説明

画像作成装置および記録媒体

【課題】画像の取り込み回数が1度でよく、取り込んだ画像を種々の出力装置に用いることができ、画像の修正等も容易な画像作成装置および記録媒体を提供する。
【解決手段】スキャナ5の解像度をできるだけ高く、1ピクセルに対するビット数を大きく設定し、常に同一条件で、写真原稿3をスキャンし、マスターデータ7を作成し、マスターアーカイブ9に記録する。マスターデータ7に対して解像度変換、色調補正等の画像変換11を行ない、デスティネーションデータ15を作成し、デスティネーションアーカイブ17に保存する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像作成装置および記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ある被写体に対してデジタル画像を作成する手段としては、その被写体が撮影されている写真やポジフィルムをスキャナを用いてスキャンする手法が一般的である。また、被写体から、デジタルカメラを用いて直接デジタル画像を作成する方法も存在する。その時、出力する出力装置を想定し、その出力装置で画像が最適に再現されるように分解条件を設定する。
【0003】
図7は、従来のデジタル画像作成方法を示す図である。1001は写真原稿を示し、3つの出力装置に各々画像を表示する。出力装置は、HDTV(HighDefinition
TeleVesion)1005、パソコンモニタ1009、プリンタ1013等である。
【0004】
各々の出力装置に合わせて、写真原稿1001の画像を分解して取り込むためにスキャナを設定する。例えば、HDTV1005の画面いっぱいに、4inch×5inchの写真を表示する場合は、スキャナ1003を、例えば、解像度300dpi(dot
per inch)、RGB(Red、Green、Blue)各色8ビット、1 ピクセルあたり24ビット、画像サイズ1920×1080ピクセルに設定する。
【0005】
パソコンモニタ1009の画面いっぱいに、4inch×5inchの写真を表示する場合は、画像をRed、Green、Blueの3色に分解し、解像度150dpi、RGB各色8ビットで、1ピクセルあたり24ビット、画像サイズ800×600ピクセルになるようスキャナ1007を設定する。
【0006】
プリンタ1013で、4inch×5inchの写真をA4の用紙に印刷する場合は、画像をCyan、Magenta、Yellow、Blackの4色に分解し、解像度は700dpi、CMYK(Cyan、Magenta、Yellow、Black)各色8ビットで、1ピクセルあたり32ビット、画像サイズはA4で約4100×2900ピクセルにスキャナ1011を設定する。
【0007】
また、コンピュータ1017等で画像を作成して学術的な解析を行う場合は、できるだけ詳細な情報が必要となるため、例えばRGB各色16ビットで、1 ピクセルあたり48ビット、解像度は1000dpiという条件にスキャナ1015を設定することが好ましい。
【0008】
また、写真原稿1001の色、階調分布に応じて好ましい色再現になるよう、スキャナの設定を行う。例えば、暗い色調の被写体の場合、明るくなるようにしたり、グレーに赤みがかかっている場合、赤みを取るようにスキャナを設定する。
【0009】
ところで、特定の出力装置用に分解された画像を他の出力装置で表示しようとすると、解像度、ビット数、トーンカーブ、色調、色空間などの変換が必要となることが多い。特に、低解像度、低ビット数で作成された画像データを他の出力装置用に変換すると、画像が劣化するという問題がある。
【0010】
図8は、パソコンモニタ1059のためにスキャナ1053を低解像度、低ビット数に設定して得られた画像を他の出力装置へ表示した例を示す図である。1051は、写真原稿である。
【0011】
HDTV1057に表示するために、低解像度、低ビット数に設定して得られた画像に対して、階調変換、色調変換等を行なうと、階調数が減少して画像の質が悪くなる。例えば、256階調の画像をHDTV1057に表示するためには、γ値を1.0から0.45に変換する必要があり、階調数は183階調に減少し、画像の質が落ちる。
【0012】
また、プリンタ1063で印刷するために、低解像度、低ビット数で作成された画像データを拡大して、補間によって不足情報を補うと、グラデーション部分に疑似輪郭が出る等の問題が発生し、きれいな画像が得られない。結局、美しい画像を得るためには、図7のように、出力装置に応じて、スキャナの設定を変えて、複数回スキャンを行う必要がある。
【0013】
また、出力装置にフィルムの色を正確に再現したい場合や、学術用途として、被写体の色分布を調べたい場合には、スキャンされた画像データから、フィルム上の被写体の測色値への変換をする必要がある。そのためには、スキャナの入力特性を把握しておく必要があるが、絵柄に応じてスキャン条件を変えてしまうと、スキャナの入力特性も変わってしまい、絵柄毎にスキャナの入力特性を記録しておかなければならず、この手法は現実的ではないため、フィルム上の被写体の測色値への変換が困難となる。
【0014】
図9は、このような従来のRGB画像から測色値(Lab)画像への変換を行なう方法を示す図である。原理的には、写真原稿2001に応じてスキャナ2003の設定条件をAとし、RGB画像2005を得る。スキャナ2003で行なった設定条件Aを記録し、画像変換2007を行なうと、写真原稿2001の有する色を正確に再現するLab画像2009が得られる。
【0015】
写真原稿2011は、スキャナ2013の設定条件B 、写真原稿2021は、スキャナ2023の設定条件Cにし、写真原稿毎にスキャナの設定条件を記録する必要がある。更に、スキャナは、その設定パラメータの特性が公開されていないため、設定パラメータと変換の関係を調査しなければならないので、現実的には、写真原稿からその測色値への変換は難しい。
【0016】
また、モニタに絵柄を表示し、その絵柄を観察しながら色修正を行う場合があるが、ある色再現を持つモニタ上で好ましい色再現に作り込まれた絵柄が、他の色再現を持つモニタで表示した場合は、異なる色再現特性を持つことになってしまう。
【0017】
さらに、好ましい絵柄への作り込みは、色分布、被写体が何であるか等、絵柄の種類によって異なる。通常、作り込まれた絵柄のみが保存されるが、その場合作り込む前の画像から、再度作り込む必要が生じた時、前回と同様の絵柄を作ることができるとは限らない。
【0018】
尚、特許文献1において、同一画像について異なる解像度のデータを読み込む場合にも複数回数にわたって画像読取装置を動作させる必要がない画像処理装置は開示されている。
【特許文献1】特開平7−23177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
このように従来の手法では、複数の出力装置へ表示したい場合には、複数回のスキャンが必要であり、色修正を行う場合にも困難が伴った。
【0020】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、画像の取り込み回数が1度でよく、取り込んだ画像を種々の出力装置に用いることができ、画像の修正等も容易な画像作成装置および記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前述した目的を達成するために第1の発明は、sRGB規格モニタ、かつ、少なくともパソコンモニタまたはプリンタまたは高精度テレビジョンのいずれかの出力装置に出力可能とする十分な解像度とビット数で各被写体の画像を各被写体に拘わらず同一条件で入力する入力手段と、前記入力手段で入力された画像をマスターデータとして保持する保持手段と、前記入力手段の測定した色再現性特性と前記sRGBのプロファイルの条件に基づいて、前記マスターデータの画像を色変換してsRGB画像を作成する色変換手段と、前記sRGB画像に対して、所望する各出力装置に適した変換を行い、所望する各出力装置に表示したときにきれいな画像に見えるデスティネーションデータを作成する変換手段と、を具備し、前記変換手段による変換は、前記sRGB画像を、色再現特性および階調再現特性が常に同じ環境に統一されている前記sRGB規格モニタに表示して行うことを特徴とする画像作成装置である。本発明によれば、複数の出力装置への表示を前提としたとき、1度のスキャンで対応できる。また、色修正をやり直す必要が生じたとき、マスターデータに対して、変換を行えば良く、入力手段であるスキャナ等での再分解を行う必要が無い。色修正を行う環境が統一されているため、モニタの色が違うために修正結果が異なる、という問題が生じない。
【0022】
前記画像作成装置は、前記変換手段による前記マスターデータから前記デスティネーションデータへの変換の履歴を保持することが望ましい。これによって、履歴を利用すれば、何度でも同じデスティネーションデータを作成できる。また、色修正の変更が必要な場合に、その履歴を参考にして、修正することができる。
【0023】
また、前記画像作成装置は、前記入力手段の測定した色再現性特性とLabのプロファイルの条件に基づいて、前記マスターデータの画像を測色値画像に変換する手段を、更に、具備することが望ましい。これによって、マスターデータから、原稿の測色値への変換ができ、その測色値を用いることで、学術的な画像解析、劣化した原稿の修復を行うことができる。
【0024】
第2の発明は、コンピュータを第1の発明の画像作成装置として機能させるプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、画像の取り込み回数が1度でよく、取り込んだ画像を種々の出力装置に用いることができ、画像の修正等も容易な画像作成装置および記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は、本発明に係る画像作成装置1の概略説明図である。3は、写真原稿である。スキャナ5は、写真原稿3をスキャンし、画像データであるマスターデータ7を得る。この時、スキャナ5は、解像度をできるだけ高く、1ピクセルに対するビット数を大きく設定し、異なる写真原稿等に対しても設定条件を、常に同一する。
【0027】
マスターアーカイブ9は、マスターデータ7をハードディスク、MO、CD−ROM等の記録媒体に保存し、画像情報をデータベース化したものである。マスターアーカイブ9からある出力装置の特性に合わせて解像度変換、ハイライトポイント、シャドーポイントの設定、トーンカーブ修正、色調補正等の画像変換11を行なう。また、このとき、好ましい色再現を実現するための作り込みを行うこともできる。
【0028】
このようにして、デスティネーションデータ15を作成する。デスティネーションアーカイブ17は、デスティネーションデータ15を、MO、CD−ROM等の記録媒体に保存し、画像情報をデータベース化したものである。デスティネーションデータ15及びデスティネーションアーカイブ17は、特定の出力装置に表示した時に、きれいな画像に見えることを目的とするデータである。
【0029】
デスティネーションデータ15の作成は、モニタ19に画像を表示しながら、補正を行なうが、モニタ19の色再現、階調再現特性は、常に同じ環境に統一しておく。このようにすれば、常に同じ環境下でデスティネーションデータ15を作成することができる。
【0030】
履歴13は、マスターデータ7からデスティネーションデータ15を作成する際の変換や修正等を画像ごとに履歴として残したものである。この履歴13を用いれば、マスターデータ7から何度でも同じデスティネーションデータ15を作成することができる。
【0031】
マスターアーカイブ9は、スキャナ5を常に同一条件に設定して得られた画像であるため、測色値への画像変換21が行われ、測色値(Lab)画像23が得られる。測色値(Lab)画像23を用いて、劣化した写真原稿3の原稿修復25を行なったり、名画等の画像解析27を行なうことができる。
【0032】
図2は、本発明の実施の形態に係る画像作成装置50の説明図であり、図3は、入力処理を示すフローチャートである。まず、スキャナ53を設定する(ステップ301)。図4は、スキャナ53の設定条件を示す図である。図4に示すように、解像度を高く、1ピクセルあたりのビット数を大きく設定してあり、読み取るべき原稿に関係なく常に、同じ条件に設定する。
【0033】
写真原稿51をスキャナ53で読み取り、マスターデータ55を得て(ステップ302)、マスターデータ55をディスク等に収納して、マスターアーカイブ57を作成する(ステップ303)。
【0034】
次に、スキャナ53の色再現特性を測定し、スキャナプロファイル59を作成する。スキャナプロフィル59とsRGBプロファイル61に記述された条件に基づき、色変換エンジン63により色変換を行なう(ステップ304)。色変換エンジン63は、例えば、Color
Syncを用いる。スキャナプロファイル59、色変換エンジン63は、ICC(InternationalColor Consortium)規格に準拠する。
【0035】
次に、sRGBに変換した画像に対して、画像処理ソフトウエア65を用いて色補正、解像度、サイズ変換、ビット数変換を行ない、デスティネーションデータ67を生成し、デスティネーションアーカイブ73を作成する(ステップ305)。
【0036】
ステップ305の処理は、sRGB規格モニタ71に画像を表示しながら行なわれるが、そのモニタの色再現特性をsRGB規格に合わせる。具体的には、色補正は、ハイライト、シャドーの設定、トーンカーブの設定等を行ない、好ましい色再現を実現する。解像度、サイズ変更、ビット数変換は、出力したい装置のサイズと処理可能なビット数に合わせて変換を行なう。ステップ305の変換処理を、画像毎に履歴69として保存する。
【0037】
図5は、画像作成装置50の出力処理を示すフローチャートである。出力装置を選択する(ステップ501)。表示装置がHDTV75の場合は、HDTV75は、sRGB規格に準拠しているためそのまま、表示する(ステップ502)。
sRGB規格のパソコンモニタ77の場合は、sRGB規格を準拠するようモニタを調整してから、表示する(ステップ503)。
【0038】
sRGB規格に調整できないパソコンモニタ93の場合は、sRGBプロフィル89とモニタプロファイル91に記述された条件に基づき、sRGBのデータを色変換エンジン87を用いて、RGBのデータに変換し、表示する。
【0039】
プリンタ85の場合は、CMYKの4色で再現されるため、sRGBからCMYKへ変換を行なう。sRGBプロフィル79とプリンタプロファイル81に記述された条件に基づき、sRGBのデータを色変換エンジン83を用いて、CMYKのデータに変換し(ステップ504)、印刷する(ステップ505)。
【0040】
図6は、マスターアーカイブ57から測色値画像93を作成する処理を示すフローチャートである。マスターアーカイブ57のRGBの画像データからスキャナプロファイル89とLabプロファイル91に記述された条件に基づき、色変換エンジン87を用いて測色値画像93を得る(ステップ601)。
【0041】
測色値画像93を用いて画像解析95や原稿修正97を行なう(ステップ602)。即ち、測色値画像93を用いると、画像の色分析を調べる場合など、学術的な画像解析を行うことができる。また、写真画像51は、年月を経ると劣化していくが、測定値画像93を用いてその劣化具合を判断し、写真原稿51を修復する作業に用いることもできる。
【0042】
このように、本実施の形態によれば、複数の出力装置への表示を前提としたとき、1度のスキャンで対応できるようになった。
【0043】
また、色修正をやり直す必要が生じたとき、マスターアーカイブ57のデータに対して、変換を行えば良く、スキャナ53での再分解を行う必要が無い。色修正を行う環境が統一されているため、モニタ71の色が違うために修正結果が異なる、という問題が生じない。
【0044】
デスティネーションアーカイブ73を作成するための履歴69が残っているため、履歴69を利用すれば、何度でも同じデスティネーションアーカイブ73を作成できる。また、色修正の変更が必要な場合に、その履歴69を参考にして、修正することができる。マスターアーカイブ57から、原稿の測色値への変換ができ、その測色値を用いることで、学術的な画像解析、劣化した原稿の修復を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る画像作成装置1の概略説明図
【図2】本発明の実施の形態に係る画像作成装置50の説明図
【図3】画像作成装置50の入力処理を示すフローチャート
【図4】スキャナ53の設定条件を示す図
【図5】画像作成装置50の出力処理を示すフローチャート
【図6】マスターアーカイブ57から測色値画像93を作成する処理を示すフローチャート
【図7】従来のデジタル画像作成方法を示す図
【図8】低解像度、低ビット数に設定して得られた画像を他の出力装置へ表示した例を示す図
【図9】従来のRGB画像から測色値(Lab)画像への変換を行なう方法を示す図
【符号の説明】
【0046】
50………画像作成装置
3、51………写真原稿
5、53………スキャナ
7、55………マスターデータ
9、57………マスターアーカイブ
11、21………画像変換
13、69………履歴
15、67………デスティネーションデータ
17、73………デスティネーションアーカイブ
19………モニタ
75………HDTV
77………パソコンモニタ
85………プリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
sRGB規格モニタ、かつ、少なくともパソコンモニタまたはプリンタまたは高精度テレビジョンのいずれかの出力装置に出力可能とする十分な解像度とビット数で各被写体の画像を各被写体に拘わらず同一条件で入力する入力手段と、
前記入力手段で入力された画像をマスターデータとして保持する保持手段と、
前記入力手段の測定した色再現性特性と前記sRGBのプロファイルの条件に基づいて、前記マスターデータの画像を色変換してsRGB画像を作成する色変換手段と、
前記sRGB画像に対して、所望する各出力装置に適した変換を行い、所望する各出力装置に表示したときにきれいな画像に見えるデスティネーションデータを作成する変換手段と、
を具備し、
前記変換手段による変換は、前記sRGB画像を、色再現特性および階調再現特性が常に同じ環境に統一されている前記sRGB規格モニタに表示して行うことを特徴とする画像作成装置。
【請求項2】
前記変換手段による前記マスターデータから前記デスティネーションデータへの変換の履歴を保持することを特徴とする請求項1に記載の画像作成装置。
【請求項3】
前記入力手段の測定した色再現性特性とLabのプロファイルの条件に基づいて、前記マスターデータの画像を測色値画像に変換する手段を、更に、具備することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像作成装置。
【請求項4】
コンピュータを請求項1から請求項3のいずれかに記載の画像作成装置として機能させるプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−160876(P2008−160876A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19456(P2008−19456)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【分割の表示】特願平10−220284の分割
【原出願日】平成10年8月4日(1998.8.4)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】