説明

画像処理装置、および画像処理方法

【課題】画像に写り込んだ標識などを、目立たないように簡便に補正する。
【解決手段】画像中で、周囲の領域よりも明度および彩度がそれぞれ所定明度以上および所定彩度以上高い領域を標識領域として抽出する。そして、抽出した標識領域の明度が、該標識領域の周囲の領域の明度に近付くように、画像データを補正する。あるいは、標識領域の彩度が周囲の領域の彩度に近付くように、画像データを補正する。こうすれば、画像中で標識の類が写っている領域を簡単に抽出するとともに、標識の類が目立たないように簡単に補正することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データに対して画像処理を加える技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ技術の進歩により、今日では、画像をデジタル化された画像データとして取り扱うことが一般的となっている。例えば、風景や人物などを撮影する場合には、デジタルカメラが用いられ、撮影した画像は画像データの形態で出力されて保存されることが通常である。また、撮影した画像を出力する際には、従来のように印画紙に焼き付けるのではなく、モニター画面上に画像を表示させたり、あるいは画像データを印刷装置に供給して画像を印刷するようになっている。
【0003】
更には、画像がデジタルデータの形態に変換されていることを活用して、撮影した画像に補正を加えることも行われている。例えば、フラッシュを焚いて人物を撮影すると、目の部分に光が写り込んで黒目が赤く写ってしまい、不自然な画像になってしまうことがあるので、自然な画像となるように画像データを自動で補正する技術が提案されている(特許文献1、特許文献2)。あるいは、人物の額や鼻、頬の部分などがフラッシュの光を反射して、テカっているように写ってしまうことがあるので、画像データを自動的に補正して、テカリの目立たない画像とする技術も提案されている(特許文献3)。
【0004】
【特許文献1】特開平10−233929号公報
【特許文献2】特開2005−071389号公報
【特許文献3】特開2005−327009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、人物や風景などを撮影する際に、気付かないうちに標識などが写ってしまい、撮影した画像の印象を大きく損ねることがあるという問題があった。すなわち、標識などは、普段は何気なく見過ごされがちであるため、撮影時には背景に標識が写っていることには気が付かず、後から画像を確認して初めて標識が写っていることに気付くことが多い。しかも、標識の色や形は、元来が目立ち易い色や形が採用されており、また設置場所についても、目に付き易い位置に設置されているので、画像に写った標識がたいへんに目に付いてしまい、画像の雰囲気を損なうことがあるという問題があった。
【0006】
もちろん、専用のレタッチソフトを用いれば、画像に写った標識などを消去することも可能であるが、専用のレタッチソフトは高価であるとともに、使いこなすためにある程度の習熟が必要であり、更には、レタッチソフトが組み込まれたコンピュータを立ち上げなければならないので、標識などを簡便に消去できるとは言い難い。
【0007】
この発明は、従来の技術における上述した課題を解決するためになされたものであり、画像に標識などが写り込んだ場合に、目立たないように簡便に補正する技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の第1の画像処理装置は次の構成を採用した。すなわち、
画像データを読み込んで補正を加える画像処理装置であって、
画像中で周囲の領域よりも明度が所定明度以上高く、且つ彩度が所定彩度以上高い領域を、標識が写っている領域たる標識領域として抽出する標識領域抽出手段と、
前記標識領域の明度を、前記周囲の領域の明度に近づける方向に補正する画像データ補正手段と
を備えることを要旨とする。
【0009】
また、上記の画像処理装置に対応する本発明の第1の画像処理方法は、
画像データを読み込んで補正を加える画像処理方法であって、
画像中で周囲の領域よりも明度が所定明度以上高く、且つ彩度が所定彩度以上高い領域を、標識が写っている領域たる標識領域として抽出する標識領域抽出工程と、
前記標識領域の明度を、前記周囲の領域の明度に近づける方向に補正する画像データ補正工程と
を備えることを要旨とする。
【0010】
かかる本発明の第1の画像処理装置および第1の画像処理方法においては、画像中で、周囲の領域よりも明度および彩度がそれぞれ所定明度以上および所定彩度以上高い領域を標識領域として抽出し、抽出した標識領域の明度を、該標識領域の周囲の領域の明度に近付けるように、画像データを補正する。
【0011】
標識の類は目立ち易いように、鮮やかで明るく表示されることが通常であり、このため画像中に標識が写っていると、標識が大変に目立ってしまい、画像の印象を大きく損ねる場合が生じ得る。そこで、標識の類が写っている領域を、明度および彩度に基づいて抽出し、この部分の明度が周囲の明度に近づくように補正することで、標識の類を目立たなくして、画像の印象が損なわれることを回避することができる。また、こうした処理は簡単に実行できるので、特別なアプリケーションプログラムを起動させずとも、簡便に画像を補正することが可能となる。
【0012】
また、従来の技術が有する上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の第2の画像処理装置は次の構成を採用した。すなわち、
画像データを読み込んで補正を加える画像処理装置であって、
画像中で周囲の領域よりも明度が所定明度以上高く、且つ彩度が所定彩度以上高い領域を、標識が写っている領域たる標識領域として抽出する標識領域抽出手段と、
前記標識領域の彩度を、前記周囲の領域の彩度に近づける方向に補正する画像データ補正手段と
を備えることを要旨とする。
【0013】
また、上記の画像処理装置に対応する本発明の第2の画像処理方法は、
画像データを読み込んで補正を加える画像処理方法であって、
画像中で周囲の領域よりも明度が所定明度以上高く、且つ彩度が所定彩度以上高い領域を、標識が写っている領域たる標識領域として抽出する標識領域抽出工程と、
前記標識領域の彩度を、前記周囲の領域の彩度に近づける方向に補正する画像データ補正工程と
を備えることを要旨とする。
【0014】
かかる本発明の第2の画像処理装置および第2の画像処理方法においても、上述した第1の画像処理装置および第1の画像処理方法と同様に、画像中で標識の類が写っている領域を、明度および彩度に基づいて抽出する。そして、この部分の彩度が周囲の彩度に近づくように補正することで、標識の類を目立たなくして、画像の印象が損なわれることを、簡便に回避することが可能となる。
【0015】
また、本発明の第1および第2の画像処理装置においては、周囲の領域よりも明度が所定明度以上高く、且つ彩度が所定彩度以上高いことに加えて、所定の色相を有する領域を、標識領域として抽出することとしてもよい。
【0016】
標識の類は、特定の色相(例えば、緑色、青色、黄色、赤色など)で表示されていることが多いから、明度や彩度に加えて、これらの色相で表示されているか否かも考慮して標識領域を抽出することで、より適切に標識領域を抽出することが可能となる。
【0017】
また、本発明の第1および第2の画像処理装置においては、周囲の領域よりも明度が所定明度以上高く、且つ彩度が所定彩度以上高いことに加えて、所定形状の輪郭を有する領域を、標識領域として抽出することとしてもよい。
【0018】
標識の類は、特定の形状の輪郭(たとえば、円形、矩形、三角形などの単純な多角形など)を有していることが多く、しかも、容易に見つけられるように、他の物体の陰に隠れ難いところ(高いところなど)に設けられていることが多い。従って、明度や彩度に加えて、これらの輪郭の形状も考慮して標識領域を抽出すれば、より適切に標識領域を抽出することが可能となる。
【0019】
更には、本発明の第1および第2の画像処理装置においては、周囲の領域よりも明度が所定明度以上高く、且つ彩度が所定彩度以上高いことに加えて、所定形状の図形を内包する領域を、標識領域として抽出することとしてもよい。
【0020】
標識の類には、特定の文字や図形などが描かれていることが多く、しかも上述したように、標識は、他の物体の陰に隠れ難いところ(高いところなど)に設けられていることが多い。従って、明度や彩度に加えて、これらの形状を内包している領域を標識領域として抽出することで、より適切に標識領域を抽出することが可能となる。
【0021】
更に本発明は、上述した第1の画像処理方法あるいは第2の画像処理方法を実現するためのプログラムをコンピュータに読み込ませ、所定の機能を実行させることにより、コンピュータを用いて実現することも可能である。従って、本発明は次のようなプログラムとしての態様も含んでいる。すなわち、上述した第1の画像処理方法に対応する本発明のプログラムは、
画像データを読み込んで補正を加える画像処理方法を、コンピュータを用いて実現するためのプログラムであって、
画像中で周囲の領域よりも明度が所定明度以上高く、且つ彩度が所定彩度以上高い領域を、標識が写っている領域たる標識領域として抽出する標識領域抽出機能と、
前記標識領域の明度を、前記周囲の領域の明度に近づける方向に補正する画像データ補正機能と
をコンピュータにより実現させることを要旨とする。
【0022】
また、上述した第2の画像処理方法に対応する本発明のプログラムは、
画像データを読み込んで補正を加える画像処理方法を、コンピュータを用いて実現するためのプログラムであって、
画像中で周囲の領域よりも明度が所定明度以上高く、且つ彩度が所定彩度以上高い領域を、標識が写っている領域たる標識領域として抽出する標識領域抽出機能と、
前記標識領域の彩度を、前記周囲の領域の彩度に近づける方向に補正する画像データ補正機能と
をコンピュータにより実現させることを要旨とする。
【0023】
かかるプログラムをコンピュータに読み込んで、上記の各機能を実現させれば、画像に標識などが写り込んだ場合でも、目立たないように簡便に補正することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施例を説明する。
A.装置構成:
B.画像出力処理:
【0025】
A.装置構成 :
図1は、本実施例の画像処理装置を搭載した印刷装置10の外観形状を示す斜視図である。図示されるように、本実施例の印刷装置10は、スキャナ部100と、プリンタ部200と、スキャナ部100およびプリンタ部200の動作を制御する制御部300などから構成されている。スキャナ部100は、印刷された画像を読み込んで画像データを生成するスキャナ機能を有しており、プリンタ部200は、画像データを受け取って印刷媒体上に画像を印刷するプリンタ機能を有している。制御部300は、CPUを中心として、ROMや、RAM、デジタルデータをアナログ信号に変換するD/A変換器、更には、周辺機器との間でデータのやり取りを行うための周辺機器インターフェースPIFなどから構成されており、スキャナ部100やプリンタ部200の動作を制御する機能を有している。また、制御部300は、デジタルカメラなどで撮影した画像データや、スキャナ部100で読み取った画像の画像データを受け取って、所定の画像処理を施した後、プリンタ部200から画像を出力することが可能である。
【0026】
B.画像出力処理 :
図2は、印刷装置10が画像データに所定の画像処理を施した後、画像を出力する処理(画像出力処理)の流れを示したフローチャートである。かかる処理は、印刷装置10内の制御部300によって実行される処理である。本実施例の印刷装置10では、画像を出力する際に、画像データに対して以下のような画像処理を施しているために、たとえ標識などが写り込んだ画像であっても、目立たないように簡便に補正して出力することが可能となっている。
【0027】
図示されるように、画像出力処理を開始すると、先ず初めに印刷しようとする画像データの読み込みを行う(ステップS100)。画像データは、デジタルカメラなどの画像撮影機器から直接読み込んでも良いし、あるいは撮影した画像データを記録媒体に記憶しておき、この画像データを読み込むようにしても良い。
【0028】
次いで、読み込んだ画像データに対して、標識領域抽出処理を行う(ステップS102)。ここで、標識領域とは、画像中で標識が写り込んでいる領域である。標識は、普段は何気なく見過ごされがちなため、撮影時には標識が写っていることには気が付かず、後から画像を確認して初めて標識が写っていることに気付くことが多い。標識領域抽出処理とは、このように意図せずに写った標識の領域を画像の中から抽出する処理である。
【0029】
図3は、画像出力処理の中で行われる標識領域抽出処理の流れを示すフローチャートである。標識領域抽出処理を開始すると、読み込んだ画像データを解析することにより、周囲の領域よりも明度が所定値以上高い領域を抽出する(ステップS200)。このとき、領域の大きさが所定値に満たない領域については抽出しないこととしても良い。
【0030】
次いで、抽出された領域が存在するか否かを判断し(ステップS202)、抽出された領域が存在していなければ(ステップS202:no)、そのまま標識領域抽出処理を終了して、図2に示す画像出力処理に復帰する。一方、周囲よりも明度が所定値以上高い領域が抽出されている場合は(ステップS202:yes)、抽出された領域の中から、周囲の領域よりも彩度が所定値以上高い領域を抽出する(ステップS204)。そして、再び、抽出された領域が存在するか否かを判断する(ステップS206)。先に、周囲の領域よりも明度が所定値以上高い領域が抽出され、その中から、更に、周囲よりも彩度が所定値以上高い領域が抽出されることから、結局、ステップS206では、周囲の領域よりも明度および彩度が何れも高い領域が存在しているか否かを判断していることになる。
【0031】
そして、そのような領域が存在していないと判断された場合は(ステップS206:no)、図3に示した標識領域抽出処理を終了して、図2の画像出力処理に復帰する。これに対して、周囲よりも明度および彩度が何れも高い領域が存在していると判断された場合は(ステップS206:yes)、その領域には標識が写っているものと考えられる。そこで、抽出された領域を標識領域として記憶した後(ステップS208)、標識領域抽出処理を終了して図2の画像出力処理に復帰する。
【0032】
画像出力処理では、図3に示した標識領域抽出処理から復帰すると、抽出された標識領域が記憶されているか否かを判断する(図2のステップS104)。そして、標識領域が記憶されている場合は(ステップS104:yes)、その領域の周囲の所定範囲の領域で、平均明度および平均彩度を検出する(ステップS106)。このとき、複数の標識領域が存在している場合は、それぞれの標識領域について、周囲の領域での平均明度および平均彩度を検出すればよい。
【0033】
そして、標識領域の明度および彩度を、周囲の領域の平均明度および平均彩度に近づける方向に、画像データを補正する(ステップS108)。補正に際しては、標識領域内の明度および彩度を、それぞれ平均明度および平均彩度に一致させても良いが、標識領域の明度あるいは彩度と、周囲領域の平均明度あるいは平均彩度とを、所定の重みで加重平均してもよい。標識領域内で色相がほとんど変化していなかった場合、標識領域内での明度および彩度が一定になってしまうと、その部分が塗り潰されたようになって不自然な画像になってしまうが、加重平均しておけば、標識領域内での階調変化もある程度は残したまま、明度および彩度を周囲領域の平均明度および平均彩度に近づけることができるので、標識を自然な感じで目立たないようにすることができる。一方、標識領域内で色相が変化している場合は、標識領域内の明度および彩度を平均明度および平均彩度に一致させるように補正することで、極めて簡単な処理により、標識を自然な感じで目立たせなくすることができる。
【0034】
尚、上述したステップS106およびステップS108においては、標識領域内の明度および彩度を補正するものとして説明したが、明度あるいは彩度の何れか一方のみを補正することとしても良い。すなわち、ステップS106では、周囲の領域についての平均明度あるいは平均彩度の一方を検出し、続くステップS108では、検出した平均明度あるいは平均彩度に近付くように、標識領域内の画像データを補正するようにしても良い。
【0035】
一方、ステップS104において、抽出された標識領域が存在していないと判断された場合は(ステップS104:no)、標識領域の周囲で平均明度および平均彩度を検出する処理(ステップS106)および標識領域の明度および彩度を、平均明度および平均彩度に近づける方向に補正する処理(ステップS108)はスキップする。
【0036】
以上のようにして、画像中に標識などが写っている場合には、標識領域の明度および彩度が、その周囲の領域の平均明度および平均彩度に近付くように画像データを補正した後(もちろん、標識などが写っていない場合には、こうした補正は行うことなく)、得られた画像データに基づいて画像を出力する(ステップS110)。本実施例では、図2の画像出力処理が印刷装置10で行われるものとしているから、ステップS110では、画像データに基づいて画像を印刷する処理が行われる。例えば、印刷装置10がいわゆるインクジェットプリンタである場合は、画像データをインク量に対応するデータに変換した後、画素毎にドットを形成するか否かを、インク量のデータに基づいて判断する。そして判断結果に従って、インクによるドットを印刷媒体上に形成することによって画像を印刷する処理を行う。
【0037】
図4は、本実施例の画像出力処理を行うことにより、画像中に写った標識などが目立たないように補正される様子を概念的に示した説明図である。図4(a)には、室内で撮影した記念写真の画像が示されている。この画像は、たまたま遠方の扉が入る構図で撮影したために、扉の上部に設けられた非常口の標識が写ってしまっている。撮影時には、どうしても画像の中央にくる被写体に注意が集中するため、背景に標識などが写り込んでいることには気が付き難い。標識の類は、意識して探せば直ぐに見つけることができるが、普段は何気なく見過ごしてしまう傾向にあるため、背景に標識などが写っていることには気付かないことが多い。特に、遠方の背景に写っている場合には尚更である。にもかかわらず、標識の類は元来が目に付き易い色や形が用いられており、加えて、目に付き易いところに設置されるため、標識などが写り込んでしまうと、画像の雰囲気を大きく損なってしまう。例えば、図4(a)に示したような華やいだ雰囲気の記念写真に、「非常口」や「EXIT」などの文字がこうこうと光って写っていたり、人が逃げる様子を表す図形が写っていたのでは、写真の雰囲気を大きく損なってしまう。
【0038】
そこで、画像中に標識などが写り込んでいる領域を抽出する。標識の類には、一般に、鮮やかで明るい色が用いられるから、周囲の領域よりも明度および彩度が高い領域を抽出することで、標識が写っている領域を簡単に抽出することができる。また、標識の類は、表示内容を直感的に把握しやすくするために、あるいは目立ち易くするために、緑色(非常口であれば、測色値でL=70、a=―55、b=22)、黄色、赤色などの特定の色を有している。このため、明度および彩度だけではなく色相も考慮すれば、より確実に標識を抽出することができる。
【0039】
あるいは、標識は、単純で決まった形状の輪郭(矩形、円形、三角形、五角形など)を有していることから、明度および彩度だけでなく、輪郭も考慮して標識を抽出するようにしても良い。更には、標識には、「非常口」や「EXIT」などの文字や、矢印など、決まった図形が描かれていることが多いから、明度や彩度だけでなく、これらの文字あるいは図形を検出することによって、標識を抽出することとしても良い。これらを考慮することによっても、標識が写っている領域を精度良く抽出することが可能となる。もちろん、標識の一部が何かの陰に隠れている場合には、標識の輪郭や描かれている文字や図形を正しく認識することは難しくなるが、標識は、何かの陰に隠れないように、高いところに設けられることが多いから、ほとんどの場合は、標識の輪郭や、描かれている文字や図形を正しく認識することができ、適切に標識を抽出することが可能である。図4(a)には、以上のようにして、画像中で標識が写っている領域(標識領域500)が検出された様子が示されている。
【0040】
こうして画像中の標識領域500を抽出したら、その標識領域500の周囲の所定範囲に周囲領域を設定する。周囲領域は、標識領域の外縁から所定画素数までの範囲を設定しても良いし、あるいは標識領域の大きさを基準として、一定比率で拡大した領域を周囲領域として設定しても良い。図4(b)には、標識領域500の周りに周囲領域502が設定されている様子が示されている。このように設定された周囲領域について、平均明度あるいは平均彩度を検出する。もちろん、平均明度および平均彩度の両方を検出してもよい。
【0041】
そして、標識領域500内の明度が周囲領域502の平均明度に近づくように(あるいは、標識領域500内の彩度が周囲領域502の平均彩度に近づくように)、標識領域500の画像データを補正する。もちろん、周囲領域502において平均明度および平均彩度を検出した場合には、標識領域500の明度および彩度が平均明度および平均彩度に近づくように、画像データを補正しても良い。図4(c)には、標識領域500内の明度あるいは彩度を周囲領域502に近付けるように補正して得られた画像が概念的に示されている。
【0042】
一般に、標識の類は鮮やかな色彩が用いられ、明るく表示されることが多いため、画像に標識の類が写ってしまうと大変に目立ってしまい、画像の印象を大きく損なってしまいかねない。これに対して、本実施例のように、画像中で標識の類が写っている領域を検出して、この領域の明度や彩度が周囲領域に近付くように画像データを補正してやれば、画像中で標識の類を目立たなくすることができるので、たとえ標識の類が写ってしまった場合でも画像の印象を損なうことを回避することが可能となる。また、こうした補正は、比較的簡単な処理であり、わざわざ専用のアプリケーションプログラムを起動させずとも、画像の出力時に自動的に実行することができるので、標識などが写っていた場合でも、画像の印象を損なわないように簡単に補正して出力することが可能となる。
【0043】
以上では、室内で撮影した記念写真の画像を例に用いて説明した。もちろん、室内で撮影した画像に限らず、種々の画像に対しても、本実施例の画像出力処理を適用することで、適切に画像を補正して出力することが可能である。例えば、図5(a)に例示したように、夜景の画像に標識の類が写り込んでしまった場合には、明度および彩度に基づいて、あるいはこれらの情報に加えて色相や、輪郭、文字、図形などの情報に基づいて標識などの部分を抽出することで、標識の類を目立たないように補正することが可能である。
【0044】
また、図5(b)に例示したように、風景の中で標識の類が光を反射して目立ってしまう場合も生じ得る。このような場合でも、明度および彩度などに基づいて標識を検出することで、画像を適切に補正することが可能となる。逆に、標識の類が写っていたとしても、明度や彩度が周囲からそれほどかけ離れていなければ、標識も自然に画像に溶け込んでいると考えられ、むしろ補正しない方が自然な画像を得ることができる。このように、本実施例の画像出力処理では、明度および彩度(場合によっては、これに加えて色相や、輪郭など)に基づいて標識の類が写っている領域を検出することで、適切に画像を補正して出力することが可能となっている。
【0045】
以上、本実施例の画像検索装置について説明したが、本発明は上記すべての実施例および変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本実施例の画像処理装置を搭載した印刷装置の外観形状を示す斜視図である。
【図2】印刷装置が画像を出力する処理の流れを示したフローチャートである。
【図3】画像出力処理の中で行われる標識領域抽出処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】画像中に写った標識などが目立たないように補正される様子を概念的に示した説明図である。
【図5】種々の画像で標識などを補正可能な様子を例示した説明図である。
【符号の説明】
【0047】
10…印刷装置、 100…スキャナ部、 200…プリンタ部、
300…制御部、 500…標識領域、 502…周囲領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを読み込んで補正を加える画像処理装置であって、
画像中で周囲の領域よりも明度が所定明度以上高く、且つ彩度が所定彩度以上高い領域を、標識が写っている領域たる標識領域として抽出する標識領域抽出手段と、
前記標識領域の明度を、前記周囲の領域の明度に近づける方向に補正する画像データ補正手段と
を備える画像処理装置。
【請求項2】
画像データを読み込んで補正を加える画像処理装置であって、
画像中で周囲の領域よりも明度が所定明度以上高く、且つ彩度が所定彩度以上高い領域を、標識が写っている領域たる標識領域として抽出する標識領域抽出手段と、
前記標識領域の彩度を、前記周囲の領域の彩度に近づける方向に補正する画像データ補正手段と
を備える画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像処理装置であって、
前記標識領域抽出手段は、周囲の領域よりも明度が前記所定明度以上高く、且つ彩度が前記所定彩度以上高いことに加えて、所定の色相を有する領域を、前記標識領域として抽出する手段である画像処理装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の画像処理装置であって、
前記標識領域抽出手段は、周囲の領域よりも明度が前記所定明度以上高く、且つ彩度が前記所定彩度以上高いことに加えて、所定形状の輪郭を有する領域を、前記標識領域として抽出する手段である画像処理装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の画像処理装置であって、
前記標識領域抽出手段は、周囲の領域よりも明度が前記所定明度以上高く、且つ彩度が前記所定彩度以上高いことに加えて、所定形状の図形を内包する領域を、前記標識領域として抽出する手段である画像処理装置。
【請求項6】
画像データを読み込んで補正を加える画像処理方法であって、
画像中で周囲の領域よりも明度が所定明度以上高く、且つ彩度が所定彩度以上高い領域を、標識が写っている領域たる標識領域として抽出する標識領域抽出工程と、
前記標識領域の明度を、前記周囲の領域の明度に近づける方向に補正する画像データ補正工程と
を備える画像処理方法。
【請求項7】
画像データを読み込んで補正を加える画像処理方法であって、
画像中で周囲の領域よりも明度が所定明度以上高く、且つ彩度が所定彩度以上高い領域を、標識が写っている領域たる標識領域として抽出する標識領域抽出工程と、
前記標識領域の彩度を、前記周囲の領域の彩度に近づける方向に補正する画像データ補正工程と
を備える画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−244966(P2008−244966A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−83687(P2007−83687)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】