説明

男性用尿吸収物品

【課題】使用前か使用後かを容易に判断でき、かつ、ペニスを収納する内部空間を清潔に保つことができる男性用尿吸収物品を提供することを目的とする。
【解決手段】挿入部6に、男性用尿吸収物品1の幅方向の延びる弱化線7が形成され、弱化線7を裂開することにより、ペニスを挿入するための開口部が形成される。このような構成にすることにより、男性用尿吸収物品1を着用するときに初めて弱化線7を裂開して開口部を形成することになるので、男性用尿吸収物品1が未使用であるか使用済みであるかを視認することができる。また、使用時まで弱化線7を裂開して開口しないので、それまでの未使用状態では、ペニスを収納する袋体5の内部空間5aに外部から異物が侵入しにくく、そのため内部空間5aを清潔に保つことができ、袋体5の内部空間5aは着用者のペニスに直接触れるものであるので衛生的にも優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者に装着されて尿を吸収する男性用尿吸収物品に関する。
【背景技術】
【0002】
身体が不自由な高齢者や入院患者、又は、寝たきりの高齢者や入院患者等の排尿処理を容易にするために、使い捨ておむつ等が用いられている。
【0003】
しかし、使い捨ておむつでは、少量の排尿時であってもおむつ全体を交換する必要があるため、使用者にとって経済的な負担が大きくなってしまう。そこで、従来より、使い捨ておむつの内側に安価な補助吸収具(いわゆる、尿取りパッド等)を取り付けて着用し、少量の排尿時には補助吸収具のみを交換することが行われている。
【0004】
上記補助吸収具の1つとして、使い捨ておむつや下着の内側において着用者のペニスに装着される男性用吸収パッドが利用されている。
【0005】
このような従来の男性用吸収パッドについては、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−159724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の男性用尿吸収パッドは、使用前か使用後かを判断する識別手段が設けられておらず、使用前か使用後かを判断するのは、専ら男性用尿吸収パッド内の吸収体が尿を吸収して重くなった重量感か、若しくは、尿が染みこんで男性用尿吸収パッド内が着色しているかどうか等、使用者の主観に基づいて判断していた。
【0008】
しかし、この判断の方法では、男性用尿吸収パッドを装着しただけで排尿せずに取り外していた場合や、尿がほんの少ししか排尿されなかった場合等にはこの識別方法は使えなかった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するものであって、使用前か使用後かを容易に判断でき、かつ、ペニスを収納する内部空間を清潔に保つことができる男性用尿吸収物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、ペニス挿入用の挿入部を有し、着用者のペニスに装着されて尿を吸収する袋状の男性用尿吸収物品であって、ペニス挿入方向と交差する方向を幅方向として、前記挿入部に、前記男性用尿吸収物品の幅方向に延びる弱化線が形成され、前記弱化線を裂開することにより、ペニスを挿入するための開口部が形成され、前記挿入部の縁部は、前記幅方向に延びる一対の対向辺を有し、前記一対の対向辺から前記男性用尿吸収物品の外部側へ向けて一対の張出部が張り出されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の男性用尿吸収物品において、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に介在する吸収体とを有する積層体と、その外周縁部が前記積層体の外周縁部に接合されて前記積層体とともに袋体を構成する表面シートと、を備え、前記表面シートに前記挿入部が形成されている。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の男性用尿吸収物品において、前記弱化線は、前記挿入部に前記幅方向に沿ってミシン目状に切り込みを設けることにより形成されていることを特徴する。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の男性用尿吸収物品において、前記張出部の対向面には、接着対象との間で着脱自在な接着層が形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の男性用尿吸収物品において、前記弱化線の位置を示す目印を付したことを特徴とする。
【0015】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の男性用尿吸収物品において、前記目印は、男性用尿吸収物品の他の部位とは異なる色で前記弱化線に着色されることを特徴とする。
【0016】
請求項7に係る発明は、請求項5又は請求項6に記載の男性用尿吸収物品において、前記目印は、前記弱化線の位置を示す文字、図形及び記号のうち少なくとも一つであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1〜7に記載の発明によれば、挿入部に、男性用尿吸収物品の幅方向に延びる弱化線が形成され、弱化線を裂開することにより、ペニスを挿入するための開口部が形成される。このような構成にすることにより、男性用尿吸収物品を着用するときに初めて弱化線を裂開して開口部を形成することになるので、男性用尿吸収物品が未使用であるか使用済みであるかを視認することができる。また、使用時まで弱化線を裂開して開口しないので、それまでの未使用状態では、ペニスを収納する袋体の内部空間に外部から異物が侵入しにくく、そのため内部空間を清潔に保つことができ、袋体の内部空間は着用者のペニスに直接触れるものであるので衛生的にも優れている。
【0018】
特に、請求項1に記載の発明によれば、挿入部の縁部は、幅方向に延びる一対の対向辺を有し、一対の対向辺から男性用尿吸収物品の外部側へ向けて一対の張出部が張り出されている。このような構成にすることにより、男性用尿吸収物品を装着する際に、張出シートがペニスの保持手段として機能するとともに、把手手段として着用者若しくは介護者が装着するために掴むことができる。また、それぞれの張出部を掴んで、一対の張出部が離間する方向に引っ張ることで、挿入部もその方向に広がり弱化線が裂開する。
【0019】
特に、請求項4に記載の発明によれば、張出部の対向面には、接着対象との間で着脱自在な接着層が形成されている。このような構成にすることにより、一対の張出シートの対向面をペニスの外周に当接させ、対向した張出シート同士を押さえつけることにより、一対の張出シートそれぞれに形成された接着層同士が貼着し、ペニスに当接していない領域の開口部を閉口させてペニスを保持することができる。
【0020】
特に、請求項6に記載の発明によれば、弱化線の位置を示す目印を付することにより、目印を手がかりとして弱化線の位置を容易に視認することができ、したがって、弱化線の切断作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る自然状態における男性用尿吸収物品の構成を示す平面図である。
【図2】図1におけるA−A断面図である。
【図3】図1において張出シートを省いた男性用尿吸収物品の平面図である。
【図4】張出シートが起倒軸を中心に起倒自在であることを示した断面図である。
【図5】張出シートと接着層の断面図である。
【図6】張出シートを互いに離間するように引っ張っている様子を示した図である。
【図7】男性用尿吸収物品を装着したときの断面図である。
【図8】表面シート側にも吸収体を設けた男性用尿吸収物品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係る男性用尿吸収物品1は、着用者に着用されるアウター(外装物品、例えば、使い捨ておむつやパンツ)の内側において、着用者のペニス2に装着されて尿を吸収する補助吸収具である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、トップシート31側を「上」若しくは「表」とし、バックシート32側を「下」若しくは「裏」とする。
【0023】
男性用尿吸収物品1の構成について、図1又は図2に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る自然状態(未使用状態)における男性用尿吸収物品1の構成を示す平面図であり、図2は、図1におけるA−A断面図、つまり、男性用尿吸収物品1を上下方向に垂直な面で切断した断面図である。本発明に係る男性用尿吸収物品1は、長手方向の寸法Pが、長手方向に垂直な幅方向の寸法Qよりも大きい男性用尿吸収物品である。男性用尿吸収物品1は、略シート状の積層体3と表面シート4とがその外周縁部同士をホットメルト接着剤等により接合(当該接合部を図では接合部Sと表示している)して構成された袋状の補助吸収具であり、表面シート4の挿入部6に形成された弱化線7を裂開してできた開口部を通して挿入されたペニスを袋体5内の内部空間5aに収納する構成になっている。なお、図2を含む男性用尿吸収物品1の断面図では、説明の便宜上、積層体3や内部空間5aを上下方向に広げて図示しているが、実際は上下方向に薄いものである。
【0024】
<1.積層体>
積層体3は、ペニスから排出された尿を吸収して保持する略シート状の吸収体33と、吸収体33の上面を覆う液透過性のトップシート31と、吸収体の下面を覆う液不透過性(難透過性を含む)のバックシート32とから構成されている。トップシート31とバックシート32は、ホットメルト接着剤により吸収体33の周囲にて相互に接合されている。なお、トップシート31とバックシート32との接合(当該接合部を図2では接合部Tと表示している)は、熱接合や超音波シール等の方法により行われてもよい。ホットメルト接着剤については、ゴム系、ポリオレフィン系、酢酸ビニル系等のホットメルト接着剤から適切に選定して、直接的なコーター塗布、間接的なスパイラル塗布、メルトブロー(カーテンスプレー)塗布、ビード塗布等の方法で塗布する。
【0025】
トップシート31は、積層体3の上面を構成するシートであり、後述する表面シート4と内部空間5aを形成する隙間を介して対向する液透過性のシートである。空間5aとは、男性用尿吸収物品1の袋体5の内部を構成する空間であり、挿入されたペニスを収納することができる空間である。
【0026】
トップシート31としては、直接着用者(ペニス)の肌に触れるために、肌を必要以上に損なうことなく肌触りの良い点を考慮してこれに適した衛生的な材料が選択され、着用者からの尿を素早く捕捉し、速やかに吸収体33へ透過させるのに適した液透過性のシートが用いられる。例えば、セルロース、レーヨン、コットン等の親水性繊維を用いた不織布が好ましい。なお、トップシートとして、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ナイロン等の疎水性繊維の表面を界面活性剤により処理して透液性とした不織布を用いることも可能である。
【0027】
バックシート32は、積層体3の下面を構成するシートであり、トップシート31を透過した尿や、一旦吸収体33に吸収された尿が吸収体33の内部から外部へしみ出すことを防止する液不透過性のシートである。着用性の観点から、バックシート32の表面積は、トップシート31と同一であることが望ましい。
【0028】
バックシート32としては、一般的に衛生材料からなる液不透過性のシートが用いられる。例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ナイロン等疎水性繊維を用いた撥水性の不織布が用いられる。なお、撥水性または不透液性のプラスチックフィルムや、上記不織布とプラスチックフィルムとの複合材料等がバックシート32として利用されてもよい。この場合、着用者の快適性の観点からは、透湿性(すなわち、通気性)を有して水蒸気を透過させて蒸れを防止でき、ある程度可撓性を有するプラスチックフィルムが利用されることが好ましい。
【0029】
吸収体33は、トップシート31を透過してきた尿を吸収して保持する役割を果たす。したがって、液体吸収性に優れる材質のものであれば使用することができ、このような吸収体33としては、親水性繊維(例えば、粉砕したパルプ繊維やセルロース繊維)の集合体に粒状の吸水性ポリマーを混合したものをティッシュペーパーや透液性不織布等の被覆シートにより包み込んで形成され、トップシート31を透過した尿を吸収して迅速に保持・固定する。親水性繊維を包む被覆シートは、親水性繊維および吸水性ポリマーとホットメルト接着剤により接合されて、親水性繊維の型崩れ、および、吸水性ポリマーの脱落(特に、吸水後における脱落)を防止する。また、略平行に相対向する二枚の液透過性シートの対向面に接着剤等を塗布し、層状の吸収性ポリマー(ポリマー層)を挟み込んで固定した略シート状吸収体を利用することもできる。この場合、ポリマー層は、長手方向に延びる略矩形状の層であり、幅方向に間隔をおいて複数配列している。ポリマー層の非存在領域においては、二枚の液透過性シート同士が接合され封止されている。
【0030】
<2.表面シート>
表面シート4は、ペニスを挿入する領域である挿入部6を有している。男性用尿吸収物品1を着用者が装着したとき、表面シート4の上面が着用者の下腹部、股部及び大腿部に当接する、すなわち、着用者の肌に触れることになるので、快適な着用感を考慮すると、表面シート4としては、肌触り感がよく衛生的な材料からなる可撓性かつ液不透過性のシートを用いることが望ましい。例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ナイロン等疎水性繊維を用いた撥水性の不織布が用いられる。なお、撥水性または不透液性のプラスチックフィルムや、上記不織布とプラスチックフィルムとの複合材料等が表面シート4として利用されてもよい。この場合、着用者の快適性の観点からは、透湿性(すなわち、通気性)を有して水蒸気を透過させて蒸れを防止でき、ある程度可撓性を有するプラスチックフィルムが利用されることが好ましい。また、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、SMS不織布等の撥水性不織布材料を用いることも可能である。
【0031】
<3.挿入部及びその付近の構成について>
<3−1.挿入部>
次に、表面シート4に設けられた挿入部6及びその付近の構成について、図1乃至図3に基づいて説明する。図3は、図1において張出シートを省いた男性用尿吸収物品1の平面図である。
【0032】
本実施形態に係る挿入部6は、上述したように表面シート4に設けられている。挿入部6とは、表面シート4の長手方向略中央領域近傍において、幅方向に延びる領域(図3では、点線で囲まれた略矩形状の領域)のことであり、その領域内には幅方向(ペニス挿入方向と交差する方向)に延びる弱化線7が形成されている。ペニス挿入時に初めて弱化線7を長手方向に裂開してペニス挿入用の開口部を形成するもので、このため、未使用状態では、挿入部7には、ペニスを男性用尿吸収物品1の内部空間5aに挿入するための開口部は開口していない。
【0033】
なお、本実施形態に係る挿入部6の幅方向の寸法について、図1及び図3では、説明の便宜上、男性用尿吸収物品1の幅方向と同一、若しくはそれよりも若干小さい程度に設定しているが、ペニスに合わせて弱化線7を適宜の長さだけ裂開してペニス挿入用開口部を形成するので、その「適宜の長さ」より若干余裕がある程度の弱化線7を形成することができる大きさであればよい。
【0034】
<3−2.弱化線>
次に、挿入部6に形成される弱化線7について説明する。本実施形態に係る弱化線7は、ペニス挿入用開口部を形成するために、手で裂開することができる目印となる分離線、又は分離領域である。弱化線7は、例えば、切断、打ち抜き又はナイフによる引き掻きのような機械的手段、超音波シールやヒートシール等のエンボス加工を含む熱処理、レーザー加工、電子ビーム加工、放電加工のような物理的手段、溶解、又は、溶剤を使用するか、若しくは、例えばエッチングのような化学反応による膨潤を使用して形成される。本実施形態に係る弱化線7は、図1又は図3に示すように、切り込み部と非切り込み部とが幅方向の交互に配列したミシン目状に形成され、その切り込み部及び非切り込み部の幅方向の寸法が均一になるように形成している。
【0035】
以上、本実施形態に係る男性用尿吸収物品1は、積層体3の全外周縁部と表面シート4の全外周縁部とが接合されて袋体5を構成し、袋体5の内部空間5aが密閉された男性用尿吸収物品であり、表面シート4に形成された弱化線7を裂開することにより初めてペニス挿入用の開口部8が開口されるものである(図6参照)。このような構成にすることにより、男性用尿吸収物品1を着用するときに初めて弱化線7を長手方向に裂開して開口部8を形成することになるので、男性用尿吸収物品1が未使用であるか使用済みであるかを視認することができる。また、使用時まで弱化線7を裂開して開口しないので、それまでの未使用状態では、ペニスを収納する袋体5の内部空間5aに外部から異物が侵入しにくく、そのため内部空間5aを清潔に保つことができ、袋体5の内部空間5aのトップシート31上面や表面シート4下面は着用者のペニスに直接触れるものであるので衛生的にも優れている。
【0036】
<3−3.張出シート>
また、本実施形態では、図1、図2、図4、図6に示すように、表面シート4に設けられた挿入部6において、挿入部6の長手方向一方側及び他方側の縁部には、それぞれ一対となる対向辺6a、6bを有し、この一対の対向辺6a、6bそれぞれから男性用尿吸収物品1の外部側へ向けて一対の液不透過性の張出シート101・102(その総称を10とする)が張り出されている。張出シート101若しくは102は、張出シート101若しくは102の付け根部分である挿入部6の対向辺6a若しくは6bを起倒軸として、起倒自在に支承されている。例えば、略平板状の自然状態においては、挿入部6の対向辺6a若しくは6bを中心に、張出シート10は略180度回動可能、すなわち、長手方向両側に起倒可能である(図4では、張出シート101が挿入部6の対向辺6aを起倒軸として起倒自在に支承されている様子を図示している)。
【0037】
本実施形態に係る張出シート10は、男性用尿吸収物品1を装着する際に、張出シート10がペニスの保持手段として機能するとともに、把手手段として着用者若しくは介護者が装着するため/させるために掴むことができる。また、開口部8を形成するのに、弱化線7の周囲の表面シート4の少なくとも2カ所(弱化線7を境に長手方向一方側及び他方側に一カ所ずつ)に、互いに離間する力をそれぞれ加えることで弱化線7が長手方向に裂開するが、張出シート10を設けることにより、張出シート10を掴んで互いに離間する方向に引っ張ることで上記2カ所に力が加わり、弱化線7を容易に裂開させることができる。
【0038】
また、張出シート10の長手方向の寸法Rは、張出シート10が上述した保持手段及び把手手段としての機能を奏するのに十分な大きさを有するように設定する。
【0039】
なお、張出シート10と表面シート4とは、それぞれ別体のシートでもいいし、張出シート10と表面シート4とが単一のシートから構成されていてもよい。
【0040】
<3−4.接着層>
また、相対向する一対の張出シート101・102の対向面101a・102aそれぞれ(その総称として10aとする)には、接着対象との間で着脱自在な接着層20が形成されている。本実施形態に係る接着層20は、図5に示すように、基材シート201と、基材シート201の一方の面に形成された接着剤層202と、必要に応じて接着剤層202の上に設けられる剥離シート203とから構成されている。基材シート201の他方の面を張出シート10の対向面10aに貼着させておき、使用に際しては、剥離シート203が設けられている場合には、剥離シート203を剥がし、対向する接着剤層202・202同士を貼り合わせる。
【0041】
本実施形態に係る接着層20は、基材シート201の一方の面に特定の接着剤層202を有するものであって、基材シート201としては、接着層20の基材シート201として慣用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。基材シート201としては、例えば上質紙、グラシン紙、コート紙、無塵紙などの紙類、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、)、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン、)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、アクリル系樹脂、オレフィン系(TPO)、ポリウレタン系、ポリスチレン系等の熱可塑性エラストマー、アイオノマー、エチレン−メタクリル酸共重合体などのプラスチックシート、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セロハンなどのセルロース系シートなどが挙げられる。
【0042】
また、基材シート201として、伸縮部材を用いることができる。伸縮部材の形成材料は、例えば熱可塑性エラストマー、プラスチックシート、ゴムシート等の伸縮性を有する公知の種々のものを使用することができるが、特に熱可塑性エラストマーを使用することが好ましい。この熱可塑性エラストマーとしては、例えばスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、アイオノマー樹脂、シリコーン系樹脂等の公知の種々のものを用いることができる。また、これらの熱可塑性エラストマーの中でも、特にスチレン系エラストマー又はオレフィン系エラストマーを用いることが好ましい。
【0043】
また、これらの伸縮性部材は、その表面及び/又は裏面に不織布が配設されていることが好ましい。この不織布を構成する素材繊維としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、ポリエステル(PET等)、アクリル等や、PP/PE混合不織布、PE/PET混合不織布など上記素材を適宜組み合わせたバイコンポーネント繊維(混合繊維)等の公知の種々の素材繊維を用いることができる。また、このような素材繊維から不織布を製造する方法としては、例えばケミカルボンド法、サーマルボンド法、スパンレース法、スパンボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等、公知の種々の加工法を適宜用いることができる。
【0044】
接着剤層202を構成する接着剤としては、従来、基材シートの接着剤層に慣用されているもの、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等を使用することができるが、好ましくは、微粘着性の材料であることが望ましい。微粘着性材料としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体及びこれらの混合物などの熱可塑性樹脂が挙げられる。また、非粘着性樹脂に粘着付与剤や粘着剤などを適宜配合して、微粘着性を付与してもよい。
【0045】
本実施形態に係る接着層20には、接着剤層202に剥離シート203が貼着されている。剥離シート203としては、例えば、グラシン紙、上質紙、コート紙、ポリエチレンラミネート紙等の紙材、又は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチックフィルムに、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、長鎖アルキル系樹脂等の剥離剤を塗布したものが用いられる。
【0046】
また、接着層20として、基材シート201に、自己密着性を有する接着材料を塗布した接着部材を用いることができる。自己密着性(いわゆる自着性)とは、被着材に対して弱く接着し、接着面同士においては強く接着する特性のことをいい、例えばスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体から成るベースポリマーに、粘着付与剤と添加剤とが配合されたもの等がある。また、接着面同士にのみ接着し、それ以外の被着材には接着しない非粘着自着性を有する接着部材を用いることもできる。なお、本実施形態で使用される自着性材料としては、公知の種々のものを使用することができる。
【0047】
<4.装着する手順>
次に、本実施形態に係る男性用尿吸収物品1を装着する手順について説明する。
【0048】
本実施形態における自然状態とは、張出シート101・102が互いに対向した状態ではなく、図1に示すように、張出シート101・102それぞれが表面シート4の上面に略当接した状態で、かつ、男性用尿吸収物品1が略平板状の状態をいう。
【0049】
まず、張出シート101・102をそれぞれ指等で掴む。次に、挿入部6の対向辺6a・6bを中心に張出シート101・102を起倒させて、表面シート4の面に対して略垂直に起こして張出シート101と張出シート102とを対向させる。その後、図6に示すように、張出シート101・102を互いに相対する方向(長手方向に平行な方向)に引っ張って離間させることにより、張出シート101・102を引っ張る力(図6中、記号Fで表す力)に伴って弱化線7の周囲の表面シート4も引っ張られるため、ある一定以上の強さの引っ張り力が弱化線7にかかると長手方向に平行な方向に弱化線7が裂開する。したがって、挿入部6の弱化線7が裂開することによりペニス挿入用の開口部8が形成される。
【0050】
次に、ペニス2を開口部8から袋体5の内部空間5aに挿入・収納して、当該内部空間5aにある程度まで挿入・収納した段階で、張出シート101の対向面101a、及び張出シート102の対向面102aそれぞれをペニスの外周に当接させる(図7参照)。対向した張出シート101・102同士を押さえつけることにより、張出シート101の対向面101a、及び張出シート102の対向面102aそれぞれに形成された接着層20・20同士が貼着し、ペニス2に当接していない領域の開口部を閉口させる。
【0051】
次に、男性用尿吸収物品1を装着した状態で、紙おむつ等のアウターを身につける。
【0052】
なお、男性用尿吸収物品1を取り外す手順は、上述した装着方法と逆の手順で行われる。
【0053】
<5.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、吸収体33を積層体3にだけでなく、表面シート4側にも備えてもよい。詳しくは、図8に示されているように、袋体5の内部空間5aを形成する隙間を介して積層体3の上面と対向する液透過性の不織布シート25と、当該液透過性の不織布シート25と表面シート4との間に略シート状の吸収体33を介挿させている。液透過性の不織布シート25と表面シート4とは、ホットメルト接着剤等により吸収体33の周囲にて接合されている。なお、この液透過性の不織布シート25の材料は、トップシート31と同一の材料を用いることができる。このような構成にすることにより、尿の吸収量を増加させることができ、また、吸収体33はクッション性を有するので、袋体5の内部空間5aにペニスを収納したとき、更に良好なフィット感が得られる。
【0054】
また、弱化線7は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。例えば、上記実施形態では、切り込み部と非切り込み部とを幅方向に交互に配列し、その切り込み部と非切り込み部の幅方向の寸法が均一な弱化線7を形成したが、切り込み部と非切り込み部との寸法が不均一でも、また、交互に配列していなくても構わない。例えば、弱化線7を一点鎖線状、二点鎖線状やスリット状に形成してもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、幅方向の延びる挿入部6と平行な方向に弱化線7を形成していたが、例えば、弱化線7を、挿入部6と平行な方向に対して多少の角度を有するように形成したり、曲線状やサインカーブ状等に形成してもよい。
【0056】
また、弱化線7の形状については、容易に裂開することができる形状であればよく、例えば、複数の直線を、その直線の中心部が互いに重なるように形成した図形、例えば、二本の直線を、その直線の中心部を互いに重ねることにより十字形状の弱化線7が形成される。弱化線7を十字形状にすることにより、十字形の直線が交差する中心部にペニスを押し当てて、そのまま押し込むことにより裂開させることができる。
【0057】
また、図示していないが、弱化線7又はその近傍に、目印を付してもよい。
【0058】
目印の一例としては、弱化線7を、表面シート4の他の部位とは異なる色で着色する。例えば、表面シート4が白色の不織布シートにより構成されている場合には、弱化線7に薄水色の着色を付す。
【0059】
また、目印の他の例としては、弱化線7近傍に文字、図形及び記号のうち少なくとも一つを表示させることもできる。
【0060】
以上のように、目印は、着用者が弱化線7の位置を容易に視認できるものであればよく、種々の目印の形態を採用することができる。このように目印を付することにより、目印を手がかりとして弱化線7を容易に認識することができ、したがって、弱化線7の裂開作業を容易に行うことができる。
【0061】
また、上記実施形態では、図1に示すように、張出シート10の対向面10aの幅方向のほぼ全域に接着層20を形成する構成を図示したが、張出シート10の対向面10aに部分的に接着層20を形成する構成にすることもできる。
【0062】
また、上記実施形態では、張出シート10を備えた構成について説明したが、開口部8を形成するために、弱化線7の周囲の表面シート4の少なくとも2カ所(弱化線7を境に長手方向一方側及び他方側に一カ所ずつ)に、互いに離間する力をそれぞれ加えることで弱化線7を裂開させることができるのであれば、張出シート10を設けない構成をとることも可能であり、その他いかなる変形例も可能である。
【0063】
また、図示していないが、弱化線7を容易に安定して裂開させるために、弱化線7若しくは挿入部6近傍に補強シートを貼着させてもいい。補強シートの材料は、ポリエチレン等のプラスチックフィルム等が用いられ、ある程度の強度を有し、かつ、少なくとも幅方向に対する可撓性を有する材料であればよい。
【0064】
なお、補強シートの貼着位置としては、張出シート10を設けている場合と設けていない場合とで異なる。張出シート10を設けている場合では、張出シート10の一方の面(接着層20が形成されている対向面10aとは反対の面)に、幅方向に延びる補強シートを貼着する。なお、張出シート10の対向面10aに貼着されている剥離シート203を補強シートとして利用してもよい。張出シート25が設けられていない場合では、例えば、挿入部6の対向辺6a・6bそれぞれに幅方向に延びる補強シートを貼着させる。
【0065】
なお、男性用尿吸収物品1の形状については、その内部空間5aにペニスを収納することができる袋状であればよい。上記実施形態では、男性用尿吸収物品1の形状を平面視略矩形状としたが、平面視略正方形状、略円形状、又は球状等にすることも可能である。
【0066】
上記実施形態では、表面シート4の長手方向略中央領域近傍において幅方向に延びる挿入部6を設けていたが、例えば、表面シート4の長手方向一方側近傍、すなわち、積層体3と表面シート4との接合部S近傍に幅方向に延びる挿入部6を設け、そこに弱化線7を形成する構成をとることも可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 男性用尿吸収物品
3 積層体
4 表面シート
5 袋体
5a 内部空間
6 挿入部
7 弱化線
8 開口部
10 張出シート
20 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペニス挿入用の挿入部を有し、着用者のペニスに装着されて尿を吸収する袋状の男性用尿吸収物品であって、
ペニス挿入方向と交差する方向を幅方向として、前記挿入部に、前記男性用尿吸収物品の幅方向に延びる弱化線が形成され、
前記弱化線を裂開することにより、ペニスを挿入するための開口部が形成され、
前記挿入部の縁部は、前記幅方向に延びる一対の対向辺を有し、
前記一対の対向辺から前記男性用尿吸収物品の外部側へ向けて一対の張出部が張り出されていることを特徴とする男性用尿吸収物品。
【請求項2】
請求項1に記載の男性用尿吸収物品において、
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシート及び前記バックシートの間に介在する吸収体とを有する積層体と、
その外周縁部が前記積層体の外周縁部に接合されて前記積層体とともに袋体を構成する表面シートと、
を備え、
前記表面シートに前記挿入部が形成されていることを特徴とする男性用尿吸収物品。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の男性用尿吸収物品において、
前記弱化線は、前記挿入部に前記幅方向に沿ってミシン目状に切り込みを設けることにより形成されていることを特徴する男性用尿吸収物品。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の男性用尿吸収物品において、
前記張出部の対向面には、接着対象との間で着脱自在な接着層が形成されていることを特徴とする男性用尿吸収物品。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の男性用尿吸収物品において、
前記弱化線の位置を示す目印を付したことを特徴とする男性用尿吸収物品。
【請求項6】
請求項5に記載の男性用尿吸収物品において、
前記目印は、男性用尿吸収物品の他の部位とは異なる色で前記弱化線に着色されることを特徴とする男性用尿吸収物品。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の男性用尿吸収物品において、
前記目印は、前記弱化線の位置を示す文字、図形及び記号のうち少なくとも一つであることを特徴とする男性用尿吸収物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−39417(P2013−39417A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−235535(P2012−235535)
【出願日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【分割の表示】特願2008−201455(P2008−201455)の分割
【原出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000110044)株式会社リブドゥコーポレーション (390)
【Fターム(参考)】