許第5,593,688号にて開示されるもののように、単層の送達担体である。この内容を参考のためこの明細に添付する。
【0083】
微粒子はポリグリコリド、ポリ乳酸、並びにこれらの共重合体等、生分解性ポリマーから調製されたものであることが好ましい。当分野の技術者は、所望する薬剤放出速度並びに所望する投与量等様々な要因に応じて適切な担体系を容易に決定することができる。
【0084】
一実施形態において、この処方物はカテーテルを介して直接血管内部に投与される。この投与は、例えばカテーテルの孔を通過して行うことができる。活性成分が比較的長い半減期(1日から1週間あるいはそれ以上という単位で)を有するこれらの実施様態では、処方物を、Hubbelらの米国特許第5,410,016号にて開示されるもの等、生分解性高分子ハイドロゲル内に包含させることができる。これらの高分子ハイドロゲルは組織管腔内部に送達させることができ、活性成分は時間経過と共にポリマー分解物として放出される。所望する場合、この高分子ハイドロゲルは内部に分散する活性化合物を包含する微粒子あるいはリポソームを含有することができ、これは活性化合物徐放のための別の機構を提供する。
【0085】
この処方物は便宜のため単位投与量として与えることができ、薬学の分野で周知されている任意の手法によって調整することができる。全ての手法には、一つ以上の補助成分から構成される担体に活性化合物を会合させる手順が含まれる。一般にこの処方物は、活性化合物を液体担体あるいは微細に分割された固体担体に均一且つ完全に会合させ、必要であれば、この生成物を所望する単位投与量の形態に成形することによって調製される。
【0086】
この処方物は、随意で、成長因子(TGF−ベータ、塩基性繊維芽細胞成長因子(FGF2)、上皮成長因子(EGF)、形質転換成長因子α・β(TGFα、並びにβ)、神経成長因子(NGF)、血小板由来成長因子(PDFG)、血管内皮成長因子・血管透過因子(VEGF/VPF)、抗ウイルス剤、抗細菌剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、鎮痛剤、新脈管形成剤、並びに細胞接着分子等の添加成分を含有することができる。
【0087】
先述の成分に加えてこの処方物はさらに、例えば、稀釈剤、緩衝液、着香料、結合剤、界面活性剤、増粘剤、潤滑剤、懸濁剤、保存剤(抗酸化剤を含む。)等、薬学的組成の分野で利用される一つ以上の随意の補助成分を含有する場合もある。
【0088】
(材料と方法)
試薬:試薬は全て化学等級のものであり、Sigma Chemical Co.(St.Louis,MO)から、もしくはVWR Scientific(Bridgeport,NJ)を通じて購入した。コルチゾン酢酸塩、ウシ血清アルブミン(BSA)及びゼラチン溶液(2%ウシ皮膚由来のB型)は、Sigma Chemical Co.から購入した。ニワトリ受精卵はCharles River Laboratories、SPAFAS Avian Products & Services(North Franklin,CT)から購入した。T4、3,5,3’−トリヨードLサイロニン(T3)、テトラヨードサイロ酢酸(テトラック)、T4−アガロース、及び6−N−プロピル−2−チオウラシル(PTU)はSigmaから入手し、PD98059はCalbiochemから、またCGP41251はNovartis Pharma(スイスBasel)から入手した。ポリクローナル抗FGF2およびモノクローナル抗βアクチンはSanta Cruz Biotechnologyから入手し、ヒト組換えFGF2はInvitrogenから入手した。リン酸化ERK1/2に対するポリクローナル抗体はNew England Biolabsから、またヤギ抗ウサギIgGはDAKOから入手した。
【0089】
新脈管形成の漿尿膜(CAM)モデル:生体内の新脈管形成を、以前に記載した方法によって調べた。9〜12ケの10日目ニワトリ胚をSPAFAS(Preston, CT)から購入し、相対湿度55%、37℃で培養した。皮下注射針を使用して気嚢を覆う殻に小さな孔をあけ、別の孔を、卵の幅の広い側の、検卵によって同定した胚膜の無血管部位の真上に作った。最初の孔で陰圧を掛けることによって、2番目の孔の下に偽気嚢を作出した。これによってCAMは殻から分離する。小型の工作用研摩盤(Dremel,division of Emerson Electric Co.)で約1.0cm2の窓を、分離したCAMを覆う殻に刻み、内部のCAMを直接操作できるようにした。10日目胚のCAMに新たな血管枝を誘導するため、FGF2(1μg/mL)を標準新脈管形成促進薬剤として使用した。No.1フィルターペーパー(Whatman International)滅菌ディスクを3mg/mLのコルチゾン酢酸塩及び1nmol/LのPTUで前処理し、滅菌条件下で風乾した。次に甲状腺ホルモン、ホルモンアナログ、FGF2、もしくはコントロール溶媒、並びに阻害剤をこのディスクに塗布し、乾燥させた。次にこのディスクをPBS中で懸濁し、成長中のCAMの上に置いた。3日間のインキュベーションの初日に、T4あるいはFGF2で処理したフィルターを置き、記載したように30分後、FGF2に対する抗体を選択した試料に加えた。また24時間目に、MAPKカスケード阻害剤であるPD98059を、このフィルターディスクによって局所的にCAMに与えた。
【0090】
CAM切片の顕微鏡分析:相対湿度55%、37℃で3日間インキュベートした後、コントロール及び処理を行ったCAM試料から、各フィルターディスク直下のCAM組織を切除した。組織は3倍のPBSで洗浄して35分間、ペトリ皿(Nalge Nunc)内に置き、SV6実体顕微鏡(Zeiss)下50倍で検鏡した。フィルターに露光したCAM切片のデジタル画像を、3電荷結合素子カラービデオカメラシステム(Toshiba)を使用して集積し、Image−Proソフトウェア(Media Cybernetics)で解析した。各フィルターディスクと同じ面積の円形区域内にある血管の分岐点の数を計数した。1つの画像を各CAM調製物として数え、8から10個のCAM調製物から得られた結果を各処理条件(甲状腺ホルモンあるいはアナログ、FGF2、FGF2抗体、PD98059)について分析した。さらに、各実験は3回行った。得られた新脈管形成指数は、各試料グループにて新しくできた分岐点の平均値±SEMである。
【0091】
FGF2分析:ECV304内皮細胞を、10%ウシ胎仔血清を添加したM199培地で培養した。ECV304細胞(細胞数10)を0.2%ゲルでコーティングした24ウェルプレートに、完全培地中で一晩プレーティングした。次にこの細胞を、血清を含まない培地で洗浄し、記載したようにT4あるいはT3で処理した。72時間後にその上清を回収し、稀釈せずに市販のELISAシステム(R&D Systems)を使用してFGFについての分析を行った。
【0092】
MAPK活性化:ECV304内皮細胞を、0.25%のホルモン除去血清13を加えたM199培地で2日間培養した。次に細胞をT4(10−7mol/L)で15分間から6時間処理した。追加実験にて、細胞をT4あるいはFGF2、もしくはPD98059あるいはCGP41251存在下でT4を処理した。以前に報告した我々の方法によって全試料から核分画を調製し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によってタンパク質を分離し、リン酸化ERK1/2に対する抗体を使用する免疫ブロッティングのためにメンブランへ移した。核リン酸化ERK1/2が存在することによって、T4によるこれらMAPKイソ型体の活性化が意味される。
【0093】
逆転写−ポリメラーゼ連鎖反応:10cmプレート内の融合性ECV304細胞をT4(10−7mol/L)で6時間から48時間処理し、イソチオン酸グアニジニウム(Biotecx Laboratories)を使用して全RNAを抽出した。RNA(1μg)で、Access RT−PCRシステム(Promega)を使用して逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を行った。全RNAは48℃で45分間cDNAに逆転写し、次に94℃で2分間変性させた。二次ストランドの合成とPCR増幅は40サイクル行い、94℃で30秒間変性、60℃で60秒間アニーリング、68℃で120秒間伸張し、全サイクル終了後に68℃で7分間、最終伸張を行った。FGF2に対するPCRプライマーは次のとおりである。:FGF2センス鎖5’−TGGTATGTGGCACTGAAACG−3’(配列番号1)、アンチセンス鎖5’−CTCAATGACCTGGCGAAGAC−3’(配列番号2)、PCR産物の長さは734bp。GAPDHに対するプライマーには、センス鎖5’−AAGGTCATCCCTGAGCTGAACG−3’(配列番号3)、及びアンチセンス鎖5’−GGGTGTCGCTGTTGAAGTCAGA−3’(配列番号4)が含まれ、PCR産物の長さは218bpであった。RT−PCR産物を1.5%アガロースゲルの電気泳動によって分離し、臭化エチジウムで視覚化した。このゲルの標的とするバンドを、LabImageソフトウェア(Kapelan)を使用して定量し、各時点にて[FGF2/GAPDH]X10の値を算出した。
【0094】
統計分析:試験試料をコントロール試料と比較する一方向分散分析によって、統計分析を行った。
【0095】
マウス体内の、FGF2あるいは癌細胞系マトリゲル移植組織におけるインビボ新脈管形成:インビボマウス新脈管形成モデル:以前に記載された方法(Grant et al.,1991、Okada et al.,1995)に従い、また我々の実験室にて行われたように(Powel et al.,2000)マウスマトリゲルモデルを実行する。短くまとめると、成長因子を含まないマトリゲル(Becton Dickinson,Bedford MA)を4℃で一晩溶解し、氷上に置く。マトリゲルの分割物を冷却したポリプロピレン試験管に入れ、FGF2もしくは甲状腺ホルモンアナログ、癌細胞(細胞数1X10)をこのマトリゲルに加える。マトリゲルに生理食塩水、もしくはFGF2、甲状腺ホルモンアナログ、癌細胞を加えたものを、マウスの腹側中線内に皮下注入する。14日目にこのマウスを屠殺し、固形化したゲルを切除して新たな血管の存在について分析する。化合物A〜Dを異なる投与量で皮下接種する。コントロールゲル移植組織並びに試験ゲル移植組織を、0.5mlの細胞溶解液(Sigma,St.Louis,MO)を含むマイクロ遠心チューブに入れ、乳棒で破砕する。次にこのチューブを4℃で一晩インキュベートし、翌日、1,500X gで15分間遠心分離機に掛ける。各試料につき、200μlの細胞溶解物部分標本を1.3mlのDrabkinの試薬溶液(Sigma,St.Lous,MO)に加える。この溶液を分光光度計にて、540nmで分析する。吸光度は試料に含まれるヘモグロビン量に比例する。
【0096】
腫瘍増殖と転移−ニワトリ漿尿膜(CAM)腫瘍移植組織モデル:実験手順は以前に記載された通りである(Kim et al.,2001)。短くまとめると、1X10の腫瘍細胞を各CAM(7日目胚)の表面に置き、一週間インキュベートする。その結果生じる腫瘍を切除して50mgの断片に切る。また別の各グループにつき10個のCAMに、これらの断片を置き、翌日、PBSに溶解した化合物(A〜D)25μlを局所的に処理する。7日後、腫瘍をこの卵から切除し、各CAMについて腫瘍重量を測定する。図8はCAMインビボ腫瘍増殖モデルに含まれる各段階を示す簡略図解である。
【0097】
腫瘍細胞系の腫瘍増殖速度、腫瘍新脈管形成、及び腫瘍転移に及ぼす、TETRAC、TRIAC、並びに甲状腺ホルモン拮抗体の影響を測定することができる。
【0098】
腫瘍増殖と転移−マウス腫瘍異種移植片モデル:このモデルは、Kerr et al.,2000、Van Waes et al.,2000、Ali et al.,2001、並びにAli et al.,2001による我々の出版物にて記載されており、各々を参考のためこの明細にその全文を添付する。様々な投与量で、様々な腫瘍タイプに対する、TETRAC、TRIAC、並びに他の甲状腺ホルモン拮抗体の抗腫瘍効果を判定し、比較することができる。
【0099】
腫瘍増殖と転移−転移の実験モデル:このモデルは、我々の最近の出版物に記載されているものである(Mousa,2002、Amirkhosravi et al.,2003aと2003b。各々を参考のため、この明細にその全文を添付する。)。短くまとめると、B16マウス悪性黒色腫細胞(ATCC,Rockville,MD)及び他の腫瘍細胞系を、10%ウシ胎仔血清、ペニシリン及びストレプトマイシン(Sigma,St.Louis,MO)を添加したRPMI1640(Invitrogen,Carlsbad,CA)内で培養する。細胞は周密度が70%となるまで培養し、トリプシン−EDTA(Sigma)で回収してリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄する。転移実験のために、細胞を各々2.0X10細胞/mlの濃度にPBSで再懸濁する。この実験では、体重18〜21グラムの動物:C57/BL6マウス(Harlan,Indianapolis,Indiana)を使用する。全ての手順はIACUC並びに研究所ガイドラインに従う。様々な投与量で、様々な腫瘍タイプに対する、TETRAC、TRIAC、並びに他の甲状腺ホルモン拮抗体の抗腫瘍効果を判定し、比較することができる。
【0100】
(甲状腺ホルモンアナログの新脈管形成に対する影響)
CAMモデルにおいてT4は、新脈管形成指数(基準に対する増加倍数)の著しい増加を誘導した。1μgのFGF2によって新脈管形成指数は2〜3倍増加(表1並びに図1a並びに1b)するのと比較して、T3は0.001〜1.0μMで、T4は0.1〜1.0μMで、新脈管形成指数の2.5倍増を生じる最大効果に達した。T4の新脈管形成促進効果(新脈管形成指数の2〜2.5倍増加)は、T4からT3への転換を阻害するPTUが存在する場合でも、存在しない場合でも達成された。CAMモデルにてT3自体は、91〜100 nMで強力な新脈管形成促進効果を誘発した。T4アガロースはT4と同様の新脈管形成促進効果を生じた。T4あるいはT4アガロースによる血管促進性効果は、TETRACあるいはTRIACによって100%阻害された。
【0101】
(最適下濃度のT4による、FGF2の新脈管形成促進効果の増進)
最適下濃度のT4及びFGF2の組み合わせによって新脈管形成指数の相加的増加がみられ、FGF2あるいはT4の最大新脈管形成促進効果と同程度に達した(図2)。
【0102】
(CAMモデルにおける、T4並びにFGF2の新脈管形成促進作用に対するMAPKカスケード阻害剤の影響)
T4あるいはFGF2の新脈管形成促進効果は、0.8〜8μgのPD98059によって完全に阻害された(図3)。
【0103】
(CAMモデルにおける、T4並びにFGF2の新脈管形成促進作用に対する特異的インテグリンαvβ3拮抗薬の影響)
T4あるいはFGF2の新脈管形成促進効果は、10μgの特異的なモノクローナル抗体LM609によって完全に阻害された(図4a並びに4b)。
【0104】
様々な成長因子及び他の新脈管形成促進剤あるいは抑制剤の新脈管形成活性を確認するためにCAMアッセイを用いてきた(2〜9)。これらの研究において、生理学的濃度のT4は、FGF2の活性に匹敵する新脈管形成特性を示した。PTUが存在してもT4の効果が減少せず、これは、このモデルにおいてT3を生じるT4の脱ヨウ素化が必要条件ではないことを示唆する。このモデルでは新たな血管の成長が現れるのに数日必要なため、甲状腺ホルモンの効果は甲状腺ホルモンに対する核受容体(TR)との相互作用に全面的に依存すると推測した。TRと自然界でのリガンドであるT3との核内複合体形成を必要とするヨードサイロニンの作用は本来ゲノム性であり、最終的には遺伝子発現に繋がる。一方、このモデルの系の、TRの自然界でのリガンドであるT3ではなくT4に対する選択的反応によって、新脈管形成は非ゲノム的に原形質膜にてT4によって発動され、最終的に遺伝子発現を必要とする効果に繋がるという可能性が上昇した。T4の非ゲノム性作用は広く記載されており、通常原形質膜で発動されてシグナル伝達経路によって仲介される可能性がある。この作用はヨードサイロニンとTRとの核内リガンド結合を必要としないが、遺伝子発現を調整するあるいは調節する可能性がある。また、ステロイドの非ゲノム性作用はよく記載されており、ステロイドあるいは他の化合物のゲノム性作用を調整することがわかっている。T4及びテトラック、あるいはアガロースT4を用いて行った実験によって、T4の新脈管形成促進効果は、原形質膜で発動される可能性が極めて高いことが示唆された。我々は、テトラックが原形質膜で発動されるT4の効果を阻害するが、それ自体はシグナル伝達を活性化しないことを他で示している。このように、テトラックは甲状腺ホルモンの非ゲノム性作用に対するプローブである。アガロースT4は細胞内部に入らないと考えられ、我々並びに他の研究者はホルモンの細胞表面発動性作用の可能性について、モデルを試験するのに使用している。
【0105】
これらの結果は甲状腺ホルモンによるMAPK活性化がもたらすもう一つの結果が新たな血管の成長であることを示唆している。後者は、非ゲノム的に開始されるが、当然結果として複雑な遺伝子転写プログラムを必要とする。
【0106】
甲状腺ホルモンの周囲濃度は比較的安定している。我々が実験を行った時点で、このCAMモデルは甲状腺欠損状態にあり、完全な生物体を再生することのない系とみなすことができる。我々は循環濃度のT4が、他の様々な調節因子と共に、VEGF並びにFGF2等の内生新脈管形成性因子に対する血管の感受性を調節する役割のあることを提唱する。
【0107】
本発明は以下の限定を設けない実施例において詳細を説明する。
【実施例】
【0108】
(実施例1.甲状腺ホルモンの新脈管形成に対する影響)
図1Aで示し、図1Bでまとめたように、CAMアッセイにてL−T4とL−T3の双方が新脈管形成を増進した。T4は、溶液中に0.1μmol/Lの生理学的全濃度で、血管分枝の形成を2.5倍(p<0.001)増加させた。T3(1nmol/L)もまた新脈管形成を2倍に促進した。細胞性5’−モノデヨージナーゼによってT4はT3に転換されるため、T4が効力を有するだけであるという可能性は、脱ヨウ素酵素阻害剤のPTUが、T4によって生じる新脈管形成に対する阻害効果を持たないという結果によって除かれた。PTUはCAMモデルにて使用した全てのフィルターディスクに添加した。このように、T4並びにT3は、成長因子分析のためにこれまでに標準化されているCAMモデルにおいて、新たな血管分枝の形成を促進する。
【0109】
(実施例2.T4−アガロース及びテトラックの影響)
我々は先にT4アガロースが、T4と同じしくみで、原形質膜で開始される細胞性シグナル伝達経路を刺激し、T4及びT4アガロースの作用は、T4の原形質膜への結合を阻害することがわかっている脱アミノ化ヨードサイロニンアナログであるテトラックによって阻害されることを示した。CAMモデルにおいて、テトラック(0.1μmol/L)を加えるとT4の作用が抑制されるが(図2A)、テトラック単独では新脈管形成への影響は持たない(図2C)。CAMモデルにおいて、0.1μmol/Lのホルモン濃度で加えたT4−アガロースの作用はT4の作用と同程度であり(図2B)、T4−アガロースの効果もテトラックの作用によって阻害された(図2B。2Cにまとめてある。)。
【0110】
(実施例3.最大下濃度のT4による、FGF2の新脈管形成活性の増強)
新脈管形成は通常、ポリペプチド成長因子の係わりを必要とする複雑な過程である。CAMアッセイでは、血管の成長を証明するのに少なくとも48時間を必要とする。即ち、このモデルにおける甲状腺ホルモンの明白な原形質膜効果は、このホルモンに対する複雑な転写反応に帰結する模様である。よって、我々は、FGF2がホルモン反応に係わるか否か、またこのホルモンが生理学的濃度を下回る濃度にあるこの成長因子の効果を強化する可能性があるか否かを調べた。T4(0.05μmol/L)及びFGF2(0.5μg/L)は、個々に中程度にまで新脈管形成を促進する(図3)。この最高下濃度FGF2の新脈管形成性効果は生理学的下濃度のT4によって、1.0μgのFGF2単独によって引き起こされる程度にまで増強された。このように、最大下濃度のホルモン及び成長因子の効果は相加的である模様である。甲状腺ホルモンの新脈管形成刺激における、さらに正確なFGF2の役割を確定するため、FGF2に対するポリクローナル抗体を、FGF2あるいはT4で処理したフィルターに加え、72時間後に新脈管形成を測定した。図4は、外来FGF2が存在しない状態で、FGF2抗体がFGF2あるいはT4によって刺激された新脈管形成を抑制したことを示しており、これはCAMアッセイにおけるT4の影響が、FGF2の発現増加によって仲介されていることを示唆している。コントロールIgG抗体は、このCAMアッセイにおいて促進効果も阻害効果も持たない。
【0111】
(実施例4.甲状腺ホルモンによる、内皮細胞のFGF2放出刺激)
T4(0.1μmol/L)もしくはT3(0.01μmol/L)で3日間処理したECV304内皮細胞の培地中のFGF2濃度を測定した。表2で示したように、T3は培地中のFGF2濃度を3.6倍に刺激し、一方T4は1.4倍の増加をもたらした。この結果は甲状腺ホルモンが、内皮細胞に有用な成長因子濃度を増加させることによって、FGF2の新脈管形成効果を少なくとも部分的には増強している可能性を示唆する。
【0112】
(表2.ECV304内皮細胞からのFGF2放出に対するT4並びにT3の影響)
【0113】
【化2】

*P<0.001、T3処理試料とコントロール試料との分散分析による比較。
†P<0.05、T4処理試料とコントロール試料との分散分析による比較。
【0114】
(実施例5.甲状腺ホルモン並びにFGF2による新脈管形成促進におけるERK1/2シグナル伝達経路の役割)
T4が細胞に非ゲノム性効果を作用させることによる経路は、MAPKシグナル伝達カスケードであり、具体的にはERK1/2活性化のシグナル伝達である。我々は、T4が上皮成長因子によるERK1/2活性化を増進することを知っている。甲状腺ホルモンによるFGF2発現促進におけるMAPK経路の役割を、チロシン−スレオニンリン酸化酵素であるMAPKキナーゼ1(MEK1)及びMEK2によるERK1/2活性化の阻害剤であるPD98059(2から20μmol/L)を使用することによって試験した。この表にあるデータは、T4あるいはT3で処理したECV304内皮細胞から放出されるFGF2の増加を、PD98059が効果的に遮断したことを示している。同時に、CAMアッセイにてERK1/2阻害の実験を行った。代表的な結果を図5に示す。各々生理学的濃度のT3及びT4を組み合わせると、血管分枝が2.4倍増加した。この効果は3μmol/LのPD98059によって完全に阻害された(図5A)。FGF2の分枝形成促進(2.2倍)も、このERK1/2活性化の阻害剤によって効果的に阻害された(図5B)。このように、甲状腺ホルモンの新脈管形成促進効果は原形質膜で開始され、内皮細胞からのFGF2の放出を促進するERK1/2経路の活性化を伴う。ERK1/2活性化は、FGF2シグナルを変換するのに再び必要とされ、これによって新たな血管が形成される。
【0115】
(実施例6.MAPK活性化に対する甲状腺ホルモン及びFGF2の作用)
ERK1/2 MAPKsのリン酸化並びに核への移行の促進を、T4(10−7mol/L)で15分から6時間処理したECV304細胞にて調べた。T4処理後15分内にリン酸化ERK1/2が細胞核内に現れて30分で最大濃度に達し、6時間目でも依然確認される(図6A)。この化合物はMAPKリン酸化酵素によるERK1/2のリン酸化を阻害するので予測される結果であるが、このホルモンの効果はPD98059によって阻害される(図6B)。また、別の細胞系のT4処理でみられたように、従来のプロテインキナーゼC(PKC)−α、PKC−β、及びPKC−γ阻害剤であるCGP41251もこれらの細胞にて、MAPK活性化に対するこのホルモンの効果を阻害した。甲状腺ホルモンは、インターフェロンγ13並びに上皮成長因子等、いくつものサイトカイン並びに成長因子の作用を強化する。ECV304細胞において、T4は共にインキュベートして15分でFGF2によるMAPK活性化を強化する(図6C)。ECV304細胞での観察結果をCAMモデルに採り入れ、我々はこのホルモンが新脈管形成を誘導する起因となる複雑な機構には、上皮細胞によるFGF2の放出及び、新脈管形成に対する放出されたFGF2の自己分泌効果の増大が含まれることを提唱する。
【0116】
(実施例7.甲状腺ホルモンで処理したECV304細胞のRT−PCR)
T4の新脈管形成促進作用の機構の研究にて取り組んだ最後の疑問は、このホルモンがFGF2遺伝子の発現を誘発することができるか否かであった。内皮細胞をT4(10−7mol/L)で6から48時間処理し、RT−PCRに基づいたFGF2及びGAPDH RNA(cDNA測定値から推定される。図7)の評価を実施した。GAPDH量に関して補正したが、6時間のホルモン処理によってFGF2 cDNA量は明白に増加し、さらに48時間まで増大した。
【0117】
(実施例8A.マウスの網膜新脈管形成モデル(糖尿病性並びに非糖尿病性))
網膜新脈管形成に関して試験物の薬理学的活性を調べるため、乳仔マウスを高酸素環境に7日間暴露して回復させる。これによって網膜上にて新たな血管形成が促進される。網膜新脈管形成が抑制されたか否かを判定するため、試験物を評価する。この網膜をヘマトキシリン−エオシン染色法及び新脈管形成を明らかにする一つ以上の染色法(通常はセレクチン染色)で試験した。他の染色法(PCNA、PAS、GFAP、新脈管形成のマーカー等)を用いることができる。以下が、このモデルについての概略である。
【0118】
(動物モデル)
・乳仔マウス(P7)及びその種雌を、高酸素環境内(70〜80%)に7日間置く。
・P12について、このマウスを加酸素環境から出し、通常環境内に置く。
・マウスを5〜7日間回復させる。
・次にマウスを屠殺して眼を採集する。
・眼は必要に応じて凍結するかあるいは固定する。
・適切な組織化学染色液で眼を染色する。
・適切な免疫組織化学染色液で眼を染色する。
・血液、血清、もしくは他の組織を採集することができる。
・微細血管変化に関する専門の参考文献を用いて、任意且つ全ての所見について眼を調べる。新生血管の成長は、準定量的に評価されることとなる。また画像分析も利用できる。
【0119】
(実施例8B.甲状腺ホルモンと糖尿病性網膜症)
ストレプトゾトシン(STZ)誘発実験的糖尿病及び糖尿病性網膜症を有するラットへのテトラックの投与については、J de la Cruz et al.,J Pharmacol Exp Ther 280:454−459,1997にて記載されている実験手順を使用する。結果は、テトラックによる増殖性網膜症出現(新脈管形成)の抑制である。
【0120】
(実施例9.インビトロヒト上皮創傷治癒並びに繊維芽細胞創傷治癒)
インビトロ二次元創傷治癒法は、Mohamed S、Nadijcka D、Hanson,VによるWound healing properties of cimetidine in vitro,Drug Intell Clin Pharm20:973−975;1986に記載されているもので、参考のためその全文をこの明細に添付する。さらに、既に我々の研究室にて確立されている三次元創傷治癒法をこの実験で利用する(以下を参照。)。データは、甲状腺ホルモンによって創傷治癒が強力に促進されることを示す。
【0121】
(ヒト真皮繊維芽細胞のインビトロ3D創傷治癒アッセイ)
手順1:収縮コラーゲンゲルを調製する。
1)24ウェルプレートを350μlの2%BSAで、常温で2時間コーティングする。
2)周密度80%のNHDF(正常ヒト真皮繊維芽細胞、5〜9代目)をトリプシン処理し、増殖培地で中和して遠心分離し、PBSで1回洗浄する。
3)コラーゲン−細胞混合物を調製する。緩やかに撹拌し、常に氷上で行う。
【0122】
【化3】

4)24ウェルプレートから2%BSAを除き、コラーゲン−細胞混合物を各ウェル当たり350μl加え、このプレートを37℃のCO2インキュベーター内で培養する。
5)1時間後に、DMEM+5%FBS溶液を各ウェル当たり0.5ml加える。10μlのチップを使用する。各ウェルの端からコラーゲンゲルを剥がし、2日間培養する。繊維芽細胞はこのコラーゲンゲルと連絡することとなる。
手順2:3Dフィブリン創傷血餅及び創傷コラーゲン包埋培養の調製
1)試薬を加えた、もしくは加えないフィブリノーゲン溶液(1mg/ml)を調製する。エッペンドルフチューブ内に各ウェルにつき350μlのフィブリノーゲン溶液。
【0123】
【化4】

2)中央部分の各収縮コラーゲンゲルをハサミで切断する。このゲルをPBSで洗浄し、ゲルを24ウェルプレートの各ウェル中央に移す。
3)各試験管に1.5μlのヒトトロンビン(0.25U/μl)を加える。よく混合してコラーゲンゲル周囲の溶液を加える。この溶液は10分で重合することとなる。
【0124】
20分後、試薬を加えたもしくは加えないDMEM+1%(あるいは5%)FBSを、450μl/ウェル加え、プレートを37℃のCO2インキュベーターで5日目まで培養する。毎日写真を撮る。
【0125】
(糖尿病ラットにおけるインビボ創傷治癒)
糖尿病ラットの急性切創モデルを使用して、甲状腺ホルモンアナログ及びその結合形態物の影響を試験した。3〜21日目、傷口が閉じる速度、破断強度分析、及び組織学検査を定期的に行った。
【0126】
(実施例10.齧歯類の心筋梗塞モデル)
心筋梗塞の冠動脈結紮モデルを使用して、ラットの心臓機能を調べる。ラットは最初にキシラジン及びケタミンで麻酔し、適切な知覚麻痺が得られた後、気管に挿管して陽圧換気を開始する。この動物は、四肢を緩くテープで留めた状態で仰向けに置き、正中胸骨切開を行う。心臓を穏やかに体外に摘出し、冠動脈左前下行枝周囲で6−O構造を堅固に縛る。心臓を素早く胸部に戻して3−Oパースストリング縫合術(purse string suture)で開胸口を閉じ、結節縫合あるいはサージカルクリップで皮膚を閉じる。動物を加温パッドで調節した温度に置き、回復の過程を注意深く観察する。必要であれば酸素を追加し、また心肺蘇生術を施す。回復後、このラットを飼育設備に戻す。このようなラットの冠動脈結紮によって、大きな心筋梗塞前壁ができる。この手法の48時間の死亡率は50%に上る可能性があり、この手法によってできる梗塞の大きさにはばらつきがある。こうした考察及びこれまでの実験に基づくと、次に議論される甲状腺ホルモン送達の2つのモデルを比較できるよう、大きな梗塞を有する16〜20のラットを得るために、およそ400のラットが必要である。
【0127】
これらの実験は、無傷動物にて冠動脈結紮の前あるいは後で、甲状腺ホルモンの全身投与が、心エコー検査並びに血流動態測定によって検査される血流動態異常の程度並びに梗塞部大きさの減少を含む、有益な効果をもたらすことを示すように企画される。梗塞後3週間目に測定結果を提示する。一部のラットが梗塞を持たない、あるいは小さな梗塞しか生じない場合もあり、これらのラットは正常心エコー検査結果並びに正常血流動態(LV拡張終期血圧<8mm Hg)によって同定することができる。
【0128】
(甲状腺ホルモンの送達)
2つの送達方法がある。一つ目は、甲状腺ホルモンを直接、梗塞した心筋周辺部分に注入する。急性胸部開咬の間、正常心筋と虚血心筋との間の境界は容易に同定できることから、この方法によって、新脈管形成効果を検出するのに十分なホルモンの送達が得られる。
【0129】
第一のモデルは冠動脈バイパス手術を受ける患者に有用であり、一回の局所的な注入が新脈管形成を誘発するという原則を検証するものであるが、第二のモデルを用いるより広範囲な投与法も利用することができる。第二のモデルでは、心筋梗塞を誘発させる前の麻酔したラットの左心室に、頚動脈を介して逆行性カテーテルを挿入する。あるいは、大動脈弁のすぐ上方で大動脈直接穿刺を行う。冠動脈の始点上方で数秒間大動脈が突然閉塞することにより、甲状腺ホルモンの冠動脈内への投入が刺激され、これによって等容性収縮が発生する。次に、大動脈が収縮した直後に、甲状腺ホルモンを左心室あるいは大動脈に注入する。結果生じる等容性収縮が、甲状腺ホルモンと共に血液を、心筋全体を灌流する冠血管下方へ推し進める。この手法は効果を得るのに必要な回数行うことができる。注入回数は用いる投与量及び新たな血管の形成状況に応じて異なる。
【0130】
(心エコー検査)
麻酔をしていないラットの2−D及びMモード心エコー図を得るための方法が開発されている。左心室の大きさ、機能、壁の厚み、並びに壁運動を、再現性のある信頼できる方法で測定することができる。これらの測定は甲状腺ホルモン投与に関する偏向を除くため、盲検様式で行われる。
【0131】
(血行動態)
血行動態測定法を用いて、左心室障害の程度を判定する。ラットをイソフルランで麻酔する。右前頚部にそって切開して右頚動脈及び右頚静脈血管を取り出し、圧測定カテーテル(Miller,SPR−612,1.2Fr)を用いてカニューレを挿入する。次に以下の測定を行う。:心拍数、収縮期及び拡張期血圧、平均動脈圧、収縮期及び拡張終期の左心室圧、並びに+及び−dP/dt。特に有用なのは拡張終期の左心室圧の測定であり、これの進行的な上昇は心筋損傷の程度に比例する。
【0132】
(梗塞部の大きさ)
TTC法を用いた梗塞部分の大きさの測定のため、ラットを屠殺する。
【0133】
(形態測定)
梗塞部分内部、梗塞周辺部、及び通常後壁となる梗塞部反対側の残存する心筋内の、微小血管密度(微小血管数/mm)を測定する。Image Analysisソフトウェアを使用して、各ラットの心筋細胞横断切片の、7〜10の顕微鏡高出力画像(X400)をデジタルで録画する。盲検調査者が微小血管を計数する。微小循環は、三次細動脈を除く、直径150マイクロメーター以下の血管群と定義され、これは細動脈と細静脈との間の組織に供給する。左心室の肥大の差異を補正するため、体重について補正した左心室重量によって微小血管密度を割り出す。擬似手術を行ったラットの心筋をコントロールとして用いる。
【0134】
(実施例11.T4あるいはFGF2の新脈管形成促進効果に対する、αVβ3拮抗体の影響)
10マイクログラムのCAMモデルにおいて、αVβ3の阻害剤であるLM609はFGF2あるいはT4が誘発する新脈管形成促進効果の双方を完全に阻害した(図16)。
【0135】
(実施例12.癌が関係する新たな血管成長の抑制)
ヒト乳癌細胞(MCF−7)の移植を受けたSCIDマウスへのテトラヨードサイロ酢酸(テトラック)の投与には、J.Bennett,Porc Natl Acad Sci USA 99:2211−2215,2002に記載されている実験手順を使用する。マウスモデル内でのこのホルモンアナログの循環濃度が10〜6Mになるように、テトラックを飲水中に与える。移植した腫瘍周囲の新脈管形成に対するテトラックの抑制作用に帰結する。
【0136】
(その他の実施形態)
具体的な記述に繋げてこの発明を記載してきたが、先の記述は説明を意図するものであって、付属する請求項の範囲によって定義される本発明の範囲を制限するものではない。他の種類、利点、並びに変法は以下の請求項の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】ニワトリCAMアッセイにて定量化した、L−T4並びにL−T3の新脈管形成に対する影響。A.コントロール試料はPBSに暴露し、別の試料を1 nM のT3あるいは0.1μmol/LのT4に3日間暴露した。これらの3回の実験の代表的な画像では、双方のホルモンとも血管分枝の増加を引き起こした。B.各々9回のCAMアッセイを行った3回の実験の実験期間中に、既存の血管から形成された新たな血管分枝の平均値±SEMの表。記載した濃度にて、T3及びT4は同様の効果をもたらした(それぞれ1.9倍並びに2.5倍の分枝形成の増加。)。**P<0.001一方向分散分析による。ホルモン処理CAM試料とPBS処理CAM試料との比較。
【図2】テトラックはT4並びにアガロース結合T4(T4−ag)による新脈管形成の促進を抑制する。A.0.1μmol/LのT4に3日間暴露した典型的なCAM調製物では、血管分枝形成の25倍増加が見られる。3回の同様の実験では、2.3倍の増加があった。このホルモンの影響は、これまでにT4の細胞膜作用を抑制することが示されているT4アナログのテトラック(0.1μmol/L)によって抑制される。13テトラック単独では新脈管形成を促進しない(C)。B.T4−ag(0.1μmol/L)は新脈管形成を2.3倍促進し(3回の実験で2.9倍)、効果はこれもテトラックによって阻害される。C.CAM分析にてテトラック並びにT4−ag、T4の作用を調べる3回の実験の結果をまとめたもの。データ(平均値±SEM)は3回の実験ごとの、各実験条件に対し10の画像から得た。**P<0.001一方向分散分析による。T4処理した試料並びにT4−アガロース処理した試料とPBS処理したコントロール試料との比較。
【図3】FGF2及びT4の新脈管形成促進効果の比較。A.CAMアッセイにおいて、最高下濃度でのT4(0.05μmol/L)及びFGF2(0.5μg/mL)の連結効果は相加的であり、FGF2(T4がない状態で1μg/mL)で見られた新脈管形成と同程度である。B.Aと同様、CAMアッセイにてFGF2及びT4の作用を調べる3回の実験の結果をまとめたもの(平均値±SEM)。*P<0.05、**P<0.001。3回の実験において、処理した試料の結果とPBS処理したコントロール試料の結果との比較。
【図4】T4あるいは外生FGF2によって引き起こさせる新脈管形成に対する抗FGF2の影響。A.3回の実験にて、FGF2によってCAMモデル内の新脈管形成が2倍に増加し、効果はFGF2に対する抗体(ab)(8μg)によって抑制された。また、T4は新脈管形成を1.5倍に促進し、この効果もFGF2抗体によって阻害された。CAMモデルにおいてT4並びにT3は細胞からのFGF2の放出を引き起こすため、これはCAMモデルにおける甲状腺ホルモンの作用がFGFの自己分泌/パラ分泌効果によって仲介されていることを示唆している(表1)。我々はこれまでに、CAMアッセイにて非特異的IgG抗体は新脈管形成に影響を与えないことを示している。B.FGF2あるいはT4存在下でFGF2−abの作用を調べた3回のCAM実験の結果をまとめたもの。*P<0.01、**P<0.001。甲状腺ホルモン並びにFGF2の新脈管形成に対する影響とFGF2に対する抗体存在下でのこれらの影響の失活を調べる3回の実験から、著しい効果が示された。
【図5】PD98059、MAPK(ERK1/2)シグナル伝達カスケード抑制剤の、T4、T3並びにFGF2によって誘発される新脈管形成に対する影響。A.T4(0.1μmol/L)及びT3(1 nmol/L)双方によって促進された新脈管形成は、PD98059(3μmol/L)によって完全に阻害された。B.また、FGF2(1μg/mL)によって誘発された新脈管形成もPD98059によって抑制された。これは成長因子の作用もまたERK1/2経路の活性化に依存していることを示している。T4が細胞膜で新脈管形成促進効果を発動することを示す、T4−アガロース(T4−ag)及びテトラック(図2)が関係する実験状況において、A及びBで示す結果は甲状腺ホルモンの新脈管形成促進作用におけるMAPKの2つの役割に一致する。RK1/2は、FGF2の生成を導くホルモンの初期シグナルを変換し、また続くFGF2の新脈管形成に対する作用を変換する。C.A及びBによって代表される3回の実験結果をまとめたもの。これはCAMモデルにおけるT4及びFGF2の作用に対するPD98059の影響を示す。*P<0.01、**P<0.001。3回の実験の結果についての分散分析の結果を示す。
【図6】T4及びFGF2は、ECV304内皮細胞においてMAPKを活性化する。0.25%のホルモン除去血清を加えたM199培地に細胞を調製し、T4(0.1μmol/L)で15分から6時間処理した。細胞を回収し、以前に記載したとおりに核分画を調製した。ゲル電気泳動で分離した核タンパク質を、リン酸化MAPK(pERK1並びにpERK2、それぞれ44kDa並びに42kDa)に対する抗体で、次いで蛍光検出系へ繋がる二次抗体で免疫ブロットした。核分画のβアクチンの免疫ブロットを、この図の各部分に流し込むゲルに対するコントロールとした。各免疫ブロットは3回の実験の典型である。A.T4はECV304細胞において、リン酸化の増加とERK1/2の核への移行を引き起こす。この効果は6時間以上続くが、30分で最大となる。B.ECV304細胞をERK1/2活性化阻害剤PD98059(PD;30μmol/L)あるいはPKC阻害剤CGP41251(CGP;100nmol/L)で30分処理し、記載したようにその後10−7MのT4を15分間細胞試料に加えた。核を回収した。これの典型的な実験は、T4によってERK1/2のリン酸化(活性化)が増加することを示しており(第4レーン)、これは双方の阻害剤で阻害される(第5レーン及び第6レーン)。これは内皮細胞において、T4によるMARKの活性化にPKC活性が必要であること示唆している。C.ECV304細胞をT4(10−7mol/L)あるいはFGF2(10ng/mL)、もしくは両方の薬剤で15分間処理した。この図は、ホルモンあるいは成長因子による処理によってpERK1/2が核に蓄積し、さらに両方の薬剤を共に処理すると核のpERK1/2蓄積が増大することを示している。
【図7】ECV304内皮細胞において、T4はFGF2 cDNAの蓄積を増加させる。細胞をT4(10−7mol/L)及び各細胞部分標本から単離したFGF2 cDNA及びGAPDH cDNAで、6時間から48時間処理した。上部のブロットで示すFGF2 cDNA量は、下部ブロットで示すGAPDH cDNA含量の差に関して補正してあり、FGF2濃度の補正は、グラフの下で説明している(平均値±平均値SE;n=2回の実験)。全ての時点においてT4で処理した細胞から抽出したFGF2RNA転写物量は増加した。*P<0.05、**P<0.001。分散分析による、各時点の値のコントロール値に対する比較を示す。
【図8】7日目ニワトリ胚腫瘍増殖モデル。腫瘍移植組織から成るニワトリしょう尿膜(CAM)モデルの説明。
【図9】T4は3D創傷治癒を促進する。この明細で記載される3D創傷治癒アッセイに従ってT4を暴露したヒト皮膚繊維芽細胞及びコントロールの写真。
【図10】T4投与量依存的な創傷治癒の上昇、3日目。グラフで示すように、T4は0.1μMと1.0μMの濃度の間で、投与量に依存して創傷治癒(外へ出る細胞数によって測定する。)を上昇させる。これと同じ上昇は、1.0μMと3.0μMの間の濃度のT4では見られない。
【図11】精製インテグリンへのI−125−T4結合に対する、非標識T4並びにT3の影響。非標識T4(10−4Mから10−11M)もしくはT3(10−4Mから10−8M)を、精製したαVβ3インテグリン(2μg/サンプル)に加え、常温で30分間インキュベートした。各試料に2マイクロキュリーのI−125標識T4を加えた。この試料を常温で20分間インキュベートし、染色液と混合して、4℃で24時間、5%ネイティブゲル、45mÅで泳動した。電気泳動後、このゲルを樹脂ラップで包み、フィルムに露光した。精製したαVβ3へのI−125−T4の結合は、10−11Mから10−7Mの範囲では非標識T4に影響されなかったが、10−6Mの濃度では、非標識T4によって投与量に依存して競合的に排除される。インテグリンに結合する放射性標識したT4は、10−4Mの非標識T4によってほぼ完全に置換される。T3はαVβ3に結合するT4を競合的に排除する効果が小さく、T3が10−6M並びに10−5M、10−4Mの時それぞれ11%並びに16%、28%シグナルを減少させる。
【図12】テトラック及び含RGDペプチドは精製したαVβ3へ結合するT4を競合的に排除するが、含RGEペプチドは競合的に排除しない。A)精製したαVβ3にテトラックを加えると、投与量に依存してこのインテグリンに結合するI−125−標識T4が減少する。10−8Mのテトラックでは、このインテグリンに結合する放射性標識T4の競合的排除に影響しない。T4とαVβ3との会合は、10−7Mのテトラック存在下で38%減少し、10−5Mのテトラックでは90%減少した。10−5M のRGDペプチドは、αVβ3へ結合するT4を競合的に排除する。RGDペプチドに対するコントロールとなるRGEペプチドを10−5M並びに10−4M加えても、精製したαVβ3に結合する放射性標識T4を減らすことはできなかった。B)図Aのテトラック及びRGDのデータのグラフ表示。データ箇所は3回の独立した実験に対する平均値±S.D.として示してある。
【図13】αVβ3に結合するT4に対する、モノクローナル抗体LM609の影響。A)記載した濃度でLM609をαVβ3に加えた。一試料当たり1μgのLM609によって、このインテグリンに結合するI−125−標識T4が52%減少する。このインテグリンに結合するT4への阻害は、LM609の濃度が1試料当たり2μgの時に最大に達し、抗体濃度が8μgまで最大阻害が維持される。抗体特異性に対するコントロールとして、T4と共にインキュベートする前に、10μg/サンプルのCox−2 mAB及び10μgのマウスIgGをαVβ3に加えた。B)図Aのデータのグラフ表示。データ箇所は3回の独立した実験に対する平均値±S.D.として示してある。
【図14】T4誘発MAPK活性化に対するRGD並びにRGE、テトラック、mAb LM609の影響。A)CV−1細胞(周密度50〜70%)を10−7MのT4で30分間処理した。(全濃度10−7M、遊離濃度10−10M)。T4を加える前に、選択した試料を記載した濃度の含RGDペプチドあるいは含RGEペプチド、テトラック、LM609のいずれかで16時間処理した。SDS−PAGEによって核タンパク質を分離し、抗リン酸化MAPK(pERK1/2)抗体で免疫ブロットした。10−6M以上のRGDペプチドで処理した試料では、pERK1/2の核への蓄積が減少するが、10−4MのRGEで処理した試料では、有意な変化はない。10−6Mのテトラックで処理したCV1細胞では、pERK1/2の蓄積が76%減少し、10−5M以上の濃度のテトラックは処理をしないコントロール試料と同程度にpERK1/2の蓄積を減少する。αVβ3に対するモノクローナル抗体LM609を1μg/mlの濃度でCV1培養物に加えると、核内の活性化MAPKの蓄積が減少する。B))図AのRGD及びRGE、テトラックのデータのグラフ表示。データ箇所は3回の独立した実験に対する平均値±S.D.として示してある。
【図15】T4誘発MAPK活性化に対する、αV及びβ3のsiRNAの影響。CV1細胞に、αV、β3、もしくはαV及びβ3の双方に対するsiRNA(最終濃度100nM)を移入した。移入後2日間、細胞を10−7MのT4で処理した。A)各siRNAの特異性及び機能性を確認するため、各移入グループから単離したRNAでRT−PCRを行った。B)各移入グループから核タンパク質を単離して、SDS−PAGEを行った。
【図16−1】CAMモデルにおけるT4誘発新脈管形成に対するαVβ3 mAB(LM609)の阻害効果。A)試料をPBS、もしくはT4(0.1μM)、T4及び10mg/mlのLM609に3日間暴露した。T4によって促進される新脈管形成は、αVβ3モノクローナル抗体LM609を加えることによって実質的に抑制された。B)実験期間中に既存の血管から形成された新たな分枝の平均値±SEMを示した表。データは3回の別個の実験から得たもので、各処理グループに9つの試料がそれぞれ含まれる。C、D)T4あるいはFGF2によって促進される新脈管形成も、αVβ3モノクローナル抗体LM609あるいはXT199を加えることによって抑制される。
【図16−2】CAMモデルにおけるT4誘発新脈管形成に対するαVβ3 mAB(LM609)の阻害効果。A)試料をPBS、もしくはT4(0.1μM)、T4及び10mg/mlのLM609に3日間暴露した。T4によって促進される新脈管形成は、αVβ3モノクローナル抗体LM609を加えることによって実質的に抑制された。B)実験期間中に既存の血管から形成された新たな分枝の平均値±SEMを示した表。データは3回の別個の実験から得たもので、各処理グループに9つの試料がそれぞれ含まれる。C、D)T4あるいはFGF2によって促進される新脈管形成も、αVβ3モノクローナル抗体LM609あるいはXT199を加えることによって抑制される。
【図16−3】CAMモデルにおけるT4誘発新脈管形成に対するαVβ3 mAB(LM609)の阻害効果。A)試料をPBS、もしくはT4(0.1μM)、T4及び10mg/mlのLM609に3日間暴露した。T4によって促進される新脈管形成は、αVβ3モノクローナル抗体LM609を加えることによって実質的に抑制された。B)実験期間中に既存の血管から形成された新たな分枝の平均値±SEMを示した表。データは3回の別個の実験から得たもので、各処理グループに9つの試料がそれぞれ含まれる。C、D)T4あるいはFGF2によって促進される新脈管形成も、αVβ3モノクローナル抗体LM609あるいはXT199を加えることによって抑制される。
【図17】甲状腺ホルモンアナログの重合体組成物−ポリビニルアルコールを使用するエステル結合を介する重合体結合。この調製法では、市販のポリビニルアルコール(もしくは関連する共重合体)を、甲状腺ホルモンアナログの酸塩化物、即ちこれの酸塩化物形態で処理することによってエステル化することができる。様々なアナログに関して、甲状腺ホルモンエステル重合形態物の沈殿上で、水で洗い流すことができる塩酸トリエチルアミンとなるトリエチルアミンを加えると、この塩酸塩は中和される。この重合体へのエステル結合は生体内で加水分解され、活性型新脈管形成促進甲状腺ホルモンアナログを遊離させることができる。
【図18】甲状腺ホルモンアナログの重合体組成物−アクリル酸エチレン共重合体を使用する無水結合を介する重合体結合。これは先の重合体共有結合と似るが、こちらではアクリル酸共重合体の反応に由来する無水結合が介している。またこの無水結合は、生体内で加水分解されて甲状腺ホルモンアナログを遊離することができる。塩酸の中和は、トリエチルアミンで処理することで達成され、次いで沈殿したポリ無水物重合体を水で洗浄することで副産物である塩酸トリエチルアミンを除去する。この反応によって甲状腺ホルモンアナログアクリル酸共重合体+トリエチルアミンが生成することとなる。生体内での加水分解によって、甲状腺ホルモンアナログとアクリル酸エチレン共重合体とが時間と共に遊離することとなり、これは調節することができる。
【図19】甲状腺ホルモンアナログの重合体組成物−ポリ乳酸重合体内への封入。ポリ乳酸ポリエステル重合体(PLA)は、生体内で加水分解されて乳酸単量体となるものであり、これはヒトの薬剤送達系のための送達担体として開発されている。甲状腺ホルモンアナログが化学結合によって重合体に結合する先の2つの共有結合法と異なり、これは、甲状腺ホルモンアナログをPLAポリマービーズ内にカプセル化する非共有結合と考えられる。この反応によって、水中でPLAビーズを含有する甲状腺ホルモンアナログが形成されることとなる。ろ過及び洗浄によってPLAビーズを含有する甲状腺ホルモンアナログが形成され、生体内での加水分解によって調節された濃度の甲状腺ホルモンと乳酸とが生成されることとなる。
【図20−1】様々なポリマーと結合可能な甲状腺ホルモンアナログ。A〜Dは、結合して本発明の甲状腺ホルモンアナログの重合形態物を形成することができる様々な甲状腺ホルモンアナログを得るために必要な置換基を示す。
【図20−2】様々なポリマーと結合可能な甲状腺ホルモンアナログ。A〜Dは、結合して本発明の甲状腺ホルモンアナログの重合形態物を形成することができる様々な甲状腺ホルモンアナログを得るために必要な置換基を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新脈管形成を促進することによって処置に対して影響を受けやすい状態を処置する方法であって、該方法は、処置を必要としている被験体に、該被験体において新脈管形成を促進するために有効な量の甲状腺ホルモン、甲状腺ホルモンアナログ、またはそれらの重合体形態を投与する工程を包含する、方法。
【請求項2】
前記新脈管形成を促進することによって処置に対して影響を受けやすい状態が、閉塞性血管疾患、冠状動脈疾患、勃起不全、心筋梗塞、虚血、脳卒中、末梢動脈血管障害、および創傷からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記甲状腺ホルモンまたはアナログが、ポリビニルアルコール、アクリル酸エチレンコポリマー、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ乳酸、およびアガロースからなる群より選択されるメンバーと結合体化される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記甲状腺ホルモンアナログが、レボサイロキシン(T4)、トリヨードサイロニン(T3)、3,5−ジメチル−4−(4’−ヒドロイ−3’−イソプロピルベンジル)−フェノキシ酢酸(GC−1)、または3,5−ジヨードサイロプロピオン酸(DITPA)である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記甲状腺ホルモン、甲状腺ホルモンアナログ、またはそれらの重合体形態の投与の様式が、非経口、経口、経直腸、局所、またはこれらの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記非経口投与が、皮下、腹腔内、筋肉内、静脈内、またはこれらの組み合わせである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記甲状腺ホルモン、甲状腺ホルモンアナログ、またはこれらの重合体形態が、微粒子、リポソーム、もしくはポリマー中にカプセル化されているか、またはこれらに組み入れられている、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマーが、ポリグリコリド、ポリ乳酸、またはこれらのコポリマーである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記リポソームまたは微粒子が、約200nm未満の大きさを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記リポソームまたは微粒子が、静脈内投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記リポソームまたは微粒子が、虚血性組織の周囲の毛細血管床に提供される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記甲状腺ホルモン、甲状腺ホルモンアナログ、またはこれらの重合体形態が、カテーテルを介して投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記甲状腺ホルモン、甲状腺ホルモンアナログ、またはこれらの重合体形態が、前記カテーテルを介して血管の内側に適用される重合体系の中に存在する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記甲状腺ホルモン、甲状腺ホルモンアナログ、またはこれらの重合体形態が、増殖因子、血管拡張薬、抗血液凝固薬、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される1以上の化合物と共に同時投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記増殖因子が、トランスフォーミング増殖因子α(TGFα)、トランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)、塩基性線維芽細胞増殖因子、血管内皮増殖因子、上皮増殖因子、神経成長因子、血小板由来成長因子、および血管透過性因子からなる群より選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記血管拡張薬が、アデノシン、アデノシン誘導体、またはこれらの組み合わせである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記抗血液凝固薬が、ヘパリン、ヘパリン誘導体、抗第Xa因子、抗トロンビン、アスピリン、クロピドグレル、またはこれらの組み合わせである、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記甲状腺ホルモン、甲状腺ホルモンアナログ、またはこれらの重合体形態が、前記増殖因子、血管拡張薬、抗血液凝固薬、もしくはこれらの組み合わせを投与する前または後に、ボーラス注入として投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
医療用デバイスに沿ってか、または医療用デバイスの周りでの新脈管形成を促進するための方法であって、該方法は、該デバイスを患者に挿入する前に、甲状腺ホルモン、甲状腺ホルモンアナログ、またはこれらの重合体形態により該デバイスをコーティングする工程を包含する、方法。
【請求項20】
前記コーティングする工程が、増殖因子、血管拡張薬、抗血液凝固薬、またはこれらの組み合わせにより前記デバイスをコーティングする工程をさらに包含する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記医療用デバイスが、ステント、カテーテル、カニューレ、または電極である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
新脈管形成を阻害することによって処置に対して影響を受けやすい状態を処置するための方法であって、該方法は、処置を必要としている被験体に、該被験体において新脈管形成を阻害するのに有効な量の抗新脈管形成剤を投与する工程を包含する、方法。
【請求項23】
前記新脈管形成を阻害することによって処置に対して影響を受けやすい状態が、原発性腫瘍または転移性腫瘍、および糖尿病性網膜症からなる群より選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記抗血液凝固剤が、テトラヨードサイロ酢酸(TETRAC)、トリヨードサイロ酢酸(TRIAC)、モノクローナル抗体LM609、XT 199またはこれらの組み合わせである、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記抗新脈管形成剤の投与の様式が、非経口、経口、経直腸、局所、またはこれらの組み合わせである、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記抗新脈管形成剤が、1以上の他の抗新脈管形成治療または化学治療剤と共に同時投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記抗新脈管形成剤が、細胞表面において作用する、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
甲状腺ホルモンまたはそのアナログを含む、新脈管形成剤。
【請求項29】
ポリマーに結合体化された甲状腺ホルモンまたはそのアナログを含む、新脈管形成剤。
【請求項30】
前記アナログが、図20の表A−Dに列挙される化合物から選択される、請求項29に記載の新脈管形成剤。
【請求項31】
前記甲状腺ホルモンアナログが、レボサイロキシン(T4)、トリヨードサイロニン(T3)、3,5−ジメチル−4−(4’−ヒドロイ−3’−イソプロピルベンジル)−フェノキシ酢酸(GC−1)、または3,5−ジヨードサイロプロピオン酸(DITPA)である、請求項29に記載の新脈管形成剤。
【請求項32】
前記ポリマーが、ポリビニルアルコール、アクリル酸エチルコポリマー、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ乳酸、またはアガロースである、請求項29に記載の新脈管形成剤。
【請求項33】
前記結合体化は、共有結合または非共有結合を介する、請求項29に記載の新脈管形成剤。
【請求項34】
前記共有結合が、エステル結合または無水物結合である、請求項33に記載の新脈管形成剤。
【請求項35】
薬学的に受容可能なキャリア中に請求項29に記載の新脈管形成剤を含む、薬学的処方物。
【請求項36】
1以上の薬学的に受容可能な賦形剤をさらに含む、請求項35に記載の薬学的処方物。
【請求項37】
前記薬剤が、微粒子、リポソーム、もしくはポリマー中にカプセル化されるか、またはこれらに組み入れられている、請求項35に記載の薬学的処方物。
【請求項38】
前記リポソームまたは微粒子が、200nm未満の大きさを有する、請求項37に記載の薬学的処方物。
【請求項39】
前記処方物が、非経口、経口、経直腸、もしくは局所の投与様式、またはこれらの組み合わせを有する、請求項35に記載の薬学的処方物。
【請求項40】
前記処方物が、増殖因子、血管拡張薬、抗血液凝固薬、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される1以上の化合物と共に、これらを必要としている被験体に同時投与される、請求項35に記載の薬学的処方物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16−1】
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【図16−2】
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【図16−3】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20−1】
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【図20−2】
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【公表番号】特表2007−505837(P2007−505837A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526439(P2006−526439)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/030583
【国際公開番号】WO2005/027895
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(506087026)オードウェイ リサーチ インスティテュート (4)
【Fターム(参考)】