説明

画像処理方法、画像表示方法、画像処理装置、プログラム及びコンピュータ記憶媒体

【課題】撮像装置により撮像された画像のコントラストを高め、視認性を向上させる。
【解決手段】基板を撮像し、当該撮像された基板画像の画素値を変換する画像処理の方法において、撮像された基板画像の画素値をヒストグラム化し、ヒストグラムにおける画素値の分布に基づいて、所定の振幅、所定の周期の三角関数からなるトーンカーブTを作成する。トーンカーブTにより、撮像された基板画像の画素値を変換することで、高コントラストな基板画像を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置において撮像された基板の画像の濃淡情報を変換する画像処理方法、画像表示方法、画像処理装置、プログラム及びコンピュータ記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイスの製造工程におけるフォトリソグラフィー工程では、ウェハ上にレジスト液を塗布してレジスト膜を形成するレジスト塗布処理、レジスト膜を所定のパターンに露光する露光処理、露光されたレジスト膜を現像する現像処理などの一連の処理が順次行われ、ウェハ上に所定のレジストパターンが形成される。これらの一連の処理は、ウェハを処理する各種処理部やウェハを搬送する搬送機構などを搭載した基板処理システムである塗布現像処理システムで行われている。
【0003】
塗布現像処理システムにおいて一連のフォトリソグラフィー処理が行われたウェハは、欠陥検査装置によってウェハ表面に所望のレジスト膜が形成されているか否か、あるいは、傷や異物の付着の有無について検査を行う、いわゆるマクロ欠陥検査が行われる。
【0004】
このようなマクロ欠陥検査では、ウェハを載置している載置台を移動させながら当該載置台上のウェハに照明を照らし、例えばCCDラインセンサの撮像装置によりウェハの表面を撮像する。そして、当該撮像された画像に基づいて基板表面の欠陥の有無を判定するようにしている。この際、撮像された画像の輝度(画素値)が明るすぎたり、あるいは暗すぎたりすると、ウェハの欠陥を判定できない場合がある。そのため、ウェハの画像の輝度が欠陥判定するのに最適な輝度となるように、ウェハを照らす照明の照度が調整されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−216515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の撮像装置により撮像される画像は、通常8bit(256階調)の画像である。しかしながら、8bitの画像ではコントラストが低いため、近年の半導体デバイスの微細化に伴い、実際は膜厚異常等に起因する欠陥が生じているにもかかわらず、その欠陥を認識できないという問題が生じている。その場合、作業員が目視により欠陥の有無を判定することになるが、コントラストが低い場合は、目視で画像を確認しても欠陥の有無を判別することが極めて困難である。
【0007】
bit数が少ない画像においてコントラストを強調する手段として、トーンカーブを変形させる方法が用いられることがある。具体的には、ヒストグラムが、例えば図23に示されるような分布となる画像において、ヒストグラムの最頻値を中央値とし、且つ最頻値近傍の領域Uにおいて傾きが急峻となるように、トーンカーブを変形させる。換言すれば、最大画素値と最小画素値の間の間隔を狭くするようにトーンカーブを変形させる。この場合、変形後のトーンカーブTは、横軸を入力画素値(変換前の画素値)、縦軸を出力画素値(変換後の画素値)とすると、例えば図24に示すように、最頻値近傍において急峻な傾きを有する形状となる。このようにトーンカーブTを変形させることで、図23に示される領域Uのコントラストを強調することができる。
【0008】
しかしながら、図24のようにトーンカーブを変形させた場合、領域Uの外側の領域ではトーンカーブTの傾きが零かあるいは極めて小さくなっている。したがって、領域Uの外側の領域では、コントラストが著しく低下するか、またはコントラストが零の状態となってしまう。かかる場合、ヒストグラムにおける画素値の分布が、例えば図25に示されるように、領域Uの外側の他の領域Vにもピーク値が表れるようなものとなる画像においては、領域Vに存在する画素値については画像上に表示されないか、あるいは表示されてもコントラストが極めて低くなる。そのため、上述のようなトーンカーブTでは、領域Vの画素値で表される欠陥の有無を判別することができない。
【0009】
領域Vのコントラストを強調するには、図24に示されるトーンカーブTにより領域Uの画素値を変換した後、改めて領域VにあわせてトーンカーブTを変形させる必要がある。しかしながらその場合は、その都度トーンカーブTを変形させる作業が必要となるため、欠陥検査のスループットが低下してしまう。また、領域Uと領域Vの画像を一枚の画像上に同時に表示できないため、欠陥の内容を正確に把握できない場合がある。
【0010】
一方、高コントラストの画像を得るための方法として、撮像装置に高ダイナミックレンジのカメラシステムを用いることも考えられる。しかしながら、このような撮像装置はコストが高くなってしまう。また、高ダイナミックレンジの画像の閲覧は一般的に用いられる画像表示ソフトでは扱えず、専用のソフトを使用する必要がある。そのため、この点でもコストの上昇を招くと共に、汎用性も低下してしまう。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、撮像装置により撮像された画像のコントラストを高め、視認性を向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するため、本発明は、基板を撮像し、当該撮像された基板画像の画素値を変換する画像処理の方法であって、撮像された基板画像の画素値をヒストグラム化し、前記ヒストグラムにおける画素値の分布に基づいて、所定の振幅、所定の周期の周期関数からなるトーンカーブを作成し、前記トーンカーブにより、前記撮像された基板画像の画素値を変換することを特徴としている。
【0013】
本発明によれば、基板画像の画素値を変換するにあたり周期関数からなるトーンカーブを用いるので、ヒストグラムの全領域においてトーンカーブの傾きを急峻なものとすることができる。したがって、このトーンカーブを用いて画像処理を行うことで、bit数の低い撮像装置を用いて撮像した画像から、高コントラストの画像を作成することができる。これにより、画像の視認性を向上させることができ、その結果、精度のよい欠陥検査を行うことが可能となる。また、トーンカーブが周期関数であり、最大値と最小値が周期的に繰り替えされるため、上述の領域Vに存在する画素値からも高コントラストの画像を得ることができる。さらには、周期関数を用いるため、当該周期関数の位相や周期を変化させることで、容易に画像のコントラストを調整することができる。
【0014】
前記周期関数は、三角関数であってもよく、複数の前記三角関数を合成したものであってもよい。かかる場合、前記複数の三角関数は、前記ヒストグラムに複数存在する画素値のピークにそれぞれ対応して求めたものであってもよい。また、前記トーンカーブの形状は、のこぎり波状であってもよい。
【0015】
前記三角関数は、
Y={(2C/2)−N}×[sin{(X−A)/B}+1]
で示される式により求められるものであってもよい。この際、Yは変換後の画素値、Cは基板画像のbit数、Nは1/2以上の正の定数、Xは撮像された基板画像の画素値、Aは位相、Bは周期である。かかる場合、前記三角関数におけるAは、前記ヒストグラムにおける画素値の最頻値であってもよい。
【0016】
別な観点による本発明によれば、前記画像処理方法を基板処理システムによって実行させるために、当該基板処理システムを制御する制御装置のコンピュータ上で動作するプログラムが提供される。
【0017】
また別な観点による本発明によれば、前記プログラムを格納した読み取り可能なコンピュータ記憶媒体が提供される。
【0018】
さらに別な観点による本発明は、撮像装置で撮像された基板画像の画素値を変換する画像処理装置であって、撮像された基板画像の画素値をヒストグラム化する算出部と、前記ヒストグラムにおける画素値の分布に基づいて、所定の振幅、所定の周期の周期関数からなるトーンカーブを作成する演算部と、前記トーンカーブにより、前記撮像された基板画像の画素値を変換する変換部と、を有することを特徴としている。
【0019】
前記周期関数は、三角関数であってもよく、複数の前記三角関数を合成したものであってもよい。かかる場合、前記複数の三角関数は、前記ヒストグラムに複数存在する画素値のピークにそれぞれ対応して求めたものであってもよい。また、前記トーンカーブの形状は、のこぎり波状であってもよい。
【0020】
前記三角関数は、
Y={(2C/2)−N}×[sin{(X−A)/B}+1]
で示される式により求められるものであってもよい。この際、Yは変換後の画素値、Cは基板画像のbit数、Nは1/2以上の正の定数、Xは撮像された基板画像の画素値、Aは位相、Bは周期である。かかる場合、前記三角関数におけるAは、前記ヒストグラムにおける画素値の最頻値であってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、撮像装置により撮像された画像のコントラストを高め、視認性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施の形態にかかる基板処理システムの内部構成の概略を示す平面図である。
【図2】本実施の形態にかかる基板処理システムの内部構成の概略を示す側面図である。
【図3】本実施の形態にかかる基板処理システムの内部構成の概略を示す側面図である。
【図4】欠陥検査装置の構成の概略を示す横断面図である。
【図5】欠陥検査装置の構成の概略を示す縦断面図である。
【図6】画像処理装置の構成の概略を示す説明図である。
【図7】基板画像のヒストグラムである。
【図8】本実施の形態の画像処理に係るトーンカーブと基板画像のヒストグラムの関係を示す説明図である。
【図9】基板画像のヒストグラムである。
【図10】画素値範囲と、ヒストグラムの全体の積分値に対する画素値範囲R内の頻度の総和の割合との関係を表す説明図である。
【図11】本実施の形態の画像処理に係るトーンカーブと基板画像のヒストグラムの関係を示す説明図である。
【図12】本実施の形態の画像処理に係るトーンカーブと基板画像のヒストグラムの関係を示す説明図である。
【図13】複数の領域に存在する基板画像のヒストグラムと当該ヒストグラムに対応して求められた複数のトーンカーブとの関係を示す説明図である。
【図14】複数のトーンカーブを合成することにより求めたトーンカーブと基板画像のヒストグラムとの関係を示す説明図である。
【図15】複数のトーンカーブを合成することにより求めたトーンカーブと基板画像のヒストグラムとの関係を示す説明図である。
【図16】複数のトーンカーブを合成することにより求めたトーンカーブと基板画像のヒストグラムとの関係を示す説明図である。
【図17】本実施の形態の画像処理に係るトーンカーブと基板画像のヒストグラムの関係を示す説明図である。
【図18】画像処理前及び画像処理後の画像である。
【図19】画像処理前及び画像処理後の画像である。
【図20】画像処理前及び画像処理後の画像である。
【図21】画像処理前及び画像処理後の画像である。
【図22】画像処理前及び画像処理後の画像である。
【図23】基板画像のヒストグラムである。
【図24】従来の方法により変形させたトーンカーブである。
【図25】従来の方法により変形させたトーンカーブと基板画像のヒストグラムの関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる画像処理装置を備えた基板処理システム1の内部構成の概略を示す説明図である。図2及び図3は、基板処理システム1の内部構成の概略を示す側面図である。なお、本実施の形態では、基板処理システム1が、例えば基板のフォトリソグラフィー処理を行う塗布現像処理システムである場合を例にして説明する。
【0024】
基板処理システム1は、図1に示すように例えば外部との間でカセットCが搬入出される搬入出部としてのカセットステーション2と、フォトリソグラフィー処理の中で枚葉式に所定の処理を施す複数の各種処理ユニットを備えた処理部としての処理ステーション3と、処理ステーション3に隣接する露光装置4との間でウェハWの受け渡しを行う搬送部としてのインターフェイスステーション5とを一体に接続した構成を有している。また、基板処理システム1は、当該基板処理システム1の制御を行う制御装置6を有している。制御装置6には、後述する画像処理装置150が接続されている。
【0025】
カセットステーション2は、例えばカセット搬入出部10とウェハ搬送部11に分かれている。例えばカセット搬入出部10は、基板処理システム1のY方向負方向(図1の左方向)側の端部に設けられている。カセット搬入出部10には、カセット載置台12が設けられている。カセット載置台12上には、複数、例えば4つの載置板13が設けられている。載置板13は、水平方向のX方向(図1の上下方向)に一列に並べて設けられている。これらの載置板13には、基板処理システム1の外部に対してカセットCを搬入出する際に、カセットCを載置することができる。
【0026】
ウェハ搬送部11には、図1に示すようにX方向に延びる搬送路20上を移動自在なウェハ搬送装置21が設けられている。ウェハ搬送装置21は、上下方向及び鉛直軸周り(θ方向)にも移動自在であり、各載置板13上のカセットCと、後述する処理ステーション3の第3のブロックG3の受け渡しユニットとの間でウェハWを搬送できる。
【0027】
処理ステーション3には、各種ユニットを備えた複数例えば4つのブロックG1、G2、G3、G4が設けられている。例えば処理ステーション3の正面側(図1のX方向負方向側)には、第1のブロックG1が設けられ、処理ステーション3の背面側(図1のX方向正方向側)には、第2のブロックG2が設けられている。また、処理ステーション3のカセットステーション2側(図1のY方向負方向側)には、第3のブロックG3が設けられ、処理ステーション3のインターフェイスステーション5側(図1のY方向正方向側)には、第4のブロックG4が設けられている。
【0028】
例えば第1のブロックG1には、図2に示すように複数の液処理ユニット、例えばウェハWを現像処理する現像処理ユニット30、ウェハWのレジスト膜の下層に反射防止膜(以下「下部反射防止膜」という)を形成する下部反射防止膜形成ユニット31、ウェハWにレジスト液を塗布してレジスト膜を形成するレジスト塗布ユニット32、ウェハWのレジスト膜の上層に反射防止膜(以下「上部反射防止膜」という)を形成する上部反射防止膜形成ユニット33が下から順に4段に重ねられている。
【0029】
例えば第1のブロックG1の各ユニット30〜33は、処理時にウェハWを収容するカップEを水平方向に複数有し、複数のウェハWを並行して処理することができる。
【0030】
例えば第2のブロックG2には、図3に示すようにウェハWの熱処理を行う熱処理ユニット40や、ウェハWを疎水化処理する疎水化処理装置としてのアドヒージョンユニット41、ウェハWの外周部を露光する周辺露光ユニット42が上下方向と水平方向に並べて設けられている。熱処理ユニット40は、ウェハWを載置して加熱する熱板と、ウェハWを載置して冷却する冷却板を有し、加熱処理と冷却処理の両方を行うことができる。なお、熱処理ユニット40、アドヒージョンユニット41及び周辺露光ユニット42の数や配置は、任意に選択できる。
【0031】
例えば第3のブロックG3には、複数の受け渡しユニット50、51、52、53、54、55、56が下から順に設けられている。また、第4のブロックG4には、複数の受け渡しユニット60、61、62と、欠陥検査ユニット63が下から順に設けられている。
【0032】
図1に示すように第1のブロックG1〜第4のブロックG4に囲まれた領域には、ウェハ搬送領域Dが形成されている。ウェハ搬送領域Dには、例えばウェハ搬送装置70が配置されている。
【0033】
ウェハ搬送装置70は、例えばY方向、前後方向、θ方向及び上下方向に移動自在な搬送アームを有している。ウェハ搬送装置70は、ウェハ搬送領域D内を移動し、周囲の第1のブロックG1、第2のブロックG2、第3のブロックG3及び第4のブロックG4内の所定のユニットにウェハWを搬送できる。ウェハ搬送装置70は、例えば図3に示すように上下に複数台配置され、例えば各ブロックG1〜G4の同程度の高さの所定のユニットにウェハWを搬送できる。
【0034】
また、ウェハ搬送領域Dには、第3のブロックG3と第4のブロックG4との間で直線的にウェハWを搬送するシャトル搬送装置80が設けられている。
【0035】
シャトル搬送装置80は、例えば図3のY方向に直線的に移動自在になっている。シャトル搬送装置80は、ウェハWを支持した状態でY方向に移動し、第3のブロックG3の受け渡しユニット52と第4のブロックG4の受け渡しユニット62との間でウェハWを搬送できる。
【0036】
図1に示すように第3のブロックG3のX方向正方向側には、ウェハ搬送装置90が設けられている。ウェハ搬送装置90は、例えば前後方向、θ方向及び上下方向に移動自在な搬送アームを有している。ウェハ搬送装置90は、ウェハWを支持した状態で上下に移動して、第3のブロックG3内の各受け渡しユニットにウェハWを搬送できる。
【0037】
インターフェイスステーション5には、ウェハ搬送装置100が設けられている。ウェハ搬送装置100は、例えば前後方向、θ方向及び上下方向に移動自在な搬送アームを有している。ウェハ搬送装置100は、例えば搬送アームにウェハWを支持して、第4のブロックG4内の各受け渡しユニット、露光装置4にウェハWを搬送できる。
【0038】
次に、欠陥検査ユニット63の構成について説明する。
【0039】
欠陥検査ユニット63は、図4に示すようにケーシング110を有している。ケーシング110内には、図5に示すようにウェハWを載置する載置台120が設けられている。この載置台120は、モータなどの回転駆動部121によって、回転、停止が自在である。ケーシング110の底面には、ケーシング110内の一端側(図5中のX方向負方向側)から他端側(図5中のX方向正方向側)まで延伸するガイドレール122が設けられている。載置台120と回転駆動部121は、ガイドレール122上に設けられ、駆動装置123によってガイドレール122に沿って移動できる。
【0040】
ケーシング110内の他端側(図5のX方向正方向側)の側面には、撮像装置130が設けられている。撮像装置130には、例えば広角型のCCDカメラが用いられ、その画像のbit数は、例えば8bitである。ケーシング110の上部中央付近には、ハーフミラー131が設けられている。ハーフミラー131は、撮像装置130と対向する位置に設けられ、鉛直方向から45度傾斜して設けられている。ハーフミラー131の上方には、照明装置132が設けられ、ハーフミラー131と照明装置132は、ケーシング110の上面に固定されている。照明装置132からの照明は、ハーフミラー131を通過して下方に向けて照らされる。したがって、照明装置132の下方にある物体によって反射した光は、ハーフミラー131でさらに反射して、撮像装置130に取り込まれる。すなわち、撮像装置130は、照明装置132による照射領域にある物体を撮像することができる。そして撮像したウェハWの検査対象画像(基板画像)は、制御装置6を介して画像処理装置150に入力される。
【0041】
制御装置6は、例えばCPUやメモリなどを備えたコンピュータにより構成され、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、欠陥検査ユニット63で撮像された基板画像に基づいて行われるウェハWの欠陥検査を制御するプログラムが格納されている。これに加えて、プログラム格納部には、上述した各種処理ユニットや搬送装置などの駆動系の動作を制御して、基板処理システム1の所定の作用、すなわちウェハWへのレジスト液の塗布、現像、加熱処理、ウェハWの受け渡し、各ユニットの制御などを実現させるためのプログラムも格納されている。なお、前記プログラムは、例えばハードディスク(HD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリーカードなどのコンピュータに読み取り可能な記憶媒体Hに記録されていたものであって、その記憶媒体Hから制御装置6にインストールされたものであってもよい。
【0042】
制御装置6のプログラム格納部に格納された欠陥検査を制御するプログラムは、例えば風きり、コメット、ストリエーション、センターモード、ホットスポットといった、ウェハWに生じうる欠陥の有無を判定するものである。具体的には、ウェハWの欠陥を模したテンプレートの画像と欠陥のないウェハWの画像とを合成することにより生成した欠陥モデルを記憶しており、欠陥検査ユニット63で撮像された基板画像と当該欠陥モデルとの比較を行う。そして、基板画像といずれかの欠陥モデルとが類似する場合は欠陥有り、いずれにも類似しない場合は欠陥無し、と判定する。
【0043】
次に、欠陥検査ユニット63で撮像された基板画像の処理を行う画像処理装置150の構成について説明する。画像処理装置150は、例えばCPUやメモリなどを備えた汎用コンピュータにより構成されている。画像処理装置150は例えば図6に示すように、撮像された基板画像の画素値をヒストグラム化する算出部160と、算出部で作成されたヒストグラムにおける画素値の分布に基づいてトーンカーブを作成する演算部161と、当該トーンカーブにより基板画像の画素値を変換する変換部162と、を有している。また、画像処理装置150には、トーンカーブを作成するための各種情報を演算部161に入力するための入力部163及び、基板画像を出力表示するための出力表示部164も設けられている。
【0044】
算出部160では、制御装置6から画像処理装置150に入力された基板画像を、基板全面にわたって画素値として数値化し、図7に示すような、当該基板画像のヒストグラムを求める。図7のヒストグラムでは、画素値を横軸、頻度を縦軸として表している。なお、基板画像は一般的にRGB(Red、Green、Blue)の3色で構成されている。そのため、R、G、Bごとにヒストグラム化することができるが、R、G、B間において画像処理の手法に相違はない。したがって、本実施の形態においては、特にR、G、Bについては特定せずに説明する。
【0045】
演算部161では、算出部160で求めたヒストグラムにおける各画素値の分布を分析し、基板画像の処理に用いるトーンカーブを作成する。演算部161で作成されるトーンカーブは、所定の振幅、所定の周期の周期関数である。以下、当該トーンカーブの作成方法について説明する。
【0046】
演算部161には、次の式(1)に基づいて、変換後の出力画素値Yを求めるためのトーンカーブを作成するプログラムP1が格納されている。
Y={(2C/2)−N}×[sin{(X−A)/B}+1] ・・・(1)
式(1)から明らかなように、演算部161で作成されるトーンカーブは、三角関数である。式(1)のCは基板画像のbit数であり、Nは式(1)で求められるトーンカーブの振幅を決定する定数である。Xは欠陥検査ユニット63で撮像された基板画像における画素値であり、Aは当該三角関数の位相であり、Bは当該三角関数の周期である。ここで、式(1)のトーンカーブを用いた本発明の画像処理の原理について簡単に説明する。
【0047】
画像のコントラストを強調するためには、画像をヒストグラム化し、ヒストグラムにおける最頻値近傍の領域において傾きが急峻となるトーンカーブが用いられるが、既述のように、図20のような形状のトーンカーブTでは、最頻値近傍の領域U以外の領域のコントラストが著しく低下してしまう。これについて本発明者らは、値が周期的に反復して変化する関数、即ち周期関数に基づいてトーンカーブを作成すれば、ヒストグラムの全域にわたって傾きが急峻なトーンカーブを得ることができるという点に着目した。
【0048】
具体的には、例えばトーンカーブとして三角関数を用いた場合、当該三角関数の周期の半分ごとに、トーンカーブの値は最小値から最大値まで変化する。したがって、この最小値と最大値の間の値(すなわちsinθの値が0となる場合)とヒストグラムの最頻値とが一致するように三角関数の位相を調整し、且つトーンカーブの最頻値の左右の画素値範囲の積分値がヒストグラム全体の積分値に対して所定の割合となるように周期を設定することで、たとえば図8に示すように、ヒストグラムの最頻値の左右の画素値範囲RにおいてトーンカーブTの傾きを急峻なものとすることができる。本発明は、このような着想に基づくものであり、次に、本実施の形態にかかる式(1)のトーンカーブTを具体的に求める方法について説明する。
【0049】
先ず、欠陥検査ユニット63では8bit画像の撮像装置130が用いられているので、式(1)のCの値は「8」となる。この場合、基板画像の画素値Xのレンジは256階調、換言すれば、式(1)に入力される基板画像の画素値Xのとりうる値は0〜255の整数となる。また、式(1)の定数Nの値は、トーンカーブの性質上、入力画素値である基板画像の画素値Xに対応する出力画素値Yの値が0〜255となる範囲内で任意に設定が可能である。具体的には、Cの値が「8」である場合は、定数Nは、1/2〜128の範囲内で設定できる。なお、定数Nの値を大きくすると、出力画素値Yの取りうる値のレンジ幅が小さくなってしまいトーンカーブによる画像変換の利益が失われるので、通常は、「1」に設定することが好ましい。出力画素値Yの値を0〜255の範囲とする場合は、定数Nの値は「1/2」とすべきであるが、R、G、Bの各画素値は整数の値により色の明るさを表現しており、出力画素値Yの値は整数とすることが好ましいこと、また、出力画素値Yの最大値が「254」となっても、処理後の画像は最大値を「255」とした場合と大差ないことが、定数Nを「1」とする理由である。したがって、本実施の形態においては、Nの値を「1」とし、式(1)の振幅を「127」、即ち出力画素値Yの値を0〜254に設定した場合について説明する。なお、定数Nの設定により、基板画像の画素値Xに対する出力画素値Yの値が整数とならない場合は、変換部162において出力画素値Yの値を適宜丸めて、整数として出力するように処理を行ってもよい。
【0050】
次に、図7に示されるヒストグラムにおいて最頻値となる画素値の値を位相Aの値として求める。図7に示されるヒストグラムにおいて、最頻値、即ち最も頻度が高かった画素値は例えば「111」であるとすると、この場合の位相Aの値は「111」となる。このように、位相Aの値に最頻値を用いることで、トーンカーブの振幅の中心値、即ち図8に示される領域Kの中心と、最頻値とを一致させることができる。
【0051】
Bで表される周期については、ヒストグラムの最頻値を中心とし、その左右の画素値範囲Rの積分値がヒストグラム全体の積分値に対して所定の割合となるような画素値範囲Rを求めることによりその値が設定される。この所定の割合は、基板画像のヒストグラムの形状に応じて任意に決定されるものである。周期Bは、図8に示すように、式(1)で表される関数の周期を表すものであり、この周期Bの値が大きくなるほど、トーンカーブの傾きは小さくなり、周期Bの値が小さくなるほどトーンカーブの傾きは大きくなる。したがって、例えば図8に示すように、ヒストグラムが急峻なピークを有する形状となる場合は所定の割合を90%程度の高い値に設定してもよい。その反面、図9に示すようにヒストグラムがなだらかな曲線を描く場合、所定の割合の値を大きくすると周期が大きくなるため、トーンカーブによる変換後の基板画像のコントラストの強調の程度も低下するからである。
【0052】
ヒストグラムにおける画素値は離散値であるので、ヒストグラム全体の積分値Fは、全画素値の頻度の総和として次の式(2)で表される。なお、式(2)では8bitの画像における積分値を表している。

式(2)のH(i)は各画素値(i=0〜255)の頻度である。
【0053】
また、最頻値を中心にその左右の画素値範囲R内の頻度の和Jは、次の式(3)で表される。

したがって、ヒストグラムの全体の積分値Fに対する画素値範囲R内の頻度の総和Jの割合Lは、次の式(4)のように表される。
L=J/F×100 ・・・(4)
【0054】
式(4)からは、例えば図10に示すような画素値範囲Rと積分値の割合Lとの関係を表すグラフが求まる。そして、ヒストグラムにおける画素値の分布に応じて任意に割合Lを設定し、図10のグラフから画素値範囲Rを求め、これを周期Bの値とする。なお、本実施の形態においては、割合Lを例えば80%とする。すると、画素値範囲Rが「6」の場合に割合Lが概ね80%となるため、周期Bの値は「6」と設定される。
【0055】
そして、上述のbit数C、定数N、位相A、周期Bの値を式(1)に代入すると、式(1)は、例えば次の式(5)のようなYとXの三角関数として表される。
Y=(127)×[sin{(X−111)/6}+1] ・・・(5)
そして、この式(5)を横軸が入力画像の画素値X、縦軸が変換後の画素値Yとなるように描図すると、図11に示されるように、ヒストグラムの画素値の総和の80%が周期Bの半分の領域内に含まれる三角関数状のトーンカーブTが得られる。
【0056】
次に、変換部162において、図11に示されるトーンカーブTにより、基板画像の画像処理が行われる。この場合、トーンカーブTは、図11に示されるように、位相が「111」、周期が「6」の三角関数なので、ヒストグラムの画素値が最頻値である「111」となる場合に、出力画素値Yの値が中間値である「127」となり、且つトーンカーブTで表される出力画素値Yの値が0から255まで増加する領域(図11に示す画素値範囲R内の領域)内に、図7に示すヒストグラム全体の積分値Fの80%が収まるようになる。したがって、式(1)と図7のヒストグラムから求めたトーンカーブTは、当該ヒストグラムの最頻値近傍の画素値範囲Rにおいて傾きが急峻なものとなり、この画素値範囲Rにおける画像を高コントラストなものに変換することができる。また、トーンカーブTが三角関数であり、最大値と最小値が周期的に繰り替えされるため、図11に示されるように、画素値範囲Rの範囲外の領域Vに存在する画素値からも高コントラストの画像を得ることができる。
【0057】
そして、変換部162において変換されて処理された基板画像は、出力表示部164に出力され処理後の画像が表示される。
【0058】
この際、ヒストグラムの形状に基づいて入力部163から位相A、周期Bの値を任意に入力することで、より最適なトーンカーブTを得ることもできる。なお、入力部163としては、例えばキーボードなどの操作端末であってもよいし、また、出力表示部164がタッチパネルで有る場合には、出力表示部164に表示された各種操作用ボタンであってもよい。
【0059】
本実施の形態に係る基板処理システム1は以上のように構成されており、次に、以上のように構成された基板処理システム1で行われるウェハWの処理について説明する。
【0060】
ウェハWの処理においては、先ず、複数枚のウェハWを収容したカセットCがカセットス搬入出部10の所定の載置板13に載置される。その後、ウェハ搬送装置21によりカセットC内の各ウェハWが順次取り出され、処理ステーション3の第3のブロックG3の例えば受け渡しユニット53に搬送される。
【0061】
次にウェハWは、ウェハ搬送装置70によって第2のブロックG2の熱処理ユニット40に搬送され、温度調節される。その後、ウェハWは、ウェハ搬送装置70によって例えば第1のブロックG1の下部反射防止膜形成ユニット31に搬送され、ウェハW上に下部反射防止膜が形成される。その後ウェハWは、第2のブロックG2の熱処理ユニット40に搬送され、加熱処理が行われる。その後第3のブロックG3の受け渡しユニット53に戻される。
【0062】
次にウェハWは、ウェハ搬送装置90によって同じ第3のブロックG3の受け渡しユニット54に搬送される。その後ウェハWは、ウェハ搬送装置70によって第2のブロックG2のアドヒージョンユニット41に搬送され、疎水化処理される。その後、ウェハWは、ウェハ搬送装置70によってレジスト塗布ユニット32に搬送され、ウェハW上にレジスト膜が形成される。その後ウェハWは、ウェハ搬送装置70によって熱処理ユニット40に搬送されて、プリベーク処理される。その後、ウェハWは、ウェハ搬送装置70によって第3のブロックG3の受け渡しユニット55に搬送される。
【0063】
次にウェハWは、ウェハ搬送装置70によって上部反射防止膜形成ユニット33に搬送され、ウェハW上に上部反射防止膜が形成される。その後ウェハWは、ウェハ搬送装置70によって熱処理ユニット40に搬送されて、加熱され、温度調節される。その後、ウェハWは、周辺露光ユニット42に搬送され、周辺露光処理される。
【0064】
その後、ウェハWは、ウェハ搬送装置70によって第3のブロックG3の受け渡しユニット56に搬送される。
【0065】
次にウェハWは、ウェハ搬送装置90によって受け渡しユニット52に搬送され、シャトル搬送装置80によって第4のブロックG4の受け渡しユニット62に搬送される。その後、ウェハWは、インターフェイスステーション7のウェハ搬送装置100によって露光装置4に搬送され、露光処理される。次に、ウェハWは、ウェハ搬送装置100によって第4のブロックG4の受け渡しユニット60に搬送される。その後、ウェハWは、ウェハ搬送装置70によって熱処理ユニット40に搬送され、露光後ベーク処理される。その後、ウェハWは、ウェハ搬送装置70によって現像処理ユニット30に搬送され、現像される。現像終了後、ウェハWは、ウェハ搬送装置90によって熱処理ユニット40に搬送され、ポストベーク処理される。
【0066】
その後、ウェハWは、ウェハ搬送装置70によって第3のブロックG3の受け渡しユニット50に搬送され、その後カセットステーション2のウェハ搬送装置21によって所定の載置板13のカセットCに搬送される。こうして、一連のフォトリソグラフィー工程が終了する。
【0067】
その後、ウェハWは、ウェハ搬送装置70によって第4のブロックG4の受け渡しユニット62に搬送される。そして、ウェハWはウェハ搬送機構100によって欠陥検査ユニット63に搬送され、ウェハWの検査が行われる。欠陥検査ユニット63の撮像装置130で撮像された基板画像のデータは、制御装置6を介して画像処理装置150に入力される。
【0068】
画像処理装置150では、基板画像のヒストグラム及び式(1)に基づいてトーンカーブTが作成され、当該トーンカーブTにより、撮像された基板画像の画素値が変換される。そして、制御装置6により変換後の基板画像と欠陥モデルとの比較が行われる。変換後の基板画像がどの欠陥にも類似しない場合は、当該ウェハWには欠陥が発生していないと判断される。その反対に、ウェハWの検査対象画像に類似する欠陥モデルが存在する場合、当該欠陥モデルに相当する欠陥がウェハWに生じていると判定される。なお、欠陥の有無の判定は、作業員が出力表示部164の画像を目視により確認することにより行ってもよい。
【0069】
そして、欠陥検査を終えたウェハWは、ウェハ搬送機構100により受け渡しユニット62に搬送される。その後、ウェハ搬送装置70、ウェハ搬送装置21を介して所定の載置板13のカセットCに搬送され、この一連のフォトリソグラフィー工程、及び欠陥検査ユニット63によるウェハWの検査が繰り返し行われる。
【0070】
以上の実施の形態によれば、基板画像の画素値を変換するにあたり三角関数からなるトーンカーブTを用いるので、ヒストグラムの全領域においてトーンカーブTの傾きを急峻なものとすることができる。したがって、このトーンカーブを用いて画像処理を行うことで、bit数の低い撮像装置130を用いて撮像した画像からであっても、高コントラストの基板画像を作成することができ、且つ画素値範囲Rの範囲外の領域Vに存在する画素値についても高いコントラストの画像を得ることができる。これにより、欠陥検査ユニット63で撮像した基板画像の視認性を向上させることができ、その結果、精度のよい欠陥検査を行うことが可能となる。また、三角関数を用いるため、位相や周期を変化させることで、容易に画像のコントラストを調整することができる。
【0071】
特に、式(1)〜(4)を用いることで、自動的に最適なトーンカーブTを作成することができるので、作業員の熟練度に依らず、容易に高コントラストの画像を得ることができる。
【0072】
また、画像処理装置150が入力部163を有しているので、ヒストグラムにおける画素値の分布に対応して、より高コントラストの画像を得るためのトーンカーブを作成することができる。具体的には、例えばヒストグラムが最頻値を中心とした左右対称の形状ではなく、例えば図12に示すように、ヒストグラムにおける最頻値の右側かあるいは左側のいずれか一方に画素値の分布が偏っているような画像における場合を例にすると、最頻値を位相Aの値とするのではなく、画素値の偏っている領域Oの中間値となる画素値(図12のA1)を位相Aとし、この中間値A1を中心として周期Bを設定する。こうすることで、トーンカーブTの幅を厳密にヒストグラムに合せることができるので、よりコントラストが高く、視認性のよい基板画像を得ることができる。また、図11の領域Vの画素値とトーンカーブTの位相がうまくマッチングせず、領域Vの画像が適切に表示されない場合にも、画素値範囲Rと領域Vの両方の画像が適切に表示されるように位相Aや周期Bを調整することができる。
【0073】
なお、以上の実施の形態では、トーンカーブTを画素値のヒストグラムにおける最頻値やピーク値とマッチングさせるにあたり、例えば周期関数の位相Aや周期Bの値を調整したが、例えば二つ以上の周期関数を合成してトーンカーブTを作成することで、マッチングを行ってもよい。以下、二つ以上の周期関数を合成してトーンカーブをマッチングする場合について説明する。
【0074】
基板画像のヒストグラムにおいて、例えば図13に示すように、領域Sと、領域Sとは異なる他の領域Qに入力画素値のピークがそれぞれ存在し、領域Sに合わせてトーンカーブT1を求めると、当該トーンカーブT1の振幅の頂点近傍と他方の領域Qとが重なる場合がある。この場合、そのままトーンカーブT1を用いると、領域Qにおけるコントラストを逆に低下させてしまう。したがって、領域Qにおけるコントラストも確保するためには、トーンカーブT1の位相Aや周期Bの値を調整することが考えられる。
【0075】
しかしながら、領域Qにおけるコントラストを考慮してトーンカーブT1の位相Aや周期Bの値を調整すると、領域Sにおけるコントラストが必ずしも最適なものでなくなってしまうことがある。そこで、領域Sに対応するトーンカーブT1に加えて、領域Qに存在する入力画素値のピークに対応するトーンカーブT2を、式(1)に基づき別途独立して求める。即ち、図13に鎖線で示すように、領域Qにおいて傾きが急峻となるトーンカーブT2を求める。この場合、トーンカーブT2は、トーンカーブT1とは少なくとも周期Bまたは位相Aのいずれかが異なるものである。
【0076】
次に、領域Sに対応するトーンカーブT1と、領域Qに対応するトーンカーブT2を合成し、トーンカーブT3を求める。この場合、領域Sに対応するトーンカーブT1により変換された出力画素値をY1、領域Qに対応するトーンカーブT2により変換された出力画素値をY2とすると、トーンカーブT1とトーンカーブT2を合成したトーンカーブT3により変換された出力画素値Y3を求める式は、次の式(6)のように表される。
Y3=(a×Y1)+{(1−a)×Y2} ・・・(6)
ここで式(6)の「a」は、出力画素値Y1を求めるトーンカーブT1と、出力画素値Y2を求めるトーンカーブT2とを合成する際の重み計数であり、0〜1の間で任意の値を取りうる。なお、「a」を1とした場合、トーンカーブT3はトーンカーブT1と同じになり、「a」を0(ゼロ)とした場合トーンカーブT3はトーンカーブT2と同じになる。
【0077】
例えば「a」を0.5とした場合は、トーンカーブT1とトーンカーブT2とを同じ重みで合成することとなる。かかる場合、合成により得られるトーンカーブT3は、図14に示すように、トーンカーブT1とトーンカーブT2とを一対一で単純に合成し、合成後の出力画素値の値を半分にしたものとなる。
【0078】
また、「a」を0.1とした場合、合成後のトーンカーブT3の形状は、図15に示すように、トーンカーブT1の形状が支配的なものとなる。反対に、「a」を0.9とした場合、トーンカーブT3の形状は、図16に示すように、トーンカーブT2の形状が支配的となる。なお、本実施の形態においては、図14や図15に示すように、例えば「a」を0.1や0.5に設定することで、領域Sと領域Qの両方において傾きが急峻となるトーンカーブT3が得られる。したがって、以上の実施の形態によれば、複数のトーンカーブを合成してトーンカーブT3を求めることで、複数の領域に存在する入力画素値を変換し、いずれの領域においても高コントラストな画像を求めることができる。
【0079】
なお、以上の実施の形態では、周期関数の一例として三角関数を用いた場合について説明したが、トーンカーブは例えば図17に示すように、のこぎり波状の関数に基づいて作成したものであってもよい。かかる場合においても、位相と周期を適切に設定することにより、高コントラストの画像を得ることができる。
【0080】
なお、例えば半導体であるウェハWの撮像を行う場合、通常は、照明装置132からの光に対応した画素値が、例えば図12に破線で示すように、背景情報Mとしてヒストグラム上に現れる。また、照明装置132によりウェハWを照らす照明の照度は、欠陥に由来する画素値が背景情報Mと重ならないような画素値をとるように調整されている。したがって、この背景情報Mを全画素値の頻度の総和である積分値Fから差し引いて、トーンカーブを作成してもよい。かかる場合、図12において、例えば背景情報Mは、画素値が90以下の領域に存在しているとすると、全体の式(2)において0〜255となっているiの値を、90〜255とすることで、背景情報Mを総和Fから差し引くことができる。これにより、より精度よく画像処理を行うことができる。
【実施例】
【0081】
実施例として、本実施の形態にかかる画像処理装置150を用いて基板画像の処理を行った。図18〜図22に画像処理前の基板画像と、画像処理後の基板画像をそれぞれ示す。撮像装置130には8bitのCCDカメラを用いた。
【0082】
図18は、「風きり」の欠陥が生じたウェハWの基板画像である。図18の画像処理後の画像は、位相Aの値を「209」、周期Bの値を「10」としたトーンカーブにより得られたものである。図18に示すように、画像処理前の状態ではほとんど欠陥を確認できなかったものが、本発明の画像処理を施すことで、画像のコントラストが強調され、ウェハWの周縁部に欠陥が生じていることが明確に確認できるようになっている。
【0083】
図19は「コメット」、図12は「ストリエーション」、図21は「センターモード」、図22は「ホットスポット」の欠陥が生じたウェハWの基板画像である。図19〜図22における画像処理後の画像は、位相Aの値をそれぞれ、「209」、「186」、「134」、「119」とし、周期Bの値についてはいずれも「10」としたものである。図19〜図22に示される画像処理の結果から、本発明の画像処理を行うことで、いずれの場合においても高コントラストの画像を得ることができることが確認された。
【0084】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。本発明はこの例に限らず種々の態様を採りうるものである。本発明は、基板がウェハ以外のFPD(フラットパネルディスプレイ)、フォトマスク用のマスクレチクルなどの他の基板である場合にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、例えば半導体ウェハ等の基板に対して処理を行う際に有用である。
【符号の説明】
【0086】
1 基板処理システム
2 カセットステーション
3 処理ステーション
4 露光装置
5 インターフェイスステーション
6 制御装置
10 カセット搬入出部
11 ウェハ搬送部
12 カセット載置台
13 載置板
20 搬送路
21 ウェハ搬送装置
30 現像処理ユニット
31 下部反射防止膜形成ユニット
32 レジスト塗布ユニット
33 上部反射防止膜形成ユニット
40 熱処理ユニット
41 アドヒージョンユニット
42 周辺露光ユニット
70 ウェハ搬送装置
80 シャトル搬送装置
90 ウェハ搬送装置
100 ウェハ搬送装置
110 ケーシング
120 載置台
121 回転駆動部
122 ガイドレール
123 駆動装置
130 撮像装置
131 ハーフミラー
132 照明装置
150 画像処理装置
160 算出部
161 演算部
162 変換部
163 入力部
164 出力表示部
W ウェハ
D ウェハ搬送領域
C カセット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を撮像し、当該撮像された基板画像の画素値を変換する画像処理の方法であって、
撮像された基板画像の画素値をヒストグラム化し、
前記ヒストグラムにおける画素値の分布に基づいて、所定の振幅、所定の周期の周期関数からなるトーンカーブを作成し、
前記トーンカーブにより、前記撮像された基板画像の画素値を変換することを特徴とする、画像処理方法。
【請求項2】
前記周期関数は、三角関数であることを特徴とする、請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項3】
前記三角関数は、
Y={(2C/2)−N}×[sin{(X−A)/B}+1]
で示される式により求められるものであることを特徴とする、請求項2に記載の画像処理方法。
Y:変換後の画素値
C:基板画像のbit数
N:1/2以上の正の定数
X:撮像された基板画像の画素値
A:位相
B:周期
【請求項4】
前記三角関数におけるAは、前記ヒストグラムにおける画素値の最頻値であることを特徴とする、請求項3に記載の画像処理方法。
【請求項5】
前記トーンカーブの形状は、のこぎり波状であることを特徴とする、請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項6】
前記周期関数は、複数の三角関数を合成したものであることを特徴とする、請求項2または3のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項7】
前記複数の三角関数は、前記ヒストグラムに複数存在する画素値のピークごとに求められ、それぞれ異なった周期または位相を有するものであることを特徴とする、請求項6に記載の画像処理方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の画像処理方法により変換して求めた画像を、画像表示装置に表示することを特徴とする、画像表示方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の画像処理方法を基板処理システムによって実行させるために、当該基板処理システムを制御する制御装置のコンピュータ上で動作するプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のプログラムを格納した読み取り可能なコンピュータ記憶媒体。
【請求項11】
撮像装置で撮像された基板画像の画素値を変換する画像処理装置であって、
撮像された基板画像の画素値をヒストグラム化する算出部と、
前記ヒストグラムにおける画素値の分布に基づいて、所定の振幅、所定の周期の周期関数からなるトーンカーブを作成する演算部と、
前記トーンカーブにより、前記撮像された基板画像の画素値を変換する変換部と、を有することを特徴とする、画像処理装置。
【請求項12】
前記周期関数は、三角関数であることを特徴とする、請求項11に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記三角関数は、
Y={(2C/2)―N}×[sin{(X−A)/B}+1]
で示される式により求められるものであることを特徴とする、請求項12に記載の画像処理装置。
Y:変換後の画素値
C:画像のbit数
N:1/2以上の正の定数
X:撮像された画像の画素値
A:位相
B:周期
【請求項14】
前記三角関数におけるAは、前記ヒストグラムにおける画素値の最頻値であることを特徴とする、請求項13に記載の画像処理装置。
【請求項15】
前記トーンカーブの形状は、のこぎり波状であることを特徴とする、請求項11に記載の画像処理装置。
【請求項16】
前記周期関数は、複数の前記三角関数を合成したものであることを特徴とする、請求項12または13のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項17】
前記複数の三角関数は、前記ヒストグラムに複数存在する画素値のピークにそれぞれ対応して求めたものであることを特徴とする、請求項16に記載の画像処理装置。
【請求項18】
前記変換部で画素値が変換された画像を表示する画像表示装置を有することを特徴とする、請求項11〜17に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−30158(P2013−30158A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−123198(P2012−123198)
【出願日】平成24年5月30日(2012.5.30)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】