説明

甲状腺刺激ホルモンを用いての炎症の処理方法

甲状腺刺激ホルモンは、抗−炎症性活性を有することが示されている。甲状腺刺激ホルモンのポリペプチドは、独立型療法として、又は他の抗−炎症剤と共に、抗−炎症剤として使用される。さらに、甲状腺刺激ホルモンは、グルココルチコイド処理の抗−炎症活性を増強するために使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景:
炎症は通常、有害な剤及び損傷された組織を破壊し、希釈し、又は隔てる外傷又は微生物侵入に対する局在化された保護応答である。炎症により特徴づけられる炎症は、ヒトにおける羅病率及び死亡率の有意な原因である。炎症は通常、外来性材料による宿主の侵入に対する防御応答として生じるが、それはまた、機械的外傷、毒素及び新形成に対する応答により誘発される。外来物として宿主組織の異常認識により引き起こされる過剰炎症、又は炎症工程の延長はまた、炎症性疾患、例えば糖尿病、喘息、アテローム性硬化症、白内障、再灌流性損傷、癌、後−感染性症状、例えば感染性髄膜炎及びリウマチ性発熱及びリウマチ性疾患、例えば全身性エリテマトーデス及びリウマチ様関節炎を導く。従って、多くのそのような疾患において炎症を阻害する剤を生成する必要がある。
【0002】
グルココルチコイドは、視床下部、下垂体前葉又は副腎皮質における病理学的のために、副腎不全を有する個人のための置換療法として治療的に使用される。グルココルチコイドはまた、種々の数の非内分泌性疾患の処理のためにも使用される。置換療法を受ける患者におけるのを除いて、グルココルチコイドは特異的でも又は治療的でもなく:それらはそれらの抗炎症及び免疫抑制性質により症状の軽減を提供する。グルココルチコイドは、リウマチ性疾患、例えばリウマチ様関節炎、全身性エリテマトーデス及び種々の脈管炎、例えば結節性多発性動脈炎、ヴェーゲナー肉芽腫症及び巨細胞動脈炎を処理するために使用される。非炎症性変性関節疾患(例えば、変形性関節炎)において、又は種々の局部痛み症候群(例えば、腱炎又は滑液包炎)においては、グルココルチコイドは一時的な疾病再発の処理のために、局部注射により投与される。
【0003】
グルココルチコイドは、腎疾患、アレルギー性疾患、例えば枯草熱、血清病、蕁麻疹、接触性皮膚炎、薬物反応、ハチ刺痛、アレルギー性鼻炎及び血管神経性水腫を処理するために使用される。
【0004】
グルココルチコイドはまた、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎及び気腫を処理するためにも使用される。典型的には、剤、例えばメチルプレドニゾロン又はプレドニゾンが使用される。また、吸入されるグルココルチコイド、例えばベクロメタゾンジプロピオネート、トリアミシノロンアセトニド、フルニソリド又はブデソニドが使用され得る。
【0005】
グルココルチコイド又は広範囲の皮膚疾患、例えば乾癬、皮膚炎、汗腺炎性化膿、疥癬、バラ色粃糠疹、扁平苔癬、及び毛孔性紅色粃糠疹を処理するために使用される。グルココルチコイドが有用である他の炎症状態は、毒性表皮壊死融解症、多型紅斑、及び日焼けである。
【0006】
炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、及びクローン病は、グルココルチコイドにより処理され得る。グルココルチコイドはまた、慢性活性肝炎、アルコール症肝疾患及び重症性肝疾患を処理するためにも有用である。グルココルチコイドは、それらの抗リンパ球効果のために、急性リンパ性白血病及びリンパ腫の化学療法に使用される。グルココルチコイドはまた、類肉腫症、血小板減少症、赤血球の自己免疫性破壊、臓器移植、発作及び脊髄損傷の処理において有用である。
【0007】
しかしながら、グルココルチコイドが有用なほど、それらは重度の副作用を有する。次の2種のカテゴリーの毒性効果がグルココルチコイドの治療使用に起因する:グルココルチコイド療法の欠点に起因するそれら及び超生理学的用量の連続使用に起因するそれら。グルココルチコイド処理の停止の最も重度の合併症は、視床下部/下垂体/副腎(HPA)軸が抑制されている長期の治療の後、急速すぎるグルココルチコイドの中止に起因する急性副腎不足である。HPAシステムの抑制に起因する結果の他に、長期のグルココルチコイド療法に起因する多くの他の合併症、例えば体液及び電解質代謝異常、高血圧症、高血糖、感染に対して高められた感受性、カタラクタ、増殖停止、脂肪再分配、皮膚線条、皮下溢血、アクネ、多毛、及び胸腺萎縮が存在する。
【0008】
従って、炎症を処理するための新規の療法、例えば低用量のグルココルチコイドの使用を可能にし、そして従って、グルココルチコイド処理の副作用を低めるグルココルチコイド療法に関して投与される療法を提供する必要がある。
本発明は、炎症を処理するためへの甲状腺刺激ホルモンの新規使用、及び当業者に明らかである他の使用を提供する。
【発明の開示】
【0009】
発明の要約:
本発明の観点においては、治療的に十分な量のTSHポリペプチドを哺乳類に投与することを含んで成る、炎症を処理するための方法が提供され、ここで前記ポリペプチドの投与が前記哺乳類の炎症状態の臨床的に有意な改良性をもたらすことを特徴とする。1つの態様においては、前記TSHポリペプチドは、配列番号3で示されるようなアミノ酸配列、及び配列番号6で示されるようなアミノ酸配列を含んで成るヘテロダイマーを形成する。もう1つの態様においては、前記炎症状態の臨床学的に有意な改良性は、a)痛みの軽減又は阻害;b)腫張の軽減又は阻害;c)赤みの軽減又は阻害;d)発熱の軽減又は阻害;及びe)機能の損失の軽減又は阻害から成る群から選択される。
【0010】
本発明のもう1つの観点においては、治療的に十分な量のTSHポリペプチドを哺乳類に投与することを含んで成る、急性炎症の処理方法が提供される。
本発明のもう1つの観点においては、治療的に十分な量のTSHポリペプチドを哺乳類に投与することを含んで成る、慢性炎症の処理方法が提供される。
【0011】
本発明のもう1つの観点においては、治療的に十分な量のTSHポリペプチドを哺乳類に投与することを含んで成る炎症の処理方法が提供され、ここで前記哺乳類の炎症状態は自己免疫疾患に関連している。1つの態様においては、前記炎症は、リウマチ性疾患に関連する。さらなる態様においては、前記リウマチ性疾患は、リウマチ様関節炎、全身性エリテマトーデス、脈管炎疾患又は他のリウマチ性疾患であり得る。
【0012】
本発明のもう1つの観点においては、治療的に十分な量のTSHポリペプチドを哺乳類に投与することを含んで成る炎症の処理方法が提供され、ここで前記炎症はアレルギー性応答に関連する。
本発明のもう1つの観点においては、治療的に十分な量のTSHポリペプチドを哺乳類に投与することを含んで成る炎症の処理方法が提供され、ここで前記炎症は呼吸器管に位置する。1つの観点においては、前記炎症は、肺又は洞に位置する。もう1つの態様においては、炎症は、喘息、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎又は気腫に関連する。
【0013】
本発明のもう1つの観点においては、治療的に十分な量のTSHポリペプチドを哺乳類に投与することを含んで成る炎症の処理方法が提供され、ここで前記炎症は表皮に位置する。1つの態様においては、炎症は乾癬又は皮膚炎に関連する。
本発明のもう1つの観点においては、治療的に十分な量のTSHポリペプチドを哺乳類に投与することを含んで成る炎症の処理方法が提供され、ここで前記炎症は胃腸管に位置する。1つの態様においては、炎症は炎症性腫疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、又は炎症関連の下痢に関連する。
【0014】
本発明のもう1つの観点においては、治療的に十分な量のTSHポリペプチドを哺乳類に投与することを含んで成る炎症の処理方法が提供され、ここで前記炎症は対宿主性移植片病に関連する。1つの態様においては、炎症は単一器官又は多器官不全に関連する。
本発明のもう1つの観点においては、治療的に十分な量のTSHポリペプチドを哺乳類に投与することを含んで成る炎症の処理方法が提供され、ここで前記炎症は敗血症に関連する。
【0015】
本発明のもう1つの観点においては、治療的に十分な量のTSHポリペプチドを哺乳類に投与することを含んで成る炎症の処理方法が提供され、ここで前記炎症は肝臓に位置する。1つの態様においては、炎症は慢性急性肝炎、アルコール症肝疾患又は非アルコール性脂肪肝疾患に関連する。
【0016】
本発明のもう1つの観点においては、治療的に十分な量のTSHポリペプチドを哺乳類に投与することを含んで成る炎症の処理方法が提供され、ここで前記哺乳類は、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、結節性多発性動脈炎、ヴェーゲナー肉芽腫、側頭動脈炎、腎臓疾患、アレルギー疾患、喘息、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、肺気腫、乾癬、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン疾病、慢性活性肝炎、アルコール性肝障害、肝障害、非アルコール性脂肪肝病、急性リンパ性白血病、リンパ腫、類肉腫症、血小板減少症、自己免疫溶血性貧血、臓器移植、卒中、脊髄損傷、薬物反応、蕁麻疹、亜急性肝壊死、多発性骨髄腫、特発性血小板減少性紫斑病、後天性溶血性貧血、及び悪性高熱から成る群から選択された疾病を有する。
【0017】
本発明のもう1つの観点においては、治療的に十分な量のTSHポリペプチドを哺乳類に投与することを含んで成る炎症の処理方法が提供され、ここでTSHポリペプチドによる処理は、グルココルチコイド処理に換わるものとして使用され、そして前記ポリペプチドの投与は哺乳類の炎症状態における臨床学的に有意な改良性をもたらす。
【0018】
本発明のもう1つの観点においては、治療的に十分な量のTSHポリペプチドを哺乳類に投与することを含んで成る炎症の処理方法が提供され、ここでTSHポリペプチドによる処理は、グルココルチコイド処理に換わるものとして使用され、そして前記ポリペプチドの投与はグルココルチコイド誘発性副作用を妨げるか又は軽減する。1つの態様においては、前記グルココルチコイド−誘発性副作用が、副腎皮質の抑圧、骨粗鬆症、骨壊死、ステロイド誘発性カタラクタ、ステロイド誘発性肥満治療、コルチコイド誘発性精神病、消化管出血、胸腺萎縮、及び良性頭蓋内圧亢進症から成る群から選択される。
【0019】
本発明の観点においては、治療的に十分な量のTSHポリペプチドを哺乳類に投与することを含んで成る、炎症を軽減するための方法が提供され、ここで前記ポリペプチドの投与が前記哺乳類の炎症状態の臨床的に有意な改良性をもたらすことを特徴とする。1つの態様においては、前記TSHポリペプチドは、配列番号3で示されるようなアミノ酸配列、及び配列番号6で示されるようなアミノ酸配列を含んで成るヘテロダイマーを形成する。もう1つの態様においては、前記炎症状態の臨床学的に有意な改良性は、a)痛みの軽減又は阻害;b)腫張の軽減又は阻害;c)赤みの軽減又は阻害;d)発熱の軽減又は阻害;及びe)機能の損失の軽減又は阻害から成る群から選択される。
【0020】
本発明のもう1つの観点においては、治療的に十分な量のTSHポリペプチドを哺乳類に投与することを含んで成る、急性又は慢性炎症の軽減方法が提供される。1つの態様において、前記炎症又は炎症状態は、自己免疫疾患に関連している。
【0021】
本発明のもう1つの観点においては、治療的に十分な量のTSHポリペプチドを哺乳類に投与することを含んで成る炎症の軽減方法が提供され、ここで前記炎症は呼吸器官、肺、又は静脈洞炎、表皮、胃腸管又は肝臓に位置する。1つの態様においては、前記哺乳類は、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、結節性多発性動脈炎、ヴェーゲナー肉芽腫、側頭動脈炎、腎臓疾患、アレルギー疾患、喘息、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、肺気腫、乾癬、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン疾病、慢性活性肝炎、アルコール性肝障害、肝障害、非アルコール性脂肪肝病、急性リンパ性白血病、リンパ腫、類肉腫症、血小板減少症、自己免疫溶血性貧血、臓器移植、卒中、脊髄損傷、薬物反応、蕁麻疹、亜急性肝壊死、多発性骨髄腫、特発性血小板減少性紫斑病、後天性溶血性貧血、及び悪性高熱から成る群から選択された疾病を有する。
【0022】
本発明のもう1つの観点においては、治療的に十分な量のTSHポリペプチドを哺乳類に投与することを含んで成る炎症の処理方法が提供され、ここでTSHポリペプチドは、グルココルチコイド処理に換わるものとして使用される。
【0023】
本発明のもう1つの観点においては、治療的に十分な量のTSHポリペプチドを哺乳類に投与することを含んで成る炎症の軽減方法が提供され、ここでTSHポリペプチドによる処理は、グルココルチコイド誘発性副作用を妨げるか又は軽減する。1つの態様においては、前記グルココルチコイド−誘発性副作用が、副腎皮質の抑圧、骨粗鬆症、骨壊死、ステロイド誘発性カタラクタ、ステロイド誘発性肥満治療、コルチコイド誘発性精神病、消化管出血、胸腺萎縮、及び良性頭蓋内圧亢進症から成る群から選択される。
【0024】
本発明の観点においては、治療的に十分な量のTSHポリペプチド、及び1又は複数のグルココルチコイドを哺乳類に投与することを含んで成る、炎症を処理するための方法が提供され、ここで前記ポリペプチドの投与が前記哺乳類の炎症状態の臨床的に有意な改良性をもたらすことを特徴とする。1つの態様においては、前記TSHポリペプチドは、配列番号3で示されるようなアミノ酸配列、及び配列番号6で示されるようなアミノ酸配列を含んで成るヘテロダイマーを形成する。もう1つの態様においては、前記炎症状態の臨床学的に有意な改良性は、a)痛みの軽減又は阻害;b)腫張の軽減又は阻害;c)赤みの軽減又は阻害;d)発熱の軽減又は阻害;及びe)機能の損失の軽減又は阻害から成る群から選択される。
【0025】
本発明のもう1つの観点においては、治療的に十分な量のTSHポリペプチド、及び1又は複数のグルココルチコイドを哺乳類に投与することを含んで成る、急性炎症の処理方法が提供される。
本発明のもう1つの観点においては、治療的に十分な量のTSHポリペプチド、及び1又は複数のグルココルチコイドを哺乳類に投与することを含んで成る、慢性炎症の処理方法が提供される。
【0026】
本発明の観点においては、治療的に十分な量のTSHポリペプチド、及び1又は複数のグルココルチコイドを哺乳類に投与することを含んで成る、炎症を処理するための方法が提供され、ここで前記ポリペプチドの投与が前記哺乳類の炎症状態の臨床的に有意な改良性をもたらし、前記TSHポリペプチドは、配列番号3で示されるようなアミノ酸配列、及び配列番号6で示されるようなアミノ酸配列を含んで成るヘテロダイマーを形成し、そして前記炎症又は炎症状態は、自己免疫疾患に関連する。1つの態様においては、炎症は、リウマチ性疾患に関連する。さらなる態様においては、リウマチ性疾患は、リウマチ様関節炎、全身性紅斑性狼瘡、脈管炎性疾患、又は他のリウマチ様関節炎である。
【0027】
本発明の観点においては、治療的に十分な量のTSHポリペプチド、及び1又は複数のグルココルチコイドを哺乳類に投与することを含んで成る、炎症を処理するための方法が提供され、ここで前記ポリペプチドの投与が前記哺乳類の炎症状態の臨床的に有意な改良性をもたらし、前記TSHポリペプチドは、配列番号3で示されるようなアミノ酸配列、及び配列番号6で示されるようなアミノ酸配列を含んで成るヘテロダイマーを形成し、そして前記炎症は、アレルギー性応答に関連する。1つの態様においては、炎症は、呼吸器管に位置する。さらなる態様においては、炎症は、喘息、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎又は気腫に関連する。
【0028】
本発明の観点においては、治療的に十分な量のTSHポリペプチド、及び1又は複数のグルココルチコイドを哺乳類に投与することを含んで成る、炎症を処理するための方法が提供され、ここで前記ポリペプチドの投与が前記哺乳類の炎症状態の臨床的に有意な改良性をもたらし、前記TSHポリペプチドは、配列番号3で示されるようなアミノ酸配列、及び配列番号6で示されるようなアミノ酸配列を含んで成るヘテロダイマーを形成し、そして前記炎症は表皮に位置する。さらなる態様においては、炎症は乾癬又は皮膚炎に関連する。
【0029】
本発明の観点においては、治療的に十分な量のTSHポリペプチド、及び1又は複数のグルココルチコイドを哺乳類に投与することを含んで成る、炎症を処理するための方法が提供され、ここで前記ポリペプチドの投与が前記哺乳類の炎症状態の臨床的に有意な改良性をもたらし、前記TSHポリペプチドは、配列番号3で示されるようなアミノ酸配列、及び配列番号6で示されるようなアミノ酸配列を含んで成るヘテロダイマーを形成し、そして前記炎症は胃腸管に位置する。さらなる態様においては、炎症は炎症性腫疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、又は炎症関連の下痢に関連する。
【0030】
本発明の観点においては、治療的に十分な量のTSHポリペプチド、及び1又は複数のグルココルチコイドを哺乳類に投与することを含んで成る、炎症を処理するための方法が提供され、ここで前記ポリペプチドの投与が前記哺乳類の炎症状態の臨床的に有意な改良性をもたらし、前記TSHポリペプチドは、配列番号3で示されるようなアミノ酸配列、及び配列番号6で示されるようなアミノ酸配列を含んで成るヘテロダイマーを形成し、そして前記炎症は対宿主性移植片病に関連する。さらなる態様においては、炎症は単一器官又は多器官不全に関連する。
【0031】
本発明の観点においては、治療的に十分な量のTSHポリペプチド、及び1又は複数のグルココルチコイドを哺乳類に投与することを含んで成る、炎症を処理するための方法が提供され、ここで前記ポリペプチドの投与が前記哺乳類の炎症状態の臨床的に有意な改良性をもたらし、前記TSHポリペプチドは、配列番号3で示されるようなアミノ酸配列、及び配列番号6で示されるようなアミノ酸配列を含んで成るヘテロダイマーを形成し、そして前記炎症は敗血症に関連する。
【0032】
本発明の観点においては、治療的に十分な量のTSHポリペプチド、及び1又は複数のグルココルチコイドを哺乳類に投与することを含んで成る、炎症を処理するための方法が提供され、ここで前記ポリペプチドの投与が前記哺乳類の炎症状態の臨床的に有意な改良性をもたらし、前記TSHポリペプチドは、配列番号3で示されるようなアミノ酸配列、及び配列番号6で示されるようなアミノ酸配列を含んで成るヘテロダイマーを形成し、そして前記炎症は肝臓に位置する。さらなる態様においては、炎症は慢性急性肝炎、アルコール症肝疾患又は非アルコール性脂肪肝疾患に関連する。
【0033】
本発明の観点においては、治療的に十分な量のTSHポリペプチド、及び1又は複数のグルココルチコイドを哺乳類に投与することを含んで成る、炎症を処理するための方法が提供され、ここで前記ポリペプチドの投与が前記哺乳類の炎症状態の臨床的に有意な改良性をもたらし、前記TSHポリペプチドは、配列番号3で示されるようなアミノ酸配列、及び配列番号6で示されるようなアミノ酸配列を含んで成るヘテロダイマーを形成し、そして前記哺乳類は、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、結節性多発性動脈炎、ヴェーゲナー肉芽腫、側頭動脈炎、腎臓疾患、アレルギー疾患、喘息、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、肺気腫、乾癬、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン疾病、慢性活性肝炎、アルコール性肝障害、肝障害、非アルコール性脂肪肝病、急性リンパ性白血病、リンパ腫、類肉腫症、血小板減少症、自己免疫溶血性貧血、臓器移植、卒中、脊髄損傷、薬物反応、蕁麻疹、亜急性肝壊死、多発性骨髄腫、特発性血小板減少性紫斑病、後天性溶血性貧血、及び悪性高熱から成る群から選択された疾病を有する。
【0034】
本発明のもう1つの観点においては、治療的に十分な量のTSHポリペプチド、及び1又は複数のグルココルチコイドを哺乳類に投与することを含んで成る炎症の処理方法が提供され、ここでTSHポリペプチドによる処理は、グルココルチコイド誘発性副作用を妨げるか又は軽減する。1つの態様においては、前記グルココルチコイド−誘発性副作用が、副腎皮質の抑圧、骨粗鬆症、骨壊死、ステロイド誘発性カタラクタ、ステロイド誘発性肥満治療、コルチコイド誘発性精神病、消化管出血、胸腺萎縮、及び良性頭蓋内圧亢進症から成る群から選択される。もう1つの態様においては、グルココルチコイドのレベルは、TSHポリペプチドを伴わない処理に比較して、低められる。
【0035】
もう1つの態様においては、前記TSHポリペプチドは、配列番号3で示されるようなアミノ酸配列、及び配列番号6で示されるようなアミノ酸配列を含んで成るヘテロダイマーを形成する。もう1つの態様においては、前記炎症状態の臨床学的に有意な改良性は、a)痛みの軽減又は阻害;b)腫張の軽減又は阻害;c)赤みの軽減又は阻害;d)発熱の軽減又は阻害;及びe)機能の損失の軽減又は阻害から成る群から選択される。もう1つの観点においては、TSHポリペプチド及びグルココルチコイドは同時に投与される。もう1つの観点においては、TSHポリペプチド及びグルココルチコイドは連続的に投与される。もう1つの観点においては、グルココルチコイドは、短期作用性、中期作用性、又は長期作用性である。
【0036】
もう1つの観点においては、治療的に十分な量のTSHポリペプチド、及び1又は複数のグルココルチコイドを哺乳類に投与することを含んで成る炎症の処理方法が提供され、ここでポリペプチドの投与は哺乳類の炎症又は炎症状態に臨床的に有意な改良性をもたらし、そして前記グルココルチコイドは、アルクロメタゾンジプロピオネート、アムシノニド、ベクロメタゾンジプロピオネート、ベタメサゾン、安息香酸ベタメタゾン、ベタメサゾンジプロピオネート、ベタメサゾンナトリウム、吉草酸ベタメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、クロコルトロンピバレート、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン酪酸塩、ヒドロコルチゾンシピオネート、リン酸ナトリウム・ヒドロコルチゾン、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、ヒドロコルチゾン吉草酸塩、酢酸コルチゾン、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメサゾン、酢酸デキサメタゾン、 デキサメサゾンナトリウム、酢酸ジフロラゾン、
【0037】
酢酸フルドロコルチゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオロメトロン、フルドロキシコルチド、ハルシノニド、メドリゾン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロンナトリウム、モメタゾンフルオエート、酢酸パラメタゾン、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、プレドニゾロンリン酸ナトリウム、プレドニゾロンテブテート、プレドニソン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、二酢酸トリアムシノロン、及びトリアムシノロンヘキサセトニドから成る群から選択される。1つの態様においては、前記グルココルチコイドは、アルクロメタゾンジプロピオネート、アムシノニド、ベクロメタゾンジプロピオネート、ベタメサゾン、安息香酸ベタメタゾン、ベタメサゾンジプロピオネート、ベタメサゾンナトリウム、吉草酸ベタメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、クロコルトロンピバレート、ヒドロコルチゾン、
【0038】
酢酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン酪酸塩、ヒドロコルチゾンシピオネート、リン酸ナトリウム・ヒドロコルチゾン、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、ヒドロコルチゾン吉草酸塩、酢酸コルチゾン、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメサゾン、酢酸デキサメタゾン、 デキサメサゾンナトリウム、酢酸ジフロラゾン、酢酸フルドロコルチゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオロメトロン、フルドロキシコルチド、ハルシノニド、メドリゾン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロンナトリウム、モメタゾンフルオエート、酢酸パラメタゾン、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、プレドニゾロンリン酸ナトリウム、プレドニゾロンテブテート、プレドニソン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、二酢酸トリアムシノロン、又はトリアムシノロンヘキサセトニドから成る群から選択される。
【0039】
もう1つの観点においては、治療的に十分な量のTSHポリペプチド、及び1又は複数のグルココルチコイドを哺乳類に投与することを含んで成る炎症の処理方法が提供され、ここでポリペプチドの投与が前炎症指標の低下をもたらす。1つの態様においては、前記前炎症指標は、前炎症性サイトカインの血清レベル又は好中球浸潤に関連する炎症により測定される。1つの態様においては、前記前炎症性サイトカインはTNFαである。
【0040】
もう1つの観点においては、本発明は、ペプチド−受容体複合体の形成方法提供し、ここで固定された受容体を供給し;そして前記受容体とペプチドとを接触せしめ、ここで前記ペプチドが配列番号3で示されるようなアミノ酸配列を含んで成り、そして前記受容体がTSHRであり;それにより、前記受容体が前記ペプチドを結合することを含んで成る。
【0041】
もう1つの観点においては、本発明は、細胞培養上清液内に含まれるTSHの精製方法を提供し、ここで前記TSH含有上清液を、カチオン交換樹脂を含むクロマトグラフィーカラムに、前記TSHが前記カチオン交換樹脂に結合する条件下で適用し;前記カチオン交換樹脂からTSHを溶出し、そしてTSH−含有プールを捕獲し;前記TSH−含有プールを、疎水性相互作用樹脂を含むクロマトグラフィーカラムに、前記TSHが前記疎水性相互作用樹脂に結合する条件下で適用し;前記疎水性相互作用樹脂からTSHを溶出し、そしてTSH−含有プールを捕獲し;前記TSH−含有プールをサイズ排除カラムに適用し、そして前記サイズ排除樹脂からTSHで溶出し、そしてTSH−含有プールにおけるTSHを捕獲することを含んで成る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明の記載:
本発明を詳細に記載する前、次の用語を定義することで本発明の理解を助けることができる:
“親和性標識”とは、第2ポリペプチドの精製又は検出を提供し、又は基質への第2ポリペプチドの結合のための部位を供給するために、第2ポリペプチドに結合され得るポリペプチドセグメントを示すために本明細書において使用される。主に、抗体又は、他の特異的結合剤が利用できるいずれかのペプチド又はタンパク質が親和性標識として使用され得る。
【0043】
親和性標識は、ポリ−ヒスチジン系、すなわちプロテインA (Nilsson など., EMBO J. 4: 1075, 1985; Nilsson など., Methods Enzymol. 198: 3, 1991), グルタチオンS トランスフェラーゼ(Smits and Johnson, Gene 67; 31, 1988), Glu-Glu親和性標識 (Grussenmeyerなど., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 7952-4, 1985), 物質P、すなわちFlagTM ペプチド(Hoppなど., Biotechnology 6: 1204-1210, 1988)、ストレプタビジン結合ペプチド、又は他の抗原性エピトープ又は結合ドメインを包含する。一般的に、Ford など., Protein Expression and Purification 2:95-107, 1991を参照のこと。親和性標識をコードするDNAは、商品供給者(例えばPharmacia Biotech, Piscataway, NJ; Eastman Kodak, New Heven, CT; New England Biolabs, Beverly, MA)から入手できる。
【0044】
用語“対立遺伝子変異体”とは、同じ染色体遺伝子座を占める遺伝子の複数の遺伝子の二者択一形のいずれかを示すために、本明細書において使用される。対立遺伝子変異は、突然変異を通して天然では生じ、そして集団内の表現型多型現象をもたらすことができる。遺伝子突然変異は、サイレントであり(コードされたポリペプチドにおいて変化がない)、又は変更されたアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードすることができる。用語、対立遺伝子変異体はまた、遺伝子の対立遺伝子変異体によりコードされるタンパク質を示すために本明細書において使用される。
【0045】
用語“アミノ−末端”及び“カルボキシル−末端”とは、ポリペプチド内の位置を示すために本明細書において使用される。その情況が可能である場合、それらの用語は、接近性又は相対的位置を示すためにポリペプチドの特定の配列又は一部に関して使用される。例えば、ポリペプチド内の対象配列のカルボキシル末端側に位置する一定の配列は、その対象配列のカルボキシル末端に隣接して位置するが、しかし完全なポリペプチドのカルボキシル末端では必ずしも必要ではない。
【0046】
用語“相補体/抗−相補体対”とは、適切な条件下で、非共有的に会合される安定した対を形成する非同一性成分を示す。例えば、ビオチン及びアビジン(又はストレプタビジン)は、相補体/抗−相補体対の基本型メンバーである。他の典型的な相補体/抗−相補体対は、受容体/リガンド対、抗体/抗原(又はハプテン又はエピトープ)対、センス/アンチセンス ポリヌクレオチド対、及び同様のものを包含する。相補体/抗−相補体対の続く解離が所望される場合、その相補体/抗−相補体対は好ましくは、<109-1の結合親和性を有する。
【0047】
用語“縮重ヌクレオチド配列”とは、1又は複数の縮重コドンを含むヌクレオチドの配列(ポリペプチドをコードする対照ポリヌクレオチドに比較して)を示す。縮重コドンは、ヌクレオチドの異なったトリプレットを含むが、しかし同じアミノ酸残基をコードする(すなわち、GAU及びGACトリプレットはそれぞれAspをコードする)。
【0048】
用語“発現ベクター”とは、その転写を提供する追加のセグメントに作用可能的に連結される興味あるポリペプチドをコードするセグメントを含んで成る線状又は環状DNA分子を示すために使用される。そのような追加のセグメントは、プロモーター及びターミネーター配列及び複製の1又は複数の起点、1又は複数の選択マーカー、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、及び同様のものを包含する。発現ベクターは一般的に、プラスミド又はウィルスDNAから誘導され、又は両者の要素を含むことができる。
【0049】
用語“単離された”とは、ポリヌクレオチドに適用される場合、ポリヌクレオチドがその天然の遺伝的環境から除去され、そして従って、他の無関係な又は所望しないコード配列を有さず、そして遺伝子的に構築されたタンパク質生成システム内での使用のために適切な形で存在することを示す。そのような単離された分子は、それらの天然の環境から分離され、そしてcDNA及びゲノム クローンを含む分子である。本発明の単離されたDNA分子は、通常関係しない他の遺伝子を含まないが、しかし天然において存在する5’及び3’ 未翻訳領域、例えばプロモーター及びターミネーターを含むことができる。関連する領域の同定は、当業者に明らかであろう(例えば、Dynan and Tijan, Nature 316: 774―78, 1985を参照のこと)。
【0050】
“単離された”ポリペプチド又はタンパク質は、その生来の環境以外の条件、例えば血液及び動物組織とは別の条件下で見出されるポリペプチド又はタンパク質である。好ましい形においては、単離されたポリペプチドは、他のポリペプチド、特に動物起源の他のポリペプチドを実質的に含まない。高く精製された形、すなわち95%以上の純度、より好ましくは99%以上の純度でポリペプチドを供給することが好ましい。この情況下で使用される場合、用語“単離された”とは、他の物理的形、例えばダイマー形又は他のグリコシル化された又は誘導体化された形での同じポリペプチドの存在を排除しない。
【0051】
“作用可能的に連結された”とは、DNAセグメントに適用される場合、前記セグメントが、それらの意図された目的のために協力して機能し、例えば転写がプロモーターにおいて開始し、そしてコードセグメントを通してターミネーターに進行するよう配列されることを示す。
用語“オルト体(ortholog)”とは、異なった種からのポリペプチド又はタンパク質の機能的相対物である、1つの種から得られるポリペプチド又はタンパク質を示す。オルト体間の配列の差異は、特定化の結果である。
【0052】
“パラ体(paralogs)”とは、生物によって製造される、異なっているが,しかし構造的に関連するタンパク質である。パラ体は、遺伝子重複を通して生じると思われる。例えば、α−グロビン、β−グロビン及びミオグロビンは、お互いパラ体である。
【0053】
“ポリヌクレオチド”は、5’末端から3’末端に読み取られるデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド塩基の一本鎖又は二本鎖ポリマーである。ポリヌクレオチドは、RNA及びDNAを包含し、そして天然源から単離され、インビトロで合成され、又は天然及び合成分子の組み合わせから調製され得る。ポリヌクレオチドのサイズは、塩基対(略語“bp”)、ヌクレオチド(“nt”)、又はキロ塩基(“kb”)として表される。ここで、後者の2つの用語は、一本鎖又は二本鎖であるポリヌクレオチドを記載する。この用語が二本鎖分子に適用される場合、それは全体の長さを示すために使用され、そして用語、“塩基対”に等しいことが理解されるであろう。二本鎖ポリヌクレオチドの二本の鎖は長さにおいてわずかに異なり、そしてその末端が酵素分解の結果として異なることは、当業者により理解されており;従って、二本鎖ポリヌクレオチド分子内のすべてのヌクレオチドは一対に成り得ない。
【0054】
“ポリペプチド”は、天然において生成されても又は合成的に生成されてもいずれにせよ、ペプチド結合により連結されるアミノ酸残基のポリマーである。約10個以下のアミノ酸残基のポリペプチドが、通常“ペプチド”として言及される。
用語“プロモーター”とは、RNA ポリメラーゼの結合及び転写の開始を提供するDNA配列を含む遺伝子の部分を示すために本明細書において使用される。プロモーター配列は通常、遺伝子の5’ 非コード領域に見出されるが、しかし必ずしもそうではない。
【0055】
用語“タンパク質”は、1又は複数のポリペプチド鎖を含んで成る高分子である。タンパク質はまた、非ペプチド成分、例えば炭水化物基を含むことができる。炭水化物及び他の非ペプチド置換基は、タンパク質が生成される細胞により付加され、そして細胞型により変化するであろう。タンパク質は、それらのアミノ酸主鎖により本明細書において定義され;置換基、例えば炭水化物基は一般的に、特定されないが、しかしそれにもかかわらず、存在することができる。
【0056】
用語“受容体”は、生物活性分子(すなわち“リガンド”)に結合し、そして細胞上のリガンドの効果を仲介する細胞関連タンパク質を示す。膜結合受容体は、細胞外リガンド結合ドメイン、及び典型的には、シグナルトランスダクションに関与する細胞内エフェクタードメインを含んで成る多ペプチド構造により特徴づけられる。受容体へのリガンドの結合は、細胞におけるエフェクタードメインと他の分子との間の相互作用を引き起こす受容体におけるコンホメーション変化をもたらす。この相互作用は、細胞の代謝の変更を誘導する。
【0057】
受容体−リガンド相互作用に連結される代謝現象は、遺伝子転写、リン酸化、脱リン酸化、AMP生成の上昇、細胞カルシュウムの代謝、膜脂質の代謝、細胞付着、イノシトール脂質の加水分解、及びリン脂質の加水分解を包含する。一般的に、受容体は、膜結合され、シトソール性又は核性であり;モノマー(例えば甲状腺刺激ホルモン受容体、β−アドレナリン性受容体)、又はマルチマー(例えばPDGF受容体、成長ホルモン受容体、IL−3受容体、GM―CSF受容体、G−CSF受容体、エリトロポイエチン受容体及びIL―6受容体)であり得る。
【0058】
用語“分泌シグナル配列”とは、それが合成される細胞の分泌路を通してより大きなポリペプチドを、より大きなポリペプチドの成分として方向ずけるポリペプチド(“分泌ペプチド”)をコードするDNA配列を示す。前記のより大きなポリペプチドは、分泌路を通しての移動の間、分泌ペプチドを除去するために通常分解される。
【0059】
用語“スプライス変異体”とは、遺伝子から転写されるRNAの二者択一の形を示すために、本明細書において使用される。スプライス変異は、転写されたRNA分子内の、又は通常低いが、別々に転写されたRNA分子間の二者択一のスプライシング部位の使用を通して天然において生じ、そして同じ遺伝子から転写されるいくつかのmRNAをもたらすことができる。スプライス変異体は、変更されたアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードすることができる。用語スプライス変異体はまた、遺伝子から転写されるmRNAのスプライス変異体によりコードされるタンパク質を示すために本明細書において使用される。
【0060】
不正確な分析方法(例えば、ゲル電気泳動)により決定されるポリマーの分子量及び長さは、おおよその値であることが理解されるであろう。そのような値が“約”X又は“おおよそ”Xとして表される場合、その言及されたXの値は、正確には±10%であることが理解されるであろう。
本明細書に引用されるすべての引例は、それらの全体において引用により組込まれる。
【0061】
チロトロピンとも呼ばれる甲状腺刺激ホルモン(TSH)は、向甲状腺細胞と呼ばれる下垂体前葉体における細胞から分泌され、そして従来、甲状腺の正常な成長及び分泌活性を刺激することが知られている糖タンパク質ホルモンである。本発明の新規方法は、TSHがまた、個人の免疫応答を操作するためにも使用され得ることを示す。従って、本発明は、TSHを単独で、又はグルココルチコイドと共に投与する方法を含んで成る。
【0062】
本発明は、広範囲の炎症条件下で抗炎症剤としてTSHを用いるための方法を提供する。一定の態様においては、前記方法は、グルココルチコイド処理の効果を増強するためにTSHを用いることを包含する。
本発明の方法は、治療的有効量のTSHを、単独で又は他の生物製剤又は医薬と組合して投与することを包含する。本発明は、慢性又は急性炎症を有する哺乳類を処理し、その炎症を改善し、制限するか、又は予防する方法を提供する。それらの方法は、TSHがインビボで抗炎症活性を有する発見に基づかれている。
【0063】
上記で言及されるように、本発明の方法は、治療的有効量のTSHを、単独で、又は他の生物製剤又は医薬と組合して投与することを包含する。本発明は、急性又は慢性炎症を有する哺乳類の処理方法を提供する。本発明の他の観点は、炎症状態、例えば自己免疫疾患、リウマチ障害、アレルギー応答、移植片宿主相関病、臓器障害、敗血症、喘息、多発性硬化症、炎症性腸疾患、炎症性関節腫脹、重症患者、及び免疫抑制に関連する炎症状態のために抗−炎症剤としてTSHを用いる方法を提供する。
【0064】
もう1つの観点においては、本発明の方法はまた、炎症状態、例えば自己免疫疾患、リウマチ障害、アレルギー応答、移植片宿主相関病、臓器障害、敗血症、喘息、多発性硬化症、炎症性腸疾患、炎症性関節腫脹、重症患者、及び免疫抑制に関連する炎症状態において、グルココルチコイドによる処理を置換するか又は補足するために、治療的有効量のTSHを、単独で又は他の生物製剤又は医薬と共に投与することを含んで成る、哺乳類における炎症を処理するための方法を包含する。
【0065】
A. TSHポリヌクレオチド及びポリペプチドの記載
甲状腺刺激ホルモン(TSH)は、非共有結合される、αサブユニット及びβサブユニットから成るヘテロダイマータンパク質ホルモンである。αサブユニットは、糖タンパク質のホルモンα鎖ファミリーに属し、そしてそれぞれ、配列番号1及び2に示されるようなポリヌクレオチド及びポリペプチドアミノ酸配列を有する。αサブユニットのためのシグナル配列は、配列番号2のアミノ酸残基1(Met)〜アミノ酸残基24(Ser)を含んで成る。TSHαのための成熟ポリペプチドは、アミノ酸残基25(Ala)で始まる。
【0066】
成熟αサブユニットポリペプチドは、配列番号3で示される。β−サブユニットは、TSHに対してユニークであり、そしてそれぞれ配列番号4及び5で示されるようなポリヌクレオチド及びポリペプチドを有する。βサブユニットのためのシグナル配列は、配列番号2のアミノ酸残基1(Met)〜アミノ酸残基20(Ser)を含んで成る。TSHのβサブユニットを含んで成る成熟ポリペプチドは、アミノ酸残基21(Phe)で始まる。成熟βサブユニットポリペプチドは、配列番号6で示される。TSHポリペプチドは、Genzyme (Thyrogen(商標)カタログ番号36778号 ; Genzyme Corporation, Cambridge, MA)から入手できる。
【0067】
成熟ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が原核系、例えばE. コリにおいて発現される場合、分泌シグナル配列は必要とされず、そしてN−末端Metが存在するであろう。
【0068】
TSHは、甲状腺−刺激ホルモン(TSH)又は甲状腺刺激ホルモン受容体との相互作用を通してその効果を発揮する。TSH受容体(TSHR)は、G−タンパク質結合された、7−トランスメンブラン受容体スーパーファミリーのメンバーである。TSH受容体の活性化は、下流の細胞効果を引き起こす、ヘテロトリマーGタンパク質との結合を導く。TSH授与体は、サブタイプGs, Gq, G12及びGiのGタンパク質と相互作用することが示されている。特に、Gsとの相互作用は、アデニルシクラーゼの活性化及び高められたレベルのcAMPを導く。Laugwitz など. , Proc Natl Acad Sci U SA 93: 116-20 (1996)を参照のこと。cAMPレベルの上昇は、タンパク質キナーゼA、多能タンパク質キナーゼ、及び種々の細胞効果を誘発する転写因子の活性化を導く。Bourneなど., Nature 349: 117-27 (1991) を参照のこと。
【0069】
TSHRは、糖タンパク質ホルモンTSHへの暴露に続いて、甲状腺の主要活性化因子として甲状腺において最初に同定された。下垂体前葉体からのTSH開放は、甲状腺ホルモンの分泌、甲状腺ホルモン合成の刺激及び細胞増殖をもたらすTSHRを刺激する。TSH開放は甲状腺ホルモンレベルにより調節され、そして高められたグルココルチコイドレベルにより阻害される。Utiger, in E7ldocrinology aizd Metabolism (Felig and Frohman, eds), pp. 261-347, McGraw-Hill, (2001)を参照のこと。
【0070】
最近、TSHRは、これまで認識されていない多くの細胞型、例えば免疫系、脳、脂肪及び生殖器官の細胞において同定されている。例2を参照のこと。それらの組織はまた、副腎機能のエフェクターとしてTSH及びグルココルチコイドについての同等役割を示唆する、グルココルチコイド作用の標的物である。
【0071】
十分な長さのポリペプチド、生物学的活性のフラグメント及び融合ポリペプチドを包含する、本発明のTSHポリペプチドは、従来の技法に従って、遺伝子的に構築された宿主細胞において生成され得る。適切な宿主細胞は、外因性DNAにより形質転換されるか又はトランスフェクトされ得、そして培養において増殖され得るそれらの細胞型であり、そして細菌、菌類細胞及び培養された高等真核細胞を包含する。クローン化されたDNA分子を操作し、そして外因性DNAを種々の宿主細胞中に導入するための技法は、Sambrook など, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989, and Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Inc. , NY, 1987により開示される。
【0072】
一般的に、本発明のTSHポリペプチドをコードするDNA配列は、その発現のために必要とされる他の遺伝子的要素、例えば一般的に、発現ベクター内の転写プロモーター及びターミネーターに作用可能的に連結される。ベクターはまた、通常、1又は複数の選択マーカー及び1又は複数の複製の起点を含むであろうが、しかし当業者は、一定のシステム内で、選択マーカーが別のベクター上に供給され得、そして外因性DNAの複製が宿主細胞ゲノム中への組み込みにより供給され得ることを認識するであろう。プロモーター、ターミネーター、選択マーカー、ベクター及び要素の選択は、当業者のレベルの範囲内の通常のことである。多くのそのような要素は文献に記載されており、そして商業的供給者を通して入手できる。
【0073】
TSHポリペプチドを、宿主細胞の分泌路中に方向づけるためには、分泌シグナル配列(又は、シグナル配列、リーダー配列、プレプロ配列又はプレ配列としても知られている)が、発現ベクターに供給される。分泌シグナル配列は、もう1つの分泌されたタンパク質(例えばAPO4又はt−PA )に由来し、又は新たに合成され得る。分泌シグナル配列は、TSHα又はβ DNA配列、すなわち配列番号3又は6に作用可能的に連結され、すなわち2つの配列は正しく読み取り枠を整合して連結され、そして宿主細胞の分泌経路中に新しく合成されたポリヌクレオチドを方向づけるように配置される。分泌シグナル配列は通常、興味あるポリペプチドをコードするDNA配列の5’ 側に位置するが、但し一定の分泌シグナル配列は、興味あるDNA配列の他の場所に位置することもできる(例えば、Welchなど.,アメリカ特許第5,037,743号;Hollandなど., アメリカ特許第5,143,830号を参照のこと)。
【0074】
培養された哺乳類細胞または、本発明内の適切な宿主である。外因性DNAを 、哺乳類宿主細胞中に導入するための方法は、リン酸カルシュウム−仲介トランスフェクション(Wiglerなど., Cell 14 : 725, 1978; Corsaro and Pearson, Somatic Cell Genetics 7 :603, 1981; Graham など., Virology 52; 456, 1973),エレクトロポレーション( Neumann など., EMBO J. 1: 841−845, 1982 ); DEAE−デキストラン仲介トランスフェクション(Ausubel など., 前記)、及びリポソーム−仲介トランスフェクション(Hawley −Nelson など., Focus 15: 73, 1993; Ciccarone など.,Focus 15: 80, 1993 )及びウイルスベクター(Miller and Rosman, BioTechniques 7: 980-90, 1989; Wang and Finer, Nature Med. 2: 714-6, 1996)を包含する。
【0075】
培養された哺乳類細胞における組換えポリペプチドの生成は、例えばlevinson など., アメリカ特許第4,713,339 号; Hagen など., アメリカ特許第4,784,950 号; Palmiter など., アメリカ特許第 4,579,821 号; 及びRingold, アメリカ特許第 4,656,134 号により開示される。培養された適切な哺乳類細胞は、COS−1(ATCC No. CRL 1650)、COS−7(ATCC No. CRL 1651)、BHK(ATCC No. CRL 1632)、BHK 570 (ATCC No. CRL 10314 )、293(ATCC No. CRL 1573 ; Graham など., J. Gen. Viro. 36: 59−72, 1977 )、及びチャイニーズ ハムスター卵巣(例えば CHO−K1; ATCC No. CCL61 )細胞系を包含する。
【0076】
追加の適切な細胞系は当業界において知られており、そして公的な寄託所、例えば American Type Culture Collection,Manassas,VAから入手できる。一般的に、強い転写プロモーター、例えばSV−40 又はサイトメガロウィルスからのプロモーターが好ましい。例えば、アメリカ特許第4,956,288 号を参照のこと。他の適切なプロモーターは、メタロチオネイン遺伝子からのプロモーター(アメリカ特許 4,579,821 号及び第 4,601,978 号)、アデノウィルス主要後期プロモーターを包含する。
【0077】
薬物選択は一般的に、外来性DNAが挿入されている、培養された哺乳類細胞を選択するために使用される。そのような細胞は通常、“トランスフェクタント”として言及される。選択剤の存在下で培養され、そしてそれらの子孫に興味ある遺伝子を伝達することができる細胞は、“適切なトランスフェクタント”として言及される。好ましい選択マーカーは、抗生物質ネオマイシンに対する耐性をコードする遺伝子である。選択は、ネオマイシン型薬物、例えばG−418又は同様のもの存在下で実施される。“増幅”として言及される方法である選択システムは、興味ある遺伝子の発現レベルを高めるためにも使用される。
【0078】
増幅は、低レベルの選択剤の存在下でトランスフェクタントを培養し、そして次に、導入された遺伝子の生成物を高レベルで生成する細胞を選択するために選択剤の量を高めることによって実施される。好ましい増幅可能選択マーカーは、メトトレキセートに対する耐性を付与するジヒドロ葉酸レダクターゼである。他の耐薬物性遺伝子(例えば、ヒグロマイシン耐性、複数薬物耐性、ピューロマイシン アセチルトランスフェラーゼ)もまた、使用され得る。変更された表現型を導入する他のマーカー、例えば緑色蛍光タンパク質、又は細胞表面タンパク質、例えばCD4, CD8,クラスI MHC、胎盤アルカリホスファターゼが、FACS分類又は磁気ビース分離技法のような手段により、トランスフェクトされていない細胞とトランスフェクトされた細胞とを分類するために使用され得る。
【0079】
他の高等真核細胞、例えば昆虫細胞、植物細胞及び鳥類細胞もまた、宿主として使用され得る。植物細胞において遺伝子を発現するためのベクターとしてのアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes )の使用は、Sinkarなど.、J. Biosci. ( Bangalore ) 11: 47−58, 1987 により再考されている。昆虫細胞の形質転換、及びそこにおける外来性ポリペプチドの生成は、Guarino など.,アメリカ特許第5,162,222号;及びWIPO公開WO94/06463号により公開される。
【0080】
昆虫細胞は、オートグラファ・カリホルニカ( Autographa californica )核多角体病ウィルス(AcNPV)に通常由来する組換えバキュロウィルスにより感染され得る。King, L. A. and Possee, R.D., The Baculovirus Exprossion System: A Laboratory Guide, London, Chapman & Hall; O’Reilly, D. R. ., Baculovirus Expression Vector: A Laboratory Manual, New York, Oxford University Press., 1994; 及びRichardson, C. D., Ed., Baculovirus Expression Protocols. Methods in Molecular Biology, Totowa, NJ, Humana Press, 1995を参照のこと。
【0081】
組換えTSHバキュロウィルスを製造するための第2の方法は、Luckow ( Luckow, VA, など., J. Virol 67: 4566−79, 1993 ) により記載されるトランスポゾンに基づくシステムを利用する。トランスファーベクターを利用するこのシステムは、Bac−to−BacTMキット(Life Technologies, Rockville, MD)として市販されている。このシステムは、“bacmid” と呼ばれる大きなプラスミドとして、E.コリに維持されるバキュロウィルスゲノム中に、TSHポリペプチドをコードするDNAを移動せしめるために、Tn7トランスポゾンを含むトランスファーベクター、pFastBac1TM (Life Technologies )を利用する。pFastBac1トランスファーベクターは、興味ある遺伝子、この場合、TSHの発現を駆動するためにAcNPVポリへドリンプロモーターを用いる。しかしながら、pFastBac1は、相当の程度、修飾され得る。
【0082】
ポリへドリンプロモーターは、除去され得、そしてバキュロウィルス感染において初期において発現され、そして分泌されるタンパク質を発現するために好都合であることが示されているバキュロウィルス基本タンパク質プロモーター(また、Pcor, p6.9又はMPプロモーターとしても知られている)により置換され得る。Hill−Perkins, M.S. and Possee, R.D., J. Gen. Virol. 71: 971−6, 1990; Bonning, B.C. など., J. Gen. Virol. 75: 1551−6, 1994; 及びChazenbalk, G. D., and Rapoport, B., J. Biol Chem. 270: 1543−9,1995 を参照のこと。そのようなトランスファーベクター構造体においては、短いか又は長いバージョンの基本タンパク質プロモーターが使用され得る。
【0083】
さらに、生来のTSH分泌シグナル配列を、昆虫タンパク質由来の分泌シグナル配列により置換するトランスファーベクターが構成され得る。例えば、Ecdysteroid グルコシルトランスフェラーゼ (EGT), ミツバチ Melittin (Invitrogen, Carlsbad, CA)又は バキュロウィルスgp67 (PharMingen, San Diego, CA)から分泌シグナル配列が、生来のTSH分泌シグナル配列を置換するために構造体に使用され得る。さらに、トランスファーベクターは発現されたTSHポリペプチドのC−又はN−末端でエピトープ標識、例えばGlu−Glu エピトープ標識をコードするDNAとのイン−フレーム融合体を含むことができる(Grussenmeyer, T. など., Peoc. Natl. Acad. Sci. 82: 7952−6, 1985)。
【0084】
当業界において知られている技法を用いて、TSHを含むトランスファーベクターにより、E.コリが形質転換され、そして組換えバキュロウィルスの表示である断続的lacZ遺伝子を含むbacmida についてスクリーンされる。組換えバキュロウィルスゲノムを含むbacmid DNA が、通常の技法を用いて単離され、そしてスポドプテラ・フルギペルダ( Spodoptera frugiperda )細胞、例えばSf9 細胞をトランスフェクトするために使用される。TSHを発現する組換えウィルスが結果的に生成される。組換えウィルス ストックは、当業者において通常使用される方法により製造される。
【0085】
組換えウィルスは、宿主細胞、典型的には、アワヨトウの幼虫、スポドプテラ・フルギペルダに由来する細胞系を感染せしめるために使用される。一般的には、Glick and Pasternak, Molecular Biotechnology: Principles and Application of Recombinant DNA, ASM Prss, Washington, D.C., 1994を参照のこと。もう1つの適切な細胞系は、トリコプルシア・ニ(Trichoplusia ni)に由来するHigh FiveOTM細胞系(Invitrogen)である(アメリカ特許第5,300,435号)。市販の血清フリー培地が、細胞を増殖し、そして維持するために使用される。
【0086】
適切な培地は、Sf9細胞のためには、SF900IITM (Life Technologies),又はESF 921TM(Expression Systems); 及びT. ni 細胞のためには、Ex−CellO405TM(JRH Biosciences, Lenza, KS)又はExpress FiveOTM(Life Technologies )である。細胞は、約2−5×105個の細胞〜1−2×106個の細胞の接種密度まで増殖され、この時点で、組換えウィルスストックが、0.1〜10、より典型的には、3近くの感染の多重度(MOI)で添加される。使用される方法は一般的に、入手できる実験用マニュアルに記載されている(King, L. A. and Possee, R. D., 前記; O’Reilly, D. R. など., 前記;Richardson, C. D., 前記)。上清液からのTSHポリペプチドの続く精製は、本明細書に記載される方法を用いて達成され得る。
【0087】
菌類細胞、例えば酵母細胞はまた、本発明内で使用され得る。これに関して、特に興味ある酵母種は、サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae), ピチア・パストリス(Pichia pastoris)及びピチア・メタノリカ(pichia methanolica) を包含する。外因性DNAによりS. セレビシアエ細胞を形質転換し、そしてそれから組換えポリペプチドを生成するための方法は、例えばKawasaki, アメリカ特許第4,599,311号;Kawasaki など., アメリカ特許第4,931,373号;Brake, アメリカ特許第4,870,008号;Welchなど., アメリカ特許第5,037,743号;及びMurray など., アメリカ特許第4,845,075号により開示される。
【0088】
形質転換された細胞は、選択マーカー、通常、耐薬物性、又は、特定の栄養物(例えばロイシン)の不在下で増殖する能力により決定される表現型により選択される。サッカロミセス・セレビシアエへの使用のための好ましいベクターシステムは、グルコース含有培地における増殖により形質転換された細胞の選択を可能にする、Kawasaki など. (アメリカ特許第4,931,373号)により開示されるPOT1ベクターシステムである。酵母への使用のための適切なプロモーター及びターミネーターは、解糖酵素遺伝子(例えば、Kawasaki, アメリカ特許第4,599,311号;Kingsmanなど., アメリカ特許第4,615,974号;及びBitter, アメリカ特許第4,977,092 号を参照のこと)及びアルコール デヒドロゲナーゼ遺伝子からのものを包含する。また、アメリカ特許第4,990,446 号;第5,063,154号;第5,139,936 号;及び第4,661,454号を参照のこと。
【0089】
他の酵素、例えばハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、シゾサッカロミセス・ポンベ( Schizosaccharomyces pombe )、クルイベリミセス・ラクチス( Kluyveromyces lactis )、クルイベリミセス・フラギリス(Kluyveromyces fragilis )、ウスチラゴ・マイジス(Ustilago maydis )、ピチア・パストリス( Pichia pastoris )、ピチア・メタノリカ(Pichia methanolica)、ピチア・グイレルモンジ( Pichia guillermondii )、及びカンジタ・マルトサ(Candida maltosa )のための形質転換システムは、当業界において知られている。例えば、Gleeson など., J. Gen. Microbiol. 132: 3459−3465, 1986 及びCregg, アメリカ特許第4,882,279 号を参照のこと。
【0090】
アスペルギラス細胞は、Mcknight など.,アメリカ特許第4,935,349号の方法に従って使用され得る。アクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)を形質転換するための方法は、Sumino ., アメリカ特許第5,162,228号により開示される。ニューロスポラ(Neurospora)を形質転換するための方法は、Lambowitz, アメリカ特許第4,486,533号により開示される。組換えタンパク質の生成のための宿主としてのピチア・メタノリカの使用は、アメリカ特許第5,716,808号、第5,736,383号、 第5,854,039号 及び第 5,888,768号に開示される。
【0091】
原核宿主細胞、例えば細菌E.コリ、バシラス及び他の属の菌株はまた、本発明において有用な宿主細胞である。それらの宿主を形質転換し、そしてそこにクローン化される外来性DNA配列を発現するための技法は、当業界において良く知られている(例えば、Sambrookなど., 前記を参照のこと)。細菌、例えばE.コリにおいてTSHポリペプチドを発現する場合、そのポリペプチドは、典型的には不溶性顆粒として細胞質に保持され得、又は細菌の分泌配列により細胞周辺腔に向けられ得る。前者の場合、細胞は溶解され、そして顆粒が回収され、そして例えばグアニジンイソチオシアネート又はウレアを用いて変性される。
【0092】
次に、変性されたポリペプチドが再生され、そして例えばウレア、及び還元された及び酸化されたグルタチオンの組み合わせの溶液に対する透析、続く緩衝溶液に対する透析により、前記変成体を希釈することによって二量体化され得る。後者の場合、ポリペプチドは、細胞周辺腔の内容物を開放するために細胞を破壊し(例えば、音波処理又は浸透ショックにより)、そしてタンパク質を回収することによって、細胞周辺腔から可溶性及び機能性形で回収され、それにより、変性及び再生のための必要性を回避することができる。
【0093】
形質転換され又はトランスフェクトされた宿主細胞は、選択された宿主細胞の増殖のために必要とされる栄養物及び他の成分を含む培養培地において、従来の方法に従って培養される。種々の適切な培地、例えば定義された培地及び複合培地は、当業界において知られており、そして一般的には、炭素源、窒素源、必須アミノ酸、ビタミン及び鉱物を含む。培地はまた、必要とされる場合、成長因子又は血清のような成分も含むことができる。増殖培地は一般的に、外因的に付加されたDNAを含む細胞を、例えば発現ベクター上に担持される選択マーカーにより補足され、又は宿主細胞中に同時トランスフェクトされる必須栄養物における薬物選択又は栄養欠乏により選択するであろう。
【0094】
P.メタノリカ細胞は適切な炭素源、窒素源及び微量栄養物を含んでなる培地において、約25℃〜35℃の温度で培養される。液体培養物は、従来の手段、例えば小さなフラスコの振盪又は発酵器のスパージングにより十分なエアレーションを提供される。P.メタノリカのための好ましい培養培地は、YEPD(2%D−グルコース、2%のBactoTMペプトン(Difco Laboratories, Detroit, MI), 1%のBactoTM 酵母抽出物(Difco Laboratories), 0.004%のアデニン及び0.006%のL−ロイシン)である。
【0095】
本発明のタンパク質はまた、天然に存在しないアミノ酸残基を含んで成る。天然に存在しないアミノ酸は、トランス−3−メチルプロリン、2,4−メタプロリン、シス−4−ヒドロキシプロリン、トランス−4−ヒドロキシプロリン、N−メチルグリシン、アロ−トレオニン、メチルトレオニン、ヒドロキシエチルシステイン、ヒドロキシエチルホモシステイン、ニトログルタミン、ホモグルタミン、ピペコリン酸、チアゾリジンカルボン酸、デヒドロプロリン、3−及び4−メチルプロリン、3,3−ジメチルプロリン、tert−ロイシン、ノルバリン、2−アザフェニルアラニン、3−アザフェニルアラニン、4−アザフェニルアラニン、及び4−フルオロフェニルアラニンを包含する。
【0096】
天然に存在しないアミノ酸残基をタンパク質中に導入するためのいくつかの方法が当業界において知られている。例えばナンセンス突然変異が化学的にアミノアシル化されたサプレッサーtRNAを用いて抑制されるインビトロシステムが使用され得る。アミノ酸を合成し、そしてtRNAをアミノアシル化するための方法は、当業者において知られている。ナンセンス突然変異を含むプラスミドの転写及び翻訳は、E.コリS30抽出物及び市販の酵素及び他の試薬の含んで成る細胞フリーシステムにおいて実施される。タンパク質は、クロマトグラフィーにより精製される。例えば、Rovertsonなど., J. Am. Chem. Soc. 113:2722, 1991; Ellman など., Meth. Enzymol. 202: 301,1991; Chung など., Science 259: 806−09, 1993; 及びChungなど., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 10145−49, 1993を参照のこと。
【0097】
第2の方法においては、翻訳は、突然変異誘発されたmRNA及び化学的にアミノアミル化されたサプレッサ−tRNAのマイクロインジェクションによりアフリカツメガエル卵母細胞において行われる( Turcatti など., J. Biol. Chem. 271: 1991−98, 1996 )。 第3の方法においては、E.コリ細胞が、置換される予定である天然のアミノ酸(例えば、フェニルアラニン)の不在下で及び所望する天然に存在しないアミノ酸(例えば、2−アザフェニルアラニン、3−アザフェニルアラニン、4−アザフェニルアラニン又は4−フルオロフェニルアラニン)の存在下で培養される。
【0098】
天然に存在しないアミノ酸は、その天然の相対物の代わりにタンパク質中に導入される。Koide など., Biochem. 33: 7470−46, 1994を参照のこと。天然に存在するアミノ酸残基は、インビトロ化学的に修飾により天然に存在しない種に転換され得る。化学的修飾は、置換の範囲をさらに拡張するために特定部位の突然変異誘発と組み合わされ得る(Wynn and Richards,Protein Sci. 2: 395−403, 1993)。
【0099】
限定された数の非保存性アミノ酸、遺伝子コードによりコードされないアミノ酸、天然に存在しないアミノ酸、及び不自然なアミノ酸が、TSHアミノ酸により置換され得る。
本発明のポリペプチドを少なくとも80%の純度、より好ましくは少なくとも90%の純度、さらに好ましくは少なくとも95%の純度に精製することが好ましく、そして汚染性高分子、特に他のタンパク質及び核酸に対して、少なくとも99.9%の純度であり、そして感染性及び発熱性剤を有さない医薬的に純粋な状態が特に好ましい。好ましくは、精製されたポリペプチドは、他のポリペプチド、特に動物起源の他のポリペプチドを実質的に有さない。
【0100】
発現される組換えTSHタンパク質(キメラポリペプチド及び多重タンパク質)は、従来のタンパク質精製方法により、典型的には、クロマトグラフィー技法の組合わせにより精製される。一般的に、Affinity Chromatography: Principles & Methods, Pharmacia LKB Biotechnology, Uppsala, Sweden, 1988; and Scopes, Protein Purification: Principles and Practice, Springer- Verlag, New York, 1994を参照のこと。ポリヒスチジン親和性標識(典型的には、6個のヒスチジン残基)を含んで成るタンパク質は、ニッケルキレート樹脂上での親和性クロマトグラフィーにより精製される。例えば、Houchuli など. , Bio/Technol. 6: 1321-1325,1988を参照のこと。glu-glu標識を含んで成るタンパク質は、従来の方法に従ってイムノアフィニティークロマトグラフィーにより精製され得る。例えば、Grussenmeyerなど.,前記を参照のこと。マルトース結合タンパク質融合体は、当業界において知られている方法に従ってアミロースカラム上で精製される。
【0101】
本発明のポリペプチドは、アニオン及びカチオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除、及び親和性クロマトグラフィーを包含する方法の組み合わせより単離され得る。例えば、固定された金属イオン吸着(IMAC)クロマトグラフィーが、ヒスチジンに富んでいるタンパク質、及びポリヒスチジン標識を含んでなるそれらのタンパク質を精製するために使用され得る。手短に言及すれば、ゲルがまず、二価金属イオンにより荷電され、キレートが形成される( Sulkowski, Trends in Biochem. 3: 1−7, 1985)。ヒスチジンに富んでいるタンパク質が、使用される金属イオンに依存して、異なった親和性を有するこのマトリックスに吸着され、そして競争溶出、pHの低下、又は強いキレート化剤の使用により溶出されるであろう。
【0102】
他の精製方法は、レクチン親和性クロマトグラフィー及びイオン交換クロマトグラフィーによるグリコシル化されたタンパク質の精製を包含する(Methods in Enzymol., Vol. 182, “Guide to Protein Purification”, M. Deutscher, ( ed.), Acad. Press, San Diego, 1990, pp. 529−39)。本発明のさらなる態様においては、興味あるポリペプチド、及び親和性標識(例えばマルトース−結合タンパク質、FLAG標識、Glu-Gku標識、免疫グロブリンドメイン)の融合体が、精製を促進するために構成され得る。
【0103】
TSHポリペプチドはまた、排除固相合成、部分固相合成、フラグメント縮重又は従来の溶液合成を包含する、当業界において知られている方法に従っての化学合成を通して調製され得る。例えば、Merrifield, J. Am. Chem. Soc. 85: 2149,1963 ; Stewart など Solid Phase Peptide Synthesis (2nd edition), Pierce Chemical Co. , Rockford, IL, 1984; Bayer and Rapp, Chem. Pept. Prot. 3: 3,1986 ; 及び Atherton など. , Solid Phase Peptide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press, Oxford, 1989を参照のこと。インビトロ合成は、小さなポリペプチドの調製のために特に好都合である。
【0104】
当業界において知られている方法を用いて、TSHタンパク質は、モノマー又はマルチマーとして調製され得;グリコシル化されるか、又はグリコシル化されなくても良く;ペギレート化(pegylate)されても又はペギレート化されなくても良く;そして初期メチオニンアミノ酸残基を含んでも又は含まなくても良い。
【0105】
水溶性ポリマーとのタンパク質の接合は、タンパク質の循環半減期を増強し、そしてポリペプチドの免疫原性を低めることが知られている(例えば、Nieforth などClin. Pharmacol. Ther. 59: 636 (1996), 及び Monkarsh など Anal. Biochem. 247: 434 (1997)を参照のこと)。適切な水溶性ポリマーは、ポリエチレングルコール(PEG)、モノメトキシ−PEG、モノ−(C1-C10)アルコキシ−PEG、アリールオキシ−PEG、ポリ−(N−ビニルピロリドン)PEG、トレシルモノメトキシPEG、PEGプロピオンアルデヒド、ビス−スクシンイミジルカーボネートPEG、プロピレングリコールホモポリマー、酸化ポリプロピレン/酸化エチレンコポリマー、ポリオキシエチル化されたポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、デキストラン、セルロース又は他の炭水化物基材のポリマーを包含する。適切なPEGは、約600〜約60,000、例えば5,000, 12,000, 20,000及び40,000の分子量を有することができる。
【0106】
TSH接合体の1つの例は、TSH成分、又はその変異体、及びTSH成分のN−末端に結合されるポリアルキルオキシド成分を含んで成る。例示のように、TSHは、PEG、すなわち“PEG化”として知られている方法により修飾され得る。TSHのPEG化は、当業界において知られているPEG化反応のいずれかにより実施され得る(例えば、EP 0 154 316号, Delgado など Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 9 : 249 (1992), Duncan and Spreafico, Clin. 27: 290 (1994), 及び Francis など Int J Hematol 68: 1 (1998)を参照のこと)。本発明の方法は、水溶性ポリマー、例えばPEGに接合されるTSH及びその変異体の投与を包含する。
【0107】
本発明の方法において有用である、THSの変異体を同定するために使用される分子についての生物学的活性の例は、いくらかの特異性を伴ってTSHRに結合することができる分子を包含する。一般的に、その同起源の受容体に結合するリガンドは、そのKpが100nM〜100pMの範囲内にある場合、特異的である。100mM〜10nMのKDの範囲での特異的結合は、低い親和性結合である。2.5pM〜100pMのKDの範囲での特異的結合は、高い親和性結合である。もう1つの例においては、生物学的活性のTSH変異体は、野生型TSHに関連する抗−炎症活性のいくらかのレベルであり得る。
【0108】
B. 炎症状態へのTSHの使用
炎症は、痛み、腫脹、赤み、発熱及び機能の損失により従来、特徴づけられて来た。炎症性疾患は、慢性又は急性現象、例えば外傷、損傷及びストレス、及び自己免疫状態に起因し、そして例えば手術、感染、アレルギー、自己免疫性の結果であり得る。
TSHは、種々の免疫障害に関連する炎症の処理に使用され得る。そのような免疫障害は、例えば、自己免疫異常、リウマチ障害、過敏症、乾癬、皮膚炎、炎症性腸疾患、移植片宿主相関病、臓器障害、及び肝臓疾患を包含する。
【0109】
TSH受容体は、免疫系、例えばグルココルチコイド作用の標的物における多くの細胞に見出される。それらは、単球/マクロファージ、T−細胞、B−細胞、樹状突起細胞及び多型核白血球細胞を包含する。例2を参照のこと。また、Bagriacik and Klein, J Iinmunol 164: 6158-65 (2000), and Kiss など., Iinmunol Lett 55: 173-7 (1997)を参照のこと。ビオチニル化されたTSHを用いての流動細胞計測法が、それらの免疫細胞型の表面上でのTSHRの発現を確めるために使用されて来た(例4を参照のこと)。また、Bagriacik and Klein, J. Immunol. 164: 6158-65, (2000) を参照のこと。
【0110】
TSHRの活性化は、それらの受容体が機能的であることを示唆する、樹状突起細胞及びT−細胞における高められたcAMPを導くことが示されている。多くのそれらの細胞型におけるcAMPレベルの上昇は、いくつかの炎症性サイトカイン、例えばIL-1, IL-6, IL-12, TNFα及びIFNγの合成分泌を阻害することが示されている。Delgado and Ganea, J Biol Chenz 274: 31930-40 (1999)を参照のこと。さらに、炎症メディエーター、例えば酸化窒素の生成は、マクロファージにおける高められたcAMPにより抑制される。Delgado など., Ann N Y Acad Sci 897: 401-14 (1999)を参照のこと。それらの作用は、免疫系におけるグルココルチコイド作用について上記に記載される生物学的現象に匹敵する。
【0111】
免疫細胞によるTNFαの生成は、炎症現象の有意な成分である。グルココルチコイドは、上記のように、NF−κBの阻害を通してTNFαを抑制するよう作用する。TSHRの活性化及びcAMPの上昇はまた、JNKキナーゼによりリン酸化される、転写因子c−Junのリン酸化の阻害によるTNFα発現の阻害をもたらす。Delgadoなど., J. Biol. Chem. 273: 31427-36 (1998) を参照のこと。c-Junリン酸化は、TNFαプロモーター領域におけるDNA配列との高い親和性相互作用のために必要とされる。
【0112】
刺激の不在下で、それらのDNA配列は、転写の負のレギュレーターとして作用することができる、cAMP応答性要素結合タンパク質(CREB)転写因子により支配される。CREB転写因子は、TNFα発現に対して負の調節を発揮することが知られている、高められたcAMPの下流のタンパク質キナーゼAによるリン酸化により活性化される。Delgado など., J Biol Chezn 273: 31427-36 (1998)を参照のこと。従って、TSHは、単独で、又はグルココルチコイドによる補助治療において、重要な炎症メディエーターである。
【0113】
免疫細胞に結合するTSHの下流の高められたcAMPは、ets-2転写因子複合体の重要な成分であるIRF-1の転写を抑制する。ets-2は、T細胞介在性炎症応答の重要な刺激物であるIL-12の高レベル発現のために必要とされる。Maなど., J. Biol. Chem. 272: 10389-95 (1997) を参照のこと。IL-12は、T細胞活性化及び細胞毒性リンパ球機能に関係し、そしてTH1サブセットへのヘルパー(TH)細胞の分化を促進する。Trinchierri, Int. Rev. Immunol. 16: 365-96 (1998) を参照のこと。グルココルチコイドは、主に転写因子NF-κBの阻害を通してIL-12合成を阻害する。従って、TSHは、単独で、又はグルココルチコイドと供にTSHを投与することにより、哺乳類における炎症応答を軽減するために使用され得る。この投与の効果は、IL-12の低下により測定され得る。IL-12レベルを測定するための方法は、当業者に通常知られており、そして市販されている。
【0114】
胸腺細胞及びT細胞においては、cAMP上昇は、IκBαの安定化及びNF-κBトランスロケーションの続く欠陥を生む。Manna and Aggarwal, J Ininmunol 161: 2873-80 (1998)を参照のこと。他の研究は、競争機構を通して、高められたcAMPによるNF-κB転写活性の阻害を報告している。リン酸化されたCREBとNF-κBとの間の限定量の補活性化因子CREB結合タンパク質(CREBP)についての競争は、低レベルのNF-κB転写活性をもたらすことが示唆されている。Ollivier など., Bio chez 271: 20828-35 (1996)を参照のこと。
【0115】
IL-10は、IL-12及びTNFα生成をダウンレギュレートする抗炎症性サイトカインである。GCへの末梢血液リンパ球の適度な暴露は、IL-10生成を高める。Franchimont など., J Clin Endocrinol Metab 84: 2834-9 (1999)を参照のこと。IL-10開放は、最高濃度のGCでのみ阻害される。IL-10合成は、高められたcAMPにより高められる。Platzer など., Eur J Imrnunol 29: 3098- 104 (1999)を参照のこと。これは、抗−炎症性サイトカイン(IL-10)の合成を高めることにより、及び前炎症性サイトカイン(TNFα及びIL-12)の合成を低めることにより、免疫抑制において、単独で又はグルココルチコイドと組合してのTSHの役割を示唆する。
【0116】
本明細書に教授されるように、炎症及び免疫疾患を処理するためにTSHを用いる新規方法は免疫系の複数成分を標的化するために使用され得る。例えば、例3に示されるように、インビボでのTSH処理は、感作化で、又はDTH応答の攻撃期で投与される場合、遅延された型の過敏性(DTH)反応を抑制することができる。TSHの抗炎症作用は、DTHモデルの炎症におけるグルココルチコイドデキサメタゾンにより生成されるその作用に類似する。例3は、単独で投与されるTSHの有能な抗炎症作用を示し、そしてグルココルチコイドと供にTSHの同時投与が低下するグルココルチコイド投与量の手段を提供することを示唆する。TSHの抗炎症効果を測定するためののう1つのモデルは、例5に記載されるLPSモデルである。
【0117】
さらに、本発明のポリペプチドは、炎症疾患の診断において使用され得る。そのような診断は、TSHがペプチドであり、そしてTSHRが受容体である、ペプチド−受容体複合体の形成を提供するキットにおいて使用され得、ここで炎症は、前炎症インジケーターの低下を測定することにより検出される。
【0118】
C. グルココルチコイド療法を置換するか、又は補足するためへのTSHの使用
グルココルチコイドは、炎症及び免疫応答のほぼすべての要素に影響を及ぼすことができる。一般的に、GCは一次応答を刺激する状態又は損傷に影響を及ぼさないが、しかし変わりに、開始ストレッサーに対する応答の出現を改良する。基本的グルココルチコイドレベルがストレス応答を可能にし、そしてそれを増強することができることは一般的に許容されているが、高められたレベルは応答を制限するよう作用し、従って、回復に寄与する。Sapolskyなど., Endocr. Rev. 21: 55-89 (2000) を参照のこと。そのような相互作用は免疫応答の大きさ及び期間を調節し、そして恒常性に影響を及ぼすサイトカインの過剰生成を妨げるよう作用することができる。
【0119】
グルココルチコイドは、ホルモンの結果に基づいて、細胞の核にトランスロケートし、そして標的遺伝子の転写の変更された速度を引き起こす、従来のステロイドホルモン受容体に結合することにより、応答性細胞に対するそれらの効果を発揮する。グルココルチコイド受容体(GR)は、身体じゅうで発現され、そして非常に低いフィードバック調節を受けやすい。炎症応答において、グルココルチコイドは、遺伝子転写を抑制することにより、免疫応答の急性相メディエーターの生成を阻害するよう作用する。
【0120】
グルココルチコイドの最も一般的な効果は、サイトカイン、及び免疫及び炎症反応を促進する他の炎症メディエーターの合成及び放出を阻害することである。それらは、IL-1, IL-2, IL-3, IL-5, IL-6, IL-8, IL-12, TNFα(主要壊死因子α)、IFNγ(インターフェロンγ)、RANTES(活性化に基づいて調節され、発現され、そして正常T細胞により分泌される)、酸化窒素、エイコサノイド、コラゲナーゼ、プラスミノーゲン活性化因子、ヒスタミン及びエラスターゼを包含するが、但しそれらだけには限定されたない。Sapolskyなど., Endocy Rev 21: 55-89 (2000) を参照のこと。
【0121】
GR−介在性遺伝子抑制は、核因子NF−κB(前炎症シグナル化経路の十分に特徴づけられた成分)の阻害に起因する。Rothwarf and Karin, Sci STKE 1999: RE1 (1999)を参照のこと。NF−κB複合体は、Rolタンパク質に関連する転写因子ファミリーから製造される。刺激に続いて、NF−κB複合体は、阻害IκBサブユニットのリン酸化及び続く分解により細胞質において活性化される。機能的p65-p50ダイマーは、核にトランスローケートされ、そしてNF−κB標的遺伝子の調節領域における特定の配列を結合する。NF−κBを通してサイトカインシグナル化のGR−介在性阻害は、GCの抗炎症及び免疫抑制効果の原因であると思われる。Miesfeld, in Endocrinology (DeGroot and Jameson, eds) Vol. 2, pp. 1647-1654, W. B. Saunders, (2001)を参照のこと。
【0122】
治療応答の誘発におけるグルココルチコイドの相対的能力は、受容体−結合活性、及び全身性循環における作用の期間と相互関係する。通常使用されるグルココルチコイドは、短期作用性、中期作用性及び長期作用性として分類される。コルチゾール、すなわち副腎皮質において生成される天然のヒトグルココルチコイドは、短期作用性グルココルチコイドである。他の例は、コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン及びメチルプレドニゾロンを包含する。トリアムシノロンは、中期作用性コルチコイドの例である。Axelrod, in Endocrinology (DeGroot and Jameson, eds) Vol. 2, pp. 1671-1682, W. B. Saunders, (2001)を参照のこと。TSHは、グルココルチコイドが有益であるすべての臨床指標においてグルココルチコイド治療の置換のための、又はその治療と供に治療剤として使用されるであろう。
【0123】
グルココルチコイドは、中でも最も通常使用される薬物である。それらは、マイナーな皮膚状態から生命脅威の問題、例えば白血病及び器官移植片拒絶までの多くの医薬問題を処理するために使用される。単独での又はグルココルチコイド治療と供にTSHの臨床的使用は、アレルギー性疾患、例えば喘息、薬物反応及び蕁麻疹を包含するが、但しそれらだけには限定されない。関節炎、特にリウマチ様関節炎もまた包含される。他の使用は、炎症性胃腸疾患、例えば炎症性大腸炎及び潰瘍性結腸炎、亜急性肝壊死及び限局性回腸炎を包含する。
【0124】
自己免疫疾患、例えば紅斑性狼瘡、クローン病、および自己免疫溶血性貧血はまた、TSHのみ又はグルココルチコイドと組合しての処理のための指標として包含される。TSHは特に移植片拒絶、例えば腎臓、肝臓、心臓及び肺移植片の処理のために有益である。TSHは、血液疾患、例えば白血病、多発性骨髄腫、特発性血小板減少性紫斑病、及び後天性溶血性貧血の処理のために特に有益である。TSHから有益である他の疾病は、類肉腫症、グルココルチコイドにより処理される眼病、神経疾患、腎臓疾患、及び悪性高熱を包含する。さらに、TSHはまた、敗血症及び多臓器不全を処理するためにも使用され得る。
【0125】
D. HPA抑制を低めるためへのTSHの使用
視床下部、下垂体及び副腎は、神経内分泌回路を形成し、この主要機能はコルチゾール生成の調節である。コルチゾールは、副腎皮質により生成される天然のヒトグルココルチコイドである。コルチゾールは、CRH(コルチコトロピン−放出ホルモン)及びACTH(アドレノコルチコトロピンホルモン)の生成を低めることにより、この軸に対する従来のフィードバック調節を発揮する。高められたコルチゾールによるACTH分泌のフィイードバック調節は、早い、中間の早さの及び遅い成分を有するものとして記載されている。
【0126】
早い及び中間の早さのフィードバックは、それらの合成の阻害によるよりもむしろ、存在するCRHの開放の阻害により仲介されると思われる。早いフィードバックは弱い刺激に対するACTH応答を鈍くするが、しかし強い刺激、例えば内毒素及び手術に対する応答を可能にする。グルココルチコイド濃度が特に延長されたグルココルチコイド療法により上昇するにつれて、遅いフィードバックはACTHの低められた又は不在の合成を可能にし、そして結果的に、CRHの投与に対する下垂体の非応答性を生成する。Miller and Chrousos, in Endocrinology and Metabolism (Felig and Frohman, eds), pp. 387-524, McGraw-Hill, (2001)を参照のこと。
【0127】
グルココルチコイド治療の間、副腎皮質機能は有意に抑制されるようになる。延長された抑制は、ACTH及びその成長−刺激活性の欠失のために、副腎皮質の極端な萎縮を引き起こす。そのようなフィードバック抑制からの回復は、遅く生じ、そしてグルココルチコイド療法の中断に続いて、常に重要な考慮である。患者が慢性グルココルチコイド処理に続く適切なストレス応答を開始できる程度への副腎皮質の機能的回復は、1〜12ヶ月かかる。結果として、グルココルチコイド投与は典型的には、治療処理の最後まで、数ヶ月間、維持レベルで続けられる。Chrousos, in Endocrinology and Metabolis7n (Felig and Frohman, eds), pp. 609-632, McGraw-Hill (2001)を参照のこと。
【0128】
副腎皮質の回復の時間は、前のグルココルチコイド治療の合計持続期間、及び合計のグルココルチコイド用量に相互関係する。回復速度はまた、グルココルチコイドが低められる場合に与えられる用量、及び処理の初期相の間に投与される用量により決定される。副腎皮質の回復は一般的に、副腎抑制に関連する萎縮を逆転するために、正常な生理学的範囲以上のACTHレベルを必要とする。高められたACTHレベルは典型的には、十分な基本的コルチゾールレベルがフィードバック阻害を通してACTHレベルを低める前、グルココルチコイド治療の中止に続いて数ヶ月間、見出される。
【0129】
しかしながら、ACTHレベルが正常範囲に戻った後でさえ、有意なストレッサーに続いて高められたATCHへの副腎の暴露は、不鮮明な応答をもたらす。このために、低い用量のグルココルチコイド投与が、患者が適切なストレス応答を開始できることを確めるために、続けられる。外因性グルココルチコイド投与のための置換体として内因性GC生成を刺激するためへのACTHの使用は集中的に研究されて来た。Axelrod, in Textbook of Rheumatology (Kelley など. , eds), WB Saunders (1993)を参照のこと。ACTHの使用は、副腎皮質抑制を劇的に低め、そして多くの場合、過反応性及び過形成状態をもたらす。
【0130】
しかしながら、ACTH投与の同時鉱物コルチコイド及びアンドロゲン刺激性室のために、ACTHは好ましい処理方法ではない。外因性GC処理の停止に続く副腎抑制を逆転するためへのACTHの使用がまた研究されて来た。ACTHの投与は、副腎不足の進行又は推移を逆転しない。Chrousos, in Endocrinology and Metabolism (Felig and Frohman, eds), pp. 609-632, McGraw-Hill (2001)を参照のこと。今日まで、阻害がグルココルチコイド治療に起因すると、正常なHPA機能への戻りを促進するための方法は存在しない。
【0131】
副腎抑制は標準の実施により臨床的に評価される。Axelrod, in Textbook of Rheumatology (Kelley など. , eds) WB Saunders (1993)を参照のこと。グルココルチコイドが約24時間、回収され、そして測定される用量のACTHが与えられる。基線からのコルチゾールの相対的上昇が、有意なストレス関連現象に対して適切に応答する副腎の能力を評価するために、ACTH投与に続いて特定の時間で測定される。基本的コルチゾールレベルにおける変動のために、副腎欠失は、絶対的な測定されるレベルによってではなく、コルチゾール生成の上昇により決定される。
【0132】
TSH投与は、副腎抑制を妨げるための新規方法を提供する。TSHは、副腎皮質におけるTSH受容体の活性化を通して副腎皮質に対して作用する。これは、正常な皮質機能の維持のために必要である、皮質におけるcAMPの生成を刺激する。例1は、ヒト副腎皮質細胞系NCI-H295RがTSHのシグナルトランスダクションを研究するために使用される場合、TSHの皮質刺激を示す。TSH処理は、フォルスコリン、すなわちアデニルシクラーゼの構成インジューサーに匹敵するcAMPの用量−依存性誘発を生成した。
【0133】
グルココルチコイド療法におけるTSHの同時投与は、副腎萎縮及び副腎抑制を誘発するか、又は予防することができる。これは、2種の機能により達成され得る。第1は、TSHの同時投与が、上記のように、低い重度の抑制をもたらすことができる低い合計用量のグルココルチコイドの使用を可能にする。第2は、副腎皮質に対するTSHの刺激的効果は、皮質の萎縮を改善し、副腎の長期抑制を妨げ、そして有意なストレッサーに対するHPA軸応答を回復することができる。
【0134】
E. TSHの配合及び投与
TSHは、グルココルチコイド処理と供に、又はそれに代わるものとして投与され得る。これは、TSHがステロイドの投与の前、その間又はその後に投与され、そして独立型療法であることを意味する。投与方法は、静脈内、腹膜内、筋肉内及び局部的投与を包含する。医薬的に許容できる担体は、水、塩溶液及び緩衝液を包含するが、但しそれらだけには限定されない。用量範囲は通常、0.1μg〜100μg/kg体重/日であることが予測され、そして正確な用量は、処理される病状の性質及び重症度、患者の形質、等を考慮して、許容される基準に従って臨床医により決定される。
【0135】
この用量範囲内で、5μg/kg/日の用量が使用され得る。またこの範囲内で、5〜100μg/kg/日の範囲がまた使用され得る。最初に試みる有用な用量は、30〜50μg/kg/日である。しかしながら、その用量は、医者により決定されるように、高くても又は低くても良い。薬物配合及び用量範囲の完全な論議については、Renzingtozz's Plaar7naceutical Sciences, 17th Ed. , (Mack Publishing Co. , Easton, Penn. , 1990),及び Goodman and Gilman's : The Pharmacological Bases of Therapeutics, 9h Ed. (Pergamon Press 1996)を参照のこと。
【0136】
医薬使用に関しては、本発明のタンパク質は、経口的に、直腸的に、非経口的に(特に、静脈内又は皮下)、槽内、膣内、腹腔内、局部的(粉末、軟膏、ドロップ又は経皮内パッチ)、頬内、又は肺又は鼻腔内吸入剤として、投与され得る。静脈内投与は、ボーラス注射、又は1〜数時間の典型的な期間にわたっての注入によるであろう。一般的に、医薬配合物は、TSHは、TSHタンパク質、及び医薬的に許容できるビークル、例えば塩溶液、緩衝溶液、水中、5%デキストロース又は同様のものを含むであろう。配合はさらに、1又は複数の賦形剤、保存剤、安定剤、緩衝剤、表面上でのタンパク質損失を妨げるためのアルブミン、等を含むことができる。
【0137】
配合方法は、当業界において良く知られており、そして例えば、Remington : The Science and Practice of Phar77lacy, Gennaro, ed., Mack Publishing Co. , Easton, PA, 19th ed. , 1995に開示される。TSHポリペプチドの用量は、一般的に毎日〜毎週のスケジュールで投与されるであろう。用量の決定は、当業者のレベル内である。タンパク質は、数日〜数ヶ月又は数年にわたって、急性又は慢性処理のために投与され得る。一般的に、治療的有効量のTSHは、炎症状態において臨床学的に有意な変化を生成するために十分な量である。
【0138】
グルココルチコイドは効果的な遍在する生物学的調節であるが、グルココルチコイド療法は重度の副作用を有する。従って、いずれかの治療プロトコールにおいて有効用量のグルココルチコイドを低めることが高く所望される。グルココルチコイド作用を強化するか又は増強し、又はさらに置換する補助療法は、より低い用量のグルココルチコイドの使用を可能にするであろう。免疫抑制のメディエーターとしてのTSHの発現は、グルココルチコイドを伴って又はそれを伴わないで、TSHを投与し、又は/それに従って、低いグルココルチコイド用量を伴って、同等の治療効果を生成する能力を導く。
【0139】
TSH処理は、リンパ細胞集団においていずれの測定できる変更も導くことはできない。グルココルチコイドによる類似する処理は、いくつかのリンパ細胞集団において、特に胸腺において、T−リンパ球成熟の部位の劇的な低下を導く。結果として、グルココルチコイドによる処理は、感染、例えば細菌、ウィルス、菌類及び寄生体感染の危険性を高める。Chrousos, in Endocrinology and Metabolism (Felig and Frohman, eds), pp. 609-632, McGraw-Hill (2001)を参照のこと。グルココルチコイド用量を低めるか、又は治療をTSHのみにより置換するためへのTSHの同時投与は、それらの感染の危険性を低めることが予測される。
【0140】
グルココルチコイド治療のいくつかの有害な結果は、処理の期間よりも用量により関連する。骨の無血管又は虚血性壊死は、グルココルチコイド治療の共通する副作用であり、そして用量の結果であると思われる。Chrousos, in Endocrit2ology and Metabolism (Felig and Frohman, eds), pp. 609-632, McGraw-Hill (2001)を参照のこと。ステロイド−誘発性白内障、すなわちグルココルチコイド処理された患者における有意な危険性がそれらの個人におけるグルココルチコイドの高い局部濃度のためである証拠が存在する。炎症のモデュレーターとしてのTSHの発見は、グルココルチコイド投与の副作用の同時低下を伴って、グルココルチコイド用量の低下を可能にする。
【0141】
グルココルチコイド治療の他の有害な結果は、TSHの同時投与により改善され得る。オステオポローシスは、長期グルココルチコイド治療における主要制限因子である。グルココルチコイドは、一部、アポプトシスを生成することにより、骨−形成細胞に対して、及び骨吸収を刺激することにより、破骨細胞に対して作用すると思われる。高い用量のグルココルチコイドは、腸カルシウム吸収を阻害することが知られている。Singer, in Endocrinology and Metabolism (Felig and Frohman, eds), pp. 1179-1219, McGraw-Hill (2001)を参照のこと。グルココルチコイド用量の低下は、長期グルココルチコイド使用の骨においては有害な結果を最少にする手段として研究されており、そして最少の可能な治療用量の使用は強く促進される。Chrousos, in Endocrinology and Metabolism (Felig and Frohman, eds), pp. 609-632, McGraw-Hill (2001)を参照のこと。
【0142】
骨芽細胞(例2)、すなわち骨形成細胞におけるTSH受容体の存在はまた、TSHが骨形成のグルココルチコイド−介在性阻害に対して保護的であることを示唆する。従って、骨において、TSH受容体の活性化は、骨細胞における分化された機能を刺激し、従って、グルココルチコイドの前アポプトシス効果を阻害するcAMPを高める。Siddhanti and Quarles, J Cell Biocheni 55: 310-20 (1994)を参照のこと。
【0143】
TSH同時投与により減じるグルココルチコイド投与の追加の副作用は、肥満、コルチコステロイド誘発性精神病、消化管出血、及び良性頭蓋内圧亢進症を包含する。
さらに、上記に示され、そして本明細書において教授されるように、TSHの抗−炎症効果は、TSH投与によるグルココルチコイド治療の完全な置換を可能にする。
【0144】
TSHはまた、単独型治療として、又はグルココルチコイド、例えばデキサメタゾン又はプレドニゾンと供に関節炎を処理するためにも使用され得る。TSHの効果は、コラーゲン誘発された関節炎についてのインビボモデルにおいて測定され得る。Tanaka, Y. など., Zm/M. Res. 45: 283-88,1996を参照のこと。
本発明はさらに、次の非制限的例により例示される。
【実施例】
【0145】
例1:副腎皮質細胞のTSH活性化がcAMP生成をもたらす
要約:ヒト副腎皮質細胞系NC1-H295Rを用いて、TSHのシグナルトランスダクションについて研究した。NCI−H295Rを、レポーター構造体、すなわちホタルルシフェラーゼ遺伝子を、cAMP応答要約(CRE)エンハンサー配列の制御下で含む組み換えアデノウィルスにより形質導入した。このアッセイシステムは、GS−カップリングされたGPCR(G−タンパク質カップリングされた受容体)の活性化の下流のcAMP−介在性遺伝子誘発を検出する。精製されたTSHへテロダイマータンパク質によるNCI−H295の処理は、10μMのホルスコリン、すなわちアデニルシクラーゼの構成インジューサーにより誘発された活性に等しいか又はそれよりも高いルシフェラーゼ活性の用量−依存性誘発を生成した。典型的には、TSHは、対照培地よりも15〜25倍高いルシフェラーゼ誘発の最大応答を誘発した。それの結果は、副腎皮質及びcAMPの生成におけるGPCRを通してTSHシグナルを示す。
【0146】
実験方法
NCI−H295R細胞を、ATCC(CRL−2128, Manassas, VA)から入手し、そして次の通りに増殖培地において培養した:25mMのHEPES緩衝液(GIBCO, Invitrogen, Carlsbad, CA, カタログ番号15630-080)、1mMのピルビン酸ナトリウム(GIBCO、カタログ番号11360−070)、1%ITS+1倍値サプリメント(Sigma St. Louis, MO, カタログ番号12521)及び2.5%Nu−Serum I(BD Biosciences, Lexington, KY カタログ番号355100)を含む、ダルベック変性ケーグル培地及びL−グルタミンを有するHam’s F12培地(D-MEM/F-12; GIBCO、カタログ番号11320−033)の1:1混合物。細胞を、5%CO2を含む、保湿されたインキュベーターにおいて37℃で培養した。
【0147】
アッセイの1又は2日前、細胞を、96−ウェルの白色不透明/透明底プレート(BD Biosciences, カタログ番号356650号)におけるウェル当たり20,000個の細胞で接種した。アッセイの1日前、細胞を、KZ55、すなわちCRE駆動のルシフェラーゼレポーターカセットを含むアデノウィルスベクターにより、細胞当たり5000個の粒子で形質導入した。一晩のインキュベーションに続いて、細胞を、アッセイ媒体(0.1%ウシ血清アルブミンにより補充されたD−MEM/F-12、ICN Biomedicals, Inc., Aurora, OH, カタログ番号103700)により1度すすぎ、続いて、試験タンパク質が添加されているアッセイ媒体において37℃で4時間インキュベートした。次に、プレートを、リン酸緩衝溶液(GIBCO、カタログ番号20012−027)により洗浄した。
【0148】
Promega's Luciferase Assay System (Promega, Madison, WI, カタログ番号E1500)を用いて、前記処理された細胞を処理した。25μl/ウェルの細胞溶解緩衝液を、個々のウェルに添加し、そして室温で15分間インキュベートした。ルシフェラーゼ活性を、マイクロプレートルミノメーター(PerkinElmer Life Sciences, Inc. , model LB 96V2R)上で、ルシフェラーゼアッセイ基質の自動注入に従って測定した。
【0149】
例2:TSH受容体遺伝子発現の分布
RNAサンプルを、逆転写酵素ポリメラーゼ鎖反応(RT-PCR)増幅を用いて、TSHR転写体についてを調べた。標準の方法を用いて、RNAサンプルを組織及び細胞系から単離し、そしてRT−PCRを、2種の別々のプライマー対により行った。第1のプライマー対は、前方向プライマー(5'TCAGAAGAAAATCAGAGGAATC)(配列番号7)及び逆方向プライマー(5'GGGACGTTCAGTAGCGGTTGTAG)(配列番号8)を包含し、それらは487bpの生成物を増幅する。増幅された生成物は、ゲノムDNA汚染から発生するシグナルを制御するためのイントロンに及ぶ。第2プライマー対は、前方向プライマー(5'CTGCCCATGGACACCGAGAC)(配列番号9)及び逆方向プライマー(5'CCGTTTGCATATACTCTTCTGAG)(配列番号10)を包含し、そしてそれらは576bpの生成物を増幅する。さらに、TSHR発現を、公開された文献におけるデータから評価した。結果は下記に記載される。
【0150】
A. 免疫関連細胞におけるTSH受容体
TSH-Rを、ヒトCD14+単球(活性化の後、発現を低める)、ヒト単球細胞系THP-1及びPMA−活性化されたHL60(U937において発現されない)、休止(活性化されない)ヒトNK細胞、ヒト“休止”CD3+(及びCD4+)T細胞及びヒトB細胞及びB細胞系において発現する。マウス免疫細胞サブセットの中で、本発明者は、mTSH-RがCD4+(但し、CD8+T細胞においてではない)(活性化により低下する)、B細胞(活性化によりわずかに低下する)及びTFNγ−活性化されたマウスマクロファージ系J774において発現されることを見出した。
さらに、TSHR転写体はまた、リンパ球(Szkudlinski M. W. , Fremont V. , Ronin C. , Weintraub B. D. , (2002) Physiol Rev 82 : 473-502)、及び他の免疫関連細胞型(Bagriacik EU, and Klein JR, (2000) J I7nmunol 164: 6158-65)に存在することが示されている。
【0151】
B. 副腎におけるTSH受容体
いくつかの成人ヒト正常副腎から単離されたRNAと供に、副腎皮質癌細胞系H295RからのRNAは、TSHRに関し陽性であることが見出された。公開された文献はまた、副腎におけるTSHR転写体を示している(Dutton C. M., Joba W. , Spitzweg C. , Heufelder A. E. , Bahn R. S. , (1997) Thyroid 6 : 879-84)。
【0152】
C. 広範囲の種類の細胞及び組織型におけるTSH受容体
RNAのパネルをTSHRについてスクリーンし、そして陽性発現が甲状腺、副腎、腎臓、脳、骨格筋、精巣、肝臓、骨芽細胞、大動脈平滑筋、卵巣、脂肪細胞、網膜、唾液腺及び消化管において見出された。同様に、公開された文献は、甲状腺、腎臓、胸腺、副腎、脳、眼球後線維芽細胞、ニューロン細胞及び星状細胞におけるTSHR発現を示す(Szkudlinski M. W. , Fremont V. , Ronin C. , Weintraub B. D. , (2002) Physiol Rev 82 : 473-502 and Dutton C. M. , Joba W. , Spitzweg C. , Heufelder A. E. , Bahn R. S., (1997) Thyroid 6: 879-84))。
【0153】
例3:TSH−処理されたマウスにおける遅延されたタイプの過敏性
遅延されたタイプの過敏性(DTH)は、特定の抗原に対するT細胞応答の測定である。この応答においては、マウスは、アジュバント(例えば、ニワトリオボアルブミン、OVA)中、特定のタンパク質により免疫化され、そして次に、耳において同じ抗原(アジュバントなシ)により攻撃される。前記攻撃の後、耳の厚さの上昇(カリパスにより測定された)は、抗原に対する特定免疫応答の測定である。DTHは、3種の明確な相、1)T細胞が抗原提供細胞(APC)の表面上に提供される外来性タンパク質抗原を認識する相、2)T細胞がサイトカイン(特に、インターフェロンγ、IFN−γ)を分泌し、そして増殖する活性化/感作化相、及び3)炎症(活性化されたマクロファージ及び好中級の浸潤を包含する)及び感染の究極的な解決の両者を包含するエフェクター相において生じる細胞−介在性免疫性の形である。
【0154】
この応答は、細胞内細菌に対する一時防御機構であり、そして可溶性タンパク質抗原又は化学的反応性ヘプテンにより誘発され得る。従来のDTH応答は、ヒト結核菌(TB)からの精製されたタンパク質誘導体(PPD)により攻撃された個人において、それらの注射された個人が一次TBから回復されるか、又はTBに対してワクチン接種されている場合に生じる。硬化、すなわちDTHの顕著な特徴が、抗原の注入の約18時間後までに検出され、そして24〜48時間で最大である。触診できる硬化の開始の遅延は、応答“遅延された型”を命名するための理由である。すべての種において、DTH反応は、DTH, IFN−γに関与する主要開始サイトカインを生成する、抗原−感作されたCD4+(及び少ない程度のCD8+)T細胞の存在に臨床学的に依存する。
【0155】
TSHの抗−炎症効果について試験するために、DTH実験を、I)PBS、II)1.5mg/kgのデキサメタゾン(Dex)、及びIII )2mg/kgのTSHにより処理されたC57Bl/6マウス(Taconic、Germantown、NY)の3種のグループにより行った。すべてのそれらの処理は、OVA再攻撃の2時間前、腹腔内に行われた。マウス(グループ当たり8匹)を最初に、200μlの合計体積で、Ribiにおいて乳化された、100μgのニワトリオボアルブミン(OVA)により背部に免疫化した。7日後、マウスを10μlのPBS(対照)により左耳に、又はPBS中、10μgのOVA(アジュバントなし)により右耳に、10μlの体積で皮下的に再攻撃した。
【0156】
すべてのマウスの耳の厚さを、マウスの耳に注入する前に測定した(O測定)。耳の厚さを、攻撃の24時間後、測定した。0測定と24時間測定との間の耳の厚さの差異が、表1に示される。PBS処理グループにおける対照マウスは、24時間後の攻撃での耳の厚さの上昇により示されるように、強いDTH反応を進行した(表4、実験1)。対照的に、Dex又はTSHにより処理されたマウスは、対照に比較して、低い程度の耳の厚さを有した。それらの差異は、スチューデントt−試験により決定される場合、統計学的に有意であった(表4、p値対PBS)。
【0157】
【表1】

【0158】
第2のDTH実験を行い、反応感作相の間に投与される場合(すなわち、T細胞が抗原に対して応答している場合)、TSHの抗−炎症性効果について評価した。マウス(グループ当たり7匹)に、PBS、Dex又はTSHを、0日〜4日目まで、1日当たり1度、腹腔内投与した。次に、マウスを、7日目、OVA又はPBSにより再攻撃し、そして耳の厚さを8日目に測定した。再び、Dex及びTSHの両者は、DTH反応を有意に阻害し(表1、実験2)、このことは、TSHが炎症工程の初期及び後期の両者で、抗−炎症効果を発揮することができることを示唆する。
【0159】
TSHのための受容体TSH-Rは副腎により発現されるので、観察される抗−炎症効果はTSH−処理されたマウスにおける上昇する内因性コルチコステロイド生成の間接的な効果である関心が存在した。第3のDTH実験を行い、副腎切除された(ADX)マウスにおけるこの問題点を解決した。再び、TSH及びDex−処理されたマウスは、OVA再−攻撃に対する応答において耳の腫脹を低めた(表1、実験3)。この結果は、TSH活性が副腎による内因性グルココルチコイド生成を通して介在しないことを示唆する。
【0160】
TSHの観察される抗−炎症効果が上昇する内因性グルココルチコイド生成の間接的効果である関係を解明するためのもう1つのアプローチは、処理の間、胸腺萎縮をモニターすることである。外因性又は内因性コルチコステロイドレベルの上昇の1つの十分に確立された副作用は、成長するT細胞がアポプトシスを受けるよう誘発されるにつれて、胸腺の実質的な肥大である。従って、DTH実験におけるTSH及びDex−処理されたマウスの胸腺を分析した。表2に示されるように、Dex−処理されたマウスは明白な胸腺肥大を示したが、胸腺重量も全体的な胸腺細胞数もTSH処理により有意に影響されなかった。
【0161】
胸腺細胞をまた、CD4、CD8及びCD3に対する蛍光ラベルされた抗体により細胞を染色した後、流動細胞計測により分析し(PharMingen, San Diego, CA)、そしてTSH-処理されたマウスにおける個々の胸腺サブセット(CD4単一陽性、CD8単一陽性、CD4+CD8+二重陽性及びCD4−CD8−二重陽性)の相対的生成はPBS−処理されたグループのそれとは有意に異ならなかったことが見出された。従って、TSHは、Dexのような外因性グルココルチコイドの態様とはことなった態様でその抗−炎症効果を仲介するように思える。これは、グルココルチコイド処理の副作用の多くはTSH治療により実質的に回避されるので、重要な有益なものであることが判明する。
【0162】
【表2】

【0163】
例4:TSH−Rはヒト単球上に発現される
U937、すなわちヒト単芽球細胞系を、ATCC(ATCC#CRL-1593.2)から入手し、そしてATCCにより推薦される培地(1.5g/lの炭酸水素ナトリウム、4.5g/lのグルコース、10mMのHEPES、及び1.0mMのピルビン酸ナトリウム、90%;ウシ胎児血清、10%を含むよう調節された、2mMのL−グルタミンを含むRPMI1640培地)において連続継代により維持した。ヒト末梢血液単核細胞(PBMC)を単離するために、完全な血液(50ml)をまず、健康なヒトドナーから集め、そして50mlの円錐管においてPBSと共に1:1で混合した。次に、30mlの希釈された血液を、15mlのFicoll Paque Plus (Amersham Pharmacia Biotech, Uppsala, Sweden)によりアンダーレイした。それらのグラジエントを、500gで30分間、遠心分離し、そしてブレーキをかけないで自然に停止した。界面でのRBC−消耗された細胞を集め、そしてPBSにより3度、洗浄した。
【0164】
細胞を、FACS 洗浄緩衝液(WB = 1X PBS/1% BSA/10 mM Hepes)に再懸濁し、トリパンブルーにおいて計数し、そして個々のタイプの1×106個の可視細胞を、96−ウェル丸底プレートのウェル中にアリコートした。細胞を洗浄し、そしてペレット化し、次に10μg/mlのTSH−ビオチンと供に氷上で20分間インキュベートした。細胞を洗浄し、そして次に、5μg/mlのストレプタビジン−PE(PharMinge)により、さらに20分間、染色し、TSH−ビオチン−結合細胞を染色した。細胞を十分に洗浄し、そしてペレット化し、次に0.4mlのWBに再懸濁し、そしてCellQuestソフトウェア(Becton Dickinson, Mountain View, CA)を用いてFACSCalibur上で分析した。
【0165】
表3に示されるように、TSH−ビオチンは明らかに、U937単球系及び主要ヒト単球に結合した。それらのデータは、リンパ細胞に結合するTSHを見出すことが予測されるが、RT-PCR(例3を参照のこと)及び免疫沈澱研究(Bagriacik and Klein, J Immunol. 164: 6158-65,2000を参照のこと)により決定されるTSH−Rの発現パターンと一部、一致する。それらの実験におけるそのような染色の不在は、TSHの不十分なビオチニル化、及び/又はリンパ細胞上でのTSH-Rの低レベルの表面発現に影響を及ぼすことができる。
【0166】
【表3】

【0167】
例5:LPS−誘発された軽い内毒素血症マウスモデル
LPS−誘発された軽い内毒素血症モデルは、低い、非致死性用量の細胞内毒素(リポ多糖、LPS)によりマウスを攻撃することによる急性内毒性血症/敗血症を模倣するよう企画されたインビボモデルである。血清を、腹腔内LPS注入の後、種々の時点(1〜72時間)で集め、そして広範囲の種類の前−及び−抗−炎症性サイトカイン、及び炎症応答を仲介する急性相タンパク質の変更された発現について分析した。このモデルは、強い炎症応答の間、治療候相補体の有力な抗−炎症効果を評価するための手段を提供する。
【0168】
このモデルにおいては、初期実験は、LPSの注射に応答しての前炎症性サイトカインの生成を決定するために行われる。例えば、生後6ヶ月のBal/c(Charles River Laboratories, Wilmington, MA)雌マウスを、無菌PBS中、25μgのLPS(Sigma)により腹腔内(i.p.)注射した。血清サンプルを、0,1,4,8、16、24、48及び72時間後に集め、そして
炎症メディエーター、例えばIL−1β、IL−6、TNFα、及びIL−10の血清レベルについてアッセイする。市販のELISAキット(Biosource International, Camarillo, CA)を用いて、その血清レベルを決定する。このアッセイにおいては、TNFαレベル及びIL−10レベルを、LPS注射の1時間後で測定し、そしてIL−6、IL−1β及びIL−10を、注射の4時間後で測定する。それらの炎症メディエーターから、1又は複数のメディエーターを、軽い内毒素血症のLPSモデルについての代謝的生成物学的マーカーとして選択する。
【0169】
次に、C57Bl/6マウス(Charles River Laboratories;5匹のマウス/グループ)を、PBS、又はPBS中、試験化合物により、LPS攻撃の1時間前、i.p.処理した。次に、マウスを、25μgのLPSによりi.p.攻撃し、そしてLPS注入の1及び4時間後、放血した。代表的な生物学的マーカーのレベルを、ELISAにより分析する。
【0170】
前炎症性サイトカイン(例えば、TNFα)の生成の抑制、及び抗−炎症性サイトカイン(例えば、IL-6)の発現の増強は、試験化合物の抗−炎症効果を示すであろう。
TSHがこのモデルにおいて試験化合物として作用する場合、TNFα及びIL-6が代表的な生物学的マーカーとして選択される。TSHは、PBS中、2mg/kgで投与された。チロキシン(0.05mg/kg)及びデキサメタゾン(0.015mg/kg)は、それぞれ不及び正の対照として作用した。このモデルにおけるTSHの抗−炎症効果は、表4に示される。
【0171】
前炎症性サイトカイン(TNFα)の生成の制御、及びIL-6(前−又は抗−炎症性質のいずれかを有するサイトカイン)の発現の増強は、TSHがこのモデルにおいて抗−炎症性効果を有することを示す。このモデルは、生成物学的マーカーの用量及び選択について最適化され得る。このPLS−誘発された軽い内毒素血症モデルにおけるTSHの抗−炎症効果は、DTHモデルに見られる抗−炎症効果と一致する。
【0172】
【表4】

【0173】
前述から、本発明の特定の態様は例示目的のために記載されて来たが、種々の修飾が本発明の範囲内で行われ得ることが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療的に十分な量の甲状腺刺激ホルモン(TSH)ポリペプチドを哺乳類に投与することを含んで成る、炎症を処理するか、又は軽減するための方法であって、前記ポリペプチドの投与が前記哺乳類の炎症状態の臨床的に有意な改良性をもたらすことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記TSHポリペプチドが、配列番号3で示されるようなアミノ酸配列、及び配列番号6で示されるようなアミノ酸配列を含んで成るヘテロダイマーを形成する請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記炎症状態の臨床学的に有意な改良性が、
a)痛みの軽減又は阻害;
b)腫張の軽減又は阻害;
c)赤みの軽減又は阻害;
d)発熱の軽減又は阻害;及び
e)機能の損失の軽減又は阻害から成る群から選択される請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記炎症が急性又は慢性である請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記TSHポリペプチドによる処理が、グルココルチコイド処理の換わるものとして使用される請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記TSHポリペプチドによる処理が、グルココルチコイド−誘発性副作用を妨げるか又は軽減する請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記グルココルチコイド−誘発性副作用が、副腎皮質の抑圧、骨粗鬆症、骨壊死、ステロイド誘発性カタラクタ、ステロイド誘発性肥満治療、コルチコイド誘発性精神病、消化管出血、胸腺萎縮、及び良性頭蓋内圧亢進症から成る群から選択される請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記グルココルチコイドのレベルが、TSHポリペプチドを伴わないでの処理に比較して、低められる請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記TSHポリペプチドが、1又は複数のグルココルチコイドと共に、哺乳類に投与される請求項2記載の方法。
【請求項10】
前記TSHポリペプチド及びグルココルチコイドが、同時に又は連続的に投与される請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記グルココルチコイドのレベルが、TSHポリペプチドを伴わないでの処理に比較して、低められる請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記グルココルチコイドが、アルクロメタゾンジプロピオネート、アムシノニド、ベクロメタゾンジプロピオネート、ベタメサゾン、安息香酸ベタメタゾン、ベタメサゾンジプロピオネート、ベタメサゾンナトリウム、吉草酸ベタメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、クロコルトロンピバレート、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン酪酸塩、ヒドロコルチゾンシピオネート、リン酸ナトリウム・ヒドロコルチゾン、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、ヒドロコルチゾン吉草酸塩、酢酸コルチゾン、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメサゾン、酢酸デキサメタゾン、 デキサメサゾンナトリウム、酢酸ジフロラゾン、酢酸フルドロコルチゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオロメトロン、フルドロキシコルチド、ハルシノニド、メドリゾン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロンナトリウム、モメタゾンフルオエート、酢酸パラメタゾン、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、プレドニゾロンリン酸ナトリウム、プレドニゾロンテブテート、プレドニソン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、二酢酸トリアムシノロン、及びトリアムシノロンヘキサセトニドから成る群から選択される請求項9記載の方法。
【請求項13】
前記炎症が、アレルギー疾患、喘息、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、肺気腫、乾癬、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン疾病、炎症関連の下痢、移植片宿主相関病又は敗血症に関連している請求項2,5又は9記載の方法。
【請求項14】
前記炎症が、リウマチ様関節炎、全身性紅斑性狼瘡、脈管炎性疾患、又は他のリウマチ様関節炎、単一の臓器又は多臓器不全、慢性活動性肝炎、アルコール性肝障害、又は非アルコール性脂肪肝疾患に関連している請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記炎症が、呼吸器官、肺、又は静脈洞炎、表皮、胃腸管又は肝臓に位置する請求項2, 5又は9記載の方法。
【請求項16】
前記哺乳類が、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、結節性多発性動脈炎、ヴェーゲナー肉芽腫、側頭動脈炎、腎臓疾患、アレルギー疾患、喘息、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、肺気腫、乾癬、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン疾病、慢性活性肝炎、アルコール性肝障害、肝障害、非アルコール性脂肪肝病、急性リンパ性白血病、リンパ腫、類肉腫症、血小板減少症、自己免疫溶血性貧血、臓器移植、卒中、脊髄損傷、薬物反応、蕁麻疹、亜急性肝壊死、多発性骨髄腫、特発性血小板減少性紫斑病、後天性溶血性貧血、及び悪性高熱から成る群から選択された疾病を有する請求項2、5又は9記載の方法。
【請求項17】
前記ポリペプチドの投与が、前炎症性指標の低下をもたらし、そして前記炎症性指標が、前炎症性サイトカイン又は炎症関連好中球浸潤の血清レベルにより測定される請求項5又は9記載の方法。
【請求項18】
ペプチド−受容体複合体の形成方法であって、
固定された受容体を供給し;そして
前記受容体とペプチドとを接触せしめ、ここで前記ペプチドが配列番号3で示されるようなアミノ酸配列を含んで成り、そして前記受容体がTSHRであり;
それにより、前記受容体が前記ペプチドを結合することを含んで成る方法。
【請求項19】
細胞培養上清液内に含まれるTSHの精製方法であって、
前記TSH含有上清液を、カチオン交換樹脂を含むクロマトグラフィーカラムに、前記TSHが前記カチオン交換樹脂に結合する条件下で適用し;
前記カチオン交換樹脂からTSHを溶出し、そしてTSH−含有プールを捕獲し;
前記TSH−含有プールを、疎水性相互作用樹脂を含むクロマトグラフィーカラムに、前記TSHが前記疎水性相互作用樹脂に結合する条件下で適用し;
前記疎水性相互作用樹脂からTSHを溶出し、そしてTSH−含有プールを捕獲し;
前記TSH−含有プールをサイズ排除カラムに適用し、そして前記サイズ排除樹脂からTSHを溶出し、そしてTSH−含有プールにおけるTSHを捕獲することを含んで成る方法。

【公表番号】特表2007−513191(P2007−513191A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542898(P2006−542898)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/041676
【国際公開番号】WO2005/056046
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(500049831)ザイモジェネティクス,インコーポレイティド (37)
【Fターム(参考)】