説明

画像レーダ信号処理装置

【課題】地上局で精度の高いSAR画像を従来以上の観測データ数で取得する。
【解決手段】地上局からのコマンドを受信するコマンド受信手段11、コマンドに従い、所定領域に信号を放射し、当該信号に対する当該所定領域からの反射信号を受信することで受信信号を取得する目標観測手段12、飛行体の運動データを取得する飛行体観測手段13を有する観測手段1と、コマンドに従い、受信信号および運動データに基づいて、観測手段1が観測を行った通信可能時間帯内で画像再生処理を行い、SAR画像を再生する高速画像処理手段3と、コマンドに従い、受信信号および運動データに基づいて、通信不可時間を利用して高速画像処理手段3より高精度な画像再生処理を行い、SAR画像を再生する小型画像処理手段4と、コマンドに従い、SAR画像を前記地上局に送信する送信処理手段5とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、航空機や人工衛星などのプラットフォームに搭載されて、地表や海面などの高分解能画像を撮像する画像レーダ信号処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、航空機や人工衛星などのプラットフォームに搭載された画像レーダ信号処理装置は、アンテナを有するSAR(Synthetic Aperture Radar)センサを備えている。このSARセンサでは、画像レーダ信号処理装置を搭載したプラットフォームが移動している状態で、地表や海面などの所定領域との間で電波信号を送受信することで観測を行い、得られた電波信号を信号処理することで2次元の高分解能画像を得ている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に開示された従来装置において、SARセンサが受信した電波信号上では、観測領域内のある一地点は2次元的に広がった状態となっている。そこで、この2次元のデータに対して画像再生処理と呼ばれる信号処理を施すことで、この2次元的に広がった一地点を1点に圧縮することができる。このとき用いられる画像再生処理としては、ポーラーフォーマット法、レンジドップラー法やチャープスケーリング法など、種々の方法がある。
【0004】
これらの画像再生処理においては、2次元のデータに対して、レンジ方向(電波の照射方向)またはアジマス方向(電波の照射方向に対して直行方向)に、FFT(Fast Fourier Transform)の演算処理、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)の演算処理や係数乗算処理などが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−198275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の画像再生処理は演算負荷の高い処理であるが、人工衛星などに搭載される画像レーダ信号処理装置では演算装置の規模、重量や電力などに制約を受ける。また、人工衛星の場合には、地球を周回しているため、地上局から見て人工衛星が地球の裏側などにある場合には通信が困難であり、地上局へのデータ送信が可能な時間が限られている。そのため、画像レーダ信号処理装置上で画像再生・送信処理を行う場合には、上記のような演算装置の制約の上で、データ送信の制約時間内に(画像レーダ信号処理装置と地上局との間での通信が可能な時間内に)処理を完了する必要がある。
ここで、人工衛星などの場合には、所定領域がプラットフォームから捉えられる状況になった後にこの所定領域を観測し、電波信号を取得した後に画像再生処理を行うことになるため、画像再生処理を何らかの簡略的な演算にする必要がある。具体的には、取得した電波信号画像の画素を間引くなどして処理サイズを縮小することや、特定の領域のみ処理することなどが考えられる。または、演算装置が専用回路などで構成されている場合は、演算を固定小数点演算で行い、データのbit幅を制限して演算精度を下げて演算することなどが考えられる。このように、画像レーダ信号処理装置上で画像再生処理を行う場合には、画像再生処理を制約時間内に簡略化して行う必要があるため、地上局で精度の高いSAR画像を取得できないという課題があった。
【0007】
また、上記のような画像レーダ信号処理装置上での画像再生処理の制約のため、従来では、画像レーダ信号処理装置にて観測・取得した電波信号をそのまま地上局に送信し、地上に設置した計算機などを用いて画像再生処理を行うことが一般的であった。ただし、電波信号は位相情報を含む複素数データなどであり、一般的に画像再生処理後のデータに比べ、データ量が大きくなるという課題があった。また、画像レーダ信号処理装置と地上局との間でのデータ転送性能には制約がある。そのため、地上局へ送信できるデータ量(観測データ数)に制約を受けるという課題があった。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、画像レーダ信号処理装置と地上局との間でのデータ転送性能の制約下で、地上局で精度の高いSAR画像を従来以上の観測データ数で取得することができる画像レーダ信号処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る画像レーダ信号処理装置は、地上局からのコマンドを受信するコマンド受信手段、コマンド受信手段により受信されたコマンドに従い、所定領域に信号を放射し、当該信号に対する当該所定領域からの反射信号を受信することで受信信号を取得する目標観測手段、および、飛行体の運動データを取得する飛行体観測手段を有する観測手段と、コマンド受信手段により受信されたコマンドに従い、目標観測手段および飛行体観測手段により取得された受信信号および運動データに基づいて、観測手段が観測を行った通信可能時間帯内で画像再生処理を行い、SAR画像を再生する簡易画像処理手段と、コマンド受信手段により受信されたコマンドに従い、目標観測手段および飛行体観測手段により取得された受信信号および運動データに基づいて、通信不可時間帯を利用して簡易画像処理手段より高精度な画像再生処理を行い、SAR画像を再生する高精度画像処理手段と、コマンド受信手段により受信されたコマンドに従い、簡易画像処理手段または高精度画像処理手段により再生されたSAR画像を地上局に送信する送信処理手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、上記のように構成したので、画像レーダ信号処理装置と地上局との間でのデータ転送性能の制約下で、地上局で精度の高いSAR画像を従来以上の観測データ数で取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1に係る画像レーダ信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る画像レーダ信号処理装置のプログラム内容を示すフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1に係る画像レーダ信号処理装置の処理タイミングを示すタイミングチャートである。
【図4】この発明の実施の形態3に係る画像レーダ信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態5に係る画像レーダ信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図6】この発明の実施の形態6に係る画像レーダ信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図7】この発明の実施の形態6に係る画像レーダ信号処理装置のプログラム内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る画像レーダ信号処理装置の構成を示すブロック図である。
画像レーダ信号処理装置は、航空機や人工衛星などの移動可能なプラットフォーム(飛行体)に搭載され、地表や海面などの所定領域の高分解能画像(SAR画像)を撮像し、地上局(不図示)に送信するものである。なお以下では、画像レーダ信号処理装置と地上局との間で、通信可能な時間帯と通信不可能な時間帯とが存在する場合を前提に説明を行う。
【0013】
この画像レーダ信号処理装置は、図1に示すように、観測手段1、データ保持手段2、高速画像処理手段(簡易画像処理手段)3、小型画像処理手段(高精度画像処理手段)4および送信処理手段5から構成されている。
なお図1では図示していないが、実際には画像レーダ信号処理装置は、全体的な制御を行う制御手段も有している。この制御手段は、画像レーダ信号処理装置内の各手段1〜5とシステムバスや制御信号線を介して接続され、地上局からのコマンドなどに基づいて各手段1〜5を制御する。ただし以下の説明では、簡潔化を目的として、各手段1〜5が自らデータ処理を実行するものとして説明する。
【0014】
観測手段1は、アンテナ、送信機、受信機や運動センサなど(いずれも不図示)を有するセンサ装置の総称である。この観測手段1は、コマンド受信手段11、目標観測手段12および飛行体観測手段13から構成されている。
コマンド受信手段11は、受信機で地上局からのコマンドをアンテナを介して受信するものである。このコマンド受信手段11により受信されたコマンドは画像レーダ信号処理装置内の各手段1〜5に配信される。
【0015】
目標観測手段12は、コマンド受信手段11から配信されたコマンドに従い、所定領域との間で高周波パネル信号の送受信を行うことで観測を行い、SAR画像の再生に必要な受信信号を取得するものである。具体的には、目標観測手段12は、まず、送信機で高周波パルス信号を生成してアンテナから所定領域に放射するとともに、受信機でこの所定領域で反射されたエコー信号をアンテナを介して受信する。そして、受信したエコー信号を増幅して中間周波数に変換した後、デジタル信号に変換することで最終的な受信信号を取得する。この目標観測手段12により取得された受信信号はデータ保持手段2に出力される。
【0016】
また、飛行体観測手段13は、運動センサで画像レーダ信号処理装置が搭載されたプラットフォームの運動を計測し、高周波パルス信号の送受信時でのプラットフォームの瞬時位置などを含む運動データを取得するものである。この飛行体観測手段13により取得された運動データはデータ保持手段2に出力される。
【0017】
データ保持手段2は、観測手段1(目標観測手段12、飛行体観測手段13)により取得された受信信号や運動データをデータとして保持するとともに、高速画像処理手段3および小型画像処理手段4により再生されたSAR画像(簡易SAR画像、高精度SAR画像)を保持するものである。
【0018】
高速画像処理手段3は、コマンド受信手段11から配信されたコマンドに従い、データ保持手段2に保持された運動データに基づいて各種係数を算出するとともに、データ保持手段2に保持された受信信号に対して高速な画像再生処理を行うことで、簡易SAR画像を再生するものである。この高速画像処理手段3による画像再生処理は、観測手段1が所定領域を観測した際の通信可能時間帯内で行われる。そのため、処理時間に制約があり、FFT/IFFT用回路、乗算回路や係数算出回路などの専用計算機や専用回路を用いて固定小数点演算を行い、データのbit幅を制限して演算精度を下げることで高速演算を行う。また、この画像再生処理において、処理する画素数を間引いて実行するようにしてもよいし、受信信号の一部の領域のみに限定して実行するようにしてもよい。この高速画像処理手段3により再生された簡易SAR画像はデータ保持手段2に出力される。
【0019】
小型画像処理手段4は、コマンド受信手段11から配信されたコマンドに従い、データ保持手段2に保持された運動データに基づいて各種係数を算出するとともに、データ保持手段2に保持された受信信号に対して、高速画像処理手段3より小型で高精度な画像再生処理を行うことで、高精度SAR画像を再生するものである。この小型画像処理手段4による画像再生処理は、地上局との通信不可時間帯を利用して行われる。そのため、処理時間に制約はなく、小型かつ低速度で十分な精度が得られる浮動小数点演算を行う汎用計算機などを用いる。この小型画像処理手段4により再生された高精度SAR画像はデータ保持手段2に出力される。
【0020】
送信処理手段5は、コマンド受信手段11から配信されたコマンドに従い、データ保持手段2に保持された受信信号、簡易SAR画像や高精度SAR画像を、通信可能時間を考慮しながら地上局に送信(ダウンリンク)するものである。
【0021】
次に、上記のように構成された実施の形態1に係る画像レーダ信号処理装置の動作について説明する。図2はこの発明の実施の形態1に係る画像レーダ信号処理装置のプログラム内容を示すフローチャートであり、図3はその際の各手段1〜5による処理タイミングを示すタイミングチャートである。
なお以下では、プラットフォームが人工衛星である場合を想定して説明を行う。すなわち、プラットフォームが地球を周回することで、1回の周回で地上局と通信可能な時間帯と通信不可能な時間帯が生じる場合について説明を行う。この通信状況は実際には様々な要因に影響を受けるが、図3では簡略化のため、地上局から見てプラットフォームが地平線上にある場合は通信可能、それ以外は通信不可能として示している。
【0022】
画像レーダ信号処理装置の動作では、図2に示すように、まず、コマンド受信手段11は地上局からの観測指示を示すコマンドを受信する(ステップST1)。このコマンド受信によって、画像レーダ信号処理装置が観測する領域、方位、高周波パルス信号の送信タイミング、観測するモード、観測回数、地上局への送信領域や送信する画像の枚数などが地上局から指示される。このステップST1のコマンド受信処理の開始タイミングは、通信可能時間帯内のいずれかのタイミングであるが、図3では通信可能になると同時にステップST1のコマンド受信処理を開始する場合を示している。このコマンド受信手段11により受信されたコマンドは画像レーダ信号処理装置内の各手段1〜5に配信される。
【0023】
次いで、目標観測手段12は、高周波パルス信号を生成して所定領域に放射するとともに、この所定領域で反射されたエコー信号を受信する(ステップST2)。このステップST2のパルス信号送受信処理の開始タイミングは、コマンドが示す観測領域などにより決まる。そのため、図3に示すように、ステップST1のコマンド受信処理が終了した後にステップST2のパルス信号送受信処理を開始するまでの間に休止期間が生じる場合がある。
【0024】
次いで、目標観測手段12は、受信したエコー信号を増幅して中間周波数に変換した後、デジタル信号に変換することで受信信号を取得する(ステップST3)。この目標観測手段12により取得された受信信号はデータ保持手段2に出力されて、データとして保持される。
【0025】
また、飛行体観測手段13は、画像レーダ信号処理装置が搭載されたプラットフォームの運動を計測し、高周波パルス信号の送受信時でのプラットフォームの瞬時位置を含む運動データを取得する(ステップST4)。この飛行体観測手段13により取得された運動データはデータ保持手段2に出力されて、データとして保持される。
【0026】
次に、高速画像処理手段3は、コマンド受信手段11から配信されたコマンドに従い、データ保持手段2に保持された運動データに基づいて各種係数を算出するとともに、データ保持手段2に保持された受信信号に対して高速な画像再生処理を行うことで、簡易SAR画像を再生する(ステップST5)。この際、画像レーダ信号処理装置では、図3に示すように、ステップST5,6の簡易SAR画像再生・送信処理を通信可能時間帯内に完了させる必要がある。そのため、簡易SAR画像再生処理に時間的な制約があり、専用計算機や専用回路を用いて固定小数点演算を行うなどして演算精度を下げることで高速演算を行う。この高速画像処理手段3により再生された簡易SAR画像はデータ保持手段2に出力されて、保持される。
【0027】
次いで、送信処理手段5は、コマンド受信手段11から配信されたコマンドに従い、データ保持手段2に保持された簡易SAR画像を読み出して、通信可能時間帯内に地上局に送信する(ステップST6)。これにより、地上局では、画像レーダ信号処理装置が所定領域を観測した周回における通信可能時間帯内に簡易SAR画像を取得することができる。
【0028】
一方、小型画像処理手段4は、コマンド受信手段11から配信されたコマンドに従い、データ保持手段2に保持された運動データに基づいて各種係数を算出するとともに、データ保持手段2に保持された受信信号に対して小型で高精度な画像再生処理を行うことで、高精度SAR画像を再生する(ステップST7)。このステップST7の高精度SAR画像再生処理の開始タイミングは、図3に示すように、ステップST5の簡易SAR画像再生処理が終了した後である。また、高精度SAR画像再生処理は、地上局との通信不可時間帯を利用して行われる。そのため、処理時間に制約はなく、汎用計算機を用いて小型かつ低速度で十分な精度が得られる浮動小数点演算を行う。この小型画像処理手段4により再生された高精度SAR画像はデータ保持手段2に出力されて、保持される。
【0029】
次いで、地上局との通信不可時間帯が経過した後、次の周回における通信可能時間帯の最初に、コマンド受信手段11は地上局からの高精度SAR画像送信指示を示すコマンドを受信する(ステップST8)。このコマンド受信によって、高精度SAR画像の地上局への送信、画像領域の選択などが指示される。このコマンド受信手段11により受信されたコマンドは画像レーダ信号処理装置内の送信処理手段5に配信される。なお、ステップST8の高精度SAR画像送信指示を示すコマンド受信は、この周回におけるステップST1の観測指示を示すコマンド受信と同時に実行してもよい。
図3では、ステップST8のコマンド受信処理と同時にステップST1のコマンド受信処理を行い、後述するステップST9の高精度SAR画像送信処理と並行して、ステップST2〜4の観測処理、ステップST5の簡易SAR画像再生処理を行う場合を示している。
【0030】
次いで、送信処理手段5は、コマンド受信手段11から配信されたコマンドに従い、データ保持手段2に保持された高精度SAR画像を読み出して、地上局に送信する(ステップST9)。この際、図3に示すように、送信処理手段5は、この周回におけるステップST6の簡易SAR画像送信処理を妨げることがないように、送信時間を考慮してステップST9の高精度SAR画像送信処理を実行する。
具体的には、地上局から複数枚の高精度SAR画像の送信が指示された場合であって、送信時間(制約時間)内にすべての高精度SAR画像を送信することができないと判定したときには、この制約時間内に送信可能な枚数の高精度SAR画像のみを送信する。また、地上局から1枚の高精度SAR画像の送信が指示された場合であって、制約時間内に送信を完了できないと判定したときには、この高精度SAR画像を分割して、複数周回における通信可能時間帯の簡易SAR画像送信処理を行う前の空き時間などに送信するようにしてもよい。
【0031】
なお、上記の例では、図3にてステップST2〜6の各処理を逐次処理するように記載したが、ステップST2〜6の各処理をパイプライン的に処理して、複数のSAR画像を観測・送信するようにしてもよい。
【0032】
以上のように、この実施の形態1によれば、地上局との通信不可時間帯を利用して小型で高精度な画像再生処理を行って高精度SAR画像を再生し、次の周回における観測処理および簡易SAR画像再生処理の時間帯を利用して、この高精度SAR画像を地上局に送信するように構成したので、画像レーダ信号処理装置から地上局へのデータ転送を有効に使用することができ、また、大量の高精度SAR画像を地上局に送信することができる。
【0033】
実施の形態2.
実施の形態1では、送信処理手段5による高精度SAR画像送信処理(図2のステップST9)で、制約時間内で高精度SAR画像を可能な限り送信する場合について示したが、実施の形態2では、地上局で、小型画像処理手段4により再生された全ての高精度SAR画像の送信が制約時間内に完了できないと判定した場合に、所望の画像(複数枚の高精度SAR画像の中から所望する高精度SAR画像、高精度SAR画像上で所望する領域など)を指定したコマンドを送信し、送信処理手段5でこの画像のみを地上局に送信する場合について示す。
なお、実施の形態2に係る画像レーダ信号処理装置は、図1に示す実施の形態1に係る画像レーダ信号処理装置の構成と同様である。
【0034】
次に、実施の形態2に係る画像レーダ信号処理装置の動作について、図2のフローチャート参照しながら説明する。なお、実施の形態2に係る画像レーダ信号処理装置の動作では、図2のステップST8,9以外は、実施の形態1に係る画像レーダ信号処理装置の動作と同様であり、その説明を省略する。なお以下では、地上局にて、高精度SAR画像上の特定の領域のみを指定したコマンドを送信する場合について示す。
【0035】
地上局では、高精度SAR画像送信指示を示すコマンドを画像レーダ信号処理装置に送信する前に、プラットフォームの軌道や次の周回におけるSAR画像の観測スケジュールなどに基づいて、前の周回における高精度SAR画像の送信に必要な時間と、次の周回における簡易SAR画像の送信開始時間を推定する。そして、高精度SAR画像の送信が制約時間内に完了できないと判定した場合、取得済みの1つ前の周回における簡易SAR画像に基づいて、制約時間内に送信が完了できる範囲で、高精度SAR画像上で所望する領域を指定し、この情報を含めたコマンドを送信する。
そして、ステップST8において、コマンド受信手段11は、この領域指定情報を含むコマンドを受信する。このコマンド受信手段11により受信されたコマンドは送信処理手段5に配信される。
【0036】
次いで、ステップST9において、送信処理手段5は、コマンド受信手段11から配信されたコマンド(領域指定情報)に従い、データ保持手段2に保持された高精度SAR画像上の指定された領域のみを切り出して、地上局に送信する。
【0037】
なお、上記の例では、高精度SAR画像上の一部の領域を指定する場合について示したが、小型画像処理手段4で複数枚の高精度SAR画像が再生された場合には、地上局で、取得済みの簡易SAR画像に基づいて、この複数枚の高精度SAR画像の中から所望する画像を指定し、この情報を含めたコマンドを送信するようにしてもよい。そして、送信処理手段5は、このコマンド(画像指定情報)に従い、データ保持手段2に保持された高精度SAR画像の中から指定された高精度SAR画像のみを読み出して、地上局に送信する。
【0038】
また、地上局で、高精度SAR画像上の複数の領域に対して優先順位を指定し、この情報を含めたコマンドを予め送信するようにしてもよい。そして、送信処理手段5は、高精度SAR画像の送信が制約時間内に完了できないと判定した場合、コマンド(優先順位情報)に従い、データ保持手段2に保持された高精度SAR画像上の優先度の高い領域から順に切り出して、地上局に送信する。また、地上局で、複数の周回に分けたSAR画像送信を指示するコマンドを送信するようにしてもよい。
【0039】
以上のように、この実施の形態2によれば、地上局で、高精度SAR画像の送信が制約時間内に完了できないと判定した場合、小型画像処理手段4により再生された高精度SAR画像の中から所望する画像(複数枚の高精度SAR画像の中から所望する高精度SAR画像、高精度SAR画像の所望する領域など)をコマンドにより指定するように構成したので、実施の形態1における効果に加えて、高精度SAR画像の送信時間が限定されるような場合であっても、地上局で所望する高精度SAR画像を取得できる。
【0040】
実施の形態3.
実施の形態1では、受信信号に基づいて、高速画像処理手段3で簡易SAR画像を再生し、小型画像処理手段4で高精度SAR画像を再生する場合について示したが、実施の形態3では、高速画像処理手段3で高精度SAR画像も再生する場合について示す。
図4に示す実施の形態3に係る画像レーダ信号処理装置は、図1に示す実施の形態1に係る画像レーダ信号処理装置の小型画像処理手段4を削除し、高速画像処理手段3を高速画像処理手段3bに変更したものである。その他の構成については同様であり、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0041】
高速画像処理手段3bは、コマンド受信手段11から配信されたコマンドに従い、データ保持手段2に保持された受信信号および運動データに基づいて、高速な画像再生処理による簡易SAR画像の再生に加えて、小型画像処理手段4と同等の小型で高精度な画像再生処理による高精度SAR画像の再生を行う。この高速画像処理手段3bは、高速画像処理手段3b内の各手段32〜34を制御する制御手段31と、データ保持手段2に保持された運動データに基づいて画像再生処理のための各種係数を算出する係数算出手段32と、データ保持手段2に保持された受信信号の各画素データに対してFFT処理やIFFT処理を行うFFT/IFFT処理手段33と、各画素データと係数の複素乗算を行う乗算手段34と、を有している。ここで、FFT/IFFT処理手段33および乗算手段34は、高速に固定小数点演算を行う専用回路を想定している。また、係数算出手段32は、浮動小数点演算を行い高精度に係数を算出する浮動小数点演算ユニット(高精度画像処理部)を想定している。
なお、これらの構成は、チャープスケーリング法を用いた画像再生処理を想定したものであるが、他の画像再生処理を用いる場合には、これ以外の演算手段が追加された構成であってもよい。
【0042】
次に、実施の形態3に係る画像レーダ信号処理装置の動作について、図2のフローチャート参照しながら説明する。なお、実施の形態3に係る画像レーダ信号処理装置の動作では、図2のステップST5,7以外は、実施の形態1に係る画像レーダ信号処理装置の動作と同様であり、その説明を省略する。
【0043】
ステップST5において、高速画像処理手段3bの制御手段31は、コマンド受信手段11から配信されたコマンドに従い、係数算出手段32、FFT/IFFT処理手段33および乗算手段34を制御して、データ保持手段2に保持された受信信号および運動データに基づいて、観測手段1が観測を行った通信可能時間帯内で高速な画像再生処理を行い、簡易SAR画像を再生する。具体的には、まず、係数算出手段32は、運動データに基づいて各種係数を算出する。そして、FFT/IFFT処理手段33および乗算手段34により、受信信号に対して、レンジ方向またはアジマス方向へのFFT/IFFT処理や係数算出手段32により算出された係数を用いた係数乗算を複数回行うことで、簡易SAR画像を再生する。
【0044】
また、ステップST7において、高速画像処理手段3bの制御手段31は、コマンド受信手段11から配信されたコマンドに従い、係数算出手段32を制御して、データ保持手段2に保持された受信信号および運動データに基づいて、通信不可時間帯を利用して小型で高精度な画像再生処理を行い、高精度SAR画像を再生する。具体的には、係数算出手段32の浮動小数点演算ユニットを用いて、低速にFFT/IFFTもしくは係数乗算を行うことで、高精度SAR画像を再生する。
【0045】
以上のように、この実施の形態3によれば、高速画像処理手段3bにて、簡易SAR画像再生処理に加えて高精度SAR画像処理も行うように構成したので、小型画像処理手段4をなくすことができ、装置を小型化やコストの削減を図ることができる。
【0046】
実施の形態4.
実施の形態1では、送信処理手段5による高精度SAR画像送信処理(図2のステップST9)で、高精度SAR画像を送信する場合について示したが、実施の形態4では、地上局からのコマンドにより、画像再生処理前の受信信号そのものを送信する場合について示す。
なお実施の形態4に係る画像レーダ信号処理装置は、図1に示す実施の形態1に係る画像レーダ信号処理装置の構成と同様である。
【0047】
次に、実施の形態4に係る画像レーダ信号処理装置の動作について、図2のフローチャート参照しながら説明する。なお、実施の形態4に係る画像レーダ信号処理装置の動作では、図2のステップST8,9以外は、実施の形態1に係る画像レーダ信号処理装置の動作と同様であり、その説明を省略する。
【0048】
地上局では、高精度SAR画像送信指示を示すコマンドを画像レーダ信号処理装置に送信する際に、受信信号の送信(ダウンリンク)を指示する情報を含めたコマンドを送信する。
そして、ステップST8において、コマンド受信手段11は、この受信信号送信指示情報を含むコマンドを受信する。このコマンド受信手段11により受信されたコマンドは送信処理手段5に配信される。
【0049】
次いで、ステップST9において、送信処理手段5は、コマンド受信手段11から配信されたコマンド(受信信号送信指示情報)に従い、データ保持手段2に保持された受信信号を読み出して、地上局に送信する。
【0050】
なお、上記の例では、受信信号全体を送信することを想定しているが、地上局で、取得済みの簡易SAR画像に基づいて、受信信号の所望する領域を指定し、この情報を含めたコマンドを送信するようにしてもよい。そして、送信処理手段5は、このコマンド(領域指定情報)に従い、データ保持手段2に保持された受信信号上の指定された領域のみを切り出して、地上局に送信する。
また、目標観測手段12で複数の受信信号が取得された場合には、地上局で、取得済みの簡易SAR画像に基づいて、この複数の受信信号の中から所望する信号を指定し、この情報を含めたコマンドを送信するようにしてもよい。そして、送信処理手段5は、このコマンド(信号指定情報)に従い、データ保持手段2に保持された受信信号の中から指定された受信信号のみを読み出して、地上局に送信する。
【0051】
以上のように、この実施の形態4によれば、簡易SAR画像の送信時間以外の時間を利用して、受信信号を地上局に送信するように構成したので、地上局で、簡易SAR画像の取得を妨げずに受信信号を取得できる。また、簡易SAR画像を確認した上で受信信号の選択を行うことができるため、不要な情報の送信を削減でき、効率的にデータを送信できる。
【0052】
実施の形態5.
実施の形態2では、地上局で、小型画像処理手段4で再生された高精度SAR画像の中から所望する画像を指定する場合について示した。一方、高速画像処理手段3による簡易SAR画像再生処理は、データのbit幅を制限して演算精度を下げることで高速演算を行う処理であるが、受信信号によっては、制限されたbit幅内で演算が収まり、結果的に高精度SAR画像と同等のデータを得ることができる場合がありうる。そこで、実施の形態5では、上記の点を考慮して、高速画像処理手段3cによる演算結果に応じて高精度SAR画像再生処理を実行するか否かを判定し、また、送信する高精度SAR画像を選択する場合について示す。
図5に示す実施の形態5に係る画像レーダ信号処理装置は、図1に示す実施の形態1に係る画像レーダ信号処理装置の高速画像処理手段3を高速画像処理手段3cに変更したものである。その他の構成については同様であり、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0053】
高速画像処理手段3cは、コマンド受信手段11から配信されたコマンドに従い、データ保持手段2に保持された受信信号および運動データに基づいて、高速な画像再生処理による簡易SAR画像の再生を行う。この高速画像処理手段3cは、図4に示す実施の形態3における高速画像処理手段3bの各手段31〜34に加えて、FFT/IFFT処理手段33および乗算手段34による処理でのオーバーフロー(桁落ち)の発生とそのピーク値を監視して、オーバーフローの発生回数をカウントする桁落ち判定手段35を有している。この桁落ち判定手段35によりカウントされたオーバーフローの発生回数を示す情報はデータ保持手段2に出力されて、保持される。
【0054】
次に、実施の形態5に係る画像レーダ信号処理装置の動作について、図2のフローチャート参照しながら説明する。なお、実施の形態5に係る画像レーダ信号処理装置の動作では、図2のステップST5,7,9以外は、実施の形態1に係る画像レーダ信号処理装置の動作と同様であり、その説明を省略する。
【0055】
ステップST5において、高速画像処理手段3cは、実施の形態3における高速画像処理手段3bと同様に、制御手段31が係数算出手段32、FFT/IFFT処理手段33および乗算手段34を制御して高速な画像再生処理を行い、簡易SAR画像を算出する。
またこの際、桁落ち判定手段35は、FFT/IFFT処理手段33および乗算手段34による処理でのオーバーフローの発生とそのピーク値を監視して、オーバーフローの発生回数をカウントする。この桁落ち判定手段35によりカウントされたオーバーフローの発生回数を示す情報は、高速画像処理手段3cにより再生された簡易SAR画像とともにデータ保持手段2に出力されて、保持される。
【0056】
また、ステップST7において、小型画像処理手段4は、実施の形態1と同様に、コマンド受信手段11から配信されたコマンドに従い、データ保持手段2に保持された運動データに基づいて各種係数を算出するとともに、データ保持手段2に保持された受信信号に対して小型で高精度な画像再生処理を行うことで、高精度SAR画像を再生する。ただし、小型画像処理手段4は、高精度SAR画像再生処理を開始する前に、データ保持手段2に保持されたオーバーフロー発生回数を示す情報を確認する。ここで、小型画像処理手段4は、オーバーフローが発生していないことを確認した場合には、高速画像処理手段3cの簡易SAR画像再生処理により高精度SAR画像と同等のデータを得ることができた(再生した簡易SAR画像が高精度SAR画像と一致する)と判定し、高精度SAR画像再生処理を実行しない。
【0057】
また、ステップST9において、送信処理手段5は、実施の形態1と同様に、コマンド受信手段11から配信されたコマンドに基づいて、データ保持手段2に保持された高精度SAR画像を読み出して、地上局に送信する。ただし、送信処理手段5は、高精度SAR画像送信処理を開始する前に、データ保持手段2に保持されたオーバーフロー発生回数を示す情報を確認する。ここで、送信処理手段5は、オーバーフローが発生していないことを確認した場合には、高精度SAR画像送信処理を実行せず、オーバーフローが発生していない旨を示す情報のみを地上局に送信する。
【0058】
なお、上記の例では、オーバーフローが1度も発生しなかった場合にのみ簡易SAR画像と高精度SAR画像が一致するものとして処理を削減しているが、桁落ち判定手段35で、オーバーフロー発生回数に対する閾値などを設けて、高精度SAR画像再生・送信処理を実行するか否かを判定するようにしてもよい。また、受信信号上もしくは簡易SAR画像上の重要と思われる領域を予め指定し、その領域に重みをつけてオーバーフローのカウントを行い、高精度SAR画像再生・送信処理を実行するか否かを判定するようにしてもよい。
【0059】
以上のように、この実施の形態5によれば、高速画像処理手段3cによる簡易SAR画像再生処理で発生したオーバーフローをカウントすることで、簡易SAR画像再生処理で高精度SAR画像と同等のデータを得ることができたかを判定する桁落ち判定手段35を設けたので、不要な高精度SAR画像の再生・送信処理を削減できる。また、不要な高精度SAR画像の再生処理を削減できるため、画像レーダ信号処理装置の演算負荷を削減でき、消費電力を削減できる。
【0060】
実施の形態6.
実施の形態5では、高速画像処理手段3cでの演算結果に応じて高精度SAR画像再生・送信処理を実行するか否かを判定する場合について示したが、実施の形態6では、所定領域に対して複数枚の簡易SAR画像を再生し、これらの簡易SAR画像での微小変化を抽出することで、高精度SAR画像再生・送信処理を実行するか否かを判定する場合について示す。
図6に示す実施の形態6に係る画像レーダ信号処理装置は、図1に示す実施の形態1に係る画像レーダ信号処理装置の構成に変化抽出手段6を追加したものである。その他の構成については同様であり、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0061】
変化抽出手段6は、データ保持手段2に保持された所定領域に対する複数の簡易SAR画像を重ね合わせて微小変化抽出処理を行い、これらの簡易SAR画像での微小変化を抽出するものである。この変化抽出手段6によるSAR画像に対する微小変化抽出処理に関しては、従来から知られている技術(例えば特許文献2参照)を適用することができ、その詳細な説明は省略する。
【0062】
[特許文献2]
特開2010−281584号公報
【0063】
次に、上記のように構成された実施の形態6に係る画像レーダ信号処理装置の動作について説明する。図7はこの発明の実施の形態6に係る画像レーダ信号処理装置のプログラム内容を示すフローチャートである。なお図7に示す実施の形態6に係る画像レーダ信号処理装置の動作において、図2に示す実施の形態1に係る画像レーダ信号処理装置と同様の動作については簡略化して説明を行う。
【0064】
地上局では、観測指示を示すコマンドを画像レーダ信号処理装置に送信する際に、微小変化を抽出する所定領域を指定し、この情報を含めたコマンドを送信する。
そして、コマンド受信手段11は、この領域指定情報を含むコマンドを受信する(ステップST1)。このコマンド受信手段11により受信されたコマンドは各手段1〜5に配信される。
【0065】
次いで、観測手段1および高速画像処理手段3は、コマンド受信手段11から配信されたコマンド(微小変化領域指定情報)に従い、指定された所定領域を2回観測して、2枚の簡易SAR画像を再生する(ステップST2〜5)。この2枚の簡易SAR画像はデータ保持手段2に保持される。
次いで、送信処理手段5は、コマンド受信手段11から配信されたコマンドに従い、データ保持手段2に保持された簡易SAR画像を地上局に送信する(ステップST6)。
【0066】
次いで、変化抽出手段6は、データ保持手段2に保持された2枚の簡易SAR画像を重ね合わせて微小変化抽出処理を行い、これらの簡易SAR画像での微小変化点をカウントする(ステップST11)。
次いで、変化抽出手段6は、カウントした微小変化点の数が所定の閾値を超えたかを判定することで、所定領域に変化があるかを判定する(ステップST12)。このステップST12において、変化抽出手段6は、所定領域に変化がないと判定した場合には、小型画像処理手段4に対する高精度SAR画像再生処理指示は行わず、ステップST7の処理をスキップする。
【0067】
一方、変化抽出手段6は、所定領域に変化があると判定した場合には、小型画像処理手段4に高精度SAR画像再生処理を指示し、小型画像処理手段4は、データ保持手段2に保持されている最新の受信信号に対して小型で高精度な画像再生処理を行うことで高精度SAR画像を再生する(ステップST7)。この高精度SAR画像はデータ保持手段2に出力されて、保持される。
【0068】
次いで、地上局との通信不可時間帯が経過した後、次の周回における通信可能時間の最初に、コマンド受信手段11は地上局からコマンドを受信する(ステップST8)。このコマンド受信手段11により受信されたコマンドは送信処理手段5に配信される。
次いで、送信処理手段5は、コマンド受信手段11から配信されたコマンドに従い、ステップST12において変化抽出手段6により所定領域に変化があると判定された場合には、データ保持手段2に保持された高精度SAR画像を取り出して、地上局に送信する。そうでない場合は、送信処理手段5は、変化なしとの旨を示す情報のみを地上局に送信する(ステップST9)。
【0069】
なお、上記の例では、ステップST8におけるコマンド受信処理に応じて、地上局に高精度SAR画像を送信しているが、ステップST7において、変化抽出手段6により所定領域に変化があると判定された場合には、画像レーダ信号処理装置が送信処理手段5を介して、能動的に、所定領域に変化がある旨を地上局に通知するようにしてもよい。また、上記の例では、1つの領域に対してのみ変化抽出処理を行っているが、複数の領域を指定し、いずれかで変化があった場合に、高精度SAR画像を送信するようにしてもよい。さらには、1つの画像の中で変化点の近傍の領域のみ切り出して、地上局に送信するようにしてもよい。また、上記の例では、変化抽出手段6で変化点の数をカウントすることで判定を行っているが、画像間の相関をとり、相関が低い(変化が大きい)場合に変化があると判定するようにしてもよい。
【0070】
また、上記の例では、1つの領域を同一の周回で2回観測し、これらの受信信号に基づく簡易SAR画像に対して変化抽出処理することで一連の処理を完了しているが、複数の周回で継続的に処理を行い、変化がある毎に地上局に高精度SAR画像を送信するようにしてもよい。また、上記の例では、地上局で所定領域を指定し、画像レーダ信号処理装置でこの所定領域に対して複数回の観測を行うようにしているが、観測は1回のみ行い、データ保持手段2に保持された過去のデータから同一領域を検索して呼び出し、変化抽出処理を行うようにしてよい。
【0071】
以上のように、この実施の形態6によれば、変化抽出手段6で複数枚の簡易SAR画像に対する変化抽出処理を行い、この簡易SAR画像に変化があるか否かを判定するように構成したので、変化のあった領域の高精度SAR画像を選択的に地上局に送信でき、不要な情報送信を削減できるため、効率的にデータを送信できる。
【0072】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 観測手段、2 データ保持手段、3,3b,3c 高速画像処理手段(簡易画像処理手段)、4 小型画像処理手段(高精度画像処理手段)、5 送信処理手段、6 変化抽出手段、11 コマンド受信手段、12 目標観測手段、13 飛行体観測手段、31 制御手段、32 係数算出手段、33 FFT/IFFT処理手段、34 乗算手段、35 桁落ち判定手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体に搭載され、地上局との間で通信可能時間帯および通信不可時間帯が存在する画像レーダ信号処理装置において、
前記地上局からのコマンドを受信するコマンド受信手段、前記コマンド受信手段により受信されたコマンドに従い、所定領域に信号を放射し、当該信号に対する当該所定領域からの反射信号を受信することで受信信号を取得する目標観測手段、および、前記飛行体の運動データを取得する飛行体観測手段を有する観測手段と、
前記コマンド受信手段により受信されたコマンドに従い、前記目標観測手段および前記飛行体観測手段により取得された受信信号および運動データに基づいて、前記観測手段が観測を行った通信可能時間帯内で画像再生処理を行い、SAR画像を再生する簡易画像処理手段と、
前記コマンド受信手段により受信されたコマンドに従い、前記目標観測手段および前記飛行体観測手段により取得された受信信号および運動データに基づいて、前記通信不可時間帯を利用して前記簡易画像処理手段より高精度な画像再生処理を行い、SAR画像を再生する高精度画像処理手段と、
前記コマンド受信手段により受信されたコマンドに従い、前記簡易画像処理手段または前記高精度画像処理手段により再生されたSAR画像を前記地上局に送信する送信処理手段と
を備えたことを特徴とする画像レーダ信号処理装置。
【請求項2】
前記送信処理手段は、前記コマンド受信手段により受信されたコマンドに従い、前記高精度画像処理手段により再生されたSAR画像の中から前記地上局で指定された画像を前記地上局に送信する
ことを特徴とする請求項1記載の画像レーダ信号処理装置。
【請求項3】
前記簡易画像処理手段は、前記高精度画像処理手段に代えて、前記コマンド受信手段により受信されたコマンドに従い、前記目標観測手段および前記飛行体観測手段により取得された受信信号および運動データに基づいて、前記通信不可時間帯を利用して前記高精度画像処理手段と同等の高精度な画像再生処理を行い、SAR画像を再生する高精度画像処理部を有する
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の画像レーダ信号処理装置。
【請求項4】
前記送信処理手段は、前記コマンド受信手段により受信されたコマンドに従い、前記高精度画像処理手段により再生された高精度SAR画像または前記目標観測手段により取得された受信信号を前記地上局に送信する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の画像レーダ信号処理装置。
【請求項5】
前記簡易画像処理手段は、画像再生処理における桁落ちを検出する桁落ち判定手段を有し、
前記簡易画像処理手段または前記高精度画像処理手段は、前記桁落ち判定手段による判定結果に基づいて高精度な画像再生処理を実行する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の画像レーダ信号処理装置。
【請求項6】
前記目標観測手段は、前記コマンド受信手段により受信されたコマンドに従い、前記所定領域に対する受信信号取得処理を複数回実行し、
前記目標観測手段により取得された複数の受信信号に基づき前記簡易画像処理手段で再生された各SAR画像に対して、変化抽出を行う変化抽出手段を備え、
前記簡易画像処理手段または前記高精度画像処理手段は、前記変化抽出手段による抽出結果に基づいて高精度な画像再生処理を実行する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の画像レーダ信号処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−242216(P2012−242216A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111539(P2011−111539)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】