説明

画像処理方法及び画像処理装置

【課題】2値化画像におけるノイズ部分を判別でき、結晶粒界部分と、結晶粒界ではない部分とを見分けることができる画像処理方法及び画像処理装置を提供すること。
【解決手段】撮像装置によって標本を撮像する工程と、標本画像の画像信号を記憶手段に記憶する工程と、画像信号に対して閾値設定手段により閾値を設定し、この閾値により標本画像から2値化画像を生成する工程と、演算部が記憶手段に記憶された標本画像の画像信号を参照する工程と、演算部が画像信号を参照した結果により2値化画像におけるノイズ部分を判別し、2値化画像からノイズ部分を除去する工程とを含む画像処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理方法及び画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属結晶組織をカメラで撮像し、撮像された画像の結晶粒界を2値化することで粒子の平均粒径等を計測する方法、および装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−101114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の方法では、2値化画像には、金属組織の結晶粒界とこの結晶粒界に接して表れたノイズ部分とを含むため、真の粒界を判別することができないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、本発明に係る画像処理方法は、撮像装置によって標本を撮像し、標本画像を形成する工程と、前記標本画像の画像情報を記憶手段に記憶する工程と、前記画像情報に対して閾値設定手段により閾値を設定し、該閾値により前記標本画像から2値化画像を生成する工程と、演算部が前記画像情報を参照し、前記2値化画像と比較する工程と、前記演算部が前記画像情報を参照し、前記2値化画像と比較した結果により前記2値化画像におけるノイズ部分を判別する工程とを含むことを特徴とする。
【0005】
また、本発明に係る画像処理装置は、標本を撮像する撮像装置と、前記撮像装置の信号から標本画像を形成する画像処理部と、前記標本画像の画像情報を記憶する記憶手段と、前記画像情報に対して閾値を設定する閾値設定手段と、該閾値により前記標本画像から2値化画像を生成し、前記画像情報を参照し、前記2値化画像と比較した結果により前記2値化画像におけるノイズ部分を判別する演算部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、金属結晶組織の解析において、2値化画像に含まれるノイズ部分を判別して除去することができる画像処理方法および画像処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。本実施形態では解析を行う標本として鉄を用いている。
【0008】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置100の概略構成例を示す図である。
図1において、標本1の鉄は顕微鏡2のステージ6に載置されている。顕微鏡2の鏡筒部には標本1の像を撮像する撮像装置3が取付けられている。本実施形態では撮像装置3はデジタルカメラを用いている。撮像装置3で撮像された標本1の画像は、画像処理部4(本実施形態ではパーソナルコンピュータ)に取り込まれる。画像処理部4に取り込まれた画像情報や画像処理部4で画像処理された画像情報は、モニタ5に表示することができる。
【0009】
画像処理部4は、取り込んだ画像情報や画像処理した画像情報を記憶するメモリ4a、取り込んだ画像情報を2値化するための閾値を設定する閾値設定手段4b、2値化画像に表れたノイズ部分を判別し、除去する演算部4c等を内蔵している。
【0010】
図2は、撮像装置3で撮像された標本1の画像情報(以下、標本画像という)の模式図である。
【0011】
図2において、標本画像IMには、輝度値の異なる結晶粒子20、21、22(以下、単に粒子という)が表示されている。また、標本画像IMには、粒子20と粒子21との結晶粒界A(以下、境界Aという)、粒子20と粒子22との結晶粒界B(以下、境界Bという)、粒子21と粒子22との結晶粒界C(以下、境界Cという)が表示されている。境界A、B、Cは、周囲に比べて輝度値が低いため、最も暗く表示されている。この標本画像IMは画像処理部4のメモリ4aに記憶される。このとき、標本画像IMは、画像処理部4により標本画像IMを構成する各画素における輝度値に対応した輝度情報(例えば0〜255段階のビット情報)に変換されメモリ4aに記憶される。
【0012】
また、製造段階において鉄の粒子の大きさは制御されることから、製造される鉄の最小の粒子の大きさ(以下、最小セグメントという)の面積を予め設定し、メモリ4aに記憶させる。後述する2値化画像において、この最小セグメントと比較し、これよりも明らかに小さい粒子を構成するように表れた黒い線は、結晶粒界ではないことが明らかであるので、結晶粒界と結晶粒界ではない黒い線との判別が可能になる。
【0013】
次に、この標本画像IMを解析して、結晶粒界を取得する方法について説明する。
【0014】
メモリ4aに記憶された標本画像IMの各画素の輝度情報(0〜255段階のビット情報)に対して、閾値設定手段4bにより、粒子と結晶粒界とを識別する値の閾値Dを設定し、標本画像IMを2値化する。図3は、輝度値が0〜255の間で粒子と結晶粒界とを識別する閾値Dの一例を示している。標本画像IMの各画素の輝度値が、設定した閾値D以下の領域を黒、設定した閾値よりも大きい領域を白として、2値化画像IM2を取得する。図4は、このようにして取得された標本画像IMの2値化画像IM2の模式図である。
【0015】
次に、図4の2値化画像IM2にセグメンテーションを施し、個々の粒子(以下、セグメントともいう)を抽出する。セグメントを抽出するには、粒子同士の境界(粒界)を正確に検出する必要がある。
【0016】
図4の2値化画像IM2には、本来境界が存在しない領域に小さな黒い点15、あるいは孤立した一つの粒子を構成するような閉じた領域を形成する黒い線16がノイズとして表れる。これらは粒子の表面の微妙な違いや明るさの違い、あるいは汚れによって表面の他の部分よりも輝度値が低く、2値化するために設定された閾値Dよりも輝度値が低いために、2値化した際に黒となったものである。これらのノイズは、結晶粒界部分とは接していない。また、予め設定し、メモリ4aに記憶させた最小セグメントと比較した場合、これよりも面積が小さいものである。したがってこれらはノイズによって形成された偽の粒子(以下、偽セグメントという)であり、これら偽セグメントを構成する点15、線16は結晶粒界でないことは容易に判断でき、操作者が演算部4cにノイズ部分を除去する指示を出して2値化画像IM2から除去することができる。
【0017】
これらのノイズとは別に、図4の2値化画像IM2と比較した場合、粒子20の領域中に、図2の標本画像IMには存在しなかった黒い線Fが表れており、線Fの両端はそれぞれ境界Aと境界Bとに接している。また、境界Aと境界Bと境界Cとが接している三叉部Sから境界Aと線Fとが接しているところまでの境界A1と、三叉部Sから境界Bと線Fとが接しているところまでの境界B1と、線Fとで囲まれた領域25は、一つの粒子を構成している。つまり、図4の2値化画像IM2において、線Fは領域25と粒子20との境界を形成している。なお、上述した黒い点15等あるいは領域25のような部分が偽セグメントであるか否かの判断は、予め設定した最小セグメントの大きさから演算部4cが機械的に判断しても良いし、例えば標本画像IMと2値化画像IM2とをモニタ上に重ねて表示して操作者が目視で判断しても良い。ここでは、領域25は、予め設定された最小セグメントよりも小さな領域であり、ノイズによって形成された偽セグメントであると判断できる。
【0018】
線Fは、上述した黒い点15等と同様に、粒子20の表面の微妙な違いや明るさの違い、あるいは汚れによって表面の他の部分よりも輝度値が低く、閾値Dよりも輝度値が低いために、2値化した際に黒となったものである。したがって線Fは結晶粒界ではなくノイズである。
【0019】
2値化画像IM2において粒子20を抽出するためには、この偽セグメントを形成している線Fを除去し、粒子20と領域25とを一体化する必要がある。この一体化のためには、ノイズである線Fを除去し、かつ、境界Aの一部である境界A1および境界Bの一部である境界B1は除去せずに2値化画像IM2に残しておく必要がある。
【0020】
線Fと境界A1および境界B1とは、標本画像IMを2値化する際に閾値Dよりも輝度値が低い領域として識別された領域である。したがって、2値化画像IM2において線Fと境界A1と境界B1とは閾値Dよりも輝度値が低いという情報に基づいてモニタ5に表示されている。領域25が最小セグメントよりも小さい粒子であるとして、上述した点15、線16と同様に演算部4cにノイズ部分を除去する指示を出すと、境界Fと共に結晶粒界である境界A1と境界B1も同時に除去されてしまい、好ましくない。図5は、境界Fと共に誤って結晶粒界である境界A1と境界B1も同時に除去された2値化画像IM3を示している。
【0021】
そこで、演算部4cに、ノイズ部分を除去する指示を出す前に、メモリ4aに記憶されている標本画像IMの画像情報を参照するように指示を出す。演算部4cは、メモリ4aに記憶された標本画像IMの輝度情報を参照して、結晶粒界A、B、Cとノイズ部分Fとを判別する。標本画像の輝度情報を参照することにより、誤って結晶粒界部分である境界A1および境界B1を除去して、図5に示すような2値化画像IM3となってしまうことを防止している。
【0022】
演算部4cにおけるノイズ除去の詳細は、以下に説明する。
【0023】
画像処置部4の演算部4cは、メモリ4aに記憶された標本画像IMにおける各画素の輝度情報のうち、境界A1部分を構成する各画素に対応する輝度情報を参照し、これらの輝度値を平均して境界A1部分の平均の輝度値を求める。また、境界B1部分および線F部分についても同様に平均の輝度値を求める。このようにして求められた境界A1部分、境界B1部分および線F部分の各平均の輝度値を比較し、最も平均の輝度値が大きい部分をノイズと判定する。
【0024】
ここで最も平均の輝度値(0〜255の間の値)が大きい部分をノイズと判定する理由を説明する。
【0025】
標本画像IMにおいて結晶粒界部分A、B、Cは光の反射が周囲に比べて少ないため、輝度値は小さい値である。粒子の部分20、21、22は光を多く反射するので結晶粒界部分と比較して輝度値は大きい値になる。このような標本画像IMを2値化した2値画像IM2に表れたノイズは、標本画像IMにおける粒子部分に表れている。そこで、結晶粒界部分A、Bに接して表れたノイズ部分Fと、ノイズ部分Fが接している結晶粒界部分A、Bとの標本画像IMにおける輝度値を比較した場合、ノイズ部分Fの輝度値の方が結晶粒界部分A、Bよりも輝度値が大きい。したがって最も輝度値の大きい部分をノイズと判定することができる。ここで、ノイズ部分Fも結晶粒界部分A、Bも、面積をもって2値化画像IM2に存在しているので、これら各部分の平均の輝度値を求め、比較する。
【0026】
本実施形態においては、2値化画像IM2における境界A1部分および境界B1部分は、標本画像IMにおける結晶粒界に対応する部分であり、輝度値が小さな領域である。線F部分は標本画像IMにおける粒子20の部分であり、結晶粒界部分と比較して輝度値が大きい領域である。したがって、境界A1部分および境界B1部分と比較して、線F部分の平均輝度値が最も大きい値となるので、演算部4cは線F部分がノイズであると判別できる。その結果、演算部4cは結晶粒界である境界A1部分および境界B1部分を誤って除去することなくノイズ部分の線Fのみを除去することができ、偽セグメントである領域25と粒子20と一体化することができる。図6は、このようにしてノイズ部分である線Fのみを除去し、本来のセグメント20、21,22が抽出された図の模式図IM3である。
【0027】
このように、本発明の画像処理方法によれば、2値化画像におけるノイズ部分を判別でき、結晶粒界と、結晶粒界ではない部分とを見分けることができる。その結果、誤って結晶粒界を除去してしまうことがなくなり、正確に粒子の境界を取得することができる。
なお、上記実施形態においては、標本画像における輝度値が設定した閾値以下の領域を黒、設定した閾値よりも大きい領域を白として2値化画像を生成したが、設定した閾値以下の領域を白、設定した閾値よりも大きい領域を黒として2値化画像を生成しても良い。
【0028】
また、上記実施形態では標本画像の輝度情報を参照して画像処理を行ったが、例えば標本画像の色の違いを参照して画像処理を行っても良い。
【0029】
また、上記実施形態は鉄の解析を例に説明したが、本発明は鉄に限らず他の粒子の解析に用いることができる。
【0030】
このように、本発明は上記実施形態の構成や形状に限定されるものではなく、本発明の範囲内において適宜修正、変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に用いた画像処理装置の構成を示す図である。
【図2】撮像装置で撮像された標本の画像の模式図である。
【図3】粒子と境界とを識別する値の閾値Dの例である。
【図4】図2の標本画像から生成した2値化画像の模式図である。
【図5】図4の2値化画像から誤って結晶粒界を除去してしまった図である。
【図6】図4の2値化画像からノイズ部分を除去した図である。
【符号の説明】
【0032】
1 標本
2 顕微鏡
3 撮像装置
4 画像処理部
4a メモリ
4b 閾値設定手段
4c 演算部
5 モニタ
6 ステージ
20、21、22 粒子
15、16、25 偽セグメント
100 画像処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置によって標本を撮像し、標本画像を形成する工程と、
前記標本画像の画像情報を記憶手段に記憶する工程と、
前記画像情報に対して閾値設定手段により閾値を設定し、該閾値により前記標本画像から2値化画像を生成する工程と、
演算部が前記画像情報を参照し、前記2値化画像と比較する工程と、
前記演算部が前記画像情報を参照し、前記2値化画像と比較した結果により前記2値化画像におけるノイズ部分を判別する工程とを含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
前記演算部が前記2値化画像から前記ノイズ部分を除去する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項3】
前記演算部が参照する前記画像情報は、前記2値化画像における前記ノイズ部分に対応する領域の前記画像情報と前記ノイズ部分以外の部分に対応する領域の前記画像情報とであることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理方法。
【請求項4】
前記標本は金属結晶組織であり、前記ノイズ部分は、前記2値化画像における前記金属の結晶粒界部分に両端が接している線状の領域であり、前記ノイズ部分以外の部分は、前記2値化画像における前記結晶粒界部分であることを特徴とする請求項3に記載の画像処理方法。
【請求項5】
前記画像情報は、前記標本画像の各画素の輝度値であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の画像処理方法。
【請求項6】
前記演算部が参照する前記画像情報は、前記記憶手段に記憶された前記ノイズ部分に対応する領域における各画素の前記輝度値の平均値と、前記結晶粒界部分に対応する領域における各画素の前記輝度値の平均値とであり、平均値が最も大きい領域をノイズ部分として前記2値化画像から除去することを特徴とする請求項5に記載の画像処理方法。
【請求項7】
標本を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置の信号から標本画像を形成する画像処理部と、
前記標本画像の画像情報を記憶する記憶手段と、
前記画像情報に対して閾値を設定する閾値設定手段と、
該閾値により前記標本画像から2値化画像を生成し、前記画像情報を参照し、前記2値化画像と比較した結果により前記2値化画像におけるノイズ部分を判別する演算部とを備えたことを特徴とする画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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