説明

画像処理システム、画像処理装置、画像形成装置、画像読取装置、情報端末装置及び画像処理方法並びに該方法を実行するためのプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記録媒体

【課題】 本発明は、画像読取装置を有していなくてもキャリブレーションを実施でき、そしてキャリブレーションに使用したいテストチャートの間違いをなくし、かつサービスマンが故障を修理する場合等に故障の原因を簡単に確認することができ、更には早く故障を直すことができる。
【解決手段】 本発明の画像処理システムは、画像形成手段によって、所定のテストパターン画像を有するテストチャート上に付加情報を付加され、出力されたテストチャートからテストパターン画像及び付加情報を読取る読取手段と、テストパターン画像からテストチャートの画質情報を取得する画質情報取得手段と、付加情報及び画質情報に基づき、画像出力手段のキャリブレーションを実行するか否かを判断する判断手段とを、ネットワークで接続して構築した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像処理システム及び画像処理方法並びに該方法を実行するためのプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関し、詳細には画像処理システムにおいてネットワークを介して接続するプリンタ等の画像形成装置のキャリブレーションに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータや、これに組合せて用いられるプリンタなどの各種周辺機器が広く普及してきており、これに伴い、コンピュータ上で作成したワープロ文書やグラフィック画像を、簡易にハードコピー出力を行うことが可能となってきている。
【0003】
このような場合の構成の代表的なものとして図15に示すものが知られている。同図に示す画像処理システム1500は、ホストコンピュータ1501を用いてディスクトップパブリッシング(DTP)などのページレイアウト文書やワープロ、グラフィック文書などを作成し、レーザビームプリンタやインクジェットプリンタなどの画像形成装置1507によりプリント出力するシステムである。アプリケーション1502はホストコンピュータ1501上で動作し、代表的なものとしてMicrosoft社のWord(登録商標)のようなワープロソフトや、Adobe社のPageMaker(登録商標)のようなページレイアウトソフトが知られている。
【0004】
これらのソフトウェアで作成されたデジタル的な文書等はホストコンピュータ1501のオペレーティングシステム(図示せず)を介してプリンタドライバ1503に渡される。このようなデジタル文書は、通常、一つのページを構成する図形や文字などを表すコマンドデータの集合であり、これらのコマンドをプリンタドライバ1503に渡すことになる。このコマンドは、多くの場合、PDL(ページ記述言語)と呼ばれる言語体系によって記述されている。PDLの代表的なものとして、GDI(登録商標)やPS(ポストスクリプト(登録商標))などが知られている。プリンタドライバ1503は渡されたPDLコマンドをラスタイメージプロセッサ1504内のラスタライザ1505に渡す処理を行う。ラスタライザ1505は、PDLコマンドで表現されている文字、図形などを実際に画像形成装置1507で出力するための2次元のビットマップイメージに展開する。すなわち、ビットマップイメージは2次元平面を1次元のラスタ(ライン)のくり返しとして埋め尽くすような画像として構成されるものである。そして、このような展開された2次元のビットマップイメージは、画像メモリ1506に一時的に格納される。展開された画像データは画像形成装置1507へ送られる。画像形成装置1507は、周知の電子写真方式やインクジェット方式の画像形成ユニット1508を備えており、これらを用いて用紙上に可視画像を形成することによりプリント出力が行われる。なお、画像形成装置1507において、画像メモリ1506内の画像データは、画像形成ユニット1508を動作させるために必要な同期信号やクロック信号、あるいは特定の色成分信号の転送要求などと同期して転送される。
【0005】
以上説明したような従来例において、画像出力に利用される画像プリンタ等の画像形成装置では、出力を長期間に渡って行ううちに出力される画像の色味や濃度等が変化する場合があることが知られている。これはプリンタ等の画像出力特性の経時変化や機器間のばらつきの増大に起因するものである。例えば画像形成方式として電子写真方式を用いているプリンタの場合には、電子写真プロセスにおけるレーザ露光、感光体上の潜像形成、トナーによる現像、紙などの出力媒体へのトナー像の転写、熱による定着といった過程が、装置周囲の温度や湿度もしくは構成部品の経時変化などの影響を受けやすく、最終的に紙上に定着されるトナー量が変化することによって生じる。このような画像出力特性の変化は、電子写真方式に特有のものではなく、インクジェット方式、熱転写方式、感熱方式、その他種々の方式でも同様に発生することが知られている。
【0006】
以上のような不具合を解消するための画像処理システムが従来より知られている。例として、特許文献1等にあるキャリブレーションと呼ばれるものである。これは、プリンタによって図16に示すような所定のパッチからなるテストパターン1601を出力し、この出力されるパターンの濃度を測定し、これに基づいて図15の画像形成ユニット1508の出力特性を修正しようとするものである。この従来のキャリブレーションの処理を図17に示す動作フローに従って以下に説明する。
【0007】
図17において、キャリブレーションが指示されると、先ず図15のホストコンピュータ1501はラスタイメージプロセッサ1504に対し、図16のテストパターン1601を出力するためのコマンドを送る(ステップS201)。図15のラスタイメージプロセッサ1504は渡されたコマンドに基づいてプリンタで出力するためのビットマップデータを生成し、図15の画像形成装置1507へ転送する(ステップS202)。画像形成装置1507は与えられたビットマップデータに基づいて紙などの出力媒体上にプリント出力する(ステップS203)。ここで出力されるパターンは、図16に示すようなテストパターン1601として示すように画像形成装置1507で用いられる4色トナーに対応したシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)それぞれについて、トナーの付着面積率が0%から100%までの8段階で変化するそれぞれのパッチを有したテストパターンである。なお、図16中、8段階のそれぞれのパッチは0から7の番号を付して示され、また色ごとのパッチとしてCパッチ1602、Mパッチ1603、Yパッチ1604、Kパッチ1605でそれぞれ示されている。このように、出力されたテストパターン1601には、4色×8段階で合計32個のパッチが存在するが、この各々の濃度を画像の濃度を測定する計測器である反射濃度計を用いて測定する(ステップ204)。そして、測定された値(各パッチの濃度データ)は図15のホストコンピュータ1501へ送られる(ステップS205)。ホストコンピュータ1501は、測定値と、上記32個のパッチに対応して予め記憶されている基準値とを比較し(ステップS206)、この比較に基づいて、C,M,Y,K各色の画像データを補正するための補正テーブルの内容を更新し、これを図15のラスタイメージプロセッサ1504のテーブル変換部(図示せず)に登録することによりキャリブレーションを終了する(ステップS207)。なお、テーブル変換部は、図15のラスタイメージプロセッサ1504がビットマップイメージを生成する際の各色の画像データを補正する処理に用いられるテーブルである。例えば、図16のテストパターン1601におけるシアン3番目のパッチの濃度が基準値よりも低く測定された場合、キャリブレーションが行われた補正テーブルでは、シアンの3番目のパッチに対応する基準値と等しい濃度値が入力したときは、これを基準値よりも高い値に補正する内容とする。このようにすることによってプリンタの出力濃度特性を全ての濃度範囲で基準値に近付けることができ、その結果、出力濃度特性が安定した適切なプリント出力を維持することができる。
【0008】
以上の手順により、プリンタの適切な出力濃度特性を維持するためのキャリブレーションを行うことができるが、そのためには上述したようなプリンタによって出力されたパッチを測定するための濃度計が必要となる。
【0009】
しかし、このような目的で用いられる濃度計は、一般に比較的高価なものであり、プリンタ毎に用意することはコストの点から現実的でなく、また濃度安定化の目的だけでこのような濃度計を購入するユーザは少ない。仮に、ユーザが濃度計を使うことができる状況であっても、プリンタのパッチを測定するため個々のパッチを順に測定する操作を始めとして、種々の煩雑な操作を行わなければならず、そのための労力が多大なものとなるという問題を生じる。
【0010】
そこで、上記問題を解消するため、特許文献2のように、オフィス環境におけるネットワーク化の普及に伴い、画像処理システムの画像出力装置として、プリンタばかりでなく、複写装置を用いることを提案されている。すなわち、このような複写装置は、ネットワークシステムとは独立に、一般に知られる複写処理を行うことが可能であるとともに、ホスト装置等で処理された画像データに基づいてプリント出力することもできるよう構成されている。これは、複写装置の機能を有効に利用することにより、ネットワーク化されたシステムにおけるキャリブレーションを簡易に行うことを可能とするものである。また、特許文献2では、キャリブレーションを実施のため、プリンタ出力したテストチャートを複写装置で読み込むと同時にテストチャート上に印字したプリンタ識別記号も読み込み、テストチャートを出力したプリンタを識別する。
【特許文献1】特開2001−094809号公報
【特許文献2】特開2000−253252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献2によれば、テストチャートを出力した出力日時が分からないため、キャリブレーションに使用したいテストチャートを間違う可能性がある。また、ユーザがテストチャートを出力してすぐにキャリブレーションを実施するとは限らず、キャリブレーションを実施するためのテストチャート読込みをした時とでは、時間差が生じる可能性があり、故障の原因を判断しにくくなる。更に、従来例では現在のテストチャートの画質劣化状態が悪く、故障の可能性がある場合でも、キャリブレーションを実施することになるが、故障の場合キャリブレーションを実施したとしても画質劣化状態が改善されることはなく、ユーザに故障を知らせることやサービスマンを呼ぶことを必要となる。
【0012】
本発明はこの問題点を解決するためのものであり、画像読取装置を有していなくてもキャリブレーションを実施でき、そしてキャリブレーションに使用したいテストチャートの間違いをなくし、かつサービスマンが故障を修理する場合等に故障の原因を簡単に確認することができ、更には早く故障を直すことができる、画像処理システム、画像処理装置、画像形成装置、画像読取装置、情報端末装置及び画像処理方法並びに該方法を実行するためのプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記問題点を解決するために、本発明の画像処理システムは、出力画像の画質変動を補正するためのキャリブレーション機能を有する。さらに、本発明の画像処理システムは、画像形成手段によって、所定のテストパターン画像を有するテストチャート上に付加情報を付加され、出力されたテストチャートからテストパターン画像及び付加情報を読取る読取手段と、テストパターン画像からテストチャートの画質情報を取得する画質情報取得手段と、付加情報及び画質情報に基づき、画像出力手段のキャリブレーションを実行するか否かを判断する判断手段とを、ネットワークで接続して構築したことに特徴がある。よって、画像読取装置を有していなくてもキャリブレーションを実施でき、付加情報及び画質情報によりキャリブレーションに使用したいテストチャートの間違いをなくことができる画像処理システムを構築できる。
【0014】
また、画質情報は、粒状度、鮮鋭性、階調性のうち少なくとも1つ以上であり、あるいは、粒状度、鮮鋭性、階調性のうちいずれか1つであることが好ましい。
【0015】
更に、付加情報は前回のメンテナンス時からの使用枚数や前回のメンテナンス時からの稼動時間であることにより、出力時の状態等を正確に知ることができるため、より確実なキャリブレーションの実施・不実施の判断やサービスマンによる正確な故障診断を行うことができる。また、付加情報は画像出力手段がテストチャートを出力した日時情報であることにより、間違ったテストチャートの使用を低減できる。更に、付加情報はテストチャートを出力した画像形成手段を特定する識別番号であることにより、テストチャートを出力した画像形成手段を確実に特定することができる。
【0016】
また、画質情報が粒状度、鮮鋭性、階調性のうちいずれか1つであるとき、判断手段は、画質情報の値が基準値より悪く、付加情報の値が所定の下限値よりも少ない場合にはキャリブレーションを実行しないと判断することにより、正確にキャリブレーションを実施するか否かの判断を行うことができる。
【0017】
更に、画質情報が粒状度、鮮鋭性、階調性のうち少なくとも2つ以上であるとき、判断手段は画質情報の全ての値が基準値より悪く、付加情報の値が所定の下限値よりも少ない場合にはキャリブレーションを実行しないと判断することにより、正確にキャリブレーションを実施するか否かの判断を行うことができる。
【0018】
また、画質情報は粒状度、鮮鋭性、階調性のうち少なくとも2つ以上であるとき、判断手段は画質情報のうち1つでも値が基準値より悪く、付加情報の値が所定の下限値よりも少ない場合にはキャリブレーションを実行しないと判断することにより、正確にキャリブレーションを実施するか否かの判断を行うことができる。
【0019】
更に、画質情報は粒状度、鮮鋭性、階調性のうちのいずれか1つであるとき、判断手段は画質情報の値が基準値より悪く、付加情報の値が所定の上限値よりも多い場合にはキャリブレーションを実行しないと判断することにより、正確にキャリブレーションを実施するか否かの判断を行うことができると共に画像形成手段の交換要と簡単に判断できる。
【0020】
また、画質情報は粒状度、鮮鋭性、階調性のうち少なくとも2つ以上であるとき、判断手段は画質情報の全ての値が基準値より悪く、付加情報の値が所定の上限値よりも多い場合にはキャリブレーションを実行しないと判断することにより、正確にキャリブレーションを実施するか否かの判断を行うことができると共に画像形成手段の交換要と簡単に判断できる。
【0021】
更に、画質情報は粒状度、鮮鋭性、階調性のうち少なくとも2つ以上であるとき、判断手段は画質情報のうち1つでも値が基準値より悪く、付加情報の値が所定の上限値よりも多い場合にはキャリブレーションを実行しないと判断することにより、正確にキャリブレーションを実施するか否かの判断を行うことができると共に画像形成手段の交換要と簡単に判断できる。
【0022】
また、本発明の画像処理システムは、過去に出力したテストチャートの画質に関わる情報を履歴情報として格納する状態メモリと、画像形成手段によって、所定のテストパターン画像を有するテストチャート上に付加情報を付加され、出力されたテストチャートからテストパターン画像及び付加情報を読取る読取手段と、テストパターン画像からテストチャートの画質情報を取得する画質情報取得手段と、履歴情報、付加情報及び画質情報に基づき、画像出力手段のキャリブレーションを実行するか否かを判断する判断手段とを、ネットワークで接続して構築したことを特徴がある。よって、画質に関わる履歴情報を基にキャリブレーションを実施するか否かの判断を行うため、キャリブレーションの精度を高くすることができる。
【0023】
更に、履歴情報は、粒状度、鮮鋭性、階調性の少なくとも1つ以上の過去の画質情報と当該画質情報を計測した日時情報であることにより、正確にキャリブレーションを実施するか否かの判断を行うことができる。
【0024】
また、判断手段は、読取手段によって読み取った付加情報の日時情報及び画質情報取得手段により取得した画質情報と、状態メモリから読み出した履歴情報の日時情報及び画質情報とから、1日あたりの画質の変化量を求め、この変化量が所定値より大きいときはキャリブレーションを実行しないと判断する。よって、1日あたりの画質の悪さの変化度を検証でき、この変化度によりキャリブレーションを実施するか否かの判断を行うため、キャリブレーションの精度を高くすることができる。
【0025】
更に、判断手段は、読取手段によって読み取った付加情報の日時情報及び画質情報取得手段により取得した画質情報のうち、粒状度、鮮鋭性、階調性のいずれか1つと、状態メモリから読み出した履歴情報の日時情報及び画質情報のうち、粒状度、鮮鋭性、階調性の中から画質情報取得手段により取得した画質情報と対応する1つとから、画質情報取得手段により取得した画質情報の変化量を求め、この変化量が所定値より大きいときはキャリブレーションを実行しないと判断する。よって、より正確にキャリブレーションを実施するか否かの判断を行うことができる。
【0026】
また、判断手段は、読取手段によって読み取った付加情報の日時情報及び画質情報取得手段により取得した画質情報のうち、粒状度、鮮鋭性、階調性のうち少なくとも2つ以上と、状態メモリから読み出した履歴情報の日時情報及び画質情報のうち、粒状度、鮮鋭性、階調性の中から画質情報取得手段により取得した画質情報と対応する少なくとも2つ以上とから、画質情報取得手段により取得した画質情報の複数の変化量を求め、複数の当該変化量のうち、いずれか1つでも所定値より大きいときはキャリブレーションを実行しないと判断する。よって、より正確にキャリブレーションを実施するか否かの判断を行うことができる。
【0027】
更に、判断手段がキャリブレーションを実行しないと判断したときに、故障の可能性があることを報知する故障報知手段を有することにより、サービスマンが故障を修理する場合等に故障の原因を簡単に確認することができ、更には早く故障を直すことができる。なお、故障報知手段は、表示パネルに故障を示す表示を行うことで故障の可能性があることを視認できる。
【0028】
また、故障報知手段は、機器を管轄する中央管理装置に通信回線を介して故障の可能があることを報知することにより、ユーザが故障によるサービスマン要請を行う煩雑さが省け、ユーザ支援の向上となる。
【0029】
更に、別の発明としての画像処理装置は、出力画像の画質変動を補正するためのキャリブレーション機能を有する画像形成手段の画像処理を行う。更に、本発明の画像処理装置は、画像形成手段によって、所定のテストパターン画像を有するテストチャート上に付加情報を付加され、出力されたテストチャートからテストパターン画像及び付加情報を読取る読取手段と、テストパターン画像からテストチャートの画質情報を取得する画質情報取得手段と、付加情報及び画質情報に基づき、画像出力手段のキャリブレーションを実行するか否かを判断する判断手段とを有することに特徴がある。よって、キャリブレーションに使用したいテストチャートの間違いをなくし、かつサービスマンが故障を修理する場合等に故障の原因を簡単に確認することができ、更には早く故障を直すことができる画像処理装置を提供できる。
【0030】
また、別の発明としての画像形成装置は、上記記載の画像形成手段として機能することに特徴がある。
【0031】
更に、別の発明としての画像読取装置は、上記記載の読取手段として機能することに特徴がある。また、本発明の画像読取装置は、上記記載の読取手段及び判断手段としての機能を有することに特徴がある。
【0032】
また、別の発明としての情報端末装置は、上記記載の判断手段として機能することに特徴がある。
【0033】
更に、別の発明としての、出力画像の画質変動を補正するためのキャリブレーション機能を有する画像形成手段の画像処理方法によれば、画像形成手段によって、所定のテストパターン画像を有するテストチャート上に付加情報を付加され、出力されたテストチャートからテストパターン画像及び付加情報を読取り、テストパターン画像からテストチャートの画質情報を取得し、付加情報及び画質情報に基づき、画像出力手段のキャリブレーションを実行するか否かを判断する。よって、画像読取装置を有していなくてもキャリブレーションを実施でき、付加情報及び画質情報によりキャリブレーションに使用したいテストチャートの間違いをなくことができ、精度良くキャリブレーションを実施することができる。
【0034】
また、別の発明として、画像形成手段によって、所定のテストパターン画像を有するテストチャート上に付加情報を付加され、出力されたテストチャートからテストパターン画像及び付加情報を読取る機能と、テストパターン画像からテストチャートの画質情報を取得する機能と、付加情報及び画質情報に基づき、画像出力手段のキャリブレーションを実行するか否かを判断する機能とを、コンピュータにより実行するためのプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に特徴がある。よって、既存のシステムを変えることなく、画像処理システムを汎用的に構築することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の画像処理システムによれば、画像読取装置を持たない画像形成装置であっても、精度良くキャリブレーションを実施できる。また、テストチャートを出力した出力装置を確実に特定することができ、出力日時等を付加情報とすることにより間違ったテストチャートの使用を低減することができる。更に、出力時の状態等を正確に知ることができるため、より確実なキャリブレーションの実施や故障診断を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
図1は本発明の一実施の形態例に係る画像処理システムの構成を示すブロック図である。同図に示すように、本実施の形態例の画像処理システム100は、ホストコンピュータ101、スキャナ102、複数台例えば2台のカラープリンタ103,104を含んで構成され、また各ユニットがネットワーク121を介してそれぞれ接続されている。ネットワーク121としては、いわゆるイーサネット(登録商標)と呼ばれるシステムが知られており、10BaseTなどの物理的なケーブルを用いてTCP/IPなどのプロトコルにより、接続される各ユニット相互の情報授受やデータの転送を行うことができる。また、ホストコンピュータ101は、表示部(図示せず)、キーボード及びマウス等の操作部(図示せず)を備え、アプリケーションやプリンタドライバのソフトウェアによって、画像出力のための処理が行われる。スキャナ102は、ネットワークインタフェース105、画像処理部106、スキャナ部107、画像メモリ108、制御部109、CPU110、メモリ111を有している。カラープリンタ103,104は、それぞれ、ネットワークインタフェース112,116、ラスタイメージプロセッサ113,117、状態メモリ114,118、画像形成ユニット115,119を有し、各構成要素は内部バス120を介して接続されている。そして、スキャナ102は、ホストコンピュータ101から転送される画像データに基づいて画像出力を行う。この際、ラスタイメージプロセッサ113,117は、PDL形式の画像データをビットマップデータに変換する。更に、スキャナ102は、ネットワーク121を介して接続するカラープリンタ103,104のキャリブレーションに関して、後述のように、ホスト装置的な役割も果すものである。また、スキャナ102内の画像メモリ108は、内部バス120を介して送られてくる画像データを記憶し、制御部109はシステム全体の動作を制御するものであり、これはCPU110がメモリ111に格納されているプログラムに従って制御部109に制御信号を送ることによって可能となる。なお、CPU110は、後述のように、本実施の形態例のキャリブレーションに関してシステム全体の制御をも行う。そして、この場合を含め、スキャナ102の各ユニットは、ネットワークインタフェース105を介してホストコンピュータ101やカラープリンタ103,104との間で情報や命令(コマンド)の交換及び画像データの転送などを行うことができる。
【0037】
また、カラープリンタ103,104は相互に同様の機能を有するものであり、それぞれネットワークインタフェース部114,118、ラスタイメージプロセッサ115,119、プリンタの状態を管理しかつラスタイメージプロセッサで実行される画像処理条件などを記憶する状態メモリ116,120、および電子写真方式による画像形成部ユニット117,121から構成されている。なお、それぞれのプリンタにおいて、その動作を制御するためのCPUや画像データなどを記憶するためのメモリなどの図示は省略されている。これらのプリンタ103,104は、後述される本実施形態のキャリブレーションでは、スキャナ102からの指令等に基づいて所定パターンの出力や補正テーブルの更新を行うことができるよう構成されたものである。
【0038】
なお、これらのラスタイメージプロセッサ113,117や状態メモリ114,118等は、ホストコンピュータ101において構成されてもよいことは勿論である。また、スキャナ等の画像出力方式は、上述の電子写真方式に限られないことは勿論であり、例えばインクジェット方式等、他の方式のものであってもよい。ホストコンピュータ101と、画像出力装置としての、スキャナ102やカラープリンタ103,104とは、それぞれに設けられたネットワークインタフェース105,112及び116を介したネットワーク121を通して情報、データの授受が行われる。
【0039】
ここで、図1のスキャナ102の構成について詳細に説明すると、スキャナ102はレーザビームを用いたデジタル方式のものであり、画像処理部106、画像メモリ108、制御部109を含んで構成され、これらは内部バス120を介して互いに接続されているとともに、ネットワークインタフェース105を介してネットワーク121と接続されている。画像処理部106には、原稿画像を所定密度の画素の単位で読み取りを行い、これによって得られた画像信号をデジタル信号として出力する。スキャナ部107及び画像処理部106によって処理した画像信号は、ネットワークインタフェース105を介してネットワーク121上へ送られる。また、通常原稿画像をスキャンする場合、スキャナ部107で読み取られた画像信号は画像処理部106へ送られ、画像処理部106でシェーディング補正、シャープネス補正、ガンマ補正、2値化などの周知の画像処理が施され、ネットワーク121を介してホストコンピュータ101へ送られる。
【0040】
図2は図1のスキャナの構成を示す概略断面図である。同図に示すスキャナ200において、原稿給送装置201は原稿を最終頁から順に1枚ずつプラテンガラス202上へ給送し、原稿の読み取り動作終了後、プラテンガラス202上の原稿を排出するものである。原稿がプラテンガラス202上に搬送されると、ランプ203を点灯し、このランプ203を搭載したスキャナユニット204の移動を行い、原稿を露光走査する。この走査による原稿からの反射光は、ミラー205,206,207及びレンズ208によってCCDカラーイメージセンサ(以下CCDと称す)209へ導かれる。そして、CCD209に入射した反射光は、R,G,Bの3色に色分解されて各色毎の輝度信号として読み取られる。さらに、CCD209から出力される輝度信号はA−D変換によってデジタル信号の画像データとして図1の画像処理部106に入力し、シェーディング補正、階調補正、2値化などの周知の画像処理が施された後、図1のネットワーク121上へ転送される。
【0041】
図3は図1のカラープリンタの構成を示す概略断面図である。同図に示すカラープリンタ300において、レーザドライバ311は、レーザ発光部301を駆動するものであり、図1のホストコンピュータ101から送られた各色毎の画像データに応じたレーザ光をレーザ発光部301によって発光させる。このレーザ光は感光ドラム302に照射され、感光ドラム302にはレーザ光に応じた潜像が形成される。そして、この感光ドラム302の潜像の部分には現像器303によって現像剤であるトナーが付着される。なお、図3における現像器は、図示の簡略化のため、唯一つのみが示されるが、C,M,Y,Kの各色毎にトナーが用意され、それに応じて4つの現像器が設けられることはもちろんである。また、以上の構成の代わりに感光ドラムや現像器等を各色毎に4組設ける構成であってもよい。上述のレーザ光の照射開始と同期したタイミングで、カセット304またはカセット305から選択されたいずれかから記録紙が給紙され、転写部306へ搬送される。これにより、感光ドラム302に付着した現像剤を記録紙に転写することができる。現像剤が転写された記録紙は、定着部307に搬送され、定着部307の熱と圧力により現像剤の記録紙への定着が行われる。そして、定着部307を通過した記録紙は排出ローラ308によって排出される。また、両面記録が設定されている場合は、排出ローラ308のところまで記録紙を搬送した後、排出ローラ308の回転方向を逆転させ、フラッパ309によって再給紙搬送路310へ導く。多重記録が設定されている場合は、記録紙を排出ローラ308まで搬送しないようにフラッパ309によって再給紙搬送路310へ導く。再給紙搬送路310へ導かれた記録紙は上述したタイミングで転写部306へ給紙される。なお、色毎の潜像および現像の処理や定着は、上述の記録紙搬送機構を用いて、潜像形成等を4回分繰り返すことによって実現することは周知の通りである。
【0042】
次に、上述した本実施の形態例の画像処理システムにおけるカラープリンタに関して行うことができるキャリブレーションの処理もしくは操作の手順について、図1及び当該手順フローを示す図4を参照して説明する。
【0043】
先ず、図1のスキャナ102のCPU110が、メモリ111に格納されたプログラムに基づいて実行する。図1のカラープリンタ103をキャリブレーションしたい場合、カラープリンタ103とスキャナ102の電源が投入されると、本処理手順が起動され、先ずカラープリンタ103の所定の操作パネルにキャリブレーション実行を指示するための所定の表示、例えば図5のような表示を行う。図5に示すように、表示ボタンは「テストチャート出力」を選択できる。操作パネルを介し、ユーザによりキャリブレーションの実行が指示されると、テストチャート出力が開始される(ステップS101)。なお、本実施の形態例では、カラープリンタ103の識別記号を「No.1」、カラープリンタ104の識別記号を「No.2」としてそれが予め状態メモリ114,118に書き込まれているものとし、図1のスキャナ102のメモリ111はカラープリンタと識別記号の対応した情報が記憶してある。なお、プリンタ識別記号としては、ネットワークにおけるプリンタのIPアドレスを用いてもよいし、それらを1次元又は2次元のバーコードとして書き込むことも可能である。また、図1の各々のカラープリンタ103,104の状態メモリ114,118には、図6に示すテーブルのようにテストチャートの出力日時毎に出力時の状態等を登録する。また、図1のスキャナ102によってこのテストチャートの読み取りを行い(ステップS102)、画質に係わる情報、例えば粒状度や鮮鋭性、階調性等を測定した後(ステップS103)、ネットワークを介してカラープリンタ103,104の状態メモリ114,118に履歴情報として画質に係わる情報を記憶する(ステップS104)。ここで、測定する画質に係わる情報は、粒状度や鮮鋭性、階調性のうちいずれか1つ以上の情報を用いることとする。なお、出力日時毎に出力時の状態等や画質に係わる情報の履歴情報を記憶するとしたが、もちろんテストチャートを出力した際出力したテストチャート毎にID番号がつけられ、ID番号毎に出力日時や出力時の状態等、画質に係わる情報の履歴情報を状態メモリに登録するようにしてもよい。
【0044】
ここで、本実施の形態例で出力されるテストパターンの一例を図7に示す。テストパターンが印刷される用紙の一部、例えば下部には、付加情報として、いずれのカラープリンタから出力したパターンであるかを識別するためのプリンタ識別番号701と、いつ出力したかが分かる出力日時702が印字される。その他、出力時の状態(湿度や温度等)、前回のトナーの交換や、サービスマンによる保守作業などのメンテナンス作業を行った時からの使用情報(使用枚数や稼動時間等)が印字される。この付加情報は、それぞれのプリンタの状態メモリに書き込まれている識別情報と出力日時に基づいてラスタイメージプロセッサがそのビットマップデータを生成することにより階調パターンとともに紙面上に出力することが可能となる。
【0045】
そして、図4においてテストパターンの印刷が行われると、ユーザはそれが印刷されたテストパターン原稿をプリンタから取出し、図1のスキャナ102のプラテンガラス上に指定された向きで載置し、スキャナ102の操作パネルを操作し、図8に示すキャリブレーション操作画面を表示する。ユーザは、操作画面上の「キャリブレーション実施」を指示するボタンを押してキャリブレーション開始を指示することができる。テストチャートの読み込みが指示されたことを判別すると、図1の制御部109を介して読み込み等を実行する。先ず、プラテンガラス上に置かれたテストパターン全体の画像データの読み込み動作をカラースキャナ部に指示する。カラースキャナ部は前述したように読み取り動作を行い、読み取った画像データを図1の画像メモリ108へ送る。読み取った画像データを基に画質に係わる情報(粒状度や鮮鋭性、階調性等)を測定し、プリンタの識別情報より、対応するプリンタの状態メモリから画質に係わる履歴情報を取得する。測定した結果と取得した結果を基にキャリブレーションを実施するか否かの判定を行う(ステップS105)。例えば、画質に係わる情報として、粒状度を履歴情報として記憶しているとする。その場合、テストパターンの読み込み動作によって、読み取った画像データより、粒状度測定(測定方法は下記に記述)を行う。なお、粒状度測定方法は後述するものとする。また、粒状度は高いと画質が悪く、低いと画質が良い。その測定結果と履歴情報に記憶されている粒状度データを比較する。まず、付加情報であるプリンタの識別情報と出力日時を基に、テストチャートを出力したプリンタを特定し、特定したプリンタの状態メモリより、テストチャート上に記載されていた出力日時よりも前に出力したテストパターンの粒状度結果を取得する。
【0046】
具体的な例に沿って説明すると、1日あたりの粒状度の変化を見ることによって、キャリブレーション実施するか否かを判定する。0.04<粒状度差/1日間の場合、粒状度劣化が大きいとみなし、故障した可能性があると判定され、すなわちキャリブレーション実施をしないと判定されとする(ステップS105;NO)。一方、テストチャートを2004年6月1日に出力したとする。粒状度を測定(粒状度=0.1)し、履歴情報には以前の情報はないため、キャリブレーションを実施すると判定され(ステップS105;YES)、2004年6月1日の履歴情報に粒状度値0.1が記憶される。次に、テストチャートを2004年6月5日に出力したとする。粒状度を測定(粒状度=0.15)し、以前の履歴情報を取得(2004年6月1日、粒状度0.1)し、粒状度差/1日間を計算する。0.0125=粒状度差0.05(0.15−0.1)/4日間(5日−1日)となり、0.04以下となるため、キャリブレーションを実施すると判定され(ステップS105;YES)、2004年6月5日の履歴情報に粒状度値0.15が記憶される。
【0047】
また、テストチャートを2004年6月15日に出力したとする。粒状度を測定(粒状度=0.6)し、以前の履歴情報を取得(2004年6月5日、粒状度0.15)し、粒状度差/1日間を計算する。すると、0.045=粒状度差0.45(0.6−0.15)/10日間(15日−5日)となり、0.04より大きくなるため、故障した可能性があると判定され、すなわちキャリブレーション実施をしないと判定される(ステップS105;NO)。キャリブレーションを実施しないと判定された場合は、例えば図8のスキャナの保守作業を点滅させ、ユーザに故障の知らせを出す(ステップS108)。
【0048】
以上のような方法だけに限られるわけではなく、他の例としては、上記条件(例えば、0.04<粒状度差/1日間)かつテストチャートを出力した時の粒状度が0.6以上になった場合、故障した可能性があると判定するようにしてもよい。
【0049】
このようなキャリブレーションを実施するか否かの判定を行い、キャリブレーションを実施すると判定された場合、図1のCPU110は、以下で詳述されるように、図1の画像メモリ108に一旦蓄積された画像データを解析して各パッチの濃度値を求める。なお、階調性測定には濃度値を用いるため、キャリブレーション実施するか否かの判定に階調性の測定結果を用いる場合、すでに測定されている濃度値を使用することもできる。得られた濃度値をもとに補正テーブルを作成し(ステップS106)、指定されているプリンタの状態メモリにネットワークを経由して登録する(ステップS107)。例えば、テストパターンに印字されたプリンタ識別記号が「No.1」であり、カラープリンタ103の状態メモリ114の補正テーブルが更新され、上記で測定された粒状度結果も状態メモリ114の履歴情報として記憶される。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態例によれば、キャリブレーションを行う場合、ユーザは、プリンタからパターン原稿を取出す以外、スキャナにおいて全ての操作を行うことができ、またスキャナの操作部に順次表示される画面に応じた指定操作のみを行えば良く、複数のプリンタを接続した画像処理システムにおけるプリンタのキャリブレーションを簡便に行うことができる。また、付加情報に出力日時を記載することで、間違ったテストチャートを使用する可能性を低減することができる。さらに、画質に係わる履歴情報を基にキャリブレーションを実施するか否かの判定を行う、すなわち故障判定をすることができ、キャリブレーションの精度を高くすることができる。更に、スキャナ自身が図4に示したようなキャリブレーションに関する処理を行うため、ホストコンピュータの処理負荷を軽くすることも可能となる。
【0051】
なお、図1のスキャナ102で構成された補正テーブルは、該当するプリンタに送られて登録されるものとしたが、システムの構成によっては、補正テーブルを図1のホストコンピュータ101にも登録できるようにしてもよいことは勿論である。キャリブレーションを実施しないと判定された場合、上述したように図8のスキャナの保守作業を点滅させてユーザに故障の知らせを出し、ユーザは故障によるサービスマン要請を電話等により行うことになるが、ユーザ自身がサービスマン要請する必要がなくなる形態であってもよい。例えば、図1のスキャナ102がデータ通信装置及び通信回線を介して自機を管轄する中央管理装置に接続される通信機構を構築し、そして地区別のサービスセンタにそれぞれ設置されている中央管理装置にそれぞれ、通信回線を介して各サービス拠点に設置された端末装置が接続されれば、キャリブレーションを実施しないという情報を中央管理装置へ送信し、その中央管理装置から画像出力装置を管轄するサービス拠点に設置されている端末装置へ情報が送信されることによって、ユーザ自身がサービスマンの要請する必要がなくなり、ユーザ支援の向上となる。なお、通信回線としては、電話回線等の公衆回線網を利用することができる。
【0052】
また、テストチャート上に出力時の出力状態(湿度、温度)や前回のメンテナンス作業時期からの使用情報等が印字されているため、サービスマンは簡単にその情報を見ることができ、またその印字情報より故障原因を特定することも可能とする。
【0053】
ここで、粒状度、鮮鋭度、階調性の測定法について簡単に説明する。
粒状度の測定法としては、例えば被評価用画像の2次元の位置情報、及びRGB信号情報をスキャナ等から読み取り、被評価用画像の空間周波数成分を求め、人間の視覚周波数特性を乗じて周波数領域で積分を行い、さらに得た値に画像の平均明度または濃度に対する補正を行い、これによって得た値を粒状度とする方法などがある。粒状度はざらつきを評価する値であり、値が小さい程、画質が良いことになる。
【0054】
また、鮮鋭度の測定法としては、例えばスキャナ等のから空間周波数の異なるラダーパターンを読み取り、一般にMTFと呼ばれる空間周波数特性を人間の視覚周波数特性で補正した値を鮮鋭度とする方法などがある。鮮鋭度はシャープさを評価する値であり、値が大きい程、はっきりとした線であることになる。
【0055】
更に、階調特性の測定法としては、例えば隣接する階調レベルで出力した画像に対して知覚される明度差または濃度差などを測定する方法がある。また、一般に入出力の階調が離散性をもつプリンタやデジタル画像処理系における、入力レベルに対する出力レベルの相対的な数値関係や入出力曲線(γ曲線)を階調特性と言う場合もある。階調性の評価値が小さい程、階調再現性が優れていることになる。
【0056】
なお、鮮鋭度、粒状度、及び階調特性の測定方法、及び導出方法は上記に挙げた例の他にも種々の方法が提案されているがそれらを用いても良く、また鮮鋭度、粒状度、及び階調特性を得るための測定物理量として、上記に挙げた例の他にも濃度を用いるか明度を用いるか等により種々の方法が提案されており、それらを用いても良い。さらに、上記に挙げた例の他にも空間周波数成分の導出方法や人間の視覚特性による補正の仕方や画像の平均特性に対する補正の仕方は種々の方法が提案されており、それらを用いても良い。
【0057】
次に、上述した補正テーブルの作成の詳細について以下に説明する。
図1のスキャナ102のカラースキャナ部で出力用紙全面から読み取られた画像データは、図9に示すように、色分解によりR,G,Bそれぞれの色毎のビットマップイメージとなっており、これが図1の画像メモリ108に登録されることになる。図9の(a),(b)及び(c)はこれらのビットマップデータを模式的に示す図であり、同図の(a)がRプレーン901、同図の(b)がGプレーン902、同図の(c)がBプレーン903をそれぞれ示している。これらの図中、白い部分ほど読み取られた信号値が大きい、すなわち、明るい(濃度が低い)領域を表しており、黒い部分ほど信号値が小さい、すなわち、濃度が高い領域を表している。これらの図から明らかなように、Rプレーン901は、シアンとブラックのパッチの高濃度部を高濃度領域として読み取ることを示し、また、Gプレーン902はマゼンタとブラック、Bプレーン903ではイエローとブラック、をそれぞれの濃度をそのまま読み取ることを示している。従ってシアンのパッチの濃度を測定するためには、Rプレーン901のデータを、またマゼンタパッチの濃度はGプレーン902のデータを、イエローパッチの濃度はBプレーン903のデータを用いればよいことがわかる。ブラックのパッチ濃度はR,G,Bいずれのプレーンを用いてもよいが、本実施の形態例では、Gプレーンのデータを用いることにする。
【0058】
図10はRプレーンの読み取り画像データを示し、図9に示すRプレーン901と同じものである。なお、図10では各パッチの位置を示す矩形のみが示されており、パッチの明るさは省略している。以下では、図10を参照して、まずシアンパッチを例にとりその濃度の測定について説明する。画像データは、図示したように、x,yの2次元座標上にマトリックス状に配列した画素値の集まりであり、各パッチの位置や大きさはx,yの座標値で指定することができる。なお、このx,y座標は、パターン印刷の際にプリンタに送られた階調パターン出力コマンドで決定されるので、その座標値をパターン出力コマンドと対応付けてあらかじめ記憶しておき、記憶された座標値をここで読み出すようにしておけばよい。
【0059】
先ず、シアンの上段のパッチ列から左端の最も低濃度のパッチ(階調番号0番)の位置座標に基づいて画像切り出し領域1000(斜線で示した矩形の内部)を決定し、矩形内部の画像データS(x,y)を読み込む。データS(x,y)は、通常8ビット程度のデジタル信号として表現されているので、ここでは、0〜255の整数値であるとして説明する。データS(x,y)は、画像切り出し領域1000内の画像データの集まりであり、その総数は画像切り出し領域1000の矩形領域内部に含まれる画素の数で定まる。矩形領域のx方向の画素数をNx画素、y方向の画素数をNy画素とするとデータS(x,y)の総数は、Nx×Ny画素となる。次に、画像切り出し領域1000内の画素値の平均値Smを求める。これは下記の式(1)で求められる。
【0060】
Sm=(ΣS(x,y))/(Nx×Ny) ・・・(1)
【0061】
ここで、Σは画像切り出し領域1000の矩形領域内のデータの総和を表す。得られた平均値Smをシアンの上段のパッチ列の階調番号0番のパッチの画素データの平均値ということでSc0Aと表すことにする。
【0062】
次に、シアンの2番目のパッチに移動する。上記と同様、パッチ位置座標情報に基づき画像切り出し領域1001を求め、同様の手順で画素データの平均値Sc1Aを求める。以下同様に画像切り出し領域1002,1003,・・・,1007と順次進めていき平均値データSc2A,Sc3A,・・・,Sc7Aを求める。
【0063】
以上の処理を終了すると、シアンの下段のパッチへ移動し、今度は逆に右端のパッチから画像切り出し領域1010を求め画素データの平均値を求める。下段では最右端が階調番号0番に対応するので、これをSc0Bと表わすことにする。下段についても同様に、画像切り出し領域1011,1012,・・・,1017の各領域について平均値を求め、これをSc1,Sc2B,・・・,Sc7Bとする。ここで、画像切り出し領域1000と画像切り出し領域1010,画像切り出し領域1001と画像切り出し領域1011,・・・,画像切り出し領域1007と画像切り出し領域1017はそれぞれ同じ階調レベルを再現したパッチであるので、本来、プリンタの出力位置による濃度変動や、スキャナ部のやはり読み取り位置による読み取り値変動がなければ、得られる平均値データは等しくなるはずである。すなわち、Sc0A=Sc0B、Sc1A=Sc1B、・・・、Sc7A=Sc7Bとなるはずであるが、実際は様々な変動要因により、必ずしも等しくなるとは限らない。そこで、本実施の形態例では、Sc0A=Sc0B、Sc1A=Sc1B、・・・、Sc7A=Sc7Bが必ずしも成り立たない状況で、両者の平均値が真のパッチ読み取り値であるとして処理するという構成としている。すなわち、Sc0,Sc1,・・・,Sc7を真のパッチデータであるとして、Sc0=(Sc0A+Sc0B)/2、Sc1=(Sc1A+Sc1B)/2、・・・、Sc7=(Sc7A+Sc7B)/2と表わす。以上により、各パッチの平均画像信号が求められると、次に、これらを濃度値に換算する。スキャナのスキャナ部で読み取られる画像データは、通常、原稿の反射率に比例したいわゆる輝度信号であり、これを濃度値に換算するには適当な対数変換処理が施される。濃度値Dをやはり8ビットの整数値として表現するための換算式の一例として下記の式(2)のような式を用いる。
【0064】
D=−255×log10(S/255)/2.0 ・・・(2)
【0065】
この式(2)は、輝度信号Sを原稿濃度が2.0のときにD=255となるように換算する式であり、Dが255以上になる場合は255に制限するようにする。
【0066】
この式(2)を用いて上記で得られたSc0,Sc1,・・・,Sc7を濃度値Dc0,Dc1,・・・,Dc7に変換する。すなわち、Dc0=−255×log10(Sc0/255)/2.0、Dc1=−255×log10(Sc1/255)/2.0、・・・、Dc7=−255×log10(Sc7/255)/2.0とする。他の色のパッチである、マゼンタ、イエロー、ブラックに対する濃度値についても同様な手順で求めることができる。こうして得られる濃度値をそれぞれDm0〜Dm7,Dy0〜Dy7,Dk0〜Dk7と表す。
【0067】
なお、以上説明した濃度値への換算は限られないことは勿論であり、他の換算式を用いてもよい。また、輝度信号値と濃度値との関係をあらかじめ計測して求めておき、これをルックアップテーブルとし、このテーブルを用いて濃度変換を行ってもよい。
【0068】
図11は、以上のようにして得られたシアンの各パッチの濃度値Dc0〜Dc7をパッチの階調番号に対応してプロットした特性図である。同図において、横軸は階調番号及びプリンタ入力信号値を表わし、縦軸は濃度値を表わす。図中、○印で示される点が各パッチの濃度測定値を示し、細線で示された直線1101はこれら測定値を結んだものである。ここで、0〜7の各階調番号で示される各パッチについて本来測定されるべき濃度値は、画像形成ユニットであるプリンタに入力する信号値に対応させると、8ビット信号が表わす0〜255の値を等間隔でサンプリングした8個の信号値に対応するものである。すなわち、通常のプリンタではC,M,Y,Kについて各8ビットの信号が入力し、この信号値に基づき周知のディザ処理や誤差拡散法などによる2値化処理、あるいは電子写真感光体を露光するレーザの発光時間の変調処理などを行い、紙上にドットを形成し、階調画像をプリント出力する。本実施の形態例では、0〜255の8ビット信号を等間隔に区切った信号値によって上述のパッチ0〜7を出力しているので、図11の横軸において、階調番号0=入力信号値0、階調番号1=入力信号値36、階調番号2=入力信号値73、階調番号3=入力信号値109、階調番号4=入力信号値146、階調番号5=入力信号値182、階調番号6=入力信号値219、階調番号7=入力信号値255の対応関係がある。図11において、太線で示される直線1102は本来プリンタにおいて入力信号値に対しパッチの測定濃度値がとるべき理想的な基準濃度特性の一例を示すものである。すなわち、プリンタは、入力信号値に比例した線形の出力濃度特性を持つことが望ましい。しかし、プリンタの入力信号値が持つ色空間とプリンタの出力色空間とは線形の対応関係にないのが一般的であり、このため、通常、ルックアップテーブルと補間演算を用いて入力信号値の補正を行っている。しかしながら、プリンタにおける経時変化や環境変動等の要因によって上述のルックアップテーブルが相対的に不適切なものとなることがあり、その結果、図11の細線で示された直線1101で示すような出力濃度特性となる。キャリブレーションは、このような出力濃度特性を太線で示された直線1102で示されるものにするためになされるものであり、具体的には、ルックアップテーブルの内容を変更することによって行う。
【0069】
本実施の形態例では、上述のルックアップテーブルは、プリンタにおけるラスタイメージプロセッサがPDLコマンドをラスタライズしC,M,Y,Kの各入力信号値であるビットマップイメージを生成する際に用いられるが、このルックアップテーブルに対し、上述の濃度測定値に基づいて得られる補正テーブルをスキャナにおいて作成しこれをプリンタに転送してルックアップテーブルの内容とする処理を行う。すなわち、ルックアップテーブルの内容としては、図11の細線で示された直線1101の逆特性を持つテーブルとすればよく、図1のスキャナ102のCPU110は上述の測定濃度値に基づいてこのような特性を持った変換テーブルをC,M,Y,Kそれぞれについて演算し、キャリブレーションの対象となっている図1のカラープリンタ103,104に転送し、その内容によって状態メモリ114,118に格納されているルックアップテーブルを更新する。
【0070】
図12はキャリブレーションによって更新されたルックアップテーブルの内容を模式的に示す図である。図中、直線1201はPDLコマンドをラスタライズしたデータが有する濃度値に対するビットマップデータが有する濃度値の関係を示し、この逆特性、すなわち、図11の細線で示された直線1101の、太線で示された直線1102に関して対称な曲線として示されるものとなっている。そして、通常のプリントでは、このような更新されたルックアップテーブルを用い、ラスタライズ後の信号値(ここではC信号)をビットマップデータに書き込むための信号値(C’信号)に変換する。
【0071】
図13は図1のラスタイメージプロセッサの詳細な構成を示すブロック図である。同図において、ネットワークインタフェースを介してホストコンピュータ又はスキャナから送られてきたPDLコマンドはラスタライザ1301でC,M,Y,Kのビットマップイメージに展開されて画像メモリ1303に蓄積されるが、この際、階調補正テーブル(上述のルックアップテーブル)1302で補正される。なお、上述の説明において図1のスキャナ102のCPU110によって作成された階調補正テーブルはネットワーク121を介して一旦図1のカラープリンタ103,104の状態メモリ114,118に蓄積されるが、PDLコマンドのラスタライズ処理を行う際に、この状態メモリ中の補正テーブルを読み出し、時間補正テーブル1302にセットすることになる。
【0072】
なお、上記の構成において、図1のカラープリンタ103,104の画像形成ユニット115,119が、例えばインクジェット方式のように、ドットのオン、オフの2値で画像を表現するようなものである場合は、C’信号は、前述したように、さらにディザ処理など周知の擬似中間調処理した後、図13の状態メモリ1303に書き込まれる。また、図13に示す例では、階調補正テーブル(ルックアップテーブル)1302は画像メモリ1303の前段に置かれているが、画像メモリ1303の後段に配置して画像形成ユニットへデータを送出すると同時に階調補正を行うという構成でもよいことは勿論である。更に、本実施の形態例においては、キャリブレーションを実施することができるスキャナを1つ持つことによって、他のプリンタ等(複写機)もそのスキャナによってキャリブレーションを実行することができる。さらに、テストチャートを出力する際、テストチャート上に出力したカラープリンタの識別記号の他に出力日時等を印字することにより、ユーザがテストチャートを間違うことをなくすことができ、ユーザ支援となる。また、以前測定した粒状度の状態を見ることによって、キャリブレーションを実施しても画質向上となる可能性が低く、故障の可能性のある場合を簡易に見つけることができる。すなわち、キャリブレーションと故障診断を同時に行うことを可能とし、ユーザ支援の向上となる。
【0073】
次に、上述したように、履歴情報として粒状度を用いることによって、キャリブレーションを実施するか否かを判定したが、履歴情報として粒状度と鮮鋭度、階調性の3つを用いることによって、キャリブレーションを実施するか否かを判定することもできる。処理は図1のCPU110で行われることとする。粒状度と鮮鋭度、階調性の各々1日あたりの変化率を算出し、各々にスレッシュを設け、キャリブレーション実施するか否かの判定をする。例えば、0.04<粒状度差/1日間もしくは−0.006>鮮鋭度差/1日間もしくは0.006<階調性差/1日間である場合、故障した可能性があると判定される。
【0074】
具体的な例に沿って説明する。まず、テストチャートを2004年6月1日に出力したとする。粒状度、鮮鋭度、階調性を測定(結果:粒状度=0.1、鮮鋭度=0.4、階調性=0.9)し、履歴情報には以前の情報はないため、キャリブレーションを実施すると判定され、2004年6月1日の履歴情報に粒状度0.1、鮮鋭度0.4、階調性0.9が記憶される。次に、テストチャートを2004年6月5日に出力したとする。粒状度を測定(結果:粒状度=0.15、鮮鋭度=0.4、階調性=0.91)し、以前の履歴情報を取得(2004年6月1日、粒状度0.1、鮮鋭度0.4、階調性0.9)し、粒状度差/1日間、鮮鋭度差/1日間、階調性差/1日間を計算する。0.0125=粒状度差0.05(0.15−0.1)/4日間(5日−1日)、0=鮮鋭度差0(0.4−0.4)/4日間(5日−1日)、0.0025=階調性差0.01(0.91−0.9)/4日間(5日−1日)となり、粒状度、鮮鋭度、階調性ともに0.04以下となるため、キャリブレーションを実施すると判定され、2004年6月5日の履歴情報に粒状度0.15、鮮鋭度0.4、階調性0.91が記憶される。また、更にテストチャートを2004年6月15日に出力したとする。粒状度を測定(結果:粒状度=0.5、鮮鋭度=0.35、階調性=0.98)し、以前の履歴情報を取得(2004年6月5日、粒状度0.15、鮮鋭度0.4、階調性0.91)し、粒状度差/1日間を計算する。0.035=粒状度差0.35(=0.5−0.15)/10日間(=15日−5日)、−0.005=鮮鋭度差−0.05(=0.35−0.4)/10日間(=15日−5日)、0.007=階調性差0.07(0.98−0.91)/10日間(15日−5日)となるため、故障した可能性があると判定され、すなわちキャリブレーション実施をしないと判定される。
【0075】
04>粒状度差/1日間(=0.035)、−0.006<鮮鋭度差/1日間(=−0.005)、0.006<階調性差/1日間(=0.007)であり、階調性について条件(0.04<粒状度差/1日間もしくは−0.006>鮮鋭度差/1日間もしくは0.006<階調性差/1日間)にあてはまるため、故障している可能性があると判定され、すなわちキャリブレーション実施をしないと判定される。
【0076】
他の例として、粒状度と鮮鋭度、階調性の3つを画質の悪さを評価するための式に代入することによって、判定してもよい。例えば、画質の悪さを評価するための式として、下記の式(3)のような式であるとする。左辺の値は、値0を理想的な画像の持つ画質の値であるとし、値が大きいほど画質が悪くなる。
【0077】
(画質の悪さ)=P1/(鮮鋭度)+P2×(粒状度×鮮鋭度×階調性)−P3 ・・・(3)
【0078】
測定した粒状度、鮮鋭度、階調性と、以前の履歴情報によって取得した粒状度、鮮鋭度、階調性を上記の式(3)に代入し、画質の悪さの値を各々求める。そして、各々1日あたりの画質の悪さの変化率を求め、キャリブレーションを実施するか否かを判定する。例えば、0.8<画質の悪さの差/1日間の場合、故障した可能性があると判定されるとする。
【0079】
なお、上記いずれの例においても、画質に係わる情報の1日あたりの変化率を算出することによって判定を行っていたが、もちろん時間あたりの変化率等によってもよい。また、上述したように、テストパターンデータとテストチャート上に印字した付加情報から画質に係わる履歴情報を取得し、その履歴情報に基づきキャリブレーションの実施か否かを判定したが、テストパターンデータと前回のメンテナンス作業時期からの使用枚数、稼働時間や出力時の状態(出力機の設置されている環境状態:温度、湿度)に基づきキャリブレーションの実施か否かを判定してもよい。例えば、テストパターンデータと前回の交換時期からの使用枚数に基づきキャリブレーションの実施か否かを判定する。例えば、テストパターンデータの測定値(粒状度)>0.5、かつ前回のメンテナンス作業時期からの使用枚数<500枚のとき、もしくは、前回のメンテナンス作業時期からの使用枚数>2000枚のとき、キャリブレーションを実施しないと判定する。これは、前回のメンテナンス作業時期からの使用枚数が少ない(例えば、前回のメンテナンス作業時期からの使用枚数<500枚)のに画質が悪い、すなわち故障の可能性があると判断できる。また、前回のメンテナンス作業時期からの使用枚数が多い(例えば、前回のメンテナンス作業時期からの使用枚数>2000枚)ため画質が悪い、すなわちメンテナンス作業の必要性があると判断できる。メンテナンス作業を行わずにキャリブレーションをしたとしても、キャリブレーションによる画質向上効果がそれほど望めないためである。
【0080】
そのため、テストパターンデータの測定値(粒状度)>0.5、かつ前回のメンテナンス作業時期からの使用枚数<500枚のとき、読取り装置上の表示画面に「故障」と表示することによって、ユーザに伝える。一方、テストパターンデータの測定値(粒状度)>0.5、かつ前回のメンテナンス作業時期からの使用枚数>2000枚のとき、読取り装置上の表示画面に例えば「メンテナンス作業時期である」と表示することによって、ユーザに伝える。他には、読取り装置上の操作画面上に、例えば「メンテナンス作業する」、「キャリブレーションを続ける」と選択ボタンを設け、ユーザが選択するようにしてもよい。
【0081】
具体的な例に沿って説明する。先ず、テストパターンデータを測定(例えば、粒状度=0.6)する。一方、読取り装置は付加情報に付加してある前回のメンテナンス作業時期からの使用枚数(例えば、1000枚)を読取る。次に、テストパターンデータの測定値(粒状度)>0.5、かつ前回のメンテナンス作業時期からの使用枚数<500枚のとき、もしくは、前回のメンテナンス作業時期からの使用枚数>2000枚であるかを見る。テストパターンデータの測定値(粒状度0.6)>0.5、前回のメンテナンス作業時期からの使用枚数(1000枚)<2000枚、または前回のメンテナンス作業時期からの使用枚数(1000枚)>500枚であるため、キャリブレーション実施と判定される。
【0082】
そして、テストパターンデータを測定(例えば、粒状度=0.6)する。一方、読取り装置は付加情報に付加してある前回のメンテナンス作業時期からの使用枚数(例えば、300枚)を読取る。次に、テストパターンデータの測定値(粒状度)>0.5、かつ前回のメンテナンス作業時期からの使用枚数<500枚のとき、もしくは、前回のメンテナンス作業時期からの使用枚数>2000枚であるかを見る。テストパターンデータの測定値(粒状度0.6)>0.5、前回のメンテナンス作業時期からの使用枚数(300枚)<2000枚、または前回のメンテナンス作業時期からの使用枚数(300枚)<500枚であるため、キャリブレーション実施しないと判定される。そして、テストパターンデータの測定値(粒状度0.6)>0.5かつ前回のメンテナンス作業時期からの使用枚数(300枚)<500枚であるため、これは、前回のメンテナンス作業時期からの使用枚数が少ないのに画質が悪いと判断でき、故障と判断する。そして、読取り装置上の表示画面に「故障」と表示することによって、ユーザに伝える。なお、前回のメンテナンス作業時期からの使用枚数、稼働時間や出力時の状態(出力機の設置されている環境状態:温度、湿度)等の付加情報を、プリンタの状態メモリに格納しておき、それを読み出して行うことも可能である。
【0083】
一方、他の例として、テストパターンデータの測定値と出力機の状態(出力機の設置されている環境状態:温度、湿度)に基づきキャリブレーションの実施か否かを判定してもよい。これは、出力機の設置されている場所の環境状態が悪く(例えば、温度が高すぎる、低すぎる等)、かつ画質が悪いときは出力機の設置されている場所の環境状態が悪いと判断でき、環境状態が悪いときにキャリブレーションをしたとしても、キャリブレーションによる画質向上がそれほど望めないと判断でき、キャリブレーション実施をしないとする。また、出力機の設置されている場所の環境状態が良く、かつ画質が悪いときは、故障していると判断でき、この場合もキャリブレーションによる画質向上がそれほど望めないと判断でき、キャリブレーション実施しないとする。
【0084】
次に、図14は本発明の画像処理方法を実行するプログラムを起動するための具体的な装置の構成を示すブロック図である。つまり、同図は上記実施の形態例における画像処理方法によるソフトウェアを実行するマイクロプロセッサ等から構築されるハードウェアを示すものである。同図において、画像処理システムはインターフェース(以下I/Fと略す)1401、CPU1402、ROM1403、RAM1404、表示装置1405、ハードディスク1406、キーボード1407及びCD−ROMドライブ1408を含んで構成されている。また、汎用の処理装置を用意し、CD−ROMなどの読取可能な記録媒体1409には、本発明の画像処理方法を実行するプログラムが記憶されている。更に、I/F1401を介して外部装置から制御信号が入力され、キーボード1407によって操作者による指令又は自動的に本発明のプログラムが起動される。そして、CPU1402は当該プログラムに従って上述の画像処理方法に伴う制御処理を施し、その処理結果をRAM1404やハードディスク1406等の記憶装置に格納し、必要により表示装置1405などに出力する。以上のように、本発明の画像処理方法を実行するプログラムが記録した記録媒体を用いることにより、既存のシステムを変えることなく、画像処理システムを汎用的に構築することができる。
【0085】
なお、本発明は上記実施の形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内の記載であれば多種の変形や置換可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の一実施の形態例に係る画像処理システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1のスキャナの構成を示す概略断面図である。
【図3】図1のカラープリンタの構成を示す概略断面図である。
【図4】本実施の形態例の画像処理システムにおけるキャリブレーションの処理を示すフローチャートである。
【図5】キャリブレーション実行の指示表示の一例を示す図である。
【図6】図1の状態メモリ内のメモリテーブルの一例を示す図である。
【図7】本実施の形態例で出力されるテストパターンの一例を示す図である。
【図8】キャリブレーション操作画面の一例を示す図である。
【図9】色分解による各色毎のビットマップイメージを示す図である。
【図10】Rプレーンの読み取り画像データを示す図である。
【図11】シアンの各パッチの濃度値をパッチの階調番号に対応してプロットした特性図である。
【図12】キャリブレーションによって更新されたルックアップテーブルの内容を模式的に示す図である。
【図13】図1のラスタイメージプロセッサの詳細な構成を示すブロック図である。
【図14】本発明の画像処理方法を実行するプログラムを起動するための具体的な装置の構成を示すブロック図である。
【図15】従来の画像処理システムの構成を示すブロック図である。
【図16】従来の所定のパッチからなるテストパターンの一例を示す図である。
【図17】従来のキャリブレーションの処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0087】
100;画像処理システム、101;ホストコンピュータ、
102;スキャナ、103,104;カラープリンタ、
105,112,116;ネットワークインタフェース、
106;画像処理部、107;スキャナ部、108;画像メモリ、
109;制御部、110;CPU、111;メモリ、
113,117;ラスタイメージプロセッサ、
114,118;状態メモリ、115,119;画像形成ユニット、
120内部バス、121;ネットワーク、
701;プリンタ識別番号、702;出力日時。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力画像の画質変動を補正するためのキャリブレーション機能を有する画像形成手段の画像処理システムにおいて、
前記画像形成手段によって、所定のテストパターン画像を有するテストチャート上に付加情報を付加され、出力された前記テストチャートからテストパターン画像及び前記付加情報を読取る読取手段と、
前記テストパターン画像から前記テストチャートの画質情報を取得する画質情報取得手段と、
前記付加情報及び前記画質情報に基づき、前記画像出力手段のキャリブレーションを実行するか否かを判断する判断手段と
を、ネットワークで接続して構築したことを特徴とする画像処理システム。
【請求項2】
前記画質情報は、粒状度、鮮鋭性、階調性のうち少なくとも1つ以上である請求項1記載の画像処理システム。
【請求項3】
前記画質情報は、粒状度、鮮鋭性、階調性のうちいずれか1つである請求項1記載の画像処理システム。
【請求項4】
前記付加情報は、前回のメンテナンス時からの使用枚数である請求項1記載の画像処理システム。
【請求項5】
前記付加情報は、前回のメンテナンス時からの稼動時間である請求項1記載の画像処理システム。
【請求項6】
前記付加情報は、前記画像形成手段が前記テストチャートを出力した日時情報である請求項1記載の画像処理システム。
【請求項7】
前記付加情報は、前記テストチャートを出力した前記画像形成手段を特定する識別番号である請求項1記載の画像処理システム。
【請求項8】
前記画質情報は、粒状度、鮮鋭性、階調性のうちいずれか1つであるとき、前記判断手段は、前記画質情報の値が基準値より悪く、前記付加情報の値が所定の下限値よりも少ない場合にはキャリブレーションを実行しないと判断する請求項1〜5のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項9】
前記画質情報は、粒状度、鮮鋭性、階調性のうち少なくとも2つ以上であるとき、前記判断手段は前記画質情報の全ての値が基準値より悪く、前記付加情報の値が所定の下限値よりも少ない場合にはキャリブレーションを実行しないと判断する請求項1、2、4、5のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項10】
前記画質情報は、粒状度、鮮鋭性、階調性のうち少なくとも2つ以上であるとき、前記判断手段は前記画質情報のうち1つでも値が基準値より悪く、前記付加情報の値が所定の下限値よりも少ない場合にはキャリブレーションを実行しないと判断する請求項1、2、4、5のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項11】
前記画質情報は、粒状度、鮮鋭性、階調性のうちのいずれか1つであるとき、前記判断手段は前記画質情報の値が基準値より悪く、前記付加情報の値が所定の上限値よりも多い場合にはキャリブレーションを実行しないと判断する請求項1〜5のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項12】
前記画質情報は、粒状度、鮮鋭性、階調性のうち少なくとも2つ以上であるとき、前記判断手段は前記画質情報の全ての値が基準値より悪く、前記付加情報の値が所定の上限値よりも多い場合にはキャリブレーションを実行しないと判断する請求項1、2、4、5のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項13】
前記画質情報は、粒状度、鮮鋭性、階調性のうち少なくとも2つ以上であるとき、前記判断手段は前記画質情報のうち1つでも値が基準値より悪く、前記付加情報の値が所定の上限値よりも多い場合にはキャリブレーションを実行しないと判断する請求項1、2、4、5のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項14】
出力画像の画質変動を補正するためのキャリブレーション機能を有する画像形成手段の画像処理システムにおいて、
過去に出力したテストチャートの画質に関わる情報を履歴情報として格納する状態メモリと、
前記画像形成手段によって、所定のテストパターン画像を有するテストチャート上に付加情報を付加され、出力された前記テストチャートからテストパターン画像及び前記付加情報を読取る読取手段と、
前記テストパターン画像から前記テストチャートの画質情報を取得する画質情報取得手段と、
前記履歴情報、前記付加情報及び前記画質情報に基づき、前記画像出力手段のキャリブレーションを実行するか否かを判断する判断手段と
を、ネットワークで接続して構築したことを特徴とする画像処理システム。
【請求項15】
前記履歴情報は、粒状度、鮮鋭性、階調性の少なくとも1つ以上の過去の画質情報と当該画質情報を計測した日時情報である請求項14記載の画像処理システム。
【請求項16】
前記付加情報は、前記画像出力手段が前記テストチャートを出力した日時情報である請求項14記載の画像処理システム。
【請求項17】
前記判断手段は、前記読取手段によって読み取った前記付加情報の前記日時情報及び前記画質情報取得手段により取得した前記画質情報と、前記状態メモリから読み出した前記履歴情報の前記日時情報及び前記画質情報とから、1日あたりの画質の変化量を求め、該変化量が所定値より大きいときはキャリブレーションを実行しないと判断する請求項14〜16のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項18】
前記判断手段は、前記読取手段によって読み取った前記付加情報の前記日時情報及び前記画質情報取得手段により取得した前記画質情報のうち、粒状度、鮮鋭性、階調性のいずれか1つと、前記状態メモリから読み出した前記履歴情報の前記日時情報及び前記画質情報のうち、粒状度、鮮鋭性、階調性の中から前記画質情報取得手段により取得した前記画質情報と対応する1つとから、前記画質情報取得手段により取得した前記画質情報の変化量を求め、該変化量が所定値より大きいときはキャリブレーションを実行しないと判断する請求項14〜16のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項19】
前記判断手段は、前記読取手段によって読み取った前記付加情報の前記日時情報及び前記画質情報取得手段により取得した前記画質情報のうち、粒状度、鮮鋭性、階調性のうち少なくとも2つ以上と、前記状態メモリから読み出した前記履歴情報の前記日時情報及び前記画質情報のうち、粒状度、鮮鋭性、階調性の中から前記画質情報取得手段により取得した前記画質情報と対応する少なくとも2つ以上とから、前記画質情報取得手段により取得した前記画質情報の複数の変化量を求め、複数の当該変化量のうち、いずれか1つでも所定値より大きいときはキャリブレーションを実行しないと判断する請求項14〜16のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項20】
前記判断手段がキャリブレーションを実行しないと判断したときに、故障の可能性があることを報知する故障報知手段を有する請求項1〜19のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項21】
前記故障報知手段は、表示パネルに故障を示す表示を行うことで故障の可能性があることを報知する請求項20記載の画像処理システム。
【請求項22】
前記故障報知手段は、機器を管轄する中央管理装置に通信回線を介して故障の可能があることを報知する請求項20記載の画像処理システム。
【請求項23】
出力画像の画質変動を補正するためのキャリブレーション機能を有する画像形成手段の画像処理装置において、
前記画像形成手段によって、所定のテストパターン画像を有するテストチャート上に付加情報を付加され、出力された前記テストチャートからテストパターン画像及び前記付加情報を読取る読取手段と、
前記テストパターン画像から前記テストチャートの画質情報を取得する画質情報取得手段と、
前記付加情報及び前記画質情報に基づき、前記画像出力手段のキャリブレーションを実行するか否かを判断する判断手段と
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれかに記載の画像形成手段として機能することを特徴とする画像形成装置。
【請求項25】
請求項1〜23のいずれかに記載の読取手段として機能することを特徴とする画像読取装置。
【請求項26】
請求項1〜23のいずれかに記載の読取手段及び判断手段としての機能を有することを特徴とする画像読取装置。
【請求項27】
請求項1〜23のいずれかに記載の判断手段として機能することを特徴とする情報端末装置。
【請求項28】
出力画像の画質変動を補正するためのキャリブレーション機能を有する画像形成手段の画像処理方法において、
前記画像形成手段によって、所定のテストパターン画像を有するテストチャート上に付加情報を付加され、出力された前記テストチャートからテストパターン画像及び前記付加情報を読取り、前記テストパターン画像から前記テストチャートの画質情報を取得し、前記付加情報及び前記画質情報に基づき、前記画像出力手段のキャリブレーションを実行するか否かを判断することを特徴とする画像処理方法。
【請求項29】
コンピュータにより、出力画像の画質変動を補正するためのキャリブレーション機能を有する画像形成手段の画像処理方法を実行するためのプログラムを格納した記録媒体において、
前記画像形成手段によって、所定のテストパターン画像を有するテストチャート上に付加情報を付加され、出力された前記テストチャートからテストパターン画像及び前記付加情報を読取る機能と、前記テストパターン画像から前記テストチャートの画質情報を取得する機能と、前記付加情報及び前記画質情報に基づき、前記画像出力手段のキャリブレーションを実行するか否かを判断する機能とを実行するためのプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2006−217192(P2006−217192A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−27142(P2005−27142)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】