説明

甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR)の低分子量アゴニスト

選択的なTSHRアゴニストとして有用なオキソヒドロキナゾリン類を開示する。該化合物を甲状腺ガンの検出若しくは治療、または骨変性障害の治療に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
診断、分析および治療目的のための甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR)のアゴニストである化合物を本明細書に開示する。
【背景技術】
【0002】
甲状腺刺激ホルモン(TSH)は、甲状腺のホメオスタシスを調節するヘテロ二量体糖タンパク質ホルモンである。TSHは、甲状腺濾胞細胞の成長および機能に関わる。TSHに対する細胞応答は、明白な7回膜貫通型受容体であるTSH受容体(TSHR)を介してもたらされる。TSHRは、甲状腺(および大部分の甲状腺ガン)機能の主要な調節因子であり、骨および脂肪細胞(脂質)の前駆細胞中で発現される。その内在性ホルモンTSHによるTSHRの活性化は、通常の甲状腺ホメオスタシスのために必要であるだけでなく、骨および脂質代謝を調節することもできる。
【0003】
甲状腺は、周知のように、体内の代謝制御の一部位である。甲状腺ガンは特に一般的ではないが、高い疾患の再発率により長期観察を必要とする。通常、甲状腺ガンの治療中に、大多数の甲状腺腫瘍が除去されるが、放射性ヨウ素療法により治療されなければならない少量のものがしばしば残存する。実際、甲状腺ガンは、治療成功の後でさえ、患者の最高30%という高い再発性を有することを特徴とする。従って、経過観察が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
手術後に、患者はもはや甲状腺ホルモンを産生しないので、患者を該ホルモンで治療することが必要である。甲状腺の一つの役割は、体からヨウ素を摂取することである。従って、あらゆる残存腫瘍細胞を放射性ヨウ素で処理することを可能とすべきである。しかしながら、残念なことに、甲状腺のガン細胞は、ヨウ素を良好に摂取しない。そのため、放射性ヨウ素を働かせる目的で、患者を組み換えTSHで治療するか、または天然のTSHレベルを上げてヨウ素の摂取を刺激するために甲状腺ホルモン治療を中止しなければならない。甲状腺ホルモンの使用中止は、特に疲労、筋痙攣、膨れおよび便秘という、患者にとって非常に不愉快な副作用がある。そのため、今日では、組み換えヒトTSH(rhTSH, Thyrogen(登録商標), Genzyme社)が高分化型甲状腺ガンの患者における術後のスクリーニング用に臨床的に用いられる。しかしながら、rhTSHは遺伝子工学によりヒト細胞に作製される二量体糖タンパク質分子である。これは、生産が困難で、厳しい品質管理を必要とし、非経口で投与されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示するのは、次式I:
【化1】

を有する化合物、またはその薬学的に許容し得る塩であり、
式中のR1からR4は、それぞれ独立してH、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシ、アミノカルボニルまたはハロゲンであり;
R5は、H、アルキル、アリール、アラルキルまたはアミノカルボニルであり;
Aは、-N=C(R15)-(左端の結合手が上記式Iのベンゼン環に結合し、右端の結合手が上記式Iのヘテロ原子窒素に結合する)または-NH-CH(R15)-(左端の結合手が上記式Iのベンゼン環に結合し、右端の結合手が上記式Iのヘテロ原子窒素に結合する)を表し;
R15は、次式IIで表され:
【化2】

式中のR6からR9は、それぞれ独立してH、ヒドロキシル、アルキルまたはアルコキシであり;
R10からR14は、それぞれ独立してH、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシまたはアミノカルボニルであり;
Xは、O、SまたはN(H)であり;
但し、式Iの化合物が下記の化合物1でないことを条件とする。
【化3】

【0006】
また、ここに開示するのは、次式VIの追加化合物であり:
【化4】

式中のR20は、アリールまたはヘテロアリールであり;
R21は、アリールまたはヘテロアリールであり;
R22は、請求項1に示す式IIのR15、ヘテロアリールまたはアリールである。
【0007】
また、本明細書に開示するのは、被検体の甲状腺ガンを検出するための方法であり、診断学的に有効な量の次式I:
【化5】

式中のR1からR4は、それぞれ独立してH、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシ、アミノカルボニルまたはハロゲンであり;
R5は、H、アルキル、アリール、アラルキルまたはアミノカルボニルであり;
Aは、-N=C(R15)-(左端の結合手が上記式Iのベンゼン環に結合し、右端の結合手が上記式Iのヘテロ原子窒素に結合する)または-NH-CH(R15)-(左端の結合手が上記式Iのベンゼン環に結合し、右端の結合手が上記式Iのヘテロ原子窒素に結合する)を表し;
R15は、次式IIで表され:
【化6】

式中のR6からR9は、それぞれ独立してH、ヒドロキシル、アルキルまたはアルコキシであり;
R10からR14は、それぞれ独立してH、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシまたはアミノカルボニルであり;
Xは、O、SまたはN(H)である;
の化合物の少なくとも一つ若しくはその薬学的に許容し得る塩か、
または式VIの化合物の少なくとも一つを被検体に投与することを備える。
【0008】
本明細書に開示する更なる実施形態は、治療的に有効な量の式Iの化合物の少なくとも一つか、または式VIの化合物の少なくとも一つを投与することを備える骨変性障害の治療または予防方法を含む。
【0009】
また、本明細書に開示するのは、被検体の甲状腺ガンの治療方法であり、治療的に有効な量の式Iの化合物の少なくとも一つか、または式VIの化合物の少なくとも一つを被検体に投与することを備える。
【0010】
本明細書に開示する追加的の実施形態は、アッセイ中の甲状腺刺激ホルモン受容体の活性化の方法を含み、甲状腺刺激ホルモン受容体を式Iの化合物の少なくとも一つか、または式VIの化合物の少なくとも一つと接触させることを備える。
【0011】
また、本明細書に開示するのは、薬学的に許容し得る担体と、式Iの化合物の少なくとも一つか、または式VIの化合物の少なくとも一つとを含む製薬学的組成物である。
【0012】
前述かつ他の目的、特徴および利点は、添付図面を参照してなされる以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本明細書に開示した化合物が完全かつ選択的アゴニストであることを示すデータを表すグラフである。
【図2】図2は、本明細書に開示したいくつかの化合物の効能を示すデータを表すグラフである。
【図3】図3は、ヒト甲状腺細胞の初代培養における本明細書に開示したいくつかの化合物のアゴニスト活性に関するデータを表すグラフである。
【図4】図4は、マウスモデルにおける本明細書に開示した化合物の生体内活性に関するデータを表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
用語および方法の以下の説明は、本発明の化合物、組成物および方法をよりわかりやすく記載して、本発明の実施において当業者を導くために提供される。また、本開示に用いる用語は、特定の実施形態および実施例を記載する目的のみのものであって、限定するものでない。
【0015】
本明細書中で用いる単数の用語「a」、「an」および「the」は、明示的な断りのない限り、複数の指示対象を含む。同様に、「or」という単語は、明示的な断りのない限り、「and」を含むことを目的とする。また、本明細書中で用いる「備える(comprise)」という用語は、「含む(include)」を意味する。従って、「AまたはBを備える(comprising A or B)」は、A、B、またはAおよびBを含む(including A, B, or A and B)ことを意味する。
【0016】
本明細書全体にわたって用いるR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、n、XおよびYなどの変数は、特に断りのない限り、前に定義したものと同一の変数である。
【0017】
化合物を「投与」および「投与する」とは、本明細書中に記載したような化合物、化合物のプロドラッグまたは製薬学的組成物を提供することを意味すると理解すべきである。化合物または組成物は、別の人により被検体に投与(例えば、静注で)することができるか、または被検体により自己投与(例えば錠剤)することができる。
【0018】
「任意の」または「任意に」とは、後に記載される事象または状況が生じる必要はないが生じ得ること、ならびに記載がその事象または状況が生じる例および生じない例を含むことを意味する。
【0019】
「誘導体」は、親化合物に由来するか、または親化合物から理論的に誘導できる化合物または化合物の一部をいう。
【0020】
「被検体」という用語は、ヒトおよび獣医の被験体の両方を含む。
【0021】
「治療」は、罹患開始後の疾患または病状の徴候または症状を改善する治療行為をいう。本明細書で用いる疾患または病状に関して「改善する」という用語は、あらゆる観察可能で、有益な治療効果をいう。有益な効果は、例えば、感染しやすい被検体における疾患の臨床的徴候の遅い発症、いくらかのまたは全ての疾患の臨床的徴候の重症度における低減、疾患のより遅い進行、患者の全体的な健康または福祉における向上、または特定の疾患について特異的な当業界で公知である他のパラメータによって証明され得る。「疾患を治療する」という表現は、例えば、ホルモン受容体を介する障害、特に甲状腺機能亢進性障害または甲状腺機能低下性障害のような甲状腺障害などの疾患のリスクがある被検体における疾患や症状の完全な罹患を阻害することをいう。「予防」治療は、病状進展のリスクを減少させる目的のために、疾患の徴候を示さないかまたは初期徴候のみを示す被検体に対してなされる治療である。「同時投与」という用語によって、少なくとも二つの化合物のそれぞれが生物学的活性を有するそれぞれの時間がオーバーラップする時間枠の間投与されることを意味する。従って、この用語は二つ以上の薬剤化合物の同時投与並びに連続投与を含む。
【0022】
「薬学的に許容し得る塩」または「薬理学的に許容し得る塩」という用語は、無機および有機酸の塩基性塩を含む従来技術により調製された塩を指し、酸としては限定しないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、リンゴ酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、マレイン酸、サリチル酸、安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸などを含む。本明細書に開示する化合物の「薬学的に許容し得る塩」は、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、亜鉛などのカチオンから形成したもの及びアンモニア、エチレンジアミン、N-メチル-グルタミン、リジン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N-ベンジルフェノールエチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンおよびテトラメチル水酸化アンモニウなどの塩基から形成したものを含む。これらの塩は、標準的な処理、例えば遊離酸を適当な有機または無機塩基と反応させることにより調製し得る。或いはまた、本明細書中に列挙したあらゆる化合物をその薬学的に許容し得る塩として投与してもよい。「薬学的に許容し得る塩類」はまた、遊離の酸、塩基および双性イオンの形式も含む。適当な薬学的に許容し得る塩の記載は、Handbook of Pharmaceutical Salts, Properties, Selection and Use, Wiley VCH (2002)で見つけることができる。本明細書に開示する化合物がカルボキシ基のような酸性官能基を含むとき、カルボキシ基に対する適当な薬学的に許容し得るカチオン対が当業者に周知であり、アルカリ、アルカリ土類、アンモニウム、四級アンモニウムカチオンなどを含む。かかる塩は当業者に既知である。「薬理学的に許容し得る塩類」の追加的な例に関しては、Berge et al., J. Pharm. Sci. 66: 1 (1977).を参照のこと。
【0023】
「飽和または不飽和」とは、水素で飽和した置換基、完全には水素で飽和していない置換基および部分的に水素で飽和した置換基を含む。
【0024】
「アシル」という用語は、式RC(O)-の官能基を指し、ここでRは有機基である。
【0025】
「アルキル」という用語は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルなどの1〜24個の炭素原子からなる分岐または非分岐の飽和炭化水素基を指す。「低級アルキル」基は、1〜10個の炭素原子を有する飽和の分岐または非分岐の炭化水素である。好適なアルキル基は、1〜4個の炭素原子を有する。アルキル基は、一つ以上の水素原子がハロゲン、シクロアルキル、アルコキシル、アミノ、ヒドロキシ、アリールまたはカルボキシルのような置換基で置換された「置換アルキル」でもよい。
【0026】
「アルケニル」という用語は、2〜24個の炭素原子で、少なくとも一つの炭素-炭素二重結合を含む構造式の炭化水素基を指す。
【0027】
「アルキニル」という用語は、2〜24個の炭素原子で、少なくとも一つの炭素-炭素三重結合を含む構造式の炭化水素基を指す。
【0028】
「ハロゲン化アルキル」または「ハロアルキル基」という用語は、存在する一つ以上の水素原子をハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)で置換した上述したようなアルキル基を指す。
【0029】
「シクロアルキル」という用語は、少なくとも3個の炭素原子からなる非芳香族の炭素系の環を指す。シクロアルキル基の例は、限定しないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどを含む。「ヘテロシクロアルキル基」という用語は、環の少なくとも一つの炭素原子が、限定しないが、窒素、酸素、硫黄またはリンなどのヘテロ原子で置換された上述したようなシクロアルキル基である。
【0030】
「脂肪族」という用語は、上述したようなアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン化アルキルおよびシクロアルキル基を含むものとして定義される。「低級の脂肪族」基は、1〜10個の炭素原子を有する分岐または非分岐の脂肪族基である。
【0031】
「アルコキシ」という用語は、付着点に酸素原子を含む1〜20個の炭素原子、好適には1〜8個の炭素原子、より好適には1〜4個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖、または環状の炭化水素構造およびその組合せを指す。「アルコキシ基」の例は、式-ORにより表され、ここでRはアルキル基であり、上述したようなアルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキルまたはヘテロシクロアルキル基で任意選択的に置換されてよい。適当なアルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、シクロプロポキシ、シクロヘキシロキシなどを含む。
【0032】
「アルコキシカルボニル」は、アルコキシ置換カルボニルラジカル、-C(O)ORを指し、ここでRは任意選択的に置換されたアルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキルまたは類似部分をいう。
【0033】
「アルキルアミノ」という用語は、少なくとも一つの水素原子をアミノ基で置き換えた上述したようなアルキル基を指す。
【0034】
「アミノカルボニル」は、単独または組み合わせで、アミノ置換カルボニル(カルバモイル)ラジカルを意味し、ここでアミノラジカルは任意に選択的にアルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アラルコキシカルボニルなどのモノ-またはジ-置換体であり得る。アミノカルボニル基は、-N(R)-C(O)-R(ここで、Rは置換された基またはH)または-C(O)-N(R)とすることができる。「アミノカルボニル」はアミド基を含む。適当なアミノカルボニル基はアセトアミドである。
【0035】
「アリール」という用語は、限定しないが、ベンゼン、ナフタレンなどを含むあらゆる炭素系芳香族基を指す。「芳香族」という用語は、芳香族基の環内に導入された少なくとも一つのヘテロ原子を有する芳香族基として定義される「ヘテロアリール基」も含む。ヘテロ原子の例は、限定しないが、窒素、酸素、硫黄およびリンを含む。アリール基は、限定しないが、アルキル、アルキニル、アルケニル、アリール、ハライド、ニトロ、アミノ、エステル、ケトン、アルデヒド、ヒドロキシ、カルボン酸またはアルコキシを含む一つ以上の基で置換することができるか、またはアリール基は非置換とすることができる。
【0036】
「カルボニル」は、式-C(O)-のラジカルを指す。カルボニル含有基は、アシル基、アミド、カルボキシ基、エステル、尿素、カルバミン酸塩、炭酸塩およびケトンならびにアルデヒドを含む炭素-酸素二重結合(C=O)を含有するあらゆる置換基、例えば-CORまたは-RCHOをベースとした置換基を含み、ここでRが脂肪族、ヘテロ脂肪族、アルキル、ヘテロアルキル、ヒドロキシル、または二級、三級もしくは四級アミンである。
【0037】
「カルボキシル」は、COOHラジカルを指す。置換カルボキシルは、COORを指し、ここでRが脂肪族、ヘテロ脂肪族、アルキル、ヘテロアルキルまたはカルボン酸もしくはエステルである。
【0038】
「ヒドロキシル」という用語は、式-OHにより表される。
【0039】
「ヒドロキシアルキル」という用語は、ヒドロキシル基で置換した少なくとも一つの水素原子を有するアルキル基を指す。「アルコキシアルキル基」という用語は、上記アルコキシ基で置換した少なくとも一つの水素原子を有するアルキル基として定義される。
【0040】
「アミン」または「アミノ」という用語は、式-NRR'の基を指し、ここでRおよびR'は独立して上述した水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキルまたはヘテロシクロアルキル基とし得る。
【0041】
「アミド(amide)」または「アミド(amido)」という用語は、式-C(O)NRR’により表され、ここでRおよびR'は独立して上述の水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキルまたはヘテロシクロアルキル基とし得る。適当なアミド基はアセトアミドである。
【0042】
「アラルキル」という用語は、上述したようなアルキル基を上述のアリール基に付着して有するアリール基を指す。アラルキル基の例はベンジル基である。
【0043】
「任意選択的に置換したアルキル」のような任意選択的に置換した基は、置換される際にアルコキシ、任意選択的に置換したアルコキシ、アシル、アシルアミノ、アシロキシ、アミノ、アミノアシル、アミノアシロキシ、アリール、カルボキシアルキル、任意選択的に置換したシクロアルキル、任意選択的に置換したシクロアルケニル、ハロゲン、任意選択的に置換したヘテロアリール、任意選択的に置換したヘテロシクリル、ヒドロキシ、スルホニル、チオールおよびチオアルコキシから選択した1〜5の置換基、通常1、2または3個の置換基を有するアルキル基などの基を指す。特に、任意選択的に置換したアルキル基は、例として、限定しないが、トリフルオロメチル基を含むフルオロアルキル基のようなハロアルキル基が挙げられる。
【0044】
「治療学的に有効な量」または「診断学的に効果的な量」は、特定の薬剤で治療する被検体に所望の効果を達成するに十分な該薬剤の量を指す。例えば、被検体の甲状腺ガンを検出または治療するのに有用な本明細書に開示する化合物の量とし得る。理想的には、薬剤の治療学的に有効な量または診断学的に有効な量は、被検体に重篤な細胞毒性作用を生じさせることなく、疾患を阻害するかまたは治療するのに十分な量である。薬剤の治療学的に有効な量または診断学的に有効な量は、治療される被検体、疾患の重症度、および治療学的組成物の投与方法に依存する。
【0045】
本発明化合物のプロドラッグも本明細書中で検討する。プロドラッグは、被検体にプロドラッグの投与後加水分解、代謝などのような生体内の生理学的な作用により活性化合物に化学的に変性される活性または不活性の化合物である。プロドラッグの調製および使用に関する適合性および技術は、当業者に周知である。エステルを含むプロドラッグの一般的な議論については、Svensson and Tunek Drug Metabolism Reviews 165 (1988) and Bundgaard Design of Prodrugs, Elsevier (1985)を参照のこと。
【0046】
製薬学的に許容し得るプロドラッグは、被検体内で代謝、例えば加水分解または酸化されて本開示の抗ウイルス性化合物を形成する化合物を指す。プロドラッグの代表的な例は、活性化合物の官能部分に対し一つ以上の生物学的に不安定な保護基を有するか、さもなければ該部分を遮蔽する化合物を含む。プロドラッグは、酸化、還元、アミノ化、脱アミノ化、ヒドロキシル化、脱ヒドロキシル化、加水分解、脱加水分解、アルキル化、脱アルキル化、アシル化、脱アシル化、リン酸化、脱リン酸化されて活性化合物を産生し得る化合物を含む。一般に、本明細書に開示するプロドラッグ化合物は、ホルモン受容体を調節する活性を有し、および/または生体内で代謝されるかさもなければ処理されて、かかる活性を示す化合物を形成する。
【0047】
「プロドラッグ」という用語はまた、プロドラッグを被検体に投与すると、本発明の活性な親薬物を生体内で放出する任意の共有結合的に結合された担体を含むことを意図している。プロドラッグは活性薬剤に対し溶解性および生体利用効率のような治療特性をしばしば高めるため、本明細書に開示した化合物をプロドラッグの形状で送達することができる。従って、本明細書に開示した化合物のプロドラッグ、プロドラッグの送達方法およびかかるプロドラッグを含有する組成物も検討する。本開示化合物のプロドラッグは、通常修飾を日常的な取り扱いまたは生体内で開裂して親化合物を得らような方法で化合物中に存在する一つ以上の官能基を修飾することによって調製される。プロドラッグは、生体内で開裂されて、それぞれ対応するホスホネート基および/またはアミノ基を得るような任意の基で官能化されたホスホネート基および/またはアミノ基を有する化合物を含む。プロドラッグの例としては、限定しないが、アシル化アミノ基および/またはホスホン酸エステルもしくはホスホン酸アミド基を有する化合物が挙げられる。特定の実施例において、プロドラッグは、低級アルキルホスホン酸エステル、例えばイソプロピルホスホン酸エステルである。
【0048】
本開示化合物の保護された誘導体も検討する。本開示化合物で用いるのに適した様々な保護基は、Greene and Wuts Protective Groups in Organic Synthesis; 3rd Ed.; John Wiley & Sons, New York, 1999に開示される。
【0049】
一般に、保護基を分子の残り部分に影響を与えない条件下で除去する。これらの方法は、当業界で周知であり、酸加水分解、水素化分解などを含む。一つの好適な方法は、例えば遊離リン酸を得るためのTMS-Br媒介エステル分解におけるようなルイス酸条件を用いるホスホン酸エステルの開裂のようなエステルの除去を含む。第二の好適な方法は、例えばアルコール、酢酸などまたはその混合物のような適当な溶媒系における炭素上のパラジウムを用いた水素化分解によるベンジル基の除去のような保護基の除去を含む。t-ブトキシカルボニル保護基を含むt-ブトキシベースの基は、水、ジオキサンおよび/または塩化メチレンのような適当な溶媒系において塩酸またはトリフルオロ酢酸などの無機または有機酸を用いて除去することができる。アミノおよびヒドロキシ官能アミノ(hydroxy functions amino)を保護するのに適した別の典型的な保護基は、トリチルである。他の従来の保護基は既知であり、Greene and Wuts Protective Groups in Organic Synthesis; 3rd Ed.; John Wiley & Sons, New York, 1999を参照して、当業者により適当な保護基を選択し得る。アミンが脱保護されると、生成した塩を容易に中和して遊離のアミンを得ることができる。同様に、ホスホン酸部分のような酸部分が脱保護されると、化合物を酸化合物またはその塩として単離し得る。
【0050】
本明細書に開示した化合物の特定の例は、一つ以上の不斉中心を含む;従ってこれら化合物は異なる立体異性体の形態で存在し得る。従って、化合物および組成物を、個々の純粋なエナンチオマーとして、またはラセミ体混合物を含む立体異性体の混合物として提供することができる。特定の実施形態において、本明細書に開示した化合物は、例えば、鏡像異性体過剰率90%、鏡像異性体過剰率95%、鏡像異性体過剰率97%のような実質的にエナンチオピュアな形態、または鏡像異性体過剰率99%超のエナンチオピュアな形態で合成されるかまたは精製される。
【0051】
本明細書に記載する化合物の置換基および置換パターンは、化学的に安定であり、かつ当業界で既知の術、および更に本明細書に記載した方法により容易に合成し得る化合物を提供するように当業者により選択され得る。本発明に好適な化合物について以下に詳述する。
【0052】
(I.化合物)
本明細書に開示するのは、TSHRを活性化する低分子量(例えば、1000ダルトン未満)の化合物である。これらの化合物は、経口投与し得る。データを以下に示し、ヒトTSHR発現株細胞における化合物の効能を実証する。本明細書に開示した特定の化合物は、TSHRに対する選択的アゴニストである(すなわち、該化合物は他のホルモン受容体、特にLHCGRおよびFSHRを活性化または調節しない)。化合物はまた、TSHRに対する完全フルアゴニストでもあり得る。
【0053】
本明細書に開示したTSHRアゴニストは、TSHシグナリング経路を増強または活性化する。TSHRアゴニストは、それ自身TSHR媒介シグナリングを刺激するか、または内在性TSHまたは別の投与された(すなわち外来性の)TSHRアゴニストの生物学的活性を増強することによりTSHR媒介シグナリングを刺激し得る。理論に束縛されないが、特定の実施形態では、本明細書に開示したTSHRアゴニストがTSHR(特にTSHRの膜貫通領域)を特異的に結合し、その後チロトロフ若しくはTSHRを自然発現する他の細胞またはTSHRを発現するよう変性された細胞においてTSHR媒介細胞内シグナリングを誘引する。「特異的な結合」およびその同族の用語は、親和定数KAが100マイクロモーラー未満、特に100ナノモーラー、好ましくは50ナノモーラー未満の相互作用を指す。
【0054】
かかる化合物の例は、次式I:
【化7】

で表わされるか、またはその薬学的に許容し得る塩であり、
式中のR1-R4はそれぞれ独立してH、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシ、アミノカルボニルまたはハロゲンであり;
R5はH、アルキル、アリール、アラルキルまたはアミノカルボニルであり;
Aは-N=C(R15)-(左端の結合手が上記式Iのベンゼン環に結合し、右端の結合手が上記式Iのヘテロ原子窒素に結合する)または-NH-CH(R15)-(左端の結合手が上記式Iのベンゼン環に結合し、右端の結合手が上記式Iのヘテロ原子窒素に結合する)を表し;
R15は次式IIで表され:
【化8】

式中のR6-R9はそれぞれ独立してH、ヒドロキシル、アルキルまたはアルコキシであり;
R10-R14はそれぞれ独立してH、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシまたはアミノカルボニルであり;
XはO、SまたはN(H)である。
【0055】
特定の実施形態では、次式
【化9】

の構造を有する化合物が式Iに含まれない。
【0056】
特定の実施形態では、R1-R4がそれぞれ独立してH、ヒドロキシルまたはアセトアミドである。好適な実施例によれば、R1-R4のそれぞれはHであるか;R1-R4のうちの一つがアセトアミド(好適にはR3)で、かつR1-R4の残りがそれぞれHであるか;またはR1-R4のうちの一つがヒドロキシル(好適にはR4)で、かつR1-R4の残りがHである。
【0057】
特定の実施形態では、R5が-C1-C4アルキル-Ar(ここでArは六員環または五員環である)のようなアラルキルである。好適な実施例によれば、R5が-CH2-Ph(ここでPhはフェニルまたは置換フェニル基である);または-CH2-ヘテロAr(ここでヘテロArが、O、NまたはSのような少なくとも一つのヘテロ原子を含むアリール環(例えばフリル基)である)である。
【0058】
特定の実施形態では、Aが-N=C(R15)-(左端の結合手が上記式Iのベンゼン環に結合し、右端の結合手が上記式Iのヘテロ原子窒素に結合する)を表し、次式IVの構造:
【化10】

(式IVに示されないが、R1-R4も式Iに示されるように存在する)をもたらす。
【0059】
他の実施態様では、Aが-NH-CH(R15)-(左端の結合手が上記式Iのベンゼン環に結合し、右端の結合手が上記式Iのヘテロ原子窒素に結合する)を表し、次式Vの構造:
【化11】

(式Vに示されないが、R1-R4も式Iに示されるように存在する)をもたらす。
【0060】
特定の実施形態では、R6-R8はそれぞれHであり、R9はアルコキシ(特にメトキシ)である。
【0061】
特定の実施形態では、R10、R11、R13およびR14はそれぞれHであり、R12はアセトアミドである。好適には、R15は次式III;
【化12】

で表され、式中のXはOまたはS、好適にはOである。
【0062】
化合物の実例を挙げると、
【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

を含む。
【0063】
他の実施形態によれば、付加的なTSHRアゴニストの例は次式VIにより表される:
【化18】

式中のR20はアリールまたはヘテロアリールであり;R21はアリールまたはヘテロアリールであり;R22は式IIのR15、ヘテロアリールまたはアリールである。好適な実施形態によれば、R21はベンジルであり、またR22は式IIのR15(特に化学式III)である。
【0064】
(II.一般的合成)
本明細書に開示した化合物は、通常下記のように合成することができる。スキーム1を参照するに、2-アミノベンズアミド(1)を種々のアミンでの2-アミノ安息香酸のアミドカップリング(ステップi)またはアミンとイサト酸無水物との反応(ステップii)のいずれかにより調製した。
【化19】

スキーム2を参照するに、マイクロ波照射下で種々のフェノールまたはチオフェノールとベンジルクロライド2との反応(ステップi)によりアルデヒド3を生成する。アルデヒド3の2-アミノベンズアミド1との縮合により2, 3-ジヒドロキナゾリン-4-オン4を得る。2, 3-ジヒドロキナゾリン-4-オン4をDDQにより室温で急速に酸化して、キナゾリン-4-オン5を生成する。
【化20】

【0065】
(III.開示化合物の組成物、投与および使用)
本明細書に開示した化合物は、甲状腺ガンスクリーニング、甲状腺ガンの治療、結節性甲状腺腫の治療、PETスキャニングおよび化学療法治療を増強するためのTSH刺激、先天性甲状腺機能低下症の鑑別診断、骨粗しょう症の治療(例えば、骨量減少の抑制)および過体重または肥満の治療(例えば、脂肪組織の代謝率の増加)に有用である。本明細書に開示した化合物の実例的使用は以下の通りである:
サイログロブリン(Tg)のアゴニスト試験を甲状腺抑制治療中の未検出Tgを有する患者に用いて残存または再発甲状腺ガンの診断を排除することができる;
アゴニスト治療を放射性ヨウ素(131I)と組み合わせて用い、転移性疾患の所見がない患者の甲状腺全摘術に続いて甲状腺残部を切除することができる;
アゴニスト試験を、甲状腺ホルモン禁断試験を受ける意志がなく、かつ治療医がより低感度なテストの使用が理に叶うと考えている患者であって、血清Tgテストおよび放射性ヨウ素イメージングを必要とする患者に用いることができる;または
アゴニスト治療および試験を、甲状腺ホルモン禁断に対して適切な内在性TSH反応を示すことができないか、または禁断を医学的に禁忌とされる患者に用いることができる。
【0066】
一つの実施形態よれば、本明細書に開示した化合物(化合物1を含む)は、甲状腺ガンスクリーニングに有用である。放射性ヨウ素を、甲状腺ガン細胞の検出に用い、また試験感度を増大させるために放射性ヨウ素の摂取が強化されなければならない。本明細書に開示したTSHRアゴニストの投与は、甲状腺細胞のヨウ素摂取を増大させることができる。例えば、本明細書に開示したTSHRアゴニストは、高分化型の甲状腺ガンの患者の手術(例えば、甲状腺摘出術)後に、残存または再発甲状腺ガンの臨床学的にスクリーニングするために組み換えヒトTSH(rhTSH、Thyrogen(商標)、Genzyme社)を置き換えることができた。また、本明細書に開示したTSHRアゴニストを、血清サイログロブリン(TG)試験用の補助診断薬として用いることができる。
【0067】
また、治療学的に有効な量の本明細書に開示したTSHRアゴニスト化合物の少なくとも一つを投与することを含む骨変性障害の治療または予防方法を開示する。治療または予防される障害は、例えば、骨減少症、骨軟化症、骨粗鬆症、オステオミエローマ、骨形成異常、パジェット病、骨形成不全症、骨硬化症、再生不良性骨疾患、体液性高カルシウム血症骨髄腫、多発性骨髄腫および転移後の骨薄化を含む。治療または予防される障害は、高カルシウム血症に伴う骨変性障害、慢性腎疾患(末期腎疾患を含む)、腎臓透析、続発性副甲状腺機能亢進症およびコルチコステロイドの長期使用を更に含む。
【0068】
本明細書に開示した化合物を製薬学的組成物(製薬学的組成物は、治療、診断および予防製剤を含む)に含めることができ、通常一つ以上の薬学的に許容し得る賦形剤または担体、および任意選択的に他の治療用または診断用の成分(例えば、放射性ヨウ素)と共に配合される。かかる製薬学的組成物を被検体に経口、腸内、経鼻、肺内または経皮送達を含む種々の粘膜投与モードによるか、または他の表面への局所的な送達により投与することができる。任意選択的には、組成物を筋肉内、皮下、静脈内、動脈内、関節内、腹膜内、髄膜下、脳室内または非経口ルートを含む非粘膜ルートにより投与することができる。他の別の実施形態では、化合物を被検体由来の細胞、組織または器官への直接露出により生体外で投与することができる。
【0069】
製薬学的組成物を処方するために、化合物を様々な製薬学的に許容し得る添加剤並びに化合物の分散用基剤または賦形剤と配合し得る。所望の添加剤は、限定しないが、アルギニン、水酸化ナトリウム、グリシン、塩酸、クエン酸などのようなpH調整剤を含む。加えて、局所麻酔薬(例えばベンジルアルコール)、等張化剤(例えば塩化ナトリウム、マンニトール、ソルビトール)、吸着抑制剤(例えばTween 80)、可溶化促進剤(例えばシクロデクストリンおよびその誘導体)、安定化剤(例えば血清アルブミン)および還元剤(例えば、グルタチオン)を含むことができる。当業界で周知の他の多くのアジュバンドのうち、水酸化アルミニウム(例えば、Amphogel, Wyeth Laboratories, Madison, NJ)、フロイントアジュバントMPL(3-O-脱アシル化モノホスホリル脂質A; Corixa、Hamilton、IN)およびIL-12(Genetics Institute, Cambridge, MA)のようなアジュバントを組成物に含めることができる。組成物が液体であるときは、単一物としての0.9%(w/v)生理食塩溶液の浸透圧に準拠して測定した製剤の浸透圧を、実質的な不可逆性の組織損傷が投与部位で何ら誘導されることのないレベルまで通常調節する。一般に、溶液の浸透圧を、約0.3から約3.0、例えば、約0.5から約2.0、または約0.8から約1.7の値に調節する。
【0070】
化合物を分散させる能力を有する親水性化合物および任意所望の添加剤を含むことができる基剤または賦形剤に化合物を分散させることができる。基剤は、限定しないが、ポリカルボン酸またはその塩、カルボン酸無水物(例えば無水マレイン酸)と他のモノマー(例えばメチル(メタ)アクリレート、アクリル酸など)とのコポリマー;、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンのような親水性ビニルポリマー;ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのようなセルロース誘導体;およびキトサン、コラーゲン、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、ヒアルロン酸およびその無毒性の金属塩類などのような天然ポリマーを含む広範囲に渡る適当な化合物から選択することができる。生分解性ポリマー、例えばポリ乳酸、ポリ(乳酸グリコール酸)コポリマー、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ(ヒドロキシ酪酸-グリコール酸)コポリマーおよびその混合物が基剤または賦形剤としてしばしば選択される。あるいはまた、若しくは加えて、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどのような合成脂肪酸エステルを賦形剤として用いることができる。親水性ポリマーおよび他の賦形剤を単独または組み合わせて用いることができ、増強した構造的完全性を部分結晶化、イオン結合、架橋などにより賦形剤に付与することができる。賦形剤を、流体または粘性溶液、ゲル、ペースト、粉体、微小球体および粘膜面への直接投与用のフィルムを含む様々な形態で提供することができる。
【0071】
化合物を様々な方法に従って基剤または賦形剤と組み合わせることができ、また化合物の放出を拡散、賦形剤の崩壊または関連した水チャネルの形成によるものとすることができる。状況次第では、化合物を、適当なポリマー、例えばイソブチル-2-シアノアクリレート(Michael et al., J. Pharmacy Pharmacol. 43:1-5, 1991参照)から調製したマイクロカプセル(微小球体)またはナノカプセル(ナノ粒子)中に分散し、長期間に渡って持続的な送達および生物学的活性を付与する生体適合性分散媒体中に分散される。
【0072】
あるいはまた、本開示の組成物が、生理的条件と同程度とするのに必要な製薬学的に許容し得る賦形物質として、pH調製および緩衝剤、浸透圧調整剤、湿潤剤など、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレートおよびトリエタノールアミンオレエートを含有し得る。固形組成物については、従来の無毒性の製薬学的に許容し得る賦形剤を用いることができ、例えば医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石、セルロース、グルコース、ショ糖、炭酸マグネシウムなどを含む。
【0073】
化合物を投与するための製薬学的組成物はまた、溶液、マイクロエマルジョンまたは高濃度の活性成分用に適した他の秩序構造として製剤化され得る。賦形剤は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)およびその適当な混合物を含む溶媒または分散媒体とし得る。溶液の適当な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用によるか、分散可能な製剤の場合所望の粒径の維持によるか、界面活性剤の使用により維持することができる。多くの場合、等張剤、例えば糖類、マンニトールおよびソルビトールのようなポリオール、または塩化ナトリウムを組成物中に含めることが望ましい。化合物の長期間に渡る吸収を、組成物中に吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンを含めることによってもたらすことができる。
【0074】
特定の実施形態では、化合物を時間放出型製剤、例えば徐放性ポリマーを含む組成物に付与し得る。これらの組成物は、速い放出を防ぐ賦形剤、例えばポリマー、マイクロカプセル化送達システムまたは生体接着性ゲルのような徐放性賦形剤を用いて調製し得る。本開示の様々な組成物における長期間に渡る送達は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムのヒドロゲルおよびゼラチンを組成物中に含めることによりもたらすことができる。徐放性製剤が望まれる場合、本開示に従う使用に適した徐放性バインダは、活性成分に不活性で、かつ化合物および/または他の生物学的に活性な薬剤を導入し得るあらゆる生体適合性の徐放性材料を含む。数多くのかかる材料は、当業界で既知である。有用な徐放性バインダは、送達(例えば、粘膜表面または体液の存在下)の後で生理的条件下徐々に代謝される材料である。適当なバインダは、限定されないが、当業界で公知の徐放性製剤向けの生体適合性のポリマーおよびコポリマーを含む。かかる生体適合性の化合物は、周囲の組織に無毒性かつ不活性であり、鼻炎、免疫反応、炎症などのような有害な副作用を誘発しない。これらは、生体適合性で、かつ体から容易に除去されもする代謝産物に代謝される。
【0075】
本開示に用いる典型的なポリマー材料は、限定されないが、加水分解性エステル結合を有するコポリマーおよびホモポリマーのポリエステルに由来するポリマーマトリックスを含む。これらの多くは、生物分解性であり、無毒性または低毒性の分解産物を生ずることは当業界で既知である。典型的なポリマーは、ポリグリコール酸およびポリ乳酸、ポリ(DL-乳酸-グリコール酸コポリマー)、ポリ(D-乳酸-グリコール酸コポリマー)およびポリ(L-乳酸-グリコール酸コポリマー)を含む。他の有用な生物分解可能なまたは生物浸食可能なポリマーは、限定されないが、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(ε-カプロラクトン-CO-乳酸)、ポリ(ε-カプロラクトン-CO-グリコール酸)、ポリ(β-ヒドロキシ酪酸)、ポリ(アルキル-2-シアノアクリレート)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)のようなハイドロゲル、ポリアミド類、ポリ(アミノ酸)(例えば、L-ロイシン、グルタミン酸、L-アスパラギン酸など)、ポリ(エステル尿素)、ポリ(2-ヒドロキシエチル-DL-アスパルトアミド)、ポリアセタールポリマー、ポリオルトエステル類、ポリカーボネート、ポリマレアミド、多糖類およびそのコポリマーを含む。かかる製剤を調製する多くの方法は、当業者に周知である(例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J. R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978.参照)。他の有用な製剤は、徐放性マイクロカプセル(米国特許第4,652,441号明細書および第4,917,893号明細書)、マイクロカプセルおよび他の製剤を作製する際に有用な乳酸‐グリコール酸コポリマー(米国特許第4,677,191号明細書および第4,728,721号明細書)、および水溶性ペプチド用の徐放性組成物(米国特許第4,675,189号明細書)を含む。
【0076】
本開示の製薬学的組成物は、通常製造、保存および使用条件下で無菌かつ安定である。無菌溶液は、必要量の化合物を適当な溶媒中に、必要に応じて本明細書中に列挙する成分の単独または組み合わせとともに導入し、その後ろ過滅菌することによって調製することができる。一般に、分散体は、基本の分散媒および本明細書に列挙するものの中で必要な他の成分を含有する無菌賦形剤に本化合物および/または他の生物学的に活性な薬剤を導入することによって調製される。無菌粉体の場合、調製方法としては、予めろ過滅菌した溶液から化合物と追加的な所望の成分の粉末を得る真空乾燥および凍結乾燥が挙げられる。微生物の働きの防止は、様々な抗菌および抗真菌剤、たとえば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどにより達成され得る。
【0077】
本開示の様々な治療方法によれば、化合物を被検体に治療または予防が求められる障害の取扱いに伴う従来の方法論に従う手法で送達することができる。本明細書中の開示に従って、予防学的にまたは治療学的に有効な量の化合物および/または他の生物学的に活性な薬剤を、かかる治療を必要とする被検体に所定の疾病若しくは疾患またはその一つ以上の兆候を予防、阻害および/または改善するに十分な時間と条件下で投与する。
【0078】
本開示の化合物の投与は、予防または治療目的のいずれかによりなされてよい。予防的に提供されるときには、化合物をあらゆる徴候に先立って提供する。化合物の予防的投与は、あらゆるその後の疾病プロセスを予防または改善するのに役立つ。治療的に提供されるときには、化合物を疾病または感染の発症の時(またはその少し後)に提供する。
【0079】
予防および治療目的のために、化合物を被検体に単回ボーラス投与で長期間に渡っての連続送達(例えば、連続的な経皮、粘膜または静脈送達)によるか、または繰り返し投与プロトコル(例えば、毎時、毎日、毎週の繰り返し投与のプロトコル)で投与することができる。治療学的に有効な投与量の化合物は、本明細書中に記載される標的疾病または疾患に伴う一つ以上の症状または検出可能な状態を軽減するのに臨床学的に有意な結果をもたらす長期間の予防または治療計画内で繰り返し投与として提供することができる。本明細書における有効投与量の決定は、通常動物モデル試験と、それに続くヒトの臨床試験に基づき、被検体の標的疾病の症状または状態の発生率または重症度を著しく低減させる投与プロトコルにより導かれる。これに関する適当なモデルは、例えば、当業界で既知のネズミ、ラット、豚、ネコ、人間以外の霊長類、および他の許容された動物モデル被検体を含む。あるいはまた、有効な投与量を、生体外モデル(例えば、免疫学的および病理組織学的アッセイ)を使用して決定することができる。かかるモデルを使用して、通常の算出および調節のみが、化合物の治療学的に有効な量(例えば、所望の免疫反応を引き出すか、または一つ以上の標的疾病の症状を軽減するのに有効な量)を投与するのに適切な濃度および用量を決定するために必要とされる。別の実施形態では、化合物の有効な量、すなわち有効投与量は、本明細書に記載されるように、治療または診断目的のいずれかで、疾病または疾患と相関性がある一つ以上の選ばれた生物学的活性を単純に阻害または増強させ得る。
【0080】
化合物の実際の投与量は、被検体の病気の兆候および特定の状態(例えば、被検体の年齢、大きさ、適合性、症状の範囲、感受性因子など)、投与の時間およびルート、同時に投与される他の薬や治療、並びに被検体における所望の活性または生物学的応答を引き起こすための化合物の特異的な薬理のような因子に従って変動する。投与計画を調節して最適な予防または治療の応答を付与することができる。治療学的に有効な量はまた、化合物および/または他の生物学的に活性な薬剤のあらゆる毒性または有害な副作用を治療学的に有益な効果により臨床的な意味で上回るものでもある。本開示の方法および製剤の範囲内での化合物および/または他の生物学的に活性な薬剤の治療学的に有効な量の非制限的な範囲は、約0.01 mg/体重kgから約10 mg/体重kg、例えば約0.05 mg/kg〜約5mg/体重kg、または約0.2 mg/体重kg〜約2 mg/体重kgである。
【0081】
投与量は、標的部位(例えば、肺または体循環)で所望の濃度を維持するために主治医により変動され得る。例えば経皮、直腸、経口、経肺、または鼻腔内送達に対する静脈内または皮下送達など送達モードに基づいて、より高いかまたはより低い濃度を選択することができる。投与量はまた、例えば、肺内噴霧に対する粉末、徐放経口に対する注射された微粒子または経皮送達製剤などの投与製剤の放出速度に基づいて調節することができる。同じ血清中の濃度レベルを達成するために、例えば、5ナノモル(標準的な条件下)の放出速度を有する徐放性粒子は、10ナノモルの放出速度を有する粒子の約二倍の投与量で投与されるものとする。
【0082】
本開示はまた、哺乳類被検体における疾病および他の疾患の予防および治療に使用するための本明細書に記載の製薬学的組成物、活性成分および/またはそれらの投与手段を含むキット、パッケージおよびマルチ容器ユニットを含む。診断用のキットも提供される。一つの実施形態では、これらキットは本明細書に記載した一つ以上の複合体を含有する容器または製剤を含む。一つの実施例では、この成分を被検体への送達用の製薬学的な調剤に処方する。複合体は、大量調剤の容器もしくはユニットまたはマルチユニット製剤に任意選択的に含まれる。任意選択的な調剤手段、例えば、経肺または鼻腔内噴霧塗布器を提供することができる。パッケージ材は、任意選択的に、何の治療目的なのか、および/またはどんな方法で充填された製薬学的薬剤を用い得るかを示すラベルまたは指示書を含む。
【実施例】
【0083】
(一般的な材料および方法)
全ての市販の試薬および溶媒を購入し、更なる精製なく用いた。全てのマイクロ波反応を、磁気攪拌棒を備えた密封マイクロ波バイアル中で行い、Biotage Initiator Microwave Synthesizer中で加熱した。生物学的試験用の全ての化合物を、Phenomenex Luna(登録商標) C18逆相(5ミクロン、30×75 mm)カラムを備えた半分取HPLCを流速45 mL/分で用いて精製した。移動相は、各々0.1%のトリフルオロ酢酸を含有するアセトニトリルおよびH2Oの混合物であった。精製の間、30%〜80%勾配のアセトニトリルを8分間に渡ってUV検出(220 nM)により誘発される画分収集を伴って用いた。純粋な画分をPL-HCO3 MP SPE (Varian)に通してトリフルオロ酢酸を除去し、真空下凍結乾燥機で濃縮した。1Hスペクトルを、Inova 400(100) MHzスペクトロメーター(Varian)を用いて記録した。化学シフトを、内部標準としてのCDCl3(7.27)中の1H(残余の)を用いてδ(ppm)単位で報告する。データを以下の通りに報告する:化学シフト、多重度(s = シングレット、d = ダブレット、t = トリプレット、q = カルテット、m = マルチプレット、br = ブロード)、カップリング定数および積分値。サンプルを、Zorbax(商標) Eclipse XDB-C18逆相(5ミクロン、4.6×150 mm)カラムを備えたAgilent 1200 series LC/MSにおいて流速1.1 mL/分で純度について分析した。移動相は、各々0.05%のトリフルオロ酢酸を含有するアセトニトリルおよびH2Oの混合物とした。分析の間、5%〜100%勾配のアセトニトリルを8分間に渡って用いた。高分解能マススペクトル測定をAgilent 6210 Electrospray TOF mass spectrometerで行った。
【0084】
(一般的な合成手順)
以下の一般的な手順を用いて、異なるが類似する構造を有する化合物を合成した。当業者は、所要に応じて所望の転移を達成するためにこれら一般的な手法を修正する方法を認識するであろう。
【0085】
(イサト酸無水物からの2-アミノベンズアミド合成用の一般的な手順)
イサト酸無水物(0.163 g、1.0 mmol、1.0当量)の10 mL無水アセトニトリル溶液にアミン(1.05 mmol、1.05当量)を室温で加えた。生成した混合物を室温で2時間撹拌し、50℃で4時間加熱した。その後、真空で濃縮し、固体としての生成物を90-99%の収率で得た。
【0086】
(2-アミノ-N-ベンジルベンズアミド)
【化21】

1H NMR(400 MHz, クロロホルム-d) δ 4.61(s, 1H), 4.63(s, 1H), 5.58(br. s., 2H), 6.33(br. s., 1H), 6.62-6.66(m, 1H), 6.69-6.71(m, 1H), 7.19-7.25(m, 1H), 7.28-7.43(m, 6H); LCMS:(電子スプレー +ve), m/z 227.1(MH)+; HPLC:tR = 4.38分, UV254 =96%.
【0087】
(2-アミノ-N-(フラン-2-イルメチル)ベンズアミド)
【化22】

1H NMR(400 MHz, クロロホルム-d) δ 4.60(s, 1H), 4.61(s, 1H), 5.57(br. s., 2H), 6.24-6.42(m, 3H), 6.59-6.74(m, 2H), 7.16-7.25(m, 1H), 7.33-7.39(m, 2H); LCMS:(電子スプレー +ve), m/z 217.1(MH)+; HPLC:tR = 3.77分, UV254 = 98%.
【0088】
(2-アミノ-N-ベンジル-6-メトキシベンズアミド)
【化23】

50 mLのジクロロメタンにおける2-アミノ6-メトキシ安息香酸(0.841 g, 5.0 mmol, 1.0当量)、ベンジルアミン(0.643 g, 6.0 mmol, 1.2当量)およびジイソプロピルエチルアミン(1.935 g, 15.0 mmol, 3.0当量)の溶液に、2-クロロ-1,3-ジメチルイミダゾリニウムクロライド(1.099 g, 6.5 mmol, 1.3当量)を室温で加えた。混合物を室温で6時間撹拌し、水に注ぎ込み、ジクロロメタンで抽出した。有機溶液を飽和NaHCO3および水で連続的に洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し、溶媒をロータリーエバポレーターにより除去した。残渣をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル2%、CH2Cl2中の2.0 Mのアンモニア-MeOH溶液)により精製して、2-アミノ-N-ベンジル-6-メトキシベンズアミド(0.593g, 46%)を固体として得た。1H NMR(400 MHz, クロロホルム-d) δ 3.81(s, 3H), 4.62(s, 1H), 4.63(s, 1H), 6.07(vb. s., 2H), 6.19(d, J = 8.2 Hz, 1H), 6.32(d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.07(t, J = 8.2 Hz, 1H), 7.14-7.54(m, 5H), 8.05(br. s., 1H); HPLC:tR = 4.72分, UV254 =99%; HRMS(ESI):C15H16N2O2[M+1]+のm/z計算値257.1296、実測値257.1294.
【0089】
(2-アミノ-N-ベンジル-6-ヒドロキシベンズアミド)
【化24】

2-アミノ-N-ベンジル-6-メトキシベンズアミド(0.228 g, 0.89 mmol, 1.0当量)の3 mL無水DMF溶液に1-ドデカンチオール(0.360 g, 1.78 mmol, 2.0当量)を加え、その後NaOMe(0.385 gの25%MeOH溶液, 1.78 mmol、2.0当量)を加えた。混合物をマイクロ波シンセサイザ中150℃で10分間加熱した。混合物をシリカゲルプラグに通し、酢酸エチル-メタノール混合物(1:1)で洗浄した。粗生成物をPL-SO3H MP SPE (Varian)により精製して、2-アミノ-N-ベンジル-6-ヒドロキシベンズアミド(0.176g, 82%)を濃厚な油として得た。1H NMR(400 MHz, クロロホルム-d) δ 3.55-4.20(vb. s., 2H), 4.60(s, 1H), 4.61(s, 1H), 6.25(d, J = 7.8 Hz, 1H), 6.50(d, J = 8.2 Hz, 1H), 7.09(t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.16-7.52(m, 5H), 8.58(br. s., 1H), 12.05(br. s., 1H); HPLC:tR = 3.97分, UV254 =98%;HRMS(ESI): C14H14N2O2[M+1]+ のm/z計算値243.1140、実測値243.1134.
【0090】
(2, 3-ジヒドロキナゾリン-4-オンおよびキナゾリン-4-オンの合成用の一般的な手順)
1.5 mLの無水DMAにおける3-(クロロメチル)-4-メトキシベンズアルデヒド(300 μmol, 1.0 当量)および適切に置換されたフェノールまたはチオフェノール(360 μmol, 1.2当量)の溶液にK2CO3(1.5 mmol, 5当量)を加えた。混合物をマイクロ波シンセサイザ中150℃で10分間加熱した。固体を濾過した。透明な溶液に2-アミノベンズアミド(1.2当量)添加し、その後トリフルオロメタンスルホン酸イッテルビウム(150 μmol, 0.5当量)を加えた。混合物をマイクロ波シンセサイザ中200℃で10分間加熱して、所望の2, 3-ジヒドロキナゾリン-4-オンを得た。DDQ(300 μmol, 1.5 Mアセトニトリル溶液, 1.0当量)溶液を、2, 3-ジヒドロキナゾリン-4-オンを含む反応混合物に加え、生成した混合物を1時間撹拌してキナゾリン-4-オンを得た。全ての粗生成物をHPLCにより精製した。PL-HCO3 MP SPEを用いてTFAを除去した。最終生成物を20-50%の収率で固体として得た。
【0091】
(N-(4-(5-(3-(フラン-2-イルメチル)-4-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキナゾリン-2-イル)-2-メトキシベンジルオキシ)フェニル)アセトアミド(化合物3))
【化25】

1H NMR(400 MHz, クロロホルム-d) δ 2.11(s, 3H)、3.72(d, J = 15.6 Hz, 1H)、3.83(s, 3H), 4.25(v.b.s, 1H), 5.01(s, 2H), 5.26(d, J = 15.6 Hz, 1H), 5.71(s, 1H), 6.03-6.29(m, 2H), 6.48(d, J = 7.8 Hz, 1H), 6.83(dd, J = 18.2, 8.8 Hz, 3H)、7.10-7.61(m, 7H), 7.92(d, J = 7.0 Hz, 1H); HPLC:tR = 5.40分, UV254 = 91%; HRMS(ESI): C29H27N3O5[M+1]+ のm/z計算値498.2029、実測値498.2025.
【0092】
(N-(4-(5-(3-ベンジル-4-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキナゾリン-2-イル)-2-メトキシベンジルオキシ)フェニル)アセトアミド(化合物3/2))
【化26】

1H NMR(400 MHz, クロロホルム-d) δ 2.12(s, 3H), 3.66(d, J = 15.3 Hz, 1H), 3.83(s, 3H), 5.00(s, 2H), 5.48(d, J = 15.3 Hz, 1H), 5.57(s, 1H), 6.49(d, J = 7.8 Hz, 1H), 6.67-7.00(m, 4H), 7.05-7.57(m, 11H), 7.99(d, J = 7.8 Hz, 1H); HPLC:tR = 5.69分, UV254 =98%; HRMS(ESI): C31H29N3O4[M+1]+ のm/z計算値508.2242、実測値508.2233.
【0093】
(N-(4-(5-(3-ベンジル-4-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキナゾリン-2-イル)-2-メトキシベンジルチオ)フェニル)アセトアミド(化合物3/5))
【化27】

1H NMR(400 MHz, クロロホルム-d) δ 2.14(s, 3H), 3.50(d, J = 15.4 Hz, 1H), 3.83(s, 3H), 3.88(d, J = 13.1 Hz, 1H), 4.00(d, J = 13.1 Hz, 1H), 5.42(d, J = 15.3 Hz, 1H), 5.45(s, 1H), 6.52(d, J = 8.2 Hz, 1H), 6.74(d, J = 8.6 Hz, 1H), 6.79(d, J = 2.0 Hz, 1H), 6.84(t, J = 7.4 Hz, 1H), 7.06(dd, J = 8.4, 2.2 Hz, 1H), 7.10-7.33(m, 9H), 7.37(d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.68(br. s., 1H), 7.96(d, J = 6.6 Hz, 1H); HPLC:tR = 5.97分, UV254 =98%; HRMS(ESI): C31H29N3O3S[M+1]+ のm/z計算値524.2002、実測値524.2002.
【0094】
(N-(4-(5-(3-ベンジル-5-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロキナゾリン-2-イル)-2-メトキシベンジルオキシ)フェニル)アセトアミド(化合物3/4))
【化28】

1H NMR(400 MHz, クロロホルム-d) δ 2.16(s, 3H), 3.67(d, J = 15.5 Hz, 1H), 3.87(s, 3H), 4.38(bs, 1H), 5.05(s, 2H), 5.37(d, J = 15.2 Hz, 1H), 5.58(d, J =1.6 Hz, 1H), 5.95(dd, J = 8.0, 1.0Hz, 1H), 6.35(dd, J = 8.4, 0.9Hz, 1H), 6.80-6.92(m, 3H), 7.09-7.40(m, 10H), 12.34(s, 1H); HPLC:tR = 6.11分, UV254 =96%; HRMS(ESI): C31H29N3O5[M+1]+ のm/z計算値524.2185、実測値524.2184.
【0095】
(N-(4-(5-(3-(フラン-2-イルメチル)-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)-2-メトキシベンジルオキシ)フェニル)アセトアミド(化合物3/1))
【化29】

1H NMR(400 MHz, クロロホルム-d) δ 2.15(s, 3H), 3.95(s, 3H), 5.12(s, 2H), 5.19(s, 2H), 6.12(d, J = 2.7 Hz, 1H), 6.22-6.28(m, 1H), 6.93(d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.00(d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.12(br. s., 1H), 7.24(s, 1H), 7.39(d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.46-7.56(m, 2H), 7.64-7.82(m, 3H), 8.33(d, J = 8.2 Hz, 1H); HPLC:tR = 5.49分, UV254 =95%; HRMS(ESI): C29H25N3O5[M+1]+のm/z計算値496.1872、実測値496.1873.
【0096】
(N-(4-(5-(3-ベンジル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)-2-メトキシベンジルオキシ)フェニル)アセトアミド(化合物3/3))
【化30】

1H NMR(400 MHz, クロロホルム-d) δ 2.13(s, 3H), 3.91(s, 3H), 5.04(s, 2H), 5.26(s, 2H), 6.81-7.04(m, 5H), 7.11-7.26(m, 4H), 7.38(d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.46-7.58(m, 2H), 7.71-7.83(m, 2H), 8.36(d, J = 7.8 Hz, 1H); HPLC:tR = 5.73分, UV254 = 98%; HRMS(ESI): C31H27N3O4[M+1]+のm/z計算値506.2086、実測値506.2082.
【0097】
(TSHR、LHCGRまたはFSHR安定発現細胞株の作製)
ヒトTSHRのcDNAをhTSHR-pSVL(1)からPCRにより増幅し、制限酵素サイトXhoIおよびBamHIを用いてpcDNA3.1(-)/ハイグロマイシンベクターに挿入した。ヒトLHCGRのcDNAをhLHR-pGS5(2)からPCRにより増幅し、制限酵素サイトBamHIおよびXhoIを用いてpcDNA3.1(+)/ハイグロマイシンベクターに挿入した。pcDNA3.1に組み込まれたFSHRcDNAを、Missouri S&T cDNA Resource Center (www.cDNA.org) から入手し、pcDNA3.1(-)/ハイグロマイシンベクターにサブクローニングした。構築物をシーケンシング(MWG Biotech)により確認した。FuGENE 6 Transfection試薬(Roche Diagnostics)を用いて製造業者のプロトコルに従ってHEK-EM293細胞をTSHR、LHCGRまたはFSHRのcDNAでトランスフェクトした。トランスフェクションの2日後に、細胞を10%のウシ胎児血清、100 unit/mlのペニシリンおよび100 g/mlのストレプトマイシン(Life Technologies Inc.)、および選択マーカーとしてハイグロマイシン(250μg/ml)が追加されたDulbecco's modified Eagle's Medium (DMEM) に通し、生育させた。7〜10日後にハイグロマイシン耐性クローンを選択し、更なる生育の2、3日後にcAMPアッセイに供して、適切な受容体を安定発現するクローンを同定した。
【0098】
(細胞培養)
TSHR、LHCGRまたはFSHRを安定発現する細胞、およびHEK293の親細胞を、10% FBS, 100 units/ml ペニシリン, 100μg/mlストレプトマイシンを含有するDMEM培地中に5%CO2、37℃で維持した。TSHR、LHCGRまたはFSHRを安定発現する細胞については、追加の250μg/mlのハイグロマイシンを細胞培養中に加えた。細胞を、35 mlの培地を含むT175フラスコ中に300万〜400万個の細胞の密度で播種し、3日間生育させて80-90%コンフルエントとした。この密度でのHEK293細胞のフラスコには、概して合計3000万個の細胞が得られた。
【0099】
(均一系時間分解蛍光(HTRF)cAMPアッセイ)
化合物を、TSHR細胞株および親細胞株の両方に対してHTRF cAMP検出キット(Cisbio, Bedford, MA)を用いて分析した。簡潔には、750個の細胞を、1536ウェル平底白色プレート中の2.5 μl/ウェルの完全培地(10%FCSを含むDMEM)中に播種し、DMSO溶液中の化合物またはコントロールを20 nl/ウェルで加えた。室温で30分の培養後、2.5 μl/ウェルの標識化d2cAMPおよび2.5 μl/ウェルの抗-cAMP抗体(いずれも溶解バッファ中に1:20で希釈)を各ウェルに飛翔試薬ディスペンサー(Aurora Discovery, San Diego)を使用して加えた。プレートを330ナノメートルの励起および615ナノメートルおよび660ナノメートルの発光でEnvision plate reader(PerkinElmer, Boston, MA)を使用して測定した。
【0100】
(化合物の調製)
化合物を384-ウェルプレートにおいてDMSOで1:5または1:2.236に連続希釈して、7または15の濃度(最小限には、10mM、2mM、0.4mM、80μM、16μM、3.2μMおよび0.64μM)を得、1,536-ウェルプレートに7 μl/ウェルで合わせた。細胞培養中の最終化合物濃度は、1.60nMから25.0μMの範囲とした。
【0101】
(データ分析)
最大応答(100%の活性)を30 mU/mlのTSHの応答により決定し、基礎応答(0%の活性)をTSHスクリーン中のDMSOコントロールにより測定した。化合物のEC50の値は、Prism software (GraphPad Software, San Diego, CA)を用いる非線形回帰分析法による濃度反応曲線から算出した。
【0102】
(確認cAMPアッセイおよびTSHRに対する選択性試験)
50,000細胞/ウェルを96ウェルプレート中の完全培地(10%FCSを含むDMEM)に播種した。細胞を24時間培養した後に、5%CO2の加湿培養器において1 mMの3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX) (SIGMA)およびウシTSH(1.8 μM)またはヒトLHもしくはFSH (1000 ng/ml)または化合物 (0.01μM-100μM)を含む無血清DMEM中で37℃で1時間培養した。化合物での培養後に培地を吸引した後、細胞をcAMP-Screen DirectTM System (Applied Biosystems, Cat # CSD200)の溶解バッファを用いて洗浄した。細胞溶解物のcAMP含有量は、製造業者のプロトコルを用いて決定した。効能(EC50)を、Windows(登録商標)版GraphPad Prism 4でのデータ分析により投与量反応曲線(化合物0-100μM)から得た。
【0103】
以下は、均一系時間分解蛍光(HTRF)cAMPアッセイにより分析した化合物のリストである。
【0104】
【化31】

【化32】

【化33】

【化34】

【化35】

【化36】

【化37】

【化38】

【化39】

【化40】

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【化319】

【化320】

【化321】

【化322】

【化323】

【化324】

【0105】
いくつかの化合物に関する確認cAMPアッセイにより決定したEC50の値は:
化合物3が590nM
化合物3/4が25nM
化合物3/5が38nM
化合物3/1が100nM
化合物3/2が541nMである。
【0106】
図1は、本明細書に開示した化合物がLHCGRまたはFSHRに対してアゴニスト活性を示さないため、これらがTSHR選択的アゴニストであることを示す図である。
【0107】
図2は、本明細書に開示したいくつかの化合物の効能を示すTSHR安定発現HEK EM 293細胞におけるデータを表すグラフである。
【0108】
図3は、ヒト甲状腺細胞の初代培養における本明細書に開示したいくつかの化合物のアゴニスト活性に関するデータのグラフである。
【0109】
本発明者らは、TSHRを安定発現するHEK EM 293細胞を使用して本明細書に開示した化合物を同定したため、ヒト甲状腺細胞の初代培養におけるそれらの活性を確認しようとした。TSHは、甲状腺の特異的遺伝子の発現を上方制御するため、サイログロブリン(TG)およびサイロペルオキシダーゼ(TP0)に関するmRNAの発現について本明細書に開示した化合物の試験を行った。24時間後、TSHRの小分子アゴニストによっては、bTSHより低いレベルにまでしかTPOのmRNA表現が増加しなかったのに対して、30μMの本明細書に開示した化合物を用いたヒト甲状腺細胞の処理によりTGのmRNAの発現がTSHと同様のレベルにまで増加した。これは、生理学的な程度にTSHRを発現するヒト甲状腺細胞の初代培養において、これらのリガンドが活性であることを示している。
【0110】
(ヒト甲状腺細胞の初代培養)
甲状腺細胞組織のサンプルを、無関係な理由による手術中に、National Institutes of Health Clinical Centerから得た。患者は、IRB 承認プロトコルに対しインフォームドコンセントを提供し、またOffice of Human Subjects Researchを介して研究活動の承認を経て匿名で材料を受領した。試料を氷上のHBSS中に維持し、細胞の単離を手術後4時間以内に開始した。全ての調製を、無菌条件下で行った。組織サンプルは、少量のHBSSを用いて10cmディッシュ中で微細な外科用鉗子およびハサミにより小片に細分化した。組織片を15mlのチューブ(Falcon) に移し、HBSSで少なくとも3回洗浄した。その後、組織片を3 mg/mlのCollagenase Type IV(Gibco)を含むHBSSを用いて培養した。単離した細胞の懸濁液が得られるまで、37℃の水浴中で一定の振盪で30分間以上酵素消化を行った。1000rpmで5分間遠心分離した後、上澄みを除去し、細胞を10%のFBSを有する10 mlのDMEM中に再懸濁した。細胞を10cmの組織培養ディッシュに播種し、5%CO2の加湿培養器において37℃で培養した。24時間後、非接着細胞を含む上澄みを除去した。甲状腺細胞の初代培養は、5-7日以内にコンフルエントな単層を形成した。サイログロブリンおよびサイロペルオキシダーゼのmRNA発現を定量するために、実験の24時間前に、甲状腺細胞を6×104細胞/ウェルの密度で24-ウェルプレートに播種した。
【0111】
(定量RT-PCR)
全RNAを、RNeasy Micro kits (Qiagen)を用いて精製した。一本鎖cDNAを、High Capacity cDNA Archive Kit (Applied Biosystems)を用いて調製した。RT-PCRを、100 ngの全RNAおよびUniversal PCR Master Mix (Applied Biosystems)から調製したcDNAを用いる25μlの反応中で行った。サイログロブリンおよびサイロペルオキシダーゼ用のプライマーおよびプローブは、Assay-on-Demand (Applied Biosystems)とした。定量RT-PCRの結果を、RNA量の差異に関して補正するために、GAPDHについて規格化した。
【0112】
図4は、マウスにおける本明細書に開示した化合物の生体内活性のデータのグラフである。
【0113】
本発明者らは、本明細書に開示した化合物がヒトTSHRと類似の効能および効力でマウスTSHRを活性化することをトランスフェクトした細胞を生体外で使用して示した。TSHRの周知の生理機能はマウスおよびヒトにおいて類似であるため、マウスにおける生体内研究は、本明細書に開示した化合物に関して可能な臨床応用を評価するための理想的な前臨床モデルを提供する。本発明者らは、腹腔内注射により投与したときに、本明細書に開示した一つの化合物がTSHRを活性化することができるかどうかを評価した。20μgの本明細書に開示した化合物と、2%DMSOを含むPBS中の30μgのTSHを無麻酔のC57 BL/6マウスに投与した。実験的なエンドポイントは、化合物またはTSHの投与の2時間後に麻酔されたマウスから得た屠殺前の後眼窩採血から得られる血清中の全チロキシン(T4)の測定とした。全T4レベルは、TSHおよび本明細書に開示した化合物の注射後に確かに上昇した。
【0114】
本開示の化合物、組成物、および方法の原理を適用し得る多くの可能な実施形態を考慮するに、例示する実施形態は単に好適な例であり、本発明の範囲の限定と解釈されるべきでないと理解されたい。むしろ、本発明の範囲は、以下の請求項により定められる。我々は、従って、これらの請求項の範囲および趣旨の範囲内にある全てを、我々の本発明として請求する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式I:
【化325】

(式中のR1-R4はそれぞれ独立してH、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシ、アミノカルボニルまたはハロゲンであり;
R5はH、アルキル、アリール、アラルキルまたはアミノカルボニルであり;
Aは-N=C(R15)-(左端の結合手が上記式Iのベンゼン環に結合し、右端の結合手が上記式Iのヘテロ原子窒素に結合する)または-NH-CH(R15)-(左端の結合手が上記式Iのベンゼン環に結合し、右端の結合手が上記式Iのヘテロ原子窒素に結合する)を表し;
R15は次式IIで表され:
【化326】

式中のR6-R9はそれぞれ独立してH、ヒドロキシル、アルキルまたはアルコキシであり;
R10-R14はそれぞれ独立してH、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシまたはアミノカルボニルであり;
XはO、SまたはN(H)であり;
但し、式Iの化合物が次式
【化327】

(化合物1)ではない)で表される化合物またはその薬学的に許容し得る塩。
【請求項2】
前記R1-R4はそれぞれ独立してH、ヒドロキシルまたはアセトアミドであり;
R5はアラルキルであり;
R6、R7、R8、R10、R11、R13およびR14はそれぞれHであり;
R9はアルコキシであり;
R12はアセトアミドであり;そして、
XはOまたはSである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記R5
【化328】

;または
【化329】

である請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
前記R9がC1-C4のアルコキシである請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
前記XがOである請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
前記R1-R4がそれぞれ独立してHである請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
前記R15が次式III:
【化330】

により表される請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
化合物が:
【化331】

により表される請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
化合物が:
【化332】

により表される請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
化合物が:
【化333】

により表される請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
化合物が:
【化334】

により表される請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
化合物が:
【化335】

により表される請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
化合物が甲状腺刺激ホルモン受容体アゴニストである請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
化合物が選択的な甲状腺刺激ホルモン受容体アゴニストである請求項1〜12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
次式VI:
【化336】

(式中のR20はアリールまたはヘテロアリールであり、R21はアリールまたはヘテロアリールであり、R22は請求項1に示す式IIのR15、ヘテロアリールまたはアリールである)で表される化合物。
【請求項16】
前記R21がベンジルであり、R22が式IIのR15である請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
診断学的に有効な量の次式I:
【化337】

(式中のR1-R4はそれぞれ独立してH、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシ、アミノカルボニルまたはハロゲンであり;
R5はH、アルキル、アリール、アラルキルまたはアミノカルボニルであり;
Aは-N=C(R15)-(左端の結合手が上記式Iのベンゼン環に結合し、右端の結合手が上記式Iのヘテロ原子窒素に結合する)または-NH-CH(R15)-(左端の結合手が上記式Iのベンゼン環に結合し、右端の結合手が上記式Iのヘテロ原子窒素に結合する)を表し;
R15は次式IIで表され:
【化338】

式中のR6-R9はそれぞれ独立してH、ヒドロキシル、アルキルまたはアルコキシであり;
R10-R14はそれぞれ独立してH、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシまたはアミノカルボニルであり;
XはO、SまたはN(H)である)で表わされる化合物の少なくとも一つ若しくはその薬学的に許容し得る塩または請求項15の式VIの化合物の少なくとも一つを被検体に投与することを備える被検体の甲状腺ガンを検出する方法。
【請求項18】
前記被検体が高分化型甲状腺ガンについて甲状腺摘出術を受けたことがある請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記式Iの化合物の少なくとも一つの投与が、甲状腺細胞によるヨウ素の摂取を増強する請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
治療学的に有効な量の次式I:
【化339】

(式中のR1-R4はそれぞれ独立してH、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシ、アミノカルボニルまたはハロゲンであり;
R5はH、アルキル、アリール、アラルキルまたはアミノカルボニルであり;
Aは-N=C(R15)-(左端の結合手が上記式Iのベンゼン環に結合し、右端の結合手が上記式Iのヘテロ原子窒素に結合する)または-NH-CH(R15)-(左端の結合手が上記式Iのベンゼン環に結合し、右端の結合手が上記式Iのヘテロ原子窒素に結合する)を表し;
R15は次式IIで表わされ:
【化340】

式中のR6-R9はそれぞれ独立してH、ヒドロキシル、アルキルまたはアルコキシであり;
R10-R14はそれぞれ独立してH、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシまたはアミノカルボニルであり;そして、
XはO、SまたはN(H)である)で表わされる化合物の少なくとも一つ若しくはその薬学的に許容し得る塩または請求項15の式VIの化合物の少なくとも一つを投与することを備える骨変性障害の治療または予防方法。
【請求項21】
治療学的に有効量の次式I:
【化341】

(式中のR1-R4はそれぞれ独立してH、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシ、アミノカルボニルまたはハロゲンであり;
R5はH、アルキル、アリール、アラルキルまたはアミノカルボニルであり;
Aは-N=C(R15)-(左端の結合手が上記式Iのベンゼン環に結合し、右端の結合手が上記式Iのヘテロ原子窒素に結合する)または-NH-CH(R15)-(左端の結合手が上記式Iのベンゼン環に結合し、右端の結合手が上記式Iのヘテロ原子窒素に結合する)を表し;
R15は次式IIで表わされ:
【化342】

式中のR6-R9はそれぞれ独立してH、ヒドロキシル、アルキルまたはアルコキシであり;
R10-R14はそれぞれ独立してH、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシまたはアミノカルボニルであり;
XはO、SまたはN(H)である)で表わされる化合物の少なくとも一つ若しくはその薬学的に許容し得る塩または請求項15の式VIの化合物の少なくとも一つを被検体に投与することを備える被検体の甲状腺ガンを治療する方法。
【請求項22】
転移性疾患の所見がない被検体の甲状腺全摘術に続いて甲状腺残部を切除するために放射性ヨウ素を式Iの化合物と同時投与すること更に備える請求項21に記載の方法。
【請求項23】
次式I:
【化343】

(式中のR1-R4はそれぞれ独立してH、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシ、アミノカルボニルまたはハロゲンであり;
R5はH、アルキル、アリール、アラルキルまたはアミノカルボニルであり;
Aは-N=C(R15)-(左端の結合手が上記式Iのベンゼン環に結合し、右端の結合手が上記式Iのヘテロ原子窒素に結合する)または-NH-CH(R15)-(左端の結合手が上記式Iのベンゼン環に結合し、右端の結合手が上記式Iのヘテロ原子窒素に結合する)を表し;
R15は次式IIであらわされ:
【化344】

式中のR6-R9はそれぞれ独立してH、ヒドロキシル、アルキルまたはアルコキシであり;
R10-R14はそれぞれ独立してH、ヒドロキシル、アルキル、アルコキシまたはアミノカルボニルであり;
XはO、SまたはN(H)である)で表わされる化合物の少なくとも一つ若しくはその薬学的に許容し得る塩または請求項15の式VIの少なくとも一つの化合物と甲状腺刺激ホルモン受容体とを接触させることを備えるアッセイ中の甲状腺刺激ホルモン受容体を活性化する方法。
【請求項24】
前記少なくとも一つの化合物を経口投与する請求項17〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記式Iの化合物の少なくとも一つにおいて、
R1-R4はそれぞれ独立してH、ヒドロキシルまたはアセトアミドであり;
R5はアラルキルであり;
R6、R7、R8、R10、R11、R13およびR14はそれぞれHであり;
R9はアルコキシであり;
R12はアセトアミドである請求項17〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記式Iの化合物の少なくとも一つにおいて、
R5
【化345】

;または
【化346】

である請求項17〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記式Iの化合物の少なくとも一つにおいて、R9がC1-C4のアルコキシである請求項17〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記式Iの化合物の少なくとも一つにおいて、XはOである請求項17〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記式Iの化合物の少なくとも一つにおいて、R1-R4がそれぞれ独立してHである請求項17〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記式Iの化合物の少なくとも一つが
【化347】

である請求項17〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記式Iの化合物の少なくとも一つが
【化348】

である請求項17〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記式Iの化合物の少なくとも一つが
【化349】

である請求項17〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記式Iの化合物の少なくとも一つが
【化350】

である請求項17〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記式Iの化合物の少なくとも一つが
【化351】

である請求項17〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記式Iの化合物の少なくとも一つが
【化352】

である請求項17〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記式Iの化合物の少なくとも一つにおいて、R15が次式III:
【化353】

で表される請求項17〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記式Iの化合物を被検体に投与する請求項17〜36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の化合物の少なくとも一つと、薬学的に許容し得る担体とを含む製薬学的組成物。
【請求項39】
請求項15または16に記載の化合物の少なくとも一つと、薬学的に許容し得る担体とを含む製薬学的組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−506841(P2012−506841A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532048(P2011−532048)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/011958
【国際公開番号】WO2010/047674
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(303020761)ザ ガバメント オブ ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー オブ ザ デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ (11)
【Fターム(参考)】