説明

画像修正装置、地物認識装置及び地物認識方法

【課題】地物の認識精度を高くすることができるようにする。
【解決手段】画像の修正の対象となる対象地物上を車両が走行する際の定常的な走行軌跡を推測する走行軌跡推測処理手段と、走行軌跡に基づいて、対象地物における画像の修正部位を算出する修正部位算出処理手段と、修正部位の画像の欠損を修正する補間処理手段とを有する。対象地物上を車両が走行する際の定常的な走行軌跡が推測され、走行軌跡に基づいて、対象地物における画像の修正部位が算出され、修正部位の画像の欠損が修正されるので、地物の認識精度を高くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像修正装置、地物認識装置及び地物認識方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ナビゲーション装置においては、例えば、GPS(グローバルポジショニングシステム)によって車両の現在の位置、すなわち、現在地が検出されるとともに、ジャイロセンサによって検出された車両の旋回角に基づいて、車両の方位、すなわち、自車方位が検出され、データ記録部から地図データが読み出され、表示部に地図画面が形成され、該地図画面に、現在地を表す自車位置、自車位置の周辺の地図及び自車方位が表示されるようになっている。したがって、操作者である運転者は、前記地図画面に表示された自車位置、自車位置の周辺の地図及び自車方位に従って車両を走行させることができる。
【0003】
また、運転者が目的地を入力し、探索条件を設定すると、該探索条件に基づいて、経路探索処理が行われ、前記地図データに従って現在地で表される出発地から目的地までの経路が探索される。そして、探索された経路、すなわち、探索経路は前記地図画面に自車位置と共に表示され、探索経路の案内、すなわち、経路案内が行われる。したがって、運転者は表示された探索経路に沿って車両を走行させることができる。
【0004】
ところで、例えば、交差点の手前の道路上に、ペイント等を塗装することによって地物としての停止線が形成されていることがあり、その場合、該停止線を車両に搭載されたカメラによって撮影し、停止線の画像に基づいて停止線を認識することができるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
そのために、ナビゲーション装置は、搭載されたデータ記録部から道路データを読み出して道路の幅員、停止線の幅等を取得し、前記画像に対して、停止線の横幅方向及び前後幅方向の画像認識を行う。
【特許文献1】特開2004−295597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来のナビゲーション装置においては、停止線を認識する精度が低くなることがある。例えば、停止線は、該停止線上を車両が繰り返し走行することによって擦(こす)れ、一部が欠損することがある。その場合、道路の幅員、停止線の幅等に基づいて、停止線の横幅方向及び前後幅方向の画像認識を行っても、欠損している分だけ画像認識の精度が低くなってしまう。したがって、停止線の認識精度が低くなってしまう。
【0007】
その結果、交差点を検出したり、交差点までの距離を算出したりする精度が低くなってしまう。
【0008】
本発明は、前記従来のナビゲーション装置の問題点を解決して、地物の認識精度を高くすることができる画像修正装置、地物認識装置及び地物認識方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのために、本発明の画像修正装置においては、画像の修正の対象となる対象地物上を車両が走行する際の定常的な走行軌跡を推測する走行軌跡推測処理手段と、前記走行軌跡に基づいて、対象地物における画像の修正部位を算出する修正部位算出処理手段と、前記修正部位の画像の欠損を修正する補間処理手段とを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、対象地物上を車両が走行する際の定常的な走行軌跡が推測され、走行軌跡に基づいて、対象地物における画像の修正部位が算出され、該修正部位の画像の欠損が修正されるので、地物の認識精度を高くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明の実施の形態におけるナビゲーションシステムを示す図である。
【0013】
図において、10はパワートレイン制御部としての自動変速機制御部、11は図示されないエンジン、電気モータ等の駆動動力源と共に使用され、所定の変速比で変速を行うパワートレインである。本実施の形態において、該パワートレイン11として、自動変速機としてのベルト式、トロイダル式等の無段変速機(CVT)が使用されるが、自動変速機としての有段変速機(オートマチックトランスミッション)を使用することができる。また、パワートレイン11として、エンジン及び電気モータを備えたハイブリット型車両又は電気自動車に使用され、電気モータを駆動することによって無段変速を行う電動駆動装置を使用することができる。
【0014】
そして、14は情報端末、例えば、車両に搭載された車載装置としてのナビゲーション装置、63はネットワーク、51は情報提供者としての情報センタであり、前記自動変速機制御部10、ナビゲーション装置14、ネットワーク63、情報センタ51等によってナビゲーションシステムが構成される。
【0015】
前記ナビゲーション装置14は、現在地を検出する現在地検出部としてのGPSセンサ15、地図データのほかに各種の情報が記録された情報記録部としてのデータ記録部16、入力された情報に基づいて、ナビゲーション処理等の各種の演算処理を行うナビゲーション処理部17、自車方位を検出する方位検出部としての方位センサ18、操作者である運転者が操作することによって所定の入力を行うための第1の入力部としての操作部34、図示されない画面に表示された画像によって各種の表示を行い、運転者に通知するための第1の出力部としての表示部35、音声によって所定の入力を行うための第2の入力部としての音声入力部36、音声によって各種の表示を行い、運転者に通知するための第2の出力部としての音声出力部37、及び通信端末として機能する送受信部としての通信部38を備え、前記ナビゲーション処理部17に、GPSセンサ15、データ記録部16、方位センサ18、操作部34、表示部35、音声入力部36、音声出力部37及び通信部38が接続される。
【0016】
また、前記ナビゲーション処理部17には、前記自動変速機制御部10、車両の前方を監視する前方監視装置48、車両の前方、側方又は後方、すなわち、車両の周辺を撮影する撮像装置としてのカメラ49、運転者によるアクセルペダルの操作をアクセル開度で検出する負荷検出部としてのアクセルセンサ42、運転者によるブレーキペダルの操作をブレーキ踏込量で検出する制動検出部としてのブレーキセンサ43、車速を検出する車速センサ44等が接続される。なお、前記アクセルセンサ42、ブレーキセンサ43等は運転者による車両の操作情報を検出するための車両情報検出部を構成する。
【0017】
前記GPSセンサ15は、人工衛星によって発生させられた電波を受信することによって地球上における現在地を検出し、併せて時刻を検出する。本実施の形態においては、現在地検出部としてGPSセンサ15が使用されるようになっているが、該GPSセンサ15に代えて図示されない距離センサ、ステアリングセンサ、高度計等を単独で、又は組み合わせて使用することもできる。また、前記方位センサ18としてジャイロセンサ、地磁気センサ等を使用することができる。
【0018】
前記データ記録部16は、地図データファイルから成る地図データベースを備え、該地図データベースに地図データが記録される。該地図データには、交差点に関する交差点データ、ノードに関するノードデータ、道路リンク及びレーンに関する道路データ、探索用に加工された探索データ、施設に関する施設データ等が含まれるほか、地物に関する地物データが含まれる。前記地物には、道路上に形成された停止線、横断歩道、レーン(車線)を区分する通行帯表示線、レーンにおける進行方向を矢印で表す通行区分、路上標識、道路上のマンホール、信号機等が含まれ、地物データには、前記各地物の位置を表す位置情報、各地物の画像を表す画像情報等が含まれる。前記停止線は、交差点、踏切り等の手前に形成される。また、前記レーンに関する道路データとして、道路上の各レーンごとに付与されたレーン番号、レーンの位置情報等から成るレーンデータが含まれる。
【0019】
さらに、前記データ記録部16には、統計データファイルから成る統計データベース、走行履歴データファイルから成る走行履歴データベース等が形成され、前記統計データファイルに統計データが、前記走行履歴データファイルに走行履歴データが、いずれも実績データとして記録される。
【0020】
前記統計データは、過去に提供された交通情報の実績、すなわち、履歴を表す履歴情報であり、情報提供者としてのVICS(登録商標:Vehicle Information and Communication System)センタ等の図示されない道路交通情報センタ等によって過去に提供された交通情報、国土交通省によって提供された道路交通センサスによる交通量を表すデータ(以下「道路交通センサス情報」という。)、国土交通省によって提供された道路時刻表情報等を単独で、又は組み合わせて使用し、必要に応じて、加工し、統計処理を施すことによって作成される。なお、前記統計データに、渋滞状況を予測する渋滞予測情報等を加えることもできる。その場合、前記統計データを作成するに当たり、履歴情報に、日時、曜日、天候、各種イベント、季節、施設の情報(デパート、スーパーマーケット等の大型の施設の有無)等の詳細な条件が加えられる。
【0021】
前記統計データのデータ項目には、過去に車両が走行した道路、すなわち、各走行道路を構成する各道路リンクについてのリンク番号、走行方向を表す方向フラグ、情報の種類を表す情報種別、所定のタイミングごとの渋滞度、前記各道路リンクを走行したときの、所定のタイミングごとの所要時間を表すリンク所要時間、該リンク所要時間の各曜日ごとの平均的なデータ(例えば、曜日平均データ)等から成る。
【0022】
また、走行履歴データは、情報センタ51が複数の車両(自車又は他車)から収集した走行道路における車両の走行の実績、すなわち、走行実績を表す実績情報であり、走行データに基づいてプローブデータとして算出され、蓄積される。
【0023】
前記走行履歴データのデータ項目は、所定のタイミングごとの渋滞度、各道路リンクを走行したときの、所定のタイミングごとのリンク所要時間、各道路リンクを走行したときの、所定のタイミングごとの平均車速、車両の種類ごとの交通量等から成る。なお、前記統計データに、走行履歴データを加えることができる。また、本実施の形態において、渋滞度は、渋滞の度合いを表す渋滞指標として使用され、渋滞、混雑及び非渋滞の別で表される。
【0024】
さらに、前記データ記録部16には、所定の情報を音声出力部37によって出力するためのデータも記録される。
【0025】
前記データ記録部16は、前記各種のデータを記録するために、ハードディスク、CD、DVD、光ディスク等の図示されないディスクを備えるほかに、各種のデータを読み出したり、書き込んだりするための読出・書込ヘッド等の図示されないヘッドを備える。前記データ記録部16にメモリカード等を使用することができる。
【0026】
本実施の形態においては、前記データ記録部16に、前記地図データベース、統計データベース、走行履歴データベース等が配設されるようになっているが、情報センタ51において、前記地図データベース、統計データベース、走行履歴データベース等を配設することもできる。
【0027】
また、前記ナビゲーション処理部17は、ナビゲーション装置14の全体の制御を行う制御装置としての、かつ、演算装置としてのCPU31、該CPU31が各種の演算処理を行うに当たってワーキングメモリとして使用されるRAM32、制御用のプログラムのほか、目的地までの経路の探索、経路案内等を行うための各種のプログラムが記録されたROM33、各種のデータ、プログラム等を記録するために使用される図示されないフラッシュメモリを備える。なお、本実施の形態においては、CPU31によって画像修正装置及び地物認識装置が構成される。
【0028】
本実施の形態においては、前記ROM33に各種のプログラムを記録し、前記データ記録部16に各種のデータを記録することができるが、プログラム、データ等をディスク等に記録することもできる。この場合、ディスク等から前記プログラム、データ等を読み出してフラッシュメモリに書き込むことができる。したがって、ディスク等を交換することによって前記プログラム、データ等を更新することができる。また、前記自動変速機制御部10の制御用のプログラム、データ等も前記ディスク等に記録することができる。さらに、通信部38を介して前記プログラム、データ等を受信し、ナビゲーション処理部17のフラッシュメモリに書き込むこともできる。
【0029】
前記操作部34は、運転者が操作することによって、走行開始時の現在地を修正したり、出発地及び目的地を入力したり、通過点を入力したり、通信部38を作動させたりするためのものであり、前記操作部34として、表示部35とは独立に配設されたキーボード、マウス等を使用することができる。また、前記操作部34として、前記表示部35に形成された画面に画像で表示された各種のキー、スイッチ、ボタン等の画像操作部をタッチ又はクリックすることによって、所定の入力操作を行うことができるようにしたタッチパネルを使用することができる。
【0030】
前記表示部35としてディスプレイが使用される。そして、表示部35に形成された各種の画面に、現在地を表す自車位置、地図、探索経路、該探索経路に沿った案内情報、交通情報等を表示したり、探索経路における次の交差点までの距離、次の交差点における進行方向を表示したりすることができるだけでなく、前記画像操作部、操作部34、音声入力部36等の操作案内、操作メニュー、キーの案内を表示したり、FM多重放送の番組等を表示したりすることができる。
【0031】
また、音声入力部36は、図示されないマイクロホン等によって構成され、音声によって必要な情報を入力することができる。さらに、音声出力部37は、図示されない音声合成装置及びスピーカを備え、音声出力部37から、前記探索経路、案内情報、交通情報等が、例えば、音声合成装置によって合成された音声で出力される。
【0032】
前記通信部38は、前記道路交通情報センタから送信された現況の交通情報、一般情報等の各種の情報を、道路に沿って配設された電波ビーコン装置、光ビーコン装置等を介して電波ビーコン、光ビーコン等として受信するためのビーコンレシーバ、FM放送局を介してFM多重放送として受信するためのFM受信機等を備える。なお、前記交通情報には、渋滞情報、規制情報、駐車場情報、交通事故情報、サービスエリアの混雑状況情報等が含まれ、一般情報には、ニュース、天気予報等が含まれる。また、前記ビーコンレシーバ及びFM受信機は、ユニット化されてVICSレシーバとして配設されるようになっているが、別々に配設することもできる。
【0033】
前記交通情報は、情報の種別を表す情報種別、メッシュを特定するためのメッシュ番号、二つの地点(例えば、交差点)間を連結する道路リンクを特定し、かつ、上り/下りの別を表すリンク番号、該リンク番号に対応させて提供される情報の内容を表すリンク情報を含み、例えば、交通情報が渋滞情報である場合、前記リンク情報は、前記道路リンクの始点から渋滞の先頭までの距離を表す渋滞先頭データ、渋滞度、渋滞区間を前記渋滞の先頭から渋滞の末尾までの距離を表す渋滞長、リンク所要時間等から成る。
【0034】
そして、通信部38は、前記情報センタ51から前記地図データ、統計データ、走行履歴データ等のデータのほかに、交通情報、一般情報等の各種の情報を受信することができる。
【0035】
そのために、前記情報センタ51は、サーバ53、該サーバ53に接続された通信部57及び情報記録部としてのデータベース(DB)58等を備え、前記サーバ53は、制御装置としての、かつ、演算装置としてのCPU54、RAM55、ROM56等を備える。また、前記データベース58に、前記データ記録部16に記録された各種のデータと同様のデータ、例えば、前記地図データ、統計データ、走行履歴データ等が記録される。さらに、情報センタ51は、前記道路交通情報センタから送信された現況の交通情報、一般情報等の各種の情報、及び複数の車両(自車又は他車)から収集した走行履歴データをリアルタイムに提供することができる。
【0036】
前記前方監視装置48は、レーザレーダ、ミリ波レーダ等のレーダ、超音波センサ等、又はそれらの組合せから成り、自車周辺情報として車間距離、車間時間、先行車に対する接近速度、一時停止箇所(非優先道路から優先道路への進入箇所、踏切、赤信号が点滅する交差点等)に対する接近速度、障害物に対する接近速度等を算出し、先行車、一時停止箇所、障害物等を監視する。また、前記カメラ49は、CCD、C−MOS等から成り、自車周辺情報として前記各地物のほかに、周辺の車両、建造物、交差点、案内看板等を被撮影物として撮影し、撮影された被撮影物の画像の画像データをCPU31に送る。
【0037】
該CPU31は、前記画像データを受信すると、画像データを処理して被撮影物を認識するとともに、車両の周辺を監視する。
【0038】
なお、前記ナビゲーションシステム、ナビゲーション処理部17、CPU31、54、サーバ53等は、各種のプログラム、データ等に基づいてコンピュータとして機能する。また、データ記録部16、RAM32、55、ROM33、56、データベース58、フラッシュメモリ等によって記録媒体が構成される。そして、演算装置として、CPU31、54に代えてMPU等を使用することもできる。
【0039】
次に、前記構成のナビゲーションシステムを経路案内システムとして使用したときの基本動作について説明する。
【0040】
まず、運転者によって操作部34が操作され、ナビゲーション装置14が起動されると、CPU31の図示されないナビ初期化処理手段は、ナビ初期化処理を行い、GPSセンサ15によって検出された現在地、方位センサ18によって検出された自車方位等を読み込むとともに、各種のデータを初期化する。次に、前記CPU31の図示されないマッチング処理手段は、マッチング処理を行い、読み込まれた現在地の軌跡、及び現在地の周辺の道路を構成する各道路リンクの形状、配列等に基づいて、現在地がいずれの道路リンク上に位置するかの判定を行うことによって、現在地を特定する。
【0041】
また、前記CPU31の図示されない画像認識処理手段としての地物認識処理手段は、画像認識処理としての地物認識処理を行い、カメラ49によって撮影された地物の画像の画像データを読み込み、該画像データに対して画像処理を行って地物を認識する。
【0042】
したがって、認識された地物に基づいて、交差点、踏切、横断歩道、車両が走行しているレーン(以下「走行レーン」という。)等の道路施設の検出を行うことができる。例えば、認識された地物が停止線である場合、前記地物認識処理手段の道路施設検出処理手段としての交差点検出処理手段は、道路施設検出処理としての交差点検出処理を行い、データ記録部16から地物データを読み出し、認識された停止線の画像データと地物データとを照合して交差点を検出する。また、前記道路施設検出処理手段としての踏切検出処理手段は、道路施設検出処理としての踏切検出処理を行い、認識された踏切の画像データと地物データとを照合して踏切を検出する。同様に、前記道路施設検出処理手段としての横断歩道検出処理手段は、道路施設検出処理としての横断歩道検出処理を行い、認識された横断歩道の画像データと地物データとを照合して横断歩道を検出する。また、前記道路施設検出処理手段としての走行レーン検出処理手段は、道路施設検出処理としての走行レーン検出処理を行い、認識された通行帯表示線、通行区分、マンホール等の画像データと地物データとを照合して走行レーンを検出する。
【0043】
なお、前記走行レーン検出処理手段は、地磁気センサのセンサ出力を読み込み、該センサ出力に基づいて、道路上の所定のレーンにマンホール等の強磁性体から成る被検出物があるかどうかを判断し、判断結果に基づいて走行レーンを検出することができる。さらに、高精度のGPSセンサ15を使用し、現在地を精度よく検出し、検出結果に基づいて走行レーンを検出することができる。また、必要に応じて、通行帯表示線の画像データに対して画像処理を行うのと同時に、地磁気センサのセンサ出力、現在地等を組み合わせて、走行レーンを検出することができる。
【0044】
また、CPU31の図示されない距離算出処理手段は、距離算出処理を行い、現在地から検出された交差点、踏切、横断歩道等までの距離を算出する。そして、前記CPU31の図示されない現在地補正処理手段は、現在地補正処理を行い、前記距離を読み込み、現在地を、例えば、座標について補正する。
【0045】
続いて、CPU31の図示されない基本情報取得処理手段は、基本情報取得処理を行い、前記地図データを、データ記録部16から読み出して取得するか、又は通信部38を介して情報センタ51等から受信して取得する。なお、地図データを情報センタ51から取得する場合、前記基本情報取得処理手段は、受信した地図データをフラッシュメモリにダウンロードする。
【0046】
そして、前記CPU31の図示されない表示処理手段は、表示処理を行い、前記表示部35に各種の画面を形成する。例えば、表示処理手段の地図表示処理手段は、地図表示処理を行い、表示部35に地図画面を形成し、該地図画面に自車位置、自車位置の周辺の地図及び自車方位を表示する。したがって、運転者は、前記自車位置、自車位置の周辺の地図及び自車方位に従って車両を走行させることができる。
【0047】
また、運転者が操作部34を操作して目的地を入力すると、CPU31の図示されない目的地設定処理手段は、目的地設定処理を行い、目的地を設定する。なお、必要に応じて出発地を入力し、設定することもできる。また、あらかじめ所定の地点を登録しておき、登録された地点を目的地として設定することができる。続いて、運転者が操作部34を操作して探索条件を入力すると、CPU31の図示されない探索条件設定処理手段は、探索条件設定処理を行い、探索条件を設定する。
【0048】
このようにして、目的地及び探索条件が設定されると、CPU31の図示されない経路探索処理手段は、経路探索処理を行い、前記現在地、目的地、探索条件等を読み込むとともに、データ記録部16から探索データ等を読み出し、現在地、目的地及び探索データに基づいて、現在地で表される出発地から目的地までの経路を前記探索条件で探索し、探索経路を表す経路データを出力する。この場合、各道路リンクごとに付与されたリンクコストの合計が最も小さい経路が探索経路とされる。また、道路によって複数のレーンが形成されている場合で、かつ、走行レーンが検出されている場合、前記経路探索処理手段は、レーン単位の探索経路を探索し、前記経路データには走行レーンを表すレーン番号等が含まれる。
【0049】
続いて、前記CPU31の図示されない案内処理手段は、案内処理を行い、運転者に対して経路案内を行う。そのために、前記案内処理手段の経路表示処理手段は、経路表示処理を行い、前記経路データを読み込み、該経路データに従って前記地図画面に探索経路を表示する。レーン単位の探索経路が探索されている場合は、所定の地点、例えば、案内交差点において、レーン単位の経路案内が行われ、交差点拡大図に経路案内がされている走行レーンが表示される。この場合、必要に応じて、前記案内処理手段の音声出力処理手段は、音声出力処理を行い、音声出力部37から探索経路を音声で出力して経路案内を行う。
【0050】
なお、情報センタ51において経路探索処理を行うことができる。その場合、CPU31は現在地、目的地、探索条件等を情報センタ51に送信する。該情報センタ51は、現在地、目的地、探索条件等を受信すると、CPU54の図示されない経路探索処理手段は、CPU31と同様の経路探索処理を行い、データベース58から探索データ等を読み出し、現在地、目的地及び探索データに基づいて、出発地から目的地までの経路を前記探索条件で探索し、探索経路を表す経路データを出力する。続いて、CPU54の図示されない送信処理手段は、送信処理を行い、前記経路データをナビゲーション装置14に送信する。したがって、ナビゲーション装置14において、前記基本情報取得処理手段が情報センタ51からの経路データを受信すると、前記案内処理手段は、前述されたような経路案内を行う。
【0051】
そして、探索経路上に案内交差点が存在する場合、車両が案内交差点より所定の距離L1(例えば、X〔m〕)だけ手前の経路案内地点に到達すると、前記案内処理手段の交差点拡大図表示処理手段は、交差点拡大図表示処理を行い、地図画面の所定の領域に前述されたような交差点拡大図を形成し、該交差点拡大図による経路案内を行い、前記交差点拡大図に、案内交差点の周辺の地図、探索経路、案内交差点において目印になる施設等の陸標、レーン単位の経路案内が行われている場合には走行レーン等を表示する。また、前記音声出力処理手段は、音声出力部37に指示し、例えば、「この先X〔m〕で左方向です。」のような音声による経路案内を行う。
【0052】
ところで、地物のうちの停止線、横断歩道、通行帯表示線、通行区分、路上標識等は、道路上にペイント等を塗装することによって形成され、塗装地物を構成する。したがって、塗装地物上を車両が繰り返し走行すると、塗装地物が擦れ、一部がかすれて欠損することがある。その場合、一部が欠損した塗装地物の画像に基づいて塗装地物を認識しようとすると、認識精度が低くなってしまう。
【0053】
その結果、交差点、踏切、横断歩道、走行レーン等を検出したり、現在地から交差点、踏切、横断歩道等までの距離を算出したりする精度が低くなってしまう。
【0054】
そこで、本実施の形態においては、前記地物認識処理が行われる前に、CPU31の図示されない画像修正処理手段は、画像修正処理を行い、塗装地物の欠損しやすい部位について画像を修正し、塗装地物の認識精度を高くするようにしている。
【0055】
次に、塗装地物のうちの停止線の一部が欠損した場合について、前記画像修正処理手段の動作について説明する。
【0056】
図2は本発明の実施の形態における画像修正処理手段の動作を示す第1のフローチャート、図3は本発明の実施の形態における画像修正処理手段の動作を示す第2のフローチャート、図4は本発明の実施の形態における交差点を示す図、図5は本発明の実施の形態における交差点における走行軌跡を推測する方法を示す第1の図、図6は本発明の実施の形態における交差点における走行軌跡を推測する方法を示す第2の図である。
【0057】
図4及び5において、c1は交差点、r1、r2は該交差点c1で交差する道路、h1、h2は前記道路r1、r2のセンタライン、k1〜k3は道路r1の走行車線側のレーン、k4〜k6は道路r1の反対車線側のレーン、m1〜m3は道路r2の走行車線側のレーン、m4〜m6は道路r2の反対車線側のレーン、w1は自車である車両である。なお、車両w1は右折専用のレーンk3を走行していて、道路r1を走行し、交差点c1において右折し、道路r2を走行する。前記道路r1が進入道路となり、道路r2が退出道路となる。また、q1は交差点c1の手前に形成された停止線、s1は右折専用のレーンk3であることを矢印で表す通行区分である。
【0058】
本実施の形態においては、前記停止線q1が、認識の対象となる塗装地物、すなわち、対象地物となるが、前記停止線q1と同時に他の塗装地物を対象地物としたり、順次他の塗装地物を対象地物としたりすることができる。
【0059】
まず、前記画像修正処理手段の画像修正条件判定処理手段は、画像修正条件判定処理を行い、第1の画像修正条件が成立しているかどうかをマッチング処理が行われているかどうかによって判断する。第1の画像修正条件が成立し、マッチング処理が行われている場合、前記画像修正条件判定処理手段は、GPSセンサ15(図1)によって検出された自車位置を読み込むとともに、対象地物情報としての地物データを、データ記録部16から読み出すことによって取得する。
【0060】
次に、前記画像修正条件判定処理手段は、第2の画像修正条件が成立しているかどうかを対象地物が存在するかどうか地物データによって判断する。本実施の形態において、前記画像修正条件判定処理手段は、地物データを参照し、自車位置の周辺、すなわち、車両w1の前方の所定の範囲内に対象地物が存在するかどうか判断される。なお、本実施の形態においては、車両w1の前方に停止線q1が存在する。
【0061】
第2の画像修正条件が成立し、本実施の形態のように停止線q1が存在する場合、前記画像修正処理手段の道路形状情報取得処理手段は、道路形状情報取得処理を行い、データ記録部16から地図データを読み出し、停止線q1の周辺の道路形状、本実施の形態においては、停止線q1を含む前後の道路r1、r2の形状、及びレーンk1〜k3、m1〜m3の構造を道路形状情報として取得する。続いて、前記画像修正処理手段の走行軌跡推測処理手段は、走行軌跡推測処理を行い、前記道路形状情報に基づいて、停止線q1上を車両が走行する際の定常的な走行軌跡を推測する。
【0062】
図5に示されるように、車両w1が右折専用のレーンk3を走行し、交差点c1で右折する場合、道路r2において、レーンm1〜m3のうちのレーンm3を走行すると推測され、レーンk3からレーンm3に至る湾曲する走行軌跡Rtが推測される。
【0063】
次に、前記画像修正処理手段の修正部位算出処理手段は、修正部位算出処理を行い、前記走行軌跡Rtに基づいて、停止線q1の欠損している部位を、修正が必要になる部位、すなわち、修正部位として算出する。なお、図6において、t1、t2は、走行軌跡Rt上を車両が走行する際の、前輪が通過する軌跡であり、前輪が通過することによって、停止線q1は、部位p1、p2において欠損し、該部位p1、p2が修正部位として算出される。この場合、後輪が通過する軌跡について示されていないが、後輪が通過することによって、停止線q1は、部位p1、p2に隣接する部位において欠損し、該部位も修正部位として算出される。なお、前記部位p1、p2は、走行軌跡Rtに基づいて算出されるので、右折の場合、レーン内の右寄りに、左折の場合、レーン内の左寄りに算出される。
【0064】
続いて、前記画像修正処理手段の擦れ推定パラメータ算出処理手段は、擦れ推定パラメータ算出処理を行い、車両走行指数に基づいて、修正部位における欠損の程度を表す擦れ推定パラメータを算出する。該推定パラメータは、欠損の程度が大きいほど大きく、欠損の程度が小さいほど小さくされる。なお、前記車両走行指数は、前記停止線q1上の車両の実績の走行度合い、又は想定される走行度合いを表す指数である。
【0065】
そのために、まず、前記擦れ推定パラメータ算出処理手段は、データ記録部16から道路データを読み出し、該道路データを参照して道路種別を取得し、道路種別に基づいて擦れ推定パラメータJを算出する。前記道路種別は、国道、県道、市町村道、細街路、高速道路等の道路の種別を表し、前記車両走行指数としての停止線q1上の想定される走行度合いを表す交通量を推定する際の指標となる。
【0066】
本実施の形態においては、データ記録部16に図示されない擦れ推定パラメータマップが記録され、該擦れ推定パラメータマップにおいて、最も交通量が多い国道及び高速道路の擦れ推定パラメータJが最も大きくされ、次に交通量が多い県道の擦れ推定パラメータJが次に大きくされ、最も交通量が少ない市町村道及び細街路の擦れ推定パラメータJが最も小さくされる。
【0067】
また、前記擦れ推定パラメータ算出処理手段は、データ記録部16から走行履歴データを読み出し、該走行履歴データを参照し、前記車両走行指数としての停止線q1上の交通量を判定し、車両の実績の走行度合いを表す交通量に基づいて擦れ推定パラメータJを算出することができる。さらに、車両の種類ごとの交通量を判定して擦れ推定パラメータJを算出することもできる。その場合、車両の種類が、トラック等のように総重量が大きいものほど擦れ推定パラメータJが大きくされ、車両の種類が、軽自動車等の総重量が小さいものほど擦れ推定パラメータJが小さくされる。
【0068】
続いて、前記擦れ推定パラメータ算出処理手段は、データ記録部16から走行履歴データを読み出し、該走行履歴データを参照し、前記車両走行指数としての停止線q1上における車両の走行実態を読み出し、該走行実態に基づいて擦れ推定パラメータSを算出する。
【0069】
前記走行実態は、交差点c1に隣接する道路リンクにおけるリンク所要時間、平均車速、車両w1の種類等を表し、他車が停止線q1に加える負荷を推定する際の指標となる。本実施の形態においては、前記擦れ推定パラメータマップにおいて、リンク所要時間が短いほど、また、平均車速が高いほど、擦れ推定パラメータSが大きくされ、リンク所要時間が長いほど、また、平均車速が低いほど、擦れ推定パラメータSが小さくされる。
【0070】
続いて、前記擦れ推定パラメータ算出処理手段は、データ記録部16から統計データを読み出し、該統計データを参照し、前記車両走行指数としての停止線q1の塗り直し等の工事履歴を取得し、該工事履歴に基づいて擦れ推定パラメータKを算出する。
【0071】
前記工事履歴は、停止線q1がいつ補修されたか、及びその後の車両の想定される走行度合いを表し、停止線q1の寿命を推定する際の指標となる。本実施の形態においては、前記擦れ推定パラメータマップにおいて、補修された時期が現時点から遠いほど擦れ推定パラメータKが大きくされ、補修された時期が現時点から近いほど擦れ推定パラメータKが小さくされる。
【0072】
このように、擦れ推定パラメータJ、S、Kが算出されると、前記画像修正処理手段の修正度決定処理手段は、修正度決定処理を行い、擦れ推定パラメータJ、S、Kに基づいて画像の欠損を修正する度合い、すなわち、修正の精度を表す修正度ηを決定する。本実施の形態においては、擦れ推定パラメータJ、S、Kを加算することによって総擦れ推定パラメータYが算出され、前記修正度決定処理手段は、総擦れ推定パラメータYが大きいほど、画像の欠損が大きいので、修正度ηを大きくして修正の精度を高くし、総擦れ推定パラメータYが小さいほど、画像の欠損が小さいので、修正度ηを小さくして修正の精度を低くする。他の実施の形態においては、前記擦れ推定パラメータJ、S、Kのうちの一つ、又は二つに基づいて修正度ηを変更することができる。
【0073】
本実施の形態においては、停止線q1上の交通量を推定する際の指標として、道路種別が使用されるようになっているが、他の実施の形態においては、道路交通センサスによる交通量を使用することができる。また、停止線q1に加わる負荷を推定する際の指標として、走行履歴データのリンク所要時間、平均車速等が使用されるようになっているが、他の実施の形態においては、現況の交通情報のリンク所要時間、平均車速等を使用することができる。
【0074】
そして、本実施の形態においては、他車の走行履歴データに基づいて擦れ推定パラメータSを算出するようになっているが、自車の走行履歴データに基づいて擦れ推定パラメータSを算出することもできる。
【0075】
続いて、前記画像修正処理手段のエッジ検出処理手段は、エッジ検出処理を行い、前記カメラ49から送られた画像データを読み込み、所定のエッジ検出オペレータを使用して画像データに対する演算を行い、停止線q1のエッジを検出する。
【0076】
図7は本発明の実施の形態におけるエッジ検出処理の第1の例を示す図、図8は本発明の実施の形態におけるエッジ検出処理の第2の例を示す図である。
【0077】
図において、Q1は画像データによって構成される原画像、q1は停止線であり、該停止線q1は、水平方向、すなわち、x軸方向のエッジqx1、qx2及び垂直方向、すなわち、y軸方向のエッジqy1、qy2を備える。また、p11〜p13は欠損した部位である。部位p11においては、二つの軸方向、すなわち、x軸方向のエッジqx2及びy軸方向のエッジqy2において欠損しており、部位p12、p13においては、一つの軸方向、すなわち、x軸方向のエッジqx1、qx2において欠損している。
【0078】
そして、前記エッジ検出処理手段は、まず、前記原画像Q1において3×3のマトリックスの画素を読み込み、中心をエッジ検出処理の対象画素とし、近傍の画素を前記エッジ検出オペレータに従って走査演算を行い、エッジ(画素間の微分値)を増幅する。
【0079】
ところで、前記エッジ検出オペレータには、Sobelオペレータ、Prewittオペレータ、Robertsオペレータ等のオペレータがあり、Sobelオペレータは式(1)で示される3×3のマトリックスhx、hyで表され、Prewittオペレータは式(2)で示される3×3のマトリックスhx、hyで表され、Robertsオペレータは式(3)で示される3×3のマトリックスhx、hyで表される。
【0080】
【数1】

そして、いずれのオペレータを使用する場合も、前記エッジ検出処理手段は、マトリックスhx、hyを原画像Q1のマトリックスに掛け合わせ、合計の絶対値を算出する。続いて、前記エッジ検出処理手段は、前記絶対値を所定の閾(しきい)値と比較して2値化を行い、絶対値が閾値より大きい対象画素をエッジとする。前記マトリックスhx、hyは、互いに90〔°〕回転させたマトリックスであり、前記絶対値の大きい方のマトリックスが採用される。
【0081】
各オペレータは、エッジの種類に応じて使用され、Sobelオペレータ及びPrewittオペレータは、マトリックスhxによってy軸方向のエッジqy1、qy2に強く反応し(絶対値が大きくなり)、マトリックスhyによってx軸方向のエッジqx1、qx2に強く反応する。これに対して、Robertsオペレータは斜めに延びるエッジに強く反応する。
【0082】
このようにして、停止線q1のエッジqx1、qx2、qy1、qy2が検出されると、前記画像修正処理手段の補間処理手段は、補間処理を行い、前記修正部位の画像の欠損を修正する。そのために、前記補間処理手段は、停止線q1のエッジqx1、qx2、qy1、qy2を構成する画像データを読み込み、該画像データに従ってエッジ補間を行う。該エッジ補間の方法には、各種の方法があり、本実施の形態においては、ハフ変換が使用される。
【0083】
次に、該ハフ変換について説明する。
【0084】
図9は本発明の実施の形態におけるX−Yパラメータ空間を示す図、図10は本発明の実施の形態におけるa−bパラメータ空間を示す図である。なお、図7において、横軸にY座標を、縦軸にX座標を採ってあり、図8において、横軸にb座標を、縦軸にa座標を採ってある。
【0085】
X−Yパラメータ空間(座標系)の直線Ln1の各点の座標を(x1,y1)とし、傾きをa1とし、切片をb1とすると、
y1=a1・x1+b1 ……(4)
になる。
【0086】
該式(4)をa−bパラメータ空間にパラメータ変換(座標変換)すると、
a=(b−y1)/x1 ……(5)
になり、X−Yパラメータ空間で点(例えば、点PA)で表されるものが、a−bパラメータ空間では直線(例えば、直線LA1)として表される。そして、例えば、前記直線Ln1が補間処理を行う対象となるエッジqx1(図7)である場合、直線Ln1の各点は、エッジqx1を構成する各エッジ点となる。
【0087】
前記エッジqx1上のすべてのエッジ点について前記パラメータ変換を行うと、a−bパラメータ空間上の交点(a1,b1)で各エッジ点に対応する各直線が交差することになる。したがって、エッジqx1上において欠損している部位p11の各エッジ点に対応する各直線を想定したとき、該各直線も前記交点(a1,b1)で交差することになる。
【0088】
前記ハフ変換は、この幾何学的な特性を利用したエッジ補間の方法であり、前記補間処理手段は、想定された直線を逆にX−Yパラメータ空間にパラメータ変換し、部位p11の各エッジ点を算出する。
【0089】
なお、前記交点(a1,b1)を算出するために、前記a−bパラメータ空間が複数のセルに分割される。そして、前記各直線がa−bパラメータ空間上で形成されるたびに、各セルのカウント値(投票値)がインクリメントされ、カウント値が閾値より大きいセルの座標が前記交点(a1,b1)として算出される。
【0090】
このようにして、前記補間処理手段は、部位p11の各エッジ点を算出し、エッジqx2を補間する。
【0091】
この場合、前記セルの大きさ、すなわち、セルサイズが小さくされると、カウント値が大きくなる速度が低くなり、カウント値が前記閾値より大きくなるまでの時間が長くなるが、エッジを構成する線を特定するのが容易になり、画像の修正の精度を高くすることができる。これに対して、セルサイズが大きくされると、カウント値が大きくなる速度が高くなり、カウント値が前記閾値より大きくなるまでの時間が短くなるが、エッジを構成する線を特定するのが困難になり、画像の修正の精度が低くなる。
【0092】
そこで、本実施の形態においては、前記セルサイズの逆数に所定の係数を乗算した値が修正度ηにされる。したがって、前記修正度決定処理手段は、総擦れ推定パラメータYが大きいほど、セルサイズを小さくして修正の精度を高くし、総擦れ推定パラメータYが小さいほど、セルサイズを大きくして修正の精度を低くする。
【0093】
なお、他の実施の形態においては、セルサイズを変更することなく、閾値を変更することができる。この場合、閾値を小さくすると、a−bパラメータ空間上で形成される直線の数が少なくても、エッジ補間を行うことができるようになるので、エッジ補間を行うことができる可能性を高くすることができる。また、例えば、総擦れ推定パラメータYが小さく、画像の欠損が小さい場合に、閾値を大きくすると、a−bパラメータ空間上で形成される直線の数を多くすることができるようになるので、ノイズを拾うのを防止することができる。
【0094】
ところで、前記X−Yパラメータ空間においては、傾きa1及び切片b1は、いずれも、(−∞、+∞)の値をとってしまうので、X−Yパラメータ空間からρ−θパラメータ空間への変換が行われる。
【0095】
図11は本発明の実施の形態におけるρ−θパラメータ空間を示す図である。なお、図において、横軸にθ座標を、縦軸にρ座標を採ってある。
【0096】
この場合、X−Yパラメータ空間で直線Ln1(図9)の各点(例えば、点PA)で表されるものが、ρ−θパラメータ空間では曲線(例えば、曲線LA2)で表される。なお、各曲線の式は、
ρ=x・cosθ+y・sinθ
で表される。
【0097】
ところで、図7に示されるような、部位p11においては、x軸方向のエッジqx2及びy軸方向のエッジqy2において欠損しているので、マトリックスhx、hyを使用してx軸方向及びy軸方向においてエッジ検出処理を行うのが好ましい。
【0098】
これに対して、部位p12、p13においては、x軸方向だけのエッジqx1、qx2において欠損しているとともに、エッジqx1、qx2間を部位p12、p13が貫通している。したがって、仮に、x軸方向及びy軸方向においてエッジ検出処理を行うと、本来存在しないエッジを誤って無用に検出してしまうことがある。
【0099】
そこで、前記エッジ検出処理手段によるエッジ検出処理が開始される前に、前記画像修正処理手段のエッジ検出方向判定処理手段は、エッジ検出方向判定処理を行い、走行軌跡Rtを読み込み、走行軌跡Rtに基づいて、部位p11〜p13において欠損しているエッジqx1、qx2、qy1、qy2の方向を判定し、該方向をエッジ検出方向とする。
【0100】
そして、前記エッジ検出処理手段は、エッジ検出方向判定処理の判定結果に基づいてエッジ検出処理を行い、エッジ検出方向を読み込み、エッジ検出方向がx軸方向及びy軸方向である場合、x軸方向及びy軸方向においてエッジ検出処理を行い、エッジ検出方向がx軸方向である場合、x軸方向においてエッジ検出処理を行い、エッジ検出方向がy軸方向である場合、y軸方向においてエッジ検出処理を行う。
【0101】
また、前記補間処理手段は、x軸方向及びy軸方向においてエッジ検出処理が行われた場合、x軸方向及びy軸方向のエッジを補間し、x軸方向においてエッジ検出処理が行われた場合、x軸方向のエッジを補間し、y軸方向においてエッジ検出処理が行われた場合、y軸方向のエッジを補間する。
【0102】
このように、停止線q1が存在する場合に、車両の走行軌跡Rtが推測され、修正部位が算出され、該修正部位における画像を修正し、修正された画像の画像データと地物データとを照合するので、画像認識の精度を高くすることができる。したがって、停止線q1の認識精度を高くすることができる。
【0103】
その結果、交差点c1を検出したり、交差点c1までの距離を算出したりする精度を高くすることができる。
【0104】
また、本実施の形態においては、車両の走行軌跡Rtが推測され、走行軌跡Rtに基づいて欠損方向が判定され、判定結果に基づいて、欠損方向においてエッジ検出処理が行われ、補間処理が行われるので、補間を安定させて行うことができるだけでなく、画像修正処理に必要な処理時間を短くすることができる。
【0105】
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS1 マッチング処理が行われるのを待機する。
ステップS2 地物データを取得する。
ステップS3 対象地物が存在するかどうかを判断する。対象地物が存在する場合はステップS4に進み、存在しない場合はステップS1に戻る。
ステップS4 対象地物の周辺の道路形状情報を取得する。
ステップS5 車両の走行ラインを推測する。
ステップS6 対象地物の補間部位を算出する。
ステップS7 道路種別を取得し、擦れ推定パラメータJを算出する。
ステップS8 走行履歴データを読み出す。
ステップS9 リンク所要時間、平均車速等から擦れ推定パラメータSを算出する。
ステップS10 対象地物の工事履歴情報を取得し、擦れ推定パラメータKを算出する。
ステップS11 各擦れ推定パラメータJ、S、Kに基づいて修正度ηを決定する。
ステップS12 補間処理を行い、処理を終了する。
【0106】
本実施の形態においては、修正部位が算出され、該修正部位の画像の欠損を、擦れ推定パラメータJ、S、Kに基づいて決定された修正度ηによって修正し、修正された画像の画像データと地物データとを照合して地物を認識するようになっているが、他の実施の形態においては、修正部位算出処理手段によって修正部位が算出されると、CPU31の図示されない地物データ修正処理手段は、地物データ修正処理を行い、前記地物データにおける修正部位に対応する箇所を修正し、欠損させることができる。その場合、前記地物認識処理手段は、画像データと修正された地物データとを照合することによって地物を認識する。したがって、地物の認識精度を高くすることができる。
【0107】
また、更に他の実施の形態においては、修正部位算出処理手段によって修正部位が算出されると、前記地物認識処理手段は、画像データと地物データとを照合する際に、修正部位については照合の一致度を変更し、それ以外の部位については、照合の一致度を変更することなく照合する。この場合、一致度とは、画像データと地物データとが一致したとみなす程度を表し、総擦れ推定パラメータYが大きいほど一致度は低くなる。そこで、前記地物認識処理手段は、修正部位については照合の一致度を低くし、それ以外の部位については、照合の一致度を変更することなく照合する。したがって、地物の認識精度を高くすることができる。
【0108】
また、更に他の実施の形態においては、修正部位算出処理手段によって修正部位が算出されると、修正部位については画像データと地物データとの照合を行わないようにすることができる。したがって、地物の認識精度を高くすることができる。
【0109】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の実施の形態におけるナビゲーションシステムを示す図である。
【図2】本発明の実施の形態における画像修正処理手段の動作を示す第1のフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態における画像修正処理手段の動作を示す第2のフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態における交差点を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態における交差点における走行軌跡を推測する方法を示す第1の図である。
【図6】本発明の実施の形態における交差点における走行軌跡を推測する方法を示す第2の図である。
【図7】本発明の実施の形態におけるエッジ検出処理の第1の例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態におけるエッジ検出処理の第2の例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態におけるX−Yパラメータ空間を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態におけるa−bパラメータ空間を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態におけるρ−θパラメータ空間を示す図である。
【符号の説明】
【0111】
31 CPU
p1、p2 部位
q1 停止線
Rt 走行軌跡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像の修正の対象となる対象地物上を車両が走行する際の定常的な走行軌跡を推測する走行軌跡推測処理手段と、前記走行軌跡に基づいて、対象地物における画像の修正部位を算出する修正部位算出処理手段と、前記修正部位の画像の欠損を修正する補間処理手段とを有することを特徴とする画像修正装置。
【請求項2】
前記修正部位における画像の欠損の程度を表す擦れ推定パラメータを算出する擦れ推定パラメータ算出処理手段を有するとともに、前記補間処理手段は、前記擦れ推定パラメータに基づいて前記修正部位の画像の欠損を修正する請求項1に記載の画像修正装置。
【請求項3】
前記走行軌跡推測処理手段は、前記対象地物の周辺の道路についての道路形状情報に基づいて走行軌跡を推測する請求項1に記載の画像修正装置。
【請求項4】
前記擦れ推定パラメータ算出処理手段は、対象地物上の車両走行指数に基づいて擦れ推定パラメータを算出する請求項2に記載の画像修正装置。
【請求項5】
前記車両走行指数は、対象地物上の交通量である請求項4に記載の画像修正装置。
【請求項6】
前記車両走行指数は、対象地物上の車両の走行実態である請求項4に記載の画像修正装置。
【請求項7】
前記車両走行指数は、対象地物の工事履歴である請求項4に記載の画像修正装置。
【請求項8】
前記擦れ推定パラメータに基づいて補間処理の修正度を決定する修正度決定処理手段を有する請求項2に記載の画像修正装置。
【請求項9】
前記走行軌跡に基づいて、対象地物のエッジ検出方向を判定するエッジ検出方向判定処理手段を有するとともに、前記補間処理手段は、エッジ検出方向において前記修正部位の画像の欠損を修正する請求項1に記載の画像修正装置。
【請求項10】
画像の修正の対象となる対象地物上を車両が走行する際の定常的な走行軌跡を推測する走行軌跡推測処理手段と、前記走行軌跡に基づいて、対象地物における画像の修正部位を算出する修正部位算出処理手段と、前記修正部位に基づいて地物を認識する地物認識処理手段とを有することを特徴とする地物認識装置。
【請求項11】
地物データが記録された記録部と、地物を撮影する撮影装置と、画像の修正の対象となる対象地物上を車両が走行する際の定常的な走行軌跡を推測する走行軌跡推測処理手段と、前記走行軌跡に基づいて、対象地物における画像の修正部位を算出する修正部位算出処理手段と、前記地物データにおける修正部位に対応する箇所を修正する地物データ修正処理手段と、修正された地物データと画像データとを照合することによって地物を認識する地物認識処理手段とを有することを特徴とする地物認識装置。
【請求項12】
地物データが記録された記録部と、地物を撮影する撮影装置と、画像の修正の対象となる対象地物上を車両が走行する際の定常的な走行軌跡を推測する走行軌跡推測処理手段と、前記走行軌跡に基づいて、対象地物における画像の修正部位を算出する修正部位算出処理手段と、前記修正部位について一致度を変更し、地物データと画像データとを照合することによって地物を認識する地物認識処理手段とを有することを特徴とする地物認識装置。
【請求項13】
画像の修正の対象となる対象地物上を車両が走行する際の定常的な走行軌跡を推測し、該走行軌跡に基づいて、対象地物における画像の修正部位を算出し、該修正部位に基づいて地物を認識することを特徴とする地物認識方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−331058(P2006−331058A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−153425(P2005−153425)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】