説明

画像処理システム

【課題】適切な良否判定を行う。
【解決手段】画像処理システム10は、入力された画像データに印刷用の画像処理を施して、ページ単位で変更される付加データを付加する画像処理部と、印刷用の画像処理が施された画像データを印刷処理する印刷装置3と、印刷処理によって用紙上に印刷された画像を読み取る画像読取装置5と、印刷用の画像処理が施された画像データと画像読取装置5によって得られた読取データを比較し、用紙上に印刷された画像が不良か否かを判定する制御部と、を備え、制御部は付加データが付加された部分とその他の部分とで、不良か否かの判定基準を切り替えて判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷装置によって印刷処理された用紙上の画像がスキャナー等によって読み取られ、この読取データと印刷処理された元の画像データとの比較により、印刷結果の良否判定が行われていた(例えば、特許文献1、2参照)。自動で印刷結果の良否が判定され、印刷不良が生じると印刷動作を中止する制御が行われるので、大量の印刷不良が出ることを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−205706号公報
【特許文献1】特開2005−271297号公報
【特許文献3】特開2003−123055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1〜3によれば、元の画像データがそのまま読取データとの比較に用いられるが、実際には印刷処理時に元の画像データに画像処理が施されていることが多い。例えば、ページ番号や宛名、住所等の付加データの付加、拡大縮小、ページ割付等の画像処理である。このような画像処理が加えられた場合、印刷された用紙の読取データと元の画像データをそのまま比較すれば常に不良と判定され、判定精度が著しく低下する。特に、宛名や住所等が付加された場合、その部分はユーザにとって重点的な良否判定が望まれるにも拘わらず、従来の判定によれば良否判定自体が行われない。
【0005】
また、スキャナーの読取特性と、印刷装置の印刷特性は異なる。色特性でいえば、スキャナーによる読取データはRGB(赤、緑、青の3色)の色空間に分解されるが、印刷装置が印刷する画像データはYMCK(イエロー、マジェンタ、シアン、黒の4色)の色空間に分解される。このように同じ画像でも画像のベースとなる特性が異なると、比較時の一致条件によっては適切な良否判定が行われず、判定精度が低下することが考えられる。
【0006】
本発明の課題は、適切な良否判定を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、
入力された画像データに印刷用の画像処理を施して、ページ単位で変更される付加データを付加する画像処理部と、
印刷用の画像処理が施された前記画像データを印刷処理する印刷装置と、
印刷処理によって用紙上に印刷された画像を読み取る画像読取装置と、
印刷用の画像処理が施された前記画像データと前記画像読取装置によって得られた読取データを比較し、用紙上に印刷された画像が不良か否かを判定する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記付加データが付加された部分とその他の部分とで、不良か否かの判定基準を切り替えて判定する画像処理システムが提供される。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、
前記制御部は、印刷用の画像処理が施された前記画像データに、前記印刷装置の印刷特性、前記画像読取装置の読取特性の補正処理を施し、補正処理された前記画像データと前記読取データを比較する請求項1に記載の画像処理システムが提供される。
【0009】
請求項3に記載の発明によれば、
前記制御部は、印刷用の画像処理が施された前記画像データに、前記印刷装置の印刷特性の補正処理を施し、前記読取データに前記画像読取装置の読取特性の補正処理を施し、補正処理が施された前記画像データと前記読取データを比較する請求項1に記載の画像処理システムが提供される。
【0010】
請求項4に記載の発明によれば、
前記制御部は、前記付加データが付加された部分かその他の部分かによって不良か否かの判定基準を切り替え、さらに付加データが付加された部分の中、或いはその他の部分の中で、前記画像データの属性データを元に画像の属性単位で判定基準を切り替える請求項1〜3の何れか一項に記載の画像処理システムが提供される。
【0011】
請求項5に記載の発明によれば、
前記制御部は、前記付加データが付加された部分かその他の部分かによって不良か否かの判定基準を切り替え、さらに付加データが付加された部分の中、或いはその他の部分の中で、予め定められた単位又はユーザにより指定された単位で判定基準を切り替える請求項1〜3の何れか一項に記載の画像処理システムが提供される。
【0012】
請求項6に記載の発明によれば、
前記制御部は、比較の対象である領域を解像度変換処理した後、前記画像データと前記読取データを比較する請求項4に記載の画像処理システムが提供される。
【0013】
請求項7に記載の発明によれば、
前記制御部は、印刷用の画像処理によって付加データが加えられた部分とその他の部分とで変換する解像度を切り替える請求項6に記載の画像処理システムが提供される。
【0014】
請求項8に記載の発明によれば、
前記制御部は、前記画像データの属性データに基づき、画像の属性毎に変換する解像度を切り替える請求項6に記載の画像処理システムが提供される。
【0015】
請求項9に記載の発明によれば、
前記印刷用の画像処理は、前記付加データを付加する画像処理、ウォーターマーク、地紋画像を付加する画像処理、画像の回転、縮小、拡大又はページ割付の画像処理を含む請求項1〜8の何れか一項に記載の画像処理システムが提供される。
【0016】
請求項10に記載の発明によれば、
前記印刷特性、前記読取特性の補正処理は、色変換処理、周波数変換処理、画像の回転、変形、移動、拡大、縮小、階調処理又は解像度変換処理を含む請求項2又は3に記載の画像処理システムが提供される。
【0017】
請求項11に記載の発明によれば、
前記印刷装置の印刷特性、前記画像読取装置の読取特性の特性値又はその補正処理の補正値を記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、定期的に入力される更新データによって前記記憶部に記憶された特性値又は補正値を更新し、更新後の特性値又は補正値を用いて補正処理を施す請求項2、3又は10の何れか一項に記載の画像処理システムが提供される。
【0018】
請求項12に記載の発明によれば、
前記印刷装置は、用紙上に印刷された画像が不良と判定された場合、不良と判定された用紙の通知を表示部に表示するか、不良と判定された用紙を良と判定された用紙と別の排紙先に排紙するか、或いは印刷処理を停止する請求項1〜11の何れか一項に記載の画像処理システムが提供される。
【0019】
請求項13に記載の発明によれば、
記憶部を備え、
前記制御部は判定結果とともに前記読取データを前記記憶部に保存する請求項1〜12の何れか一項に記載の画像処理システムが提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、画像データに付加データが付加された場合でも、当該付加データが付加された画像データと読取データを比較するので、印刷用の画像処理が良否判定を妨げることがなく、適切な良否判定を行うことができる。また、付加データが付加された部分とその他の部分とで判定基準を切り替えることができ、付加データが付加された部分に重点をおいて良否判定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施の形態に係る画像処理システムを示す図である。
【図2】プリントコントローラーと印刷装置の機能ブロック図である。
【図3】判定装置の機能ブロック図である。
【図4】画像処理システムにおける印刷処理、良否判定処理の流れを示す図である。
【図5】印刷用の画像処理の前後の画像例である。
【図6】印刷特性、読取特性の補正処理の前後の画像例である。
【図7】判定装置が実行する良否判定処理のフローチャートである。
【図8】良否判定時に比較される2つのデータの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0023】
図1は、本実施の形態に係る画像処理システム10を示す。
画像処理システム10は、図1に示すように、ホスト端末1、プリントコントローラー2、印刷装置3、画像読取装置5、判定装置6を備えて構成されている。画像処理システム10では、ホスト端末1において作成されたアプリケーションファイル形式のデータが、プリントコントローラー2によってラスタライズされ、ラスタライズによって生成された画像データが印刷装置3において印刷処理される。印刷装置3によって用紙上に印刷された画像は、画像読取装置5に読み取られ、判定装置6によって不良か否かが判定される。
【0024】
ホスト端末1は、ワープロや表計算、描画等のアプリケーションプログラムによってアプリケーションファイル形式のデータを作成する。ユーザによって印刷が指示されると、ホスト端末1はプリンタードライバープログラムによってアプリケーションファイル形式のデータをPDL(Page Description Language)データに変換し、プリントコントローラー2に送信する。プリンタードライバープログラムによれば、印刷部数、用紙サイズ等の基本的な印刷設定の他、オプションの印刷設定が可能である。オプションの印刷設定としては、ページ番号の付加、フッター又はヘッダーへの文字の付加、住所、宛名又は電話番号の文字の付加、ウォーターマーク、地紋画像の付加、画像の回転、縮小又は拡大、ページ割付、濃度の指定等がある。PDLデータはこれらの印刷設定を印刷コマンドとして含む。
【0025】
プリントコントローラー2は、ホスト端末1から送信されたPDLデータをラスタライズし、ビットマップ形式の画像データを生成する。
印刷装置3は、プリントコントローラー2により生成された画像データの印刷処理を行う。印刷装置3はコピーも可能である。
【0026】
図2は、プリントコントローラー2と印刷装置3の機能ブロック図である。
図2に示すように、プリントコントローラー2は、制御部21、通信部22、RIP(Raster Image Processer)23、メモリー制御部24、メモリー25を備えて構成されている。
【0027】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等から構成され、プリントコントローラー2の各部を制御する。
通信部22は通信用のインターフェイスを備え、ホスト端末1と通信する。通信部22は、ホスト端末1からPDLデータを受信する。
【0028】
RIP23は、ホスト端末1から送信されたPDLデータを解析し、ディスプレイリスト及びレイアウト情報を作成する。ディスプレイリストは、オブジェクトの大きさ、色、属性等の情報を含む。オブジェクトの属性は文字(Text)、図形(Graphic)、写真(Image)である。レイアウト情報は各ページにおけるオブジェクトの配置の情報を含む。RIP23はディスプレイリスト及びレイアウト情報を用いて、ページ単位で各オブジェクトをビットマップに展開した画像データを生成する。また、RIP23はディスプレイリストを元に画像データの各画素の属性を示す属性データを生成する。RIP23は印刷コマンドをPDLデータから抽出し、生成された画像データを属性データ、印刷コマンドとともにメモリー制御部24に出力する。
【0029】
メモリー制御部24はRIP23によって生成された画像データを属性データ、印刷コマンドとともにメモリー25に書き込み、保存する。メモリー制御部24は印刷装置3のメモリー制御部43とPCI(Peripheral Components Interconnect)バスで接続され、メモリー25に保存されている画像データ、属性データ、印刷コマンドを読み出してメモリー制御部43に送信する。メモリー25としてはDRAM(Dynamic RAM)を用いることができる。
【0030】
印刷装置3は、制御部31、記憶部32、表示部33、タッチパネル34、操作部35、通信部36、スキャナー41、画像処理部42、メモリー制御部43、メモリー44、印刷部45、スタッカー46を備えて構成されている。画像処理部42は、読取処理部421、圧縮IC422、伸張IC424、書込処理部423を備えている。また、画像読取装置5は印刷装置3内の印刷部45とスタッカー46間の用紙の搬送経路上に配置されている。
【0031】
制御部31はCPU、RAM等から構成されている。制御部31は、記憶部32に記憶されたプログラムとの協働により印刷処理等を実行して、印刷装置3の各部を制御する。
例えば、制御部31はスタッカー46による排紙動作を制御し、印刷処理により用紙上に印刷された画像が不良であると判定装置6により判定された場合、スタッカー46に当該用紙を良と判定された用紙とは別の排紙先に排紙させる。また、制御部31は不良と判定された用紙を通知する表示画面を表示部33に表示させ、印刷部45による印刷処理を停止させることもできる。
【0032】
記憶部32は、制御部31により実行されるプログラム、プログラムの実行に必要なファイルやデータを記憶する。記憶部32としてはハードディスク等を用いることができる。
【0033】
表示部33は、制御部31の表示制御に従ってタッチパネル34上に操作画面や判定装置6により不良と判定された用紙を通知する表示画面等を表示させる。
操作部35は、タッチパネル34、その他操作キーの操作に応じた操作信号を制御部31に出力する。操作部35を介してユーザは印刷部数、用紙サイズ等の印刷設定の他、ページ番号の付加、拡大縮小等のオプションの印刷設定の操作が可能である。
【0034】
通信部36は通信用のインターフェイスを備え、判定装置6と通信する。通信部36はプリントコントローラー2により生成された画像データ、当該画像データの属性データ、当該画像データに施された印刷用の画像処理の処理条件、印刷用の画像処理により付加された付加データ等を判定装置6に送信する。また、通信部36は判定装置6から判定結果を受信する。
【0035】
スキャナー41は原稿の画像を読み取る。
読取処理部421は、スキャナー41によって読み取られた原稿の画像をA/D変換し、シェーディング処理等の画像処理を施す。スキャナー41によって読み取られた画像はR(赤)、G(緑)、B(青)の3色に分解された画像であるので、読取処理部421は画像を色変換処理し、印刷部45の色材であるY(イエロー)、M(マジェンタ)、C(シアン)、K(黒)の4色の画像データを生成する。
圧縮IC422は、読取処理部421から出力された画像データを圧縮処理する。
【0036】
メモリー制御部43は、プリントコントローラー2のメモリー制御部24から送信された画像データ、圧縮IC422によって圧縮処理された画像データをメモリー44に書き込み、保存する。印刷処理時、メモリー制御部43はメモリー44に保存された画像データを読み出して伸張IC424に出力する。
【0037】
伸張IC424は、圧縮処理された画像データを伸張処理する。
書込処理部423は、印刷コマンドに従って、伸張IC424によって伸張処理された画像データに印刷用の画像処理を施す。印刷用の画像処理としては、ページ単位で変更される付加データを付加する処理が挙げられる。付加データは、ページ番号、フッター又はヘッダーの文字、住所、宛名又は電話番号の文字等であり、ページ単位で付加される内容が変更される。その他の印刷用の画像処理には、ウォーターマーク、地紋画像の付加、画像の回転、縮小又は拡大、ページ割付の画像処理、階調処理等がある。書込処理部423は、これら印刷用の画像処理のうち、印刷コマンドで指定された画像処理を画像データに施す。書込処理部423は、画像処理された画像データをスクリーン処理後、PWM(Pulse Width Modulation)変換し、印刷部45に出力する。
【0038】
印刷部45は、露光部、現像部、感光ドラム、定着装置等を備え、電子写真方式の印刷処理を行う。印刷処理において、露光部はPWM変換された画像データに基づき、帯電した感光ドラム上にレーザ光を照射する。感光ドラム上には静電潜像が形成される。現像部が感光ドラムを現像すると、感光ドラム上にトナーの画像が形成され、当該トナー画像は中間ベルト等に1次転写される。YMCKの4色のトナーについて同様の画像形成が繰り返し行われ、中間ベルト上に4色分のトナー画像が重ねられ、カラー画像が形成される。カラー画像は用紙上に2次転写され、用紙は定着装置に搬送されて定着処理される。
【0039】
スタッカー46は複数の排紙トレイを備え、印刷部45によって印刷処理され、排紙された用紙を排紙トレイ上に積載する。スタッカー46は制御部31の制御に従い、指定された排紙トレイへ用紙を搬送し、積載する。
【0040】
画像読取装置5は印刷部45の排紙口付近、スタッカー46への搬入口までの間に設けられ、印刷処理後、印刷部45から排紙された用紙上の画像を読み取り、ビットマップ形式の読取データを生成する。画像読取装置5によって得られた読取データは判定装置6に送信される。画像読取装置5と判定装置6をUSB(Universal Serial Bus)等のインターフェイスによって接続し、画像読取装置5から判定装置6に読取データを送信してもよいし、ネットワークを介して画像読取装置5から判定装置6に読取データを送信してもよい。
【0041】
判定装置6は、印刷装置3によって印刷処理された元の画像データを画像処理して比較用データを作成し、当該比較用データと画像読取装置5によって得られた読取データとを比較し、用紙上に印刷された画像が不良か否かを判定する。
【0042】
図3は、判定装置6の機能ブロック図である。
判定装置6は、図3に示すように制御部61、記憶部62、操作部63、表示部64、通信部65、画像処理部66を備えて構成されている。
【0043】
制御部61はCPU、RAM等から構成され、記憶部62に記憶されているプログラムを読み出して、当該プログラムとの協働により良否判定処理等を実行し、各部の動作を制御する。
良否判定処理において、制御部61は画像処理部66によって元の画像データから作成された比較用データと、画像読取装置5から得られた読取データとを比較し、用紙上に印刷された画像が不良か否かを判定する。判定時、制御部61は印刷用の画像処理によって付加データが付加された部分とその他の部分とで不良か否かの判定基準を切り替える。
【0044】
制御部61は、印刷装置3の印刷特性、画像読取装置5の読取特性の補正処理を画像データに施すことができる。印刷装置3の印刷特性、画像読取装置5の読取特性の特性値は、記憶部62に記憶されているので、制御部61はこの特性値を補正処理に用いる。
【0045】
記憶部62は制御部61により実行されるプログラム、プログラムの実行に必要なファイルやデータを記憶する。記憶部62は、良否判定処理に必要な印刷装置3の印刷特性、画像読取装置5の読取特性の特性値を記憶する。また、記憶部62は良否判定処理による判定結果を記憶する。記憶部62としてはハードディスク等を用いることができる。
【0046】
表示部64は制御部61の表示制御に従い、ディスプレイ上に判定結果等を表示する。
操作部63はキーボードやマウス等の操作に応じた操作信号を制御部61に出力する。
通信部65は通信用のインターフェイスを備え、印刷装置3と通信する。通信部65は印刷装置3から、印刷処理された元の画像データ、属性データ、付加データ、その他画像データに施された印刷用の画像処理の処理条件を受信する。また、通信部65は画像読取装置5から読取データを受信する。
【0047】
画像処理部66は、通信部65により印刷装置3から受信された元の画像データに付加データを付加する印刷用の画像処理を施し、比較用データを作成する。付加データの付加以外にも印刷用の画像処理が施されている場合、画像処理部66は印刷装置3から送信された印刷用の画像処理の処理条件に従って、印刷処理時に元の画像データに施された印刷用の画像処理と同じ内容の画像処理を、元の画像データに施す。
【0048】
図4は、上記画像処理システム10における印刷処理と良否判定処理の流れを示す。
ホスト端末1においてユーザにより印刷が指示されると、図4に示すように、ホスト端末1はPDLデータを作成してプリントコントローラー2に送信する(ステップS1)。プリントコントローラー2はホスト端末1から送信されたPDLデータをラスタライズし、画像データを生成する(ステップS2)。画像データは属性データ、印刷コマンドとともに印刷装置3に送信される。印刷装置3は印刷コマンドに従って画像データに印刷用の画像処理を施し(ステップS3)、画像処理後の画像データを印刷処理する(ステップS4)。印刷処理された元の画像データは属性データ、付加データ、印刷用の画像処理の処理条件とともに、判定装置6に送信される。
【0049】
画像読取装置5は印刷処理により用紙上に印刷された画像を読み取って、読取データを生成する(ステップS5)。生成された読取データは判定装置6に送信される。
判定装置6は良否判定処理を実行し(ステップS6)、印刷装置3から送信された元の画像データと、画像読取装置5から送信された読取データを用いて用紙上に印刷された画像が不良か否かを判定する。
【0050】
図5は、判定装置6が実行する良否判定処理のフローチャートである。
図5に示すように、判定装置6の画像処理部66は、印刷装置3から送信された印刷用の画像処理の処理条件に基づき、元の画像データに印刷用の画像処理を施し、比較用データを作成する(ステップT1)。
【0051】
図6は印刷用の画像処理例である。
元の画像データg1は、図6に示すように3ページ分ある。印刷処理時にページ番号の付加データの付加と4面のページ割付の画像処理がされている場合、同じ処理内容の画像処理が元の画像データg1に施される。その結果、図6に示す画像処理後の画像データg2は、各ページの画像が縮小されて1ページ内を4分割した領域にそれぞれ配置され、各ページのフッターに、全ページに対するページ番号(1/3、2/3、3/3の文字)の付加データg21が付加されている。
【0052】
好ましくは、印刷用の画像処理が施された元の画像データに、制御部61が印刷装置3の印刷特性、画像読取装置5の読取特性の補正処理を施して、比較用データを作成する。印刷装置3の印刷特性や画像読取装置5の読取特性によって、読取データと元の画像データとで画像の特性が異なると、比較の基準がもともとずれていることになるため、判定精度が低下する。このような場合は、画像処理によって比較用データの画像の特性を比較対象の読取データに合わせて可能な限り一致させ、判定精度の低下を回避する。
【0053】
印刷特性としては、印刷に用いられる色材の色特性、印刷位置や倍率のずれ、歪み等による画像の位置ずれ、画像のMTF(Modulation Transfer Function;空間周波数特性)、解像度(画素密度dpi;dot per inch)、階調特性等が挙げられる。また、読取特性としては読取時の色特性、読取位置や読取倍率、歪み等による画像の位置ずれ、画像のMTF、解像度、階調特性等が挙げられる。これら印刷特性、読取特性は予め特定されて特性値としてメモリー44に保存されている。
【0054】
印刷特性、読取特性の補正処理としては、例えば色変換処理、周波数変換処理、画像の回転、変形、移動、拡大、縮小、階調処理又は解像度変換処理等が挙げられる。
【0055】
色特性に関していえば、画像読取装置5の表色系はRGBであり、印刷装置3の表色系はYMCKである。よって、画像処理部66はYMCKの表色系である元の画像データを、4D−LUTによる色変換処理等によって、読取データの表色系であるRGBの画像データに色変換する。4D−LUTによる色変換処理は、代表色であるYMCKのデータ値とRGBのデータ値との対応関係を示す4次元(YMCKの4要素)のLUTを元に、補間処理によってYMCKのデータ値に対応するRGBのデータ値を特定する処理である。
【0056】
画像の位置ずれに関しては、制御部61は回転や拡大縮小、変形、移動等の画像処理を元の画像データに施して、読取データの画像と同様の位置ずれを再現する。印刷処理によって生じる位置ずれの方向やずれ量、読取時に生じる位置ずれの方向やずれ量等の特性値が記憶部62に保存されているので、制御部61はこの特性値に応じて、上記回転、拡大縮小、変形、移動等のうちの必要な画像処理を施す。
【0057】
MTFに関しては、制御部61は記憶部62に保存されている印刷特性、読取特性のMTFの特性値に応じて、元の画像データに周波数変換処理を施し、元の画像データと読取データで画像のMTFを可能な限り一致させる。
【0058】
図7は印刷特性及び読取特性の補正処理の例である。
元の画像データg3の画像が、印刷装置3の印刷特性によって時計回りに回転し、さらに画像読取装置5の読取特性によって歪む場合、制御部61は画像の回転、変形の画像処理によって同様の位置ずれを生じさせる。その結果、図7に示す画像処理後の画像データg4は、印刷処理後に生じる回転と同じ回転方向、回転量だけ画像が回転されている。また、画像読取装置5の読み取り後に生じる歪みと同じ歪みが再現されている。
【0059】
なお、特性値ではなく、特性値から求められた印刷特性、読取特性の補正値を記憶部62が記憶し、制御部61はこの補正値を用いて補正処理するようにしてもよい。
印刷特性や読取特性は経年等によって変化することがあるため、記憶部62に記憶されている特性値や補正値は定期的に更新されることが好ましい。ユーザは操作部63を介して定期的に特性値の更新データを入力する。制御部61は、定期的に入力される更新データによって記憶部62に記憶された印刷装置3の印刷特性、画像読取装置5の読取特性の特性値又はその補正処理の補正値を更新し、更新後の特性値又は補正値を用いて補正処理を施す。
【0060】
次に、制御部61は比較用データ及び読取データに解像度変換処理を施す(ステップT2)。比較用データと読取データの比較の対象が全領域であるとは限らないので、制御部61は比較の対象である領域を解像度変換処理することが好ましい。解像度を高くするか低くするかは適宜決定することができる。元の解像度より高い解像度に変換する場合、不良の判定精度が向上する。一方、元の解像度より低い解像度に変換する場合、不良の判定に要する処理時間を短縮できる。
【0061】
好ましくは、制御部61は印刷用の画像処理によって付加データが付加された部分とその他の部分とで変換する解像度を切り替える。これにより、付加データが付加された部分か否かによって、判定精度を切り替えることができる。例えば、付加データが付加された部分は重点的に良否判定を行うことが望まれるので、制御部61は当該部分の解像度を高くして判定精度を向上させる。一方、制御部61はその他の部分の解像度は変えない、或いは低くして処理時間の短縮を図る。
【0062】
或いは、制御部61は元の画像データの属性データに基づき、画像の属性毎に変換する解像度を切り替えることが好ましい。これにより、画像の属性によって判定精度を切り替えることができる。例えば、写真の属性は元々画質の劣化が視認されにくいので、判定精度は高くなくともよい。逆に、文字や図形の属性は画質の劣化が視認されやすく高い判定精度が求められる。よって、制御部61は写真の属性の画像領域を600dpi等の低解像度に変換して処理時間の短縮を図り、文字、図形の属性の画像領域を2400dpi等の高解像度に変換して判定精度の向上を図る。
【0063】
次に、制御部61は比較用データと読取データとを比較する(ステップT3)。制御部61は、比較用データと読取データの全部を比較の対象として広く不良か否かの判定をしてもよいし、一部を対象として判定の処理時間を短縮してもよい。
制御部61は比較の結果によって用紙上に印刷された画像が不良か否かの判定を行うが、いくつかの項目毎に判定を行う。以下、画像の位置ずれ、色彩のずれ、鮮鋭性の劣化の3項目について不良か否かを判定する例を示すが、画像の欠落や汚れの有無等、他の項目を設けて判定してもよい。
【0064】
制御部61は比較用データと読取データとの比較の結果によって、用紙上に印刷された画像の位置の良否を判定する(ステップT4)。例えば、判定装置6は比較用データ及び読取データに共通して略同一位置にある文字等のオブジェクトを特定する。2つのオブジェクト間の距離が閾値より大きければ、制御部61は位置ずれが大きく不良であると判定し、閾値より小さければリファンレスデータと読取データの画像の位置は略一致し、良であると判定する。なお、印刷処理時に位置ずれ検出用のトンボ等の検出パターンを付加して印刷し、当該トンボ間の距離から位置ずれを判定することとしてもよい。
【0065】
次に、制御部61は色彩の良否を判定する(ステップT5)。印刷特性、読取特性の補正処理によって比較用データと読取データの色特性が統一されている場合、制御部61は比較用データと読取データで位置が同じ画素の画素値の差分を色毎に求め、当該差分が閾値より大きければ、色彩のずれが大きく不良であると判定する。差分が閾値より小さければ比較用データと読取データの色彩は略一致し、良であると判定する。色特性が統一されていない場合、制御部61は比較用データ及び読取データの各色の画素値をL空間の色値に変換し、変換された色値の差分を閾値と比較することによって不良か否かを判定する。
【0066】
次に、制御部61は鮮鋭性の良否を判定する(ステップT6)。鮮鋭性の劣化が視認されやすいのは文字である。制御部61は属性データを元に比較用データから文字の属性を持つ領域を抽出する。また、制御部61は読取データを解析して文字の領域をパターン検出し、比較用データから抽出された文字の領域と照合する。照合による一致率が閾値より小さければ、制御部61は鮮鋭性の劣化が大きく不良と判定する。一方、一致率が閾値より大きければ、制御部61は比較用データと読取データの鮮鋭性は略一致し、良であると判定する。
【0067】
上記一連の判定において判定基準として用いられている閾値は、比較用データと読取データの画像の差異をどこまで良品として許容するかという許容度である。どのように判定基準を定めるかによって判定精度が左右される。比較用データの中でも付加データが付加された部分は、ページ単位で印刷内容が変更されており、重点的に良否判定を行うべき部分である。よって、上記一連の判定において、制御部61は付加データが付加された部分とその他の部分とで、不良か否かの判定基準を切り替える。
【0068】
例えば、鮮鋭性の判定時、制御部61は付加データが付加された部分に閾値Th1を用い、その他の部分に閾値Th2(Th1<Th2)を用いて、付加データが付加された部分の判定精度をその他の部分よりも上げる。これにより、付加データが付加された部分を重点的に良否判定することができる。
【0069】
好ましくは、制御部61は、付加データが付加された部分かその他の部分かによって不良か否かを切り替え、さらに付加データが付加された部分の中、或いはその他の部分の中でも、属性データを元に画像の属性単位で判定基準を切り替える。これにより、属性単位で判定精度を調整することができる。
【0070】
例えば、鮮鋭性の判定時、制御部61は4つの閾値Th1〜Th4(Th1<Th2<Th3<Th4)を備え、付加データが付加された部分の中でも画質の劣化が視認されやすい文字、図形の属性の領域に対して閾値Th1を用い、付加データが付加された部分の中でも画質の劣化が視認されにくい写真の属性の領域に対しては閾値Th2を用いる。付加データが付加されなかったその他の部分の中の文字、図形の属性の領域に対しては、制御部61は閾値Th3を用い、同じくその他の部分の中の写真の属性の領域に対しては閾値Th4を用いる。このような判定精度の調整により、付加データが付加された部分の中でも鮮鋭性の劣化が視認されやすい文字、図形の属性を持つ領域が重点的に良否判定される。
【0071】
或いは、制御部61は、付加データが付加された部分かその他の部分かによって不良か否かを切り替え、さらに付加データが付加された部分の中、或いはその他の部分の中でも、予め定められた単位又はユーザにより指定された単位で不良か否かの判定基準を切り替えることが好ましい。これにより、必要に応じて判定精度を切り替えることができる。
【0072】
予め定められた単位は、例えば一定の面積単位、用紙上の位置単位である。
用紙の端部付近の位置は画像が配置されないことが多く高い判定精度が求められないのに対し、用紙の中央はユーザにとって重要度の高い画像や文字が配置され、高い判定精度が求められる。よって、制御部61は用紙上の位置単位で判定基準を切り替え、用紙の端部から所定距離内の領域より用紙の中央の領域の判定基準を引き上げて重点的に良否判定を行う。同じ意味で重要度が高い領域をユーザに指定させ、制御部61は指定された領域ではその他の領域より判定基準を引き上げて重点的な良否判定を行う。
【0073】
制御部61は各項目の判定結果のうち、不良と判定された項目が少なくとも1つあれば(ステップT7;Y)、用紙上に印刷された画像は不良と判定する(ステップT8)。制御部61は全項目の判定において不良と判定されなかった場合(ステップT7;N)、用紙上に印刷された画像は良と判定する(ステップT9)。
【0074】
制御部61は通信部65を介して判定結果を印刷装置3に送信する。また、制御部61は判定結果を記憶部62に保存させる(ステップT10)。制御部61は、品質管理や不良品の統計分析のために、項目毎の判定結果を保存してもよいし、判定結果を比較用データ、読取データとともに保存してもよい。また、制御部61が1ジョブの中の不良の判定率を算出し、これを判定結果の1つとして記憶部62に保存してもよい。
【0075】
印刷装置3は、図4に示すように、判定装置6から送信された判定結果に基づいて不良と判定された用紙を通知する表示画面を表示する。また、印刷装置3は不良と判定された用紙を良と判定された用紙とは別の排紙トレイに排紙する(ステップS7)。例えば、全10ページの印刷が行われ、そのうちの7ページ目が不良と判定された場合、印刷装置3は「7ページ目に不良が発生しました。トレイ2に排紙されます」等のメッセージを含む表示画面をタッチパネル34上に表示する。また、印刷装置3はスタッカー46の排紙トレイ1に1〜6、8〜10ページ目の用紙を排紙し、排紙トレイ2に7ページ目の用紙を排紙する。これにより、ユーザは不良と判定された用紙を容易に把握できる。
【0076】
または、印刷装置3は印刷処理を停止してもよい。ユーザは不良と判定された用紙を容易に把握できるし、印刷処理の停止によってその後の印刷不良を防止することができる。
さらに、印刷装置3は良否判定の判定結果を記憶部32に保存してもよい。また、制御部31が判定装置6から読取データを取得して判定結果とともに保存してもよい。ユーザの操作に応じて、制御部31は記憶部32に保存された判定結果や読取データを表示部33に表示させることもできるし、通信部36を介してユーザが使用するホスト端末1に送信することもできる。これにより、判定装置6だけではなく、印刷装置3に保存された判定結果を品質管理や不良品の統計分析に用いることができる。
【0077】
以上のように、本実施の形態によれば、画像処理システム10は、入力された画像データに印刷用の画像処理を施して、ページ単位で変更される付加データを付加する画像処理部42、66と、印刷用の画像処理が施された元の画像データを印刷処理する印刷装置3と、印刷処理によって用紙上に印刷された画像を読み取る画像読取装置5と、印刷用の画像処理が施された元の画像データと画像読取装置5によって得られた読取データを比較し、用紙上に印刷された画像が不良か否かを判定する制御部61と、を備える。制御部61は、付加データが付加された部分とその他の部分とで、不良か否かの判定基準を切り替えて判定する。
【0078】
これにより、画像データに付加データが付加された場合でも、当該付加データが付加された画像データを読取データと比較するので、印刷用の画像処理が良否判定を妨げることがなく、適切な良否判定を行うことができる。また、印刷用の画像処理によって付加データが付加された部分とその他の部分とで判定基準を切り替えることができ、付加データが付加された部分に重点をおいて良否判定を行うことができる。
【0079】
なお、上記実施の形態は本発明の好適な一例であり、これに限定されない。
例えば、元の画像データの入力元は印刷装置3に限定されず、プリントコントローラー2から取得してもよい。判定装置6の画像処理部66がラスタライズできるのであれば、ホスト端末1からPDLデータを取得し、画像処理部66により当該PDLデータをラスタライズして元の画像データを取得してもよい。
【0080】
また、上記実施の形態では、判定装置6が印刷装置3から元の画像データと印刷用の画像処理の処理条件を取得して元の画像データに印刷用の画像処理を施して比較用データを作成していた。しかし、印刷装置3は印刷処理時に画像データに印刷用の画像処理を施すので、判定装置6は元の画像データではなく、この印刷用の画像処理が施された画像データを印刷装置3から取得してもよい。また、プリントコントローラー2のRIP23が印刷コマンドに従ってラスライズと同時に印刷用の画像処理の内容を実現する場合がある。この場合、判定装置6はプリントコントローラー2から印刷用の画像処理が実現された画像データを取得すればよい。比較用データ作成のため、印刷用の画像処理を施す手間が省け、処理効率が良い。
【0081】
上記実施の形態では読取データの画像の特性に合わせて、元の画像データに印刷特性及び読取特性の補正処理を施し比較用データを作成する例を挙げた。しかし、画像の特性を統一して元の画像データと読取データの比較ができるのであれば、元の画像データではなく読取データに補正処理を加えてもよい。一般的には画質が低い方を高画質化するよりは、画質が高い方を低画質化する方が、安定的にデータを生成できる。通常は画像読取装置5の読取データの方が元の画像データより低画質であるので、データの安定性の観点からすれば、上記実施の形態で示したように元の画像データに補正処理を施し、読取データと比較することが好ましい。
【0082】
図8は、比較の対象となる2つのデータの関係を示す。
図8において、元の画像データa1は印刷用の画像処理によって付加データが付加され、印刷処理後の用紙b上の画像にはページ番号が付加されている。また、用紙b上の画像は印刷装置3の印刷特性によって時計回りに回転している。さらに、用紙b上の画像が画像読取装置5によって読み取られると、その読取特性によって読取データc1の画像は用紙b上の画像より拡大されている。
【0083】
図8に示すように、元の画像データa1に印刷用の画像処理が施され、さらに印刷装置3の印刷特性、画像読取装置5の読取特性による変化が加えられて読み取られた画像が、読取データc1の画像である。
よって、上記実施の形態で説明したように、元の画像データa1に印刷用の画像処理を施し、読取データc1の画像の特性に可能な限り一致するように印刷特性、読取特性の補正処理を施して比較用データa2を作成し、読取データc1と比較することにより、画像の特性を統一した比較が可能になる。
【0084】
印刷処理後の用紙上の画像の特性を基準とする比較をするのであれば、画像処理部66が元の画像データa1に印刷用の画像処理を施し、さらに制御部61が印刷特性の補正処理を施して作成された比較用データa3と、制御部61が読取データc1に読取特性の補正処理を施して作成された比較用データc3とを比較すればよい。
【0085】
例えば、図8において、読取データc1は用紙b上の画像と比べ、印刷装置3の印刷特性により画像が時計回りに回転し、画像読取装置5の読取特性により画像が拡大されている。回転量や拡大率、表色系の違い等は特性値として記憶部62に保存されているので、制御部61は元の画像データaにページ番号を付加する印刷用の画像処理を施した後、記憶部62に保存されている印刷特性の特性値を用いて時計回りに回転し、印刷特性が補正された比較用データa3を作成する。また、制御部61は記憶部62に保存されている読取特性の特性値を用いて、読取データc1の画像を縮小し、色変換処理してRGBの表色系からYMCKの表色系に変換し、読取特性が補正された比較用データc3を作成する。
【0086】
上記実施の形態において印刷装置3とは別に判定装置6を設けた例を示したが、判定装置6の機能を印刷装置3やプリントコントローラー2等に組み込んでもよい。印刷装置3に組み込む場合、印刷装置3の制御部31が良否判定処理を実行し、判定装置6の制御部61の機能を果たす。プリントコントローラー2に組み込む場合、プリントコントローラー2に画像処理部42を設けて制御部21が良否判定処理を実行する。
【0087】
また、画像読取装置5の代わりにスキャナー41を用いることも可能である。ユーザが印刷処理後の用紙をスキャナー41に読み込ませることにより、スキャナー41によって得られた読取データが判定時の比較に用いられる。
【0088】
また、印刷用の画像処理として宛名や住所等の付加データを付加する場合、印刷装置3は画像データとともにプリントコントローラー2から宛名や住所等のリストデータを取得し、このリストデータに基づいて宛名や住所等の付加データを画像データに付加する。よって、判定装置6がOCR(Optical Character Reader)機能を備え、当該リストデータも印刷装置3から取得し、元の画像データと読取データの比較に加えて、リストデータと読取データの比較によって付加された宛名や住所等の良否判定を行ってもよい。判定装置6はOCR機能によって、読取データから宛名や住所等の文字をパターン検出し、当該文字とリストデータの宛名、住所等の文字が一致するか否かを判定する。一致する場合、リストデータにより指定された宛名、住所等が正確に印刷されているため、判定装置6は良と判定する。不一致の場合、宛名、住所等の抜けがあるとして判定装置6は不良と判定する。これにより、画質の良否判定だけでなく、宛名や住所等が正確に印刷されたか否かを判定することができる。
【0089】
また、良否判定処理のプログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体としては、ROM、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリー、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、良否判定処理のプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【符号の説明】
【0090】
10 画像処理システム
1 ホスト端末
2 プリントコントローラー
21 制御部
23 RIP
3 印刷装置
31 制御部
42 画像処理部
45 印刷部
46 スタッカー
5 画像読取装置
6 判定装置
61 制御部
62 記憶部
66 画像処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された画像データに印刷用の画像処理を施して、ページ単位で変更される付加データを付加する画像処理部と、
印刷用の画像処理が施された前記画像データを印刷処理する印刷装置と、
印刷処理によって用紙上に印刷された画像を読み取る画像読取装置と、
印刷用の画像処理が施された前記画像データと前記画像読取装置によって得られた読取データを比較し、用紙上に印刷された画像が不良か否かを判定する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記付加データが付加された部分とその他の部分とで、不良か否かの判定基準を切り替えて判定する画像処理システム。
【請求項2】
前記制御部は、印刷用の画像処理が施された前記画像データに、前記印刷装置の印刷特性、前記画像読取装置の読取特性の補正処理を施し、補正処理された前記画像データと前記読取データを比較する請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項3】
前記制御部は、印刷用の画像処理が施された前記画像データに、前記印刷装置の印刷特性の補正処理を施し、前記読取データに前記画像読取装置の読取特性の補正処理を施し、補正処理が施された前記画像データと前記読取データを比較する請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記付加データが付加された部分かその他の部分かによって不良か否かの判定基準を切り替え、さらに付加データが付加された部分の中、或いはその他の部分の中で、前記画像データの属性データを元に画像の属性単位で判定基準を切り替える請求項1〜3の何れか一項に記載の画像処理システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記付加データが付加された部分かその他の部分かによって不良か否かの判定基準を切り替え、さらに付加データが付加された部分の中、或いはその他の部分の中で、予め定められた単位又はユーザにより指定された単位で判定基準を切り替える請求項1〜3の何れか一項に記載の画像処理システム。
【請求項6】
前記制御部は、比較の対象である領域を解像度変換処理した後、前記画像データと前記読取データを比較する請求項4に記載の画像処理システム。
【請求項7】
前記制御部は、印刷用の画像処理によって付加データが加えられた部分とその他の部分とで変換する解像度を切り替える請求項6に記載の画像処理システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記画像データの属性データに基づき、画像の属性毎に変換する解像度を切り替える請求項6に記載の画像処理システム。
【請求項9】
前記印刷用の画像処理は、前記付加データを付加する画像処理、ウォーターマーク、地紋画像を付加する画像処理、画像の回転、縮小、拡大又はページ割付の画像処理を含む請求項1〜8の何れか一項に記載の画像処理システム。
【請求項10】
前記印刷特性、前記読取特性の補正処理は、色変換処理、周波数変換処理、画像の回転、変形、移動、拡大、縮小、階調処理又は解像度変換処理を含む請求項2又は3に記載の画像処理システム。
【請求項11】
前記印刷装置の印刷特性、前記画像読取装置の読取特性の特性値又はその補正処理の補正値を記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、定期的に入力される更新データによって前記記憶部に記憶された特性値又は補正値を更新し、更新後の特性値又は補正値を用いて補正処理を施す請求項2、3又は10の何れか一項に記載の画像処理システム。
【請求項12】
前記印刷装置は、用紙上に印刷された画像が不良と判定された場合、不良と判定された用紙の通知を表示部に表示するか、不良と判定された用紙を良と判定された用紙と別の排紙先に排紙するか、或いは印刷処理を停止する請求項1〜11の何れか一項に記載の画像処理システム。
【請求項13】
記憶部を備え、
前記制御部は判定結果とともに前記読取データを前記記憶部に保存する請求項1〜12の何れか一項に記載の画像処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−46092(P2013−46092A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180315(P2011−180315)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】