説明

画像処理パラメタ空間の探索方法およびこれを用いた創薬スクリーニング装置

【課題】画像処理のパラメタ決定を高速化し薬の候補になる薬剤を高速に見出すことができる創薬スクリーニング装置を提供する。
【解決手段】薬剤と生体細胞に励起光を照射し、前記薬剤と前記生体細胞からの蛍光信号に基づき画像処理して得られる複数の特徴量および複数の前記薬剤の濃度から創薬スクリーニングを行う創薬スクリーニング装置において、前記特徴量の中の選択可能で代表的な特徴量に基づきZ’−factorを算出し、最大のZ’−factorまたは0.5よりも大きいZ’−factorが算出されたときの一または複数のパラメタの組み合わせと特徴量を抽出する第1のパラメタ抽出手段と、抽出された一または複数の前記パラメタの組み合わせごとに、前記蛍光信号に基づき画像処理して得られた全ての特徴量からEC50を算出し、最小のEC50が算出されるパラメタの組み合わせを抽出する第2のパラメタ抽出手段と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェルプレートの複数のウェル内に収容された薬剤を投与した(生体)細胞に励起光を照射し、(生体)細胞からの蛍光信号に基づき画像処理して得られる複数の特徴量および複数の薬剤の濃度から創薬スクリーニングを行う際の画像処理パラメタ空間の探索方法およびこれを用いた創薬スクリーニング装置に関し、特に画像処理のパラメタの決定の自動化と高速化に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、創薬分野、バイオテクノロジーやメディカル分野では、薬剤および生体や細胞などを撮影して得られた画像に対して必要な画像処理を施して薬剤の種類や量に対する変化を解析することにより、薬剤と生体細胞(試薬と試料)との反応の過程を把握し、薬の候補になる薬剤を見出すための創薬スクリーニングを行なう創薬スクリーニング装置が検討されている。
【0003】
従来の創薬スクリーニング装置は、ウェルプレート上の所定数のウェルまたは全ウェルからそれぞれ拡大蛍光画像を取得するために、たとえばXYステージ装置を制御してウェルプレートを移動させて観察対象を顕微鏡などの視野領域に入れ、アクチュエータを制御して焦点位置を調整し、各ウェルの薬剤と生体細胞(試薬を与えた試料)が発生する蛍光をそれぞれ検出する。
【0004】
図3は、従来の創薬スクリーニング装置で用いられるウェルプレートの説明図であり、従来の創薬スクリーニングではこのウェルプレートの各ウェルに細胞を入れ、異なるウェルに異なる条件の薬剤を投与して創薬スクリーニングを行なっている。
【0005】
図3では、96個の穴を持つウェルプレートを示しており、個々のウェルを、A01、B11等のように、縦方向(Row)のアルファベットと横方向(Column)の番号数字を組み合わせてウェルの位置を一意に表現している。
このウェルプレートのウェル中には、例えば、ある薬剤をA01には濃度0.001で、A02には濃度0.01で、等と1桁ごと、または、0.5桁ごとに変化させて投与する。
図3のように96個の穴を持つウェルプレートであれば、たとえば、横軸方向に薬剤濃度を0.5桁ずつ変化させると、6桁の範囲の実験を行うことができる。
なお場合によっては、従来の創薬スクリーニング装置では、ウェルB01やC01の縦方向にはA01と同一条件で実験を行い、計測値のばらつき(誤差)を評価するために用いる。
【0006】
従来の創薬スクリーニング装置では、このウェルプレートのウェル中の薬剤に浸した細胞を顕微鏡で撮影し、得られた拡大画像に対して必要な画像処理を施して経時変化を解析することにより、計測値を取得する。
ここで計測値の典型例として、細胞の2次元的な断面積や、蛍光の明るさ、細胞に付随する構造の個数や長さ、等の特徴量が挙げられる。
【0007】
従来の創薬スクリーニング装置は、得られた計測値に基づき、薬剤の濃度を横軸に、画像計測の結果得られる特徴量を縦軸にしてグラフ(ドーズレスポンス曲線(薬の量(Dose)に対する応答の意味))を描く。
具体的には、従来の創薬スクリーニング装置は、画像計測で得た計測値(特徴量)の値と、各ウェルに収納した薬剤の濃度とを関連付けてS字型の曲線(シグモイド)でフィッティングし、薬効が最大の半分になる位置をEC50(50%効果濃度、半数効果濃度(薬物や抗体などが最低値からの最大反応の50%を示す濃度のことを指す))として記録する。
【0008】
図4は、従来の創薬スクリーニング装置が描くドーズレスポンス曲線の説明図であり、横軸を薬の濃度(任意単位)、縦軸を薬剤の効果(任意単位)とし、データ点と理想的なS字型の曲線(シグモイド)をプロットした例の概念図を示している。
このドーズレスポンス曲線では薬剤の濃度が高いほど、薬の効果が高く、画像計測で得た計測値(特徴量)の値が大きいという結果を示している。
【0009】
たとえば、従来の創薬スクリーニング装置は、画像計測で得た計測値(特徴量)の値と、各ウェルに収納した薬剤の濃度とを関連付けてS字型の曲線(シグモイド)でフィッティングした結果、図4のドーズレスポンス曲線が得られるとすれば、縦軸が0.5となる濃度をグラフから読み取ることにより、EC50=1程度であることを算出できる。
【0010】
一方、また、薬剤が効いている状態と聞いていない状態で、どれだけ有意な違いがあるかを示す量で、計測または評価系の妥当性を示す薬効を特徴づける薬効指標の一例として、Z’−factor(ジープライムファクター、(参考:Zhang et al. 1999, Journal of Biomolecular Screening))が広く用いられている。Z’−factorは、以下の式(1)のように定義される。
【0011】

【0012】
σはある濃度での測定の標準偏差(図4のデータ点の誤差棒に相当する)を、μはある濃度での測定の平均値(図4のデータ点の値に相当する)を表す。添え字の1は薬が効いている状態、添え字の0は薬が効いていない状態を表す。
【0013】
Z’の値が0.5から1の間であれば、優れた計測・評価系であるとみなされる。
【0014】
従来の創薬スクリーニング装置は、薬剤物質の探索を行うにあたっては、まずZ’>0.5を満たす薬剤を探索し、その中でさらに、EC50が小さいもの(少量の投与で効果があるもの)を探索し、その結果得られたものを理想的な物質(薬剤)として抽出する。
【0015】
この結果、従来の創薬スクリーニング装置は、各ウェルから得られた画像に対して必要な画像処理を施して特徴量の変化を解析し、薬剤と生体細胞(試薬と試料)との反応の過程を把握する。これらの画像解析結果に基づいて、薬の候補になる薬剤を見出している。
【0016】
このような創薬スクリーニング装置に関連する先行技術文献として下記の特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2000−062480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかし、従来の創薬スクリーニング装置では、図4のようなドーズレスポンス曲線を描く際、縦軸に取る量の種類やその決定方法は決まっておらず、その特徴量を得るために必要な多くの画像処理のパラメタが存在することから、各研究者・技術者等が経験や勘、試行錯誤に基づいて決定していたので、客観性に乏しいという問題点やごく狭いパラメタ空間でしか最適化されていなかったという問題点があった。
【0019】
ドーズレスポンス曲線を描く際、縦軸に取る特徴量の決定にあたっては、その特徴量における多くの画像処理のパラメタが存在することから、画像処理のパラメタ空間の探索範囲は広大であるので、すべての組み合わせについて実際に画像処理の演算を行うことは、計算機の能力を超えているという問題点があった。
【0020】
例えば、細胞のある構造物を測定したときの明るさを縦軸に取ってみるとする。この場合でも、その明るさを測定する前段階でどのような画像処理のフィルタを行うか、また、どのような閾値を用いて構造物を認識するか、といった多くのパラメタが存在するため、画像処理のパラメタ空間の探索範囲は広大であり、すべての組み合わせについて実際に画像処理の演算を行うことは、計算機の能力を超えているという問題点があった。
【0021】
このような探索が困難である理由は、画像のデータ量が多量であることにも起因する。例えば、96個のウェルを持つプレートでも、各ウェルについて1視野でなく、ウェル内の測定において、2×2、3×3・・・等と複数の視野を撮影して統計精度を高めている。
また、創薬スクリーニングでは複数色の撮像が行われることも多く、画像データの量は、96×(3×3)×色の数、等となり2000−3000枚(数千枚)を超えることが多い。
さらに、共焦点顕微鏡では厚み方向のスライスを行うことがあり、生きた細胞の撮影では時系列で変化を追う撮影を行うため、画像の数は100,000枚の桁になることもある。
【0022】
このため、画像のデータ量が多量である上に、画像処理のパラメタ空間の探索範囲は広大であるので、すべての組み合わせについて実際に画像処理の演算を行うことは、計算機の能力を超えており、各研究者・技術者等が経験や勘、試行錯誤に基づいて決定していることがあり客観性に乏しいという問題点があった。
【0023】
一方、画像処理の立場からみても、Z’を大きくすることができるパラメタの組み合わせや特徴量の探索が課題となるが、その特徴量における多くの画像処理のパラメタが存在することから、これまで画像処理の最適化は各研究者・技術者等の経験や勘に基づいて行なわれおり、客観性に乏しいという問題点があった。
具体的には、実際上は、各研究者・技術者等の経験や勘に基づいて何らかの推奨値や直感的に良さそうな数通りの場合を試して、Z’>0.5 となれば合格としているのが現状であると推測される。
【0024】
本発明は上述の問題点を解決するものであり、その目的は、画像処理のパラメタの決定を高速化し薬の候補になる薬剤を高速に見出すことができる創薬スクリーニングにおける画像処理パラメタ空間の探索方法とこれを用いた創薬スクリーニング装置とを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
薬剤を投与した細胞の試料に励起光を照射し、前記薬剤を投与した前記細胞からの蛍光信号に基づき画像処理して得られる複数の特徴量および複数の前記薬剤の濃度から創薬スクリーニングを行う創薬スクリーニング装置において、
前記特徴量の種別、及び、前記特徴量の種別に複数生成される1個以上の前記画像処理のパラメタから成るパラメタの組み合わせごとに、前記複数のパラメタにより画像処理された場合の前記特徴量の中の選択可能で代表的な特徴量に基づき計測または評価系の妥当性を示す薬効指標を算出し、最大の薬効指標または0.5若しくは予め定められた閾値よりも大きい薬効指標が算出されたときのパラメタの組み合わせと特徴量を抽出する第1のパラメタ抽出手段と、
抽出された前記パラメタの組み合わせごとに、前記蛍光信号に基づき画像処理して得られた全ての特徴量から薬効が最大の半分になる位置であるEC50または薬剤量を示す指標を算出し、最小のEC50または薬剤量を示す薬剤量を示す指標が算出されるパラメタの組み合わせを抽出する第2のパラメタ抽出手段と、
を備えることを特徴とする創薬スクリーニング装置である。
【0026】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の創薬スクリーニング装置において、
複数の前記特徴量と、前記薬剤の濃度とが対応付けられた画像データテーブルを記憶する記憶手段を備え、
前記第1のパラメタ抽出手段は、
前記画像データテーブル中の最高濃度および最低濃度に対応する特徴量に対し、前記パラメタの組み合わせにより画像処理された場合の特徴量を算出し、これらの特徴量を前記代表的な特徴量として前記薬効指標を算出することを特徴とする。
【0027】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の創薬スクリーニング装置において、
複数の前記特徴量の種別ごとに、2個以上の前記画像処理のパラメタから成るパラメタの組み合わせを複数生成するパラメタ組み合わせ手段を、備えることを特徴とする。
【0028】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3記載のいずれかに創薬スクリーニング装置において、
一方の軸を前記第2のパラメタ抽出手段により抽出された特徴量、他方の軸を前記濃度として、前記第2のパラメタ抽出手段により抽出されたパラメタの組み合わせにより画像処理された場合の特徴量におけるドーズレスポンス曲線を作成して表示するドーズレスポンス作成手段を備えることを特徴とする。
【0029】
請求項5記載の発明は、
薬剤を投与した細胞の試料に励起光を照射し、前記薬剤を投与した前記細胞からの蛍光信号に基づき画像処理して得られる複数の特徴量および複数の前記薬剤の濃度から創薬スクリーニングを行う際の画像処理パラメタ空間の探索方法であって、
パラメタ組み合わせ手段が、複数の前記特徴量の種別に2個以上の前記画像処理のパラメタから成るパラメタの組み合わせを複数生成する第1のステップと、
第1のパラメタ抽出手段が、複数の前記特徴量の種別および複数の前記パラメタの組み合わせごとに、これらのパラメタにより画像処理された場合の前記特徴量の中から選択した代表的な特徴量に基づき計測または評価系の妥当性を示す指標である薬効指標をそれぞれ算出し、最大の薬効指標または0.5よりも大きい薬効指標が算出されたときのパラメタの組み合わせと特徴量を抽出する第2のステップと、
第2のパラメタ抽出手段が、抽出された前記パラメタの組み合わせごとに薬効が最大の半分になる位置であるEC50または薬剤量を示す指標を算出し、最小のEC50または最小の薬剤量を示す指標が算出されるパラメタの組み合わせを抽出する第3のステップと、から成ることを特徴とする画像処理パラメタ空間の探索方法である。
【0030】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の画像処理パラメタ空間の探索方法において、
前記第2のステップは、
前記第1のパラメタ抽出手段が、
記憶手段が記憶する複数の前記特徴量と前記薬剤の濃度とが対応付けられた画像データテーブル中の最高濃度および最低濃度に対応する特徴量に対し、前記パラメタの組み合わせにより画像処理された場合の特徴量を算出し、これらの特徴量を前記代表的な特徴量として前記薬効指標を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明であれば、特徴量の種別、及び、特徴量の種別に複数生成される1個以上の画像処理のパラメタから成るパラメタの組み合わせごとに、複数のパラメタにより画像処理された場合の特徴量の中の選択可能で代表的な特徴量に基づき計測または評価系の妥当性を示す薬効指標の一例であるZ’−factorを算出し、最大のZ’−factorまたは0.5若しくは予め定められた閾値よりも大きいZ’−factorが算出されたときの一または複数のパラメタの組み合わせと特徴量を抽出する第1のパラメタ抽出手段と、抽出された一または複数のパラメタの組み合わせごとに、蛍光信号に基づき画像処理して得られた全ての特徴量からEC50を算出し、最小のEC50が算出されるパラメタの組み合わせを抽出する第2のパラメタ抽出手段と、を備えることにより、画像処理のパラメタの決定を高速化し薬の候補になる薬剤を高速に見出すことができる点で有効である。
【0032】
また本発明であれば、最大のZ’−factorまたは0.5若しくは予め定められた閾値よりも大きいZ’−factorが算出されたときの一または複数のパラメタの組み合わせと特徴量を抽出する第1のパラメタ抽出手段と、第1のパラメタ抽出手段で抽出された一または複数のパラメタの組み合わせに基づき全データから最小のEC50を算出する第2のパラメタ抽出手段を備えることにより、従来経験や勘に基づいてごく少数回の試行で主観的に画像処理のパラメタを決定していたのに対し、曲線(シグモイド)の性質に着目して広大なパラメタ空間を効率良く高速に探索することができ、限られた計算機資源でも短期間に最適、または準最適な画像処理パラメタを客観的な手法で得ることが可能になる点で有効である。
【0033】
また本発明であれば、パラメタ組み合わせ手段が、複数の特徴量の種別に1個以上の前記画像処理のパラメタから成るパラメタの組み合わせを複数生成する第1のステップと、
第1のパラメタ抽出手段が、複数の特徴量の種別および複数のパラメタの組み合わせごとに、これらのパラメタにより画像処理された場合の特徴量の中から選択した代表的な特徴量に基づき計測または評価系の妥当性を示す薬効指標の一例であるZ’−factorをそれぞれ算出し、最大のZ’−factorまたは0.5若しくは予め定められた閾値よりも大きいZ’−factorが算出されたときの一または複数のパラメタの組み合わせと特徴量を抽出する第2のステップと、
第2のパラメタ抽出手段が、抽出された一または複数のパラメタの組み合わせごとにEC50を算出し、最小のEC50が算出されるパラメタの組み合わせを抽出する第3のステップと、から成ることにより、画像処理のパラメタの決定を自動化し、かつ、高速化し薬の候補になる薬剤を高速に見出すことができる点で有効である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る創薬スクリーニングにおける画像処理パラメタ空間の探索方法を用いた創薬スクリーニング装置の一実施例を示す構成図である。
【図2】本発明の創薬スクリーニング装置の動作フロー図である。
【図3】従来の創薬スクリーニング装置で用いられるウェルプレートの説明図である。
【図4】従来の創薬スクリーニング装置が描くドーズレスポンス曲線の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明に係る創薬スクリーニングにおける画像処理パラメタ空間の探索方法を用いた創薬スクリーニング装置の特徴は、特徴量の種別、及び、特徴量の種別に複数生成される1個以上の画像処理のパラメタから成るパラメタの組み合わせごとに、複数のパラメタにより画像処理された場合の特徴量の中の選択可能で代表的な特徴量に基づき計測または評価系の妥当性を示す薬効指標の一例であるZ’−factorを算出し、最大のZ’−factorまたは0.5若しくは予め定められた閾値よりも大きいZ’−factorが算出されたときの一または複数のパラメタの組み合わせと特徴量を抽出する第1のパラメタ抽出手段と、抽出された一または複数のパラメタの組み合わせごとに、蛍光信号に基づき画像処理して得られた全ての特徴量からEC50または薬剤量を示す指標を算出し、最小のEC50または薬剤量を示す指標が算出されるパラメタの組み合わせを抽出する第2のパラメタ抽出手段と、を備えることにより、画像処理のパラメタの決定を高速化し薬の候補になる薬剤を高速に見出すことができる点である。
【0036】
(構成の説明)
図1は、本発明に係る創薬スクリーニングにおける画像処理パラメタ空間の探索方法を用いた創薬スクリーニング装置の一実施例を示す構成図であり、背景技術で説明した従来の創薬スクリーニング装置と共通する部分については適宜省略して説明する。
背景技術で説明した従来の創薬スクリーニング装置との相違点は、上述の最大のZ’−factorまたは0.5よりも大きいZ’−factorが算出されたときの一または複数のパラメタの組み合わせと特徴量を抽出する第1のパラメタ抽出手段と、第1のパラメタ抽出手段で抽出された一または複数のパラメタの組み合わせに基づき全データから最小のEC50または薬剤量を示す指標を算出する第2のパラメタ抽出手段を備えた点である。
【0037】
図1では顕微鏡と共に使用されるニポウディスク方式共焦点スキャナを備えた場合の創薬スクリーニング装置の例を示している。
図1において本発明の創薬スクリーニング装置は、主に、薬剤と生体細胞が収容される複数のウェルが形成されるウェルプレート10と、対物レンズ21を具備する顕微鏡20と、マイクロレンズアレイディスク31とピンホールアレイディスク(以下、ニポウディスクという)32とダイクロイックミラー33とリレーレンズ34とを具備する共焦点スキャナ30と、ダイクロイックミラー41を具備する光学画像分離装置40と、2次元センサ51、52と、第1のパラメタ抽出手段61と第2のパラメタ抽出手段62と複数の画像データまたは特徴量と薬剤の濃度とが対応付けられた画像データテーブルを記憶する記憶手段63と図示しない解析手段を備えた解析装置60とから構成される。
【0038】
本発明の創薬スクリーニング装置では、共焦点スキャナ30が顕微鏡20に接続されており、光源からの励起光束はマイクロレンズアレイディスク31により個別の光束に集光され、ダイクロイックミラー33を透過後、ニポウディスク32の個々のピンホールを通過し、顕微鏡20の対物レンズ21により、ウェルプレート10のウェル穴に収容(載置)された生体細胞および薬剤(試料および試薬)に集光される。
ウェルプレート10の各生体細胞は蛍光試薬を付加されており、各々の蛍光試薬が発した蛍光信号は再び対物レンズ21を通り、ニポウディスク32の個々のピンホール上に集光される。
【0039】
個々のピンホールを通過した蛍光信号はダイクロイックミラー33で反射され、リレーレンズ34を通り、図示しないバリアフィルタを介して2次元センサ51、52(カメラ)に結像されるよう共焦点スキャナ30の共焦点画像取り出しポート(図示省略)より射出される。ダイクロイックミラー33は励起用光束は透過し、所望の蛍光信号は反射するよう設計されている。
【0040】
マイクロレンズアレイディスク31とニポウディスク32とは互いに連結部材で機械的に連結された状態で、回転中心軸の周りを回転する。この場合、ニポウディスク32上に形成された個々のピンホールが生体細胞および薬剤(試料および試薬)の表面を掃引するように、個々のマイクロレンズとピンホールは配置されている。
また、ニポウディスク32のピンホールが並んでいる平面と、生体細胞および薬剤(試料および試薬)の表面と、2次元センサの受光面とは互いに光学的に共役な関係に配置されているので、2次元センサ(カメラ)51、52上には生体細胞および薬剤(試料および試薬)の光学的断面像、すなわち共焦点画像が結像される。
【0041】
上述したように、マイクロレンズアレイディスク31とニポウディスク32を高速で回転させることにより、生体細胞および薬剤(試料および試薬)の共焦点画像を2次元センサ(カメラ)51、52の受光面上に短時間で形成することができるので、図示するように多数の被検査試料をマトリックス状に並べたウェルプレートを顕微鏡と共焦点スキャナに対して相対的に移動させながら試料全数の共焦点画像を高速に取り込むことが可能となる。
【0042】
共焦点画像取り出しポートに接続された光学画像分離装置40において、前述のダイクロイックミラー33で反射された蛍光信号は、第2のダイクロイックミラー41に到達する。ダイクロイックミラー41は分光特性を持っているので、所定の波長の信号はダイクロイックミラー41を透過し、分光特性を持つ図示しないバリアフィルタを通過後、2次元センサ51に到達する。
一方、他の蛍光成分の波長の信号は反射され、分光特性を持つ図示しないバリアフィルタを通過後、2次元センサ52に到達する。リレーレンズ34により、ニポウディスク32上に形成された共焦点光学像は2次元センサ51、52に結像される。
【0043】
このため、ウェルプレートの共焦点画像を2次元センサ51、52の受光面上に同時に形成することができるため、多数の被検査試料をマトリックス状に並べたウェルプレートを顕微鏡と共焦点スキャナに対して相対的に移動させることにより、試料全数の任意の波長選択分離をした共焦点画像を高速に取り込むことが可能となる。
【0044】
このようにして、本発明の創薬スクリーニング装置では、ウェルプレートのウェル中の薬剤を投与した細胞を顕微鏡で撮影し2次元センサ51、52で得られた画像データに基づき、解析装置60が通信手段を解してこれらの画像データを受信すると記憶手段63に記憶し、解析装置60の解析手段が記憶手段に記憶されている拡大画像に対して必要な画像処理を施して経時変化を解析することにより、細胞の2次元的な断面積や、蛍光の明るさ、細胞に付随する構造の個数や長さ、等の特徴量からなる計測値を取得できる。
【0045】
そして、本発明の創薬スクリーニング装置は、得られた計測値に基づき、薬剤の濃度を横軸に、画像計測の結果得られる特徴量を縦軸にして描いたドーズレスポンス曲線を生成する。
【0046】
ここで、ドーズレスポンス曲線が最適化された状態で最低濃度と最高濃度のデータから計測または評価系の妥当性を示す薬効を特徴づける薬効指標の一例としてZ’−factorを算出することに着目すると、本発明は、ドーズレスポンス曲線は、特にZ’<0.5の場合には中間の薬剤濃度に対応する曲線(シグモイド)の全体を決定する必要は無く、Z’>0.5という必要条件を満たすパラメタ空間の範囲、または、Z’を最大とするパラメタの組合せを探索するには、最低濃度と最高濃度で得られた画像データのみ解析すれば良いことがわかる。
【0047】
そこで、本発明の創薬スクリーニング装置の解析装置60では、Z’−factorの最大化(あるいはZ’>0.5を満たす限定領域)とEC50の最小化を2段階に分けて行うように以下の如く創意工夫を行い、画像処理のパラメタの決定を高速化し薬の候補になる薬剤を高速に見出すことができる。
たとえば、解析装置60は、第一段階として、得られた画像データのうち、最低濃度と最高濃度等、一部の代表的なデータのみでZ’−factorを算出し、パラメタ空間を限定する。また、解析装置60は、この第一段階において縦軸に取る特徴量の候補を複数用意しておき、最もZ’を大きくできる特徴量を最終的に採用する。
さらに解析装置60は、第二段階として、Z’>0.5または、Z’が最大となるパラメタについてすべての画像データを用いてEC50の最小化を行う。
【0048】
このようにすれば、解析装置60は、Z’<0.5の場合における中間の薬剤濃度に対応する曲線(シグモイド)の全体を決定する必要は無くなるため、画像処理のパラメタの決定を高速化し薬の候補になる薬剤を高速に見出すことを実現できる。
【0049】
具体的には、図1の解析装置60は、顕微鏡で撮影し2次元センサ51、52で得られた画像データから細胞の2次元的な断面積や、蛍光の明るさ、細胞に付随する構造の個数や長さ等の特徴量を算出する図示しない解析手段と、特徴量の種別、及び、特徴量の種別に複数生成される2個以上の画像処理のパラメタから成るパラメタの組み合わせごとに、複数のパラメタにより画像処理された場合の特徴量の中の選択可能で代表的な特徴量に基づき計測または評価系の妥当性を示す薬効を特徴づける薬効指標の一例としてZ’−factorを算出し、最大のZ’−factorまたは予め定められた閾値(可変な閾値も含む)よりも大きい(たとえば0.5よりも大きい)Z’−factorが算出されたときの一または複数のパラメタの組み合わせと特徴量を抽出する第1のパラメタ抽出手段61と、抽出された一または複数のパラメタの組み合わせごとに、蛍光信号に基づき画像処理して得られた全ての特徴量からEC50を算出し、最小のEC50が算出されるパラメタの組み合わせを抽出する第2のパラメタ抽出手段62と、複数の特徴量と、薬剤の濃度とが対応付けられた画像データテーブルを記憶する記憶手段63を備える。
【0050】
(動作説明)
このような構成で、本発明の創薬スクリーニング装置は、解析装置60は次の動作を行なう。図2は、本発明の創薬スクリーニング装置の動作フロー図である。
【0051】
図2のステップS101において、解析手段60の第1のパラメタ抽出手段61は、解析手段で得られた特徴量の種別、及び、特徴量の種別に複数生成される2個以上の画像処理のパラメタから成るパラメタの組み合わせごとにパラメタの組み合わせを選択し生成する。
たとえば、第1のパラメタ抽出手段61が組み合わせを選択し生成するパラメタとしては、構造物を認識するための閾値や明るさを測定する前段階で行う画像処理のフィルタする長さや面積等の数値がある。
【0052】
図2のステップS102において、第1のパラメタ抽出手段61は、特徴量の中から代表的な特徴量を選択し、パラメタの組み合わせごとに、各パラメタにより画像処理された場合の特徴量を算出する。
【0053】
図2のステップS102において、第1のパラメタ抽出手段61は、算出された特徴量(画像データ)のうち、一部の代表的な特徴量(画像データ)のみでZ’−factorを算出する。
たとえば、第1のパラメタ抽出手段61は、画像データテーブル中の最低濃度と最高濃度等、一部の代表的な特徴量(画像データ)のみからZ’−factorを算出する。
すなわち第1のパラメタ抽出手段61は一部の代表的な特徴量からZ’−factorを算出することによりパラメタ空間を限定している。
【0054】
図2のステップS104において、第1のパラメタ抽出手段61は、算出されたZ’−factorを算出し、最大のZ’−factorまたは0.5よりも大きいZ’−factorが算出されたときの一または複数のパラメタの組み合わせと特徴量を抽出する。
ここで第1のパラメタ抽出手段61は、判断基準として、Z’の値が0.5から1の間であれば、優れた計測・評価系であるとみなされている点を利用している。
第1のパラメタ抽出手段61は、最大のZ’−factorまたは0.5よりも大きいZ’−factorが全て抽出できるまでステップS101にもどって繰り返し動作を行なう。
【0055】
具体的には、第1のパラメタ抽出手段61は、Z’−factorを画像処理のパラメタ群 (p0, p1, ・・・, pN) の関数として、例えば関数Z’(p0, p1, ・・・, pN)を最大化する手法(例えば負号を付けた ―Z’が最小になるようなシンプレックス法)を用いてZ’の最大値を探索する。
これは、関数の最大化の問題であり、数値演算の分野で良く知られた手法を適用することが可能である。このとき、パラメタ群(p0, p1, ・・・, pN) の探索空間は極めて広く、すべての組合せを尽くすことが現実的でない場合も多い。このときは、焼きなまし法(Simulated Annealing Method)や遺伝的アルゴリズム(GA: Genetic Algorithm)等、「メタヒューリスティクス」と呼ばれる分野の方法を用いて、準最適解を決定することも考えられる。
【0056】
図2のステップS105において、第2のパラメタ抽出手段62は、第1のパラメタ抽出手段61により抽出された一または複数のパラメタの組み合わせごとに、蛍光信号に基づき画像処理して得られた全ての特徴量(画像データ)からEC50を算出する。
【0057】
図2のステップS106において、第2のパラメタ抽出手段62は、最小のEC50が算出されるパラメタの組み合わせを抽出する。
第1のパラメタ抽出手段61は、最小のEC50が算出されるパラメタの組み合わせが抽出できるまでステップS104にもどって繰り返し動作を行なう。
【0058】
図2のステップS107において、解析装置60は、第2のパラメタ抽出手段62により得られた最小のEC5とそのEC50が算出されるパラメタの組み合わせに基づきドーズレスポンス曲線を作成して表示または出力する。また解析装置60は、その際のZ’−factor、EC50も結果出力または表示する。
【0059】
この結果、本発明の創薬スクリーニング装置は、特徴量の種別、及び、特徴量の種別に複数生成される2個以上の画像処理のパラメタから成るパラメタの組み合わせごとに、複数のパラメタにより画像処理された場合の特徴量の中の選択可能で代表的な特徴量に基づきZ’−factorを算出し、最大のZ’−factorまたは0.5よりも大きいZ’−factorが算出されたときの一または複数のパラメタの組み合わせと特徴量を抽出する第1のパラメタ抽出手段と、抽出された一または複数のパラメタの組み合わせごとに、蛍光信号に基づき画像処理して得られた全ての特徴量からEC50を算出し、最小のEC50が算出されるパラメタの組み合わせを抽出する第2のパラメタ抽出手段と、を備えることにより、画像処理のパラメタの決定を高速化し薬の候補になる薬剤を高速に見出すことができる点で有効である。
【0060】
また、本発明であれば、最大のZ’−factorまたは0.5よりも大きいZ’−factorが算出されたときの一または複数のパラメタの組み合わせと特徴量を抽出する第1のパラメタ抽出手段と、第1のパラメタ抽出手段で抽出された一または複数のパラメタの組み合わせに基づき全データから最小のEC50を算出する第2のパラメタ抽出手段を備えることにより、従来経験や勘に基づいてごく少数回の試行で画像処理のパラメタを主観的に決定していたのに対し、曲線(シグモイド)の性質に着目して広大なパラメタ空間を効率良く高速に探索することができ、限られた計算機資源でも短期間に最適、または準最適な画像処理パラメタを客観的な手法で得ることが可能になる点で有効である。
【0061】
なお、本発明の創薬スクリーニング装置は、解析装置60が、ステップS101における複数の特徴量の種別ごとに、1個以上の前記画像処理のパラメタから成るパラメタの組み合わせを複数選択し生成するためのパラメタ組み合わせ手段を備えるものでもよい。
【0062】
また、本発明の創薬スクリーニング装置は、解析装置60が、一方の軸を第2のパラメタ抽出手段62により抽出された特徴量、他方の軸を濃度として、第2のパラメタ抽出手段62により抽出されたパラメタの組み合わせにより画像処理された場合の特徴量におけるドーズレスポンス曲線を作成して表示または結果出力するドーズレスポンス作成手段を備えるものでもよい。
【0063】
また、本発明の創薬スクリーニング装置は、第1のパラメタ抽出手段61と第2のパラメタ抽出手段62が、パラメタ空間の探索方法として関数を最大化するアルゴリズム(シンプレックス等)、遺伝的アルゴリズムやアニーリング法等のメタヒューリスティクスと呼ばれる分野の手法を適用し、最適解や準最適解を決定するものでもよい。
【0064】
また、本発明の創薬スクリーニング装置の解析装置60は、各手段の動作を制御するCPU(Central Processing Unit)などからなる演算制御手段を具備し、この演算制御手段が、通信手段、図示しない解析手段、第1のパラメタ抽出手段61、第2のパラメタ抽出手段62、記憶手段63を制御するものでもよく、具体的には、演算制御手段は記憶手段63に格納されているOSなどを起動して、このOS上で記憶手段に格納されたプログラムを読み出して実行することにより解析装置60全体を制御するものでもよい。
【0065】
(その他の実施例)
本発明の創薬スクリーニング装置は、第1のパラメタ抽出手段61が図2の動作フローのように最適、または準最適な画像処理パラメタを客観的な手法で得ると説明したが、特にこれに限定するものではなく、様々な変更・ステップの追加があり得るものでもよい。
具体的には、図2で示した動作フローでは、第1のパラメタ抽出手段61がステップS101〜S103で示したように、まず画像処理の手法を固定してそのパラメタの数値(閾値やフィルタする長さや面積等の数値)を可変にするという考えであるが、特にこれに限定するものではなく、解析手段60が画像処理の手法の種類(例えば、2値化を行う方法そのもの)も可変にしてどの手法が良いかということも、探索対象とすることができるものでもよい。なお手法の種類は特に遺伝的アルゴリズムを用いれば容易に実装できる。
【0066】
また、図2では、2段階の動作フローを示して説明しているが、特にこれに限定するものではなく、この応用として、2段階で得た準最適のパラメタに対して、その周辺部でさらに詳細な最適化を行う第3段階を付加するものでもよい。
【0067】
また、本発明の創薬スクリーニング装置は、第2段階においても、第2のパラメタ抽出手段62が一部のデータを用いてEC50を最小化する探索範囲を限定し、最終的に全データを用いて曲線(シグモイド)全体を演算するものでもよい。
【0068】
また、本発明の創薬スクリーニング装置は、第1段階や第2段階でそのステップを終了する条件も様々な変更を可能とするものでもよい。
たとえば、本発明の創薬スクリーニング装置の解析手段は、Z’の変化量が極大に対して何% 変化する領域を探索して終了する、等の条件も考えられるし、計算機資源の束縛条件から、CPU時間として12時間、または24時間を上限として準最適解を探索する、とするものでもよい。
【0069】
また、本発明の創薬スクリーニング装置は、解析装置60が、計測または評価系の妥当性を示す薬効を特徴づける薬効指標の一例としてZ−factorを用いるものだけではなく、「信号対雑音比SN=μ1/μ0」を用いるものでもよい。
ここでμはある濃度での測定の平均値(図4のデータ点の値に相当する)を表す。添え字の1は薬が効いている状態、添え字の0は薬が効いていない状態を表す。
【0070】
また、本発明の創薬スクリーニング装置は、解析装置60が、薬剤量を示す指標の一例としてEC50を用いるものだけではなく、薬剤量を示す指標であればどのような指標を用いるものであってもよい。
【0071】
また本発明の創薬スクリーニング装置は、解析装置60が最大のZ’−factorまたは0.5よりも大きいZ’−factorが算出されたときの一または複数のパラメタの組み合わせと特徴量を抽出するものとして説明しているが、特にこれに限定するものではなく、最大のZ’−factorまたは「予め定められた閾値」よりも大きいZ’−factorが算出されたときの一または複数のパラメタの組み合わせと特徴量を抽出するものであってもよい。
すなわち、解析装置60は、Z’−factorの最大化(あるいはZ’>閾値を満たす限定領域)とEC50の最小化を2段階に分けて行うように創意工夫を行ったことにより、画像処理のパラメタの決定を自動化し、且つ、高速化し薬の候補になる薬剤を高速に見出すことができるとともに、Z’−factorによる絞込みの際にZ’の基準を0.5と固定化するときよりも、より妥当にZ’−factorによる絞込みが可能となる。
【0072】
(付記項1)
ウェルプレートの複数のウェル内に収容された薬剤を投与した細胞に励起光を照射し、前記試料からの蛍光信号に基づき画像処理して得られる複数の特徴量および複数の前記薬剤の濃度から創薬スクリーニングを行う創薬スクリーニング装置において、
複数の前記特徴量の種別ごとに、2個以上の前記画像処理のパラメタから成るパラメタの組み合わせを複数生成するパラメタ組み合わせ手段と、
複数の前記特徴量の種別および複数の前記パラメタの組み合わせごとに、これらのパラメタにより画像処理された場合の前記特徴量のうちの代表的な特徴量に基づいてZ’−factorをそれぞれ算出し、最大のZ’−factorまたは0.5若しくは予め定められた閾値よりも大きいZ’−factorが算出されたときの一または複数のパラメタの組み合わせと特徴量を抽出する第1のパラメタ抽出手段と、
抽出された一または複数の前記パラメタの組み合わせごとに、前記蛍光信号に基づき画像処理して得られた全ての特徴量であって前記抽出されたパラメタにより画像処理された場合の前記特徴量からEC50を算出し、最小のEC50が算出されるパラメタの組み合わせを抽出する第2のパラメタ抽出手段と、
一方の軸を前記第1のパラメタ抽出手段により抽出された特徴量、他方の軸を前記濃度として、前記第2のパラメタ抽出手段により抽出されたパラメタの組み合わせにより画像処理された場合の特徴量におけるドーズレスポンス曲線を作成するドーズレスポンス作成手段とを備えることを特徴とする創薬スクリーニング装置。
【符号の説明】
【0073】
60解析装置
61 第1のパラメタ抽出手段
62 第2のパラメタ抽出手段
63 記憶手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を投与した細胞の試料に励起光を照射し、前記薬剤を投与した前記細胞からの蛍光信号に基づき画像処理して得られる複数の特徴量および複数の前記薬剤の濃度から創薬スクリーニングを行う創薬スクリーニング装置において、
前記特徴量の種別、及び、前記特徴量の種別に複数生成される1個以上の前記画像処理のパラメタから成るパラメタの組み合わせごとに、前記複数のパラメタにより画像処理された場合の前記特徴量の中の選択可能で代表的な特徴量に基づき計測または評価系の妥当性を示す薬効指標を算出し、最大の薬効指標または0.5若しくは予め定められた閾値よりも大きい薬効指標が算出されたときのパラメタの組み合わせと特徴量を抽出する第1のパラメタ抽出手段と、
抽出された前記パラメタの組み合わせごとに、前記蛍光信号に基づき画像処理して得られた全ての特徴量から薬効が最大の半分になる位置であるEC50または薬剤量を示す指標を算出し、最小のEC50または最小の薬剤量を示す指標が算出されるパラメタの組み合わせを抽出する第2のパラメタ抽出手段と、
を備えることを特徴とする創薬スクリーニング装置。
【請求項2】
複数の前記特徴量と、前記薬剤の濃度とが対応付けられた画像データテーブルを記憶する記憶手段を備え、
前記第1のパラメタ抽出手段は、
前記画像データテーブル中の最高濃度および最低濃度に対応する特徴量に対し、前記パラメタの組み合わせにより画像処理された場合の特徴量を算出し、これらの特徴量を前記代表的な特徴量として前記薬効指標を算出することを特徴とする請求項1記載の創薬スクリーニング装置。
【請求項3】
複数の前記特徴量の種別ごとに、2個以上の前記画像処理のパラメタから成るパラメタの組み合わせを複数生成するパラメタ組み合わせ手段を、備えることを特徴とする請求項1または2記載の創薬スクリーニング装置。
【請求項4】
一方の軸を前記第2のパラメタ抽出手段により抽出された特徴量、他方の軸を前記濃度として、前記第2のパラメタ抽出手段により抽出されたパラメタの組み合わせにより画像処理された場合の特徴量におけるドーズレスポンス曲線を作成して表示するドーズレスポンス作成手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の創薬スクリーニング装置。
【請求項5】
薬剤を投与した細胞の試料に励起光を照射し、前記薬剤を投与した前記細胞からの蛍光信号に基づき画像処理して得られる複数の特徴量および複数の前記薬剤の濃度から創薬スクリーニングを行う際の画像処理パラメタ空間の探索方法であって、
パラメタ組み合わせ手段が、複数の前記特徴量の種別に2個以上の前記画像処理のパラメタから成るパラメタの組み合わせを複数生成する第1のステップと、
第1のパラメタ抽出手段が、複数の前記特徴量の種別および複数の前記パラメタの組み合わせごとに、これらのパラメタにより画像処理された場合の前記特徴量の中から選択した代表的な特徴量に基づき計測または評価系の妥当性を示す指標である薬効指標をそれぞれ算出し、最大の薬効指標または0.5よりも大きい薬効指標が算出されたときのパラメタの組み合わせと特徴量を抽出する第2のステップと、
第2のパラメタ抽出手段が、抽出された前記パラメタの組み合わせごとに薬効が最大の半分になる位置であるEC50または薬剤量を示す指標を算出し、最小のEC50または最小の薬剤量を示す指標が算出されるパラメタの組み合わせを抽出する第3のステップと、から成ることを特徴とする画像処理パラメタ空間の探索方法。
【請求項6】
前記第2のステップは、
前記第1のパラメタ抽出手段が、
記憶手段が記憶する複数の前記特徴量と前記薬剤の濃度とが対応付けられた画像データテーブル中の最高濃度および最低濃度に対応する特徴量に対し、前記パラメタの組み合わせにより画像処理された場合の特徴量を算出し、これらの特徴量を前記代表的な特徴量として前記薬効指標を算出することを特徴とする請求項5記載の画像処理パラメタ空間の探索方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−128044(P2011−128044A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287406(P2009−287406)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】