説明

画像処理システム

【課題】中央の境界部分の画質劣化が生じない超高解像度画像を容易に鮮明に得ることが出来る画像処理システムを提供することを目的とする。
【解決手段】伝送路が伝送可能な伝送量を超える超高精細画像を伝送可能な伝送量を超えない範囲で複数個に分割し、分割した複数の分割画像を複数の伝送路に分けて送信する送信部2と、送信部2から送信された複数の分割画像を受信した後、複数の分割画像を合成して超高精細画像を得る受信部3とを有する画像処理システムにおいて、送信部2は、伝送路1の伝送可能な伝送量を超えない範囲の画像量で超高精細画像の中央部をトリミングして第1の分割画像を得るトリミング手段4と、超高精細画像から第1の分割画像を除いた残りの第2分割画像から第1の分割画像と同じ画像量になるように低解像度にする低解像度化手段5と、を有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HDTV画像(ハイビジョン)における解像度を遥かに越える超高解像度画像を良好に伝送する画像処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像処理システムについて図4及び図5を用いて説明する。
図4は、従来の画像処理システムを示す図である。
図5は、超高解像度画像を4個のHDTV画像に分割して出力する受光素子の概要図を示す図である。
【0003】
図4に示すように、従来の画像処理システムは、超高解像度画像である光学的に連続した被写体光像(以下、被写体光像と略す)を撮像して電気信号に変換した後、例えば4個のHDTV画像信号に分割して出力する撮像装置33と、撮像装置33から出力された4個のHDTV画像信号を4本の伝送ケーブルで伝送する伝送路34と、伝送路34で伝送された4個のHDTV画像信号を受信し、この受信した4個のHDTV画像信号を、被写体光像と同じ配列の投射画像に変換してスクリーン上に投射表示する表示装置35と、からなる。
【0004】
撮像装置33は、被写体光像を撮像部21に結像するレンズ20と、被写体光像が結像され、これを4個に分割して受光して電気信号に変換する受光素子から4個の電気信号を得て4個のHDTV画像信号に変換して出力する撮像部21と、1個のHDTV画像信号を入力しこれを表示するビューファ22と、からなる。
そして、図5に撮像部21で用いられる受光素子の概要図を示す。この受光素子はレンズ20により結像された被写体光像を、4個に分割した受光部200a,200b,200c,200dで受光し、それぞれの受光部から電気信号Va,Vb,Vc,Vdとして出力する。図中、垂直駆動部201と水平駆動部203は画像200aの走査信号を供給するものであり、同様に垂直駆動部201と水平駆動部24は画像200bの走査信号を供給するものであり、垂直駆動部202と水平駆動部204は画像200cの走査信号を供給するものであり、垂直駆動部202と水平駆動部203は画像200dの走査信号を供給するものである。また、205a,205b,205c,205dは画像信号の波形整形を行い外部に出力する画像信号Va,Vb,Vc,Vdを得るための信号処理部である。
【0005】
伝送路33は、撮像装置21から出力された4個のHDTV画像信号を伝送する4本の伝送ケーブル1−4と、1個のHDTV画像信号を撮像装置21のビューファ22に伝送する伝送ケーブル1−5と、からなる。
【0006】
表示装置35は、伝送ケーブル1−5経由で伝送された4個のHDTV画像信号を受信し、この受信した4個のHDTV画像信号を、被写体光像と同じ配列の投射画像信号Vpに変換するとともに、撮像装置21のビューファ22で被写体光像の撮像位置、明るさ等を調整するために用いる1個のHDTV画像信号V2を、4個のHDTV画像信号から縮小変換して生成する画像処理部23と、投射画像信号Vpをスクリーン24上に投射する投射光に変換する投射部25と、投射光が投射されるスクリーン24と、からなる。
【0007】
そして、従来の画像処理システムでは、撮像装置33により被写体光像を撮像して4個のHDTV画像信号に変換して伝送路34に供給し、伝送路34では4本の伝送ケーブル1−4によりそれぞれのHDTV画像を1個ずつ表示装置35に伝送し、表示装置35では伝送路34から伝送された4個のHDTV画像を合成してスクリーン24上に被写体光像と配列が同等の投射画像を投射する。
【0008】
特許文献1には、上述したような超高解像度画像である被写体光像を分割して4個のHDTV画像として伝送する際に、4本のHDTV用のBNC同軸ケーブルを用いると、実際の使用に際しては重くて装置類の操作が困難であり、しかも画像を150M以上伝送すると画質の劣化が大きく、4個のHDTV画像を均一に良好な状態に保つのは困難であり、このため、4個のHDTV画像を光変調して光伝送することにより、伝送路では画質を均一で良好な状態に保つことが記載されている。
【特許文献1】特開2004−260706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、光学的に連続した画像を4個のHDTV画像に分割する際には、画像を中央において前後左右に分割しており、このため、中央の境界部分にわずかな画質の不均一性が生じても、この4個のHDTV画像を再び合成して光学的に連続した画像として表示する場合、中央部分に縦線と横線の不均一部分が発生すると言う問題点があった。
特に4個のHDTV画像を伝送する際に、送信部と伝送路及び受信部における4個の画質の均一性を保つことは、特許文献1に記載されている光変調して光伝送する手段を用いても伝送路の画質のみが均一であり、伝送路の前後において画像の変換手段が多くなるため、画質劣化が更に増加すると言う問題点があった。
【0010】
そこで、本発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、中央の境界部分の画質劣化が生じない超高解像度画像を容易に鮮明に得ることが出来る画像処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、伝送路が伝送可能な伝送量を超える超高精細画像を前記伝送可能な伝送量を超えない範囲で複数個に分割し、前記分割した複数の分割画像を複数の前記伝送路に分けて送信する送信部と、前記送信部から送信された複数の分割画像を受信した後、前記複数の分割画像を合成して前記超高精細画像を得る受信部とを有する画像処理システムにおいて、前記送信部は、前記伝送路の伝送可能な伝送量を超えない範囲の画像量で前記超高精細画像の中央部をトリミングして第1の分割画像を得るトリミング手段と、前記超高精細画像から前記第1の分割画像を除いた残りの第2分割画像から前記第1の分割画像と同じ画像量になるように低解像度にする低解像度化手段と、
を有することを特徴とする画像処理システムを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、伝送路が伝送可能な伝送量を超える超高精細画像を伝送可能な伝送量を超えない範囲で複数個に分割し、分割した複数の分割画像を複数の伝送路に分けて送信する送信部と、送信部から送信された複数の分割画像を受信した後、複数の分割画像を合成して超高精細画像を得る受信部とを有する画像処理システムにおいて、送信部は、伝送路の伝送可能な伝送量を超えない範囲の画像量で超高精細画像の中央部をトリミングして第1の分割画像を得るトリミング手段と、超高精細画像から第1の分割画像を除いた残りの第2分割画像から第1の分割画像と同じ画像量になるように低解像度にする低解像度化手段と、を有するので、中央の境界部分の画質劣化が生じない超高解像画像を容易に得られる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態に係る画像処理システムについて図1〜図3を用いて説明する。
(従来と同一構成については同一符号を付し、その説明を省略する。)
図1は、本発明の実施形態における画像処理システムを示す図である。
図2は、伝送する画像の表示配列を示す図である。
図3は、本発明の実施の形態の変形例における撮像装置を用いた画像処理システムの具体的実施例を示す図であり、(A)は撮像装置を用いた画像処理システムの概要を示す図であり、(B)は撮像装置における画像分割を示す図であり、(C)は表示装置における画像合成を示す図である。
【0014】
図1に示すように本発明の実施形態における画像処理システムは、HDTV画像を複数伝送する伝送路1と、伝送路1が伝送可能な伝送量を超える超高精細画像を伝送可能な伝送量を超えない範囲で複数個に分割し、分割した複数の分割画像を複数の伝送路1に分けて送信する送信部2と、送信部2から伝送路1経由で送信された複数の分割画像を受信した後、複数の分割画像を合成して超高精細画像を得る受信部3と、からなる。
送信部2は、伝送路1の伝送可能な伝送量を超えない範囲の画像量で超高精細画像の中央部をトリミングして第1の分割画像を得るトリミング手段4と、超高精細画像から第1の分割画像を除いた残りの第2分割画像から第1の分割画像と同じ画像量になるように低解像度にする低解像度化手段5と、トリミングする範囲を設定する高解像度抽出範囲設定部6と、低解像度化手段5に用いる解像度変換率を算出する解像度変換率算出部7と、第1の分割画像と第2の分割画像を伝送路2に出力する送信手段8と、からなる。
受信部3は、第1の分割画像と第2の分割画像を伝送路2から受信する受信手段9と、受信手段9から第1の分割画像と第2の分割画像を受け取り1枚の超高精細画像に合成する画像合成部10と、画像合成部10から合成された1枚の超高精細画像をスクリーン等に表示する画像表示部11と、スクリーン等に表示された画像を見ながら高解像度となる画像範囲を指示する高解像度画像抽出範囲指示部12と、からなる。
【0015】
そして、第1の分割画像は、受信部3の高解像度画像抽出範囲指示部12により図示していないスクリーンに表示された画像を見ながら設定した範囲設定データPdataを送信部2の高解像度抽出範囲設定部6へ送り高解像度抽出範囲としての水平方向アドレスHadと垂直方向アドレスVadを生成してトリミング手段4へ送り、トリミング手段4では入力画像V0から水平方向アドレスHadと垂直方向アドレスVadの範囲の画像領域をトリミングして第1の分割画像VH0とし、送信手段4へ送る。
第1の分割画像は、図2(A)の(1)に示すように表示範囲をトリミングして図2(A)の(2)に示すような水平方向画素数Hn、垂直方向画素数Vnの画像に設定する。この画素数はHDTV画像の場合、Hn=1920、Vn=1080である。
【0016】
次に、第2の分割画像は、入力画像V0から第1の分割画像VH0を削減した画像を、高解像度抽出範囲設定部6で入力画像V0の全画素と範囲設定データPdataとの比率Phwを解像度変換率算出部7へ入力し第1の分割画像と略同じ画素数を得るように水平方向アドレスHcutと垂直方向アドレスVcutを算出して低解像度化手段5へ加え、入力画像V0から第1の分割画像VH0を削減した画像を間引いた後整列して第1の分割画像VH0と同等の画素配列状態である第2の分割画像VL0を生成して送信手段4へ送る。
この第2の分割画像VL0は、低解像度化手段5において、図2(B)に示すように、まず、水平方向アドレスHcutと垂直方向アドレスVcutにより、図2(B)の(1)に示すようなアドレスで入力画像V0から第1の分割画像VH0を削減した画像を読み出し図2(B)の(2)に示すように間を詰めて配列することにより図2(B)の(3)に示すような第1の分割画像VH0とほぼ同等の画素数である第2の分割画像VL0を得る。
【0017】
このようにして得た第1の分割画像VH0と第2の分割画像VL0はほぼ同等の画素数を有するHDTVの画像として扱うことが出来るから、送信手段8で送信用の信号VH1とVL1に変換して2個のHDTV画像を伝送する伝送路1へ送信する。伝送路1ではHDTV画像伝送用の伝送ケーブル2本を用いて、送信手段8から送信されてきた信号VH1とVL1をさらに受信部3へ送信する。
【0018】
従って、伝送路1ではHDTV画像伝送用の伝送ケーブル等の画像伝送手段が、従来は4系統必要であったものが2系統と削減することが出来る。
【0019】
受信部3では送信手段8から送信されてきた信号VH1とVL1とを受信手段9で受信し第1の分割画像VH2と第2の分割画像VL2として再生し、画像合成部10に入力する。
画像合成部10では、第2の分割画像VL2を高解像度画像抽出範囲指示部12の画像抽出範囲から算出した拡大率CTLに基づいて、被写体光像と同等の範囲の画像に拡大すると共に平滑化を行う。そして、第1の分割画像VH2と拡大し平滑化した第2の分割画像VL2とを合成して超高精細画像Vpを得る。次に、この超高精細画像Vpを画像表示部11に加え、図示していないスクリーンに投射表示する。
【0020】
このようにして、超高精細画像を高解像度画像と低解像度画像とに分割してHDTV画像伝送用の伝送ケーブル2本を用いて伝送し、これを受信して合成処理することにより、画像の中央部は、画像の分割、伝送、合成のいずれの画像処理によっても画質の劣化を生じない鮮明な画像を保持することが出来る。
【0021】
以上のように本発明の実施形態により、画像表示部のスクリーン上に高解像度画像と低解像度画像とを合成処理して表示された画像は、この画像を観察する観客が注目する中央部分の画像範囲の高解像度画像は画質劣化がないため高画質な鮮明さを感じ、観客が注目していない低解像度画像の画像範囲からは大画面であると感じることにより、全体としては大画面の超高精細画像と認識することが出来る。
特に従来の4分割の画像処理により、中央部に縦線と横線が入り画質を著しく低下させていたのを、本発明の実施形態における2分割の画像処理により、観客が注目する中央部の画像範囲の画質を高画質とすることが出来る。
【0022】
次に本発明の実施の形態における変形例について図3を用いて説明する。
図3(A)に示すように、本発明の実施の形態における変形例は撮像装置を用いた画像処理システムであり、超高精細画像である被写体光像(以下被写体光像と略す)を撮像しこれを電気信号に変換した後、高解像度画像である第1の分割画像と低解像度画像である第2の分割画像とを生成して出力する撮像装置19と、第1の分割画像と第2の分割画像を伝送する伝送路1と、伝送路1経由で送信された第1の分割画像と第2の分割画像を受信した後、複数の分割画像を合成して超高精細画像を得る受信部3と、からなる。
【0023】
撮像装置19は、被写体光像を受光素子17に結像させるレンズ14と、図2の送信部2と同様に伝送路1が伝送可能な伝送量を超える超高精細画像を伝送可能な伝送量を超えない範囲で複数個に分割し、分割した複数の分割画像を複数の伝送路1に分けて送信する撮像部15と、撮像した画像を表示するビューファ16と、からなる。
撮像部15は、被写体光像を受光し高解像度画像である第1の分割画像と低解像度画像である第2の分割画像とに変換して出力する受光素子17と、図1の高解像度画像抽出範囲設定部6と解像度変換率算出部7の機能を併せ持ち、第1の分割画像用のアドレスHadとVad、第2の分割画像用のアドレスHcutとVcutを生成し受光素子17へ送るアドレス生成部18と、第1の分割画像と第2の分割画像を伝送路2に出力する送信手段8と、からなる。
尚、伝送路1と受信部3は図1に示されているのと同様なので説明は省略する。
【0024】
そして、被写体光像がレンズ14により受光素子17に超高解像度画像V0として結像され、
受光素子17からはこの超高解像度画像V0の光像が、図3(B)に示すように中央部はそのままアドレスHadとVadによりトリミングされて第1の分割画像VHとして変換される。そして第1の分割画像VHが削除された被写体光像の全体画像はアドレスHcutとVcutにより
図2(B)の(1)に示すように受光素子17の画素を間引いて読み出し、その結果、図3(B)に示すように第1の分割画像VHとほぼ同じ画素数の第2の分割画像VLとなる。
【0025】
このように、中央部に画素の抜けの無い高解像度画像と周辺部の画素を間引いた低解像度画像とをほぼ同じ画素数の画像に変換出来る受光素子を用いることにより、超高精細画像のトリミングを簡単に行うことが出来る。
本発明の実施形態の変形例によっても実施の形態と同様な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態における画像処理システムを示す図である。
【図2】伝送する画像の表示配列を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態の変形例における撮像装置を用いた画像処理システムの具体的実施例を示す図であり、(A)は撮像装置を用いた画像処理システムの概要を示す図であり、(B)は撮像装置における画像分割を示す図であり、(C)は表示装置における画像合成を示す図である。
【図4】従来の撮像装置を用いた画像処理システムを示す図である。
【図5】従来の画像処理システムに用いる受光素子の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1・・・伝送路、2・・・送信部、3・・・受信部、4・・・トリミング手段、5・・・低解像度化手段、6・・・高解像度画像抽出範囲設定部、7・・・解像度変換率算出部、8・・・送信手段、9・・・受信手段、10・・・画像合成部、11・・・画像表示部、12・・・高解像度画像抽出範囲指示部、13・・・スクリーン、14・・・レンズ、15・・・撮像部、16・・・ビューファ、17・・・受光素子、18・・・アドレス生成部、19・・・撮像装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送路が伝送可能な伝送量を超える超高精細画像を前記伝送可能な伝送量を超えない範囲で複数個に分割し、前記分割した複数の分割画像を複数の前記伝送路に分けて送信する送信部と、前記送信部から送信された複数の分割画像を受信した後、前記複数の分割画像を合成して前記超高精細画像を得る受信部とを有する画像処理システムにおいて、
前記送信部は、前記伝送路の伝送可能な伝送量を超えない範囲の画像量で前記超高精細画像の中央部をトリミングして第1の分割画像を得るトリミング手段と、
前記超高精細画像から前記第1の分割画像を除いた残りの第2分割画像から前記第1の分割画像と同じ画像量になるように低解像度にする低解像度化手段と、
を有することを特徴とする画像処理システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−145944(P2006−145944A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−337161(P2004−337161)
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】