説明

男子用水洗トイレ

【課題】床置式及び壁掛式に容易に対応し得る男子用水洗トイレを提供する。
【解決手段】水洗便器11の底部に水平に回動可能に接続した接続パイプ49に、U字形接続パイプ53の一端側を水平に回動可能に接続して備え、このU字形接続パイプ53の他端側に水平に回動可能に接続した第1L形パイプ55に第2L形パイプ57を上下に回動可能に接続して備え、この第2L形パイプ57に水平に回動可能に接続した第3L形パイプ59を備えた排水トラップ35を備え、この排水トラップ35に水平方向の排水パイプを備えている。そして、前記U字形接続パイプ53の入口側に、当該U字形接続パイプ53から前記接続パイプ49に至る逆流の流量を一時的に受容するためのチャンバーを備えている。また、接続パイプ49内を洗浄する洗浄ノズル51を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は男子用水洗トイレに係り、さらに詳細には、床置式の水洗トイレ及び壁掛式の水洗トイレとして容易に適用することのできる男子用水洗トイレに関する。
【背景技術】
【0002】
男子用水洗トイレには、水洗便器の便器本体をトイレの床上に設置する床置式と、便器本体をトイレの壁に掛ける壁掛式とがある。床置式の場合には、床に形成した上下方向の排水孔と便器本体とを接続する構成であり、壁掛式の場合は、壁に形成された水平な排水孔と便器本体とを接続する構成である。
【特許文献1】特許第3853825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の水洗トイレは、便器本体の排水管を底面に開口して備えた床置式である。この種の床置式の水洗トイレの前記排水管の方向性は上下方向であるから、壁掛式に適用することができないものである。すなわち、従来の男子用水洗トイレにおいて、床置式は床置専用として製造されており、また壁掛式は壁掛専用として製造されている。したがって、トイレの排水孔が床に形成してあるか壁に形成してあるかによって、水洗トイレとして床置式又は壁掛式を選択しなければならないものである。
【0004】
よって、従来は床置式と壁掛式との2種類の水洗トイレを予め製造しなければならないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前述のごとき問題に鑑みてなされたもので、男子用水洗トイレであって、水洗便器の底部に水平に回動可能に接続した接続パイプに、U字形の接続パイプの一端側を水平に回動可能に接続して備え、このU字形接続パイプの他端側に逆U字形の接続パイプを水平に回動可能に接続して備えた構成の排水トラップを備え、この排水トラップに上下方向の排水パイプを備えていることを特徴とするものである。
【0006】
また、男子用水洗トイレであって、水洗便器の底部に水平に回動可能に接続した接続パイプに、U字形接続パイプの一端側を水平に回動可能に接続して備え、このU字形接続パイプの他端側に水平に回動可能に接続した第1L形パイプに第2L形パイプを上下に回動可能に接続して備え、この第2L形パイプに水平に回動可能に接続した第3L形パイプを備えた排水トラップを備え、この排水トラップに水平方向の排水パイプを備えていることを特徴とするものである。
【0007】
また、前記男子用水洗トイレにおいて、前記U字形接続パイプの入口側に、当該U字形接続パイプから前記接続パイプに至る逆流の流量を一時的に受容するためのチャンバーを備えていることを特徴とするものである。
【0008】
また、前記男子用水洗トイレにおいて、前記接続パイプ内を洗浄するための洗浄ノズルを備えていることを特徴とするものである。
【0009】
また、前記男子用水洗トイレにおいて、前記水洗便器の底部と前記接続パイプとの接続状態を保持すべく前記接続パイプを常に上方向に付勢する付勢手段を備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水洗便器の底部に接続した排水トラップに対して上下方向の排水パイプ又は水平方向の排水パイプを備えることができ、床置式又は壁掛式の水洗トイレとして容易に対応し得るものである。また、排水トラップが複数箇所において水平に回動可能であることにより、水洗便器をトイレの壁に近接した状態においても、トイレに備えられている排水孔の位置に対応して容易に排水パイプを接続することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1,2を参照するに、本実施形態に係る男子用水洗トイレ1は、トイレの壁3に突設して備えたフック部5に引掛け自在な枠体フレーム7を備えている。この枠体フレーム7は、図2に詳細に示すように、前記壁3の壁面に沿うように垂直な左右の支柱フレーム7L,7Rを備えており、この左右の支柱フレーム7L,7Rの上部は、左右方向に長い引掛けフレーム7Fの両端部にボルトなどのごとき適宜の固定具9を介して連結されている。また、前記左右の支柱フレーム7L,7Rの下部は、左右方向に長い連結フレーム7Cによって一体的に連結してある。そして、この連結フレーム7Cの左右方向の中央部には、前方向(図1において左方向)に水平に突出した突出フレーム7Tが一体的に備えられている。
【0012】
上述のごとき構成の枠体フレーム7において、前記引掛けフレーム7Fは前記フック部5に対して引掛けるものであって、左右の支柱フレーム7L,7Rに上下方向に適宜間隔に備えた複数の取付孔に対する取付け位置を調節することにより、左右の支柱フレーム7L,7Rに対して前記引掛けフレーム7Fは高さ位置調節可能に備えられている。したがって、左右の支柱フレーム7L,7Rに対する引掛けフレーム7Fの高さ位置を調節することにより、前記壁3に突出して備えた前記フック部5に対して枠体フレーム7の全体的な高さ位置を調節することができるものである。
【0013】
男子用水洗トイレ1においての便器本体(水洗便器)11は、設置時の取扱いが容易に行い得るように、樹脂製であって薄肉に形成してあり、軽量化が図られている。すなわち便器本体11の外観形状は陶器製の一般的な便器本体に類似した形状であるものの、薄肉の板状の構成であることにより、背部及び下部には比較的大きな空間部13が形成してある。そして、上記便器本体11において小水を受ける受水凹部15(図3参照)の底部には排水部としてフィルタを備えた排水具17が着脱交換可能に備えられている。
【0014】
この排水具17は、前記枠体フレーム7における突出フレーム7Tの先端部に備えた接続具19に上側から嵌合し上方向に離脱可能に構成してある。また、前記便器本体11における左右の側壁の後側の複数箇所には取付穴21が形成してあり、この取付穴21を貫通したボルト等のごとき取付具23(図4参照)を介して、前記枠体フレーム7の複数箇所に取付けた取付ブラケット25に対して着脱可能に取付けてある。
【0015】
上記構成により、便器本体11に備えた排水具17を前記接続具19に上方から嵌合するように、便器本体11を枠体フレーム7に取付け、前記取付穴21を貫通した取付具23を介して、便器本体11を取付ブラケット25に対して一体的に固定することができる。すなわち、枠体フレーム7に備えた接続具19と便器本体11に備えた排水具17との接続(嵌合),離脱及び取付具23による固定,固定の解除を行うことにより、枠体フレーム7に対する便器本体11の着脱を容易に行うことができるものである。
【0016】
前記便器本体11を壁3に設置して男子用水洗トイレ1として使用するとき、前記受水凹部15の洗浄を行うために、受水凹部15の上部には、洗浄水噴射ノズル27が備えられている。そして、前記枠体フレーム7の下部には、洗浄水を貯留するための貯留タンク29が取付ブラケット(図示省略)を介して取付けてあると共に、前記貯留タンク29内の洗浄水を前記噴射ノズル27を供給するためのポンプ31が取付ブラケットを介して前記枠体フレーム7に取付けてある。また、前記枠体フレーム7における前記突出フレーム7Tの下部には、前記接続具19を下水口33に接続するための排水トラップ35が備えられている。
【0017】
前記貯留タンク29,ポンプ31及び排水トラップ35は、前記枠体フレーム7の下部に取付けてあるものであり、前記便器本体11を枠体フレーム7に取付けたとき、便器本体11における受水凹部15の下側において、便器本体11の前記空間部13内に内装されるものである。
【0018】
そして、前記貯留タンク29に対して洗浄水として上水道から水を供給するための上水供給手段37が前記便器本体11における前記受水凹部15の左側に位置する左側空間部13L(図4参照)内に配置してある。さらに、前記受水凹部15の右側に位置する右側空間部13R内には、前記貯留タンク29内の洗浄水に添加する浄化液を貯留する薬液タンク39が配置されている。なお、前記浄化液は、例えば特許文献1に記載されているように、既に知られているので、浄化液についての説明は省略する。前記上水供給手段37及び前記薬液タンク39は、前記枠体フレーム7における左右の支柱フレーム7L,7Rにそれぞれ支持されているものである。
【0019】
さらに、前記便器本体11の上部にはケーシング41が配置してあり、このケーシング41内には、前記壁3に取付けた筐体43が内装されており、この筐体43には前記上水供給手段37へ供給する給水管(図示省略)を開閉する開閉弁(図示省略)が備えられていると共に、男子用水洗トイレ1の使用者を検知するための人体検知センサ45が備えられている。さらに、前記筐体43には、水洗トイレ1に備えた前記ポンプ31などの各種アクチュエータの動作を制御するための制御装置(図示省略)が備えられている。
【0020】
上記説明より理解されるように、前記便器本体11における背側の空間部13,左右の空間部13L,13R内に配置した例えば貯留タンク29,ポンプ31,上水供給手段37,薬液タンク39等は枠体フレーム7に装着支持されているものであるから、前述したように、枠体フレーム7に対する便器本体11の着脱を容易に行うことができるものである。したがって、前記貯留タンク29,ポンプ31,上水供給手段37,薬液タンク39等の保守点検を容易に行うことができるものである。
【0021】
また、水洗トイレ1の設置に際しては、前記貯留タンク29,ポンプ31,上水供給手段37,薬液タンク39などを装着支持した枠体フレーム7における前記引掛フレーム7Fを、壁3に備えたフック部5に引掛けた後、前記枠体フレーム7に対して便器本体11を取付ければよいものであるから、水洗トイレ1の設置を容易に行い得るものである。
【0022】
前記下水口33は、図1に示すように、トイレの壁3に設けてある場合と、図5に示すように、トイレの床47に設けてある場合とがある。そして、壁3に下水口33を設けた場合であっても、前記下水口33の高さ位置は、図1に示したH1の高さ位置とH2の高さ位置との場合がある。また、図5に示すように、床47に下水口33を設けた場合においては、壁3からの距離はほぼ一定である場合であっても、便器本体11の左右方向の中央部から左右方向に偏在することがある。
【0023】
すなわち、男子用水洗トイレ1には、壁3に設けた下水口33に対応して便器本体11を壁3に掛けた形態の壁掛け式と、床47に設けた下水口33に対応して便器本体11を床上に載置する床置式とがある。そこで、前記排水トラップ35は、壁掛け式及び床置式の両方の水洗トイレに対応可能に構成してある。
【0024】
より詳細には、前記排水トラップ35は、図6に示すように構成してある。すなわち、排水トラップ35は、前記本体フレーム7における突出フレーム7Tの先端部に備えた前記接続具19(図6には図示省略)の下端部に相対的に水平に回動可能に嵌入(嵌合)接続する丸パイプ状の上部嵌合接続部49Aを上面一端側に突出して備えた箱形状の接続パイプ49を備えており、この接続パイプ49の下面他端側には下部嵌合接続部49Bを下方向に突出して備えられている。
【0025】
この接続パイプ49は比較的容量の大きなチャンバーを構成するものであり、かつこの接続パイプ49には、前記上部嵌合接続部49Aの内周面及び前記接続具19の内面の洗浄を行うために、上方向へ拡散するように洗浄水を噴射する洗浄ノズル51が備えられている。この洗浄ノズル51は、前記ポンプ31から洗浄水の供給を受けて洗浄水を上方向に拡散噴射するものである。
【0026】
なお、前記ポンプ31から前記噴射ノズル27へ洗浄水を供給する供給路と前記洗浄ノズル51へ洗浄水を供給する供給路は分岐接続してあり、この分岐接続部には、ポンプ31から送給される洗浄水を噴射ノズル27側又は洗浄ノズル51側へ切換え自在な切換弁(図示省略)が備えられている。したがって、噴射ノズル27から便器本体11の受水凹部15へ洗浄水を噴出して受水凹部15の洗浄を行うことと、前記洗浄ノズル51から洗浄水を噴射して接続パイプ49の上部嵌合部49A内や当該接続パイプ49内を洗浄することができるものである。
【0027】
前記接続パイプ49における前記下部嵌合接続部49Bは、U字形接続パイプ53における一方の回動接続部53Aに相対的に水平に回動可能に嵌入接続してある。そして、前記U字形接続パイプ53の他方の接続部53Bは、第1のL形パイプ55における一方の回転接続部55Aに相対的に水平に回動可能に嵌入接続してある。この第1のL形パイプ55の他端部は、前記回転接続部55Aに対してほぼ直交する方向であってほぼ水平方向に指向してあり、この他端部に備えた接続部55Bは第2のL形パイプ57の回転接続部57Aに相対的に回動可能に嵌入接続してある。上記第2のL形パイプ57における他端側の接続部57Bは、前記回転接続部57Aに対してほぼ直交する方向に指向してある。
【0028】
前記第2のL形パイプ57の前記接続部57Bは、第3のL形パイプ59における一方の回転接続部59Aに相対的に回動可能に嵌入接続してある。この第3のL形パイプ59における他端側の接続部59Bは前記回転接続部59Aに対してほぼ直交する方向に指向してあって常にほぼ水平方向に指向してある。そして、この第3のL形パイプ59における接続部59Bには、壁3に備えた前記下水口33に接続する排水パイプ61が接続してある。なお、前記U字形接続パイプ53と前記枠体フレーム7の突出フレーム7Tとの間には、排水トラップ35における前記接続パイプ49の上部嵌合部49Aを前記接続具19と常に接続した状態に保持するように上方向へ付勢した付勢手段としてのコイルスプリングなどのごとき弾性部材63が張設介在してある。
【0029】
上記構成により、接続パイプ49は、上部嵌合部49Aを回転軸として水平に回動することができ、U字形接続パイプ53は回動接続部53Aを回転軸として水平に回動することができる。また第1のL形パイプ55は回転接続部55Aを回転軸として水平に回動することができる。したがって、第1のL形パイプ55の接続部55Bを壁3の壁面に対して接近離反する方向及び壁面に沿っての左右方向(図6において紙面に垂直な方向)に移動することができると共に、上記接続部55Bを、壁3の壁面に対して直交する方向や左右方向に傾斜した水平方向に指向することができるものである。
【0030】
そして、上記第1のL形パイプ55の前記接続部55Bに回動自在に接続した第2のL形パイプ57における接続部57Bは、当該L形パイプ57の回転接続部57Aを回転軸として上下に回動することにより上下方向に高さ位置を調節することができると共に、接続部57Bを上下方向に指向することや回転接続部57Aの回転軸に対して直交する方向に水平に指向することができる。したがって、当該L形パイプ57の接続部57Bに回動自在に接続した第3のL形パイプ59の高さ位置を調節することができるものである。そして、第3のL形パイプ59における回転接続部59Aを回転軸として当該L形パイプ59を回動することにより、当該L形パイプ59の接続部59Bに接続した排水パイプ61を壁3の壁面に対して直交するように水平姿勢に調節することができるものである。
【0031】
すなわち、前述したように、接続パイプ49,U字形接続パイプ53,第1,2,3のL形パイプ55,57,59のそれぞれの接続部をそれぞれ適宜に回動することにより、接続パイプ49における上部嵌合部49Aの位置を一定位置に保持した状態において排水パイプ61の高さ位置及び枠体フレーム7の左右方向の中心位置に対する左右方向への偏在位置を調節することができるものである。したがって、図1に示すように、水洗トイレ1を壁掛け式として設置するとき、壁3に備えた下水口33の位置に対して排水パイプ61の高さ位置を高さH1〜H2の間で調節することができ、下水口33の高さ位置に容易に対応することができるものである。
【0032】
前記構成において、前記排水トラップ35から第3のL形パイプ59を取り外し、このL形パイプ59に代えて第2のL形パイプ57における接続部57Bに排水パイプ61を接続すると、排水パイプ61は、図9に示すように垂直な状態となる。そして、前述したように接続パイプ49,U字形接続パイプ53及び第1のL形パイプ55をそれぞれ水平に適宜に回動することにより、接続パイプ49における上部嵌合接続部49Aを一定位置に保持して垂直状態の前記排水パイプ61の水平位置を調節することができるものである。したがって、図5に示すように、水洗トイレ1を床置式として設置するとき、床47に備えた下水口33の位置に対応して前記排水パイプ61の位置決めを容易に行うことができるものである。
【0033】
なお、水洗トイレ1を床置式として設置するときには、前記第1,2のL型パイプ55,57を一体化して逆U字形の接続パイプとすることも可能である。
【0034】
上記説明より理解されるように、前記構成の排水トラップ35を採用することにより、1個の水洗トイレ1であっても壁掛け式や床置式に容易に対応し得るものである。よって、壁掛け式と床置式とに形式が異なる場合であっても水洗トイレ1は共用することができるものであり、製造コストの低減化を図ることができると共に生産性の向上を図ることができるものである。また、前記構成においては、接続パイプ49は容量が比較的大きなチャンバーに構成してあるので、U字形接続パイプ53内から汚水等の逆流があるような場合であっても、接続パイプ49はバッファーとして機能するものである。したがって、汚水が受水凹部15や貯留タンク29等へ逆流することを防止することができるものである。
【0035】
前記特許文献等において既に知られているように、洗浄水を循環して洗浄水に再使用する場合、小水は下水口33側へ排出し、受水凹部15に付着した小水を洗浄することが行われている。そして、上記洗浄水を貯留タンク29に貯留して再使用するものである。したがって、前記接続具19には、小水及び洗浄水の流出方向を切換えるための切換弁が備えられている。
【0036】
より詳細には、図10に示すように、前記便器本体(水洗便器)11に備えたパイプ状の前記排水具17の下端側に嵌合離脱可能に接続した前記接続具19には、前記排水具17に下端部を嵌入接続するための嵌合接続部19Aを上部側に備えた構成であり、この嵌合接続部19Aの上端部には、前記枠体フレーム7における突出フレーム7Tに支持されるフランジ部19Fを備えている。
【0037】
上記嵌合接続部19Aの下部側は下側が小径となるテーパ部19Tに形成してあり、このテーパ部19Tの底部には、前記排水トラップ35における接続パイプ49の上部嵌合接続部49Aに嵌入接続する接続部19Bを下方向へ突出して備えている。そして、上下の接続部19A,19Bの間に備えた排水路19Cには、洗浄水を前記貯留タンク29へ導くための分岐接続路19Dが分岐接続してある。この分岐接続路19Dの径は前記排水路19Cの約1/2の小径に形成してある。
【0038】
前記排水路19Cと前記分岐接続路19Dとの接続部であって前記分岐接続路19Dの入口の上部には、前記排水路19Cのほぼ中心位置にまで先端部が突出した突出壁部19Eが備えられている。そして、前記分岐接続路19Dの入口に対応した位置で前記突出壁部19Eの先端部付近の下方位置には、円板状の切換弁65が回転自在に備えられている。上記切換弁65は、前記突出壁部19Eの突出方向(図10において左右方向)に対して直交する方向であって前記排水路19Cの中心部を水平に貫通した回転軸67に一体的に取付けてある。
【0039】
前記回転軸67は、例えばロータリーソレノイドなどのごとき適宜のロータリーアクチュエータ69(図1参照)によって一方向(図10において時計回り方向)に回動されるものである。そして、前記切換弁65が前記突出壁部19Eの先端部下面に接触してほぼ垂直状態になったときには、前記排水具17側から流入した小水を前記排水トラップ35側へ誘導する構成であり、前記切換弁65が前記分岐接続路19Dの入口の下部縁に接触したときには、図10に示すように、分岐接続路19D側が低くなるように傾斜して、前記排水具17側から流入した洗浄水を、分岐接続路19D側へ誘導し、前記貯留タンク29へ流入する構成である。
【0040】
上記構成より明らかなように、分岐接続路19Dの入口における上部には、排水路19Cのほぼ中央部まで先端部が突出した突出壁部19Eを備えているので、小水を排水トラップ35側へ誘導排出するとき、前記排水路19C内において前記分岐接続路19Dの入口から離れた内周面側へ誘導されて排出されるので、また小水の排出時には、切換弁65の下部が前記分岐接続路19Dの入口よりも下側に配置されるので、前記分岐接続路19D内へ小水の一部が入り込むようなことがないものである。また、前記構成においては、切換弁65が図10において時計回り方向に回転し、当該切換弁65が分岐接続路19Dの入口の下部線に接触するまでは、上記入口と切換弁65との間に段差部があり、分岐接続路19D側への小水等の流入が抑制されるものである。
【0041】
したがって、小水の一部が貯留タンク29内へ入り込む場合に比較して洗浄水の汚染速度を抑制することができるものである。よって、洗浄水の再利用回数をより多くすることができると共に前記薬液タンク39からの浄化液の供給量をより少なくすることができるものである。
【0042】
上記説明より理解されるように、前記接続具19,貯留タンク29及びポンプ31等は、受水凹部15の内面を洗浄した洗浄水を循環使用する循環システムを構成するものであって、枠体クレーム7に取付けてあるものである。そして、前述したように、前記受水凹部15を備えた便器本体11は枠体クレーム7に対して着脱可能であるから、前記循環システムの保守点検を容易に行い得るものである。
【0043】
前述のごとく洗浄水を貯留タンク29に貯留して再利用することを繰り返すと、貯留タンク29の内面にぬめりが付着することがあるので、貯留タンク29の内面の清掃を行うことが望ましいものである。そこで、前記貯留タンク29内には、内面清掃手段が備えられている。
【0044】
より詳細には、図11に示すように、貯留タンク29の上面に着脱自在な蓋部材71には、前記上水供給手段37から新しい洗浄水の供給を受けるための受水管83が取付けてある。そして、この受水管83の出口83Aに近接した位置には、適宜位置に備えた小型モータ等の回転用アクチュエータ(回転駆動手段)75によってタイミングベルト77等を介して回転駆動される回転軸79が前記蓋部材71を貫通して垂直にかつ回転自在に備えられている。そして、前記回転軸79には、前記出口83Aから貯留タンク29内に流下する洗浄水を周囲に勢いよく弾き飛ばして、水滴を貯留タンク29の内面へ投擲(放擲)する回転羽などのごとき回転体81が取付けてある。
【0045】
したがって、前記貯留タンク29の内面を清掃するために、貯留タンク29内の洗浄水を排出してほぼ空の状態とした後、前記受水管83の出口83Aから貯留タンク29内へ新しい洗浄水を流下するとき、回転用アクチュエータ75を駆動して回転体81を回転すると、出口83Aから流下する洗浄水が回転体81によって周囲に勢いよく弾き飛ばされて、貯留タンク29の内面に水滴が衝突される。よって、水滴が貯留タンク29の内面に激しく当接するときに、内面に付着したぬめり等が除去されて清掃されることになる。したがって、貯留タンク29の内面にぬめり等が付着することによる悪臭等の発生を防止することができるものである。
【0046】
なお、前記回転体81の構成としては、図12に示すように、適宜形状,構成の羽根の構成や、回転体の回転による遠心力によって周囲に洗浄水が放出(放射)される構成とすることも可能である。この場合、回転体を放射方向に長いパイプ又は樋状の構成とし、回転軸79に近接した内端側の上部に洗浄水の流入口を備え、外端側の先端側に放出口を備えた構成とすることも可能である。すなわち回転体81の構成は種々の構成を採用することができるものである。
【0047】
ところで、初期状態や貯留タンク29内の洗浄水が減少したときには、前記上水供給手段37から新しい洗浄水を前記貯留タンク29へ供給するものである。この際、前記貯留タンク29内には、便器本体11の受水凹部15を洗浄した後の洗浄水が貯留されるものであるから、断水や何らかの不都合が生じた場合であっても、貯留タンク29内の洗浄水が上水供給手段37側へ逆流することは確実に防止する必要がある。
【0048】
そこで、図13に示すように、本例においては、前記貯留タンク29の上部に備えた前記受水管83と前記上水供給手段37に備えた上水用の供給ノズル85は上下方向に大きく離隔してあり、この供給ノズル85と前記受水管83との間には、下端部に小径の開口部87Aを備えたサブタンク87が配置してある。そして、前記受水管83とサブタンク87は空間部を間にして離隔してあり、前記供給ノズル85とサブタンク87は空間部を介して離隔してある。
【0049】
したがって、前記供給ノズル85から供給される新しい洗浄水としての上水は前記サブタンク87内に一時的に保持され、このサブタンク87の下端部に備えた前記開口部87Aから自重によって水が流出することによって前記受水管83へ供給されるものである。よって、前記貯留タンク29内から洗浄水が万一逆流するような場合には、前記受水管83の上部から外部に流出するようなことがあっても前記サブタンク87内へ逆流するようなことはないものである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態に係る男子用水洗トイレの構成を概略的に示す側断面説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係る男子用水洗トイレの構成を概略的に示す正断面説明図である。
【図3】トイレの壁に対して便器本体を着脱する構成を概略的に示す側面説明図である。
【図4】トイレの壁に対して便器本体を着脱する構成を概略的に示す平面説明図である。
【図5】図1に示した構成において床置式の場合を概略的に示す説明図である。
【図6】排水トラップの構成を示す側面説明図である。
【図7】排水トラップの構成を示す平面説明図である。
【図8】排水トラップの構成を示す平面説明図である。
【図9】排水トラップの構成を示す正面説明図である。
【図10】接続具の構成を示す説明図である。
【図11】貯留タンクの内部構成を示す説明図である。
【図12】回転体の変形例を示す説明図である。
【図13】上水供給手段の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0051】
1 男子用水洗トイレ
3 壁
5 フック部
7 枠体フレーム
7C 連結フレーム
7F 引掛けフレーム
7L,7R 支柱フレーム
7T 突出フレーム
11 便器本体(水洗便器)
13 空間部
13L 左側空間部
13R 右側空間部
15 受水凹部
17 排水具
19 接続具
19A 嵌合接続部
19B 接続部
19C 排水路
19D 分岐接続路
19E 突出壁部
27 洗浄水噴射ノズル
29 貯留タンク
31 ポンプ
33 下水口
35 排水トラップ
37 上水供給手段
39 薬液タンク
47 床
49 接続パイプ
49A 上部嵌合接続部
49B 下部嵌合接続部
51 洗浄ノズル
53 U字形接続パイプ
55 第1のL形パイプ
57 第2のL形パイプ
59 第3のL形パイプ
61 排水パイプ
63 弾性部材(付勢手段)
65 切換弁
67,79 回転軸
71 蓋部材
75 回転用アクチュエータ(回転駆動手段)
81 回転体(回転羽)
83 受水管
85 供給ノズル
87 サブタンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
男子用水洗トイレであって、水洗便器の底部に水平に回動可能に接続した接続パイプに、U字形の接続パイプの一端側を水平に回動可能に接続して備え、このU字形接続パイプの他端側に逆U字形の接続パイプを水平に回動可能に接続して備えた構成の排水トラップを備え、この排水トラップに上下方向の排水パイプを備えていることを特徴とする男子用水洗トイレ。
【請求項2】
男子用水洗トイレであって、水洗便器の底部に水平に回動可能に接続した接続パイプに、U字形接続パイプの一端側を水平に回動可能に接続して備え、このU字形接続パイプの他端側に水平に回動可能に接続した第1L形パイプに第2L形パイプを上下に回動可能に接続して備え、この第2L形パイプに水平に回動可能に接続した第3L形パイプを備えた排水トラップを備え、この排水トラップに水平方向の排水パイプを備えていることを特徴とする男子用水洗トイレ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の男子用水洗トイレにおいて、前記U字形接続パイプの入口側に、当該U字形接続パイプから前記接続パイプに至る逆流の流量を一時的に受容するためのチャンバーを備えていることを特徴とする男子用水洗トイレ。
【請求項4】
請求項1,2又は3に記載の男子用水洗トイレにおいて、前記接続パイプ内を洗浄するための洗浄ノズルを備えていることを特徴とする男子用水洗トイレ。
【請求項5】
請求項1,2,3又は4に記載の男子用水洗トイレにおいて、前記水洗便器の底部と前記接続パイプとの接続状態を保持すべく前記接続パイプを常に上方向に付勢する付勢手段を備えていることを特徴とする男子用水洗トイレ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−138548(P2010−138548A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313417(P2008−313417)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(504382567)朝日テック工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】