説明

画像処理システムにおけるディテクタ配列装置及び方法

画像処理システム(100)におけるディテクタ配列装置(110)は、放射を検出し且つそれを示す信号を生成する放射検出ディテクタ(114、116)を含む。電流−周波数(I/F)変換器(202)はその信号をパルス列に変換し、そのパルス列は統合期間における信号の周波数を示す。回路(120)はパルス列に基づいて1次モーメント及び少なくとも1つの高次モーメントを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示される発明は一般にスペクトル画像処理に関連し、特にスペクトルコンピュータ断層撮影(CT)の分野に関連する。しかしながら、開示される発明は他の医療分野及び医療以外の分野に適用されてもよい。
【背景技術】
【0002】
概して、統合コンピュータ断層撮影(CT)スキャナは、ディテクタ配列に対向する回転可能なガントリ上に設けられたx線管を含む。x線管は、診断領域の周りを回り、診断領域を横切る多色放射(polychromatic radiation)を放射し、放射領域を横切るその放射又は輻射をディテクタ配列が受信する。ディテクタ配列は、フォトセンサ配列に光学的に結合されたシンチレータ配列(scintillator array)を含み、フォトセンサ配列はディテクタ電子回路に電気的に結合されている。シンチレータ配列は、放射又は輻射を吸収し、それを表す光を生成し、フォトセンサ配列がその光を電気信号に変換し、電子回路がその電気信号を統合し、統合期間各々に対する平均値又は平均強度を表す信号を生成する。その結果の信号は立体的な画像データを生成する際に再構築され、スキャンした対象又は客体の画像を生成するように処理することができる。こうした結果の画像は、典型的には、相対的な放射線濃度に対応するグレースケール値により再構築される画素又はピクセルを含む。そのような情報はスキャンした対象又は客体の減衰特性を反映している。
【0003】
統合された信号からスペクトル情報を導出するための様々な技法が提案されている。ある技法は、シンチレータピクセルの複数の行を、到来する放射方向に沿って互いに積み重ね、行の各々に各自のフォトセンサピクセルを設ける。概して、弱いエネルギのフォトンは到来する放射に近い行で吸収され、より高いエネルギのフォトンは到来する放射から遠い行で吸収される。別の例では、管電圧(tube voltage)が異なる電圧の間で切り替えられ、低い管電圧対しては或る一群の測定値をもたらし、高い管電圧対しては別の一群の測定値をもたらす。更に別の例の場合、画像処理システムは複数のx線管を備え、その各々は異なる管電圧とともに駆動されるので、様々な放射スペクトルについて様々な測定値群が得られる。不都合なことに、これらの上記の技法は特殊なハードウェア及び/又は手間を必要とし、及び/又はシステム全体のコストを上昇させてしまうことが懸念される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、特殊なハードウェアを必要とせずシステム全体のコストを上昇させないディテクタ配列装置及び検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態による装置は、
放射を検出し且つそれを示す信号を生成する放射検出ディテクタと、
統合期間における前記信号を表す周波数を有するパルス列に前記信号を変換する電流−周波数変換器と、
前記パルス列に基づいて1次モーメント及び少なくとも1つの高次のモーメントを生成する回路と
を有する、画像処理システムのディテクタ配列装置である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】画像処理システムの一例を示す図。
【図2】処理を行う電子回路を示す図。
【図3】処理を行う電子回路を示す図。
【図4】スペクトルディテクタの一例を示す図。
【図5】スペクトルディテクタの一例を示す図。
【図6】マルチエネルギ画像処理システムの一例を示す図。
【図7】マルチエネルギ画像処理システムの一例を示す図。
【図8】方法例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施形態は上記の問題及び他の問題の少なくとも1つに対処する。
【0008】
一形態において、画像処理システムのディテクタ配列(配列装置又は配列構造)は、放射又は輻射を検出し且つそれを示す信号を生成する放射検出ディテクタを含む。電流−周波数(I/F)変換器はその信号をパルス列に変換し、そのパルス列は統合期間における前記信号の周波数を表す。回路はパルス列に基づいて1次モーメント及び少なくとも1つの高次のモーメント又は高次の中心積率(central moment)を生成する。
【0009】
別の形態における方法は、統合期間の間に画像処理システムの放射源から発せられた多色放射を検出し、検出した放射を表す電気信号を生成し、該電気信号を表すパルス列を生成し、該パルス列に基づいて前記統合期間に対する少なくとも2つのモーメントを生成するステップを有する。
【0010】
更に別の形態において、画像処理システムは、検査領域を通る放射を放つソースと、検査領域を通る放射を検出するディテクタ配列とを含む。ディテクタ配列は、放射を受信し且つそれを示す信号を生成する放射検出ディテクタを含む。電流−周波数(I/F)変換器はその信号をパルス列に変換し、そのパルス列は前記信号の周波数を表す。回路はパルス列に基づいて1次モーメント及び少なくとも1つの高次のモーメントを生成する。
【0011】
本発明は様々な要素、要素の集まり、様々なステップ及びステップの集まりを用いた形態を含む。図面は好ましい実施形態を例示しているに過ぎず、本発明を限定するように解釈してはならない。
【実施例1】
【0012】
図1はコンピュータ断層撮影(CT)スキャナのような画像処理システム100を示す。概してシステム100は静止ガントリ102(固定又は不動ガントリ)及び回転ガントリ104を含む。回転ガントリ104は概して静止ガントリ102により回転可能に支持されている。x線管のような放射源(放射ソース)106は、回転ガントリ104により支持され、検査領域108の周囲を縦軸又はz軸の回りに回転し、多色放射を放つ。ソースコリメータ等が、放射源106から放たれる放射方向を制御し(collimate)、検査領域108を通る概して円錐状、扇状、くさび形状又はその他の形状の放射ビームを生成する。
【0013】
ディテクタ配列又はディテクタアレイ110は、検査領域108に向かい合う円弧の角度範囲(放射源106を中心とした角度範囲)を定める。ディテクタ配列110は検査領域108を通る放射を受信する。図示のディテクタ配列110は、ディテクタのモザイク又はタイル112の2次元配列を含む。そのようなディテクタ配列の非限定的な具体例は特許文献1(米国特許第6510195号)に記載されており、特許文献1は西暦2001年7月18日付けで「Solid State X-Radiation Detector Modules and Mosaics thereof, and an Imaging Method and Apparatus Employing the Same」という名称で出願されており、その内容全体が本願のリファレンスに組み入れられる。
【0014】
(図示されているように)ディテクタ配列110は、ディテクタタイル112のような放射検出ディテクタを含み、放射検出ディテクタは、フォトセンサ配列116又は方向変換材料(例えば、CZT、CdTe)又はその他のダイレクト変換材料に光学的に結合されたシンチレータ配列114を有する。シンチレータ配列114は、放射を受信し、放射を受信したことを示す光を生成する。フォトセンサ配列116は、その光を受信し、その光を表す電圧又は電流のような信号を生成する。ディテクタ電子回路118は、その信号を処理し、それを示すデータを生成する。適切なディテクタタイル112の具体例は、非特許文献1に記載されている。
【0015】
図示の例の場合、後に詳細に説明するように、ディテクタ電子回路118は電流−周波数(又は電圧−周波数)変換器を含み、統合期間(integration period)の間にフォトセンサ配列116が出力した信号を統合し、その統合期間に対するパルス列のようなディジタルデータを生成し、そのパルス列はその信号を表す周波数を有する。適切な変換器の具体例は特許文献2に記載されており、特許文献2は西暦2001年11月7日付で「Data Acquisition for Computed Tomography」という名称で出願されており、その内容全体が本願のリファレンスに組み入れられる。適切な変換器の別の例は特許文献3に記載されており、特許文献3は西暦1975年11月28日付で「Data Acquisition for Computed Tomography」という名称で出願されており、その内容全体が本願のリファレンスに組み入れられる。
【0016】
回路又はモーメント生成部120は、電流−周波数変換器からのディジタル信号に基づいて、1つ以上のモーメント(1次モーメント、2次モーメント、3次モーメント、...、n次モーメント)を生成する。少なくとも2つのモーメントを生成することは、統合された信号にからスペクトル情報を取得できるようにする。モーメント生成部120は、タイル112上のディテクタ電子回路118の一部でもよいし、タイル112とは別の電子回路でもよいし、一部分がタイル112上のディテクタ電子回路118に統合され且つ他の部分がタイル112とは別々であるような組み合わせの電子回路でもよい。
【0017】
再構築部112は、モーメント生成部120からの出力を構築し直す。一例として、再構築部122は従来の再構築アルゴリズムを利用して少なくとも2つのモーメントを個別に再構築する。結果の立体画像データ(volumetric image data)は、様々なエネルギモーメントの実効吸収率(effective absorption)からピクセル毎の追加的なスペクトル情報を取得するのに使用可能である。別の例の場合、再構築部122はスペクトル再構築アルゴリズムに基づいて複数のモーメントを再構築する。例えば、再構築アルゴリズムは信号を分解し、光電効果成分、コンプトン効果(Compton)成分、1つ以上のKエッジ(K-edges)成分等のような信号中の様々な吸収成分を取得する。これらの信号成分は、従来の再構築アルゴリズムにより、各成分の密度分布を示す成分画像を生成するために使用可能である。
【0018】
長椅子、診察用椅子、患者支持部又は患者補助部124は、人物、動物又は対象物等のような診察領域中の対象を支持する。支持部124は診断又はスキャンの前、最中及び/又はその後に動かすことが可能であり、オペレータ、技師又はシステムが対象を診察領域108野中で適切に配置できるようにする。操作制御部又はオペレータコンソール128のようなコンピュータシステムはスキャナ100との間でユーザのやりとりを支援する。オペレータコンソール128により実行されるソフトウェアアプリケーションは、スキャナ100の動作をユーザが決定及び/又は制御できるようにする。例えば、ユーザはスペクトル画像処理プロトコル又は従来の画像処理プロトコルを選択するようにオペレータコンソール128を使用することができる。
【0019】
上述したように図示の実施形態の場合、電流−周波数(I/F)変換器は、フォトセンサ配列116の出力信号を統合期間にわたって統合し、その統合期間に対する信号が表現されている周波数を有するパルス列のようなディジタルデータを生成する。
【0020】
フォトセンサ配列116の出力信号がE(t)のように表現される場合、統合期間Tの時点TN0の第1パルスN0から時点TN1の最終パルスN1までに対するI/F変換器の出力は、以下の数式1の関数のように表現することができ、
数式1:
【0021】
【数1】

あるいは、以下の数式2に示されるように離散形式で表現することもできる。
【0022】
数式2:
【0023】
【数2】

ここで、NはTN0からTN1までの期間内に存在するパルス数(最初のパルスを除く)を表し、Qpは隣接するパルス間に対する所定の電荷量を表し、ΔT=TN1−TN0である。数式2は入力信号E(t)の推定として使用可能であり、E(t)の平均値(反転I又はバーI)又は一次モーメントを表す。
【0024】
いかに説明するように、パルス列内の個々のパルス同士の間の変化は、より高次のモーメントを推定するのに使用可能である。n次モーメントは以下の数式3に基づいて算出可能である:
【0025】
【数3】

以下の数式4に示す関係が成り立つ場合に、統合期間中にパルスが生成される。
【0026】
数式4:
【0027】
【数4】

ここで、tiからti+1までの間のインターバルは統合期間中の隣接するパルス同士の間の時間的な間隔を表す。tiからti+1までの期間に関し、E(t)は以下の数式5に示す関数のように近似できる:
数式5:
【0028】
【数5】

数式5を数式3に代入すると、以下の数式6が得られ、
数式6:
【0029】
【数6】

あるいは、離散形式の場合、以下の数式7
数式7:
【0030】
【数7】

又は以下の数式8が得られる:
数式8:
【0031】
【数8】

数式7及び8はTN0からTN1までの期間にわたるn次モーメントの推定値をもたらす。
【0032】
図2は、数式2及び8に基づいてモーメントを生成するようにシステムを形成した場合における、フォトセンサ配列116のフォトセンサピクセル200、ディテクタ電子回路118及びモーメント生成部120に関する非限定的な例を示す。アナログディジタル(A/D)変換器202は、積分器204(増幅器206及び積分キャパシタ208)及びデシメータ又は比較器210を含む。上述したように、図示のA/D変換器202は電流−周波数(I/F)変換器として使用される。
【0033】
積分器204は、統合期間の間にフォトセンサピクセル200及びバイアス電流源212から出力された信号の和を積分する(E(t))。一例として、バイアス電流212は、アナログディジタル変換器202が所定数個の統合期間において所定数のパルス(例えば、3つの統合期間の間に少なくとも1つのパルス、あるいは1つの統合期間につき少なくとも2つのパルス等)を生成するように設定される。比較器210は、統合期間の間に積分器204の出力と閾値214とを比較し、積分器204の出力が閾値214に合致した場合にディジタルパルスを生成する。
【0034】
リセットスイッチ216は、統合機関内においてディジタルパルスが生成されたことに応じて積分器204をリセットするのに使用される。リセットスイッチ216は積分器感動詞の間で積分器204をリセットするのに使用されてもよい。積分器204のリセット(の処理)は、キャパシタ218に蓄積されている電荷を積分器204の入力に注入し、積分器204の入力における電荷を相殺することを含んでもよい。スイッチ216は、開放されている場合、リセットキャパシタ218を基準電圧源220に電気的に接続する。論理部222は、積分器間の境界及び/又はその他の時点においてリセットスイッチ216を制御し、その制御は例えば比較器の出力中にパルスを検出したことに応じてリセットスイッチ216を閉じて積分器204をリセットすることを含む。
【0035】
1次モーメント生成部2281は例えば数式2により平均値(反転I又はバーI)を生成し、上述したようにその平均値は入力信号E(t)の推定値をもたらす。一例として、カウンタ230は積分器間の間に比較器210が出力したパルス数を数え、タイマ232は統合期間中の先頭パルス及び最終パルスの間の時間を判定する。これらのデータから、一次モーメント生成部2281は、例えば先頭及び最終パルス間の時間に対するパルスカウント数の比率の関数として、1次モーメントを生成する。
【0036】
2次モーメント生成部2282は例えば数式8に基づいて2次モーメントを生成する。リセットタイマ234は、積分器間においてパルス列中の複数のパルスに関する隣接するパルス間の期間(Δti)を判定するのに使用される。インバータ236は隣接するパルス間の期間の値の逆数を計算し(値を反転し)、アキュムレータ238は反転されたデータを蓄積する。リセットタイマ234は隣接するパルスのペア各々についての新たな時間を決定し、アキュムレータ238は各パルスの生成に応じて反転されたデータを蓄積する。従って2次モーメントは統合期間の間にパルス各々の生成とともに増えながら生成される。乗算器240は蓄積された時間に、2次電力(Qp2)に引き上げる(換算する)一定の電荷量を乗算する。アキュムレータ238は先ず統合期間中の先頭パルスの生成に応答して乗算器240の出力を蓄積する処理を起動し、蓄積されたデータが読み出された後の統合期間の終了時にクリア又はリセットされる。リセットタイマ234はパルスの生成に応じてリセットされる。
【0037】
n次モーメント生成部238nは例えば数式8に基づいてn次モーメントを生成する。この場合もリセットタイマ234は隣接するパルス間の期間を判定するのに使用される。インバータ242は期間の値を反転し、乗算器244は反転された値にn-1を乗算し、あるいはインバータの出力値を(n-1)次の電力に引き上げる(換算する)。アキュムレータ246は統合期間にわたってそのデータを蓄積する。乗算器248は、蓄積された時間に、n次電力に換算する一定の電荷量を乗算する。上述したのと同様にアキュムレータ246は、統合期間中の先頭パルスの生成に応答して蓄積する処理を起動し、蓄積されたデータが読み出された後の統合期間の終了時にクリア又はリセットされ、リセットタイマ234がパルスの生成に応じてリセットされる。n次モーメント生成部238nは、代替的に又は追加的に、1次及び/又は2次のモーメントに加えて1つ以上の高次のモーメントを生成する際に使用されてもよい。
【0038】
図示の例の場合、論理部222はリセットタイマ234をリセットし、アキュムレータ238及び246を起動及びクリアする。別の例において、リセットタイマ234は別の方法でリセットされ、及び/又はアキュムレータ238及び246は別の方法でクリアされてもよい。更に、モーメント生成部120の構成要素の全部又は一部が、タイル112上のディテクタ電子回路118とともに統合又は一体化されていてもよいし、あるいはタイル112とは別の場所に設けられていてもよい。生成されたモーメントは再構築部122に通知され、上述したように再構築部122はモーメントを個々に及び/又は組み合わせとして再構築する。
【0039】
次に、1つ以上のモーメントを生成する非限定的な別の例を説明する。この例の場合、高次のモーメントを判定するために中心積率又はセントラルモーメント(central moment)が使用される。上述したように、シンチレータにより生成された光からフォトダイオードが生成する電流信号E(t)の平均値(バーI)は、数式2の関数のように推定できる。平均値(バーI)は以下の数式9に示されるように表現できる:
数式9:
【0040】
【数9】

ここで、Δtiは隣接するパルス間の期間を表し、N=N1-N0は測定区間における全パルス数(先頭パルスを除く)に対応する。電流信号に対するn次の中心積率は以下の数式10の関数として推定できる(これは離散形式によるn次の中心積率の定義を表す):
数式10:
【0041】
【数10】

ここで、Iiは以下の数式11のような関数関係を有する:
数式11:
【0042】
【数11】

数式11を数式10に代入すると、バーIは以下の数式12のように書ける:
数式12:
【0043】
【数12】

これは以下の数式13のようになる:
数式13:
【0044】
【数13】

この数式は、n=2の場合、以下の数式14のように表現できる(ランダム信号I(t)に関し、2次の中心積率は、バー(σI2(t))=E[(I-E[I])2]=E[I2]-E2[I]により与えられることに留意を要する。ここで、E[・]は期待値又は平均値を表す。):
数式14:
【0045】
【数14】

ここでも、バーIは数式12に示されるような量であり、バー(In)(例えばn=2)は以下の数式15のように表現される:
数式15:
【0046】
【数15】

n>2の場合、中心積率Mn=E[I-E[In]n]と「原点の回りのモーメント」Mn*との間には一般的な関係が成立しなければならない。例えば、n=3の場合、M3=M3*-3M1*M2+2[M1*]3である。一般的な規則は次式の通りである:
【0047】
【数16】

ここで、M0*:=1であり、M1*:=E[I]は通常の平均値である。
【0048】
図3は、数式2、13又は14に基づいてモーメントを生成するように構築されたシステムにおけるフォトセンサピクセル200、ディテクタ電子回路118及びモーメント生成部120の非限定的な例を示す。上述したように、電流−周波数(I/F)変換器として使用されるアナログディジタル変換器(A/D)202は、積分器(増幅器206及び積分キャパシタ208)及び比較器210を含む。積分器204は、統合期間の間にフォトセンサピクセル200及びバイアス電流源212から出力された信号の和を積分し、比較器210は、積分器204の出力が閾値214に合致した場合にディジタルパルスを生成する。論理部222はリセットスイッチ216を制御し、統合期間の間にディジタルパルスを生成したことに応じてその統合期間の間に積分器204をリセットする。
【0049】
本実施形態においてモーメント生成部120はパルスカウンタ302を含み、パルスカウンタ302は統合期間内における比較器210の出力に含まれているパルスをカウントする。モーメント生成部120はタイムラッチ304も含み、タイムラッチ304は統合期間中のパルスの時点(タイミング)をラッチする。非限定的な例において、タイムラッチ304は、統合期間内にあるクロックタイミングと同程度に多い数のメモリセルを備えるレジスタ等を含む。その例の場合、複数のセルは既知の初期状態(例えば、「0」)に設定され、パルスが関連するクロックタイミングで生じた場合に、論理部222はセルに所定値(例えば、「1」)を書き込む。論理「1」を格納しているセル同士の間の隔たり又は距離は、隣接するパルス間の時間的な長さ(クロックタイミングによる長さ)を導出するのに使用可能な情報を提供する。本願はタイムラッチ304の他の例をも包含している。論理部222はパルスカウント及びタイムラッチの読み出しを起動し、かつカウンタ302及び/又はタイムラッチ304をリセット又はクリアする。
【0050】
処理要素306は、数式13又は14を利用してパルスカウンタ302の出力及びタイムラッチ304の出力に基づいて、少なくとも2つのモーメントのような1つ以上のモーメントを生成する。
【0051】
本実施形態及びその変形例において、変換器202のサンプリングレートは、生成される最高次のモーメントに基づいて決定されてもよい。非限定的な例として、一般に、バーInの適切な推定値を決定するためのサンプリングレートは、バーIの適切な推定値を決定するためのサンプリングレートよりも高い。例えば、In(t)のフーリエ変換(F{})はF{I(t)}のn重の畳み込み(n-folded convolution)になる。近似的には、高次のモーメントを算出又は決定するためのサンプリングレートはn=1の場合に対して因子n倍で増加する。なぜならF{In(t)})の帯域幅は近似的にF{I(t)}の帯域幅のn倍だからである。サンプリングレートは閾値214を通じて調整可能であり、閾値が小さい場合のサンプリングレートは、閾値が高い場合のサンプリングレートよりも高く、その逆も真である。
【0052】
本願において説明される実施形態は1つ以上の他のスペクトル画像処理に関連づけて使用可能であることに留意を要する。例えば、本願において説明される実施形態は、スペクトルディテクタ(例えば、デュアルレイヤシステム)、kVpスイッチング及び/又はマルチチューブシステムと組み合わせて使用されてもよい。本願において説明される実施形態をそのような1つ以上の技術や他の技術と組み合わせることで、スペクトル分離解像度を向上させることができる。
【0053】
図4にはスペクトルディテクタの一例が示されている。シンチレータ配列(配列構造又は配列装置)402は、シンチレータピクセル404、406の第1及び第2のレイヤを含み、それらは放たれた放射方向に沿って積み重なっている。放たれた放射がシンチレータ配列402において吸収される現象はエネルギに依存し、低いエネルギのフォトンはシンチレータ配列402内で平均的に短い距離を進行し、第1のレイヤ404において吸収される一方、高いエネルギのフォトンはシンチレータ配列402内で平均的に長い距離を進行し、第2のレイヤ406において吸収される。従って吸収が生じた深さは、検出された放射のエネルギを表す。シンチレータ402はフォトセンサ配列408(配列構造又は配列装置)408の表面に光学的に結合され、フォトセンサ配列408は、第1又は第2のシンチレータレイヤ404又は406の一方に合わせられた第1のスペクトル応答特性を有する第1の光子検出ピクセル410と、第1又は第2のシンチレータレイヤ404又は406の他方に合わせられた第2のスペクトル応答特性を有する第2の光子検出ピクセル412とを有する。このようにフォトセンサ配列408はスペクトル特性が異なる2つの出力を有する。
【0054】
図5にはスペクトルディテクタの別の例が示されている。この例の場合、第1及び第2のシンチレータピクセル404、406は、それぞれ横向きにフォトセンサ配列408に光学的に結合されている。上記と同様にフォトセンサ配列408はスペクトル特性が異なる2つの出力を有する。光反射膜又は光反射コーディングが、フォトセンサ配列408に結合されていない側のシンチレータピクセル404、406に成膜され、光をフォトダイオードアレイ408の側に仕向けてもよい。図4及び5の双方又は一方において、シンチレータピクセル404、406は同一の又は異なる放射材料から形成されてもよいこと、及び/又はシンチレータピクセル404、406は類似する又は異なる寸法(例えば、放たれた放射方向に沿って類似する又は異なる厚み(深度))を有してもよいことに留意を要する。当然に、他の実施形態において、より多数のシンチレータレイヤ及び光子検出ピクセルが使用されてもよい。
【0055】
図6はkVpスイッチングの例を示す。この例の場合、x線管コントローラ602は2つ(又はそれ以上)の異なる電圧レベルの間で管電圧を切り替える。コントローラ602は、コンソール128からのスキャン情報に基づいて、スキャンの最中に(例えば、画像の中、画像同士の間等において)、スキャン同士の間において及び/又はその他の場合に管電圧を切り替えることができる。ディテクタ配列110は第1の管電圧に対応する第1の信号及び第2の管電圧に対応する第2の信号を生成する。
【0056】
図7はマルチチューブシステムの例を示す。例示のため、本システムは第1のx線管/ディテクタの組又はペア1061/1101と、第2のx線管/ディテクタの組又はペア1062/1102とを有するように示されている。別の例において、本システムは3つ以上のx線管/ディテクタのペアのような更に多数のx線管/ディテクタのペアとともに形成されてもよい。図示の例の場合、x線管1061/1062の各々には異なる管電圧がかけられる。その結果、ディテクタ1101/1102の各々は異なるスペクトルに対応する出力を示す。
【0057】
更に別の例において、光電効果成分及びコンプトン効果成分等のような様々な成分を分離するためのスペクトル分解アルゴリズムが使用されてもよい。適切な分解法については非特許文献2に記載されている。適切な別の分解法については西暦2007年12月14日付で出願された国際出願PCT/IB2007/055105号(特許文献4:国際公開第WO2008/078231号)に記載されており、その国際出願の内容全体は本願のリファレンスに組み入れられる。後者においては、造影剤(contrast agent)により制御されたKエッジ材料のKエッジ成分を導出するように分解法が拡張されている。
【0058】
上記のシステム及び方法を使用可能な具体的な応用例は、例えば、手荷物検査、医療用と、動物画像診断、心臓スキャニング、材料検査、非破壊画像分析、マシンビジョン(machine vision)及び材料科学等であるがこれらに限定されない。更に本発明は1つのCTガントリに複数のx線管(及び複数のディテクタ)を設けたx線CTシステムに適用されてもよい。適切な他の応用例は、より高度なスペクトル特性による組織判別と電流統合ディテクタに基づいてCTシステムにおいてK端画像処理を実行することとを組み合わせることが望ましい応用例を含む。
【0059】
図8は方法例を示す。
【0060】
802において、検査領域を通る多色放射が検出される。
【0061】
804において、検出された放射を示す信号が生成される。
【0062】
806において、その信号に基づいて、検出された放射を示す周波数を有するパルス列が生成される。
【0063】
808において、そのパルス列に基づいて、上述したような1つ以上のモーメントが生成される。
【0064】
810において、投影及び画像領域においてモーメントがスペクトル的に分析される。
【0065】
以上、本発明は好適実施例の観点から説明されてきた。上記の説明を閲覧及び理解した者は修正例及び変形例をも見出すであろう。そのような変形例及び修正例は添付の特許請求の範囲及び均等物の範囲内にすべて含まれるように本発明は意図されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0066】
【特許文献1】米国特許第6510195号明細書
【特許文献2】米国特許第6671345号明細書
【特許文献3】米国特許第4052620号明細書
【特許文献4】国際公開第WO2008/078231号パンフレット
【非特許文献】
【0067】
【非特許文献1】“A New 2D-Tiled Detector for Multislice CT,”Luhta et al., Medical Imaging 2006: Physics of Medical Imaging, Vol.6142, pp.275-286(2006)
【非特許文献2】Roessl et al.,“K-edge imaging in x-ray computed tomography using multi-bin photo counting detectors,” Physics in Medicine and Biology, 2007, pages 4679-4696, vol.52

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射を検出し且つそれを示す信号を生成する放射検出ディテクタと、
統合期間における前記信号を表す周波数を有するパルス列に前記信号を変換する電流−周波数変換器と、
前記パルス列に基づいて1次モーメント及び少なくとも1つの高次のモーメントを生成する回路と
を有する、画像処理システムのディテクタ配列装置。
【請求項2】
前記1次モーメント及び前記少なくとも1つの高次のモーメントが前記放射検出ディテクタに当たる多色放射に関する異なるスペクトル情報に対応する、請求項1記載のディテクタ配列装置。
【請求項3】
前記1次モーメント及び前記少なくとも1つの高次のモーメントが投影データ又は画像データ領域においてスペクトル的に分解される、請求項1又は2に記載のディテクタ配列装置。
【請求項4】
前記回路が、前記統合期間の間に前記少なくとも1つの高次のモーメントを生成する、請求項1ないし3の何れか1項に記載のディテクタ配列装置。
【請求項5】
当該ディテクタ配列装置が、前記パルス列における隣接するパルス同士の間の期間を決定するリセットタイマを更に含み、前記回路が隣接するパルス同士の間の前記期間に基づいて前記少なくとも1つの高次のモーメントを生成する、請求項1ないし4の何れか1項に記載のディテクタ配列装置。
【請求項6】
前記期間の値の逆数化するインバータと、
複数の逆数化された期間の値を蓄積するアキュムレータと
を更に有し、前記複数の逆数化された期間の値は前記統合期間におけるパルスの異なるペアに対応し、前記回路は蓄積された前記逆数化された期間の値に基づいて前記少なくとも1つの高次のモーメントを生成する、請求項5記載のディテクタ配列装置。
【請求項7】
前記アキュムレータは、前記パルス列におけるパルスの生成に応じて逆数化された期間の値を蓄積する、請求項6記載のディテクタ配列装置。
【請求項8】
蓄積された前記期間の値に所定の電荷量を乗算する乗算器を更に有する、請求項6又は7記載のディテクタ配列装置。
【請求項9】
当該ディテクタ配列装置が前記逆数化された期間の値を蓄積前に(n-1)倍する別の乗算部を更に有し、nは前記高次のモーメントの次数に対応する、請求項6ないし8の何れか1項に記載のディテクタ配列装置。
【請求項10】
前記パルス列におけるパルスの時間データを保持するタイムラッチ部を更に有する、請求項1又は2に記載のディテクタ配列装置。
【請求項11】
前記時間データが、前記パルス列における隣接するパルス同士の間の時間差を含む、請求項10記載のディテクタ配列装置。
【請求項12】
前記パルス列におけるパルスのカウント数及び前記時間データに基づいて、前記第1のモーメント及び前記少なくとも1つの高次のモーメントを生成するプロセッサ素子を更に有する、請求項10又は11に記載のディテクタ配列装置。
【請求項13】
統合期間の間に画像処理システムの放射源から発せられた多色放射を検出し、
検出した放射を表す電気信号を生成し、
該電気信号を表すパルス列を生成し、
該パルス列に基づいて前記統合期間に対する少なくとも2つのモーメントを生成するステップ
を有する方法。
【請求項14】
前記少なくとも2つのモーメントは、検出された前記多色放射に関する異なるスペクトル成分に対応する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも2つのモーメントをスペクトルにより分析するステップを更に有する、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
当該方法が、前記パルス列における隣接するパルス同士の間の時間差を判定するステップを更に有し、少なくとも2つのモーメントを生成する前記ステップにおいて、該時間差に基づいて前記少なくとも2つのモーメントを生成する、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項17】
前記統合期間の間に時間差が判定されるように前記少なくとも2つのモーメントを生成するステップを更に有する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記統合期間の終了の際に前記少なくとも2つのモーメントを生成するステップを更に有する、請求項16記載の方法。
【請求項19】
立体画像データを生成するように前記少なくとも2つのモーメントを再構築するステップを更に有する、請求項13ないし18の何れか1項に記載の方法。
【請求項20】
検査領域を通る放射を放つソースと、
検査領域を通る放射を検出するディテクタ配列装置と
を含む画像処理システムであって、前記ディテクタ配列装置は、
放射を受信し且つそれを示す信号を生成する放射検出ディテクタと、
前記信号を表す周波数を有するパルス列に前記信号を変換する電流−周波数変換器と、
前記パルス列に基づいて1次モーメント及び少なくとも1つの高次のモーメントを生成する回路と
を有する、画像処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−521249(P2012−521249A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501425(P2012−501425)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際出願番号】PCT/IB2010/050729
【国際公開番号】WO2010/109355
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】