説明

甲状腺ホルモン変換阻害剤の使用法

本発明は、過剰増殖性皮膚障害を処置するための甲状腺ホルモン変換阻害剤の使用に対するものであり、好ましくは局所混和物におけるその使用に対するものである。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本出願は、2004年9月1日に提出された仮出願、米国特許出願第60/606,481号、の米国特許法第119条(e)の下での恩典を主張する。
【0002】
本発明は、過剰増殖性皮膚障害を処置するための甲状腺ホルモン変換阻害剤の使用に関し、好ましくは局所用混和物におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
乾癬、魚鱗癬、癌、および皮膚ウイルス感染を含む、多くの疾患が、細胞の過剰増殖に関連する。例えば、乾癬はケラチノサイトの過剰増殖および分化不全を特徴とする慢性炎症性疾患である。
【0004】
乾癬は、世界の人口の1〜2パーセントまでを冒している、最も一般的な皮膚疾患の1つである。それは、銀色に輝く雲母のような鱗屑で覆われた、紅斑性で、境界が極めて明確な丘疹および円形のプラークを特徴とする。乾癬の皮膚病変は、痒みにむらがある。外傷を受けた部分はしばしば、乾癬の病変を発生させる。さらに、感染、ストレス、ならびに例えば、リチウム、β遮断薬、および抗マラリア薬などの薬物を含む、その他の外的要因によって、乾癬が悪化することがある。
【0005】
最も一般的な乾癬の種類は、プラーク型と呼ばれている。プラーク型の乾癬のある患者は、長い期間、基本的には変化しないままでいる、安定で、ゆっくりと成長するプラークを有することになる。プラーク乾癬が生じる最も一般的な部分は、肘、膝、殿裂、および頭皮である。波及は左右対称になる傾向がある。逆位乾癬(inverse psoriasis)は、腋窩、鼠径部、乳腺下、および臍を含む間擦部を冒し、かつそれはまた、頭皮、手のひら、および足の裏を冒す傾向がある。個々の病変は境界が極めて明確なプラークであるが、その場所により湿っていることがある。プラーク型の乾癬は通常ゆっくりと発生し、かつゆっくりと進行する経過をたどる。それが自然に寛解することはめったにない。
【0006】
発疹性乾癬(滴状乾癬)は子供および若い成人で最も一般的である。それは、以前に乾癬のない個人または慢性プラーク乾癬のある個人で急性に発生する。患者は、β溶血性連鎖球菌の上気道感染の後にしばしば、多くの小さい、紅斑性の、落屑する丘疹を有する。乾癬のある患者はまた、膿疱性の病変を発生させることがある。これらは手のひらおよび足の裏に局在することがあり、または全身に拡大することがあり、ならびに熱、倦怠感、下痢、および関節痛と関連することがある。
【0007】
乾癬に対する既存の治療は、疾患の主要な組織病理学的構成要素を標的としている。乾癬は、(正常なBcl-2の代わりに)Bcl-xを過剰産生し、それによってアポトーシスに抵抗するケラチノサイトの過剰増殖をもたらす、Tリンパ球の活性化、増殖、およびサイトカイン放出を刺激する未知の因子によって引き起こされる。乾癬の皮膚症状発現を媒介する細胞は主に表皮に、または真皮と表皮の中間相に存在する。少数のCD4T-細胞が病変の皮膚に存在することがあるが、大多数の細胞は、インターロイキン-2およびインターフェロン-γなどのサイトカインを分泌するCD8リンパ球である。これらのサイトカインは、冒された皮膚におけるケラチノサイトおよび微小血管の内皮細胞の増殖を促進する。乾癬の病変におけるケラチノサイトが、目の詰まった保護的な角質層へと正常に分化することはなく、これらの細胞が正常ケラチノサイトのようにアポトーシスを受けることもない。これは、乾癬のケラチノサイトが、IFN-γの効果のために、Bcl-xを含むからである。Bcl-xはFasを介するアポトーシスのタンパク質を防御する。Bcl-2を含む正常細胞は、Fasを介するアポトーシスを起こしやすい。
【0008】
疾患の主要な組織病理学的構成要素を標的とするために、様々な異なるアプローチが取られてきた。例えば、広範な免疫抑制またはT-リンパ球特異的な免疫抑制が、UVB、シクロスポリン、メトトレキサート、局所ステロイド、およびその他の免疫抑制様式(modalities)による処置によって達成されている。ケラチノサイトの終末分化は、カルシポトリエンおよびサリチル酸によって標的とされている。レチノイドは免疫抑制およびケラチノサイトの終末分化の両方を標的とする。
【0009】
局所的処置が、中度から重度の乾癬のある患者において、その他の療法の補助として使用されてきた。限定的な乾癬から中度の乾癬のある個人において、彼ら自身によるそのような典型的処置で十分であることがある。典型的な局所療法には、コールタール調製(1〜5重量%)が含まれる。これは最も頻繁に使用される局所療法であるが、コールタールは悪臭を有し、および衣服を汚す。T細胞には毒性があるが、皮膚細胞には毒性がないので、コールタールは乾癬に対して効果的であると考えられている。しかしながら、上で議論したように、それは中度またはより高度の状態の乾癬のある個人において、それ自身限られた有用性しか持たない。
【0010】
別のタイプの局所療法はステロイドを含むが、(ヒドロコルチゾンよりも効果的である)フッ化コルチコステロイドの長期使用は、線条、毛細血管拡張症、および斑状出血をもたらす可能性がある。局所用アントラリンクリーム(1%)もしくは1%サリチル酸を含む石油中の高用量/短期間のアントラリンは効果的であることがあり、または局所用合成レチノイドのタザロテンも短期的な緩和を与えることがある。しかしながら、これらの成分はしばしば刺激性があり、およびその他の望ましくない副作用を引き起こす可能性がある。
【0011】
別のタイプの局所療法は、例えば、米国特許第3,934,028号(特許文献1);第3,966,967号(特許文献2);第4,021,573号(特許文献3)、および第4,216,224号(特許文献4)における、レチノイドの使用である。しかしながら、レチノイドは、特に出産適齢期の女性において、望ましくない副作用を与える可能性もある。サリチル酸などの角質溶解剤が、乾癬プラークから分厚い鱗屑を除去する際に役立つ可能性がある一方、ビタミンD類似体(ビタミンD3またはカルシポトリオール)であるカルシポトリエンなどのその他の局所薬も、一時的な緩和を与えることがある。例えば、米国特許第4,483,845号(特許文献5)「Systemic Treatment of Psoriasis Using Certain Salicylates」を参照されたい。
【0012】
別のタイプの局所療法には、例えば、米国特許第5,310,742号(特許文献6)および米国刊行特許出願第2004/0116387号(特許文献7)における、チオウレイレンおよびチアベンダゾールが含まれる。例えば、プロピルチオウラシル(PTU)およびメチマゾール(MMI)を含む、この部類の抗甲状腺薬物は、甲状腺ホルモンの生合成に影響を及ぼし、免疫調節効果を示し、およびフリーラジカルを除去する際に機能する。PTUは、その免疫調節効果、例えば、IgMおよびIgGの産生低下、プラーク形成アッセイでの免疫グロブリン分泌細胞の活性低下、NK細胞活性の増強、全細胞およびサプレッサー/細胞障害性細胞の割合の増加ならびに活性化リンパ球の減少を根拠に、乾癬のある患者を処置するために使用されてきた。最近、乾癬の局所的処置におけるPTUの有用性が、レチノイン酸受容体およびビタミンD受容体を含むステロイド受容体スーパーファミリーのその他の受容体とのレチノインX受容体ヘテロ2量体形成が関与するメカニズムによる、抗増殖効果に起因する可能性があるということが示唆された。(Elias, Med. Hypotheses 62: 431-7 (2004)(非特許文献1))。しかしながら、これらの薬剤は、無顆粒球症、および軽度で、時々紫斑性の、よく見かける皮疹の発生を含む、重大な副作用と関連がある。アンタゴニストだけでなく、乾癬を処置するための、追加的な甲状腺ホルモン受容体アゴニストの使用も記載されてきた。例えば、米国特許出願第20040116387号(特許文献8)は受容体アゴニストの使用を記載しており、米国特許出願第20040097589号(特許文献9)、第20040039028号(特許文献10)、および第20030166724号(特許文献11)は、乾癬を含む障害を処置するための受容体アゴニストの使用を記載している。
【0013】
より重度の疾患のある患者では補助療法として使用される一方、その限られた有効性およびその使用に関連する副作用にもかかわらず、局所療法は中度の乾癬に対する処置の柱である。乾癬の改善のために利用される、異なった、時に毒性のある処置の数が、この疾患の抵抗性のある性質の証拠である。中度から重度の乾癬が局所的処置に対して比較的抵抗性があることだけでなく、その慢性および再発性の性質のためもあって、全身療法または放射線がしばしば必要とされる。この疾患の破壊的な性質は、乾癬に苦しむ人が、早かれ遅かれ再発することを彼らが知っている疾患に対して、寛解を達成するために我慢しても構わないという副作用の程度によって強調される。
【0014】
したがって、乾癬のための改善された処置に対する必要性が依然として存在する。
【0015】
【特許文献1】米国特許第3,934,028号
【特許文献2】米国特許第3,966,967号
【特許文献3】米国特許第4,021,573号
【特許文献4】米国特許第4,216,224号
【特許文献5】米国特許第4,483,845号
【特許文献6】米国特許第5,310,742号
【特許文献7】米国刊行特許出願第2004/0116387号
【特許文献8】米国特許出願第20040116387号
【特許文献9】米国特許出願第20040097589号
【特許文献10】米国特許出願第20040039028号
【特許文献11】米国特許出願第20030166724号
【非特許文献1】Elias, Med. Hypotheses 62: 431-7 (2004)
【発明の開示】
【0016】
発明の概要
驚くべきことに、本発明者らは、脱ヨード酵素阻害剤などの甲状腺ホルモン変換阻害剤が表皮の増殖を阻害することを発見した。したがって、本発明は、過剰増殖性皮膚障害の処置のためを含む、甲状腺プロホルモン、T4の、甲状腺ホルモン、T3への変換を局所的に阻害するための組成物および方法を提供する。
【0017】
ある態様において、本発明は、その活性成分として過剰増殖性皮膚障害の処置のための甲状腺ホルモン変換阻害剤を含む局所用組成物を提供する。ある態様において、阻害剤は脱ヨード酵素阻害剤である。より具体的には、本発明は、甲状腺ホルモン変換阻害剤を含む薬学的組成物のための組成物および方法を提供する。好ましくは、甲状腺ホルモン変換阻害剤は、ヨード造影薬剤、例えば、イオパノ酸(IOP)および/またはその類似体などの脱ヨウ素酵素阻害剤である。
【0018】
本発明は、甲状腺プロホルモン、T4の、甲状腺ホルモン、T3への変換の阻害剤、および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む薬学的組成物を提供する。ある好ましい甲状腺ホルモン変換阻害剤はイオパノ酸である。好ましくは、リポソームクリームを含む、担体または希釈剤は、局所投与用である。
【0019】
本発明の薬学的組成物は、過増殖性皮膚障害の局所的処置に有用である。ある好ましい過増殖性皮膚障害は乾癬である。その他の過増殖性皮膚障害には、尋常性座瘡、酒さ性座瘡、光線性角化症、日光性角化症、扁平上皮内癌、魚鱗癬、角質増殖症、ダリエー病などの角質化の障害、掌蹠角皮症、毛孔性紅色粃糠疹、表皮母斑様症候群(epidermal naevoid syndromes)、変異性紅斑角皮症、表皮剥離性角質増殖症、非水疱型魚鱗癬様紅皮症、皮膚エリテマトーデスおよび扁平苔癬、乾癬、尋常性座瘡、または癌が含まれる。
【0020】
好ましくは、本発明の組成物の局所投与は、対象において、甲状腺ホルモンのレベルの局部的な低下を可能にするが、甲状腺ホルモンの全身レベルを著しくは変化させない。
【0021】
発明の詳細な説明
驚くべきことに、本発明者らは、脱ヨード酵素阻害剤などの甲状腺ホルモン変換阻害剤が表皮の増殖を阻害することを発見した。したがって、本発明は、過剰増殖性皮膚障害の処置のためを含む、甲状腺プロホルモン、T4の、甲状腺ホルモン、T3への変換を局所的に阻害するための組成物および方法を提供する。
【0022】
ヒトにおける代謝を調節する際の甲状腺ホルモンの広範な役割が十分に理解されている。甲状腺ホルモンは、身体のほとんど全ての細胞の代謝に影響を及ぼす。正常なレベルでは、これらのホルモンが、体重、代謝率、体温、および気分を維持し、ならびに血清低密度リポタンパク質(LDL)のレベルを左右する。甲状腺機能低下症では、体重増加、高レベルのLDLコレステロール、およびうつが見られる。甲状腺機能亢進症では、これらのホルモンは、体重減少、代謝亢進、血清LDLレベルの低下、心不整脈、心不全、筋力低下、閉経後の女性における骨量減少、および不安をもたらす。
【0023】
主要な循環甲状腺ホルモンは、プロホルモン、T4である。活性甲状腺ホルモンは、甲状腺プロホルモン、T4の、甲状腺ホルモン、T3への変換によって生成される。多くの個々の組織は、それら自身の甲状腺脱ヨード酵素を発現し、および局部的なT4の、活性甲状腺ホルモン、T3への変換に依存している。本発明者らはこれまでに、表皮の成長が甲状腺ホルモンに依存することおよびT3の局所投与が局部的な表皮の増殖を著しく刺激することができることを発見している。
【0024】
本発明者らは今回、甲状腺プロホルモン、T4の、甲状腺ホルモン、T3への変換を阻害することによって、表皮細胞の増殖が阻害されることを発見した。したがって、本発明は、脱ヨード酵素、例えば、イオパノ酸(IOP)などの、甲状腺ホルモン変換阻害剤の使用のための組成物および方法を提供する。ある態様は、乾癬を含む、過剰増殖性皮膚障害の処置のための甲状腺ホルモン変換阻害剤の局所投与を提供する。
【0025】
本発明の甲状腺ホルモン変換阻害剤は、好ましくは、プロピルチオウラシル(PTU)および、甲状腺プロホルモン、T4の、甲状腺ホルモン、T3への変換を阻害するグルココルチコイド以外の薬剤を含む。化合物が甲状腺プロホルモンの甲状腺ホルモンへの変換を阻害する能力は、標準的なアッセイを用いて、インビトロで簡単に決定することができる。特定の化合物は、異なる濃度で、阻害に対する異なる効果を有する。
【0026】
甲状腺ホルモン変換阻害剤は、当技術分野において周知である。甲状腺ホルモン変換阻害剤の例として、イオパノ酸およびイポダートなどのヨード含有造影薬剤、アミオダロン、ヒドロコルチゾンおよびデキサメタゾンなどのグルココルチコイド、プロピルチオウラシル、ならびにプロパノロール、ならびにそれらの類似体が含まれるが、これらに限定されない。阻害剤は、PTUまたはグルココルチコイドではないことが好ましい。
【0027】
ある好ましい態様において、甲状腺ホルモン変換阻害剤は、ヨード造影剤として使用される薬剤である。本発明のヨード造影剤は時に、ヨード造影剤または造影剤またはコレグラフィック(cholegraphic)剤と呼ばれる。ヨード造影剤には、水溶性の肝指向性造影剤;水溶性の腎指向性高浸透圧性造影剤;水溶性の腎指向性低浸透圧性造影剤;および非水溶性の造影剤が含まれるが、これらに限定されない。ある好ましい態様において、薬剤は、水溶性の肝指向性X線造影剤である。水溶性の肝指向性媒体には、ヨードキサム酸;イオトロクス酸;イオグリカム酸;アジピオドン;イオベンザム酸;イオパノ酸;イオセタム酸;イオポダートナトリウム;チロパノ酸;およびイオポダートカルシウムが含まれるが、これらに限定されない。水溶性の腎指向性高浸透圧性X線造影剤には、ジアトリゾ酸;メトリゾ酸;ヨーダミド;イオタラム酸;イオキシタラム酸;イオグリシン酸;アセトリゾ酸;イオカルム酸;メチオダール;およびジオドンが含まれるが、これらに限定されない。水溶性の腎指向性低浸透圧性X線造影剤には、メトリザミド;イオヘキソール;イオキサグル酸;イオパミドール;イオプロミド;イオトロラン;イオベルソール;イオペントール;イオジキサノール;イオメプロール;イオビトリドール;およびイオキシランが含まれるが、これらに限定されない。非水溶性のX線造影剤には、ヨード化脂肪酸のエチルエステル;イオピドール;プロピリオドン;およびイオフェンジラートが含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
特に好ましい造影薬剤は、イオパノ酸(Telepaque、Cistobil、Colegraf、Felombrine、およびJopanonsyreを含むその商標名としても一般に公知である)ならびにイポダート(orgrafinとしても公知である)である。イポダートナトリウムは、造影薬剤として、0.5〜3グラム/日で成人に投与する。
【0029】
ある好ましい態様において、甲状腺ホルモン変換阻害剤は、アミオダロンである。
【0030】
ある好ましい態様において、甲状腺ホルモン変換阻害剤は、プロパノロールである。160mg/日を越える、高用量のプロプラノロールは、T4のT3への変換を阻害する。エスモロールは、本発明の方法において使用され得る別の超短時間作用型のβ遮断薬である。本発明の方法において使用され得るその他のβ遮断薬には、グアネチジンおよびレセルピンが含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
局所に適用した場合にT4のT3への変換を阻害すると考えられる任意の量の薬剤を、本発明において使用することができる。0.1〜40%の薬剤を使用し、ある態様においては、少なくとも1%の薬剤を使用し、少なくとも5%の薬剤を使用することができ、別の態様においては、少なくとも10%の薬剤を使用することができる。しかしながら、5〜30%、10〜25%、10〜20%、および1〜40%までの全ての範囲などの様々な濃度を使用することができる。
【0032】
過剰増殖性障害
本発明の組成物は、過剰増殖を特徴とする任意の表皮障害の処置に有用である。好ましくは、本発明の組成物および方法は、皮膚細胞の増殖を阻害し、および皮膚細胞の分化を亢進させる。
【0033】
本発明の方法および組成物は、様々な過剰増殖性疾患の処置に有用である。特に、本発明の方法および組成物は、乾癬の処置にとりわけ有用である。しかしながら、前立腺癌細胞などの特定の癌細胞と同様に、(以下にさらに詳細に記載されるような)皮膚の過剰増殖性疾患を患っている患者の細胞も、多くの特性を互いに共有する可能性があることが理解されると思われる。
【0034】
一般に、本発明の方法および組成物を、増殖と分化の間の不均衡がある任意の疾患を患っている患者の症状を処置または緩和するために使用してもよい。例えば、細胞の分化または増殖の運命を調節する正常な制御に不全がある任意の状態を処置してもよい。そのような疾患は典型的に、正常では(すなわち、発生段階もしくは組織型によって)増殖しないもしくは増殖すべきでない、または対応する正常な細胞もしくは組織型が分化した状態にある時に分化しない、増殖する細胞または組織型が関与する。特定の態様において、方法および組成物は、過剰増殖性疾患、特に皮膚を冒す過剰増殖性疾患の処置等に好適である。新生物および癌も好適に処置し、ならびにその他の疾患および状態を以下に開示する。
【0035】
「抗増殖性」は、皮膚の過剰増殖性障害に対する有益な効果を生むために、炎症を軽減すること、表皮の増殖および角質化を遅らせることまたは正常化することを含むがこれらに限定されない、皮膚に対する効果を示すために本明細書において使用する。
【0036】
本発明の方法は、過剰増殖性細胞の増殖の減少、好ましくは、インビボ増殖の減少をもたらす。より好ましくは、細胞集団の増殖を、同様の未処置細胞集団と比べて、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、またはそれ未満にまで減少させる。最も好ましくは、増殖を0%にまで減少させる、すなわち、細胞が分裂を完全に停止する。
【0037】
本明細書において使用する場合、「増殖」という用語は、組織の成長をもたらす細胞分裂を意味するよう意図されている。増殖性細胞は活発に分裂し、およびDNA複製、有糸分裂、細胞分裂などのような細胞周期過程を経る。例えば、有糸分裂細胞などの目視検査で複製している細胞を検出するために、放射性ヌクレオチド3リン酸、トリチウム化されたチミジン、ブロモデオキシウリジンなどで放射性標識することによって増殖をアッセイし得る、様々な方法が公知である。増殖はまた、Ki-67などのマーカーの発現によって、または異なる条件下にある培養細胞の直接計数で細胞数の増加を決定することによって、アッセイしてもよい。増殖の減少をアッセイする好ましい方法は、分裂指数の測定によるものである。本明細書において使用する場合、「分裂指数」とは、所与の集団における、有糸分裂および/または細胞分裂を経ている細胞の割合を意味する。例えば、細胞周期期間の測定などの、その他のアッセイが可能である。
【0038】
本明細書において使用する場合、「過剰増殖」という用語は、その発生の段階および機能を所与として、ある細胞型に対して期待される増殖と比べて増加した増殖を意味する。
【0039】
本発明の非常に好ましい態様において、方法は、処置した細胞の集団の幾つかまたは全ての中で起こる細胞分化をもたらす。好ましくは、未処置細胞集団と比べて、10%またはそれより多くの過剰増殖性細胞集団が、本発明による処置の後に分化を経る。より好ましくは、この割合は20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、またはそれを上回る。最も好ましくは、細胞集団の90%、95%、または100%が分化を経る。
【0040】
「分化」とは、組織の特殊化していない細胞が特定の機能のために特殊化するようになる過程を指す。細胞の分化は、様々な方法で、例えば形態学的に、または当技術分野において公知であるような分化した細胞型に特異的なタンパク質マーカーの発現をアッセイすることによって、評価してもよい。例えば、K1ケラチンおよびK10ケラチンは、表皮ケラチノサイトの終末分化に対するコミットメントのマーカーであり、かつ細胞分化が起こる際に発現が増加する。K1ケラチンおよびK10ケラチンに加えて、例えば、K5、K14、K16、およびK17などの、その他のケラチンサブタイプを、異なる分化段階のマーカーとして使用してもよい。その他の非ケラチンマーカー、例えばEGF受容体およびβ1インテグリンを、細胞分化のマーカーとしてさらに使用してもよい。
【0041】
本発明の過剰増殖性皮膚障害は時に、皮膚増殖疾患、皮膚増殖障害、もしくは皮膚増殖状態、または皮膚増殖性疾患、皮膚増殖性障害、もしくは皮膚増殖性状態、または過剰増殖性疾患、過剰増殖性障害、もしくは過剰増殖性状態と称される。
【0042】
本発明の方法および組成物を用いて処置され得る過剰増殖性皮膚障害は、乾癬およびその様々な臨床型、尋常性座瘡、酒さ性座瘡、光線性角化症(日光性角化症--扁平上皮内癌)、魚鱗癬、角質増殖症、ダリエー病などの角質化の障害、掌蹠角皮症、毛孔性紅色粃糠疹、表皮母斑様症候群、変異性紅斑角皮症、表皮剥離性角質増殖症、非水疱型魚鱗癬様紅皮症、皮膚エリテマトーデス、扁平苔癬、ライター症候群、ならびに角質化の障害の過剰増殖性変異体含む。
【0043】
理論に束縛されることを望まないが、本発明の方法および組成物は、前立腺癌腫、良性前立腺肥大、脱毛症、座瘡、脂性肌、および多毛症を含むがこれらに限定されない、アンドロゲン受容体の活性化と関連する様々な疾患および状態の処置にも有用である。本発明の方法および組成物は、創傷治癒の速度を減速して瘢痕の質を高めることによる創傷治癒の処置にも有用である。
【0044】
本発明によれば、皮膚の過剰増殖性疾患、例えば、上に記載したような疾患と関連する任意の症状を示す患者を、IOPなどの甲状腺ホルモン変換阻害剤で処置することができる。そのような処置によって、疾患のある細胞の増殖の減少がもたらされる。阻害剤を、単独で、以下でより詳細に記載したような薬学的組成物の形で、患者に適用してもよい。皮膚の増殖性疾患のある宿主の処置の効果を、掻痒感の停止などの主観的な基準だけでなく、剥離および紅斑の改善、病変のサイズの減少などの客観的な基準によって評価してもよい。
【0045】
ある特に好ましい態様において、本発明の組成物および方法は、乾癬の症状の処置または緩和に好適である。乾癬はそれ自体、銀白色の鱗屑で覆われた、炎症を起こして膨張した皮膚病変として現れる。乾癬の特徴として、膿のような水疱(膿疱性乾癬)、皮膚の重度の剥脱(紅皮症の乾癬)、滴のような斑点(滴状乾癬)、および炎症を起こした平滑な病変(逆位乾癬)が含まれる。
【0046】
遺伝的要素のある自己免疫性皮膚障害として確立されてきたとはいえ、乾癬の原因は現在のところ不明である。3人中1人が乾癬の家族歴を報告しているが、遺伝のパターンはない。しかしながら、明白な本疾患の家族歴のない子供が乾癬を発生させる多くの事例がある。ある人が実際に乾癬を発生させるかどうかは、連鎖球菌性咽頭炎などの全身感染、皮膚の損傷(ケブネル現象)、ワクチン接種、ある種の投薬、および筋肉内注射または経口ステロイド投薬を含む「トリガー因子」に依存する可能性がある。ひとたび何かが乾癬を発生させる遺伝的傾向の引き金を引くと、今度は免疫系が過度の皮膚細胞再生産の引き金を引くと考えられている。
【0047】
乾癬は、2つの生物学的特質を特徴とする遺伝的に決定された皮膚の疾患である。第一に、加速したおよび不完全な分化と関連する深刻な表皮の過剰増殖がある。第二に、Tリンパ球の動員の増加、ならびに場合によっては好中球の微小膿瘍の形成を伴う表皮および真皮両方の著しい炎症である。乾癬の多くの病理学的特徴を、皮膚表面の0.2mmの範囲内で起こる、表皮細胞の増殖の増加を伴う、表皮ケラチノサイトの成長および成熟における変化に帰することができる。乾癬の病因に対する従来の調査は、表皮の増殖の増加および過形成に焦点を当ててきた。正常な皮膚では、細胞が基底層から移動して顆粒層を通過する時間は、4〜5週間である。乾癬の病変では、細胞周期時間の短縮、増殖する能力がある細胞の絶対数の増加、および実際に分裂している細胞の割合の増加のために、時間が7倍〜10倍減少する。過剰増殖的現象は、実質的により少ない程度までではあるが、乾癬患者の臨床的に罹患していない皮膚でも発現する。
【0048】
乾癬の一般的な形態である尋常性乾癬は、分厚い、銀色に輝く鱗屑で覆われた、境界が非常に明確な紅斑性のプラークを特徴とする。特徴的な所見は、新たな乾癬病変が皮膚外傷の部位に生じる、同形反応(ケブネル現象)である。
【0049】
病変はしばしば、四肢の伸側面に局在し、ならびに爪および頭皮も一般的に罹患する。それほど一般的でない形態として、連鎖球菌性咽頭炎の後にしばしば発生する疾患の形態である滴状乾癬、ならびに手のひらおよび足の裏にあるかまたは全身に分布した、しばしば直径2〜5mmの、多数の無菌性膿疱を特徴とする、膿疱性乾癬が含まれる。
【0050】
乾癬患者の処置の効果を確立するために利用される客観的な方法には、目視観察および写真撮影によるプラークの分析が含まれる。目視による採点は、PASI(乾癬面積および重症度指標)点数を用いて行なう(Fredericksson, A J, Peterssonn B C Dermatologies 157: 238-244 (1978)を参照)。
【0051】
本発明の方法および組成物は、座瘡の処置にも好適である。座瘡は大きな患者集団を冒し、および通常は顔に局在する一般的な炎症性皮膚障害である。幸いにも、通常本疾患は消失し、開始から分析の間の数か月および数年の間に、根治的なものではないものの、治療によって、大多数の患者で満足の行くように疾患を抑制することができる。
【0052】
重度の疾患のある少数の座瘡患者は、高用量の経口テトラサイクリン、ダプソン、プレドニソン、および、女性では、エストロゲンの使用を含む集中的な治療の努力に対して、ほとんどまたは全く反応を示さない。多くの場合、これらの薬剤の副作用がその有用性を厳しく制限するのに対し、これらの薬物は控え目な程度の制御しか与えない。結節膿疱性座瘡(nodulocystic acne)のある患者は、顔、ならびに多くの場合背中および胸に現れる、大きな、炎症性の化膿性結節に苦しむ。その外観に加えて、病変は柔らかく、かつしばしば化膿して滲出性かつ出血性である。外観を損なう傷跡は多くの場合避けられない。座瘡に対する治療は、レチノイドの局部投与および全身投与を伴う。オールトランスレチノイン酸(トレチノイン)の局所適用が、特にニキビまたは面皰に対して、多少の成功とともに試みられてきたが、治療をやめると、この状態は元に戻ることが多い。
【0053】
別の好ましい態様において、本発明の方法および組成物を、過剰増殖性癌の増殖を阻害するために、および任意で過剰増殖性癌の形質転換表現型を逆転させるために使用してもよい。特に、記載された方法および組成物は、皮膚の過剰増殖を特徴とする、任意の腫瘍、癌腫、病変などを処置するために有用である。方法および組成物はまた、前癌状態を処置するために、すなわち、実際の悪性腫瘍へのその進行を防ぐために、および腫瘍の広がりを防ぐために有用である。腫瘍の具体的な例として、メラノサイト母斑および骨髄異形成症候群が含まれる。さらにその他の例として、前癌状態の光線性角化症およびボーエン様角化症の数の減少および/または進行の防止、定着した扁平上皮細胞癌腫の処置、ならびに異形成母斑の分析が含まれる。
【0054】
組成物
治療的適用のために、甲状腺ホルモン変換阻害剤を、単独で、または1つもしくは複数の許容されるその担体および任意でその他の治療用成分と一緒に甲状腺ホルモン変換阻害剤を含む薬学的組成物の一部として、患者に好適に投与してもよい。担体は、製剤のその他の成分と適合し、かつその受容者にとって有害でないという意味で「許容されるもの」でなければならない。
【0055】
本明細書において使用する場合、本発明の甲状腺ホルモン変換阻害剤は、甲状腺プロホルモン、T4の、甲状腺ホルモン、T3への変換を阻害する薬剤である。好ましくは、甲状腺ホルモン変換阻害剤は脱ヨード酵素である。さらにより好ましくは、甲状腺ホルモン変換阻害剤は、イオパノ酸(IOP)またはプロプラノロールである。
【0056】
本発明のある特に好ましい態様において、皮膚の過剰増殖性障害の処置のために、局部的に投与可能な局所用薬学的組成物を提供する。局部的に投与可能な局所用組成物には、局所用担体が含まれる。本発明の組成物には、本発明の材料を用いてその全てを投与経路として使用し得る、経口投与、直腸投与、腟内投与、経鼻投与、点眼投与、または非経口的投与を含む局所投与および全身投与に好適な組成物が含まれる。投与の好ましい経路は局所である。局所用組成物は、薬学的組成物の形であってもよいが、必ずしもそうである必要ではない。例えば、それは化粧用組成物であることができる。
【0057】
製剤を、例えば、リポソーム、錠剤、および持続放出カプセルなどの、単位用量形態で適宜提示してもよいし、ならびに薬学の技術分野において周知の任意の方法で調製してもよい。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Philadelphia, PA (17th ed. 1985) を参照されたい。
【0058】
そのような調製方法は、1つまたは複数の副成分を構成する担体などの成分を、投与されるべき分子と結合させる段階を含む。一般に、活性成分をリポソーム、液体担体、もしくは細かく分割された固体担体、または両方と均一におよび密に合わせることによって、ならびにその後必要ならば製品を成形することによって、組成物を調製する。
【0059】
好ましくは、本発明の組成物をリポソームの中に封入する。本発明での使用に好適なリポソームは、一般に中性のまたは負電荷を帯びたリン脂質およびコレステロールなどのステロールを含む、標準的な小胞を形成する脂質から形成することができる。脂質の選択は一般に、所望のリポソームサイズおよび血流中リポソームの半減期などの要因を考慮することによって導かれる。例えば、Szoka et al.(1980), Ann. Rev. Biophys. Bioeng. 9: 467、ならびにその全体の開示が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第4,235,871号、第4,501,728号、第4,837,028号、第5,019,369号、および第5,260,065号に記載されたような、リポソームを調製するための様々な方法が公知である。
【0060】
甲状腺ホルモン変換阻害剤を封入するリポソームは、リポソームを皮膚癌細胞などの標的細胞に向かわせるリガンド分子を含むこともできる。腫瘍細胞抗原または細胞表面マーカーと結合するモノクローナル抗体などのような、癌細胞で広く行き渡っている受容体と結合するリガンドが好ましい。
【0061】
単核マクロファージ系(「MMS」)および細網内皮系(「RES」)によるクリアランスを避けるために、リポソームを修飾することもできる。そのような修飾されたリポソームは、表面に、またはリポソーム構造物に取り込まれた、オプソニン化阻害部分を有する。特に好ましい態様において、本発明のリポソームは、オプソニン化阻害部分およびリガンドの両方を含むことができる。本発明のリポソームを調製する際に使用するためのオプソニン化阻害部分は、典型的には、リポソーム膜に結合した大きな親水性ポリマーである。本明細書において使用する場合、オプソニン化阻害部分は、例えば、脂溶性アンカーの膜自体への挿入によって、または膜脂質の活性基に直接結合することによって、それが化学的にまたは物理的に膜に付着している場合、リポソーム膜に「結合して」いる。これらのオプソニン化阻害親水性ポリマーは、MMSおよびRESによるリポソームの取り込みを著しく減少させる保護表面層を形成し;例えば、その全体の開示が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第4,920,016号に記載されたように形成する。
【0062】
リポソームを修飾するために好適なオプソニン化阻害部分は、好ましくは、約500〜約40,000ダルトンの、およびより好ましくは約2,000〜約20,000ダルトンの数平均分子量を有する水溶性ポリマーである。そのようなポリマーには、ガングリオシドGM1などの、ガングリオシドだけでなく、ポリエチレングリコール(PEG)誘導体またはポリプロピレングリコール(PPG)誘導体;例えば、メトキシPEGまたはメトキシPPG、およびステアリン酸PEGまたはステアリン酸PPG;ポリアクリルアミドまたはポリN-ビニルピロリドンなどの合成ポリマー;線状、分岐状、または樹状のポリアミドアミン;ポリアクリル酸;ポリアルコール、例えば、カルボキシル基またはアミノ基が化学的に結合しているポリビニルアルコールおよびポリキシリトールが含まれる。PEG、メトキシPEG、もしくはメトキシPGG、またはそれらの誘導体のコポリマーも好適である。さらに、オプソニン化阻害ポリマーは、PEG、およびポリアミノ酸、多糖、ポリアミドアミン、ポリエチレンアミン、またはポリヌクレオチドのいずれかのブロックコポリマーであることができる。オプソニン化阻害ポリマーは、アミノ酸もしくはカルボキシル酸、例えば、ガラクツロン酸、グルクロン酸、マンヌロン酸、ヒアルロン酸、ペクチン酸、ノイラミン酸、アルギン酸、カラギーナンを含む天然多糖;アミノ化多糖もしくはアミノ化オリゴ糖(線状または分岐状);または例えば、結果として得られるカルボキシル基の結合を持つカルボン酸の誘導体と反応した、カルボキシル化多糖もしくはカルボキシル化オリゴ糖であることもできる。好ましくは、オプソニン化阻害部分は、PEG、PPG、またはそれらの誘導体である。PEGまたはPEG誘導体で修飾されたリポソームは時に、「PEG化リポソーム」と呼ばれる。
【0063】
オプソニン化阻害部分を、多くの周知の技術のうちの任意の1つによってリポソーム膜に結合することができる。例えば、PEGのN-ヒドロキシコハク酸イミドエステルを、ホスファチジルエタノールアミン脂溶性アンカーに、およびその後膜に結合することができる。同様に、デキストランポリマーを、Na(CN)BH3ならびにテトラヒドロフランおよび水などの溶媒混合液を60℃で30:12の比で使用する還元アミノ化を介して、ステアリルアミン脂溶性アンカーで誘導体化することができる。
【0064】
ある例において、主にステアリン酸誘導体において、コレステロールなどのステロールが、特に有用な添加物である。コレステロールの添加によって、小胞集団が、サイズおよび形の点でより均一になるように思われる。小胞形成を可能にするために、コレステロールですら、それ自体では十分ではない。これは、小胞を作るのにコレステロールのみを要する米国特許第4,917,951号に記載された材料と対照的である。ある状況において、コレステロールは、そうでなければラメラ層を形成しないこれらの材料がラメラ相を形成するのを可能にすると考えられるが、第2の脂質の添加がなければ、それらは小胞を形成することができない。実際、例えば、ジメチルジステアリルアミン、水溶性ポリオキシエチレンアシルアルコール、およびアシルサルコシン酸塩などの、最も好ましい第2の脂質の中には、小胞またはラメラ相のいずれも形成しないものもある。
【0065】
本発明のある態様において、局部的に投与可能な局所用組成物を、過剰増殖性皮膚障害の予防または処置のために提供する。局部的に投与可能な局所用組成物は、局所用担体を含む。
【0066】
上に記したような局所用担体は、一般に局所薬物投与に適した担体であり、および当技術分野において公知の任意のそのような材料を含む。局所用担体は、所望の形態で、例えば、液体、ローション、クリーム、ペースト、ゲル、粉末、または軟膏として組成物を提供するよう選択され、および天然起源または合成起源のいずれかの材料を含んでいてもよい。選択された担体が、局所製剤の活性剤またはその他の構成要素に悪影響を及ぼさないことが絶対不可欠である。本明細書での使用に好適な局所用担体の例として、水、アルコールおよびその他の毒性のない有機溶媒、グリセリン、ミネラルオイル、シリコン、ワセリン、ラノリン、脂肪酸、植物油、パラベン、ろうならびにそれらと同様のものが含まれる。本発明の組成物はまた、シャンプーの形で投与してもよく、その場合にはそのような製剤の従来の構成要素、例えば、界面活性剤、コンディショナー、粘度調整剤、保湿剤、およびそれらと同様のものが、その上さらに含まれる。
【0067】
本明細書において特に好ましい製剤は、無色無臭の軟膏、ローション、クリーム、およびゲルである。
【0068】
軟膏は、典型的にはペトロラタムまたはその他の石油誘導体を基にした半固形の調製物である。使用すべき具体的な軟膏基剤は、当業者には十分に理解されるように、最適な薬物送達を提供すると考えられる基剤、および、好ましくは、例えば、エモリエンシー(emolliency)などの、その他の所望の特徴をその上さらに提供すると考えられる基剤である。その他の担体または媒体と同様に、軟膏基剤は不活性で、安定であり、非刺激性で、かつ非感作性であるべきである。Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 第19版 (Easton, Pa.: Mack Publishing Co., 1995)、1399〜1404ページで説明されているように、軟膏基剤を4つの部類:油脂性基剤;乳化可能な基剤;乳剤性基剤;および水溶性基剤に分類してもよい。油脂性軟膏基剤は、例えば、植物油、動物から得られた脂肪、および石油から得られた半固形の炭化水素を含む。吸収性軟膏基剤としても公知である、乳化可能な軟膏基剤は、水をほとんどまたは全く含有せず、かつ、例えば、硫酸ヒドロキシステアリン、無水ラノリン、および親水性のペトロラタムを含む。乳剤性軟膏基剤は、油中水型(W/O)乳剤または水中油型(OW)乳剤のいずれかであり、ならびに、例えば、セチルアルコール、グリセリルモノステアリン酸、ラノリン、およびステアリン酸を含む。好ましい水溶性軟膏基剤は、様々な分子量(Remington: The Science and Practice of Pharmacy)のポリエチレングリコールから調製する。
【0069】
ローションは、摩擦なしで皮膚表面に適用できる調製物であり、および典型的には、活性剤を含む固形粒子が水中またはアルコール基剤中に存在する液体または半固形の調製物である。ローションは通常、固形物の懸濁液であり、および好ましくは、本目的のために、水中油型の液体油性乳剤を含む。ローションは、より流動性のある組成物を適用するという容易さのために、本明細書において大きい体面積を処置するのに好ましい製剤である。ローション中の不溶物が細かく分割されていることが一般に必須である。ローションは、典型的には、皮膚と接触した活性剤、例えば、メチルセルロースもしくはカルボキシメチルセルロースナトリウム、またはそれら同様のものを局在化および保持するために有用な化合物だけでなく、より良い分散を生み出すための懸濁化剤を含む。本発明と共に使用するための特に好ましいローション製剤は、Aquaphor(登録商標)という商標の下でBeiersdorf社(Norwalk, Conn.)から入手し得るもののような親水性のペトロラタムと混合したプロピレングリコールを含む。
【0070】
選択された薬剤を含むクリームは、当技術分野において公知のように、水中油型または油中水型のいずれかの、粘性液体または半固形の乳剤である。クリーム基剤は水洗性であり、ならびに油相、乳化相、および水相を含む。時に「内」相とも呼ばれる油相は一般に、ペトロラタム、およびセチルアルコールまたはステアリルアルコールなどの脂肪アルコールを含み;水相は、必ずしもそうではないが、通常容量で油相を上回り、および一般に保湿剤を含む。クリーム製剤中の乳化剤は、前記Remingtonで説明されたように、一般に非イオン性、陰イオン性、陽イオン性、または両性の界面活性剤である。
【0071】
ゲル製剤は、頭皮への適用に好ましい。局所用薬物製剤の分野で仕事をする者には十分に理解されると考えられるが、ゲルは半固形で、懸濁液型の系である。単相ゲルは、典型的には水性である担体液体の全体に実質的に均一に分布する有機高分子を含むが、好ましくは、アルコール、および任意で油も含む。
【0072】
シャンプーは標準的なシャンプー構成要素、すなわち、洗浄剤、増粘剤、および防腐剤と共に製剤化してもよく、洗浄剤は、典型的には陰イオン性界面活性剤または陰イオン性界面活性剤および両性界面活性剤の混合物である主成分を意味する。
【0073】
当業者に公知の様々な添加物が、本発明の局所製剤に含まれてもよい。例えば、特定の薬物物質を可溶化するために溶媒を使用してもよい。その他の任意の添加剤には、皮膚透過促進剤、乳白剤、酸化防止剤、ゲル化剤、増粘剤、安定剤、およびそれらと同様のものが含まれる。抗菌剤、抗真菌剤、抗生物質、およびステロイドのような抗炎症剤などの、その他の薬剤を添加してもよい。
【0074】
本発明の好ましい局所製剤において、活性剤は、一般に全組成物の少なくとも1重量%の量で存在し、それは典型的には0.1〜40%、例えば少なくとも5%、10%等の範囲にまで及ぶことができる。範囲は、例えば1〜30%、5〜25%、10〜20%であることができ、および全てのその他の変化量が含まれる。
【0075】
別の態様において、処置すべき障害に応じて、その他の量の活性剤を使用することができる。
【0076】
本発明の局所用組成物はまた、徐放性機構を用いて皮膚に送達してもよい。例として、組成物が、皮膚に貼り付けられるべき薬物送達装置として働く積層構造体の内側に含まれる、「経皮」型貼付剤がある。そのような構造体では、薬物組成物が、上部のバッキング層の下にある層、すなわち「貯蔵層」の中に含まれる。積層構造体は、1つの貯蔵層を含んでもよく、または複数の貯蔵層を含んでもよい。ある態様において、貯蔵層は、薬物送達の間、系を皮膚に貼り付ける働きをする薬学的に許容される接触性接着材料のポリマーマトリックスを含む。好適な皮膚接触性接着剤の材料の例として、ポリエチレン、ポリシロキサン、ポリイソブチレン、ポリアクリラート、ポリウレタン、およびそれらと同様のものが含まれるが、これらに限定されない。選択される特定のポリマー接着剤は、特定の薬物、媒体などに依存し、すなわち、接着剤は、薬物含有組成物の全ての構成要素と適合しなければならない。別の態様において、薬物含有貯蔵層および皮膚接触性接着剤は、接着剤が貯蔵層の下にある状態で、離れた別々の層に存在し、貯蔵層は、この場合、上に記載したようなポリマーマトリックスであってもよく、または液体もしくはヒドロゲルの貯蔵層であってもよく、またはその他の何らかの形態を取っていてもよい。
【0077】
装置の上部表面として働く、これらの積層中のバッキング層は、積層構造体の主要な構造要素として機能し、および装置にその柔軟性の多くを提供する。バッキング材料用に選択される材料は、それが組成物、および組成物の任意のその他の構成要素に対して実質的に不透過性であり、したがって装置の上部表面を通したいかなる構成要素の損失も防止するように選択されるべきである。バッキング層は、薬物送達の間に皮膚に潤いを与えることが望ましいかどうかによって、閉塞性または非閉塞性のいずれかでもよい。バッキングは、好ましくは柔軟性のあるエラストマー材料のシートまたはフィルムでできていることが好ましい。バッキング層に好適であるポリマーの例として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、およびそれらと同様のものが含まれる。
【0078】
保存の間および使用前に、積層構造は、好ましくはリリースライナーを含む。系を皮膚に貼り付けるために、使用直前に、この層を装置から取り除いて、薬物貯蔵層または離れた接触性接着剤層のいずれかである、その基底表面を暴露させる。リリースライナーは、薬物/媒体不透過性の材料から作られるべきである。
【0079】
そのような装置を、当技術分野において公知の従来の技術を用いて、例えば、接着剤、薬物、および媒体の流体混和物をバッキング層の上に流し込み、その後リリースライナーを積層化することによって、組み立ててもよい。同様に、接着剤混合物をリリースライナー上に流し込み、その後バッキング層を積層化してもよい。または、薬物貯蔵層を、薬物または賦形剤なしで調製し、その後薬物/媒体混合物に「浸す」ことによって装填してもよい。
【0080】
本発明の局所製剤と同様に、これらの積層系の貯蔵層の中に含まれる組成物は、多くの構成要素を含んでもよい。ある場合には、遮断組成物を「ニート」で、すなわち、追加の液体なしで、送達してもよい。多くの場合には、しかしながら、組成物を薬学的に許容される好適な媒体、典型的には溶媒もしくはゲルに溶解、分散、または懸濁する。存在し得るその他の構成要素には、防腐剤、安定剤、界面活性剤、およびそれらと同様のものが含まれる。
【0081】
好ましくは、局所製剤および積層送達系には、皮膚透過促進剤も含まれる。皮膚透過促進剤は同時投与することができる。好適な促進剤は、当技術分野において周知であり、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、デシルメチルスルホキシド(C10MSO)、C2〜C6アルカンジオール、および1-置換アザシクロヘプタン-2-オン、特に1-n-ドデシルシクルアザシクルシクロヘプタン-2-オン(Azone(登録商標)という商標の下でWhitby Research社, Richmond, Va.から入手可能)、アルコール、ならびにそれらと同様のものを含む。
【0082】
軟膏、ペースト、クリーム、およびゲルも、動物性脂肪および植物性脂肪、油、ろう、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、ケイ酸、タルク、ならびに酸化亜鉛、またはそれらの混合物などの賦形剤を含むことがある。粉末およびスプレーも、乳糖、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、およびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物などの賦形剤を含むことができる。スプレーは、クロロフルオロ炭化水素などの通例の高圧ガス、ならびにブタンおよびプロパンなどの、揮発性の未置換炭化水素を追加的に含むことができる。
【0083】
本発明による局所用組成物は、1つもしくは複数の防腐剤または静菌剤、例えば、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、クロロクレゾール、塩化ベンザルコニウム、およびそれらと同様のものを含んでもよい。局所用組成物は、抗菌剤、特に抗生物質、麻酔薬、鎮痛薬、および抗掻痒剤などのその他の活性成分を含むこともできる。
【0084】
本発明の局所投与で使用することができる抗菌剤は、皮膚に適合しおよび溶媒に溶ける薬剤である。さらに、抗菌剤は、グラム陽性菌およびグラム陰性菌、酵母、ならびにカビを含むが、これらに限定されない、広範囲の微生物に対して有効である。抗菌剤の例として、トリクロサン(Ciba-Geigy Corporation製のIrgasan(商標)DP 300としても公知である5-クロロ-2-(2,4-ジクロロフェノキシ)フェノール)、ヘキセチジン(5-アミノ-1,3-ビス(2-エチルヘキシル)-5-メチル-ヘキサヒドロピリミジン)、クロルヘキシジン塩(N,N"-ビス(4-クロロフェニル)-3,12-ジイミノ-2,4,11,14-テトラアザテトラデカンジイミジアミド)、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、ヘキシレゾルシノール、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウム、ヨウ素、フェノール誘導体、ポビドンヨード(ポリビニルピロリジノン-ヨード)、パラベン、ヒダントイン(2,4-イミダゾリジンジオン)、ヒダントイン誘導体(2,4-イミダゾリジンジオンの誘導体)、フェノキシエタノール、塩化1-(3-クロロアリル)-3,5,6-トリアザ-1-アゾニアアダマンタンのシス異性体(Dow Chemical Company製のDowicil 200としても公知であるクオタニウム-15)、ジアゾリジニル尿素、塩化ベンゼトニウム、塩化メチルベンゼトニウム、およびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。ヒンダントイン誘導体の例として、ジメチロール-5,5-ジメチルヒダントイン(グライダント)が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、抗菌剤の例として、トリクロサン、塩化1-(3-クロロアリル)-3,5,6-トリアザ-1-アゾニアアダマンタンのシス異性体(クオタニウム-15)、ヒンダントイン、ジメチロール-5,5-ジメチルヒダントイン(グライダント)などのヒンダントイン誘導体、およびそれらの混合物が含まれる。
【0085】
本発明の組成物は、皮膚癌の処置において化学療法剤と併せて有用であることもできる。皮膚癌およびその他の過剰増殖性皮膚障害の処置のための化学療法剤の例が、当技術分野において周知である。
【0086】
本発明の局所用組成物および薬物送達系を、上で明らかにした皮膚状態の予防または処置において使用することができる。予防的(防止的)方法で使用する場合、そのような病変に影響を受けやすいことが公知の部分に任意の目に見える病変が観察されなければ、曝露の前にまたは曝露のすぐ後に、影響を受けやすい皮膚を処置することができる。皮膚状態を処置する際に、個々の投薬の最適量および間隔を、処置される状態の性質および程度、投与の形態、経路、および部位、ならびに個々が受けている特定の処置によって決定するということ、ならびにそのような最適条件を従来の技術によって決定できるということが、当業者に十分に理解されると思われる。最適な投薬計画、すなわち、投薬の回数を従来の治療決定試験過程を用いて確かめることができるということもまた、当業者によって十分に理解されると思われる。一般に、投薬計画は、症状が治まってしまうまで、少なくとも1日に1回の、好ましくは1日に1〜4回の、選択された局所製剤の投与を含む。
【0087】
局所投与が好ましいが、組成物の全身投与が、経口投与、非経口投与、舌下投与、座薬などの直腸投与、もしくは腸内投与によるものであってもよいし、または肺吸収によるものであってもよい。どのように薬物を投与するかによって、投薬を調節する。非経口投与は、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射、動脈内注射、髄腔内注射、腹腔内注射、もしくは直接注射によるものであってもよいし、または1つもしくは複数の特定の部位へのその他の投与であってもよい。注射による長期間の投与が必要である場合、直接的で迅速なアクセスを、心臓ならびにその他の主要な器官および器官系の中にあるならびにそれらの周辺にある動脈に提供する、メディポート、留置カテーテル、または自動ポンピング機構などの静脈アクセス装置も好ましい。
【0088】
組成物を、スプレーとして鼻孔に投与してもよい。鼻の部分の動脈は、血流への速かで効率的なアクセスならびに肺系統への迅速なアクセスを提供する。経口浣腸、または注射可能な投与の形態を用いて、物質を血流に速かに導入することもできる、消化管へのアクセスを得ることができる。組成物をボーラス注射もしくはスプレーとして投与してもよく、または2時間毎、4時間毎、6時間毎、もしくは8時間毎、毎日(QD)、または隔日(QOD)などの時間にわたって連続的に(間欠的に)、または数週間から数か月などのより長い期間にわたって、投与してもよい。組成物を、徐放樹脂ならびにその他の徐放性または遅延放出性の材料および装置の使用等による徐放性の様式で投与してもよい。
【0089】
全身投与が望ましい場合には、経口投与が便利で経済的な薬物送達の様式であるので、経口で有効な組成物が好ましい。経口組成物は、胃腸の裏側を通して吸収されにくいことがある。吸収されにくい化合物は、高極性である傾向がある。好ましくは、そのような組成物を、その極性を減少させるようにまたは消失させるように設計する。これは、その極性を中和する無料の試薬と一緒に経口組成物を製剤化することなどの公知の手段によって、または中和する化学基で化合物を修飾することによって、達成することができる。好ましくは、イオン基を中和すること、イオン相互作用を共有結合すること、またはジスルフィド結合もしくはその他の比較的不安定な結合を安定化するもしくは除去すること等により、非常に低いpH状態に耐えかつ胃粘膜の酵素に抵抗するように、分子構造を同様に修飾する。
【0090】
患者に対する処置は、治療的または予防的であることがある。治療的処置は、障害の1つまたは複数の症状に苦しむ患者への、本発明の1つまたは複数の組成物の投与を伴う。1つまたは複数の症状の軽減、および1つまたは複数の症状の部分的軽減でさえ、寿命の増加または単に生活の質の向上に相当することができる。さらに、病理学的症状を緩和する処置は、施されるべきその他の処置を可能にする。
【0091】
本明細書において使用される、「適合する」という用語は、組成物の構成要素が、所望の有効性を実質的に損なわない様式で、本発明の甲状腺ホルモン変換阻害剤と、および互いに、混じり合うことができるということを意味する。
【0092】
本発明の薬学的組成物の用量は、対象および使用される特定の投与経路によって変化する。投薬は、1日当たり0.1〜100,000μg/kg、より好ましくは、1〜10,000μg/kgの範囲に及ぶことができる。ほんの一例として、例えば、約1マイクログラム〜約300マイクログラムまでの全用量範囲を、ヒトの使用に用いてもよい。この用量を、組成物に基づいて周期的な間隔で送達することができる。
【0093】
本発明はさらに、本発明の例示であることが意図される以下の実施例を特徴とする。
【0094】
実施例
インビトロにおいて、T3は表皮ケラチノサイトの増殖を刺激する(Holt 1978, Ahsan 1998, Safer 2003)。T3は、培養ケラチノサイトの増殖関連ケラチン遺伝子mRNAの発現(Safer 2004)および増殖関連ケラチン6のタンパク質発現(Safer 2005)を刺激する。T3はまた、培養皮膚繊維芽細胞の増殖も刺激する(Ahsan 1998, safer 2003)。
【0095】
インビボにおいて、前記生理的T3の局所適用は、表皮の増殖を刺激することができ(Safer 2001, Safer 2003)、および真皮を厚くすることがある(Faergemann, Yazdanparast)。
【0096】
甲状腺ホルモンの作用が活性甲状腺ホルモン、T3によって媒介されるのに対して、主要な循環甲状腺ホルモンは、プロホルモン、T4である。多くの細胞内T3は、末梢で発現したヨードチロニン脱ヨード酵素(DI)によるT4の局部的変換に由来する。これまでの研究者は、皮膚の培養におけるT4の、T3または不活性なrT3のいずれかへの変換を示し、したがって皮膚における甲状腺ホルモン脱ヨード酵素の存在を間接的に証明した(Refetoff 1972, Huang 1985, Kaplan 1988)。インビトロにおいて、脱ヨード酵素阻害剤、イオパノ酸(IOP)が、ヒト表皮ケラチノサイトにおけるT4のT3への変換を阻止するために使用されてきた(Kaplan --)。
【0097】
これまでに、本発明者らは、甲状腺ホルモンが最適な創傷治癒に必須であるということを明らかにした(Safer 2004)。甲状腺ホルモンは、真皮、表皮、または両方を通して創傷治癒に影響を及ぼすことがある。
【0098】
現在の計画は、甲状腺機能低下が、特異的に表皮の増殖の減少をもたらすかどうか、および脱ヨウ素酵素阻害剤、IOPの局所適用が、全身の甲状腺機能低下を引き起こさずに皮膚の増殖を阻害することができるかどうかを決定するために行なった。
【0099】
材料および方法
記載した全ての動物実験を、Boston University School of Medicineの研究機関の動物管理および使用委員会(IACUC)によって承認されたプロトコルの人道的動物管理の容認基準に合わせて実施した。
【0100】
甲状腺機能低下症マウスの樹立
年齢、性別、およびサイズを一致させたCD-1マウス(Charles River, Boston, Massachusetts)に、(外科的甲状腺切除により)甲状腺切除術を施した。甲状腺機能低下を確認するために、全てのマウスの目から血を取り、T4のレベルをラジオイムノアッセイで測定した(下を参照)。本マウスの研究の全てと同様に、対照マウスを、麻酔、剃毛、目からの採血、および処置動物用に用いられる組織学的解析に供した。
【0101】
イオパノ酸プロトコル
以前に記載した(Safer 2001, Safer 2003, Safer 2005)リポソーム媒体(Novasome A, IGI社, New Jersey)にIOP(Sigma, St. Louis, Missouri)を混入することによって、局所用のイオパノ酸(IOP)クリームを調製した。各マウスは、3×3 cmの面積の動物の背中の剃毛した皮膚に直接塗布された30μlのリポソーム媒体を受けた。調製物は毎日適用し、かつ除去しなかった。
【0102】
処置群は、毎日、6mgのIOPを含むクリームを受けた。対照群は、媒体のみを毎日適用することにより治療した。
【0103】
5週齢のCD-1マウスを無作為に2つの群に分けた(図1)。群は各6匹のマウスを有し、および交差研究において評価した。交差研究における各マウスを、2回評価した:1回は6mgの毎日のIOP処置の後、および1回は媒体のみによる処置の後。6匹のマウスは最初にIOPを受け、その後3か月の洗い流し/治癒完了期間が続いた。動物をその後、局所用媒体のみによる処置の後で評価した。6匹のマウスは媒体のみで開始し、および3か月の洗い流し/治癒完了期間の後でIOP処置を受けた。
【0104】
グルーミングの間に動物がその周囲の動物から投薬を受けるのを避けるために、局所的に処置した全てのマウスを別々にケージに入れた。投薬時の自らが行なうグルーミングの影響を最小限にするために、動物の背中の正中線頭部方向の部分にクリームを塗布した。
【0105】
血清T4レベルの測定
血清全体のチロキシンのレベルを標準的なラジオイムノアッセイキット(ICN, Orangeburg, New York)で測定した。抗マウス抗体を使用するその他の甲状腺ホルモンキットとは違い、ICNキットは抗ウサギ抗体を使用し、およびマウスにおいて誤って高く読むことを避ける。マウスにとっての甲状腺ホルモンのレベルは、ヒトの範囲の低い端で減少し、したがってキットに含まれるヒトの標準を使用した。
【0106】
表皮増殖の評価
表皮の増殖を、表皮の厚みおよび5-ブロモ-2'-デオキシウリジン(BrdU, Boehringer Mannheim, Mannheim, Germany)のDNAへの取り込みの両方を測定することによって評価した。記述されたプロトコルの完了時に、動物に全層で生検を行ない、背部の皮膚試料を取った。生検の3時間前に、各マウスは、以前に記載したように(Safer 2001)、腹腔内BrdUを受けていた。皮膚試料をホルマリンで固定し、およびパラフィンに包埋した。各パラフィンブロックから、5μmの切片を作製し、ならびにヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色した。表皮の厚さを、各マウスについて10の無作為な場所で測定した。上のパラフィンブロックからの追加的な5μmの皮膚組織学的切片を、以前に記載したように(Safer 2001)、BrdUについて染色した。BrdUのデータは、染色された細胞核の数/mm表皮として報告する。
【0107】
ヒト表皮ケラチノサイトの検討
ヒトケラチノサイトを、放射線照射した繊維芽細胞由来の支持マトリックス上に、初代培養で成長させた。培養が40%コンフルエンスに達した時、細胞に基礎培地のみを24時間与え、その後試験物質またはシャムを含む培地で終夜インキュベートした。細胞をその後、飽和量の3H-チミジン(New England Nuclear, Boston, Massachusetts)で処置し;DNAを5%ペルコロラートで沈殿させ、および取り込まれた相対的なチミジンをベータカウンターで評価した。実験を4回実施し、平均化した。報告された結果は、最低3度の独立した4回の実験を表す。
【0108】
皮膚廃棄物を、Boston University School of Medicineの研究機関の審査委員会によって設定された容認手続きに従って、匿名で入手した。
【0109】
ヒト前立腺細胞培養の検討
ヒト前立腺(HPV)細胞を、標準的な状態の下で成長させた。培養が40%コンフルエンスに達した時、細胞に基礎培地のみを24時間与え、その後試験物質またはシャムを含む培地で終夜インキュベートした。細胞をその後、飽和量の3H-チミジン(New England Nuclear, Boston, Massachusetts)で処置し;DNAを5%ペルコロラートで沈殿させ、および取り込まれた相対的なチミジンをベータカウンターで評価した。実験を4回実施し、平均化した。報告された結果は、最低3度の独立した4回の実験を表す。
【0110】
オポッサム腎細胞培養の検討
オポッサム腎(OK)細胞を、標準的な状態の下で成長させた。培養が40%コンフルエンスに達した時、細胞に基礎培地のみを24時間与え、その後試験物質またはシャムを含む培地で終夜インキュベートした。細胞をその後、飽和量の3H-チミジン(New England Nuclear, Boston, Massachusetts)で処置し;DNAを5%ペルコロラートで沈殿させ、および取り込まれた相対的なチミジンをベータカウンターで評価した。実験を4回実施し、平均化した。報告された結果は、最低3度の独立した4回の実験を表す。
【0111】
サル腎細胞培養の検討
サル腎(CV-1)細胞を、標準的な状態の下で成長させた。培養が40%コンフルエンスに達した時、細胞に基礎培地のみを24時間与え、その後試験物質またはシャムを含む培地で終夜インキュベートした。細胞をその後、飽和量の3H-チミジン(New England Nuclear, Boston, Massachusetts)で処置し;DNAを5%ペルコロラートで沈殿させ、および取り込まれた相対的なチミジンをベータカウンターで評価した。実験を4回実施し、平均化した。報告された結果は、最低3度の独立した4回の実験を表す。
【0112】
試薬
組織培養に使用した試薬は、イオパノ酸(Sigma, St. Louis, Missouri)、イポダートナトリウム(Fitzgerald Industries International, Flanders, New Jersey)、およびプロプラノロール(Sigma, St. Louis, Missouri)であった。試薬を、以下の最終濃度まで、適度に塩基性のストック溶液の中に溶解した:0.025mM NaOH, 0.2M NaCl, 1.5mM試薬。各実験は、500μlの培地当たり、10μlのストック試薬(またはシャム)を使用した。図13〜図18について、「低」濃度は各試薬につき3μMであり、および「高」濃度は各試薬につき30μMであった。
【0113】
統計
統計解析を、スチューデントの独立したt-検定で行なった。データを、±平均の標準誤差(SEM)で提示した。
【0114】
結果
局所用IOPは表皮増殖を阻害した
表皮の増殖は、両群のマウスで有意に減少した(図2および図3)。甲状腺切除マウスは、対照マウスより36%薄い表皮(p<0.05)および対照より90%少ない表皮のBrdU染色(p<0.05)を有した。局所用IOPで治療したマウスは、対照マウスより20%薄い表皮(p<0.05)図4、および30%少ない表皮のBrdU染色(p<0.05)を有した。血清T4レベルが甲状腺切除マウスにおいて有意に低下したのに対し、IOPクリームで処置したマウスにおけるT4レベルは安定したままであった。
【0115】
T4レベルは甲状腺切除マウスにおいて減少した
ベースラインと比べて、甲状腺切除マウスにおけるT4レベルは84%低かった(甲状腺機能正常マウスについての4.2±0.4μg/dlに対し、甲状腺機能低下動物について0.66±0.5μg/dl、p<0.001)。対照的に、IOPで処置したマウスにおけるT4レベルは、対照マウスと比べて変化していなかった。
【0116】
脱ヨード酵素阻害剤は異なる種からの複数の組織試料に対する効果を有した
図5に示したように、対照培養と比べて、イオパノ酸との終夜インキュベーションの後、ヒト表皮ケラチノサイトの増殖は、61±9%(p<0.001)阻害された。同様に、図13は、2つの異なる濃度のイオパノ酸とインキュベートしたヒト表皮ケラチノサイトの結果を示す。図6に示したように、イポダートナトリウムとの終夜インキュベーションの後、ヒト表皮ケラチノサイトの増殖は、14±6%(p<0.01)阻害された;図14は、2つの異なる濃度のイポダートナトリウムとインキュベートしたヒト表皮ケラチノサイトの結果を示す。図7は、プロプラノロールとの終夜インキュベーションの後、ケラチノサイトの増殖が、62±3%(p<0.001)阻害されたことを示す。再び、図15は、2つの異なる濃度のプロパノロールとインキュベートしたヒト表皮ケラチノサイトの結果を示す。
【0117】
図8は、対照培養と比べて、イオパノ酸との終夜インキュベーションの後、ヒト前立腺細胞の増殖が、26±4%(p<0.001)阻害されたことを示す。図16は、2つの異なる濃度のイオパノ酸とインキュベートしたヒト前立腺細胞の結果を示す。図9において、イポダートナトリウムとの終夜インキュベーションの後、ヒト前立腺細胞の増殖は、30±5%(p<0.001)阻害された。同様に、図17は、2つの異なる濃度のイポダートナトリウムとインキュベートしたヒト前立腺細胞の結果を示す。図10に示したように、プロプラノロールとの終夜インキュベーションの後、前立腺細胞の増殖は、84±8%(p<0.001)阻害された。図18は、2つの異なる濃度のプロパノロールとインキュベートしたヒト前立腺細胞の結果を示す。図19において、イオベルソールと終夜インキュベートしたヒト前立腺細胞の増殖は、22%(±7%、p<0.001)阻害された。
【0118】
図11は、対照培養と比べて、プロプラノロールとの終夜インキュベーションの後、オポッサム腎細胞の増殖が、88±10%(p<0.001)阻害されたことを示す。図12において、プロプラノロールとの終夜インキュベーションの後、サル腎細胞の増殖は、82±5%(p<0.001)阻害された。
【0119】
参照


【0120】
本明細書において記載される全ての参照は、参照により組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】インビボでマウスに局所的に投与したイオパノ酸の効果を解析するための実験デザインの概略図である。
【図2】最初に対照媒体で処置し、その後IOPで処置した、第1群のマウスで表皮の増殖が有意に減少したことを示すグラフである。
【図3】最初にIOPで処置し、その後対照媒体で処置した、第2群のマウスで表皮の増殖が有意に減少したことを示すグラフである。
【図4】対照およびIOPで処置したマウスについての表皮の厚さを示すグラフである。
【図5】対照培養と比べて、イオパノ酸との終夜インキュベーションの後、ヒト表皮ケラチノサイトの増殖が、61±9%(p<0.001)阻害されたことを示すグラフである。
【図6】イポダートナトリウムとの終夜インキュベーションの後、ヒト表皮ケラチノサイトの増殖が、14±6%(p<0.01)阻害されたことを示すグラフである。
【図7】プロプラノロールとの終夜インキュベーションの後、ケラチノサイトの増殖が、62±3%(p<0.001)阻害されたことを示すグラフである。
【図8】対照培養と比べて、イオパノ酸との終夜インキュベーションの後、ヒト前立腺細胞の増殖が、26±4%(p<0.001)阻害されたことを示すグラフである。
【図9】イポダートナトリウムとの終夜インキュベーションの後、ヒト前立腺細胞の増殖が、30±5%(p<0.001)阻害されたことを示すグラフである。
【図10】プロプラノロールとの終夜インキュベーションの後、前立腺細胞の増殖が、84±8%(p<0.001)阻害されたことを示すグラフである。
【図11】対照培養と比べて、プロプラノロールとの終夜インキュベーションの後、オポッサム腎細胞の増殖が、88±10%(p<0.001)阻害されたことを示すグラフである。
【図12】対照培養と比べて、プロプラノロールとの終夜インキュベーションの後、サル腎細胞の増殖が、82±5%(p<0.001)阻害されたことを示すグラフである。
【図13】2つの異なる濃度のイオパノ酸とインキュベートしたヒト表皮ケラチノサトの結果を示すグラフである。
【図14】2つの異なる濃度のイポダートナトリウムとインキュベートしたヒト表皮ケラチノサトの結果を示すグラフである。
【図15】2つの異なる濃度のプロパノロールとインキュベートしたヒト表皮ケラチノサトの結果を示すグラフである。
【図16】2つの異なる濃度のイオパノ酸とインキュベートしたヒト前立腺細胞の結果を示すグラフである。
【図17】2つの異なる濃度のイポダートナトリウムとインキュベートしたヒト前立腺細胞の結果を示すグラフである。
【図18】2つの異なる濃度のプロパノロールとインキュベートしたヒト前立腺細胞の結果を示すグラフである。
【図19】イオベルソールと終夜インキュベートしたヒト前立腺細胞の増殖は、22%(±7%、p<0.001)阻害された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過剰増殖性皮膚障害を処置するための方法であって、有効量の甲状腺ホルモン変換阻害剤および薬学的に許容される担体または希釈剤を、処置を必要とする対象に局所的に投与する工程を含む方法。
【請求項2】
甲状腺プロホルモン、T4の、甲状腺ホルモン、T3への変換を局部的に阻害することを含む、請求項4記載の方法。
【請求項3】
甲状腺ホルモン変換阻害剤が、イオパノ酸(IOP)、イポダート、およびプロプラノロールからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
甲状腺ホルモン変換阻害剤が脱ヨード酵素阻害剤である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
過剰増殖性皮膚障害が、乾癬、尋常性座瘡、酒さ性座瘡、光線性角化症、日光性角化症、扁平上皮内癌、魚鱗癬、角質増殖症、ダリエー病などの角質化の障害、掌蹠角皮症、毛孔性紅色粃糠疹、表皮母斑様症候群(epidermal naevoid syndromes)、変異性紅斑角皮症、表皮剥離性角質増殖症、非水疱型魚鱗癬様紅皮症、皮膚エリテマトーデスおよび扁平苔癬、乾癬、尋常性座瘡、または癌からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
過剰増殖性皮膚障害が乾癬である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
過剰増殖性皮膚障害が魚鱗癬である、請求項5記載の方法。
【請求項8】
過剰増殖性皮膚障害が掌蹠角皮症である、請求項5記載の方法。
【請求項9】
薬学的に許容される担体または希釈剤がリポソームクリームであり、および甲状腺変換が局所投与のためである、請求項5記載の方法。
【請求項10】
甲状腺ホルモン、T3の内在性レベルが、阻害剤で処理した対象の細胞で局部的に低下し、およびさらに、対象の、甲状腺ホルモンの全身レベルが著しくは変化しない、請求項5記載の方法。
【請求項11】
T4のT3への変換を阻害するために十分な量の脱ヨード酵素阻害剤を含む局所投与用の薬学的組成物であって、甲状腺ホルモン変換阻害剤および薬学的に許容される担体または希釈剤。
【請求項12】
薬学的に許容される担体または希釈剤が、ローション、クリーム、ペースト、ゲル、および軟膏からなる群より選択される、請求項11記載の薬学的組成物。
【請求項13】
薬学的に許容される担体または希釈剤がリポソームクリームである、請求項1記載の薬学的組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2008−511660(P2008−511660A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530295(P2007−530295)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【国際出願番号】PCT/US2005/030919
【国際公開番号】WO2006/028835
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(595094600)トラスティーズ オブ ボストン ユニバーシティ (37)
【Fターム(参考)】