画像処理方法及び画像処理装置
【課題】記録する各文字における文字種類、文字の大きさ、及び文字線幅の情報から、記録する各文字の密度を算出し、該記録する各文字の密度に応じてレーザ光の照射エネルギーを調整することで、印字滲みの少ない高品質な画像記録を実現できると共に、高い繰返し耐久性を実現できる画像処理方法及び画像処理装置の提供。
【解決手段】記録する各文字における文字種類、文字の大きさ、及び文字線幅の情報から、記録する各文字の密度を算出する密度算出工程と、前記各文字の密度に基づき該各文字を記録する際のレーザ光の照射エネルギーを調整し、該調整後の照射エネルギーのレーザ光を記録媒体上に照射して各文字を記録する画像記録工程とを少なくとも含む画像処理方法である。
【解決手段】記録する各文字における文字種類、文字の大きさ、及び文字線幅の情報から、記録する各文字の密度を算出する密度算出工程と、前記各文字の密度に基づき該各文字を記録する際のレーザ光の照射エネルギーを調整し、該調整後の照射エネルギーのレーザ光を記録媒体上に照射して各文字を記録する画像記録工程とを少なくとも含む画像処理方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印字滲みの少ない高品質な画像記録を実現できる画像処理方法及び画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在まで、記録媒体としての熱可逆記録媒体への画像記録及び画像消去は、加熱源を熱可逆記録媒体に接触させて該熱可逆記録媒体を加熱する接触式で行われている。該加熱源としては、通常、画像記録にはサーマルヘッドが用いられ、画像消去には熱ローラ、セラミックヒータなどが用いられている。
このような接触式の記録方法は、熱可逆記録媒体がフィルム、紙等のフレキシブルなものである場合には、プラテンなどによって熱可逆記録媒体を加熱源に均一に押し当てることにより、均一な画像記録及び画像消去を行うことができ、かつ従来の感熱紙用のプリンタの部品を転用することによって画像消去装置を安価に製造することができるという利点がある。
しかし、熱可逆記録媒体が、特許文献1及び特許文献2に記載されているようなRF−IDタグなどを内蔵している場合には、熱可逆記録媒体の厚みが厚くなりフレキシブル性が低下して加熱源を均一に押し当てるためには高い圧力が必要となる。また、接触式であるために、印字と消去を繰り返すと熱可逆記録媒体表面が削れて凹凸が生じ、サーマルヘッドやホットスタンプ等の加熱源に接触しない部分が出てきて均一に加熱されないため濃度低下や消去不良がおこるという問題がある(特許文献3及び特許文献4参照)。
【0003】
更に、RF−IDタグが非接触で離れたところから記憶情報の読み取り及び書き換えが行われるのに対して、熱可逆記録媒体についても離れた位置から画像を書き換えたいという要望が生じてきている。例えば記録媒体の表面に凹凸が生じた場合や離れたところから均一に画像記録及び画像消去する方法として、レーザを用いる方法が提案されている(特許文献5参照)。この提案の方法は、物流ラインに用いる搬送用容器に熱可逆記録媒体を使用して非接触記録を行うものであり、書き込みはレーザで実施し、消去は熱風、温水、又は赤外線ヒータで行うと記載されている。
【0004】
このようなレーザによる記録方法には、高出力のレーザ光を熱可逆記録媒体に照射して、その位置をコントロール可能なレーザ記録装置(レーザマーカー)が提供されている。このレーザマーカーを用いて、レーザ光を熱可逆記録媒体に照射して、熱可逆記録媒体中の光熱変換材料が光を吸収して熱に変換し、その熱で記録及び消去を行うことが可能である。これまでレーザによる画像記録及び画像消去を行う方法として、ロイコ染料と可逆性顕色剤、種々の光熱変換材料を組み合わせて、近赤外レーザ光により記録する方法が提案されている(特許文献6参照)。
【0005】
また、特許文献7及び特許文献8に記載の方法によれば、均一に熱可逆記録媒体の加熱が可能となり画像品質及び繰返し耐久性を改善することは可能であるが、各描画線間のジャンプ及び待ち時間により画像記録、及び画像消去に必要な時間が長くなってしまうという課題があった。
一方、書換えないで印字する方法として、プラスチック、半導体等の製品の表面にレーザ光を照射して吸収により熱を発生させて変形、変質、除去により印字したり、一回記録の感熱紙を製品に貼り付けてレーザ光を照射して印字部を部分的に加熱することで印字する方法などがあるが、熱による印字のために熱拡散の影響で小さい文字を印字すると文字の滲みが発生して視認性が低下するという課題があった。
【0006】
したがって、先行技術文献には、記録する各文字における文字種類、文字の大きさ、及び文字線幅の情報から、記録する各文字の密度を算出し、該記録する各文字の密度に応じてレーザ光の照射エネルギーを調整することで、印字滲みの少ない高品質な画像記録を実現できると共に、高い繰返し耐久性を実現できる画像処理方法及び画像処理装置は、未だ提供されていないのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、記録する各文字における文字種類、文字の大きさ、及び文字線幅の情報から、記録する各文字の密度を算出し、該記録する各文字の密度に応じてレーザ光の照射エネルギーを調整することで、印字滲みの少ない高品質な画像記録を実現できると共に、熱可逆記録媒体を用いた場合には高い繰返し耐久性を実現できる画像処理方法及び画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 記録する各文字における文字種類、文字の大きさ、及び文字線幅の情報から、記録する各文字の密度を算出する密度算出工程と、
前記各文字の密度に基づき該各文字を記録する際のレーザ光の照射エネルギーを調整し、該調整後の照射エネルギーのレーザ光を記録媒体上に照射して各文字を記録する画像記録工程と、を少なくとも含むことを特徴とする画像処理方法である。
<2> 密度算出工程において、記録する各文字における文字の大きさ及び文字種類から描画線全長を求め、該描画線全長と文字線幅の積を文字の大きさで割って、記録する各文字の密度を算出する前記<1>に記載の画像処理方法である。
<3> 画像記録工程において、記録する文字の密度が低いときのレーザ光の照射エネルギーを、記録する文字の密度が高いときのレーザ光の照射エネルギーより高くなるように調整する前記<1>から<2>のいずれかに記載の画像処理方法である。
<4> レーザ光の照射エネルギーを、レーザ光の照射パワーにより調整する前記<1>から<3>のいずれかに記載の画像処理方法である。
<5> レーザ光の照射エネルギーを、レーザ光の走査速度により調整する前記<1>から<3>のいずれかに記載の画像処理方法である。
<6> 各文字の重なり部に重複してレーザ光が照射しないように処理する重なり部非重複処理工程を含む前記<1>から<5>のいずれかに記載の画像処理方法である。
<7> 記録する各文字における文字の大きさ、及び文字の線幅の情報から、使用する文字フォントデータを選択し、該選択された文字フォントデータに基づき、密度算出工程を行う前記<1>から<6>のいずれかに記載の画像処理方法である。
<8> 画像記録工程で用いるレーザ光源が、YAGレーザ光源、ファイバレーザ光源、及び半導体レーザ光源の少なくともいずれかである前記<1>から<7>のいずれかに記載の画像処理方法である。
<9> 画像記録工程で照射するレーザ光の波長が700nm以上1,500nm以下である前記<1>から<8>のいずれかに記載の画像処理方法である。
<10> 記録媒体が、支持体と、該支持体上に、第1の熱可逆記録層と、特定波長の光を吸収して熱に変換する光熱変換材料を含む光熱変換層と、第2の熱可逆記録層とを少なくともこの順に有してなり、前記第1及び第2の熱可逆記録層が、いずれも温度に依存して色調が可逆的に変化する熱可逆記録媒体である前記<1>から<9>のいずれかに記載の画像処理方法である。
<11> 第1の熱可逆記録層及び第2の熱可逆記録層が、いずれもロイコ染料及び可逆性顕色剤を含有する前記<10>に記載の画像処理方法である。
<12> 光熱変換材料が、近赤外領域に吸収ピークを有する材料である前記<10>から<11>のいずれかに記載の画像処理方法である。
<13> 光熱変換材料が、フタロシアニン系化合物である前記<12>に記載の画像処理方法である。
<14> 光熱変換材料が、無機系材料である前記<12>に記載の画像処理方法である。
<15> 前記<1>から<14>のいずれかに記載の画像処理方法に用いられ、レーザ光出射手段と、レーザ光をレーザ光照射面に走査させるレーザ光走査手段とを少なくとも有することを特徴とする画像処理装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、記録する各文字における文字種類、文字の大きさ、及び文字線幅の情報から、記録する各文字の密度を算出し、該記録する各文字の密度に応じてレーザ光の照射エネルギーを調整することで、印字滲みの少ない高品質な画像記録を実現できると共に、熱可逆記録媒体を用いた場合には高い繰返し耐久性を実現できる画像処理方法及び画像処理装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、文字の密度の算出方法を説明するための図の一例である。
【図2】図2は、本発明のレーザマーカーの構成を説明する図の例である。
【図3A】図3Aは、本発明の熱可逆記録媒体の層構成の一例を示す概略断面図である。
【図3B】図3Bは、本発明の熱可逆記録媒体の層構成の他の一例を示す概略断面図である。
【図3C】図3Cは、本発明の熱可逆記録媒体の層構成の更に他の一例を示す概略断面図である。
【図4】図4は、RF−IDタグの一例を示す概略図である。
【図5A】図5Aは、熱可逆記録媒体の発色−消色特性を示すグラフである。
【図5B】図5Bは、熱可逆記録媒体の発色−消色変化のメカニズムを表す概略説明図である。
【図6A】図6Aは、実施例の文字「横」(重なり部の非重複処理あり)の印字を説明するための図の一例である。
【図6B】図6Bは、実施例の文字「口」(重なり部の非重複処理あり)の印字を説明するための図の一例である。
【図6C】図6Cは、実施例の文字「一」の印字を説明するための図の一例である。
【図6D】図6Dは、実施例の文字「横」(重なり部の非重複処理なし)の印字を説明するための図の一例である。
【図6E】図6Eは、実施例の文字「口」(重なり部の非重複処理なし)の印字を説明するための図の一例である。
【図7A】図7Aは、画数が多く、文字密度が高い文字の一例を示す図である。
【図7B】図7Bは、文字密度が高く、太い文字線幅の文字の一例を示す図である。
【図7C】図7Cは、文字密度が高い文字で太い文字線幅のときに対して小サイズ用の文字フォントデータを選択した後の文字の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(画像処理方法)
本発明の画像処理方法は、密度算出工程と、画像記録工程とを少なくとも含み、重なり部非重複照射工程、画像消去工程、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0012】
<密度算出工程>
前記密度算出工程は、記録する各文字における文字種類、文字の大きさ、及び文字線幅の情報から、記録する各文字の密度を算出する工程である。
前記記録する各文字における文字種類、文字の大きさ、及び文字線幅の情報は、例えばユーザーの入力などにより提供される。
前記文字の種類としては、例えば、漢字、カタカナ、数字、アルファベット、記号、図形(ロゴ、バーコード等)、袋文字、反転文字などが挙げられる。
【0013】
レーザ光を記録媒体に照射してレーザ光の照射エネルギーにより、前記記録媒体のレーザ光を照射した部分を加熱、変質、変形等により所望の文字・画像等を記録する方法において、記録される文字、画像は様々で、文字の種類、文字の大きさ、文字の線幅が異なり、画像においては画像の種類、画像の大きさ等が異なる。その結果、記録される部分と記録されない部分の密度が変動する。つまり、文字種類により表示すべき描画線全長が長い場合(例えば、文字の大きさを同じとして「一」に比べて「横」は描画線全長が長い)、文字の大きさに対して線幅が太い場合、記録される領域が大きくなり密度も高くなる。
前記記録媒体としては、1回の画像記録を行う感熱記録媒体、繰り返し画像記録及び画像消去を行う熱可逆記録媒体のいずれにも好適に用いることができる。
【0014】
レーザマーカー(レーザ照射記録装置)では、図1に示すように、文字の高さ方向の長さa及び文字の幅方向の長さbを指定して文字の大きさを変更することができる。指定されたa及びbにより、規定される四角の枠に対して文字フォントデータにより前記四角の枠に入るように文字が記録される。ここで、レーザマーカーによる記録は文字を記録し、四角の枠は記録しない。
本発明において、文字の大きさは、図1に示すように、文字の高さ方向の長さをaとし、文字の幅方向の長さをbとすると、これらの積(a×b)で表される。この文字の大きさ(a×b)と、文字を形成する面積Sとから、文字の密度は、S/(a×b)で定義される。
一般に、レーザマーカーは、文字の大きさ〔(高さ方向の長さa)×(幅方向の長さb)〕を設定することで該文字の大きさを変更して記録できるので、前記密度の定義においてもレーザマーカーで設定する文字の大きさが(a×b)に相当する。
前記文字を形成する面積Sは、文字の大きさ(a×b)、文字線幅W、及び文字種類に起因して変動する。前記面積Sの値は、文字の大きさ(a×b)(ただし、a及びbが同率で変化する場合)、文字線幅W、及び文字種類により描画線全長Lにほぼ比例して変化する。したがって記録する各文字における文字の大きさ(a×b)及び文字種類から描画線全長Lを求め、該描画線全長Lと文字線幅Wの積を文字の大きさ(a×b)で割って、記録する各文字の密度を算出することができる。
具体的には、前記描画線全長Lは、レーザマーカー内で以下の方法で導出される。レーザマーカーは、ユーザーが設定した文字の種類、文字の大きさ、印字位置を座標に変換して、前記座標の位置を走査ミラー角度に変換し、レーザマーカーは前記角度を制御することでレーザ光を所望の位置に走査して印字を行う。前記座標位置のデータを用いて各座標間の距離を算出して、これらを足し合せることで描画線全長Lを算出する。例えば、座標A(X1、Y1)、B(X2、Y2)の距離Liは、√(X1−X2)2+(Y1−Y2)2で求めることができ、各座標間の距離を足し合わせて、ΣLiにより、描画線全長Lを求めることができる。
【0015】
レーザマーカー(レーザ照射記録装置)による記録では、文字の種類に漢字が含まれるので多種類の文字が使われ、描画線全長Lが異なる様々な文字が使用される。また、記録した文字を強調するために文字線幅W、及び文字の大きさ(a×b)を変更することが行われる。その結果、様々な密度の文字が記録媒体に記録されることになる。
【0016】
レーザ光による記録では、記録媒体がレーザ光を吸収して熱に変換して、記録媒体を局所的に加熱、変質、変形等により所望の文字及び画像等の記録を行うが、熱の拡散による蓄熱影響で、1つの文字内における描画線同士の隙間が小さい隣接部のレーザ光照射の有無で影響が変化する。つまり、隣接部でレーザ光を照射した直後にレーザ光を照射すると、隣接部で照射しないときに比べて過剰な熱が加わることになる。その結果、熱が過剰に加わったことで、描画線が太くなり文字精細性が低下したり、繰返し記録及び消去可能な熱可逆記録媒体ではダメージとなり繰返し耐久性が低下する。従来の方式では、文字種類、文字の大きさ、及び文字線幅に関係なく、同一の照射エネルギーで行っており、全体の照射エネルギーを調整して対応していたが調整幅が狭く調整が困難であり、画像品質、及び繰返し耐久性の低下が生じていた。
【0017】
本発明においては、記録する各文字における文字の大きさ、及び文字の線幅の情報から、使用する文字フォントデータを選択し、該選択された文字フォントデータに基づき、密度算出工程を行うことが好ましい。
前記文字フォントデータとしては、レーザマーカー用には少なくともベクター用フォントデータが必要である。一筆書き用の標準フォントデータ以外にも、一筆書き用で視認性を向上するために文字内の線の間隔を一定にした文字フォントデータ、文字の一部を削除した小サイズ用の文字フォントデータ、交点・折り返し部で重なり部を除去した文字フォントデータ、袋文字を形成するためのアウトラインフォントなどが挙げられる。
使用する文字フォントデータを選択する工程と前記密度算出工程とを組合せることにより、本発明の効果をより向上させることができる。即ち、図7Aに示すように、画数が多く、文字密度が高くなる文字として「轟」を例として説明すると、前記文字「轟」に対して文字線幅を太くすると図7Bに示すように文字が潰れて視認性が低下するため、文字の一部を削除した小サイズ用の文字フォントデータを画像処理装置内に搭載しておき、文字の大きさ、及び文字線幅の情報から、前記小サイズ用の文字フォントデータを選択することで、文字潰れを図7Cに示すように解消できる。
小サイズ用の文字フォントデータを使用するか否かを判定する方法としては、文字を形成する各線中心の間隔が文字線幅に対して小さい場合、特に、1以下の場合は小サイズ用の文字フォントデータを選択する。
なお、小文字用の文字フォントデータを使用した後に、前記密度算出工程を行い、記録する文字密度を算出して、後述する画像記録工程を行うことが好ましい。
【0018】
<画像記録工程>
前記画像記録工程は、前記各文字の密度に基づき該各文字を記録する際のレーザ光の照射エネルギーを調整し、該調整後の照射エネルギーのレーザ光を記録媒体上に照射して各文字を記録する工程である。
【0019】
本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、文字種類、文字の大きさ(a×b)、及び文字線幅Wを振って文字の密度を変動させて画像記録を行い、記録に適した照射エネルギー(記録コントラスト、精細性、及び繰返し耐久性が最も適した照射エネルギー)が密度との関数で示せることを知見した。ただし、個々の文字種類、文字の大きさ(a×b)、及び文字線幅Wには依存しない。
記録する文字の密度と最適なレーザ光の照射エネルギーとの関係は、記録媒体の材料、環境温度等により蓄熱状態、熱拡散が変動する。具体的には、後述する実施例で用いた媒体で25℃環境下の場合では、印字密度Dと最適な照射エネルギーEは印字密度が1の時の照射エネルギーをE0とすると、E=E0*(1−0.22*D)の1次関数で示される。記録媒体の材料、環境温度により傾きの係数が変化することになる。後述する実施例の記録媒体の場合には、傾きの係数は0.22である。
文字線幅Wは文字の蓄熱状態により変動するが、ここで文字線幅Wとは隣接線のない線を照射エネルギー補正しないで印字したときの幅である。
【0020】
文字種類、文字の大きさ(a×b)、及び文字線幅Wで決まる文字の密度に応じて、記録時のレーザ光の照射エネルギーを調整することで、文字の精細性低下、及び繰返し耐久性の低下を低減できる。例えば、文字の密度が高い文字を記録する場合には、記録時のレーザ光の照射エネルギーを下げることで実現できる。本発明においては、文字の密度が高いと蓄熱した状態で印字することで過剰なエネルギーが印加されることを防ぐため、文字の密度が高い時には記録時のレーザ光の照射エネルギーを下げて適正な照射エネルギーで印字する。
【0021】
本発明の画像処理方法においては、例えば、ユーザーから入力された記録に関する情報(文字種類、文字の大きさ(a×b)、文字の線幅W)からレーザマーカー内の処理で、記録する各文字の密度を算出して、該文字の密度に応じて各文字に対して記録するレーザ光の照射エネルギーを変化させる。
また、文字の線幅の変更方法は、レーザ光のビーム径の変更、又は複数の描画線をほぼ線幅分ずらしながら記録することで太い文字線幅Wを印字することができる。本発明においては、ワーク間距離の変更によるレーザ光のビーム径の変更は、光学的に変更することが可能であるが、集光レンズと記録媒体間の距離を変更することでも容易に変更することができる。
【0022】
前記レーザ光の照射エネルギーは、P/V(ただし、Pは記録媒体上でのレーザ光の照射パワー、Vは記録媒体上でのレーザ光の走査速度を表す)に比例するので、P/Vが略一定になるようにレーザ光の走査速度(V)及び照射パワー(P)の少なくともいずれかを制御することが好ましい。
【0023】
前記レーザ光の走査速度を制御する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、走査用ミラーの動作を担うモーターの回転速度を制御する方法などが挙げられる。前記モーターの速度を制御する方法としては、始点部、屈曲部などのモーターの回転速度制御が困難な部分と、直線部などとで、モーターに設定する速度値などをかえることで制御できる。ただし、始点部を記録する場合、回転速度が0から狙い速度に達するまでに時間が必要であり、その場合は、照射パワー、照射するタイミング(狙いの速度に達したときにレーザ照射する)で対応する必要がある。
【0024】
前記レーザ光の照射パワーを制御する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、レーザ光の照射パワーの設定値を変更する方法、パルス照射レーザの場合にはパルス時間幅での調整による制御方法などが挙げられる。
前記レーザ光の照射パワーの設定値の変更方法としては、記録部分により、パワー設定値を変更する方法が挙げられる。前記パルス時間幅による制御方法としては、記録部分により、パルス発光する時間幅を変更することで、照射パワーによる照射エネルギーの調整が可能となる。
【0025】
前記画像記録工程において照射されるレーザ光の出力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1W以上が好ましく、3W以上がより好ましく、5W以上が更に好ましい。前記レーザ光の出力が、1W未満であると、画像記録に時間がかかり、画像記録時間を短くしようとすると出力が不足してしまう。また、前記レーザ光の出力の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、200W以下が好ましく、150W以下がより好ましく、100W以下が更に好ましい。前記レーザ光の出力が、200Wを超えると、レーザマーカーの大型化を招くことがある。
【0026】
前記画像記録工程において照射されるレーザ光の走査速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、300mm/s以上が好ましく、500mm/s以上がより好ましく、700mm/s以上が更に好ましい。前記走査速度が、300mm/s未満であると、画像記録に時間がかかる。また、前記レーザ光の走査速度の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、15,000mm/s以下が好ましく、10,000mm/s以下がより好ましく、8,000mm/s以下が更に好ましい。前記レーザ光の走査速度が、15,000mm/sを超えると、均一な画像が記録し難くなる。
【0027】
前記画像記録工程において照射されるレーザ光のスポット径としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、0.02mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましく、0.15mm以上が更に好ましい。また、前記レーザ光のスポット径の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3.0mm以下が好ましく、2.5mm以下がより好ましく、2.0mm以下が更に好ましい。
前記スポット径が小さいと、画像の線幅が細くなり、視認性が低下する。また、スポット径が大きくなると、画像の線幅が太くなり、隣接する線が重なり、小さいサイズの画像記録が不可能となる。レーザ光源としては、YAGレーザ光、ファイバレーザ光、及び半導体レーザ光の少なくともいずれかであることが好ましい。
【0028】
<重なり部非重複処理工程>
前記重なり部非重複照射工程は、各文字の重なり部に重複してレーザ光が照射しないように処理する工程である。
【0029】
前記重なり部非重複処理としては、具体的には、各文字を構成する複数の描画線が重なる重なり部を有する画像を記録する際に、該重なり部における各描画線が非連続に記録される。
前記重なり部における各描画線が連続的に記録されると、例えば、重なり部が屈曲している場合にはモーターの作動によるミラー角度の変更を瞬間的に行うことが難しいので、レーザ光の走査速度が低下し、該屈曲部(重なり部)に過剰なエネルギーが付与され、画像記録及び画像消去の繰返しにより熱可逆記録媒体に局所的なダメージが生じることがある。
【0030】
なお、前記重なり部において各描画線が連続に記録される態様としては、前記重なり部において各描画線の終点と始点とが重なるように記録する態様、などが挙げられる。
ここで、前記非連続な記録とは、複数の描画線をレーザ光照射により記録中に、一旦レーザ光の照射を中断し、複数の描画線を別々に記録することを意味し、具体的には、(1)前記重なり部において各描画線の終点と終点が重なるように記録する態様、(2)前記重なり部において各描画線の始点と始点とが重なるように記録する態様、(3)前記重なり部において各描画線の始点と、始点及び終点以外の位置(例えば描画線の中間点)とが重なるように記録する態様、(4)前記重なり部において各描画線の終点と、始点及び終点以外の位置(例えば描画線の中間点)とが重なるように記録する態様、又はこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0031】
<画像処理装置>
前記画像処理装置は、本発明の前記画像処理方法に用いられ、レーザ光出射手段と、該レーザ光をレーザ光照射面に走査させるレーザ光走査手段とを少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材を有してなる。また、本発明においては画像を記録する記録媒体において、高効率でレーザ光を吸収するように、出射するレーザ光の波長を選択する必要がある。例えば記録媒体はレーザ光を高効率で吸収し発熱する役割を有する光熱変換材料を少なくとも含有してなる。よって、含有させる光熱変換材料が他材料に比べて最も高効率でレーザ光を吸収するように、出射するレーザ光の波長を選択することが好ましい。
【0032】
−レーザ光出射手段−
前記レーザ光出射手段から出射されるレーザ光の波長としては、700nm以上が好ましく、720nm以上がより好ましく、750nm以上が更に好ましい。前記レーザ光の波長の上限としては、目的に応じて適宜選択することができるが、1,500nm以下が好ましく、1,300mm以下がより好ましく、1,200nm以下が更に好ましい。
レーザ光の波長を700nmより短い波長にすると、可視光領域では記録媒体の画像記録時のコントラストが低下したり、記録媒体が着色してしまうという問題がある。更に短い波長の紫外光領域では、記録媒体の劣化が起こりやすくなるという問題がある。また記録媒体に添加する光熱変換材料には、繰返し画像処理に対する耐久性を確保するために高い分解温度を必要とし、光熱変換材料に有機色素を用いる場合、分解温度が高く吸収波長が長い光熱変換材料を得るのは難しい。これよりレーザ光の波長としては1,500nm以下が好ましい。
【0033】
前記レーザ光出射手段としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えばYAGレーザ、ファイバレーザ、半導体レーザ(LD)などが挙げられる。これらの中でも波長選択性が広いことで光熱変換材料の選択肢が増え、レーザ装置としては、レーザ光源自体が小さく、装置の小型化、更には低価格化が可能であるという点から、半導体レーザが特に好ましい。
【0034】
前記画像処理装置は、前記レーザ光出射手段を少なくとも有している以外、その基本構成としては、通常レーザマーカーと呼ばれるものと同様であり、発振器ユニット、電源制御ユニット、及びプログラムユニットを少なくとも備えている。
【0035】
ここで、図2に、本発明で用いられる画像処理装置の一例について、レーザ照射ユニットを中心に示す。
発振器ユニットは、レーザ発振器1、ビームエキスパンダ2、スキャンニングユニット5などで構成されている。
前記レーザ発振器1は、光強度が強く、指向性の高いレーザ光を得るために必要なものであり、例えば、レーザ媒質の両側にミラーを配置し、該レーザ媒質をポンピング(エネルギー供給)し、励起状態の原子数を増やし反転分布を形成させて誘導放出を起こさせる。そして、光軸方向の光のみが選択的に増幅されることにより、光の指向性が高まり出力ミラーからレーザ光が放出される。
前記スキャンニングユニット5は、ガルバノメータ4と、該ガルバノメータ4に取り付けられたミラー4Aとで構成されている。そして、前記レーザ発振器1から出力されたレーザ光を、前記ガルバノメータ4に取り付けられたX軸方向とY軸方向との2枚のミラー4Aで高速回転走査することにより、熱可逆記録媒体7上に、画像の記録又は消去を行うようになっている。
前記電源制御ユニットは、レーザ媒質を励起する光源の駆動電源、ガルバノメータの駆動電源、ペルチェ素子などの冷却用電源、画像処理装置全体の制御を司る制御部等などで構成されている。
前記プログラムユニットは、タッチパネル入力やキーボード入力により、画像の記録又は消去のために、レーザ光の強さ、レーザ走査の速度等の条件入力や、記録する文字等の作製及び編集を行うユニットである。
なお、前記レーザ照射ユニット、即ち、画像記録/消去用ヘッド部分は、画像処理装置に搭載されているが、該画像処理装置には、このほか、前記熱可逆記録媒体の搬送部及びその制御部、モニタ部(タッチパネル)等を有している。
【0036】
−画像消去工程−
画像記録を記録媒体としての熱可逆記録媒体に対して行う場合、画像が記録された熱可逆記録媒体を加熱することにより該熱可逆記録媒体に記録された画像を消去する画像消去工程を設けてもよい。
前記熱可逆記録媒体を加熱する方法としては、従来既知の加熱方法(例えば、レーザ光照射、熱風、温水、赤外線ヒータ等の非接触加熱方法、サーマルヘッド、ホットスタンプ、ヒートブロック、ヒートローラー等の接触加熱方法)を挙げられるが、物流ラインを想定した場合、熱可逆記録媒体にレーザ光を照射して加熱する方法が非接触の状態で画像の消去を行うことができるため特に好ましい。
【0037】
前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより画像を消去する画像消去工程において照射される前記レーザ光の出力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5W以上が好ましく、7W以上がより好ましく、10W以上が更に好ましい。前記レーザ光の出力が、5W未満であると、画像消去に時間がかかり、画像消去時間を短くしようとすると出力が不足して画像の消去不良が発生する。また、前記レーザ光の出力の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、200W以下が好ましく、150W以下がより好ましく、100W以下が更に好ましい。前記レーザ光の出力が、200Wを超えると、レーザ装置の大型化を招くおそれがある。
【0038】
前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより画像を消去する画像消去工程において照射されるレーザ光の走査速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100mm/s以上が好ましく、200mm/s以上がより好ましく、300mm/s以上が更に好ましい。前記走査速度が、100mm/s未満であると、画像消去に時間がかかる。また、前記レーザ光の走査速度の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20,000mm/s以下が好ましく、15,000mm/s以下がより好ましく、10,000mm/s以下が更に好ましい。前記走査速度が、20,000mm/sを超えると、均一な画像消去がし難くなることがある。
レーザ光源としては、YAGレーザ光、ファイバレーザ光、及び半導体レーザ光の少なくともいずれかであることが好ましい。
【0039】
前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより画像を消去する画像消去工程において照射されるレーザ光のスポット径としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、0.5mm以上が好ましく、1.0mm以上がより好ましく、2.0mm以上が更に好ましい。また、前記レーザ光のスポット径の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、14.0mm以下が好ましく、10.0mm以下がより好ましく、7.0mm以下が更に好ましい。
前記スポット径が小さいと、画像消去に時間がかかる。また、スポット径が大きくなると、出力が不足して画像の消去不良が発生することがある。
【0040】
<記録媒体>
前記記録媒体としては、1回記録を行う記録媒体、繰り返し画像記録及び画像消去を行う熱可逆記録媒体のいずれにも好適に用いることができる。
前記1回記録の記録媒体としては、感熱記録媒体(感熱紙)、ポリプロピレン等のプラスチック、半導体、金属等の対象物に対して、レーザ光を照射して、レーザ光を吸収することで加熱して、変質、変形、除去することで印字が可能である。感熱紙、プラスチック、半導体への文字密度の高い文字への印字では、前記熱可逆記録媒体と同様に熱拡散による蓄熱で文字潰れが発生して視認性が低下するので、本発明による制御で文字の視認性を改善できる。
本発明で用いられる感熱記録媒体は、支持体と、該支持体の一方の面上に、感熱記録層を有し、好ましくは光熱変換層、酸素遮断層、紫外線吸収層、中間層、保護層、更に必要に応じてアンダーコート層、バック層、接着層、粘着層、着色層、空気層、光反射層等のその他の層を有してなる。これら各層は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
【0041】
<<熱可逆記録媒体>>
本発明で用いられる熱可逆記録媒体は、支持体と、該支持体上に、第1の熱可逆記録層と、光熱変換層と、第2の熱可逆記録層とをこの順に有してなり、更に必要に応じて適宜選択した、第1の酸素バリア層、第2の酸素バリア層、紫外線吸収層、バック層、保護層、中間層、アンダーコート層、接着層、粘着層、着色層、空気層、光反射層等のその他の層を有してなる。これら各層は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。ただし、前記光熱変換層の上に設ける層においては、照射する特定波長のレーザ光のエネルギーロスを少なくするために該特定波長において吸収の少ない材料を用いて層を構成させることが好ましい。
【0042】
ここで、前記熱可逆記録媒体100の層構成としては、図3Aに示すように、支持体101と、該支持体上に、第1の熱可逆記録層102と、光熱変換層103と、第2の熱可逆記録層104とをこの順に有する態様がある。
また、図3Bに示すように、支持体101と、該支持体上に、第1の酸素バリア層105、第1の熱可逆記録層102と、光熱変換層103と、第2の熱可逆記録層104と、第2の酸素バリア層106とをこの順に有する態様がある。
また、図3Cに示すように、支持体101と、該支持体上に、第1の酸素バリア層105、第1の熱可逆記録層102と、光熱変換層103と、第2の熱可逆記録層104と、紫外線吸収層107と、第2の酸素バリア層106とをこの順に有してなり、支持体101の熱可逆記録層等を有していない側の面にバック層108を有する態様がある。
なお、図示を省略しているが、図3Aの第2の熱可逆記録層104上、図3Bの第2の酸素バリア層106上、図3Cの第2の酸素バリア層106上の最表層に保護層を形成してもよい。
【0043】
−支持体−
前記支持体としては、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば、平板状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては、前記熱可逆記録媒体の大きさ等に応じて適宜選択することができる。
【0044】
前記支持体の材料としては、例えば、無機材料、有機材料などが挙げられる。
前記無機材料としては、例えば、ガラス、石英、シリコン、酸化シリコン、酸化アルミニウム、SiO2、金属などが挙げられる。
前記有機材料としては、例えば、紙、三酢酸セルロース等のセルロース誘導体、合成紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等のフィルムなどが挙げられる。
前記無機材料及び前記有機材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、有機材料が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0045】
前記支持体には、塗布層の接着性を向上させることを目的として、コロナ放電処理、酸化反応処理(クロム酸等)、エッチング処理、易接着処理、帯電防止処理、などを行うことにより表面改質するのが好ましい。
前記支持体に、酸化チタン等の白色顔料などを添加することにより、白色にするのが好ましい。
前記支持体の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm〜2,000μmが好ましく、50μm〜1,000μmがより好ましい。
【0046】
−第1及び第2の熱可逆記録層−
前記第1及び第2の熱可逆記録層(以下、「熱可逆記録層」と称することがある)は、いずれも電子供与性呈色性化合物であるロイコ染料、電子受容性化合物である顕色剤を含み、熱により色調が可逆的に変化する熱可逆記録層であり、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含んでなる。
【0047】
前記熱により色調が可逆的に変化する電子供与性呈色性化合物であるロイコ染料、及び電子受容性化合物である可逆性顕色剤は、温度変化により目に見える変化を可逆的に生じる現象を発現可能な材料であり、加熱温度及び加熱後の冷却速度の違いにより、相対的に発色した状態と消色した状態とに変化可能である。
【0048】
−ロイコ染料−
前記ロイコ染料は、それ自体無色又は淡色の染料前駆体である。該ロイコ染料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、トリフェニルメタンフタリド系、トリアリルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、チオフェルオラン系、キサンテン系、インドフタリル系、スピロピラン系、アザフタリド系、クロメノピラゾール系、メチン系、ローダミンアニリノラクタム系、ローダミンラクタム系、キナゾリン系、ジアザキサンテン系、ビスラクトン系等のロイコ化合物が好適に挙げられる。これらの中でも、発消色特性、色彩、保存性等に優れる点で、フルオラン系又はフタリド系のロイコ染料が特に好ましい。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、異なる色調に発色する層を積層することにより、マルチカラー、フルカラーに対応させることもできる。
【0049】
−可逆性顕色剤−
前記可逆性顕色剤としては、熱を因子として発消色を可逆的に行うことができるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、(1)前記ロイコ染料を発色させる顕色能を有する構造(例えば、フェノール性水酸基、カルボン酸基、リン酸基等)、及び、(2)分子間の凝集力を制御する構造(例えば、長鎖炭化水素基が連結した構造)、から選択される構造を分子内に1つ以上有する化合物が好適に挙げられる。なお、連結部分にはヘテロ原子を含む2価以上の連結基を介していてもよく、また、長鎖炭化水素基中にも、同様の連結基及び芳香族基の少なくともいずれかが含まれていてもよい。
前記(1)ロイコ染料を発色させる顕色能を有する構造としては、フェノールが特に好ましい。
前記(2)分子間の凝集力を制御する構造としては、炭素数8以上の長鎖炭化水素基が好ましく、該炭素数は11以上がより好ましく、また炭素数の上限としては、40以下が好ましく、30以下がより好ましい。
【0050】
前記可逆性顕色剤の中でも、下記一般式(1)で表されるフェノール化合物が好ましく、下記一般式(2)で表されるフェノール化合物がより好ましい。
【化1】
【化2】
前記一般式(1)及び(2)において、R1は、単結合又は炭素数1〜24の脂肪族炭化水素基を表す。R2は、置換基を有していてもよい炭素数2以上の脂肪族炭化水素基を表し、該炭素数としては、5以上が好ましく、10以上がより好ましい。R3は、炭素数1〜35の脂肪族炭化水素基を表し、該炭素数としては、6〜35が好ましく、8〜35がより好ましい。これらの脂肪族炭化水素基は、1種単独で有していてもよいし、2種以上を併用して有していてもよい。
前記R1、前記R2、及び前記R3の炭素数の和としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下限としては、8以上が好ましく、11以上がより好ましく、上限としては、40以下が好ましく、35以下がより好ましい。
前記炭素数の和が、8未満であると、発色の安定性や消色性が低下することがある。
前記脂肪族炭化水素基は、直鎖であってもよいし、分枝鎖であってもよく、不飽和結合を有していてもよいが、直鎖であるのが好ましい。また、前記炭化水素基に結合する置換基としては、例えば、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基等が挙げられる。
X及びYは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよく、N原子又はO原子を含む2価の基を表し、具体例としては、酸素原子、アミド基、尿素基、ジアシルヒドラジン基、シュウ酸ジアミド基、アシル尿素基等が挙げられる。これらの中でも、アミド基、尿素基が好ましい。
nは、0〜1の整数を示す。
【0051】
前記電子受容性化合物(顕色剤)は、消色促進剤として分子中に−NHCO−基、−OCONH−基を少なくとも一つ以上有する化合物を併用することにより、消色状態を形成する過程において消色促進剤と顕色剤の間に分子間相互作用が誘起され、発消色特性が向上するので好ましい。
【0052】
前記消色促進剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記熱可逆記録層は、バインダー樹脂を含み、更に必要に応じて熱可逆記録層の塗布特性や発色消色特性を改善し、制御するための各種添加剤を含有することができる。これらの添加剤としては、例えば、界面活性剤、導電剤、充填剤、酸化防止剤、光安定化剤、発色安定化剤、消色促進剤などが挙げられる。
【0053】
−バインダー樹脂−
前記バインダー樹脂としては、支持体上に熱可逆記録層を結着することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、従来から公知の樹脂の中から1種又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、繰り返し時の耐久性を向上させるため、熱、紫外線、電子線などによって硬化可能な樹脂が好ましく、イソシアネート系化合物などを架橋剤として用いた熱硬化性樹脂が特に好ましい。
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、水酸基やカルボキシル基等の架橋剤と反応する基を持つ樹脂、又は水酸基やカルボキシル基等を持つモノマーとそれ以外のモノマーを共重合した樹脂などが挙げられる。このような熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂などが挙げられる。これらの中でも、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂が特に好ましい。
【0054】
前記熱可逆記録層中における前記発色剤とバインダー樹脂との混合割合(質量比)は、発色剤1に対して0.1〜10が好ましい。前記バインダー樹脂が少なすぎると、前記熱可逆記録層の熱強度が不足することがあり、一方、前記バインダー樹脂が多すぎると、発色濃度が低下して問題となることがある。
【0055】
前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソシアネート類、アミノ樹脂、フェノール樹脂、アミン類、エポキシ化合物、等が挙げられる。これらの中でも、イソシアネート類が好ましく、特に好ましくはイソシアネート基を複数持つポリイソシアネート化合物である。
【0056】
前記架橋剤のバインダー樹脂に対する添加量は、バインダー樹脂中に含まれる活性基の数に対する架橋剤の官能基の比は0.01〜2が好ましい。これ以下では熱強度が不足してしまい、また、これ以上添加すると発色及び消色特性に悪影響を及ぼす。
更に、架橋促進剤としてこの種の反応に用いられる触媒を用いてもよい。
前記熱架橋した場合の熱硬化性樹脂のゲル分率は、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、70%以上が更に好ましい。前記ゲル分率が30%未満であると、架橋状態が十分でなく耐久性に劣ることがある。
【0057】
前記バインダー樹脂が架橋状態にあるのか非架橋状態にあるのかを区別する方法としては、例えば、塗膜を溶解性の高い溶媒中に浸すことによって区別することができる。即ち、非架橋状態にあるバインダー樹脂は、溶媒中に該樹脂が溶けだし溶質中には残らなくなる。
【0058】
前記熱可逆記録層におけるその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、画像の記録を容易にする観点から、界面活性剤、可塑剤などが挙げられる。
【0059】
前記熱可逆記録層用塗布液に用いられる溶媒、塗布液の分散装置、塗工方法、乾燥・硬化方法等は公知の方法を用いることができる。
なお、前記熱可逆記録層用塗布液は前記分散装置を用いて各材料を溶媒中に分散してもよいし、各々単独で溶媒中に分散して混ぜ合わせてもよい。更に加熱溶解して急冷又は徐冷によって析出させてもよい。
【0060】
前記熱可逆記録層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(1)前記樹脂、及び前記ロイコ染料及び可逆性顕色剤を溶媒中に溶解乃至分散させた熱可逆記録層用塗布液を支持体上に塗布し、該溶媒を蒸発させてシート状等にするのと同時に又はその後に架橋する方法、(2)前記樹脂のみを溶解した溶媒に前記ロイコ染料及び可逆性顕色剤を分散させた熱可逆記録層用塗布液を支持体上に塗布し、該溶媒を蒸発させてシート状等にすると同時に又はその後に架橋する方法、(3)溶媒を用いず、前記樹脂と前記ロイコ染料及び可逆性顕色剤とを加熱溶融して互いに混合し、この溶融混合物をシート状等に成形して冷却した後に架橋する方法、などが好適に挙げられる。なお、これらにおいて、前記支持体を用いることなく、シート状の熱可逆記録媒体として成形することもできる。
【0061】
前記(1)又は(2)において用いる溶剤としては、前記樹脂及び前記ロイコ染料及び可逆性顕色剤の種類等によって異なり一概には規定することはできないが、例えば、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、クロロホルム、四塩化炭素、エタノール、トルエン、ベンゼンなどが挙げられる。
なお、前記可逆性顕色剤は、前記熱可逆記録層中では粒子状に分散して存在している。
前記熱可逆記録層用塗布液には、コーティング材料用としての高度な性能を発現させる目的で、各種顔料、消泡剤、顔料、分散剤、スリップ剤、防腐剤、架橋剤、可塑剤等を添加してもよい。
【0062】
前記熱可逆記録層の塗工方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ロール状で連続して、又はシート状に裁断した支持体を搬送し、該支持体上に、例えば、ブレード塗工、ワイヤーバー塗工、スプレー塗工、エアナイフ塗工、ビード塗工、カーテン塗工、グラビア塗工、キス塗工、リバースロール塗工、ディップ塗工、ダイ塗工等の公知の方法で塗布することができる。
前記熱可逆記録層用塗布液の乾燥条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、室温〜140℃の温度で、10秒間〜10分間程度、などが挙げられる。
【0063】
前記熱可逆記録層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1μm〜20μmが好ましく、3μm〜15μmがより好ましい。前記熱可逆記録層の厚みが薄すぎると発色濃度が低くなるため画像のコントラストが低くなることがあり、一方、厚すぎると層内での熱分布が大きくなり、発色温度に達せず発色しない部分が発生し、目的とする発色濃度を得ることができなくなることがある。
【0064】
−光熱変換層−
前記光熱変換層は、前記レーザ光を高効率で吸収し発熱する役割を有する光熱変換材料を少なくとも含有してなる。また熱可逆記録層と光熱変換層の間に両層が相互作用を抑制する目的でバリア層を形成することがあり、材料として熱伝導性のよい層が好ましい。前記熱可逆記録層と光熱変換層の間に挟む層は、目的に応じて適宜選択することができ、これらに限定されるものではない。
【0065】
前記光熱変換材料は、無機系材料と有機系材料とに大別できる。
前記無機系材料としては、例えば、カーボンブラックやGe、Bi、In、Te、Se、Cr、La、W等の金属もしくは半金属又はそれを含む合金が挙げられ、これらは、真空蒸着法や粒子状の材料を樹脂等で接着して層状に形成される。
前記有機系材料としては、吸収すべき光波長に応じて各種の染料を適宜用いることができるが、光源として半導体レーザを用いる場合には、700nm〜1,500nmの波長範囲内に吸収ピークを有する近赤外吸収色素が用いられる。具体的には、シアニン色素、キノン系色素、インドナフトールのキノリン誘導体、フェニレンジアミン系ニッケル錯体、フタロシアニン系化合物などが挙げられる。繰返し画像処理を行うためには、耐熱性に優れた光熱変換材料を選択するのが好ましく、この点からフタロシアニン系化合物が特に好ましい。
前記近赤外吸収色素は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0066】
前記光熱変換層を設ける場合には、通常、前記光熱変換材料は、樹脂と併用して用いられる。該光熱変換層に用いられる樹脂としては、特に制限はなく、前記無機系材料及び有機系材料を保持できるものであれば、公知のものの中から適宜選択することができるが、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが好ましく、前記熱可逆記録層で用いられたバインダー樹脂と同様なものを好適に用いることができる。これらの中でも、繰り返し時の耐久性を向上させるため、熱、紫外線、電子線などによって硬化可能な樹脂が好ましく用いられ、特にイソシアネート系化合物などを架橋剤として用いた熱架橋樹脂が好ましい。前記バインダー樹脂において、その水酸基価は50mgKOH/g〜400mgKOH/gが好ましい。
前記光熱変換層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1μm〜20μmが好ましい。
【0067】
−第1及び第2の酸素バリア層−
第1及び第2の酸素バリア層は、熱可逆記録層に酸素が進入することを防ぐことにより、前記第1及び第2の熱可逆記録層中のロイコ染料の光劣化を防止する目的で、第1及び第2の熱可逆記録層の上下に酸素バリア層を設けることが好ましい。即ち支持体と第1の熱可逆記録層との間に第1の酸素バリア層を設け、第2の熱可逆記録層上に第2の酸素バリア層を設けることが好ましい。
【0068】
前記第1及び第2の酸素バリア層には、可視部の透過率が大きく、酸素透過度が低い樹脂又は高分子フィルム等が挙げられる。前記酸素バリア層は、その用途、酸素透過性、透明性、塗工のしやすさ、接着性等によって選択される。
前記酸素バリア層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアクリル酸アルキルエステル、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリメタクリロニトリル、ポリアルキルビニルエステル、ポリアルキルビニルエーテル、ポリフッ素化ビニル、ポリスチレン、酢酸ビニル共重合体、酢酸セルロース、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、アセトニトリル共重合体、塩化ビニリデン共重合体、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン−6及びポリアセタール等の樹脂、又はポリエチレンテレフタレートやナイロン等の高分子フィルム上に無機酸化物を蒸着したシリカ蒸着フィルム、アルミナ蒸着フィルム、シリカ/アルミナ蒸着フィルムなどが挙げられる。これらの中でも、高分子フィルム上に無機酸化物を蒸着したフィルムが特に好ましい。
【0069】
前記酸素バリア層の酸素透過度は、20ml/m2/day/MPa以下が好ましく、5ml/m2/day/MPa以下がより好ましく、1ml/m2/day/MPa以下が更に好ましい。前記酸素透過度が、20ml/m2/day/MPaを超えると、前記第1及び第2の熱可逆記録層中のロイコ染料の光劣化を抑制できないことがある。
前記酸素透過度は、例えばJIS K7126 B法に準じた測定法により測定することができる。
【0070】
前記酸素バリア層は前記熱可逆記録層の下側又は支持体の裏面など、前記酸素バリア層で熱可逆記録層を挟み込むように設けることもできる。これにより、熱可逆記録層への酸素侵入をより効果的に防ぐことができ、ロイコ染料の光劣化をより少なくすることができる。
【0071】
前記第1及び第2の酸素バリア層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、溶融押出し法、コーティング法、ラミネート法、などが挙げられる。
前記第1及び第2の酸素バリア層の厚みは、樹脂又は高分子フィルムの酸素透過性によって異なるが、0.1μm〜100μmが好ましい。これより薄いと酸素バリアが不完全であり、厚いと透明性が低下するので好ましくない。
前記酸素バリア層と下層の間には、接着層を設けてもよい。前記接着層の形成方法は、特に制限なく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、通常のコーティング法、ラミネート法などが挙げられる。前記接着層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm〜5μmが好ましい。前記接着層は、架橋剤により硬化してもよい。前記架橋剤としては、前記熱可逆記録層で用いたものと同様のものを用いることができる。
【0072】
−保護層−
前記熱可逆記録媒体には、前記熱可逆記録層を保護する目的で該熱可逆記録層上に保護層を設けることが好ましい。前記保護層は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1層以上に形成してもよく、露出している最表面に設けることが好ましい。
【0073】
前記保護層は、少なくともバインダー樹脂を含有し、更に必要に応じて、フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線(UV)硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などが挙げられる。これらの中でも、紫外線(UV)硬化性樹脂、熱硬化性樹脂が特に好ましい。
【0074】
前記UV硬化性樹脂は、硬化後非常に硬い膜を形成することができ、表面の物理的な接触によるダメージやレーザ加熱による媒体変形を抑止することができるため繰り返し耐久性に優れた熱可逆記録媒体が得られる。
また、前記熱硬化性樹脂は、前記UV硬化性樹脂にはやや劣るが同様に表面を硬くすることができ、繰り返し耐久性に優れる。
【0075】
前記UV硬化性樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ビニル系、不飽和ポリエステル系のオリゴマーや各種単官能、多官能のアクリレート、メタクリレート、ビニルエステル、エチレン誘導体、アリル化合物等のモノマーが挙げられる。これらの中でも、4官能以上の多官能性のモノマー又はオリゴマーが特に好ましい。これらのモノマー又はオリゴマーを2種類以上混合することで樹脂膜の硬さ、収縮度、柔軟性、塗膜強度等を適宜調節することができる。
また、前記モノマー又はオリゴマーを、紫外線を用いて硬化させるためには、光重合開始剤、光重合促進剤を用いる必要がある。
前記光重合開始剤又は光重合促進剤の添加量は、前記保護層の樹脂成分の全質量に対し0.1質量%〜20質量%が好ましく、1質量%〜10質量%がより好ましい。
【0076】
前記紫外線硬化樹脂を硬化させるための紫外線照射は、公知の紫外線照射装置を用いて行うことができ、該装置としては、例えば、光源、灯具、電源、冷却装置、搬送装置等を備えたものが挙げられる。
前記光源としては、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、カリウムランプ、水銀キセノンランプ、フラッシュランプなどが挙げられる。該光源の波長は、前記熱可逆記録媒体用組成物に添加されている光重合開始剤及び光重合促進剤の紫外線吸収波長に応じて適宜選択することができる。
前記紫外線照射の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記樹脂を架橋するために必要な照射エネルギーに応じてランプ出力、搬送速度等を決めればよい。
【0077】
また、搬送性を良好にするため、重合性基を持つシリコーン、シリコーングラフトをした高分子;ワックス、ステアリン酸亜鉛等の離型剤;シリコーンオイル等の滑剤を添加することができる。これらの添加量としては、前記保護層の樹脂成分全質量に対して0.01質量%〜50質量%が好ましく、0.1質量%〜40質量%がより好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、静電気対策として導電性フィラーを用いることが好ましく、針状導電性フィラーを用いることが更に好ましい。
【0078】
前記無機顔料の平均粒径としては、例えば、0.01μm〜10.0μmが好ましく、0.05μm〜8.0μmがより好ましい。
前記無機顔料の添加量としては、前記バインダー樹脂1質量部に対し、0.001質量部〜2質量部が好ましく、0.005質量部〜1質量部がより好ましい。
なお、前記保護層には、添加剤として従来公知の界面活性剤、レベリング剤、帯電防止剤等を含有していてもよい。
【0079】
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、前記熱可逆記録層で用いられたバインダー樹脂と同様なものを好適に用いることができる。
前記熱硬化性樹脂は、架橋されていることが好ましい。該熱硬化性樹脂としては、例えば水酸基、アミノ基、カルボキシル基等のような、硬化剤と反応する基を有しているものを用いることが好ましく、特に水酸基を有しているポリマーが好ましい。前記保護層の強度を向上させるためには該熱硬化性樹脂の水酸基価が10mgKOH/g以上のポリマーを用いると十分な塗膜強度が得られ、より好ましくは30mgKOH/g以上であり、更に好ましくは40mgKOH/g以上である。十分な塗膜強度を持たせることで繰り返し画像記録及び画像消去を行っても熱可逆記録媒体の劣化が抑えることができる。
【0080】
前記硬化剤としては、例えば前記熱可逆記録層で用いられた硬化剤と同様なものを好適に用いることができる。
前記保護層の塗布液に用いられる溶媒、塗布液の分散装置、保護層の塗工方法、乾燥方法等は前記感熱記録層で用いられた公知の方法を用いることができる。紫外線硬化樹脂を用いた場合には塗布して乾燥を行った紫外線照射による硬化工程が必要となるが、紫外線照射装置、光源、照射条件については前記の通りである。
前記保護層の厚みは、0.1μm〜20μmが好ましく、0.5μm〜10μmがより好ましく、1.5μm〜6μmが更に好ましい。前記厚みが、0.1μm未満であると、熱可逆記録媒体の保護層としての機能を十分に果たすことができず、熱による繰り返し履歴によりすぐに劣化し、繰り返し使用することができなくなってしまうことがあり、20μmを超えると、保護層の下層にある感熱記録層に十分な熱を伝えることができなくなり、熱による画像記録と消去が十分にできなくなってしまうことがある。
【0081】
−紫外線吸収層−
本発明においては、前記熱可逆記録層中のロイコ染料の紫外線による着色及び光劣化による消え残りを防止する目的で、支持体と反対側に位置する熱可逆記録層の支持体とは反対側に紫外線吸収層を設けることが好ましく、これによって前記記録媒体の耐光性が改善できる。前記紫外線吸収層は390nm以下の紫外線を吸収するように、紫外線吸収層の厚みを適宜選択することが好ましい。
【0082】
前記紫外線吸収層は、少なくともバインダー樹脂と紫外線吸収剤を含有し、更に必要に応じて、フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
【0083】
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記熱可逆記録層のバインダー樹脂や熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂成分を用いることができる。前記樹脂成分としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。
【0084】
前記紫外線吸収剤としては、有機系及び無機系化合物のいずれでも用いることができる。
また、紫外線吸収構造を持つポリマー(以下、「紫外線吸収ポリマー」と称することもある)を用いることが好ましい。
ここで、前記紫外線吸収構造を持つポリマーとは、紫外線吸収構造(例えば、紫外線吸収性基)を分子中に有するポリマーを意味する。該紫外線吸収構造としては、例えば、サリシレート構造、シアノアクリレート構造、ベンゾトリアゾール構造、ベンゾフェノン構造などが挙げられ、これらの中でも、ロイコ染料の光劣化の原因である340nm〜400nmの紫外線を吸収することからベンゾトリアゾール構造、ベンゾフェノン構造が特に好ましい。
前記紫外線吸収ポリマーは架橋されていることが好ましい。前記紫外線吸収ポリマーとしては、例えば水酸基、アミノ基、カルボキシル基等のような、硬化剤と反応する基を有しているものを用いることが好ましく、水酸基を有しているポリマーが特に好ましい。前記紫外線吸収層の強度を向上させるためには該ポリマーの水酸基価が10mgKOH/g以上のポリマーを用いると十分な塗膜強度が得られ、より好ましくは30mgKOH/g以上であり、更に好ましくは40mgKOH/g以上である。十分な塗膜強度を持たせることで繰り返し消去印字を行っても記録媒体の劣化が抑えることができる。
【0085】
前記紫外線吸収層の厚みは、0.1μm〜30μmが好ましく、0.5μm〜20μmがより好ましい。前記紫外線吸収層の塗布液に用いられる溶媒、塗布液の分散装置、紫外線吸収層の塗工方法、紫外線吸収層の乾燥・硬化方法等は、前記熱可逆記録層で用いられた公知の方法を用いることができる。
【0086】
−中間層−
本発明においては、前記熱可逆記録層と前記保護層の接着性向上、保護層の塗布による熱可逆記録層の変質防止、保護層中の添加剤の熱可逆記録層への移行を防止する目的で、両者の間に中間層を設けることが好ましく、これによって発色画像の保存性が改善できる。
【0087】
前記中間層は、少なくともバインダー樹脂を含有し、更に必要に応じて、フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
【0088】
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記熱可逆記録層のバインダー樹脂や熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂成分を用いることができる。該樹脂成分としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。
【0089】
前記中間層には、紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。前記紫外線吸収剤としては、有機系及び無機系化合物のいずれでも用いることができる。
また、紫外線吸収ポリマーを用いてもよく、架橋剤により硬化してもよい。これらは前記保護層で用いられたものと同様のものを好適に用いることができる。
【0090】
前記中間層の厚みは、0.1μm〜20μmが好ましく、0.5μm〜5μmがより好ましい。前記中間層の塗布液に用いられる溶媒、塗布液の分散装置、中間層の塗工方法、中間層の乾燥・硬化方法等は、前記熱可逆記録層で用いられた公知の方法を用いることができる。
【0091】
−アンダー層−
本発明においては、印加した熱を有効に利用し高感度化するため、又は支持体と熱可逆記録層の接着性の改善や支持体への記録層材料の浸透防止を目的として、前記熱可逆記録層と前記支持体の間にアンダー層を設けてもよい。
【0092】
前記アンダー層は、少なくとも中空粒子を含有してなり、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0093】
前記中空粒子としては、中空部が粒子内に一つ存在する単一中空粒子、中空部が粒子内に多数存在する多中空粒子、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0094】
前記中空粒子の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、熱可塑性樹脂などが好適に挙げられる。前記中空粒子は、適宜製造したものであってもよいし、市販品であってもよい。該市販品としては、例えば、マイクロスフェアーR−300(松本油脂株式会社製);ローペイクHP1055、ローペイクHP433J(いずれも、日本ゼオン株式会社製);SX866(JSR株式会社製)などが挙げられる。
前記中空粒子の前記アンダー層における添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば10質量%〜80質量%が好ましい。
【0095】
前記バインダー樹脂としては、前記熱可逆記録層、前記紫外線吸収層、又は前記保護層と同様の樹脂を用いることができる。
前記アンダー層には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク等の無機フィラー及び各種有機フィラーの少なくともいずれかを含有させることができる。
なお、前記アンダー層には、その他、滑剤、界面活性剤、分散剤などを含有させることもできる。
【0096】
前記アンダー層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm〜50μmが好ましく、2μm〜30μmがより好ましく、12μm〜24μmが更に好ましい。
【0097】
−バック層−
本発明においては、前記熱可逆記録媒体のカールや帯電防止、搬送性の向上のために支持体の熱可逆記録層を設ける面と反対側にバック層を設けてもよい。
前記バック層は、少なくともバインダー樹脂を含有し、更に必要に応じて、フィラー、導電性フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
【0098】
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線(UV)硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、等が挙げられ、これらの中でも、紫外線(UV)硬化性樹脂、熱硬化性樹脂が特に好ましい。
【0099】
前記紫外線硬化樹脂、前記熱硬化性樹脂、前記フィラー、前記導電性フィラー、及び前記滑剤については、前記熱可逆記録層、又は前記保護層で用いられたものと同様なものを好適に用いることができる。
【0100】
−接着剤層又は粘着剤層−
本発明においては、支持体の記録層形成面の反対面に接着剤層又は粘着剤層を設けて熱可逆記録ラベルとすることができる。前記接着剤層又は粘着剤層の材料は一般的に使われているものが使用可能である。
【0101】
前記接着剤層又は粘着剤層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、酢ビ系樹脂、酢酸ビニル−アクリル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アクリル酸エステル系共重合体、メタクリル酸エステル系共重合体、天然ゴム、シアノアクリレート系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられる。
【0102】
前記接着剤層又は粘着剤層の材料はホットメルトタイプでもよい。剥離紙を用いてもよいし、無剥離紙タイプでもよい。このように接着剤層又は粘着剤層を設けることにより、記録層の塗布が困難な磁気ストライプ付塩ビカードなどの厚手の基板の全面若しくは一部に貼ることができる。これにより磁気に記憶された情報の一部を表示することができる等、この媒体の利便性が向上する。このような接着剤層又は粘着剤層を設けた熱可逆記録ラベルは、ICカードや光カード等の厚手カードにも適用できる。
【0103】
前記熱可逆記録媒体には、前記支持体と前記熱可逆記録層との間に視認性を向上させる目的で、着色層を設けてもよい。前記着色層は、着色剤及びバインダー樹脂を含有する溶液、又は分散液を対象面に塗布し、乾燥するか、あるいは単に着色シートを貼り合せることにより形成することができる。
【0104】
前記熱可逆記録媒体には、カラー印刷層を設けることもできる。前記カラー印刷層における着色剤としては、従来のフルカラー印刷に使用されるカラーインク中に含まれる各種の染料及び顔料等が挙げられ、前記バインダー樹脂としては各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、又は電子線硬化性樹脂等が挙げられる。該カラー印刷層の厚みとしては、印刷色濃度に対して適宜変更されるため、所望の印刷色濃度に合わせて選択することができる。
【0105】
前記熱可逆記録媒体は、非可逆性記録層を併用しても構わない。この場合、それぞれの記録層の発色色調は同じでも異なってもよい。また、前記熱可逆記録媒体の熱可逆記録層と同一面の一部もしくは全面、又は/もしくは反対面の一部分に、オフセット印刷、グラビア印刷などの印刷、又はインクジェットプリンタ、熱転写プリンタ、昇華型プリンタなどによって任意の絵柄などを施した着色層を設けてもよく、更に着色層上の一部分もしくは全面に硬化性樹脂を主成分とするOPニス層を設けてもよい。前記任意の絵柄としては、文字、模様、図柄、写真、赤外線で検知する情報などが挙げられる。また、単純に構成する各層のいずれかに染料や顔料を添加して着色することもできる。
【0106】
前記熱可逆記録媒体には、セキュリティのためにホログラムを設けることもできる。また、意匠性付与のためにレリーフ状、インタリヨ状に凹凸を付けて人物像や社章、シンボルマーク等のデザインを設けることもできる。
【0107】
前記熱可逆記録媒体は、その用途に応じて所望の形状に加工することができ、例えば、カード状、タグ状、ラベル状、シート状、ロール状などに加工される。また、カード状に加工されたものについてはプリペイドカードやポイントカード、更にはクレジットカードなどへの応用が挙げられる。カードサイズよりも小さなタグ状のサイズでは値札等に利用できる。また、カードサイズよりも大きなタグ状のサイズでは工程管理や出荷指示書、チケット等に使用できる。ラベル状のものは貼り付けることができるために、様々な大きさに加工され、繰り返し使用する台車や容器、箱、コンテナ等に貼り付けて工程管理、物品管理等に使用することができる。また、カードサイズよりも大きなシートサイズでは画像記録する範囲が広くなるため一般文書や工程管理用の指示書等に使用することができる。
【0108】
<画像記録及び画像消去メカニズム>
本発明における前記画像記録及び画像消去メカニズムは、熱により色調が可逆的に変化する態様である。前記態様はロイコ染料及び可逆性顕色剤(以下、「顕色剤」と称することがある)からなり、色調が透明状態と発色状態とに熱により可逆的に変化する。
図5Aに、前記樹脂中に前記ロイコ染料及び前記顕色剤を含んでなる熱可逆記録層を有する熱可逆記録媒体について、その温度−発色濃度変化曲線の一例を示し、図5Bに、透明状態と発色状態とが熱により可逆的に変化する前記熱可逆記録媒体の発消色メカニズムを示す。
まず、初め消色状態(A)にある前記記録層を昇温していくと、溶融温度T1にて、前記ロイコ染料と前記顕色剤とが溶融混合し、発色が生じ溶融発色状態(B)となる。溶融発色状態(B)から急冷すると、発色状態のまま室温に下げることができ、発色状態が安定化されて固定された発色状態(C)となる。この発色状態が得られたかどうかは、溶融状態からの降温速度に依存しており、徐冷では降温の過程で消色が生じ、初期と同じ消色状態(A)、あるいは急冷による発色状態(C)よりも相対的に濃度の低い状態となる。一方、発色状態(C)から再び昇温していくと、発色温度よりも低い温度T2にて消色が生じ(DからE)、この状態から降温すると、初期と同じ消色状態(A)に戻る。
溶融状態から急冷して得た発色状態(C)は、前記ロイコ染料と前記顕色剤とが分子同士で接触反応し得る状態で混合された状態であり、これは固体状態を形成していることが多い。この状態では、前記ロイコ染料と前記顕色剤との溶融混合物(前記発色混合物)が結晶化して発色を保持した状態であり、この構造の形成により発色が安定化していると考えられる。一方、消色状態は、両者が相分離した状態である。この状態は、少なくとも一方の化合物の分子が集合してドメインを形成したり、結晶化した状態であり、凝集あるいは結晶化することにより前記ロイコ染料と前記顕色剤とが分離して安定化した状態であると考えられる。多くの場合、このように、両者が相分離して前記顕色剤が結晶化することにより、より完全な消色が生じる。
なお、図5Aに示す、溶融状態から徐冷による消色、及び発色状態からの昇温による消色はいずれもT2で凝集構造が変化し、相分離や前記顕色剤の結晶化が生じている。
更に図5Aにおいて、前記熱可逆記録層を溶融温度T1以上の温度T3に繰返し昇温すると消去温度に加熱しても消去できない消去不良が発生したりする場合がある。これは、前記顕色剤が熱分解を起こし、凝集あるいは結晶化しにくくなってロイコ染料と分離しにくくなるためと思われる。繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑えるためには、前記熱可逆記録媒体を加熱する際に図5Aの前記溶融温度T1と前記温度T3の差を小さくすることにより、繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑えられる。
【0109】
<熱可逆記録部材 RF−IDとの組み合わせ例>
本発明で用いられる熱可逆記録部材は、前記可逆表示可能な記録層と情報記憶部とを、同一のカードやタグに設け(一体化させ)、該情報記憶部の記憶情報の一部を記録層に表示することにより、特別な装置がなくてもカードやタグを見るだけで情報を確認することができ、利便性に優れる。また、情報記憶部の内容を書き換えた時には熱可逆記録部の表示を書き換えることで、熱可逆記録媒体を繰り返し何度も使用することができる。
【0110】
前記情報記憶部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、磁気記録層、磁気ストライプ、ICメモリー、光メモリー、RF−IDタグなどが好ましく用いられる。工程管理や物品管理等に使用する場合には特にRF−IDタグが好ましく用いられる。なお、前記RF−IDタグはICチップと、該ICチップに接続したアンテナとから構成されている。
前記熱可逆記録部材は、前記可逆表示可能な記録層と情報記憶部とを有し、該情報記憶部の好適なものとしてRF−IDタグが挙げられる。
【0111】
ここで、図4は、RF−IDタグ85の概略図の一例を示す。このRF−IDタグ85はICチップ81と、該ICチップに接続したアンテナ82とから構成されている。前記ICチップ81は記憶部、電源調整部、送信部、受信部の4つに区分されており、それぞれが働きを分担して通信を行っている。通信はRF−IDタグとリーダライタのアンテナが電波により通信してデータのやり取りを行う。具体的には、RF−IDのアンテナがリーダライタからの電波を受信し共振作用により電磁誘導により起電力が発生する電磁誘導方式と放射電磁界により起動する電波方式の2種類がある。共に外部からの電磁界によりRF−IDタグ内のICチップが起動し、チップ内の情報を信号化し、その後、RF−IDタグから信号を発信する。この情報をリーダライタ側のアンテナで受信してデータ処理装置で認識し、ソフト側でデータ処理を行う。
【0112】
前記RF−IDタグはラベル状又はカード状に加工されており、RF−IDタグを前記熱可逆記録媒体に貼り付けることができる。RF−IDタグは熱可逆記録層面又はバック層面に貼ることができるが、バック層面に貼ることが好ましい。RF−IDタグと熱可逆記録媒体を貼り合わせるためには公知の接着剤又は粘着剤を使用することができる。
また、熱可逆記録媒体とRF−IDをラミネート加工等で一体化してカード状やタグ状に加工してもよい。
【実施例】
【0113】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例においては、記録媒体の好適な一例として熱可逆記録媒体を作製し、評価を行った。熱可逆記録媒体を用いて画像記録及び画像消去を繰り返さず1回だけ画像記録を行う場合には、感熱記録媒体についての評価を行った実施例に該当する。
【0114】
(製造例1)
<熱可逆記録媒体の作製>
熱により色調が可逆的に変化する熱可逆記録媒体を、以下のようにして作製した。
【0115】
−支持体−
支持体として、厚み125μmの白濁ポリエステルフィルム(帝人デュポン株式会社製、テトロンフィルムU2L98W)を用いた。
【0116】
−第1の酸素バリア層の形成−
ウレタン系接着剤(東洋モートン株式会社製、TM−567)5質量部、イソシアネート(東洋モートン株式会社製、CAT−RT−37)0.5質量部、及び酢酸エチル5質量部を加え、よく攪拌して酸素バリア層用塗布液を調製した。
次に、シリカ蒸着PETフィルム(三菱樹脂株式会社製、テックバリアHX、酸素透過度:0.5ml/m2/day/MPa)上に、前記酸素バリア層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、80℃にて1分間加熱及び乾燥した。この酸素バリア層付きシリカ蒸着PETフィルムを前記支持体上に貼合せ、50℃で24時間加熱し、厚み12μmの第1の酸素バリア層を形成した。
【0117】
−第1の熱可逆記録層の形成−
下記構造式(1)で表される可逆性顕色剤5質量部、下記構造式(2)及び(3)で表される2種類の消色促進剤をそれぞれ0.5質量部ずつ、アクリルポリオール50質量%溶液(水酸基価=200mgKOH/g)10質量部、及びメチルエチルケトン80質量部を、ボールミルを用いて平均粒径が約1μmになるまで粉砕分散した。
【0118】
【化3】
【化4】
【化5】
【0119】
次に、前記可逆性顕色剤を粉砕分散させた分散液に、前記ロイコ染料としての2−アニリノ−3−メチル−6ジブチルアミノフルオラン1質量部、及び架橋剤としてイソシアネート(日本ポリウレタン株式会社製、コロネートHL)5質量部を加え、よく撹拌して、熱可逆記録層用塗布液を調製した。
得られた熱可逆記録層用塗布液を、前記第1の酸素バリア層上に、ワイヤーバーを用いて塗布し、100℃にて2分間乾燥した後、60℃にて24時間キュアーを行って、厚み6.0μmの第1の熱可逆記録層を形成した。
【0120】
−光熱変換層の形成−
フタロシアニン系光熱変換材料(株式会社日本触媒製、IR−14、吸収ピーク波長:824nm)1質量%溶液を4質量部、アクリルポリオール50質量%溶液(水酸基価=200mgKOH/g)10質量部、及びメチルエチルケトン20質量部、架橋剤としてイソシアネート(商品名:コロネートHL、日本ポリウレタン株式会社製)5質量部をよく攪拌し、光熱変換層塗布液を作製した。得られた光熱変換層用塗布液を、前記第1の熱可逆記録層上に、ワイヤーバーを用いて塗布し、90℃にて1分間乾燥した後、60℃にて24時間キュアーを行って、厚み3μmの光熱変換層を形成した。
【0121】
−第2の熱可逆記録層の形成−
前記第1の熱可逆記録層と同じ熱可逆記録層用途布液を用い、前記光熱変換層上に、ワイヤーバーを用いて塗布し、100℃にて2分間乾燥した後、60℃にて24時間キュアーを行って、厚み6.0μmの第2の熱可逆記録層を形成した。
【0122】
−紫外線吸収層の形成−
紫外線吸収ポリマーの40質量%溶液(株式会社日本触媒製、UV−G300)10質量部、架橋剤としてイソシアネート(日本ポリウレタン株式会社製、コロネートHL)1.5質量部、及びメチルエチルケトン12質量部を加え、よく攪拌して紫外線吸収層用塗布液を調製した。
次に、前記第2の熱可逆記録層上に、前記紫外線吸収層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱及び乾燥した後、60℃にて24時間加熱し、厚み2μmの紫外線吸収層を形成した。
【0123】
−第2の酸素バリア層の形成−
前記第1の酸素バリア層と同じ酸素バリア層付きシリカ蒸着PETフィルムを、前記紫外線吸収層上に貼合せ、50℃で24時間加熱し、厚み12μmの第2の酸素バリア層を形成した。
【0124】
−バック層の形成−
ペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPHA)7.5質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業株式会社製、アートレジンUN−3320HA)2.5質量部、針状導電性酸化チタン(石原産業株式会社製、FT−3000、長軸長さ=5.15μm、短軸長さ=0.27μm、構成:アンチモンドープ酸化スズ被覆の酸化チタン)2.5質量部、光重合開始剤(日本チバガイギー株式会社製、イルガキュア184)0.5質量部、及びイソプロピルアルコール13質量部を加え、ボールミルにてよく攪拌してバック層用塗布液を調製した。
次に、前記支持体の前記第1の熱可逆記録層等が形成されていない側の面上に、前記バック層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱及び乾燥した後、80W/cmの紫外線ランプで架橋させて、厚み4μmのバック層を形成した。以上により、製造例1の熱可逆記録媒体を作製した。
【0125】
(製造例2)
−熱可逆記録媒体の作製−
製造例1において、光熱変換層用塗布液における光熱変換材料としてフタロシアニン系光熱変換材料の代わりにシアニン系光熱変換材料(株式会社山本化成製、YKR−2900、吸収ピーク波長:830nm)0.5質量%溶液を2質量部添加し、よく撹拌させて調製した光熱変換層用塗布液を用いた以外は、製造例1と同様にして、製造例2の熱可逆記録媒体を作製した。なお、シアニン系光熱変換材料(株式会社山本化成製、YKR−2900)は製造例1と同様な感度になる添加量とした。
【0126】
(製造例3)
−熱可逆記録媒体の作製−
製造例1において、第1の熱可逆記録層中に光熱変換材料として、無機系光熱変換材料(住友金属鉱山株式会社製、ホウ化ランタン液)を製造例1と同様な感度になるように量を調整して添加し、厚み12μmの第1の熱可逆記録層に形成して、第1の酸素バリア層、第2の酸素バリア層、光熱変換層、及び第2の熱可逆記録層を形成しない以外は、製造例1と同様にして、製造例3の熱可逆記録媒体を作製した。
【0127】
(製造例4)
−熱可逆記録媒体の作製−
製造例1において、第1の熱可逆記録層中に光熱変換材料として、無機系光熱変換材料(住友金属鉱山株式会社製、ホウ化ランタン液)を製造例1と同様な感度になるように量を調整して添加し、厚み12μmの第1の熱可逆記録層に形成して、光熱変換層、及び第2の熱可逆記録層を形成しない以外は、製造例1と同様にして、製造例4の熱可逆記録媒体を作製した。
【0128】
(製造例5)
−感熱記録紙の作製−
(1)染料分散液(A液)の調製
下記の組成をサンドミルで平均粒子径が0.5μmになるまで分散して、A液を調製した。
・2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン・・・20質量部
・ポリビニルアルコールの10質量%水溶液・・・20質量部
・水・・・60質量部
(2)B液の調製
下記の組成をボールミルで平均粒子径が1.5μmになるまで分散して、B液を調製した。
・水酸化アルミニウム・・・20質量部
・4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン・・・20質量部
・ポリビニルアルコールの10質量%水溶液・・・20質量部
・水・・・40質量部
(3)C液の調製
下記の組成をボールミルで平均粒子径が1.5μmになるまで分散して、C液を調製した。
・水酸化アルミニウム・・・100質量部
・ポリビニルアルコールの10質量%水溶液・・・20質量部
・水・・・40質量部
(4)感熱記録層塗工液の調製
下記の組成を混合して調製後に、無機系光熱変換材料(住友金属鉱山株式会社製、ホウ化ランタン液)を添加して感熱記録層塗工液を作製した。
・上記A液・・・20質量部
・上記B液・・・60質量部
・樹脂水溶液(ジアセトン変性ポリビニルアルコール、固形分=10質量%)・・・30質量部
・ジオクチルスルホコハク酸水溶液(固形分=5質量%)・・・1質量部
(5)保護層塗工液の調製
下記の組成を混合して保護層塗工液を調製した。
・上記C液・・・60質量部
・ジアセトン変性ポリビニルアルコール水溶液(固形分=10質量%)・・・100質量部
・アクリル樹脂水溶液(酸価=600mgKOH/g、ポリアクリル酸ナトリウム、ジュリマーAC103、日本純薬株式会社製、固形分=10質量%)・・・20質量部
・アジピン酸ジヒドラジド水溶液(固形分=10質量%)・・・10質量部
・ジオクチルスルホコハク酸水溶液(固形分=5質量%)・・・1質量部
(6)感熱記録紙の作製
支持体(坪量60g/m2の上質紙)上に、上記感熱記録層塗工液を染料付着量が0.50g/m2なるように塗布し、乾燥させて感熱記録層を形成した。
次に、前記感熱記録層上に上記保護層塗工液を乾燥付着量が3.0g/m2になるように塗布し、乾燥させて保護層を形成した。以上により感熱記録紙を作製した。
【0129】
(実施例1)
製造例1の熱可逆記録媒体を用いて、QPC社製ファイバ結合LD(半導体レーザ)のES−6200−A(中心波長:808nm)でレーザ光照射して、2枚のコリメータレンズ(焦点距離26mm)で平行光にして、Cambridge社製ガルバノスキャナー6230Hでレーザ光を走査させて、fθレンズ(焦点距離141mm)で熱可逆記録媒体上に集光させるLDマーカー装置で画像記録を行った。
図6A〜図6Cに示す文字の大きさ(4mm×4mm)、文字線幅0.4mmの3種の文字「横」、「口」、及び「一」の座標情報により文字の描画線全長Lを算出して文字面積SをL*0.4mmで導出して、各文字「横」、「口」、及び「一」の文字の密度を算出したところ、それぞれ0.47、0.19、及び0.08であった。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。具体的には、通常は図6D及び図6Eに示す文字情報がレーザマーカー内に搭載されているが、線幅情報を基に重なり部分を記録しないように、図6A及び図6Bに示すように重なり部分の線分を分断して非重複処理を行う。描画線全長Lは、レーザマーカーが各文字を座標変換した情報から各座標間の長さの和で求めた。
【0130】
次に、前記LDマーカー装置において、ワーク間距離を141mm(ビーム径0.65mm)、レーザ光の走査速度を2,500mm/sとし、図6A〜図6Cに示す文字の大きさ(4mm×4mm)、文字線幅0.4mmの3種の文字「横」、「口」、及び「一」について、レーザ光の照射パワーをそれぞれ20.0W、21.3W、及び22.0Wに調整して、印字した。
ここで、ワーク間距離とは、記録媒体とfθレンズが設置されているLDマーカー装置の光学ヘッド面の距離を意味する。
【0131】
(実施例2)
実施例1において、前記LDマーカー装置を用い、ワーク間距離を141mm、照射パワーを22.0Wとし、図6A〜図6Cに示す文字の大きさ(4mm×4mm)、文字線幅0.4mmの3種の文字「横」、「口」、及び「一」について、レーザ光の走査速度をそれぞれ2,750mm/s、2,600mm/s、及び2,500mm/sに調整して、印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0132】
(実施例3)
実施例1において、前記LDマーカー装置を用い、ワーク間距離を141mm、照射パワーを21.0Wとし、図6Aに示す文字の大きさ(4mm×4mm)、文字線幅0.4mmの文字「横」について、レーザ光の走査速度を2,600mm/sに調整して印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0133】
(実施例4)
図6Aに示す文字「横」、文字線幅0.4mm、文字の大きさ(4mm×4mm)と、文字の大きさ(8mm×8mm)の座標情報により文字の描画線全長Lを算出して文字面積SをL*0.4mmで導出して各文字の密度を求めたところ、文字の大きさ(4mm×4mm)及び文字の大きさ(8mm×8mm)で、0.47及び0.25であった。
次に、実施例1において、前記LDマーカー装置を用い、ワーク間距離を141mm、レーザ光の走査速度を2,500mm/sとし、図6Aに示す文字「横」、文字線幅0.4mm、文字の大きさ(4mm×4mm)、文字の大きさ(8mm×8mm)について、レーザ光の照射パワーをそれぞれ20.0W、21.0Wに調整して、印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0134】
(実施例5)
図6Aに示す文字「横」、文字の大きさ(8mm×8mm)、文字線幅0.4mm、文字線幅0.8mm(2本の線で印字)からの座標情報により文字の描画線全長Lを算出して文字面積SをL*0.4mm、L*0.8mmで導出して、各文字の密度を求めたところ、文字線幅0.4mm及び文字線幅0.8mmで、それぞれ0.25及び0.47であった。
実施例1において、LDマーカー装置で、ワーク間距離を141mm、レーザ走査速度2,500mm/s、図6Aに示す文字「横」、文字の大きさ(8mm×8mm)、文字線幅0.4mm、文字線幅0.8mm(2本の線で印字)について、レーザ光の照射パワーをそれぞれ21.0W、20.0Wに調整し、印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0135】
(実施例6)
実施例1において、文字の重なり部の非重複処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、同一条件で、図6Dに示す「横」文字を印字した。
【0136】
(実施例7)
実施例1において、製造例1の熱可逆記録媒体を、製造例2の熱可逆記録媒体に代えた以外は、実施例1と同様にして、図6A〜図6Cに示す文字の大きさ(4mm×4mm)、文字線幅0.4mmの3種の文字「横」、「口」、及び「一」について、レーザ光の照射パワーをそれぞれ20.0W、21.3W、及び22.0Wに調整して、印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0137】
(実施例8)
実施例1において、製造例1の熱可逆記録媒体を、製造例3の熱可逆記録媒体に代えた以外は、実施例1と同様にして、図6A〜図6Cに示す文字の大きさ(4mm×4mm)、文字線幅0.4mmの3種の文字「横」、「口」、及び「一」について、レーザ光の照射パワーをそれぞれ20.0W、21.3W、及び22.0Wに調整して、印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0138】
(実施例9)
実施例1において、製造例1の熱可逆記録媒体を、製造例4の熱可逆記録媒体に代えた以外は、実施例1と同様にして、図6A〜図6Cに示す文字の大きさ(4mm×4mm)、文字線幅0.4mmの3種の文字「横」、「口」、及び「一」について、レーザ光の照射パワーをそれぞれ20.0W、21.3W、及び22.0Wに調整して印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0139】
(実施例10)
製造例4の熱可逆記録媒体を用いて、Oclaro社製ファイバ結合LD(半導体レーザ)のBMU25−975−01−R(中心波長:976nm)でレーザ光照射して、2枚のコリメータレンズ(焦点距離37mm)で平行光にして、Cambridge社製ガルバノスキャナー6230Hでレーザ光を走査させて、fθレンズ(焦点距離189mm)で熱可逆記録媒体上に集光させるLDマーカー装置で画像記録を行った。
図6A〜図6Cに示す文字の大きさ(2.5mm×2.5mm)、文字線幅0.25mmの3種の文字「横」、「口」、及び「一」の座標情報により文字の描画線全長Lを算出して文字面積SをL*0.25mmで導出して、各文字「横」、「口」、及び「一」の文字の密度を算出したところ、それぞれ0.47、0.19、及び0.08であった。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。具体的には、通常は図6D及び図6Eに示す文字情報がレーザマーカー内に搭載されているが、線幅情報を基に重なり部分を記録しないように、図6A及び図6Bに示すように重なり部分の線分を分断して略線幅分を短くすることで非重複処理を行う。描画線全長Lは、LDマーカー装置が各文字を座標変換した情報から各座標間の長さの和で求めた。
次に、前記LDマーカー装置において、ワーク間距離を175mm(ビーム径0.50mm)、レーザ光の走査速度を3,000mm/sとし、図6A〜図6Cに示す文字の大きさ(2.5mm×2.5mm)、文字線幅0.25mmの3種の文字「横」、「口」、及び「一」について、レーザ光の照射パワーをそれぞれ15.0W、16.0W、及び16.5Wに調整して印字した。
【0140】
(実施例11)
製造例4の熱可逆記録媒体を用いて、実施例10のLDマーカー装置で図7Aに示す「轟」文字を、図7Cに示す小文字用のフォントに変換して、文字の大きさ(3.0mm×3.0mm)、文字線幅0.25mm、レーザ光の走査速度を3,000mm/sでレーザ照射パワー14.0Wに調整して印字した。
図7Cに示す文字の大きさ(3.0mm×3.0mm)、文字線幅0.25mmの座標情報により文字の描画線全長Lを算出して文字面積SをL*0.25mmで導出して、文字「轟」の文字の密度を算出したところ、0.54であった。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0141】
(実施例12)
ポリプロピレン(PP)材料の厚み2mm板に対して、パナソニック電工SUNX社製のFAYbのファイバレーザLP−Z(中心波長:1060nm)でビーム径0.30mmになるようにワーク間距離を調整して、レーザ光の走査速度を1,000mm/sとし、図6A〜図6Cに示す文字の大きさ(2mm×2mm)、文字線幅0.20mmの文字「横」、「口」、「一」について、レーザ光の照射パワーをそれぞれ12.0W、13.4W、14.0Wに調整して印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0142】
(実施例13)
製造例5の感熱記録紙に対して、実施例10と同様にしてワーク間距離を175mm(ビーム径0.50mm)、レーザ光の走査速度を3,000mm/sとし、図6A〜図6Cに示す文字の大きさ(2.5mm×2.5mm)、文字線幅0.25mmの文字「横」、「口」、「一」について、レーザ光の照射パワーをそれぞれ12.0W、12.8W、13.2Wに調整して印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0143】
(比較例1)
実施例1において、前記LDマーカー装置で、レーザ光の走査速度2,500mm/s、ワーク間距離を141mmとなるように調整して、図6A〜図6Cに示す文字の大きさ(4mm×4mm)、文字線幅0.4mmの3種の文字「横」、「口」、及び「一」について、レーザ光の照射パワーを22.0Wで印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0144】
(比較例2)
実施例1において、前記LDマーカー装置で、レーザ光の走査速度2,500mm/s、ワーク間距離を141mmとなるように調整して、図6A〜図6Cに示す文字の大きさ(4mm×4mm)、文字線幅0.4mmの3種の文字「横」、「口」、及び「一」について、レーザ光の照射パワーを20.0Wで印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0145】
(比較例3)
実施例1において、前記LDマーカー装置で、ワーク間距離を141mm、レーザ光の走査速度2,500mm/s、図6Aに示す文字「横」、線幅0.4mm、文字の大きさ(4mm×4mm)、文字の大きさ(8mm×8mm)について、レーザ光の照射パワーをそれぞれ21.3Wで印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0146】
(比較例4)
実施例1において、前記LDマーカー装置で、ワーク間距離を141mm、レーザ光の走査速度2,500mm/s、図6Aに示す文字「横」、文字の大きさ(8mm×8mm)、文字線幅0.4mm、文字線幅0.8mm(2本の線で印字)について、レーザ光の照射パワーをそれぞれ21.0Wで印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0147】
(比較例5)
比較例1において、文字の重なり部の非重複処理を行わない以外は、比較例1と同様にして、同一条件で図6Aに示す「横」文字を印字した。
【0148】
(比較例6)
比較例1において、製造例1の熱可逆記録媒体を、製造例2の熱可逆記録媒体に代えた以外は、比較例1と同様にして、図6Aに示す文字「横」、文字の大きさ(4mm×4mm)、文字線幅0.4mmについて、レーザ光の照射パワーを22.0Wに調整して印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0149】
(比較例7)
比較例1において、製造例1の熱可逆記録媒体を、製造例3の熱可逆記録媒体に代えた以外は、比較例1と同様にして、図6Aに示す文字「横」、文字の大きさ(4mm×4mm)、文字線幅0.4mmについて、レーザ光の照射パワーを22.0Wに調整して印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0150】
(比較例8)
比較例1において、製造例1の熱可逆記録媒体を製造例4の熱可逆記録媒体に代えた以外は、比較例1と同様にして、図6Aに示す文字「横」、文字の大きさ(4mm×4mm)、文字線幅0.4mmについて、レーザ光の走査速度を2,500mm/sでレーザ光の照射パワーを22.0Wに調整して印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0151】
(比較例9)
実施例10において、製造例4の熱可逆記録媒体にレーザ光の走査速度3,000mm/s、ワーク間距離を175mmとなるように調整した以外は、実施例10と同様にして、図6Aに示す文字の大きさ(2.5mm×2.5mm)、文字線幅0.25mmの「横」について、レーザ光の照射パワーを16.5Wで印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0152】
(比較例10)
製造例4の熱可逆記録媒体を用いて、実施例10のLDマーカー装置で図7Aに示す「轟」文字を、文字の大きさ(3.0mm×3.0mm)、文字線幅0.25mmで、レーザ光の走査速度を3,000mm/s、レーザ光の照射パワー16.5Wに調整して印字した。図7Aに示す文字の大きさ(3.0mm×3.0mm)、文字線幅0.25mmの座標情報により文字の描画線全長Lを算出して文字面積SをL*0.25mmで導出して、文字「轟」の文字の密度を算出したところ、0.62であった。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0153】
(比較例11)
ポリプロピレン(PP)材料の厚み2mm板に対して、パナソニック電工SUNX社製のFAYbのファイバレーザLP−Z(中心波長:1,060nm)でビーム径0.30mmになるようにワーク間距離を調整して、レーザ光の走査速度を1,000mm/sとし、図6Aに示す文字の大きさ(2mm×2mm)、文字線幅0.20mmの文字「横」について、レーザ光の照射パワーを14.0Wに調整して印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0154】
(比較例12)
製造例5の感熱記録紙に対して、実施例10と同様にして、ワーク間距離を175mm(ビーム径0.50mm)、レーザ光の走査速度を3,000mm/sとし、図6Aに示す文字の大きさ(2.5mm×2.5mm)、文字線幅0.25mmの文字「横」について、レーザ光の照射パワーを13.2Wに調整して印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0155】
次に、実施例1〜13及び比較例1〜12について、以下のようにして、画像印字品質、及び繰り返し耐久性を評価した。結果を表1に示す。
【0156】
<画像印字品質(初期)の評価>
各文字の画像記録を行い、そのときの画像印字品質(初期)を下記基準で評価した。
〔評価基準〕
○:擦れ、文字潰れがなく高精細に印字できている
×:僅かでも擦れ、文字潰れて印字されている
【0157】
<繰返し耐久性の評価>
画像印字品質評価した文字について繰返し記録を行い、最後に、レーザによる消去を行い消え残り画像を評価して、消え残り濃度が0.030を超える繰返し回数を繰返し耐久性とした。結果を表1に示す。
【0158】
【表1−1】
*横*1:文字「横」、文字線幅0.4mm、文字の大きさ(4mm×4mm)、重なり部の非重複処理あり
*横*2:文字「横」、文字線幅0.4mm、文字の大きさ(8mm×8mm)、重なり部の非重複処理あり
*横*3:文字「横」、文字の大きさ(8mm×8mm)、文字線幅0.8mm(2本の線で印字)、重なり部の非重複処理あり
*横*4:文字「横」、文字の大きさ(4mm×4mm)、文字線幅0.4mm、重なり部の非重複処理なし
*横*5:文字「横」、文字線幅0.25mm、文字の大きさ(2.5mm×2.5mm)、重なり部の非重複処理あり
*横*6:文字「横」、文字線幅0.2mm、文字の大きさ(2mm×2mm)、重なり部の非重複処理あり
なお、照射エネルギーは、(照射パワー)/(走査速度)/(ビーム径)で導出して、単位はmJ/mm2となる。
【0159】
【表1−2】
*横*1:文字「横」、文字線幅0.4mm、文字の大きさ(4mm×4mm)、重なり部の非重複処理あり
*横*2:文字「横」、文字線幅0.4mm、文字の大きさ(8mm×8mm)、重なり部の非重複処理あり
*横*3:文字「横」、文字の大きさ(8mm×8mm)、文字線幅0.8mm(2本の線で印字)、重なり部の非重複処理あり
*横*4:文字「横」、文字の大きさ(4mm×4mm)、文字線幅0.4mm、重なり部の非重複処理なし
*横*5:文字「横」、文字線幅0.25mm、文字の大きさ(2.5mm×2.5mm)、重なり部の非重複処理あり
*横*6:文字「横」、文字線幅0.2mm、文字の大きさ(2mm×2mm)、重なり部の非重複処理あり
なお、照射エネルギーは、(照射パワー)/(走査速度)/(ビーム径)で算出でき、単位はmJ/mm2となる。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明の画像処理方法及び画像処理装置は、記録する各文字における文字種類、文字の大きさ、及び文字線幅の情報から、記録する各文字の密度を算出し、該記録する各文字の密度に応じてレーザ光の照射エネルギーを調整することで、印字滲みの少ない高品質な画像記録を実現できると共に、熱可逆記録媒体を用いた場合には高い繰返し耐久性を実現でき、物流及び配送システムに特に好適に使用可能である。
【符号の説明】
【0161】
1 レーザ発振器
2 ビームエキスパンダ
3 マスク又は非球面レンズ
4 ガルバノメータ
4A ガルバノミラー
5 スキャニングユニット
6 fθレンズ
7 熱可逆記録媒体
81 ICチップ
82 アンテナ
85 RF−IDタグ
100 熱可逆記録媒体
101 支持体
102 第1の熱可逆記録層
103 光熱変換層
104 第2の熱可逆記録層
105 第1の酸素バリア層
106 第2の酸素バリア層
107 紫外線吸収層
108 バック層
【先行技術文献】
【特許文献】
【0162】
【特許文献1】特開2004−265247号公報
【特許文献2】特許第3998193号公報
【特許文献3】特許第3161199号公報
【特許文献4】特開平9−30118号公報
【特許文献5】特開2000−136022号公報
【特許文献6】特開平11−151856号公報
【特許文献7】特開2008−62506号公報
【特許文献8】特開2008−213439号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、印字滲みの少ない高品質な画像記録を実現できる画像処理方法及び画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在まで、記録媒体としての熱可逆記録媒体への画像記録及び画像消去は、加熱源を熱可逆記録媒体に接触させて該熱可逆記録媒体を加熱する接触式で行われている。該加熱源としては、通常、画像記録にはサーマルヘッドが用いられ、画像消去には熱ローラ、セラミックヒータなどが用いられている。
このような接触式の記録方法は、熱可逆記録媒体がフィルム、紙等のフレキシブルなものである場合には、プラテンなどによって熱可逆記録媒体を加熱源に均一に押し当てることにより、均一な画像記録及び画像消去を行うことができ、かつ従来の感熱紙用のプリンタの部品を転用することによって画像消去装置を安価に製造することができるという利点がある。
しかし、熱可逆記録媒体が、特許文献1及び特許文献2に記載されているようなRF−IDタグなどを内蔵している場合には、熱可逆記録媒体の厚みが厚くなりフレキシブル性が低下して加熱源を均一に押し当てるためには高い圧力が必要となる。また、接触式であるために、印字と消去を繰り返すと熱可逆記録媒体表面が削れて凹凸が生じ、サーマルヘッドやホットスタンプ等の加熱源に接触しない部分が出てきて均一に加熱されないため濃度低下や消去不良がおこるという問題がある(特許文献3及び特許文献4参照)。
【0003】
更に、RF−IDタグが非接触で離れたところから記憶情報の読み取り及び書き換えが行われるのに対して、熱可逆記録媒体についても離れた位置から画像を書き換えたいという要望が生じてきている。例えば記録媒体の表面に凹凸が生じた場合や離れたところから均一に画像記録及び画像消去する方法として、レーザを用いる方法が提案されている(特許文献5参照)。この提案の方法は、物流ラインに用いる搬送用容器に熱可逆記録媒体を使用して非接触記録を行うものであり、書き込みはレーザで実施し、消去は熱風、温水、又は赤外線ヒータで行うと記載されている。
【0004】
このようなレーザによる記録方法には、高出力のレーザ光を熱可逆記録媒体に照射して、その位置をコントロール可能なレーザ記録装置(レーザマーカー)が提供されている。このレーザマーカーを用いて、レーザ光を熱可逆記録媒体に照射して、熱可逆記録媒体中の光熱変換材料が光を吸収して熱に変換し、その熱で記録及び消去を行うことが可能である。これまでレーザによる画像記録及び画像消去を行う方法として、ロイコ染料と可逆性顕色剤、種々の光熱変換材料を組み合わせて、近赤外レーザ光により記録する方法が提案されている(特許文献6参照)。
【0005】
また、特許文献7及び特許文献8に記載の方法によれば、均一に熱可逆記録媒体の加熱が可能となり画像品質及び繰返し耐久性を改善することは可能であるが、各描画線間のジャンプ及び待ち時間により画像記録、及び画像消去に必要な時間が長くなってしまうという課題があった。
一方、書換えないで印字する方法として、プラスチック、半導体等の製品の表面にレーザ光を照射して吸収により熱を発生させて変形、変質、除去により印字したり、一回記録の感熱紙を製品に貼り付けてレーザ光を照射して印字部を部分的に加熱することで印字する方法などがあるが、熱による印字のために熱拡散の影響で小さい文字を印字すると文字の滲みが発生して視認性が低下するという課題があった。
【0006】
したがって、先行技術文献には、記録する各文字における文字種類、文字の大きさ、及び文字線幅の情報から、記録する各文字の密度を算出し、該記録する各文字の密度に応じてレーザ光の照射エネルギーを調整することで、印字滲みの少ない高品質な画像記録を実現できると共に、高い繰返し耐久性を実現できる画像処理方法及び画像処理装置は、未だ提供されていないのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、記録する各文字における文字種類、文字の大きさ、及び文字線幅の情報から、記録する各文字の密度を算出し、該記録する各文字の密度に応じてレーザ光の照射エネルギーを調整することで、印字滲みの少ない高品質な画像記録を実現できると共に、熱可逆記録媒体を用いた場合には高い繰返し耐久性を実現できる画像処理方法及び画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 記録する各文字における文字種類、文字の大きさ、及び文字線幅の情報から、記録する各文字の密度を算出する密度算出工程と、
前記各文字の密度に基づき該各文字を記録する際のレーザ光の照射エネルギーを調整し、該調整後の照射エネルギーのレーザ光を記録媒体上に照射して各文字を記録する画像記録工程と、を少なくとも含むことを特徴とする画像処理方法である。
<2> 密度算出工程において、記録する各文字における文字の大きさ及び文字種類から描画線全長を求め、該描画線全長と文字線幅の積を文字の大きさで割って、記録する各文字の密度を算出する前記<1>に記載の画像処理方法である。
<3> 画像記録工程において、記録する文字の密度が低いときのレーザ光の照射エネルギーを、記録する文字の密度が高いときのレーザ光の照射エネルギーより高くなるように調整する前記<1>から<2>のいずれかに記載の画像処理方法である。
<4> レーザ光の照射エネルギーを、レーザ光の照射パワーにより調整する前記<1>から<3>のいずれかに記載の画像処理方法である。
<5> レーザ光の照射エネルギーを、レーザ光の走査速度により調整する前記<1>から<3>のいずれかに記載の画像処理方法である。
<6> 各文字の重なり部に重複してレーザ光が照射しないように処理する重なり部非重複処理工程を含む前記<1>から<5>のいずれかに記載の画像処理方法である。
<7> 記録する各文字における文字の大きさ、及び文字の線幅の情報から、使用する文字フォントデータを選択し、該選択された文字フォントデータに基づき、密度算出工程を行う前記<1>から<6>のいずれかに記載の画像処理方法である。
<8> 画像記録工程で用いるレーザ光源が、YAGレーザ光源、ファイバレーザ光源、及び半導体レーザ光源の少なくともいずれかである前記<1>から<7>のいずれかに記載の画像処理方法である。
<9> 画像記録工程で照射するレーザ光の波長が700nm以上1,500nm以下である前記<1>から<8>のいずれかに記載の画像処理方法である。
<10> 記録媒体が、支持体と、該支持体上に、第1の熱可逆記録層と、特定波長の光を吸収して熱に変換する光熱変換材料を含む光熱変換層と、第2の熱可逆記録層とを少なくともこの順に有してなり、前記第1及び第2の熱可逆記録層が、いずれも温度に依存して色調が可逆的に変化する熱可逆記録媒体である前記<1>から<9>のいずれかに記載の画像処理方法である。
<11> 第1の熱可逆記録層及び第2の熱可逆記録層が、いずれもロイコ染料及び可逆性顕色剤を含有する前記<10>に記載の画像処理方法である。
<12> 光熱変換材料が、近赤外領域に吸収ピークを有する材料である前記<10>から<11>のいずれかに記載の画像処理方法である。
<13> 光熱変換材料が、フタロシアニン系化合物である前記<12>に記載の画像処理方法である。
<14> 光熱変換材料が、無機系材料である前記<12>に記載の画像処理方法である。
<15> 前記<1>から<14>のいずれかに記載の画像処理方法に用いられ、レーザ光出射手段と、レーザ光をレーザ光照射面に走査させるレーザ光走査手段とを少なくとも有することを特徴とする画像処理装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、記録する各文字における文字種類、文字の大きさ、及び文字線幅の情報から、記録する各文字の密度を算出し、該記録する各文字の密度に応じてレーザ光の照射エネルギーを調整することで、印字滲みの少ない高品質な画像記録を実現できると共に、熱可逆記録媒体を用いた場合には高い繰返し耐久性を実現できる画像処理方法及び画像処理装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、文字の密度の算出方法を説明するための図の一例である。
【図2】図2は、本発明のレーザマーカーの構成を説明する図の例である。
【図3A】図3Aは、本発明の熱可逆記録媒体の層構成の一例を示す概略断面図である。
【図3B】図3Bは、本発明の熱可逆記録媒体の層構成の他の一例を示す概略断面図である。
【図3C】図3Cは、本発明の熱可逆記録媒体の層構成の更に他の一例を示す概略断面図である。
【図4】図4は、RF−IDタグの一例を示す概略図である。
【図5A】図5Aは、熱可逆記録媒体の発色−消色特性を示すグラフである。
【図5B】図5Bは、熱可逆記録媒体の発色−消色変化のメカニズムを表す概略説明図である。
【図6A】図6Aは、実施例の文字「横」(重なり部の非重複処理あり)の印字を説明するための図の一例である。
【図6B】図6Bは、実施例の文字「口」(重なり部の非重複処理あり)の印字を説明するための図の一例である。
【図6C】図6Cは、実施例の文字「一」の印字を説明するための図の一例である。
【図6D】図6Dは、実施例の文字「横」(重なり部の非重複処理なし)の印字を説明するための図の一例である。
【図6E】図6Eは、実施例の文字「口」(重なり部の非重複処理なし)の印字を説明するための図の一例である。
【図7A】図7Aは、画数が多く、文字密度が高い文字の一例を示す図である。
【図7B】図7Bは、文字密度が高く、太い文字線幅の文字の一例を示す図である。
【図7C】図7Cは、文字密度が高い文字で太い文字線幅のときに対して小サイズ用の文字フォントデータを選択した後の文字の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(画像処理方法)
本発明の画像処理方法は、密度算出工程と、画像記録工程とを少なくとも含み、重なり部非重複照射工程、画像消去工程、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0012】
<密度算出工程>
前記密度算出工程は、記録する各文字における文字種類、文字の大きさ、及び文字線幅の情報から、記録する各文字の密度を算出する工程である。
前記記録する各文字における文字種類、文字の大きさ、及び文字線幅の情報は、例えばユーザーの入力などにより提供される。
前記文字の種類としては、例えば、漢字、カタカナ、数字、アルファベット、記号、図形(ロゴ、バーコード等)、袋文字、反転文字などが挙げられる。
【0013】
レーザ光を記録媒体に照射してレーザ光の照射エネルギーにより、前記記録媒体のレーザ光を照射した部分を加熱、変質、変形等により所望の文字・画像等を記録する方法において、記録される文字、画像は様々で、文字の種類、文字の大きさ、文字の線幅が異なり、画像においては画像の種類、画像の大きさ等が異なる。その結果、記録される部分と記録されない部分の密度が変動する。つまり、文字種類により表示すべき描画線全長が長い場合(例えば、文字の大きさを同じとして「一」に比べて「横」は描画線全長が長い)、文字の大きさに対して線幅が太い場合、記録される領域が大きくなり密度も高くなる。
前記記録媒体としては、1回の画像記録を行う感熱記録媒体、繰り返し画像記録及び画像消去を行う熱可逆記録媒体のいずれにも好適に用いることができる。
【0014】
レーザマーカー(レーザ照射記録装置)では、図1に示すように、文字の高さ方向の長さa及び文字の幅方向の長さbを指定して文字の大きさを変更することができる。指定されたa及びbにより、規定される四角の枠に対して文字フォントデータにより前記四角の枠に入るように文字が記録される。ここで、レーザマーカーによる記録は文字を記録し、四角の枠は記録しない。
本発明において、文字の大きさは、図1に示すように、文字の高さ方向の長さをaとし、文字の幅方向の長さをbとすると、これらの積(a×b)で表される。この文字の大きさ(a×b)と、文字を形成する面積Sとから、文字の密度は、S/(a×b)で定義される。
一般に、レーザマーカーは、文字の大きさ〔(高さ方向の長さa)×(幅方向の長さb)〕を設定することで該文字の大きさを変更して記録できるので、前記密度の定義においてもレーザマーカーで設定する文字の大きさが(a×b)に相当する。
前記文字を形成する面積Sは、文字の大きさ(a×b)、文字線幅W、及び文字種類に起因して変動する。前記面積Sの値は、文字の大きさ(a×b)(ただし、a及びbが同率で変化する場合)、文字線幅W、及び文字種類により描画線全長Lにほぼ比例して変化する。したがって記録する各文字における文字の大きさ(a×b)及び文字種類から描画線全長Lを求め、該描画線全長Lと文字線幅Wの積を文字の大きさ(a×b)で割って、記録する各文字の密度を算出することができる。
具体的には、前記描画線全長Lは、レーザマーカー内で以下の方法で導出される。レーザマーカーは、ユーザーが設定した文字の種類、文字の大きさ、印字位置を座標に変換して、前記座標の位置を走査ミラー角度に変換し、レーザマーカーは前記角度を制御することでレーザ光を所望の位置に走査して印字を行う。前記座標位置のデータを用いて各座標間の距離を算出して、これらを足し合せることで描画線全長Lを算出する。例えば、座標A(X1、Y1)、B(X2、Y2)の距離Liは、√(X1−X2)2+(Y1−Y2)2で求めることができ、各座標間の距離を足し合わせて、ΣLiにより、描画線全長Lを求めることができる。
【0015】
レーザマーカー(レーザ照射記録装置)による記録では、文字の種類に漢字が含まれるので多種類の文字が使われ、描画線全長Lが異なる様々な文字が使用される。また、記録した文字を強調するために文字線幅W、及び文字の大きさ(a×b)を変更することが行われる。その結果、様々な密度の文字が記録媒体に記録されることになる。
【0016】
レーザ光による記録では、記録媒体がレーザ光を吸収して熱に変換して、記録媒体を局所的に加熱、変質、変形等により所望の文字及び画像等の記録を行うが、熱の拡散による蓄熱影響で、1つの文字内における描画線同士の隙間が小さい隣接部のレーザ光照射の有無で影響が変化する。つまり、隣接部でレーザ光を照射した直後にレーザ光を照射すると、隣接部で照射しないときに比べて過剰な熱が加わることになる。その結果、熱が過剰に加わったことで、描画線が太くなり文字精細性が低下したり、繰返し記録及び消去可能な熱可逆記録媒体ではダメージとなり繰返し耐久性が低下する。従来の方式では、文字種類、文字の大きさ、及び文字線幅に関係なく、同一の照射エネルギーで行っており、全体の照射エネルギーを調整して対応していたが調整幅が狭く調整が困難であり、画像品質、及び繰返し耐久性の低下が生じていた。
【0017】
本発明においては、記録する各文字における文字の大きさ、及び文字の線幅の情報から、使用する文字フォントデータを選択し、該選択された文字フォントデータに基づき、密度算出工程を行うことが好ましい。
前記文字フォントデータとしては、レーザマーカー用には少なくともベクター用フォントデータが必要である。一筆書き用の標準フォントデータ以外にも、一筆書き用で視認性を向上するために文字内の線の間隔を一定にした文字フォントデータ、文字の一部を削除した小サイズ用の文字フォントデータ、交点・折り返し部で重なり部を除去した文字フォントデータ、袋文字を形成するためのアウトラインフォントなどが挙げられる。
使用する文字フォントデータを選択する工程と前記密度算出工程とを組合せることにより、本発明の効果をより向上させることができる。即ち、図7Aに示すように、画数が多く、文字密度が高くなる文字として「轟」を例として説明すると、前記文字「轟」に対して文字線幅を太くすると図7Bに示すように文字が潰れて視認性が低下するため、文字の一部を削除した小サイズ用の文字フォントデータを画像処理装置内に搭載しておき、文字の大きさ、及び文字線幅の情報から、前記小サイズ用の文字フォントデータを選択することで、文字潰れを図7Cに示すように解消できる。
小サイズ用の文字フォントデータを使用するか否かを判定する方法としては、文字を形成する各線中心の間隔が文字線幅に対して小さい場合、特に、1以下の場合は小サイズ用の文字フォントデータを選択する。
なお、小文字用の文字フォントデータを使用した後に、前記密度算出工程を行い、記録する文字密度を算出して、後述する画像記録工程を行うことが好ましい。
【0018】
<画像記録工程>
前記画像記録工程は、前記各文字の密度に基づき該各文字を記録する際のレーザ光の照射エネルギーを調整し、該調整後の照射エネルギーのレーザ光を記録媒体上に照射して各文字を記録する工程である。
【0019】
本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、文字種類、文字の大きさ(a×b)、及び文字線幅Wを振って文字の密度を変動させて画像記録を行い、記録に適した照射エネルギー(記録コントラスト、精細性、及び繰返し耐久性が最も適した照射エネルギー)が密度との関数で示せることを知見した。ただし、個々の文字種類、文字の大きさ(a×b)、及び文字線幅Wには依存しない。
記録する文字の密度と最適なレーザ光の照射エネルギーとの関係は、記録媒体の材料、環境温度等により蓄熱状態、熱拡散が変動する。具体的には、後述する実施例で用いた媒体で25℃環境下の場合では、印字密度Dと最適な照射エネルギーEは印字密度が1の時の照射エネルギーをE0とすると、E=E0*(1−0.22*D)の1次関数で示される。記録媒体の材料、環境温度により傾きの係数が変化することになる。後述する実施例の記録媒体の場合には、傾きの係数は0.22である。
文字線幅Wは文字の蓄熱状態により変動するが、ここで文字線幅Wとは隣接線のない線を照射エネルギー補正しないで印字したときの幅である。
【0020】
文字種類、文字の大きさ(a×b)、及び文字線幅Wで決まる文字の密度に応じて、記録時のレーザ光の照射エネルギーを調整することで、文字の精細性低下、及び繰返し耐久性の低下を低減できる。例えば、文字の密度が高い文字を記録する場合には、記録時のレーザ光の照射エネルギーを下げることで実現できる。本発明においては、文字の密度が高いと蓄熱した状態で印字することで過剰なエネルギーが印加されることを防ぐため、文字の密度が高い時には記録時のレーザ光の照射エネルギーを下げて適正な照射エネルギーで印字する。
【0021】
本発明の画像処理方法においては、例えば、ユーザーから入力された記録に関する情報(文字種類、文字の大きさ(a×b)、文字の線幅W)からレーザマーカー内の処理で、記録する各文字の密度を算出して、該文字の密度に応じて各文字に対して記録するレーザ光の照射エネルギーを変化させる。
また、文字の線幅の変更方法は、レーザ光のビーム径の変更、又は複数の描画線をほぼ線幅分ずらしながら記録することで太い文字線幅Wを印字することができる。本発明においては、ワーク間距離の変更によるレーザ光のビーム径の変更は、光学的に変更することが可能であるが、集光レンズと記録媒体間の距離を変更することでも容易に変更することができる。
【0022】
前記レーザ光の照射エネルギーは、P/V(ただし、Pは記録媒体上でのレーザ光の照射パワー、Vは記録媒体上でのレーザ光の走査速度を表す)に比例するので、P/Vが略一定になるようにレーザ光の走査速度(V)及び照射パワー(P)の少なくともいずれかを制御することが好ましい。
【0023】
前記レーザ光の走査速度を制御する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、走査用ミラーの動作を担うモーターの回転速度を制御する方法などが挙げられる。前記モーターの速度を制御する方法としては、始点部、屈曲部などのモーターの回転速度制御が困難な部分と、直線部などとで、モーターに設定する速度値などをかえることで制御できる。ただし、始点部を記録する場合、回転速度が0から狙い速度に達するまでに時間が必要であり、その場合は、照射パワー、照射するタイミング(狙いの速度に達したときにレーザ照射する)で対応する必要がある。
【0024】
前記レーザ光の照射パワーを制御する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、レーザ光の照射パワーの設定値を変更する方法、パルス照射レーザの場合にはパルス時間幅での調整による制御方法などが挙げられる。
前記レーザ光の照射パワーの設定値の変更方法としては、記録部分により、パワー設定値を変更する方法が挙げられる。前記パルス時間幅による制御方法としては、記録部分により、パルス発光する時間幅を変更することで、照射パワーによる照射エネルギーの調整が可能となる。
【0025】
前記画像記録工程において照射されるレーザ光の出力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1W以上が好ましく、3W以上がより好ましく、5W以上が更に好ましい。前記レーザ光の出力が、1W未満であると、画像記録に時間がかかり、画像記録時間を短くしようとすると出力が不足してしまう。また、前記レーザ光の出力の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、200W以下が好ましく、150W以下がより好ましく、100W以下が更に好ましい。前記レーザ光の出力が、200Wを超えると、レーザマーカーの大型化を招くことがある。
【0026】
前記画像記録工程において照射されるレーザ光の走査速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、300mm/s以上が好ましく、500mm/s以上がより好ましく、700mm/s以上が更に好ましい。前記走査速度が、300mm/s未満であると、画像記録に時間がかかる。また、前記レーザ光の走査速度の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、15,000mm/s以下が好ましく、10,000mm/s以下がより好ましく、8,000mm/s以下が更に好ましい。前記レーザ光の走査速度が、15,000mm/sを超えると、均一な画像が記録し難くなる。
【0027】
前記画像記録工程において照射されるレーザ光のスポット径としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、0.02mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましく、0.15mm以上が更に好ましい。また、前記レーザ光のスポット径の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3.0mm以下が好ましく、2.5mm以下がより好ましく、2.0mm以下が更に好ましい。
前記スポット径が小さいと、画像の線幅が細くなり、視認性が低下する。また、スポット径が大きくなると、画像の線幅が太くなり、隣接する線が重なり、小さいサイズの画像記録が不可能となる。レーザ光源としては、YAGレーザ光、ファイバレーザ光、及び半導体レーザ光の少なくともいずれかであることが好ましい。
【0028】
<重なり部非重複処理工程>
前記重なり部非重複照射工程は、各文字の重なり部に重複してレーザ光が照射しないように処理する工程である。
【0029】
前記重なり部非重複処理としては、具体的には、各文字を構成する複数の描画線が重なる重なり部を有する画像を記録する際に、該重なり部における各描画線が非連続に記録される。
前記重なり部における各描画線が連続的に記録されると、例えば、重なり部が屈曲している場合にはモーターの作動によるミラー角度の変更を瞬間的に行うことが難しいので、レーザ光の走査速度が低下し、該屈曲部(重なり部)に過剰なエネルギーが付与され、画像記録及び画像消去の繰返しにより熱可逆記録媒体に局所的なダメージが生じることがある。
【0030】
なお、前記重なり部において各描画線が連続に記録される態様としては、前記重なり部において各描画線の終点と始点とが重なるように記録する態様、などが挙げられる。
ここで、前記非連続な記録とは、複数の描画線をレーザ光照射により記録中に、一旦レーザ光の照射を中断し、複数の描画線を別々に記録することを意味し、具体的には、(1)前記重なり部において各描画線の終点と終点が重なるように記録する態様、(2)前記重なり部において各描画線の始点と始点とが重なるように記録する態様、(3)前記重なり部において各描画線の始点と、始点及び終点以外の位置(例えば描画線の中間点)とが重なるように記録する態様、(4)前記重なり部において各描画線の終点と、始点及び終点以外の位置(例えば描画線の中間点)とが重なるように記録する態様、又はこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0031】
<画像処理装置>
前記画像処理装置は、本発明の前記画像処理方法に用いられ、レーザ光出射手段と、該レーザ光をレーザ光照射面に走査させるレーザ光走査手段とを少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材を有してなる。また、本発明においては画像を記録する記録媒体において、高効率でレーザ光を吸収するように、出射するレーザ光の波長を選択する必要がある。例えば記録媒体はレーザ光を高効率で吸収し発熱する役割を有する光熱変換材料を少なくとも含有してなる。よって、含有させる光熱変換材料が他材料に比べて最も高効率でレーザ光を吸収するように、出射するレーザ光の波長を選択することが好ましい。
【0032】
−レーザ光出射手段−
前記レーザ光出射手段から出射されるレーザ光の波長としては、700nm以上が好ましく、720nm以上がより好ましく、750nm以上が更に好ましい。前記レーザ光の波長の上限としては、目的に応じて適宜選択することができるが、1,500nm以下が好ましく、1,300mm以下がより好ましく、1,200nm以下が更に好ましい。
レーザ光の波長を700nmより短い波長にすると、可視光領域では記録媒体の画像記録時のコントラストが低下したり、記録媒体が着色してしまうという問題がある。更に短い波長の紫外光領域では、記録媒体の劣化が起こりやすくなるという問題がある。また記録媒体に添加する光熱変換材料には、繰返し画像処理に対する耐久性を確保するために高い分解温度を必要とし、光熱変換材料に有機色素を用いる場合、分解温度が高く吸収波長が長い光熱変換材料を得るのは難しい。これよりレーザ光の波長としては1,500nm以下が好ましい。
【0033】
前記レーザ光出射手段としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えばYAGレーザ、ファイバレーザ、半導体レーザ(LD)などが挙げられる。これらの中でも波長選択性が広いことで光熱変換材料の選択肢が増え、レーザ装置としては、レーザ光源自体が小さく、装置の小型化、更には低価格化が可能であるという点から、半導体レーザが特に好ましい。
【0034】
前記画像処理装置は、前記レーザ光出射手段を少なくとも有している以外、その基本構成としては、通常レーザマーカーと呼ばれるものと同様であり、発振器ユニット、電源制御ユニット、及びプログラムユニットを少なくとも備えている。
【0035】
ここで、図2に、本発明で用いられる画像処理装置の一例について、レーザ照射ユニットを中心に示す。
発振器ユニットは、レーザ発振器1、ビームエキスパンダ2、スキャンニングユニット5などで構成されている。
前記レーザ発振器1は、光強度が強く、指向性の高いレーザ光を得るために必要なものであり、例えば、レーザ媒質の両側にミラーを配置し、該レーザ媒質をポンピング(エネルギー供給)し、励起状態の原子数を増やし反転分布を形成させて誘導放出を起こさせる。そして、光軸方向の光のみが選択的に増幅されることにより、光の指向性が高まり出力ミラーからレーザ光が放出される。
前記スキャンニングユニット5は、ガルバノメータ4と、該ガルバノメータ4に取り付けられたミラー4Aとで構成されている。そして、前記レーザ発振器1から出力されたレーザ光を、前記ガルバノメータ4に取り付けられたX軸方向とY軸方向との2枚のミラー4Aで高速回転走査することにより、熱可逆記録媒体7上に、画像の記録又は消去を行うようになっている。
前記電源制御ユニットは、レーザ媒質を励起する光源の駆動電源、ガルバノメータの駆動電源、ペルチェ素子などの冷却用電源、画像処理装置全体の制御を司る制御部等などで構成されている。
前記プログラムユニットは、タッチパネル入力やキーボード入力により、画像の記録又は消去のために、レーザ光の強さ、レーザ走査の速度等の条件入力や、記録する文字等の作製及び編集を行うユニットである。
なお、前記レーザ照射ユニット、即ち、画像記録/消去用ヘッド部分は、画像処理装置に搭載されているが、該画像処理装置には、このほか、前記熱可逆記録媒体の搬送部及びその制御部、モニタ部(タッチパネル)等を有している。
【0036】
−画像消去工程−
画像記録を記録媒体としての熱可逆記録媒体に対して行う場合、画像が記録された熱可逆記録媒体を加熱することにより該熱可逆記録媒体に記録された画像を消去する画像消去工程を設けてもよい。
前記熱可逆記録媒体を加熱する方法としては、従来既知の加熱方法(例えば、レーザ光照射、熱風、温水、赤外線ヒータ等の非接触加熱方法、サーマルヘッド、ホットスタンプ、ヒートブロック、ヒートローラー等の接触加熱方法)を挙げられるが、物流ラインを想定した場合、熱可逆記録媒体にレーザ光を照射して加熱する方法が非接触の状態で画像の消去を行うことができるため特に好ましい。
【0037】
前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより画像を消去する画像消去工程において照射される前記レーザ光の出力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5W以上が好ましく、7W以上がより好ましく、10W以上が更に好ましい。前記レーザ光の出力が、5W未満であると、画像消去に時間がかかり、画像消去時間を短くしようとすると出力が不足して画像の消去不良が発生する。また、前記レーザ光の出力の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、200W以下が好ましく、150W以下がより好ましく、100W以下が更に好ましい。前記レーザ光の出力が、200Wを超えると、レーザ装置の大型化を招くおそれがある。
【0038】
前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより画像を消去する画像消去工程において照射されるレーザ光の走査速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100mm/s以上が好ましく、200mm/s以上がより好ましく、300mm/s以上が更に好ましい。前記走査速度が、100mm/s未満であると、画像消去に時間がかかる。また、前記レーザ光の走査速度の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20,000mm/s以下が好ましく、15,000mm/s以下がより好ましく、10,000mm/s以下が更に好ましい。前記走査速度が、20,000mm/sを超えると、均一な画像消去がし難くなることがある。
レーザ光源としては、YAGレーザ光、ファイバレーザ光、及び半導体レーザ光の少なくともいずれかであることが好ましい。
【0039】
前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより画像を消去する画像消去工程において照射されるレーザ光のスポット径としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、0.5mm以上が好ましく、1.0mm以上がより好ましく、2.0mm以上が更に好ましい。また、前記レーザ光のスポット径の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、14.0mm以下が好ましく、10.0mm以下がより好ましく、7.0mm以下が更に好ましい。
前記スポット径が小さいと、画像消去に時間がかかる。また、スポット径が大きくなると、出力が不足して画像の消去不良が発生することがある。
【0040】
<記録媒体>
前記記録媒体としては、1回記録を行う記録媒体、繰り返し画像記録及び画像消去を行う熱可逆記録媒体のいずれにも好適に用いることができる。
前記1回記録の記録媒体としては、感熱記録媒体(感熱紙)、ポリプロピレン等のプラスチック、半導体、金属等の対象物に対して、レーザ光を照射して、レーザ光を吸収することで加熱して、変質、変形、除去することで印字が可能である。感熱紙、プラスチック、半導体への文字密度の高い文字への印字では、前記熱可逆記録媒体と同様に熱拡散による蓄熱で文字潰れが発生して視認性が低下するので、本発明による制御で文字の視認性を改善できる。
本発明で用いられる感熱記録媒体は、支持体と、該支持体の一方の面上に、感熱記録層を有し、好ましくは光熱変換層、酸素遮断層、紫外線吸収層、中間層、保護層、更に必要に応じてアンダーコート層、バック層、接着層、粘着層、着色層、空気層、光反射層等のその他の層を有してなる。これら各層は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
【0041】
<<熱可逆記録媒体>>
本発明で用いられる熱可逆記録媒体は、支持体と、該支持体上に、第1の熱可逆記録層と、光熱変換層と、第2の熱可逆記録層とをこの順に有してなり、更に必要に応じて適宜選択した、第1の酸素バリア層、第2の酸素バリア層、紫外線吸収層、バック層、保護層、中間層、アンダーコート層、接着層、粘着層、着色層、空気層、光反射層等のその他の層を有してなる。これら各層は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。ただし、前記光熱変換層の上に設ける層においては、照射する特定波長のレーザ光のエネルギーロスを少なくするために該特定波長において吸収の少ない材料を用いて層を構成させることが好ましい。
【0042】
ここで、前記熱可逆記録媒体100の層構成としては、図3Aに示すように、支持体101と、該支持体上に、第1の熱可逆記録層102と、光熱変換層103と、第2の熱可逆記録層104とをこの順に有する態様がある。
また、図3Bに示すように、支持体101と、該支持体上に、第1の酸素バリア層105、第1の熱可逆記録層102と、光熱変換層103と、第2の熱可逆記録層104と、第2の酸素バリア層106とをこの順に有する態様がある。
また、図3Cに示すように、支持体101と、該支持体上に、第1の酸素バリア層105、第1の熱可逆記録層102と、光熱変換層103と、第2の熱可逆記録層104と、紫外線吸収層107と、第2の酸素バリア層106とをこの順に有してなり、支持体101の熱可逆記録層等を有していない側の面にバック層108を有する態様がある。
なお、図示を省略しているが、図3Aの第2の熱可逆記録層104上、図3Bの第2の酸素バリア層106上、図3Cの第2の酸素バリア層106上の最表層に保護層を形成してもよい。
【0043】
−支持体−
前記支持体としては、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば、平板状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては、前記熱可逆記録媒体の大きさ等に応じて適宜選択することができる。
【0044】
前記支持体の材料としては、例えば、無機材料、有機材料などが挙げられる。
前記無機材料としては、例えば、ガラス、石英、シリコン、酸化シリコン、酸化アルミニウム、SiO2、金属などが挙げられる。
前記有機材料としては、例えば、紙、三酢酸セルロース等のセルロース誘導体、合成紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等のフィルムなどが挙げられる。
前記無機材料及び前記有機材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、有機材料が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0045】
前記支持体には、塗布層の接着性を向上させることを目的として、コロナ放電処理、酸化反応処理(クロム酸等)、エッチング処理、易接着処理、帯電防止処理、などを行うことにより表面改質するのが好ましい。
前記支持体に、酸化チタン等の白色顔料などを添加することにより、白色にするのが好ましい。
前記支持体の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm〜2,000μmが好ましく、50μm〜1,000μmがより好ましい。
【0046】
−第1及び第2の熱可逆記録層−
前記第1及び第2の熱可逆記録層(以下、「熱可逆記録層」と称することがある)は、いずれも電子供与性呈色性化合物であるロイコ染料、電子受容性化合物である顕色剤を含み、熱により色調が可逆的に変化する熱可逆記録層であり、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含んでなる。
【0047】
前記熱により色調が可逆的に変化する電子供与性呈色性化合物であるロイコ染料、及び電子受容性化合物である可逆性顕色剤は、温度変化により目に見える変化を可逆的に生じる現象を発現可能な材料であり、加熱温度及び加熱後の冷却速度の違いにより、相対的に発色した状態と消色した状態とに変化可能である。
【0048】
−ロイコ染料−
前記ロイコ染料は、それ自体無色又は淡色の染料前駆体である。該ロイコ染料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、トリフェニルメタンフタリド系、トリアリルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、チオフェルオラン系、キサンテン系、インドフタリル系、スピロピラン系、アザフタリド系、クロメノピラゾール系、メチン系、ローダミンアニリノラクタム系、ローダミンラクタム系、キナゾリン系、ジアザキサンテン系、ビスラクトン系等のロイコ化合物が好適に挙げられる。これらの中でも、発消色特性、色彩、保存性等に優れる点で、フルオラン系又はフタリド系のロイコ染料が特に好ましい。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、異なる色調に発色する層を積層することにより、マルチカラー、フルカラーに対応させることもできる。
【0049】
−可逆性顕色剤−
前記可逆性顕色剤としては、熱を因子として発消色を可逆的に行うことができるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、(1)前記ロイコ染料を発色させる顕色能を有する構造(例えば、フェノール性水酸基、カルボン酸基、リン酸基等)、及び、(2)分子間の凝集力を制御する構造(例えば、長鎖炭化水素基が連結した構造)、から選択される構造を分子内に1つ以上有する化合物が好適に挙げられる。なお、連結部分にはヘテロ原子を含む2価以上の連結基を介していてもよく、また、長鎖炭化水素基中にも、同様の連結基及び芳香族基の少なくともいずれかが含まれていてもよい。
前記(1)ロイコ染料を発色させる顕色能を有する構造としては、フェノールが特に好ましい。
前記(2)分子間の凝集力を制御する構造としては、炭素数8以上の長鎖炭化水素基が好ましく、該炭素数は11以上がより好ましく、また炭素数の上限としては、40以下が好ましく、30以下がより好ましい。
【0050】
前記可逆性顕色剤の中でも、下記一般式(1)で表されるフェノール化合物が好ましく、下記一般式(2)で表されるフェノール化合物がより好ましい。
【化1】
【化2】
前記一般式(1)及び(2)において、R1は、単結合又は炭素数1〜24の脂肪族炭化水素基を表す。R2は、置換基を有していてもよい炭素数2以上の脂肪族炭化水素基を表し、該炭素数としては、5以上が好ましく、10以上がより好ましい。R3は、炭素数1〜35の脂肪族炭化水素基を表し、該炭素数としては、6〜35が好ましく、8〜35がより好ましい。これらの脂肪族炭化水素基は、1種単独で有していてもよいし、2種以上を併用して有していてもよい。
前記R1、前記R2、及び前記R3の炭素数の和としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下限としては、8以上が好ましく、11以上がより好ましく、上限としては、40以下が好ましく、35以下がより好ましい。
前記炭素数の和が、8未満であると、発色の安定性や消色性が低下することがある。
前記脂肪族炭化水素基は、直鎖であってもよいし、分枝鎖であってもよく、不飽和結合を有していてもよいが、直鎖であるのが好ましい。また、前記炭化水素基に結合する置換基としては、例えば、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基等が挙げられる。
X及びYは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよく、N原子又はO原子を含む2価の基を表し、具体例としては、酸素原子、アミド基、尿素基、ジアシルヒドラジン基、シュウ酸ジアミド基、アシル尿素基等が挙げられる。これらの中でも、アミド基、尿素基が好ましい。
nは、0〜1の整数を示す。
【0051】
前記電子受容性化合物(顕色剤)は、消色促進剤として分子中に−NHCO−基、−OCONH−基を少なくとも一つ以上有する化合物を併用することにより、消色状態を形成する過程において消色促進剤と顕色剤の間に分子間相互作用が誘起され、発消色特性が向上するので好ましい。
【0052】
前記消色促進剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記熱可逆記録層は、バインダー樹脂を含み、更に必要に応じて熱可逆記録層の塗布特性や発色消色特性を改善し、制御するための各種添加剤を含有することができる。これらの添加剤としては、例えば、界面活性剤、導電剤、充填剤、酸化防止剤、光安定化剤、発色安定化剤、消色促進剤などが挙げられる。
【0053】
−バインダー樹脂−
前記バインダー樹脂としては、支持体上に熱可逆記録層を結着することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、従来から公知の樹脂の中から1種又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、繰り返し時の耐久性を向上させるため、熱、紫外線、電子線などによって硬化可能な樹脂が好ましく、イソシアネート系化合物などを架橋剤として用いた熱硬化性樹脂が特に好ましい。
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、水酸基やカルボキシル基等の架橋剤と反応する基を持つ樹脂、又は水酸基やカルボキシル基等を持つモノマーとそれ以外のモノマーを共重合した樹脂などが挙げられる。このような熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂などが挙げられる。これらの中でも、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂が特に好ましい。
【0054】
前記熱可逆記録層中における前記発色剤とバインダー樹脂との混合割合(質量比)は、発色剤1に対して0.1〜10が好ましい。前記バインダー樹脂が少なすぎると、前記熱可逆記録層の熱強度が不足することがあり、一方、前記バインダー樹脂が多すぎると、発色濃度が低下して問題となることがある。
【0055】
前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソシアネート類、アミノ樹脂、フェノール樹脂、アミン類、エポキシ化合物、等が挙げられる。これらの中でも、イソシアネート類が好ましく、特に好ましくはイソシアネート基を複数持つポリイソシアネート化合物である。
【0056】
前記架橋剤のバインダー樹脂に対する添加量は、バインダー樹脂中に含まれる活性基の数に対する架橋剤の官能基の比は0.01〜2が好ましい。これ以下では熱強度が不足してしまい、また、これ以上添加すると発色及び消色特性に悪影響を及ぼす。
更に、架橋促進剤としてこの種の反応に用いられる触媒を用いてもよい。
前記熱架橋した場合の熱硬化性樹脂のゲル分率は、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、70%以上が更に好ましい。前記ゲル分率が30%未満であると、架橋状態が十分でなく耐久性に劣ることがある。
【0057】
前記バインダー樹脂が架橋状態にあるのか非架橋状態にあるのかを区別する方法としては、例えば、塗膜を溶解性の高い溶媒中に浸すことによって区別することができる。即ち、非架橋状態にあるバインダー樹脂は、溶媒中に該樹脂が溶けだし溶質中には残らなくなる。
【0058】
前記熱可逆記録層におけるその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、画像の記録を容易にする観点から、界面活性剤、可塑剤などが挙げられる。
【0059】
前記熱可逆記録層用塗布液に用いられる溶媒、塗布液の分散装置、塗工方法、乾燥・硬化方法等は公知の方法を用いることができる。
なお、前記熱可逆記録層用塗布液は前記分散装置を用いて各材料を溶媒中に分散してもよいし、各々単独で溶媒中に分散して混ぜ合わせてもよい。更に加熱溶解して急冷又は徐冷によって析出させてもよい。
【0060】
前記熱可逆記録層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(1)前記樹脂、及び前記ロイコ染料及び可逆性顕色剤を溶媒中に溶解乃至分散させた熱可逆記録層用塗布液を支持体上に塗布し、該溶媒を蒸発させてシート状等にするのと同時に又はその後に架橋する方法、(2)前記樹脂のみを溶解した溶媒に前記ロイコ染料及び可逆性顕色剤を分散させた熱可逆記録層用塗布液を支持体上に塗布し、該溶媒を蒸発させてシート状等にすると同時に又はその後に架橋する方法、(3)溶媒を用いず、前記樹脂と前記ロイコ染料及び可逆性顕色剤とを加熱溶融して互いに混合し、この溶融混合物をシート状等に成形して冷却した後に架橋する方法、などが好適に挙げられる。なお、これらにおいて、前記支持体を用いることなく、シート状の熱可逆記録媒体として成形することもできる。
【0061】
前記(1)又は(2)において用いる溶剤としては、前記樹脂及び前記ロイコ染料及び可逆性顕色剤の種類等によって異なり一概には規定することはできないが、例えば、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、クロロホルム、四塩化炭素、エタノール、トルエン、ベンゼンなどが挙げられる。
なお、前記可逆性顕色剤は、前記熱可逆記録層中では粒子状に分散して存在している。
前記熱可逆記録層用塗布液には、コーティング材料用としての高度な性能を発現させる目的で、各種顔料、消泡剤、顔料、分散剤、スリップ剤、防腐剤、架橋剤、可塑剤等を添加してもよい。
【0062】
前記熱可逆記録層の塗工方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ロール状で連続して、又はシート状に裁断した支持体を搬送し、該支持体上に、例えば、ブレード塗工、ワイヤーバー塗工、スプレー塗工、エアナイフ塗工、ビード塗工、カーテン塗工、グラビア塗工、キス塗工、リバースロール塗工、ディップ塗工、ダイ塗工等の公知の方法で塗布することができる。
前記熱可逆記録層用塗布液の乾燥条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、室温〜140℃の温度で、10秒間〜10分間程度、などが挙げられる。
【0063】
前記熱可逆記録層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1μm〜20μmが好ましく、3μm〜15μmがより好ましい。前記熱可逆記録層の厚みが薄すぎると発色濃度が低くなるため画像のコントラストが低くなることがあり、一方、厚すぎると層内での熱分布が大きくなり、発色温度に達せず発色しない部分が発生し、目的とする発色濃度を得ることができなくなることがある。
【0064】
−光熱変換層−
前記光熱変換層は、前記レーザ光を高効率で吸収し発熱する役割を有する光熱変換材料を少なくとも含有してなる。また熱可逆記録層と光熱変換層の間に両層が相互作用を抑制する目的でバリア層を形成することがあり、材料として熱伝導性のよい層が好ましい。前記熱可逆記録層と光熱変換層の間に挟む層は、目的に応じて適宜選択することができ、これらに限定されるものではない。
【0065】
前記光熱変換材料は、無機系材料と有機系材料とに大別できる。
前記無機系材料としては、例えば、カーボンブラックやGe、Bi、In、Te、Se、Cr、La、W等の金属もしくは半金属又はそれを含む合金が挙げられ、これらは、真空蒸着法や粒子状の材料を樹脂等で接着して層状に形成される。
前記有機系材料としては、吸収すべき光波長に応じて各種の染料を適宜用いることができるが、光源として半導体レーザを用いる場合には、700nm〜1,500nmの波長範囲内に吸収ピークを有する近赤外吸収色素が用いられる。具体的には、シアニン色素、キノン系色素、インドナフトールのキノリン誘導体、フェニレンジアミン系ニッケル錯体、フタロシアニン系化合物などが挙げられる。繰返し画像処理を行うためには、耐熱性に優れた光熱変換材料を選択するのが好ましく、この点からフタロシアニン系化合物が特に好ましい。
前記近赤外吸収色素は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0066】
前記光熱変換層を設ける場合には、通常、前記光熱変換材料は、樹脂と併用して用いられる。該光熱変換層に用いられる樹脂としては、特に制限はなく、前記無機系材料及び有機系材料を保持できるものであれば、公知のものの中から適宜選択することができるが、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが好ましく、前記熱可逆記録層で用いられたバインダー樹脂と同様なものを好適に用いることができる。これらの中でも、繰り返し時の耐久性を向上させるため、熱、紫外線、電子線などによって硬化可能な樹脂が好ましく用いられ、特にイソシアネート系化合物などを架橋剤として用いた熱架橋樹脂が好ましい。前記バインダー樹脂において、その水酸基価は50mgKOH/g〜400mgKOH/gが好ましい。
前記光熱変換層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1μm〜20μmが好ましい。
【0067】
−第1及び第2の酸素バリア層−
第1及び第2の酸素バリア層は、熱可逆記録層に酸素が進入することを防ぐことにより、前記第1及び第2の熱可逆記録層中のロイコ染料の光劣化を防止する目的で、第1及び第2の熱可逆記録層の上下に酸素バリア層を設けることが好ましい。即ち支持体と第1の熱可逆記録層との間に第1の酸素バリア層を設け、第2の熱可逆記録層上に第2の酸素バリア層を設けることが好ましい。
【0068】
前記第1及び第2の酸素バリア層には、可視部の透過率が大きく、酸素透過度が低い樹脂又は高分子フィルム等が挙げられる。前記酸素バリア層は、その用途、酸素透過性、透明性、塗工のしやすさ、接着性等によって選択される。
前記酸素バリア層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアクリル酸アルキルエステル、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリメタクリロニトリル、ポリアルキルビニルエステル、ポリアルキルビニルエーテル、ポリフッ素化ビニル、ポリスチレン、酢酸ビニル共重合体、酢酸セルロース、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、アセトニトリル共重合体、塩化ビニリデン共重合体、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン−6及びポリアセタール等の樹脂、又はポリエチレンテレフタレートやナイロン等の高分子フィルム上に無機酸化物を蒸着したシリカ蒸着フィルム、アルミナ蒸着フィルム、シリカ/アルミナ蒸着フィルムなどが挙げられる。これらの中でも、高分子フィルム上に無機酸化物を蒸着したフィルムが特に好ましい。
【0069】
前記酸素バリア層の酸素透過度は、20ml/m2/day/MPa以下が好ましく、5ml/m2/day/MPa以下がより好ましく、1ml/m2/day/MPa以下が更に好ましい。前記酸素透過度が、20ml/m2/day/MPaを超えると、前記第1及び第2の熱可逆記録層中のロイコ染料の光劣化を抑制できないことがある。
前記酸素透過度は、例えばJIS K7126 B法に準じた測定法により測定することができる。
【0070】
前記酸素バリア層は前記熱可逆記録層の下側又は支持体の裏面など、前記酸素バリア層で熱可逆記録層を挟み込むように設けることもできる。これにより、熱可逆記録層への酸素侵入をより効果的に防ぐことができ、ロイコ染料の光劣化をより少なくすることができる。
【0071】
前記第1及び第2の酸素バリア層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、溶融押出し法、コーティング法、ラミネート法、などが挙げられる。
前記第1及び第2の酸素バリア層の厚みは、樹脂又は高分子フィルムの酸素透過性によって異なるが、0.1μm〜100μmが好ましい。これより薄いと酸素バリアが不完全であり、厚いと透明性が低下するので好ましくない。
前記酸素バリア層と下層の間には、接着層を設けてもよい。前記接着層の形成方法は、特に制限なく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、通常のコーティング法、ラミネート法などが挙げられる。前記接着層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm〜5μmが好ましい。前記接着層は、架橋剤により硬化してもよい。前記架橋剤としては、前記熱可逆記録層で用いたものと同様のものを用いることができる。
【0072】
−保護層−
前記熱可逆記録媒体には、前記熱可逆記録層を保護する目的で該熱可逆記録層上に保護層を設けることが好ましい。前記保護層は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1層以上に形成してもよく、露出している最表面に設けることが好ましい。
【0073】
前記保護層は、少なくともバインダー樹脂を含有し、更に必要に応じて、フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線(UV)硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などが挙げられる。これらの中でも、紫外線(UV)硬化性樹脂、熱硬化性樹脂が特に好ましい。
【0074】
前記UV硬化性樹脂は、硬化後非常に硬い膜を形成することができ、表面の物理的な接触によるダメージやレーザ加熱による媒体変形を抑止することができるため繰り返し耐久性に優れた熱可逆記録媒体が得られる。
また、前記熱硬化性樹脂は、前記UV硬化性樹脂にはやや劣るが同様に表面を硬くすることができ、繰り返し耐久性に優れる。
【0075】
前記UV硬化性樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ビニル系、不飽和ポリエステル系のオリゴマーや各種単官能、多官能のアクリレート、メタクリレート、ビニルエステル、エチレン誘導体、アリル化合物等のモノマーが挙げられる。これらの中でも、4官能以上の多官能性のモノマー又はオリゴマーが特に好ましい。これらのモノマー又はオリゴマーを2種類以上混合することで樹脂膜の硬さ、収縮度、柔軟性、塗膜強度等を適宜調節することができる。
また、前記モノマー又はオリゴマーを、紫外線を用いて硬化させるためには、光重合開始剤、光重合促進剤を用いる必要がある。
前記光重合開始剤又は光重合促進剤の添加量は、前記保護層の樹脂成分の全質量に対し0.1質量%〜20質量%が好ましく、1質量%〜10質量%がより好ましい。
【0076】
前記紫外線硬化樹脂を硬化させるための紫外線照射は、公知の紫外線照射装置を用いて行うことができ、該装置としては、例えば、光源、灯具、電源、冷却装置、搬送装置等を備えたものが挙げられる。
前記光源としては、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、カリウムランプ、水銀キセノンランプ、フラッシュランプなどが挙げられる。該光源の波長は、前記熱可逆記録媒体用組成物に添加されている光重合開始剤及び光重合促進剤の紫外線吸収波長に応じて適宜選択することができる。
前記紫外線照射の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記樹脂を架橋するために必要な照射エネルギーに応じてランプ出力、搬送速度等を決めればよい。
【0077】
また、搬送性を良好にするため、重合性基を持つシリコーン、シリコーングラフトをした高分子;ワックス、ステアリン酸亜鉛等の離型剤;シリコーンオイル等の滑剤を添加することができる。これらの添加量としては、前記保護層の樹脂成分全質量に対して0.01質量%〜50質量%が好ましく、0.1質量%〜40質量%がより好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、静電気対策として導電性フィラーを用いることが好ましく、針状導電性フィラーを用いることが更に好ましい。
【0078】
前記無機顔料の平均粒径としては、例えば、0.01μm〜10.0μmが好ましく、0.05μm〜8.0μmがより好ましい。
前記無機顔料の添加量としては、前記バインダー樹脂1質量部に対し、0.001質量部〜2質量部が好ましく、0.005質量部〜1質量部がより好ましい。
なお、前記保護層には、添加剤として従来公知の界面活性剤、レベリング剤、帯電防止剤等を含有していてもよい。
【0079】
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、前記熱可逆記録層で用いられたバインダー樹脂と同様なものを好適に用いることができる。
前記熱硬化性樹脂は、架橋されていることが好ましい。該熱硬化性樹脂としては、例えば水酸基、アミノ基、カルボキシル基等のような、硬化剤と反応する基を有しているものを用いることが好ましく、特に水酸基を有しているポリマーが好ましい。前記保護層の強度を向上させるためには該熱硬化性樹脂の水酸基価が10mgKOH/g以上のポリマーを用いると十分な塗膜強度が得られ、より好ましくは30mgKOH/g以上であり、更に好ましくは40mgKOH/g以上である。十分な塗膜強度を持たせることで繰り返し画像記録及び画像消去を行っても熱可逆記録媒体の劣化が抑えることができる。
【0080】
前記硬化剤としては、例えば前記熱可逆記録層で用いられた硬化剤と同様なものを好適に用いることができる。
前記保護層の塗布液に用いられる溶媒、塗布液の分散装置、保護層の塗工方法、乾燥方法等は前記感熱記録層で用いられた公知の方法を用いることができる。紫外線硬化樹脂を用いた場合には塗布して乾燥を行った紫外線照射による硬化工程が必要となるが、紫外線照射装置、光源、照射条件については前記の通りである。
前記保護層の厚みは、0.1μm〜20μmが好ましく、0.5μm〜10μmがより好ましく、1.5μm〜6μmが更に好ましい。前記厚みが、0.1μm未満であると、熱可逆記録媒体の保護層としての機能を十分に果たすことができず、熱による繰り返し履歴によりすぐに劣化し、繰り返し使用することができなくなってしまうことがあり、20μmを超えると、保護層の下層にある感熱記録層に十分な熱を伝えることができなくなり、熱による画像記録と消去が十分にできなくなってしまうことがある。
【0081】
−紫外線吸収層−
本発明においては、前記熱可逆記録層中のロイコ染料の紫外線による着色及び光劣化による消え残りを防止する目的で、支持体と反対側に位置する熱可逆記録層の支持体とは反対側に紫外線吸収層を設けることが好ましく、これによって前記記録媒体の耐光性が改善できる。前記紫外線吸収層は390nm以下の紫外線を吸収するように、紫外線吸収層の厚みを適宜選択することが好ましい。
【0082】
前記紫外線吸収層は、少なくともバインダー樹脂と紫外線吸収剤を含有し、更に必要に応じて、フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
【0083】
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記熱可逆記録層のバインダー樹脂や熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂成分を用いることができる。前記樹脂成分としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。
【0084】
前記紫外線吸収剤としては、有機系及び無機系化合物のいずれでも用いることができる。
また、紫外線吸収構造を持つポリマー(以下、「紫外線吸収ポリマー」と称することもある)を用いることが好ましい。
ここで、前記紫外線吸収構造を持つポリマーとは、紫外線吸収構造(例えば、紫外線吸収性基)を分子中に有するポリマーを意味する。該紫外線吸収構造としては、例えば、サリシレート構造、シアノアクリレート構造、ベンゾトリアゾール構造、ベンゾフェノン構造などが挙げられ、これらの中でも、ロイコ染料の光劣化の原因である340nm〜400nmの紫外線を吸収することからベンゾトリアゾール構造、ベンゾフェノン構造が特に好ましい。
前記紫外線吸収ポリマーは架橋されていることが好ましい。前記紫外線吸収ポリマーとしては、例えば水酸基、アミノ基、カルボキシル基等のような、硬化剤と反応する基を有しているものを用いることが好ましく、水酸基を有しているポリマーが特に好ましい。前記紫外線吸収層の強度を向上させるためには該ポリマーの水酸基価が10mgKOH/g以上のポリマーを用いると十分な塗膜強度が得られ、より好ましくは30mgKOH/g以上であり、更に好ましくは40mgKOH/g以上である。十分な塗膜強度を持たせることで繰り返し消去印字を行っても記録媒体の劣化が抑えることができる。
【0085】
前記紫外線吸収層の厚みは、0.1μm〜30μmが好ましく、0.5μm〜20μmがより好ましい。前記紫外線吸収層の塗布液に用いられる溶媒、塗布液の分散装置、紫外線吸収層の塗工方法、紫外線吸収層の乾燥・硬化方法等は、前記熱可逆記録層で用いられた公知の方法を用いることができる。
【0086】
−中間層−
本発明においては、前記熱可逆記録層と前記保護層の接着性向上、保護層の塗布による熱可逆記録層の変質防止、保護層中の添加剤の熱可逆記録層への移行を防止する目的で、両者の間に中間層を設けることが好ましく、これによって発色画像の保存性が改善できる。
【0087】
前記中間層は、少なくともバインダー樹脂を含有し、更に必要に応じて、フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
【0088】
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記熱可逆記録層のバインダー樹脂や熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂成分を用いることができる。該樹脂成分としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。
【0089】
前記中間層には、紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。前記紫外線吸収剤としては、有機系及び無機系化合物のいずれでも用いることができる。
また、紫外線吸収ポリマーを用いてもよく、架橋剤により硬化してもよい。これらは前記保護層で用いられたものと同様のものを好適に用いることができる。
【0090】
前記中間層の厚みは、0.1μm〜20μmが好ましく、0.5μm〜5μmがより好ましい。前記中間層の塗布液に用いられる溶媒、塗布液の分散装置、中間層の塗工方法、中間層の乾燥・硬化方法等は、前記熱可逆記録層で用いられた公知の方法を用いることができる。
【0091】
−アンダー層−
本発明においては、印加した熱を有効に利用し高感度化するため、又は支持体と熱可逆記録層の接着性の改善や支持体への記録層材料の浸透防止を目的として、前記熱可逆記録層と前記支持体の間にアンダー層を設けてもよい。
【0092】
前記アンダー層は、少なくとも中空粒子を含有してなり、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0093】
前記中空粒子としては、中空部が粒子内に一つ存在する単一中空粒子、中空部が粒子内に多数存在する多中空粒子、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0094】
前記中空粒子の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、熱可塑性樹脂などが好適に挙げられる。前記中空粒子は、適宜製造したものであってもよいし、市販品であってもよい。該市販品としては、例えば、マイクロスフェアーR−300(松本油脂株式会社製);ローペイクHP1055、ローペイクHP433J(いずれも、日本ゼオン株式会社製);SX866(JSR株式会社製)などが挙げられる。
前記中空粒子の前記アンダー層における添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば10質量%〜80質量%が好ましい。
【0095】
前記バインダー樹脂としては、前記熱可逆記録層、前記紫外線吸収層、又は前記保護層と同様の樹脂を用いることができる。
前記アンダー層には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク等の無機フィラー及び各種有機フィラーの少なくともいずれかを含有させることができる。
なお、前記アンダー層には、その他、滑剤、界面活性剤、分散剤などを含有させることもできる。
【0096】
前記アンダー層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm〜50μmが好ましく、2μm〜30μmがより好ましく、12μm〜24μmが更に好ましい。
【0097】
−バック層−
本発明においては、前記熱可逆記録媒体のカールや帯電防止、搬送性の向上のために支持体の熱可逆記録層を設ける面と反対側にバック層を設けてもよい。
前記バック層は、少なくともバインダー樹脂を含有し、更に必要に応じて、フィラー、導電性フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
【0098】
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線(UV)硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、等が挙げられ、これらの中でも、紫外線(UV)硬化性樹脂、熱硬化性樹脂が特に好ましい。
【0099】
前記紫外線硬化樹脂、前記熱硬化性樹脂、前記フィラー、前記導電性フィラー、及び前記滑剤については、前記熱可逆記録層、又は前記保護層で用いられたものと同様なものを好適に用いることができる。
【0100】
−接着剤層又は粘着剤層−
本発明においては、支持体の記録層形成面の反対面に接着剤層又は粘着剤層を設けて熱可逆記録ラベルとすることができる。前記接着剤層又は粘着剤層の材料は一般的に使われているものが使用可能である。
【0101】
前記接着剤層又は粘着剤層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、酢ビ系樹脂、酢酸ビニル−アクリル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アクリル酸エステル系共重合体、メタクリル酸エステル系共重合体、天然ゴム、シアノアクリレート系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられる。
【0102】
前記接着剤層又は粘着剤層の材料はホットメルトタイプでもよい。剥離紙を用いてもよいし、無剥離紙タイプでもよい。このように接着剤層又は粘着剤層を設けることにより、記録層の塗布が困難な磁気ストライプ付塩ビカードなどの厚手の基板の全面若しくは一部に貼ることができる。これにより磁気に記憶された情報の一部を表示することができる等、この媒体の利便性が向上する。このような接着剤層又は粘着剤層を設けた熱可逆記録ラベルは、ICカードや光カード等の厚手カードにも適用できる。
【0103】
前記熱可逆記録媒体には、前記支持体と前記熱可逆記録層との間に視認性を向上させる目的で、着色層を設けてもよい。前記着色層は、着色剤及びバインダー樹脂を含有する溶液、又は分散液を対象面に塗布し、乾燥するか、あるいは単に着色シートを貼り合せることにより形成することができる。
【0104】
前記熱可逆記録媒体には、カラー印刷層を設けることもできる。前記カラー印刷層における着色剤としては、従来のフルカラー印刷に使用されるカラーインク中に含まれる各種の染料及び顔料等が挙げられ、前記バインダー樹脂としては各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、又は電子線硬化性樹脂等が挙げられる。該カラー印刷層の厚みとしては、印刷色濃度に対して適宜変更されるため、所望の印刷色濃度に合わせて選択することができる。
【0105】
前記熱可逆記録媒体は、非可逆性記録層を併用しても構わない。この場合、それぞれの記録層の発色色調は同じでも異なってもよい。また、前記熱可逆記録媒体の熱可逆記録層と同一面の一部もしくは全面、又は/もしくは反対面の一部分に、オフセット印刷、グラビア印刷などの印刷、又はインクジェットプリンタ、熱転写プリンタ、昇華型プリンタなどによって任意の絵柄などを施した着色層を設けてもよく、更に着色層上の一部分もしくは全面に硬化性樹脂を主成分とするOPニス層を設けてもよい。前記任意の絵柄としては、文字、模様、図柄、写真、赤外線で検知する情報などが挙げられる。また、単純に構成する各層のいずれかに染料や顔料を添加して着色することもできる。
【0106】
前記熱可逆記録媒体には、セキュリティのためにホログラムを設けることもできる。また、意匠性付与のためにレリーフ状、インタリヨ状に凹凸を付けて人物像や社章、シンボルマーク等のデザインを設けることもできる。
【0107】
前記熱可逆記録媒体は、その用途に応じて所望の形状に加工することができ、例えば、カード状、タグ状、ラベル状、シート状、ロール状などに加工される。また、カード状に加工されたものについてはプリペイドカードやポイントカード、更にはクレジットカードなどへの応用が挙げられる。カードサイズよりも小さなタグ状のサイズでは値札等に利用できる。また、カードサイズよりも大きなタグ状のサイズでは工程管理や出荷指示書、チケット等に使用できる。ラベル状のものは貼り付けることができるために、様々な大きさに加工され、繰り返し使用する台車や容器、箱、コンテナ等に貼り付けて工程管理、物品管理等に使用することができる。また、カードサイズよりも大きなシートサイズでは画像記録する範囲が広くなるため一般文書や工程管理用の指示書等に使用することができる。
【0108】
<画像記録及び画像消去メカニズム>
本発明における前記画像記録及び画像消去メカニズムは、熱により色調が可逆的に変化する態様である。前記態様はロイコ染料及び可逆性顕色剤(以下、「顕色剤」と称することがある)からなり、色調が透明状態と発色状態とに熱により可逆的に変化する。
図5Aに、前記樹脂中に前記ロイコ染料及び前記顕色剤を含んでなる熱可逆記録層を有する熱可逆記録媒体について、その温度−発色濃度変化曲線の一例を示し、図5Bに、透明状態と発色状態とが熱により可逆的に変化する前記熱可逆記録媒体の発消色メカニズムを示す。
まず、初め消色状態(A)にある前記記録層を昇温していくと、溶融温度T1にて、前記ロイコ染料と前記顕色剤とが溶融混合し、発色が生じ溶融発色状態(B)となる。溶融発色状態(B)から急冷すると、発色状態のまま室温に下げることができ、発色状態が安定化されて固定された発色状態(C)となる。この発色状態が得られたかどうかは、溶融状態からの降温速度に依存しており、徐冷では降温の過程で消色が生じ、初期と同じ消色状態(A)、あるいは急冷による発色状態(C)よりも相対的に濃度の低い状態となる。一方、発色状態(C)から再び昇温していくと、発色温度よりも低い温度T2にて消色が生じ(DからE)、この状態から降温すると、初期と同じ消色状態(A)に戻る。
溶融状態から急冷して得た発色状態(C)は、前記ロイコ染料と前記顕色剤とが分子同士で接触反応し得る状態で混合された状態であり、これは固体状態を形成していることが多い。この状態では、前記ロイコ染料と前記顕色剤との溶融混合物(前記発色混合物)が結晶化して発色を保持した状態であり、この構造の形成により発色が安定化していると考えられる。一方、消色状態は、両者が相分離した状態である。この状態は、少なくとも一方の化合物の分子が集合してドメインを形成したり、結晶化した状態であり、凝集あるいは結晶化することにより前記ロイコ染料と前記顕色剤とが分離して安定化した状態であると考えられる。多くの場合、このように、両者が相分離して前記顕色剤が結晶化することにより、より完全な消色が生じる。
なお、図5Aに示す、溶融状態から徐冷による消色、及び発色状態からの昇温による消色はいずれもT2で凝集構造が変化し、相分離や前記顕色剤の結晶化が生じている。
更に図5Aにおいて、前記熱可逆記録層を溶融温度T1以上の温度T3に繰返し昇温すると消去温度に加熱しても消去できない消去不良が発生したりする場合がある。これは、前記顕色剤が熱分解を起こし、凝集あるいは結晶化しにくくなってロイコ染料と分離しにくくなるためと思われる。繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑えるためには、前記熱可逆記録媒体を加熱する際に図5Aの前記溶融温度T1と前記温度T3の差を小さくすることにより、繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑えられる。
【0109】
<熱可逆記録部材 RF−IDとの組み合わせ例>
本発明で用いられる熱可逆記録部材は、前記可逆表示可能な記録層と情報記憶部とを、同一のカードやタグに設け(一体化させ)、該情報記憶部の記憶情報の一部を記録層に表示することにより、特別な装置がなくてもカードやタグを見るだけで情報を確認することができ、利便性に優れる。また、情報記憶部の内容を書き換えた時には熱可逆記録部の表示を書き換えることで、熱可逆記録媒体を繰り返し何度も使用することができる。
【0110】
前記情報記憶部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、磁気記録層、磁気ストライプ、ICメモリー、光メモリー、RF−IDタグなどが好ましく用いられる。工程管理や物品管理等に使用する場合には特にRF−IDタグが好ましく用いられる。なお、前記RF−IDタグはICチップと、該ICチップに接続したアンテナとから構成されている。
前記熱可逆記録部材は、前記可逆表示可能な記録層と情報記憶部とを有し、該情報記憶部の好適なものとしてRF−IDタグが挙げられる。
【0111】
ここで、図4は、RF−IDタグ85の概略図の一例を示す。このRF−IDタグ85はICチップ81と、該ICチップに接続したアンテナ82とから構成されている。前記ICチップ81は記憶部、電源調整部、送信部、受信部の4つに区分されており、それぞれが働きを分担して通信を行っている。通信はRF−IDタグとリーダライタのアンテナが電波により通信してデータのやり取りを行う。具体的には、RF−IDのアンテナがリーダライタからの電波を受信し共振作用により電磁誘導により起電力が発生する電磁誘導方式と放射電磁界により起動する電波方式の2種類がある。共に外部からの電磁界によりRF−IDタグ内のICチップが起動し、チップ内の情報を信号化し、その後、RF−IDタグから信号を発信する。この情報をリーダライタ側のアンテナで受信してデータ処理装置で認識し、ソフト側でデータ処理を行う。
【0112】
前記RF−IDタグはラベル状又はカード状に加工されており、RF−IDタグを前記熱可逆記録媒体に貼り付けることができる。RF−IDタグは熱可逆記録層面又はバック層面に貼ることができるが、バック層面に貼ることが好ましい。RF−IDタグと熱可逆記録媒体を貼り合わせるためには公知の接着剤又は粘着剤を使用することができる。
また、熱可逆記録媒体とRF−IDをラミネート加工等で一体化してカード状やタグ状に加工してもよい。
【実施例】
【0113】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例においては、記録媒体の好適な一例として熱可逆記録媒体を作製し、評価を行った。熱可逆記録媒体を用いて画像記録及び画像消去を繰り返さず1回だけ画像記録を行う場合には、感熱記録媒体についての評価を行った実施例に該当する。
【0114】
(製造例1)
<熱可逆記録媒体の作製>
熱により色調が可逆的に変化する熱可逆記録媒体を、以下のようにして作製した。
【0115】
−支持体−
支持体として、厚み125μmの白濁ポリエステルフィルム(帝人デュポン株式会社製、テトロンフィルムU2L98W)を用いた。
【0116】
−第1の酸素バリア層の形成−
ウレタン系接着剤(東洋モートン株式会社製、TM−567)5質量部、イソシアネート(東洋モートン株式会社製、CAT−RT−37)0.5質量部、及び酢酸エチル5質量部を加え、よく攪拌して酸素バリア層用塗布液を調製した。
次に、シリカ蒸着PETフィルム(三菱樹脂株式会社製、テックバリアHX、酸素透過度:0.5ml/m2/day/MPa)上に、前記酸素バリア層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、80℃にて1分間加熱及び乾燥した。この酸素バリア層付きシリカ蒸着PETフィルムを前記支持体上に貼合せ、50℃で24時間加熱し、厚み12μmの第1の酸素バリア層を形成した。
【0117】
−第1の熱可逆記録層の形成−
下記構造式(1)で表される可逆性顕色剤5質量部、下記構造式(2)及び(3)で表される2種類の消色促進剤をそれぞれ0.5質量部ずつ、アクリルポリオール50質量%溶液(水酸基価=200mgKOH/g)10質量部、及びメチルエチルケトン80質量部を、ボールミルを用いて平均粒径が約1μmになるまで粉砕分散した。
【0118】
【化3】
【化4】
【化5】
【0119】
次に、前記可逆性顕色剤を粉砕分散させた分散液に、前記ロイコ染料としての2−アニリノ−3−メチル−6ジブチルアミノフルオラン1質量部、及び架橋剤としてイソシアネート(日本ポリウレタン株式会社製、コロネートHL)5質量部を加え、よく撹拌して、熱可逆記録層用塗布液を調製した。
得られた熱可逆記録層用塗布液を、前記第1の酸素バリア層上に、ワイヤーバーを用いて塗布し、100℃にて2分間乾燥した後、60℃にて24時間キュアーを行って、厚み6.0μmの第1の熱可逆記録層を形成した。
【0120】
−光熱変換層の形成−
フタロシアニン系光熱変換材料(株式会社日本触媒製、IR−14、吸収ピーク波長:824nm)1質量%溶液を4質量部、アクリルポリオール50質量%溶液(水酸基価=200mgKOH/g)10質量部、及びメチルエチルケトン20質量部、架橋剤としてイソシアネート(商品名:コロネートHL、日本ポリウレタン株式会社製)5質量部をよく攪拌し、光熱変換層塗布液を作製した。得られた光熱変換層用塗布液を、前記第1の熱可逆記録層上に、ワイヤーバーを用いて塗布し、90℃にて1分間乾燥した後、60℃にて24時間キュアーを行って、厚み3μmの光熱変換層を形成した。
【0121】
−第2の熱可逆記録層の形成−
前記第1の熱可逆記録層と同じ熱可逆記録層用途布液を用い、前記光熱変換層上に、ワイヤーバーを用いて塗布し、100℃にて2分間乾燥した後、60℃にて24時間キュアーを行って、厚み6.0μmの第2の熱可逆記録層を形成した。
【0122】
−紫外線吸収層の形成−
紫外線吸収ポリマーの40質量%溶液(株式会社日本触媒製、UV−G300)10質量部、架橋剤としてイソシアネート(日本ポリウレタン株式会社製、コロネートHL)1.5質量部、及びメチルエチルケトン12質量部を加え、よく攪拌して紫外線吸収層用塗布液を調製した。
次に、前記第2の熱可逆記録層上に、前記紫外線吸収層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱及び乾燥した後、60℃にて24時間加熱し、厚み2μmの紫外線吸収層を形成した。
【0123】
−第2の酸素バリア層の形成−
前記第1の酸素バリア層と同じ酸素バリア層付きシリカ蒸着PETフィルムを、前記紫外線吸収層上に貼合せ、50℃で24時間加熱し、厚み12μmの第2の酸素バリア層を形成した。
【0124】
−バック層の形成−
ペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPHA)7.5質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業株式会社製、アートレジンUN−3320HA)2.5質量部、針状導電性酸化チタン(石原産業株式会社製、FT−3000、長軸長さ=5.15μm、短軸長さ=0.27μm、構成:アンチモンドープ酸化スズ被覆の酸化チタン)2.5質量部、光重合開始剤(日本チバガイギー株式会社製、イルガキュア184)0.5質量部、及びイソプロピルアルコール13質量部を加え、ボールミルにてよく攪拌してバック層用塗布液を調製した。
次に、前記支持体の前記第1の熱可逆記録層等が形成されていない側の面上に、前記バック層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱及び乾燥した後、80W/cmの紫外線ランプで架橋させて、厚み4μmのバック層を形成した。以上により、製造例1の熱可逆記録媒体を作製した。
【0125】
(製造例2)
−熱可逆記録媒体の作製−
製造例1において、光熱変換層用塗布液における光熱変換材料としてフタロシアニン系光熱変換材料の代わりにシアニン系光熱変換材料(株式会社山本化成製、YKR−2900、吸収ピーク波長:830nm)0.5質量%溶液を2質量部添加し、よく撹拌させて調製した光熱変換層用塗布液を用いた以外は、製造例1と同様にして、製造例2の熱可逆記録媒体を作製した。なお、シアニン系光熱変換材料(株式会社山本化成製、YKR−2900)は製造例1と同様な感度になる添加量とした。
【0126】
(製造例3)
−熱可逆記録媒体の作製−
製造例1において、第1の熱可逆記録層中に光熱変換材料として、無機系光熱変換材料(住友金属鉱山株式会社製、ホウ化ランタン液)を製造例1と同様な感度になるように量を調整して添加し、厚み12μmの第1の熱可逆記録層に形成して、第1の酸素バリア層、第2の酸素バリア層、光熱変換層、及び第2の熱可逆記録層を形成しない以外は、製造例1と同様にして、製造例3の熱可逆記録媒体を作製した。
【0127】
(製造例4)
−熱可逆記録媒体の作製−
製造例1において、第1の熱可逆記録層中に光熱変換材料として、無機系光熱変換材料(住友金属鉱山株式会社製、ホウ化ランタン液)を製造例1と同様な感度になるように量を調整して添加し、厚み12μmの第1の熱可逆記録層に形成して、光熱変換層、及び第2の熱可逆記録層を形成しない以外は、製造例1と同様にして、製造例4の熱可逆記録媒体を作製した。
【0128】
(製造例5)
−感熱記録紙の作製−
(1)染料分散液(A液)の調製
下記の組成をサンドミルで平均粒子径が0.5μmになるまで分散して、A液を調製した。
・2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン・・・20質量部
・ポリビニルアルコールの10質量%水溶液・・・20質量部
・水・・・60質量部
(2)B液の調製
下記の組成をボールミルで平均粒子径が1.5μmになるまで分散して、B液を調製した。
・水酸化アルミニウム・・・20質量部
・4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン・・・20質量部
・ポリビニルアルコールの10質量%水溶液・・・20質量部
・水・・・40質量部
(3)C液の調製
下記の組成をボールミルで平均粒子径が1.5μmになるまで分散して、C液を調製した。
・水酸化アルミニウム・・・100質量部
・ポリビニルアルコールの10質量%水溶液・・・20質量部
・水・・・40質量部
(4)感熱記録層塗工液の調製
下記の組成を混合して調製後に、無機系光熱変換材料(住友金属鉱山株式会社製、ホウ化ランタン液)を添加して感熱記録層塗工液を作製した。
・上記A液・・・20質量部
・上記B液・・・60質量部
・樹脂水溶液(ジアセトン変性ポリビニルアルコール、固形分=10質量%)・・・30質量部
・ジオクチルスルホコハク酸水溶液(固形分=5質量%)・・・1質量部
(5)保護層塗工液の調製
下記の組成を混合して保護層塗工液を調製した。
・上記C液・・・60質量部
・ジアセトン変性ポリビニルアルコール水溶液(固形分=10質量%)・・・100質量部
・アクリル樹脂水溶液(酸価=600mgKOH/g、ポリアクリル酸ナトリウム、ジュリマーAC103、日本純薬株式会社製、固形分=10質量%)・・・20質量部
・アジピン酸ジヒドラジド水溶液(固形分=10質量%)・・・10質量部
・ジオクチルスルホコハク酸水溶液(固形分=5質量%)・・・1質量部
(6)感熱記録紙の作製
支持体(坪量60g/m2の上質紙)上に、上記感熱記録層塗工液を染料付着量が0.50g/m2なるように塗布し、乾燥させて感熱記録層を形成した。
次に、前記感熱記録層上に上記保護層塗工液を乾燥付着量が3.0g/m2になるように塗布し、乾燥させて保護層を形成した。以上により感熱記録紙を作製した。
【0129】
(実施例1)
製造例1の熱可逆記録媒体を用いて、QPC社製ファイバ結合LD(半導体レーザ)のES−6200−A(中心波長:808nm)でレーザ光照射して、2枚のコリメータレンズ(焦点距離26mm)で平行光にして、Cambridge社製ガルバノスキャナー6230Hでレーザ光を走査させて、fθレンズ(焦点距離141mm)で熱可逆記録媒体上に集光させるLDマーカー装置で画像記録を行った。
図6A〜図6Cに示す文字の大きさ(4mm×4mm)、文字線幅0.4mmの3種の文字「横」、「口」、及び「一」の座標情報により文字の描画線全長Lを算出して文字面積SをL*0.4mmで導出して、各文字「横」、「口」、及び「一」の文字の密度を算出したところ、それぞれ0.47、0.19、及び0.08であった。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。具体的には、通常は図6D及び図6Eに示す文字情報がレーザマーカー内に搭載されているが、線幅情報を基に重なり部分を記録しないように、図6A及び図6Bに示すように重なり部分の線分を分断して非重複処理を行う。描画線全長Lは、レーザマーカーが各文字を座標変換した情報から各座標間の長さの和で求めた。
【0130】
次に、前記LDマーカー装置において、ワーク間距離を141mm(ビーム径0.65mm)、レーザ光の走査速度を2,500mm/sとし、図6A〜図6Cに示す文字の大きさ(4mm×4mm)、文字線幅0.4mmの3種の文字「横」、「口」、及び「一」について、レーザ光の照射パワーをそれぞれ20.0W、21.3W、及び22.0Wに調整して、印字した。
ここで、ワーク間距離とは、記録媒体とfθレンズが設置されているLDマーカー装置の光学ヘッド面の距離を意味する。
【0131】
(実施例2)
実施例1において、前記LDマーカー装置を用い、ワーク間距離を141mm、照射パワーを22.0Wとし、図6A〜図6Cに示す文字の大きさ(4mm×4mm)、文字線幅0.4mmの3種の文字「横」、「口」、及び「一」について、レーザ光の走査速度をそれぞれ2,750mm/s、2,600mm/s、及び2,500mm/sに調整して、印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0132】
(実施例3)
実施例1において、前記LDマーカー装置を用い、ワーク間距離を141mm、照射パワーを21.0Wとし、図6Aに示す文字の大きさ(4mm×4mm)、文字線幅0.4mmの文字「横」について、レーザ光の走査速度を2,600mm/sに調整して印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0133】
(実施例4)
図6Aに示す文字「横」、文字線幅0.4mm、文字の大きさ(4mm×4mm)と、文字の大きさ(8mm×8mm)の座標情報により文字の描画線全長Lを算出して文字面積SをL*0.4mmで導出して各文字の密度を求めたところ、文字の大きさ(4mm×4mm)及び文字の大きさ(8mm×8mm)で、0.47及び0.25であった。
次に、実施例1において、前記LDマーカー装置を用い、ワーク間距離を141mm、レーザ光の走査速度を2,500mm/sとし、図6Aに示す文字「横」、文字線幅0.4mm、文字の大きさ(4mm×4mm)、文字の大きさ(8mm×8mm)について、レーザ光の照射パワーをそれぞれ20.0W、21.0Wに調整して、印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0134】
(実施例5)
図6Aに示す文字「横」、文字の大きさ(8mm×8mm)、文字線幅0.4mm、文字線幅0.8mm(2本の線で印字)からの座標情報により文字の描画線全長Lを算出して文字面積SをL*0.4mm、L*0.8mmで導出して、各文字の密度を求めたところ、文字線幅0.4mm及び文字線幅0.8mmで、それぞれ0.25及び0.47であった。
実施例1において、LDマーカー装置で、ワーク間距離を141mm、レーザ走査速度2,500mm/s、図6Aに示す文字「横」、文字の大きさ(8mm×8mm)、文字線幅0.4mm、文字線幅0.8mm(2本の線で印字)について、レーザ光の照射パワーをそれぞれ21.0W、20.0Wに調整し、印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0135】
(実施例6)
実施例1において、文字の重なり部の非重複処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、同一条件で、図6Dに示す「横」文字を印字した。
【0136】
(実施例7)
実施例1において、製造例1の熱可逆記録媒体を、製造例2の熱可逆記録媒体に代えた以外は、実施例1と同様にして、図6A〜図6Cに示す文字の大きさ(4mm×4mm)、文字線幅0.4mmの3種の文字「横」、「口」、及び「一」について、レーザ光の照射パワーをそれぞれ20.0W、21.3W、及び22.0Wに調整して、印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0137】
(実施例8)
実施例1において、製造例1の熱可逆記録媒体を、製造例3の熱可逆記録媒体に代えた以外は、実施例1と同様にして、図6A〜図6Cに示す文字の大きさ(4mm×4mm)、文字線幅0.4mmの3種の文字「横」、「口」、及び「一」について、レーザ光の照射パワーをそれぞれ20.0W、21.3W、及び22.0Wに調整して、印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0138】
(実施例9)
実施例1において、製造例1の熱可逆記録媒体を、製造例4の熱可逆記録媒体に代えた以外は、実施例1と同様にして、図6A〜図6Cに示す文字の大きさ(4mm×4mm)、文字線幅0.4mmの3種の文字「横」、「口」、及び「一」について、レーザ光の照射パワーをそれぞれ20.0W、21.3W、及び22.0Wに調整して印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0139】
(実施例10)
製造例4の熱可逆記録媒体を用いて、Oclaro社製ファイバ結合LD(半導体レーザ)のBMU25−975−01−R(中心波長:976nm)でレーザ光照射して、2枚のコリメータレンズ(焦点距離37mm)で平行光にして、Cambridge社製ガルバノスキャナー6230Hでレーザ光を走査させて、fθレンズ(焦点距離189mm)で熱可逆記録媒体上に集光させるLDマーカー装置で画像記録を行った。
図6A〜図6Cに示す文字の大きさ(2.5mm×2.5mm)、文字線幅0.25mmの3種の文字「横」、「口」、及び「一」の座標情報により文字の描画線全長Lを算出して文字面積SをL*0.25mmで導出して、各文字「横」、「口」、及び「一」の文字の密度を算出したところ、それぞれ0.47、0.19、及び0.08であった。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。具体的には、通常は図6D及び図6Eに示す文字情報がレーザマーカー内に搭載されているが、線幅情報を基に重なり部分を記録しないように、図6A及び図6Bに示すように重なり部分の線分を分断して略線幅分を短くすることで非重複処理を行う。描画線全長Lは、LDマーカー装置が各文字を座標変換した情報から各座標間の長さの和で求めた。
次に、前記LDマーカー装置において、ワーク間距離を175mm(ビーム径0.50mm)、レーザ光の走査速度を3,000mm/sとし、図6A〜図6Cに示す文字の大きさ(2.5mm×2.5mm)、文字線幅0.25mmの3種の文字「横」、「口」、及び「一」について、レーザ光の照射パワーをそれぞれ15.0W、16.0W、及び16.5Wに調整して印字した。
【0140】
(実施例11)
製造例4の熱可逆記録媒体を用いて、実施例10のLDマーカー装置で図7Aに示す「轟」文字を、図7Cに示す小文字用のフォントに変換して、文字の大きさ(3.0mm×3.0mm)、文字線幅0.25mm、レーザ光の走査速度を3,000mm/sでレーザ照射パワー14.0Wに調整して印字した。
図7Cに示す文字の大きさ(3.0mm×3.0mm)、文字線幅0.25mmの座標情報により文字の描画線全長Lを算出して文字面積SをL*0.25mmで導出して、文字「轟」の文字の密度を算出したところ、0.54であった。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0141】
(実施例12)
ポリプロピレン(PP)材料の厚み2mm板に対して、パナソニック電工SUNX社製のFAYbのファイバレーザLP−Z(中心波長:1060nm)でビーム径0.30mmになるようにワーク間距離を調整して、レーザ光の走査速度を1,000mm/sとし、図6A〜図6Cに示す文字の大きさ(2mm×2mm)、文字線幅0.20mmの文字「横」、「口」、「一」について、レーザ光の照射パワーをそれぞれ12.0W、13.4W、14.0Wに調整して印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0142】
(実施例13)
製造例5の感熱記録紙に対して、実施例10と同様にしてワーク間距離を175mm(ビーム径0.50mm)、レーザ光の走査速度を3,000mm/sとし、図6A〜図6Cに示す文字の大きさ(2.5mm×2.5mm)、文字線幅0.25mmの文字「横」、「口」、「一」について、レーザ光の照射パワーをそれぞれ12.0W、12.8W、13.2Wに調整して印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0143】
(比較例1)
実施例1において、前記LDマーカー装置で、レーザ光の走査速度2,500mm/s、ワーク間距離を141mmとなるように調整して、図6A〜図6Cに示す文字の大きさ(4mm×4mm)、文字線幅0.4mmの3種の文字「横」、「口」、及び「一」について、レーザ光の照射パワーを22.0Wで印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0144】
(比較例2)
実施例1において、前記LDマーカー装置で、レーザ光の走査速度2,500mm/s、ワーク間距離を141mmとなるように調整して、図6A〜図6Cに示す文字の大きさ(4mm×4mm)、文字線幅0.4mmの3種の文字「横」、「口」、及び「一」について、レーザ光の照射パワーを20.0Wで印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0145】
(比較例3)
実施例1において、前記LDマーカー装置で、ワーク間距離を141mm、レーザ光の走査速度2,500mm/s、図6Aに示す文字「横」、線幅0.4mm、文字の大きさ(4mm×4mm)、文字の大きさ(8mm×8mm)について、レーザ光の照射パワーをそれぞれ21.3Wで印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0146】
(比較例4)
実施例1において、前記LDマーカー装置で、ワーク間距離を141mm、レーザ光の走査速度2,500mm/s、図6Aに示す文字「横」、文字の大きさ(8mm×8mm)、文字線幅0.4mm、文字線幅0.8mm(2本の線で印字)について、レーザ光の照射パワーをそれぞれ21.0Wで印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0147】
(比較例5)
比較例1において、文字の重なり部の非重複処理を行わない以外は、比較例1と同様にして、同一条件で図6Aに示す「横」文字を印字した。
【0148】
(比較例6)
比較例1において、製造例1の熱可逆記録媒体を、製造例2の熱可逆記録媒体に代えた以外は、比較例1と同様にして、図6Aに示す文字「横」、文字の大きさ(4mm×4mm)、文字線幅0.4mmについて、レーザ光の照射パワーを22.0Wに調整して印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0149】
(比較例7)
比較例1において、製造例1の熱可逆記録媒体を、製造例3の熱可逆記録媒体に代えた以外は、比較例1と同様にして、図6Aに示す文字「横」、文字の大きさ(4mm×4mm)、文字線幅0.4mmについて、レーザ光の照射パワーを22.0Wに調整して印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0150】
(比較例8)
比較例1において、製造例1の熱可逆記録媒体を製造例4の熱可逆記録媒体に代えた以外は、比較例1と同様にして、図6Aに示す文字「横」、文字の大きさ(4mm×4mm)、文字線幅0.4mmについて、レーザ光の走査速度を2,500mm/sでレーザ光の照射パワーを22.0Wに調整して印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0151】
(比較例9)
実施例10において、製造例4の熱可逆記録媒体にレーザ光の走査速度3,000mm/s、ワーク間距離を175mmとなるように調整した以外は、実施例10と同様にして、図6Aに示す文字の大きさ(2.5mm×2.5mm)、文字線幅0.25mmの「横」について、レーザ光の照射パワーを16.5Wで印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0152】
(比較例10)
製造例4の熱可逆記録媒体を用いて、実施例10のLDマーカー装置で図7Aに示す「轟」文字を、文字の大きさ(3.0mm×3.0mm)、文字線幅0.25mmで、レーザ光の走査速度を3,000mm/s、レーザ光の照射パワー16.5Wに調整して印字した。図7Aに示す文字の大きさ(3.0mm×3.0mm)、文字線幅0.25mmの座標情報により文字の描画線全長Lを算出して文字面積SをL*0.25mmで導出して、文字「轟」の文字の密度を算出したところ、0.62であった。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0153】
(比較例11)
ポリプロピレン(PP)材料の厚み2mm板に対して、パナソニック電工SUNX社製のFAYbのファイバレーザLP−Z(中心波長:1,060nm)でビーム径0.30mmになるようにワーク間距離を調整して、レーザ光の走査速度を1,000mm/sとし、図6Aに示す文字の大きさ(2mm×2mm)、文字線幅0.20mmの文字「横」について、レーザ光の照射パワーを14.0Wに調整して印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0154】
(比較例12)
製造例5の感熱記録紙に対して、実施例10と同様にして、ワーク間距離を175mm(ビーム径0.50mm)、レーザ光の走査速度を3,000mm/sとし、図6Aに示す文字の大きさ(2.5mm×2.5mm)、文字線幅0.25mmの文字「横」について、レーザ光の照射パワーを13.2Wに調整して印字した。なお、文字の重なり部は非重複処理を行っている。
【0155】
次に、実施例1〜13及び比較例1〜12について、以下のようにして、画像印字品質、及び繰り返し耐久性を評価した。結果を表1に示す。
【0156】
<画像印字品質(初期)の評価>
各文字の画像記録を行い、そのときの画像印字品質(初期)を下記基準で評価した。
〔評価基準〕
○:擦れ、文字潰れがなく高精細に印字できている
×:僅かでも擦れ、文字潰れて印字されている
【0157】
<繰返し耐久性の評価>
画像印字品質評価した文字について繰返し記録を行い、最後に、レーザによる消去を行い消え残り画像を評価して、消え残り濃度が0.030を超える繰返し回数を繰返し耐久性とした。結果を表1に示す。
【0158】
【表1−1】
*横*1:文字「横」、文字線幅0.4mm、文字の大きさ(4mm×4mm)、重なり部の非重複処理あり
*横*2:文字「横」、文字線幅0.4mm、文字の大きさ(8mm×8mm)、重なり部の非重複処理あり
*横*3:文字「横」、文字の大きさ(8mm×8mm)、文字線幅0.8mm(2本の線で印字)、重なり部の非重複処理あり
*横*4:文字「横」、文字の大きさ(4mm×4mm)、文字線幅0.4mm、重なり部の非重複処理なし
*横*5:文字「横」、文字線幅0.25mm、文字の大きさ(2.5mm×2.5mm)、重なり部の非重複処理あり
*横*6:文字「横」、文字線幅0.2mm、文字の大きさ(2mm×2mm)、重なり部の非重複処理あり
なお、照射エネルギーは、(照射パワー)/(走査速度)/(ビーム径)で導出して、単位はmJ/mm2となる。
【0159】
【表1−2】
*横*1:文字「横」、文字線幅0.4mm、文字の大きさ(4mm×4mm)、重なり部の非重複処理あり
*横*2:文字「横」、文字線幅0.4mm、文字の大きさ(8mm×8mm)、重なり部の非重複処理あり
*横*3:文字「横」、文字の大きさ(8mm×8mm)、文字線幅0.8mm(2本の線で印字)、重なり部の非重複処理あり
*横*4:文字「横」、文字の大きさ(4mm×4mm)、文字線幅0.4mm、重なり部の非重複処理なし
*横*5:文字「横」、文字線幅0.25mm、文字の大きさ(2.5mm×2.5mm)、重なり部の非重複処理あり
*横*6:文字「横」、文字線幅0.2mm、文字の大きさ(2mm×2mm)、重なり部の非重複処理あり
なお、照射エネルギーは、(照射パワー)/(走査速度)/(ビーム径)で算出でき、単位はmJ/mm2となる。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明の画像処理方法及び画像処理装置は、記録する各文字における文字種類、文字の大きさ、及び文字線幅の情報から、記録する各文字の密度を算出し、該記録する各文字の密度に応じてレーザ光の照射エネルギーを調整することで、印字滲みの少ない高品質な画像記録を実現できると共に、熱可逆記録媒体を用いた場合には高い繰返し耐久性を実現でき、物流及び配送システムに特に好適に使用可能である。
【符号の説明】
【0161】
1 レーザ発振器
2 ビームエキスパンダ
3 マスク又は非球面レンズ
4 ガルバノメータ
4A ガルバノミラー
5 スキャニングユニット
6 fθレンズ
7 熱可逆記録媒体
81 ICチップ
82 アンテナ
85 RF−IDタグ
100 熱可逆記録媒体
101 支持体
102 第1の熱可逆記録層
103 光熱変換層
104 第2の熱可逆記録層
105 第1の酸素バリア層
106 第2の酸素バリア層
107 紫外線吸収層
108 バック層
【先行技術文献】
【特許文献】
【0162】
【特許文献1】特開2004−265247号公報
【特許文献2】特許第3998193号公報
【特許文献3】特許第3161199号公報
【特許文献4】特開平9−30118号公報
【特許文献5】特開2000−136022号公報
【特許文献6】特開平11−151856号公報
【特許文献7】特開2008−62506号公報
【特許文献8】特開2008−213439号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録する各文字における文字種類、文字の大きさ、及び文字線幅の情報から、記録する各文字の密度を算出する密度算出工程と、
前記各文字の密度に基づき該各文字を記録する際のレーザ光の照射エネルギーを調整し、該調整後の照射エネルギーのレーザ光を記録媒体上に照射して各文字を記録する画像記録工程と、を少なくとも含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
密度算出工程において、記録する各文字における文字の大きさ及び文字種類から描画線全長を求め、該描画線全長と文字線幅の積を文字の大きさで割って、記録する各文字の密度を算出する請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項3】
画像記録工程において、記録する文字の密度が低いときのレーザ光の照射エネルギーを、記録する文字の密度が高いときのレーザ光の照射エネルギーより高くなるように調整する請求項1から2のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項4】
レーザ光の照射エネルギーを、レーザ光の照射パワーにより調整する請求項1から3のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項5】
レーザ光の照射エネルギーを、レーザ光の走査速度により調整する請求項1から3のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項6】
各文字の重なり部に重複してレーザ光が照射しないように処理する重なり部非重複処理工程を含む請求項1から5のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項7】
記録する各文字における文字設定領域、及び文字の線幅の情報から、使用する文字フォントデータを選択し、該選択された文字フォントデータに基づき、密度算出工程を行う請求項1から6のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項8】
画像記録工程で用いるレーザ光源が、YAGレーザ光源、ファイバレーザ光源、及び半導体レーザ光源の少なくともいずれかである請求項1から7のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項9】
画像記録工程で照射するレーザ光の波長が700nm以上1,500nm以下である請求項1から8のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項10】
記録媒体が、支持体と、該支持体上に、第1の熱可逆記録層と、特定波長の光を吸収して熱に変換する光熱変換材料を含む光熱変換層と、第2の熱可逆記録層とを少なくともこの順に有してなり、前記第1及び第2の熱可逆記録層が、いずれも温度に依存して色調が可逆的に変化する熱可逆記録媒体である請求項1から9のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項11】
第1の熱可逆記録層及び第2の熱可逆記録層が、いずれもロイコ染料及び可逆性顕色剤を含有する請求項10に記載の画像処理方法。
【請求項12】
光熱変換材料が、近赤外領域に吸収ピークを有する材料である請求項10から11のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項13】
光熱変換材料が、フタロシアニン系化合物である請求項12に記載の画像処理方法。
【請求項14】
光熱変換材料が、無機系材料である請求項12に記載の画像処理方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれかに記載の画像処理方法に用いられ、レーザ光出射手段と、レーザ光をレーザ光照射面に走査させるレーザ光走査手段とを少なくとも有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項1】
記録する各文字における文字種類、文字の大きさ、及び文字線幅の情報から、記録する各文字の密度を算出する密度算出工程と、
前記各文字の密度に基づき該各文字を記録する際のレーザ光の照射エネルギーを調整し、該調整後の照射エネルギーのレーザ光を記録媒体上に照射して各文字を記録する画像記録工程と、を少なくとも含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
密度算出工程において、記録する各文字における文字の大きさ及び文字種類から描画線全長を求め、該描画線全長と文字線幅の積を文字の大きさで割って、記録する各文字の密度を算出する請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項3】
画像記録工程において、記録する文字の密度が低いときのレーザ光の照射エネルギーを、記録する文字の密度が高いときのレーザ光の照射エネルギーより高くなるように調整する請求項1から2のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項4】
レーザ光の照射エネルギーを、レーザ光の照射パワーにより調整する請求項1から3のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項5】
レーザ光の照射エネルギーを、レーザ光の走査速度により調整する請求項1から3のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項6】
各文字の重なり部に重複してレーザ光が照射しないように処理する重なり部非重複処理工程を含む請求項1から5のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項7】
記録する各文字における文字設定領域、及び文字の線幅の情報から、使用する文字フォントデータを選択し、該選択された文字フォントデータに基づき、密度算出工程を行う請求項1から6のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項8】
画像記録工程で用いるレーザ光源が、YAGレーザ光源、ファイバレーザ光源、及び半導体レーザ光源の少なくともいずれかである請求項1から7のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項9】
画像記録工程で照射するレーザ光の波長が700nm以上1,500nm以下である請求項1から8のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項10】
記録媒体が、支持体と、該支持体上に、第1の熱可逆記録層と、特定波長の光を吸収して熱に変換する光熱変換材料を含む光熱変換層と、第2の熱可逆記録層とを少なくともこの順に有してなり、前記第1及び第2の熱可逆記録層が、いずれも温度に依存して色調が可逆的に変化する熱可逆記録媒体である請求項1から9のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項11】
第1の熱可逆記録層及び第2の熱可逆記録層が、いずれもロイコ染料及び可逆性顕色剤を含有する請求項10に記載の画像処理方法。
【請求項12】
光熱変換材料が、近赤外領域に吸収ピークを有する材料である請求項10から11のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項13】
光熱変換材料が、フタロシアニン系化合物である請求項12に記載の画像処理方法。
【請求項14】
光熱変換材料が、無機系材料である請求項12に記載の画像処理方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれかに記載の画像処理方法に用いられ、レーザ光出射手段と、レーザ光をレーザ光照射面に走査させるレーザ光走査手段とを少なくとも有することを特徴とする画像処理装置。
【図2】
【図5A】
【図1】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図5A】
【図1】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【公開番号】特開2012−35622(P2012−35622A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144606(P2011−144606)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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