説明

画像を利用した火災検出および火災時避難誘導装置

【目的】 設備コストを低くして火災の検出を可能とし、火災発生時の避難誘導経路を自動的に判断し、表示し得るようにする。
【構成】 コントローラ3によりバン,チルト,ズーム等の制御が可能なカメラ21,22を配置し、各カメラごとに監視範囲を定めて大空間施設1を監視し、その画像を画像処理装置4で通常時の状態と比較するなどの処理をして火災発生の判断を可能とし、センサ数を少なくして設備コストを低減させる。また、パソコン5内に人工知能を内蔵させ、画像処理結果から避難誘導経路を自動的に判断して、その表示を行ない管理者の支援を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、予め定められた広域の場所、例えば競技場,ビル,整備場または大型倉庫などの大空間で火,煙を検出するための火災検出装置、および火災発生時に人命に係わる被害を最小限に食い止めるべく避難経路を判断し、誘導のための支援情報として表示することが可能な火災時避難誘導装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の火災検出装置としては、複数(例えば50台)の感知器(センサ)を一定の距離(例えば7m)毎に設置して、検出領域の全てをカバーするものがある。また、赤外線カメラや可視カメラ等を用いるものもあるが、その判断は人間に委ねるようにしている。また、火災発生時の避難誘導や救助も管理者などにより指示を出すものが殆どである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】すなわち、広域の場所では、消防法などによって予め定められた位置に、感知器を一定間隔で多数設置するためのスペースと設備が必要となり、コスト高になるという問題がある。例えば、高さ20m×幅100m×長さ200mの整備場の場合では16mの高さに感知器が32台必要で、そのメンテナンスも煩雑である。また、火災発生時の避難誘導も従来は専ら管理者の経験に頼っているため、個人差があったり情報不足が生じるなどの問題が生じている。したがって、この発明の課題は設備コストを低く抑えるとともに、火災発生時の避難誘導のための情報を充実させることにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】このような課題を解決するため、請求項1の発明では、パン,チルト,ズームを含むパラメータの制御が可能で、大空間設備を複数の監視領域に分割してその各監視領域をそれぞれ撮像する複数の撮像装置と、この各撮像画像の画像処理を行なう画像処理装置とを備え、前記各監視領域の火,煙による少なくとも一方の変化状態から火災をその位置とともに検出可能にしたことを特徴としている。この請求項1の発明では、前記撮像装置を赤外線カメラとするか、または赤外線フィルタを備えた可視カメラとすることができ(請求項2の発明)、または、前記各監視領域に指標を設け、その見え方から火災を検出することができる(請求項3の発明)。
【0005】また、請求項4の発明では、パン,チルト,ズームを含むパラメータの制御が可能で、大空間設備を複数の監視領域に分割してその各監視領域をそれぞれ撮像する複数の撮像装置と、この各撮像画像の画像処理を行なう画像処理装置と、人工知能とを備え、前記各監視領域の火,煙による少なくとも一方の変化状態から火災をその位置とともに検出し、その結果を火災状況,設備の換気条件と併せて前記人工知能に入力して避難誘導経路を判断し、表示可能にしたことを特徴としている。この請求項4の発明では、前記撮像装置を赤外線カメラとするか、または赤外線フィルタを備えた可視カメラとすることができ(請求項5の発明)、または、前記各監視領域に指標を設け、その見え方から火災を検出することができる(請求項6の発明)。
【0006】
【作用】火災により発生する高い温度の赤外線,煙の発生を、パラメータの制御が可能な撮像装置にて撮像し、赤外線による監視領域の温度分布,または煙による監視領域内目標の見え方として把握し、これらを画像処理装置により画像処理して、その少なくとも一方が通常時のそれと異なるときは火災発生と判断し得るようにして、センサ数を減らし設備コストの低減化を図る。また、撮像装置にて得られた情報を他の所定の情報とともに、IF〜THEN〜ELES形式等にて予めルール化されている人工知能(知識ベース)に入力して処理することで、避難時の誘導経路を管理者に対し支援情報として表示し得るようにする。
【0007】
【実施例】図1はこの発明の1実施例を示す概要図である。同図において、1は大空間施設、21,22は撮像装置としてのカメラ、3はコントローラ、4は画像処理装置、5はパーソナルコンピュータ(以下、単にパソコンともいう),ワークステーション(WSとも略記する)等のデータ処理装置で、図1はパソコンの例である。
【0008】すなわち、大空間施設1に施設全域をカバーし得るようにカメラ21,22を設置する。ここでは、2台しか示していないが、大空間施設1の大きさに応じてその台数が定められる。カメラ21,22はコントローラ3によりパン,チルトおよびズーム(前後,左右,回転,拡大,縮小など)を含むカメラパラメータが制御されて監視範囲または検査領域がカバーされ、コントローラ3はここでは、パソコン5からの指示に従って動くようになっている。
【0009】カメラ21,22からの画像はコントローラ3を経て画像処理装置4に与えられ、例えば図2の如き処理が行なわれる。まず、ステップS1では画像の入力が行なわれ、ステップS2では画像の平滑化,正規化等を含む前処理が施され、ステップS3では画像面積の計算等の四則演算や、予め用意されている標準画像との比較を含む論理演算などを行なうことにより、火または煙の発生を検出する。
【0010】そして、火の場合はその部分の温度が通常時とは異なる高い温度となり、赤外線を発するので、赤外線カメラまたは赤外線フィルタを備えた可視カメラによって撮像する。図3(イ)に赤外線フィルタを備えた可視カメラにて撮像する例を示す。同図において、2は可視カメラ、2Aは赤外線フィルタを示す。また、監視領域の適当な位置に指標10を設けておき、その指標10の見え方を監視することで煙の発生を検出するようにしている。この指標としては、単一波長の光を発生する指標を用いることができる。なお、赤外線フィルタ2Aとしては、図3(ロ)の如き特性を持つものが用いられる。
【0011】したがって、ステップS4では監視領域の温度分布変化を調べて火の発生検知を行ない、ステップS5で指標のエッジ変化を調べたり、ステップS6で指標のプロファイル推移または濃度変化を調べることにより、煙の発生を検知するようにしている。そして、これらの少なくとも一方が発生したら、ステップS7において火災発生と判断する。
【0012】図4は火災発生時の避難誘導装置の実施例を示す構成図である。すなわち、上記のような画像処理の結果、火災発生と判断されたら、データ処理装置(ここでは、ワークステーションWS)5に設けられた人工知能または知識ベース(AI:artificial intelligence)51に入力する。
【0013】AI51では火災発生情報、どのカメラからの情報かによって判断される発生位置情報、その火災状況および設備の換気状況などの各種情報から避難経路,救助情報を判断し、これをCRTなどの表示装置52に表示し、必要に応じて自動緊急放送を行なう。また、管理者は、必要に応じ誘導設備の表示などを行なう。なお、図4(イ)はシステム構成図、同(ロ)は人工知能の説明図、同(ハ)は危険区域や救助経路(避難経路はこれとは逆になる)の表示例を説明するための説明図で、同(イ)の画面Eを詳細に示している。また、53はマイク、6は入出力制御装置を示している。
【0014】図5は図4の変形例を示す構成図である。これは、火災の検知に当たり従来から用いられているセンサを併用する、ガス漏れセンサ等も設けて総合的なセキュリティシステムとする、パソコン5の他に防災,避難誘導のためのワークステーション5Bを設け、このワークステーション5B内に知識ベース(AI)を内蔵させる、などの点で図4と異なっている。なお、5Aは他のワークステーション,54は誘導設備表示部,55は放送設備、7は各種センサと画像処理装置4およびパソコン5とのインタフェースを司るインタフェース部、8はデータを消防署等に伝送するための伝送装置をそれぞれ示している。
【0015】
【発明の効果】この発明によれば、パラメータの制御が可能なカメラを用いるようにしているので、その設置台数をセンサ等の場合に比べて著しく少なくできることから、設備コストを大幅に低減することができ、そのメンテナンスも著しく容易となる利点が得られる。また、火災発生場所を画像として見ることができるので誤報を瞬時に判断できる、火と煙のセンス機能を1つの装置で実現させることが可能となる、などの利点もある。さらには、画像処理の結果を人工知能に入力するようにしたので、避難経路情報または救済経路情報を得ることができ、管理者に対し支援情報として表示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による火災検出装置の実施例を示す構成図である。
【図2】図1の画像処理装置の処理動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】この発明による撮像方式例を説明するための説明図である。
【図4】この発明による火災発生時の避難誘導装置の実施例を示す構成図である。
【図5】避難誘導装置の他の実施例を示す構成図である。
【符号の説明】
1…大空間施設、2,21,22…カメラ(撮像手段)、2A…赤外線フィルタ、3…コントローラ、4…画像処理装置、5…データ処理装置(パソコン,ワークステーション)、5A,5B…ワークステーション、51…人工知能(AI)、52…表示装置、53…マイク、54…誘導設備表示部、55…放送設備、6…入出力制御装置、7…インタフェース部、8…伝送装置、10…指標。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 パン,チルト,ズームを含むパラメータの制御が可能で、大空間設備を複数の監視領域に分割してその各監視領域をそれぞれ撮像する複数の撮像装置と、この各撮像画像の画像処理を行なう画像処理装置とを備え、前記各監視領域の火,煙による少なくとも一方の変化状態から火災をその位置とともに検出可能にしたことを特徴とする画像を利用した火災検出装置。
【請求項2】 前記撮像装置を赤外線カメラとするか、または赤外線フィルタを備えた可視カメラとすることを特徴とする請求項1に記載の画像を利用した火災検出装置。
【請求項3】 前記各監視領域に指標を設け、その見え方から火災を検出することを特徴とする請求項1に記載の画像を利用した火災検出装置。
【請求項4】 パン,チルト,ズームを含むパラメータの制御が可能で、大空間設備を複数の監視領域に分割してその各監視領域をそれぞれ撮像する複数の撮像装置と、この各撮像画像の画像処理を行なう画像処理装置と、人工知能とを備え、前記各監視領域の火,煙による少なくとも一方の変化状態から火災をその位置とともに検出し、その結果を火災状況,設備の換気条件と併せて前記人工知能に入力して避難誘導経路を判断し、表示可能にしたことを特徴とする画像を利用した火災時避難誘導装置。
【請求項5】 前記撮像装置を赤外線カメラとするか、または赤外線フィルタを備えた可視カメラとすることを特徴とする請求項4に記載の画像を利用した火災時避難誘導装置。
【請求項6】 前記各監視領域に指標を設け、その見え方から火災を検出することを特徴とする請求項4に記載の画像を利用した火災時避難誘導装置。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平8−124064
【公開日】平成8年(1996)5月17日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−258021
【出願日】平成6年(1994)10月24日
【出願人】(000237156)富士ファコム制御株式会社 (100)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)