説明

画像処理装置、フォーカス調整方法及びコンピュータプログラム

【課題】検査対象物に複数の合焦位置の候補が存在する場合であっても、容易に最適な合焦位置を選択することが可能な画像処理装置、フォーカス調整方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】本発明に係る画像処理装置は、検査対象物を含む撮像領域を撮像する撮像部と、撮像した画像を表示する表示部と、検査対象物に対する合焦位置を調整するフォーカス調整部と、撮像して取得した画像データに対して画像処理を実行する画像処理部とを備える。検査対象物に対する合焦位置を変えながら検査対象物を撮像して取得した複数の異なる画像データに基づいて、撮像領域の一部の領域が合焦状態となる位置を合焦候補位置として複数抽出し、抽出した複数の合焦候補位置に関する合焦候補位置情報を表示部に表示する。表示された複数の合焦候補位置の中から検査対象物の所望の特徴部分が鮮明である画像に対応する合焦位置の選択を受け付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の合焦候補位置を抽出することができ、抽出した複数の合焦候補位置の中から最適な合焦位置を視認しながら選択することができる画像処理装置、フォーカス調整方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
検査対象物に欠陥が存在するか否かを検査する場合、検査対象物の外観を撮像装置で撮像し、撮像した画像に基づいて欠陥の存否を判定する。欠陥の存在を正しく判定するためには撮像した画像が鮮明である必要があり、通常はフォーカス調整を行ってから検査対象物を撮像している。フォーカス調整には手動調整と自動調整とがあるが、自動調整の方がユーザにとっては使い勝手が良い。
【0003】
自動でフォーカス調整を行う場合、矩形領域、円形領域等のフォーカスを調整する調整領域を設定し、設定された調整領域内で撮像される検査対象物について、撮像した画像の合焦度合いを評価し、最も合焦度合いが高い位置を合焦位置として抽出している。例えば特許文献1では、撮像部によるフォーカス(合焦)の度合いを示すフォーカス値を算出して、フォーカス値が最大となる最大フォーカス値を抽出し、最大フォーカス値に対応する最大フォーカス位置まで撮像部を移動させることで、撮像部から検査対象物までの被写体距離を調整する拡大観察装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−316432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、合焦度合いの評価には画像データの高周波成分の多少によって評価していた。つまり、設定された調整領域内の高周波成分が多いほどフォーカスが合っており、少ないほどフォーカスがずれていると評価されていた。
【0006】
しかし、設定された調整領域内でのみ高周波成分を抽出する場合、調整領域の大きさ、調整領域の周囲のにじみの影響により、意図しない評価がなされる場合が生じうる。図1は、従来の合焦度合いの評価の問題点を説明するための模式図である。
【0007】
図1(a)に示すように、フォーカスが合っていない、いわゆる非合焦状態では、図1(b)に示すフォーカスが合っている、いわゆる合焦状態と比べて、検査対象物の特徴部分500の周囲ににじみ部分501が存在する。この状態で調整領域502を設定した場合、図1(b)の合焦状態では、背景色一色であるのに対し、図1(a)の非合焦状態では、にじみ部分501の存在により背景色と異なる色が混じるので、高周波成分が図1(b)よりも多いと判断される可能性が高く、図1(a)に示す非合焦状態の方が合焦度合いが高いと誤認されるおそれがあった。
【0008】
また、図1(a)に示す非合焦状態では、検査対象物の特徴部分500の周囲に存在するにじみ部分501を含む画像となるため、適切な調整領域502を設定すること自体が困難である。つまり、にじみ部分501がある場合には、ウインドウ(調整領域)の設定によってはフォーカス調整を正しく行うことができない場合が生じうる。さらに、フォーカス調整を行う必要があるということは、フォーカスが合っていないことを意味しており、フォーカスが合っていない状態の画像上で、ユーザにウインドウ(調整領域)の設定作業を強いるため、一層ウインドウ(調整領域)の設定が困難になっていた。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、検査対象物に複数の合焦位置の候補が存在する場合であっても、容易に最適な合焦位置を選択することが可能な画像処理装置、フォーカス調整方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために第1発明に係る画像処理装置は、検査対象物を含む撮像領域を撮像する撮像部と、該撮像部で撮像した画像を表示する表示部と、検査対象物に対する合焦位置を調整するフォーカス調整機構を有するフォーカス調整部と、前記撮像部で撮像して取得した画像データに対して画像処理を実行する画像処理部とを備える画像処理装置において、前記フォーカス調整部は、前記フォーカス調整機構により検査対象物に対する合焦位置を変えながら、前記撮像部により検査対象物を撮像して取得した複数の異なる画像データに基づいて、前記撮像領域の一部の領域が合焦状態となる位置を合焦候補位置として複数抽出する合焦候補位置抽出手段と、抽出した複数の合焦候補位置に関する合焦候補位置情報を前記表示部に表示する候補表示手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、第2発明に係る画像処理装置は、第1発明において、前記候補表示手段は、前記表示部にてユーザが選択可能となるように抽出した複数の合焦候補位置に関する前記合焦候補位置情報を前記表示部に表示し、前記フォーカス調整部は、前記表示部に表示された複数の前記合焦候補位置の中から一の合焦候補位置の選択を受け付ける選択受付手段を備え、該選択受付手段で一の合焦候補位置の選択を受け付けた場合、少なくとも選択を受け付けた一の合焦候補位置に合焦位置が調整された画像を前記表示部に表示することを特徴とする。
【0012】
また、第3発明に係る画像処理装置は、第1又は第2発明において、前記フォーカス調整部は、抽出された複数の前記合焦候補位置の中から一の合焦候補位置の選択を受け付ける選択受付手段を備え、該選択受付手段で一の合焦候補位置の選択を受け付けた場合、選択を受け付けた一の合焦候補位置に合焦位置を調整することを特徴とする。
【0013】
また、第4発明に係る画像処理装置は、第1又は第2発明において、前記フォーカス調整部は、一の合焦候補位置の選択を受け付ける選択受付手段を備え、該選択受付手段で一の合焦候補位置の選択を受け付けた場合、前記候補表示手段は、選択を受け付けた一の合焦候補位置に合焦位置を調整した時点で撮像された画像を前記表示部に表示することを特徴とする。
【0014】
また、第5発明に係る画像処理装置は、第1又は第2発明において、前記候補表示手段は、複数の前記合焦候補位置のうち、前記撮像部との距離が最も短い合焦候補位置を前記表示部に表示することを特徴とする。
【0015】
また、第6発明に係る画像処理装置は、第1乃至第5発明のいずれか1つにおいて、前記フォーカス調整部は、事前に設定してある複数の小領域それぞれについて、合焦状態の度合いを示す合焦度を算出する合焦度算出手段と、前記小領域ごとに算出した合焦度が最大である合焦位置を取得する合焦位置取得手段とを備え、前記合焦候補位置抽出手段は、取得した前記小領域ごとの合焦位置に基づいて合焦候補位置を抽出することを特徴とする。
【0016】
次に、上記目的を達成するために第7発明に係るフォーカス調整方法は、検査対象物を含む撮像領域を撮像する撮像部と、該撮像部で撮像した画像を表示する表示部と、検査対象物に対する合焦位置を調整するフォーカス調整機構を有するフォーカス調整部と、前記撮像部で撮像して取得した画像データに対して画像処理を実行する画像処理部とを備える画像処理装置で実行することが可能なフォーカス調整方法において、前記フォーカス調整部は、前記フォーカス調整機構により検査対象物に対する合焦位置を変えながら、前記撮像部により検査対象物を撮像して取得した複数の異なる画像データに基づいて、前記撮像領域の一部の領域が合焦状態となる位置を合焦候補位置として複数抽出し、抽出した複数の合焦候補位置に関する合焦候補位置情報を前記表示部に表示することを特徴とする。
【0017】
また、第8発明に係るフォーカス調整方法は、第7発明において、前記表示部にてユーザが選択可能となるように抽出した複数の合焦候補位置に関する前記合焦候補位置情報を前記表示部に表示し、前記フォーカス調整部は、前記表示部に表示された複数の前記合焦候補位置の中から一の合焦候補位置の選択を受け付け、一の合焦候補位置の選択を受け付けた場合、少なくとも選択を受け付けた一の合焦候補位置に合焦位置が調整された画像を前記表示部に表示することを特徴とする。
【0018】
また、第9発明に係るフォーカス調整方法は、第7又は第8発明において、前記フォーカス調整部は、抽出された複数の前記合焦候補位置の中から一の合焦候補位置の選択を受け付け、一の合焦候補位置の選択を受け付けた場合、選択を受け付けた一の合焦候補位置に合焦位置を調整することを特徴とする。
【0019】
また、第10発明に係るフォーカス調整方法は、第7又は第8発明において、前記フォーカス調整部は、一の合焦候補位置の選択を受け付け、一の合焦候補位置の選択を受け付けた場合、選択を受け付けた一の合焦候補位置に合焦位置を調整した時点で撮像された画像を前記表示部に表示することを特徴とする。
【0020】
また、第11発明に係るフォーカス調整方法は、第7又は第8発明において、前記候補表示手段は、複数の前記合焦候補位置のうち、前記撮像部との距離が最も短い合焦候補位置を前記表示部に表示することを特徴とする。
【0021】
また、第12発明に係るフォーカス調整方法は、第7乃至第11発明のいずれか1つにおいて、前記フォーカス調整部は、事前に設定してある複数の小領域それぞれについて、合焦状態の度合いを示す合焦度を算出し、前記小領域ごとに算出した合焦度が最大である合焦位置を取得し、取得した前記小領域ごとの合焦位置に基づいて合焦候補位置を抽出することを特徴とする。
【0022】
次に、上記目的を達成するために第13発明に係るコンピュータプログラムは、検査対象物を含む撮像領域を撮像する撮像部と、該撮像部で撮像した画像を表示する表示部と、検査対象物に対する合焦位置を調整するフォーカス機構を有するフォーカス調整部と、前記撮像部で撮像して取得した画像データに対して画像処理を実行する画像処理部とを備える画像処理装置で実行することが可能なコンピュータプログラムにおいて、前記フォーカス調整部を、前記フォーカス調整機構により検査対象物に対する合焦位置を変えながら、前記撮像部により検査対象物を撮像して取得した複数の異なる画像データに基づいて、前記撮像領域の一部の領域が合焦状態となる位置を合焦候補位置として複数抽出する合焦候補位置抽出手段、及び抽出した複数の合焦候補位置に関する合焦候補位置情報を前記表示部に表示する候補表示手段として機能させることを特徴とする。
【0023】
また、第14発明に係るコンピュータプログラムは、第13発明において、前記候補表示手段を、前記表示部にてユーザが選択可能となるように抽出した複数の合焦候補位置に関する前記合焦候補位置情報を前記表示部に表示する手段として機能させ、前記フォーカス調整部を、前記表示部に表示された複数の前記合焦候補位置の中から一の合焦候補位置の選択を受け付ける選択受付手段、及び一の合焦候補位置の選択を受け付けた場合、少なくとも選択を受け付けた一の合焦候補位置に合焦位置が調整された画像を前記表示部に表示する手段として機能させることを特徴とする。
【0024】
また、第15発明に係るコンピュータプログラムは、第13又は第14発明において、前記フォーカス調整部を、抽出された複数の前記合焦候補位置の中から一の合焦候補位置の選択を受け付ける選択受付手段、及び一の合焦候補位置の選択を受け付けた場合、選択を受け付けた一の合焦候補位置に合焦位置を調整する手段として機能させることを特徴とする。
【0025】
また、第16発明に係るコンピュータプログラムは、第13又は第14発明において、前記フォーカス調整部を、一の合焦候補位置の選択を受け付ける選択受付手段として機能させ、一の合焦候補位置の選択を受け付けた場合、前記候補表示手段を、選択を受け付けた一の合焦候補位置に合焦位置を調整した時点で撮像された画像を前記表示部に表示する手段として機能させることを特徴とする。
【0026】
また、第17発明に係るコンピュータプログラムは、第13又は第14発明において、前記候補表示手段を、複数の前記合焦候補位置のうち、前記撮像部との距離が最も短い合焦候補位置を前記表示部に表示する手段として機能させることを特徴とする。
【0027】
また、第18発明に係るコンピュータプログラムは、第13乃至第17発明のいずれか1つにおいて、前記フォーカス調整部を、事前に設定してある複数の小領域それぞれについて、合焦状態の度合いを示す合焦度を算出する合焦度算出手段、及び前記小領域ごとに算出した合焦度が最大である合焦位置を取得する合焦位置取得手段として機能させ、前記合焦候補位置抽出手段を、取得した前記小領域ごとの合焦位置に基づいて合焦候補位置を抽出する手段として機能させることを特徴とする。
【0028】
第1発明、第7発明及び第13発明では、フォーカス調整機構により検査対象物に対する合焦位置を変えながら、撮像部により検査対象物を撮像して取得した複数の異なる画像データに基づいて、撮像領域の一部の領域が合焦状態となる位置を合焦候補位置として複数抽出する。抽出した複数の合焦候補位置に関する合焦候補位置情報を表示部に表示する。複数の合焦候補位置を抽出して、撮像領域のどの一部の領域が合焦状態であるのか画面上で確認しながらフォーカス調整を行うことができるので、ユーザは、検査対象物の所望の特徴部分が鮮明である画像に対応する合焦位置を容易に選択することが可能となる。
【0029】
第2発明、第8発明及び第14発明では、表示部にてユーザが選択可能となるように抽出した複数の合焦候補位置に関する合焦候補位置情報を表示部に表示し、表示部に表示された複数の合焦候補位置の中から一の合焦候補位置の選択を受け付け、一の合焦候補位置の選択を受け付けた場合、少なくとも選択を受け付けた一の合焦候補位置に合焦位置が調整された画像を表示する。これにより、合焦候補位置に対応する画像を表示することができ、選択を受け付けた撮像領域が正しいか否かを目視で確認することが可能となる。
【0030】
第3発明、第9発明及び第15発明では、抽出された複数の合焦候補位置の中から一の合焦候補位置の選択を受け付け、一の合焦候補位置の選択を受け付けた場合、選択を受け付けた一の合焦候補位置に合焦位置を調整するので、合焦候補位置に対応する画像を表示することができ、選択を受け付けた撮像領域が正しいか否かを目視で確認することが可能となる。
【0031】
第4発明、第10発明及び第16発明では、選択を受け付けた一の合焦候補位置に合焦位置を調整した時点で撮像された画像を表示部に表示するので、所望の特徴部分が鮮明に表示されているか否かを目視で確認することができ、所望の撮像領域に対応した合焦位置を容易に選択することが可能となる。
【0032】
第5発明、第11発明及び第17発明では、複数の合焦候補位置のうち、撮像部との距離が最も短い合焦候補位置を表示部に表示する。合焦状態となる可能性が高い、撮像部との距離が最も短い合焦候補位置を表示するので、フォーカス調整が不要になる確率が高く、場合によっては煩雑な操作を省略することが可能となる。
【0033】
第6発明、第12発明及び第18発明では、事前に設定してある複数の小領域それぞれについて、合焦状態の度合いを示す合焦度を算出し、小領域ごとに算出した合焦度が最大である合焦位置を取得する。取得した小領域ごとの合焦位置に基づいて合焦候補位置を抽出するので、合焦状態となる可能性が高い合焦候補位置を抽出することが可能となる。
【発明の効果】
【0034】
本発明では、複数の合焦候補位置を抽出して、撮像領域のどの一部の領域が合焦状態であるのか画面上で確認しながらフォーカス調整を行うことができるので、検査対象物の所望の特徴部分が鮮明である画像に対応する合焦位置を容易に選択することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】従来の合焦度合いの評価の問題点を説明するための模式図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る画像処理センサの構成を示す模式図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る画像処理センサの撮像装置の構成を示す外形図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る画像処理センサの撮像装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る画像処理センサの撮像装置のカメラモジュールのフォーカス調整部の構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る画像処理センサの表示装置の構成を示す正面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る画像処理センサの表示装置のモード切り換え画面の例示図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る画像処理センサの表示装置の設定画面の例示図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る画像処理センサの機能ブロック図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る画像処理センサの合焦度算出方法を説明するための模式図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る画像処理センサの、記憶された画像データに基づく合焦度算出方法を説明するための模式図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る画像処理センサの、算出した合焦度に基づく合焦候補位置の抽出方法を説明するためのテーブルである。
【図13】本発明の実施の形態に係る画像処理センサの、算出した合焦度がばらついている場合の合焦候補位置の抽出方法を説明するためのテーブルである。
【図14】本発明の実施の形態に係る画像処理センサで作成された高周波抽出画像の例示図である。
【図15】画素ごとに合焦度が最大である高周波抽出画像の画像番号を記した合焦度の配置を示す例示図である。
【図16】本発明の実施の形態に係る画像処理センサの表示装置のフォーカス自動調整画面の例示図である。
【図17】発明の実施の形態に係る画像処理センサの撮像装置のメイン基板のFPGA及びDSPのフォーカス自動調整処理の手順を示すフローチャートである。
【図18】合焦候補位置情報をタッチパネル上の候補ボタンの選択で表示する場合の、表示装置の合焦候補位置選択受付画面の例示図である。
【図19】合焦候補位置の選択をタッチパネル上で合焦対象位置の指定で受け付ける場合の、表示装置の合焦候補位置選択受付画面の例示図である。
【図20】合焦状態を順次選択可能とした、表示装置の合焦状態選択受付画面の例示図である。
【図21】合焦候補位置ごとに小領域を定める場合の、表示装置の合焦候補位置選択受付画面の例示図である。
【図22】本発明の実施の形態に係る画像処理センサの撮像装置のメイン基板のDSPの、高周波抽出画像に基づくフォーカス自動調整処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態に係る画像処理装置について、図面を参照して説明する。なお、本実施の形態の説明で参照する図面を通じて、同一又は同様の構成又は機能を有する要素については、同一又は同様の符号を付して、詳細な説明を省略する。以下、画像処理装置として画像処理センサを例に挙げて説明する。
【0037】
図2は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの構成を示す模式図である。図2に示すように、本実施の形態に係る画像処理センサは、撮像装置1と、撮像装置1とデータ通信することが可能に接続ケーブル3で接続されている表示装置2とで構成されている。もちろん、表示装置2の代わりに、ディスプレイを有する外部コンピュータであっても良い。なお、撮像装置1と表示装置2とが一体として構成されていても良い。
【0038】
撮像装置1は、内部に画像処理を実行するFPGA、DSP等を備えており、検査対象物を撮像する撮像素子を有するカメラモジュール(撮像部)と、検査対象物に対して光を照射する照明部とを備えている。撮像装置1をコンパクトにするべく、例えば図1に示すように、撮像装置1の正面の中央近傍にレンズ12を配置し、レンズ12の周囲を囲むように、照明部として複数のLED11を配置してある。なお、撮像装置1とは別に外部照明(リング照明等)を設けても良い。
【0039】
図3は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの撮像装置1の構成を示す外形図である。図3(a)は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの撮像装置1の構成を示す正面図を、図3(b)は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの撮像装置1の構成を示す平面図を、図3(c)は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの撮像装置1の構成を示す背面図を、それぞれ示している。
【0040】
図3(a)に示すように、撮像装置1はレンズ12を正面の中央近傍に配置しており、レンズ12の周囲を囲むように複数のLED11を配置してある。撮像時には、複数のLED11を点灯させることにより、検査対象物を含む撮像領域に光を照射し、検査対象物を含む撮像領域を明瞭に撮像することができる。
【0041】
図3(b)及び図3(c)に示すように、撮像装置1の背面には、外部の電源から電力の供給を受ける電源ケーブルを接続する電源コネクタ102と、表示装置2とデータ通信する接続ケーブル3を接続することが可能な接続コネクタ103とを備えている。また、手動でフォーカスを調整することができるフォーカス調整ネジ101も背面に備えている。
【0042】
図4は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの撮像装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。図4において、コネクタ基板16は、電源インタフェース161に設けてある電源コネクタ102(図3(b)及び図3(c)参照)を介して、外部の電源から電力の供給を受ける。電源基板18は、供給された電力を各基板に供給する。本実施の形態では、カメラモジュール14にはメイン基板13を介して電力を供給している。電源基板18のモータドライバ181は、カメラモジュール14のモータ141に駆動電力を供給し、オートフォーカスを実現している。すなわち、モータドライバ181及びモータ141は、フォーカス調整機構の一例として機能する。
【0043】
通信基板17は、メイン基板13から出力された欠陥を検出したか否かで検査対象物の良否を示すOK/NG信号(判定信号)を表示装置2へ送信する。判定信号を受信した表示装置2は、判定結果を表示する。
【0044】
照明基板(照明部)15は、検査対象物を撮像する撮像領域に光を照射する。照明基板15には複数のLED11が設けてあり、図示しないリフレクタはLED11の前方に設けてある。また、レンズ12は、短距離用又は長距離用のレンズユニットとして交換可能となっている。
【0045】
カメラモジュール(撮像部)14は、モータ141が回転することにより、オートフォーカス動作の制御を行うフォーカス調整部を備えており、フォーカス調整した後、メイン基板13からの撮像指示信号に応じて検査対象物を撮像する。本実施の形態では、撮像素子としてCMOS基板142を備えており、撮像されたカラー画像は、CMOS基板142にてダイナミックレンジを広げる変換特性に基づいてHDR画像へ変換され、メイン基板13のFPGA131へ出力される。つまり、CMOS基板142は、HDR画像を生成・出力する機能を備えており、例えばHDRCMOS等がこれに該当する。なお、画像処理センサの撮像装置1には、CMOS基板にてHDR画像に変換するか否かを切り替える切替部を設けても良い。切替部により、検査対象物を撮像した場合にハレーション等が生じ難いワークが搬送されてきたとき、HDR画像を生成しないよう切り替えることができ、ひいては演算処理負荷を軽減することができる。
【0046】
図5は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの撮像装置1のカメラモジュール14のフォーカス調整部の構成を示す斜視図である。図5に示すように、カメラモジュール14のCMOS基板142にベースマウント143を取り付けてある。ベースマウント143には、レンズホルダ144のレンズ12を支持するレンズ支持体121の上下方向(矢印方向)の動きを検知する上下検知用センサと、レンズ支持体121を移動させる機構の一部であるモータ141の回転を検知する回転検知用センサとを備えている(図示せず)。
【0047】
ベースマウント143には、レンズ支持体121とレンズ支持体121を移動させる機構とで構成されたレンズホルダ144を取り付けてある。図4に示すように、モータ141の回転軸141aに形成された雄ネジと、ナット141bに形成された雌ネジとが螺合することにより、モータ141の回転に応じてナット141bが矢印方向に直線移動する。ナット141bはレンズ支持体121を下方から押し上げるようになっており、レンズ支持体121は図示しない付勢部材により下方へ押し下げられている。したがって、ナット141bの矢印方向への往復運動をモータ141の回転により制御することで、ナット141bにより付勢部材の付勢力に抗してレンズ支持体121を上昇させたり、下降させたりすることができ、レンズ支持体121に設けてあるレンズ12と検査対象物との距離を調整することができる。
【0048】
図4に戻って、メイン基板13は、接続してある各基板の動作を制御する。例えば照明基板15に対しては、複数のLED11の点灯/消灯を制御する制御信号を、LEDドライバ151へ送信する。LEDドライバ151は、FPGA131からの制御信号に応じて、例えばLED11の点灯/消灯、光量等を調整する。また、カメラモジュール14のモータ141に対しては、電源基板18のモータドライバ181を介してオートフォーカス動作を制御する制御信号を、CMOS基板142に対しては、撮像指示信号等を、それぞれ送信する。
【0049】
メイン基板13のFPGA131は、照明制御、撮像制御をするとともに、取得した画像データに対する画像処理を実行する(画像処理部)。また、メイン基板13のDSP132は、画像データについて、エッジ検出処理、パターン検索処理等を実行する。パターン検索処理の結果として、欠陥を検出したか否かで検査対象物の良否を示すOK/NG信号(判定信号)を通信基板17へ出力する。演算処理結果等はメモリ133に記憶される。なお、本実施の形態では、エッジ検出処理、パターン検索処理等の比較的負荷の重い処理をDSP132により実行している。しかし、場合によってはFPGA131により実行するようにしても良い。要するに、画像処理部は、CMOS基板142で取得した画像データに対して何らかの画像処理を実行できれば、それで足りる。
【0050】
また、本実施の形態では、FPGA131が照明制御、撮像制御等を行っているが、これらをDSP132が行うようにしても良い。また、FPGA131とDSP132とが一体となった回路、すなわち主制御回路(主制御部)を設けても良い。要するに、主制御部は、複数のLED11の点灯/消灯を制御する制御信号をLEDドライバ151へ送信したり、オートフォーカス動作を制御する制御信号を電源基板18のモータドライバ181を介してカメラモジュール14のモータ141へ送信したり、撮像指示信号等をCMOS基板142へ送信したり、FPGA131及びDSP132の双方の機能を有する。
【0051】
図6は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの表示装置2の構成を示す正面図である。図6に示すように、表示装置2の前面の中央部分にはタッチパネル21が設けてあり、撮像された検査対象物のカラー画像を画面に表示するとともに、ユーザによる選択入力を受け付ける。
【0052】
また、表示装置2は、外部の電源から電力が供給される電源ケーブルを接続する電源コネクタ24と、撮像装置1とデータ通信する接続ケーブル3を接続することが可能な接続コネクタ25とを備えている。さらにUSBメモリ等と接続することが可能なUSBポート22を前面に設けてある。
【0053】
ユーザは、表示装置2のタッチパネル21の画面に表示されているボタンを選択することにより、画像処理センサの動作を制御する。そして、検査対象物の検査を実行する「検査モード」と、撮像装置1の条件設定を行う「設定モード」との切り換えを行うこともできる。言い換えると、本実施の形態に係る画像処理センサは、検査対象物の良否を判定する検査モード(Runモード)と、検査に用いる各種パラメータ(撮像パラメータ、照明パラメータ、画像処理パラメータ等)の設定を行う設定モード(非Runモード)とを切り替えるためのモード切替部を有している。図7は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの表示装置2のモード切り換え画面の例示図である。
【0054】
図7(a)は、「検査モード」の画面表示の例示図である。図7(a)に示すように検査対象物表示領域71に、撮像装置1が撮像した検査対象物の画像を表示する。左下の「センサ設定」ボタン72が切換手段として機能し、「センサ設定」ボタン72が選択された場合、「設定モード」へと切り換わり、図7(b)に示す画面へと画面遷移する。
【0055】
図7(b)は、「設定モード」の画面表示の例示図である。図7(b)に示すように、プログラム選択領域73にて、検査対象物の種類を選択する。ここで、「プログラム」とは、検査対象物の種類又は検査環境に応じて設定された一連のデータ群(パラメータ値の組み合わせ)を意味しており、検査対象物の種類ごとに異なるデータ群をプログラムとして記憶することができる。検査対象物の検査する条件に関する検査条件データには、フォーカス調整をする場合にフォーカスが合う位置を示すフォーカス位置データを含んでいる。
【0056】
また、検査対象物と比較する基準となる代表的画像であるマスタ画像が記憶されている場合、マスタ画像表示領域74にマスタ画像が表示される。「設定ナビ」ボタン75が選択された場合、詳細な設定を行う設定画面に画面遷移する。図7(b)の「運転開始」ボタン76は切換手段として機能し、「運転開始」ボタン76が選択された場合、「検査モード」へと切り換わり、図7(a)に示す画面へと画面遷移する。
【0057】
図8は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの表示装置2の設定画面の例示図である。図8に示す設定画面を通じて、ユーザは、撮像条件の設定(図8(a))から、パターンサーチする基準となるマスタ画像の登録(図8(b))、マスタ画像に対して輪郭サーチ等のツール設定(図8(c)〜図8(e))、出力割当(図8(f))、という流れで順次設定を行う。以下、詳細に説明する。図7(b)に示す「設定ナビ」ボタン75が選択された場合、まず図8(a)に示す撮像条件設定画面が表示される。撮像条件設定画面では、マスタ画像が記憶されていない場合には現在撮像している検査対象物の画像が、マスタ画像が記憶されている場合にはマスタ画像が主表示領域81に表示され、画面下部に撮像条件を設定する設定ボタン群が表示されている。例えば「トリガ条件」ボタンが選択された場合には、撮像装置1が検査対象物を撮像するタイミングを特定するトリガ条件を設定することができる。詳細な設定画面は省略するが、それぞれのボタンが選択された場合、それぞれの設定条件に応じて図6に示すタッチパネル21上に表示される。「フォーカス自動調整」ボタン83が選択された場合については後述する。
【0058】
また、より詳細な設定をするには、図8(a)の「拡張機能」ボタン82を選択すれば良い。「拡張機能」ボタン82が選択された場合、詳細な設定を行うためのボタンが別途表示される。このように撮像条件設定画面では、明るさの調整、フォーカスの調整、撮像範囲、照明のオン/オフ、ズームのオン/オフ等を設定することができる。フォーカスの調整については後述する。
【0059】
図8(a)の「進む」と表示された「画面遷移」ボタン84が選択された場合、図8(b)に示すマスタ画像登録画面が表示される。登録されたマスタ画像上に、以後、検査用の様々なツールを設定する。1つのマスタ画像に対して複数のプログラムを記憶することができる。つまり、同じマスタ画像に対して異なるツールを設定し、異なるプログラムとして記憶しておくことができる。
【0060】
マスタ画像は、現在撮像している検査対象物の画像を登録しても良いし、以前に撮像しておいた画像から選択して登録しても良い。現在撮像している画像を登録する場合、ユーザは「Live画像登録」ボタン85を選択すればよい。「Live画像登録」ボタン85が選択された時点で撮像されている画像がマスタ画像として登録される。
【0061】
図8(b)の「進む」と表示された「画面遷移」ボタン86が選択された場合、図8(c)に示すマスタ画像ごとのツール設定画面が表示される。マスタ画像上に、以後、検査用の様々なツールを設定する。
【0062】
ツール設定画面では、表示されているマスタ画像に、検査を実行するためのツールを追加設定する。図8(c)に示す「追加」ボタン87が選択された場合、図8(d)に示すツール選択画面が表示される。ツール選択画面で選択されたツールを追加設定する。例えば「輪郭サーチ」ボタン88が選択された場合、図8(e)に示す輪郭サーチ設定画面が表示される。輪郭サーチ設定画面で、マスタ画像のどの輪郭を撮像された検査対象物の画像と照合するのか設定しておくことにより、欠陥を検出したか否かで検査対象物の良否を判定することができる。以下、色面積、位置補正等の設定をすることができる。
【0063】
図8(c)の「進む」と表示された「画面遷移」ボタン89が選択された場合、図8(f)に示す出力割当画面が表示される。「完了」ボタン90が選択された場合、図7(b)に示す「設定モード」の画面表示に戻る。このように、ユーザは、図6に示す表示装置2のタッチパネル21上で、「進む」と表示された「画面遷移」ボタン84、86、89を順に選択することで、簡単かつ短時間に、検査に用いる各種パラメータを設定することができる。また、画像処理センサに慣れていないユーザであっても、表示装置2のタッチパネル21上で次の操作へ誘導されるので、各種パラメータを容易に設定することができる。
【0064】
図9は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの機能ブロック図である。図9において、撮像部901は、検査対象物を含む撮像領域を撮像する。図4のカメラモジュール14のうち、CMOS基板142の機能がこれに相当する。
【0065】
フォーカス調整部902は、検査対象物に対する合焦位置を調整する。フォーカス調整部902は、合焦候補位置抽出部911、選択受付部912、候補表示部913、合焦度算出部914、合焦位置取得部915を備えている。
【0066】
合焦候補位置抽出部911は、フォーカス調整機構により検査対象物に対する合焦位置を変えながら、カメラモジュール14により検査対象物を撮像して取得した複数の異なる画像データに基づいて、撮像領域の一部の領域が合焦状態となる位置を合焦候補位置として複数抽出する。合焦候補位置を抽出するために、合焦度算出部914は、事前に撮像領域に設定してある複数の小領域それぞれについて、合焦状態の度合いを示す合焦度を算出し、合焦位置取得部915は、小領域ごとに算出した合焦度が最大である合焦位置を取得する。合焦候補位置抽出部911は、合焦位置取得部915で取得した小領域ごとの合焦位置に基づいて、複数の合焦候補位置を抽出する。
【0067】
図10は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの合焦度算出方法を説明するための模式図である。図10(a)には、撮像された画像上に複数の仮想中心1001を12点設定している。そして、仮想中心1001それぞれから周囲数10ピクセルの調整領域(小領域)1002を設定し、調整領域1002ごとに高周波成分を抽出する。具体的には、調整領域1002内の画素数に対する高周波成分の画素数の比率(百分率)として、仮想中心1001ごと(調整領域1002ごと)に合焦度を算出して記憶しておく。
【0068】
もちろん、小領域として12個の調整領域1002を設定することに限定されるものではなく、明示的に複数の窓領域を配置する方法であっても良い。図10(b)は、撮像された画像上に複数の窓領域1003を配置してある。窓領域1003ごとに高周波成分を抽出し、窓領域1003内の画素数に対する高周波成分の画素数の比率(百分率)として、窓領域1003ごとに合焦度を算出して記憶しておく。
【0069】
図10に示す合焦度算出方法は、撮像部で撮像された画像に対して動的に合焦度を算出する方法であるが、事前に撮像されて記憶されている画像であれば高周波成分を細かく検出しても良い。この場合、図10とは異なり、仮想中心1001を12点設定する必要もなく、詳細な高周波抽出画像を全画面に対して作成することができる。
【0070】
図11は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの、記憶されている画像に基づく合焦度算出方法を説明するための模式図である。図11(a)に示す撮像された画像の高周波成分を抽出し、図11(b)に示す高周波抽出画像を得る。図11(b)では、白い部分に高周波成分が存在することを示しており、黒い部分には存在しないことを示している。もちろん、元の画像と同じサイズで高周波抽出画像を作成しても良いし、画像を圧縮する等により高周波抽出画像のサイズを変更しても良い。例えば図11(c)では、画像サイズを縮小した高周波抽出画像を示している。
【0071】
合焦位置取得部915は、合焦度の分布又は高周波抽出画像に基づいて複数の合焦候補位置を抽出する。図12は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの、算出した合焦度に基づく合焦候補位置の抽出方法を説明するためのテーブルである。なお、算出した合焦度には、適当な固定係数を乗じて重み付けしても良い。
【0072】
図12は、各仮想中心点のレンズ位置ごとの合焦度を示している。仮想中心点1〜12において、仮想中心点1〜8で合焦度が最大であるレンズ位置(合焦候補位置)は‘20’であり、仮想中心点9〜12で合焦度が最大であるレンズ位置は‘35’である。レンズ位置は、検査対象物と接触している状態が‘0’、離れるに従って、すなわちレンズ12がカメラモジュール14に近いほどレンズ位置の値は大きくなる。
【0073】
図12の例では、合焦候補位置として、レンズ位置‘20’と‘35’との2つを抽出することができる。複数の合焦候補位置のうち、カメラモジュール14により近い、すなわちフォーカス距離が短いのはレンズ位置‘35’であるので、フォーカス自動調整時にはレンズ位置‘35’にレンズ12を移動させて合焦候補位置に合焦位置を調整して終了する。
【0074】
以上、本実施の形態では、図10乃至図12を用いて説明しているように、調整領域1002内の画素数に対する高周波成分(又はエッジ成分)の画素数の比率(百分率)を、仮想中心1001ごと(調整領域1002ごと)の合焦度として算出しているが、合焦度の算出方法は特にこれに限定されるものではない。例えば、撮像された画像に対して、l×mフィルタを縦横にn画素ごとに移動させ(l、m、nともに任意の整数)、移動させるたびにl×m領域内にある全画素の画素値の分散値を計算し、分散値の2次元配列からなる高周波画像を作成する。作成した高周波画像に対し、事前に決められた重み付けで分散値の重み付け加算又は重み付け乗算を計算し、合焦度を算出する(すなわち、上述した仮想中心1001の座標に基づいて係数で重み付けし、各仮想中心1001における12個の合焦度を算出する)。このように高周波画像を作成することにより合焦度を算出することもできる。要するに、合焦度は、事前に設定してある複数の小領域それぞれについて、合焦状態の度合いを示すものであれば、特に算出方法は限定されるものではない。
【0075】
ここで、図12の例のように合焦度にばらつきがない場合よりも、実際には合焦度がばらつくことが多い。図13は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの、算出した合焦度がばらついている場合の合焦候補位置の抽出方法を説明するためのテーブルである。
【0076】
図12とは異なり、図13の例では、仮想中心点2、6、10で合焦度がばらついている。このようなばらつきが生じている場合、レンズ位置ごとに出現回数を降順にソートし、出現回数の多いレンズ位置から順に合焦候補位置として抽出する。抽出時には、抽出する合焦候補位置のレンズ位置近傍の合焦度から、合焦候補位置から除外する合焦度を選定する。
【0077】
例えば図13では、レンズ位置‘20’が出現回数6回と最多であるので、レンズ位置‘20’を合焦候補位置として抽出する。そして、同一の検査対象物に起因する合焦度の幅を‘5’とした場合、レンズ位置‘15’〜‘25’は同一の合焦候補位置とみなすことができ、レンズ位置‘15’及び‘25’は合焦候補位置から除外することができる。
【0078】
同様に、次にレンズ位置‘35’が出現回数3回と多いので、レンズ位置‘35’を合焦候補位置として抽出する。そして、同一の検査対象物に起因する合焦度の幅を‘5’とした場合、レンズ位置‘30’〜‘40’は同一の合焦候補位置とみなすことができ、レンズ位置‘30’及び‘40’は合焦候補位置から除外することができる。このように、レンズ位置‘20’、‘35’が合焦候補位置として抽出され、フォーカス距離が短いのはレンズ位置‘35’であるのでレンズ位置‘35’に自動調整される。
【0079】
合焦位置取得部915は、記憶してある、検査対象物を撮像した画像の高周波成分を抽出して作成された高周波抽出画像に基づいて、合焦候補位置を抽出することもできる。図14は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサで作成された高周波抽出画像の例示図である。
【0080】
図14(a)〜(g)は、左側に元の画像を、右側に合焦度に基づく高周波抽出画像を、それぞれ示している。右側の高周波抽出画像で白く表示されている部分は、高周波成分が多い部分、すなわち合焦度が所定値よりも大きい部分を示している。
【0081】
合焦位置取得部915は、作成された高周波抽出画像の画素ごとに合焦度が最大である高周波抽出画像を選択する。図15は、画素ごとに合焦度が最大である高周波抽出画像の画像番号を記した合焦度の配置を示す例示図である。
【0082】
図15では、画素ごとに合焦度が最大である図14に示す高周波抽出画像の画像番号を記している。例えば‘2’と記してある画素は、画像番号‘2’の合焦度が最大である旨を示している。そして、同じ画像番号が連続して記されている領域を合焦領域として特定することができ、合焦候補位置として抽出することができる。
【0083】
なお、合焦領域の境界では値が安定しないことが多いが、この場合は隣接する合焦領域に含めても合焦領域自体は大きく変動しない。また、合焦度の最大値が比較的小さい画素は、ノイズの影響を受けやすい。したがって、合焦領域として特定し得る合焦度の最小値を設けておき、最小値以下である場合には合焦領域に含めないようにしても良い。
【0084】
また、元の画像ににじみ部分等が存在する場合、高周波成分が多いと判断され、合焦状態であると誤認されるおそれがある。それを回避するべく、高周波抽出画像の各画素をそのまま比較するのではなく、元の画像(図14の左側の画像)に対して画素ごとにフィルタ処理した値、あるいは標準偏差を算出して除算した値で比較して、値が最大である高周波抽出画像を選択しても良い。
【0085】
さらに、模様によっては高周波成分が誤って多く算出されるおそれがある。そこで、画素ごとに、周囲の画素値に重み付けをして画素値を決定する、あるいは周囲の画素値の最大値を代表値として画素値を決定することにより、決定した画素値に基づく高周波抽出画像を作成しても良い。このようにすることで、模様による誤差の影響を低減することができる。したがって、高い精度で高周波抽出画像から画素ごとの合焦度が最大である領域を合焦領域として特定することができ、合焦候補位置として抽出することができる。
【0086】
もちろん、上述した方法を組み合わせることで、より高い精度で高周波抽出画像から画素ごとの合焦度が最大である領域を合焦領域として特定することができ、合焦候補位置として抽出することができる。
【0087】
図9に戻って、選択受付部912は、抽出された複数の合焦候補位置の中から、一の合焦候補位置の選択を受け付ける。選択を受け付ける方法は特に限定されるものではなく、表示装置2のタッチパネル21に表示されている合焦候補位置を識別することが可能な情報の選択を受け付けることができれば良い。
【0088】
なお、選択受付部912で、一の合焦候補位置の選択を受け付けた場合、選択を受け付けた一の合焦候補位置に合焦位置を調整する。具体的には、DSP132(FPGA131でも良い)は、モータドライバ181を介してカメラモジュール14のモータ141に回転指示を送信し、レンズ12を移動させて選択を受け付けた一の合焦候補位置に合焦位置を調整する。
【0089】
候補表示部913は、選択を受け付けた一の合焦候補位置に合焦位置を調整した時点で撮像された検査対象物の画像を表示する。候補表示部913は、抽出した複数の合焦候補位置に関する合焦候補位置情報を、表示されている画像に重畳して表示することが好ましい。どの合焦候補位置が検査対象物の所望の特徴部分が鮮明に表示されているか否かを目視で確認することができ、所望の特徴部分に対応した合焦位置を選択することができるからである。
【0090】
そして、画像処理部903は、フォーカス調整された画像データに対して画像処理を実行する。メイン基板13のFPGA131による、撮像して取得した画像データに対する前処理、例えば明度調整、ホワイトノイズ調整等の処理がこれに該当する。
【0091】
本実施の形態では、図7(b)に示す「設定モード」画面から、フォーカス調整を行う場合の検査条件データを設定して記憶する。図7(b)に示す「設定モード」画面から、「設定ナビ」ボタン75を選択し、図8(a)に示す画面が表示される。そして、図8(a)の「フォーカス自動調整」ボタン83を選択することで、フォーカス調整を行う。
【0092】
図16は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの表示装置2のフォーカス自動調整画面の例示図である。図16(a)では、主表示領域160に現在撮像している検査対象物の画像が表示されている。この状態で「フォーカス自動調整」ボタン162が選択された場合、フォーカスの自動調整が実行される。
【0093】
具体的には、「フォーカス自動調整」ボタン162が選択された時点で、DSP132はモータドライバ181に回転制御信号を送信し、モータ141を回転させる。そして、検査対象物との距離が最も短い(近い)位置から最も遠い位置までレンズ12を移動させ、移動中に検査対象物を複数枚撮像する。撮像した複数枚の画像データ、例えば合焦度に基づいて複数の合焦候補位置を抽出する。
【0094】
そして、複数抽出される合焦候補位置のうち、カメラモジュール14に最も近い、すなわちフォーカス距離が最も短い合焦候補位置までレンズ12を移動させて合焦候補位置に合焦位置を調整してフォーカス自動調整を終了する。図16(b)は、フォーカス自動調整完了時の調整完了画面の例示図である。
【0095】
主表示領域160に表示されている画像は、図16(a)では、表示されている検査対象物の画像の左右の画像ともにぼけて表示されていたのに対し、図16(b)では右側の画像が鮮明に表示されている。これは、フォーカス距離が短い合焦候補位置にレンズ12が移動しているからである。
【0096】
調整完了画面には、合焦候補位置164、165及び現在の合焦位置163が表示されている。図16(b)の例では、現在の合焦位置163は合焦候補位置165と一致している。なお、図16(b)の調整完了画面には、画面下方に、左端をFar、右端をNearとする1本のバーが表示されており、合焦候補位置164、165を示すボタンは、表示されたバーの上でそれぞれ対応する合焦候補位置の近傍に配置されている。これにより、ユーザは、合焦候補位置164、165のフォーカス距離がどれくらいであるかを一見して把握することができる。
【0097】
また、現在の合焦位置163を示す逆三角の図形も、表示されたバーの上で対応する合焦候補位置の近傍に配置されている(図16(b)では合焦候補位置165を指す位置に、図16(c)では合焦候補位置164を指す位置に配置されている)。これにより、ユーザは、現在表示されている画像のフォーカス距離がどれくらいであるかを一見して把握することができる。
【0098】
なお、現在の合焦位置163を示すために、図16(c)に示すような逆三角形の図形でなく、例えば合焦候補位置164を示すボタン又は合焦候補位置165を示すボタンのうち、現在の合焦位置163を示すボタンを光らせても良い。要するに、抽出した複数の合焦候補位置をユーザが表示装置2のタッチパネル21上で選択することが可能となるように、抽出した複数の合焦候補位置に関する合焦候補位置情報(好ましくは複数の合焦候補位置及び現在の合焦位置)を表示する。
【0099】
ユーザは、現在の合焦位置163を他の合焦候補位置164へ変更する操作を行うことで、他の合焦候補位置にレンズ12を移動させることができる。例えば、表示されている他の合焦候補位置164を指166でタッチすることにより、現在の合焦位置163が他の合焦候補位置164へ変更され、主表示領域160に表示される画像も変更される。
【0100】
図16(c)は、他の合焦候補位置164へ変更した場合の調整完了画面の例示図である。図16(c)では、左側の画像のみが鮮明に表示されている。これは、フォーカス距離が異なる他の合焦候補位置164にレンズ12が移動しているからである。
【0101】
したがって、フォーカス自動調整を一度行うことで、複数の合焦候補位置を抽出することができ、ユーザは、表示される画像を見ながら、所望の合焦候補位置を選択することができる。また、ユーザは調整範囲、仮想中心点等を指定する必要もなく、容易に所望の合焦候補位置に合焦位置を調整することが可能となる。
【0102】
図17は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの撮像装置1のメイン基板13のFPGA131及びDSP132のフォーカス自動調整処理の手順を示すフローチャートである。FPGA131は、フォーカス自動調整の開始指示を受け付け(ステップS1701)、レンズ12をカメラモジュール14に最も近い、すなわちフォーカス距離が最も短い調整領域に対応する撮像位置へ移動させる移動指示を、モータドライバ181へ送信する(ステップS1702)。モータドライバ181は、移動指示に従ってモータ141を回転させ、レンズ12をカメラモジュール14に最も近い、すなわち検査対象物から離れた位置に移動させる。
【0103】
そして、FPGA131は、撮像装置1のカメラモジュール14のCMOS基板142へ、検査対象物の撮像指示を送信し(ステップS1703)、撮像指示を受信したCMOS基板142で撮像した検査対象物の画像を取得する(ステップS1704)。
【0104】
DSP132は、取得した画像の画像データの合焦度を算出する(ステップS1705)。ここでは、図10及び図11で説明した合焦度算出方法を用いて合焦度を算出する。DSP132は、取得した画像データの全ての調整領域について合焦度を算出したか否かを判断する(ステップS1706)。
【0105】
DSP132が、まだ合焦度を算出していない調整領域が存在すると判断した場合(ステップS1706:NO)、DSP132は、次の調整領域に対応する撮像位置への移動指示をモータドライバ181へ送信する(ステップS1707)。モータドライバ181は、移動指示に従ってモータ141を回転させ、レンズ12を次の撮像位置へ移動させる。DSP132は、処理をステップS1703へ戻して、上述した処理を繰り返す。
【0106】
DSP132が、全ての調整領域について合焦度を算出したと判断した場合(ステップS1706:YES)、DSP132は、合焦候補位置を抽出する(ステップS1708)。ここでは、図12及び図13で説明した合焦候補位置の抽出方法を用いる。DSP132は、抽出した複数の合焦候補位置に関する合焦候補位置情報の表示指示を、表示装置2のタッチパネル21へ送信する(ステップS1709)。
【0107】
合焦候補位置情報としては、例えば図16に示す合焦候補位置164、165の表示に限定されるものではない。図18は、合焦候補位置情報をタッチパネル21上の候補ボタンの選択で表示する場合の、表示装置2の合焦候補位置選択受付画面の例示図である。
【0108】
図18(a)に示すように、画像表示部180に合焦候補位置に対応する画像データのサムネイル画像等を表示しておき、「候補」ボタン182、183の選択を受け付けることにより、選択を受け付けた画像を表示する。例えば「候補」ボタン182の選択を受け付けた場合には、図18(b)に示す画像を表示する。画像の左側の模様に焦点が合っていることがわかる。
【0109】
一方、「候補」ボタン183の選択を受け付けた場合には、図18(c)に示す画像を表示する。画像の右側の模様に焦点が合っていることがわかる。このように複数の合焦候補位置情報を同時に表示し、合焦候補位置情報の指定を受け付けることにより、合焦候補位置の選択を受け付けることができる。
【0110】
また、合焦候補位置情報を表示していなくても、直接、タッチパネル21上で合焦候補位置の選択を受け付けることができる。図19は、合焦候補位置の選択をタッチパネル21上の合焦対象位置の指定で受け付ける場合の、表示装置2の合焦候補位置選択受付画面の例示図である。
【0111】
図19(a)に示すように、検査対象物の画像を画像表示部191に表示しておき、指192、193が指し示す位置の選択を受け付けることにより、選択を受け付けた位置の画素に対応して記憶してある合焦候補位置へレンズ12を移動させて撮像した画像を表示する。例えば指192が指し示す位置の選択を受け付けた場合には、図19(b)に示す画像を表示する。画像の左側の模様に焦点が合っていることがわかる。
【0112】
一方、指193が指し示す位置の選択を受け付けた場合には、図19(c)に示す画像を表示する。画像の右側の模様に焦点が合っていることがわかる。このように複数の合焦候補位置情報を直接に画面上に表示することなく、合焦候補位置の選択を受け付けることができる。
【0113】
また、順次、合焦候補位置情報を選択することができるようにしても良い。図20は、合焦状態を順次選択可能とした、表示装置2の合焦状態選択受付画面の例示図である。
【0114】
図20(a)に示すように、検査対象物の画像を画像表示部201に表示しておき、「次の候補」ボタン202又は「前の候補」ボタン204の選択を受け付けることにより、順次、記憶してある合焦候補位置へレンズ12を移動させて撮像した画像を表示する。例えば「次の候補」ボタン202の選択を受け付けた場合には、図20(b)に示す画像を表示する。そして、表示されている画像を確認して、合焦位置とする場合には、「確定」ボタン203の選択を受け付ければ良い。
【0115】
さらに、表示されている画像を同一の合焦候補位置ごとに小領域を定めて記憶し、小領域単位で選択を受け付けても良い。図21は、合焦候補位置ごとに小領域を定める場合の、表示装置2の合焦候補位置選択受付画面の例示図である。
【0116】
図21(a)に示すように、検査対象物の画像を画像表示部201に表示しておき、合焦候補位置ごとに小領域211、212、213に区分けしておく。画面表示においては、各小領域を色分け表示しても良い。
【0117】
この状態で、各小領域211、212、213の選択を受け付ける。例えば小領域211の選択を受け付けた場合、図21(b)に示すように、選択を受け付けた小領域211が合焦状態である画像を含む画面が表示される。同様に、小領域212の選択を受け付けた場合、図21(c)に示すように、選択を受け付けた小領域212が合焦状態である画像を含む画面が表示される。小領域213の選択を受け付けた場合、図21(d)に示すように、選択を受け付けた小領域213が合焦状態である画像を含む画面が表示される。
【0118】
もちろん、検査対象物を撮像した画像の高周波成分を抽出して作成された高周波抽出画像に基づいて、合焦候補位置を抽出しても良い。図22は、本発明の実施の形態に係る画像処理センサの撮像装置1のメイン基板13のDSP132の、高周波抽出画像に基づくフォーカス自動調整処理の手順を示すフローチャートである。DSP132は、フォーカス自動調整の開始指示を受け付け(ステップS2201)、記憶してある検査対象物の画像データをレンズ位置の順にソートする(ステップS2202)。DSP132は、最初のレンズ位置における検査対象物の画像データを読み出す(ステップS2203)。
【0119】
DSP132は、読み出した画像データの合焦度を算出する(ステップS2204)。DSP132は、記憶してある全ての画像データについて合焦度を算出したか否かを判断する(ステップS2205)。
【0120】
DSP132が、まだ合焦度を算出していない画像データが存在すると判断した場合(ステップS2205:NO)、DSP132は、次の画像データを読み出し(ステップS2206)、処理をステップS2204へ処理を戻して、上述した処理を繰り返す。
【0121】
DSP132が、全ての画像データについて合焦度を算出したと判断した場合(ステップS2205:YES)、DSP132は、合焦候補位置を抽出する(ステップS2207)。ここでは、図14及び図15で説明した合焦候補位置の抽出方法を用いる。DSP132は、抽出した複数の合焦候補位置に関する合焦候補位置情報を表示する表示指示を、表示装置2のタッチパネル21へ送信する(ステップS2208)。
【0122】
以上のように本実施の形態によれば、複数の合焦候補位置を抽出して、撮像領域のどの一部の領域が合焦状態であるのか画面上で確認しながらフォーカス調整を行うことができるので、検査対象物の所望の特徴部分が鮮明である画像に対応する合焦位置を容易に選択することが可能となる。
【0123】
つまり、本実施の形態に係る撮像装置1では、モータドライバ181及びモータ141で構成されるフォーカス調整機構により、検査対象物に対する合焦位置を変えながら、カメラモジュール14により検査対象物を撮像し、複数の異なる画像データを取得する。そして、取得した複数の画像データに基づいて、撮像領域の一部の領域が合焦状態となる位置を合焦候補位置として複数抽出し、抽出した複数の合焦候補位置に関する合焦候補位置情報を表示装置2に表示する。これにより、ユーザは、検査対象物の所望の特徴部分が鮮明である画像に対応する合焦位置を容易に選択することができる。
【0124】
なお、検査対象物を撮像し、複数の異なる画像データを取得するタイミングと、合焦候補位置を複数抽出するタイミングとは、特に限定されるものではない。例えば、最初に複数の異なる画像データを全て取得した後に、取得した全ての画像データを用いて合焦候補位置を複数抽出しても良いし、例えば予め合焦候補位置を3個抽出すると決めておき、画像データの取得と合焦候補位置の抽出とを交互に行い、合焦候補位置が3個抽出された時点で終了するようにしても良い。
【0125】
後者について、さらに具体的には、画像データを取得し、合焦候補位置を1個抽出した場合には、抽出した合焦候補位置を記憶しておき、次に取得した画像データに基づいて合焦候補位置を抽出するときには、既に記憶されている合焦候補位置と異なる位置か否かを判断する。異なる位置であると判断した場合には、新たな合焦候補位置として抽出する。一方、同じ位置であると判断した場合には、新たな合焦候補位置として抽出しない(既に抽出して記憶されている合焦候補位置と同じであるとみなす)。このような処理を繰り返し、合焦候補位置が3個抽出された時点で画像データの取得を終了しても良い。
【0126】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内であれば多種の変更、改良等が可能である。例えば撮像装置1と表示装置2とは、接続ケーブル3で直結されている形態に限定されるものではなく、LAN、WAN等のネットワーク網を介して接続されていても良いことは言うまでもない。また、本実施の形態では撮像装置1と表示装置2とは別体となっているが、両者が一体になった画像処理装置であっても良い。
【符号の説明】
【0127】
1 撮像装置
2 表示装置
3 接続ケーブル
13 メイン基板
14 カメラモジュール(撮像部)
21 タッチパネル
131 FPGA(制御部)
141 モータ
142 CMOS基板(撮像素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物を含む撮像領域を撮像する撮像部と、
該撮像部で撮像した画像を表示する表示部と、
検査対象物に対する合焦位置を調整するフォーカス調整機構を有するフォーカス調整部と、
前記撮像部で撮像して取得した画像データに対して画像処理を実行する画像処理部と
を備える画像処理装置において、
前記フォーカス調整部は、
前記フォーカス調整機構により検査対象物に対する合焦位置を変えながら、前記撮像部により検査対象物を撮像して取得した複数の異なる画像データに基づいて、前記撮像領域の一部の領域が合焦状態となる位置を合焦候補位置として複数抽出する合焦候補位置抽出手段と、
抽出した複数の合焦候補位置に関する合焦候補位置情報を前記表示部に表示する候補表示手段と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記候補表示手段は、前記表示部にてユーザが選択可能となるように抽出した複数の合焦候補位置に関する前記合焦候補位置情報を前記表示部に表示し、
前記フォーカス調整部は、前記表示部に表示された複数の前記合焦候補位置の中から一の合焦候補位置の選択を受け付ける選択受付手段を備え、
該選択受付手段で一の合焦候補位置の選択を受け付けた場合、少なくとも選択を受け付けた一の合焦候補位置に合焦位置が調整された画像を前記表示部に表示することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記フォーカス調整部は、
抽出された複数の前記合焦候補位置の中から一の合焦候補位置の選択を受け付ける選択受付手段を備え、
該選択受付手段で一の合焦候補位置の選択を受け付けた場合、選択を受け付けた一の合焦候補位置に合焦位置を調整することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記フォーカス調整部は、
一の合焦候補位置の選択を受け付ける選択受付手段を備え、
該選択受付手段で一の合焦候補位置の選択を受け付けた場合、前記候補表示手段は、選択を受け付けた一の合焦候補位置に合焦位置を調整した時点で撮像された画像を前記表示部に表示することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記候補表示手段は、複数の前記合焦候補位置のうち、前記撮像部との距離が最も短い合焦候補位置を前記表示部に表示することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記フォーカス調整部は、
事前に設定してある複数の小領域それぞれについて、合焦状態の度合いを示す合焦度を算出する合焦度算出手段と、
前記小領域ごとに算出した合焦度が最大である合焦位置を取得する合焦位置取得手段と
を備え、
前記合焦候補位置抽出手段は、取得した前記小領域ごとの合焦位置に基づいて合焦候補位置を抽出することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
検査対象物を含む撮像領域を撮像する撮像部と、
該撮像部で撮像した画像を表示する表示部と、
検査対象物に対する合焦位置を調整するフォーカス調整機構を有するフォーカス調整部と、
前記撮像部で撮像して取得した画像データに対して画像処理を実行する画像処理部と
を備える画像処理装置で実行することが可能なフォーカス調整方法において、
前記フォーカス調整部は、
前記フォーカス調整機構により検査対象物に対する合焦位置を変えながら、前記撮像部により検査対象物を撮像して取得した複数の異なる画像データに基づいて、前記撮像領域の一部の領域が合焦状態となる位置を合焦候補位置として複数抽出し、
抽出した複数の合焦候補位置に関する合焦候補位置情報を前記表示部に表示することを特徴とするフォーカス調整方法。
【請求項8】
前記表示部にてユーザが選択可能となるように抽出した複数の合焦候補位置に関する前記合焦候補位置情報を前記表示部に表示し、
前記フォーカス調整部は、前記表示部に表示された複数の前記合焦候補位置の中から一の合焦候補位置の選択を受け付け、
一の合焦候補位置の選択を受け付けた場合、少なくとも選択を受け付けた一の合焦候補位置に合焦位置が調整された画像を前記表示部に表示することを特徴とする請求項7記載のフォーカス調整方法。
【請求項9】
前記フォーカス調整部は、
抽出された複数の前記合焦候補位置の中から一の合焦候補位置の選択を受け付け、
一の合焦候補位置の選択を受け付けた場合、選択を受け付けた一の合焦候補位置に合焦位置を調整することを特徴とする請求項7又は8に記載のフォーカス調整方法。
【請求項10】
前記フォーカス調整部は、
一の合焦候補位置の選択を受け付け、
一の合焦候補位置の選択を受け付けた場合、選択を受け付けた一の合焦候補位置に合焦位置を調整した時点で撮像された画像を前記表示部に表示することを特徴とする請求項7又は8に記載のフォーカス調整方法。
【請求項11】
前記候補表示手段は、複数の前記合焦候補位置のうち、前記撮像部との距離が最も短い合焦候補位置を前記表示部に表示することを特徴とする請求項7又は8に記載のフォーカス調整方法。
【請求項12】
前記フォーカス調整部は、
事前に設定してある複数の小領域それぞれについて、合焦状態の度合いを示す合焦度を算出し、
前記小領域ごとに算出した合焦度が最大である合焦位置を取得し、
取得した前記小領域ごとの合焦位置に基づいて合焦候補位置を抽出することを特徴とする請求項7乃至11のいずれか一項に記載のフォーカス調整方法。
【請求項13】
検査対象物を含む撮像領域を撮像する撮像部と、
該撮像部で撮像した画像を表示する表示部と、
検査対象物に対する合焦位置を調整するフォーカス調整機構を有するフォーカス調整部と、
前記撮像部で撮像して取得した画像データに対して画像処理を実行する画像処理部と
を備える画像処理装置で実行することが可能なコンピュータプログラムにおいて、
前記フォーカス調整部を、
前記フォーカス調整機構により検査対象物に対する合焦位置を変えながら、前記撮像部により検査対象物を撮像して取得した複数の異なる画像データに基づいて、前記撮像領域の一部の領域が合焦状態となる位置を合焦候補位置として複数抽出する合焦候補位置抽出手段、及び
抽出した複数の合焦候補位置に関する合焦候補位置情報を前記表示部に表示する候補表示手段
として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項14】
前記候補表示手段を、前記表示部にてユーザが選択可能となるように抽出した複数の合焦候補位置に関する前記合焦候補位置情報を前記表示部に表示する手段として機能させ、
前記フォーカス調整部を、
前記表示部に表示された複数の前記合焦候補位置の中から一の合焦候補位置の選択を受け付ける選択受付手段、及び
一の合焦候補位置の選択を受け付けた場合、少なくとも選択を受け付けた一の合焦候補位置に合焦位置が調整された画像を前記表示部に表示する手段
として機能させることを特徴とする請求項13記載のコンピュータプログラム。
【請求項15】
前記フォーカス調整部を、
抽出された複数の前記合焦候補位置の中から一の合焦候補位置の選択を受け付ける選択受付手段、及び
一の合焦候補位置の選択を受け付けた場合、選択を受け付けた一の合焦候補位置に合焦位置を調整する手段
として機能させることを特徴とする請求項13又は14に記載のコンピュータプログラム。
【請求項16】
前記フォーカス調整部を、
一の合焦候補位置の選択を受け付ける選択受付手段として機能させ、
一の合焦候補位置の選択を受け付けた場合、前記候補表示手段を、選択を受け付けた一の合焦候補位置に合焦位置を調整した時点で撮像された画像を前記表示部に表示する手段
として機能させることを特徴とする請求項13又は14に記載のコンピュータプログラム。
【請求項17】
前記候補表示手段を、複数の前記合焦候補位置のうち、前記撮像部との距離が最も短い合焦候補位置を前記表示部に表示する手段として機能させることを特徴とする請求項13又は14に記載のコンピュータプログラム。
【請求項18】
前記フォーカス調整部を、
事前に設定してある複数の小領域それぞれについて、合焦状態の度合いを示す合焦度を算出する合焦度算出手段、及び
前記小領域ごとに算出した合焦度が最大である合焦位置を取得する合焦位置取得手段として機能させ、
前記合焦候補位置抽出手段を、取得した前記小領域ごとの合焦位置に基づいて合焦候補位置を抽出する手段
として機能させることを特徴とする請求項13乃至17のいずれか一項に記載のコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図17】
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【図22】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−109271(P2013−109271A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256012(P2011−256012)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】