説明

画像データベースシステム

画像データの増加に拘わらず高速に画像データをアクセスでき、しかも、画像データをトータルとして管理できる信頼性の高い画像データベースシステムを提供する。
医療用画像データを蓄積するストレージユニット1と、その管理を行なうコントロールユニット2と、蓄積された画像データに関連付けられたキー情報が格納され、外部接続されたビューワとの間で中継処理する画像データベースサーバ3と、外部接続された複数のモダリティ装置との間でDICOMプロトコルにより中継処理するDICOMゲートウェイ4とがネットワーク接続され、少なくともコントロールユニットと画像データベースサーバとDICOMゲートウェイとを各別に複数備えて各群を構成し、リクエストのヘッダー情報に基づいて各群毎にそれらを負荷分散制御するロードバランサを設けて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CT装置、MRI装置などのモダリティ装置により撮影された大量の医療用画像情報を電子情報として保管するとともに診断に資する画像データベースシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ネットワーク上に接続された複数の医療用画像保管サーバから所望の医療用画像を高速に検出し、表示できるようにすることを目的として、複数のモダリティ装置で発生した医療用画像を保管する複数の画像サーバをネットワーク接続し、前記複数の画像サーバに保管されている大量の医療用画像を管理する医療用画像管理システムとして、複数の画像サーバに保管されている医療用画像に関する第1の検索情報を所定の時間間隔で定期的に検出する検出手段と、前記検出手段によって検出された第1の検索情報が既に登録済みの第2の検索情報中に存在しない場合には前記検出された第1の検索情報に前記画像サーバに関する情報を付加して前記第2の検索情報として登録するデータベース手段と、前記データベース手段に登録されている前記第2の検索情報に基づいて、前記ネットワーク上の前記複数の画像サーバに保管されている大量の医療用画像を管理する制御手段とを備えた統合管理サーバを設けて、前記統合管理サーバを介して所望の画像サーバに迅速にアクセス可能とする医療用画像管理システムが提案されている。
【特許文献1】特開2002−245173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種のネットワークとしては、例えば、OSI(Open Systems Interconnection)参照標準モデルで説明するならば、ネットワークの物理層及びデータリンク層がイーサネット(登録商標)で、トランスポート層及びネットワーク層がTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)で構成され、セッション層以上の上位層が、医療分野における画像診断規格であるDICOM(Digital Imaging and Communication for Medicine)プロトコルで構成され、タグ情報と画像データとでなるDICOM画像として、ネットワークを介し各画像サーバ(DICOMサーバ)で蓄積・管理され、専用の画像ビューワ(DICOMビューワ)を使用して読影・閲覧されるものである。
【0004】
しかし、上述した従来の画像データベースシステムにおけるDICOMプロトコルによれば、画像データを非圧縮状態で取り扱うことが原則とされ、さらに、タグ情報の保護などの観点から複雑な通信手順となり、データ伝送に時間を要するものであったため、画像検索レスポンスなどの向上が課題となっていた。特に、大規模な病院においてはビューワの設置台数も多く、ネットワーク負荷が増大することによる一層のレスポンスの低下が問題となっている。
【0005】
また、上述したシステムでは、モダリティ装置毎に異なる複数の画像サーバにより個々に大量の医療用画像データが管理され、メーカーや機種が異なる画像サーバ毎に異なるメディアに異なる方式によりバックアップされるものであったために、システム全体としての画像データのトータルな管理が不十分であるという問題もあった。
【0006】
さらに、上述のネットワークに接続される画像ビューワは、手術室に設置され、手術の補助として使用される場合などもあり、その信頼性は十分に保証されるものでなければならないとの要請もあった。
【0007】
本発明は、上述した問題点に鑑み、DICOMプロトコルを使用する機器に対して、画像データの増加に拘わらず高速に画像データをアクセスでき、しかも、画像データをトータルとして管理できる信頼性の高い画像データベースシステムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明による画像データベースシステムの第一の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項1に記載した通り、医療用画像データを蓄積するストレージユニットと、前記ストレージユニットを管理するコントロールユニットと、前記ストレージユニットに蓄積された医療用画像データに関連付けられたキー情報を含む属性情報が格納され、外部接続された機器との間で医療用画像データを中継処理する画像データベースサーバと、前記画像データベースサーバと外部接続された複数のモダリティ装置との間でDICOMプロトコルにより医療用画像データを中継処理するDICOMゲートウェイとがスイッチを介して相互にネットワーク接続されてなり、少なくとも前記コントロールユニットと前記画像データベースサーバと前記DICOMゲートウェイとを各別に複数備えて、コントロールユニット群と画像データベースサーバ群とDICOMゲートウェイ群を構成し、リクエストのヘッダー情報に基づいて各群毎にそれらを負荷分散制御するロードバランサを設けて構成してある点にある。
【0009】
上述した構成によれば、DICOMゲートウェイを介してDICOMプロトコルを使用する機器をネットワークに接続することばかりでなく、非DICOMプロトコルによるビューワなどの機器をも接続することが可能となり、システムのフレキシビリティを確保できるばかりでなく、ネットワーク負荷の増大に応じて、コントロールユニット、画像データベースサーバ、DICOMゲートウェイが複数備えられ、ロードバランサにより負荷分散されるので、常に安定したスループットが確保できるのである。さらに、各群は水平方向に冗長性を持たせて構成されているので、万一の故障に対してもシステムダウンを引き起こすことなく柔軟に対処可能となり、信頼性を著しく向上させることができるようになるのである。
【0010】
同第二の特徴構成は、同欄請求項2に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記コントロールユニットと前記画像データベースサーバと前記DICOMゲートウェイは、前記ビューワまたは前記モダリティ装置からの外部リクエストに関連するジョブを処理する第一のスイッチを介した第一のネットワークと、内部リクエストに関連するジョブを処理する第二のスイッチを介した第二のネットワークにより相互にネットワーク接続されている点にある。
【0011】
上述の構成により、第一のネットワークを介してモダリティ装置からの画像データの格納処理やビューワからの画像データの要求処理などの外部リクエストに対する処理と、第二のネットワークを介して各群の相互のメンテナンスなどの内部処理を分割してそれぞれ独立に処理できるので、外部からのリクエストに対するスループットの低下を来たすことなく、システムの安定性、安全性を向上させることができるのである。
【0012】
同第三の特徴構成は、同欄請求項3に記載した通り、上述の第一または第二特徴構成に加えて、前記DICOMゲートウェイは、前記ロードバランサにより1アソシエーション単位で負荷分散される点にある。
【0013】
負荷分散に際して、一連の検査画像データは一括してロードまたはセーブされることが処理効率、管理効率の点で優れている。従って、DICOMゲートウェイは、DICOMプロトコルによるアソシエーションの確立から終了までを一単位として負荷分散されることが好ましい。
【0014】
同第四の特徴構成は、同欄請求項4に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記DICOMゲートウェイは、前記モダリティ装置からの画像格納リクエストに対して、受信した画像情報を属性情報と画像データに分割し、分割した画像データを所定の可逆圧縮アルゴリズムにより圧縮率の異なる複数の圧縮画像に圧縮処理して前記コントロールユニットに転送するとともに、前記属性情報を前記コントロールユニットから返信された当該画像データの格納アドレスと伴に前記画像データベースサーバに転送する点にある。
【0015】
画像データは所定の可逆圧縮アルゴリズムにより圧縮率の異なる複数の圧縮画像に圧縮処理されることにより、ネットワークを介して伝送する画像データの容量を要求品質に応じて異ならせることが可能となり、しかも可逆圧縮されるので、解凍処理後のデータの品質の低下を来たすことが無くなる。そのような画像データが格納されているアドレスは、画像データとリンク可能に属性情報と伴に画像データベースサーバにテーブルデータとして保存される。
【0016】
同第五の特徴構成は、同欄請求項5に記載した通り、上述の第四特徴構成に加えて、前記DICOMゲートウェイは、前記モダリティ装置からの画像提供リクエストに対して、前記キー情報を基に前記画像データベースサーバから前記属性情報と前記格納アドレスを獲得するとともに、前記格納アドレスに基づいて前記ストレージユニットから所定の圧縮率の圧縮画像を獲得し、当該圧縮画像を解凍処理して前記属性情報と伴に前記モダリティ装置に返信する点にある。
【0017】
同第六の特徴構成は、同欄請求項6に記載した通り、上述の第二特徴構成に加えて、前記画像データベースサーバは、前記第一のネットワークを介してなされたデータの更新処理に対して、自らのデータベースを更新処理するとともに、前記第二のネットワークを介して他の画像データベースサーバのデータベースを更新処理する更新処理手段を備えている点にある。
【0018】
画像データベースサーバ群は複数の画像データベースサーバで構成され、それらがロードバランサにより負荷分散される。従って、自らが管理するデータベース、つまり、上述したDICOMゲートウェイにより更新処理される画像データの属性情報及び格納アドレスからなるテーブルデータなどは、他の画像データベースサーバに対してもその内容を常に一致するように管理されなければならない。そこで、更新処理手段により第二のネットワークを介して更新処理することで、冗長性を常に確保することが可能となる。
【0019】
同第七の特徴構成は、同欄請求項7に記載した通り、上述の第六特徴構成に加えて、前記画像データベースサーバは、前記第一のネットワークに対してデータ更新用のポートとデータ検索用のポートを備え、前記第二のネットワークを介した他の画像データベースサーバのデータベースに対する復旧処理時に前記データ更新用のポートをクローズする復旧処理手段を設けてある点にある。
【0020】
他のデータベースサーバの復旧に際して、自らが他のデータベースサーバのデータベースを第二のネットワークを介して復旧するときに、DICOMゲートウェイから更新要求があると、自らのデータベースも更新処理されるので、その更新情報をも他のデータベースサーバの復旧対象となるので、復旧処理が容易に進捗しない虞がある。そこで、更新用のポートをクローズして自らのデータベースの更新を拒否して復旧処理を迅速に行なうのである。尚、この場合でもデータ検索用のポートはオープンすることにより、画像データの読出しリクエストには応えることが可能となる。
【0021】
同第八の特徴構成は、同欄請求項8に記載した通り、上述の第二特徴構成に加えて、前記コントロールユニットは、所定時期に前記第二のネットワークを介して、前記ストレージユニットに対して稼動状況検査を実行し、その結果を前記画像データベースサーバの稼動状況テーブルに記憶する稼動状況検査手段を備えるとともに、他のコントロールユニットによる前記稼動状況テーブルデータの更新履歴に基づいて、当該他のコントロールユニットの故障診断を行なう故障診断手段を備えてある点にある。
【0022】
ストレージユニットまたはユニット内のドライブの故障状況が把握可能となり、最新の状況が画像データベースサーバにテーブルデータとして格納されるので、画像データの有効な格納先を確実に判断できるのであり、そのテーブルデータに格納された更新履歴により他のストレージユニットが正常に稼動しているか否かも判断可能となり、他の故障検出アルゴリズムを設けなくとも、コントロールユニット間で故障の検出、復旧を迅速に行なえるようになるのである。
【0023】
同第九の特徴構成は、同欄請求項9に記載した通り、上述の第一から第八の特徴構成に加えて、前記コントロールユニットは、前記ストレージユニットに対して冗長化格納制御を行なう点にある。
【0024】
つまり、大量の画像データが、発生する度に同様の環境下でバックアップされるので、他のメディアによるバックアップをする必要性が無く、常に、ネットワークからアクセス可能に構成できる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明した通り、本発明によれば、DICOMプロトコルを使用する機器に対して、画像データの増加に拘わらず高速に画像データをアクセスでき、しかも、画像データをトータルとして管理できる信頼性の高い画像データベースシステムを提供することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に本発明による画像データベースシステム実施の形態を説明する。図1に示すように、画像データベースシステムは、基本フレーム(基本最小タワー)と複数の拡張フレーム(増設タワー)とから構成される。
【0027】
基本フレームは、医療用画像データを蓄積する4台のストレージユニット1からなるストレージユニット群と、各ストレージユニット1を管理する2台のコントロールユニット2からなるコントロールユニット群と、各ストレージユニット1に蓄積された医療用画像データに関連付けられたキー情報を含む属性情報が格納され、外部接続されたビューワ11との間で医療用画像データを中継処理する2台の画像データベースサーバ3からなる画像データベースサーバ群と、画像データベースサーバ3と外部接続された複数のモダリティ装置10との間でDICOMプロトコルにより医療用画像データを中継処理する2台のDICOMゲートウェイ4からなるDICOMゲートウェイ群とが、スイッチ5,6を介して相互にネットワーク接続されて構成され、ネットワークを介したリクエストのヘッダー情報に基づいて各群毎にそれらを負荷分散制御する2台のロードバランサ7を備えるとともに、電源ユニット8とディスプレイスイッチ9とを設けて構成される。ここに、各ユニットやサーバの台数は例示に過ぎず、それ以上のまたは以下の複数の台数であればよい。
【0028】
拡張フレームは、電源ユニットと複数台のストレージユニットとスイッチで構成され、大容量の画像データが蓄積できるように拡張可能に構成される。
【0029】
ストレージユニット1と、コントロールユニット2と、画像データベースサーバ3と、DICOMゲートウェイ4は、ビューワ11またはモダリティ装置10からの外部リクエストに関連するジョブを処理する第一のスイッチ5を介した第一のネットワークN1と、内部リクエストに関連するジョブを処理する第二のスイッチ6を介した第二のネットワークN2により相互にネットワーク接続されている。前記ネットワークN1,N2は、OSI参照標準モデルでネットワークの物理層及びデータリンク層が1000BASE−Tのイーサネット(登録商標)で、トランスポート層及びネットワーク層がTCP/IPで構成され、セッション層以上の上位層が、医療分野における画像診断規格であるDICOMプロトコルまたは他のローカルな上位プロトコルで動作するように構成される。
【0030】
2台のロードバランサ7はローカル通信ライン(RS232−C)で接続され、通常1台が稼動して、例えば、各群の構成要素の性能に差がなければラウンドロビン方式、性能に差があれば重み付けラウンドロビン方式、さらには応答時間アルゴリズムなどにより各構成要素の負荷が均等になるように負荷分散制御を行ない、ローカル通信ラインを介して故障が検出されると予備のロードバランサが稼動するよう構成されている。ここに、ローカル通信ラインとしてはRS232−Cを使用するもの以外に他の通信規格による通信ラインを採用することも可能であり、さらには上述の第一または第二のネットワークを介してローカル通信するものであってもよい。
【0031】
以下に本システムの動作を、モダリティ装置からの画像蓄積リクエスト、画像読出リクエスト、ビューワからの画像閲覧リクエストに対する応答動作などを例に説明する。
【0032】
モダリティ装置10は、2台のDICOMゲートウェイ4で構成された群に割当てられた仮想IPアドレス(VIP)でDICOMプロトコルにより画像蓄積リクエストを送信してアソシエーションを開始する。ロードバランサ7は、正常に稼動し且つ負荷の最小のDICOMゲートウェイ4を選択し、仮想IPアドレスを宛先アドレスとして持つパケットをインターセプトして、選択したDICOMゲートウェイ4の実IPアドレスに書き換える。以上の処理により画像蓄積リクエストは選択されたDICOMゲートウェイ4に受信される。また戻りのパケットはこれと逆の操作により通信が成立する。ここに、DICOMゲートウェイ4は、ロードバランサ7により1アソシエーション単位で負荷分散される。
【0033】
図2及び図3に示すように、リクエストがあったDICOMゲートウェイ4は、受信した画像情報を検査例UID(販売元前置コード、製品固有番号、シリアル番号などからなる)、患者名、患者ID、受入番号、検査日、検査時刻、患者の生年月日を含む属性情報と画像情報に分割し、分割した画像データを所定の可逆圧縮アルゴリズム(ここでは、PNG(Portable Network Graphics)が使用されるが、それ以外であってもよい)により圧縮率の異なる複数の圧縮画像(ここでは、512×512ピクセルのオリジナル画像、256×256ピクセルの1/4画像、128×128ピクセルの1/16画像、サムネイルとして使用される64×64ピクセルの1/64画像の4種類の画像が生成格納されるが、これに限るものではない。)のそれぞれに圧縮処理して、コントロールユニット2に転送する。
【0034】
コントロールユニット2は、転送された画像データを受信して後述するアルゴリズムにより画像データを格納するとともにその格納アドレスをDICOMゲートウェイ4に返信する。DICOMゲートウェイ4は、前記属性情報をコントロールユニット2から返信された当該画像データの格納アドレスと伴に画像データベースサーバ3に転送してデータの更新処理を指示する。
【0035】
上述した動作において関与するコントロールユニット2及び画像データベースサーバ3は、DICOMゲートウェイ4と同様に、第一のネットワークN1を介して通信され、ロードバランサ7により負荷分散される。そして、以下に説明する各動作は、基本的には上述と同様にロードバランサ7により負荷分散されるものであるが、以後はロードバランサの動作説明は省略する。
【0036】
次に、DICOMゲートウェイ4がモダリティ装置10から画像提供リクエストを受信したときには、図4及び図5に示すように、リクエスト画像を特定する属性情報の何れかのキー情報を基に画像データベースサーバ3から属性情報と格納アドレスを獲得するとともに、格納アドレスに基づいてストレージユニット1から可逆圧縮された圧縮画像を獲得し、当該圧縮画像を解凍処理して属性情報と伴にDICOMプロトコルによりモダリティ装置10に返信する。
【0037】
図6及び図7に示すように、画像データベースサーバ3に対してビューワ11から画像データの閲覧リクエストがあると、リクエスト画像を特定する属性情報の何れかのキー情報を基に画像データベースサーバ3から属性情報と格納アドレスを獲得してビューワ11に返信する。その後ビューワ11は受信した格納アドレスに基づいてストレージユニット1をアクセスして所望の画像データを獲得する。ここに、ビューワ11がDICOMビューワであれば、上述したDICOMゲートウェイ4を介した動作となるが、DICOMプロトコルを使用しないものの、TCP/IPによるローカルプロトコルがサポートされていれば、任意の上位プロトコルが使用できる。
【0038】
コントロールユニット2は、電源が立ち上がると、ロードバランサ7を介することなく(コントロールユニット2に対する外部アクセスはロードバランサ7により負荷分散される)、各ストレージユニット1に対して順番に第二のネットワークN2を介して稼動状況検査を実行し、その結果を画像データベースサーバ3の稼動状況テーブルに更新記憶する稼動状況検査手段を備えてあり、他のコントロールユニット2による前記稼動状況テーブルデータの更新履歴に基づいて、当該他のコントロールユニットの故障診断を行なう故障診断手段を備えてある。
【0039】
詳述すると、稼動状況検査手段は、フレーム単位に、且つ、そのフレームに搭載され、数台のハードディスクを備えて構成されるストレージユニット1に対して順番に、ストレージユニットの装着状況、つまり、当該ユニットが取り外されているか、装着されているかという装着状況と、装着されている場合にドライブ毎のディスク残容量、ユニットのトータルの残容量を問い合わせるとともに、各ドライブに対して任意のファイルの書込み、読出しを行ない各ドライブのディスク障害を調査し、その結果をデータベースサーバ3の図13に示す稼動状況テーブルに更新記憶する。尚、図13には明記していないが、ストレージユニットIDの上位データにフレームIDを付加することにより、フレーム単位で管理可能に構成されている。
【0040】
コントロールユニット2は、ストレージユニット1へのデータ格納リクエストに対して、データ格納先を稼動状況テーブルに基づいて識別された正常稼動しているストレージユニットから冗長化数分選択して格納する冗長化格納手段を備えてある。詳述すると、冗長化格納手段は稼動状況テーブルに基づいてドライブ単位にディスク残容量を調査し、ディスク残容量の大なるドライブを異なるストレージユニットに対して冗長化数分選択して格納する。ここでは、冗長化数を2に設定してある。従って、システム内で同じデータが異なるストレージユニット1に必ず存在することになる(ここに、冗長化数は2以上に設定されるものであってもよいことは言うまでもない。)
別の方法によれば、ストレージユニット1単位にディスク残容量を調査し、ディスク残容量の大なるストレージユニット1を二つ選択するとともに、選択したストレージユニット1の中からディスク残容量の大なるドライブを選択してデータを格納してもよい。データの格納アドレスは、格納リクエストの送信元に返信される。上述の画像データの格納リクエストに対しては、DICOMゲートウェイ4に返信され、DICOMゲートウェイ4により画像データの属性情報と伴に、または属性情報としてデータベースサーバ3に格納される。
【0041】
さらに別の方法によれば、冗長化格納手段は稼動状況テーブルに基づいて、所定容量以上の残容量のストレージユニット1を候補として複数選択し、乱数生成手段により生成された乱数に基づいて対象となるストレージユニット1を二つ選択するように構成してもよい。例えば、候補として冗長化数よりも多い数のストレージユニットを選択し、乱数生成手段により1から9の任意の乱数を順番に生成して各候補のストレージユニットに割り付け、生成された乱数の値が大きなものから冗長化数分のストレージユニットを選択するなどにより実現できる。この場合には、新たに追加されたストレージユニットに負荷が集中することを未然に防止できるようになる。
【0042】
またさらに別の方法によれば、冗長化格納手段は稼動状況テーブルに基づいて、異なるフレームに搭載されたストレージユニットに対して上述した何れかの方法により、冗長化格納処理を実行するように構成してもよい。この場合には、各フレームが設置される場所や建屋を異ならせることにより、火災、地震、水害などの災害からの影響を低く抑えることができるようになる。
【0043】
また、冗長化格納手段が稼動状況テーブルに基づいてディスク残容量の調査をする場合に、格納される画像データに想定される最大容量よりも残容量の大きなものをサーチすることになるのであるが、逆に残容量がこの値よりも小さいときには稼動状況テーブルの残容量データに当該ドライブがフルである旨のデータを格納し、ストレージユニット1の全てのドライブがフルとなったときには、当該ストレージユニット1を選択対象から除外されるように構成することにより、ディスク残容量の調査のための時間が短縮できる。
【0044】
コントロールユニット2は、さらに、稼動状況検査手段により異常と判断されたストレージユニット1またはドライブがあると、そのデータを復旧すべく、データベースサーバ3に格納された格納アドレスに基づいて、異常と判断されたストレージユニットまたはドライブに格納されているデータと同一のデータが格納されている他のストレージユニットのデータ格納アドレスを取得し、当該データ格納アドレスに格納されているデータを、同一データが格納されているストレージユニット1以外で、稼動状況テーブルに基づいて識別された正常稼動しているストレージユニット1から選択して複製する。このようにして、任意のストレージユニットが故障し、または取り外された場合であっても、画像データが自動的に複製され、新たなストレージユニットが追加された場合には追加されたストレージユニットに対する稼動状況テーブルが自動生成されるので、システムの電源をダウンさせることなくストレージユニットの追加や取り外しといったメンテナンス作業を行なうことができるのである。
【0045】
コントロールユニット2の故障診断手段は、稼動状況テーブルを定期的または不定期にアクセスして、他のコントロールユニット2による稼動状況テーブルデータの更新履歴に基づいて、アクセス時から過去の所定時間以内になされた更新履歴が存在しないときに、当該他のコントロールユニットが故障しているものと判断し、予備のコントロールユニットが装着されているときには、予備のコントロールユニットを1台立ち上げる。
【0046】
ここで、2台の稼動中のコントロールユニットのいずれか一方のユニットにより稼動状況検査手段を作動させ、他方のコントロールユニットにより故障診断手段を作動させるように構成してもよい。この場合には、他方のコントロールユニットによる故障診断手段の作動完了を示すフラグと作動時刻データを前記稼動状況テーブルに記録するように構成し、当該フラグと作動時刻データを一方のコントロールユニットがチェックすることにより他方のコントロールユニットの故障も検出可能となる。
【0047】
尚、コントロールユニット2はストレージユニット1と同一基板上に一体的に構成してもよい。この場合には、例えば、2台のストレージユニットをアクティブに設定しておき、故障診断手段により一方の故障が発見されたときに予備のコントロールユニットをアクティブに切り替えるように構成することができる。
【0048】
以下に画像データベースサーバ3の更新処理及び故障復旧処理について説明する。画像データベースサーバ3は、第一のネットワークN1を介してなされたデータの更新処理に対して、自らのデータベースを更新処理するとともに、第二のネットワークN2を介して他の画像データベースサーバ3のデータベースを更新処理する更新処理手段を備えている。
【0049】
画像データベースサーバ3には、ロードバランサ7に対して更新用のポートと検索用のポートを備えてあり、正常時には、両ポートをオープンしている。さらに、一方の画像データベースサーバ3(図中、DB1)の更新処理手段は、他方の画像データベースサーバ3(図中DB2)の更新処理手段の最終動作時刻を管理しており、全てのテーブルの全レコードに最終更新日時を書き込み管理している。
【0050】
図8及び図9に示すように、更新処理手段は、ロードバランサ7を介してDICOMゲートウェイ4から画像データの属性情報及び画像データの格納アドレスの格納リクエストや、コントロールユニット2からの稼動状況テーブルの格納リクエストなどのデータ更新リクエストがあると(図8中、丸1のステップ)、自分のデータベースを更新処理し(図8中、丸2のステップ)、次に第二のネットワーク2を介して他の画像データベースサーバ3のデータベースを更新処理する(図8中、丸3のステップ)。この動作が終了した時点で、リクエストに対するアクノリッジを返す(図8中、丸4のステップ)。
【0051】
画像データベースサーバは、第一のネットワークN1に対してデータ更新用のポートとデータ検索用のポートを備え、第二のネットワークN2を介した他の画像データベースサーバのデータベースに対する復旧処理時にデータ更新用のポートをクローズする復旧処理手段を設けてある。
【0052】
以下に詳述する。他方の画像データベースサーバ3が故障している場合には、その更新用ポート、検索用ポートの双方がクローズされ、ロードバランサ7は一方の画像データベースサーバ3に対してのみ処理を要求する。図10に示すように、この場合には、更新リクエストに対しては自らのデータベースの更新処理のみを行いアクノリッジを返す。
【0053】
上述の故障状態からの復旧時には、一方の画像データベースサーバ3は通常動作を行い、他方の画像データベースサーバ3は両ポートがクローズされている。図11及び図12に示すように、故障から復帰する他方の画像データベースサーバ3は、自分が更新した最終更新日時を一方の画像データベースサーバ3から取得し(図11中、丸1のステップ)、復旧開始時刻を記録する(図11中、丸2のステップ)。次に、第一ステップで取得した以降の更新日時のレコードを一方の画像データベースサーバ3から取得し、自らのデータベースを更新する(図11中、丸3のステップ)。ステップ2で記録した復旧開始時刻を自らのデータベースの最終更新日時とし(図11中、丸4のステップ)、第四ステップの最終更新日時と現在日時を比較し、n秒以内になるまで上述のステップを繰り返す。ここに、nは数秒のオーダーである。n秒以内になれば、一方の画像データベースサーバ3に対して復旧作業を依頼する(図11中、丸5のステップ)。これに対して一方の画像データベースサーバ3は更新用ポートをクローズして(図11中、丸6のステップ)他方の画像データベースサーバ3の最終更新日時以降のデータベースの更新処理を行い(図11中、丸7のステップ)、更新処理終了後に更新用ポートをオープンして(図11中、丸8のステップ)他方の画像データベースサーバ3に終了通知を送信する。他方の画像データベースサーバ3は両ポートをオープンして正常動作に復帰する(図11中、丸9,10のステップ)。尚、上述の説明では更新用ポート、検索用ポートの双方を各別に構成したものを説明したが、更新用ポート及び検索用ポートを同一のポートとして構成することも可能である。
【0054】
以下に別実施の形態を説明する。上述の実施形態では、セッション層以上の上位層が、医療分野における画像診断規格であるDICOMプロトコルまたは、他のローカルなプロトコルで動作するシステムを説明したが、ビューワなどの端末がWEBに対応するように構成することも可能である。この場合には、例えば、上述した基本フレームに、複数のWEBサーバからなるWEBサーバ群を設けて、ロードバランサ7の管理下で作動するように構成すればよい。
【0055】
上述したシステムにおいて、ストレージユニット、コントロールユニット、画像データベースサーバ3、DICOMゲートウェイの何れかまたは全てをユニット単位でホットスワップ可能に構成することにより、システムの稼動状態を維持しながらメンテナンスできるようになる。
【0056】
上述した実施形態では、コントロールユニットにストレージユニットの稼動状況を検査する稼動状況検査手段を備えたものを説明したが、当該コントロールユニットにネットワーク機器としてのロードバランサや、画像データベースサーバ、DICOMゲートウェイなどのサーバ群に対する稼動状況検査手段をさらに備えてもよい。具体的には、コントロールユニットが第二のネットワークN2を介してロードバランサや各サーバ群に順番にアクセスしてそれらの稼動状況検査を実行し、その結果を画像データベースサーバの稼動状況テーブルに更新記憶するように構成するのである。ロードバランサや各サーバが、第一のネットワークN1を介した他の何れかのサーバとのデータの送受信中に発生した障害を監視して自らの稼動状況データ記憶領域にそれらの履歴を格納しておき、コントロールユニットがアクセスしたときに当該履歴データを読み取ることにより稼動状況が把握可能となるものである。ここで、ロードバランサや、画像データベースサーバ、DICOMゲートウェイなどのサーバ群に対する稼動状況検査手段は、コントロールユニットに構築するものに限られず、画像データベースサーバ、DICOMゲートウェイなどの任意のサーバに構築することも可能である。
【0057】
そして、システムにこれらの稼動状況データを表示するモニタ表示手段を備え、画像データベースサーバまたはコントロールユニットによって表示制御されるように構成することにより、システムの稼動状況が管理者に把握可能になり、適切なメンテナンスを行なうことができるようになる。さらに、例えば、ロードバランサにメールサーバを構築し、データベースサーバに格納された稼動状況データを管理者にメール送信するように構成することも可能である。この場合、障害の発生時やそれに伴う復旧処理の開始、完了などのシステム稼動状況の変化するタイミングでその内容を管理者に送信することにより、管理者によるシステムの管理効率も大きく向上させることができるようになる。
【0058】
このようにシステムを多重化することにより、システムを停止させることなく、障害発生部位の交換処理などが可能になり、交換された部位が自動復旧されるので、システムの信頼性を大きく向上させることができるようになる。
【0059】
上述の実施形態は、本発明の一例に過ぎず、課題を解決するための手段の項に記載したように、各構成要素の組み合わせにより複数の形態の画像データベースシステムが構築されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
[図1]本発明による画像データベースシステムの構成図
[図2]画像格納手順の説明図
[図3]画像格納手順のフローチャート
[図4]画像提供手順の説明図
[図5]画像提供手順のフローチャート
[図6]ビューワによる画像検索手順の説明図
[図7]ビューワによる画像検索手順のフローチャート
[図8]画像データベースサーバの動作説明図
[図9]画像データベースサーバのフローチャート
[図10]画像データベースサーバの動作説明図
[図11]画像データベースサーバの動作説明図
[図12]画像データベースサーバのフローチャート
[図13]稼動状況テーブルの説明図
【符号の説明】
【0061】
1:ストレージユニット
2:コントロールユニット
3:画像データベースサーバ
4:DICOMゲートウェイ
5,6:スイッチ
7:ロードバランサ
10:モダリティ装置
11:ビューワ
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用画像データを蓄積するストレージユニットと、前記ストレージユニットを管理するコントロールユニットと、前記ストレージユニットに蓄積された医療用画像データに関連付けられたキー情報を含む属性情報が格納され、外部接続された機器との間で医療用画像データを中継処理する画像データベースサーバと、前記画像データベースサーバと外部接続された複数のモダリティ装置との間でDICOMプロトコルにより医療用画像データを中継処理するDICOMゲートウェイとがスイッチを介して相互にネットワーク接続されてなる画像データベースシステムであって、
少なくとも前記コントロールユニットと前記画像データベースサーバと前記DICOMゲートウェイとを各別に複数備えて、コントロールユニット群と画像データベースサーバ群とDICOMゲートウェイ群を構成し、リクエストのヘッダー情報に基づいて各群毎にそれらを負荷分散制御するロードバランサを設けて構成してある画像データベースシステム。
【請求項2】
前記コントロールユニットと前記画像データベースサーバと前記DICOMゲートウェイは、前記ビューワまたは前記モダリティ装置からの外部リクエストに関連するジョブを処理する第一のスイッチを介した第一のネットワークと、内部リクエストに関連するジョブを処理する第二のスイッチを介した第二のネットワークにより相互にネットワーク接続されている請求項1記載の画像データベースシステム。
【請求項3】
前記DICOMゲートウェイは、前記ロードバランサにより1アソシエーション単位で負荷分散される請求項1または2記載の画像データベースシステム。
【請求項4】
前記DICOMゲートウェイは、前記モダリティ装置からの画像格納リクエストに対して、受信した画像情報を属性情報と画像データに分割し、分割した画像データを所定の可逆圧縮アルゴリズムにより圧縮率の異なる複数の圧縮画像に圧縮処理して前記コントロールユニットに転送するとともに、前記属性情報を前記コントロールユニットから返信された当該画像データの格納アドレスと伴に前記画像データベースサーバに転送する請求項1から3の何れかに記載の画像データベースシステム。
【請求項5】
前記DICOMゲートウェイは、前記モダリティ装置からの画像提供リクエストに対して、前記キー情報を基に前記画像データベースサーバから前記属性情報と前記格納アドレスを獲得するとともに、前記格納アドレスに基づいて前記ストレージユニットから所定の圧縮率の圧縮画像を獲得し、当該圧縮画像を解凍処理して前記属性情報と伴に前記モダリティ装置に返信する請求項4記載の画像データベースシステム。
【請求項6】
前記画像データベースサーバは、前記第一のネットワークを介してなされたデータの更新処理に対して、自らのデータベースを更新処理するとともに、前記第二のネットワークを介して他の画像データベースサーバのデータベースを更新処理する更新処理手段を備えている請求項2記載の画像データベースシステム。
【請求項7】
前記画像データベースサーバは、前記第一のネットワークに対してデータ更新用のポートとデータ検索用のポートを備え、前記第二のネットワークを介した他の画像データベースサーバのデータベースに対する復旧処理時に前記データ更新用のポートをクローズする復旧処理手段を設けてある請求項6記載の画像データベースシステム。
【請求項8】
前記コントロールユニットは、所定時期に前記第二のネットワークを介して、前記ストレージユニットに対して稼動状況検査を実行し、その結果を前記画像データベースサーバの稼動状況テーブルに記憶する稼動状況検査手段を備えるとともに、他のコントロールユニットによる前記稼動状況テーブルデータの更新履歴に基づいて、当該他のコントロールユニットの故障診断を行なう故障診断手段を備えてある請求項2記載の画像データベースシステム。
【請求項9】
前記コントロールユニットは、前記ストレージユニットに対して冗長化格納制御を行なう請求項1から8の何れかに記載の画像データベースシステム。

【国際公開番号】WO2005/003977
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【発行日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511330(P2005−511330)
【国際出願番号】PCT/JP2004/009003
【国際出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(503239431)
【Fターム(参考)】