説明

男性不妊の治療のための、D−アスパラギン酸とL−アスパラギン酸またはこれら酸の塩の組み合わせの使用

本発明は、精子数及び運動性の増加により男性の生殖活性を刺激するための、Dアスパラギン酸とL−アスパラギン酸からなる組合せ、又はL−アスパラギン酸単独の使用二関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸またはこれら酸の塩を組み合わせて使用した男性不妊の治療に関する。本発明は特に、D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸またはこれら酸の塩の混合物(少なくとも1:1の比が好ましい)を利用して精子の数と運動性を増大させることによって男性の生殖活動を刺激することに関する。
【背景技術】
【0002】
男性不妊は、精子の製造、放出、機能に関する異常によって起こる可能性があり、カップルの不妊の原因の約35%を占める。男性不妊は、おそらく、過去または現在の尿生殖器感染症;男性で睾丸炎(睾丸感染症)を起こす可能性のある水痘、はしか、耳下腺炎などの疾患;性感染病;過去の手術または生殖器レベルの怪我などによって起こる可能性がある。さらに、ライフ・スタイル(例えばアルコールの飲用)、喫煙、薬、危険な仕事、環境因子が重要な役割を果たしている可能性がある。精索静脈瘤によって元気のいい精子の生成が不足する可能性がある。また、FSH(ホリトロピン)、LH(ルテオトロピン)、PRL(プロラクチン)、T(テストステロン)のレベル変化が精子製造プロセスに影響を与える可能性がある。
【0003】
男性不妊で現在利用されている治療法に薬の注射または経口投与がある。注射される薬の1つとして、更年期後の女性の尿から抽出されたために更年期ヒト・ホルモン(HMG)と呼ばれるゴナドトロピン調製物(同量のFSHとLH)を含むメノトロピン(メノゴン・バイアルに入っている活性成分)が利用されている。HMGは、排卵プロセス、精子形成、ステロイド生成を刺激することによって卵巣と精巣に直接作用する。精巣内ではFSHは本質的にセルトリ細胞の成熟の刺激に関与し、さらに精細管の成熟と精子の発達に影響を与える。精巣では高いアンドロゲン濃度が必要とされるため、これは、HCGを用いた予備治療によって、または3ヶ月間にわたってHCGを毎週5000UIと組み合わせる治療スキームに従って得ることができる。しかしこの治療法には欠点がいくつかある、例えばHCGは、経口投与された場合には有効でないため、筋肉内投与せねばならない。いくつかの場合には、臨床でその製品を繰り返して投与する結果として抗HCG抗体形成が起こる可能性があるため、無効な治療法になる。この治療法の別の欠点は、コストが高いことである。なぜなら最もよく利用されている治療スキームは、1週間に3回の筋肉内投与を3ヶ月のサイクルにわたって行なうことが含まれているからである。さらに別の欠点は、毎週筋肉内投与を繰り返すことが原因で患者がそれによく従わない
【0004】
別の治療法として、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)を用いた治療がある。この治療法は、携帯ポンプを利用して90〜120分の間隔で(静脈内または皮下に)パルス式投与することを含んでいる。このような治療法によって3ヶ月以内にテストステロンとゴナドトロピンの濃度が回復して精子形成が促進される一方で、患者は尿管カテーテルを備えた携帯ポンプを持ち運ぶ必要があるため、患者にとって快適ではない可能性がある。
【0005】
経口療法に関しては、抗エストロゲンが含まれる。この化合物(クエン酸クロミフェンとタモキシフェン)は、内分泌系の病気がない場合に男性不妊の治療に広く使われてきた。抗エストロゲンは、視床下部レベルと末梢レベルの両方でエストロゲン受容体と競合的に結合する能力を維持するため、ゴナドトロピンの血漿レベルと二次的精巣内テストステロンの増大を誘導する。精子形成に対する薬理学的効果は、精子形成に直接作用するこれらホルモンの濃度増大を通じて及ぼされるはずである。特にクエン酸クロミフェンを少ない投与量(25〜50mg)で3〜5ヶ月にわたって投与することは、精液の諸特性の改善に適しているのに対し、より高い濃度(200〜400mg)は、精子形成の抑制と精子濃度の低下を誘導する。
【0006】
対照なしのさまざまな研究では、精子濃度の増加がさまざまであることと、妊娠率に0〜80%の幅があること、そして治療に対する応答が観察されたのは、わずかな程度から中程度の精子過少症(1000万〜2000万/ml)の患者にほぼ限られることが報告されている。このデータに照らして世界保健機関(WHO)が特発性精子過少症の患者でプラセボとクエン酸クロミフェンに関して二重盲検多中心研究を実施したところ、この薬で治療した患者で妊娠率の改善は検出されなかった(WHO、『ヒト生殖年次技術報告1990』の中の「研究、開発、研究訓練の特別計画」、ジュネーブ:WHO 1991年:146〜147ページ)。
【0007】
やはり経口療法として、アロマターゼ阻害剤(例えばテストラクトン)を使用できる。対照なしの研究では、精子過少症の患者に対するテストラクトン(1g/日)が精子濃度と妊娠率を増大させるのに適していた。それに続く試験として、プラセボを対照として利用し、テストラクトンの投与量を増やした(2g/日)無作為二重盲検試験では、薬治療群とプラセボ治療群で精液パラメータの違いは検出されず、妊娠は観察されなかった。アロマターゼに対する選択的阻害活性を示す別の化合物はアナストロゾールであり、1日に1mgの投与量で精子形成に関してテストラクトンと同じ効果をもたらすようである。これまでに研究された被験者の数は極めて少ないため、男性不妊の治療に関するこれら薬の実際の効果を評価するにはさらなる研究が確かに必要とされている。
【0008】
アンドロゲンの投与は、精子過少症の患者で精液パラメータを改善するために行なわれた最初の治療の試みであった。現在は、2種類の弱いアンドロゲン性化合物が使用されている。メステロロン(ゴナドトロピンの分泌に影響しない5a還元テストステロン誘導体)が、さまざまな試験において毎日50〜150mgの投与量で単独療法として利用されてきたが、精液パラメータの変化はさまざまであった。最も最近の研究とWHOの分析では、分析されたすべての精液パラメータと妊娠率が治療前群およびプラセボ治療群の値と比べて有意に変化しているとは報告されていない。同様に、ウンデカン酸テストステロンが、対照を用いた研究で、ゴナドトロピンとテストステロンのレベルに影響を与えることなく精液パラメータを改善するのに適しているように思われた。しかしその後の試験でそうした結果は確認されなかったため、この化合物の使用はさらに検証される必要がある。
【0009】
最後に、L-アルギニンまたは他のL-アミノ酸の組み合わせ、および/または補助剤としてのビタミン・サプリメントが、乏精子-精子無力症と身体発達不全において1日に2〜3回、3ヶ月にわたって経口投与された。
【0010】
上記のことに照らすと、男性不妊の治療に関する公知の方法の欠点を克服する新しい方法が必要とされていることは明らかである。
【0011】
D-アスパラギン酸は、1977年にAntimo D'Anielloがタコ(海の軟体動物であり、学術名はOctopus vulgaris)の脳で初めて見つけた天然のアミノ酸であり、Antonio Giudittaとの連名でJ. of Neurochemistryに発表された(参考文献1〜2)。そのD'Anielloが他のイタリア人研究者および非イタリア人研究者と共同して行なったその後の研究により、D-アスパラギン酸が神経だけでなく内分泌系にも見られることが、軟体動物、甲殻類、後鰓類、魚類などの多くの海洋生物(参考文献3〜5)、カエルなどの陸生動物(参考文献6〜7)、トカゲ(参考文献8)、ニワトリ(参考文献9)、ラット(参考文献9〜11)、ヒツジ(参考文献12)、ヒト(参考文献13〜15)で証明された。濃度は種ごとにさまざまである。一般に、進化の程度がより低い動物には、より進化した動物と比べてより多くのD-アスパラギン酸が存在している。さらに、哺乳動物(ヒトを含む)では、胎芽期にこのアミノ酸が脳で高濃度になり、神経系の発達にある役割を果たしていることが見いだされている。逆に、成人では、D-アスパラギン酸は内分泌系に、その中でも特に下垂体と精巣に高濃度で存在してある役割を果たしている。まとまった概説に関しては、D'Anielloの出版物であるBrain Research Review、第53巻、215〜234ページ、2006年(参考文献16)と、その文献からの以下の表1を参照のこと。この表には、何種類かの動物の神経組織と内分泌組織におけるD-アスパラギン酸の含有量を示してある。
【0012】
【表1】

【0013】
ラットにおけるD-アスパラギン酸の研究により、この化合物を経口投与することが、血中でいくつかのホルモンの一時的な増加を誘導するのに適していることが明らかにされた(黄体形成ホルモン(LH)(参考文献17〜18)、成長ホルモン(参考文献18)、プロラクチン(PRL)(参考文献19)、テストステロン(参考文献17〜18))。最後に、D-アスパラギン酸が男性不妊に関与していることも最近になって明らかにされた(参考文献20)。
【0014】
生理学的に妊娠させることが可能な男性(精子の数が精液1mlにつき2000万匹よりも多く、運動性が70%超の人)の精液と精子では、D-アスパラギン酸が1mlの精子に80±24ナノモルで存在し、精子1匹に130±30フェムトモルで存在していることが観察されている。それに対して不妊の男性、すなわち精液に含まれる精子の運動性が正常値よりも小さい人(乏精子-精子無力症の人)の精液と、精子のない男性(無精子症の人)の精液では、D-アスパラギン酸の含有量が精液と精子の両方で有意に減少している。具体的には、乏精子-精子無力症の男性の精液ではD-アスパラギン酸が約1/3であり、無精子症の男性では1/6である。妊娠させることが可能な男性では精子1匹につき130±35フェムトモルであったのに対し、乏精子-精子無力症の男性では精子1匹につき60±10フェムトモルという値が見いだされた。表2に、ヒトの精液と精子に含まれるD-アスパラギン酸を示す。
【0015】
【表2】

【0016】
これらの値は、乏精子-精子無力症のドナー(1mlにつき20000万未満の精子を含む精液)からの10個の精液サンプルと、非閉塞性無精子症のドナー(精液1ml当たりの精子が100万未満のドナー)からの10個の精液サンプルから得られた平均値と標準偏差を示している。
【0017】
D-アスパラギン酸の値は、特別なHPLCクロマトグラフィ法にD-アスパラギン酸オキシダーゼを組み合わせて利用することによって得られた。精子が正常なドナーと乏精子-精子無力症のドナーの間のD-アスパラギン酸の差はP<0.01で有意であり、乏精子-精子無力症のドナーと無精子症のドナーの間のD-アスパラギン酸の差もP<0.01で有意であった。
【0018】
これらの結果と、ラットでLHホルモン(黄体形成ホルモン)とテストステロンの増加に対するD-アスパラギン酸の活性に関して得られた他の結果(参考文献17と18)から、D-アスパラギン酸を少なくとも30日間にわたって男性に投与する(3gの投与量を毎日1回または2回)と、LHおよびテストステロンの値の増加と、精子の数および運動性の増大がやはり誘導された(2005年9月のイタリア国特許出願RM2005A000468)。
【0019】
本発明の発明者は、今や、D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸の組み合わせにより、D-アスパラギン酸だけを同量投与した場合と比べて効果が著しく大きくなることを見いだした。発明者は、動物とヒトの両方で研究を行ない、本発明の組み合わせで治療した対象では、D-アスパラギン酸だけで治療した対象と比べて精子の数と運動性がより増大することを明らかにした。特にヒトでは、LHとテストステロンのレベルの上昇も観察される。
【0020】
ウサギとヒトで行なった研究の結果(発表せず)から、D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸またはこれら酸の塩(塩では、酸が例えばNa+イオンを用いて中和される)を組み合わせて使用すると、精子の数と運動性が増大することを通じてヒトの生殖活性が刺激されることがわかる。
【0021】
不妊治療で本発明の組み合わせを利用することには、1日に1回だけの投与でよいため、60〜90日をサイクルとする治療で従来の治療法よりも低コストにできるという大きな利点がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
したがって本発明の具体的な目的は、D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸、またはこれら酸の対応する1種類以上のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の組み合わせと、可能であればこれら活性成分に組み合わされる医薬として許容可能な1種類以上の賦形剤および/または補助剤を含むか、これら諸成分からなる組成物、またはL-アスパラギン酸だけと、可能であればその活性成分に組み合わされる医薬として許容可能な1種類以上の賦形剤および/または補助剤を含むか、これら諸成分からなる組成物である。
【0023】
D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸、またはこれら酸の対応する1種類以上のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を組み合わせる場合には、D-アスパラギン酸またはその塩の濃度は50%〜99.5%の範囲で変えられるのに対し、L-アスパラギン酸またはその塩の濃度は0.5%〜50%の範囲で変えられる。ただし%の数値は、D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸、またはこれら酸の塩の全重量を基準にしている。別の一実施態様では、D-アスパラギン酸またはその塩の濃度は50%〜80%の範囲で変えられるのに対し、L-アスパラギン酸またはその塩の濃度は20%〜50%の範囲で変えられる。ただし%の数値は、D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸、またはこれら酸の塩の全重量を基準にしている。好ましい一実施態様では、D-アスパラギン酸またはその塩の濃度は80%であり、L-アスパラギン酸またはその塩の濃度は20%である。ただし%の数値は、D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸、またはその塩の全重量を基準にしている。あるいはD-アスパラギン酸またはその塩の濃度とL-アスパラギン酸またはその塩の濃度は50%である。ただし%の数値は、D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸、またはこれら酸の塩の全重量を基準にしている。さらに別の一実施態様では、D-アスパラギン酸またはその塩の濃度は99.5%であり、L-アスパラギン酸またはその塩の濃度は0.5%である。ただし%の数値は、D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸、またはこれら酸の塩の全重量を基準にしている。
【0024】
本発明は、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を伴う、または伴わない乏精子-精子無力症状および/または精子無力症を特徴とする非閉塞性男性不妊に関係することが好ましい。
【0025】
特に、D-アスパラギン酸またはL-アスパラギン酸の塩は、ナトリウム塩であるか、ナトリウム塩と、カリウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩いずれかとの混合物であることが好ましい。
【0026】
上述のように、本発明の組成物は、1種類以上の補助剤を含むことができる。その補助剤の選択は、アミノ酸、ビタミン、ミネラル、生殖機能刺激ホルモン、カリクレイン、抗生剤、抗炎症剤、抗アンドロゲン、アンドロゲン、ペントキシフィリン、ゴナドトロピン、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、アドレナリン作用性刺激剤、ダイエタリー・サプリメント、抗酸化剤(α-リポ酸、Q10コエンザイム、グルタチオン、ここには挙げない他の抗酸化剤)、ケト酸(例えばオキサロ酢酸、α-ケトグルタル酸))からなるグループの中からなされる。アミノ酸の選択は、特に、アラニン、アルギニン、カルニチン、システイン、グルタミン、グリシン、ロイシン、リシン、イソロイシン、メチオニン、オルニチン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、バリン、セリンからなるグループの中から行なうことができる。
【0027】
ビタミンの選択は、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD3、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンPP、ビオチン(H)、葉酸、リポ酸からなるグループの中から行なうことができる。
【0028】
最後に、ミネラルの選択は、マグネシウム、カリウム、亜鉛、マンガン、モリブデン、クロム、セレン、パントテン酸カルシウム、鉄、銅、ヨウ素、リン、フッ素、カルシウムからなるグループの中からなされる。
【0029】
ビタミンは、以下に示す範囲の濃度で使用できる。ビタミンAは0.0048%〜0.024%、ビタミンCは0.36%〜3.6%、ビタミンD3は0.00003%〜0.00015%、ビタミンEは0.06%〜0.6%、ビタミンKは0.00042%〜0.0021%、ビタミンB1は0.0084〜0.042%、ビタミンB2は0.0096%〜0.048%、ビタミンB6は0.012%〜0.06%、ビタミンB12は6×10-6%〜3×10-5%、ビタミンPPは0.108%〜0.54%、ビオチンは0.0009%〜4.4×10-5%、葉酸は0.0012%〜0.006%である。ただし%の数値は、全組成物の重量を基準にした重量%である。
【0030】
ミネラルの濃度は、以下の範囲で変えることができる。マグネシウムは3.2%〜9%、カリウムは0.4%〜4%、亜鉛は0.09%〜0.45%、マンガンは0.02%〜0.07%、モリブデン、クロム、セレンは0.0003%〜0.002%、パントテン酸カルシウムは0.04%〜0.15%、鉄は0.084%〜0.021%、銅は0.02%〜0.1%、ヨウ素は0.0009%〜0.0045%、リンは2.5%〜20%、フッ素は0.05%〜0.02%、カルシウムは3.24%〜16.2%である。ただし%の数値は、全組成物の重量を基準にした重量%である。
【0031】
D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸に追加するアミノ酸の濃度は、全組成物の重量を基準にして0.6重量%〜10重量%の範囲で変えることができる。
【0032】
本発明の好ましい一実施態様では、組成物は、D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸に加え、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウムを保存剤として含むことができる。特に、濃度は以下のように変えることができる。葉酸は0.002%〜0.006%、ビタミンB6は0.02%〜0.06%、ビタミンB12は1×10-5%〜3×10-5%、ソルビン酸カリウムは0.002%〜0.008%、安息香酸ナトリウムは0.002%〜0.008%である。
【0033】
本発明の組成物は、1日量として0.001g/日〜10g/日の範囲で投与することができる。
【0034】
上記のことに基づくと、ビタミンとミネラルの濃度は、RDA(推奨される1日量)の30%〜150%の範囲で変えることができる。特に表3に、本発明の組成物を含む単位用量の薬に含めることのできるさまざまな化合物と、その最少用量および最大用量を示す。
【0035】
【表3】

【0036】
表4には、本発明の組成物に対応する1日用量を最大用量および最少用量とともに示してある。
【0037】
【表4】

【0038】
さらに、この組成物は、純粋に補助剤の役割を果たす以下の他の物質を、活性成分の市販用量である3gという組成物の重量中に含むことができる。
キシリトール700、0.1〜10%
オレンジ・アロマ、0.1〜10%
バニリン、0.05〜0.5%
フルクトース、0.2〜20%
サッカロース、0.2〜20%
マルトデキストリン、0.2〜10%
アスパルタム、0.03〜0.3%
純粋な脱水オレンジ・ジュース、0.1〜20%
水酸化マグネシウム、0.1〜1%
シリカ、0.1〜20%。
【0039】
%の数値は、活性成分の市販用量である3.12gという組成物の重量を基準にした重量%である。組成物は、1本の瓶に9〜11mlが含まれた塩溶液の形態、または活性成分である3gの用量のD/L-アスパラギン酸塩と、他の諸成分とを含んでいて、全乾燥重量が3.5〜6.0gになる顆粒の形態である。
【0040】
添付の図面を詳細に参照しながら本発明の好ましい実施態様に従って本発明をこれから説明するが、本発明がこの説明に限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の組成物で治療した後のヒト血漿中のLH(黄体形成ホルモン)の増加を示している。示した数値は、治療を開始してから10日後、20日後、30日後に25〜40歳の人から得た平均値と標準偏差(S.D.)を表わしている(末尾の参考文献参照)。
【図2】本発明の組成物で治療した後のヒト血漿中のテストステロンの増加を示している。示した数値は、治療を開始してから10日後、20日後、30日後に25〜40歳の人から得た平均値と標準偏差(S.D.)を表わしている(末尾の参考文献参照)。
【図3】本発明の組成物で治療した後のヒト精液に含まれる精子の数の増加を示している(末尾の参考文献参照)。
【図4】本発明の組成物で治療した後のヒト精液に含まれる精子の数の増加を示している。示した数値は、0日目と、治療を開始してから10日後、20日後、30日後に25〜40歳の人から得た平均値と標準偏差(S.D.)を表わしている(末尾の参考文献参照)。
【図5】D-アスパラギン酸とL-アミノ酸の標準的な混合物からなる既知のサンプルのHPLCによる分析結果を示している(末尾の参考文献参照)。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0042】
実施例1:溶液または粉末の形態になったD-アスパラギン酸ナトリウムとL-アスパラギン酸ナトリウムの組み合わせの調製
D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸は、水に溶けない粉末の形態で市販されている。したがってナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩のいずれかを形成することによってこのアミノ酸を可溶化する必要がある。以下に示すのは、266g/リットルのD-アスパラギン酸に対応する濃度2MのD-アスパラギン酸ナトリウムの調製の一例であり、これは312g/リットルのD-アスパラギン酸ナトリウムに対応する。
【0043】
80%のD-アスパラギン酸ナトリウムと20%のL-アスパラギン酸ナトリウムからなる1リットルの水性混合物を調製して10mlの瓶に詰める調製例
212.8gのD-アスパラギン酸と53.2gのL-アスパラギン酸を250mlの蒸留水の中で混合する。次に、撹拌を続けながら4MのNaOH(4MのNaOHは160g/リットルに対応する)480mlを少量ずつ添加し、D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸を溶かすために撹拌する。溶解後、溶液のpHは6.0〜7.0になるであろう。pHの値が7.0よりも大きい場合には、2MのHClを数ml用いてpHを6.0〜7.0に調節し、逆にpHの値が6.0〜7.0よりも小さい場合には、pHの値が再び6.0〜7.0になるまでさらにNaOHを添加する。次に0.9gのソルビン酸カリウムと0.9gの安息香酸ナトリウムを添加する。最後に蒸溜水を添加して最終体積を1リットルにする。0.45μmの多孔性膜(ミリポア)または3MM紙を通過させて濾過し、存在している可能性のある不溶性残留物を分離すると同時に溶液を殺菌する。10mlの瓶に順番に分配する。最後に、2mgのビタミンB6、0.3gの葉酸、1.5μgのビタミンB12と、そして可能であれば、薬にどのような味を望むかに応じて決まる量のオレンジ・アロマまたはフルクトースまたは他の賦形剤を瓶の計量キャップに入れて添加する。10mlの溶液は、2.49gのD-アスパラギン酸ナトリウムと0.63gのL-アスパラギン酸ナトリウムを含んでいる(それぞれ2.128gのD-アスパラギン酸と0.530gのL-アスパラギン酸に対応する)。
【0044】
代替方法
あるいは上記の調製物は以下の手続きに従って得ることもできる。この手続きも非常に実際的である。撹拌している2.66MのNaOH(2.66MのNaOH溶液は106.6g/リットルのNaOHに対応する)750mlに212.8gのD-アスパラギン酸と53.2gのL-アスパラギン酸を添加する。アミノ酸がすべて溶けるまで撹拌を続ける。完全に溶けた後、pHの値を調べる。この値は6.0〜7.0でなければならない。pHが7.0よりも大きい場合には、pHが6.0〜7.0になるまで2MのHClを数ml添加する。逆にpHが6.0よりも小さい場合には、pHが6.0〜7.0になるまで2MのNaOHを数ml添加する。次に0.9gのソルビン酸カリウムと0.9gの安息香酸ナトリウムを添加する。最後に蒸溜水を添加して最終体積を1リットルにする。0.45μmの多孔性膜(ミリポア)または3MM紙を通過させて濾過し、存在している可能性のある不溶性残留物を分離すると同時に溶液を殺菌する。10mlの瓶に順番に分配する。最後に、2mgのビタミンB6、0.3gの葉酸、1.5μgのビタミンB12と、そして可能であれば、薬にどのような味を望むかに応じて決まる量のオレンジ・アロマまたはフルクトースまたは他の賦形剤を瓶の計量キャップに入れて添加する。10mlの溶液は、2.49gのD-アスパラギン酸ナトリウムと0.63gのL-アスパラギン酸ナトリウムを含んでいる(それぞれ2.128gのD-アスパラギン酸と0.530gのL-アスパラギン酸に対応する)。
【0045】
D-アスパラギン酸ナトリウムだけの1リットルの水溶液の調製例
266gのD-アスパラギン酸を250mlの蒸留水の中に混合する。次に、撹拌を続けながら、4MのNaOH(4MのNaOHは160g/リットルに対応する)480mlを添加し、撹拌してD-アスパラギン酸を溶かす。溶解後、溶液のpHは6.0〜7.0になっていなければならない。pHが7.0よりも大きい場合には、2MのHClを数ml用いてpHを6.0〜7.0に調節する。
【0046】
逆にpHが6.0〜7.0よりも小さい場合には、pHが6.0〜7.0になるまでさらにNaOHを添加する。次に0.9gのソルビン酸カリウムと0.9gの安息香酸ナトリウムを添加する。最後に蒸溜水を添加して最終体積を1リットルにする。0.45μmの多孔性膜(ミリポア)または3MM紙を通過させて濾過し、不溶性残留物を分離すると同時に溶液を殺菌する。10mlの瓶に順番に分配する。最後に、2mgのビタミンB6、0.3gの葉酸、1.5μgのビタミンB12と、そして可能であれば、薬にどのような味を望むかに応じて決まる量のオレンジ・アロマまたはフルクトースまたは他の賦形剤を瓶の計量キャップに入れて添加する。10mlの溶液は、3.12gのD-アスパラギン酸ナトリウムを含んでいる(2.66gのD-アスパラギン酸に対応する)。
【0047】
この手続きに代わる方法として、D-アスパラギン酸ナトリウム溶液を以下のようにして調製する。撹拌している2.66MのNaOH(2.66MのNaOHは106.6g/リットルのNaOHに対応する)750mlに266gのD-アスパラギン酸を添加する。D-アスパラギン酸がすべて溶けるまで撹拌を続ける。溶解後、溶液のpHは6.0〜7.0になっていなければならない。pHが7.0よりも大きい場合には、2MのHClを数ml用いてpHを6.0〜7.0に調節する。逆にpHが6.0〜7.0よりも小さい場合には、pHが6.0〜7.0になるまでさらにNaOHを添加する。次に0.9gのソルビン酸カリウムと0.9gの安息香酸ナトリウムを添加する。最後に蒸溜水を添加して最終体積を1リットルにする。0.45μmの多孔性膜(ミリポア)または3MM紙を通過させて濾過し、不溶性残留物を分離すると同時に溶液を殺菌する。10mlの瓶に順番に分配する。最後に、2mgのビタミンB6、0.3gの葉酸、1.5μgのビタミンB12と、そして可能であれば、薬にどのような味を望むかに応じて決まる量のオレンジ・アロマまたはフルクトースまたは他の賦形剤を瓶の計量キャップに入れて添加する。10mlの溶液は、3.12gのD-アスパラギン酸ナトリウムを含んでいる(2.66gのD-アスパラギン酸に対応する)。
【0048】
50%のD-アスパラギン酸ナトリウムと50%のL-アスパラギン酸ナトリウムからなる1リットルの水性混合物を調製して10mlの瓶に詰める調製例
【0049】
133gのD-アスパラギン酸と133gのL-アスパラギン酸を250mlの蒸留水の中で混合する。次に、撹拌を続けながら、4MのNaOH(4M=160g/リットル)480mlを添加し、D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸を溶かすために撹拌する。溶解後、溶液のpHは6.0〜7.0になるであろう。pHの値が7.0よりも大きい場合には、2MのHClを数ml用いてpHを6.0〜7.0に調節し、逆にpHの値が6.0〜7.0よりも小さい場合には、pHの値が再び6.0〜7.0になるまでさらにNaOHを添加する。次に0.9gのソルビン酸カリウムと0.9gの安息香酸ナトリウムを添加する。最後に蒸溜水を添加して最終体積を1リットルにする。0.45μmの多孔性膜(ミリポア)または3MM紙を通過させて濾過し、不溶性残留物を分離すると同時に溶液を殺菌する。10mlの瓶に順番に分配する。最後に、2mgのビタミンB6、0.3gの葉酸、1.5μgのビタミンB12と、そして可能であれば、薬にどのような味を望むかに応じて決まる量のオレンジ・アロマまたはフルクトースまたは他の賦形剤を瓶の計量キャップに入れて添加する。10mlの溶液は、1.56gのD-アスパラギン酸ナトリウムと1.56gのL-アスパラギン酸ナトリウムを含んでいる(それぞれ1.33gのD-アスパラギン酸と1.33gのL-アスパラギン酸に対応する)。
【0050】
この手続きに代わる方法として、D-アスパラギン酸ナトリウムとL-アスパラギン酸ナトリウムの混合物を以下のようにして調製する。一定速度で撹拌している2.66MのNaOH(2.66MのNaOH=106.6g/リットルのNaOH)750mlに133gのD-アスパラギン酸と133gのL-アスパラギン酸を添加する。アミノ酸がすべて溶けるまで撹拌を続ける。完全に溶けた後、pHの値を調べる。この値は6.0〜7.0でなければならない。pHが7.0よりも大きい場合には、pHが6.0〜7.0になるまで2MのHClを数ml添加する。逆にpHが6.0よりも小さい場合には、pHが6.0〜7.0になるまで2MのNaOHをさらに添加する。次に0.9gのソルビン酸カリウムと0.9gの安息香酸ナトリウムを添加する。最後に蒸溜水を添加して最終体積を1リットルにする。0.45μmの多孔性膜(ミリポア)または3MM紙を通過させて濾過し、存在している可能性のある不溶性残留物を分離すると同時に溶液を殺菌する。10mlの瓶に順番に分配する。最後に、2mgのビタミンB6、0.3gの葉酸、1.5μgのビタミンB12と、そして可能であれば、薬にどのような味を望むかに応じて決まる量のオレンジ・アロマまたはフルクトースまたは他の賦形剤を瓶の計量キャップに入れて添加する。10mlの溶液は、1.56gのD-アスパラギン酸ナトリウムと1.56gのL-アスパラギン酸ナトリウムを含んでいる(それぞれ1.33gのD-アスパラギン酸と1.33gのL-アスパラギン酸に対応する)。
【0051】
粉末形態のD-アスパラギン酸ナトリウムとL-アスパラギン酸ナトリウムの調製
ナトリウム塩、またはカリウム塩、またはマグネシウム塩としてのD-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸が市販されている。DL-アスパラギン酸塩のラセミ混合物、すなわち50%のD-アスパラギン酸ナトリウムと50%のL-アスパラギン酸ナトリウムからなるDL-アスパラギン酸ナトリウム塩も市販されている。したがって所定量のD-アスパラギン酸ナトリウム(3.12g)を含む一回用量のサシェを調製することもできる。この用量に、2mgのビタミンB6、0.3gの葉酸、1.5μgのビタミンB12と、そして可能であれば、おいしく摂取するための所定量のオレンジ・アロマまたはサッカロースまたは他の賦形剤を添加する。この調製物には安息香酸ナトリウムもソルビン酸カリウムも添加しないが、粉末形態であるために微生物に汚染されない。その後、このサシェを飲料水に溶かして摂取する。
【0052】
実施例2:80%のD-アスパラギン酸ナトリウムと20%のL-アスパラギン酸ナトリウムの組み合わせがウサギに及ぼす効果に関する研究
この研究は、精液の質、すなわち1ml当たりの精子の数と精子が素早く進む運動性に対してD-アスパラギン酸ナトリウムが及ぼす効果と、所定量のL-アスパラギン酸ナトリウムを組み合わせたD-アスパラギン酸ナトリウムが及ぼす効果を調べるため、2つのウサギ群(各群にウサギが10羽)で実施した。
【0053】
実験には、月齢6ヶ月のオスの成体のウサギ10羽からなる群に、1日0.250gに対応するD-アスパラギン酸ナトリウム(1羽のウサギに1.6マイクロモル;体重1kgにつき0.26マイクロモル)を20日間にわたって摂取させる操作を含んでいた。実際には、D-アスパラギン酸ナトリウムを餌に混合し、ウサギが毎日摂取する餌にD-アスパラギン酸ナトリウムが0.250g含まれるようにした。同様に、同じ月齢のオスの成体のウサギ10羽からなる群で実施した第2の実験では、0.2gのD-アスパラギン酸ナトリウムと0.05gのL-アスパラギン酸ナトリウム(80%のD-アスパラギン酸ナトリウムと20%のL-アスパラギン酸ナトリウム)からなる混合物を投与した。実験を開始する前と薬の摂取を20日間続けた後に、人工膣を用いた刺激によって得た精子サンプルをすべてのウサギから回収し、射精物1ml当たりの全精子数とその運動性を調べた。
【0054】
WHO(世界保健機関)の指針に従い、計数用のマクラー・チェンバー(Sefi Medtstl Instrument社、ハイファ、イスラエル国)を用いて精子の数を調べると同時に、素早く進む運動性を調べた。ウサギの精液は濃度が濃すぎるため、等浸透圧溶液の中で1:10に希釈した。
【0055】
この研究から得られた結果により、第1の実験、すなわちD-アスパラギン酸ナトリウムだけで治療したウサギでは、このアミノ酸が精液に含まれる精子の数を統計的に増加させたこと、すなわち精子の製造を平均で19.3%向上させたことがわかった。対照のウサギでの精液(治療開始前に回収)1ml中に300,000,000匹の精子という平均値から、D-アスパラギン酸ナトリウムを20日間にわたって摂取した後の358,000,000/mlという平均値になった。これは19.3%の増加に対応する(表5;パートA;第1の10羽のウサギ群)。さらに、治療したウサギの同じ精液では、精子が素早く進む運動性が改善されて40%〜55%となることが検出された。これは対照値と比べて37%の増大である(表5;パートB;第1のウサギ群)。
【0056】
同じ月齢の別の10羽のウサギで0.2gのD-アスパラギン酸ナトリウムと0.05gのL-アスパラギン酸ナトリウム(80%のD-アスパラギン酸ナトリウムと20%ののL-アスパラギン酸ナトリウム)からなる1日量を同じ期間にわたって投与した第2の実験では、精液の質がさらに改善された。この場合には、実際、治療前に精液に含まれる精子の数が平均で1mlにつき320,000,000匹であったのに対し、D-アスパラギン酸ナトリウムにL-アスパラギン酸ナトリウムを組み合わせて用いた治療後は、1mlの精液に精子が410,000,000匹であった。すなわち28.1%の増加である(表5;パートA;第2のウサギ群)。さらに、精子が素早く進む運動性も統計的に改善された。実際、第1のウサギ群の精液中に見られた素早く進む精子は40%であるのに対し、D-アスパラギン酸ナトリウムを用いた治療後はその平均値が55%になった。すなわち37%の増加である。D-アスパラギン酸ナトリウムとL-アスパラギン酸ナトリウムからなる混合物を摂取した後の結果については、表5、パートB;第2のウサギ群を参照のこと。D-アスパラギン酸ナトリウム+L-アスパラギン酸ナトリウムを投与された第2のウサギ群では、素早い精子の数の平均値が39%から58%へと変化した。すなわち48%の増加である(表5、パートB;第2のウサギ群)。
【0057】
D-アスパラギン酸ナトリウムだけを用いた場合とD-アスパラギン酸ナトリウムとL-アスパラギン酸ナトリウムの組み合わせからなる混合物を用いた場合の両方について、調べたパラメータの改善をスチューデントt検定を利用して統計的な観点から分析したところ、すべてP<0.01で有意であった。上記の結果を以下の表5に示す。この表は、D-アスパラギン酸ナトリウムと、D-アスパラギン酸ナトリウム+L-アスパラギン酸ナトリウムが、ウサギの精液に含まれる精子の数と質の改善に効果があることを示している。
【0058】
【表5】

【0059】
結果は、10羽の成体のウサギ(月齢6ヶ月)からなる1つの群で、治療前と、0.25gのD-アスパラギン酸ナトリウム(1羽のウサギに1.6マイクロモル;体重1kgにつき0.26マイクロモル)を摂取し始めてから20日後に得られた平均値と、同じ月齢の別の10羽のウサギからなる群で、治療前と、0.2gのD-アスパラギン酸ナトリウムと0.05gのL-アスパラギン酸ナトリウムの混合物(80%のD-アスパラギン酸ナトリウムと20%のL-アスパラギン酸ナトリウム)の30日間にわたる摂取を始めてから20日後に得られた平均値を表わしている。
【0060】
表のパートAに示した数値は、それぞれの薬で治療する前と後の精液1mlに含まれる精子の総数を表わしている。それに加えて精子の数の増加率も示す。
【0061】
表のパートBで*印を付けた数値は、素早く進む精子、遅い精子、動かない精子の数の百分率を表わす。*なしの数値は、それぞれの薬で治療する前の値と比べたときの素早く進む精子の増加率を表わす。
【0062】
D-アスパラギン酸ナトリウムと、D-アスパラギン酸ナトリウム+L-アスパラギン酸ナトリウムで治療したウサギにおける精子の数と運動性の増大は、すべて有意である(スチューデントt検定;P<0.01)。
【0063】
実施例3: ウサギにおける50%のD-アスパラギン酸ナトリウムと50%のL-アスパラギン酸ナトリウムの組み合わせの効果に関する研究
【0064】
この研究には、0.125gのD-アスパラギン酸ナトリウム+0.125gのL-アスパラギン酸ナトリウム(D-アスパラギン酸ナトリウムが50%:L-アスパラギン酸ナトリウムが50%)からなる混合物を実施例2の手続きに従って10羽からなるウサギの群に投与することが含まれる。得られた結果から、この場合にも対照と比べて精液の質の改善が、精子の総数と素早く進む運動性に関して見られたことがわかるが、この効果は、80%のD-アスパラギン酸ナトリウムと20%のL-アスパラギン酸ナトリウムからなる混合物を利用した場合と比べてわずかに少なかった。この場合には、対照と比べて製造される精子の数が25%、運動性が55%増大した。これは、この場合にも単独のD-アスパラギン酸塩と比べて改善されたことを示しているが、80%のD-アスパラギン酸塩と20%のL-アスパラギン酸塩からなる混合物よりも改善が少なかった。
【0065】
実施例4: 80%のD-アスパラギン酸ナトリウムと20%のL-アスパラギン酸ナトリウムの組み合わせがヒトに及ぼす効果に関する研究
【0066】
20〜45歳のボランティア群をリクルートし、ヒト精子形成に対する単独のD-アスパラギン酸ナトリウムの効果と、L-アスパラギン酸ナトリウムを補足したD-アスパラギン酸ナトリウムの効果を評価した。
【0067】
この研究には、20〜45歳の10人からなる群に、3.12gのD-アスパラギン酸ナトリウム(19.2マイクロモルのD-アスパラギン酸ナトリウム;70kgのヒトで体重1kgにつき0.27マイクロモル)からなる1日量を30日間にわたって(朝食または主な食事の後に)経口摂取させることが含まれる。20〜45歳の10人からなる別の群が、2.49gのD-アスパラギン酸ナトリウムと0.63gのL-アスパラギン酸ナトリウムからなる混合物(80%のD-アスパラギン酸ナトリウムと20%のL-アスパラギン酸ナトリウム)の1日量を同じ期間にわたって摂取した。
【0068】
研究を開始する前と、治療を開始してから10日後、20日後、30日後に回収した血液に由来する血清でLHおよびテストステロンの値と、精子が素早く進む運動性を調べた。
【0069】
臨床での化学的用途のために市販されている特別なキットを使用してLHホルモン・アッセイとテストステロン・ホルモン・アッセイを実施した。
【0070】
3〜5日間の禁欲日の後に自慰によって精液を回収した。WHO(世界保健機関)の指針に従い、計数用のマクラー・チェンバー(Sefi Medtstl Instrument社、ハイファ、イスラエル国)を用いて精子の数を調べると同時に、素早く進む運動性を調べた。
【0071】
この研究は、精液に含まれる精子の数が1mlにつき15,000,000〜20,000,000匹である、すなわち正常範囲内の最小閾値である選択された被験者で実施したことを指摘しておく必要がある。この処置は、精子形成の改善に対するD-アスパラギン酸塩の効果が、製造される精子の数が多すぎない被験者でより確実な証拠を伴って評価されているという予備研究に基づいている。同様に、これは、製造する精子の数が比較的少ない被験者では、成熟に達せずに精子形成中に分解する精子の割合もより高いという事実の結果である。したがってこの場合には、D-アスパラギン酸塩の作用が成熟を促進して生きのいい精子にする。
【0072】
得られた結果から、D-アスパラギン酸ナトリウムが、LHおよびテストステロン(精子形成に関与する特別なホルモン)の値と、精子の数および素早く進む運動性を統計的に改善したことがわかった。具体的には、3.12gのD-アスパラギン酸ナトリウムを用いた毎日の治療によって血中LHの値が平均して25.6%増加した。対照での4.3mUI/mlという平均値に対し、D-アスパラギン酸塩を摂取した後の人では5.4UI/mlという値が得られた(P<0.01)。同じ効果がテストステロンで観察され、治療前の4.8ng/mlという血清値から治療後の6.3ng/mlという血清値に変化した。すなわち31.2%の増加である(P<0.01)(表6、パートA、第1の被験者群)。さらに、精子の数と素早く進む運動性も対照と比べて有意に増大する。この場合には、実際、D-アスパラギン酸塩の摂取前に見られた平均の全精子数は18,000,000匹であったのに対し、D-アスパラギン酸塩を用いた治療後は23,000,000匹であった。したがって27%の増加である(表6、パートB、第1の被験者群)。さらに、運動性もD-アスパラギン酸塩を用いた治療後には治療前の値と比べて28%増大し、有意であった(表6、パートB、第1の被験者群)(P<0.01)。
【0073】
興味深いことに、ウサギ(上記参照)と同様にヒトでも、L-アスパラギン酸ナトリウムとD-アスパラギン酸ナトリウムからなる混合物を用いた治療により、D-アスパラギン酸ナトリウムだけを用いた場合と比べて血中ホルモン(LHとテストステロン)と精液の質の両方で治療後の改善が観察された。この第2の実験では、実際には、2.49gのD-アスパラギン酸ナトリウムと0.63gのL-アスパラギン酸ナトリウム(80%のD-アスパラギン酸ナトリウム;20%のL-アスパラギン酸ナトリウム)からなる1日量を摂取した被験者群で妊娠能が対照と比べてさらに向上することが観察された。LHの平均値は対照(治療前の同じ被験者群)と比べて38.6%増加したのに対し、D-アスパラギン酸ナトリウムだけを用いた場合には25.6%の増加が観察された(表6、パートA、第2の10人の被験者群)。同じ現象が、テストステロンで起こる。このステロイド・ホルモンは、実際、L-アスパラギン酸ナトリウムとD-アスパラギン酸ナトリウムを用いた治療後に対照(治療開始前の同じ被験者群)と比べて47.8%増加したのに対し、D-アスパラギン酸ナトリウムだけを用いた場合には31.2%の増加であった(表6、パートA、第2の10人の被験者群)。さらに、精子の数と運動性も改善された。治療前の1mlにつき19,500,000匹という平均値から1mlにつき28,000,000匹という平均値になり、43%改善された(表6、パートB、第2の10人の被験者群)。さらに、最後に挙げた治療では、精子の質も改善された。実際、D-アスパラギン酸ナトリウムにL-アスパラギン酸ナトリウムを組み合わせて用いて得られた素早く進む精子の数は、治療の前と後にそれぞれ34%と50%であった。すなわち47%の増加である(表6、パートB、第2の10人の被験者群)。表6に、D-アスパラギン酸ナトリウム+L-アスパラギン酸ナトリウムが、LHとテストステロンの改善と、ヒト精液に含まれる精子の数と質に対して及ぼす効果を示す。
【0074】
【表6】

【0075】
結果は、治療前と、1日に3.0gのD-アスパラギン酸ナトリウムを30日間にわたって毎日摂取した後の20〜45歳の10人の被験者(第1の10人の被験者)からの平均値と、治療前と、2.49gのD-アスパラギン酸ナトリウムと0.63gのL-アスパラギン酸ナトリウム(80%のD-アスパラギン酸ナトリウムと20%のL-アスパラギン酸ナトリウム)を30日間にわたって毎日摂取した後の同じ年齢の10人の被験者群からの平均値を表わしている。表のパートAには、それぞれの治療の前と後のLHとテストステロンの増加率も示す。表のパートBで*印を付けた数値は、素早く進む精子、遅い精子、動かない精子の数の百分率を表わす。
【0076】
表のパートBの*なしの数値は、精子の総数と素早く進む精子の増加率を表わす。
【0077】
LH、テストステロン、精子の総数と素早く進む精子の数値の増加は、すべて有意である(スチューデントt検定;P<0.01)。
【0078】
これらの実験から得られた結果により、LHとテストステロンの値が、(治療前の)基礎値と比べて治療日数が長くなるとともに約30日間まで有意に増加することが明らかになった。このような増加は、その後も治療を続けても一定に留まる。逆に、精液に含まれる精子の数は、治療90日目まで漸増を続ける。
【0079】
図1と図2には、治療前よりも本発明の組成物(80%のD-アスパラギン酸ナトリウムと20%のL-アスパラギン酸ナトリウム)で治療した後にヒトの血液中のLHとテストステロンの値が増加するグラフを示してある。
【0080】
図3と図4には、治療前よりも本発明の組成物で治療した後に精子の数と精子が素早く進む運動性が増加するグラフを示してある。
【0081】
ヒトの精液に含まれるD-アスパラギン酸の測定
各患者から得た2mlの精液からタンパク質を除去するために0.2MのTCA(トリクロロ酢酸)10mlに希釈し、10,000rpmで30分間にわたって遠心分離する。D-アスパラギン酸とそれ以外のアミノ酸を含む上清を、参考文献18〜21に記載されているようにしてカチオン交換カラム(1×4cm)上で精製した。簡単に述べると、2×4 AG-50W-X8;200〜400メッシュのBio-Rad社のイオン交換樹脂カラムに、精液に関して上に得られたTCA上清を添加した。サンプルの吸収後、0.001MのHClを10ml用いてカラムを洗浄し、次いで4Mの水酸化アンモニウムを10ml用いて溶離させた。精製されたアミノ酸を含むこの溶離液を温かいプレートの上で乾燥させてアンモニアを除去し、残留物を2mlの蒸留水に溶かし、D-アスパラギン酸をHPLCによって、またはわれわれの論文(参考文献18〜21)に記載されているような(ウシの腎臓から精製した)D-アスパラギン酸オキシダーゼの利用に基づく比色法によって測定した。
【0082】
図5は、D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸の標準混合物からなる標準サンプルのHPLC分析の一例を示している。
【0083】
左側の図は、D-アスパラギン酸と別のL-アミノ酸からなる標準混合物のHPLC分析を示している。この図は、10ピコモルのD-アスパラギン酸と20ピコモルの別のアミノ酸(Glu、Asn、Gln、Ser、Thr、His、Gly、Arg、ウィング、タウリン、GABA、Tyr、Val、Met、Leu、Ile、Phe、Lys)を用いて得られたクロマトグラムの一例を表わしている。D-アスパラギン酸は5.2分に溶離し、それに続けてL-アスパラギン酸と他のL-アミノ酸が溶離した。
【0084】
右側の図は、同じサンプルだがD-アスパラギン酸オキシダーゼを用いた処理後を表わしている。この場合には、D-アスパラギン酸だけを酸化させるD-アスパラギン酸オキシダーゼ酵素が5.2分という溶離時間のピークを消したため、このピークは実際にD-アスパラギン酸に由来することが確認された。
【0085】
統計的分析
データは、スチューデントt検定を利用して平均値±標準偏差として表わす。P<0.05を統計的に有意とした。
【0086】
実施例5:50%のD-アスパラギン酸ナトリウムと50%のL-アスパラギン酸ナトリウムの組み合わせがヒトに及ぼす効果に関する研究
20〜45歳の10人の男性からなる別の群を、1日量として1.56gのD-アスパラギン酸ナトリウム+1.56gのL-アスパラギン酸ナトリウム(50%のD-アスパラギン酸ナトリウム:50%のL-アスパラギン酸ナトリウム)からなる混合物で30日間にわたって治療することを含む別の研究を実施した。得られた結果から、この場合にもLHおよびテストステロンの血中値と精液の質の両方で改善が見られることがわかったが、80%のD-アスパラギン酸ナトリウムと20%のL-アスパラギン酸ナトリウムからなる混合物を用いた場合よりも効果は少なかった。この場合には、実際、LHとテストステロンの値が基礎値と比べて有意に増加した。すなわちそれぞれ30%と38%増加した。さらに、精子の数と精子が素早く進む運動性も、対照と比べて45%増大し、有意であった(データは表に示さない)。したがって50%のD-アスパラギン酸ナトリウム+50%のL-アスパラギン酸ナトリウムを用いても精子パラメータの非常に有意な改善が観察されたが、80%のD-アスパラギン酸ナトリウムと20%のL-アスパラギン酸ナトリウムを用いた場合よりも改善は少なかった。
【0087】
結論として、ウサギで観察されたようにヒトでもD-アスパラギン酸塩にL-アスパラギン酸塩を組み合わせた治療によって血中のLHおよびテストステロンの値と、精液に含まれる精子の数と運動性の両方が、D-アスパラギン酸塩だけを用いた治療と比べて有意に増加する。
【0088】
実施例6: D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸のいくつかの組み合わせを含むウサギ用の餌の調製
実施例6A: 80%のD-アスパラギン酸と20%のL-アスパラギン酸の組み合わせを含む餌の調製
2kgのウサギ用餌を含む4リットルの蒸留水を60〜70℃にてミキサーで均質化し、均一な混合物を形成する。次に9.12gのD-アスパラギン酸と2.28gのL-アスパラギン酸(合計11.4g)を添加した後、得られた混合物を再び均質化し、D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸の均一な分散液を含む練り餌を得る。最後に、餌が再び硬くなるまで水を炉によって蒸発させる。この餌を冷却し、5〜10gの立方体に切断し、動物の餌として使用する。
【0089】
このようにすると、1gの餌には4.56mgのD-アスパラギン酸と1.14mgのL-アスパラギン酸が含まれることになる。
【0090】
実施例6B: 50%のD-アスパラギン酸と50%のL-アスパラギン酸の組み合わせを含む餌の調製
【0091】
2kgのウサギ用餌を含む4リットルの蒸留水を60〜70℃にてミキサーで均質化し、均一な混合物を形成する。次に5.7gのD-アスパラギン酸と5.7gのL-アスパラギン酸(合計11.4g)を添加した後、得られた混合物を再び均質化し、D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸の均一な分散液を含む練り餌を得る。最後に、餌が再び硬くなるまで水を炉または弱火によって蒸発させる。この餌を冷却し、5〜10gの立方体に切断し、動物の餌として使用する。
【0092】
このようにすると、1gの餌には2.85mgのD-アスパラギン酸と2.85mgのL-アスパラギン酸が含まれることになる。
【0093】
実施例6C: 99.5%のD-アスパラギン酸と0.5%のL-アスパラギン酸の組み合わせを含む餌の調製
2kgのウサギ用餌を含む4リットルの蒸留水を60〜70℃にてミキサーで均質化し、均一な混合物を形成する。次に11.34gのD-アスパラギン酸と0.057gのL-アスパラギン酸(合計11.4g)を添加した後、得られた混合物を再び均質化し、D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸の均一な分散液を含む練り餌を得る。最後に、餌が再び硬くなるまで水を炉または弱火によって蒸発させる。この餌を冷却し、5〜10gの立方体に切断し、動物の餌として使用する。
【0094】
このようにすると、1gの餌には5.67mgのD-アスパラギン酸と0.03mgのL-アスパラギン酸が含まれることになる。
【0095】
実施例6D: D-アスパラギン酸だけ、またはL-アスパラギン酸だけを含む餌の調製
2kgのウサギ用餌を含む4リットルの蒸留水を60〜70℃にてミキサーで均質化し、均一な混合物を形成する。次に11.4gのD-アスパラギン酸または11.4gのL-アスパラギン酸を添加した後、得られた混合物を再び均質化し、D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸の均一な分散液を含む練り餌を得る。最後に、餌が再び硬くなるまで水を炉または弱火によって蒸発させる。この餌を冷却し、5〜10gの立方体に切断し、動物の餌として使用する。
【0096】
このようにすると、1gの餌には5.7mgのD-アスパラギン酸または5.7mgのL-アスパラギン酸が含まれることになる。
【0097】
実施例7: 80%のD-アスパラギン酸と20%のL-アスパラギン酸の組み合わせがウサギの精子の数と運動性に及ぼす効果に関する研究
この研究は、2つのウサギ群で実施した。月齢6ヶ月の10羽のウサギ(体重約5kg)からなる第1の群には、80%のD-アスパラギン酸と20%のL-アスパラギン酸の混合物を含む餌混合物を20日間にわたって与えた(上記の「80%のD-アスパラギン酸と20%のL-アスパラギン酸の組み合わせを含む餌の調製」参照)。対照群(またはプラセボ)となる10羽のウサギからなる同じ月齢の第2の群には、上で調製したのと同じタイプだが、D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸の混合物を添加していない餌を20日間にわたって与えた。これらの実験を、ウサギ繁殖農場(“ポテンツァ繁殖者協会”、ポテンツァ、イタリア国)で実施した。実験の開始前と終了時に、それぞれのウサギから、人工膣を用いた刺激によって精液サンプルを回収し(Animal reproduction Science、第118巻、337〜343ページ、2010年に発表された論文:G. Macchia他、「DL-アスパラギン酸の投与によってオスのウサギで精液の質が向上する」を参照のこと)、精液1ml当たりの精子の総数と精子の運動性を調べた。
【0098】
WHO(世界保健機関)の指針に従い、計数用のマクラー・チェンバー(Sefi Medtstl Instrument社、ハイファ、イスラエル国)を用いて精子の数を調べると同時に、素早く進む運動性を調べた。ウサギの精液は濃度が濃すぎるため、等浸透圧溶液の中で1:10に希釈した後、分析した(注:それぞれのウサギは体重が約5kgであり、約200gの餌を毎日消費した。1gの餌には4.56mgのD-アスパラギン酸と1.14mgのL-アスパラギン酸が含まれているため、ウサギは1日に合計で912mgのD-アスパラギン酸と228mgのL-アスパラギン酸を摂取したことになる)。
【0099】
この研究から得られた結果により、80%のD-アスパラギン酸と20%のL-アスパラギン酸の混合物を摂取することで精液に含まれる精子の数、すなわち精子の製造が統計的に平均して22%増加することが明らかになった。治療前のウサギでの精液1ml当たり320,000,000匹という平均値から、D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸の混合物を摂取した後の1ml当たり390,000,000匹という平均値になった(表7、パートA、第1の10羽のウサギ群)。さらに、治療したウサギの同じ精液において、精子が素早く進む運動性が平均38%(この割合は、顕微鏡で観察した合計で100匹の精子のうちで素早く進む精子の数を表わす)から平均54%に改善した。すなわち1.42倍の増加であり、P<0.01で有意である(表7、パートB、第1のウサギ群)。
【0100】
このウサギ群、すなわち対照群(またはプラセボ)では、精液1ml当たりの精子の総数(表7、パートA、第2のウサギ群)と精子の運動性(表7、パートB、第2のウサギ群)の両方で統計的に有意な改善がない。
【0101】
【表7】

【0102】
結果は、治療前と、D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸の混合物を20日にわたって摂取した後の10羽の成体のウサギ群(月齢6ヶ月:体重約5kg)での平均値で示す。ウサギが毎日摂取したアミノ酸の量は、D-アスパラギン酸が912mg、L-アスパラギン酸が228mgであった。
【0103】
表のパートAに示す数値は、薬で治療する前と20日間治療した後の精液1ml当たりの精子の平均数を表わす。
【0104】
表のパートBに示す数値は、素早く進む精子、遅い精子、動かない精子の数の百分率を表わす。
【0105】
D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸の混合物で治療したウサギにおける精子の数と運動性の増大は、すべて有意である(スチューデントt検定、P<0.01)。
【0106】
実施例8: 50%のD-アスパラギン酸と50%のL-アスパラギン酸の組み合わせがウサギの精子の数と運動性に及ぼす効果の研究
この研究も、前の研究で使用したのと同じ月齢で同じ体重のウサギからなる2つの群で実施した。この場合の違いとして、治療したウサギには50%のD-アスパラギン酸と50%のL-アスパラギン酸の混合物を含む餌を20日にわたって投与した(上の調製例:「50%のD-アスパラギン酸と50%のL-アスパラギン酸の組み合わせを含む餌の調製」を参照)のに対し、第2の10羽からなる群は対照として使用した。この場合にも、精液を実験の前と後に回収して精子の数と運動性を調べた。
【0107】
この研究から得られた結果により、50%のD-アスパラギン酸と50%のL-アスパラギン酸からなる混合物を用いても、精液に含まれる精子の製造(すなわち精子の数)と精子の運動性の改善が得られることが明らかになった(表8参照)。実際、表8に示したように、この治療では、精子の数が16%増加したこと(P<0.01で有意)に加え、精子の運動性が1.27倍に増大した(やはりP<0.01で有意)。表8に、得られた結果を詳しく示してある。
【0108】
【表8】

【0109】
結果は、治療前と、D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸の混合物を20日にわたって摂取した後の10羽の成体のウサギ群(月齢6ヶ月:体重約5kg)での平均値で示す。ウサギが毎日摂取したアミノ酸の量は、D-アスパラギン酸が570mg、L-アスパラギン酸が570mgであった。
【0110】
表のパートAに示す数値は、薬で治療する前と20日間治療した後の精液1ml当たりの精子の平均数を表わす。
【0111】
表のパートBに示す数値は、素早く進む精子、遅い精子、動かない精子の数の百分率を表わす。
【0112】
D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸の混合物で治療したウサギにおける精子の数と運動性の増大は、すべて有意である(スチューデントt検定、P<0.01)。
【0113】
対照のウサギに関しては、表7に示したのと同じウサギ群を参照する。
【0114】
実施例9: 99.5%のD-アスパラギン酸と0.5%のL-アスパラギン酸の組み合わせがウサギの精子の数と運動性に及ぼす効果に関する研究
ウサギで実施したこの研究も、前の研究と同様にして実施した。この場合の違いとして、治療したウサギにはD-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸の比が99.5:0.05の混合物を含む餌を投与した(上の実施例6C:「99.5%のD-アスパラギン酸と0.5%のL-アスパラギン酸の組み合わせを含む餌の調製」を参照)。この場合にも、ウサギが毎日摂取したD-アスパラギン酸+L-アスパラギン酸の合計量は約1.140gであった。
【0115】
この研究から得られた結果により、99.5%のD-アスパラギン酸と0.5%のL-アスパラギン酸からなる混合物を用いても、精液に含まれる精子の製造(すなわち精子の数)が18.6%改善し、精子の運動性が31%増大する(+1.31)ことが明らかになった(表9参照)。
【0116】
【表9】

【0117】
結果は、治療前と、D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸の混合物を20日にわたって摂取した後の10羽の成体のウサギ群(月齢6ヶ月:体重約5kg)での平均値で示す。ウサギが毎日摂取したアミノ酸の量は、D-アスパラギン酸が1134mg、L-アスパラギン酸が6mgであった。
【0118】
表のパートAに示す数値は、薬で治療する前と20日間治療した後の精液1ml当たりの精子の平均数を表わす。
【0119】
表のパートBに示す数値は、素早く進む精子、遅い精子、動かない精子の数の百分率を表わす。
【0120】
D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸の混合物で治療したウサギにおける精子の数と運動性の増大は、すべて有意である(スチューデントt検定、P<0.01)。
【0121】
実施例10: L-アスパラギン酸がウサギの精子の数と運動性に及ぼす効果に関する研究
文献には、ヒトを含む動物のいくつかの組織(視床下部や精巣といった内分泌腺)にはD-アスパラギン酸が高濃度で見いだされること、そしてそのD-アスパラギン酸はその器官において、L-アスパラギン酸を変換することによってD-アスパラギン酸を合成する特性を持つD-アスパラギン酸ラセマーゼと呼ばれる酵素を通じて合成されることが報告されている(参考文献21〜26と表10)。
【0122】
【表10】

【0123】
酵素の活性は、10mMのL-アスパラギン酸を含むホウ酸緩衝液(0.1M、pH8.0)からなる反応混合物1mlを、ホウ酸緩衝液(0.1M、pH8.0)の中で1:10に希釈した組織ホモジェネート1mlとともに37℃にて60分間にわたってインキュベートすることによって調べる。インキュベーションの後、合成されたD-アスパラギン酸の量をHPLCによって明らかにする(参考文献23参照)。1酵素単位は、酵素試験の条件下で1マイクロモルのL-アスパラギン酸をD-アスパラギン酸に変換できる酵素の量と定義する。
【0124】
ラセミ化は平衡反応であるため、餌によってある量のL-アスパラギン酸が摂取されるのであれば、そのうちの一定量がD-アスパラギン酸に変換されて精巣に集まり、テストステロンの産生と精液の質(精子の数と運動性)が改善されるであろう。この考え方に基づいて前の実験と同様の実験をウサギで実施したが、D-アスパラギン酸の代わりにL-アスパラギン酸を用いて(上記のようにして調製した)L-アスパラギン酸を含む餌を投与した。この場合にも、ウサギが毎日摂取したL-アスパラギン酸の合計量は約1.1gであった。
【0125】
この研究から得られた結果により、D-アスパラギン酸の代わりにL-アスパラギン酸を含む餌をウサギに与えても、精液に含まれる精子の製造、すなわち精子の数の改善が、D-アスパラギン酸/L-アスパラギン酸混合物と同程度ではないがやはり有意な程度で得られることが明らかになった。この場合には、治療前の精液でのそれぞれの値と比べると、精子の数が14.5%増加し、精子の素早い運動性が18%増大することが観察された(表11参照)。
【0126】
【表11】

【0127】
結果は、治療前と、L-アスパラギン酸を20日にわたって摂取した後の10羽の成体のウサギ群(月齢6ヶ月:体重約5kg)での平均値で示す。ウサギが毎日摂取したアミノ酸の量は、約1.14gであった。表のパートAに示す数値は、薬で治療する前と20日間治療した後の精液1ml当たりの精子の平均数を表わす。
【0128】
表のパートBに示す数値は、素早く進む精子、遅い精子、動かない精子の数の百分率を表わす。
【0129】
L-アスパラギン酸を含む餌で治療したウサギにおける精子の数と運動性の増大は、すべて有意である(スチューデントt検定、P<0.01)。
【0130】
D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸の使用がウサギの精液の改善に及ぼす効果に関して得られた結果についての結論
【0131】
L-アスパラギン酸を補助剤としたD-アスパラギン酸の効果に関してウサギで実施した研究により、L-アスパラギン酸も、D-アスパラギン酸を単独で、またはL-アスパラギン酸と組み合わせて使用する場合と同様、必ずしもナトリウム・イオンで中和せずに、実験動物において、D-アスパラギン酸ナトリウムを単独で、またはL-アスパラギン酸ナトリウムと組み合わせて利用した場合と同様に精子の活性を改善する能力を示すことが明らかになった。
【0132】
しかしD-アスパラギン酸ナトリウムとL-アスパラギン酸ナトリウムを使用する場合のように、80%のD-アスパラギン酸と20%のL-アスパラギン酸の割合でD-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸を組み合わせて使用することも、精子の活性に対するよりよい効果を示す投与公式である(表7、8、9の比較を参照)。
【0133】
さらに、L-アスパラギン酸だけを用いて実施した別の研究では、D-アスパラギン酸を用いたときほどではないが、どの場合にも精液パラメータの改善が見られ、やはり有意であった(表11参照)。その理由は、明らかに、ラセマーゼによってL-アスパラギン酸がD-アスパラギン酸に変換されたことによる。
【0134】
実施例11: ヒトでの研究 - 80%のD-アスパラギン酸と20%のL-アスパラギン酸の組み合わせが男性不妊に及ぼす効果
本出願の最初の部分に報告したようにアスパラギン酸ナトリウムを用いると男性ホルモンの増加と精液の質の有意な改善が起こったが、それと同様にD-アスパラギン酸塩/L-アスパラギン酸塩に加えてD-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸の組み合わせからなる混合物も男性ホルモン増加と精液の質を有意に改善できるかどうかを知るため、この研究を実施した。
【0135】
この実験は、精液の質が正常またはほぼ正常であるという条件で選択した25〜45歳の10人の男性ボランティアで実施した。
【0136】
この研究は、被験者が1.6gのD-アスパラギン酸と0.4gのL-アスパラギン酸からなる用量(合計2.0g)を昼食後に経口摂取し、夕食後に同様の用量を経口摂取することを含んでいた。組成率に関しては、この混合物は80%のD-アスパラギン酸と20%のL-アスパラギン酸で構成されていた。同様の摂取手続きで、D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸のこの混合物を、水、または新鮮なフルーツ・ジュース(オレンジ、リンゴ、ナシなど)、または保管しておいたフルーツ・ジュースを半分満たしたコップに分散させた後、撹拌して摂取させた。
【0137】
研究を開始する前と20日間治療した後に各被験者から血液を朝に回収し、その血液から得られた血清中のLH(黄体形成ホルモン)とテストステロンの濃度を調べた。さらに、すべての被験者から精液も回収し、素早く進む運動性と精液1ml当たりの精子の総数を調べた。
【0138】
3〜5日間の禁欲日の後に自慰によって精液を回収した。WHO(世界保健機関)の指針に従い、計数用のマクラー・チェンバー(Sefi Medtstl Instrument社、ハイファ、イスラエル国)を用いて精子の数を調べると同時に、素早く進む運動性を調べた。
【0139】
この研究から得られた結果により、治療した10人の被験者のうちの8人で血清中のLHとテストステロン(ヒトの精子形成に関与する特別なホルモン)が、治療前と比べて20日間治療した後には増加し、その増加がスチューデントt検定においてp<0.01で有意であることがわかった。得られた結果を表12に示す。この表からわかるように、D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸を毎日2回投与して治療すると、LHの血中値が平均で34%増加した。ゼロ日目の時点での被験者の平均値4.1±1.2mUI/mlから、同じ被験者で20日間治療した後の5.5±1.5mUI/mlという平均値になった。これは34%の増加を意味する。同様の効果が、テストステロンで観察された。この場合には、実際、ゼロ日目の時点での被験者のテストステロンが3.4±0.9mUI/mlという平均値から、同じ被験者で20日間治療した後の5.8±1.6mUI/mlという平均値になった(70%の増加)、p<0.01(表12、パートA)。この研究では、ホルモンの効果に加え、D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸の混合物で治療した結果として、精液に含まれる精子の数と精子が進む運動性が対照と比べて有意に増大した(表11)。実際、表12に示してあるように、10人の被験者のうちの9人で精液に含まれる精子の総数が治療の結果として有意に増加し、平均で53.6%の増加であった(表12)。一人の被験者は薬の刺激にまったく応答しなかったことも注目に値する(表のサンプル4)。明らかに、これは、その被験者で輸精管の代謝異常ではなく閉塞異常が起こったからである可能性が非常に大きい。精子の数の増加に加え、精子の運動性の有意な増加も観察された。確かに、薬は精子が進む運動性の有意な活性化も誘導した。またこの場合には、実際、すべての被験者(サンプル4を除く)で、治療前の同じ被験者と比べて精子の運動性の有意な改善(67.6%の改善)が見られた(表12)。
【0140】
【表12】

【0141】
ウサギの実験で用いた50%のD-アスパラギン酸と50%のL-アスパラギン酸の組み合わせと、99.5%のD-アスパラギン酸と0.5%のL-アスパラギン酸の組み合わせを用いて追加の実験を別の10人の群で実施したことをさらに指摘しておく。ヒトでも、性ホルモンの増加と精液の質の改善に関して統計的に意味のある結果が得られた。しかしこの場合には、促進活性は、80%のD-アスパラギン酸と20%のL-アスパラギン酸の組み合わせよりも小さかったが、それでも統計的に有意であった。最後に、ヒトで上述したようなD-アスパラギン酸/L-アスパラギン酸の組み合わせの代わりにL-アスパラギン酸だけを用いた実験を実施した。この場合には、治療の前と後で血中のLHとテストステロンは変化しなかったが、精液パラメータは統計的に改善された(表13参照)。実際、この表に示してあるように、L-アスパラギン酸で治療した被験者の精液に含まれる精子の数は、D-アスパラギン酸で治療する前と後よりも22.7%増加し、有意であった。
【0142】
【表13】

【0143】
サプリメントの調製と、賦形剤との組み合わせ
サプリメントの摂取経路に関しては、D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸の両方とも水性溶媒に溶けにくいことを指摘しておく必要がある。したがって推奨される2gの用量(2gを毎日2回、上記参照)をコップ半分に満たした水またはフルーツ・ジュースと混合しても完全には溶けない。しかしこの用量を半溶解混合物として摂取する場合には、胃において大量の液体と胃液で希釈されるために溶けて腸で吸収できるようになる。サプリメントを2回の用量(それぞれに2gが含まれる)として使用する方法により、1日量を用いるよりも効果が大きくなる。
【0144】
薬に賦形剤(ビタミン、Q-10コエンザイム、無機塩など)を添加する機会に関しては、適切な用量の以下のサプリメントを市販品を調製している間に添加することが、薬の効果を高めるのに有用である可能性がある。そのようなサプリメントとは、1用量の薬につき2〜10mgの量の酸化亜鉛(亜鉛は精液中に存在し、前立腺の中でテストステロンの調節にプラスの影響を与えると考えられている)、1用量の薬につき10〜20mgのQ-10コエンザイム(Q-10コエンザイムは重要な抗酸化剤であり、細胞をフリー・ラジカルから保護する)、薬の受け入れやすさの改善に役立つ、食品用途として許可されている量の他の賦形剤(例えばビタミン、葉酸など)である。
【0145】
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(23)D'Aniello, S.、Spinelli, P.、Ferrandino, G.、Peterson, K.、Tsesarskaja, M.、Fisher, G.、D'Aniello, A. (2005年)「頭足類の視覚にはジカルボキシルアミノ酸が関与する:D-アスパラギン酸塩、L-アスパラギン酸塩、L-グルタミン酸塩」、Biochem. J. 第386巻、331〜340ページ。
(24)Spinelli, P.、Brown, E.、Ferrandino, G.、Branno, M.、Montarolo, P. G.、Rastogi, R. K.、D'Aniello, B.、Chieffi, G.、Fisher, G.、D'Aniello, A. (2006年)「Aplysia limacinaの神経系に存在するD-アスパラギン酸塩:神経伝達において可能な役割」、J. Cell. Physiol. 第206巻、672〜681ページ。
(25)Wolosker, H.A.、D'Aniello, A.、Snyder, S.H.(2000年)「神経組織と内分泌組織におけるD-アスパラギン酸塩の配置:個体発生、生合成、放出」、Neuroscience 第100巻、183〜189ページ。
(26)Topo E.、Soricelli A.、D'Aniello A.、Ronsini S.、D'Aniello G.「ヒトとラットでのLHとテストステロンの放出と合成におけるD- アスパラギン酸の役割と分子メカニズム」、Reprod. Biol. Endocrinol. 第7巻、120〜131 ページ、(2009年)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸、またはこれらの対応する1種類以上のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩との組合せを含むか、又は当該組合せからなるか、或いはL-アスパラギン酸だけを含むか、又はそれだけからなる組成物であって、これら活性成分に、可能ならば医薬として許容可能な1種類以上の賦形剤および/または補助剤が組み合わされた、男性不妊治療用の組成物。
【請求項2】
D-アスパラギン酸またはその塩の濃度が50%〜99.5%であり、L-アスパラギン酸またはその塩の濃度が0.05%〜50%である(ただし%の値は、D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸、またはこれらの塩の全重量を基準とする)、D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸、またはこれらの対応する1種類以上のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩との組合せを含むか、又は当該組合せからなる請求項1に記載の男性不妊治療用の組成物。
【請求項3】
D-アスパラギン酸またはその塩の濃度が50%〜80%であり、L-アスパラギン酸またはその塩の濃度が20%〜50%である(ただし%の値は、D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸、またはこれら酸の塩の全重量を基準とする)、請求項1または2に記載の男性不妊治療用の組成物。
【請求項4】
前記補助剤が、アミノ酸、ケト酸、ビタミン、ミネラル、生殖機能刺激ホルモン、カリクレイン、抗生剤、抗炎症剤、抗アンドロゲン、アンドロゲン、ペントキシフィリン、ゴナドトロピン、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、アドレナリン作用性刺激剤、ダイエタリー・サプリメント、抗酸化剤からなる群から選ばれる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の男性不妊治療用の組成物。
【請求項5】
前記アミノ酸が、アラニン、アルギニン、カルニチン、システイン、グルタミン、グリシン、ロイシン、リシン、イソロイシン、メチオニン、オルニチン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、バリン、セリンからなる群から選ばれる、請求項4に記載の男性不妊治療用の組成物。
【請求項6】
前記ビタミンが、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD3、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンPP、ビオチン(H)、葉酸、リポ酸、Q10コエンザイムからなる群から選ばれる、請求項4に記載の男性不妊治療用の組成物。
【請求項7】
前記ミネラルが、マグネシウム、カリウム、亜鉛、マンガン、モリブデン、クロム、セレン、カルシウム、鉄、銅、ヨウ素、リン、フッ素からなる群から選ばれる、男性不妊の治療に使用される請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記ビタミンの濃度の範囲が、ビタミンAは0.0048%〜0.024%、ビタミンCは0.36%〜3.6%、ビタミンD3は0.00003%〜0.00015%、ビタミンEは0.06%〜0.6%、ビタミンKは0.00042%〜0.0021%、ビタミンB1は0.0084〜0.042%、ビタミンB2は0.0096%〜0.048%、ビタミンB6は0.012%〜0.06%、ビタミンB12は6×10-6%〜3×10-5%、ビタミンPPは0.108%〜0.54%、ビオチンは0.0009%〜4.4×10-5%、葉酸は0.0012%〜0.006%である(ただし%の値は、組成物の全重量を基準にした重量%である)、請求項1〜7のいずれか1項に記載の男性不妊治療用の組成物。
【請求項9】
前記ミネラルの濃度の範囲が、マグネシウムは3.2%〜9%、カリウムは0.4%〜4%、亜鉛は0.09%〜0.45%、マンガンは0.02%〜0.07%、モリブデン、クロム、若しくはセレンは0.0003%〜0.002%、パントテン酸カルシウムは0.04%〜0.15%、鉄は0.084%〜0.021%、銅は0.02%〜0.1%、ヨウ素は0.0009%〜0.0045%、リンは2.5%〜20%、フッ素は0.005%〜0.02%、カルシウムは3.24%〜16.2%である(ただし%の値は、組成物の全重量を基準にした重量%である)、請求項1〜8のいずれか1項に記載の男性不妊治療用の組成物。
【請求項10】
D-アスパラギン酸とL-アスパラギン酸に追加される前記アミノ酸の濃度が、組成物の全重量を基準にして0.6重量%〜10重量%である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の男性不妊治療用の組成物。
【請求項11】
葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウムを保存剤としてさらに含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の男性不妊治療用の組成物。
【請求項12】
葉酸の濃度が0.002%〜0.006%、ビタミンB6の濃度が0.02%〜0.06%、ビタミンB12の濃度が1×10-5%〜3×10-5%、ソルビン酸カリウムの濃度が0.002%〜0.008%、安息香酸ナトリウムの濃度が0.002%〜0.008%である、請求項11に記載の男性不妊治療用の組成物。
【請求項13】
前記男性不妊が、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を伴う、または伴わない乏精子-精子無力症および/または精子無力症を特徴とする閉塞性男性不妊ではない、請求項1〜12のいずれか1項に記載の男性不妊治療用の組成物。
【請求項14】
1日量が0.001g/日〜10g/日である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の男性不妊治療用の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−527448(P2012−527448A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511414(P2012−511414)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【国際出願番号】PCT/IT2010/000222
【国際公開番号】WO2010/134117
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(511281567)メルク セローノ ソチエタ ペル アツィオニ (1)
【Fターム(参考)】