説明

画像、記録方法、情報認識方法及び情報認識システム

多数の色材層の積層によらずとも、多数の情報を簡便に記録でき、そのうえ偽造・変造等が困難である画像等を提供すること。複数のインクを重ね合わせて形成された画像において、被記録材上に蛍光発光性を有する第1インクによる第1インク層が形成され、該第1インク層上に、第2インクによる第2インク層が形成されており、該第2インク層上に第1インク層が点在露出していることを特徴とする画像。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、画像、記録方法、情報認識方法及び情報認識システムに関し、更に詳しくは偽造、変造若しくは不正な方法で製造された物品に対する純製品の真贋判定を容易に認識可能とする画像、記録方法、情報認識方法及び情報認識システムに関する。
【背景技術】
近年、有価証券やカードをはじめ、各種印刷物や印刷紙において、模造防止、コピー防止等の目的で各種の提案がなされている。例えば、特許文献1〜4には、通常光下では視認できない無色の、紫外線で励起して可視光を発光する顔料を含むインクを用いた印刷物が、特許文献5には、赤外光で励起し赤外光を発光する組成物が、特許文献6、7には、赤外線で可視光を発光する蛍光剤を用いた印刷物及び画像表示体が提案されている。これらの提案は、何れも各色ごとに順次記録紙若しくは被記録媒体上に色材層を積層することで情報が形成されている。このような方式で多くの情報を記録しようとすると、色材層の積層数が多くなってしまい、印刷物若しくは記録媒体の厚みが増してしまう。又、情報が色材層の積層で構成された記録媒体や印刷物は、情報を構成している各色材が独立しているため、偽造・変造しようとする者によって、色材層中の色材を特定することが可能である。
【特許文献1】 特開平10−297075号公報
【特許文献2】 特開平7−125403号公報
【特許文献3】 実公平7−83987号公報
【特許文献4】 実開昭60−187085号公報
【特許文献5】 特開平8−151545号公報
【特許文献6】 特開平10−129107号公報
【特許文献7】 特開平9−240136号公報
【発明の開示】
従来技術のような積層構成は、一般に、積層間に明確な界面が存在するため、この界面で光の入射時や反射時における各種光の屈折が生じる。この屈折を考慮しないと、多くの情報を正確に読み出すことが難しくなる場合がある。また、この界面のためにせきそうされたインク層が剥離してしまう場合がある。一方、可視光領域の蛍光発光性のインク層を用いる場合、カーボンブラックのような可視光域の波長を全て吸収するような黒系インク層を上部層として設けると蛍光発光が確認できない。従って、この場合は、黒系インク層の上に蛍光発光性のインク層を設けて存在が明確になってしまうか、黒系インク層の画像を乱してしまう。別の方法は、このような積層構造とならないように、夫々のインク層の被記録媒体面における領域区分や型抜き印刷を行わなければならない。
依って、本発明の第1課題は、蛍光発光性のインク層は蛍光性を判別の手段として用いた場合、蛍光発光波長が積層されたインク層中の色材の吸収波長と重なっても、蛍光発光性が確保できる画像及び判定方法を得ることである。その際に、この蛍光発光性のインク層の存在が視覚認定できないほど、この上部インク層の記録濃度が一定もしくは略一定で、好ましくは、上部インク層の画像が鮮明であることを可能にすることも本発明の他の課題である。
また、本発明の第2の課題は、蛍光発光特性のインク層を積層されるインク層とどのような関係にすることで、蛍光特性を利用した新規な画像や判定方法が得られ、そのための記録方法や使用するインクについて総合的検討を行うことで、従来から生えられなかった新規なシステム及びそれに用いられる画像、記録方法、判定方法或いは、情報認識方法を提供することである。また、本発明の第3の課題は、多数のインク層の積層によらずとも、多数の情報を簡便に記録でき、そのうえ偽造・変造等が困難である印刷物等を与えることができる画像、記録方法、情報認識方法及び情報認識システムを提供することにある。
本発明第4の課題は、蛍光発光特性のインク層或いはそれに含まれる蛍光発光粒子と積奏されるインク層或いはそれに含まれる有色色材との相対的な位置関係に着目し、画像判定として、視覚的認定と光学的に拡大認定とで、異なる画像を呈する新規な画像、記録方法、判定方法或いは、情報認識方法を提供することである。さらに、本発明の他の課題は、以下の説明から理解できよう。
本発明は、上記課題のいずれかを達成するもので、以下の構成に代表される。本第1発明は、被記録材に複数種のインク層が積層されている積層部分を有する画像であって、前記積層部分は、蛍光発光性を有する第1インク層に有色の第2インク層が積層されおり、前記第2インク層に対して前記第1インク層の一部が点在露出していることを特徴とする画像である。これにより、蛍光発光部の存在を視覚確認しにくくなり、有色インク層の濃度村もなくなり、画像上の従来の不都合がない。
本第2発明は、前記本第1発明に対して、前記蛍光発光性は、前記第1インク層を形成するための第1インクに含まれる蛍光分散体により得られるものであって、前記蛍光分散体の平均粒子径が、前記第2インク層を形成するための第2インクに含まれる色材の平均粒子径より大きいことを特徴とする画像である。本第3発明は、前記本第1発明に対して、前記第1インク層の膜厚は、前記第2インク層の膜厚より厚いことを待徴とする画像である。これらの特徴は、単独でも複合することで一層、上記点在露出を効果的に形成できる。
これらの本発明の効果を一層際立たせる構成要件として以下の構成を挙げることができる。(1)前記第1インク層は、可視光波長領域外の波長を励起エネルギーとして、可視光波長領域内の特定色を蛍光発光することを特徴とする。(2)前記第2インク層の吸収スペクトルの波長域内に前記第1インク層の発光スペクトル波長域があることを特徴とする。(3)前記第1インク層は、複数のランタノイド元素を含有し、赤外波長光を励起エネルギーとして、可視光波長領域で蛍光発光することを特徴とする。(4)前記第2インク層は、カーボンブラックを含む黒系色である特徴とする。(5)前記画像は、前記積層部分の隣接部に、前記第2インク層を積層していない前記第1インク層を有することを特徴とする。(6)前記画像は、前記積層部分の隣接部に、前記第1インク層を持たない前記第2インク層の部分を有し、前記第2インク層による情報を形成している。(7)前記被記録媒体は、少なくとも、前記積層部分の前記第2インク層上及び前記前記第1インク層の点在露出部分上に、透明層を有していることを特徴とする。(8)前記透明層の厚みは、前記被記録材上に形成された前記インク層の総厚みより厚いことを特徴とする。
本第4発明は、被記録材に複数種のインク層が積層されている積層部分を有する画像であって、前記積層部分は、蛍光発光性を有する第1インク層に有色の第2インク層が積層されおり、前記第2インク層に対して前記第1インク層の一部が点在露出し、前記第1インク層の膜厚が、前記第2インク層の膜厚より厚く、前記第2インク層の吸収スペクトルの波長域内に前記第1インク層の発光スペクトル波長域があることを特徴とする画像である。そして、好ましくは、前記被記録媒体は、少なくとも、前記積層部分の前記第2インク層上及び前記前記第1インク層の点在露出部分上に、透明層を有していることを特徴とする。この透明層は、点在発光する点在露出部分の発光を面発光として視認できるような屈折を与える効果及び或いは画像の表面の平滑化を与える効果がある。
本第5発明は、被記録材上に蛍光発光性分散体を有する第1インクにより第1インク層を形成する工程と、色材を有する第2インクにより第2インク層を、前記第2インク層に対して前記第1インク層の一部が点在露出するように形成する工程と、を有することを特徴とする記録方法である。また本第6発明は、被記録材上に蛍光発光性分散体を有する第1インクにより第1インク層を形成する工程と、前記第1インク層上に色材を有する第2インクにより第2インク層を形成する工程と、を有し、第1インク中に分散する分散体の平均粒子径が第2インク中に分散する分散体の平均粒子径より大きく、前記第2インク層に対して前記第1インク層の一部が点在露出する程度大きいことを特徴とする記録方法である。
さらに本第7発明は、被記録材上に蛍光発光性分散体を有する第1インクにより第1インク層を形成する工程と、前記第1インク層上に色材を有する第2インクにより第2インク層を形成する工程と、を有し、被記録材に付与される第1インクの付与厚みが、第2インクの付与厚みより前記第2インク層に対して前記第1インク層の一部が点在露出する程度厚いことを特徴とする記録方法である。これらの方法によれば、上記本発明画像を確実に得ることができる。これらのより具体的な方法条件として好ましいものは、(1)前記第1、第2インクが、水性又は油性液体と皮膜形成材を含むグラビア印刷用インクである。(2)前記第1、第2インクが、溶剤と酸化重合性皮膜形成材を含むオフセット印刷用、凸版印刷用又はスクリーン印刷用インクである。(3)前記第1、第2インクが、溶剤と酸化重合性皮膜形成材を含む紫外線硬化印刷用インクである。
本第8発明は、被記録材上に可視光波長領域外の波長を励起エネルギーとして、可視光波長領域内の特定色を蛍光発光する蛍光発光性を有する第1インク層と、前記第1インク層に有色の第2インク層が積層されおり、前記第2インク層に対して前記第1インク層の一部が点在露出している画像に、前記可視光波長領域外の波長を照射し、上記第1インク層の点在露出による蛍光発光を認識することを特徴とする情報認識方法である。
本第9発明は、被記録材上に可視光波長領域外の波長を励起エネルギーとして、可視光波長領域内の特定色を蛍光発光する蛍光発光性を有する第1インク層と、前記第1インク層に有色の第2インク層が積層されおり、前記第2インク層に対して前記第1インク層の一部が点在露出している画像を備えた第1物品と前記画像を備えていない第2物品との真贋判定を行う情報認識システムであって、前記可視光波長領域外の波長を照射し、上記第1インク層の蛍光発光の存在によって真の物品であることを判定する情報認識システムである。
本第10発明は、有色の第2インク層が積層されると共に前記第2インク層に対して一部が点在露出している蛍光発光性を有する第1インク層を形成するためのインクであって、複数のランタノイド元素を含有する色材を含むインクであることを特徴とするインクである。この本第10発明に加えて、さらに好ましいインクは、(1)複数のランタノイド元素を含有する色材を含むインクが、可視光波長領域外の波長を励起エネルギーとして、可視光波長領域内の特定色を蛍光発光する蛍光発光性を有すること、(2)前記複数のランタノイド元素を含有する色材を含むインクが、紫外線硬化型インクであること、(3)前記複数のランタノイド元素を含有する色材を含むインクが、油性インクであることのいずれかである。
【図面の簡単な説明】
図1は本発明に係る画像表面から見た画像イメージ図である。
図2は図1の画像の断面イメージ図である。
図3は第1インク層に使用されている色材が被記録材上に定着した状態のイメージ図である。
図4は最表面に透明化コート層を設けた状態を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
本発明の画像は、複数のインクを重ね合わせて形成された画像において、被記録材上に蛍光発光性を有する第1インクによる第1インク層が形成され、該第1インク層上に、第2インクによる第2インク層が形成されており、該第2インク層上に第1インク層が点在露出し、且つ第1インク層、第2インク層の少なくとも一方で画像を形成していることを特徴としている。この特徴により、第2インク層の光学濃度は、第2インク層単独画像と比較しても同等の濃度であって、画像として十分なものとなり、第1インク層の視覚認識ができない。また、発光は、光学的に5倍から10倍程度拡大すると、点在発光部分として認識でき、視覚的に線状或いは面状の発光部として認識できる(以下の実施例で説明のないものはこの条件を満足しており、この効果をも得ているものである)。
図1に本発明の画像を印刷表面から見た画像イメージを示す。図中、黒色部分1は、第一のインクにより形成されたインク層の一部である。グレー部分2は、第2インクにより形成されたインク層部分である。第2インク層2の表面上に、第1インク層の一部1が点在露出している。この点在露出は、蛍光発光特性のインク層或いはそれに含まれる蛍光発光粒子と積奏されるインク層或いはそれに含まれる有色色材との相対的な位置関係を規定しており、インク層を積層したとしても、蛍光発光の判別は、レンズ等を介しての拡大による判定は、点在発光部分として認識できる。同時に、視覚的に線状或いは面上の発光部として認識できる。
又、図2には、図1の画像の断面図を併記したイメージを示す。図中、黒色部分1は、第1インク層部分である。グレー部分2は、第2インク層部分である。又、破線は、第2画インク層の厚み(印刷被膜の厚み)を示している。第2インク層の厚みが第1インク層の厚みより薄いため、第2インク層が、第1インク層の凹凸の狭間に定着している。従って、第2インク層の光学濃度は、第2インク層単独の濃度(例えば、1.43)に対してほとんど変わらない濃度(例えば、1.40)を示す。
上記において、第1インク層が、赤外波長光を励起エネルギーとして、蛍光発光するインクを用いて形成されていると、画像のセキュリティー性用途性が高くなる。又、第1画インク層が、赤外波長光を励起エネルギーとして、可視光波長領域で蛍光発光するインクを用いて形成されていると、画像の判別性も容易になる。又、第2インク層の吸収スペクトルの波長域内に第1インク層の発光スペクトル波長域があると、本発明の画像の特性を引き出すことが可能となり、即ち、通常は、第2インク層の印刷面積が大きいため、目視でも判別し難いが、顕微鏡や、第1インク層が上記インクで形成されていると赤外波長光を照射して確認できる。第1インク層を形成する第1インクの色材が、顔料であると、第2インク層内に第1画インク層の点在露出が容易になる。特に、第1インクの色材が、無機顔料であると好ましい。
又、第1インクの色材が、複数のランタノイド元素を含有する色材を用いるのも特に好ましい。第2インク層を形成する第2インクの色材が、非蛍光色材であると、第1インク層の蛍光性を視認しやすくなる。特に第2インクの色材が、顔料であること、特に無機顔料であることが好ましい。又、第2インクの色材が、カーボンブラックであると第2インク層が可視光をほとんど吸収するため、第1インク層の判別が容易になる。
本発明の記録方法は、複数のインクを重ね合わせて画像を形成する記録方法において、被記録材上にはじめに蛍光発光性を有する第1インクからなる第1インク層を形成し、次に、該第1インク層上に第2インクにより第2インク層を形成する際、第2インク層を間隙を有して形成することを特徴としている。
本発明の記録方法は、複数のインクを重ね合わせて画像を形成する方法において、被記録材上にはじめに蛍光発光性を有する第1インクにより第1インク層を形成し、次に、該第1インク層上に第2インクにより第2インク層を形成する記録方法において、上記第1インク中に分散する分散体の平均粒子径が、上記第2インク中に分散する分散体の平均粒子径より大きいことを特徴としている。の平均粒子径の差は、好ましくは、蛍光発光粒子が0.5μm以上3μm程度(好ましくは、1μm以上2μm以下で、より好ましくはこの平均粒子径のものが40%以上含まれている)に対して、有色色材がnmのものが最適である。具体的には、蛍光発光粒子が無機顔料で、有色色材が有機染料や有機顔料画好ましい。
本発明の記録方法は、複数のインクを重ね合わせて画像を形成する記録方法において、被記録材上にはじめに蛍光発光性を有する第1インクによる第1インク層を形成し、次に、該第1インク層上に第2インクによる第2インク層を形成する方法において、被記録材に形成される第1インク層の厚み(印刷被膜の厚み)が、第2インク層の厚みより厚いことを特徴としている。上記画像形成に用いられるインクとは、色材、例えば顔料を分散させる液体と顔料の分散状態を維持する分散剤、若しくはインクを付与して情報を記録した後に顔料を印刷用紙(以下被記録媒体を含む意味で使用する)に固着させる皮膜形成材若しくはバインダーを含む。被記録媒体としては、パルプ、繊維、樹脂、シール、ダンボール等の通常市販の記録媒体又は、これらに色付けのためのコーテイングがなされたものでもよい。
本発明の画像は種々の印刷方式で形成されるが、例えば、インクジェット方式で形成する場合のインクの液媒体は、従来公知であるように水、又は水と水溶性有機溶剤との混合物が主として使用される。水溶性液媒体としては水溶性アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン等の水溶性多価アルコールが挙げられる。又、顔料の水性媒体中における分散性を維持するために、各種界面活性剤、水溶性樹脂等の顔料分散剤を含む。水溶性樹脂としては主としてカルボキシル基、第4級アンモニウム基等の水溶性基を有するアクリル樹脂等が挙げられる。
又、本発明の画像がグラビア印刷により形成される場合のインク、例えば、水性グラビア印刷インクの場合には、アルコール等の水溶性有機溶剤を含む水と、水溶性樹脂又は水不溶性樹脂のエマルジョン等が使用され、これらの樹脂としては、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂等が挙げられ、更に必要に応じて架橋剤等を含む。油性グラビア印刷用インクの場合には、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、アルキル基置換シクロヘキサン等の有機溶剤が挙げられ、皮膜形成材(バインダー)としては、上記の如き水不溶性樹脂が挙げられ、同様に必要に応じて架橋剤を含む。
又、本発明の画像がオフセット印刷、凸版印刷又はスクリーン印刷で形成される場合、それぞれに使用するインクの液媒体は、石油系溶剤と、酸化重合性二重結合を有する半乾性油、乾性油、ロジン変性フェノール樹脂、石油樹脂、アルキッド樹脂等の皮膜形成材を含む。以上の如きインクの液媒体(ワニス、ビヒクル)は何れも公知であり、その他の公知の何れの液媒体も本発明の画像を形成するインクに使用できる。更に上記では代表的な印刷方式に用いるインクの液媒体を挙げたが、その他の印刷方式で使用されるインクの液媒体であってもよい。
本発明の主たる特徴は、上記の如き公知の印刷方式用のインクの色材として、第1インクに蛍光発光色材を用いることを特徴とする。蛍光発光色材とは、ある波長の光を励起エネルギーとして用い、前記波長と異なった波長域で発光するものをさす。この中で好ましいのは、堅牢性が高い顔料であり、用途及び目的によっては、染料を併用してもよい。
本発明で使用する蛍光発光性を有するインクに用いる蛍光発光色材としては、紫外線により励起され、これよりも低いエネルギー準位に戻るときに発するスペクトルのピークが青、緑、赤等の波長域にあるものであり、硫化亜鉛やアルカリ土類金属の硫化物等の高純度蛍光体に発光をより強くするために微量の金属(銅、銀、マンガン、ビスマス、鉛等)を付活剤として加え高温焼成して得られる。紫外蛍光顔料は母体結晶と付活剤の組み合わせにより色相、明るさ、色の減衰の度合いを調整することができる。
具体例としてはCaCl:Eu2+、CaWO、ZnO:Zn、ZnSiO:Mn、YS:Eu、ZnS:Ag、YVO:Eu、Y:Eu、GdS:Tb、LaS:Tb、YAl12:Ce、Sr(PO)3Cl:Eu、3(Ba,Mg)O・8Al:Eu、ZnGeO:Mn、Y(P,V)O:Eu、0.5MgF・3.5MgO・GeO:Mn、ZnS:Cu、ZnS:Mn等があり、これらを単体、又はこれらから数種類を任意に選択して混合して使用する。これらの蛍光発光色材の蛍光スペクトルはピークを青、緑、赤等の波長域以外に持つものであり、所望の蛍光スペクトルに応じて適宜選択することができる。
本発明で使用する赤外蛍光顔料は、赤外光(約800〜約1200nm)で励起し可視光(約400〜約800nm)を発光する顔料である。この赤外蛍光顔料は、非常に特殊な励起機構を持つ蛍光体であり、エネルギーの小さな赤外線の光子を複数個用いて可視発光の励起を行う。この励起機構は二つのタイプがあり、一方は付活剤イオンの中の多段階の励起により励起する、Er3+やHo3+(希土類)等を付活剤とする多くの母体結晶で観測されるものと、他方は増感剤からの複数回の共鳴エネルギー伝達、つまり増感剤Yb3+が赤外線を吸収し多段階のエネルギー伝達により発光中心のEr3+、Tm3+、Ho3+等を高い準位に励起するものがある。具体例としてはYF:Yb+Er、YF:Yb+Tm、BaFCI:Yb+Er等がある。
本発明で使用する非蛍光発光色材としては、好ましくは顔料である。通常顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、群青、紺青、酸化クロム、酸化鉄等の無機顔料、アリリド系、アセト酢酸アリリドジスアゾ系、ピラゾロンアゾ系等の不溶性アゾ顔料、レーキレッドC、ブリリアントカーミン6B等の溶性アゾ顔料、銅フタロシアニン系、キナクリドン系、インジゴ・チオインジゴ系、インダンスロン系、ペリノン・ペリレン系等の有機顔料、カーボンブラック等の如く従来の印刷インクで使用されている各種顔料が挙げられる。
又、各顔料の組み合わせにおいて、通常顔料は、赤外部及び紫外部の吸収が少ないか、或いは有さない顔料を用いることが好ましい、例えば、全波長にわたって光を吸収する黒色顔料を使用する場合は、低濃度(1質量%未満)とすることが好ましい。又、白色顔料のように全波長にわたって光を反射する顔料を前記何れかの顔料に併用することが好ましい。白色顔料の使用によって印刷層に照射される紫外線及び/又は赤外線が印刷用紙を通過することなく、効率的に紫外蛍光顔料及び/又は赤外蛍光顔料の発光を向上させることができる。又、有色通常顔料は、紫外蛍光顔料及び/又は赤外蛍光顔料の発光波長と異なる色相の顔料を用いることが好ましい。このような組み合わせにおいて、印刷物に紫外線及び/又は赤外線を照射することによって、看者に著しく異なった視感を与えるので、多量の情報が記録できるとともに、情報の偽造・変造・改ざんが困難で、且つ偽物の検出が容易である。
本発明で使用するインクは、その印刷様式に合わせた製造方法により、必要な成分を混合し、顔料を液媒体中に分散させることによって得られる。紫外蛍光顔料及び赤外蛍光顔料は、その比重が大であるのでインク中で顔料の沈降が生じ易い。従って使用直前に再分散処理して使用することが好ましい。以上の本発明で使用するインクによる印刷方法は特に限定されないが、具体的にはインクジェット記録、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷、スクリーン印刷等に有用である。
印刷用紙(被記録媒体)としては、各種有価証券、紙幣、商品券、カード、乗車券、入場券等用の紙、合成紙、プラスチックフィルム等が挙げられ、更に模造品が出易い商品それ自体、該商品のケース、段ボール箱等、特に限定されない。印刷用紙(被記録媒体)に対する印刷は、前記のインクのみにより各種画像(情報)を記録してもよいし、通常の印刷物の一部に本発明の方法により特定の画像を形成してもよい。例えば、有価証券を通常の印刷インクにて形成し、その画像の一部のみを本発明の方法により画像を形成してもよい。蛍光顔料は比較的高価であることから、画像の一部のみ、例えば、多数印刷される文字の一部のみを本発明の方法で印刷することにより、コストの問題を回避することができる。
次の図面を参照して本発明の記録方法の例を説明する。
図1に本発明の画像を表面から見た画像イメージを示す。図中、黒色部分1は、第1インク層が形成された部分である。グレー部分は、第2インク層が形成された部分である。第2インク層表面上に、第1インク層の一2部が点在露出されている。
図2には、図1の画像の断面イメージを示す。図中、領域1(黒色部分)は、第1画インク層が形成された部分であり、領域2(グレー部分)は、第2インク層が形成された部分である。又、破線は、第2インク層の厚み(印刷被膜の厚み)を示している。第2インク層の厚みが第1インク層の厚みより薄いため、第2インク層が、第1インク層の凹凸の狭間に定着している。
図3は、第1インク層に使用されている色材が被記録材上に定着した状態を示す。図中、黒色部分1は、第1インク層部分である。グレー部分2は、第2インク層部分である。又、破線は、第2インク層の厚みを示している。第1インク層が凹凸上に定着した狭間に第2インク層が定着している。
図4は、最表面に、透明化コート層3を設けた状態を示す。最表面に、透明なコート層を設けることで、画像表面上の凹凸を抑制することで、画像の印刷品位を良好にする。この場合、透明コート層としてフィルム状のものを用いると、画像面とフィルムとの間に通常では視認できないレベルの微小な多数の気泡を、画像面とフィルムとの間に発生させることができるため、画像表面から印刷部の状態を判断し難くなるため、セキュリティー性を要求される画像には好ましくなる。
又、上記記録方法を用いると、複数のインクを重ね合わせて形成された画像において、被記録材上に蛍光発光性を有する第1インクによる第1インク層上に、第2インクによる第2インク層が形成されており、第1インク層上に第2インク層が点在露出していることを特徴とする良好な画像を得ることができる。
又、本発明は、以上説明した画像に、紫外光及び/又は赤外光を照射し、情報を認識することを特徴とする情報の認識方法、及び上記画像と、該画像に紫外光及び/又は赤外光を照射する光源と、光源照射により発色する色相を認識する手段とを有することを特徴とする情報認識システムも提供する。本発明は、複数のインクを重ね合わせて形成された画像において、被記録材上に蛍光発光性を有する第1インクによる第一のインク層が形成され、該第1インク層上に、第2インクによる第2インク層が形成されており、該第2インク層上に第1インク層が点在露出させ、且つ第1インク層、第2インク層の少なくとも一方で画像を形成していることを特徴とする画像を提供する。又、本発明は、複数のインクを重ね合わせて形成された画像において、被記録材上に蛍光発光性を有する第1インクによる第1インク層が形成され、該第1インク層上に、第2インクによる第2インク層が形成されており、第2インク層上に第1インク層が点在露出させ、且つ第1インク層、第2インク層の少なくとも一方で画像を形成している画像において、被記録材上での第1画像の膜厚が第2画像の膜厚より厚いことを特徴とする画像を提供する。
又、本発明は、複数のインクを重ね合わせて形成された画像において、被記録材上に蛍光発光性を有する第1インクによる第1インク層が記録され、該第1インク層上に、第2インクによる第2インク層が形成されており、第2インク層上に第1インク層が点在露出させ、且つ第1インク層、第2インク層の少なくとも一方で画像を形成している画像において、被記録材上に複数のインクを重ね合わせて形成された上記画像の最上面に、透明層が形成されていることを特徴とする画像を提供する。
又、本発明は、複数のインクを重ね合わせて画像を形成する記録方法において、被記録材上にはじめに蛍光発光性を有する第1インクにより第1インク層を形成し、次に、該第1インク層上に第2インクにより第2インク層を形成し、且つ第1インク層、第2インク層の少なくとも一方で画像を形成する際、第2インク層を間隙を有して形成することを特徴とする記録方法を提供する。 又、本発明は、複数のインクを重ね合わせて画像を形成する記録方法であって、被記録材上にはじめに蛍光発光性を有する第1インクにより第1インク層を形成し、次に、該第1インク層上に第2インクによる第2インク層を形成し、且つ第1インク層、第2インク層の少なくとも一方で画像を形成する記録方法において、第1インク中に分散する分散体の平均粒子径が、第2インク中に分散する分散体の平均粒子径より大きいことを特徴とする記録方法を提供する。
又、本発明は、複数のインクを重ね合わせて画像を形成する記録方法であって、被記録材上にはじめに蛍光発光性を有する第1インクによる第1インク層を形成し、次に、該第1インク層上に第2インクによる第2インク層を形成し、且つ第1インク層、第2インク層の少なくとも一方で画像を形成する記録方法において、被記録材に付与される第1インクの付与厚みが、第2インクの付与厚みより厚いことを特徴とする記録方法を提供する。又、本発明は、複数のインクを重ね合わせて形成された画像であって、被記録材上に蛍光発光性を有する第1インクによる第1インク層を有し、該第1インク層上に第2インクによる第2インク層を有し、該第2インク層上に第1インク層が点在露出し、且つ第1インク層、第2インク層の少なくとも一方で画像を形成している画像に、紫外光及び/又は赤外光を照射し、上記画像情報を認識することを特徴とする情報認識方法を提供する。又、本発明は、複数のインクを重ね合わせて形成された画像であって、被記録材上に蛍光発光性を有する第1インクによる第1インク層を有し、該第1インク層上に、第2インクによる第2インク層を有し、第2インク層上に第1インク層を点在露出させ、且つ第1インク層、第2インク層の少なくとも一方で画像を形成している画像と、該画像に紫外光及び/又は赤外光を照射する光源と、光源照射により発色する色相を認識する手段とを有することを特徴とする情報認識システムを提供する。
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、文中「部」又は「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である
[実施例1]
スチレン−アクリル酸共重合体(重量平均分子量約7,000、酸価約200)と、これを中和するのに必要な所定量の水酸化カリウム、及び水を混合して、約60℃に保温した状態でこれらを撹拌混合し、10%のスチレン−アクリル酸共重合体の水溶液を作製した。このようにして作製したスチレン−アクリル酸共重合体を分散剤として用い、以下のような顔料分散体を作製した。
・10%スチレン−アクリル酸共重合体水溶液
20部
・赤外蛍光顔料(YF3:Yb:Er) 3部
・C.I.Pigment Yellow 138 7部
・グリセリン 20部
・ジエチレングリコール 20部
・トリエチレングリコール 10部
・水 20部
これらの材料をバッチ式縦型サンドミルに仕込み、1mm径のガラスビーズをメディアとして充填し、水冷しつつ3時間、分散処理を行った。この顔料分散体を1回目の遠心分離処理(10,000rpm、30分間)することによって、粗大粒子を除去した後、水にて全体を2倍に希釈してインク化した。更にこのインクを2回目の遠心分離処理(10,000rpm、30分間)することによって、粗大粒子を除去した後、所定の組成になるように液媒体で希釈して本発明で使用するインクジェット記録用インクを調製した。一方、上記インク組成において黄色顔料(7部)のみを使用し、赤外蛍光顔料を使用しないで同様にインクジェット記録用インクを調製した。
上記の赤外蛍光顔料を含まないインクを用いて、BJF600プリンタ(キャノン株式会社製)を用いて普通紙にベタ印字し、次いで上記の赤外蛍光顔料を含むインクを用いてベタ画像中に「AB」の文字(真贋判定用としては、製造メーカの商標、ロゴマークが好ましい)を印字した。この印字物は昼光下では均一な黄色を呈するが、暗室において800〜1200nmの赤外線を照射すると「AB」の文字が鮮明に観察された。又、昼光下で同様に赤外線を照射すると「AB」の文字が鮮明に観察された。
[実施例2]
下記の成分をバッチ式縦型サンドミルに仕込み、1mm径のガラスビーズをメディアとして充填し、水冷しつつ3時間、分散処理を行って本発明で使用するグラビア印刷用インクを得た。このインクは殆ど着色しておらず白色を呈していた。
・白色顔料(酸化チタン) 2部
・赤外蛍光顔料(YF3:Yb:Er) 9部
・紫外蛍光顔料(ZnS:Cu) 9部
・メチルエチルケトン 50部
・トルエン 50部
・アクリル樹脂 30部
上記インクを用いて、上質紙に「純正品」の文字を一部に印刷し、更にその上から通常の4色グラビア印刷インクを用いて風景画を印刷した。この風景画は、昼光下では風景画が視認されるのみであったが、暗室において800〜1200nmの赤外線を照射すると「純正品」の文字が鮮明に観察された。又、昼光下で同様に赤外線を照射すると「ほんもの」の文字が風景画中に現出した。
[実施例3]
下記の成分をバッチ式縦型サンドミルに仕込み、1mm径のガラスビーズをメディアとして充填し、水冷しつつ3時間、分散処理を行って本発明で使用するグラビア印刷用インク1を得た。このインクは赤色を呈していた。
インク1の組成
・赤外蛍光顔料(YF3:Yb:Er) 10部
・C.I.Pigment Red 122 10部
・メチルエチルケトン 50部
・トルエン 50部
・アクリル樹脂 30部
上記とは別に上記と同様にして下記組成のグラビア印刷用インク2及び3を作成した。
インク2の組成
・C.I.Pigment Red 122 10部
・メチルエチルケトン 50部
・トルエン 50部
・アクリル樹脂 30部
インク3の組成
・赤外蛍光顔料(YF3:Yb:Er) 10部
・メチルエチルケトン 50部
・トルエン 50部
・アクリル樹脂 30部
上記インク1を用いてポリエステルフィルム上にベタ画像1を形成し、上記インク2及び3を用いてポリエステルフィルム上にインク2→3の順、及びインク3→2の順で、顔料濃度が同じ割合になる量で重ね刷りしてベタ画像2及び3を形成した。画像1〜3を昼光下、及び昼光下及び800〜1200nmの赤外線照射下に観察したところ、何れの場合においても画像1が最も鮮明に観察された。
[実施例4]
下記の成分をバッチ式縦型サンドミルに仕込み、1mm径のガラスビーズをメディアとして充填し、水冷しつつ3時間、分散処理を行って本発明で使用するグラビア印刷用インク1を得た。このインクは赤色を呈していた。
インク1の組成
・紫外蛍光顔料(Flurol BK) 10部
・C.I.Pigment Red 122 10部
・メチルエチルケトン 50部
・トルエン 50部
・アクリル樹脂 30部
上記とは別に上記と同様にして下記組成のグラビア印刷用インク2及び3を作成した。
インク2の組成
・C.I.Pigment Red 122 10部
・メチルエチルケトン 50部
・トルエン 50部
・アクリル樹脂 30部
インク3の組成
・紫外蛍光顔料(Flurol BK 10部
・メチルエチルケトン 50部
・トルエン 50部
・アクリル樹脂 30部
上記インク1を用いてポリプロピレンフィルム上にベタ画像1を形成し、上記インク2及び3を用いてポリプロピレンフィルム上にインク2→3の順、及びインク3→2の順で、顔料濃度が同じ割合になる量で重ね刷りしてベタ画像2及び3を形成した。画像1〜3を昼光下、及び昼光下及びブラックライト線照射下に観察したところ、何れの場合においても画像1が最も鮮明に観察された。
[実施例5]
下記の成分を窒素気流下に220℃で溶解させ、1時間加熱撹拌してワニスを調製した。
・ロジン変性フェノール樹脂 40部
・大豆油 25部
・石油系溶剤(AFソルベント4号) 35部
上記で得られたワニスに下記の顔料混合物を顔料濃度が20%になるように添加し、サ
ンドミルを使用して均一に混練して本発明で使用するオフセット印刷用インクを得た。
・C.I.Pigment Red 122 10部
・赤外蛍光顔料(YF:Yb:Er) 10部
一方、上記インク組成において赤色顔料(10部)のみを使用し、赤外蛍光顔料を使用
しないで同様にオフセット印刷用インクを調製した。
オフセット印刷機にて普通紙上記赤外蛍光顔料を含む上記インクを用いて暗号文字を印刷し、次いで赤外蛍光顔料を含まないインクを用いて、この暗号文字全体をカバーするベタ印刷した。この印字物は昼光下では全面が均一な赤色を呈するが、暗室において800〜1200nmの赤外線を照射すると暗号のみが明暸に観察された。又、昼光下で同様に赤外線を照射すると暗号文字が鮮明に観察された。尚、前記オフセット印刷用インクは、凸版印刷用又はスクリーン印刷用としても使用できる。
又、実施例5のインクを用いた印刷物を、赤外蛍光顔料に合った特定の赤外光を照射する装置を設け、且つ発光情報(暗号)を読み取る装置を有するスキャナーで記録情報を読み取ったところ、良好に情報を読み取ることができた。更に、実施例5のインクを用いた記録媒体の表面に、赤外光吸収部の厚みを変化させて形成させたものを、赤外蛍光顔料に適合する励起波長の特定の赤外光を照射する装置を設け、且つ発光情報を読み取る装置を有するスキャナーで記録情報を読み取ったところ、赤外光吸収部の厚みの変化に対応した情報を読み取ることができた。
[実施例6]
下記の成分を、3本ロールを用いて十分に混合、分散して、紫外光硬化型インクを得た。
インク1の成分
赤外蛍光顔料(YF:Yb:Er/平均粒子径:2μm) 50部
ポリエステルアクリレート 30部
メタクリル酸ヒドロキシエチエル 13部
ヒドロキシメチルプロピオフェノン 7部
インク2の成分
カーボンブラック(平均粒子径:500nm) 20部
ポリエステルアクリレート 45部
メタクリル酸ヒドロキシエチエル 25部
ヒドロキシメチルプロピオフェノン 10部
上記インク1を用いて、ユポ紙上に文字を印刷後、UVを照射して、画像1を形成した。更に連続して、インク2を、前記画像1と一部が重なるようにして、更にインク1の印刷厚みより薄くして、ベタ画像を印刷後、UVを照射して画像2を形成し、最終画像3を得た。最終画像3を昼光下で見ると、黒色のベタ画像2しか見えないが、画像3を遮光された部屋内で、赤外光800〜1000nmの赤外光を照射すると、画像2と重なっている部分も含めて画像1部が確認できた。
また、上記で得られた画像3の上に、インク1とインク2の総塗布厚より厚い透明のラミネートフィルムを重ねて積層後、遮光された部屋内で、赤外光800〜1000nmの赤外光を照射すると、画像2と重なっている部分も含めて画像1が鮮明に確認できた。特に、透明のラミネートフィルムを重ねる前に比べて、画像2に於いて、画像1と重なっている部分と重なっていない部分の差が無かった。
[実施例7]
上記、実施例6の最終画像3に於いて、画像1と画像2が重なっている部分を10倍の顕微鏡で観察したところ、画像1が印刷されている部分上に画像2の形成に使用したインク2が点在して見え、更に遮光された部屋内で、赤外光800〜1000nmの赤外光を照射すると、インク2で形成された画像2の中にインク1で形成された画像1が点在して見えた。
上記本発明によれば、多数の色材層の積層によらずとも、多数の情報を簡便に記録でき、そのうえ偽造・変造等が困難である画像、記録方法、認識方法及び情報認識システムを提供することができる。
以上の如き本発明によれば、多数の蛍光発光特性のインク層或いはそれに含まれる蛍光発光粒子と積層されるインク層或いはそれに含まれる有色色材との相対的な位置関係を明確にできるため、インク層を積層したとしても、蛍光発光の判別をレンズ等を介しての拡大による点在発光部分として認識できたり、視覚的に線状或いは面状の発光部として認識できるので、多数の情報を簡便に記録でき、そのうえ偽造・変造等が困難である画像、記録方法、認識方法及び情報認識システムを提供することができる。
この出願は2003年12月11日に出願された日本国特許出願第2003−413563号からの優先権を主張するものであり、その内容を引用してこの出願の一部とするものである。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録材に複数種のインク層が積層されている積層部分を有する画像であって、前記積層部分は、蛍光発光性を有する第1インク層に有色の第2インク層が積層されおり、前記第2インク層に対して前記第1インク層の一部が点在露出していることを特徴とする画像。
【請求項2】
前記蛍光発光性は、前記第1インク層を形成するための第1インクに含まれる蛍光分散体により得られるものであって、前記蛍光分散体の平均粒子径が、前記第2インク層を形成するための第2インクに含まれる色材の平均粒子径より大きいことを特徴とする請求項1に記載の画像。
【請求項3】
前記第1インク層の膜厚は、前記第2インク層の膜厚より厚いことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像。
【請求項4】
前記第1インク層は、可視光波長領域外の波長を励起エネルギーとして、可視光波長領域内の特定色を蛍光発光することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像。
【請求項5】
前記第2インク層の吸収スペクトルの波長域内に前記第1インク層の発光スペクトル波長域があることを特徴とする請求項4に記載の画像。
【請求項6】
前記第1インク層は、複数のランタノイド元素を含有し、赤外波長光を励起エネルギーとして、可視光波長領域で蛍光発光することを特徴とする請求項4に記載の画像。
【請求項7】
前記第2インク層は、カーボンブラックを含む黒系色である特徴とする請求項6に記載の画像。
【請求項8】
前記画像は、前記積層部分の隣接部に、前記第2インク層を積層していない前記第1インク層を有することを特徴とする請求項1に記載の画像。
【請求項9】
前記画像は、前記積層部分の隣接部に、前記第1インク層を持たない前記第2インク層の部分を有し、前記第2インク層による情報を形成していることを特徴とする請求項1又は請求項8に記載の画像。
【請求項10】
前記被記録媒体は、少なくとも、前記積層部分の前記第2インク層上及び前記前記第1インク層の点在露出部分上に、透明層を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像。
【請求項11】
前記透明層の厚みは、前記被記録材上に形成された前記インク層の総厚みより厚いことを特徴とする請求項10に記載の画像。
【請求項12】
被記録材に複数種のインク層が積層されている積層部分を有する画像であって、前記積層部分は、蛍光発光性を有する第1インク層に有色の第2インク層が積層されおり、前記第2インク層に対して前記第1インク層の一部が点在露出し、前記第1インク層の膜厚が、前記第2インク層の膜厚より厚く、前記第2インク層の吸収スペクトルの波長域内に前記第1インク層の発光スペクトル波長域があることを特徴とする画像。
【請求項13】
前記被記録媒体は、少なくとも、前記積層部分の前記第2インク層上及び前記前記第1インク層の点在露出部分上に、透明層を有していることを特徴とする請求項12に記載の画像。
【請求項14】
被記録材上に蛍光発光性分散体を有する第1インクにより第1インク層を形成する工程と、色材を有する第2インクにより第2インク層を、前記第2インク層に対して前記第1インク層の一部が点在露出するように形成する工程と、を有することを特徴とする記録方法。
【請求項15】
被記録材上に蛍光発光性分散体を有する第1インクにより第1インク層を形成する工程と、前記第1インク層上に色材を有する第2インクにより第2インク層を形成する工程と、を有し、第1インク中に分散する分散体の平均粒子径が第2インク中に分散する分散体の平均粒子径より大きく、前記第2インク層に対して前記第1インク層の一部が点在露出する程度大きいことを特徴とする記録方法。
【請求項16】
被記録材上に蛍光発光性分散体を有する第1インクにより第1インク層を形成する工程と、前記第1インク層上に色材を有する第2インクにより第2インク層を形成する工程と、を有し、被記録材に付与される第1インクの付与厚みが、第2インクの付与厚みより前記第2インク層に対して前記第1インク層の一部が点在露出する程度厚いことを特徴とする記録方法。
【請求項17】
前記第1、第2インクが、水性又は油性液体と皮膜形成材を含むグラビア印刷用インクである請求項14乃至請求項17の何れか1項に記載の記録方法。
【請求項18】
前記第1、第2インクが、溶剤と酸化重合性皮膜形成材を含むオフセット印刷用、凸版印刷用又はスクリーン印刷用インクである請求項14乃至請求項17の何れか1項に記載の記録方法。
【請求項19】
前記第1、第2インクが、溶剤と酸化重合性皮膜形成材を含む紫外線硬化印刷用インクである請求項14乃至請求項17の何れか1項に記載の記録方法。
【請求項20】
被記録材上に可視光波長領域外の波長を励起エネルギーとして、可視光波長領域内の特定色を蛍光発光する蛍光発光性を有する第1インク層と、前記第1インク層に有色の第2インク層が積層されおり、前記第2インク層に対して前記第1インク層の一部が点在露出している画像に、前記可視光波長領域外の波長を照射し、上記第1インク層の点在露出による蛍光発光を認識することを特徴とする情報認識方法。
【請求項21】
被記録材上に可視光波長領域外の波長を励起エネルギーとして、可視光波長領域内の特定色を蛍光発光する蛍光発光性を有する第1インク層と、前記第1インク層に有色の第2インク層が積層されおり、前記第2インク層に対して前記第1インク層の一部が点在露出している画像を備えた第1物品と前記画像を備えていない第2物品との真贋判定を行う情報認識システムであって、前記可視光波長領域外の波長を照射し、上記第1インク層の蛍光発光の存在によって真の物品であることを判定する情報認識システム。
【請求項22】
有色の第2インク層が積層されると共に前記第2インク層に対して一部が点在露出している蛍光発光性を有する第1インク層を形成するためのインクであって、複数のランタノイド元素を含有する色材を含むインクであることを特徴とするインク。
【請求項23】
複数のランタノイド元素を含有する色材を含むインクが、可視光波長領域外の波長を励起エネルギーとして、可視光波長領域内の特定色を蛍光発光する蛍光発光性を有することを特徴とする請求項22に記載のインク。
【請求項24】
前記複数のランタノイド元素を含有する色材を含むインクが、紫外線硬化型インクであることを特徴とする請求項22に記載のインク。
【請求項25】
前記複数のランタノイド元素を含有する色材を含むインクが、油性インクであることを特徴とする請求項22に記載のインク。

【国際公開番号】WO2005/056302
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【発行日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516258(P2005−516258)
【国際出願番号】PCT/JP2004/018961
【国際出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】