説明

画像処理システム

【課題】マルチバンドのカラーフィルタを用いながら偽色の発生を抑える。
【解決手段】 画像処理システム40は受信部41、微分値算出部42、参照画像作成部44、及び補間画像作成部45を有する。受信部41は第1〜第m(mは3以上の整数)の色信号成分のいずれかが不足している複数の画素信号によって構成される原画像信号を受信する。微分値算出部42は画素信号それぞれに対応する画素を挟む2画素を用いて画素信号の微分値を算出する。参照画像作成部44は原画像信号の中で画像信号内において要素数が最大である第1の色信号成分を用いて一次参照画像を作成する。補間画像作成部45は一次参照画像を用いて全色信号成分を補間して補間画像を作成する。一次参照画像及び補間画像の少なくとも一方は、微分値を用いて作成される

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチバンドのカラーフィルタが配置された撮像素子などの撮像により生成された原画像信号の色補間を行う画像処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、被写体の忠実な色再現を目的として、マルチスペクトル画像撮影が注目されている。従来のマルチスペクトル画像撮影では、複数のカメラを用いた撮影、または複数回の撮影を行うために専用の撮影システムが必要とされていた。そのような専用の撮影システムを用いることなく、一般のデジタルカメラを用いたマルチスペクトル画像撮影が望まれていた。そこで、マルチスペクトル画像撮影を実行可能なイメージセンサが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−212969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般のデジタルカメラでは、単板撮像素子とカラーフィルタアレイ(CFA)が用いられている。そこで、カラーフィルタアレイ(CFA)をマルチバンド化することにより色再現性を高めることが出来る。しかし、バンド数の増加に伴い、単一のバンドのサンプル密度が低くなるため、デモザイキング時に偽色が発生するなどの問題があった。
【0005】
従って、上記のような問題点に鑑みてなされた本発明では、マルチバンドのCFAを有する撮像素子が生成する原画像信号に基づいて、偽色の発生を抑えるデモザイキングを実行する画像処理システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した諸課題を解決すべく、本発明による画像処理システムは、
第1〜第m(mは3以上の整数)の色信号成分のいずれかを有する複数の画素信号によって構成される原画像信号から、原画像信号を構成する全画素信号が第1〜第mの色信号成分を有するように色信号成分の補間を行う画像処理システムであって、
原画像信号を受信する受信部と、
画素信号それぞれに対応する画素を挟む同色の2画素を用いて画素信号の微分値を算出する微分値算出部と、
原画像信号の中の前記第1の色信号成分を用いて一次参照画像を作成する参照画像作成部と、
一次参照画像を用いて、全色信号成分を補間して補間画像を作成する補間画像作成部とを備え、
一次参照画像及び前記補間画像の少なくとも一方は、微分値を用いて作成される
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
上記のように構成された本発明に係る画像処理システムによれば、参照画像または補間画像の作成時に微分値を用いるので、実際に撮像された画像の局所的な部位に基づいた補間が行われる。それゆえ、CFAのマルチバンド化を図りながら、偽色の発生を抑えたデモザイクが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像処理システムを有するデジタルカメラの概略構成を示すブロック図である。
【図2】CFAにおけるカラーフィルタの配置を示す配置図である。
【図3】画像信号処理部の構成を概略的に示すブロック図である。
【図4】G、Cy、Or、B、R原画像信号成分の構造を説明するための概念図である。
【図5】第1の実施形態のMBデモザイク処理部によって実行されるデモザイク処理を説明するための概念図である。
【図6】第1の実施形態のMBデモザイク処理部の構成を概略的に示すブロック図である。
【図7】第2の実施形態のMBデモザイク処理部によって実行されるデモザイク処理を説明するための概念図である。
【図8】第2の実施形態のMBデモザイク処理部の構成を概略的に示すブロック図である。
【図9】第3の実施形態のMBデモザイク処理部によって実行されるデモザイク処理を説明するための概念図である。
【図10】第3の実施形態のMBデモザイク処理部の構成を概略的に示すブロック図である。
【図11】第4の実施形態のMBデモザイク処理部によって実行されるデモザイク処理を説明するための概念図である。
【図12】第4の実施形態のMBデモザイク処理部の構成を概略的に示すブロック図である。
【図13】第5の実施形態のMBデモザイク処理部によって実行されるデモザイク処理を説明するための概念図である。
【図14】第5の実施形態のMBデモザイク処理部の構成を概略的に示すブロック図である。
【図15】第6の実施形態のMBデモザイク処理部によって実行されるデモザイク処理を説明するための概念図である。
【図16】第6の実施形態のMBデモザイク処理部の構成を概略的に示すブロック図である。
【図17】色差を介して色信号成分を補間するデモザイク処理を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した画像処理システムの実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る画像処理システムを有するデジタルカメラの概略構成を示すブロック図である。
【0010】
デジタルカメラ10は、撮影光学系11、撮像素子20、センサ駆動部12、システムバス13、画像信号処理部30、バッファメモリ14、システムコントローラ15、画像表示部16、画像記録部17、及び操作部18などによって構成される。
【0011】
撮影光学系11は、光軸が撮像素子20の受光部21の中心を通るように垂直に配置され、撮像素子20に結合される。撮影光学系11は複数のレンズ(図示せず)によって構成され、被写体の光学像を受光部21に結像させる。
【0012】
撮像素子20は、例えばCMOSエリアセンサであり、受光部21、垂直走査回路22、水平読出回路23、及びA/Dコンバータ24によって構成される。前述のように、撮影光学系11により被写体の光学像が受光部21に形成される。
【0013】
受光部21には、マトリックス状に複数の画素(図示せず)が配置される。また、受光部21上において、OB(オプティカルブラック)領域21bと有効撮影領域21eとが定められる。OB領域21bに配置されるOB画素は受光面が遮光されており、黒色の基準となるOB画素信号(暗電流)を出力する。また、有効撮影領域21eはCFA(図1において図示せず)によって覆われており、各画素は5バンドのカラーフィルタのいずれかによって覆われる。
【0014】
図2に示すように、CFA21aにはG(グリーン)カラーフィルタ、Cy(シアン)カラーフィルタ、Or(オレンジ)カラーフィルタ、B(ブルー)カラーフィルタ、及びR(レッド)カラーフィルタの5バンドのカラーフィルタが設けられる。したがって、各画素では、対応するカラーフィルタの透過バンドの光の受光量に応じた画素信号が生成される。
【0015】
CFA21aでは、4行4列のカラーフィルタ繰返し単位21uが行方向及び列方向に繰返し配置される。図2に示すように、カラーフィルタ繰返し単位21u内には、8個のGカラーフィルタ、2個のCyカラーフィルタ、2個のOrカラーフィルタ、2個のBカラーフィルタ、及び2個のRカラーフィルタが配置される。
【0016】
CFA21aでは、Cyカラーフィルタ、Orカラーフィルタ、Bカラーフィルタ、及びRカラーフィルタのいずれかと、Gカラーフィルタとが市松模様状に配置される。すなわち、Gカラーフィルタは全行全列において、1画素おきに繰返し配置される。例えば、図2における左上を基準として、1、3行目には2、4列目にGカラーフィルタが配置される。また、2、4行目には、1、3列目にGカラーフィルタが配置される。
【0017】
また、Gカラーフィルタ、Bカラーフィルタ、及びCyカラーフィルタが並ぶ行及び列が、列方向及び行方向に1画素おきに繰返し配置される。例えば、図2において、1行1列目及び3行3列目にBカラーフィルタが配置され、1行3列目及び3行1列目にCyカラーフィルタが配置される。
【0018】
また、Gカラーフィルタ、Rカラーフィルタ、及びOrカラーフィルタが並ぶ行及び列が、行方向及び列方向に1画素おきに繰返し配置される。例えば、図2において、2行4列目及び4行2列目にRカラーフィルタが配置され、2行2列目及び4行4列目にOrカラーフィルタが配置される。
【0019】
上述のようなカラーフィルタ繰返し単位21uでは、Gカラーフィルタの割合が最大であり全体の50%を占めている。また、任意の位置の画素において、斜め方向に隣接する画素に対応するカラーフィルタのバンドは等しい。
【0020】
例えば、いずれのGカラーフィルタにおいても、斜方に隣接するカラーフィルタはすべてGカラーフィルタである。したがって、任意のGカラーフィルタの右斜め上及び左斜め下にはGカラーフィルタが配置され、互いに同じバンドのカラーフィルタである。また、右斜め下及び左斜め上にはGカラーフィタが配置され、互いに同じバンドのカラーフィルタである。
【0021】
また、いずれのCyカラーフィルタにおいても、斜方に沿ってRカラーフィルタまたはOrカラーフィルタによって挟まれる。詳細に説明すると、任意のCyカラーフィルタの右斜め上及び左斜め下にはOrカラーフィルタが配置され、互いに同じバンドのカラーフィルタである。また、右斜め下及び左斜め上にはRカラーフィルタが配置され、互いに同じバンドのカラーフィルタである。
【0022】
Orカラーフィルタ、Bカラーフィルタ、及びRカラーフィルタにおいても、同様であって、斜め方向に隣接するカラーフィルタ同士は同じバンドのカラーフィルタとなる。
【0023】
上述のようなCFA21aが設けられた撮像素子において、透過したバンドの光の受光量に応じた画素信号が生成される。垂直走査回路22により画素信号を出力させる画素の行が選択され、水平読出回路23により画素信号を出力させる画素の列が選択される(図1参照)。
【0024】
垂直走査回路22及び水平読出回路23はセンサ駆動部12に駆動され、1画素ずつ画素信号が出力されるように制御される。出力された画素信号はA/Dコンバータ24によりデジタル信号に変換される。受光部21に配置されるすべての画素の画素信号が1フレームの原画像信号(Raw画像データ)に定められる。
【0025】
撮像素子20、バッファメモリ14、画像信号処理部30、システムコントローラ15、画像表示部16、画像記録部17、操作部18、及びセンサ駆動部12は、システムバス13を介して電気的に接続される。システムバス13に接続されるこれらの部位は、システムバス13を介して互いに様々な信号やデータを送受信することが可能である。
【0026】
撮像素子20から出力される原画像信号はバッファメモリ14に送信され、格納される。バッファメモリ14はSDRAM等であって、比較的高速なアクセス速度を有し、画像信号処理部30のワークエリアとして用いられる。また、バッファメモリ14は、システムコントローラ15がデジタルカメラ10の各部位を制御するためのプログラムを実行する際のワークエリアとしても用いられる。
【0027】
画像信号処理部30は、後に詳細に説明するデモザイキング処理を原画像信号に施し、補間画像信号を生成する。さらに、画像信号処理部30は、補間画像信号に対して所定の画像処理を施す。なお、補間画像信号は必要に応じて、RGB画像信号に変換される。
【0028】
所定の画像処理の施された補間画像信号およびRGB画像信号は、画像表示部16及び画像記録部17に送信される。画像表示部16は多原色モニタ(図1において図示せず)及びRGBモニタ(図1において図示せず)を有している。多原色モニタ及びRGBモニタには、受信した補間画像信号及びRGB画像信号に相当する画像が表示される。また、画像記録部17に送信された補間画像信号及びRGB画像信号は、そこで格納される。
【0029】
デジタルカメラ10の各部位は、システムコントローラ15によって制御される。各部位を制御するための制御信号がシステムコントローラ15からシステムバス13を介して各部位に入力される。
【0030】
なお、画像信号処理部30及びシステムコントローラ15は、CPU(中央処理装置)等の任意の好適なプロセッサ上で実行されるソフトウェアとして構成したり、処理ごとに特化した専用のプロセッサによって構成したりすることもできる。
【0031】
システムコントローラ15は、パワーボタン(図示せず)、レリーズボタン(図示せず)、及びダイヤル(図示せず)などの入力機構を有する入力部18に接続される。使用者によるデジタルカメラ10の様々な操作入力が入力部18に検知される。入力部18に検知される操作入力に応じて、システムコントローラ15はデジタルカメラ10の各部位を制御する。
【0032】
次に、画像信号処理部30の構成について図3を用いて説明する。画像信号処理部30は、OB減算処理部31、マルチバンド(MB)デモザイク処理部40(画像処理システム)、NR処理部32、MB−RGB変換部33、色変換処理部34、及び色ガンマ補正処理部35によって構成される。
【0033】
バッファメモリ14から出力される原画像信号は、OB減算処理部31に送信される。OB減算処理部31では、OB画素に生成されたOB画素信号によって各画素信号を減じることによって各画素信号の黒レベルの調整を行う。
【0034】
OB減算処理部31から出力される画素信号はMBデモザイク処理部40に送信される。前述のように、原画像信号を構成する画素信号は5バンドの中のいずれか一つの色信号成分のみを有する。すなわち、原画像信号は、図4に示すように、G原画像信号成分((a)参照)、Cy原画像信号成分((b)参照)、Or原画像信号成分((c)参照)、B原画像信号成分((d)参照)、R原画像信号成分((e)参照)によって構成される。後述するようにMBデモザイク処理部40におけるデモザイク処理により、全色信号成分が補間される。すなわち、全画素信号は5つの色信号成分を有するように、補完される。
【0035】
デモザイク処理の施された原画像信号は、補間画像信号としてNR処理部32に送信される。NR処理部32において、補間画像信号からノイズが除去される。ノイズの除去された補間画像信号は画像記録部17に送信され、格納される。また、ノイズの除去された補間画像信号はMB−RGB変換処理部33及び色変換処理部34に送信される。
【0036】
MB−RGB変換処理部33では、補間画像信号に対してRGB変換処理が施される。5バンドの色信号成分によって構成される補間画像信号が、RGBの3バンドの色信号成分によって構成されるRGB画像信号に変換される。RGB画像信号は画像記録部17に送信され、格納される。また、RGB画像信号は、色・ガンマ補正処理部35に送信される。
【0037】
色変換処理部34では、補間画像信号に対して色変換処理が施される。色変換処理の施された補間画像信号は多原色モニタ16mbに送信され、補間画像信号に相当する画像が表示される。
【0038】
色・ガンマ補正処理部35では、RGB画像信号に対して色補正処理及びガンマ補正処理が施される。これらの補正処理が施されたRGB画像信号はRGBモニタ16rgbに送信され、RGB画像信号に相当する画像が表示される。
【0039】
次に、デモザイク処理について図5を用いて説明する。図5は、MBデモザイク処理部40によって実行されるデモザイク処理を説明するための概念図である。
【0040】
前述のように、原画像信号OISは各画素信号が5バンドのいずれかの色信号成分のみを有している。原画像信号OISは、G原画像信号成分gOIS、Cy原画像信号成分cyOIS、Or原画像信号成分orOIS、B原画像信号成分bOIS、及びR原画像信号成分rOISに分割される。
【0041】
また、原画像信号OISの全画素信号を用いて全画素に対して適応的カーネル関数が算出される(aK参照)。適応的カーネル関数と、G原画像信号成分gOISとを用いて適応的ガウシアン補間法によりG原画像信号成分gOISにおける欠落した画素信号が補間され、参照画像信号RIS(一次参照画像)が生成される(aGU参照)。
【0042】
適応的カーネル関数、参照画像信号RIS、及びG原画像信号成分gOISを用いて適応的ジョイントバイラテラル補間法によりG原画像信号成分gOISにおける欠落した画素信号が補間され、G補間画像信号成分gIISが生成される。
【0043】
G原画像信号成分gOISの代わりに、Cy原画像信号成分cyOISを用いて同様の処理を施すことによりCy補間画像信号成分cyIISが生成される。同様にして、Or補間画像信号成分orIIS、B補間画像信号成分bIIS、及びR補間画像信号成分rIISが生成される。全色信号成分を有する画素信号を全画素に対して生成することにより補間画像信号IISが生成される。
【0044】
次に、このようなデモザイク処理を実行するMBデモザイク処理部40の構成及び機能を、図6を用いて説明する。MBデモザイク処理部40は、分配部41(受信部)、微分値算出部42、適応的カーネル算出部43、参照画像作成部44、及び補間画像作成部45によって構成される。
【0045】
MBデモザイク処理部40に受信される原画像信号は、分配部41に入力される。分配部41では、微分値算出部42、参照画像作成部44、及び補間画像作成部45に、必要に応じた色信号成分が分配される。
【0046】
微分値算出部42には、原画像信号を構成する全画素信号が送信される。微分値算出部42では、画素毎に2方向の微分値(第1、第2の微分値)が算出される。微分値の算出のために、全画素が順番に注目画素(図示せず)に指定される。指定された注目画素の右斜め上及び左斜め下に隣接する画素の画素信号の差と、右斜め下及び左斜め上に隣接する画素の画素信号の差とが微分値として算出される。
【0047】
なお、前述のように、いずれの画素を注目画素とする場合でも、右斜め上及び左斜め下の画素では同じ色信号成分の画素信号が生成され、右斜め下及び左斜め上の画素では同じ色信号成分の画素信号が生成される。それゆえ、上述の微分値は、注目画素を中心とする局所的な画像における両斜め方向の勾配を示している。全画素に対して算出された微分値は、適応的カーネル算出部43に送信される。
【0048】
適応的カーネル算出部43では、微分値と画素信号とに基づいて、画素毎に適応的カーネル関数が算出される。適応的カーネル関数の算出のために、すべての画素が順番に注目画素に指定される。また、注目画素を中心とする注目画素の周囲の7行7列に配置される画素が周囲画素に指定される。注目画素及び周囲画素の指定を終えると、注目画素に対する共分散行列Cの逆行列が算出される。
【0049】
逆行列は、(1)式に注目画素及び周囲画素の微分値を代入することにより算出される。
【0050】
【数1】

【0051】
なお、(1)式において、Nは周囲画素の画素位置集合であり、|N|は画素位置集合の画素数である。また、Z(x)は、周囲画素xのu方向の微分値であり、Z(x)は周囲画素xのv方向の微分値である。なお、図2に示すように、u方向とは右斜め下から左斜め上に向かう方向であり、v方向とは左斜め下から右斜め上に向かう方向である。
【0052】
注目画素の共分散行列が算出されると、次に注目画素に対するカーネル関数の大きさを表すパラメータμが算出される。パラメータμの算出のために、共分散行列Cの固有値λ、λが算出される。固有値の積λ×λが閾値Sと比較される。固有値の積λ×λが閾値S以上である場合には、パラメータμは1と計算される。一方、固有値の積λ×λが閾値Sより小さい場合には、(S/(λ×λ))の四乗根がパラメータμとして計算される。
【0053】
パラメータμの算出後、注目画素に対する適応的カーネル関数が算出される。適応的カーネル関数k(x−x)は(2)式により算出される。
【0054】
【数2】

【0055】
(2)式において、xは周囲画素の座標であり、xは注目画素の座標であり、Rは45°の回転行列であり、hは所定の設計パラメータであり、例えば1に定められる。
【0056】
全画素に対して算出された適応的カーネル関数k(x−x)は、参照画像作成部44及び補間画像作成部45に送信される。参照画像作成部44では、原画像信号中に最も要素数の多いG色信号成分(第1の色信号成分)が分配部41から送信される。参照画像作成部44では、適応的ガウシアン補間法により全体の1/2の画素に対してのみ存在するG色信号成分の補間が行われ、参照画像信号が生成される。
【0057】
適応的ガウシアン補間法を用いたG原画像信号成分における欠落した画素信号の補間について説明する。G原画像信号成分において補間される画素、すなわち原画像信号においてG色信号成分を有さない画素が順番に注目画素に指定される。注目画素を中心とする注目画素の周囲の7行7列の画素が周囲画素に指定される。
【0058】
注目画素の画素信号は、周囲画素のG色信号成分及び適応的カーネル関数に基づいて(3)式により算出される。
【0059】
【数3】

【0060】
なお、ωは(4)式により算出される。Mxiはバイナリマスクであり、周囲画素がG色信号成分を有するときに1であり、周囲画素がG色信号成分を有さないときには0である。Sxiは周囲画素のG色信号成分である。
【0061】
【数4】

【0062】
注目画素に指定された全画素に対して補間されたG色信号成分と、G原画像信号成分とにより構成される参照画像信号は、補間画像作成部45に送信される。補間画像作成部45には、前述のように適応的カーネル関数k(x−x)、及び参照画像信号が適応的カーネル算出部43及び参照画像作成部44から送信される。また、前述のように、補間画像作成部45には、分配部41からG原画像信号成分、Cy原画像信号成分、Or原画像信号成分、B原画像信号成分、及びR原画像信号成分が順番に送信される。
【0063】
補間画像作成部45では、適応的ジョイントバイラテラレル補間法により、生成されていない色信号成分が全画素に対して補間される。例えば、全体の1/2の画素に対してのみ存在するG色信号成分を用いて、他の画素のG色信号成分が補間される。
【0064】
同様に、それぞれ1/8の画素に対してのみ存在するCy色信号成分、Or色信号成分、B色信号成分、及びR色信号成分を用いて、他の画素のCy色信号成分、Or色信号成分、B色信号成分、及びR色信号成分が補間される。全色信号成分の補間により、全色信号成分を有する全画素信号によって構成される補間画像信号が生成される。なお、G色信号成分に関しては参照画像の作成において補間されているが、参照画像を用いた補間が別に行われる。
【0065】
適応的ジョイントバイラテラル補間法を用いた各色信号成分の補間について、G色信号成分を例にして説明する。G色信号成分の補間が行われるべき画素、すなわち原画像信号においてG色信号成分を有さない画素が順番に注目画素に指定される。注目画素を中心とする注目画素の周囲の7行7列の画素が周囲画素に指定される。
【0066】
注目画素の色信号成分は、周囲画素のG色信号成分、適応的カーネル関数、及び参照画像信号に基づいて(5)式により算出される。
【0067】
【数5】

【0068】
なお、(5)式において、Ixiは参照画像における周囲画素の画素値、Iは参照画像における注目画素の画素値である。r(Ixi−I)は、注目画素と周囲画素との画素値の差分に応じた重み付けである。
【0069】
注目画素に対するG色信号成分の補間により、G補間画像信号成分が生成される。以後、同様にCy色信号成分、Or色信号成分、B色信号成分、及びR色信号成分もG色信号成分と同様に補間が行われ、Cy補間画像信号成分、Or補間画像信号成分、B補間画像信号成分、及びR補間画像信号成分が生成される。このように全色信号成分の補間により補間画像信号が生成される。
【0070】
以上のような構成の第1の実施形態の画像処理システムによれば、画素毎に微分値を算出し、微分値すなわち勾配情報に基づいて参照画像を作成し、参照画像と勾配情報とに基づいて補間画像が作成される。
【0071】
一般的に自然画像では、高周波成分においてバンド間の相関が強いことが知られている。従って、各バンドの画像は同じエッジ構造を有する。そこで、すべてのバンドの勾配情報は等しいと仮定される。このような仮定に基づいて、参照画像および補間画像の作成において、何れの色信号成分の微分値であっても、他の色信号成分の補間に用いるための適応的カーネル関数を算出可能である。
【0072】
第1の実施形態では、参照画像の作成においてもすべての画素において勾配情報を用いて適応的カーネル関数が用いられる。そのため、参照画像において、偽像の発生を低減化することが可能である。このように、偽像の発生が抑えられた参照画像と、適応的カーネル関数を用いて色補間を行うので、それぞれの色信号成分において偽像の発生を大幅に低減化させることが可能である。
【0073】
それゆえ、第1の実施形態の画像処理システムによれば、マルチバンドの色信号成分によって構成される原画像信号から偽色の発生を抑えた補間画像信号を生成することが可能である。
【0074】
また、第1の実施形態では、共分散関数の固有値の積に基づいてパラメータμが算出され、適応的カーネル関数の算出に用いられる。パラメータμは前述のように、カーネル関数の大きさを表すパラメータであり、上述のように固有値の積に基づいて算出されるので、注目画素毎にカーネル関数の大きさを適切に設定することが可能である。
【0075】
次に、本発明の第2の実施形態に係る画像処理システムについて説明する。第2の実施形態はデモザイク処理及びMBデモザイク処理部の構成において第1の実施形態と異なっている。以下に、第1の実施形態と異なる点を中心に第2の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と同じ機能及び構成を有する部位には同じ符号を付す。
【0076】
第2の実施形態では、MBデモザイク処理部以外のデジタルカメラの各部位の構成及び機能は第1の実施形態と同じである。
【0077】
第2の実施形態で実行されるデモザイク処理について図7を用いて説明する。図7は、第2の実施形態のMBデモザイク処理部によって実行されるデモザイク処理を説明するための概念図である。
【0078】
第2の実施形態では、適応的ジョイントバイラテラル補間法に用いる適応的カーネル関数が第1の実施形態と異なっている。第1の実施形態では原画像信号OISの全画素信号を用いて算出した適応的カーネル関数を用いているが、第2の実施形態では参照画像信号RISを用いて算出した適応的カーネル関数(符号A参照)を用いている。
【0079】
次に、このようなデモザイク処理を実行するMBデモザイク処理部400の構成及び機能を、図8を用いて説明する。第2の実施形態におけるMBデモザイク処理部400は、分配部410、微分値算出部420、適応的カーネル算出部430、参照画像作成部440、及び補間画像作成部450によって構成される。
【0080】
第2の実施形態では、微分値算出部420、適応的カーネル算出部430、及び参照画像作成部440の機能の一部が第1の実施形態と異なる。微分値算出部420、適応的カーネル算出部430、及び参照画像作成部440が第1の実施形態と同様に機能することにより、参照画像信号が作成される。
【0081】
第1の実施形態と異なり、参照画像信号は微分値算出部420及び適応的カーネル算出部430に送信される。微分値算出部420では、参照画像信号を構成するG色信号成分を用いて画素毎の2方向の微分値(第3の微分値)を算出する。また、第2の実施形態と異なり、適応的カーネル算出部430は、参照画像信号に基づいて算出された微分値を用いた適応的カーネル関数も算出する。
【0082】
参照画像信号に基づいて算出された適応的カーネル関数が、原画像信号に基づいて算出された適応的カーネル関数の代わりに補間画像作成部450に送信される。補間画像作成部450では、参照画像信号に基づいて算出された適応的カーネル関数を用いて各色信号成分の補間を行う。
【0083】
以上のような構成の第2の実施形態の画像処理システムによっても、画素毎に微分値を算出し、微分値すなわち勾配情報に基づいて参照画像を作成し、参照画像と勾配情報とに基づいて補間画像信号が作成可能である。それゆえ、マルチバンドの色信号成分によって構成される原画像信号から偽色の発生を抑えた補間画像信号を生成することが可能である。
【0084】
次に、本発明の第3の実施形態に係る画像処理システムについて説明する。第3の実施形態はデモザイク処理及びMBデモザイク処理部の構成において第1の実施形態と異なっている。以下に、第1の実施形態と異なる点を中心に第3の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と同じ機能及び構成を有する部位には同じ符号を付す。
【0085】
第2の実施形態では、MBデモザイク処理部以外のデジタルカメラの各部位の構成及び機能は第1の実施形態と同じである。
【0086】
第3の実施形態で実行されるデモザイク処理について図9を用いて説明する。図9は、第3の実施形態のMBデモザイク処理部によって実行されるデモザイク処理を説明するための概念図である。
【0087】
第3の実施形態では、各色信号成分の補間に適応的ジョイントバイラテラル補間法でなくガイデッドフィルタ(Guided Filter参照)を利用する点において、第1の実施形態と異なっている。なお、ガイデッドフィルタの算出には適応的カーネル関数が不要である。
【0088】
したがって、第1の実施形態と同様に、適応的カーネル関数が算出され(aK参照)、G原画像信号成分gOISを用いて参照画像信号RISが生成される。次に、参照画像信号RISに基づいてガイデッドフィルタを適用する。
【0089】
ガイデッドフィルタを利用した補間法によりG色信号成分が補間され、G補間画像信号成分gIISが生成される。G色信号成分の代わりに、Cy色信号成分を用いて同様の処理を施すことによりCy補間画像信号成分cyIISが作成される。同様にして、Or補間画像信号成分orIIS、B補間画像信号成分bIIS、及びR補間画像信号成分rIISが生成される。全色信号成分を有する画素信号を全画素に対して生成することにより補間画像IISが作成される。
【0090】
次に、このようなデモザイク処理を実行するMBデモザイク処理部401の構成及び機能を、図10を用いて説明する。第1の実施形態と同様に、MBモザイク処理部401は、分配部411、微分値算出部421、適応的カーネル算出部431、参照画像作成部441、および補間画像作成部451によって構成される。
【0091】
分配部411、微分値算出部421、適応的カーネル算出部431、および参照画像作成部441の機能は、第1の実施形態と同じである。したがって、第1の実施形態と同様に、適応的ガウシアン補間法により参照画像信号が生成される。
【0092】
第1の実施形態と異なり、補間画像作成部451では、ガイデッドフィルタを適用してG色信号成分の補間が行われる。同様に、Cy色信号成分、Or色信号成分、B色信号成分、及びR色信号成分の補間が行われる。
【0093】
まず、ガイデッドフィルタについて説明する。ガイデッドフィルタは、すべての画素が順番に注目画素に指定される。注目画素を中心とする注目画素の周囲の5行5列の画素が周囲画素に指定される。
【0094】
注目画素xに対して、(6)式のコスト関数E(axp、bxp)が最小化するように最小二乗法により係数(axp、bxp)が算出される。
【0095】
【数6】

【0096】
(6)式において、ωは注目画素周辺に存在する信号成分の要素数である。Miはバイナリマスクであって、周囲画素が信号成分を有するときに1であり、周囲画素が信号成分を有さないときには0である。axp、bxpは算出されるべきパラメータであり、計算開始時には適当な初期値が用いられる。Iは周囲画素に対応する参照画像の画素値である。pは信号成分の画素値である。εは所定の平滑化パラメータである。
【0097】
全画素に対する係数(axp、bxp)が算出される。G色信号成分の補間を行うために、原画像信号においてG色信号成分を有さない画素が順番に注目画素に指定される。また、注目画素を中心とする注目画素の周囲の5行5列の画素が周囲画素に指定される。
【0098】
注目画素xの色信号成分qは、(7)式により算出される。
【0099】
【数7】

【0100】
(7)式において、|ω|は注目画素および周囲画素の画素数、即ち5×5の配列において25である。(axp、bxp)は、ガイデッドフィルタにおいて周囲画素に対して算出された係数である。
【0101】
注目画素に対するG色信号成分の補間により、G補間画像信号成分が生成される。以後、同様にCy色信号成分、Or色信号成分、B色信号成分、及びR色信号成分もG色信号成分と同様に補間が行われ、Cy補完画像信号成分、Or補間画像信号成分、B補間画像信号成分、及びR補間画像信号成分が生成される。このように全色信号成分の補間により補間画像信号が生成される。
【0102】
以上のような構成の第3の実施形態の画像処理システムによっても、画素毎に微分値を算出し、微分値すなわち勾配情報に基づいて参照画像を作成し、参照画像に基づいて補間画像信号を作成可能である。それゆえ、マルチバンドの色信号成分によって構成される原画像信号から偽色の発生を抑えた補間画像信号を生成することが可能である。
【0103】
次に、本発明の第4の実施形態に係る画像処理システムについて説明する。第4の実施形態はデモザイク処理及びMBデモザイク処理部の構成において第1の実施形態と異なっている。以下に、第1の実施形態と異なる点を中心に第4の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と同じ機能及び構成を有する部位には同じ符号を付す。
【0104】
第4の実施形態では、MBデモザイク処理部以外のデジタルカメラの各部位の構成及び機能は第1の実施形態と同じである。
【0105】
第4の実施形態で実行されるデモザイク処理について図11を用いて説明する。図11は、第4の実施形態のMBデモザイク処理部によって実行されるデモザイク処理を説明するための概念図である。
【0106】
第4の実施形態では、適応的ジョイントバイラテラル補間法の代わりに、適応的カーネル関数を使用しないジョイントバイラテラル補間法(JBU参照)を用いて全色信号成分の補間を行う点において第1の実施形態と異なっている。
【0107】
次に、このようなデモザイク処理を実行するMBデモザイク処理部の構成及び機能を、図12を用いて説明する。第2の実施形態におけるMBデモザイク処理部402は、分配部412、微分値算出部422、適応的カーネル算出部432、参照画像作成部442、及び補間画像作成部452によって構成される。
【0108】
分配部412、微分値算出部422、適応的カーネル算出部432、および参照画像作成部452の機能は、第1の実施形態と同じである。したがって、第1の実施形態と同様に、適応的ガウシアン補間法により参照画像信号が生成される。
【0109】
第1の実施形態と異なり、補完画像作成部452では、ジョイントバイラテラル補間法によりG色信号成分、Cy色信号成分、Or色信号成分、B色信号成分、及びR色信号成分の補間が行われる。ジョイントバイラテラル補間法では、(4)式において適応的カーネル関数の代わりに、注目画素から周囲画素までの距離に応じて小さくなる重み付けをk(xi−x)として、注目画素の色信号成分が算出される。
【0110】
以上のような構成の第4の実施形態の画像処理システムによっても、画素毎に微分値を算出し、微分値すなわち勾配情報に基づいて参照画像を作成し、参照画像に基づいて補間画像信号を作成可能であるそれゆえ、マルチバンドの色信号成分によって構成される原画像信号から偽色の発生を抑えた補間画像信号を生成することが可能である。
【0111】
なお、適応的カーネル関数を用いずにジョイントバイラテラル補間法により色信号成分を補間する構成であるため、第1の実施形態に比べて偽色の発生の抑止効果が低下する。しかし、参照画像そのものの作成に適応的カーネル関数を用いているので、前述のように参照画像の偽像の発生が低減化されている。それゆえ、従来公知の線形補間により補間画像を作成することに比べて、偽色の発生の抑止効果を向上させることが可能である。
【0112】
次に、本発明の第5の実施形態に係る画像処理システムについて説明する。第5の実施形態はデモザイク処理及びMBデモザイク処理部の構成において第1の実施形態と異なっている。以下に、第1の実施形態と異なる点を中心に第5の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と同じ機能及び構成を有する部位には同じ符号を付す。
【0113】
第5の実施形態では、MBデモザイク処理部以外のデジタルカメラの各部位の構成及び機能は第1の実施形態と同じである。
【0114】
第5の実施形態で実行されるデモザイク処理について図13を用いて説明する。図13は、第5の実施形態のMBデモザイク処理部によって実行されるデモザイク処理の処理を説明するための概念図である。
【0115】
第5の実施形態では、適応的カーネル関数を用いずに通常のガウシアン補間法によりG信号成分を補完して参照画像が作成される(GU参照)。
【0116】
次に、このようなデモザイク処理を実行するMBデモザイク処理部の構成及び機能を、図14を用いて説明する。第5の実施形態におけるMBデモザイク処理部403は、分配部413、微分値算出部423、適応的カーネル算出部433、参照画像作成部443、及び補間画像作成部453によって構成される。
【0117】
分配部413、微分値算出部423、および補間画像作成部453の構成は、第1の実施形態と同じである。適応的カーネル算出部433は、第1の実施形態と同様に、全画素に対する適応的カーネル関数を算出する。しかし、第1の実施形態と異なり、適応的カーネル関数は参照画像作成部443には送信されず、補間画像作成部453にのみ送信される。
【0118】
参照画像作成部443では、第1の実施形態と異なり、G原画像信号成分に対してガウシアン補間法によりG色信号成分を補間し、参照画像信号を生成する。生成した参照画像信号は補間画像作成部453に送信される。
【0119】
前述のように、補間画像作成部453の機能は第1の実施形態と同じであって、適応的カーネル関数、参照画像信号、および原画像信号の各色信号成分に基づいて、各色信号成分の補間を行う。各色信号成分の補間により、全色信号成分を有する画素信号が全画素に対して生成されるので、補間画像信号が生成される。
【0120】
以上のような構成の第5の実施形態の画像処理システムによっても、画素毎に微分値を算出し、参照画像を作成し、参照画像と微分値即ち勾配情報とに基づいて補間画像を作成可能である。それゆえ、マルチバンドの色信号成分によって構成される原画像信号から偽色の発生を抑えた補間画像信号を生成することが可能である。
【0121】
なお、適応的カーネル関数を用いずに通常のガウシアン補間法により参照画像を作成する構成であるため、第1の実施形態に比べて偽色発生の低減化効果は低下する。しかし、適応的カーネル関数を用いて補間画像を作成するため、従来公知の線形補間により補間画像を作成することに比べて、偽色の発生を低下させることが可能である。
【0122】
次に、本発明の第6の実施形態に係る画像処理システムについて説明する。第6の実施形態はデモザイク処理及びMBデモザイク処理部の構成において第1の実施形態と異なっている。以下に、第1の実施形態と異なる点を中心に第6の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と同じ機能及び構成を有する部位には同じ符号を付す。
【0123】
第6の実施形態では、MBデモザイク処理部以外のデジタルカメラの各部位の構成及び機能は第1の実施形態と同じである。
【0124】
第6の実施形態で実行されるデモザイク処理について図15を用いて説明する。図15は、第6の実施形態のMBデモザイク処理部によって実行されるデモザイク処理の処理を説明するための概念図である。
【0125】
第6の実施形態では、適応的カーネル関数を用いずに通常のガウシアン補間法によりG信号成分を補間して参照画像が作成される(GU参照)。また、適応的ジョイントバイラテラル補間法に用いる適応的カーネル関数が第1の実施形態と異なっている。第6の実施形態では、第2の実施形態と同様に、参照画像を用いて算出した適応的カーネル関数を用いている。
【0126】
次に、このようなデモザイク処理を実行するMBデモザイク処理部の構成及び機能を、図16を用いて説明する。第6の実施形態におけるMBデモザイク処理部404は、分配部414、微分値算出部424、適応的カーネル算出部434、参照画像作成部444、及び補間画像作成部454によって構成される。
【0127】
第6の実施形態では、分配部414、微分値算出部424、適応的カーネル算出部434、参照画像作成部444、及び補間画像作成部454の機能の一部が第1の実施形態と異なる。
【0128】
第1の実施形態と異なり、分配部414から微分値算出部424には色信号成分が送信されず、参照画像作成部444及び補間画像作成部454に色信号成分が送信される。
【0129】
参照画像作成部444では、第5の実施形態のように、適応的カーネル関数を用いずにG原画像信号成分に対して通常のガウシアン補間法によりG色信号成分を補間し、参照画像信号を生成する。生成した参照画像信号は、第2の実施形態と同様に、微分値算出部424及び補間画像作成部454に送信される。
【0130】
第2の実施形態と同様に、微分値算出部424では、参照画像信号を構成するG色信号成分を用いて画素毎の2方向の微分値を算出する。算出された微分値が適応的カーネル算出部434に送信される。適応的カーネル算出部434では、参照画像信号に基づいて算出された微分値を用いて適応的カーネル関数を算出する。算出された適応的カーネル関数が補間画像作成部454に送信される。
【0131】
補間画像作成部454では、通常のガウシアン補間法により生成した参照画像信号及び参照画像信号による適応的カーネル関数を用いて各色信号成分の補間を行う。
【0132】
以上のような構成の第6の実施形態の画像処理システムによっても、参照画像を作成し、参照画像に基づく微分値を算出し、参照画像と微分値即ち勾配情報とに基づいて補間画像信号を作成可能である。それゆえ、マルチバンドの色信号成分によって構成される原画像信号から偽色の発生を抑えた補間画像信号を生成することが可能である。
【0133】
なお、第5の実施形態と同様に、適応的カーネル関数を用いずにガウシアン補間法により参照画像を作成する構成であるため、第1の実施形態に比べて偽色発生の低減化効果は低下する。しかし、適応的カーネル関数を用いて補間画像を作成するため、従来公知の線形補間により補間画像を作成することに比べて、偽色の発生を低下させることが可能である。
【0134】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。
【0135】
例えば、上記の第1〜第6の実施形態において、全色信号成分そのものが補間画像作成部45、450、451、452、453、454において補間される構成であるが、一部の色信号成分においては色差を用いて補間を行うことにより色信号成分を生成してもよい。
【0136】
例えば、第1の実施形態において色差を利用した補間画像信号の生成について説明する。図17に示すように、G補間画像信号成分gIIS、Cy補間画像信号成分cyIIS、及びOr補間画像信号成分orIISは、第1の実施形態と同様に生成される。
【0137】
生成されたCy補間画像信号成分cyIISの中から、B原画像信号成分bOISが存在する画素と同じ画素におけるCy色信号成分が抽出される。減算器46により、B原画像信号成分bOISから、抽出されたCy色信号成分が減算され、第1の色差原画像信号成分d1OISが生成される。同様に、Or補間画像信号成分orIIS及びR原画像信号成分rOISから第2の色差原画像信号成分d2OISが生成される。
【0138】
適応的カーネル関数、参照画像信号RIS、及び第1の色差原画像信号成分d1OISを用いて、適応的ジョイントバイラテラル補間法により、生成されていない第1の色差信号成分が全画素に対して補間される。第1の色差信号成分の補間により第1の色差補間画像信号成分d1IISが生成される。同様に、適用的カーネル関数、参照画像信号RIS、及び第2の色差原画像信号成分d2OISを用いて適応的ジョイントバイラテラル補間法により、第2の色差補間画像信号成分d2IISが生成される。
【0139】
加算器47により、第1の色差補間画像信号成分d1IISに、Cy補間画像信号成分cyIISが加算されることにより、B補間画像信号成分bIISが生成される。同様に、第2の色差補間画像信号成分d2IISに、Or補間画像信号成分orIISが加算されることにより、R補間画像信号成分rIISが生成される。
【0140】
このように、色差を用いて補間を行うことも可能である。色差を用いて補間を行うことにより、いずれかの色信号成分のノイズ成分が多い場合であっても、当該画素における極端な色再現性の悪化を抑止することが可能である。
【0141】
なお、上述の説明においては、第1の実施形態の変形例において色差を利用した補間が行われているが、第2〜第6の実施形態においても、同様に色差を利用した補間を行うことは可能である。
【0142】
また、上述の説明においては、Cy色信号成分及びB色信号成分の色差と、Or色信号成分及びR色信号成分の色差とが算出され、補間が行われている。色差の算出に用いる色差の互いのバンドが近くなるほど、色再現性を向上に有利である。ただし、色差の算出はこれらの組合わせに限定されない。例えば、G補間画像信号成分とCy原画像信号成分とに基づく色差信号成分を補間する構成であってもよい。
【0143】
また、第1〜第6の実施形態において、G原画像信号成分を用いて参照画像信号を生成する構成であるが、補間画像信号のいずれかの色信号成分を生成した後に、生成した補間画像信号を参照画像信号として他の色信号成分の補間に用いても良い。
【0144】
上記の第1〜第6の実施形態において、G原画像信号成分に基づいて生成された参照画像信号を用いて全色信号成分そのものが補間される構成であるが、例えば、生成したG補間画像信号成分を参照画像信号(二次参照画像)として、Cy原画像信号成分、OR原画像信号成分、B原画像信号成分、及びR原画像信号成分の補間に用いてもよい。
【0145】
G原画像信号成分に基づいて生成される参照画像信号よりも、補間画像信号成分の方が一般的に、色信号成分の再現性は高い。それゆえ、補間画像信号成分を参照画像信号として用いることにより、補間画像の再現性を向上させることが可能である。
【0146】
また、第1〜第6の実施形態において、CFA21aではGカラーフィルタの割合が最大であるが、他のバンドのカラーフィルタの割合が最大であってもよい。
【0147】
また、第1、第2、第4〜第6の実施形態において、(適用的)ジョイントバイラテラル補間では、注目画素と周囲画素との画素値の差分に応じた重み付けr(Ixi−I)を用いる構成であるが、注目画素と周囲画素との類似性に応じた他の重み付けを用いてもよい。
【0148】
(適用的)ジョイントバイラテラル補間法では、参照画像において注目画素と周囲画素との光学情報が似ている、即ち画素値の差が近い場合に、周囲画素の重み付けが大きくなるように構成される。したがって、このような重み付けの代わりに、上述のように類似性が大きいほど、大きな重み付けをすることにより上述の実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0149】
例えば、参照画像信号において、注目画素を中心とする3行3列の画素と、周囲画素を中心とする3行3列の画素の画素値の差の相乗平均を、注目画素と周囲画素との類似性として、相乗平均に応じて重み付けを行ってもよい。
【0150】
また、第1〜第4の実施形態において、最多のGカラーフィルタの割合は50%であるが、50%に限定されない。参照画像信号の生成には適用的ガウシアン補間法が適用されるので、通常のガウシアン補間法に比べて色成分の精度が高い参照画像信号を生成可能である。
【0151】
また、第5、第6の実施形態において、CFA21aの各画素に対して斜方に隣接する2画素に対応するカラーフィルタのバンドが等しい構成であるが、このような配置でなくてもよい。第5、第6の実施形態では、参照画像信号の生成に適用的カーネル関数を用いないので、上述のようなカラーフィルタ配置に限定されない。
【0152】
また、第1〜第6の実施形態において、CFA21aには5バンドのカラーフィルタが設けられる構成であるが、3バンド以上であればよい。
【0153】
また、第2の実施形態において、単一の微分値算出部420によって、原画像信号に基づく微分値及び参照画像信号に基づく微分値が算出される構成であるが、別々の微分値算出部によって別々に算出されてもよい。
【0154】
また、第6の実施形態において、参照画像信号に基づいて注目画素の斜め方向に沿った微分値が算出される構成であるが、行方向及び列方向に沿った微分値を算出する構成であってもよい。参照画像信号には、欠落した画素信号が無いので行方向及び列方向に沿った微分値が算出可能である。また、上述のように第2の実施形態において、別々の微分値算出部を用いて参照画像信号に基づく微分値を算出する場合には、参照画像信号に基づく微分値の算出において行方向及び列方向に沿った微分値を算出する構成であってもよい。
【0155】
また、第1、第2の実施形態において、適応的カーネル関数の算出に用いる所定の設計パラメータhには、適応的ガウシアン補間法及び適応的ジョイントバイラテラルアップサンプリングの両者ともに同一の値が用いられる構成であるが、両者の間で異なる値が用いられる構成であってもよい。
【0156】
また、第1〜第6の実施形態において、各色に対応する原画像信号成分において欠落した画素信号を補間することにより参照画像信号及び各色に対応する補間画像信号成分が生成される構成であるが、原画像信号成分において欠落せずに検出された画素も注目画素として補間を行ってもよい。
【0157】
また、第1〜第6の実施形態において、画像処理システムはデジタルカメラ10に適用される構成であるが、一部の色信号成分が欠落するマルチバンドの画像信号を処理するいかなる機器に適用することが出来る。例えば、ビデオカメラ及び電子内視鏡に適用することも可能であり、さらには、記録メディアや接続ケーブルを介して受信する画像信号の処理を行う画像処理装置に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0158】
10 デジタルカメラ
20 撮像素子
21a カラーフィルタアレイ(CFA)
21u カラーフィルタ繰返し単位
30 画像信号処理部
40、400、401、402、403、404 マルチバンドデモザイク(MB)処理部
41、410、411、412、413、414 分配部
42、420、421、422、423、424 微分値算出部
43、430、431、432、433、434 適応的カーネル算出部
44、440、441、442、443、444 参照画像作成部
45、450、451、452、453、454 補間画像作成部
46 減算器
47 加算器
IIS 補間画像信号
bIIS B補間画像信号成分
cyIIS Cy補間画像信号成分
d1OIS、d2OIS 第1、第2の色差原画像信号成分
gIIS G補間画像信号成分
orIIS Or補間画像信号成分
rIIS R補間画像信号成分
RIS 参照画像信号
OIS 原画像信号
bOIS B原画像信号成分
cyOIS Cy原画像信号成分
gOIS G原画像信号成分
orOIS Or原画像信号成分
rOIS R原画像信号成分
RIS 参照画像信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1〜第m(mは3以上の整数)の色信号成分のいずれかを有する複数の画素信号によって構成される原画像信号から、前記原画像信号を構成する全画素信号が第1〜第mの色信号成分を有するように前記色信号成分の補間を行う画像処理システムであって、
前記原画像信号を受信する受信部と、
前記画素信号それぞれに対応する画素を挟む同色の2画素を用いて前記画素信号の微分値を算出する微分値算出部と、
前記原画像信号の中の前記第1の色信号成分を用いて一次参照画像を作成する参照画像作成部と、
前記一次参照画像を用いて、全色信号成分を補間して補間画像を作成する補間画像作成部とを備え、
前記一次参照画像及び前記補間画像の少なくとも一方は、微分値を用いて作成される
ことを特徴とする画像処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理システムであって、前記原画像信号を構成する複数の前記画素信号の中で前記第1の色信号成分の要素数が最大であり、前記補間画像のみが前記微分値を用いて作成され、前記参照画像作成部は前記第1の色信号成分を補間することにより前記第1の色信号成分のみを有する前記全画素信号によって構成される一次参照画像信号を作成することを特徴とする画像処理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の画像処理システムであって、
前記微分値算出部は、前記原画像信号を用いて前記画素毎に第1の前記微分値を算出し、
前記参照画像作成部は、前記第1の微分値を用いて前記第1の色信号成分を補間することにより、前記第1の色信号成分のみを有する前記全画素信号によって構成される一次参照画像信号を作成する
ことを特徴とする画像処理システム。
【請求項4】
請求項3に記載の画像処理システムであって、前記参照画像作成部は、適応的ガウシアン補間法により、前記第1の微分値を用いて前記第1の色信号成分を補間することを特徴とする画像処理システム。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の画像処理システムであって、前記一次参照画像のみが前記第1の微分値を用いて作成されることを特徴とする画像処理システム。
【請求項6】
請求項5に記載の画像処理システムであって、前記補間画像作成部はガイデッドフィルタにより、前記全色信号成分を補間することを特徴とする画像処理システム。
【請求項7】
請求項5に記載の画像処理システムであって、前記補間画像作成部はジョイントバイラテラル補間により、前記全色信号成分を補間することを特徴とする画像処理システム。
【請求項8】
請求項1、請求項2、及び請求項4のいずれかに記載の画像処理システムであって、
前記微分値算出部は、前記原画像信号を用いて前記画素毎に第2の前記微分値を算出し、
前記補間画像作成部は、前記一次参照画像と前記第2の微分値を用いて前記補間画像を作成する
ことを特徴とする画像処理システム。
【請求項9】
請求項3に記載の画像処理システムであって、前記補間画像作成部は前記一次参照画像と前記第1の微分値を用いて前記補間画像を作成することを特徴とする画像処理システム。
【請求項10】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の画像処理システムであって、
前記微分値算出部は、前記一次参照画像を用いて前記画素毎に第3の前記微分値を算出し、
前記補間画像作成部は、前記一次参照画像と前記第3の微分値を用いて前記補間画像を作成する
ことを特徴とする画像処理システム。
【請求項11】
請求項8または請求項10に記載の画像処理システムであって、前記補間画像作成部は、適応的ジョイントバイラテラル補間によって、前記全色信号成分を補間することを特徴とする画像処理システム。
【請求項12】
請求項11に記載の画像処理システムであって、前記適応的ジョイントバイラテラル補間では、前記画素間の画素信号の信号強度の差に基づく重付け、或いは算出に用いる複数の前記画素の周囲の類似性に基づく重付けが用いられることを特徴とする画像処理システム。
【請求項13】
請求項1〜請求項12のいずれかに記載の画像処理システムであって、
前記補間画像作成部は、
前記一次参照画像を用いて前記第2の色信号成分の補間を行い、
前記第3の色信号成分を有する前記画素信号に対応する前記第2の色信号成分と、前記第3の色信号成分との色差を算出し、
前記一次参照画像を用いて前記色差を補間し、
補完された前記色差と補間された前記第2の色信号成分とに基づいて、前記全画素信号に対応する前記第3の色信号成分が作成する
ことを特徴とする画像処理システム。
【請求項14】
請求項1〜請求項12のいずれかに記載の画像処理システムであって、
前記補間画像作成部は、
前記一次参照画像を用いて前記第1〜第mの色信号成分のいずれかの補間を行い、
補間された前記色信号成分によって構成される画像を二次参照画像とし、前記二次参照画像を用いて、補間の行われていない前記色信号成分の補間を行う
ことを特徴とする画像処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−239038(P2012−239038A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106717(P2011−106717)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】