説明

画像処理装置、プログラム、及び方法

【課題】被写体毎、画像の領域毎に適切な奥行きとなる被写体距離を算出する画像処理装置、プログラム、及び方法を提供する。
【解決手段】画像と、該画像のそれぞれの領域の被写体距離情報とを取得する取得部と、前記取得部が取得したそれぞれの領域の被写体距離情報を1つの距離画像とみなして、該距離画像を空間周波数画像にフーリエ変換するフーリエ変換部と、フーリエ変換した前記空間周波数画像の複数の周波数成分の値のうち、予め定められた周波数帯域の周波数成分の値を低減させる低減部と、予め定められた周波数帯域の周波数成分の値が低減された前記空間周波数画像を逆フーリエ変換して出力距離画像を生成する逆フーリエ変換部と、逆フーリエ変換した前記出力距離画像に基づく被写体距離情報を前記画像に対応づけて記憶する記憶部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、プログラム、及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被写体距離情報に応じて、立体的な印刷画像を形成する技術が知られている。例えば、下記特許文献1には、被写体距離が長くなるほど奥行き情報の縮小度合いを大きくして立体印刷する技術が記載されている。また、下記特許文献2には、印刷画像に写っているそれぞれの被写体を、被写体距離に応じた段階の高さでそれぞれ突出させる技術が記載されている。
【特許文献1】特開平11−344777号公報
【特許文献2】特開平7−287326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1の技術によれば、被写体距離が長くなるほど奥行きが短くなるので、奥行きを縮小させたい被写体の奥行き情報が長くなったり、奥行きを縮小させたくない被写体の奥行きが短くなったりして、適切な奥行きにすることができない。例えば、メインとなる被写体の前に、他の被写体がいる場合は、該他の被写体の奥行きが大きく再現できるが、メイン被写体の奥行きは微小となってしまう。したがって、被写体毎に適切な奥行きを付けることはできず、違和感のある立体画像となってしまう。また、上記特許文献2の技術によれば、被写体距離情報に基づいて3段階で被写体を突出させるので、被写体毎に適切な奥行きを付けることができず、違和感のある立体画像となってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、画像処理装置であって、画像と、該画像のそれぞれの領域の被写体距離情報とを取得する取得部と、前記取得部が取得したそれぞれの領域の被写体距離情報を1つの入力距離画像とみなして、該入力距離画像を空間周波数画像にフーリエ変換するフーリエ変換部と、フーリエ変換した前記空間周波数画像の複数の周波数成分の値のうち、予め定められた周波数帯域の周波数成分の値を低減させる低減部と、予め定められた周波数帯域の周波数成分の値が低減された前記空間周波数画像を逆フーリエ変換して出力距離画像を生成する逆フーリエ変換部と、逆フーリエ変換した前記出力距離画像に基づく被写体距離情報を前記画像に対応づけて記憶する記憶部とを備える。
【0005】
前記記憶部に記憶された前記画像を、対応づけて記憶されている被写体距離情報に基づいて立体的に印刷する画像形成部をさらに備えてよい。
【0006】
前記低減部は、周波数が低いほど周波数成分の値を大きく低減してよい。
【0007】
前記低減部は、所定の周波数より低い周波数帯域の周波数成分の値を低減してよい。
【0008】
前記低減部は、人間の目の空間周波数応答が一番高くなる周波数を前記所定の周波数とし、該所定の周波数より低い周波数成分の値を低減してよい。
【0009】
前記低減部は、さらに、前記所定の周波数より高い周波数帯域の周波数成分の値を低減するとともに、周波数が高いほど周波数成分の値を大きく低減してよい。
【0010】
前記低減部は、前記予め定められた周波数帯域の周波数成分の重み付けを小さくすることにより、周波数成分の値を低減してよい。
【0011】
前記低減部は、人間の目の空間周波数応答に対応する重み付けで、周波数成分の値を低減してよい。
【0012】
前記低減部は、人間の目の輝度及び感度の少なくとも一方の空間周波数応答に対応する重み付けで、周波数成分の値を低減してよい。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の第2の態様においては、プログラムであって、コンピュータを、画像と、該画像のそれぞれの領域の被写体距離情報とを取得する取得部と、前記取得部が取得したそれぞれの領域の被写体距離情報を1つの入力距離画像とみなして、該入力距離画像を空間周波数画像にフーリエ変換するフーリエ変換部と、フーリエ変換した前記空間周波数画像の複数の周波数成分の値のうち、予め定められた周波数帯域の周波数成分の値を低減させる低減部と、予め定められた周波数帯域の周波数成分の値が低減された前記空間周波数画像を逆フーリエ変換して出力距離画像を生成する逆フーリエ変換部と、逆フーリエ変換した前記出力距離画像に基づく被写体距離情報を前記画像に対応づけて記憶する記憶部として機能させる。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の第3の態様においては、コンピュータが画像を処理する方法であって、画像と、該画像のそれぞれの領域の被写体距離情報とを取得する取得工程と、前記取得工程が取得したそれぞれの領域の被写体距離情報を1つの入力距離画像とみなして、該入力距離画像を空間周波数画像にフーリエ変換するフーリエ変換工程と、フーリエ変換した前記空間周波数画像の複数の周波数成分の値のうち、予め定められた周波数帯域の周波数成分の値を低減させる低減工程と、予め定められた周波数帯域の周波数成分の値が低減された前記空間周波数画像を逆フーリエ変換して出力距離画像を生成する逆フーリエ変換工程と、逆フーリエ変換した前記出力距離画像に基づく被写体距離情報を前記画像に対応づけて記憶する記憶工程とを備える。
【0015】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
図1は、本実施形態の画像処理システムを示す。画像処理システムは、撮像装置100と、画像処理装置200を備える。撮像装置100は、撮像部101、測距部102、及び記録部103を有する。画像処理装置200は、取得部201、フーリエ変換部202、低減部203、逆フーリエ変換部204、記憶部205、及び画像形成部206を備える。
【0018】
撮像装置100の撮像部101は、レンズ、RGB等の色フィルタ、CCD等の撮像素子、撮像素子駆動ドライバ、及びAD変換器を少なくとも備える。撮像素子は、レンズ及び色フィルタを介して入射された被写体の光を撮像する。撮像素子駆動ドライバは、撮像素子が撮像した画像データを読み出す。AD変換器は、読みだされた画像データをデジタル信号の画像データに変換する。この変換された画像データは記録部103に出力される。なお、撮像装置100は、撮像された画像データに対して画像処理を施す画像処理部を備え、画像処理部が生成した輝度色差信号の画像データを記録部103に出力してもよい。また、画像処理部はホワイトバランス等の処理を画像データに施してもよい。
【0019】
撮像装置100の測距部102は、撮像する画像のそれぞれ領域の被写体までの距離を測る。ここでは、被写体までの距離を被写体距離という。測距部102は、それぞれの画素の被写体距離を測ってもよく、ブロック毎に被写体距離を測ってもよい。また、所定の画素間隔毎に、画素の被写体距離を測るようにしてもよい。また、ブロックに含まれる複数の画素のそれぞれの被写体距離の平均値を該ブロックの距離としてよい。また、ブロックの中央にある画素の被写体距離を該ブロックの被写体距離としてもよい。また、測距部102は、ブロックの中央にある複数の画素の被写体距離の平均値を該ブロックの被写体距離としてもよい。ブロックは、複数の画素が集まったひとまとまりの単位を示す。例えば、ブロックは、m画素×n画素であってもよい。また、ブロックは、複数の画素が集まった集合体であってもよい。例えば、ブロックは、撮影した被写体に対応してもよい。
【0020】
測距部102は、測距する方法として、位相差方式によりそれぞれの領域の被写体距離を測るようにしてもよく、また、コントラスト検出方式によりそれぞれの領域の被写体距離を測るようにしてもよい。また、赤外線などを用いたパッシブ方式によりそれぞれの領域の被写体距離を測るようにしてもよい。要は、撮像されるそれぞれの領域の被写体距離を測る方法であればよい。この測距されたそれぞれの領域の被写体距離の情報は、記録部103に出力される。ここでは、被写体距離の情報を被写体距離情報という。記録部103は、撮像部101から送られてきた画像データと、測距部102から送られてきた被写体距離情報と対応付けて記録する。
【0021】
画像処理装置200の取得部201は、記録部103に記録された画像データと、該画像データに対応付けられて記録されている被写体距離情報を取得する。また、取得部201は、被写体距離情報をフーリエ変換部202に出力する。また、取得部201は、取得した画像データを記憶部205に出力する。
【0022】
フーリエ変換部202は、送られてきたそれぞれの領域の被写体距離情報を1つの画像とみなして、該画像を2次元フーリエ変換する。ここでは、それぞれの領域の被写体距離情報の集合を1つの画像と見なした画像を入力距離画像という。つまり、フーリエ変換部202は、入力距離画像を、周波数成分に分解して空間周波数画像に変換する。フーリエ変換部202は、フーリエ変換した入力距離画像、つまり、空間周波数画像を低減部203に出力する。なお、フーリエ変換部202は、入力距離画像を離散コサイン変換(DCT)することにより、入力距離画像を周波数成分に分解して空間周波数画像に変換してもよい。
【0023】
低減部203は、送られてきたフーリエ変換された入力距離画像の複数の周波数成分の予め定められた周波数帯域の周波数成分の値を低減させる。言いかえれば、空間周波数画像の複数の周波数成分の値のうち、予め定められた周波数帯域の周波数成分の値を低減させる。例えば、低減部203は、低周波の周波数帯域の周波数成分の値を低減させてよい。また、低減部203は、周波数が低いほど周波数成分の値を大きく低減してもよい。また、低減部203は、所定の周波数より低い周波数帯域の周波数成分の値を低減させてもよい。また、低減部203は、低周波の周波数成分の重み付けを小さくすることにより、低周波の周波数成分の値を低減させてもよい。つまり、低周波の周波数成分に小さい重み付け係数を乗算することにより低周波の周波数成分の値を低減させてもよい。空間周波数画像をD(x)、低周波の周波数成分の値を低減させる重み付け係数をF(x)とすると、低周波成分の値が低減された空間周波数D´(x)は、D´(x)=D(x)×F(x)で表される。
【0024】
ここで、低減とは、周波数成分の値を低減する周波数以外の周波数成分と相対して、値を低減させる周波数成分を小さくすることを含む。つまり、低周波の周波数成分の値を低減させずに、他の周波数成分の値を高くすることによって、相対的に低周波の周波数成分の値を低減させる方法も含む。低減部203は、低減処理後の空間周波数画像を逆フーリエ変換部204に出力する。つまり、低減させた周波数成分を逆フーリエ変換部204に出力するとともに、低減させていない周波数成分がある場合は、該低減させていない周波数成分も逆フーリエ変換部204に出力する。
【0025】
逆フーリエ変換部204は、予め定められた周波数帯域の周波数成分の値が低減された空間周波数画像を逆フーリエ変換する。つまり、逆フーリエ変換部204は、値が低減された空間周波数画像を画像に変換する。ここで、逆フーリエ変換により変換された画像を出力距離画像という。逆フーリエ変換部204は、出力距離画像を記憶部205に出力する。なお、フーリエ変換部202により離散コサイン変換された場合は、逆フーリエ変換部204は、逆離散コサイン変換(逆DCT)して出力距離画像を生成してもよい。
【0026】
記憶部205は、取得部201から送られてきた画像と、逆フーリエ変換部204から送られてきた出力距離画像に基づくそれぞれの領域の被写体距離情報とを対応付けて記憶する。つまり、逆フーリエ変換部204から送られてきた出力距離画像に基づくそれぞれの領域の被写体距離情報を取得部201から送られてきた画像に対応付けて記憶する。画像形成部206は、記憶部205が記憶した画像を、対応付けて記憶されている被写体距離情報に基づいて立体的に印刷する。つまり、記憶部205が記憶した画像を、対応付けて記憶されているそれぞれの領域の被写体距離情報に基づいて立体的に印刷する。
【0027】
具体的には、まず、記憶部205が記録したそれぞれの領域の被写体距離から、それぞれの領域の被写体距離のうち最も短い被写体距離を減算する。例えば、それぞれの領域の被写体距離がXiであり、最も短い被写体距離をXsとすると、減算後のそれぞれの領域の被写体距離X´iは、X´i=Xi−Xsとなる。ただし、i=0,1,2,・・・、となる。iはそれぞれの領域を表す。例えば、X1は、領域1の被写体距離を表し、X2は領域2の被写体距離を表す。次に、それぞれの領域の被写体距離X´iを同じ倍率で縮尺する。このとき、それぞれの領域の被写体距離X´iのうち、最も距離が長い被写体距離X´が、印刷画像の最も深い奥行きとなるように、それぞれの領域の被写体距離X´iを縮小する。そして、印刷画像のそれぞれの領域の奥行きが、該領域に対応する被写体距離X´iとなるように、印刷画像を形成する。例えば、縮小されたある領域の被写体距離が0.3mの場合は、該領域の奥行きが0.3mとなるように印刷画像を形成する。これにより、それぞれの領域に被写体距離に基づいて凹凸が付けられるので立体感のある画像を形成することができる。例えば、遠い被写体は凹んでおり、近い被写体ほど飛び出ている画像となる。
【0028】
ここで、画像形成部206は、印刷画像の形成として、例えば、印刷紙の表面の各領域を縮小された被写体距離に基づいて削ることにより凹凸を形成した後、該印刷紙の上に記憶部205が記憶した画像を印刷するようにしてもよい。また、画像形成部206は、印刷画像の形成として、印刷紙の表面に画像を印刷するときに、それぞれの領域を、該領域に対応する縮小された被写体距離に基づいてインク量を調整してインクを盛り上げるように印刷してもよい。また、画像を印刷した印刷画像のそれぞれの領域を、該領域に対応する縮小された被写体距離に基づいて、印刷画像の後ろから圧力を変えて突出させて凹凸を形成させるようにしてもよい。また、印刷画像の下に発泡インクを接着させて、印刷画像のそれぞれの領域を、該領域に対応する縮小された被写体距離に応じて、発泡インクを発泡させて凹凸を形成してもよい。また、この画像形成部206は、インクジェット方式、ドットインパクト、乾式電子写真方式などにより印刷してもよい。また、画像形成部206は、レーザープリンタ、インクジェットプリンタなどの印刷機器を有してよい。また、CPU等の情報処理装置がプログラムによって、印刷機器を画像形成部206として機能させてもよい。
【0029】
図2は、画像処理装置200による入力距離画像から出力距離画像への生成の様子を示す。入力距離画像は、取得部201が取得したそれぞれの領域の被写体距離情報を1つの画像とみなした画像である。この入力距離画像がフーリエ変換部202に入力される。そして、フーリエ変換部202は、該入力距離画像をフーリエ変換して空間周波数画像を得る。つまり、フーリエ変換部202は、低周波から高周波までの複数の周波数に分解する。
【0030】
図2に、変換された空間周波数画像の複数の周波数成分の一例を示す。図2では、一番上の周波数が最も低く、下にいくほど周波数が高い。そして、低減部203は、空間周波数画像の複数の周波数成分の予め定められた低周波の周波数帯域の周波数成分の値を低減する。また、低減部203は、周波数が低いほど周波数成分の値を大きく低減する。図2に示す値が低減された後の複数の周波数成分を見ると、一番上にある周波数の値が最も大きく低減され、つまり、振幅が最も大きく低減され、下にある周波数ほど、周波数成分の値の低減度合いが小さくなっている、又は低減されていないのがわかる。
【0031】
ここで、低周波成分を低減する理由としては、距離画像を空間周波数画像に変換すると、周波数は被写体距離の差の大きさを表しており、高周波成分は、被写体距離の差が小さいものを表しており、低周波成分は、被写体距離の差が大きいものを表している。例えば、被写体である顔のそれぞれの領域の被写体距離は小さい範囲でしか変わらないので周波数に分解すると高周波成分となる。また、被写体である山のそれぞれの領域の被写体距離はそれなりに大きい範囲で変わるので、顔の周波数より低くなる。そして、山と被写体を全体としてみた場合に、それぞれの領域被写体距離はかなり大きい範囲で変化するので、周波数に分解すると低周波となる。このように、被写体距離の変化が大きいものが、低周波成分になるので、該低周波成分の値を低減することにより、例えば、何キロ先にある山と、2m先にある人とが写っている場合であっても、山と人との距離差を大きく短くすることができるとともに、山のそれぞれの被写体距離等の距離の変化が比較的少ない部分は、山と人との距離差ほど大きく短くならないので、山の形状及び人の形状等を立体的に表現でき、自然な立体画像を形成することができる。また、2m先にある人と、4m先にある人との形状をともに立体的に表現できる。
【0032】
そして、逆フーリエ変換部204は、予め定められた周波数帯域の周波数成分の値が低減された空間周波数画像を逆フーリエ変換して出力距離画像を生成する。そして、記憶部205は、この出力距離画像に基づくそれぞれの領域の被写距離情報を取得部201が取得した画像に対応付けて記憶する。そして、画像形成部206は、記憶部205が記憶した画像を、対応付けられて記憶されている被写体距離情報に基づいて立体的に印刷する。これにより、被写体毎、画像の領域毎に適切な奥行きとなる被写体距離を算出することができ、違和感のない、自然は立体画像を形成することができる。なお、撮像装置100、画像処理装置200は、それぞれ特定のプログラムを読み込んだCPU等の情報処理装置で制御される。また、画像処理装置200のフーリエ変換部202、低減部203、逆フーリエ変換部204は、回路によって構成されてもよいし、特定のプログラムを読み込んだCPU等の情報処理装置によって実現されるようにしてもよい。また、撮像装置100と画像処理装置200とを、特定のプログラムを読み込んだCPU等の情報処理装置によって実現してもよい。また、撮像装置100と画像処理装置200とは、特定のプログラムを記録する記録媒体を備えるようにしてもよい。
【0033】
上記実施形態は以下のように変形してもよい。図3は、人間の目の空間周波数応答を示すグラフを表す。グラフの横軸は、空間周波数であり、cycle/degree(cpd)で表される。縦軸は相対感度(dB)を示す。このcycle/degreeは、視角1度中の正弦波の数を示す。視角1度の中に1サイクルの正弦波があれば1cpdとなり、視角1度の中に5サイクルの正弦波があれば5cpdとなる。グラフ中の輝度変調の曲線と、Y−B(黄−青)の色度変調の曲線と、R−G(赤−緑)の色度変調の曲線を見るとわかるように、人間は、明るさ、及び色に対して、ある空間周波数のときが一番感度がよく、ある空間周波数より周波数が低くても、あるいは高くても感度が悪い。したがって、低減部203は、人間の目に対する感度の空間周波数応答が一番高くなる周波数を所定の周波数として、該所定の周波数より低い周波数成分の値を低減する。この場合は、周波数が低いほど周波数成分の値を大きく低減するようにしてもよい。
【0034】
また、人間の目の輝度又は色度の空間周波数応答が一番高くなる周波数を所定の周波数とするようにしてもよい。つまり、人間の目の輝度の感度が一番高くなる空間周波数を所定の周波数としてもよい。また、人間の目の色度の感度が一番高くなる空間周波数を所定の周波数としてもよい。また、色度のうち、Y−Bの感度が一番高くなる空間周波数を所定の周波数としてもよく、R−Gの感度が一番高くなる空間周波数を所定の周波数としてもよい。なお、Y−Bと、R−Gとはそれぞれ色の色差を示している。
【0035】
また、所定の周波数より小さい周波数成分の値を低減する場合は、図3に示した空間周波数応答に対応する重み付けで、周波数成分の値を低減するようにしてもよい。例えば、所定の周波数の重み付けを一番大きくして、所定の周波数より低い周波数成分の重み付けを、図3に示した空間周波数応答に対応する重み付けで周波数成分の値を低減してよい。つまり、感度が一番高くなる空間周波数より低い空間周波数の感度を示す曲線と略一致する重み付け係数で、周波数成分を低減してよい。
【0036】
また、低減部203は、所定の周波数より高い周波数成分の値も低減するようにしてもよい。また、所定の周波数より高い周波数帯域の周波数成分の値を低減するとともに、周波数が高いほど周波数成分の値を大きく低減してもよい。また、図3に示した空間周波数応答に対応する重み付けで、所定の周波数より低い周波数成分及び所定の周波数より高い周波数成分を低減するようにしてもよい。例えば、所定の周波数の重み付けを一番大きくして、所定の周波数より低い周波数成分の重み付け、及び、所定の周波数より高い周波数成分の重み付けを、図3に示した空間周波数応答に対応する重み付けで周波数成分の値を低減してもよい。つまり、感度が一番高くなる空間周波数を所定の周波数として、図3に示す空間周波数応答の感度の曲線と略一致する重み付け係数で周波数成分を低減してよい。
【0037】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0038】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施形態の画像処理システムを示す。
【図2】画像処理装置200による入力距離画像から出力距離画像への生成の様子を示す。
【図3】人間の目の空間周波数応答を示すグラフを表す。
【符号の説明】
【0040】
100 撮像装置、101 撮像部、102 測距部、103 記録部、200 画像処理装置、201 取得部、202 フーリエ変換部、203 低減部、204 逆フーリエ変換部、205 記憶部、206 画像形成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像と、該画像のそれぞれの領域の被写体距離情報とを取得する取得部と、
前記取得部が取得したそれぞれの領域の被写体距離情報を1つの入力距離画像とみなして、該入力距離画像を空間周波数画像にフーリエ変換するフーリエ変換部と、
フーリエ変換した前記空間周波数画像の複数の周波数成分の値のうち、予め定められた周波数帯域の周波数成分の値を低減させる低減部と、
予め定められた周波数帯域の周波数成分の値が低減された前記空間周波数画像を逆フーリエ変換して出力距離画像を生成する逆フーリエ変換部と、
逆フーリエ変換した前記出力距離画像に基づく被写体距離情報を前記画像に対応づけて記憶する記憶部と
を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記記憶部に記憶された前記画像を、対応づけて記憶されている被写体距離情報に基づいて立体的に印刷する画像形成部を
さらに備える請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記低減部は、
周波数が低いほど周波数成分の値を大きく低減する
請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記低減部は、
所定の周波数より低い周波数帯域の周波数成分の値を低減する
請求項1から3の何れかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記低減部は、
人間の目の空間周波数応答が一番高くなる周波数を前記所定の周波数とし、該所定の周波数より低い周波数成分の値を低減する
請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記低減部は、
さらに、前記所定の周波数より高い周波数帯域の周波数成分の値を低減するとともに、周波数が高いほど周波数成分の値を大きく低減する
請求項4又は5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記低減部は、
前記予め定められた周波数帯域の周波数成分の重み付けを小さくすることにより、周波数成分の値を低減する
請求項1から6の何れかに記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記低減部は、
人間の目の空間周波数応答に対応する重み付けで、周波数成分の値を低減する
請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記低減部は、
人間の目の輝度変調及び色度変調の少なくとも一方の空間周波数応答に対応する重み付けで、周波数成分の値を低減する
請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
コンピュータを、
画像と、該画像のそれぞれの領域の被写体距離情報とを取得する取得部と、
前記取得部が取得したそれぞれの領域の被写体距離情報を1つの入力距離画像とみなして、該入力距離画像を空間周波数画像にフーリエ変換するフーリエ変換部と、
フーリエ変換した前記空間周波数画像の複数の周波数成分の値のうち、予め定められた周波数帯域の周波数成分の値を低減させる低減部と、
予め定められた周波数帯域の周波数成分の値が低減された前記空間周波数画像を逆フーリエ変換して出力距離画像を生成する逆フーリエ変換部と、
逆フーリエ変換した前記出力距離画像に基づく被写体距離情報を前記画像に対応づけて記憶する記憶部
として機能させるプログラム。
【請求項11】
コンピュータが画像を処理する方法であって、
画像と、該画像のそれぞれの領域の被写体距離情報とを取得する取得工程と、
前記取得工程が取得したそれぞれの領域の被写体距離情報を1つの入力距離画像とみなして、該入力距離画像を空間周波数画像にフーリエ変換するフーリエ変換工程と、
フーリエ変換した前記空間周波数画像の複数の周波数成分の値のうち、予め定められた周波数帯域の周波数成分の値を低減させる低減工程と、
予め定められた周波数帯域の周波数成分の値が低減された前記空間周波数画像を逆フーリエ変換して出力距離画像を生成する逆フーリエ変換工程と、
逆フーリエ変換した前記出力距離画像に基づく被写体距離情報を前記画像に対応づけて記憶する記憶工程と
を備える方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−245886(P2010−245886A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93216(P2009−93216)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】