画像処理装置、方法およびプログラム
【課題】心臓の各位置における心筋の収縮タイミングを解析・評価する。
【解決手段】画像処理装置1において、心臓を一心拍周期内の複数の時相において撮影して得られた複数の3次元画像V1〜VNから、心臓の各位置における、各時相での心筋の厚さを取得し、取得された各時相での心筋の厚さに基づいて、心筋の収縮期を代表する代表値を、各位置においてそれぞれ取得し、取得された代表値を出力する。
【解決手段】画像処理装置1において、心臓を一心拍周期内の複数の時相において撮影して得られた複数の3次元画像V1〜VNから、心臓の各位置における、各時相での心筋の厚さを取得し、取得された各時相での心筋の厚さに基づいて、心筋の収縮期を代表する代表値を、各位置においてそれぞれ取得し、取得された代表値を出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓を撮影して得られた3次元画像を用いて心臓の運動状態を調査する画像処理装置、方法、およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓は心筋の周期的な収縮・拡張運動によって一時ためておいた血液を心臓の外へ押し出し、血液を体内に循環させる。心臓の運動不全により血液の循環が悪くなると、免疫力が低下し、あらゆる病気の原因となる。
【0003】
これに対し、従来より心臓の運動状態を解析・評価する様々な手法が提案されている。たとえば、心臓を時系列的に撮影して得られた複数の3次元画像から心筋の壁運動量、壁厚変化量等を測定し、その測定結果を用いて心臓の運動状態を評価する技術が知られている。また、一心拍ごとに心臓が送り出す血液量(駆出量)を心臓が拡張したときの左室容積で除した値によって心臓の運動状態を評価する技術も知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−238932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、心臓においては、心筋全体において同時に収縮・拡張運動が行われるのではなく、部分的に収縮・拡張のタイミングが異なる。特にその絶妙な収縮タイミングのズレによって生じる特定パターンのねじれ運動によって、血液を全身に効率よく循環させることができる。しかし、心筋梗塞などによってその収縮タイミングに変化が生じると、血液を効率的に循環させることができず、問題となる。そこで、心臓の各位置における心筋の収縮タイミングを解析・評価することが求められる。
【0006】
しかし、上記従来の技術は、いずれも、心筋の部分的な拡縮タイミングのズレに着目したものではなく、心臓の運動解析における上記のニーズに的確に応えうるものとはいえない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、心臓の各位置における心筋の収縮タイミングを解析・評価することができる画像処理装置、方法およびプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像処理装置は、心臓を一心拍周期内の複数の時相において撮影して得られた複数の3次元画像を記憶する画像記憶手段と、複数の3次元画像から、心臓の各位置における、各時相での心筋の厚さを取得する心筋厚取得手段と、取得された各時相での心筋の厚さに基づいて、心筋の収縮期を代表する代表値を、心臓の各位置においてそれぞれ取得する代表値取得手段と、取得された代表値を出力する出力手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0009】
ここで、出力とは、データ記録装置に対する出力(メディアへの記録)、表示装置に対する出力(モニタ表示)、プリンタ装置への出力(プリントアウト)等を広く意味する。
【0010】
上記装置において、出力手段は、取得された代表値を、前記位置毎の代表値の大きさの相違を視覚的に識別可能な態様で表す代表値画像を生成し、該生成された代表値画像を表示手段に表示するものであってもよい。
【0011】
代表値画像は、心臓の3次元形状を表す画像上の前記各位置を表す画素に、その位置における代表値の大きさに予め対応付けられている色を配したものであってもよいし、ブルズアイ画像上の前記各位置を表す画素に、その位置における代表値の大きさに予め対応付けられている色を配したものであってもよい。
【0012】
ここで、視覚的に識別可能な態様としては、例えば表示画像において、代表値の大きさの相違を異なる色、テクスチャ等で表現する態様が考えられる。
【0013】
また、出力手段は、心臓を撮影して得られた3次元画像またはその一断層面を表示する2次元画像上の前記各位置を表す画素領域にその位置における代表値の大きさに予め対応付けられている色調を付与して表示するものであってもよい。
【0014】
上記装置において、代表値は、心筋の厚さが最大となる時相と最小となる時相の中間の時相を表す値であってもよいし、心筋の厚さが最大となる時相を表す値であってもよいし、心筋の厚さが最小となる時相を表す値であってもよい。
【0015】
また、代表値は、心筋の厚さの変化を表す曲線上の、心筋の厚さが最大となる点から最小となる点までの間における変曲点での時相を表す値であってもよい。
【0016】
また、上記装置は、心臓の各位置に解剖学的に対応する正常な心臓上の位置における、心筋の収縮期を代表する基準代表値を取得する基準代表値取得手段と、心臓の各位置について、代表値取得手段により取得された該位置における代表値と基準代表値取得手段により取得された該位置に解剖学的に対応する正常な心臓上の位置における基準代表値との差分値を取得する差分値取得手段と、取得された差分値を出力する第2の出力手段とを備えたものであってもよい。また、この第2の出力手段は、取得された差分値を前記位置毎の差分値の大きさの相違を視覚的に識別可能な態様で表す差分値画像を生成し、該生成された差分値画像を表示手段に表示するものであってもよい。
【0017】
また、上記装置は、前記心臓の前記一心拍周期の心電図を取得する心電図取得手段と、該取得された心電図から所定の特徴点を抽出し、該抽出された特徴点の時相を用いて前記代表値取得手段により取得された代表値を正規化する正規化手段とを備え、前記出力手段が、前記正規化された代表値を出力するものであってもよい。
【0018】
また、前記一心拍周期における左心室の容積の変化を取得する容積曲線取得手段と、該取得された容積の変化を表す容積曲線から所定の特徴点を抽出し、該抽出された特徴点の時相を用いて前記代表値取得手段により取得された代表値を正規化する正規化手段とを備え、前記出力手段が、前記正規化された代表値を出力するものであってもよい。
【0019】
また、本発明の画像処理方法は、上記画像処理装置の各手段が行う処理を、少なくとも1台のコンピュータにより実行する方法である。
【0020】
また、本発明の画像処理プログラムは、上記画像処理装置の各手段が行う処理を、少なくとも1台のコンピュータに実行させるプログラムである。このプログラムは、CD−ROM,DVDなどの記録メディアに記録され、またはサーバコンピュータに付属するストレージやネットワークストレージにダウンロード可能な状態で記録されて、ユーザに提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の画像診断支援装置、方法およびプログラムによれば、心臓を一心拍周期内の複数の時相において撮影して得られた複数の3次元画像から、心臓の各位置における、各時相での心筋の厚さを取得し、取得された各時相での心筋の厚さに基づいて、心筋の収縮期を代表する代表値を、各位置においてそれぞれ取得し、取得された代表値を出力してすることができる。これにより、医師等のユーザは、この代表値を用いて、心臓の各位置における心筋の収縮タイミングを容易に解析・評価することができる。
【0022】
上記装置、方法およびプログラムにおいて、代表値の出力が、取得された代表値を前記位置毎の代表値の大きさの相違を視覚的に識別可能な態様で表す代表値画像を生成し、該生成された代表値画像を表示手段に表示するものである場合には、その表示によって、医師等のユーザは、心筋の各部分における心筋の収縮タイミングを視覚的に容易に把握することができる。
【0023】
また、心臓の各位置に解剖学的に対応する正常な心臓上の位置における、心筋の収縮期を代表する基準代表値を取得し、心臓の各位置について、代表値と基準代表値との差分値を取得し、取得された差分値を出力するようにした場合には、医師等のユーザは、この差分値を用いて、心臓の各位置における心筋の収縮タイミングの正常な心臓との差異を容易に解析・評価することができる。
【0024】
また、この差分値の出力が、取得された差分値を前記位置毎の差分値の大きさの相違を視覚的に識別可能な態様で表す差分値画像を生成し、該生成された差分値画像を表示手段に表示するものである場合には、その表示によって、医師等のユーザは、心臓の各位置における心筋の収縮タイミングの正常な心臓との差異を視覚的に容易に把握することができる。
【0025】
また、一心拍周期の心電図から抽出された特徴点の時相、あるいは、一心拍周期における左心室の容積の変化を表す容積曲線から抽出された特徴点の時相を用いて前記代表値を正規化し、正規化された代表値を出力するようにした場合には、医師等のユーザは、この代表値と、正常な心臓の代表値あるいは他の心臓の代表値とを容易に比較することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の画像処理装置の概略構成を示す図
【図2】画像処理装置が実行する処理の概要を示す図
【図3】心筋厚取得処理を説明するための図
【図4】心筋厚取得処理を説明するための図
【図5】代表値取得処理を説明するための図
【図6】代表値画像の一例を示す図(その1)
【図7】代表値画像の一例を示す図(その2)
【図8】代表値画像の作成方法を説明するための図
【図9】代表値画像の一例を示す図(その3)
【図10】代表値画像の一例を示す図(その4)
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の画像処理装置、方法、およびプログラムの実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
本発明の画像処理装置は、一台のコンピュータに、画像処理プログラムをインストールしたものである。コンピュータは、診断を行う医師が直接操作するワークステーションやパソコンでもよいし、もしくは、それらとネットワークを介して接続されたサーバコンピュータでもよい。画像処理プログラムは、DVD,CD−ROM等の記録メディアに格納されて配布され、その記録媒体からコンピュータにインストールされる。もしくは、ネットワークに接続されたサーバコンピュータの記憶装置、あるいはネットワークストレージに、外部からアクセス可能な状態で記憶され、要求に応じて医師が使用するコンピュータにダウンロードされ、インストールされる。
【0029】
図1は、ワークステーションに画像処理プログラムをインストールすることにより実現された画像処理装置の概略構成を示す図である。同図が示すように、画像処理装置1は、標準的なワークステーションの構成として、CPU2、メモリ3およびストレージ4を備えている。また、画像処理装置1には、ディスプレイ5と、マウス6等の入力装置が接続されている。
【0030】
ストレージ4には、心臓を一心拍周期T内の複数の時相t1〜tKにおいて撮影して得られた一連の3次元画像V1〜VKが記憶されている。3次元画像V1〜VKは、CT装置、MRI装置、超音波診断装置などで撮影された複数の断層画像を再構成して生成される。心臓の心電図同期撮影では、一心拍周期T内で通常10フェーズから20フェーズ分の3次元画像が取得されるので、3次元画像V1〜VKの個数Kは10〜20個となるのが普通である。
【0031】
また、メモリ3には、画像処理プログラムと画像処理プログラムが参照するデータ(処理パラメータ等)が記憶されている。画像処理プログラムは、CPU2に実行させる処理として、心筋厚取得処理、代表値取得処理、画像生成処理および表示制御処理を規定している。そして、CPU2がプログラムに従いこれらの処理を実行することで、汎用のワークステーションは、心筋厚取得手段、代表値取得手段、画像生成手段および表示制御手段として機能することになる。
【0032】
図2は、画像処理プログラムにより実行される処理の流れを示すブロック図である。画像処理装置1は、まず、ストレージ4から3次元画像V1〜VNをメモリ3にロードし、3次元画像V1〜VNから、心臓の各位置における、各時相t1〜tKでの心筋の厚さを取得する心筋厚取得処理11を実行する。
【0033】
画像処理装置1は、心筋厚取得処理11において、まず、3次元画像V1から心臓の左心室領域を抽出し、抽出された左心室領域に対し、心芯部と左心室のほぼ中心と心基部とを結ぶ長軸A1とそれに直交する短軸A2とを設定する。ここで、長軸A1は、仮設定の長軸に直交する複数の断面を設定し、それらの断面画像上における左心室の重心位置を取得し、それらの重心位置を通るように設定される。なお、図3に示すように、抽出された左心室領域を楕円形状の表面モデルEに近似し、その近似されたモデルの長軸を上記長軸A1として設定するようにしてもよい。
【0034】
但し、設定された長軸の位置や方向は、ユーザ操作により修正可能とする。本実施形態では、自動設定された長軸が心臓領域の画像とともに画面に表示され、ドラッグ操作あるいは回転操作により長軸の位置や方向を変更することができる。
【0035】
ここで、左心室領域は、その領域の輪郭を決定することにより特定される。具体的には、3次元画像V1を構成する各ボクセルの画素値について、左心室領域の輪郭らしさを表す特徴量を算出し、算出した特徴量を機械学習により予め取得された評価関数に基づいて評価することで、そのボクセルが左心室領域の輪郭を表すものであるか否かを判断する。この判断を繰り返すことにより、左心室領域全体の輪郭を表すボクセル群が抽出される。本実施形態では、評価関数の取得にアダブーストアルゴリズムを用いている。なお、左心室領域の抽出は、他のマシンラーニング法や統計解析法、例えば線形判別法やニューラルネットワーク、サポートベクターマシン等を用いて行ってもよい。
【0036】
次に、長軸A1と直交する複数の断面Pi(i=1〜N)を設定する。そして、図4に示すように、各断面Piから心内膜の輪郭19と心外膜の輪郭20を抽出し、各断面Pi上の長軸A1が通る点Cから放射線状に広がる線lij(j=1〜M)が心内膜の輪郭19と心外膜の輪郭20とに挟まれた心筋領域MRを通る線状領域Qijの長さをその位置における心筋の長さdとして取得する。これにより、時相t1での、心臓の各位置(i、j)における心筋の厚さdが取得される。
【0037】
続いて、3次元画像V1〜VN間で位置合わせをすることで、それらの3次元画像V1〜VN上における心臓の解剖学的に対応する点の位置を求める。具体的には、連続する2つの時相の3次元画像間で3次元画像の画素値が一致するように位置合わせをすることによって、それらの3次元画像上における心臓の解剖学的に対応する点の位置を求め、さらに、時間の経過に沿って、2つ以上の時相の3次元画像間の位置合わせを順次行うことで、2以上の時相の3次元画像上における心臓の解剖学的に対応する点の位置を求める。
【0038】
この位置合わせは、例えば、3次元空間内に一定の間隔で3次元の格子状にB−Splineの制御点を配置し、この制御点を移動させることで、連続する2つの時相の3次元画像における心臓の形状同士が一致するように3次元空間を変形させることにより行うことができる。なお、3次元空間の変形により3次元画像同士を位置合わせする方法の詳細は、例えば、特開2008−289799号公報に開示されている。
【0039】
続いて、上記求められた各対応する点の位置情報を用いて、3次元画像V2における、上記3次元画像V1中の各線状領域Qijと解剖学的に対応する線状領域の位置を特定し、その各特定された線状領域の長さを、時相t2での、心臓の各位置(i、j)における心筋の厚さdとして取得する。また、3次元画像V3〜VNについて同様の処理を繰り返し、各時相t3〜tNでの、心臓の各位置(i、j)における心筋の厚さdを取得する。なお、各特定された線状領域の長さはその軌道に沿って測定される。
【0040】
なお、ここでは、3次元画像V1〜VN間で位置合わせをすることで、同一心筋部位の各時相における位置を追跡し、その心筋部位の厚さを取得するようにした場合について説明したが、これに限定されない。たとえば画像間で位置合わせを行うことなく、3次元画像V2〜VNに対しても上述した3次元画像V1から心筋の厚さを取得する処理と同様の処理を行い、各時相t2〜tNでの心筋の厚さを取得するようにしてもよい。具体的には、3次元画像V2〜VNそれぞれに対して、3次元画像V1に対し設定したのと同様の長軸、短軸、断面および放射状線分を設定し、放射状線分の心筋領域を通る長さを心筋の厚さとして取得することができる。
【0041】
画像処理装置1は、続いて、代表値取得処理12を実行する。代表値取得処理12では、心筋厚取得処理11において取得された心筋の厚さdに基づいて、心臓の各位置(i、j)における心筋の収縮期を代表する代表値を取得する。具体的には、図5に示すような、心臓の所定の位置における一心拍周期T内での心筋の厚さの変化を示すグラフにおいて、心筋の厚さが最大となる時相tmaxと最小となる時相tminの中間の時相を表す値(tmax+tmin)/2を、その位置における代表値として取得する。
【0042】
なお、ここでは、心筋の厚さが最大となる時相tmaxと最小となる時相tminの中間の時相を表す値(tmax+tmin)/2を代表値として取得する場合について説明しているが、心筋の厚さが最大となる時相を表す値tmax、心筋の厚さが最小となる時相を表す値tmin、または心筋の厚さの変化を表す曲線上の、心筋の厚さが最大となる点から最小となる点までの間における変曲点での時相を表す値tinfを代表値として取得するようにしてもよい。
【0043】
続いて、画像処理装置1は、画像生成処理13を実行する。画像生成処理13では、代表値取得処理12において取得された心臓の各位置(i、j)における代表値を、その位置毎の代表値の大きさの相違を視覚的に識別可能な態様で表す代表値画像を生成する。
【0044】
具体的には、たとえば図6に示すような、心臓の心芯部に最も近い断面上の各位置における代表値が最も半径の小さい円上に配され、心芯部から最も遠い断面上の各位置における代表値が、最も半径の大きい円上に配されるようなブルズアイ画像を生成する。このブルズアイ画像は、画像上の心臓の各位置を表す画素に、その位置における代表値の大きさに予め対応付けられている色を配したものである。図6の右側に示すカラーバーは代表値と色の対応関係を示すものである。この生成されたブルズアイ画像は、メモリ3に記憶され、後述する表示制御処理14において利用される。
【0045】
なお、ここでは、代表値画像の一例としてブルズアイ画像を生成する場合について説明したが、たとえば図7に示すような、心臓の3次元形状を表す画像上の心臓の各位置を表す画素に、その位置における代表値の大きさに予め対応付けられている色を配した画像を代表値画像として生成するようにしてもよい。また、ブルズアイ画像の座標軸を図8に示すように4等分してそれぞれを放物線状に表示した、たとえば図9に示すようなトポグラフィックマップを代表値画像として生成するようにしてもよい。
【0046】
また、図10に示すような、心臓の一断層面を表示する2次元画像上の心臓の各位置を表す画素領域に、その位置における代表値の大きさに予め対応付けられている色調を付与した画像を代表値画像として生成するようにしてもよい。
【0047】
続いて、画像処理装置1は、ユーザの要求に応じて、メモリ3に記憶された代表値画像をディスプレイ5に表示させる表示制御処理14を実行する。
【0048】
以上に説明したとおり、本実施形態の画像処理装置1によれば、心臓を一心拍周期T内の複数の時相t1〜tKにおいて撮影して得られた複数の3次元画像V1〜VKから、心臓の各位置における、各時相での心筋の厚さdを取得し、取得された各時相での心筋の厚さdに基づいて、心筋の収縮期を代表する代表値を、各位置においてそれぞれ取得し、取得された代表値を出力しているので、医師等のユーザは、この代表値を用いて、心臓の各位置における心筋の収縮タイミングを容易に解析・評価することができる。
【0049】
また、画像処理装置1によれば、取得された代表値を心臓の位置毎の代表値の大きさの相違を視覚的に識別可能な態様で表す代表値画像を生成し、その生成された代表値画像をディスプレイ5に表示させているので、その表示によって、医師等のユーザは、心筋の各部分における心筋の収縮タイミングを視覚的に容易に把握することができる。
【0050】
なお、画像処理装置1は、代表値取得処理12により取得された代表値を正規化する正規化処理をさらに実行し、正規化された代表値を用いて画像生成処理13および表示制御処理14を実行するものであってもよい。
【0051】
正規化処理では、3次元画像V1〜VKの撮影と同期して取得された一心拍周期の心電図において、その心電図に表されたPQRST波のうちQ点の時相を特徴点とし、その特徴点が予め設定しておいた基準値に一致するよう一心拍周期の時間軸をスライド変形させることによって代表値を正規化する。ここで、基準値としては、多数の正常な心臓において取得されたQ点の時相の平均値を用いることができる。なお、たとえばPQRST波におけるR点、S点の時相を特徴点とし、それらの時相間の間隔が予め設定しておいた基準値に一致するよう一心拍周期の時間軸を拡大・縮小変形させることによって代表値を正規化するようにしてもよい。この場合、基準値としては、多数の正常な心臓において取得されたR点、S点の時相間隔の平均値を用いるとよい。
【0052】
正規化処理は、心電図を用いず、EFカーブ(左心室の容積変化グラフ)を用いて行うこともできる。心電図を用いる場合と同様に、3次元画像V1〜VKの撮影と同期して取得された一心拍周期における左心室の容積の変化を表す容積曲線から所定の特徴点を抽出し、該抽出された特徴点の時相が所定の基準値に一致するよう一心拍周期の時間軸を変形させることによって代表値を正規化することができる。
【0053】
また、画像処理装置1は、代表値取得処理12により取得された各代表値について、予め取得しておいた正常な心臓における基準代表値との差分値を取得する処理と、その取得された差分値を出力する処理とをさらに実行するものであってもよい。なお、この差分値の出力には、代表値の各種出力態様をそのまま適用することができる。例えば、上述の画像生成処理13および表示制御処理14もそのまま適用することができ、心臓の各位置において取得された差分値を表すブルズアイ画像やトポグラフィックマップ等を生成し、ディスプレイ5に表示させることができる。
【0054】
また、正常な心臓における基準代表値は、以下の方法によって取得することができる。まず、正常であることが既知である多数の心臓についてそれぞれ、その心臓を一心拍周期内の複数の時相において撮影して得られた一連の3次元画像に対して心筋厚取得処理11および代表値取得処理12を行うことによって、その心臓の各位置における代表値を取得し、取得された代表値に対して上述の正規化処理を行う。次に、それらの心臓を表す画像間で位置合わせをすることで対応する点の位置を求め、各対応する位置毎に、上記各心臓において取得された代表値の平均値を算出し、算出された平均値をその位置における基準代表値とする。
【符号の説明】
【0055】
1 画像処理装置
2 CPU
3 メモリ
4 ストレージ
5 ディスプレイ
6 マウス
T 一心拍周期
MR 心筋領域
d 心筋の厚さ
t1〜tK 時相
V1〜VK 3次元画像
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓を撮影して得られた3次元画像を用いて心臓の運動状態を調査する画像処理装置、方法、およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓は心筋の周期的な収縮・拡張運動によって一時ためておいた血液を心臓の外へ押し出し、血液を体内に循環させる。心臓の運動不全により血液の循環が悪くなると、免疫力が低下し、あらゆる病気の原因となる。
【0003】
これに対し、従来より心臓の運動状態を解析・評価する様々な手法が提案されている。たとえば、心臓を時系列的に撮影して得られた複数の3次元画像から心筋の壁運動量、壁厚変化量等を測定し、その測定結果を用いて心臓の運動状態を評価する技術が知られている。また、一心拍ごとに心臓が送り出す血液量(駆出量)を心臓が拡張したときの左室容積で除した値によって心臓の運動状態を評価する技術も知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−238932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、心臓においては、心筋全体において同時に収縮・拡張運動が行われるのではなく、部分的に収縮・拡張のタイミングが異なる。特にその絶妙な収縮タイミングのズレによって生じる特定パターンのねじれ運動によって、血液を全身に効率よく循環させることができる。しかし、心筋梗塞などによってその収縮タイミングに変化が生じると、血液を効率的に循環させることができず、問題となる。そこで、心臓の各位置における心筋の収縮タイミングを解析・評価することが求められる。
【0006】
しかし、上記従来の技術は、いずれも、心筋の部分的な拡縮タイミングのズレに着目したものではなく、心臓の運動解析における上記のニーズに的確に応えうるものとはいえない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、心臓の各位置における心筋の収縮タイミングを解析・評価することができる画像処理装置、方法およびプログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像処理装置は、心臓を一心拍周期内の複数の時相において撮影して得られた複数の3次元画像を記憶する画像記憶手段と、複数の3次元画像から、心臓の各位置における、各時相での心筋の厚さを取得する心筋厚取得手段と、取得された各時相での心筋の厚さに基づいて、心筋の収縮期を代表する代表値を、心臓の各位置においてそれぞれ取得する代表値取得手段と、取得された代表値を出力する出力手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0009】
ここで、出力とは、データ記録装置に対する出力(メディアへの記録)、表示装置に対する出力(モニタ表示)、プリンタ装置への出力(プリントアウト)等を広く意味する。
【0010】
上記装置において、出力手段は、取得された代表値を、前記位置毎の代表値の大きさの相違を視覚的に識別可能な態様で表す代表値画像を生成し、該生成された代表値画像を表示手段に表示するものであってもよい。
【0011】
代表値画像は、心臓の3次元形状を表す画像上の前記各位置を表す画素に、その位置における代表値の大きさに予め対応付けられている色を配したものであってもよいし、ブルズアイ画像上の前記各位置を表す画素に、その位置における代表値の大きさに予め対応付けられている色を配したものであってもよい。
【0012】
ここで、視覚的に識別可能な態様としては、例えば表示画像において、代表値の大きさの相違を異なる色、テクスチャ等で表現する態様が考えられる。
【0013】
また、出力手段は、心臓を撮影して得られた3次元画像またはその一断層面を表示する2次元画像上の前記各位置を表す画素領域にその位置における代表値の大きさに予め対応付けられている色調を付与して表示するものであってもよい。
【0014】
上記装置において、代表値は、心筋の厚さが最大となる時相と最小となる時相の中間の時相を表す値であってもよいし、心筋の厚さが最大となる時相を表す値であってもよいし、心筋の厚さが最小となる時相を表す値であってもよい。
【0015】
また、代表値は、心筋の厚さの変化を表す曲線上の、心筋の厚さが最大となる点から最小となる点までの間における変曲点での時相を表す値であってもよい。
【0016】
また、上記装置は、心臓の各位置に解剖学的に対応する正常な心臓上の位置における、心筋の収縮期を代表する基準代表値を取得する基準代表値取得手段と、心臓の各位置について、代表値取得手段により取得された該位置における代表値と基準代表値取得手段により取得された該位置に解剖学的に対応する正常な心臓上の位置における基準代表値との差分値を取得する差分値取得手段と、取得された差分値を出力する第2の出力手段とを備えたものであってもよい。また、この第2の出力手段は、取得された差分値を前記位置毎の差分値の大きさの相違を視覚的に識別可能な態様で表す差分値画像を生成し、該生成された差分値画像を表示手段に表示するものであってもよい。
【0017】
また、上記装置は、前記心臓の前記一心拍周期の心電図を取得する心電図取得手段と、該取得された心電図から所定の特徴点を抽出し、該抽出された特徴点の時相を用いて前記代表値取得手段により取得された代表値を正規化する正規化手段とを備え、前記出力手段が、前記正規化された代表値を出力するものであってもよい。
【0018】
また、前記一心拍周期における左心室の容積の変化を取得する容積曲線取得手段と、該取得された容積の変化を表す容積曲線から所定の特徴点を抽出し、該抽出された特徴点の時相を用いて前記代表値取得手段により取得された代表値を正規化する正規化手段とを備え、前記出力手段が、前記正規化された代表値を出力するものであってもよい。
【0019】
また、本発明の画像処理方法は、上記画像処理装置の各手段が行う処理を、少なくとも1台のコンピュータにより実行する方法である。
【0020】
また、本発明の画像処理プログラムは、上記画像処理装置の各手段が行う処理を、少なくとも1台のコンピュータに実行させるプログラムである。このプログラムは、CD−ROM,DVDなどの記録メディアに記録され、またはサーバコンピュータに付属するストレージやネットワークストレージにダウンロード可能な状態で記録されて、ユーザに提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の画像診断支援装置、方法およびプログラムによれば、心臓を一心拍周期内の複数の時相において撮影して得られた複数の3次元画像から、心臓の各位置における、各時相での心筋の厚さを取得し、取得された各時相での心筋の厚さに基づいて、心筋の収縮期を代表する代表値を、各位置においてそれぞれ取得し、取得された代表値を出力してすることができる。これにより、医師等のユーザは、この代表値を用いて、心臓の各位置における心筋の収縮タイミングを容易に解析・評価することができる。
【0022】
上記装置、方法およびプログラムにおいて、代表値の出力が、取得された代表値を前記位置毎の代表値の大きさの相違を視覚的に識別可能な態様で表す代表値画像を生成し、該生成された代表値画像を表示手段に表示するものである場合には、その表示によって、医師等のユーザは、心筋の各部分における心筋の収縮タイミングを視覚的に容易に把握することができる。
【0023】
また、心臓の各位置に解剖学的に対応する正常な心臓上の位置における、心筋の収縮期を代表する基準代表値を取得し、心臓の各位置について、代表値と基準代表値との差分値を取得し、取得された差分値を出力するようにした場合には、医師等のユーザは、この差分値を用いて、心臓の各位置における心筋の収縮タイミングの正常な心臓との差異を容易に解析・評価することができる。
【0024】
また、この差分値の出力が、取得された差分値を前記位置毎の差分値の大きさの相違を視覚的に識別可能な態様で表す差分値画像を生成し、該生成された差分値画像を表示手段に表示するものである場合には、その表示によって、医師等のユーザは、心臓の各位置における心筋の収縮タイミングの正常な心臓との差異を視覚的に容易に把握することができる。
【0025】
また、一心拍周期の心電図から抽出された特徴点の時相、あるいは、一心拍周期における左心室の容積の変化を表す容積曲線から抽出された特徴点の時相を用いて前記代表値を正規化し、正規化された代表値を出力するようにした場合には、医師等のユーザは、この代表値と、正常な心臓の代表値あるいは他の心臓の代表値とを容易に比較することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の画像処理装置の概略構成を示す図
【図2】画像処理装置が実行する処理の概要を示す図
【図3】心筋厚取得処理を説明するための図
【図4】心筋厚取得処理を説明するための図
【図5】代表値取得処理を説明するための図
【図6】代表値画像の一例を示す図(その1)
【図7】代表値画像の一例を示す図(その2)
【図8】代表値画像の作成方法を説明するための図
【図9】代表値画像の一例を示す図(その3)
【図10】代表値画像の一例を示す図(その4)
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の画像処理装置、方法、およびプログラムの実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
本発明の画像処理装置は、一台のコンピュータに、画像処理プログラムをインストールしたものである。コンピュータは、診断を行う医師が直接操作するワークステーションやパソコンでもよいし、もしくは、それらとネットワークを介して接続されたサーバコンピュータでもよい。画像処理プログラムは、DVD,CD−ROM等の記録メディアに格納されて配布され、その記録媒体からコンピュータにインストールされる。もしくは、ネットワークに接続されたサーバコンピュータの記憶装置、あるいはネットワークストレージに、外部からアクセス可能な状態で記憶され、要求に応じて医師が使用するコンピュータにダウンロードされ、インストールされる。
【0029】
図1は、ワークステーションに画像処理プログラムをインストールすることにより実現された画像処理装置の概略構成を示す図である。同図が示すように、画像処理装置1は、標準的なワークステーションの構成として、CPU2、メモリ3およびストレージ4を備えている。また、画像処理装置1には、ディスプレイ5と、マウス6等の入力装置が接続されている。
【0030】
ストレージ4には、心臓を一心拍周期T内の複数の時相t1〜tKにおいて撮影して得られた一連の3次元画像V1〜VKが記憶されている。3次元画像V1〜VKは、CT装置、MRI装置、超音波診断装置などで撮影された複数の断層画像を再構成して生成される。心臓の心電図同期撮影では、一心拍周期T内で通常10フェーズから20フェーズ分の3次元画像が取得されるので、3次元画像V1〜VKの個数Kは10〜20個となるのが普通である。
【0031】
また、メモリ3には、画像処理プログラムと画像処理プログラムが参照するデータ(処理パラメータ等)が記憶されている。画像処理プログラムは、CPU2に実行させる処理として、心筋厚取得処理、代表値取得処理、画像生成処理および表示制御処理を規定している。そして、CPU2がプログラムに従いこれらの処理を実行することで、汎用のワークステーションは、心筋厚取得手段、代表値取得手段、画像生成手段および表示制御手段として機能することになる。
【0032】
図2は、画像処理プログラムにより実行される処理の流れを示すブロック図である。画像処理装置1は、まず、ストレージ4から3次元画像V1〜VNをメモリ3にロードし、3次元画像V1〜VNから、心臓の各位置における、各時相t1〜tKでの心筋の厚さを取得する心筋厚取得処理11を実行する。
【0033】
画像処理装置1は、心筋厚取得処理11において、まず、3次元画像V1から心臓の左心室領域を抽出し、抽出された左心室領域に対し、心芯部と左心室のほぼ中心と心基部とを結ぶ長軸A1とそれに直交する短軸A2とを設定する。ここで、長軸A1は、仮設定の長軸に直交する複数の断面を設定し、それらの断面画像上における左心室の重心位置を取得し、それらの重心位置を通るように設定される。なお、図3に示すように、抽出された左心室領域を楕円形状の表面モデルEに近似し、その近似されたモデルの長軸を上記長軸A1として設定するようにしてもよい。
【0034】
但し、設定された長軸の位置や方向は、ユーザ操作により修正可能とする。本実施形態では、自動設定された長軸が心臓領域の画像とともに画面に表示され、ドラッグ操作あるいは回転操作により長軸の位置や方向を変更することができる。
【0035】
ここで、左心室領域は、その領域の輪郭を決定することにより特定される。具体的には、3次元画像V1を構成する各ボクセルの画素値について、左心室領域の輪郭らしさを表す特徴量を算出し、算出した特徴量を機械学習により予め取得された評価関数に基づいて評価することで、そのボクセルが左心室領域の輪郭を表すものであるか否かを判断する。この判断を繰り返すことにより、左心室領域全体の輪郭を表すボクセル群が抽出される。本実施形態では、評価関数の取得にアダブーストアルゴリズムを用いている。なお、左心室領域の抽出は、他のマシンラーニング法や統計解析法、例えば線形判別法やニューラルネットワーク、サポートベクターマシン等を用いて行ってもよい。
【0036】
次に、長軸A1と直交する複数の断面Pi(i=1〜N)を設定する。そして、図4に示すように、各断面Piから心内膜の輪郭19と心外膜の輪郭20を抽出し、各断面Pi上の長軸A1が通る点Cから放射線状に広がる線lij(j=1〜M)が心内膜の輪郭19と心外膜の輪郭20とに挟まれた心筋領域MRを通る線状領域Qijの長さをその位置における心筋の長さdとして取得する。これにより、時相t1での、心臓の各位置(i、j)における心筋の厚さdが取得される。
【0037】
続いて、3次元画像V1〜VN間で位置合わせをすることで、それらの3次元画像V1〜VN上における心臓の解剖学的に対応する点の位置を求める。具体的には、連続する2つの時相の3次元画像間で3次元画像の画素値が一致するように位置合わせをすることによって、それらの3次元画像上における心臓の解剖学的に対応する点の位置を求め、さらに、時間の経過に沿って、2つ以上の時相の3次元画像間の位置合わせを順次行うことで、2以上の時相の3次元画像上における心臓の解剖学的に対応する点の位置を求める。
【0038】
この位置合わせは、例えば、3次元空間内に一定の間隔で3次元の格子状にB−Splineの制御点を配置し、この制御点を移動させることで、連続する2つの時相の3次元画像における心臓の形状同士が一致するように3次元空間を変形させることにより行うことができる。なお、3次元空間の変形により3次元画像同士を位置合わせする方法の詳細は、例えば、特開2008−289799号公報に開示されている。
【0039】
続いて、上記求められた各対応する点の位置情報を用いて、3次元画像V2における、上記3次元画像V1中の各線状領域Qijと解剖学的に対応する線状領域の位置を特定し、その各特定された線状領域の長さを、時相t2での、心臓の各位置(i、j)における心筋の厚さdとして取得する。また、3次元画像V3〜VNについて同様の処理を繰り返し、各時相t3〜tNでの、心臓の各位置(i、j)における心筋の厚さdを取得する。なお、各特定された線状領域の長さはその軌道に沿って測定される。
【0040】
なお、ここでは、3次元画像V1〜VN間で位置合わせをすることで、同一心筋部位の各時相における位置を追跡し、その心筋部位の厚さを取得するようにした場合について説明したが、これに限定されない。たとえば画像間で位置合わせを行うことなく、3次元画像V2〜VNに対しても上述した3次元画像V1から心筋の厚さを取得する処理と同様の処理を行い、各時相t2〜tNでの心筋の厚さを取得するようにしてもよい。具体的には、3次元画像V2〜VNそれぞれに対して、3次元画像V1に対し設定したのと同様の長軸、短軸、断面および放射状線分を設定し、放射状線分の心筋領域を通る長さを心筋の厚さとして取得することができる。
【0041】
画像処理装置1は、続いて、代表値取得処理12を実行する。代表値取得処理12では、心筋厚取得処理11において取得された心筋の厚さdに基づいて、心臓の各位置(i、j)における心筋の収縮期を代表する代表値を取得する。具体的には、図5に示すような、心臓の所定の位置における一心拍周期T内での心筋の厚さの変化を示すグラフにおいて、心筋の厚さが最大となる時相tmaxと最小となる時相tminの中間の時相を表す値(tmax+tmin)/2を、その位置における代表値として取得する。
【0042】
なお、ここでは、心筋の厚さが最大となる時相tmaxと最小となる時相tminの中間の時相を表す値(tmax+tmin)/2を代表値として取得する場合について説明しているが、心筋の厚さが最大となる時相を表す値tmax、心筋の厚さが最小となる時相を表す値tmin、または心筋の厚さの変化を表す曲線上の、心筋の厚さが最大となる点から最小となる点までの間における変曲点での時相を表す値tinfを代表値として取得するようにしてもよい。
【0043】
続いて、画像処理装置1は、画像生成処理13を実行する。画像生成処理13では、代表値取得処理12において取得された心臓の各位置(i、j)における代表値を、その位置毎の代表値の大きさの相違を視覚的に識別可能な態様で表す代表値画像を生成する。
【0044】
具体的には、たとえば図6に示すような、心臓の心芯部に最も近い断面上の各位置における代表値が最も半径の小さい円上に配され、心芯部から最も遠い断面上の各位置における代表値が、最も半径の大きい円上に配されるようなブルズアイ画像を生成する。このブルズアイ画像は、画像上の心臓の各位置を表す画素に、その位置における代表値の大きさに予め対応付けられている色を配したものである。図6の右側に示すカラーバーは代表値と色の対応関係を示すものである。この生成されたブルズアイ画像は、メモリ3に記憶され、後述する表示制御処理14において利用される。
【0045】
なお、ここでは、代表値画像の一例としてブルズアイ画像を生成する場合について説明したが、たとえば図7に示すような、心臓の3次元形状を表す画像上の心臓の各位置を表す画素に、その位置における代表値の大きさに予め対応付けられている色を配した画像を代表値画像として生成するようにしてもよい。また、ブルズアイ画像の座標軸を図8に示すように4等分してそれぞれを放物線状に表示した、たとえば図9に示すようなトポグラフィックマップを代表値画像として生成するようにしてもよい。
【0046】
また、図10に示すような、心臓の一断層面を表示する2次元画像上の心臓の各位置を表す画素領域に、その位置における代表値の大きさに予め対応付けられている色調を付与した画像を代表値画像として生成するようにしてもよい。
【0047】
続いて、画像処理装置1は、ユーザの要求に応じて、メモリ3に記憶された代表値画像をディスプレイ5に表示させる表示制御処理14を実行する。
【0048】
以上に説明したとおり、本実施形態の画像処理装置1によれば、心臓を一心拍周期T内の複数の時相t1〜tKにおいて撮影して得られた複数の3次元画像V1〜VKから、心臓の各位置における、各時相での心筋の厚さdを取得し、取得された各時相での心筋の厚さdに基づいて、心筋の収縮期を代表する代表値を、各位置においてそれぞれ取得し、取得された代表値を出力しているので、医師等のユーザは、この代表値を用いて、心臓の各位置における心筋の収縮タイミングを容易に解析・評価することができる。
【0049】
また、画像処理装置1によれば、取得された代表値を心臓の位置毎の代表値の大きさの相違を視覚的に識別可能な態様で表す代表値画像を生成し、その生成された代表値画像をディスプレイ5に表示させているので、その表示によって、医師等のユーザは、心筋の各部分における心筋の収縮タイミングを視覚的に容易に把握することができる。
【0050】
なお、画像処理装置1は、代表値取得処理12により取得された代表値を正規化する正規化処理をさらに実行し、正規化された代表値を用いて画像生成処理13および表示制御処理14を実行するものであってもよい。
【0051】
正規化処理では、3次元画像V1〜VKの撮影と同期して取得された一心拍周期の心電図において、その心電図に表されたPQRST波のうちQ点の時相を特徴点とし、その特徴点が予め設定しておいた基準値に一致するよう一心拍周期の時間軸をスライド変形させることによって代表値を正規化する。ここで、基準値としては、多数の正常な心臓において取得されたQ点の時相の平均値を用いることができる。なお、たとえばPQRST波におけるR点、S点の時相を特徴点とし、それらの時相間の間隔が予め設定しておいた基準値に一致するよう一心拍周期の時間軸を拡大・縮小変形させることによって代表値を正規化するようにしてもよい。この場合、基準値としては、多数の正常な心臓において取得されたR点、S点の時相間隔の平均値を用いるとよい。
【0052】
正規化処理は、心電図を用いず、EFカーブ(左心室の容積変化グラフ)を用いて行うこともできる。心電図を用いる場合と同様に、3次元画像V1〜VKの撮影と同期して取得された一心拍周期における左心室の容積の変化を表す容積曲線から所定の特徴点を抽出し、該抽出された特徴点の時相が所定の基準値に一致するよう一心拍周期の時間軸を変形させることによって代表値を正規化することができる。
【0053】
また、画像処理装置1は、代表値取得処理12により取得された各代表値について、予め取得しておいた正常な心臓における基準代表値との差分値を取得する処理と、その取得された差分値を出力する処理とをさらに実行するものであってもよい。なお、この差分値の出力には、代表値の各種出力態様をそのまま適用することができる。例えば、上述の画像生成処理13および表示制御処理14もそのまま適用することができ、心臓の各位置において取得された差分値を表すブルズアイ画像やトポグラフィックマップ等を生成し、ディスプレイ5に表示させることができる。
【0054】
また、正常な心臓における基準代表値は、以下の方法によって取得することができる。まず、正常であることが既知である多数の心臓についてそれぞれ、その心臓を一心拍周期内の複数の時相において撮影して得られた一連の3次元画像に対して心筋厚取得処理11および代表値取得処理12を行うことによって、その心臓の各位置における代表値を取得し、取得された代表値に対して上述の正規化処理を行う。次に、それらの心臓を表す画像間で位置合わせをすることで対応する点の位置を求め、各対応する位置毎に、上記各心臓において取得された代表値の平均値を算出し、算出された平均値をその位置における基準代表値とする。
【符号の説明】
【0055】
1 画像処理装置
2 CPU
3 メモリ
4 ストレージ
5 ディスプレイ
6 マウス
T 一心拍周期
MR 心筋領域
d 心筋の厚さ
t1〜tK 時相
V1〜VK 3次元画像
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓を一心拍周期内の複数の時相において撮影して得られた複数の3次元画像を記憶する画像記憶手段と、
前記複数の3次元画像から、前記心臓の各位置における、前記各時相での心筋の厚さを取得する心筋厚取得手段と、
該取得された各時相での心筋の厚さに基づいて、該心筋の収縮期を代表する代表値を、前記各位置においてそれぞれ取得する代表値取得手段と、
前記取得された代表値を出力する出力手段とを備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記出力手段が、前記取得された代表値を前記位置毎の代表値の大きさの相違を視覚的に識別可能な態様で表す代表値画像を生成し、該生成された代表値画像を表示手段に表示するものであることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
前記代表値が、前記心筋の厚さが最大となる時相と最小となる時相の中間の時相を表す値であることを特徴とする請求項1または2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記代表値が、前記心筋の厚さが最大となる時相を表す値であることを特徴とする請求項1または2記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記代表値が、前記心筋の厚さが最小となる時相を表す値であることを特徴とする請求項1または2記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記代表値が、前記心筋の厚さの変化を表す曲線上の、前記心筋の厚さが最大となる点から最小となる点までの間における変曲点での時相を表す値であることを特徴とする請求項1または2記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記代表値画像が、前記心臓の3次元形状を表す画像上の前記各位置を表す画素に、該位置における前記代表値の大きさに予め対応付けられている色を配したものであることを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記代表値画像が、ブルズアイ画像上の前記各位置を表す画素に、該位置における前記代表値の大きさに予め対応付けられている色を配したものであることを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記心臓の各位置に解剖学的に対応する正常な心臓上の位置における、心筋の収縮期を代表する基準代表値を取得する基準代表値取得手段と、
前記心臓の各位置について、前記代表値取得手段により取得された該位置における代表値と前記基準代表値取得手段により取得された該位置に解剖学的に対応する前記正常な心臓上の位置における基準代表値との差分値を取得する差分値取得手段と、
前記取得された差分値を出力する第2の出力手段とを備えたことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項画像処理装置。
【請求項10】
前記第2の出力手段が、前記取得された差分値を前記位置毎の差分値の大きさの相違を視覚的に識別可能な態様で表す差分値画像を生成し、該生成された差分値画像を表示手段に表示するものであることを特徴とする請求項9記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記心臓の前記一心拍周期の心電図を取得する心電図取得手段と、
該取得された心電図から所定の特徴点を抽出し、該抽出された特徴点の時相を用いて前記代表値取得手段により取得された代表値を正規化する正規化手段とを備え、
前記出力手段が、前記正規化された代表値を出力するものであることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記一心拍周期における左心室の容積の変化を取得する容積曲線取得手段と、
該取得された容積の変化を表す容積曲線から所定の特徴点を抽出し、該抽出された特徴点の時相を用いて前記代表値取得手段により取得された代表値を正規化する正規化手段とを備え、
前記出力手段が、前記正規化された代表値を出力するものであることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項記載の画像処理装置。
【請求項13】
心臓を一心拍周期内の複数の時相において撮影して得られた複数の3次元画像が記憶されたた記憶媒体から、前記複数の3次元画像を読み出し、
前記複数の3次元画像から、前記心臓の各位置における、前記各時相での心筋の厚さを取得し、
該取得された各時相での心筋の厚さに基づいて、該心筋の収縮期を代表する代表値を、前記各位置においてそれぞれ取得し、
前記取得された代表値を出力することを特徴とする画像処理方法。
【請求項14】
コンピュータを、
心臓を一心拍周期内の複数の時相において撮影して得られた複数の3次元画像を記憶する画像記憶手段、
前記複数の3次元画像から、前記心臓の各位置における、前記各時相での心筋の厚さを取得する心筋厚取得手段、
該取得された各時相での心筋の厚さに基づいて、該心筋の収縮期を代表する代表値を、前記各位置においてそれぞれ取得する代表値取得手段、および
前記取得された代表値を出力する出力手段として機能させることを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項1】
心臓を一心拍周期内の複数の時相において撮影して得られた複数の3次元画像を記憶する画像記憶手段と、
前記複数の3次元画像から、前記心臓の各位置における、前記各時相での心筋の厚さを取得する心筋厚取得手段と、
該取得された各時相での心筋の厚さに基づいて、該心筋の収縮期を代表する代表値を、前記各位置においてそれぞれ取得する代表値取得手段と、
前記取得された代表値を出力する出力手段とを備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記出力手段が、前記取得された代表値を前記位置毎の代表値の大きさの相違を視覚的に識別可能な態様で表す代表値画像を生成し、該生成された代表値画像を表示手段に表示するものであることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
前記代表値が、前記心筋の厚さが最大となる時相と最小となる時相の中間の時相を表す値であることを特徴とする請求項1または2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記代表値が、前記心筋の厚さが最大となる時相を表す値であることを特徴とする請求項1または2記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記代表値が、前記心筋の厚さが最小となる時相を表す値であることを特徴とする請求項1または2記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記代表値が、前記心筋の厚さの変化を表す曲線上の、前記心筋の厚さが最大となる点から最小となる点までの間における変曲点での時相を表す値であることを特徴とする請求項1または2記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記代表値画像が、前記心臓の3次元形状を表す画像上の前記各位置を表す画素に、該位置における前記代表値の大きさに予め対応付けられている色を配したものであることを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記代表値画像が、ブルズアイ画像上の前記各位置を表す画素に、該位置における前記代表値の大きさに予め対応付けられている色を配したものであることを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記心臓の各位置に解剖学的に対応する正常な心臓上の位置における、心筋の収縮期を代表する基準代表値を取得する基準代表値取得手段と、
前記心臓の各位置について、前記代表値取得手段により取得された該位置における代表値と前記基準代表値取得手段により取得された該位置に解剖学的に対応する前記正常な心臓上の位置における基準代表値との差分値を取得する差分値取得手段と、
前記取得された差分値を出力する第2の出力手段とを備えたことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項画像処理装置。
【請求項10】
前記第2の出力手段が、前記取得された差分値を前記位置毎の差分値の大きさの相違を視覚的に識別可能な態様で表す差分値画像を生成し、該生成された差分値画像を表示手段に表示するものであることを特徴とする請求項9記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記心臓の前記一心拍周期の心電図を取得する心電図取得手段と、
該取得された心電図から所定の特徴点を抽出し、該抽出された特徴点の時相を用いて前記代表値取得手段により取得された代表値を正規化する正規化手段とを備え、
前記出力手段が、前記正規化された代表値を出力するものであることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記一心拍周期における左心室の容積の変化を取得する容積曲線取得手段と、
該取得された容積の変化を表す容積曲線から所定の特徴点を抽出し、該抽出された特徴点の時相を用いて前記代表値取得手段により取得された代表値を正規化する正規化手段とを備え、
前記出力手段が、前記正規化された代表値を出力するものであることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項記載の画像処理装置。
【請求項13】
心臓を一心拍周期内の複数の時相において撮影して得られた複数の3次元画像が記憶されたた記憶媒体から、前記複数の3次元画像を読み出し、
前記複数の3次元画像から、前記心臓の各位置における、前記各時相での心筋の厚さを取得し、
該取得された各時相での心筋の厚さに基づいて、該心筋の収縮期を代表する代表値を、前記各位置においてそれぞれ取得し、
前記取得された代表値を出力することを特徴とする画像処理方法。
【請求項14】
コンピュータを、
心臓を一心拍周期内の複数の時相において撮影して得られた複数の3次元画像を記憶する画像記憶手段、
前記複数の3次元画像から、前記心臓の各位置における、前記各時相での心筋の厚さを取得する心筋厚取得手段、
該取得された各時相での心筋の厚さに基づいて、該心筋の収縮期を代表する代表値を、前記各位置においてそれぞれ取得する代表値取得手段、および
前記取得された代表値を出力する出力手段として機能させることを特徴とする画像処理プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−61028(P2012−61028A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205334(P2010−205334)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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