男性及び女性の癌の治療と予防のための温熱療法及び組織の整容切除H
身体又は臓器の癌又は良性条件を治療する方法として、身体組織をエネルギーで選択照射する方法を利用する。その方法は、身体に隣接する皮膚表面の温度をモニターし、少なくとも1つのエネルギーアプリケータを身体の周囲に配置し、エネルギーを少なくとも1つのエネルギーアプリケータに与えて身体組織にエネルギーを選択照射し、身体の癌及び良性条件の少なくとも1つを治療し、治療中少なくとも1つのエネルギーアプリケータに与えられるパワーのレベルをモニターした皮膚温度に基づいて調整し、少なくとも1つのエネルギーアプリケータに与えられるエネルギーをモニターし、少なくとも1つのエネルギーアプリケータに与えられる全エネルギーを決定し、初期の全エネルギー線量が少なくとも1つのエネルギーアプリケータによって身体に与えられたときに治療が完了するステップを含んでいる。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は概して乳房組織における繊維腺腫と嚢腫のような良性の病変と同様腺管癌及び腺癌及び導管内増殖の治療のための適応型マイクロ波フェーズアレイ又はアプリケータでの温熱療法のような集中エネルギー実施のための最小侵襲型での方法に関するものである。治療される胸部組織は男性、女性いずれの患者であってもよく、本発明による方法は、このように、小さいものから大きいものまでの胸部患者を治療することが出来る。更に本発明による方法は癌と前癌又は良性腫瘍、乳房病変の発生、又は再発を防ぐため水分含有量の高い顕微鏡的には検出されないが病理学的には変質している細胞を含む健康な組織の処置に用いることも出来る。
【0002】
温熱療法で初期乳癌を治療するためには乳房の4分の1もしくはそれ以上の広範囲な組織を加熱する必要がある。全ての乳癌の約90%が乳液分泌管組織(乳管)内に発生し、残りの癌の多くは腺組織小葉(ミルクサック)に発生することが知られている(ハリスほか(Harris et al).,ニューイングランド薬学誌(The New England Journal of Medicine)、Vol.327,390〜398頁、1992年)。乳癌はしばしば乳房の広い部分を含み、それに対する現在使われている従来からの治療法は局部的には失敗の可能性がかなり高い(シュニットほか(Schnitt et al.)、癌 (Cancer)、Vol.74(6),1746〜1751頁1994年)。T1(0〜2cm)又はT2(2〜5cm)癌として知られている早期乳癌では、全乳房が危険な状態に曝されており乳房組織内の(顕微鏡又は乳房造影法の助けなしには肉眼では見えない)微小な癌細胞の疑いのあるものを破壊するため全乳房照射と組合わせた乳房保存手術でしばしば治療される(ウインチェスタほか(Winchester et al.),臨床医のためのCA-A癌ジャーナル(CA-A Cancer Journal for Clinicians)、vol.42,No.3,134〜162頁,1992年)。癌が腺管のいたるところに拡がっている広範囲な導管内要因(EIC)による侵襲性腺管癌に対して治療を成功させることは乳房の大部分を処置しなければならないので特に困難である。疑わしい病変についての800,000件以上の乳房針生検が米国で毎年行われ、約205,000件の癌が検出され、残りは繊維腺腫と嚢腫などの非悪性のものである。アメリカ癌協会では、2002年の米国での新しい乳癌患者数は女性患者で203,500件、男性患者で1500件と推定している(癌実体と様相2002、アメリカ癌協会、アトランタ、ジョージア、4頁、2002, (Cancer Facts & Figures 2002, American Cancer Society, Atlanta, Georgia, p.4, 2002))。
【0003】
乳癌の治療に熱を使用することは色々な方法で効果を出すことが出来るが、殆どの場合熱治療が乳房の広く離れた領域にまで同時に到達できなくではならない。乳房の広い領域を加熱することは、乳房の微小な癌細胞の多く又はすべてを破壊することが出来、癌の再発を減らすか防止出来る。同じやり方が放射線治療にも用いられ微小な癌細胞のすべてを消滅するために乳房全体がx線で照射される。腫瘍塊除去術前に腫瘍を加熱し腫瘍細胞の大部分又は全てを消滅させることは腫瘍塊除去術治療の時に生存可能な癌細胞を気付かずに植え付けてしまう可能性を減らすことが出来、乳房の局所的再発を減らしている。時として冒された乳房はマルチフォーカル癌として知られる2つ又はそれ以上の腫瘍の塊が乳房に分布して含まれることがあり、この場合も加熱は乳房の広く離れた領域に達していなければならない。局所的に進行した乳癌(T3として知られる)は大きさが5cm又はそれ以上になることがあり、しばしば乳房切除が施される(スマートほか(Smart et al.), 臨床医のための癌ジャーナル(A Cancer Journal for Clinicians)、Vol.47,134〜139頁1997年)。局所的に進行した乳癌の手術前の温熱療法治療は腫瘍を十分収縮させて外科的な腫瘍塊除去術処理を可能とさせている。その方法と同様、手術前化学療法が最近用いられている。局所的に進行した乳癌の手術前温熱療法治療は腫瘍を完全に破壊して手術は何ら必要としなくしている。
【0004】
マイクロ波エネルギーは脂肪の多い乳房組織のような低水分含有組織への加熱に較べ、乳房腫瘍や嚢腫のような高水分含有組織を優先的に加熱することが出来ることは公知のことである。マイクロ波帯域での電磁エネルギー吸収によって誘起されたハイパーサーミア(高温)が人体の悪性腫瘍の治療における放射療法の効果を著しく高めることが多くの臨床学的な研究によって確立されている。(バルダニほか(Valdagni,et al.),放射腫瘍学生物物理学国際ジャーナル(International Jounal of Radiation Oncology Biology Physics),Vol.28,163〜169頁1993年;オーベルガールほか(Overgaar et al.),温熱療法国際ジャーナル(International Journal of Hyperthermia)、Vol.12,No.1、3〜20頁1996年;ベルノンほか(Vernon et al.),放射腫瘍学生物物理学国際ジャーナル(International Journal of Radiation Oncology Biology Physics),Vol.35,731〜744頁1996年;ファン デア ジーほか(van der Zee et al.),イタリーのローマでの4月9日から13日の温熱腫瘍学第7回国際大会議事録(Proceedings of the 7thInternational Congress on Hyperthermic Oncology) Vol.II,215〜217頁1996年;フォークとイセルス(Falk and Issels)腫瘍学における温熱療法(Hyperthermia in Oncology、温熱療法国際ジャーナル(International Journal of Hyperthermia), Vol.17,No.1、1〜18頁2001年)。Sフェーズ細胞のような耐放射細胞は高温に昇温することによって直接消滅させられる(ホール(Hall), 放射線学者のための放射生物学(Radiobiology for the Radiologist)、4th Edition, ジェービー リッピンコット社(JB Lippincott Company) フィラデルフィア(Philadelphia)、262〜263頁1994年;ペレツとブラディ(Perez and Brady)、放射腫瘍学の原理と実際(Principles and Practice of Radiation Oncology、2nd Edition、ジェービー リッピンコット社(JB Lippincott Company)、フィラデルフィア(Philadelphia)、396〜397頁1994年)。マイクロ波放射装置での温熱療法治療は通常いくつかの治療期間で実施され、そこで悪性腫瘍は約60分間約43℃に加熱される。腫瘍細胞を消滅させる時間量は約43℃を超えた1度あたりの温度増加に対し2分の1の割合で減少することが知られてられている。(サパレトほか(Sapareto et al.), 放射腫瘍学生物物理学国際ジャーナル (International Journal of Radiation Oncology Biology Physics), Vol.10,787〜800頁、1984年)。このように、43℃で60分の治療は45℃で僅か約15分に減らすことが出来る。これはよく等価線量と呼ばれる(t43℃当量分)。また温熱療法は化学療法の効果を高めることも臨床的に確立されている(フォークとイセルス (Falk and Issels)、2001年)。非侵襲性マイクロ波アプリケータで治療するとき、周囲の表面の健康な組織を好ましくないホットスポットによる痛みや損傷から防ぎつつ、やや深めの腫瘍を適切に加熱することは困難であることが判っている。組織内での比吸収率(SAR)は組織の加熱を特徴づけるのに用いられる共通のパラメータである。SARは与えられた時間の間の温度上昇に比例し、マイクロ波エネルギーの場合、SARはまた電場の2乗に組織の電気伝導度を掛けたものに比例する。SARの絶対値の単位はキログラムあたりのワット数である。
【0005】
非干渉性アレイ又は非適応型フェーズアレイの温熱療法治療システムは一般的に表面の腫瘍を加熱出来るが、深い腫瘍又は深い組織の加熱のための使用には制限を受ける。というのは、このシステムは介在する表面組織を過熱する傾向がありそれが痛みや火傷の原因になりうるからである。本発明のTEM空冷マイクロ波導波管アプリケータの譲受人での単一アプリケータ温熱療法治療が再発乳癌(胸郭癌)を含む表在性癌の治療に有効であった(シンディッヒ、Hら、(Shindig,H. et al.), 放射線治療と連結した温熱療法の臨床経験 (Clinical Experience with Hyperthermia in Conjunction with Radiation Therapy),腫瘍学(Oncology)、Vol.50,353〜361頁、1993年)。深い組織用温熱療法のための非適応型フェーズアレイについて記した最初に出版されたレポートは、理論上の研究によるものであった(ホンヒッペルほか(von Hippel et al.)、マサチューセッツ工科大学 (Massachusetts Institute of Technology)、断熱研究室(Laboratory for Insulation Research)、テクニカルレポートTechnical Report)13、AD-769843、16〜19頁1973年)。ロドラー(Rodler)に与えられた米国特許No.3,895,639には2チャンネル及び4チャンネル非適応型フェーズアレイ温熱療法回路が記載されている。最近の加温療法システムについての発展では、元来はマイクロ波レーダーシステムのために開発された適応型フェーズアレイ技術を使って深い組織に熱を配布することを効果的に目指している。(スコルニック(Skolnik), レーダーシステムへの導入(Introduction to Radar System)、第2版、マックグローヒル出版 (McGraw-Hill Book Company)、332〜333頁、1998年, コンプトン(Compton),適応型アンテナ、コンセプトと性能 (Adaptive Antennas, Concepts and Performance)、プレンティスホール(Prentice Hall)、ニュージャーシー(New Jersey)、11988頁;フェン(Fenn),アンテナと伝播についての米電気電子学会IEEEの取扱い (IEEE Transactions on Antennas and Propagation)、Vol.38号 No.2、173〜185頁、1990年;米国特許No. 5,251,645; 5,441,532;5,540,737; 5,810,888)。
【0006】
バッセンほか(Bassen et al.)、ラジオ科学(Radio Science)、Vol.12,No.6(5)1977年11月-12月15〜25頁、には電場プローブが組織内の電場パターンを測定するのに用いることが出来ることを示し、特に測定した電場が中央組織に焦点ピークを有する数例を示している。この論文ではまた、生体試料における電場のリアルタイムの測定についての概念を論じている。しかしバッセンらは、適応出来るようにフェーズアレイに焦点をあてるのにリアルタイム電気プローブを用いた電場測定の概念は展開していない。
【0007】
適応型フェーズアレイ温熱療法システムはE−フィールドフィードバック測定を用いてそのマイクロ波エネルギーを深い組織に焦点をあて、同時に周囲の健康な体組織を過熱するかもしれないエネルギーを無効にする。臨床前研究では、適応型マイクロ波フェーズアレイが深い胴と乳房に対し表面組織を過剰な温度にあてるのを避けつつ深い熱を配布する可能性を有していることを示している(フェンほか(Fenn et al.), 温熱療法の国際ジャーナル(International Jounal of Hyperthermia)、Vol.10、No.2、3月−4月189〜208頁、1994年;フェンほか(Fenn et al.), 腫瘍学管理ジャーナル(The Journal of Oncology Management)、Vol.7、No.2、22〜29頁、1998年)また乳房の表面組織については次の文献に報告されている:フェン(Fenn)、エネルギー源会議の外科的な応用の経過(Proceedings of the Surgical Applications of Energy Sources Conference),1996年;フェンほか(Fenn et al.),温熱療法の国際ジャーナル(International Journal of Hyperthermia)、Vol.15、No.1、45〜61頁、1999年;ガブリロフほか(Gavrilov et al.),温熱療法の国際ジャーナル(International Journal of Hyperthermia)、Vol.15、No.6、495〜507頁、1999年。
【0008】
マイクロ波エネルギーを用いた深い乳房組織における温熱療法実施の最も困難な面は、皮膚の火傷を防ぎつつ一定の深さで十分な加熱をすることである。侵襲性及び非侵襲性電場プローブ付きの非侵襲性多重アプリケータ適応型マイクロ波フェーズアレイが参考のためにここに組み込まれている米国特許No. 5,251,645;No. 5,441,532;5,540,737とNo.5,810,888に記載のように健康な組織には適応ゼロを形成して腫瘍位置に適応する焦点ビームを作り出すのに用いられる。理想的には、集中したマイクロ波の放射ビームが、周囲の健康な組織には最小のエネルギーを配布するなかで、腫瘍に集中される。治療中マイクロ波パワーを制御するために、温度検知フィードバックプローブが腫瘍に挿入される(サマラほか(Samaras et al).第2回国際シンポジュームの経過(Proceedings of the 2nd International Symposium)), エッセン(Essen)、ドイツ(Germany)、1977年6月2日〜4日、アーバンアンドシュバルツェンベルグ(Urban & Schwarzenberg)、バルチモア(Baltimore))、131〜133頁、1978年)が、プローブを正確に腫瘍の中に位置づけるのは時として困難である。さらに困難なことは、乳房腺管や腺組織全般に拡散した癌に温熱療法を加えるときに起こる。それは温度検知するフィードバックプローブ用によく規定された標的位置の欠如によるものである。その他の場合、プローブが腫瘍領域を通過するときに癌細胞を感染又は拡散する危険を減らすために単に乳房組織にプローブ(温度かE−フィールドのいずれか)を挿入するのを避けるだけでも望ましい。
【0009】
検出された良性嚢腫の治療のための医療の標準はなにもしないことから嚢腫の枯死までと、さまざまである。嚢腫を治療しないことが医学的に許される立場というのが存在するがこれは嚢腫を除くための唯一の既知の方法が侵襲性外科手術ということになるからである。外科的に嚢腫を切って取り除くことの代替案は嚢腫を枯らすことである。嚢腫を枯らすには嚢腫に孔をあけ嚢腫内部の水を除去するのである。この方法は嚢腫に伴う痛みを一時的に和らげることが出来るが、この枯渇治療が全嚢腫を取り除き損なったときは嚢腫はまた成長してくる可能性がある。それ故、これらの良性嚢腫の非侵襲性除去が必要である。
【0010】
上記欠点は乳房の癌状態を加熱するための本発明の方法の譲受人によって解決されたがその方法は、E−フィールドプローブセンサーを乳房に挿入し、皮膚表面の温度をモニターし、二つのマイクロ波アプリケータを乳房の向かい合った側に向け、挿入したE−フィールドセンサーに場を集中させるために初期マイクロ波パワーとフェーズを夫々のマイクロ波アプリケータに配布し、乳房に配布されるマイクロ波パワーをモニターした皮膚温に基づいて調整し、治療される乳房に配布されるマイクロ波エネルギー線量をモニターし所望の全マイクロ波エネルギー線量がマイクロ波アプリケータによって配布されたときに治療を完了するステップから構成されている。
【0011】
更に、本発明の譲受人による上記方法は温度フィードバックセンサーを置くのに決まった場所がないとき、又は温度プローブを乳房組織に挿入するのを避けるほうが望ましい場合のような状態にたいして適用される。譲受人によって教示された好ましい方法ではただ単独の最小侵襲性E−フィールドセンサーが必要である。このように進行した乳癌の場合(即ち5〜8cmの腫瘍)、この方法は乳癌細胞のかなりの部分を破壊することが出来て、腫瘍や病変を収縮させ(例えば2〜3cmに熱縮小)それにより乳房切除の外科手術を腫瘍塊除去手術に置き換えてしまうのである。その他全体が進行した乳癌病変が破壊され手術が不要になることもある。早期の乳癌や小さな乳房病変には譲受人の方法は乳癌細胞又は良性病変のすべてを熱で破壊し(即ち熱腫瘍塊除去術)、それにより腫瘍塊除去外科手術を避けることが出来る。なお、この方法は放射線療法を高めるために用いられ又は米国特許No.5,810,888に記載のように感熱性リポソームで標的とした薬物配布、及び/又は標的遺伝子療法配布に用いられる。譲受人の方法は最近開発された感熱リポソーム配合と米国特許No.6,200,598「感熱リポソーム配合(Temperature Sensitive Liposomal Formulation)」ニードハム(Needham)に2001年3月13日交付に記載のドキソルビシンのような化学療法剤と共に用いられるが、そこでは薬剤は約39℃〜45℃の温度で放出される。
【0012】
上記の譲受人の方法は乳房の正常な腺、腺管、結合組織や脂肪組織はそのままにして癌細胞を破壊する。このように本発明による温熱腫瘍塊除去術はそのような健康な組織へのダメージを避ける乳房保存技術である。
【0013】
譲受人の方法は適応型マイクロ波フェーズアレイ技術を用いて達成されるが組織部分を加熱除去するには一般に集中エネルギーが使われる。集中エネルギーには電磁波、超音波、又はラジオ周波数の波を含んでいる。即ち組織部を加熱除去するために集中出来るものは任意のエネルギーである。
【0014】
上記の譲受人の方法は非侵襲的に乳房組織から嚢胞.を除去するが、外部に集中するマイクロ波と乳房組織を圧迫するために用いられる機械的圧力により他の問題も発生する。このように非侵襲性温熱療法癌治療の安全性の改善が必要とされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
出願人らは臓器の癌又は良性条件の治療のために臓器組織を集中エネルギーで選択的に照射することによる独創的な方法で従来技術の欠点を克服している。本発明による方法は、E-フィールドプローブセンサーを臓器組織の適切な深さに挿入し、臓器に隣接する皮膚表面の温度をモニターし、2つ又はそれ以上のエネルギーアプリケータを臓器の回りに配置し、夫々のエネルギーアプリケータに配布する初期パワーレベルを設定し、臓器組織に配置したE−フィールドプローブにエネルギーを集中させるために個々のエネルギーアプリケータに配布する初期相対フェーズを設定し、臓器組織に集中エネルギーを選択的に照射し少なくとも臓器の癌と良性腫瘍状態を治療するために2つ又はそれ以上のエネルギーアプリケータにエネルギーを配布し、治療中個々のエネルギーアプリケータに配布するパワーレベルをモニターしている皮膚温度をもとに調整し、エネルギーアプリケータに配布するエネルギーをモニターし、エネルギーアプリケータに配布する全エネルギーを決定し治療中にリアルタイムでその全エネルギーを表示し、臓器にエネルギーアプリケータによって所望の全エネルギー線量が配布された時に治療が完了するというステップを含むものである。治療されるべき好ましい臓器は乳房であり、好ましい方法ではエネルギーアプリケータは乳房(又は他の臓器)のまわりにリング状に配置されてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、臓器組織にエネルギーを選択的に照射して臓器の癌又は良性条件の治療をする好ましい方法は、加熱を効果的にする物質を臓器組織の適切な深さに注入し、臓器に隣接する皮膚表面の温度をモニターし、臓器の周りに少なくとも1つのエネルギーアプリケータを配置し、夫々少なくとも1つのエネルギーアプリケータに配布される初期のパワーレベルを設定し、臓器組織にエネルギーを選択的に照射し少なくとも臓器の癌又は良性の状態の少なくとも1つを治療するために少なくとも1つのエネルギーアプリケータにエネルギーを配布し、治療中に夫々少なくとも1つのエネルギーアプリケータに配布されるパワーのレベルをモニターした皮膚温度に基づいて調整し、少なくとも1つのエネルギーアプリケータに配布されるエネルギーをモニターし、少なくとも1つのエネルギーアプリケータに配布される全エネルギーを決定し治療中にリアルタイムでその全エネルギーを表示し、臓器に少なくとも1つのエネルギーアプリケータによって所望の全エネルギー線量が配布された時に治療が完了するというステップを含むものである。即ち、出願人は本発明による方法は1つのアプリケータで達成でき、臓器の癌状態又は良性の状態の上に集中出来るどんなエネルギーでもよいことを想定しているものである。
【0017】
本発明によれば、マイクロ波吸収パッド及び金属製遮蔽がマイクロ波温熱療法アプリケータと乳房圧迫用パドルに付けられている。譲受人の方法に加えられたこれらの安全対策は乳房腫瘍(悪性又は良性)治療のために圧迫された乳房組織への適応フェーズアレイ温熱療法の間、胸もと、胸壁領域、頭部、目の付近の主要なマイクロ波アプリケータの開口範囲の外側の電場の強さと温度を低下させる。
【0018】
侵襲性皮膚エントリーポイントの量を最低にするために単独のカテーテル内にE-フィールドセンサーと温度センサーの組み合わせたものが譲受人の方法と一緒に用いられる。その結果、単独の最低侵襲性の皮膚エントリーポイントのみが要求され、患者の快適さが改善され感染の危険が減少する。単一マイクロ波アプリケータでのそれに代わる実施形態では、温度モニターがアプリケータに加える電力を制御するのでEフィールドセンサは必要としない。このようにもし表面温度センサが使われるのであれば、侵襲性皮膚エントリーポイントを持つ必要がない。
【0019】
更に、初期段階の乳癌に対して適応型マイクロ波フェーズアレイ温熱療法が熱のみ治療として用いられる。また局部的に進行した乳癌における第一次乳房腫瘍の治療のために適応型マイクロ波フェーズアレイ温熱療法は化学療法処方計画及び/又は遺伝子をベースとした修正方法と組合わせて用いることが出来る。あるいは、乳房温熱療法の熱のみ治療は腫瘍塊除去術の患者に対する第2、第3の切開(追加手術)の割合を減少させる手術前の道具として用いることが出来る。適応型マイクロ波温熱療法を追加使用することは、温熱療法が乳房癌腫がエストロゲン受容体と結びつかないようエストロゲンをブロックするためと熱で直接癌細胞を消滅させるようにタモキシフェン又は他の抗エストロゲン薬物と一緒に用いられる改良した乳癌予防法の一つとされる。
【0020】
本発明による他の方法では、患者の胸部上に置かれた単一空冷エネルギーアプリケータが、胸部皮膚に挿入された温度プローブまたは取り付けられた温度センサで胸部組織の温度を測定しながら胸部組織を加熱するのに用いられる。この方法は胸部が、2つ以上のエネルギーアプリケータによって形成された開口部に拡がらない場合(いわゆる小胸部患者の場合)、又は治療される腫瘍または組織がアプリケータで形成された開口部の縁にある場合に用いることが出来る。治療される腫瘍または組織の位置によって患者は単一空冷エネルギーアプリケータからの治療を受けるために、うつぶせ又はあおむけに横たわることが出来る。
【0021】
患者の胴部を取り囲む管状物またはバンドによって胸部組織は胸郭にむけて押し付けられる。その管状物の幅は治療される胸部の幅に依存し、それにより胸部を平坦にし治療される腫瘍または組織近辺の血流を減らし、治療される腫瘍や組織の皮膚と関連した深さを減少させる。
【0022】
本発明による更に別の方法では、放射されたエネルギーが腫瘍の1つに向けられるか(癌性または良性条件にたいする治療)乳癌の大部分が発生する胸部の上部に向けられる(癌予防)ように良性または癌性腫瘍を有する胸部又は頭部、首、胴、腕又は脚の表面部の上に単一アプリケータを置いてもよい。治療される組織の場所及び治療温度が治療される組織に到達する能力によっては侵襲性温度プローブを使用することができるが出願人は非侵襲性温度モニターシステムを想定している。例えば、単一アプリケータを用いながら1つ以上の表面温度センサが皮膚温度をモニターするために用いられても良く、その出力はマイクロ波アプリケータに提供されるマイクロ波パワーレベルを制御するためのフィードバック信号として用いる事ができる。約360キロジュール、好ましくは約90キロジュールまでのマイクロ波エネルギー線量(例えば、200ワットのマイクロ波力を約30分好ましくは50ワットのマイクロ波力を約30分)が、例えば、腫瘍塊除去術まえの腫瘍を破壊するか、腫瘍塊除去術後の顕微鏡的乳癌細胞を破壊するために治療される胸部に与えられてもよい。
【0023】
ある種のたんぱく質が癌細胞を拡張することで知られており、一方またある種のたんぱく質が癌細胞の拡散を防止することが知られている。乳癌の場合、高レベルの耐枯死たんぱく質Bcl−2が早期乳癌、特にエストロゲン受容体(ER)が陽性で、腫瘍抑圧たんぱく質p53が陰性である癌細胞に認められる。Bcl系のたんぱく質は乳癌細胞のなかのプログラム細胞死(枯死として知られる)を減らし、従って癌細胞はすぐ死なず結果として拡がってしまう(ザパタ他、(Zapata, et al.),「ヒト乳癌細胞ラインおよび1次腫瘍における多重枯死ー調節遺伝子の発現」(Expression of Multiple Apotosis-Regulatory Genes in Human Breast Cancer Cell Lines and Primary Tumors), 乳癌の研究と治療(Breast Cancer Research and Treatment)、Vol.47、129〜140頁、1998年)。乳癌における他の耐枯死性たんぱく質はBcl-XL、Mcl-1,及びBAG-1である。乳癌の拡散を防止するBax, Bak, CPP32のような枯死推進系のたんぱく質は熱処理によっても影響されないと考えられている。同様のたんぱく質が他の型の腫瘍に関連しており出願人らの発明は種々の癌の治療を想定するものである。出願人らは、少なくとも1つのエネルギーアプリケータによって達成された加熱の効用は、この発明によれば、治療される身体箇所、または臓器のなかの耐枯死性たんぱく質を選択的に加熱し、それによって腫瘍部の耐枯死性たんぱく質に対するたんぱく質抑制剤の産出を促進増加し、耐枯死たんぱく質を抑制し癌の拡散や他の関連健康状態や病気を抑制すると理論づけている。すなわち、少なくとも1つのエネルギーアプリケータにパワーを与えることで発生した熱が耐枯死性たんぱく質を殺し、又は、耐枯死性たんぱく質に目標をおいたたんぱく質抑制剤の生産を齎し、癌や他の病状の成長を抑制する。
【0024】
本方法による選択的な放射によってDNA損傷を生むのに十分な熱が生まれ、癌細胞が自分で修理する能力のもとになっているたんぱく質が、本発明に準じた1つ以上のエネルギーアプリケータによる加熱で、DNA分子との結びつきから除去されるか消去されるものと理論づけられる。このたんぱく質の除去の結果、癌細胞は枯死工程で自然に死んでしまうことになる。細胞毒素または生体細胞を毒する物質は放射、化学、熱療法と関係している。これらの細胞毒素が細胞修復を行うたんぱく質を消去することによってDNA分子を損傷してしまうと考えられる。修復の原因となるたんぱく質の除去や消去によって癌細胞の枯死や壊死を齎す細胞毒素の能力をたかめる。
【0025】
出願人らは脂肪その他の好ましくない組織を美容のために破壊又は溶かし去ろうとする方法を更に想定している。例えば、浸襲性で苦痛の多い脂肪吸引法によって広く取り扱われているセリュライトは、サリン液のような高伝導性物質を伝導性の低い脂肪に注入しマイクロ波放熱その他のエネルギーを身体に放射して脂肪析出物を溶かすことにより身体の脚部よりうまく取除く事が出来る。セリュライトは、覆っている皮膚に窪みを起こさせる脂肪や繊維性組織の塊すなわち析出物である。ゆるい繊維組織は脂肪とともにセリュライトのごつごつした外観を呈する。マイクロ波放射や他のエネルギーを身体に暴露させると連結組織を収縮させ緩んだ組織を固く締め不体裁なごつごつした外観を平滑にする。治療されるセリュライトや他の好ましくない組織によって吸収されるエネルギーを集中させるか特定させるために周囲の組織より高い伝導度の物質少量を、予め選定しておいた身体のセリュライトや他の好ましくない組織の特定の場所に注入し、そのエネルギーがその選定しておいた場所に優先的に吸収され、その場所の加熱効果を高めるようにしても良い。より高い伝導度の物質を注入することは、マイクロ波放射や他のエネルギーへの暴露の約30分前までに行われると良い。より高い伝導性物質としてはサリン溶液か金属化合物の溶液であることができる。より高い伝導度の物質の注入は、予め選定しておいた場所の加熱効果を高めるため他の薬品薬剤と組合わせて行うことも出来る。治療される身体の場所により、少なくとも1つのエネルギーアプリケータは身体の外部か身体の自然の空腔(例えば経尿道、経直腸)に挿入されてもよい。マイクロ波ブランケットや他の防御カバーを使って逸脱したエネルギーからその身体個所を防御してもよい。
【0026】
マイクロ波放射や他のエネルギーへの暴露により理論的には高伝導度の物質を注入された脂肪析出物は変性となり、及び又は、液体となる。脂肪が変性されると、理論的には身体に自然に再吸収されるので取除く必要はない。そのような場合、そのごつごつ部は、マイクロ波放射や他のエネルギー暴露によって発生した熱に曝された身体のその個所を包むことによって平滑になる。身体を包むことは治療される身体を後成形したり事前形成するのに十分な圧力を与える。併し、もし脂肪を取除くのであれば、より液体化した脂肪のほうが既知の真空吸引で補助させた脂肪吸引法よりも治療される個所からの脂肪除去は容易である。既知の脂肪吸引法で使われているような長い管や針が治療される個所からの溶けた脂肪の吸引に用いる事が出来る。マイクロ波や他のエネルギーへの暴露によって処置された脂肪は液体か液状なので、除去処理は既知の固体脂肪析出物を除くのに吸引を用いる脂肪吸引法よりも容易で早くまた痛みもすくない。
【0027】
そのほか更なる目的、利点は記述内容と図面を考察することにより明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
乳房組織の誘電特性
女性の乳房の詳細な側面図が図1に示されている(乳房造影法−ユーザーズガイド、放射線保護と測定についての評議会、(A User’s Guide, National Council on Radiation Protection and Measurement) NCRP Report No.85、6頁、1987年8月1日)。乳房内の腺及び脂肪組織の量は第一に脂肪組織から極めて濃い腺組織まで広い範囲に変わることが出来る。男性の胸部も同様な組成を有していると推定される。乳癌細胞、これは水分含有量が高いが、図2に描かれるように通常、乳液分泌管及び腺組織小葉内に形成される(スーザンラブ博士の乳房の本(Dr Susan Love’sBreast Book)アディソンウェズェイ (Addison Wesley),マサチュウセッツ(Mass.)、191〜196頁、1990年より引用)。腺管内での異常細胞の成長の最初の兆候は腺管内増殖と呼ばれるもので、アティピアの腺管内増殖がそれに続く。腺管内がほぼ一杯になると、その状態は原位置癌腫(DCIS)として知られるものである。これら3つの状態が前癌と呼ばれるものである。最後に腺管内癌腫が腺管壁を突き破るとその病変は侵襲性腺管癌と呼ばれる。癌は同様に乳房の腺小葉に形成する。上記細胞の全部が乳房内のきれいな脂肪組織(低水分含量)ときれいな腺/結合組織(低〜中水分含量)は除外して、しばしば高水分含量として言及されている。
【0029】
工業用、科学用、医療用(ISM)周波数帯902〜928MHzでのマイクロ波放射が一般に業務用臨床温熱治療システムに用いられ、ここで考察される主要な周波数帯である。女性乳房組織についての詳細なマイクロ波加熱の情報は殆どない。併し、乳房癌腫は周囲の脂肪乳房組織に比べ選択的に加熱されることがよく知られている。4つの主要な論文としては:1)シャウハリーほか(Chaudhary et al.)、生物化学と生物物理のインドジャーナル(Indian Journal of Biochemistry and Biophysics), Vol.21、76〜79頁、1984年; 2)ジョインズほか(Joines et al.)、医療物理(Medical Physics)Vol.21、No. 4、547〜550頁、1994年; 3)スロビエックほか (Suroviec et al.)、生物医学エンジニアリングについての米電気電子学会IEEEの取扱い(IEEE Transactions on Biomedical Engineering), Vol.35、No.4、257〜263頁、1988年;4)キャンプベルとランド(Campbell & Land)、医学と生物学における物理、(Physics in Medicine and Biology), Vol.37、No.1、193〜210頁、1992年がある。その他の論文としてのバーデット(Burdette)AAPM医学物理モノグラフ、(AAPM MedicalPhysics Monographs) No.8の105及び130頁、1982年は乳房組織についてのデータが測定されているがこれらのデータは皮膚を通じて測定されており多分乳房組織そのものを代表するものではない。誘電特性は、図3に示されるような正常乳房組織と乳房腫瘍に記述されているように一般に誘導定数と電気伝導度として与えられる。915MHzで、バーデットの研究データを除いて正常乳房の平均誘電定数は12.5で平均伝導度は0.21S/mである。それに対し、乳房腫瘍の平均誘電定数は58.6、平均伝導度は1.03S/mである。註)シャウハリーほか(C)及びジョインズほか(J)の研究データは室温(25℃)で測定された。なお温度が上昇すると一般に誘電定数は減少し伝導度は上昇する。正常な乳房と乳房腫瘍の誘電パラメータは夫々低水分含量の脂肪組織と高水分含量筋肉組織と同じである。なおまた、正常な乳房組織は脂肪、腺と連結組織の混合物を含んでいる。皮膚、筋肉、脂肪を含んだ17組織タイプについての詳細な情報はガブリエルほか(Gabriel et al.)の「物理と医学と生物学」(Phys. Med. Biol.), Vol.41,2271〜2293頁、1996年の論文に提供されている。スロビエックほかによる論文は選択された腺、腺管、脂肪及び癌組織についての詳細な情報が掲載されているが、これらは20kHzから100MHzの範囲でのパラメータだけを測定したものである。100MHzでの測定データから915MHzでの乳房組織の電気特性を推定することは可能である。出願人らは問題の周波数即ち915MHzでのきれいな腺管と腺乳房組織についての誘電パラメータデータは把握していない。
【0030】
キャンプベルとランドによる論文では3.2GHzでの誘電パラメータデータと、乳房脂肪、腺、連結組織、良性腫瘍(繊維腺腫を含む)と悪性腫瘍の水分含量パーセントの測定がなされている。水分含量パーセントの測定データは乳房組織の相対的加熱性を見極めるのに用いることが出来る。即ち高水分含量の組織は低水分含量の組織より早く加熱される。測定された水分含量(重量で)の値の範囲は次のようである。乳房脂肪(11〜31%)、腺及び結合組織(41〜76%)、良性腫瘍(62〜84%)ならびに悪性腫瘍(66〜79%)で選択された値は図4に描かれている。このように水分含量に基づいて、良性の乳房病変と乳房腫瘍は腺、結合組織及び脂肪乳房組織よりかなり早く加熱されることが予想される。一般的に3.2GHzでの電気伝導度について測定値として彼らがベストと選択したものは次のようである。即ち乳房脂肪(0.11〜0.14S/m)、腺及び結合組織(0.35〜1.05S/m)、良質腫瘍(1.0〜4.0S/m)ならびに悪性腫瘍(3.0〜4.0S/m)。従って、良性と悪性の腫瘍の電気伝導度は腺と結合組織より約4倍高くなる傾向を有し、きれいな脂肪より約30倍高い。これらのデータは図3に示されたジョインズほか(Joines et al.) によるものと同様シャウハリーら(Chaudhary et al.)による915MHzで測定した電気伝導度のデータと一致する。
【0031】
さらに、1984年のシャウハリー(Chaudhary)の論文では3GHzで正常な乳房組織についての電気伝導度を測定した。その伝導度は0.36S/mで、キャンプベルとランド(Campbell and Land)が3.2GHz測定した正常な腺及び結合組織の範囲(0.35〜1.05S/mと一致する。このように、もっともよく入手可能なデータから乳房脂肪は低水分含量、腺と結合組織は低から中の水分含量、そして乳房腫瘍は高水分含量である。従って、良性と悪性の腫瘍細胞は周囲の脂肪、腺、腺管及び結合組織細胞よりかなり早く加熱されかなり高い温度にまで加熱されることが予想される。言い換えれば、顕微鏡的及び肉眼で見える腫瘍細胞がこの治療で優先的に加熱され全ての周囲の脂肪、腺、腺管及び結合組織は熱による損傷から逃れられる。
【0032】
組織の電気伝導度はマイクロ波エネルギーでの組織加熱で主要な制御パラメータである。組織の電気伝導度はまたメートルあたりシーメンス(Siemens)の単位をもつ組織イオン伝導度とも呼ばれている。電気伝導度は主に水分含量、イオン含量と温度である組織特性についての関数である。(F A ダック(F.A.Duck), 組織の物理的特性(Physical Properties of Tissue)、アカデミックプレス(Academic Press)、1990年Chapter6167〜223頁)。電気伝導度は組織の水分含量、イオン含量及び温度が増加すれば増加する。例えば、生理食塩水は純水より高いイオン伝導度を有している。暖かい生理食塩水は冷たい生理食塩水よりも高いイオン伝導度を有している。侵襲性又は浸透性乳癌細胞は適度にから僅かに見分けられる、即ち正常な細胞として機能する力が次第になくなっていくことを報告している。癌細胞がその官能性を失っていくに連れ形状が膨潤し、水分を一層吸収しそれにより水分パーセントを増加していく可能性がある。癌細胞の水分中のイオンはイオンの伝導度に重要な役割を果たしている。イオンというのはプラスであろうとマイナスであろうと電気的に荷電した粒子である。組織中での重要なイオンはカリウムイオン(K+)、カルシウムイオン(Ca2+)、ナトリウムイオン(Na+)及び塩素イオン(Cl-)を含むものである。カルシウムイオンは陽子より2つ少ない電子を有し、陽に荷電している(2+)。カルシウムは2つの塩素(Cl-)イオンを引きつけて保持することが出来る。カリウムはたった一つの塩素(Cl-)イオンを引きつけて保持する。塩化カルシウム(CaCl2)中のカルシウムと塩素イオンは水に溶解されたとき分離すなわち分かれて易動性が向上し水溶液のイオン伝導度が増加する。乳房造影に現れる密にしっかり固められたカルシウム沈殿物(ミクロ石灰化として知られている)がしばしば癌腫と関係している(S.M.ラブ(S. M. Love) スーザンラブ博士の乳房の本(Dr. Susan Love’s Breast Book)、3rd Edit.、ペルサス出版(Persus Publishing)、2000年、130〜131頁)。乳管中の小さな石灰化した塊が一般に前癌の原因である。カルシウムの大きな塊は一般に繊維腺腫のような良性の病変と関係している。乳房に現れた石灰化物の一部は骨から流出したカルシウム由来であり血流を通して移動し、乳房内部にランダムに堆積する。
【0033】
乳房嚢腫液中のプロテインとイオン性成分が測定された(B ガイラードほか (B. Gairard、et al.)、小嚢胞性乳房乳腺炎の内分泌学における「乳房嚢腫液中のプロテインとイオン性成分」(Proteins and Ionic Components in Breqast Cyst Fluids)、A アンジェリほか編者(A.Angeli,et al editors)、ラーベンプレス(Raven Press)、ニューヨーク(New York)、1983年191〜195頁. H L ブラッドロウほか(H.L.Bradlow et al.)、小嚢胞性乳房乳腺炎の内分泌学(Endocrinology of Cystic Breast Disease)における「乳房嚢腫液中のカチオン」(Cations in Breast Cyst Fluid)、A アンジェリほか編者(A.Angeli,et al editors)、ラーベンプレス(Raven Press)、ニューヨーク(New York)、1983年197〜201頁)。 乳房嚢腫液はナトリウム(Na+)、カリウム(K+)、塩素(Cl-)、カルシウム(Ca2+)燐酸(PO4+)、マグネシウムイオン(MG2+)を含有している。
ブラドロウは乳房嚢腫液の3つのカテゴリーを挙げている。
タイプI:高水準のカリウム(K+)及び中水準のナトリウム(Na+)と塩素(Cl-)、
タイプII:高水準のカリウム(K+)とナトリウム(Na+)及び中水準の塩素(Cl-)、
タイプIII:高水準のナトリウム(Na+)中水準の塩素(Cl-)と低水準の
カリウム(K+)。乳房嚢腫の高水分含量及び高イオン含量は周囲の正常で健康な乳房組織の加熱に較べてマイクロ波での優先的な加熱が出来るように働いている。
【0034】
嚢腫にはいくつかのタイプがある:触診可能な腫瘍を形成する大きな嚢腫、濃縮した(濃い)乳-いわゆる「乳瘤」を含む嚢腫、腺管拡張から進展した嚢腫、脂肪壊死から来る嚢腫、いわゆる「乳頭の嚢胞腺腫」といわれる腺管内乳頭腫と関係した嚢腫、エストロゲンの管理から誘起された嚢腫などである。一方、一部は大きさが減少し、ものによっては時間の経過で消えてしまうものもあるが、大きい(非常に大きい)嚢腫が急激に発展して適当な大きさになって何時までもそのままでいるものがある。大きな嚢腫のかなりの部分が月経前又は月経時期に発見され急速に大きくなり痛くて敏感になる。大きな嚢腫は時として深刻な炎症、痛み、敏感さの兆候や、上にある皮膚の赤みと関係している。嚢腫液を針吸引すると炎症の兆候が速やかに静まる。吸引が完了すると繊維性の嚢腫壁のみが残る。併し、周囲の乳房組織に逃げ出した嚢腫液が、するどい痛みを生み出す可能性がある。大きな嚢腫が30才から54才の年齢グループに最も普通でありケースの約95%はこれである。嚢腫状態の手術をする外科医がより広く乳房を診察すればするほどさらに多くの嚢腫がみつかるようである。
【0035】
繊維腺腫(非常に普通の良性腫れ物、類線維腫とも呼ばれる)は平らで固く寸法は5mmから約5cmまでさまざまである。繊維腺腫は小さなサンプルの測定によれば高い水分含量(平均78.5%、n=6)を有し(キャンプベルとランド(Campbell and Land)、「女性の人間乳房組織を3.2GHzで試験管で測定した誘電特性」Dielectric Properties of Female Human Breast Tissue Measured in vitro at 3.2 GHz)、医学と生物学での物理(Phys Med Biol)1992年Vol.37(1)、193〜210頁)周囲の健康な乳房組織に比べマイクロ波エネルギーによってより容易に加熱される。これらの良性病変は一般に乳房造影法や超音波ではっきりしており、望むなら外科的に取除くことが出来る。ある患者は多数の繊維腺腫を持っていてそのため乳房保存手術は実行不可能となる。下記に述べられたキャンプベルとランドの研究には他の良性腫瘍患者の水分含量の測定データは限られたものしかない。
【0036】
良性の繊維症腫瘍:キャンプベルとランドの研究において一人の患者(26歳)のメディアン(median)水分含量は65.5%で高水分含量を示している。繊維症というのは繊維状組織が出来ることをいい、これは修復又は反応過程で起こりうる。繊維状の乳房の病気は繊維症の特別なタイプで乳房の局所にある小葉の細葉と乳房の腺管を圧迫、消去し触診可能な腫瘍を形成する。繊維症は異常に引き締まっていて(癌ほど固くはない)一般に局部切除を必要とする。併し、この病変は嚢腫のように丸くなっていないで不規則な盤状なのでこの病気の境界ははっきり限定されていないことが多い。
【0037】
良性の繊維腺腫状腫瘍:キャンプベルとランドの研究での一人の患者(27歳)のメディアン水分含量は高水分含量を示す73.5%であった。
【0038】
良性上皮症(乳頭腫症として知られる)腫瘍:キャンプベルとランドの研究での一人の患者(40歳)のメディアン水分含量は高水分含量を示す61%であった。乳頭腫症は腺管上皮の乳頭分裂増殖でそれが部分的に小さな腺管に充満し腺管をある程度膨張させる。上皮症は一般に顕微鏡的で嚢腫の病気、腫瘍腺疾患、多点上皮症、又は他の腫瘍形成病変と共に現れるときが多い。
【0039】
良性腺疾患腫瘍:キャンプベルとランドの研究での一人の患者(43歳)のメディアン水分含量は低水分含量を示す38%であった。良性腺疾患は顕微鏡的にもはっきりした腫瘍としても現れる乳房の小葉の細葉の分裂増殖である。これらの腫瘍(両性腺疾患)は周囲の正常な乳房組織と較べて著しく熱くはならないがデータの試料はたった一つしか測定されず、良性腺疾患を代表するものとはいえない。
【0040】
要するに、嚢腫、繊維線種、繊維症、繊維線種症、及び上皮症(乳頭腫症としても知られている)のような良性病変は高水分含量及び/又は高イオン含量として出現し、マイクロ波エネルギーで容易に加熱されるものである。良性の腺疾患病変は高水分含量及び/又は高イオン含量の嚢腫のように速やかには加熱されないかもしれない。併し、ここでベースとしているデータが1名の患者に限られるのではっきりしない。
【0041】
進行している乳癌(例えば5〜8cmの腫瘍)の場合、譲受人の進歩的な方法は乳癌細胞のかなりの部分を熱のみで又は熱と化学療法を組合わせて破壊することが出来る。腫瘍又は病変を収縮し(熱により例えば2〜3cmに縮小化)することにより、外科的乳房切除を外科的腫瘍塊除去術に置き換えることを可能とする。理想的にいけば、全ての進行した乳癌の病変を破壊し(即ち熱的乳房切除又は熱化学的乳房切除)外科的なものを必要としないこともあろう。下記に論じるように、早期の乳癌又は小さな乳房病変が譲受人の進歩的な方法で破壊される。即ち、すべての乳癌細胞又は良性病変が熱で破壊され(即ち熱的腫瘍塊除去術)、それにより外科的腫瘍塊除去術をさけることが出来る。
【0042】
温熱療法は初めの(又は第2又は第3)腫瘍塊除去術の前の熱のみ治療として陽性のマージン(癌性細胞)が腫瘍塊除去術の試料に検出されたとき行われる再除去(追加の手術)の必要性を減らすために用いることが出来る。腫瘍塊除去術の試料の約30%は第2回目の切除を必要とする陽性のマージンを有する。本発明による方法は組織を外側から内側へと標的領域に向けて加熱するので(内側から外側へ加熱するRF 除去と対照的に)、本発明の方法はマージンに取り組むものである。それゆえ、本発明による温熱療法の治療はマージン内の癌細胞を取除くことを期待して手術前に適用することが出来る。その結果最初の手術(腫瘍塊除去術)後、切除した組織の周囲の領域(マージン)がテストされマージン内の癌の減少が期待されそれによって第2(又は第3の)切開が必要になるのを避けている。本発明による温熱療法治療は理論上熱腫瘍塊除去術として使うことが出来て侵襲性腫瘍塊除去術の外科手術過程を置き換えうる。このように、乳房の癌量は本発明の温熱療法治療によって大幅に減らすこと又はことごとく破壊することが出来るであろう。
【0043】
本発明による温熱療法治療は遺伝子ベースの修正方法と組み合わせて使用しBRCA1、BRCA2又は他の遺伝子のような組織の中に異常な(突然変異)遺伝子を有する患者のために用いることが出来ると考えられる。これらの異常な遺伝子が存在するということはその患者が癌に罹る危険が増加していることを示しているのであり、このようにこれらの遺伝子を除去することが患者が癌に罹る危険を減らすことになる。熱のみの温熱療法治療又は化学療法を伴う温熱療法及び/又は遺伝子ベースの修正方法と熱の組み合わせが乳癌の再発をマージンの中の癌性細胞を破壊することで減らし、それにより癌のない組織を提供するか癌や他の病弊の原因となる突然変異の遺伝子を破壊するか修理する。更に、この方法は米国特許No.5,810,888に記載されているように感熱リポソームと組み合わせ及び/又は放射線治療効果を高める乳房病変を治療するために標的としている遺伝子治療の実施及び/又はマージン中の癌性又は異常細胞の破壊を助けるために標的としている薬剤の引渡しと組合わせて用いることが出来る。乳癌は乳房腺管内に発生し周囲の乳房組織内へと外側に侵襲し、次いでリンパ管系及び血管(血流)系を経由して乳房の外へと拡散する。このように、温熱療法治療単独又は化学療法及び/又は遺伝子ベース修正方法と組合わせたものが乳房のリンパ管系及び血管系内の癌細胞又は突然変異遺伝子を抹消すことによって乳房又は他の臓器内の乳癌の再発を減らすのである。
【0044】
本発明による熱治療療法は単独又は化学療法及び/又は遺伝子ベース修正方法と組み合わせ異常又は突然変位の遺伝子が癌を高率で発生させる可能性のある前立腺、肝臓、卵巣等の他の内蔵の前治療に用いられる。更に熱のみの熱治療又は化学療法を伴う温熱療法及び/又は遺伝子ベース修正方法との組み合わせが腺管内洗浄又は他の診断技術によって判定されるような内蔵内の異常細胞があるときに効果的である。
【0045】
早期乳癌のための温熱療法
早期乳癌患者の小グループにおいて、セルシオン コーポレーションマイクロフォーカスAPR1000乳房温熱療法システムによって行われたフェーズII臨床温熱療法が1つ又は2つの熱のみ治療を使って70%から90%台も腫瘍細胞の生存率を著しく下げた。何人かの患者では、熱のみの温熱療法によってスケジュールが決まっていた腫瘍塊除去術の前に乳癌細胞を完全に破壊し、それにより手術を行わず乳癌の局部再発を防ぐことがありうる。別の患者では、熱のみの温熱療法を行って癌細胞のないマージンを提供することにより2回目又は3回目の腫瘍塊除去術の必要性を減らすことが出来よう。これらの熱のみ治療は48.3℃のピークの腫瘍温度で250キロジュールのマイクロ波エネルギーをもつ凡そ200分までの当量熱線量(43℃に相当)を生み出す。追加の温熱療法治療、より高い当量熱線量とより高い腫瘍温度が乳房癌の熱のみ切除を完了するために必要であろう。49から50℃の範囲又は55℃までの腫瘍温度であると400分の当量熱線量で500キロジュールまでのマイクロ波エネルギー線量が腫瘍の完全切除のために必要となろう。乳房壁領域のような乳房皮膚及び隣接する健康な組織を熱損傷から保護するための追加の安全手段をこれらのかなりの熱及びマイクロ波エネルギー線量とともに提供する必要があるであろう。
【0046】
原位置腺管癌のための温熱療法(DCIS)
DCIS即ち原位置腺管内癌としても知られている転移せずに原位置にいる腺管内癌腫は主たる治療上の問題を代表するものである。「癌の事実と様相2001(Cancer Facts and Figures 2001)」、アメリカ癌ソサエティインク(American Cancer Society, Inc.)、アトランタ(Atlanta)、ジョージア(Georgia)によれば約41,000人の新しい患者が2001年に診断を受けると思われた。更に、192,200人の新しい侵襲性乳癌の患者が予想された。診断された新しい乳癌の予想された238,600患者のうち80.6%が侵襲性、17%がDCISで残り(2.4%)がLCIS(原位置小葉癌)(癌の事実と2001年の様相 (Cancer Facts and Figures 2001))であった。DCISの針生検診断はサンプリングの誤りにより侵襲性の病気を低く見積もる可能性がある。サンプリングの誤りの結果、その病気の進行の正確な診断が得にくくなる。ある研究の報告によれば針生検でDCISと診断された患者の16%から20%は外科的切除で侵襲性の病気とその後診断されている。(D.P.ウインチェスター(D.P.Winchester)、J.M.ジェスク(J.M.)Jeske、R.A.ゴールドシュミット(R.A.Goldschmidt) 「乳房の上皮内腺管内癌腫の診断と管理」(The Diagnosis and Management of Ductal Carcinoma In-Situ of the Breast)CA 癌ジャーナルクリニック(CA Cancer J Clin)2000;50:184〜200頁)。このように、適切な治療計画を決定するために外科的切除はDCIS患者にとって最近は必須事項になっている。例えば、初めにDCISと診断され続く腫瘍塊除去術と病理学で侵襲性癌と決定された後で、リンパ結節(特に前哨リンパ結節)が生検され治療される必要がでることがありうる。その時、段階的な適切な全身療法も必要となろう。DCISの患者のどのような病理学的評定もその主要な目標は、続く侵襲のリスクレベルを判定し適切な治療を提供し起こりうる治療の過不足を避けることである。
【0047】
DCIS病の乳房造影法的及び病理学的評定に基づいて、ある場合には乳房保存手術が外観上満足出来る結果で達成出来ることがある。併し、完全な外科的切除と放射療法で治療された長期間追跡したDCIS患者の19%以上もの患者が局部再発を経験しており、その50%までもが侵襲性である。腫瘍塊除去術だけを受けたDCIS患者については再発率は26%にまで達する可能性がある。
【0048】
局部再発に関係する生存率についての影響を理解するために、以下のことを考える:手術後に陰性のマージンをもち標準術後放射療法を受けたDCIS患者に関しては、少なくとも80%が長期間の局部コントロールを達成すると思われる。即ち、長期追跡で約20%の患者は局部再発を経験するであろう。その20%のうち、10%は非侵襲性の再発で10%は侵襲性の再発と思われる。非侵襲性再発の患者は実質的に100%の局部コントロールを達成し乳房切除で治癒する。侵襲性局部再発の患者は乳房切除で75%の5年生存率を経験する。即ち25%は5年生存しないことになる。このように、乳房保存治療を受けたDCISで管理された患者について、その患者の10%は後日非侵襲性の再発となり乳房切除を受けねばならない。侵襲性再発した他の10%は乳房切除を受けねばならず、これらの患者の25%は5年以内で死亡するであろう。このように、DCISに対し乳房保存治療(腫瘍塊除去術と放射線療法)を受けた患者の約2.5%は局所再発で5年以内に死亡するであろう。年間41,000人のDCIS患者に対し2.5%の患者即ち1,025人のDCIS患者が侵襲性再発によって5年以内に死亡する。これらの百分率を与えられて殆どの患者は乳房保存の方法を選ぶであろうが乳房保存の放射線療法部分からのかなりの副作用を経験するであろう。なお放射線療法はコストと時間のかかる方法(20から30の細分化した治療が通常必要)である。
【0049】
原位置腺管内癌(DCIS)治療の新しい方法は、副作用が殆どなくて、腫瘍塊除去術後の放射線治療の再発率と同等又はそれ以下の再発率である腫瘍塊除去術後に温熱療法(1つか2つの治療)を行う方法である。温熱療法のコストは放射線療法のコストより少ないと思われ、全体の医療コストの節約となる。温熱療法はまた原位置腺管内癌(DCIS)の消滅の効果を増加させるため従来の放射線療法が数回与えられても良い。
【0050】
手付かずの乳房の局部進行乳癌のための熱化学療法
本発明によれば進行した乳癌のために、第一次乳癌を破壊及び/又は縮小させるために熱と化学療法が一緒に使われても良い。それにより乳房切除候補の患者を何とか乳房を保存する方向である腫瘍塊除去手術へと変える。ある場合には、患者は乳癌治療処方計画の一部として手術前化学療法を必要とする場合がある。このことは必然的にNSABP B−18におけるものとして標準手術前、手術後化学療法実施に従って管理された化学療法の4つのサイクル又はコースを伴うものである(フィッシャーほか(Fisher et al.),1997年、臨床腫瘍学ジャーナル(J. Clinical Oncology)、Vol.15(7)、2483〜2493頁;とフィッシャーほか、1998年、臨床腫瘍学ジャーナル、Vol.16(8)、2672〜2685頁)。60mg/m2でのアドリアマイシン(Adriamycin)(ドキソルビシン(Doxorubicin))と600mg/m2でのシトキサン(Cytoxan)(シクロフォスファミド(Cyclophosphamide))の各サイクルが21日毎に行われる。臨床検査で腫瘍の大きさが測られ化学療法のサイクル毎に初めに超音波撮像が行われる。本発明の一実施形態では、集中マイクロ波フェーズアレイ温熱療法期間は手術前AC化学療法の第1、第2及び第3コース実施と同じ日又はAC化学療法実施の36時間以内に実施することが出来る。AC化学療法の残りの(第4の)サイクルというのはそこで皮膚の温熱療法による副作用 (例えば皮膚の火ぶくれ)を散らすために十分な時間を与えるため、温熱療法なしに実施されることになる。化学療法の第4サイクル完了後に初めて乳房切除をするか或いはより保存の方向の乳房手術がなされるべきかを決めるため乳房についての最後の査定を行う。乳癌のためのドキソルビシン及びドセタキセル(Docetaxel又はFAC)(5−フルオロウラシル(Fluorouracil)、ドキソルビシン及びシクロフォスファミド)のような他の組み合わせの乳癌のための化学療法治療が乳癌の新しい補助の治療として温熱療法と組合わせることが出来よう。出願人はまた、化学療法を注入する前の乳房腫瘍を収縮するために温熱療法を化学療法前に適用することが可能ではないかと想定するものである。
【0051】
手術前AC化学療法は乳癌腫瘍の約80%にいくらかの収縮を齎すことが知られている。腫瘍収縮は通常AC化学療法の第1コースが終わってから認められ典型的にはAC化学療法の第1コース完了の約21日後、超音波撮像で観察される。AC化学療法そのものによるのと同じだけ温熱療法とAC化学療法の組合わせで腫瘍を収縮させたことを証明する十分なデータはない。このように、別の実施形態では、大きな収縮を観察するために温熱療法を実施する前に少なくとも化学療法の1投与量を実施するのが望ましい。もし3つの温熱療法コースが用いられるなら温熱療法は手術前化学療法の第2、第3及び第4コースと同じ日又は36時間以内に実施されることになる。もし2つの温熱療法コースが用いられるときは、温熱療法は手術前の化学療法の第2及び第3コースもしくは第3及び第4コース、又は化学療法の第2及び第4コースと同じ日又は36時間以内に実施される。
【0052】
化学療法実施後、温熱療法が適用されて腫瘍温度は43〜46℃の間となり、腫瘍は1治療あたり約50から100分の当量熱線と約100〜300キロジュールのマイクロ波エネルギー線量を受ける。第4であり最後の化学療法の最後にその患者が乳房切除を受けるか乳房保存のための部分乳房切除(腫瘍塊除去術)を受けるかの決定が患者がその研究に氏名登録されたときに用いられたものと同じガイドライン(即ち、腫瘍の大きさ及び位置、乳房の大きさ、患者の健康ならびに患者の年齢)に基づいて行われる。手術前の温熱療法養生に続いて、通常の標準治療(投薬及び放射線治療を含む)が全ての患者に与えられる。医師の裁量でエストロゲン受容体が陽性の患者は化学療法の最後の回の翌日から始めて5年間毎日2回10mgのタモキシフェンTamoxifenを受ける。更に、乳房組織とリンパ結節に対し放射治療が望ましい患者の標準治療の一部として与えられる。
【0053】
良性の乳房病変の温熱療法
セルシオンコーポレーションマイクロフォーカスAPA1000(Celsion Corporation Microfocus APA 1000)の乳房温熱療法システムによって行われた悪性乳房病変についての最近のフェーズII臨床温熱療法は乳癌と良性乳房病変(嚢腫)が熱のみの治療からのかなりのダメージを明らかにした。これらの臨床治療に基づけば、約47〜50℃の範囲から約55℃までの腫瘍温度が良性乳房病変の完全除去のために必要となるであろう。上の腫瘍温度に加えて360分までの当量熱線量と400キロジュールまでのマイクロ波エネルギー線量とが良性の乳房病変を除去する。通常、鎮痛剤(ナプロキセン ナトリウムNaproxen Sodium 錠 220mg)が良性乳房病変の痛みを有する患者の苦痛に対し与えられるものであり、本発明による好ましい方法でも1つ又はそれ以上の温熱療法治療が苦痛を和らげるための鎮痛剤とともに与えられる。
【0054】
初期の乳癌予防のための温熱療法と薬剤療法
乳癌予防のための最近の治療の標準は予防としての乳房切除(乳房の外科的除去)又はタモキシフェン治療である。タモキシフェン(及びラロキシフェンのような他の薬剤)は抗エストロゲン剤であり、エストロゲン受容体に固着性を有しエストロゲンが乳癌と結びつくのを防いでいる。即ち、タモキシフェンがエストロゲン受容体を遮断することでエストロゲンの吸収を遮断し、それによってエストロゲンが乳癌に結合するのを防いでいる。NSABP P−1乳癌予防試行において、13,175人の参加者がタモキシフェン(5年間毎日20mg)か偽薬のどちらかを受け取った。侵襲性乳癌の危険が全体として49%減少するのがタモキシフェン(商品名ノルバデックス(Nolvadex))グループに見られた(フィッシャーBほか(Fisher B.、「乳癌予防のためのタモキシフェン(Tamoxifen For Prevention of Breast Cancer):乳房と内臓の全米外科補助薬プロジェクトP-1研究(Report of the National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project P-1 Study)」ナショナル癌研究所ジャーナル(Journal of National Cancer Institute)、Vol.90、1371〜88頁、1998ねん;モロウ M.(M. Morrow)とヨルダン V.C.(Jordan V.C.),「高危険度女性の乳癌予防のためのタモキシフェン」(Tamoxifen for the Prevention of Breast Cancer in High-risk Woman) 腫瘍学外科年報(Annals Surg Oncol、Vol.7(1)、67〜71頁、2000年)。タモキシフェンによる予防治療に温熱療法を加えるとエストロゲンをブロックする量が増加し、それによって乳癌のエストロゲン受容体に吸収配布されるエストロゲンの量を減少させ侵襲性乳癌の危険を更に減少させるというのが新しい仮説である。エストロゲンをブロックする程度はエストロゲン受容体を破壊したり変容させたりすること及び/又は熱で直接乳癌を抹消することによって達成される。
【0055】
それに代わり、本発明による組織の選択的照射がタモキシフェンの代わりとして用いられる。本発明による選択的照射はエストロゲン受容体を選択的に消去し逸れによってエストロゲンの吸収を遮断し、乳癌を促進する可能性のある乳癌との結果としての結合を遮断している。もし乳癌を促進するエストロゲン受容体をうまく消去できるなら、出願人はそのような熱だけでの温熱治療が、気分変動やホルモンアンバランスと関連した症状を克服するためにエストロゲン置換プログラムを女性に取らせる事が可能であろうと推定している。即ち、熱のみの温熱治療が乳癌の可能性を防止しつつホルモンの置換に用いられるのである。もしホルモン置換を用いる事が、上述のように、卵巣や子宮頸部等の他の癌の危険の増加と関るのであれば、温熱療法はタモキシフェン防止処置と併用してもよい。
【0056】
このような仮説での臨床試行において、温熱療法とタモキシフェンアーム内の患者は標準服用量のタモキシフェン(5年間毎日20mg)及び、同じ5年間中に規則的間隔での温熱療法を受ける。それに代わる仮定にもとづく臨床試行において、温熱療法とタモキシフェンアームの患者はタモキシフェンの標準薬量の半分を受療する。即ち、タモキシフェンまたは同様の薬剤を一日10mgを5年間受療し同じ5年間の間定期的な間隔で温熱療法を受ける。このような臨床試行での患者は十分に境界が限定された病変を有していないと予想されるので、領域としては単純に乳首から乳房の上底へと測定したときすべての乳癌の約70%が発生する乳房の上部を標的とする(乳房造影法−ユーザーズガイド(Mammography-A User’s Guide)、NCRPリポートNo.85、放射線保護と測定についての全国評議会(National Council on Radiation Protection and Measurement)、ベセズダ(Bethesda)、7頁、1987年)。乳房の上部を標的とする熱治療には乳房圧迫は頭蓋から尾部(頭部からつま先まで)の位置にあり、E-フィールド集中プローブは乳房の頭部側に約0.5〜1.5cmのところに位置している(中央乳房深さから測定して)。約180キロジュール(30分で合計100ワット)のマイクロ波エネルギー線量がタモキシフェン実施中約1年の間隔をあけて複数の治療の各々において乳房に対して実施される。この仮説での臨床試行のための1つのグループにはタモキシフェン治療のみを受ける患者を含んでいる。2チャンネルの夫々に約50ワットの初期マイクロ波パワーが与えられるが、これはセルシオン コーポレーションのフェーズ1とフェーズ2の適応型フェーズアレイ乳房温熱療法臨床研究の約35人の乳癌患者の治療に基づいて安全なパワーレベルであると立証ずみの値である。皮膚温センサーがモニターされ2チャンネルのマイクロ波パワーまたは単一アプリケータ治療の場合はそのうちの1つが温熱療法治療の間、皮膚温を41℃より低く保つように調節される。
【0057】
早期乳癌、局部進行乳癌、良性乳房病変、及び乳癌予防のうちの1つのためのこの発明による温熱療法治療では、皮膚温度は治療中約40〜42℃以下に留めるのが望ましい。併し、上で論じたように、腫瘍温度は約43〜50℃未満又はそれ以上の範囲になるであろう。
【0058】
セルシオンマイクロフォーカス1000外部集中適応型フェーズアレイマイクロ波システムのフェーズ1とフェーズ2の臨床試験の間、いくつかの例では、胸郭壁近くの乳房の基床の近辺での皮膚組織は所望以上に強く熱せられていたのを出願人は認めている。更に、乳房組織を機械的に圧迫すると時として圧力が最も強い圧迫板の端で非熱火傷を起こすことが見出されている。従って、本発明は譲受人の適応型フェーズアレイシステムに対しこれらの副作用を緩和及び/又は減少させる改良を提供するものである。
【0059】
腺管内癌及び腺癌と周囲乳房組織の加熱方法
図5はE−フィールド及び温度フィードバックのある適応型マイクロ波フェーズアレイ温熱療法を用いた手付かずの癌を加熱するための好ましいシステムを示している。マイクロ波周波数に確実に深くにある組織を加熱するためには体(乳房)を適応型フェーズアレイのアリゴリズムによってコントロールされた2つ又はそれ以上の繋げたアプリケータ100で取り巻く必要がある。小さい乳房の患者の場合は丁度単一マイクロ波アプリケータを使用するのが好ましい。焦点190として示してある黒い丸は、腫瘍又は治療される健康な組織を示している。好ましい実施形態では、E−フィールドフィードバックプローブ175がマイクロ波放射線の焦点を出すのに用いられ、乳房表面皮膚に付けられた温度フィードバックセンサー410が腫瘍を熱するためのマイクロ波のパワーレベルを望ましい温度に調節するために使われる。2チャンネルの適応型フェーズアレイが、X線乳房造影法に用いられるのと同じ形状に圧迫された乳房内の深い組織を加熱するのに用いられる。E−フィールドプローブは、フェンに与えられた米国特許No.5,810,888に開示されているように、マイクロ波放射を腫瘍に目標づけるために適応型フェーズアレイ高速加速勾配探査アルゴリズムとともに用いられることが望ましい。
【0060】
更に、空冷式導波型アプリケータ開口部が腺管癌及び腺癌を含む乳房組織の大きな部分を過熱出来る加熱パターンを提供するのに用いられる。導波開口部を冷却するための空気は冷蔵温度、空調温度又は室温のいずれでもよい。高水分含量組織と脂肪乳房組織の間の915MHzでの誘電パラメータの差により、高水分量の腺管及び腺癌組織は正常の乳房組織より早く加熱されると思われる。このように、治療領域は高水分含量(癌性又は前癌性の)癌腫組織と繊維腺腫と嚢腫のような良性病変に集中し、一方正常の(健康な)乳房組織はそのようなことはない。
【0061】
体即ち乳房はマイクロ波を透過するプレキシグラスのような誘電体で出来た2つの圧迫板200の間で圧迫される。乳房圧迫は傷つけていない乳房温熱療法治療のための潜在的な多くの利点を有している。乳房圧迫を利用すると深いマイクロ波加熱を達成するのに必要な浸透深さが浅くなり血流を減らして組織を加熱する能力を改善する結果を齎す。平面に乳房を圧迫することはマイクロ波アプリケータと乳房組織の間の界面及び電場カップリングを改善し、一対のアプリケータに広い範囲の乳房の治療が出来るようになる。温熱治療の間、空気で乳房圧迫板を冷却すると皮膚表面が火傷する可能性をさけるのに役立つ。20分から40分の定位固定の針を用いた乳房生検過程で用いられるような、うつぶせの姿勢を患者がとっているときに胸を圧迫することは(バセットほか(Basset et al)臨床医のための癌ジャーナル(A Cancer Jounal for Clinicians)、Vol.47、171〜190頁、1997年)、圧迫装置内の乳房組織の量を最大にする。中程度の圧迫は乳房組織を固定するので予想される患者の運動による複雑化を取除く。小さな開口部を持つことの出来る圧迫板200はX線と超音波造影技術と共存して正確に中央腺/腺管の場所を示し、侵襲性E-フィールドプローブセンサーの配置を助ける。圧迫量は20〜40分又はより長い温熱治療の間の患者の我慢強さに応じて4〜8cmの範囲にばらつかせることが出来る。乳房造影法での乳房圧迫で患者の苦痛を和らげる研究によると乳房造影法が苦痛である(非常に不快又は我慢できないと定義したときの)のは調査した560名の女性のうち僅かに8%であることを示している。この研究では、平均圧迫厚さは1.28cmの標準偏差(1シグマ)で4.63cmであった(サリバンほか(Sullivan et al.)、放射線医学(Radiology)、Vol.181、355〜357頁、1991年)。このように、中程度の乳房圧迫での20〜40分又はそれ以上の長さの温熱治療が実行可能である。
【0062】
温熱治療前に、乳房は圧迫板200の間で圧迫され単独の侵襲性E−フィールドフィードバックセンサー175が乳房の中央の腺/腺管/腫瘍組織側(焦点190)内、マイクロ波アプリケータ100の分極に平行に挿入される。E−フィールドプローブ175が移相器が適応型フェーズアレイ勾配探査型アルゴリズムを用いて最大のフィードバックシグナルのために調節されるにしたがって焦点E−フィールド振幅をモニターするのに用いられる。非侵襲性温度プローブ410は皮膚温度をモニターするために乳房皮膚表面にテープ止めされるか又は他の方法で止められている。温度プローブは通常E−フィールド分極に対し直角に向いておりマイクロ波エネルギーで熱せられないようになっている。本発明のふたつのアプリケータ適応型フェーズアレイはE−フィールド フィードバック プローブと一緒になって、移相器を調節し、集中したE−フィールドが発生して深いところの組織に加熱を集中出来るようにする。
【0063】
図6及び図14から図17までは乳房腫瘍(悪性及び良性)の治療のための外部集中適応型マイクロ波フェーズアレイ温熱療法に適用した安全手段の実施形態である。図6に示される好ましい方法では、患者は治療テーブル210にある穴を通して乳房を垂れ下がらせてうつ伏せに横たわり、治療される乳房220は平らなプラスチックの圧迫板200で圧迫され、それにより乳房組織が固定され血流が低下し、マイクロ波放射のために必要な透過深さを浅くする。治療テーブル210は金属のテーブルで患者が楽なように柔らかい詰物でカバーがしてあるフィッシャーイメージング社(コロラド州デンバー)製造等の定位固定の造影乳房針生検テーブルと同様でよい。乳房造影の目的のために金属ベッドが固い構造支持体として使われる。乳房温熱療法のために、金属テーブル210はマイクロ波放射のシールドとしても役立ち、全身とくに患者の頭と目がマイクロ波アプリケータ100から漏れたマイクロ波放射線から完全に保護される。金属テーブル210はアルミニウムもしくは鋼、又は金属箔もしくは金属網被覆したプラスチックから作ることが出来る。テーブルパッド212は発泡材であって、アプリケータからの漏れたマイクロ波放射線から更にシールドするためのマイクロ波吸収材を含むものでよい。
【0064】
乳房圧迫板はマイクロ波透過性プラスチック材からなり、1つ又はそれ以上の矩形又は円形の開口部を有し乳房組織の造影と最小侵襲性のE−フィールドフィードバックプローブ175を所望の焦点深さに配置出来るようにする。E−フィールドフィードバックプローブ175の挿入は超音波変換器によって行われる。マイクロ波の場からの皮膚障害をさらに保護するために、1つ又はそれ以上の冷風ファン(図示せず)のついた空気流180が備えられる。
【0065】
図5に示されるように、乳房皮膚表面に2つ又はそれ以上温度フィードバックプローブセンサー410が付けられ、温度フィードバック信号400を発生させる。2つのマイクロ波空冷導波アプリケータ100が圧迫板200の反対側に配置される。915MHzマイクロ波振動子105は結節107で分けられ移相器120に送られる。フェーズ制御信号125はマイクロ波信号のフェーズを0から360電気角度に亘って制御する。移相器120からのマイクロ波信号はコンピュータ生成制御信号135によって制御されるマイクロ波パワー増幅器130に送られ、初期マイクロ波パワーレベルを設定する。コヒーレントな915MHzマイクロ波パワーが2つの導波アプリケータ100に渡され、夫々のチャネル内の移相器120は最大になってE−フィールドプローブセンサー175にマイクロ波エネルギーを集中しマイクロ波パワーは焦点190で最大にされるように調節される。そこで治療が始まる。
【0066】
温熱治療の間、アプリケータ100の夫々に分配されるマイクロ波パワーレベルがフィードバック信号500として測定され、パワー制御が手動又は自動で皮膚温度や皮膚センサー410によって測定された当量熱線量を皮膚の火傷又は火ぶくれとなるような高温を避けるよう調節される。乳房圧迫量は治療中に患者が楽であるように必要なら圧迫板200によって調節される。乳房圧迫が調節されたり乳房の位置が再配置されるたびに移相器120は再調節/再集中されE−フィールドプローブセンサー175は最大のパワーを受けるようになる。治療の始めからマイクロ波アプリケータに分配されるマイクロ波エネルギーの総計は治療中コンピュータ250内で算定されコンピュータ モニター260に表示される。総マイクロ波エネルギーの所望量がマイクロ波アプリケータ100に分配されると治療は完了する。別の実施形態では、E−フィールドプローブ175によって受けたE−フィールドフィードバック信号450から算出した総マイクロ波エネルギーは治療の長さを制御するのに用いられる。治療の効率を決めるために、乳房組織の針生検からの病理的結果とともに乳房組織がX線と磁気共鳴造影を含む乳房造影法でマイクロ波総エネルギー線量が実施される前後で造影される。
【0067】
別の実施形態のように、単独の侵襲性E−フィールドプローブ175は反対側の皮膚表面に配置された非侵襲性E−フィールドプローブ185と置き換わる。その2つの非侵襲性E−フィールドプローブによって測定されたトータルのパワーはマイクロ波移相器120によって調整され最低にされ(米国特許No.5,810、888のように)乳房の中央に集中したE−フィールドプローブとなる。この実施形態では挿入したプローブによる感染の危険はなく、皮膚に孔を空けプローブを挿入擦る過程で乳房皮膚の傷跡を残す危険もなく、腫瘍床を通過するプローブによって癌細胞を拡大させる危険もない。同様に、この方法の実施形態では温度プローブとE−フィールドプローブは乳房皮膚上に配置出来るので決められた単独の地域がない場合でもこの方法はうまくいく。
【0068】
好ましくはフェーズアレイの夫々のチャンネル(結節107の夫々の側)は電気的に可変のマイクロ波パワー増幅器130(0〜100ワット)、電気的に可変の移相器120(0〜360度)及び空冷の直線偏光矩形導波アプリケータ100を含んでいる。アプリケータ100はメリーランド州コロンビアのセルシオン社で製造されているモデルナンバTEM-2でよい。TEM−2金属導波アプリケータの望ましい対の矩形の開口部の大きさは6.5cm×13.0cmである。
【0069】
好ましい実施形態が約915MHzでのマイクロ波エネルギーを開示しているが、そのマイクロ波エネルギーの周波数は100MHzから10MHzの間である。マイクロ波エネルギーの周波数は902MHzから928MHzの範囲から選ぶことが出来る。実際、より低い周波数のエネルギーを癌組織を除外又は予防するのに使うことが出来る。
【0070】
好ましい実施形態では、夫々の導波アプリケータに分配される初期のマイクロ波パワーは20から60ワットの間とすることが出来る。組織の全治療に亘って、夫々の導波アプリケータに分配されるマイクロ波パワーは所望のマイクロ波エネルギー線量を分配し皮膚を過熱するのを避けるため、0から150ワットの範囲に調節することが出来る。
【0071】
アプリケータ100の矩形導波領域側壁の誘電負荷がTEMアプリケータマイクロ波放射のため良好なインピーダンスマッチング条件を得るのに用いられる。(チェンほか(Cheung et al.)、「誘電的に封入された悪性のマウスの腫瘍の直接接触加熱用双ビームTEMアプリケータ」Dual-beam TEM appicator for direct-contact heating of dielectrically encapsulated malignant mouse tumor)ラジオ科学(Radio Science)、Vol.12、No.6(S)付録81〜85頁、1977年;ゴーセリ(編者)Gautherie (Editor), 外部温熱療法加熱の方法(Methods of External Hyperthermic Heating)、スプリング−フェルラーグ(Springer−Verlage),ニューヨーク(New York)、33頁、1990年)。1977年のチェンCheungほかの論文はマウスの腫瘍とE−フィールドプローブを続けて加熱する対向する2つのノンコヒーレントなマイクロ波アプリケータの例は彼等の実験に使われなかったことを示している。導波開口部を通る空冷は導波のための入力単極供給用の平行反射接地平面として使われる孔あき伝導スクリーンの後ろに搭載したファン(図示せず)により行われる。導波の側壁と接触している誘電スラブの厚さを考慮にいれると空冷の効果的な断面寸法はTEM−2アプリケータでは約6.5cm×9.0cmである。高水分含量腫瘍組織と正常の乳房組織との間の915MHzでの誘電パラメータの差に基づいて、高水分含量腺管癌及び腺癌ならびに良性病変は正常の乳房組織より素早く熱せられると思われる。このように50%SAR領域は正常な組織をそのままにして高水分含量組織(癌性、前癌性、繊維腺腫及び嚢腫を含む良性病変)に集中するであろう。
【0072】
好ましい実施形態では、中心導体が1cmに延びた0.9mm外径(OD)の侵襲性E−フィールド同軸単極プローブ(半剛性RG−034)が組織に向けられた電場の大きさを測定するのに用いることが出来、治療前に電気移相器のために必要な相対フェーズを決定するのに用いられるフィードバック信号を提供することが出来る。この種の同軸供給単極プローブは圧迫した模擬乳房の直線偏光電場の正確な測定をするのに用いられてきている(フェンほか(Fenn et al.)「電磁適合性についての国際シンポジューム (International Symposium on Electromagnetic Compatibility)1994年5月17日−19日、566〜569頁」、フェンほか(Fenn et al.)、温熱国際ジャーナル(International Journal of Hyperthermia)、Vol.10、No.2、3月〜4月189〜208頁、1994年)。この直線偏光E−フィールドプローブが外径1.5mmのテフロン(登録商標)カテテール内に挿入される。熱電対プローブ(フィジテンプ インスツルメント、Physitemp Instrument.Inc,外径0.6mmテフロン(登録商標)カテテールに封入したT−タイプ銅コンスタンタン)が治療中腫瘍内の局部温度を測定するのに用いられる。これらの温度プローブは0.1℃の精度で100msの応答時間を有している。
【0073】
圧迫した生体乳房組織の加熱テスト
譲受人セルシオン社によって実施された1999年12月に始まったFDA承認のフェーズ1臨床研究の一部として最大寸法が3〜6cmの間の乳房腫瘍をもつ何人か志願した患者がE−フィールドプローブと温度プローブの両方が乳房裁縫に挿入される適応型マイクロ波フェーズアレイで治療された。患者は40分の温熱療法を受け約1週間後に乳房切除を受けた。この臨床研究はマイクロ波アプリケータに分配されたパワーの測定を含み、それが分配されたマイクロ波エネルギー線量の算出に用いられるが治療の継続時間を制御するのに用いられるわけではない。このフェーズ1の臨床研究に関するより詳細な情報はガードナーほか(Gardner et al.)、「初期乳癌のための集中マイクロ波フェーズアレイ温熱療法」(Forcused Microwave Phased Array Thermotherapy For Primary Breast Cancer) 腫瘍学外科年報(Annals Surg Oncol), Vol.9(4)、326〜332頁、2002年5月6日.
【0074】
E−フィールドプローブはフェンに与えられた米国特許No.5,810,888に開示されているように、腫瘍側にマイクロ波放射を標的とするよう適応型フェーズアレイ高速加速勾配探査アルゴリズムとともに用いられた。腫瘍内の侵襲性温度プローブによって検知された温度は治療中リアルタイムフィードバック信号として用いられた。このフィードバック信号は可変パワー増幅器のマイクロ波出力パワーレベルを制御するために用いられたが、腫瘍側の集中温度を43〜46℃の範囲に設定維持した。フェーズアレイの2つのチャンネルに分配されたパワーとフェーズはコンピュータ管理のもとに適応するようにディジタルアナログ変換器を用いて調節された。
【0075】
乳房圧迫板は低損失誘電材でマイクロ波場に対し殆ど透過性を有するアクリル材(プレキシグラス)から出来ている。圧迫板は1辺が約5.5cmの四角の切り抜き(開口部)を含み、最低限に侵襲性のプローブ(E−フィールド及び温度)の設置を助けるため小さな超音波変換器(公称長さ4cm)を収容する。切り抜きは皮膚を冷やす空冷も改善する。
【0076】
適応型マイクロ波フェーズアレイ治療での最近のマイクロ波温熱療法臨床テストからの結果に基づき、4.5〜6.5cmに圧迫された生体乳房組織において、138kJ(キロジュール又はkW秒に相当する)と192kJの間のマイクロ波エネルギー線量が下の表1に挙げられているように43℃に対応する24.5分から67.1分にわたる当量熱線量を作り出すことを出願人が認めた。
【表1】
【0077】
このように、総マイクロ波エネルギー線量は必要な加熱時間の推定に用いることが出来る。即ち、非侵襲性当量温度検知手段が侵襲性温度プローブの代わりとなるうることと、総マイクロ波エネルギー線量が治療の持続時間を管理するのに確実に用いることが出来ることを出願人は認識した。表1において、平均熱線量は45.1分であり平均総マイクロ波エネルギーは169.5kJである。これら4つのテストで、最大エネルギー値(192.0kJ)は平均から13%だけ変わり、最低エネルギー値(138.0kJ)は平均から14%だけ変わる。前に述べたように、これらのテストで用いられる乳房圧迫は血流を減少させ、治療のために必要とされるマイクロ波エネルギーへの血流の影響を除去するかもしれず、これらのテストで必要とされるエネルギーの小さな変化を説明するのを助けている。これら4つのテストの治療後の造影では一般に腫瘍にかなりのダメージがあるのを示しているが、一方 皮膚、乳房脂肪ならびに正常な腺、腺管及び連結部の組織には殆ど又は全くダメージがないのを出願人は認めている。
【0078】
本方法の好ましい実施形態によれば、治療の完了を決めるために導波アプリケータに分配される総マイクロ波エネルギーは25キロジュールから250キロジュールである。癌又は前癌組織を破壊するマイクロ波エネルギー線量の総量は約175キロジュールとなろう。併し、ある条件では必要とされるマイクロ波線量は25キロジュールと低い。本発明による別の実施形態では、400キロジュールもの高いマイクロ波エネルギー線量が癌性腫瘍細胞を完全に破壊するのに使われることもある。
【0079】
下の表2は、4つのテストの乳房組織圧迫厚さを挙げている。なお最小の圧迫厚(4.5cm)は分配される最小のエネルギー線量(138kJ)に相当し、この2つのことはテスト4で起こっている。出願人が認め理論的に下記のように証明されるように、癌性、前癌性、又は良性病変を予防あるいは破壊するのに効果的な治療にとって、圧迫厚さが小さいほど、マイクロ波エネルギー線量の必要量も少なくてよい。
【表2】
【0080】
これらの臨床研究から、治療される場所にエネルギーが集中出来るように2つのアプリケータの間の適切なマイクロ波フェーズと同様、夫々のアプリケータに分配されるマイクロ波パワーレベル(P1、P2)として適切な初期レベルを選ぶことが大切であることが明らかになった。圧迫した乳房の実験から表3に挙げたように4つのテストのために次のデータが得られた。
【表3】
【0081】
表1と表3から見られるように、夫々のアプリケータへの30〜40ワットの初期マイクロ波パワーがかなりの熱線量を達成するのに十分であった。更に、アプリケータ間の初期相対マイクロ波フェーズは−10電気角度から−180電気角度まで変わり、常にマイクロ波放射線をE−フィールドセンサーで捉えていることを除いて特定の方向を追うことはない。
【0082】
表2と3における夫々同じような圧迫厚さ6.5cmと6.0 cmに対し、マイクロ波パワーレベルは治療始めの数分間一定に保たれる。これは腫瘍の中の直線的な温度上昇を測定するためで、このことが実際SARの数値を与えている。30ワットのパワーで腫瘍内で1℃の温度上昇を得るには2.5分かかることが判った。パワーが40ワットだと1℃温度が上がるのに1.5分かかる。
【0083】
温熱治療の間、数分以上も41℃をかなり超える温度にならないように皮膚温度をモニターする必要がある。皮膚のための当量熱線量が算出され(セパレトほか(Separeto et al.)、放射腫瘍学生物物理学国際ジャーナル(International Journal of Radiation Oncology Biology Physics) Vol.10、787〜800頁、1984年)フィードバック信号として使用できる。一般に数当量分熱線量以上の分配を避けることが必要である。本発明によって高い皮膚温度を避けることは治療中手動又は自動コンピュータ制御のいずれかでアプリケータに分配される個別のパワー(P1、P2)を調節することによって達成される。
【0084】
治療前及び治療中、マイクロ波エネルギー線量を計画し調整するためにドップラー超音波法が腫瘍及び周囲の乳房組織の血流を測定するのに用い得ることを出願人は認めている。例えば、乳房が圧迫され且つ/又は腫瘍が治療温度に熱せられたときに、腫瘍血流速度が低下するが、そのときエネルギー線量は少なくてよい。一方、乳房腫瘍組織の針生検からの水分及び誘電パラメータが測定され、治療前必要なマイクロ波エネルギー線量を決定するのに用いることが出来る。例えば、腫瘍の中の水分含量と電気伝導度が高ければ高いほど必要なマイクロ波エネルギー線量は低くてよい。上記変数に加えて、腫瘍の大きさはマイクロ波エネルギー線量の必要量に影響を及ぼす。腫瘍が大きければ大きいほどより小さな腫瘍より加熱がさらに困難になり、より大きなマイクロ波エネルギー線量が必要になる。腫瘍の加熱性を評価するための少量のマイクロ波エネルギーを分配した初期治療計画期と続いての必要なマイクロ波エネルギー線量全部を使っての完全治療が行われる。
【0085】
単純化したマイクロ波放射理論
体の近くの場における温熱治療アプリケータからのマイクロ波エネルギーはアプリケータからの半径距離rの逆数として一部が変化する電場の大きさを有する球面波として放射する。更に、その振幅は胴体組織の減衰定数αと胴体内を横切る(即ち深さ)距離dの積の指数関数として崩壊する。電場フェーズはフェーズ伝播定数βと距離dの積によって距離とともに直線的に変化する。単純化するために、対向する2つのアプリケータをここでアプリケータの放射はおおよそ平面波によるという仮定に基づいて解析する。数学的には組織における深さに対する平面波の電場はE(d)=E0exp(−αd)exp(−iβd)で与えられ、ここでE0は(一般に振幅とフェーズ角度で表される)表面電場であり、iは虚数である(フィールドとハンド(Field & Hand)「臨床温熱治療の実際についての紹介」(An Introduction to the Practical Aspects of Clinical Hyperthermia), テイラーとフランシスTaylor & Francis、ニューヨーク(New York)263頁、1990年)。
【0086】
915MHzのマイクロ波周波数での平面波電磁エネルギーは、腺管や腺乳房腫瘍のような高水分含量組織で1cmあたり約3dBの割合で減衰し、正常の乳房組織で約1cmあたり約1dBの減衰である。このように、1つの放射線アプリケータは深い組織に放射するエネルギーに較べて介在する表面の体組織に吸収されるマイクロ波エネルギーの重要なフラクションを有しており、表面組織にホットスポットを造るようである。皮膚表面の空気又は水による冷却は最大で0.25〜0.5cmの深さまでしか皮膚を保護しないので、ホットプレートを避けるためには、最初のアプリケータと同じマイクロ波放射振幅を有する第2のフェーズコヒーレントなアプリケータを導入する必要がある。その第2のフェーズコヒーレントなアプリケータは深い組織に分配するパワー(従ってエネルギー)を理論的には1つのアプリケータと較べて4倍と増加させることが出来る(フィールドとハンド、290頁、1990年)。
【0087】
2つ又はそれ以上のアプリケータ(フェーズアレイとして知られる)からの電磁放射のフェーズ特性は異なった組織に分配されるパワーの分布にはっきりした影響を有することがある。均一な組織における相対比吸収率(SAR)は電場の大きさの平方に近いものである1/2E1/22。SARは与えられた時間間隔に亘る温度上昇に比例している。簡単化したケースとして、マイクロ波放射が中央の組織側に集中している均一な乳房組織が下に詳細に描かれている。フェンほか「電磁適合性についての国際シンポジュームInternational Symbosium on Electromagnetic Compatibility」仙台、日本、10号、No.2、1994年5月17〜19日、566〜569頁、に記載されているように、模擬乳房内の多数のマイクロ波信号の影響は無視することが出来る。
【0088】
均一な正常の乳房組織(大体の誘電定数12.5で電気伝導度0.21S/m(シャウハリーほかChaudhary et al1984とジョアンズほかJoines et al.、1994からの平均値)は915MHzで約9.0cmであり、マイクロ波損失は1dB/cmである。減衰定数αは0.11ラヂアン/cmであり伝播定数βは0.69ラヂアン/cmである。(模擬体の厚さが4.5cmであるのに対し、左側に放射する単独アプリケータの電場は表面でE0であり、中央位置(深さ2.25cm)では−i0.8E0(iは90度フェーズシフトを表す)であり、そして右表面では−0.6E0である。2つのフェーズコヒーレントなアプリケータを組合わせると両表面で0.4E0の電場、中央(深さ2.25cm)で−i1.6E0の電場を与える。このように、中央SARに較べて表面が16倍もとかなり低いSARの乳房がある。乳房組織の4.5cmを通過したマイクロ波場の経験した180度フェーズシフトは、0度フェーズシフトで組織に入ってくる場を一部消去又は無効にする。中央焦点から離れたマイクロ波の破壊的な干渉により、乳房組織の表面がより低い温度になると期待される。対向する皮膚表面のより低いSARの測定と実施は効果的にマイクロ波エネルギーを乳房深く集中させる。
【0089】
本発明による適応性フェーズアレイは共通の振動子105によって供給され、E−フィールドフィードバックプローブ175にマイクロ波エネルギーを集中させるために2つの電気的に調整可能の移相器120を含む2つのマイクロ波チャンネルを用いる。この独創的な適応性フェーズアレイシステムは非適応性フェーズアレイをこえた大きな利点を有している。2チャンネルを有する非適応性フェーズアレイは理論的にその2つの波動が夫々180度フェーズ外であるか、完全にフェーズ内であるか、又は一部フェーズ外であるかによってE−フィールドが0か、最大か、中間値をとることが出来る。即ち、本発明によれば、マイクロ波アプリケータに分配されるマイクロ波フェーズは、治療前、治療中に−180度から180度まで調節可能であり乳房に集中した場をつくることが出来る。
【0090】
本発明による適応性フェーズアレイが組織内の全ての散在する構造の存在のもとに自動的にE−フィールドを集中するので、ターナーTurnerの米国特許No.4,589,423に記載された手動調節の、又は、治療前の計画的に制御されたフェーズアレイに較べて、この種のアレイはより信頼性の深く集中した加熱を提供する。更に、本発明の好ましい実施形態による適応性フェーズアレイは腫瘍の場所でE−フィールドを散らすか変えてしまうかもしれない侵襲性の金属製温度プローブを用いていない。
【0091】
マイクロ波エネルギーの算出
電気エネルギー消費量は普通キロワット時の単位で表される。数学的に、アプリケータから分配されたマイクロ波エネルギーWは、
W=ΔtΣPi. (1)
で表される (ビトロガン(Vitrogan)、電気と磁気回路の要素(Elements of Electric and Magnetic Circuits), リンハートプレス(Rinehart Press)、サンフランシスコ(San Francisco)、31〜34頁、1971年)。上記等式において、Δtはマイクロ波が測定される一定の間隔(秒)を表し、合計ΣはI番目のパワー(ワット)をPiで表す全治療間隔の総和である。
【0092】
マイクロ波エネルギーWはジュールとも呼ばれるワット-秒の単位を有する。例えば、3つの連続する60秒間隔において、もしマイクロ波パワーが夫々30ワット、50ワット、60ワットであるとき、180秒内に分配される全マイクロ波エネルギーはW=60(30+50+60)=8,400ワット-秒=8,400ジュール=8.4kJと算出される。
【0093】
厚さ(Dで表される)が変わる均一な乳房組織の中央位置に2つの対向するアプリケータによって集中される単位時間W‘(’はプライムを表す)あたりのエネルギーをよく理解するために、つぎの計算を考える。P1とP2を夫々2つのアプリケータに分配されるパワーとする。個々のアプリケータによって放射される電場はアプリケータに分配されるパワーの平方根に比例する。左右対称と仮定すると、放射された場は2つのアプリケータから中央の集中位置で同相である。夫々のアプリケータから同量のパワー即ちP1=P2=Pで平面波照射と仮定すると、中央深さで単位時間あたりの集中エネルギーは
W(D)=|E|2=4Pexp(−αD) (2)
等式(2)は表4と図7に示すように、0.11ラヂアン/cmに相当する減衰定数を有する厚さが4cmから8cmまで変わる正常の乳房組織の中央深さでの時間あたりの集中した915MHzエネルギーを算出するのに用いられた。
【表4】
【0094】
与えられたパワーレベルに対して焦点位置が皮膚の方へ移るにつれてより高いエネルギーが発生する。
【0095】
当量熱線量の算出
43℃関連累積又は総当量熱線量は、総和として算出される。(サパレトほか(Sapareto et al.), 放射腫瘍学生物物理学国際ジャーナル (International Journal of Radiation Oncology Biology Physics)、Vol.10,787〜800頁、1984年)。
【0096】
t43℃当量分=ΔtΣR(43−T)、 (3)
ここでΣは治療中一連の温度測定にわたっての総和であり、Tはその一連の温度測定値(T1、T2、T3 )であり、Δtは測定間の一定の時間間隔(秒単位と分に換算)RはTが43℃より大きければ0.5に等しく、43℃より小さければ0.25に等しい。当量熱線量算出は乳房組織及び皮膚に起こりうる熱による損害を評価するのに有用である。
【0097】
シミュレートした乳房組織におけるマイクロ波比吸収率算出の詳細
正常な乳房組織とマイクロ波放射に曝された腫瘍を有する正常な乳房組織の加熱パターンを推定するために3次元比吸収率(SAR)加熱パターンを定差タイムドメイン理論とコンピュータシミュレーシオンを用いて算出した。(タフラブ(Taflove),コンピュータによる電気力学、定差タイムドメイン法 (Computational Electrodynamics:The finite-difference time-domain method), アルテックハウス社(Artech House, Inc.)、マサチューセッツ州ノーウッド(Norwood, Massachusetts)、642頁、1995年)。図7に描かれているように、これらのシミュレーションは915MHzで作動する対向する2つのTEM−2導波アプリケータ(セルシオン社、メリーランド州コロンビア)をモデルにして行われた。アプリケータはコヒーレントに組合わせて6cm厚の均一な正常(脂肪と腺の混合)乳房組織の中央位置に放射線を集中させた。アプリケータは適応型フェーズアレイ乳房温熱療法システムでの乳房圧迫に用いられる板を模擬するプレキシグラスの薄板を通って放射すると想定している。
【0098】
個々の金属製導波が高誘電材の側壁に装填され、導波開口部内の放射線に適合し形成するのに用いられる。導波アプリケータは図8のようにE-フィールドをy方向に並べて直線的に偏光されている。3mm厚のプレキシグラスの平らな板が個々のアプリケータに隣接して導波開口部に平行になっている。対向する2つのTEM−2アプリケータの間に6cm厚の均一正常乳房組織のファントムがある。残りの容積は空気を模した立方のセルで満たされている。
【0099】
SAR分布は電場の大きさを二乗し組織の電気伝導度を掛けて算出された。SARはしばしば100%という最大SAR値に関連したレベル(50%が普通効果的な加熱ゾーンとされている)で記載されている。SARは血流と熱伝導効果を無視して単位時間当たりの温度の初期上昇に比例する。
【0100】
SARパターンは図9から13までに示すように均一正常な乳房組織に対して3つの主要な平面(xy、xz、yz)において算出される。図9は均一正常乳房組織におけるSAR側面図(zy面、z=0)パターン(75%と50%の輪郭)を示す。そのパターンは一般に釣鐘形であり、TEM−2アプリケータの間の中心にある。図10はSARパターン(75%と50%輪郭)上面図(xz面、y=0)を示す。そのパターンは3つの葉状楕円形の50%SAR領域に囲まれた小さな楕円形の75%SAR領域を示している。75%SARのサイズの小ささはこの種のアプリケータの放射した電場のモードの形によるものである。図11はSARパターン(75%と50%の輪郭)の端面図(yz面、x=0)を示す。そのパターンはほぼ導波開口部の大きさの3つの葉状楕円形の50%SAR領域に囲まれた小さな円形の75%SAR領域を示している。
【0101】
図9から11までに示した結果は深い乳房の組織の大きな容積がTEM−2導波アプリケータのある適応型フェーズアレイによって加熱でき、一方表面の組織は殆ど加熱されないことを示している。この大きな加熱場に曝されている高水分含量の組織があればその周囲の正常な乳房組織に比べ優先的に熱せられてしまうであろう。選択(優先)加熱というものを示すために、腫瘍を擬した直径1.5cmの2つの球形(誘電定数58.6、伝導度1.05S/m)が5cmの間隔をおいて正常の乳房組織に埋め込まれ、その上面図のFDTD計算が図12に示されている。この結果を図10と比較すると、SARパターンが大きく変化し2つの高水分含量腫瘍領域が選択的に加熱されることが明らかである。選択加熱の鋭さを示すためにx=0cmの所でのz軸に沿った算出SARパターンを13図に示す。2つの腫瘍のある場所に鋭いピークがあり、周囲の正常な乳房組織と比較した高水分含量の癌の選択加熱をここでも示している。繊維腺腫及び嚢腫のような良性の乳房病変にも同種の結果が予想される。
【0102】
図14は、図5の外部に集中した適応性フェーズアレイ温熱療法システムに導波アプリケータ100に適用した2つの安全手段が付いたものを示している。好ましい実施形態では、幅1から2cmの薄い金属性遮蔽ストリップ605が矩形の導波開口部600の上部を覆って漏れた放射能が胸郭壁領域に近い乳房の基床に近づくのをブロックしている。薄いマイクロ波吸収パッド610(例えば、0.125インチ厚カミングマイクロ波社 (Cuming Microwave Corporation) MT-30吸収シート、減衰40dB/インチ)が、導波アプリケータ100の全上部表面を覆う(例えば、セルシオン社TEM2導波アプリケータ)。そのマイクロ波吸収パッド610は、マイクロ波エネルギーを乳房の基床と胸郭壁領域に向けて放射しうるマイクロ波表面流を減衰又は抑えることが出来る。マイクロ波吸収パッド610は、導波アプリケータの上部表面に接着又は他の方法で付けられている。
【0103】
図15はマイクロ波加熱実験のための乳房を擬するのに用いる簡単なT形状の模擬乳房700の両側に乳房圧迫板(パドル)200が付いた外部集中適応型フェーズアレイ温熱療法アプリケータ100の側面図である。アプリケータ100はパッド610とマイクロ波遮蔽ストリップ605を有し、追加の絶縁パッド620が圧迫板200と胸郭壁又は乳房組織を支える筋肉を現す模擬乳房T700の間に置かれて付けられている。T形状の模擬体密閉箱は好ましくはプレキシグラス又は他のプラスチック材から造られ圧迫板200の一部になっている。好ましい実施形態では、圧迫板200の上部Tセクションは、図15に示すように、パッド610とパッド620の間にある距離まで伸びているのが好ましい。T形状模擬乳房700の上部は筋肉相当模擬組織を含み(Mゴースリー編者(M. Gauthrie, editor):外部温熱療法加熱の方法(Methods of External Hyperthermic Heating) スプリング−フェルラークSpringer Verlag,11頁、(シヤウ組成 Chou formlation 1990年)下部は脂肪質ダウ相当模擬組織(J.J.W.ラゲンディック(J.J.W.Lagendijk )とP.ニルソン(P.Nilsson),「温熱療法ダウ:マイクロ波/放射線周波数温熱療法過熱システムをテストするための脂肪と骨相当模擬体」(Hyperthermia Dough: A Fat and Bone Equivalent Phantom to Test Microwave/Frequency Hyperthermia Heating Systems)薬学と生物学における物理(Physics in Medicine and Biology)、Vol.30、No.7、709〜712頁、1985年)。パッド620は楽なように柔らかくなっており漏れたマイクロ波エネルギーを減らすためにマイクロ波吸収材を含んでいる。
【0104】
アプリケータ100はギャップ領域635がアプリケータと乳房組織の間に設けられるように設計されている。ギャップ領域635はギャップに向いている外側の空気管又はファンからの空気流で乳房の夫々の側の基床と胸郭壁領域近くの領域を冷やしている。好ましい実施形態では、ロックウッドプロダクト社、オレゴン州レークオスエゴ、Lockwood Product, Inc., Lake Oswego, ORによって造られているようなフレア又は円錐形のノズルのついたプラスチックの空気管が空気の流れをギャップ領域635に導いて乳房領域を冷やすのに用いられる。
【0105】
好ましい実施形態では光ファイバー温度センサープローブ415とE−フィールド、マイクロ波集中プローブ175は互いに平行であり、1つのカテテール内に共存している。光ファイバー温度センサーの先端は腫瘍の場所又は焦点位置190内に位置し、E−フィールド集中プローブ175は圧迫板の間に測定したのと同じ腫瘍の深さに位置している。腫瘍内の光ファイバー温度センサーはフルロロプチック型でよく、非金属のものでマイクロ波エネルギーと干渉しない(M.ゴースリー編者(M.Ganthrie, editor:外部温熱療法加熱の方法(Methods of External Hyperthermic Heating) スプリング−フェルラークSpringer Verlag,119頁、1990年)。金属E−フィールド集中プローブ175は非常に細い金属の同軸ケーブル0.020インチ径(UT−20)から構成されている。E−フィールド集中プローブ175の先端部は、同軸ケーブルの外側ジャケットから約1cm延びている同軸ケーブルのセンターピンから構成されている。E−フィールド集中プローブの尖端は光ファイバー温度センサーの尖端から約0.5cmの所に位置している。
【0106】
図16は乳房が湾曲していて、より現実的な形の模擬乳房710を示す。その乳房は湾曲している。この模擬体のために、湾曲した乳房の部分は、乳房の形に合う圧迫可能な厚い模擬材が充填されたプラスチックの袋(ポリエチレン)を用いて作ることが出来る。圧迫可能な超音波乳房イメージ模擬体がマイクロ波実験にも用いることが出来る。図16において、ラベル7、8の位置は胸郭壁領域近くの乳房基床に近い皮膚表面上にある。更にこの図が示すように、金属製同軸のE−フィールド集中プローブ175の一部(皮膚のエントリーポイント下の下部)は乳房組織で遮蔽されず、2つの導波アプリケータ100によって放射されたマイクロ波エネルギーに直接曝されている。そのマイクロ波エネルギーが露出した金属製同軸ケーブルを過熱しE−フィールド集中プローブが皮膚にはいる所の皮膚の火傷を起こすことがある。そのような場合、マイクロ波集中過程が完成したあと乳房を加熱する前にE−フィールド集中プローブ175を取除くことが望ましい。好ましいE−フィールド集中プローブ175はセンターピンが伸びてモノポールアンテナを形成するような同軸ケーブルである。併し、集中プローブは、金属材かカーボン材のどちらかの平行な伝送線路に接続された単極又は双極のアンテナを用いて作成することも出来る。代わりに、集中プローブは、皮膚のエントリーポイントでの金属加熱効果を避けるため、光ファイバーケーブルに結んだマイクロ波から光に変換する変換器を有する単極又は双極アンテナとすることが出来る。光学変調器は例えばマッハツェーンダー変調器Mach Zehnder modulatorである。
【0107】
図17は圧迫板200とパッド620を有する安全性を改良した方法の詳細な3次元図を示している。圧迫板の端部210は板の垂直と水平面で直角を形成することとその端部は胸郭の壁と乳房組織に隣接しているので皮膚を傷つける原因となりうる。従って、マイクロ波吸収パッド620は端部210と胸郭壁の間に配置される。マイクロ波吸収パッド620は2つの目的に役立っている。第1にパッドは柔らかい発泡材を含み、乳房が圧迫板の端部210に対して圧迫されるに従って摩擦や圧力から乳房皮膚を守る。第2に、パッドはマイクロ波吸収材を含んでおり、近くの組織を過熱するかもしれないアプリケータ100からの漏れたマイクロ波放射線を減衰する。圧迫板200あるいはパドルは1つ又はそれ以上の矩形の開口205を有し乳房組織を造影するために皮膚に超音波変換器を接触させ、その間に、E−フィールド集中プローブと温度プローブが乳房腫瘍領域に挿入される。本発明による他の実施形態によれば、図18は導波アプリケータ100と乳房皮膚からそれている圧迫板表面に接着又はその他の方法で付けられた金属製遮蔽ストリップ615を有する圧迫板200の側面図である。
【0108】
遮蔽実験結果
上に論じたように、図15は乳房腫瘍治療のための外部から集中した適応型フェーズアレイマイクロ波温熱療法の幾何学的配置を示す。テストにおいては915MHzで放射する2つのセルシオン社TEM−2マイクロ波アプリケータが温熱療法を誘発するのに用いられた。単純化のため、患者の組織はシミュレートした乳房組織を下部にシミュレートした筋肉組織を上部に含めたT形状のプレキシグラス箱から構成した模擬体で表されている。更に、筋肉模擬組織からなる(約1.5cm直径)シミュレートした乳房組織が位置1に示されている。7つの温度プローブ(No.1からNo.7)がこれらの実験に用いられた。プローブ1は光ファイバー温度プローブであり、残りのプローブは熱電対プローブで乳房組織のシミュレートした皮膚の外側に静止している。プローブ1はシミュレートした腫瘍位置が占めている所望の焦点位置190に配置された。プローブ2と3は第1次マイクロ波場の外の圧迫パドルの上部隅に配置された。プローブ4と5は場の強さが最大のマイクロ波場の中央に配置された。プローブ6と7はプローブ4と5の上に配置されたがその場所は場の強さが低いと思われる。E−フィールド集中プローブ175もまたプローブ1と同じ深さに置かれてマイクロ波エネルギーを集中する。E−フィールド集中プローブ175と光ファイバー温度プローブ1は共通のカテテールの中に挿入された(テフロン(登録商標)、外形1.65mm)。
【0109】
夫々のチャンネルへのマイクロ波が70ワットでアレイの中の移相器は6cm厚の模擬乳房内の中央プローブ位置No.1に適応的に集中された2つの実験が行われた。最初の実験では、図5に示すようにマイクロ波吸収器又は金属製遮蔽物は用いられなかった。第2の実験では、図15に示すように、マイクロ波吸収パッドと開口部の上部(2cm)を覆う金属製ストリップ遮蔽物が用いられた。夫々の実験において、個々の測定センサーのための初期温度スロープ(1分あたりの度)は加熱の最初の30秒について算出された。
【表5】
【0110】
胸郭壁表面位置はシミュレートした腫瘍位置より早く熱くなる。このことは図19のグラフに示されている。
【表6】
【0111】
表6の結果に示すように、シミュレートした腫瘍位置は胸郭壁領域の表面を含む表面位置よりかなり急速に熱くなる。このことは図20のグラフに示している。従って、安全性を改善すると、腫瘍はさらに急速に熱くなり、センサー位置2と3の温度スロープは安全性の改善なしの場合の半分である。これら2つの実験の熱的結果は、明らかにマイクロ波吸収パッド及び導波アプリケータの上部を覆う金属製遮蔽ストリップの胸郭壁近くの表面加熱を緩和する効率を示している。センサー位置4と5での温度スロープは安全性の改善によって増加したが尚腫瘍温度スロープより少なくとも2倍低かった。追加の空気流や冷却空気は表面加熱を更に緩和する。
【0112】
小さい胸部の治療(女性と男性)
男性や女性の胸部が小さい(向かい合うフェーズアレイアプリケータによって形成された治療用開口部に較べて)か、腫瘍がフェーズアレイアプリケータの治療用開口部の外側にあるときのような場合、胸部腫瘍の加熱方法として代わるべき物を考える必要がある。図21は腫瘍が図21の点線101で示されるアプリケータの上部よりやや高い位置にあるうつぶせ状態の圧縮胸部の側面図を示している。このように、腫瘍は圧縮板200によって作られた治療用開口部のちょうど上縁に位置し、そのあたりにアプリケータ100の単極フィード104が配置されている。腫瘍の位置は男性か女性の患者の胸部が小さい結果からくるものであるか、ちょうど腫瘍が胸郭により近いのである。これらの場合、腫瘍がアプリケータ100の第一次加熱フィールドの外側にあるので、加熱は難しい。上述のように、図21の例はその患者がうつ伏せになったときの方法を示し、垂直方向はプラスのy軸で示されている。
【0113】
本発明による代替治療方法の構成は、図22に示すように、患者がうつ伏せ状態のとき乳癌を加熱するように腫瘍にむけて熱を放射するように取り付けられた単極フィード104つきの単一の空冷エネルギーアプリケータ100を用いている。アプリケータ100は単極104を内部につけた矩形または他の形の導波管であってよい。アプリケータ100の導波管の開口部は胸部の上に位置して、概要が図22から26に示されるように、腫瘍または治療する組織が導波管の中間即ち中央に、又は非常に近くにあるようにしなければならない。うつ伏せ位置でぶらさがった乳房とアプリケータ導波管100の位置の側面図が図22に示されているが乳房は小さく女性または男性のいずれかのものであろう。図22の腫瘍はアプリケータ100の第一次加熱領域の内側にあるので、単一アプリケータ100のエネルギーは比較的容易に適当な温度まで腫瘍を加熱する。この単一アプリケータ加熱方法は図5と図14と関連して上に記載されたものと同じ温度監視、アプリケータへのパワーの制御、治療の終了方法を用いている。
【0114】
アプリケータ100は非接触直接エアカップリングであるか又は低損失メディアと直接接触するか(図27と関連して下に述べられたように)のいずれかであるように設計されている。即ち、アプリケータ自体が治療される胸部の皮膚に接触するのではなく、その代わりに空気が流れるギャップ106が治療される乳房に連結を提供する。ギャップ106を通過して流れる空気の温度は状況によって冷凍空気温度から暖かい温度まで変わり異なった医薬上の効果を齎す。エネルギーを治療する胸部にカップルさせる空気の温度範囲は0℃から50℃の範囲でよい。温度変化は治療個所を事前条件出しするか、及び又は、治療した個所の治療後処理のコンディショニングに使うことが出来る。例えば、いくつかの場合には、所期の治療効果を達成するために種々の深さに皮膚または組織が冷却されるか加熱されるべきかを示唆している。
【0115】
本発明による他の実施形態では、治療中加熱された組織の温度を監視するために腫瘍の中に温度プローブを挿入してもよい。これらの温度測定は治療中マイクロ波パワーを制御するのに用いても良い。23図はx軸に沿った図で、患者はうつ伏せになり温度プローブ410が電場に対しほぼ垂直の方向に腫瘍の中に挿入されている。それに代わって、24図に示すように、患者が仰向けになり胸部腫瘍が胸部の上から加熱されてもよい。即ち、アプリケータ100はうつ伏せ状態の患者の下から、仰向け状態の患者の上まで移動しアプリケータから放射されたエネルギーが胸部940の上にあるようにしている。25図は患者があお向けになり、温度プローブ410が電場に対してほぼ垂直な方向に腫瘍の中に挿入されている、x軸に沿った図である。なお、仰向けになった患者にとって、重力のため乳房はうつ伏せの位置の乳房(重力が乳房組織を胸郭から遠去かるように引っ張る)に較べてより平らになる(重力が乳房組織を胸郭の方向に引っ張る)傾向にある。仰向け位置のほうが胸部組織を平らにして胸部皮膚に対して胸部腫瘍の深さを減少させるのに有利である。うつ伏せ位置は治療領域を胸郭領域より離れたところに保持し胸郭組織のために安全な余地を提供する点で有利である。
【0116】
ある場合には、患者がうつ伏せまたは仰向け状態のいずれかにあって、患者の胴を一周する、胸部の幅に匹敵する幅を有する布バンド1000によって、胸部を圧縮するのに有利である。図26は、患者がうつ伏せ位置にあるときに布バンドで胸部を圧縮している例を示している。この方法で胸部を圧縮すると図26に描かれているように胸部組織を平坦にし、治療される腫瘍又は組織の近辺の血流を減少させ、皮膚と比較しての腫瘍または組織の深さを減少させ、結果として治療される腫瘍または組織を加熱しやすくしている。圧縮バンドはナイロンのような薄い布タイプの材料で作られていることが好ましく、アプリケータからの空気がこの圧縮バンドを通って流れ胸部皮膚を冷却する。1つの例として、胸部圧縮バンドが治療中管状のトップガーメントとして着用されている。単一アプリケータ治療方法が圧縮つき或いは圧縮なしで或る種の患者には有利に利用されている。同様に、単一アプリケータ治療が、患者がうつ伏せ又は仰向けに横たわっている状態で行われている。単一アプリケータは胸郭のある領域を直接加熱することが出来るので女性の乳癌同様、男性の乳癌の治療や予防とこれらの癌の再発予防に有効であることが予見できる。
【0117】
小さな乳房の患者が乳癌又は乳癌予防の治療を受ける場合、単一アプリケータが腫瘍または乳癌の大部分が発生する乳房上部に向けられる。好ましい実施形態において、約90キロジュール(50ワット30分のマイクロ波パワー)のマイクロ波エネルギー線量が腫瘍塊除去術前の胸部腫瘍及びDCISのための腫瘍塊除去術に続く顕微鏡的な乳癌細胞の破壊のために乳房に与えられる。乳癌予防のためのタモキシフェン供与期間の間、約1年毎に同様な線量が多角的な治療の各々に与えられる。温熱療法治療の間、約41℃以下に皮膚温度を保つために皮膚温度センサーがチェックされ単一チャネルのマイクロ波パワーが調整される。別の実施形態では、温度センサーが治療領域内に置かれ、測定された腫瘍温度が、温熱治療アプリケータに与えられたマイクロ波パワーを、120分から240分の間の当量熱線量が腫瘍又は胸部組織治療領域に与えられるように、制御するのに用いられる。
【0118】
図27は別の実施形態を示しているが、その実施形態では、アプリケータ100が水1500のような低損失メディアで満たされ、プラスチック又は他の非伝導性の水を通さない材料から出来た袋がマイクロ波エネルギーを胸部組織に結合するため大きな水の丸薬1010を形成する導波アプリケータの口を封入している。大きな水の丸薬1010は、胸部組織を圧迫し乳房を圧縮して治療領域の血流を減少させ皮膚表面と胸部腫瘍又は治療される胸部組織の間の組織の厚み即ち距離を減少させる。その水は蒸留されるか脱イオン化され胸部組織に対する循環のために冷却又は加温される。水は当業者にとって公知の方法で接続された管(図示せず)を通して導波アプリケータ100の中及び胸部940の回りに循環することができる。
【0119】
上述のマイクロ波実施形態に加えて、電磁気、超音波、高周波、レーザーなど当業者に公知の集中エネルギー源を含むいずれかのタイプの集中エネルギーをほかの実施形態では使用出来るのではないかと出願者は予見するものである。即ち、組織のある範囲を加熱又は除去するよう集中出来るエネルギー又は集中出来る異なったエネルギーの組み合わせが出願人の発明による方法に用いることが出来る。集中したエネルギーは第1次の加熱源で、標的領域(腫瘍)での加熱効果を増進又は高める物質の注入と組合わせてもよい。その物質としては生理食塩水あるいは金属又は他の伝導物質と水を組合わせたものとすることも出来る。伝導物質とは例えば金属製外科用乳房クリップのようなもので標的領域に分配された熱の量を高める物質である。
【0120】
注入された物質は標的領域の加熱効果を高めるので、標的領域の選択加熱を得る代替手段である。従って、生理食塩水あるいは金属と水を混ぜたもの注入と組合わせた時の非集中エネルギーは十分に標的領域を加熱して癌性の細胞及び/又は良性細胞を除去するであろうと出願人は予見するものである。このように、本実施形態に用いられたエネルギーアプリケータは非集中エネルギーを分配するアプリケータであってもよいのである。本発明に基づく非集中エネルギーのみを用いるような実施形態において、E−フィールドプローブは必要ではない。
【0121】
この発明は、その好ましい実施形態を参照して詳しく示し記載されているのであるが、当業者にとって形態や詳細における種々の変化は添付された請求の範囲に規定された発明の精神と範囲から逸脱することなく可能であることは理解されるであろう。例えば、ここに記された温温熱療法システムは乳癌や良性乳房病変の治療と関係するものであるが、良性の前立腺肥大(BPH)のような良性の病気は勿論、その他前立腺、肝臓、肺、及び卵巣のような型の癌の治療にも本発明は適用可能である。同様に、ここに開示された安全手段は他の付属器官や脚、腕、胴のような人体の部分のマイクロ波又は高周波温熱療法治療に適用出来ることも理解されるであろう。
【0122】
またアレイアンテナアプリケータの数が多かろうと少なかろうと一つであろうと同じ結果が得られることも理解されるであろう。更に、ここに開示された手段はノンコヒーレントなシステムにおけるノンーコヒーレントな多重アプリケータ治療システムで用いることが出来て場に集中するプローブは必要としないことも理解されよう。乳房又は他の臓器の圧迫が望ましくない又は適切でない場合には、圧迫ステップは省略することが出来る。圧迫ステップを用いないのであれば、吸収パッドや他の金属製遮蔽機能は用いられなくても良い。ここに記載された方法及び技術のあるものは超音波温熱療法システム特にフィードバックコントロールにエネルギー線量を用いるものに適用可能である。この方法は放射線療法の効果を高め感熱リポソームを用いた標的とした薬物の配布及び/又は標的とした遺伝子配布に用いることが出来る。本発明はまた工業材又は食材の加熱に用いるような非医療温熱療法システムにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0123】
本発明は次の詳細な説明を添付した図面を参照して読むとより理解される。この図面においては全体に亘って同じ参照番号は同じ構成要素を述べているものであり、
【図1】は、女性の乳房の詳細な側面図である。
【図2】は、乳房の腺管及び腺組織の腺管癌及び小葉癌の進行例を示す。
【図3】は、正常な乳房組織と3つの異なった研究での乳房腫瘍の誘電定数と電気伝導度の測定値を示す。Bのラベルをつけた研究(バーデットBurdette)はCとJと称する他の研究の間の測定値の差を説明するための乳房皮膚を通しての測定についてのものである。
【図4】は、乳房脂肪、腺管組織/結合組織、良性繊維腺腫と乳癌(キャンプベルCampbellとランドLand1992年)の水分含有量測定値を示す。
【図5】は、圧迫下の乳房を加熱するための本発明によるシステムを示す、
【図6】は、患者がうつぶせで乳房が圧迫されていてE-フィールドプローブが乳房の所望の焦点深さに挿入されている状態を示す。
【図7】は圧迫された乳房組織の厚さの関数として算出した焦点マイクロ波エネルギーを示す。
【図8】は乳房加熱に用いられるコンピュータシミュレーションした2つの対向マイクロ波導波管アプリケーターの立体図を示す。
【図9】は、均質な正常乳房組織内の915MHzでの比吸収率(SAR)加熱パターンの中央焦点での計算で得た図の側面図を示す。
【図10】は、均質な正常乳房組織内の915MHzのSAR加熱パターンの中央焦点での計算で得た図の平面図を示す。
【図11】は均質な正常乳房組織内の915MHzのSAR加熱パターンの中央焦点での計算で得た図の端面図を示す。
【図12】は、夫々直径1.5cmでお互いに5cmはなれた2つのシミュレートした乳房腫瘍があるときの915MHzSAR加熱パターンの計算で得た端面図を示している。50%SAR輪郭が選択的加熱を示す腫瘍と並んでいる。
【図13】は、夫々直径1.5cmでお互いに5cmはなれた2つのシミュレートした乳房腫瘍があるときの915MHzSAR加熱パターン(図12の中心平面を通る)の算出した直線カットを示す。SARは選択的加熱を示す腫瘍と並んだ急勾配のピークを有している。
【図14】は、導波管アプリケータの上のマイクロ波吸収パッド及び導波管開口部の上部を覆う金属シールドをも含む追加安全機能を有する本発明による乳房温熱療法システムを示している。
【図15】は、マイクロ波吸収パッド、金属シールド、エアーギャップ、とE-フィールド集中プローブと温度プローブの組み合わせを有する単純なT型の乳房想像図を示す側面図である。
【図16】は、マイクロ波吸収パッド、金属シールド、エアーギャップ、とE−フィールド集中プローブと温度プローブの組み合わせを有する乳房形状想像図を示す側面図である。
【図17】は、垂直表面に長方形の窓とパドルの上面に付けられたマイクロ波吸収パッドを有する圧迫用パドルを示す。
【図18】は、圧迫用パドルの上部、乳房皮膚から離れて向かい合っている表面に追加された金属シールドを有する導波管アプリケータの側面図である。
【図19】は、適応型フェーズアレイアプリケータによって加熱された遮蔽パッドや吸収パッドのない単純なT型の想像図についての測定温度と時間の関係を示すグラフである。
【図20】は、適応型フェーズアレイアプリケータによって加熱された遮蔽パッドや吸収パッド付きの単純なT型の想像図についての測定温度と時間の関係を示すグラフである。
【図21】は、2つのエネルギーアプリケータの間の小さな乳房の側面図である。
【図22】は、本発明による別の加熱方法の概要を示すもので、単一のエネルギーアプリケータがうつぶせの患者の小さな乳房の腫瘍を加熱している。
【図23】は、温度プローブが腫瘍に挿入されている図22の加熱方法の側面図である。
【図24】は、本発明による別の加熱方法の概要を示すもので、単一のエネルギーアプリケータがあおむけの患者の小さな乳房の腫瘍を加熱している。
【図25】は、温度プローブが腫瘍に挿入されている図24の加熱方法の側面図である。
【図26】は、図22の加熱方法で、材料の帯が小さな乳房を圧縮する様子を図示的に示しており、そして
【図27】は、図22の加熱方法で単一エネルギーアプリケータの口にウオータカップリングボーラスバッグが付けられている様子を図示的に示している。
【背景技術】
【0001】
本発明は概して乳房組織における繊維腺腫と嚢腫のような良性の病変と同様腺管癌及び腺癌及び導管内増殖の治療のための適応型マイクロ波フェーズアレイ又はアプリケータでの温熱療法のような集中エネルギー実施のための最小侵襲型での方法に関するものである。治療される胸部組織は男性、女性いずれの患者であってもよく、本発明による方法は、このように、小さいものから大きいものまでの胸部患者を治療することが出来る。更に本発明による方法は癌と前癌又は良性腫瘍、乳房病変の発生、又は再発を防ぐため水分含有量の高い顕微鏡的には検出されないが病理学的には変質している細胞を含む健康な組織の処置に用いることも出来る。
【0002】
温熱療法で初期乳癌を治療するためには乳房の4分の1もしくはそれ以上の広範囲な組織を加熱する必要がある。全ての乳癌の約90%が乳液分泌管組織(乳管)内に発生し、残りの癌の多くは腺組織小葉(ミルクサック)に発生することが知られている(ハリスほか(Harris et al).,ニューイングランド薬学誌(The New England Journal of Medicine)、Vol.327,390〜398頁、1992年)。乳癌はしばしば乳房の広い部分を含み、それに対する現在使われている従来からの治療法は局部的には失敗の可能性がかなり高い(シュニットほか(Schnitt et al.)、癌 (Cancer)、Vol.74(6),1746〜1751頁1994年)。T1(0〜2cm)又はT2(2〜5cm)癌として知られている早期乳癌では、全乳房が危険な状態に曝されており乳房組織内の(顕微鏡又は乳房造影法の助けなしには肉眼では見えない)微小な癌細胞の疑いのあるものを破壊するため全乳房照射と組合わせた乳房保存手術でしばしば治療される(ウインチェスタほか(Winchester et al.),臨床医のためのCA-A癌ジャーナル(CA-A Cancer Journal for Clinicians)、vol.42,No.3,134〜162頁,1992年)。癌が腺管のいたるところに拡がっている広範囲な導管内要因(EIC)による侵襲性腺管癌に対して治療を成功させることは乳房の大部分を処置しなければならないので特に困難である。疑わしい病変についての800,000件以上の乳房針生検が米国で毎年行われ、約205,000件の癌が検出され、残りは繊維腺腫と嚢腫などの非悪性のものである。アメリカ癌協会では、2002年の米国での新しい乳癌患者数は女性患者で203,500件、男性患者で1500件と推定している(癌実体と様相2002、アメリカ癌協会、アトランタ、ジョージア、4頁、2002, (Cancer Facts & Figures 2002, American Cancer Society, Atlanta, Georgia, p.4, 2002))。
【0003】
乳癌の治療に熱を使用することは色々な方法で効果を出すことが出来るが、殆どの場合熱治療が乳房の広く離れた領域にまで同時に到達できなくではならない。乳房の広い領域を加熱することは、乳房の微小な癌細胞の多く又はすべてを破壊することが出来、癌の再発を減らすか防止出来る。同じやり方が放射線治療にも用いられ微小な癌細胞のすべてを消滅するために乳房全体がx線で照射される。腫瘍塊除去術前に腫瘍を加熱し腫瘍細胞の大部分又は全てを消滅させることは腫瘍塊除去術治療の時に生存可能な癌細胞を気付かずに植え付けてしまう可能性を減らすことが出来、乳房の局所的再発を減らしている。時として冒された乳房はマルチフォーカル癌として知られる2つ又はそれ以上の腫瘍の塊が乳房に分布して含まれることがあり、この場合も加熱は乳房の広く離れた領域に達していなければならない。局所的に進行した乳癌(T3として知られる)は大きさが5cm又はそれ以上になることがあり、しばしば乳房切除が施される(スマートほか(Smart et al.), 臨床医のための癌ジャーナル(A Cancer Journal for Clinicians)、Vol.47,134〜139頁1997年)。局所的に進行した乳癌の手術前の温熱療法治療は腫瘍を十分収縮させて外科的な腫瘍塊除去術処理を可能とさせている。その方法と同様、手術前化学療法が最近用いられている。局所的に進行した乳癌の手術前温熱療法治療は腫瘍を完全に破壊して手術は何ら必要としなくしている。
【0004】
マイクロ波エネルギーは脂肪の多い乳房組織のような低水分含有組織への加熱に較べ、乳房腫瘍や嚢腫のような高水分含有組織を優先的に加熱することが出来ることは公知のことである。マイクロ波帯域での電磁エネルギー吸収によって誘起されたハイパーサーミア(高温)が人体の悪性腫瘍の治療における放射療法の効果を著しく高めることが多くの臨床学的な研究によって確立されている。(バルダニほか(Valdagni,et al.),放射腫瘍学生物物理学国際ジャーナル(International Jounal of Radiation Oncology Biology Physics),Vol.28,163〜169頁1993年;オーベルガールほか(Overgaar et al.),温熱療法国際ジャーナル(International Journal of Hyperthermia)、Vol.12,No.1、3〜20頁1996年;ベルノンほか(Vernon et al.),放射腫瘍学生物物理学国際ジャーナル(International Journal of Radiation Oncology Biology Physics),Vol.35,731〜744頁1996年;ファン デア ジーほか(van der Zee et al.),イタリーのローマでの4月9日から13日の温熱腫瘍学第7回国際大会議事録(Proceedings of the 7thInternational Congress on Hyperthermic Oncology) Vol.II,215〜217頁1996年;フォークとイセルス(Falk and Issels)腫瘍学における温熱療法(Hyperthermia in Oncology、温熱療法国際ジャーナル(International Journal of Hyperthermia), Vol.17,No.1、1〜18頁2001年)。Sフェーズ細胞のような耐放射細胞は高温に昇温することによって直接消滅させられる(ホール(Hall), 放射線学者のための放射生物学(Radiobiology for the Radiologist)、4th Edition, ジェービー リッピンコット社(JB Lippincott Company) フィラデルフィア(Philadelphia)、262〜263頁1994年;ペレツとブラディ(Perez and Brady)、放射腫瘍学の原理と実際(Principles and Practice of Radiation Oncology、2nd Edition、ジェービー リッピンコット社(JB Lippincott Company)、フィラデルフィア(Philadelphia)、396〜397頁1994年)。マイクロ波放射装置での温熱療法治療は通常いくつかの治療期間で実施され、そこで悪性腫瘍は約60分間約43℃に加熱される。腫瘍細胞を消滅させる時間量は約43℃を超えた1度あたりの温度増加に対し2分の1の割合で減少することが知られてられている。(サパレトほか(Sapareto et al.), 放射腫瘍学生物物理学国際ジャーナル (International Journal of Radiation Oncology Biology Physics), Vol.10,787〜800頁、1984年)。このように、43℃で60分の治療は45℃で僅か約15分に減らすことが出来る。これはよく等価線量と呼ばれる(t43℃当量分)。また温熱療法は化学療法の効果を高めることも臨床的に確立されている(フォークとイセルス (Falk and Issels)、2001年)。非侵襲性マイクロ波アプリケータで治療するとき、周囲の表面の健康な組織を好ましくないホットスポットによる痛みや損傷から防ぎつつ、やや深めの腫瘍を適切に加熱することは困難であることが判っている。組織内での比吸収率(SAR)は組織の加熱を特徴づけるのに用いられる共通のパラメータである。SARは与えられた時間の間の温度上昇に比例し、マイクロ波エネルギーの場合、SARはまた電場の2乗に組織の電気伝導度を掛けたものに比例する。SARの絶対値の単位はキログラムあたりのワット数である。
【0005】
非干渉性アレイ又は非適応型フェーズアレイの温熱療法治療システムは一般的に表面の腫瘍を加熱出来るが、深い腫瘍又は深い組織の加熱のための使用には制限を受ける。というのは、このシステムは介在する表面組織を過熱する傾向がありそれが痛みや火傷の原因になりうるからである。本発明のTEM空冷マイクロ波導波管アプリケータの譲受人での単一アプリケータ温熱療法治療が再発乳癌(胸郭癌)を含む表在性癌の治療に有効であった(シンディッヒ、Hら、(Shindig,H. et al.), 放射線治療と連結した温熱療法の臨床経験 (Clinical Experience with Hyperthermia in Conjunction with Radiation Therapy),腫瘍学(Oncology)、Vol.50,353〜361頁、1993年)。深い組織用温熱療法のための非適応型フェーズアレイについて記した最初に出版されたレポートは、理論上の研究によるものであった(ホンヒッペルほか(von Hippel et al.)、マサチューセッツ工科大学 (Massachusetts Institute of Technology)、断熱研究室(Laboratory for Insulation Research)、テクニカルレポートTechnical Report)13、AD-769843、16〜19頁1973年)。ロドラー(Rodler)に与えられた米国特許No.3,895,639には2チャンネル及び4チャンネル非適応型フェーズアレイ温熱療法回路が記載されている。最近の加温療法システムについての発展では、元来はマイクロ波レーダーシステムのために開発された適応型フェーズアレイ技術を使って深い組織に熱を配布することを効果的に目指している。(スコルニック(Skolnik), レーダーシステムへの導入(Introduction to Radar System)、第2版、マックグローヒル出版 (McGraw-Hill Book Company)、332〜333頁、1998年, コンプトン(Compton),適応型アンテナ、コンセプトと性能 (Adaptive Antennas, Concepts and Performance)、プレンティスホール(Prentice Hall)、ニュージャーシー(New Jersey)、11988頁;フェン(Fenn),アンテナと伝播についての米電気電子学会IEEEの取扱い (IEEE Transactions on Antennas and Propagation)、Vol.38号 No.2、173〜185頁、1990年;米国特許No. 5,251,645; 5,441,532;5,540,737; 5,810,888)。
【0006】
バッセンほか(Bassen et al.)、ラジオ科学(Radio Science)、Vol.12,No.6(5)1977年11月-12月15〜25頁、には電場プローブが組織内の電場パターンを測定するのに用いることが出来ることを示し、特に測定した電場が中央組織に焦点ピークを有する数例を示している。この論文ではまた、生体試料における電場のリアルタイムの測定についての概念を論じている。しかしバッセンらは、適応出来るようにフェーズアレイに焦点をあてるのにリアルタイム電気プローブを用いた電場測定の概念は展開していない。
【0007】
適応型フェーズアレイ温熱療法システムはE−フィールドフィードバック測定を用いてそのマイクロ波エネルギーを深い組織に焦点をあて、同時に周囲の健康な体組織を過熱するかもしれないエネルギーを無効にする。臨床前研究では、適応型マイクロ波フェーズアレイが深い胴と乳房に対し表面組織を過剰な温度にあてるのを避けつつ深い熱を配布する可能性を有していることを示している(フェンほか(Fenn et al.), 温熱療法の国際ジャーナル(International Jounal of Hyperthermia)、Vol.10、No.2、3月−4月189〜208頁、1994年;フェンほか(Fenn et al.), 腫瘍学管理ジャーナル(The Journal of Oncology Management)、Vol.7、No.2、22〜29頁、1998年)また乳房の表面組織については次の文献に報告されている:フェン(Fenn)、エネルギー源会議の外科的な応用の経過(Proceedings of the Surgical Applications of Energy Sources Conference),1996年;フェンほか(Fenn et al.),温熱療法の国際ジャーナル(International Journal of Hyperthermia)、Vol.15、No.1、45〜61頁、1999年;ガブリロフほか(Gavrilov et al.),温熱療法の国際ジャーナル(International Journal of Hyperthermia)、Vol.15、No.6、495〜507頁、1999年。
【0008】
マイクロ波エネルギーを用いた深い乳房組織における温熱療法実施の最も困難な面は、皮膚の火傷を防ぎつつ一定の深さで十分な加熱をすることである。侵襲性及び非侵襲性電場プローブ付きの非侵襲性多重アプリケータ適応型マイクロ波フェーズアレイが参考のためにここに組み込まれている米国特許No. 5,251,645;No. 5,441,532;5,540,737とNo.5,810,888に記載のように健康な組織には適応ゼロを形成して腫瘍位置に適応する焦点ビームを作り出すのに用いられる。理想的には、集中したマイクロ波の放射ビームが、周囲の健康な組織には最小のエネルギーを配布するなかで、腫瘍に集中される。治療中マイクロ波パワーを制御するために、温度検知フィードバックプローブが腫瘍に挿入される(サマラほか(Samaras et al).第2回国際シンポジュームの経過(Proceedings of the 2nd International Symposium)), エッセン(Essen)、ドイツ(Germany)、1977年6月2日〜4日、アーバンアンドシュバルツェンベルグ(Urban & Schwarzenberg)、バルチモア(Baltimore))、131〜133頁、1978年)が、プローブを正確に腫瘍の中に位置づけるのは時として困難である。さらに困難なことは、乳房腺管や腺組織全般に拡散した癌に温熱療法を加えるときに起こる。それは温度検知するフィードバックプローブ用によく規定された標的位置の欠如によるものである。その他の場合、プローブが腫瘍領域を通過するときに癌細胞を感染又は拡散する危険を減らすために単に乳房組織にプローブ(温度かE−フィールドのいずれか)を挿入するのを避けるだけでも望ましい。
【0009】
検出された良性嚢腫の治療のための医療の標準はなにもしないことから嚢腫の枯死までと、さまざまである。嚢腫を治療しないことが医学的に許される立場というのが存在するがこれは嚢腫を除くための唯一の既知の方法が侵襲性外科手術ということになるからである。外科的に嚢腫を切って取り除くことの代替案は嚢腫を枯らすことである。嚢腫を枯らすには嚢腫に孔をあけ嚢腫内部の水を除去するのである。この方法は嚢腫に伴う痛みを一時的に和らげることが出来るが、この枯渇治療が全嚢腫を取り除き損なったときは嚢腫はまた成長してくる可能性がある。それ故、これらの良性嚢腫の非侵襲性除去が必要である。
【0010】
上記欠点は乳房の癌状態を加熱するための本発明の方法の譲受人によって解決されたがその方法は、E−フィールドプローブセンサーを乳房に挿入し、皮膚表面の温度をモニターし、二つのマイクロ波アプリケータを乳房の向かい合った側に向け、挿入したE−フィールドセンサーに場を集中させるために初期マイクロ波パワーとフェーズを夫々のマイクロ波アプリケータに配布し、乳房に配布されるマイクロ波パワーをモニターした皮膚温に基づいて調整し、治療される乳房に配布されるマイクロ波エネルギー線量をモニターし所望の全マイクロ波エネルギー線量がマイクロ波アプリケータによって配布されたときに治療を完了するステップから構成されている。
【0011】
更に、本発明の譲受人による上記方法は温度フィードバックセンサーを置くのに決まった場所がないとき、又は温度プローブを乳房組織に挿入するのを避けるほうが望ましい場合のような状態にたいして適用される。譲受人によって教示された好ましい方法ではただ単独の最小侵襲性E−フィールドセンサーが必要である。このように進行した乳癌の場合(即ち5〜8cmの腫瘍)、この方法は乳癌細胞のかなりの部分を破壊することが出来て、腫瘍や病変を収縮させ(例えば2〜3cmに熱縮小)それにより乳房切除の外科手術を腫瘍塊除去手術に置き換えてしまうのである。その他全体が進行した乳癌病変が破壊され手術が不要になることもある。早期の乳癌や小さな乳房病変には譲受人の方法は乳癌細胞又は良性病変のすべてを熱で破壊し(即ち熱腫瘍塊除去術)、それにより腫瘍塊除去外科手術を避けることが出来る。なお、この方法は放射線療法を高めるために用いられ又は米国特許No.5,810,888に記載のように感熱性リポソームで標的とした薬物配布、及び/又は標的遺伝子療法配布に用いられる。譲受人の方法は最近開発された感熱リポソーム配合と米国特許No.6,200,598「感熱リポソーム配合(Temperature Sensitive Liposomal Formulation)」ニードハム(Needham)に2001年3月13日交付に記載のドキソルビシンのような化学療法剤と共に用いられるが、そこでは薬剤は約39℃〜45℃の温度で放出される。
【0012】
上記の譲受人の方法は乳房の正常な腺、腺管、結合組織や脂肪組織はそのままにして癌細胞を破壊する。このように本発明による温熱腫瘍塊除去術はそのような健康な組織へのダメージを避ける乳房保存技術である。
【0013】
譲受人の方法は適応型マイクロ波フェーズアレイ技術を用いて達成されるが組織部分を加熱除去するには一般に集中エネルギーが使われる。集中エネルギーには電磁波、超音波、又はラジオ周波数の波を含んでいる。即ち組織部を加熱除去するために集中出来るものは任意のエネルギーである。
【0014】
上記の譲受人の方法は非侵襲的に乳房組織から嚢胞.を除去するが、外部に集中するマイクロ波と乳房組織を圧迫するために用いられる機械的圧力により他の問題も発生する。このように非侵襲性温熱療法癌治療の安全性の改善が必要とされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
出願人らは臓器の癌又は良性条件の治療のために臓器組織を集中エネルギーで選択的に照射することによる独創的な方法で従来技術の欠点を克服している。本発明による方法は、E-フィールドプローブセンサーを臓器組織の適切な深さに挿入し、臓器に隣接する皮膚表面の温度をモニターし、2つ又はそれ以上のエネルギーアプリケータを臓器の回りに配置し、夫々のエネルギーアプリケータに配布する初期パワーレベルを設定し、臓器組織に配置したE−フィールドプローブにエネルギーを集中させるために個々のエネルギーアプリケータに配布する初期相対フェーズを設定し、臓器組織に集中エネルギーを選択的に照射し少なくとも臓器の癌と良性腫瘍状態を治療するために2つ又はそれ以上のエネルギーアプリケータにエネルギーを配布し、治療中個々のエネルギーアプリケータに配布するパワーレベルをモニターしている皮膚温度をもとに調整し、エネルギーアプリケータに配布するエネルギーをモニターし、エネルギーアプリケータに配布する全エネルギーを決定し治療中にリアルタイムでその全エネルギーを表示し、臓器にエネルギーアプリケータによって所望の全エネルギー線量が配布された時に治療が完了するというステップを含むものである。治療されるべき好ましい臓器は乳房であり、好ましい方法ではエネルギーアプリケータは乳房(又は他の臓器)のまわりにリング状に配置されてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、臓器組織にエネルギーを選択的に照射して臓器の癌又は良性条件の治療をする好ましい方法は、加熱を効果的にする物質を臓器組織の適切な深さに注入し、臓器に隣接する皮膚表面の温度をモニターし、臓器の周りに少なくとも1つのエネルギーアプリケータを配置し、夫々少なくとも1つのエネルギーアプリケータに配布される初期のパワーレベルを設定し、臓器組織にエネルギーを選択的に照射し少なくとも臓器の癌又は良性の状態の少なくとも1つを治療するために少なくとも1つのエネルギーアプリケータにエネルギーを配布し、治療中に夫々少なくとも1つのエネルギーアプリケータに配布されるパワーのレベルをモニターした皮膚温度に基づいて調整し、少なくとも1つのエネルギーアプリケータに配布されるエネルギーをモニターし、少なくとも1つのエネルギーアプリケータに配布される全エネルギーを決定し治療中にリアルタイムでその全エネルギーを表示し、臓器に少なくとも1つのエネルギーアプリケータによって所望の全エネルギー線量が配布された時に治療が完了するというステップを含むものである。即ち、出願人は本発明による方法は1つのアプリケータで達成でき、臓器の癌状態又は良性の状態の上に集中出来るどんなエネルギーでもよいことを想定しているものである。
【0017】
本発明によれば、マイクロ波吸収パッド及び金属製遮蔽がマイクロ波温熱療法アプリケータと乳房圧迫用パドルに付けられている。譲受人の方法に加えられたこれらの安全対策は乳房腫瘍(悪性又は良性)治療のために圧迫された乳房組織への適応フェーズアレイ温熱療法の間、胸もと、胸壁領域、頭部、目の付近の主要なマイクロ波アプリケータの開口範囲の外側の電場の強さと温度を低下させる。
【0018】
侵襲性皮膚エントリーポイントの量を最低にするために単独のカテーテル内にE-フィールドセンサーと温度センサーの組み合わせたものが譲受人の方法と一緒に用いられる。その結果、単独の最低侵襲性の皮膚エントリーポイントのみが要求され、患者の快適さが改善され感染の危険が減少する。単一マイクロ波アプリケータでのそれに代わる実施形態では、温度モニターがアプリケータに加える電力を制御するのでEフィールドセンサは必要としない。このようにもし表面温度センサが使われるのであれば、侵襲性皮膚エントリーポイントを持つ必要がない。
【0019】
更に、初期段階の乳癌に対して適応型マイクロ波フェーズアレイ温熱療法が熱のみ治療として用いられる。また局部的に進行した乳癌における第一次乳房腫瘍の治療のために適応型マイクロ波フェーズアレイ温熱療法は化学療法処方計画及び/又は遺伝子をベースとした修正方法と組合わせて用いることが出来る。あるいは、乳房温熱療法の熱のみ治療は腫瘍塊除去術の患者に対する第2、第3の切開(追加手術)の割合を減少させる手術前の道具として用いることが出来る。適応型マイクロ波温熱療法を追加使用することは、温熱療法が乳房癌腫がエストロゲン受容体と結びつかないようエストロゲンをブロックするためと熱で直接癌細胞を消滅させるようにタモキシフェン又は他の抗エストロゲン薬物と一緒に用いられる改良した乳癌予防法の一つとされる。
【0020】
本発明による他の方法では、患者の胸部上に置かれた単一空冷エネルギーアプリケータが、胸部皮膚に挿入された温度プローブまたは取り付けられた温度センサで胸部組織の温度を測定しながら胸部組織を加熱するのに用いられる。この方法は胸部が、2つ以上のエネルギーアプリケータによって形成された開口部に拡がらない場合(いわゆる小胸部患者の場合)、又は治療される腫瘍または組織がアプリケータで形成された開口部の縁にある場合に用いることが出来る。治療される腫瘍または組織の位置によって患者は単一空冷エネルギーアプリケータからの治療を受けるために、うつぶせ又はあおむけに横たわることが出来る。
【0021】
患者の胴部を取り囲む管状物またはバンドによって胸部組織は胸郭にむけて押し付けられる。その管状物の幅は治療される胸部の幅に依存し、それにより胸部を平坦にし治療される腫瘍または組織近辺の血流を減らし、治療される腫瘍や組織の皮膚と関連した深さを減少させる。
【0022】
本発明による更に別の方法では、放射されたエネルギーが腫瘍の1つに向けられるか(癌性または良性条件にたいする治療)乳癌の大部分が発生する胸部の上部に向けられる(癌予防)ように良性または癌性腫瘍を有する胸部又は頭部、首、胴、腕又は脚の表面部の上に単一アプリケータを置いてもよい。治療される組織の場所及び治療温度が治療される組織に到達する能力によっては侵襲性温度プローブを使用することができるが出願人は非侵襲性温度モニターシステムを想定している。例えば、単一アプリケータを用いながら1つ以上の表面温度センサが皮膚温度をモニターするために用いられても良く、その出力はマイクロ波アプリケータに提供されるマイクロ波パワーレベルを制御するためのフィードバック信号として用いる事ができる。約360キロジュール、好ましくは約90キロジュールまでのマイクロ波エネルギー線量(例えば、200ワットのマイクロ波力を約30分好ましくは50ワットのマイクロ波力を約30分)が、例えば、腫瘍塊除去術まえの腫瘍を破壊するか、腫瘍塊除去術後の顕微鏡的乳癌細胞を破壊するために治療される胸部に与えられてもよい。
【0023】
ある種のたんぱく質が癌細胞を拡張することで知られており、一方またある種のたんぱく質が癌細胞の拡散を防止することが知られている。乳癌の場合、高レベルの耐枯死たんぱく質Bcl−2が早期乳癌、特にエストロゲン受容体(ER)が陽性で、腫瘍抑圧たんぱく質p53が陰性である癌細胞に認められる。Bcl系のたんぱく質は乳癌細胞のなかのプログラム細胞死(枯死として知られる)を減らし、従って癌細胞はすぐ死なず結果として拡がってしまう(ザパタ他、(Zapata, et al.),「ヒト乳癌細胞ラインおよび1次腫瘍における多重枯死ー調節遺伝子の発現」(Expression of Multiple Apotosis-Regulatory Genes in Human Breast Cancer Cell Lines and Primary Tumors), 乳癌の研究と治療(Breast Cancer Research and Treatment)、Vol.47、129〜140頁、1998年)。乳癌における他の耐枯死性たんぱく質はBcl-XL、Mcl-1,及びBAG-1である。乳癌の拡散を防止するBax, Bak, CPP32のような枯死推進系のたんぱく質は熱処理によっても影響されないと考えられている。同様のたんぱく質が他の型の腫瘍に関連しており出願人らの発明は種々の癌の治療を想定するものである。出願人らは、少なくとも1つのエネルギーアプリケータによって達成された加熱の効用は、この発明によれば、治療される身体箇所、または臓器のなかの耐枯死性たんぱく質を選択的に加熱し、それによって腫瘍部の耐枯死性たんぱく質に対するたんぱく質抑制剤の産出を促進増加し、耐枯死たんぱく質を抑制し癌の拡散や他の関連健康状態や病気を抑制すると理論づけている。すなわち、少なくとも1つのエネルギーアプリケータにパワーを与えることで発生した熱が耐枯死性たんぱく質を殺し、又は、耐枯死性たんぱく質に目標をおいたたんぱく質抑制剤の生産を齎し、癌や他の病状の成長を抑制する。
【0024】
本方法による選択的な放射によってDNA損傷を生むのに十分な熱が生まれ、癌細胞が自分で修理する能力のもとになっているたんぱく質が、本発明に準じた1つ以上のエネルギーアプリケータによる加熱で、DNA分子との結びつきから除去されるか消去されるものと理論づけられる。このたんぱく質の除去の結果、癌細胞は枯死工程で自然に死んでしまうことになる。細胞毒素または生体細胞を毒する物質は放射、化学、熱療法と関係している。これらの細胞毒素が細胞修復を行うたんぱく質を消去することによってDNA分子を損傷してしまうと考えられる。修復の原因となるたんぱく質の除去や消去によって癌細胞の枯死や壊死を齎す細胞毒素の能力をたかめる。
【0025】
出願人らは脂肪その他の好ましくない組織を美容のために破壊又は溶かし去ろうとする方法を更に想定している。例えば、浸襲性で苦痛の多い脂肪吸引法によって広く取り扱われているセリュライトは、サリン液のような高伝導性物質を伝導性の低い脂肪に注入しマイクロ波放熱その他のエネルギーを身体に放射して脂肪析出物を溶かすことにより身体の脚部よりうまく取除く事が出来る。セリュライトは、覆っている皮膚に窪みを起こさせる脂肪や繊維性組織の塊すなわち析出物である。ゆるい繊維組織は脂肪とともにセリュライトのごつごつした外観を呈する。マイクロ波放射や他のエネルギーを身体に暴露させると連結組織を収縮させ緩んだ組織を固く締め不体裁なごつごつした外観を平滑にする。治療されるセリュライトや他の好ましくない組織によって吸収されるエネルギーを集中させるか特定させるために周囲の組織より高い伝導度の物質少量を、予め選定しておいた身体のセリュライトや他の好ましくない組織の特定の場所に注入し、そのエネルギーがその選定しておいた場所に優先的に吸収され、その場所の加熱効果を高めるようにしても良い。より高い伝導度の物質を注入することは、マイクロ波放射や他のエネルギーへの暴露の約30分前までに行われると良い。より高い伝導性物質としてはサリン溶液か金属化合物の溶液であることができる。より高い伝導度の物質の注入は、予め選定しておいた場所の加熱効果を高めるため他の薬品薬剤と組合わせて行うことも出来る。治療される身体の場所により、少なくとも1つのエネルギーアプリケータは身体の外部か身体の自然の空腔(例えば経尿道、経直腸)に挿入されてもよい。マイクロ波ブランケットや他の防御カバーを使って逸脱したエネルギーからその身体個所を防御してもよい。
【0026】
マイクロ波放射や他のエネルギーへの暴露により理論的には高伝導度の物質を注入された脂肪析出物は変性となり、及び又は、液体となる。脂肪が変性されると、理論的には身体に自然に再吸収されるので取除く必要はない。そのような場合、そのごつごつ部は、マイクロ波放射や他のエネルギー暴露によって発生した熱に曝された身体のその個所を包むことによって平滑になる。身体を包むことは治療される身体を後成形したり事前形成するのに十分な圧力を与える。併し、もし脂肪を取除くのであれば、より液体化した脂肪のほうが既知の真空吸引で補助させた脂肪吸引法よりも治療される個所からの脂肪除去は容易である。既知の脂肪吸引法で使われているような長い管や針が治療される個所からの溶けた脂肪の吸引に用いる事が出来る。マイクロ波や他のエネルギーへの暴露によって処置された脂肪は液体か液状なので、除去処理は既知の固体脂肪析出物を除くのに吸引を用いる脂肪吸引法よりも容易で早くまた痛みもすくない。
【0027】
そのほか更なる目的、利点は記述内容と図面を考察することにより明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
乳房組織の誘電特性
女性の乳房の詳細な側面図が図1に示されている(乳房造影法−ユーザーズガイド、放射線保護と測定についての評議会、(A User’s Guide, National Council on Radiation Protection and Measurement) NCRP Report No.85、6頁、1987年8月1日)。乳房内の腺及び脂肪組織の量は第一に脂肪組織から極めて濃い腺組織まで広い範囲に変わることが出来る。男性の胸部も同様な組成を有していると推定される。乳癌細胞、これは水分含有量が高いが、図2に描かれるように通常、乳液分泌管及び腺組織小葉内に形成される(スーザンラブ博士の乳房の本(Dr Susan Love’sBreast Book)アディソンウェズェイ (Addison Wesley),マサチュウセッツ(Mass.)、191〜196頁、1990年より引用)。腺管内での異常細胞の成長の最初の兆候は腺管内増殖と呼ばれるもので、アティピアの腺管内増殖がそれに続く。腺管内がほぼ一杯になると、その状態は原位置癌腫(DCIS)として知られるものである。これら3つの状態が前癌と呼ばれるものである。最後に腺管内癌腫が腺管壁を突き破るとその病変は侵襲性腺管癌と呼ばれる。癌は同様に乳房の腺小葉に形成する。上記細胞の全部が乳房内のきれいな脂肪組織(低水分含量)ときれいな腺/結合組織(低〜中水分含量)は除外して、しばしば高水分含量として言及されている。
【0029】
工業用、科学用、医療用(ISM)周波数帯902〜928MHzでのマイクロ波放射が一般に業務用臨床温熱治療システムに用いられ、ここで考察される主要な周波数帯である。女性乳房組織についての詳細なマイクロ波加熱の情報は殆どない。併し、乳房癌腫は周囲の脂肪乳房組織に比べ選択的に加熱されることがよく知られている。4つの主要な論文としては:1)シャウハリーほか(Chaudhary et al.)、生物化学と生物物理のインドジャーナル(Indian Journal of Biochemistry and Biophysics), Vol.21、76〜79頁、1984年; 2)ジョインズほか(Joines et al.)、医療物理(Medical Physics)Vol.21、No. 4、547〜550頁、1994年; 3)スロビエックほか (Suroviec et al.)、生物医学エンジニアリングについての米電気電子学会IEEEの取扱い(IEEE Transactions on Biomedical Engineering), Vol.35、No.4、257〜263頁、1988年;4)キャンプベルとランド(Campbell & Land)、医学と生物学における物理、(Physics in Medicine and Biology), Vol.37、No.1、193〜210頁、1992年がある。その他の論文としてのバーデット(Burdette)AAPM医学物理モノグラフ、(AAPM MedicalPhysics Monographs) No.8の105及び130頁、1982年は乳房組織についてのデータが測定されているがこれらのデータは皮膚を通じて測定されており多分乳房組織そのものを代表するものではない。誘電特性は、図3に示されるような正常乳房組織と乳房腫瘍に記述されているように一般に誘導定数と電気伝導度として与えられる。915MHzで、バーデットの研究データを除いて正常乳房の平均誘電定数は12.5で平均伝導度は0.21S/mである。それに対し、乳房腫瘍の平均誘電定数は58.6、平均伝導度は1.03S/mである。註)シャウハリーほか(C)及びジョインズほか(J)の研究データは室温(25℃)で測定された。なお温度が上昇すると一般に誘電定数は減少し伝導度は上昇する。正常な乳房と乳房腫瘍の誘電パラメータは夫々低水分含量の脂肪組織と高水分含量筋肉組織と同じである。なおまた、正常な乳房組織は脂肪、腺と連結組織の混合物を含んでいる。皮膚、筋肉、脂肪を含んだ17組織タイプについての詳細な情報はガブリエルほか(Gabriel et al.)の「物理と医学と生物学」(Phys. Med. Biol.), Vol.41,2271〜2293頁、1996年の論文に提供されている。スロビエックほかによる論文は選択された腺、腺管、脂肪及び癌組織についての詳細な情報が掲載されているが、これらは20kHzから100MHzの範囲でのパラメータだけを測定したものである。100MHzでの測定データから915MHzでの乳房組織の電気特性を推定することは可能である。出願人らは問題の周波数即ち915MHzでのきれいな腺管と腺乳房組織についての誘電パラメータデータは把握していない。
【0030】
キャンプベルとランドによる論文では3.2GHzでの誘電パラメータデータと、乳房脂肪、腺、連結組織、良性腫瘍(繊維腺腫を含む)と悪性腫瘍の水分含量パーセントの測定がなされている。水分含量パーセントの測定データは乳房組織の相対的加熱性を見極めるのに用いることが出来る。即ち高水分含量の組織は低水分含量の組織より早く加熱される。測定された水分含量(重量で)の値の範囲は次のようである。乳房脂肪(11〜31%)、腺及び結合組織(41〜76%)、良性腫瘍(62〜84%)ならびに悪性腫瘍(66〜79%)で選択された値は図4に描かれている。このように水分含量に基づいて、良性の乳房病変と乳房腫瘍は腺、結合組織及び脂肪乳房組織よりかなり早く加熱されることが予想される。一般的に3.2GHzでの電気伝導度について測定値として彼らがベストと選択したものは次のようである。即ち乳房脂肪(0.11〜0.14S/m)、腺及び結合組織(0.35〜1.05S/m)、良質腫瘍(1.0〜4.0S/m)ならびに悪性腫瘍(3.0〜4.0S/m)。従って、良性と悪性の腫瘍の電気伝導度は腺と結合組織より約4倍高くなる傾向を有し、きれいな脂肪より約30倍高い。これらのデータは図3に示されたジョインズほか(Joines et al.) によるものと同様シャウハリーら(Chaudhary et al.)による915MHzで測定した電気伝導度のデータと一致する。
【0031】
さらに、1984年のシャウハリー(Chaudhary)の論文では3GHzで正常な乳房組織についての電気伝導度を測定した。その伝導度は0.36S/mで、キャンプベルとランド(Campbell and Land)が3.2GHz測定した正常な腺及び結合組織の範囲(0.35〜1.05S/mと一致する。このように、もっともよく入手可能なデータから乳房脂肪は低水分含量、腺と結合組織は低から中の水分含量、そして乳房腫瘍は高水分含量である。従って、良性と悪性の腫瘍細胞は周囲の脂肪、腺、腺管及び結合組織細胞よりかなり早く加熱されかなり高い温度にまで加熱されることが予想される。言い換えれば、顕微鏡的及び肉眼で見える腫瘍細胞がこの治療で優先的に加熱され全ての周囲の脂肪、腺、腺管及び結合組織は熱による損傷から逃れられる。
【0032】
組織の電気伝導度はマイクロ波エネルギーでの組織加熱で主要な制御パラメータである。組織の電気伝導度はまたメートルあたりシーメンス(Siemens)の単位をもつ組織イオン伝導度とも呼ばれている。電気伝導度は主に水分含量、イオン含量と温度である組織特性についての関数である。(F A ダック(F.A.Duck), 組織の物理的特性(Physical Properties of Tissue)、アカデミックプレス(Academic Press)、1990年Chapter6167〜223頁)。電気伝導度は組織の水分含量、イオン含量及び温度が増加すれば増加する。例えば、生理食塩水は純水より高いイオン伝導度を有している。暖かい生理食塩水は冷たい生理食塩水よりも高いイオン伝導度を有している。侵襲性又は浸透性乳癌細胞は適度にから僅かに見分けられる、即ち正常な細胞として機能する力が次第になくなっていくことを報告している。癌細胞がその官能性を失っていくに連れ形状が膨潤し、水分を一層吸収しそれにより水分パーセントを増加していく可能性がある。癌細胞の水分中のイオンはイオンの伝導度に重要な役割を果たしている。イオンというのはプラスであろうとマイナスであろうと電気的に荷電した粒子である。組織中での重要なイオンはカリウムイオン(K+)、カルシウムイオン(Ca2+)、ナトリウムイオン(Na+)及び塩素イオン(Cl-)を含むものである。カルシウムイオンは陽子より2つ少ない電子を有し、陽に荷電している(2+)。カルシウムは2つの塩素(Cl-)イオンを引きつけて保持することが出来る。カリウムはたった一つの塩素(Cl-)イオンを引きつけて保持する。塩化カルシウム(CaCl2)中のカルシウムと塩素イオンは水に溶解されたとき分離すなわち分かれて易動性が向上し水溶液のイオン伝導度が増加する。乳房造影に現れる密にしっかり固められたカルシウム沈殿物(ミクロ石灰化として知られている)がしばしば癌腫と関係している(S.M.ラブ(S. M. Love) スーザンラブ博士の乳房の本(Dr. Susan Love’s Breast Book)、3rd Edit.、ペルサス出版(Persus Publishing)、2000年、130〜131頁)。乳管中の小さな石灰化した塊が一般に前癌の原因である。カルシウムの大きな塊は一般に繊維腺腫のような良性の病変と関係している。乳房に現れた石灰化物の一部は骨から流出したカルシウム由来であり血流を通して移動し、乳房内部にランダムに堆積する。
【0033】
乳房嚢腫液中のプロテインとイオン性成分が測定された(B ガイラードほか (B. Gairard、et al.)、小嚢胞性乳房乳腺炎の内分泌学における「乳房嚢腫液中のプロテインとイオン性成分」(Proteins and Ionic Components in Breqast Cyst Fluids)、A アンジェリほか編者(A.Angeli,et al editors)、ラーベンプレス(Raven Press)、ニューヨーク(New York)、1983年191〜195頁. H L ブラッドロウほか(H.L.Bradlow et al.)、小嚢胞性乳房乳腺炎の内分泌学(Endocrinology of Cystic Breast Disease)における「乳房嚢腫液中のカチオン」(Cations in Breast Cyst Fluid)、A アンジェリほか編者(A.Angeli,et al editors)、ラーベンプレス(Raven Press)、ニューヨーク(New York)、1983年197〜201頁)。 乳房嚢腫液はナトリウム(Na+)、カリウム(K+)、塩素(Cl-)、カルシウム(Ca2+)燐酸(PO4+)、マグネシウムイオン(MG2+)を含有している。
ブラドロウは乳房嚢腫液の3つのカテゴリーを挙げている。
タイプI:高水準のカリウム(K+)及び中水準のナトリウム(Na+)と塩素(Cl-)、
タイプII:高水準のカリウム(K+)とナトリウム(Na+)及び中水準の塩素(Cl-)、
タイプIII:高水準のナトリウム(Na+)中水準の塩素(Cl-)と低水準の
カリウム(K+)。乳房嚢腫の高水分含量及び高イオン含量は周囲の正常で健康な乳房組織の加熱に較べてマイクロ波での優先的な加熱が出来るように働いている。
【0034】
嚢腫にはいくつかのタイプがある:触診可能な腫瘍を形成する大きな嚢腫、濃縮した(濃い)乳-いわゆる「乳瘤」を含む嚢腫、腺管拡張から進展した嚢腫、脂肪壊死から来る嚢腫、いわゆる「乳頭の嚢胞腺腫」といわれる腺管内乳頭腫と関係した嚢腫、エストロゲンの管理から誘起された嚢腫などである。一方、一部は大きさが減少し、ものによっては時間の経過で消えてしまうものもあるが、大きい(非常に大きい)嚢腫が急激に発展して適当な大きさになって何時までもそのままでいるものがある。大きな嚢腫のかなりの部分が月経前又は月経時期に発見され急速に大きくなり痛くて敏感になる。大きな嚢腫は時として深刻な炎症、痛み、敏感さの兆候や、上にある皮膚の赤みと関係している。嚢腫液を針吸引すると炎症の兆候が速やかに静まる。吸引が完了すると繊維性の嚢腫壁のみが残る。併し、周囲の乳房組織に逃げ出した嚢腫液が、するどい痛みを生み出す可能性がある。大きな嚢腫が30才から54才の年齢グループに最も普通でありケースの約95%はこれである。嚢腫状態の手術をする外科医がより広く乳房を診察すればするほどさらに多くの嚢腫がみつかるようである。
【0035】
繊維腺腫(非常に普通の良性腫れ物、類線維腫とも呼ばれる)は平らで固く寸法は5mmから約5cmまでさまざまである。繊維腺腫は小さなサンプルの測定によれば高い水分含量(平均78.5%、n=6)を有し(キャンプベルとランド(Campbell and Land)、「女性の人間乳房組織を3.2GHzで試験管で測定した誘電特性」Dielectric Properties of Female Human Breast Tissue Measured in vitro at 3.2 GHz)、医学と生物学での物理(Phys Med Biol)1992年Vol.37(1)、193〜210頁)周囲の健康な乳房組織に比べマイクロ波エネルギーによってより容易に加熱される。これらの良性病変は一般に乳房造影法や超音波ではっきりしており、望むなら外科的に取除くことが出来る。ある患者は多数の繊維腺腫を持っていてそのため乳房保存手術は実行不可能となる。下記に述べられたキャンプベルとランドの研究には他の良性腫瘍患者の水分含量の測定データは限られたものしかない。
【0036】
良性の繊維症腫瘍:キャンプベルとランドの研究において一人の患者(26歳)のメディアン(median)水分含量は65.5%で高水分含量を示している。繊維症というのは繊維状組織が出来ることをいい、これは修復又は反応過程で起こりうる。繊維状の乳房の病気は繊維症の特別なタイプで乳房の局所にある小葉の細葉と乳房の腺管を圧迫、消去し触診可能な腫瘍を形成する。繊維症は異常に引き締まっていて(癌ほど固くはない)一般に局部切除を必要とする。併し、この病変は嚢腫のように丸くなっていないで不規則な盤状なのでこの病気の境界ははっきり限定されていないことが多い。
【0037】
良性の繊維腺腫状腫瘍:キャンプベルとランドの研究での一人の患者(27歳)のメディアン水分含量は高水分含量を示す73.5%であった。
【0038】
良性上皮症(乳頭腫症として知られる)腫瘍:キャンプベルとランドの研究での一人の患者(40歳)のメディアン水分含量は高水分含量を示す61%であった。乳頭腫症は腺管上皮の乳頭分裂増殖でそれが部分的に小さな腺管に充満し腺管をある程度膨張させる。上皮症は一般に顕微鏡的で嚢腫の病気、腫瘍腺疾患、多点上皮症、又は他の腫瘍形成病変と共に現れるときが多い。
【0039】
良性腺疾患腫瘍:キャンプベルとランドの研究での一人の患者(43歳)のメディアン水分含量は低水分含量を示す38%であった。良性腺疾患は顕微鏡的にもはっきりした腫瘍としても現れる乳房の小葉の細葉の分裂増殖である。これらの腫瘍(両性腺疾患)は周囲の正常な乳房組織と較べて著しく熱くはならないがデータの試料はたった一つしか測定されず、良性腺疾患を代表するものとはいえない。
【0040】
要するに、嚢腫、繊維線種、繊維症、繊維線種症、及び上皮症(乳頭腫症としても知られている)のような良性病変は高水分含量及び/又は高イオン含量として出現し、マイクロ波エネルギーで容易に加熱されるものである。良性の腺疾患病変は高水分含量及び/又は高イオン含量の嚢腫のように速やかには加熱されないかもしれない。併し、ここでベースとしているデータが1名の患者に限られるのではっきりしない。
【0041】
進行している乳癌(例えば5〜8cmの腫瘍)の場合、譲受人の進歩的な方法は乳癌細胞のかなりの部分を熱のみで又は熱と化学療法を組合わせて破壊することが出来る。腫瘍又は病変を収縮し(熱により例えば2〜3cmに縮小化)することにより、外科的乳房切除を外科的腫瘍塊除去術に置き換えることを可能とする。理想的にいけば、全ての進行した乳癌の病変を破壊し(即ち熱的乳房切除又は熱化学的乳房切除)外科的なものを必要としないこともあろう。下記に論じるように、早期の乳癌又は小さな乳房病変が譲受人の進歩的な方法で破壊される。即ち、すべての乳癌細胞又は良性病変が熱で破壊され(即ち熱的腫瘍塊除去術)、それにより外科的腫瘍塊除去術をさけることが出来る。
【0042】
温熱療法は初めの(又は第2又は第3)腫瘍塊除去術の前の熱のみ治療として陽性のマージン(癌性細胞)が腫瘍塊除去術の試料に検出されたとき行われる再除去(追加の手術)の必要性を減らすために用いることが出来る。腫瘍塊除去術の試料の約30%は第2回目の切除を必要とする陽性のマージンを有する。本発明による方法は組織を外側から内側へと標的領域に向けて加熱するので(内側から外側へ加熱するRF 除去と対照的に)、本発明の方法はマージンに取り組むものである。それゆえ、本発明による温熱療法の治療はマージン内の癌細胞を取除くことを期待して手術前に適用することが出来る。その結果最初の手術(腫瘍塊除去術)後、切除した組織の周囲の領域(マージン)がテストされマージン内の癌の減少が期待されそれによって第2(又は第3の)切開が必要になるのを避けている。本発明による温熱療法治療は理論上熱腫瘍塊除去術として使うことが出来て侵襲性腫瘍塊除去術の外科手術過程を置き換えうる。このように、乳房の癌量は本発明の温熱療法治療によって大幅に減らすこと又はことごとく破壊することが出来るであろう。
【0043】
本発明による温熱療法治療は遺伝子ベースの修正方法と組み合わせて使用しBRCA1、BRCA2又は他の遺伝子のような組織の中に異常な(突然変異)遺伝子を有する患者のために用いることが出来ると考えられる。これらの異常な遺伝子が存在するということはその患者が癌に罹る危険が増加していることを示しているのであり、このようにこれらの遺伝子を除去することが患者が癌に罹る危険を減らすことになる。熱のみの温熱療法治療又は化学療法を伴う温熱療法及び/又は遺伝子ベースの修正方法と熱の組み合わせが乳癌の再発をマージンの中の癌性細胞を破壊することで減らし、それにより癌のない組織を提供するか癌や他の病弊の原因となる突然変異の遺伝子を破壊するか修理する。更に、この方法は米国特許No.5,810,888に記載されているように感熱リポソームと組み合わせ及び/又は放射線治療効果を高める乳房病変を治療するために標的としている遺伝子治療の実施及び/又はマージン中の癌性又は異常細胞の破壊を助けるために標的としている薬剤の引渡しと組合わせて用いることが出来る。乳癌は乳房腺管内に発生し周囲の乳房組織内へと外側に侵襲し、次いでリンパ管系及び血管(血流)系を経由して乳房の外へと拡散する。このように、温熱療法治療単独又は化学療法及び/又は遺伝子ベース修正方法と組合わせたものが乳房のリンパ管系及び血管系内の癌細胞又は突然変異遺伝子を抹消すことによって乳房又は他の臓器内の乳癌の再発を減らすのである。
【0044】
本発明による熱治療療法は単独又は化学療法及び/又は遺伝子ベース修正方法と組み合わせ異常又は突然変位の遺伝子が癌を高率で発生させる可能性のある前立腺、肝臓、卵巣等の他の内蔵の前治療に用いられる。更に熱のみの熱治療又は化学療法を伴う温熱療法及び/又は遺伝子ベース修正方法との組み合わせが腺管内洗浄又は他の診断技術によって判定されるような内蔵内の異常細胞があるときに効果的である。
【0045】
早期乳癌のための温熱療法
早期乳癌患者の小グループにおいて、セルシオン コーポレーションマイクロフォーカスAPR1000乳房温熱療法システムによって行われたフェーズII臨床温熱療法が1つ又は2つの熱のみ治療を使って70%から90%台も腫瘍細胞の生存率を著しく下げた。何人かの患者では、熱のみの温熱療法によってスケジュールが決まっていた腫瘍塊除去術の前に乳癌細胞を完全に破壊し、それにより手術を行わず乳癌の局部再発を防ぐことがありうる。別の患者では、熱のみの温熱療法を行って癌細胞のないマージンを提供することにより2回目又は3回目の腫瘍塊除去術の必要性を減らすことが出来よう。これらの熱のみ治療は48.3℃のピークの腫瘍温度で250キロジュールのマイクロ波エネルギーをもつ凡そ200分までの当量熱線量(43℃に相当)を生み出す。追加の温熱療法治療、より高い当量熱線量とより高い腫瘍温度が乳房癌の熱のみ切除を完了するために必要であろう。49から50℃の範囲又は55℃までの腫瘍温度であると400分の当量熱線量で500キロジュールまでのマイクロ波エネルギー線量が腫瘍の完全切除のために必要となろう。乳房壁領域のような乳房皮膚及び隣接する健康な組織を熱損傷から保護するための追加の安全手段をこれらのかなりの熱及びマイクロ波エネルギー線量とともに提供する必要があるであろう。
【0046】
原位置腺管癌のための温熱療法(DCIS)
DCIS即ち原位置腺管内癌としても知られている転移せずに原位置にいる腺管内癌腫は主たる治療上の問題を代表するものである。「癌の事実と様相2001(Cancer Facts and Figures 2001)」、アメリカ癌ソサエティインク(American Cancer Society, Inc.)、アトランタ(Atlanta)、ジョージア(Georgia)によれば約41,000人の新しい患者が2001年に診断を受けると思われた。更に、192,200人の新しい侵襲性乳癌の患者が予想された。診断された新しい乳癌の予想された238,600患者のうち80.6%が侵襲性、17%がDCISで残り(2.4%)がLCIS(原位置小葉癌)(癌の事実と2001年の様相 (Cancer Facts and Figures 2001))であった。DCISの針生検診断はサンプリングの誤りにより侵襲性の病気を低く見積もる可能性がある。サンプリングの誤りの結果、その病気の進行の正確な診断が得にくくなる。ある研究の報告によれば針生検でDCISと診断された患者の16%から20%は外科的切除で侵襲性の病気とその後診断されている。(D.P.ウインチェスター(D.P.Winchester)、J.M.ジェスク(J.M.)Jeske、R.A.ゴールドシュミット(R.A.Goldschmidt) 「乳房の上皮内腺管内癌腫の診断と管理」(The Diagnosis and Management of Ductal Carcinoma In-Situ of the Breast)CA 癌ジャーナルクリニック(CA Cancer J Clin)2000;50:184〜200頁)。このように、適切な治療計画を決定するために外科的切除はDCIS患者にとって最近は必須事項になっている。例えば、初めにDCISと診断され続く腫瘍塊除去術と病理学で侵襲性癌と決定された後で、リンパ結節(特に前哨リンパ結節)が生検され治療される必要がでることがありうる。その時、段階的な適切な全身療法も必要となろう。DCISの患者のどのような病理学的評定もその主要な目標は、続く侵襲のリスクレベルを判定し適切な治療を提供し起こりうる治療の過不足を避けることである。
【0047】
DCIS病の乳房造影法的及び病理学的評定に基づいて、ある場合には乳房保存手術が外観上満足出来る結果で達成出来ることがある。併し、完全な外科的切除と放射療法で治療された長期間追跡したDCIS患者の19%以上もの患者が局部再発を経験しており、その50%までもが侵襲性である。腫瘍塊除去術だけを受けたDCIS患者については再発率は26%にまで達する可能性がある。
【0048】
局部再発に関係する生存率についての影響を理解するために、以下のことを考える:手術後に陰性のマージンをもち標準術後放射療法を受けたDCIS患者に関しては、少なくとも80%が長期間の局部コントロールを達成すると思われる。即ち、長期追跡で約20%の患者は局部再発を経験するであろう。その20%のうち、10%は非侵襲性の再発で10%は侵襲性の再発と思われる。非侵襲性再発の患者は実質的に100%の局部コントロールを達成し乳房切除で治癒する。侵襲性局部再発の患者は乳房切除で75%の5年生存率を経験する。即ち25%は5年生存しないことになる。このように、乳房保存治療を受けたDCISで管理された患者について、その患者の10%は後日非侵襲性の再発となり乳房切除を受けねばならない。侵襲性再発した他の10%は乳房切除を受けねばならず、これらの患者の25%は5年以内で死亡するであろう。このように、DCISに対し乳房保存治療(腫瘍塊除去術と放射線療法)を受けた患者の約2.5%は局所再発で5年以内に死亡するであろう。年間41,000人のDCIS患者に対し2.5%の患者即ち1,025人のDCIS患者が侵襲性再発によって5年以内に死亡する。これらの百分率を与えられて殆どの患者は乳房保存の方法を選ぶであろうが乳房保存の放射線療法部分からのかなりの副作用を経験するであろう。なお放射線療法はコストと時間のかかる方法(20から30の細分化した治療が通常必要)である。
【0049】
原位置腺管内癌(DCIS)治療の新しい方法は、副作用が殆どなくて、腫瘍塊除去術後の放射線治療の再発率と同等又はそれ以下の再発率である腫瘍塊除去術後に温熱療法(1つか2つの治療)を行う方法である。温熱療法のコストは放射線療法のコストより少ないと思われ、全体の医療コストの節約となる。温熱療法はまた原位置腺管内癌(DCIS)の消滅の効果を増加させるため従来の放射線療法が数回与えられても良い。
【0050】
手付かずの乳房の局部進行乳癌のための熱化学療法
本発明によれば進行した乳癌のために、第一次乳癌を破壊及び/又は縮小させるために熱と化学療法が一緒に使われても良い。それにより乳房切除候補の患者を何とか乳房を保存する方向である腫瘍塊除去手術へと変える。ある場合には、患者は乳癌治療処方計画の一部として手術前化学療法を必要とする場合がある。このことは必然的にNSABP B−18におけるものとして標準手術前、手術後化学療法実施に従って管理された化学療法の4つのサイクル又はコースを伴うものである(フィッシャーほか(Fisher et al.),1997年、臨床腫瘍学ジャーナル(J. Clinical Oncology)、Vol.15(7)、2483〜2493頁;とフィッシャーほか、1998年、臨床腫瘍学ジャーナル、Vol.16(8)、2672〜2685頁)。60mg/m2でのアドリアマイシン(Adriamycin)(ドキソルビシン(Doxorubicin))と600mg/m2でのシトキサン(Cytoxan)(シクロフォスファミド(Cyclophosphamide))の各サイクルが21日毎に行われる。臨床検査で腫瘍の大きさが測られ化学療法のサイクル毎に初めに超音波撮像が行われる。本発明の一実施形態では、集中マイクロ波フェーズアレイ温熱療法期間は手術前AC化学療法の第1、第2及び第3コース実施と同じ日又はAC化学療法実施の36時間以内に実施することが出来る。AC化学療法の残りの(第4の)サイクルというのはそこで皮膚の温熱療法による副作用 (例えば皮膚の火ぶくれ)を散らすために十分な時間を与えるため、温熱療法なしに実施されることになる。化学療法の第4サイクル完了後に初めて乳房切除をするか或いはより保存の方向の乳房手術がなされるべきかを決めるため乳房についての最後の査定を行う。乳癌のためのドキソルビシン及びドセタキセル(Docetaxel又はFAC)(5−フルオロウラシル(Fluorouracil)、ドキソルビシン及びシクロフォスファミド)のような他の組み合わせの乳癌のための化学療法治療が乳癌の新しい補助の治療として温熱療法と組合わせることが出来よう。出願人はまた、化学療法を注入する前の乳房腫瘍を収縮するために温熱療法を化学療法前に適用することが可能ではないかと想定するものである。
【0051】
手術前AC化学療法は乳癌腫瘍の約80%にいくらかの収縮を齎すことが知られている。腫瘍収縮は通常AC化学療法の第1コースが終わってから認められ典型的にはAC化学療法の第1コース完了の約21日後、超音波撮像で観察される。AC化学療法そのものによるのと同じだけ温熱療法とAC化学療法の組合わせで腫瘍を収縮させたことを証明する十分なデータはない。このように、別の実施形態では、大きな収縮を観察するために温熱療法を実施する前に少なくとも化学療法の1投与量を実施するのが望ましい。もし3つの温熱療法コースが用いられるなら温熱療法は手術前化学療法の第2、第3及び第4コースと同じ日又は36時間以内に実施されることになる。もし2つの温熱療法コースが用いられるときは、温熱療法は手術前の化学療法の第2及び第3コースもしくは第3及び第4コース、又は化学療法の第2及び第4コースと同じ日又は36時間以内に実施される。
【0052】
化学療法実施後、温熱療法が適用されて腫瘍温度は43〜46℃の間となり、腫瘍は1治療あたり約50から100分の当量熱線と約100〜300キロジュールのマイクロ波エネルギー線量を受ける。第4であり最後の化学療法の最後にその患者が乳房切除を受けるか乳房保存のための部分乳房切除(腫瘍塊除去術)を受けるかの決定が患者がその研究に氏名登録されたときに用いられたものと同じガイドライン(即ち、腫瘍の大きさ及び位置、乳房の大きさ、患者の健康ならびに患者の年齢)に基づいて行われる。手術前の温熱療法養生に続いて、通常の標準治療(投薬及び放射線治療を含む)が全ての患者に与えられる。医師の裁量でエストロゲン受容体が陽性の患者は化学療法の最後の回の翌日から始めて5年間毎日2回10mgのタモキシフェンTamoxifenを受ける。更に、乳房組織とリンパ結節に対し放射治療が望ましい患者の標準治療の一部として与えられる。
【0053】
良性の乳房病変の温熱療法
セルシオンコーポレーションマイクロフォーカスAPA1000(Celsion Corporation Microfocus APA 1000)の乳房温熱療法システムによって行われた悪性乳房病変についての最近のフェーズII臨床温熱療法は乳癌と良性乳房病変(嚢腫)が熱のみの治療からのかなりのダメージを明らかにした。これらの臨床治療に基づけば、約47〜50℃の範囲から約55℃までの腫瘍温度が良性乳房病変の完全除去のために必要となるであろう。上の腫瘍温度に加えて360分までの当量熱線量と400キロジュールまでのマイクロ波エネルギー線量とが良性の乳房病変を除去する。通常、鎮痛剤(ナプロキセン ナトリウムNaproxen Sodium 錠 220mg)が良性乳房病変の痛みを有する患者の苦痛に対し与えられるものであり、本発明による好ましい方法でも1つ又はそれ以上の温熱療法治療が苦痛を和らげるための鎮痛剤とともに与えられる。
【0054】
初期の乳癌予防のための温熱療法と薬剤療法
乳癌予防のための最近の治療の標準は予防としての乳房切除(乳房の外科的除去)又はタモキシフェン治療である。タモキシフェン(及びラロキシフェンのような他の薬剤)は抗エストロゲン剤であり、エストロゲン受容体に固着性を有しエストロゲンが乳癌と結びつくのを防いでいる。即ち、タモキシフェンがエストロゲン受容体を遮断することでエストロゲンの吸収を遮断し、それによってエストロゲンが乳癌に結合するのを防いでいる。NSABP P−1乳癌予防試行において、13,175人の参加者がタモキシフェン(5年間毎日20mg)か偽薬のどちらかを受け取った。侵襲性乳癌の危険が全体として49%減少するのがタモキシフェン(商品名ノルバデックス(Nolvadex))グループに見られた(フィッシャーBほか(Fisher B.、「乳癌予防のためのタモキシフェン(Tamoxifen For Prevention of Breast Cancer):乳房と内臓の全米外科補助薬プロジェクトP-1研究(Report of the National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project P-1 Study)」ナショナル癌研究所ジャーナル(Journal of National Cancer Institute)、Vol.90、1371〜88頁、1998ねん;モロウ M.(M. Morrow)とヨルダン V.C.(Jordan V.C.),「高危険度女性の乳癌予防のためのタモキシフェン」(Tamoxifen for the Prevention of Breast Cancer in High-risk Woman) 腫瘍学外科年報(Annals Surg Oncol、Vol.7(1)、67〜71頁、2000年)。タモキシフェンによる予防治療に温熱療法を加えるとエストロゲンをブロックする量が増加し、それによって乳癌のエストロゲン受容体に吸収配布されるエストロゲンの量を減少させ侵襲性乳癌の危険を更に減少させるというのが新しい仮説である。エストロゲンをブロックする程度はエストロゲン受容体を破壊したり変容させたりすること及び/又は熱で直接乳癌を抹消することによって達成される。
【0055】
それに代わり、本発明による組織の選択的照射がタモキシフェンの代わりとして用いられる。本発明による選択的照射はエストロゲン受容体を選択的に消去し逸れによってエストロゲンの吸収を遮断し、乳癌を促進する可能性のある乳癌との結果としての結合を遮断している。もし乳癌を促進するエストロゲン受容体をうまく消去できるなら、出願人はそのような熱だけでの温熱治療が、気分変動やホルモンアンバランスと関連した症状を克服するためにエストロゲン置換プログラムを女性に取らせる事が可能であろうと推定している。即ち、熱のみの温熱治療が乳癌の可能性を防止しつつホルモンの置換に用いられるのである。もしホルモン置換を用いる事が、上述のように、卵巣や子宮頸部等の他の癌の危険の増加と関るのであれば、温熱療法はタモキシフェン防止処置と併用してもよい。
【0056】
このような仮説での臨床試行において、温熱療法とタモキシフェンアーム内の患者は標準服用量のタモキシフェン(5年間毎日20mg)及び、同じ5年間中に規則的間隔での温熱療法を受ける。それに代わる仮定にもとづく臨床試行において、温熱療法とタモキシフェンアームの患者はタモキシフェンの標準薬量の半分を受療する。即ち、タモキシフェンまたは同様の薬剤を一日10mgを5年間受療し同じ5年間の間定期的な間隔で温熱療法を受ける。このような臨床試行での患者は十分に境界が限定された病変を有していないと予想されるので、領域としては単純に乳首から乳房の上底へと測定したときすべての乳癌の約70%が発生する乳房の上部を標的とする(乳房造影法−ユーザーズガイド(Mammography-A User’s Guide)、NCRPリポートNo.85、放射線保護と測定についての全国評議会(National Council on Radiation Protection and Measurement)、ベセズダ(Bethesda)、7頁、1987年)。乳房の上部を標的とする熱治療には乳房圧迫は頭蓋から尾部(頭部からつま先まで)の位置にあり、E-フィールド集中プローブは乳房の頭部側に約0.5〜1.5cmのところに位置している(中央乳房深さから測定して)。約180キロジュール(30分で合計100ワット)のマイクロ波エネルギー線量がタモキシフェン実施中約1年の間隔をあけて複数の治療の各々において乳房に対して実施される。この仮説での臨床試行のための1つのグループにはタモキシフェン治療のみを受ける患者を含んでいる。2チャンネルの夫々に約50ワットの初期マイクロ波パワーが与えられるが、これはセルシオン コーポレーションのフェーズ1とフェーズ2の適応型フェーズアレイ乳房温熱療法臨床研究の約35人の乳癌患者の治療に基づいて安全なパワーレベルであると立証ずみの値である。皮膚温センサーがモニターされ2チャンネルのマイクロ波パワーまたは単一アプリケータ治療の場合はそのうちの1つが温熱療法治療の間、皮膚温を41℃より低く保つように調節される。
【0057】
早期乳癌、局部進行乳癌、良性乳房病変、及び乳癌予防のうちの1つのためのこの発明による温熱療法治療では、皮膚温度は治療中約40〜42℃以下に留めるのが望ましい。併し、上で論じたように、腫瘍温度は約43〜50℃未満又はそれ以上の範囲になるであろう。
【0058】
セルシオンマイクロフォーカス1000外部集中適応型フェーズアレイマイクロ波システムのフェーズ1とフェーズ2の臨床試験の間、いくつかの例では、胸郭壁近くの乳房の基床の近辺での皮膚組織は所望以上に強く熱せられていたのを出願人は認めている。更に、乳房組織を機械的に圧迫すると時として圧力が最も強い圧迫板の端で非熱火傷を起こすことが見出されている。従って、本発明は譲受人の適応型フェーズアレイシステムに対しこれらの副作用を緩和及び/又は減少させる改良を提供するものである。
【0059】
腺管内癌及び腺癌と周囲乳房組織の加熱方法
図5はE−フィールド及び温度フィードバックのある適応型マイクロ波フェーズアレイ温熱療法を用いた手付かずの癌を加熱するための好ましいシステムを示している。マイクロ波周波数に確実に深くにある組織を加熱するためには体(乳房)を適応型フェーズアレイのアリゴリズムによってコントロールされた2つ又はそれ以上の繋げたアプリケータ100で取り巻く必要がある。小さい乳房の患者の場合は丁度単一マイクロ波アプリケータを使用するのが好ましい。焦点190として示してある黒い丸は、腫瘍又は治療される健康な組織を示している。好ましい実施形態では、E−フィールドフィードバックプローブ175がマイクロ波放射線の焦点を出すのに用いられ、乳房表面皮膚に付けられた温度フィードバックセンサー410が腫瘍を熱するためのマイクロ波のパワーレベルを望ましい温度に調節するために使われる。2チャンネルの適応型フェーズアレイが、X線乳房造影法に用いられるのと同じ形状に圧迫された乳房内の深い組織を加熱するのに用いられる。E−フィールドプローブは、フェンに与えられた米国特許No.5,810,888に開示されているように、マイクロ波放射を腫瘍に目標づけるために適応型フェーズアレイ高速加速勾配探査アルゴリズムとともに用いられることが望ましい。
【0060】
更に、空冷式導波型アプリケータ開口部が腺管癌及び腺癌を含む乳房組織の大きな部分を過熱出来る加熱パターンを提供するのに用いられる。導波開口部を冷却するための空気は冷蔵温度、空調温度又は室温のいずれでもよい。高水分含量組織と脂肪乳房組織の間の915MHzでの誘電パラメータの差により、高水分量の腺管及び腺癌組織は正常の乳房組織より早く加熱されると思われる。このように、治療領域は高水分含量(癌性又は前癌性の)癌腫組織と繊維腺腫と嚢腫のような良性病変に集中し、一方正常の(健康な)乳房組織はそのようなことはない。
【0061】
体即ち乳房はマイクロ波を透過するプレキシグラスのような誘電体で出来た2つの圧迫板200の間で圧迫される。乳房圧迫は傷つけていない乳房温熱療法治療のための潜在的な多くの利点を有している。乳房圧迫を利用すると深いマイクロ波加熱を達成するのに必要な浸透深さが浅くなり血流を減らして組織を加熱する能力を改善する結果を齎す。平面に乳房を圧迫することはマイクロ波アプリケータと乳房組織の間の界面及び電場カップリングを改善し、一対のアプリケータに広い範囲の乳房の治療が出来るようになる。温熱治療の間、空気で乳房圧迫板を冷却すると皮膚表面が火傷する可能性をさけるのに役立つ。20分から40分の定位固定の針を用いた乳房生検過程で用いられるような、うつぶせの姿勢を患者がとっているときに胸を圧迫することは(バセットほか(Basset et al)臨床医のための癌ジャーナル(A Cancer Jounal for Clinicians)、Vol.47、171〜190頁、1997年)、圧迫装置内の乳房組織の量を最大にする。中程度の圧迫は乳房組織を固定するので予想される患者の運動による複雑化を取除く。小さな開口部を持つことの出来る圧迫板200はX線と超音波造影技術と共存して正確に中央腺/腺管の場所を示し、侵襲性E-フィールドプローブセンサーの配置を助ける。圧迫量は20〜40分又はより長い温熱治療の間の患者の我慢強さに応じて4〜8cmの範囲にばらつかせることが出来る。乳房造影法での乳房圧迫で患者の苦痛を和らげる研究によると乳房造影法が苦痛である(非常に不快又は我慢できないと定義したときの)のは調査した560名の女性のうち僅かに8%であることを示している。この研究では、平均圧迫厚さは1.28cmの標準偏差(1シグマ)で4.63cmであった(サリバンほか(Sullivan et al.)、放射線医学(Radiology)、Vol.181、355〜357頁、1991年)。このように、中程度の乳房圧迫での20〜40分又はそれ以上の長さの温熱治療が実行可能である。
【0062】
温熱治療前に、乳房は圧迫板200の間で圧迫され単独の侵襲性E−フィールドフィードバックセンサー175が乳房の中央の腺/腺管/腫瘍組織側(焦点190)内、マイクロ波アプリケータ100の分極に平行に挿入される。E−フィールドプローブ175が移相器が適応型フェーズアレイ勾配探査型アルゴリズムを用いて最大のフィードバックシグナルのために調節されるにしたがって焦点E−フィールド振幅をモニターするのに用いられる。非侵襲性温度プローブ410は皮膚温度をモニターするために乳房皮膚表面にテープ止めされるか又は他の方法で止められている。温度プローブは通常E−フィールド分極に対し直角に向いておりマイクロ波エネルギーで熱せられないようになっている。本発明のふたつのアプリケータ適応型フェーズアレイはE−フィールド フィードバック プローブと一緒になって、移相器を調節し、集中したE−フィールドが発生して深いところの組織に加熱を集中出来るようにする。
【0063】
図6及び図14から図17までは乳房腫瘍(悪性及び良性)の治療のための外部集中適応型マイクロ波フェーズアレイ温熱療法に適用した安全手段の実施形態である。図6に示される好ましい方法では、患者は治療テーブル210にある穴を通して乳房を垂れ下がらせてうつ伏せに横たわり、治療される乳房220は平らなプラスチックの圧迫板200で圧迫され、それにより乳房組織が固定され血流が低下し、マイクロ波放射のために必要な透過深さを浅くする。治療テーブル210は金属のテーブルで患者が楽なように柔らかい詰物でカバーがしてあるフィッシャーイメージング社(コロラド州デンバー)製造等の定位固定の造影乳房針生検テーブルと同様でよい。乳房造影の目的のために金属ベッドが固い構造支持体として使われる。乳房温熱療法のために、金属テーブル210はマイクロ波放射のシールドとしても役立ち、全身とくに患者の頭と目がマイクロ波アプリケータ100から漏れたマイクロ波放射線から完全に保護される。金属テーブル210はアルミニウムもしくは鋼、又は金属箔もしくは金属網被覆したプラスチックから作ることが出来る。テーブルパッド212は発泡材であって、アプリケータからの漏れたマイクロ波放射線から更にシールドするためのマイクロ波吸収材を含むものでよい。
【0064】
乳房圧迫板はマイクロ波透過性プラスチック材からなり、1つ又はそれ以上の矩形又は円形の開口部を有し乳房組織の造影と最小侵襲性のE−フィールドフィードバックプローブ175を所望の焦点深さに配置出来るようにする。E−フィールドフィードバックプローブ175の挿入は超音波変換器によって行われる。マイクロ波の場からの皮膚障害をさらに保護するために、1つ又はそれ以上の冷風ファン(図示せず)のついた空気流180が備えられる。
【0065】
図5に示されるように、乳房皮膚表面に2つ又はそれ以上温度フィードバックプローブセンサー410が付けられ、温度フィードバック信号400を発生させる。2つのマイクロ波空冷導波アプリケータ100が圧迫板200の反対側に配置される。915MHzマイクロ波振動子105は結節107で分けられ移相器120に送られる。フェーズ制御信号125はマイクロ波信号のフェーズを0から360電気角度に亘って制御する。移相器120からのマイクロ波信号はコンピュータ生成制御信号135によって制御されるマイクロ波パワー増幅器130に送られ、初期マイクロ波パワーレベルを設定する。コヒーレントな915MHzマイクロ波パワーが2つの導波アプリケータ100に渡され、夫々のチャネル内の移相器120は最大になってE−フィールドプローブセンサー175にマイクロ波エネルギーを集中しマイクロ波パワーは焦点190で最大にされるように調節される。そこで治療が始まる。
【0066】
温熱治療の間、アプリケータ100の夫々に分配されるマイクロ波パワーレベルがフィードバック信号500として測定され、パワー制御が手動又は自動で皮膚温度や皮膚センサー410によって測定された当量熱線量を皮膚の火傷又は火ぶくれとなるような高温を避けるよう調節される。乳房圧迫量は治療中に患者が楽であるように必要なら圧迫板200によって調節される。乳房圧迫が調節されたり乳房の位置が再配置されるたびに移相器120は再調節/再集中されE−フィールドプローブセンサー175は最大のパワーを受けるようになる。治療の始めからマイクロ波アプリケータに分配されるマイクロ波エネルギーの総計は治療中コンピュータ250内で算定されコンピュータ モニター260に表示される。総マイクロ波エネルギーの所望量がマイクロ波アプリケータ100に分配されると治療は完了する。別の実施形態では、E−フィールドプローブ175によって受けたE−フィールドフィードバック信号450から算出した総マイクロ波エネルギーは治療の長さを制御するのに用いられる。治療の効率を決めるために、乳房組織の針生検からの病理的結果とともに乳房組織がX線と磁気共鳴造影を含む乳房造影法でマイクロ波総エネルギー線量が実施される前後で造影される。
【0067】
別の実施形態のように、単独の侵襲性E−フィールドプローブ175は反対側の皮膚表面に配置された非侵襲性E−フィールドプローブ185と置き換わる。その2つの非侵襲性E−フィールドプローブによって測定されたトータルのパワーはマイクロ波移相器120によって調整され最低にされ(米国特許No.5,810、888のように)乳房の中央に集中したE−フィールドプローブとなる。この実施形態では挿入したプローブによる感染の危険はなく、皮膚に孔を空けプローブを挿入擦る過程で乳房皮膚の傷跡を残す危険もなく、腫瘍床を通過するプローブによって癌細胞を拡大させる危険もない。同様に、この方法の実施形態では温度プローブとE−フィールドプローブは乳房皮膚上に配置出来るので決められた単独の地域がない場合でもこの方法はうまくいく。
【0068】
好ましくはフェーズアレイの夫々のチャンネル(結節107の夫々の側)は電気的に可変のマイクロ波パワー増幅器130(0〜100ワット)、電気的に可変の移相器120(0〜360度)及び空冷の直線偏光矩形導波アプリケータ100を含んでいる。アプリケータ100はメリーランド州コロンビアのセルシオン社で製造されているモデルナンバTEM-2でよい。TEM−2金属導波アプリケータの望ましい対の矩形の開口部の大きさは6.5cm×13.0cmである。
【0069】
好ましい実施形態が約915MHzでのマイクロ波エネルギーを開示しているが、そのマイクロ波エネルギーの周波数は100MHzから10MHzの間である。マイクロ波エネルギーの周波数は902MHzから928MHzの範囲から選ぶことが出来る。実際、より低い周波数のエネルギーを癌組織を除外又は予防するのに使うことが出来る。
【0070】
好ましい実施形態では、夫々の導波アプリケータに分配される初期のマイクロ波パワーは20から60ワットの間とすることが出来る。組織の全治療に亘って、夫々の導波アプリケータに分配されるマイクロ波パワーは所望のマイクロ波エネルギー線量を分配し皮膚を過熱するのを避けるため、0から150ワットの範囲に調節することが出来る。
【0071】
アプリケータ100の矩形導波領域側壁の誘電負荷がTEMアプリケータマイクロ波放射のため良好なインピーダンスマッチング条件を得るのに用いられる。(チェンほか(Cheung et al.)、「誘電的に封入された悪性のマウスの腫瘍の直接接触加熱用双ビームTEMアプリケータ」Dual-beam TEM appicator for direct-contact heating of dielectrically encapsulated malignant mouse tumor)ラジオ科学(Radio Science)、Vol.12、No.6(S)付録81〜85頁、1977年;ゴーセリ(編者)Gautherie (Editor), 外部温熱療法加熱の方法(Methods of External Hyperthermic Heating)、スプリング−フェルラーグ(Springer−Verlage),ニューヨーク(New York)、33頁、1990年)。1977年のチェンCheungほかの論文はマウスの腫瘍とE−フィールドプローブを続けて加熱する対向する2つのノンコヒーレントなマイクロ波アプリケータの例は彼等の実験に使われなかったことを示している。導波開口部を通る空冷は導波のための入力単極供給用の平行反射接地平面として使われる孔あき伝導スクリーンの後ろに搭載したファン(図示せず)により行われる。導波の側壁と接触している誘電スラブの厚さを考慮にいれると空冷の効果的な断面寸法はTEM−2アプリケータでは約6.5cm×9.0cmである。高水分含量腫瘍組織と正常の乳房組織との間の915MHzでの誘電パラメータの差に基づいて、高水分含量腺管癌及び腺癌ならびに良性病変は正常の乳房組織より素早く熱せられると思われる。このように50%SAR領域は正常な組織をそのままにして高水分含量組織(癌性、前癌性、繊維腺腫及び嚢腫を含む良性病変)に集中するであろう。
【0072】
好ましい実施形態では、中心導体が1cmに延びた0.9mm外径(OD)の侵襲性E−フィールド同軸単極プローブ(半剛性RG−034)が組織に向けられた電場の大きさを測定するのに用いることが出来、治療前に電気移相器のために必要な相対フェーズを決定するのに用いられるフィードバック信号を提供することが出来る。この種の同軸供給単極プローブは圧迫した模擬乳房の直線偏光電場の正確な測定をするのに用いられてきている(フェンほか(Fenn et al.)「電磁適合性についての国際シンポジューム (International Symposium on Electromagnetic Compatibility)1994年5月17日−19日、566〜569頁」、フェンほか(Fenn et al.)、温熱国際ジャーナル(International Journal of Hyperthermia)、Vol.10、No.2、3月〜4月189〜208頁、1994年)。この直線偏光E−フィールドプローブが外径1.5mmのテフロン(登録商標)カテテール内に挿入される。熱電対プローブ(フィジテンプ インスツルメント、Physitemp Instrument.Inc,外径0.6mmテフロン(登録商標)カテテールに封入したT−タイプ銅コンスタンタン)が治療中腫瘍内の局部温度を測定するのに用いられる。これらの温度プローブは0.1℃の精度で100msの応答時間を有している。
【0073】
圧迫した生体乳房組織の加熱テスト
譲受人セルシオン社によって実施された1999年12月に始まったFDA承認のフェーズ1臨床研究の一部として最大寸法が3〜6cmの間の乳房腫瘍をもつ何人か志願した患者がE−フィールドプローブと温度プローブの両方が乳房裁縫に挿入される適応型マイクロ波フェーズアレイで治療された。患者は40分の温熱療法を受け約1週間後に乳房切除を受けた。この臨床研究はマイクロ波アプリケータに分配されたパワーの測定を含み、それが分配されたマイクロ波エネルギー線量の算出に用いられるが治療の継続時間を制御するのに用いられるわけではない。このフェーズ1の臨床研究に関するより詳細な情報はガードナーほか(Gardner et al.)、「初期乳癌のための集中マイクロ波フェーズアレイ温熱療法」(Forcused Microwave Phased Array Thermotherapy For Primary Breast Cancer) 腫瘍学外科年報(Annals Surg Oncol), Vol.9(4)、326〜332頁、2002年5月6日.
【0074】
E−フィールドプローブはフェンに与えられた米国特許No.5,810,888に開示されているように、腫瘍側にマイクロ波放射を標的とするよう適応型フェーズアレイ高速加速勾配探査アルゴリズムとともに用いられた。腫瘍内の侵襲性温度プローブによって検知された温度は治療中リアルタイムフィードバック信号として用いられた。このフィードバック信号は可変パワー増幅器のマイクロ波出力パワーレベルを制御するために用いられたが、腫瘍側の集中温度を43〜46℃の範囲に設定維持した。フェーズアレイの2つのチャンネルに分配されたパワーとフェーズはコンピュータ管理のもとに適応するようにディジタルアナログ変換器を用いて調節された。
【0075】
乳房圧迫板は低損失誘電材でマイクロ波場に対し殆ど透過性を有するアクリル材(プレキシグラス)から出来ている。圧迫板は1辺が約5.5cmの四角の切り抜き(開口部)を含み、最低限に侵襲性のプローブ(E−フィールド及び温度)の設置を助けるため小さな超音波変換器(公称長さ4cm)を収容する。切り抜きは皮膚を冷やす空冷も改善する。
【0076】
適応型マイクロ波フェーズアレイ治療での最近のマイクロ波温熱療法臨床テストからの結果に基づき、4.5〜6.5cmに圧迫された生体乳房組織において、138kJ(キロジュール又はkW秒に相当する)と192kJの間のマイクロ波エネルギー線量が下の表1に挙げられているように43℃に対応する24.5分から67.1分にわたる当量熱線量を作り出すことを出願人が認めた。
【表1】
【0077】
このように、総マイクロ波エネルギー線量は必要な加熱時間の推定に用いることが出来る。即ち、非侵襲性当量温度検知手段が侵襲性温度プローブの代わりとなるうることと、総マイクロ波エネルギー線量が治療の持続時間を管理するのに確実に用いることが出来ることを出願人は認識した。表1において、平均熱線量は45.1分であり平均総マイクロ波エネルギーは169.5kJである。これら4つのテストで、最大エネルギー値(192.0kJ)は平均から13%だけ変わり、最低エネルギー値(138.0kJ)は平均から14%だけ変わる。前に述べたように、これらのテストで用いられる乳房圧迫は血流を減少させ、治療のために必要とされるマイクロ波エネルギーへの血流の影響を除去するかもしれず、これらのテストで必要とされるエネルギーの小さな変化を説明するのを助けている。これら4つのテストの治療後の造影では一般に腫瘍にかなりのダメージがあるのを示しているが、一方 皮膚、乳房脂肪ならびに正常な腺、腺管及び連結部の組織には殆ど又は全くダメージがないのを出願人は認めている。
【0078】
本方法の好ましい実施形態によれば、治療の完了を決めるために導波アプリケータに分配される総マイクロ波エネルギーは25キロジュールから250キロジュールである。癌又は前癌組織を破壊するマイクロ波エネルギー線量の総量は約175キロジュールとなろう。併し、ある条件では必要とされるマイクロ波線量は25キロジュールと低い。本発明による別の実施形態では、400キロジュールもの高いマイクロ波エネルギー線量が癌性腫瘍細胞を完全に破壊するのに使われることもある。
【0079】
下の表2は、4つのテストの乳房組織圧迫厚さを挙げている。なお最小の圧迫厚(4.5cm)は分配される最小のエネルギー線量(138kJ)に相当し、この2つのことはテスト4で起こっている。出願人が認め理論的に下記のように証明されるように、癌性、前癌性、又は良性病変を予防あるいは破壊するのに効果的な治療にとって、圧迫厚さが小さいほど、マイクロ波エネルギー線量の必要量も少なくてよい。
【表2】
【0080】
これらの臨床研究から、治療される場所にエネルギーが集中出来るように2つのアプリケータの間の適切なマイクロ波フェーズと同様、夫々のアプリケータに分配されるマイクロ波パワーレベル(P1、P2)として適切な初期レベルを選ぶことが大切であることが明らかになった。圧迫した乳房の実験から表3に挙げたように4つのテストのために次のデータが得られた。
【表3】
【0081】
表1と表3から見られるように、夫々のアプリケータへの30〜40ワットの初期マイクロ波パワーがかなりの熱線量を達成するのに十分であった。更に、アプリケータ間の初期相対マイクロ波フェーズは−10電気角度から−180電気角度まで変わり、常にマイクロ波放射線をE−フィールドセンサーで捉えていることを除いて特定の方向を追うことはない。
【0082】
表2と3における夫々同じような圧迫厚さ6.5cmと6.0 cmに対し、マイクロ波パワーレベルは治療始めの数分間一定に保たれる。これは腫瘍の中の直線的な温度上昇を測定するためで、このことが実際SARの数値を与えている。30ワットのパワーで腫瘍内で1℃の温度上昇を得るには2.5分かかることが判った。パワーが40ワットだと1℃温度が上がるのに1.5分かかる。
【0083】
温熱治療の間、数分以上も41℃をかなり超える温度にならないように皮膚温度をモニターする必要がある。皮膚のための当量熱線量が算出され(セパレトほか(Separeto et al.)、放射腫瘍学生物物理学国際ジャーナル(International Journal of Radiation Oncology Biology Physics) Vol.10、787〜800頁、1984年)フィードバック信号として使用できる。一般に数当量分熱線量以上の分配を避けることが必要である。本発明によって高い皮膚温度を避けることは治療中手動又は自動コンピュータ制御のいずれかでアプリケータに分配される個別のパワー(P1、P2)を調節することによって達成される。
【0084】
治療前及び治療中、マイクロ波エネルギー線量を計画し調整するためにドップラー超音波法が腫瘍及び周囲の乳房組織の血流を測定するのに用い得ることを出願人は認めている。例えば、乳房が圧迫され且つ/又は腫瘍が治療温度に熱せられたときに、腫瘍血流速度が低下するが、そのときエネルギー線量は少なくてよい。一方、乳房腫瘍組織の針生検からの水分及び誘電パラメータが測定され、治療前必要なマイクロ波エネルギー線量を決定するのに用いることが出来る。例えば、腫瘍の中の水分含量と電気伝導度が高ければ高いほど必要なマイクロ波エネルギー線量は低くてよい。上記変数に加えて、腫瘍の大きさはマイクロ波エネルギー線量の必要量に影響を及ぼす。腫瘍が大きければ大きいほどより小さな腫瘍より加熱がさらに困難になり、より大きなマイクロ波エネルギー線量が必要になる。腫瘍の加熱性を評価するための少量のマイクロ波エネルギーを分配した初期治療計画期と続いての必要なマイクロ波エネルギー線量全部を使っての完全治療が行われる。
【0085】
単純化したマイクロ波放射理論
体の近くの場における温熱治療アプリケータからのマイクロ波エネルギーはアプリケータからの半径距離rの逆数として一部が変化する電場の大きさを有する球面波として放射する。更に、その振幅は胴体組織の減衰定数αと胴体内を横切る(即ち深さ)距離dの積の指数関数として崩壊する。電場フェーズはフェーズ伝播定数βと距離dの積によって距離とともに直線的に変化する。単純化するために、対向する2つのアプリケータをここでアプリケータの放射はおおよそ平面波によるという仮定に基づいて解析する。数学的には組織における深さに対する平面波の電場はE(d)=E0exp(−αd)exp(−iβd)で与えられ、ここでE0は(一般に振幅とフェーズ角度で表される)表面電場であり、iは虚数である(フィールドとハンド(Field & Hand)「臨床温熱治療の実際についての紹介」(An Introduction to the Practical Aspects of Clinical Hyperthermia), テイラーとフランシスTaylor & Francis、ニューヨーク(New York)263頁、1990年)。
【0086】
915MHzのマイクロ波周波数での平面波電磁エネルギーは、腺管や腺乳房腫瘍のような高水分含量組織で1cmあたり約3dBの割合で減衰し、正常の乳房組織で約1cmあたり約1dBの減衰である。このように、1つの放射線アプリケータは深い組織に放射するエネルギーに較べて介在する表面の体組織に吸収されるマイクロ波エネルギーの重要なフラクションを有しており、表面組織にホットスポットを造るようである。皮膚表面の空気又は水による冷却は最大で0.25〜0.5cmの深さまでしか皮膚を保護しないので、ホットプレートを避けるためには、最初のアプリケータと同じマイクロ波放射振幅を有する第2のフェーズコヒーレントなアプリケータを導入する必要がある。その第2のフェーズコヒーレントなアプリケータは深い組織に分配するパワー(従ってエネルギー)を理論的には1つのアプリケータと較べて4倍と増加させることが出来る(フィールドとハンド、290頁、1990年)。
【0087】
2つ又はそれ以上のアプリケータ(フェーズアレイとして知られる)からの電磁放射のフェーズ特性は異なった組織に分配されるパワーの分布にはっきりした影響を有することがある。均一な組織における相対比吸収率(SAR)は電場の大きさの平方に近いものである1/2E1/22。SARは与えられた時間間隔に亘る温度上昇に比例している。簡単化したケースとして、マイクロ波放射が中央の組織側に集中している均一な乳房組織が下に詳細に描かれている。フェンほか「電磁適合性についての国際シンポジュームInternational Symbosium on Electromagnetic Compatibility」仙台、日本、10号、No.2、1994年5月17〜19日、566〜569頁、に記載されているように、模擬乳房内の多数のマイクロ波信号の影響は無視することが出来る。
【0088】
均一な正常の乳房組織(大体の誘電定数12.5で電気伝導度0.21S/m(シャウハリーほかChaudhary et al1984とジョアンズほかJoines et al.、1994からの平均値)は915MHzで約9.0cmであり、マイクロ波損失は1dB/cmである。減衰定数αは0.11ラヂアン/cmであり伝播定数βは0.69ラヂアン/cmである。(模擬体の厚さが4.5cmであるのに対し、左側に放射する単独アプリケータの電場は表面でE0であり、中央位置(深さ2.25cm)では−i0.8E0(iは90度フェーズシフトを表す)であり、そして右表面では−0.6E0である。2つのフェーズコヒーレントなアプリケータを組合わせると両表面で0.4E0の電場、中央(深さ2.25cm)で−i1.6E0の電場を与える。このように、中央SARに較べて表面が16倍もとかなり低いSARの乳房がある。乳房組織の4.5cmを通過したマイクロ波場の経験した180度フェーズシフトは、0度フェーズシフトで組織に入ってくる場を一部消去又は無効にする。中央焦点から離れたマイクロ波の破壊的な干渉により、乳房組織の表面がより低い温度になると期待される。対向する皮膚表面のより低いSARの測定と実施は効果的にマイクロ波エネルギーを乳房深く集中させる。
【0089】
本発明による適応性フェーズアレイは共通の振動子105によって供給され、E−フィールドフィードバックプローブ175にマイクロ波エネルギーを集中させるために2つの電気的に調整可能の移相器120を含む2つのマイクロ波チャンネルを用いる。この独創的な適応性フェーズアレイシステムは非適応性フェーズアレイをこえた大きな利点を有している。2チャンネルを有する非適応性フェーズアレイは理論的にその2つの波動が夫々180度フェーズ外であるか、完全にフェーズ内であるか、又は一部フェーズ外であるかによってE−フィールドが0か、最大か、中間値をとることが出来る。即ち、本発明によれば、マイクロ波アプリケータに分配されるマイクロ波フェーズは、治療前、治療中に−180度から180度まで調節可能であり乳房に集中した場をつくることが出来る。
【0090】
本発明による適応性フェーズアレイが組織内の全ての散在する構造の存在のもとに自動的にE−フィールドを集中するので、ターナーTurnerの米国特許No.4,589,423に記載された手動調節の、又は、治療前の計画的に制御されたフェーズアレイに較べて、この種のアレイはより信頼性の深く集中した加熱を提供する。更に、本発明の好ましい実施形態による適応性フェーズアレイは腫瘍の場所でE−フィールドを散らすか変えてしまうかもしれない侵襲性の金属製温度プローブを用いていない。
【0091】
マイクロ波エネルギーの算出
電気エネルギー消費量は普通キロワット時の単位で表される。数学的に、アプリケータから分配されたマイクロ波エネルギーWは、
W=ΔtΣPi. (1)
で表される (ビトロガン(Vitrogan)、電気と磁気回路の要素(Elements of Electric and Magnetic Circuits), リンハートプレス(Rinehart Press)、サンフランシスコ(San Francisco)、31〜34頁、1971年)。上記等式において、Δtはマイクロ波が測定される一定の間隔(秒)を表し、合計ΣはI番目のパワー(ワット)をPiで表す全治療間隔の総和である。
【0092】
マイクロ波エネルギーWはジュールとも呼ばれるワット-秒の単位を有する。例えば、3つの連続する60秒間隔において、もしマイクロ波パワーが夫々30ワット、50ワット、60ワットであるとき、180秒内に分配される全マイクロ波エネルギーはW=60(30+50+60)=8,400ワット-秒=8,400ジュール=8.4kJと算出される。
【0093】
厚さ(Dで表される)が変わる均一な乳房組織の中央位置に2つの対向するアプリケータによって集中される単位時間W‘(’はプライムを表す)あたりのエネルギーをよく理解するために、つぎの計算を考える。P1とP2を夫々2つのアプリケータに分配されるパワーとする。個々のアプリケータによって放射される電場はアプリケータに分配されるパワーの平方根に比例する。左右対称と仮定すると、放射された場は2つのアプリケータから中央の集中位置で同相である。夫々のアプリケータから同量のパワー即ちP1=P2=Pで平面波照射と仮定すると、中央深さで単位時間あたりの集中エネルギーは
W(D)=|E|2=4Pexp(−αD) (2)
等式(2)は表4と図7に示すように、0.11ラヂアン/cmに相当する減衰定数を有する厚さが4cmから8cmまで変わる正常の乳房組織の中央深さでの時間あたりの集中した915MHzエネルギーを算出するのに用いられた。
【表4】
【0094】
与えられたパワーレベルに対して焦点位置が皮膚の方へ移るにつれてより高いエネルギーが発生する。
【0095】
当量熱線量の算出
43℃関連累積又は総当量熱線量は、総和として算出される。(サパレトほか(Sapareto et al.), 放射腫瘍学生物物理学国際ジャーナル (International Journal of Radiation Oncology Biology Physics)、Vol.10,787〜800頁、1984年)。
【0096】
t43℃当量分=ΔtΣR(43−T)、 (3)
ここでΣは治療中一連の温度測定にわたっての総和であり、Tはその一連の温度測定値(T1、T2、T3 )であり、Δtは測定間の一定の時間間隔(秒単位と分に換算)RはTが43℃より大きければ0.5に等しく、43℃より小さければ0.25に等しい。当量熱線量算出は乳房組織及び皮膚に起こりうる熱による損害を評価するのに有用である。
【0097】
シミュレートした乳房組織におけるマイクロ波比吸収率算出の詳細
正常な乳房組織とマイクロ波放射に曝された腫瘍を有する正常な乳房組織の加熱パターンを推定するために3次元比吸収率(SAR)加熱パターンを定差タイムドメイン理論とコンピュータシミュレーシオンを用いて算出した。(タフラブ(Taflove),コンピュータによる電気力学、定差タイムドメイン法 (Computational Electrodynamics:The finite-difference time-domain method), アルテックハウス社(Artech House, Inc.)、マサチューセッツ州ノーウッド(Norwood, Massachusetts)、642頁、1995年)。図7に描かれているように、これらのシミュレーションは915MHzで作動する対向する2つのTEM−2導波アプリケータ(セルシオン社、メリーランド州コロンビア)をモデルにして行われた。アプリケータはコヒーレントに組合わせて6cm厚の均一な正常(脂肪と腺の混合)乳房組織の中央位置に放射線を集中させた。アプリケータは適応型フェーズアレイ乳房温熱療法システムでの乳房圧迫に用いられる板を模擬するプレキシグラスの薄板を通って放射すると想定している。
【0098】
個々の金属製導波が高誘電材の側壁に装填され、導波開口部内の放射線に適合し形成するのに用いられる。導波アプリケータは図8のようにE-フィールドをy方向に並べて直線的に偏光されている。3mm厚のプレキシグラスの平らな板が個々のアプリケータに隣接して導波開口部に平行になっている。対向する2つのTEM−2アプリケータの間に6cm厚の均一正常乳房組織のファントムがある。残りの容積は空気を模した立方のセルで満たされている。
【0099】
SAR分布は電場の大きさを二乗し組織の電気伝導度を掛けて算出された。SARはしばしば100%という最大SAR値に関連したレベル(50%が普通効果的な加熱ゾーンとされている)で記載されている。SARは血流と熱伝導効果を無視して単位時間当たりの温度の初期上昇に比例する。
【0100】
SARパターンは図9から13までに示すように均一正常な乳房組織に対して3つの主要な平面(xy、xz、yz)において算出される。図9は均一正常乳房組織におけるSAR側面図(zy面、z=0)パターン(75%と50%の輪郭)を示す。そのパターンは一般に釣鐘形であり、TEM−2アプリケータの間の中心にある。図10はSARパターン(75%と50%輪郭)上面図(xz面、y=0)を示す。そのパターンは3つの葉状楕円形の50%SAR領域に囲まれた小さな楕円形の75%SAR領域を示している。75%SARのサイズの小ささはこの種のアプリケータの放射した電場のモードの形によるものである。図11はSARパターン(75%と50%の輪郭)の端面図(yz面、x=0)を示す。そのパターンはほぼ導波開口部の大きさの3つの葉状楕円形の50%SAR領域に囲まれた小さな円形の75%SAR領域を示している。
【0101】
図9から11までに示した結果は深い乳房の組織の大きな容積がTEM−2導波アプリケータのある適応型フェーズアレイによって加熱でき、一方表面の組織は殆ど加熱されないことを示している。この大きな加熱場に曝されている高水分含量の組織があればその周囲の正常な乳房組織に比べ優先的に熱せられてしまうであろう。選択(優先)加熱というものを示すために、腫瘍を擬した直径1.5cmの2つの球形(誘電定数58.6、伝導度1.05S/m)が5cmの間隔をおいて正常の乳房組織に埋め込まれ、その上面図のFDTD計算が図12に示されている。この結果を図10と比較すると、SARパターンが大きく変化し2つの高水分含量腫瘍領域が選択的に加熱されることが明らかである。選択加熱の鋭さを示すためにx=0cmの所でのz軸に沿った算出SARパターンを13図に示す。2つの腫瘍のある場所に鋭いピークがあり、周囲の正常な乳房組織と比較した高水分含量の癌の選択加熱をここでも示している。繊維腺腫及び嚢腫のような良性の乳房病変にも同種の結果が予想される。
【0102】
図14は、図5の外部に集中した適応性フェーズアレイ温熱療法システムに導波アプリケータ100に適用した2つの安全手段が付いたものを示している。好ましい実施形態では、幅1から2cmの薄い金属性遮蔽ストリップ605が矩形の導波開口部600の上部を覆って漏れた放射能が胸郭壁領域に近い乳房の基床に近づくのをブロックしている。薄いマイクロ波吸収パッド610(例えば、0.125インチ厚カミングマイクロ波社 (Cuming Microwave Corporation) MT-30吸収シート、減衰40dB/インチ)が、導波アプリケータ100の全上部表面を覆う(例えば、セルシオン社TEM2導波アプリケータ)。そのマイクロ波吸収パッド610は、マイクロ波エネルギーを乳房の基床と胸郭壁領域に向けて放射しうるマイクロ波表面流を減衰又は抑えることが出来る。マイクロ波吸収パッド610は、導波アプリケータの上部表面に接着又は他の方法で付けられている。
【0103】
図15はマイクロ波加熱実験のための乳房を擬するのに用いる簡単なT形状の模擬乳房700の両側に乳房圧迫板(パドル)200が付いた外部集中適応型フェーズアレイ温熱療法アプリケータ100の側面図である。アプリケータ100はパッド610とマイクロ波遮蔽ストリップ605を有し、追加の絶縁パッド620が圧迫板200と胸郭壁又は乳房組織を支える筋肉を現す模擬乳房T700の間に置かれて付けられている。T形状の模擬体密閉箱は好ましくはプレキシグラス又は他のプラスチック材から造られ圧迫板200の一部になっている。好ましい実施形態では、圧迫板200の上部Tセクションは、図15に示すように、パッド610とパッド620の間にある距離まで伸びているのが好ましい。T形状模擬乳房700の上部は筋肉相当模擬組織を含み(Mゴースリー編者(M. Gauthrie, editor):外部温熱療法加熱の方法(Methods of External Hyperthermic Heating) スプリング−フェルラークSpringer Verlag,11頁、(シヤウ組成 Chou formlation 1990年)下部は脂肪質ダウ相当模擬組織(J.J.W.ラゲンディック(J.J.W.Lagendijk )とP.ニルソン(P.Nilsson),「温熱療法ダウ:マイクロ波/放射線周波数温熱療法過熱システムをテストするための脂肪と骨相当模擬体」(Hyperthermia Dough: A Fat and Bone Equivalent Phantom to Test Microwave/Frequency Hyperthermia Heating Systems)薬学と生物学における物理(Physics in Medicine and Biology)、Vol.30、No.7、709〜712頁、1985年)。パッド620は楽なように柔らかくなっており漏れたマイクロ波エネルギーを減らすためにマイクロ波吸収材を含んでいる。
【0104】
アプリケータ100はギャップ領域635がアプリケータと乳房組織の間に設けられるように設計されている。ギャップ領域635はギャップに向いている外側の空気管又はファンからの空気流で乳房の夫々の側の基床と胸郭壁領域近くの領域を冷やしている。好ましい実施形態では、ロックウッドプロダクト社、オレゴン州レークオスエゴ、Lockwood Product, Inc., Lake Oswego, ORによって造られているようなフレア又は円錐形のノズルのついたプラスチックの空気管が空気の流れをギャップ領域635に導いて乳房領域を冷やすのに用いられる。
【0105】
好ましい実施形態では光ファイバー温度センサープローブ415とE−フィールド、マイクロ波集中プローブ175は互いに平行であり、1つのカテテール内に共存している。光ファイバー温度センサーの先端は腫瘍の場所又は焦点位置190内に位置し、E−フィールド集中プローブ175は圧迫板の間に測定したのと同じ腫瘍の深さに位置している。腫瘍内の光ファイバー温度センサーはフルロロプチック型でよく、非金属のものでマイクロ波エネルギーと干渉しない(M.ゴースリー編者(M.Ganthrie, editor:外部温熱療法加熱の方法(Methods of External Hyperthermic Heating) スプリング−フェルラークSpringer Verlag,119頁、1990年)。金属E−フィールド集中プローブ175は非常に細い金属の同軸ケーブル0.020インチ径(UT−20)から構成されている。E−フィールド集中プローブ175の先端部は、同軸ケーブルの外側ジャケットから約1cm延びている同軸ケーブルのセンターピンから構成されている。E−フィールド集中プローブの尖端は光ファイバー温度センサーの尖端から約0.5cmの所に位置している。
【0106】
図16は乳房が湾曲していて、より現実的な形の模擬乳房710を示す。その乳房は湾曲している。この模擬体のために、湾曲した乳房の部分は、乳房の形に合う圧迫可能な厚い模擬材が充填されたプラスチックの袋(ポリエチレン)を用いて作ることが出来る。圧迫可能な超音波乳房イメージ模擬体がマイクロ波実験にも用いることが出来る。図16において、ラベル7、8の位置は胸郭壁領域近くの乳房基床に近い皮膚表面上にある。更にこの図が示すように、金属製同軸のE−フィールド集中プローブ175の一部(皮膚のエントリーポイント下の下部)は乳房組織で遮蔽されず、2つの導波アプリケータ100によって放射されたマイクロ波エネルギーに直接曝されている。そのマイクロ波エネルギーが露出した金属製同軸ケーブルを過熱しE−フィールド集中プローブが皮膚にはいる所の皮膚の火傷を起こすことがある。そのような場合、マイクロ波集中過程が完成したあと乳房を加熱する前にE−フィールド集中プローブ175を取除くことが望ましい。好ましいE−フィールド集中プローブ175はセンターピンが伸びてモノポールアンテナを形成するような同軸ケーブルである。併し、集中プローブは、金属材かカーボン材のどちらかの平行な伝送線路に接続された単極又は双極のアンテナを用いて作成することも出来る。代わりに、集中プローブは、皮膚のエントリーポイントでの金属加熱効果を避けるため、光ファイバーケーブルに結んだマイクロ波から光に変換する変換器を有する単極又は双極アンテナとすることが出来る。光学変調器は例えばマッハツェーンダー変調器Mach Zehnder modulatorである。
【0107】
図17は圧迫板200とパッド620を有する安全性を改良した方法の詳細な3次元図を示している。圧迫板の端部210は板の垂直と水平面で直角を形成することとその端部は胸郭の壁と乳房組織に隣接しているので皮膚を傷つける原因となりうる。従って、マイクロ波吸収パッド620は端部210と胸郭壁の間に配置される。マイクロ波吸収パッド620は2つの目的に役立っている。第1にパッドは柔らかい発泡材を含み、乳房が圧迫板の端部210に対して圧迫されるに従って摩擦や圧力から乳房皮膚を守る。第2に、パッドはマイクロ波吸収材を含んでおり、近くの組織を過熱するかもしれないアプリケータ100からの漏れたマイクロ波放射線を減衰する。圧迫板200あるいはパドルは1つ又はそれ以上の矩形の開口205を有し乳房組織を造影するために皮膚に超音波変換器を接触させ、その間に、E−フィールド集中プローブと温度プローブが乳房腫瘍領域に挿入される。本発明による他の実施形態によれば、図18は導波アプリケータ100と乳房皮膚からそれている圧迫板表面に接着又はその他の方法で付けられた金属製遮蔽ストリップ615を有する圧迫板200の側面図である。
【0108】
遮蔽実験結果
上に論じたように、図15は乳房腫瘍治療のための外部から集中した適応型フェーズアレイマイクロ波温熱療法の幾何学的配置を示す。テストにおいては915MHzで放射する2つのセルシオン社TEM−2マイクロ波アプリケータが温熱療法を誘発するのに用いられた。単純化のため、患者の組織はシミュレートした乳房組織を下部にシミュレートした筋肉組織を上部に含めたT形状のプレキシグラス箱から構成した模擬体で表されている。更に、筋肉模擬組織からなる(約1.5cm直径)シミュレートした乳房組織が位置1に示されている。7つの温度プローブ(No.1からNo.7)がこれらの実験に用いられた。プローブ1は光ファイバー温度プローブであり、残りのプローブは熱電対プローブで乳房組織のシミュレートした皮膚の外側に静止している。プローブ1はシミュレートした腫瘍位置が占めている所望の焦点位置190に配置された。プローブ2と3は第1次マイクロ波場の外の圧迫パドルの上部隅に配置された。プローブ4と5は場の強さが最大のマイクロ波場の中央に配置された。プローブ6と7はプローブ4と5の上に配置されたがその場所は場の強さが低いと思われる。E−フィールド集中プローブ175もまたプローブ1と同じ深さに置かれてマイクロ波エネルギーを集中する。E−フィールド集中プローブ175と光ファイバー温度プローブ1は共通のカテテールの中に挿入された(テフロン(登録商標)、外形1.65mm)。
【0109】
夫々のチャンネルへのマイクロ波が70ワットでアレイの中の移相器は6cm厚の模擬乳房内の中央プローブ位置No.1に適応的に集中された2つの実験が行われた。最初の実験では、図5に示すようにマイクロ波吸収器又は金属製遮蔽物は用いられなかった。第2の実験では、図15に示すように、マイクロ波吸収パッドと開口部の上部(2cm)を覆う金属製ストリップ遮蔽物が用いられた。夫々の実験において、個々の測定センサーのための初期温度スロープ(1分あたりの度)は加熱の最初の30秒について算出された。
【表5】
【0110】
胸郭壁表面位置はシミュレートした腫瘍位置より早く熱くなる。このことは図19のグラフに示されている。
【表6】
【0111】
表6の結果に示すように、シミュレートした腫瘍位置は胸郭壁領域の表面を含む表面位置よりかなり急速に熱くなる。このことは図20のグラフに示している。従って、安全性を改善すると、腫瘍はさらに急速に熱くなり、センサー位置2と3の温度スロープは安全性の改善なしの場合の半分である。これら2つの実験の熱的結果は、明らかにマイクロ波吸収パッド及び導波アプリケータの上部を覆う金属製遮蔽ストリップの胸郭壁近くの表面加熱を緩和する効率を示している。センサー位置4と5での温度スロープは安全性の改善によって増加したが尚腫瘍温度スロープより少なくとも2倍低かった。追加の空気流や冷却空気は表面加熱を更に緩和する。
【0112】
小さい胸部の治療(女性と男性)
男性や女性の胸部が小さい(向かい合うフェーズアレイアプリケータによって形成された治療用開口部に較べて)か、腫瘍がフェーズアレイアプリケータの治療用開口部の外側にあるときのような場合、胸部腫瘍の加熱方法として代わるべき物を考える必要がある。図21は腫瘍が図21の点線101で示されるアプリケータの上部よりやや高い位置にあるうつぶせ状態の圧縮胸部の側面図を示している。このように、腫瘍は圧縮板200によって作られた治療用開口部のちょうど上縁に位置し、そのあたりにアプリケータ100の単極フィード104が配置されている。腫瘍の位置は男性か女性の患者の胸部が小さい結果からくるものであるか、ちょうど腫瘍が胸郭により近いのである。これらの場合、腫瘍がアプリケータ100の第一次加熱フィールドの外側にあるので、加熱は難しい。上述のように、図21の例はその患者がうつ伏せになったときの方法を示し、垂直方向はプラスのy軸で示されている。
【0113】
本発明による代替治療方法の構成は、図22に示すように、患者がうつ伏せ状態のとき乳癌を加熱するように腫瘍にむけて熱を放射するように取り付けられた単極フィード104つきの単一の空冷エネルギーアプリケータ100を用いている。アプリケータ100は単極104を内部につけた矩形または他の形の導波管であってよい。アプリケータ100の導波管の開口部は胸部の上に位置して、概要が図22から26に示されるように、腫瘍または治療する組織が導波管の中間即ち中央に、又は非常に近くにあるようにしなければならない。うつ伏せ位置でぶらさがった乳房とアプリケータ導波管100の位置の側面図が図22に示されているが乳房は小さく女性または男性のいずれかのものであろう。図22の腫瘍はアプリケータ100の第一次加熱領域の内側にあるので、単一アプリケータ100のエネルギーは比較的容易に適当な温度まで腫瘍を加熱する。この単一アプリケータ加熱方法は図5と図14と関連して上に記載されたものと同じ温度監視、アプリケータへのパワーの制御、治療の終了方法を用いている。
【0114】
アプリケータ100は非接触直接エアカップリングであるか又は低損失メディアと直接接触するか(図27と関連して下に述べられたように)のいずれかであるように設計されている。即ち、アプリケータ自体が治療される胸部の皮膚に接触するのではなく、その代わりに空気が流れるギャップ106が治療される乳房に連結を提供する。ギャップ106を通過して流れる空気の温度は状況によって冷凍空気温度から暖かい温度まで変わり異なった医薬上の効果を齎す。エネルギーを治療する胸部にカップルさせる空気の温度範囲は0℃から50℃の範囲でよい。温度変化は治療個所を事前条件出しするか、及び又は、治療した個所の治療後処理のコンディショニングに使うことが出来る。例えば、いくつかの場合には、所期の治療効果を達成するために種々の深さに皮膚または組織が冷却されるか加熱されるべきかを示唆している。
【0115】
本発明による他の実施形態では、治療中加熱された組織の温度を監視するために腫瘍の中に温度プローブを挿入してもよい。これらの温度測定は治療中マイクロ波パワーを制御するのに用いても良い。23図はx軸に沿った図で、患者はうつ伏せになり温度プローブ410が電場に対しほぼ垂直の方向に腫瘍の中に挿入されている。それに代わって、24図に示すように、患者が仰向けになり胸部腫瘍が胸部の上から加熱されてもよい。即ち、アプリケータ100はうつ伏せ状態の患者の下から、仰向け状態の患者の上まで移動しアプリケータから放射されたエネルギーが胸部940の上にあるようにしている。25図は患者があお向けになり、温度プローブ410が電場に対してほぼ垂直な方向に腫瘍の中に挿入されている、x軸に沿った図である。なお、仰向けになった患者にとって、重力のため乳房はうつ伏せの位置の乳房(重力が乳房組織を胸郭から遠去かるように引っ張る)に較べてより平らになる(重力が乳房組織を胸郭の方向に引っ張る)傾向にある。仰向け位置のほうが胸部組織を平らにして胸部皮膚に対して胸部腫瘍の深さを減少させるのに有利である。うつ伏せ位置は治療領域を胸郭領域より離れたところに保持し胸郭組織のために安全な余地を提供する点で有利である。
【0116】
ある場合には、患者がうつ伏せまたは仰向け状態のいずれかにあって、患者の胴を一周する、胸部の幅に匹敵する幅を有する布バンド1000によって、胸部を圧縮するのに有利である。図26は、患者がうつ伏せ位置にあるときに布バンドで胸部を圧縮している例を示している。この方法で胸部を圧縮すると図26に描かれているように胸部組織を平坦にし、治療される腫瘍又は組織の近辺の血流を減少させ、皮膚と比較しての腫瘍または組織の深さを減少させ、結果として治療される腫瘍または組織を加熱しやすくしている。圧縮バンドはナイロンのような薄い布タイプの材料で作られていることが好ましく、アプリケータからの空気がこの圧縮バンドを通って流れ胸部皮膚を冷却する。1つの例として、胸部圧縮バンドが治療中管状のトップガーメントとして着用されている。単一アプリケータ治療方法が圧縮つき或いは圧縮なしで或る種の患者には有利に利用されている。同様に、単一アプリケータ治療が、患者がうつ伏せ又は仰向けに横たわっている状態で行われている。単一アプリケータは胸郭のある領域を直接加熱することが出来るので女性の乳癌同様、男性の乳癌の治療や予防とこれらの癌の再発予防に有効であることが予見できる。
【0117】
小さな乳房の患者が乳癌又は乳癌予防の治療を受ける場合、単一アプリケータが腫瘍または乳癌の大部分が発生する乳房上部に向けられる。好ましい実施形態において、約90キロジュール(50ワット30分のマイクロ波パワー)のマイクロ波エネルギー線量が腫瘍塊除去術前の胸部腫瘍及びDCISのための腫瘍塊除去術に続く顕微鏡的な乳癌細胞の破壊のために乳房に与えられる。乳癌予防のためのタモキシフェン供与期間の間、約1年毎に同様な線量が多角的な治療の各々に与えられる。温熱療法治療の間、約41℃以下に皮膚温度を保つために皮膚温度センサーがチェックされ単一チャネルのマイクロ波パワーが調整される。別の実施形態では、温度センサーが治療領域内に置かれ、測定された腫瘍温度が、温熱治療アプリケータに与えられたマイクロ波パワーを、120分から240分の間の当量熱線量が腫瘍又は胸部組織治療領域に与えられるように、制御するのに用いられる。
【0118】
図27は別の実施形態を示しているが、その実施形態では、アプリケータ100が水1500のような低損失メディアで満たされ、プラスチック又は他の非伝導性の水を通さない材料から出来た袋がマイクロ波エネルギーを胸部組織に結合するため大きな水の丸薬1010を形成する導波アプリケータの口を封入している。大きな水の丸薬1010は、胸部組織を圧迫し乳房を圧縮して治療領域の血流を減少させ皮膚表面と胸部腫瘍又は治療される胸部組織の間の組織の厚み即ち距離を減少させる。その水は蒸留されるか脱イオン化され胸部組織に対する循環のために冷却又は加温される。水は当業者にとって公知の方法で接続された管(図示せず)を通して導波アプリケータ100の中及び胸部940の回りに循環することができる。
【0119】
上述のマイクロ波実施形態に加えて、電磁気、超音波、高周波、レーザーなど当業者に公知の集中エネルギー源を含むいずれかのタイプの集中エネルギーをほかの実施形態では使用出来るのではないかと出願者は予見するものである。即ち、組織のある範囲を加熱又は除去するよう集中出来るエネルギー又は集中出来る異なったエネルギーの組み合わせが出願人の発明による方法に用いることが出来る。集中したエネルギーは第1次の加熱源で、標的領域(腫瘍)での加熱効果を増進又は高める物質の注入と組合わせてもよい。その物質としては生理食塩水あるいは金属又は他の伝導物質と水を組合わせたものとすることも出来る。伝導物質とは例えば金属製外科用乳房クリップのようなもので標的領域に分配された熱の量を高める物質である。
【0120】
注入された物質は標的領域の加熱効果を高めるので、標的領域の選択加熱を得る代替手段である。従って、生理食塩水あるいは金属と水を混ぜたもの注入と組合わせた時の非集中エネルギーは十分に標的領域を加熱して癌性の細胞及び/又は良性細胞を除去するであろうと出願人は予見するものである。このように、本実施形態に用いられたエネルギーアプリケータは非集中エネルギーを分配するアプリケータであってもよいのである。本発明に基づく非集中エネルギーのみを用いるような実施形態において、E−フィールドプローブは必要ではない。
【0121】
この発明は、その好ましい実施形態を参照して詳しく示し記載されているのであるが、当業者にとって形態や詳細における種々の変化は添付された請求の範囲に規定された発明の精神と範囲から逸脱することなく可能であることは理解されるであろう。例えば、ここに記された温温熱療法システムは乳癌や良性乳房病変の治療と関係するものであるが、良性の前立腺肥大(BPH)のような良性の病気は勿論、その他前立腺、肝臓、肺、及び卵巣のような型の癌の治療にも本発明は適用可能である。同様に、ここに開示された安全手段は他の付属器官や脚、腕、胴のような人体の部分のマイクロ波又は高周波温熱療法治療に適用出来ることも理解されるであろう。
【0122】
またアレイアンテナアプリケータの数が多かろうと少なかろうと一つであろうと同じ結果が得られることも理解されるであろう。更に、ここに開示された手段はノンコヒーレントなシステムにおけるノンーコヒーレントな多重アプリケータ治療システムで用いることが出来て場に集中するプローブは必要としないことも理解されよう。乳房又は他の臓器の圧迫が望ましくない又は適切でない場合には、圧迫ステップは省略することが出来る。圧迫ステップを用いないのであれば、吸収パッドや他の金属製遮蔽機能は用いられなくても良い。ここに記載された方法及び技術のあるものは超音波温熱療法システム特にフィードバックコントロールにエネルギー線量を用いるものに適用可能である。この方法は放射線療法の効果を高め感熱リポソームを用いた標的とした薬物の配布及び/又は標的とした遺伝子配布に用いることが出来る。本発明はまた工業材又は食材の加熱に用いるような非医療温熱療法システムにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0123】
本発明は次の詳細な説明を添付した図面を参照して読むとより理解される。この図面においては全体に亘って同じ参照番号は同じ構成要素を述べているものであり、
【図1】は、女性の乳房の詳細な側面図である。
【図2】は、乳房の腺管及び腺組織の腺管癌及び小葉癌の進行例を示す。
【図3】は、正常な乳房組織と3つの異なった研究での乳房腫瘍の誘電定数と電気伝導度の測定値を示す。Bのラベルをつけた研究(バーデットBurdette)はCとJと称する他の研究の間の測定値の差を説明するための乳房皮膚を通しての測定についてのものである。
【図4】は、乳房脂肪、腺管組織/結合組織、良性繊維腺腫と乳癌(キャンプベルCampbellとランドLand1992年)の水分含有量測定値を示す。
【図5】は、圧迫下の乳房を加熱するための本発明によるシステムを示す、
【図6】は、患者がうつぶせで乳房が圧迫されていてE-フィールドプローブが乳房の所望の焦点深さに挿入されている状態を示す。
【図7】は圧迫された乳房組織の厚さの関数として算出した焦点マイクロ波エネルギーを示す。
【図8】は乳房加熱に用いられるコンピュータシミュレーションした2つの対向マイクロ波導波管アプリケーターの立体図を示す。
【図9】は、均質な正常乳房組織内の915MHzでの比吸収率(SAR)加熱パターンの中央焦点での計算で得た図の側面図を示す。
【図10】は、均質な正常乳房組織内の915MHzのSAR加熱パターンの中央焦点での計算で得た図の平面図を示す。
【図11】は均質な正常乳房組織内の915MHzのSAR加熱パターンの中央焦点での計算で得た図の端面図を示す。
【図12】は、夫々直径1.5cmでお互いに5cmはなれた2つのシミュレートした乳房腫瘍があるときの915MHzSAR加熱パターンの計算で得た端面図を示している。50%SAR輪郭が選択的加熱を示す腫瘍と並んでいる。
【図13】は、夫々直径1.5cmでお互いに5cmはなれた2つのシミュレートした乳房腫瘍があるときの915MHzSAR加熱パターン(図12の中心平面を通る)の算出した直線カットを示す。SARは選択的加熱を示す腫瘍と並んだ急勾配のピークを有している。
【図14】は、導波管アプリケータの上のマイクロ波吸収パッド及び導波管開口部の上部を覆う金属シールドをも含む追加安全機能を有する本発明による乳房温熱療法システムを示している。
【図15】は、マイクロ波吸収パッド、金属シールド、エアーギャップ、とE-フィールド集中プローブと温度プローブの組み合わせを有する単純なT型の乳房想像図を示す側面図である。
【図16】は、マイクロ波吸収パッド、金属シールド、エアーギャップ、とE−フィールド集中プローブと温度プローブの組み合わせを有する乳房形状想像図を示す側面図である。
【図17】は、垂直表面に長方形の窓とパドルの上面に付けられたマイクロ波吸収パッドを有する圧迫用パドルを示す。
【図18】は、圧迫用パドルの上部、乳房皮膚から離れて向かい合っている表面に追加された金属シールドを有する導波管アプリケータの側面図である。
【図19】は、適応型フェーズアレイアプリケータによって加熱された遮蔽パッドや吸収パッドのない単純なT型の想像図についての測定温度と時間の関係を示すグラフである。
【図20】は、適応型フェーズアレイアプリケータによって加熱された遮蔽パッドや吸収パッド付きの単純なT型の想像図についての測定温度と時間の関係を示すグラフである。
【図21】は、2つのエネルギーアプリケータの間の小さな乳房の側面図である。
【図22】は、本発明による別の加熱方法の概要を示すもので、単一のエネルギーアプリケータがうつぶせの患者の小さな乳房の腫瘍を加熱している。
【図23】は、温度プローブが腫瘍に挿入されている図22の加熱方法の側面図である。
【図24】は、本発明による別の加熱方法の概要を示すもので、単一のエネルギーアプリケータがあおむけの患者の小さな乳房の腫瘍を加熱している。
【図25】は、温度プローブが腫瘍に挿入されている図24の加熱方法の側面図である。
【図26】は、図22の加熱方法で、材料の帯が小さな乳房を圧縮する様子を図示的に示しており、そして
【図27】は、図22の加熱方法で単一エネルギーアプリケータの口にウオータカップリングボーラスバッグが付けられている様子を図示的に示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌又は身体の良性条件を身体組織に選択的にエネルギーを照射して治療する方法であって、その方法は
a)照射される身体組織に隣り合う皮膚表面の温度をモニターし、
b)少なくとも1つのエネルギーアプリケータを治療する身体の個所の付近におき、
c)少なくとも1つのエネルギーアプリケータの各々に与えられる初期パワーレベルを設定し、
d)身体組織にエネルギーを選択的に照射し身体の癌や良性条件の少なくとも一つを治療するために少なくとも1つのエネルギーアプリケータにエネルギーを与え、
e)治療中、少なくとも1つのエネルギーアプリケータの各々に与えられるパワーのレベルをモニターした皮膚温度に基づいて調整し、
f)少なくとも1つのエネルギーアプリケータに与えられるエネルギーをモニターし、
g)治療中、少なくとも1つのエネルギーアプリケータに与えられる全エネルギーをリアルタイムに決定し、
h)所期の全エネルギー線量が少なくとも1つのエネルギーアプリケータによって身体組織に与えられたときに治療が完了するステップから構成されていることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記エネルギーは電磁気、超音波、無線周波数、及びレーザー波のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記身体は男性患者と女性患者のうちの一人の胸部であり、単一アプリケータは胸部を加熱するものであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記女性患者又は男性患者は、うつ伏せ位置にあることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記女性患者又は男性患者は、仰向け位置にあることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
更に管状の布材によって胸部を胸郭に向けて押し付けるステップを含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記エネルギーは電磁気、超音波、無線周波数、及びレーザー波のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記身体は、臓器であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記身体は、患者の頭部、首、胴、腕及び脚のうちのいずれか1つの表面領域であることを特徴とする請求項1に記載のアプリケータ。
【請求項10】
少なくとも1つのアプリケータにパワーを与える前に、冷却した空気を身体の治療される個所に通すか、暖めた空気を身体の治療される個所に通すかのいずれかによって治療される身体組織をプレコンディショニングするステップを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つのアプリケータへのパワーの供給を終了した後に、冷却した空気を身体の治療される個所に通すか、暖めた空気を身体の治療される個所に通すかのいずれかによって治療される身体組織をポストコンディショニングするステップを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのアプリケータは治療される身体に隣接する少なくとも1つのアプリケータの端部に付けられた低損失メディアを内蔵している大きな丸薬を有し、前記低損失メディアはエネルギーをアプリケータから身体組織に結合することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記低損失メディアは蒸留水か脱イオン水かのいずれかであることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
胸部組織へのエネルギーの選択的照射による、男性又は女性患者のいずれかの乳房の癌または良性条件の治療或いは癌又は癌再発の予防方法であって、その方法は
a)治療される胸部組織を囲む領域の温度をモニターし、
b)乳房まわりへのエネルギー送りを有する単一エネルギーアプリケータであって、開口部幅と開口部高さのある導波管を有し、治療される胸部組織が開口部幅と開口部高さの中点に非常に近くにあるように配置する単一エネルギーアプリケータを配置し、
c)胸部組織に選択的にエネルギーを照射し、乳癌または胸部の良性条件の少なくとも1つを治療するために前記単一エネルギーアプリケータにエネルギーを与え、
d)治療中、前記単一エネルギーアプリケータに与えられるパワーのレベルをモニターした皮膚温度に基づいて調整し、
e)治療中、前記単一エネルギーアプリケータに与えられる全エネルギーをリアルタイムに決定し、
f)所期の全エネルギー線量が単一エネルギーアプリケータによって照射される胸部組織に与えられたときに治療が完了するステップから構成されている治療方法。
【請求項15】
患者が良性胸部腫瘍、乳癌、乳癌予防で治療されるときに、エネルギーが胸部腫瘍又は胸部の上部のいずれかに狙いをつけるように単一アプリケータを配置することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記全エネルギー線量は約360キロジュールまでのマイクロ波線量であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記単一エネルギーアプリケータに与えられたパワーは約30分にわたるマイクロ波で約200ワットにまで及ぶことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記胸部組織を囲む領域の温度をモニターするステップは、治療される胸部の表面に皮膚センサーを置くことを含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記皮膚センサーはモニターされ、前記単一アプリケータのパワーは測定された皮膚温度を約41℃未満に保つために調整されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記胸部組織を囲む領域の温度をモニターするステップは、治療される組織領域内に温度プローブを挿入し内部の測定温度は単一アプリケータに与えられるパワーを制御するのに用いられることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記内部の測定温度は単一のエネルギーアプリケータに与えられたパワーを制御し、約120分から240分の間の当量線量が照射される胸部組織に与えられることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記配置ステップは乳房に隣接するアプリケータの端部との間にギャップをあたえてエネルギーが胸部に空気で結合するようにすることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記アプリケータから胸部へ結合する空気は約0℃から約50℃の範囲の温度を有することを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記単一アプリケータにパワーを与える前に冷却した空気を胸部に通すか、暖めた空気を胸部に通すかして治療する胸部組織をプレコンディッションするステップを更に含むことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記単一アプリケータへのパワー供給を終了する前に冷却した空気を胸部に通すか、暖めた空気を胸部に通すかして治療する胸部組織をポストコンディショニングするステップを更に含むことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記単一アプリケータは胸部に隣接する単一アプリケータの端部に付けられた低損失メディアを内蔵している大きな丸薬を有し、前記低損失メディアはエネルギーをアプリケータから胸部に結合することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項27】
前記低損失メディアは蒸留水か脱イオン水かのいずれかであることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
エストロゲンが乳癌のエストロゲン受容体と結合するのをブロックし、熱で直接癌細胞を消滅させるために、選択照射と組み合わせてタモキシフェン又は他の抗エストロゲン剤を使うステップを更に含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項29】
タモキシフェン又は他の抗エストロゲン剤が一日あたり約10mgから20mg選択照射温熱療法を5年間にわたり受けている患者に対して与えられ、前記温熱療法はその5年間に定期的な間隔で与えられることを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
癌又は身体の良性条件を身体組織に選択的にエネルギーを照射して治療する方法であって、
a)照射される身体組織に隣接する皮膚表面の温度をモニターし、
b)少なくとも1つのアプリケータを治療する身体の個所の付近におき、
c)少なくとも1つのエネルギーアプリケータの各々に与えられる初期パワーレベルを設定し、
d)身体組織にエネルギーを選択照射し身体の癌や良性条件の少なくとも1つを加熱するために少なくとも1つのエネルギーアプリケータにエネルギーを与え;
e)少なくとも1つのエネルギーアプリケータの各々に与えられるパワーのレベルを選択照射するステップと身体を加熱しているステップの間、モニターした皮膚温度に基づいて調整するステップから構成されていることを特徴とし、
少なくとも1つのエネルギーアプリケータによって達せられた熱が治療される身体組織の中のたんぱく質を加熱し、それによって癌や他の関連条件又は病気の拡散成長を抑制するたんぱく質抑制剤を生成することを特徴とする方法。
【請求項31】
身体の癌又は良性条件を身体組織に選択的にエネルギーを照射して治療する方法であって、
a)照射される身体組織に隣り合う皮膚表面の温度をモニターし、
b)少なくとも1つのアプリケータを治療する身体の個所の付近におき、
c)少なくとも1つのエネルギーアプリケータの各々に与えられる初期パワーレベルを設定し、
d)身体組織にエネルギーを選択的に照射し身体の癌や良性条件の少なくとも1つを治療するために少なくとも1つのエネルギーアプリケータにエネルギーを与え、
e)治療中、少なくとも1つのエネルギーアプリケータの各々に与えられるパワーのレベルをモニターした皮膚温度に基づいて調整するステップから構成されていることを特徴とし、
少なくとも1つのエネルギーアプリケータによって達せられた熱が、たんぱく質が関係しそれによって癌細胞の枯死を促進するDNA分子を熱が破壊するときに癌細胞の自分自身を修復しようとする能力を担当しているたんぱく質を取除くことを特徴とする方法。
【請求項32】
少なくとも1つのエネルギーアプリケータによって達せられた熱が、癌細胞の第一次癌サイトの外側に成長拡散する能力に関係する抗毒素枯死たんぱく質を消滅させるか、または抑制することを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項33】
少なくとも1つのエネルギーアプリケータによって達せられた熱が、放射、化学療法、熱のいずれかと関係する細胞毒素がDNA分子を破壊するとき、癌細胞の自分自身を修復する能力に関係するたんぱく質を消去することを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項34】
身体組織に熱を選択照射することによってすることによって身体のセリュライト、癌性、または良性条件を減少させる方法であって、
a)身体組織の選択照射前に治療される身体の選ばれた領域にある物質を注入し、
b)照射される身体組織に隣り合う皮膚表面の温度をモニターし、
c)少なくとも1つのアプリケータを治療する身体の個所の付近におき、
d)少なくとも1つのエネルギーアプリケータの各々に与えられる初期パワーレベルを設定し、
e)身体組織にエネルギーを選択照射し身体の癌や良性条件の少なくとも1つを減少させるために少なくとも1つのエネルギーアプリケータにエネルギーを与え、
f)治療の間、少なくとも1つのエネルギーアプリケータの各々に与えられるパワーのレベルをモニターした皮膚温度に基づいて調整し、
g)少なくとも1つのエネルギーアプリケータに与えられるエネルギーをモニターし、
h)少なくとも1つのエネルギーアプリケータに与えられる全エネルギーを治療の間リアルタイムに決定し、
i)所期の全エネルギー線量が少なくとも1つのエネルギーアプリケータによって身体組織に渡されたときに治療が終了するステップから構成されていることを特徴とし、
注入する物質は治療される領域を囲む身体組織より高い伝導度を有し、治療される領域は少なくとも1つのエネルギーアプリケータによって生成された熱を優先的に吸収し、それによって生成した熱が局所集中され脂肪を含む選定した癌又は良性組織を破壊するようになっていることを特徴とする方法。
【請求項35】
前記注入された物質はサリン溶液及び金属化合物を含む溶液のいずれかであることを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項36】
治療される身体に十分な圧力を加え、ついで熱を生成し治療する身体領域内の塊の少なくとも1つを取除き治療される身体領域を成形または形成するステップを更に含むことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
乳癌又は胸部の良性条件を胸部組織に選択的にエネルギーを照射して治療する方法であって、
a)照射される胸部組織に隣り合う皮膚表面の温度をモニターし、
b)少なくとも1つのアプリケータを治療する胸部の個所の付近におき、
c)少なくとも1つのエネルギーアプリケータの各々に与えられる初期パワーレベルを設定し、
d)身体組織にエネルギーを選択的に照射し身体の癌や良性条件の少なくとも1つを治療するために少なくとも1つのエネルギーアプリケータにエネルギーを与え、
e)少なくとも1つのエネルギーアプリケータの各々に与えられるパワーのレベルを胸部の選択照射中、モニターした皮膚温度に基づいて調整するステップから構成されていることを特徴とし、
エネルギーを与えるステップが熱くなり胸部の癌性及び良性の条件の少なくとも1つを破壊し、結果として発生する熱がエストロゲン受容体を消去し、それによってエストロゲンが乳癌または良性条件の少なくとも1つと結合するのを防ぐことを特徴とする方法。
【請求項38】
エストロゲンによる封鎖能を高め、それにより乳癌のエストロゲン受容体にエストロゲンが結合するのを防止するために選択照射と組み合わせてタモキシフェン又は他の抗エストロゲン剤を使うステップを更に含むことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項39】
乳癌又は胸部の良性条件を胸部組織に選択的にエネルギーを照射して治療する方法であって、
a)照射される胸部組織に隣接する皮膚表面の温度をモニターし、
b)少なくとも1つのアプリケータを治療する胸部の個所の付近におき、
c)少なくとも1つのエネルギーアプリケータの各々に与えられる初期パワーレベルを設定し、
d)胸部組織にエネルギーを選択照射するために、少なくとも1つのエネルギーアプリケータにエネルギーを与え、
e)少なくとも1つのエネルギーアプリケータの各々に与えられるパワーのレベルを胸部の選択照射の間、モニターした皮膚温度に基づいて調整するステップから構成されていることを特徴とし、
エネルギーを与えるステップが熱くなり胸部の癌性及び良性の条件の少なくとも1つを破壊し、少なくとも1つのエネルギーアプリケータによって達成された熱さが選択的にエストロゲン受容体を消去し結果としての熱が乳癌の著しい危険なしにホルモン置換プログラムの利用を可能にする。
【請求項1】
癌又は身体の良性条件を身体組織に選択的にエネルギーを照射して治療する方法であって、その方法は
a)照射される身体組織に隣り合う皮膚表面の温度をモニターし、
b)少なくとも1つのエネルギーアプリケータを治療する身体の個所の付近におき、
c)少なくとも1つのエネルギーアプリケータの各々に与えられる初期パワーレベルを設定し、
d)身体組織にエネルギーを選択的に照射し身体の癌や良性条件の少なくとも一つを治療するために少なくとも1つのエネルギーアプリケータにエネルギーを与え、
e)治療中、少なくとも1つのエネルギーアプリケータの各々に与えられるパワーのレベルをモニターした皮膚温度に基づいて調整し、
f)少なくとも1つのエネルギーアプリケータに与えられるエネルギーをモニターし、
g)治療中、少なくとも1つのエネルギーアプリケータに与えられる全エネルギーをリアルタイムに決定し、
h)所期の全エネルギー線量が少なくとも1つのエネルギーアプリケータによって身体組織に与えられたときに治療が完了するステップから構成されていることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記エネルギーは電磁気、超音波、無線周波数、及びレーザー波のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記身体は男性患者と女性患者のうちの一人の胸部であり、単一アプリケータは胸部を加熱するものであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記女性患者又は男性患者は、うつ伏せ位置にあることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記女性患者又は男性患者は、仰向け位置にあることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
更に管状の布材によって胸部を胸郭に向けて押し付けるステップを含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記エネルギーは電磁気、超音波、無線周波数、及びレーザー波のうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記身体は、臓器であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記身体は、患者の頭部、首、胴、腕及び脚のうちのいずれか1つの表面領域であることを特徴とする請求項1に記載のアプリケータ。
【請求項10】
少なくとも1つのアプリケータにパワーを与える前に、冷却した空気を身体の治療される個所に通すか、暖めた空気を身体の治療される個所に通すかのいずれかによって治療される身体組織をプレコンディショニングするステップを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つのアプリケータへのパワーの供給を終了した後に、冷却した空気を身体の治療される個所に通すか、暖めた空気を身体の治療される個所に通すかのいずれかによって治療される身体組織をポストコンディショニングするステップを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのアプリケータは治療される身体に隣接する少なくとも1つのアプリケータの端部に付けられた低損失メディアを内蔵している大きな丸薬を有し、前記低損失メディアはエネルギーをアプリケータから身体組織に結合することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記低損失メディアは蒸留水か脱イオン水かのいずれかであることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
胸部組織へのエネルギーの選択的照射による、男性又は女性患者のいずれかの乳房の癌または良性条件の治療或いは癌又は癌再発の予防方法であって、その方法は
a)治療される胸部組織を囲む領域の温度をモニターし、
b)乳房まわりへのエネルギー送りを有する単一エネルギーアプリケータであって、開口部幅と開口部高さのある導波管を有し、治療される胸部組織が開口部幅と開口部高さの中点に非常に近くにあるように配置する単一エネルギーアプリケータを配置し、
c)胸部組織に選択的にエネルギーを照射し、乳癌または胸部の良性条件の少なくとも1つを治療するために前記単一エネルギーアプリケータにエネルギーを与え、
d)治療中、前記単一エネルギーアプリケータに与えられるパワーのレベルをモニターした皮膚温度に基づいて調整し、
e)治療中、前記単一エネルギーアプリケータに与えられる全エネルギーをリアルタイムに決定し、
f)所期の全エネルギー線量が単一エネルギーアプリケータによって照射される胸部組織に与えられたときに治療が完了するステップから構成されている治療方法。
【請求項15】
患者が良性胸部腫瘍、乳癌、乳癌予防で治療されるときに、エネルギーが胸部腫瘍又は胸部の上部のいずれかに狙いをつけるように単一アプリケータを配置することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記全エネルギー線量は約360キロジュールまでのマイクロ波線量であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記単一エネルギーアプリケータに与えられたパワーは約30分にわたるマイクロ波で約200ワットにまで及ぶことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記胸部組織を囲む領域の温度をモニターするステップは、治療される胸部の表面に皮膚センサーを置くことを含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記皮膚センサーはモニターされ、前記単一アプリケータのパワーは測定された皮膚温度を約41℃未満に保つために調整されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記胸部組織を囲む領域の温度をモニターするステップは、治療される組織領域内に温度プローブを挿入し内部の測定温度は単一アプリケータに与えられるパワーを制御するのに用いられることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記内部の測定温度は単一のエネルギーアプリケータに与えられたパワーを制御し、約120分から240分の間の当量線量が照射される胸部組織に与えられることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記配置ステップは乳房に隣接するアプリケータの端部との間にギャップをあたえてエネルギーが胸部に空気で結合するようにすることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記アプリケータから胸部へ結合する空気は約0℃から約50℃の範囲の温度を有することを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記単一アプリケータにパワーを与える前に冷却した空気を胸部に通すか、暖めた空気を胸部に通すかして治療する胸部組織をプレコンディッションするステップを更に含むことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記単一アプリケータへのパワー供給を終了する前に冷却した空気を胸部に通すか、暖めた空気を胸部に通すかして治療する胸部組織をポストコンディショニングするステップを更に含むことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記単一アプリケータは胸部に隣接する単一アプリケータの端部に付けられた低損失メディアを内蔵している大きな丸薬を有し、前記低損失メディアはエネルギーをアプリケータから胸部に結合することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項27】
前記低損失メディアは蒸留水か脱イオン水かのいずれかであることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
エストロゲンが乳癌のエストロゲン受容体と結合するのをブロックし、熱で直接癌細胞を消滅させるために、選択照射と組み合わせてタモキシフェン又は他の抗エストロゲン剤を使うステップを更に含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項29】
タモキシフェン又は他の抗エストロゲン剤が一日あたり約10mgから20mg選択照射温熱療法を5年間にわたり受けている患者に対して与えられ、前記温熱療法はその5年間に定期的な間隔で与えられることを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
癌又は身体の良性条件を身体組織に選択的にエネルギーを照射して治療する方法であって、
a)照射される身体組織に隣接する皮膚表面の温度をモニターし、
b)少なくとも1つのアプリケータを治療する身体の個所の付近におき、
c)少なくとも1つのエネルギーアプリケータの各々に与えられる初期パワーレベルを設定し、
d)身体組織にエネルギーを選択照射し身体の癌や良性条件の少なくとも1つを加熱するために少なくとも1つのエネルギーアプリケータにエネルギーを与え;
e)少なくとも1つのエネルギーアプリケータの各々に与えられるパワーのレベルを選択照射するステップと身体を加熱しているステップの間、モニターした皮膚温度に基づいて調整するステップから構成されていることを特徴とし、
少なくとも1つのエネルギーアプリケータによって達せられた熱が治療される身体組織の中のたんぱく質を加熱し、それによって癌や他の関連条件又は病気の拡散成長を抑制するたんぱく質抑制剤を生成することを特徴とする方法。
【請求項31】
身体の癌又は良性条件を身体組織に選択的にエネルギーを照射して治療する方法であって、
a)照射される身体組織に隣り合う皮膚表面の温度をモニターし、
b)少なくとも1つのアプリケータを治療する身体の個所の付近におき、
c)少なくとも1つのエネルギーアプリケータの各々に与えられる初期パワーレベルを設定し、
d)身体組織にエネルギーを選択的に照射し身体の癌や良性条件の少なくとも1つを治療するために少なくとも1つのエネルギーアプリケータにエネルギーを与え、
e)治療中、少なくとも1つのエネルギーアプリケータの各々に与えられるパワーのレベルをモニターした皮膚温度に基づいて調整するステップから構成されていることを特徴とし、
少なくとも1つのエネルギーアプリケータによって達せられた熱が、たんぱく質が関係しそれによって癌細胞の枯死を促進するDNA分子を熱が破壊するときに癌細胞の自分自身を修復しようとする能力を担当しているたんぱく質を取除くことを特徴とする方法。
【請求項32】
少なくとも1つのエネルギーアプリケータによって達せられた熱が、癌細胞の第一次癌サイトの外側に成長拡散する能力に関係する抗毒素枯死たんぱく質を消滅させるか、または抑制することを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項33】
少なくとも1つのエネルギーアプリケータによって達せられた熱が、放射、化学療法、熱のいずれかと関係する細胞毒素がDNA分子を破壊するとき、癌細胞の自分自身を修復する能力に関係するたんぱく質を消去することを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項34】
身体組織に熱を選択照射することによってすることによって身体のセリュライト、癌性、または良性条件を減少させる方法であって、
a)身体組織の選択照射前に治療される身体の選ばれた領域にある物質を注入し、
b)照射される身体組織に隣り合う皮膚表面の温度をモニターし、
c)少なくとも1つのアプリケータを治療する身体の個所の付近におき、
d)少なくとも1つのエネルギーアプリケータの各々に与えられる初期パワーレベルを設定し、
e)身体組織にエネルギーを選択照射し身体の癌や良性条件の少なくとも1つを減少させるために少なくとも1つのエネルギーアプリケータにエネルギーを与え、
f)治療の間、少なくとも1つのエネルギーアプリケータの各々に与えられるパワーのレベルをモニターした皮膚温度に基づいて調整し、
g)少なくとも1つのエネルギーアプリケータに与えられるエネルギーをモニターし、
h)少なくとも1つのエネルギーアプリケータに与えられる全エネルギーを治療の間リアルタイムに決定し、
i)所期の全エネルギー線量が少なくとも1つのエネルギーアプリケータによって身体組織に渡されたときに治療が終了するステップから構成されていることを特徴とし、
注入する物質は治療される領域を囲む身体組織より高い伝導度を有し、治療される領域は少なくとも1つのエネルギーアプリケータによって生成された熱を優先的に吸収し、それによって生成した熱が局所集中され脂肪を含む選定した癌又は良性組織を破壊するようになっていることを特徴とする方法。
【請求項35】
前記注入された物質はサリン溶液及び金属化合物を含む溶液のいずれかであることを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項36】
治療される身体に十分な圧力を加え、ついで熱を生成し治療する身体領域内の塊の少なくとも1つを取除き治療される身体領域を成形または形成するステップを更に含むことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
乳癌又は胸部の良性条件を胸部組織に選択的にエネルギーを照射して治療する方法であって、
a)照射される胸部組織に隣り合う皮膚表面の温度をモニターし、
b)少なくとも1つのアプリケータを治療する胸部の個所の付近におき、
c)少なくとも1つのエネルギーアプリケータの各々に与えられる初期パワーレベルを設定し、
d)身体組織にエネルギーを選択的に照射し身体の癌や良性条件の少なくとも1つを治療するために少なくとも1つのエネルギーアプリケータにエネルギーを与え、
e)少なくとも1つのエネルギーアプリケータの各々に与えられるパワーのレベルを胸部の選択照射中、モニターした皮膚温度に基づいて調整するステップから構成されていることを特徴とし、
エネルギーを与えるステップが熱くなり胸部の癌性及び良性の条件の少なくとも1つを破壊し、結果として発生する熱がエストロゲン受容体を消去し、それによってエストロゲンが乳癌または良性条件の少なくとも1つと結合するのを防ぐことを特徴とする方法。
【請求項38】
エストロゲンによる封鎖能を高め、それにより乳癌のエストロゲン受容体にエストロゲンが結合するのを防止するために選択照射と組み合わせてタモキシフェン又は他の抗エストロゲン剤を使うステップを更に含むことを特徴とする請求項37に記載の方法。
【請求項39】
乳癌又は胸部の良性条件を胸部組織に選択的にエネルギーを照射して治療する方法であって、
a)照射される胸部組織に隣接する皮膚表面の温度をモニターし、
b)少なくとも1つのアプリケータを治療する胸部の個所の付近におき、
c)少なくとも1つのエネルギーアプリケータの各々に与えられる初期パワーレベルを設定し、
d)胸部組織にエネルギーを選択照射するために、少なくとも1つのエネルギーアプリケータにエネルギーを与え、
e)少なくとも1つのエネルギーアプリケータの各々に与えられるパワーのレベルを胸部の選択照射の間、モニターした皮膚温度に基づいて調整するステップから構成されていることを特徴とし、
エネルギーを与えるステップが熱くなり胸部の癌性及び良性の条件の少なくとも1つを破壊し、少なくとも1つのエネルギーアプリケータによって達成された熱さが選択的にエストロゲン受容体を消去し結果としての熱が乳癌の著しい危険なしにホルモン置換プログラムの利用を可能にする。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
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【図22】
【図23】
【図24】
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【図26】
【図27】
【公表番号】特表2006−502802(P2006−502802A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−545249(P2004−545249)
【出願日】平成15年8月27日(2003.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2003/026681
【国際公開番号】WO2004/034925
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(504305337)セルシオン コーポレーション (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年8月27日(2003.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2003/026681
【国際公開番号】WO2004/034925
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(504305337)セルシオン コーポレーション (3)
【Fターム(参考)】
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